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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】エンジンのスロットル装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 9/10 20060101AFI20231212BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20231212BHJP
   F16H 37/04 20060101ALI20231212BHJP
   F16H 37/02 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
F02D9/10 G
F02D9/02 351P
F16H37/04
F16H37/02 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020127059
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024450
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 眞一
(72)【発明者】
【氏名】木村 貴彦
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-117609(JP,A)
【文献】特開2008-274893(JP,A)
【文献】特開2007-211750(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0030518(US,A1)
【文献】実開昭64-21232(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/00
F16H 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンへの装着状態で筒内と連通するスロットルボアが形成され、前記スロットルボア内でスロットル軸によりスロットル弁が開閉可能に支持されたスロットルボディと、
前記スロットルボディに取り付けられたモータと、
前記モータの出力軸に固定された駆動伝達体と、
前記モータの出力軸と平行な1次アイドラ軸に回転可能に支持された被動伝達体と、
前記駆動伝達体と前記被動伝達体とを結ぶ方向に長尺な形状を有して、前記駆動伝達体と前記被動伝達体との間に掛け渡された姿勢で配設されて1次伝達機構を構成し、前記駆動伝達体の回転を前記被動伝達体に伝達する中間伝達体と、
前記被動伝達体の回転を減速しつつ前記スロットル軸に伝達する2次伝達機構と、
を備えたことを特徴とするエンジンのスロットル装置。
【請求項2】
前記1次伝達機構は、ベベルギヤ機構であり、
前記駆動伝達体は、前記モータの出力軸に固定された駆動ベベルギヤであり、
前記被動伝達体は、前記1次アイドラ軸に回転可能に支持された被動ベベルギヤであり、
前記中間伝達体は、前記駆動ベベルギヤと前記被動ベベルギヤとを結ぶ軸線を中心としてベベル軸が回転可能に支持されて、前記ベベル軸の一端に固定された入力ベベルギヤを前記駆動ベベルギヤに噛合させ、前記ベベル軸の他端に固定された出力ベベルギヤを前記被動ベベルギヤに噛合させて、前記駆動ベベルギヤの回転を、前記軸線を中心とした自己の回転運動を介して前記被動ベベルギヤに回転として伝達するベベルユニットである
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項3】
前記1次伝達機構は、ベルト機構であり、
前記駆動伝達体は、前記モータの出力軸に固定された駆動プーリであり、
前記被動伝達体は、前記1次アイドラ軸に回転可能に支持された被動プーリであり、
前記中間伝達体は、前記駆動プーリと前記被動プーリとの間に張架されて、前記駆動プーリの回転を、前記駆動プーリと前記被動プーリとの間での自己の走行運動を介して前記被動プーリに回転として伝達する無端状ベルトである
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項4】
前記1次伝達機構は、リンク機構であり、
前記駆動伝達体は、前記モータの出力軸に固定されて、前記出力軸から偏心した位置に連結点を有する駆動アーム部材であり、
前記被動伝達体は、前記1次アイドラ軸に回転可能に支持されて、前記1次アイドラ軸から偏心した位置に連結点を有する被動アーム部材であり、
前記中間伝達体は、一端を前記駆動アーム部材の連結点に相対回転可能に軸支され、他端を前記被動アーム部材の連結点に相対回転可能に軸支されて、前記駆動アーム部材の回転を、前記駆動アーム部材と前記被動アーム部材との間での自己の往復運動を介して前記被動アーム部材に回転として伝達する連結ロッドである
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項5】
前記2次伝達機構は、前記スロットル軸に固定された最終ギヤを含む複数のギヤからなる
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項6】
前記最終ギヤは、前記中間伝達体を介して前記駆動伝達体と前記被動伝達体とが離間配置されて形成されたスペースに配設されている
ことを特徴とする請求項5に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項7】
前記モータは、前記スロットルボディに一体形成されたモータ収容室内に収容され、
前記モータ収容室と前記スロットルボディの前記スロットルボアが形成された部位とが一体化されている
ことを特徴とする請求項6項に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項8】
