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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】油性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20231212BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20231212BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/89
A61K8/73
A61Q1/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020531393
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2019028530
(87)【国際公開番号】W WO2020017650
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2018136248
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】岡本 寛史
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/008238(WO,A1)
【文献】特開2002-154918(JP,A)
【文献】特開2009-203212(JP,A)
【文献】特開2009-263329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)~(e)を含むことを特徴とする油性化粧料。
(a)架橋型オルガノポリシロキサン 3~7質量%
(b)不定形無水珪酸 0.5~7質量%
(c)糖骨格を有する油性ゲル化剤 5質量%以上、8質量%未満
(d)液状油分
(e)粉末 8~38質量%
【請求項2】
請求項1に記載の油性化粧料において、(d)液状油分にシリコーン油および極性油分を含むことを特徴とする油性化粧料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の油性化粧料であることを特徴とする唇用化粧料。

【発明の詳細な説明】
【関連技術】
【0001】
本出願は、2018年 7月19日付け出願の日本国特許出願2018-136248号の優先権を主張しており、ここに折り込まれるものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、油性化粧料に関し、特にマット感を有し、安定性が良好な油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0003】
化粧料を塗布した肌や唇の質感は、つや感とマット感を付与するものに大きく二分される。これらのうち、部分架橋型オルガノポリシロキサンと、固形油および/または半固形油を配合した油性固型化粧料が知られている(特許文献1参照)。しかし、マット感に改善の余地があった。
また、架橋型オルガノポリシロキサンおよび不定形無水珪酸を配合した油性化粧料も知られている(特許文献2参照)。しかし、マット感や安定性に改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-281532号公報
【文献】特開2002-154918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記従来技術に鑑み行われたものであり、その解決すべき課題は、マット感を有し、安定性が良好な油性化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが前述の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定量の(a)架橋型オルガノポリシロキサン、(b)不定形無水珪酸、(c)糖骨格を有する油性ゲル化剤、(d)液状油分、(e)粉末を含むことにより、マット感に優れ、安定性が良好な油性化粧料を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明にかかる油性化粧料は、次の成分(a)~(e)を含むことを特徴とする油性化粧料。
(a)架橋型オルガノポリシロキサン
(b)不定形無水珪酸
(c)糖骨格を有する油性ゲル化剤
(d)液状油分
(e)粉末
前記油性化粧料において、(c)糖骨格を有する油性ゲル化剤の配合量が1~15質量%であることが好適である。
前記油性化粧料において、(d)液状油分にシリコーン油および極性油分を含むことが好適である。
本発明にかかる唇用化粧料は、前記油性化粧料であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マット感を有し、安定性が良好な油性化粧料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明にかかる油性化粧料は、次の成分(a)~(e)を含むことを特徴とする。
(a)架橋型オルガノポリシロキサン
(b)不定形無水珪酸
(c)糖骨格を有する油性ゲル化剤
(d)液状油分
(e)粉末
【0010】
((a)架橋型オルガノポリシロキサン)
架橋型オルガノポリシロキサンとしては、白金触媒存在下で、(a)1分子当たり少なくとも2つの低級アルケニル基を持つオルガノポリシロキサン、及び(b)1分子当たり少なくとも2つのケイ素原子に結合した水素原子を持つオルガノポリシロキサンの付加反応と架橋反応によって得られた架橋型オルガノポリシロキサンを使用することができる。
