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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20231212BHJP
   E21B 47/024 20060101ALI20231212BHJP
   E21B 47/09 20120101ALI20231212BHJP
【FI】
G01C15/00 104D
E21B47/024
E21B47/09
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020119621
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2021051060
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】62/905,595
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/720,584
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】有田 寛史
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/111713(WO,A1)
【文献】特表平11-508004(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0218745(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0238930(US,A1)
【文献】実開昭61-006714(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
5/00-15/14
21/00-21/36
23/00-25/00
E21B 1/00-49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中掘削機の掘削部に配置するための計測装置であって、
軸の第1加速度センサと3軸の第1磁気センサを有する第1計測モジュールと、
掘削中に計測するための3軸の第2加速度センサと3軸の第2磁気センサを有する第2計測モジュールと、
前記第1計測モジュールと前記第2計測モジュールを制御するとともに、前記第1計測モジュールまたは前記第2計測モジュールの出力データに基づいて前記掘削部の位置と姿勢を求める情報処理プロセッサ
を備え、
前記第2加速度センサと前記第2磁気センサは、MEMSセンサであり、
前記第1加速度センサは前記第2加速度センサより高精度であり、前記第1磁気センサは前記第2磁気センサより高精度であ
ことを特徴とする計測装置。
【請求項2】
請求項1記載の計測装置であって、
前記情報処理プロセッサは、前記第1計測モジュールの出力データに基づいて、前記第2計測モジュールの出力データの誤差を補正する
ことを特徴とする計測装置。
【請求項3】
請求項1記載の計測装置であって、
前記情報処理プロセッサは、前記第1計測モジュールの出力データに基づいて、前記第2計測モジュールの校正データを補正する
ことを特徴とする計測装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の計測装置であって、
前記情報処理プロセッサは、前記第1計測モジュールの電源をオフにする機能を有する
ことを特徴とする計測装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の計測装置であって、
当該計測装置は、地中掘削機の掘削部に配置された電池から給電される
ことを特徴とする計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中掘削機の掘削部に配置され、掘削位置を計測するための計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中掘削機の掘削部に配置される計測装置の従来技術として、特許文献1に記載された計測装置および、非特許文献1に記載された計測装置などが知られている。どちらの計測装置も、3軸の加速度センサと3軸の磁気センサと情報処理プロセッサを備えている。図1は特許文献1の図5に示された処理フローを示す図である。図2は非特許文献1の図1に示された計測装置の構成を示す図である。特許文献1では、ロッド1本分の掘削が終了するごとに、計測が行われている。つまり、掘削の停止中に掘削部の先端の位置を求めている。一方、非特許文献1には、計測装置は掘削の停止中だけでなく、掘削中にも計測可能であることが示されている。非特許文献1の説明では、実際の掘削環境下では、掘削による“振動”と“回転”が両方同時に地中掘削機全体に加わることが示され、これらの影響を除去して、傾斜角と方位角を演算する方法が示されている。具体的には、外乱に強い耐性を持つUnscented Kalman Filterを採用し、予測プロセスと補正プロセスを時間ステップ毎に繰り返すことで、傾斜角と方位角などの状態量を精度良く演算している。予測プロセスでは、1ステップ前の状態量に対して、掘削時のツールの振動と回転を考慮した物理モデルを適用して現在時刻での状態量を予測している。補正プロセスでは、予測値に対して、現在時刻で得られた加速度センサと磁気センサのデータを使って、外乱ノイズの影響が最小となるように補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2015/111713号
【非特許文献】
【0004】