前記スロットルボディの外側面には、前記スロットル軸及び前記モータの出力軸が突出してカバー部材により閉塞されて、前記1次伝達機構及び前記2次伝達機構を収容する機構室が画成され、
前記カバー部材には、前記機構室を貫通して先端を前記スロットルボディのスロットルボア内に突出させ、前記スロットルボア内を流通する吸気の温度を検出する吸気温センサ、及び前記機構室を貫通する圧力通路を介して前記スロットルボディのスロットルボア内と連通し、前記スロットルボア内を流通する吸気の圧力を検出する吸気圧センサの内の少なくとも何れか一方が設けられ、
前記1次伝達機構及び前記2次伝達機構は、前記スロットル軸に沿った方向から見て前記吸気温センサ及び前記圧力通路の少なくとも何れか一方を避けた位置で前記機構室内に配設されている
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項9】
前記スロットルボディは、単一のスロットルボアが形成され、鞍乗り型車両に走行用動力源として搭載された単気筒のエンジンに装着される
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のエンジンのスロットル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのスロットル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されたスロットル装置では、スロットルボディに形成されたスロットルボア内にスロットル軸によりスロットル弁が開閉可能に支持されている。スロットルボディにはモータが取り付けられ、その出力軸とスロットル軸とがスロットルボディの外側面に突出してギヤカバーにより閉塞され、これにより外側面とギヤカバーとの間にギヤ収容室が画成されている。
【0003】
ギヤ収容室内にはモータの出力軸及びスロットル軸と共にギヤ軸が設けられ、これらの3本の軸は互いに平行に配設されている。モータの出力軸には駆動ギヤが固定され、スロットル軸には被動ギヤが固定され、ギヤ軸には中間ギヤが回転可能に支持されている。中間ギヤは小径部及び大径部を一体成型してなり、大径部は駆動ギヤと噛合し、小径部は被動ギヤと噛合している。このためモータが作動すると、出力軸の回転が駆動ギヤから中間ギヤの大径部に伝達されて減速され、さらに中間ギヤの小径部から被動ギヤに伝達されて減速され、スロットル軸を介したスロットル弁の開閉に応じてスロットルボア内を流通する吸気の量が調整される。以下、このような互いに平行な軸線を中心として順番に回転伝達されるギヤ列を、平行軸ギヤ列と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4055547号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、平行軸ギヤ列だけでなく他のギヤ列にも当てはまることであるが、ギヤ収容室内に収容されたギヤ列の配置は、スロットル装置の構造に大きく影響する要素である。例えば、駆動ギヤと被動ギヤとの位置関係に応じてモータの出力軸とスロットル軸との間の軸間距離、ひいてはモータとスロットルボアとの位置関係が決定されることから、ギヤ列の配置はスロットル装置の外形に影響を及ぼす。また、ギヤ収容室内にはギヤ列と共にスロットル開度センサ等のセンサ類が設置されることがあり、その場合にはギヤ列との干渉を防止してセンサ類を配設する必要があるため、ギヤ列の配置はギヤ収容室内でのセンサ類の搭載性に影響を及ぼす。
【0006】
ここで、ギヤ列として平行軸ギヤ列を採用した場合、その駆動ギヤ、中間ギヤ及び被動ギヤは配置の自由度が低い。その主要因は、所期の減速比を達成するために各ギヤのおよその径が定まり、且つそれぞれの径を前提とした互いの噛合により、およその軸間距離も定まってしまうことにある。結果として駆動ギヤと被動ギヤとを十分に接近できないため、モータとスロットルボアとを接近させてスロットル装置をコンパクト化することが困難となっていた。
【0007】
また、各ギヤの配置の自由度が低いことは、ギヤ収容室内にセンサ類を設置する場合に、各ギヤの配置を優先せざるを得ないことを意味する。結果として、各ギヤとの干渉防止のためにセンサ類の設置位置が限定されてしまい、不適切な位置にセンサ類が設置されてしまう場合があった。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、モータの回転をスロットル軸に伝達する伝達機構の配置に関する自由度を向上することができるエンジンのスロットル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明のエンジンのスロットル装置は、エンジンへの装着状態で筒内と連通するスロットルボアが形成され、スロットルボア内でスロットル軸によりスロットル弁が開閉可能に支持されたスロットルボディと、スロットルボディに取り付けられたモータと、モータの出力軸に固定された駆動伝達体と、モータの出力軸と平行な1次アイドラ軸に回転可能に支持された被動伝達体と、駆動伝達体と被動伝達体とを結ぶ方向に長尺な形状を有して、駆動伝達体と被動伝達体との間に掛け渡された姿勢で配設されて1次伝達機構を構成し、駆動伝達体の回転を被動伝達体に伝達する中間伝達体と、被動伝達体の回転を減速しつつスロットル軸に伝達する2次伝達機構と、を備えたことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
その他の態様として、1次伝達機構が、ベベルギヤ機構であり、駆動伝達体が、モータの出力軸に固定された駆動ベベルギヤであり、被動伝達体が、1次アイドラ軸に回転可能に支持された被動ベベルギヤであり、中間伝達体が、駆動ベベルギヤと被動ベベルギヤとを結ぶ軸線を中心としてベベル軸が回転可能に支持されて、ベベル軸の一端に固定された入力ベベルギヤを駆動ベベルギヤに噛合させ、ベベル軸の他端に固定された出力ベベルギヤを被動ベベルギヤに噛合させて、駆動ベベルギヤの回転を、軸線を中心とした自己の回転運動を介して被動ベベルギヤに回転として伝達するベベルユニットとして構成されていてもよい(請求項2)。