また、その他に以下の架橋型オルガノポリシロキサンを使用することもできる。
【0011】
(1)R2SiO単位,RSiO1.5単位、R3SiO0.5単位及びSiO2単位のうち少なくとも、R2SiO単位,RSiO1.5単位及びR3SiO0.5単位を含んだ架橋型オルガノポリシロキサンであって、Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、及びプロピル基等のアルキル基、もしくはフェニル基、及びトリメチル基等のアリール基、またはビニル基等の不飽和脂肪族基等を表し、R2SiO単位のRSiO1.5単位に対する重量比が1~30:1の範囲にある架橋型オルガノポリシロキサン。
【0012】
(2)(c)オルガノヒドロポリシロキサンと、(d)不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンとの付加によって得られることができ、(c)及び(d)の水素又は不飽和脂肪族基の量がそれぞれ、オルガノポリシロキサンが非環状の場合は1~20モル%、オルガノポリシロキサンが環状の場合は1~50モル%の範囲にある架橋型オルガノヒドロポリシロキサン。
【0013】
架橋型オルガノポリシロキサンとして、架橋型アルキルアリールポリシロキサン及び架橋型アルキルポリシロキサンを用いることが好ましい。架橋型アルキルアリールポリシロキサンとして、例えば炭素数が1~5のアルキル基及び炭素数が6~10のアリール基を有する架橋型オルガノポリシロキサンを挙げることができる。具体例としては、例えば、メチルフェニルポリシロキサン、及びエチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0014】
架橋型アルキルポリシロキサンとしては、例えば炭素数が1~5のアルキル基を有する架橋型モノアルキルポリシロキサン及び架橋型ジアルキルポリシロキサンを挙げることができる。具体例としては、例えば架橋型モノメチルポリシロキサン、架橋型ジメチルポリシロキサン、架橋型モノエチルポリシロキサン、架橋型ジエチルポリシロキサン、及び架橋型メチルエチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0015】
架橋型アルキルポリシロキサンの市販品としては、ジメチルポリシロキサンと部分架橋型シリコーンとの混合物(16重量%濃度)であるDow Corning 9041 Silicone Elastomer Blend(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、デカメチルシクロペンタシロキサンと架橋型メチルポリシロキサンとの混合物(5重量%濃度)であるペースト状のKSG15(信越化学工業株式会社製)、低粘度ジメチルポリシロキサンと架橋型メチルポリシロキサンとの混合物(20~30重量%濃度)であるペースト状のKSG16(信越化学工業株式会社製)、メチルフェニルポリシロキサンと架橋型メチルフェニルポリシロキサンとの混合物(10~20重量%濃度)であるペースト状のKSG18(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。これらの架橋型オルガノポリシロキサンは、一種または二種以上を用いることができる。
【0016】
本発明における架橋型オルガノポリシロキサンの配合量は、純分として、油性化粧料全量中1~10質量%であることが好ましい。また、配合量は3質量%以上がより好ましい。配合量が1質量%未満であると、十分なマット感が得られない。
また、配合量は8質量%以下であることがより好ましい。配合量が10質量%を超えると、塗布時のなめらかさが損なわれる場合がある。
【0017】
((b)不定形無水珪酸)
不定形無水珪酸としては、四塩化珪素を水素・酸素炎中で加水分解して得られた、親水性の不定形無水珪酸、及び前記親水性の不定形無水珪酸の表面を疎水化処理した不定形無水珪酸を挙げることができる。前記不定形無水珪酸は、親水性でも疎水化された不定形無水珪酸でもかまわない。前記疎水化処理の方法としては、トリメチルシリルクロライド、及びヘキサメチルジシラザン等によるトリメチルシロキシ化処理、ジメチルジクロロシランによるメチル化処理、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いたコーティング焼き付け処理、ジメチルポリシロキサン、金属石鹸等によるコーティング等が挙げられる。これらの不定形無水珪酸は、一種または二種以上を用いることができる。
【0018】
不定形無水珪酸の平均粒子径は、0.001~0.05μmであることが好ましく、0.001~0.02μmであることがより好ましい。平均粒子径が前記範囲内であると、きしみが生じることのない良好な使用感と、油分が分離することない良好な安定性が得られる。この不定形微粒子無水珪酸の平均粒子径は透過型電子顕微鏡によって測定することができる。
【0019】
不定形無水珪酸の市販品としては、例えば、アエロジル200(日本アエロジル株式会社製)、アエロジル300(日本アエロジル株式会社製)、アエロジルR972(日本アエロジル株式会社製)、アエロジルR974(日本アエロジル株式会社製)、アエロジルR202(日本アエロジル株式会社製)、アエロジルRY200(日本アエロジル株式会社製)、タラノックス500(タルコ社製)等が挙げられる。
【0020】