【文献】有田寛史, 山田孝純, 井上雄介, “デジタル・ディレクショナル・モジュールの開発 (Development of Digital Directional Module)”, 航空電子技報 (JAE Technical Report), No.39, 2017.3. [2020年4月16日検索]、インターネット<https://www.jae.com/corporate/rd/tech-report/39/>.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1には掘削中にも計測可能であることが示されているが、掘削中にも電力を消費することになる。本発明は、計測装置の消費電力の低減を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の計測装置は、地中掘削機の掘削部に配置するための計測装置である。本発明の計測装置は、第1計測モジュール、第2計測モジュール、情報処理プロセッサを備える。第1計測モジュールは、高精度に計測するための3軸の第1加速度センサと3軸の第1磁気センサを有する。第2計測モジュールは、掘削中に計測するための3軸の第2加速度センサと3軸の第2磁気センサを有する。情報処理プロセッサは、第1計測モジュールと第2計測モジュールを制御するとともに、第1計測モジュールまたは第2計測モジュールの出力データに基づいて掘削部の位置と向きを求める。また、第2加速度センサと第2磁気センサは、MEMSセンサである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の計測装置によれば、掘削中には消費電力が小さいMEMSセンサを用いるので、計測装置の消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】特許文献1の図5に示された掘削停止のときの計測処理のフローを示す図。
図2】非特許文献1の図1に示された計測装置の構成を示す図。
図3】本発明の計測装置の機能構成を示す図。
図4】第1計測モジュールの出力データに基づいて掘削部の位置と姿勢を求めると共に、第2計測モジュールの校正データを評価する処理のフローを示す図。
図5】第2計測モジュールの出力データに基づいて掘削部の位置と姿勢を求める処理のフローを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0010】
図3は、本発明の計測装置の機能構成を示す図である。図4は、第1計測モジュールの出力データに基づいて掘削部の位置と姿勢を求めると共に、第2計測モジュールの校正データを評価する処理のフローを示す図である。図5は、第2計測モジュールの出力データに基づいて掘削部の位置と姿勢を求める処理のフローを示す図である。
【0011】
計測装置100は、地中掘削機の掘削部に配置するための計測装置である。計測装置100は、第1計測モジュール110、第2計測モジュール120、情報処理プロセッサ130を備える。計測装置100は、掘削部内に配置された電池(図示されていない)から給電される構成にすればよい。第1計測モジュール110は、高精度に計測するための3軸の第1加速度センサ111と3軸の第1磁気センサ112とAD変換器113を有する。第1加速度センサ111は、あらかじめ定めたX軸、Y軸、Z軸方向の加速度を計測する。第1磁気センサ112は、あらかじめ定めたX軸、Y軸、Z軸方向の地磁気を計測する。AD変換器113は、第1加速度センサ111と第1磁気センサ112の出力をAD変換し、デジタル信号の出力データを得る。なお、AD変換器113は、第1計測モジュール110の外部に配置してもよい。具体的には、非特許文献1に示された加速度センサと磁気センサを利用すれば、高精度の計測が可能である。ただし、非特許文献1に示された加速度センサと磁気センサを掘削中も使い続けると、消費電力が大きくなり、掘削部内に配置された電池を交換する頻度が高くなってしまう。また、非特許文献1に示された加速度センサと磁気センサは、高精度に計測できるが、ダイナミックレンジは狭い。したがって、掘削による振動、衝撃、回転の影響を強く受けると、計測値が飽和してしまうリスクもある。
【0012】
第2計測モジュール120は、掘削中に計測するための3軸の第2加速度センサ121と3軸の第2磁気センサ122とAD変換器123を有する。第2加速度センサ121と第2磁気センサ122は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)方式のセンサである。第2加速度センサ121は、あらかじめ定めたX軸、Y軸、Z軸方向の加速度を計測する。第2磁気センサ122は、あらかじめ定めたX軸、Y軸、Z軸方向の地磁気を計測する。AD変換器123は、第2加速度センサ121と第2磁気センサ122の出力をAD変換し、デジタル信号の出力データを得る。なお、AD変換器123は、第2計測モジュール120の外部に配置してもよい。また、第2計測モジュール120は、第2加速度センサ121と第2磁気センサ122の他にもMEMS方式の別のセンサを備えてもよい。
【0013】
情報処理プロセッサ130は、第1計測モジュール110と第2計測モジュール120を制御するとともに、第1計測モジュール110または第2計測モジュール120の出力データに基づいて掘削部の位置と姿勢を求める。例えば、情報処理プロセッサ130は、第1校正部131、第2校正部132、評価部133、記録部134、第1計算部135、第2計算部136、第1電源制御部137を備える。記録部134は、第1加速度センサ111、第1磁気センサ112、第2加速度センサ121、第2磁気センサ122を校正するための校正データを記録している。校正データは、出荷前に工場で記録部134に記録しておけばよい。
【0014】
まず、図4を参照しながら、第1計測モジュール110の出力データに基づいて掘削部の位置と姿勢を求めると共に、第2計測モジュール120の校正データを評価する処理のフローを説明する。第1加速度センサ111が、あらかじめ定めたX軸、Y軸、Z軸方向の加速度を計測し、第1磁気センサ112が、あらかじめ定めたX軸、Y軸、Z軸方向の地磁気を計測する(S110)。そして、計測された結果はデジタル化され、第1計測モジュール110の出力データとして情報処理プロセッサ130に入力される。第2加速度センサ121が、あらかじめ定めたX軸、Y軸、Z軸方向の加速度を計測し、第2磁気センサ122が、あらかじめ定めたX軸、Y軸、Z軸方向の地磁気を計測する(S120)。そして、計測された結果はデジタル化され、第2計測モジュール120の出力データとして情報処理プロセッサ130に入力される。
【0015】