【0011】
その他の態様として、1次伝達機構が、ベルト機構であり、駆動伝達体が、モータの出力軸に固定された駆動プーリであり、被動伝達体が、1次アイドラ軸に回転可能に支持された被動プーリであり、中間伝達体が、駆動プーリと被動プーリとの間に張架されて、駆動プーリの回転を、駆動プーリと被動プーリとの間での自己の走行運動を介して被動プーリに回転として伝達する無端状ベルトとして構成されていてもよい(請求項3)。
【0012】
その他の態様として、1次伝達機構が、リンク機構であり、駆動伝達体が、モータの出力軸に固定されて、出力軸から偏心した位置に連結点を有する駆動アーム部材であり、被動伝達体が、1次アイドラ軸に回転可能に支持されて、1次アイドラ軸から偏心した位置に連結点を有する被動アーム部材であり、中間伝達体が、一端を駆動アーム部材の連結点に相対回転可能に軸支され、他端を被動アーム部材の連結点に相対回転可能に軸支されて、駆動アーム部材の回転を、駆動アーム部材と被動アーム部材との間での自己の往復運動を介して被動アーム部材に回転として伝達する連結ロッドとして構成されていてもよい(請求項4)。
【0013】
その他の態様として、2次伝達機構が、スロットル軸に固定された最終ギヤを含む複数のギヤから構成されていてもよい(請求項5)。
その他の態様として、最終ギヤが、中間伝達体を介して駆動伝達体と被動伝達体とが離間配置されて形成されたスペースに配設されていてもよい(請求項6)。
【0014】
その他の態様として、モータが、スロットルボディに一体形成されたモータ収容室内に収容され、モータ収容室とスロットルボディのスロットルボアが形成された部位とが一体化されてもよい(請求項7)。
【0015】
その他の態様として、スロットルボディの外側面に、スロットル軸及びモータの出力軸が突出してカバー部材により閉塞されて、1次伝達機構及び2次伝達機構を収容する機構室が画成され、カバー部材に、機構室を貫通して先端をスロットルボディのスロットルボア内に突出させ、スロットルボア内を流通する吸気の温度を検出する吸気温センサ、及び機構室を貫通する圧力通路を介してスロットルボディのスロットルボア内と連通し、スロットルボア内を流通する吸気の圧力を検出する吸気圧センサの内の少なくとも何れか一方が設けられ、1次伝達機構及び2次伝達機構が、スロットル軸に沿った方向から見て吸気温センサ及び圧力通路の少なくとも何れか一方を避けた位置で機構室内に配設されていてもよい(請求項8)。
【0016】
その他の態様として、スロットルボディに、単一のスロットルボアが形成され、鞍乗り型車両に走行用動力源として搭載された単気筒のエンジンに装着されていてもよい(請求項9)。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエンジンのスロットル装置によれば、モータの回転をスロットル軸に伝達する伝達機構の配置に関する自由度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態のスロットル装置を示す斜視図である。
図2】スロットルボディからギヤカバーを取り外して機構室内のギヤ列を示した斜視図である。
図3】スロットルボディからギヤカバーを取り外してギヤカバーの内側面を示した斜視図である。
図4】機構室内での伝達機構及び各センサの配置を示した図である。
図5】スロットル軸及び最終ギヤを示す図4のV-V線部分断面図である。
図6】吸気温センサ及び伝達機構を示す図4のVI-VI線断面図である。
図7】吸気圧センサ及び圧力通路を示す図4のVII-VII線断面図である。
図8】モータ、伝達機構及びスロットル軸の関係を示した斜視図である。
図9】モータ、伝達機構及びスロットル軸の関係を図8とは別角度で示した斜視図である。
図10】第2実施形態における機構室内での伝達機構及び各センサの配置を示した図である。
図11】モータ、伝達機構及びスロットル軸の関係を示した斜視図である。
図12】モータ、伝達機構及びスロットル軸の関係を図11とは別角度で示した斜視図である。
図13】第3実施形態における機構室内での伝達機構及び各センサの配置を示した図である。
図14】モータ、伝達機構及びスロットル軸の関係を示した斜視図である。
図15】モータ、伝達機構及びスロットル軸の関係を図14とは別角度で示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
《第1実施形態》
以下、本発明を原動機付き自転車に走行用動力源として搭載される単気筒エンジン用のスロットル装置に具体化した第1実施形態を説明する。
スロットル装置1は図示しないエンジンに装着され、運転者のスロットル操作に応じてエンジンの筒内に供給される吸気量を調整する機能を奏する。図1~3に示すように全体としてスロットル装置1は、エンジンの筒内と連通する単一のスロットルボア2内にスロットル軸3によりスロットル弁4が開閉可能に支持されたスロットルボディ5、スロットルボディ5との間で機構室6を画成するカバー部材7、及び機構室6内に突出した出力軸9aの回転を伝達機構8を介してスロットル軸3に伝達し、スロットル弁4を開閉するモータ9から構成されている。
【0020】
本実施形態のスロットル装置1は、図1に示す姿勢で車両に搭載される。この姿勢に倣って以下の説明では、スロットルボア2の軸線Cbに沿った吸気流通方向を前後方向と称し、これと直交するスロットル軸3の軸線Cthに沿ったスロットル軸線方向を左右方向と称し、何れの方向とも直交する方向を上下方向と称する。なお、スロットル装置1の搭載姿勢はこれに限るものではなく、種々の姿勢に変更可能である。
【0021】
〈スロットルボディ5〉