不定形無水珪酸の配合量は、油性化粧料全量中0.1~10質量%であることが好ましい。また、配合量は0.5質量%以上がより好ましい。配合量が0.1質量%未満であると、充分なマット感が得られない。
また、配合量は7質量%以下であることがより好ましい。配合量が5質量%を超えると、塗布時のなめらかさが損なわれる場合がある。
【0021】
((c)糖骨格を有する油性ゲル化剤)
糖骨格を有する油性ゲル化剤は、通常化粧料に使用できるものであればいずれも使用できる。具体例としては、例えば、デキストリン脂肪酸エステル、フラクトオリゴ糖脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
(a)成分と(b)成分で増粘させた化粧料は離油しやすいという欠点を有していたが、本発明の糖骨格を有する油性ゲル化剤を配合することで、安定性や高温安定性に優れた油性化粧料を得ることができる。
【0022】
本発明の糖骨格を有する油性ゲル化剤を構成する糖としては、糖又はアルキル糖を挙げることができ、単糖から多糖まで用いることができる。単糖やオリゴ糖、多糖としては特に制限されるわけではないが、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、ショ糖、ラクトース、マルトース、トレハロース、メリビオース、ラフィノース、フラクトオリゴ糖、デキストリン、イヌリン等を挙げることができる。 そして、これらの糖又はアルキル糖と脂肪酸との反応によって得られるエステル化合物を油性ゲル化剤として用いることが好ましい。
【0023】
脂肪酸としては、炭素数6~32の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、更に炭素数8~24のものが好ましい。脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、2-エチルヘキサン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、オクチルドデカン酸等が挙げられる。
【0024】
好ましい糖骨格を有する脂肪酸エステルの油性ゲル化剤としては、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルを挙げることができる。
【0025】
デキストリン脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数6~32の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和脂肪酸とデキストリンとのエステルで、その平均置換度が一単糖あたり2.5以上のものが好ましい。
【0026】
具体例としては、例えば、パルミチン酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、パルミチン酸/ステアリン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、イソパルミチン酸デキストリン、イソステアリン酸デキストリン等が挙げられる。
【0027】
市販品としては、パルミチン酸デキストリンとしては、レオパールKL2、レオパールTL2(いずれも千葉製粉社製)、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリンとしては、レオパールTT2(千葉製粉社製)、ミリスチン酸デキストリンとしては、レオパールMKL2(千葉製粉社製)等が挙げられる。
【0028】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数6~32の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和脂肪酸とショ糖とのエステルで、その平均置換度が2.5以上のものが好ましい。
【0029】
糖骨格を有する油性ゲル化剤の配合量は、油性化粧料全量中1~15質量%であることが好ましい。糖骨格を有する油性ゲル化剤の配合量を1~15質量%とすることにより、マット感がありながら、塗布時のなめらかさがあり、高温安定性の良いペースト状の油性化粧料が得られる。また、3質量%以上であることがより好ましい。配合量が1質量%未満であると、マット感や安定性に劣る。
また、8質量%未満であることがより好ましい。配合量が15質量%を超えると、塗布時のなめらかさが損なわれる場合や、ぬるぬるとした感触になる場合がある。
【0030】
((d)液状油分)
液状油分は、化粧料に通常使用される液状油分を用いることができる。
本発明における液状油分として、シリコーン油および極性油分を配合することが好ましい。
【0031】
シリコーン油としては、例えば、重合度6以上のジメチルポリシロキサン、フェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン等の不揮発性シリコーン油、重合度2~5のジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルトリメチコン、ジメチルポリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、エチルトリシロキサン等の揮発性シリコーン油等が挙げられる。
【0032】