第1校正部131は、記録部134に記録された校正データに基づいて第1計測モジュール110の出力データを校正する(S131)。第2校正部132は、記録部134に記録された校正データに基づいて第2計測モジュール120の出力データを校正する(S1321)。なお、第1校正部131と第2校正部132は、掘削部に備えられている温度センサ(図示していない)などから温度データなどの周囲の状況に関するデータも取得し、校正に利用してもよい。
【0016】
評価部133は、ステップS131で校正された第1計測モジュール110の出力データと、ステップS1321で校正された第2計測モジュール120の出力データとを比較し、校正された第2計測モジュール120の出力データの誤差を求める(S133)。つまり、校正された第2計測モジュール120の出力データの評価を行う。例えば、求めた誤差を記録部134に記録し、後述する第2計測モジュール120の出力データの校正の処理(S1322)または第2計算部136の計算の処理(S136)で、補正を行ってもよい。この場合は、情報処理プロセッサ130は、第1計測モジュール110の出力データに基づいて、第2計測モジュール120の出力データの誤差を補正することになる。また、例えば、求めた誤差にしたがって、記録部134が記憶している校正データ自体を補正してもよい。この場合は、情報処理プロセッサ130は、第1計測モジュール110の出力データに基づいて、記録部134に記録された第2計測モジュール120の校正データを補正することになる。
【0017】
第1計算部135は、ステップS131で校正された第1計測モジュール110の出力データから掘削部の位置と姿勢を求める(S135)。つまり、情報処理プロセッサ130は、第1計測モジュール110の出力データに基づいて掘削部の位置と姿勢を求める。図4に示した処理を掘削の停止中に行う場合は、例えば、特許文献1に示された計算を利用すればよい。図4に示した処理を掘削中に行う場合は、例えば、非特許文献1に示されたUnscented Kalman Filterを用いた方法を採用すればよい。ただし、第1計測モジュール110は高精度で計測できるので、一般的には加速度のダイナミックレンジは狭い。したがって、掘削による振動、衝撃、回転の影響を強く受けているときには、図4の処理は避ける方が望ましい。
【0018】
なお、情報処理プロセッサ130は、第2電源制御部138も備えてもよい。例えば、ステップS120の処理が終了後から次のステップS120の処理を開始するまでの間、第2電源制御部138は、掘削部内に配置された電池から第2計測モジュール120への給電を切ることで、第2計測モジュール120の電源をオフにしてもよい。この処理により、第2計測モジュール120での電力消費を止めることができる。ただし、第2計測モジュール120は、MEMS方式のセンサを有しているので、消費電力は小さい。したがって、第2電源制御部138を設けなくてもよい。
【0019】
掘削中の処理フローについて説明する。掘削を開始する前に、情報処理プロセッサ130の第1電源制御部137は、掘削部内に配置された電池から第1計測モジュール110への給電を切ることで、第1計測モジュール110の電源をオフにする。この処理により、第1計測モジュール110での電力消費を止めることができる。次に、図5を参照しながら、第2計測モジュール120の出力データに基づいて掘削部の位置と姿勢を求める処理のフローを説明する。第2加速度センサ121が、あらかじめ定めたX軸、Y軸、Z軸方向の加速度を計測し、第2磁気センサ122が、あらかじめ定めたX軸、Y軸、Z軸方向の地磁気を計測する(S120)。そして、計測された結果はデジタル化され、第2計測モジュール120の出力データとして情報処理プロセッサ130に入力される。
【0020】
第2校正部132は、記録部134に記録された校正データに基づいて第2計測モジュール120の出力データを校正する(S1322)。なお、第2校正部132は、掘削部に備えられている温度センサ(図示していない)などから温度データなどの周囲の状況に関するデータも取得し、校正に利用してもよい。また、ステップS1322の校正では、記録部134に第2計測モジュール120の出力データの誤差が記録されている場合は、誤差分の補正を行ってもよい。
【0021】
第2計算部136は、ステップS1322で校正された第2計測モジュール120の出力データから掘削部の位置と姿勢を求める(S136)。つまり、情報処理プロセッサ130は、第2計測モジュール120の出力データに基づいて掘削部の位置と姿勢を求める。ステップS136の計算では、非特許文献1に示されたUnscented Kalman Filterを用いた方法を採用すればよい。また、記録部134に第2計測モジュール120の出力データの誤差が記録され、ステップS1322で誤差が使用されていないときは、計算する際に、ステップS1322で得た構成された出力データを補正してもよい。
【0022】
第2計測モジュール120の第2加速度センサ121と第2磁気センサ122はMEMSセンサなので、小消費電力である。したがって、掘削中の電力消費を低減できる。一般的には、掘削時間30~60分に対して掘削を停止している時間は1分程度なので、掘削中の電力消費を抑えることで全体の消費電力を小さくできる。よって、掘削部内に配置されている電池を交換する間隔を長くできる。また、第1計測モジュール110の第1加速度センサ111と第1磁気センサ112に比べると計測精度は低いが、ダイナミックレンジを広くできる。つまり、掘削中の振動、衝撃、回転の影響を受けても計測値が飽和してしまうリスクが低い。したがって、掘削中も掘削部の位置と姿勢を知ることができる。
【符号の説明】
【0023】
100 計測装置 110 第1計測モジュール
111 第1加速度センサ 112 第1磁気センサ
113,123 AD変換器 120 第2計測モジュール
121 第2加速度センサ 122 第2磁気センサ
130 情報処理プロセッサ 131 第1校正部
132 第2校正部 133 評価部
134 記録部 135 第1計算部
136 第2計算部 137 第1電源制御部
138 第2電源制御部
図1
図2
図3
図4
図5