図2~5に示すように、スロットルボディ5には前後方向にスロットルボア2が貫設されると共に、その下方に隣接してモータ9を収容したモータ収容室10が一体形成されている。スロットルボディ5は、スロットルボア2の後端に形成されたフランジ11を介して図示しないボルトでエンジンの吸気マニホールドに連結され、スロットルボア2の前端には図示しないエアクリーナが連結される。このスロットルボディ5にはスロットルボア2を貫通してスロットル軸3が配設され、軸受12により回動可能に支持されている。スロットルボア2内においてスロットル軸3にはスロットル弁4が一対のビス13により固定され、エンジンの運転中には、スロットル軸3の回動に伴ってスロットル弁4が開閉してスロットルボア2内を流通する吸気の量が調整される。
【0022】
〈機構室6〉
スロットル軸3はスロットルボディ5内で右方に向けて延設され、その端部はスロットルボディ5の右側面14から外部に突出している。スロットルボディ5の右側面14は、周囲に周壁14aが形成されて右方に向けて開口する凹状をなしている。周壁14aによりスロットル軸3の端部が包囲されており、スロットル軸線Cthと平行な軸線Cmに沿った姿勢でモータ9の出力軸9aも右側面14の周壁14a内に突出している。この右側面14は、本発明のスロットルボディの外側面に相当するものである。
【0023】
スロットルボディ5の右側面14には、左方に開口する凹状をなすカバー部材7が配設され、図示はしないがカバー部材7の周囲は、パッキンを介して右側面14の周壁14aに重ねられてビスにより締結されている。このカバー部材7により右側面14が閉塞され、カバー部材7と右側面14との間には、上下方向に延びた長方形状をなす機構室6が画成されている。
【0024】
図2,4,6に示すように機構室6内において、モータ9の出力軸9aとスロットル軸3とは伝達機構8を介して接続されている。モータ9が作動すると、出力軸9aの回転が伝達機構8により減速されつつスロットル軸3に伝達され、戻りバネ15の付勢力に抗してスロットル軸3が回動して上記のようにスロットル弁4を開閉する。伝達機構8の構成は本発明の特徴部分であるため、その詳細は後述する。
【0025】
〈カバー部材7、吸気温センサ18、吸気圧センサ19〉
図2,3,6,7に示すように、カバー部材7は合成樹脂材料を射出成型して製作されており、その内側面には基板17及び図示しない複数の端子が部分的に埋設されると共に、吸気温センサ18及び吸気圧センサ19が埋設されている。本実施形態では、カバー部材7を製作する際にインサート成型により各部材17~19を埋設しているが、その製法はこれに限るものではなく任意に変更可能である。
【0026】
図6に示すように、吸気温センサ18の一対の端子18bは基板17に接続されて左方に延設され、その先端にセンサ本体18aが支持されている。カバー部材7の内側面には、射出成型の際に左方に延びる棒状をなす封止体18cが一体形成され、この封止体18cにセンサ本体18a及び端子18bが埋設されて吸気温センサ18を構成している。
【0027】
カバー部材7がスロットルボディ5に結合された状態では、吸気温センサ18は機構室6を貫通してスロットルボディ5に形成された貫通孔20内に挿入され、先端がスロットルボア2内のスロットル弁4よりも前側位置に突出している。このため、封止体18cの先端に埋設されているセンサ本体18aには、スロットルボア2内を流通する吸気の温度が伝達される。例えば吸気温センサ18としては、温度変化に応じて抵抗が変化するサーミスタ等を用いることができ、抵抗が吸気温と相関する電気信号に変換されて出力される。
【0028】
図7に示すように、吸気圧センサ19のセンサ本体19aはカバー部材7に埋設され、その端子19bが基板17に接続されている。カバー部材7の内側面には、射出成型の際に左方に延びるパイプ状をなす圧力通路21が一体形成され、先端が左方に開放されている。カバー部材7内にはセンサ本体19aの左側に隣接して圧力室22が形成され、圧力通路21の内部はカバー部材7内で右方に延設されて圧力室22と連通している。カバー部材7がスロットルボディ5に結合された状態では、圧力通路21は機構室6を貫通してスロットルボディ5に形成された貫通孔23内に挿入され、先端がスロットルボア2内のスロットル弁4よりも後側位置に開口している。結果として吸気圧センサ19のセンサ本体19aは、圧力室22及び圧力通路21を介してスロットルボア2内と連通し、内部を流通する吸気の圧力がセンサ本体19aに作用する。
【0029】
例えば吸気圧センサ19としては、半導体式圧力センサや歪みゲージ式圧力センサ等を用いることができる。これらの圧力センサの原理は周知のため詳細は説明しないが、半導体圧力センサは、シリコンゲージを形成したダイヤフラム受圧面に圧力を作用させて、圧力に応じたシリコンゲージの撓みによる抵抗変化(ピエゾ抵抗効果)を吸気圧と相関する電気信号に変換して出力する。また歪みゲージ式圧力センサは、裏面に抵抗ブリッジを貼った金属ダイヤフラムに圧力を作用させて、金属ダイヤフラムの撓みに応じた抵抗ブリッジの電圧変化を吸気圧と相関する電気信号に変換して出力する。
【0030】
カバー部材7の外側面の下部には端子収容部24が一体形成され、その内部には、カバー部材7内に埋設された図示しない複数の端子の一端が整列配置されてコネクタ25を構成している。各端子はカバー部材7内を延設され、その内の2本の端子はモータ9に接続され、残りの端子は基板17を介して吸気温センサ18及び吸気圧センサ19に接続されている。
【0031】
図示はしないが、車体へのスロットル装置1の搭載状態ではコネクタ25に車体側コネクタが接続され、スロットル装置1は車体側コネクタ及びハーネスを介して車体に搭載されたECUと電気的に接続される。そして、エンジンの運転中には、ECUからハーネス、車体側コネクタ、端子及び基板17を介してモータ9及び各センサ18,19に電力が供給されて作動すると共に、各センサ18,19から出力された検出信号が上記とは逆の経路を辿ってECUに入力される。
【0032】
ところで、モータの回転をスロットル軸に伝達する伝達機構として平行軸ギヤ列を用いた特許文献1の技術では、各ギヤの配置の自由度が低いため、スロットル装置のコンパクト化が妨げられると共に、ギヤ収容室内でのセンサ類の設置位置が制限されてしまうという問題があった。