極性油分としては、例えば、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリ(カプリル/カプリン)酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、セバシン酸ジエチルヘキシル、オクチルドデカノール、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、オキシステアリン酸オキシステアリル、テトラ(エチルヘキサン酸/安息香酸)ペンタエリスリチル、トリオクタノイン、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヒマシ油、セバシン酸ジイソプロピル、テトラオクタン酸ペンタエリスリット、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0033】
シリコーン油、極性油分以外の不揮発性液状油分としては、例えば、炭化水素油、天然動植物油及び半合成油等が挙げられる。
【0034】
炭化水素油としては、水添ポリイソブテン、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、重質流動イソパラフィン、ポリイソブチレン、α-オレフィンオリゴマー等が挙げられる。
天然動植物油及び半合成油としては、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、オリーブ油、カヤ油、肝油、キョウニン油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サザンカ油、サフラワー油、シナギリ油、シナモン油、タートル油、大豆油、茶実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、ナタネ油、日本キリ油、胚芽油、パーシック油、パーム油、レッドパーム油、パーム核油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、綿実油、ヤシ油、トリヤシ油脂肪酸グリセライド、落花生油、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、卵黄油等が挙げられる。
【0035】
揮発性シリコーン油以外の揮発性油分としては、軽質流動イソパラフィン等が挙げられる。
【0036】
液状油分の配合量は、油性化粧料全量中40~90質量%であることが好ましい。また、50質量%以上であることがより好ましい。配合量が40質量%未満であると、しっとり感が不足する。
また、80質量%未満であることがより好ましい。配合量が90質量%を超えると、マット感が不足する。
【0037】
((e)粉末)
粉末は、化粧料に一般的に使用されているものであれば特に制限されず使用することができる。
粉末としては、例えば、球状粉末、板状粉末、色材等が挙げられる。
【0038】
本発明に用いられる球状粉末は、油性化粧料に一般的に使用されているものであれば特に制限されず使用することができる。
球状粉末としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、オルガノポリシロキサンエラストマー、ポリスチレン、ポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリエチレン、スチレンとアクリル酸の共重合体、ベンゾグアナミン樹脂、ポリ四フッ化エチレン、シリコーン樹脂等の球状樹脂粉末が挙げられる。
【0039】
本発明の粉末には、板状粉末を配合することもできる。板状粉末の短径と長径の比率は、短径1に対して長径10以上が好ましい。
板状粉末としては、例えば、マイカ、合成マイカ、タルク、セリサイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウムマグネシウム、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等の無機粉体類、N-アシルリジン等の有機粉体類、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化亜鉛被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン等の複合粉体類等が挙げられる。
【0040】
また、本発明にかかる化粧料には、色材を配合することもできる。色材は、製剤を着色することを目的に配合されるものである。色材としては、顔料、パール顔料、これらをレーキ化したものなど、油性化粧料に通常配合されるものを使用することができる。
【0041】
色材としては、例えば、無機白色系顔料(二酸化チタン、酸化亜鉛)、無機赤色系顔料(酸化鉄(べンガラ)、チタン酸鉄)、無機褐色系顔料(γ-酸化鉄)、無機黄色系顔料(黄酸化鉄、黄土)、無機黒色系顔料(黒酸化鉄、カーボン、低次酸化チタン)、無機紫色系顔料(マンゴバイオレット、コバルトバイオレット)、無機緑色系顔料(酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト)、無機青色系顔料(群青、紺青)、パール顔料(酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔)、金属粉末顔料(アルミニウムパウダー、カッパーパウダー)、有機顔料(赤色202号、赤色205号、赤色220号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、青色404号)、ジルコニウム、バリウム、アルミニウムレーキの有機顔料(赤色3号、赤色104号、赤色227号、赤色401号、橙色205号、黄色4号、黄色202号、緑色3号、青色1号)、天然色素(クロロフィル、カルチノイド系(β-カロチン)、カルサミン、コチニール、カルコン、クルクミン、ベタニン、フラボノール、フラボン、アントシアニジン、アントラキノン、ナフトキノン)、機能性顔料(窒化ホウ素、フォトクロミック顔料、合成フッ素金雲母、鉄含有合成フッ素金雲母、微粒子複合粉体(ハイブリッドファインパウダー))等が挙げられる。