【0033】
その主要因は、上述のように、平行軸ギヤ列では、所期の減速比を達成するために各ギヤのおよその径が定まり、且つそれぞれの径を前提とした互いの噛合により、およその軸間距離も定まってしまうためである。また、このような配置の自由度とは別に、例えば特許文献1の図1に示すように、平行軸ギヤ列では、スロットル軸に沿った方向から見たときに各ギヤが円形状若しくは扇状をなして大きな投影面積を有し、この点もスロットル装置のコンパクト化やセンサ類の設置を妨げる要因になっている。
【0034】
以上の不具合を鑑みて本発明者は、モータ9の出力軸9aの回転をスロットル軸3に伝達する伝達機構8を1次伝達機構27と2次伝達機構28とに区分けし、1次伝達機構27を平行軸ギヤ列とは別の構成とする対策を見出した。この第1実施形態では、1次伝達機構27としてベベルギヤ機構27-1を採用しており、以下、ベベルギヤ機構27-1を含めた伝達機構8の構成を説明する。
【0035】
〈伝達機構8〉
まずベベルギヤ機構27-1について説明する。図4,6,8,9に示すようにスロットルボディ5の右側面14上において、モータ9の出力軸9aの直上位置、詳しくは出力軸9aと前後方向で一致し、且つスロットル軸3よりも上方位置には、モータ9の出力軸線Cmと平行な軸線Cidに沿った姿勢で1次アイドラ軸29が立設されている。モータ9の出力軸9aには駆動ベベルギヤ30が固定され、1次アイドラ軸29には被動ベベルギヤ31が回転可能に支持され、駆動ベベルギヤ30と被動ベベルギヤ31との間にはベベルユニット32が掛け渡された姿勢で配設されている。また、被動ベベルギヤ31の左側には、より小径のピニオンギヤ33が一体形成されている。駆動ベベルギヤ30が本発明の駆動伝達体に相当し、被動ベベルギヤ31が本発明の被動伝達体に相当し、ベベルユニット32が本発明の中間伝達体に相当するものである。
【0036】
ベベルユニット32は、上下方向に延設されたベベル軸32aの下端に入力ベベルギヤ32bを固定し、上端に出力ベベルギヤ32cを固定してなる。入力ベベルギヤ32bが駆動ベベルギヤ30に噛合し、出力ベベルギヤ32cが被動ベベルギヤ31に噛合し、これによりベベルギヤ機構27-1が構成されている。結果としてベベルユニット32は、駆動ベベルギヤ30と被動ベベルギヤ31とを結ぶ上下方向に長尺な形状を有している。カバー部材7に一体形成された軸受部34にベベル軸32aが回転可能に支持され、駆動ベベルギヤ30と被動ベベルギヤ31とを結ぶ上下方向に沿った軸線Cgを中心として、ベベルユニット32全体が回転するようになっている。
【0037】
従って、モータ9が作動して駆動ベベルギヤ30が回転すると、その回転が入力ベベルギヤ32bに伝達されて軸線Cgを中心としてベベルユニット32が回転し、出力ベベルギヤ32cから被動ベベルギヤ31へと回転が伝達される。即ち、駆動ベベルギヤ30の回転は、軸線Cgを中心としたベベルユニット32の回転運動を介して被動ベベルギヤ31に回転として伝達される。このときの回転伝達は、モータ9の出力軸9aの回転方向に応じて正逆両方向で行われ、この点は、以下に述べる第2及び第3実施形態の1次伝達機構27-2,27-3でも同様である。
なお、駆動ベベルギヤ30、ベベルユニット32の入力ベベルギヤ32b及び出力ベベルギヤ32cの径はほぼ等しいが、これに対して被動ベベルギヤ31の径は若干大きいため、このベベルギヤ機構27-1による回転伝達は多少の減速を伴って行われる。
【0038】
次いで、2次伝達機構28について述べると、図4,8,9に示すようにスロットルボディ5の右側面14上において、1次アイドラ軸29よりも後方位置で且つ僅かに下方位置には、モータ9の出力軸9aと平行な姿勢で2次アイドラ軸35が立設されている。2次アイドラ軸35には中間ギヤ36が回転可能に支持され、スロットル軸3には最終ギヤ37が固定されている。中間ギヤ36は、右側の大径部36aと左側の小径部36bとを一体形成してなり、大径部36aが被動ベベルギヤ31のピニオンギヤ33と噛合し、小径部36bが最終ギヤ37と噛合している。
【0039】
従って、被動ベベルギヤ31の回転は、ピニオンギヤ33から中間ギヤ36の大径部36aに伝達されて減速され、小径部36bから最終ギヤ37に伝達されて減速される。結果としてモータ9の出力軸9aの回転は、1次伝達機構27で1段、2次伝達機構28で2段の計3段階の減速を経てスロットル軸3に伝達されてスロットル弁4を開閉させる。なお、バタフライ式のスロットル弁4が全開と全閉との間で開閉するときの角度領域は90°より若干小さいため、最終ギヤ37は、中間ギヤ36の小径部36bとの噛合のために必要な領域だけに歯が形成された扇状をなしている。
【0040】
〈ベベルギヤ機構27-1により得られる作用効果〉
上記のように構成されたベベルギヤ機構27-1は、伝達機構8を構成する各ギヤの配置に関する自由度を向上させると共に、例えば特許文献1等に記載の平行軸ギヤ列に比較して、右方視における投影面積を縮小する役割を果たしている。以下、これらの作用効果について説明する。
【0041】
ベベルギヤ機構27-1による回転伝達の機能は、例えば図4中の左側に示すようにベベルユニット32のベベル軸32aを延長しても、右側に示すようにベベル軸32aを短縮しても、何ら問題なく得られる。そして、ベベル軸32aの長さを変更すれば、モータ9の出力軸9aと1次アイドラ軸29との間の軸間距離L、換言すると駆動ベベルギヤ30と被動ベベルギヤ31との間隔を任意に変更でき、それに伴って2次伝達機構28を構成する各ギヤの配置も変更できる。加えて、モータ9と共にベベルギヤ機構27-1全体の前後方向の位置を変更することも可能である。以上の要因により、伝達機構8を構成する各ギヤの配置に関する自由度が向上するのである。
【0042】