【0042】
粉末の配合量は、油性化粧料全量中0.1~40質量%であることが好ましい。また、5質量%以上であることがより好ましく、8質量%以上がさらに好ましい。配合量が0.1質量%未満であると、充分なマット感が得られない場合がある。
また、38質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であるとより滑らかである点においてさらに好ましい。配合量が40質量%を超えると、塗布時のなめらかな感触が損なわれる場合がある。
【0043】
本発明にかかる油性化粧料には、上記必須成分以外に、通常化粧料に使用される成分、例えば、半固形油分、固形油分、界面活性剤、皮膜剤、保湿剤、紫外線吸収剤、美容成分、繊維、香料等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0044】
半固形油分としては、例えば、ワセリン、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ダイマージリノール酸エステル、マカダミアナッツ油ポリグリセリル-6エステルズベヘネート、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2等が挙げられる。
半固形油分の含有量は、30質量%以下が好ましい。半固形油分を配合することにより、油性化粧料の安定性や高温安定性を良好にすることができる。
【0045】
固形油分としては、固体油脂、ロウ類、固形炭化水素、高級アルコールが挙げられる。例えば、カカオ脂、硬化ヒマシ油等の固体油脂;モクロウ、カルナウバロウ、ミツロウ、サラシミツロウ、キャンデリラロウ、ホホバロウ等のロウ類:ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素ワックス;セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール等の高級アルコール;シリコーンワックス等が例示される。
固形油分の配合量は、10質量%以下が好ましい。固形油分を配当することより、油性化粧料の安定性や高温安定性を良好にすることができる。
【0046】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体等のポリオキシエチレン系界面活性剤、オクチルポリグリコシド等のアルキルポリグリコシド類、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル等のポリグリセリン系界面活性剤、マルチトールヒドロキシアルキルエーテル等の糖アルコールヒドロキシアルキルエーテル類、脂肪酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
また、高級脂肪酸塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、リン酸エステル類、アルキル硫酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類等のアニオン性界面活性剤、アミノ酸類、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアミンオキサイド等のカチオン性界面活性剤、その他の界面活性剤を配合することもできる。
【0047】
皮膜剤としては、例えば、シリコーン化プルラン、トリメチルシロキシ珪酸、ジメチルアミノメタクリレート4級化塩、ビニルピロリドン・メタクリル酸-N,N-ジメチル-エチルアンチニオエチル塩共重合体、シリコーン/ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリルアルキル)コポリマー、デキストリン、(ビニルピロリドン/VA)コポリマー、アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エチル、(アクリル酸アルキル/オクチルアクリルアミド)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸プロピルトリメチコン)コポリマー、ポリ酢酸ビニル、(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー、ポリエーテルグラフトアクリルシリコーン、トリメチルシロキシ珪酸、フロロ変成シリコーンレジン等が挙げられる。
【0048】
保湿剤としては、例えば、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等が挙げられる。
【0049】
紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等);桂皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等);3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル) ベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン等が挙げられる。
【0050】