このような特徴を活かして本実施形態では、ベベルユニット32を介して駆動ベベルギヤ30と被動ベベルギヤ31とを離間配置しており、駆動ベベルギヤ30と被動ベベルギヤ31との間に形成されたスペースを利用して最終ギヤ37を配設している。これにより、最終ギヤ37に連結されているスロットル軸3がモータ9の出力軸9aに接近配置されている。これに対して特許文献1の技術では、所期の減速比を達成するために駆動ギヤと被動ギヤとの間に中間ギヤが介在しているため、この中間ギヤによりスロットル軸とモータの出力軸との接近配置が妨げられている。従って、特許文献1の技術に比較して本実施形態では、スロットルボディ5のモータ収容室10とスロットルボア2が形成された部位とを接近配置して、スロットル装置1をコンパクト化することができる。
【0043】
しかも、離間配置された駆動ベベルギヤ30と被動ベベルギヤ31との間のスペースは、センサ類の設置、詳しくは、機構室6を貫通する吸気温センサ18と吸気圧センサ19の圧力通路21との設置にも利用されている。
【0044】
吸気温や吸気圧の検出のために吸気温センサ18及び圧力通路21のそれぞれの先端はスロットルボア2内に臨んでおり、これらの吸気温センサ18及び圧力通路21の基端はカバー部材7に接続されている。スロットル装置1を簡素な構造とするには、吸気温センサ18及び圧力通路21を単純な直線状とすることが望ましく、必然的に機構室6内においてはスロットル軸3の周辺に配設されることになる。
【0045】
詳しくは図4の右方視において、即ち本発明の「スロットル軸に沿った方向」から見た場合において、吸気温センサ18はスロットル軸線Cthよりも前方に配設されている。結果として吸気温センサ18は、スロットルボア2のスロットル弁4より上流側の吸気温度を検出する位置に配設されている。また、吸気圧センサ19はスロットル軸線Cthよりも後方且つ下方に配設され、それに伴って圧力通路21もスロットル軸線Cthよりも後方且つ下方に配設されている。結果として圧力通路21は、スロットルボア2のスロットル弁4より下流側の吸気負圧を検出する位置に配設されている。
【0046】
このような機構室6内での吸気温センサ18及び圧力通路21の適切な配置を優先した場合、図4の右方視において、これらの吸気温センサ18及び圧力通路21を避けた位置に1次伝達機構27及び2次伝達機構28を配設する必要が生じる。この要求は、上記したベベルユニット32を介して駆動ベベルギヤ30と被動ベベルギヤ31とを離間させ、その間に最終ギヤ37を設けた配置により達成されている。
【0047】
詳しくは、スロットル軸線Cthよりも前方に配設された吸気温センサ18は、結果としてベベルユニット32に近接することになる。しかしながら、ベベル軸32aの両端にベベルギヤ32b,32cを設けた形状のベベルユニット32は、元々図4に示す右方視の投影面積が小さい。また、ベベル軸32aの長さ変更や前後方向の位置変更により、吸気温センサ18との相対位置を調整することも容易である。このため、吸気温センサ18を避けた位置にベベルユニット32を配設することが可能となる。
【0048】
また、スロットル軸線Cthよりも後方且つ下方に配設された圧力通路21は、結果として最終ギヤ37に近接することになる。しかしながら、最終ギヤ37は、上方に配設された中間ギヤ36の小径部36bとの噛合のために、歯が形成された円弧部分を上側とした扇状をなしており、換言すると、主としてスロットル軸線Cthよりも上側の領域で回動する。このため、圧力通路21を避けた位置に最終ギヤ37を配設することが可能となる。以上の理由により、吸気温センサ18及び圧力通路21を適切な位置に保ったまま、これらの部材18,21を避けた位置に1次伝達機構27及び2次伝達機構28を配設して干渉防止をすることができる。
【0049】
仮に特許文献1のスロットル装置において、ギヤ収容室内にセンサ類を設置する場合には、主として中間ギヤとの干渉を防止する必要が生じる。しかしながら、所期の減速比の達成のために中間ギヤを大きく位置変更することは困難であり、且つスロットル軸に沿った方向から見たときに中間ギヤは円形状をなして大きな投影面積を有する。このため、中間ギヤを避けてセンサ類を適切に配設することは困難であり、干渉防止のために不適切な位置にセンサ類を設置せざるを得ない。このように本実施形態のスロットル装置1は、機構室6内へのセンサ類の搭載性にも優れている。
【0050】
一方、上記のように駆動ベベルギヤ30と被動ベベルギヤ31との間に最終ギヤ37を設けた配置を保った上で、ベベル軸32aの長さを変更できる。
【0051】
図4中の左側の仕様では、ベベルユニット32のベベル軸32aの延長により、駆動ベベルギヤ30と被動ベベルギヤ31との間のスペースが上下方向に拡大されている。これにより伝達機構8への干渉を防止した上で、機構室6内において吸気温センサ18及び圧力通路21を配設可能な領域が拡大されている。
【0052】
上記のように機構室6内において吸気温センサ18及び圧力通路21はスロットル軸3の周辺に配設されるが、例えば他の部材との干渉防止等を目的として、スロットル軸3からある程度離間した位置に配設されることもあり得る。このような場合には拡大した領域を利用して、例えば図中に二点鎖線で示すように吸気温センサ18及び圧力通路21をそれぞれ下方に位置変更できる。結果として、この仕様においては、機構室6内へのセンサ類の搭載性を一層向上することができる。
【0053】
また右側の仕様では、吸気温センサ18及び圧力通路21との干渉を防止した上で、ベベルユニット32のベベル軸32aの短縮により、駆動ベベルギヤ30と被動ベベルギヤ31との間のスペースが縮小されている。このため図4,5に示すように、左側の仕様に比較して、モータ9の出力軸9aとスロットル軸3との間の軸間距離が寸法L1だけ縮小され、スロットルボディ5のモータ収容室10とスロットルボア2が形成された部位とが一層接近配置されている。このためモータ収容室10とスロットルボア2が形成された部位との間にリブ38を形成し、このリブ38を介して一体化することができる。
【0054】