その他の配合可能成分としては、例えば、防腐剤(エチルパラベン、ブチルパラベン等);美白剤(例えば、胎盤抽出物、ユキノシタ抽出物、アルブチン等);血行促進剤(ニコチン酸、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸β-ブトキシエステル、ミノキシジル又はその類縁体、ビタミンE類、γ-オリザノール、アルコキシカルボニルピリジンN-オキシド、塩化カルプロニウム、及びアセチルコリン又はその誘導体等);各種抽出物(例えば、ショウガ、ウバク、オウレン、シコン、バーチ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、ボタン、海藻等)、賦活剤(例えば、パンテニールエチルエーテル、ニコチン酸アミド、ビオチン、パントテン酸、ローヤルゼリー、コレステロール誘導体等);抗脂漏剤(例えば、ピリドキシン類、チアントール等)等が挙げられる。
【0051】
本発明の油性化粧料としては、例えば、リップグロス、下地用のリップベース、口紅オーバーコート、リップクリーム等の唇用化粧料、アイシャドウ、ファンデーション等が挙げられる。これらのうち、唇用化粧料であることが好ましい。
【実施例
【0052】
本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。
実施例の説明に先立ち本発明で用いた評価試験方法について説明する。
【0053】
評価(1):仕上がりのマットさ
専門パネル10名が唇に試料を塗布し、仕上がりのマット感と塗布時のなめらかさを評価した。評価は、標準品との比較で行われた。
仕上がりのマットさ:1(ない)←2(あまりない)←3(標準)→4(ややある)→5(ある)
A:平均点が4.5点以上
B:平均点が3.5点以上4.5点未満
C:平均点が2.5点以上3.5点未満
D:平均点が1.5点以上2.5点未満
E:平均点が1.5点未満
【0054】
評価(2):安定性
試料を10g、プラ壺3-100 透明(50ml)(シントー化学社製)に加温充填し、試料が固化したのち、プラ壺を横向きに固定し24時間、25℃または37℃で保存後の安定性(油漏れのなさ)を評価した。
A:油漏れが全く見られない。
B:油分の油漏れが見られる。
C:壺の上部に差し掛かるほど油漏れしている。
D:壺の上部から漏れ出るほど油漏れしている。
【0055】
本発明者らは、下記表1に示す油性化粧料(リップグロス)を常法により製造し、上記評価方法にて測定した。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
(*1):部分架橋型シリコーンのジメチルポリシロキサン膨潤組成物;Dow Corning 9041 Silicone Elastomer Blend(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)
部分架橋型シリコーン:ジメチルポリシロキサン=16:84(wt/wt)
(*2)アエロジルR972(日本アエロジル株式会社製)
【0058】
表1より、架橋型オルガノポリシロキサンおよび不定形無水珪酸を含む油性化粧料に糖骨格を有する油性ゲル化剤を配合すると、マット感および安定性を向上させることができることが明らかになった。
また、糖骨格を有する油性ゲル化剤の配合量を増やすと、高温安定性に優れた化粧料を得られることが明らかになった。
【0059】
次に、発明者らは(a)架橋型オルガノポリシロキサン、(b)不定形無水珪酸、(e)粉末に関してそれぞれの配合量を変化させた場合の評価を行った。評価方法は上記表1の方法と同じである。
結果を表2~4に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
表2から分かるように、(a)架橋型オルガノポリシロキサンを用いないと本発明の効果であるマット感も安定性も得られない。
【0062】
【表3】
【0063】
表3から分かるように(b)不定形無水珪酸を入れるとマット感が感じられるようになり、安定性がさらに向上する。
【0064】
【表4】
【0065】
表4から分かるように(e)粉末の総量が増えることによって特にマット感が向上する。
【0066】
これらの本発明者らの検討の結果、本発明にかかる油性化粧料は、(a)架橋型オルガノポリシロキサン、(b)不定形無水珪酸、(c)糖骨格を有する油性ゲル化剤、(d)液状油分、(e)粉末を含むことを特徴とする。
【0067】
以下に、本発明にかかる油性化粧料の処方例を挙げる。本発明はこの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0068】
処方例1:リップグロス
成分 配合量(重量%)
部分架橋型シリコーン膨潤組成物(*1) 30.00%
ジメチルシリル化シリカ(*2) 3.50%
パルミチン酸デキストリン 5.00%
ジメチルポリシロキサン 18.50%
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 15.00%
リンゴ酸ジイソステアリル 7.20%
ジイソステアリン酸グリセリル 3.60%
ポリメタクリル酸メチル 10.00%
色材 7.20%
【0069】
処方例2:アイシャドウ
成分 配合量(重量%)
部分架橋型シリコーン膨潤組成物(*1) 30.00%
ジメチルシリル化シリカ(*2) 3.50%
パルミチン酸デキストリン 5.00%
トリエチルヘキサノイン 16.5%
水添ポリデセン 15.0%
マイカ 18.6%
酸化鉄 10.5%
酸化チタン 0.9%