スロットル装置1には車両の走行振動やエンジンの振動等が常に入力され、特に重量物であるモータ9を収容したモータ収容室10とスロットルボア2が形成された部位との結合箇所には、振動に起因する応力が集中し易い。リブ38を介した一体化により、スロットルボア2が形成された部位に対するモータ収容室10のオーバーハングが図5中のL2からL3に縮小される。これにより結合箇所にクラックが発生する等のトラブルが未然に防止され、スロットル装置1の耐震性を向上できるという別の利点が得られる。
【0055】
このように、スロットル装置1が使用される状況や要求に応じてベベル軸32aの長さを変更できる。ただし、ベベル軸32aの長さ変更したとしても、センサ類の搭載の邪魔にはならない。
【0056】
《第2実施形態》
次いで、第2実施形態を説明する。第1実施形態との相違点は、1次伝達機構27の構成にあり、その他の構成、例えばスロットルボディ5の基本構成や2次伝達機構28等は第1実施形態と同一であるため、重複する説明は省略して相違点を重点的に述べる。
【0057】
本実施形態では、1次伝達機構27としてベルト機構27-2を採用している。図10~12に示すように、機構室6内において、モータ9の出力軸9aには駆動プーリ101が固定され、1次アイドラ軸29には被動プーリ102が回転可能に支持されている。駆動プーリ101と被動プーリ102との間には無端状ベルト103が掛け渡された姿勢で配設され、これによりベルト機構27-2が構成されている。詳しくは、無端状ベルト103の下部が駆動プーリ101の外周に巻回され、無端状ベルト103の上部が被動プーリ102の外周に巻回されている。このため無端状ベルト103は、駆動プーリ101と被動プーリ102とを結ぶ上下方向に長尺な形状を有して、両プーリ101,102間に弛みなく張架されている。
【0058】
駆動プーリ101が本発明の駆動伝達体に相当し、被動プーリ102が本発明の被動伝達体に相当し、無端状ベルト103が本発明の中間伝達体に相当するものである。なお、無端状ベルト103としては、歯や突起を有して各プーリ101,102との間に滑りを生じないコグドベルト、或いは歯や突起を有しないベルト、或いはチェーンを用いてもよい。
【0059】
従って、モータ9が作動して駆動プーリ101が回転すると、その回転を受けて、無端状ベルト103が駆動プーリ101と被動プーリ102との間で環状の軌跡を辿って走行して被動プーリ102を回転させる。なお、駆動プーリ101に対して被動プーリ102の径は若干大きいため、このベルト機構27-2による回転伝達は多少の減速を伴って行われる。
【0060】
ベルト機構27-2により得られる作用効果は、第1実施形態のベベルギヤ機構27-1と共通する。即ち、無端状ベルト103の長さを変更すれば、モータ9の出力軸9aと1次アイドラ軸29との間の軸間距離Lを変更でき、ベルト機構27-2全体の前後位置も変更可能なため、伝達機構8を構成する各ギヤの配置に関する自由度を向上できる。また無端状ベルト103は、図10に示す右方視の投影面積が小さく、且つ図10に示すように無端状ベルト103の環内に吸気温センサ18を配置することも可能である。このような特徴を活かして本実施形態においても、無端状ベルト103を介して駆動プーリ101と被動プーリ102とを離間配置し、その間に形成されたスペースを利用して最終ギヤ37を配設しており、第1実施形態と同様の作用効果を達成することができる。
【0061】
《第3実施形態》
次いで、第3実施形態を説明する。第1実施形態との相違点は、1次伝達機構27の構成にあり、その他の構成、例えばスロットルボディ5の基本構成や2次伝達機構28等は第1実施形態と同一であるため、重複する説明は省略して相違点を重点的に述べる。
【0062】
本実施形態では、1次伝達機構27としてリンク機構27-3を採用している。図13~15に示すように、機構室6内において、モータ9の出力軸9aには円形状の駆動アーム部材201が固定され、駆動アーム部材201上のモータ9の出力軸9aから偏心した位置には連結ピン201aが立設されている。また、1次アイドラ軸29には円形状の被動アーム部材202が回転可能に支持され、被動アーム部材202上の1次アイドラ軸29から偏心した位置には連結ピン202aが立設されている。
【0063】
駆動アーム部材201と被動アーム部材202との間には、上下方向に延びる連結ロッド203が掛け渡された姿勢で配設され、これによりリンク機構27-3が構成されている。詳しくは、連結ロッド203の下端が駆動アーム部材201の連結ピン201aに相対回転可能に軸支され、連結ロッド203の上端が被動アーム部材202の連結ピン202aに相対回転可能に軸支されている。このため連結ロッド203は、駆動アーム部材201と被動アーム部材202とを結ぶ上下方向に長尺な形状を有している。
【0064】
駆動アーム部材201が本発明の駆動伝達体に相当し、被動アーム部材202が本発明の被動伝達体に相当し、連結ロッド203が本発明の中間伝達体に相当し、連結ピン201a,202aが本発明の連結点に相当するものである。なお連結点は、連結ピン201a,202aに限るものではなく、例えば、各アーム部材201,202の偏心位置にそれぞれ連結点として連結孔を貫設し、連結ロッド203の上下両端をそれぞれ相対回転可能に軸支してもよい。
【0065】
駆動アーム部材201上の連結ピン201aの偏心量と被動アーム部材202上の連結ピン202aの偏心量とは等しく、且つ連結ロッド203の上下の軸支箇所の間の距離は、モータ9の出力軸9aと1次アイドラ軸29と間の軸間距離Lと等しく設定されている。また、スロットル弁4を全閉と全開との間で開閉するために必要なモータ9の出力軸9aの回転量は1回転以上である。
【0066】
従って、モータ9が作動して駆動アーム部材201が回転すると、連結ロッド203は駆動アーム部材201と被動アーム部材202との間で往復運動して被動アーム部材202を回転させる。詳しくは、図13中の左側のスロットル装置1において、駆動アーム部材201が矢印で示す反時計回りに回転すると、実線で示すように連結ロッド203が上方に変位しながら被動アーム部材202を回転させ、その後に二点鎖線で示すように連結ロッド203が下方に変位しながら被動アーム部材202を回転させ、この動作を繰り返す。この原理から判るように、本実施形態のリンク機構27-3による回転伝達は、減速を伴わない等速で行われる。
【0067】
リンク機構27-3により得られる作用効果は、第1実施形態のベベルギヤ機構27-1と共通する。即ち、連結ロッド203の長さを変更すれば、モータ9の出力軸9aと1次アイドラ軸29との間の軸間距離Lを変更でき、リンク機構27-3全体の前後位置も変更可能なため、伝達機構8を構成する各ギヤの配置に関する自由度を向上できる。また、連結ロッド203は上下方向の往復運動に伴って左右にも変位するが、この点を考慮しても図13に示す右方視の投影面積が小さい。このような特徴を活かして本実施形態においても、連結ロッド203を介して駆動アーム部材201と被動アーム部材202とを離間配置し、その間に形成されたスペースを利用して最終ギヤ37を配設しており、第1実施形態と同様の作用効果を達成することができる。
【0068】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、原動機付き自転車に搭載される単一のスロットルボア2を備えたスロットル装置1に具体化したが、用途やスロットル装置1の形式については、これに限るものではない。本発明は、運転者がサドルに跨って搭乗するいわゆる鞍乗り型車両の全般に適用可能であり、この種の鞍乗り型車両としては、スクーターやモペット等の小排気量エンジンを搭載した2輪車(原動機付き自転車等)のみならず、より大排気量のエンジンを搭載した2輪車(自動二輪車等)、或いは4輪バギー等のATV(All Terrain Vehicle)等が存在する。従って、これらの各種車両に走行用動力源として搭載されるエンジンを対象として、本発明のスロットル装置を任意に適用することができる。また、走行用動力源以外の用途で利用されるエンジン、例えば発電機用のエンジン等に本発明のスロットル装置を適用してもよい。さらに、複数のスロットルボアを備えた多連スロットル装置として具体化してもよい。
【0069】
また上記実施形態では、カバー部材7に吸気温センサ18及び吸気圧センサ19を設け、機構室6を貫通して吸気温センサ18及び圧力通路21を配設したが、これに限るものではない。吸気温センサ18と吸気圧センサ19との何れかを省略したり、或いは、エンジン制御からの要請等に応じて他のセンサ、例えばスロットル開度を検出するスロットル開度センサ等を追加したりしてもよい。スロットル開度センサを追加した場合には、機構室6内においてスロットル軸線Cth上に配設されるため、伝達機構8との干渉防止を図る必要があるが、上記実施形態によれば、伝達機構8を構成する各ギヤの配置を変更することにより容易に干渉防止できる。
【0070】
また、例えば各センサ18,19をスロットルボディ5側に設けてもよい。この場合には、伝達機構8との干渉防止を図る必要はなくなるものの、モータ収容室10とスロットルボア2が形成された部位とを接近配置してコンパクト化できる点等については上記実施形態と同様に達成できる。
【0071】
また上記実施形態では、スロットル軸3、モータ9の出力軸9a、1次アイドラ軸29及び2次アイドラ軸35を互いに平行に配置したが、必ずしもこれに限るものではない。1次伝達機構27に関係するモータ9の出力軸9aと1次アイドラ軸29とを平行に配置しさえすれば、他の軸3,35については平行以外の配置としてもよい。
【0072】
また、例えば第1実施形態では、駆動ベベルギヤ30と被動ベベルギヤ31とを離間配置して、その間に形成されたスペースに最終ギヤ37を配設し、他の実施形態も同様の配置を採用したが、これに限るものではない。例えば第1実施形態に基づき例示すると、ベベルユニット32のベベル軸32aを短縮して駆動ベベルギヤ30と被動ベベルギヤ31とを接近配置し、被動ベベルギヤ31の上側に形成されたスペースを利用して中間ギヤ36と共に最終ギヤ37を配設してもよい。また、駆動ベベルギヤ30と被動ベベルギヤ31とを離間配置して形成されたスペースに、最終ギヤ37のみならず中間ギヤ36も配設してもよい。他の実施形態でも同様の配置を採用してもよい。
【0073】
また上記実施形態では、2次アイドラ軸35に支持した中間ギヤ36の大径部36aをピニオンギヤ33に噛合させ、小径部36bを最終ギヤ37に噛合させて2段減速の2次伝達機構28を構成したが、これに限るものではない。例えば中間ギヤ36を省略し、ピニオンギヤ33を最終ギヤ37に直接噛合させて1段減速の2次伝達機構28を構成してもよい。また、ギヤ列以外の機構で2次伝達機構28を構成してもよく、例えば各実施形態で1次伝達機構27として採用したベベルギヤ機構27-1、ベルト機構27-2、リンク機構27-3の何れかを2次伝達機構28としてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 スロットル装置
2 スロットルボア
3 スロットル軸
4 スロットル弁
5 スロットルボディ
6 機構室
7 カバー部材
9 モータ
9a 出力軸
10 モータ収容室
14 右側面
18 吸気温センサ
19 吸気圧センサ
21 圧力通路
29 1次アイドラ軸
27 1次伝達機構
27-1 ベベルギヤ機構(1次伝達機構)
27-2 ベルト機構(1次伝達機構)
27-3 リンク機構(1次伝達機構)
28 2次伝達機構
30 駆動ベベルギヤ(駆動伝達体)
31 被動ベベルギヤ(被動伝達体)
32 ベベルユニット(中間伝達体)
32a ベベル軸
32b 入力ベベルギヤ
32c 出力ベベルギヤ
37 最終ギヤ
101 駆動プーリ(駆動伝達体)
102 被動プーリ(被動伝達体)
103 無端状ベルト(中間伝達体)
201 駆動アーム部材(駆動伝達体)
201a,202a 連結ピン(連結点)
202 被動アーム部材(被動伝達体)
203 連結ロッド(中間伝達体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15