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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】新規使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20231212BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P9/04
A61K45/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020541880
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 US2019016128
(87)【国際公開番号】W WO2019152697
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】62/624,705
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/683,431
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/700,126
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・キャス
(72)【発明者】
【氏名】トオル・ハシモト
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・ウェノグル
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフ・ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・デイビス
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-523219(JP,A)
【文献】特表2014-502193(JP,A)
【文献】特表2010-510999(JP,A)
【文献】国際公開第03/064369(WO,A1)
【文献】British Journal of Pharmacology,2017年,Vol. 174, No. 15,p.2563-2575
【文献】BRODER,Howard et al.,Chemotherapy and Cardiotoxicity,Rev. Cardiovasc. Med.,2008年,vol. 9, no. 2,p. 75-83
【文献】ROSA, Gian Marco et al.,Update on cardiotoxicity of anti-cancer treatments,European Journal of Clinical Investigation,2016年,Volume 46, Issue 3,Pages 264-284
【文献】Circulation,2018年10月,Vol. 138,No. 18,p.1974-1987
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L33/
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Pubmed
DDBJ/GeneSeq/UniProt/PDB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心毒性を引き起こす治療または薬の投与の結果として生じる心毒性を治療または予防するための医薬であって、該心毒性が、アデノシンA 2 シグナル伝達障害によって特徴づけられ、
A) エナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む、遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式I':
【化1】
[式中、
(i)R1は、HまたはC1-4アルキルであり;
(ii)R4は、HまたはC1-4アルキルであり、R2およびR3は、独立して、HまたはC1-4アルキル、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシ、または(場合によってはヘテロ)アリールアルキルであるか;または
2はHであり、R3およびR4は一緒になってジ-、トリ-またはテトラメチレン架橋を形成し;
(iii)R5は、置換ヘテロアリールアルキルであるか;または
5は、式Iのピラゾロ部分の窒素の1つに結合しており、式A':
【化2】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R8、R9、R11およびR12は、独立して、Hまたはハロゲンであり、R10は、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、アリールカルボニル、アルキルスルホニル、ヘテロアリールカルボニル、またはアルコキシカルボニルである;ただし、X、YまたはZが窒素である場合、それぞれ、R8、R9またはR10は存在しない)
で示される部分であり;
(iv)R6は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、N,N-ジアリールアミノ、またはN-アリール-N-(アリールアルキル)アミノであり;
(v)nは0または1であり;
(vi)nが1である場合、Aは、-C(R1314)-であり、
ここで、R13およびR14は、独立して、HまたはC1-4アルキル、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシまたは(場合によってはヘテロ)アリールアルキルである]
で示される化合物;
B) 遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式II':
【化3】
[式中、
(i)Xは、C1-6アルキレンであり;
(ii)Yは、単結合、アルキニレン、アリーレンまたはヘテロアリーレンであり;
(iii)Zは、H、アリール、ヘテロアリール、ハロ、ハロC1-6アルキル、-C(O)-R1、-N(R2)(R3)、またはNもしくはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC3-7シクロアルキルであり;
(iv)R1は、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、-OHまたは-OC1-6アルキルであり;
(v)R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキルであり;
(vi)R4およびR5は、独立して、H、C1-6アルキルまたはアリール(これは、1個以上の、ハロ、ヒドロキシまたはC1-6アルコキシで置換されていてもよい)であり;
(vii)ここで、X、YおよびZは、独立して、1個以上の、ハロ、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキルで置換されていてもよい]
で示される化合物;
C) 遊離形態または塩形態の、式III':
【化4】
[式中、
(i)R1は、HまたはC1-4アルキルであり;
(ii)R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキルであり;
(iii)R4は、HまたはC1-4アルキルであり;
(iv)R5は、独立して、-C(=O)-C1-6アルキル(例えば、-C(=O)-CH3)およびC1-6-ヒドロキシアルキルから選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリールであり;
(v)R6およびR7は、独立して、H、または独立してC1-6アルキルおよびハロゲンから選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリールであり;
(vi)nは、1、2、3または4である]
で示される化合物;または
D) 遊離形態または塩形態の、式IV':
【化5】
[式中、
(i)R1は、C1-4アルキル、または-NH(R2)であり、ここで、R2は、ハロで置換されていてもよいフェニルであり;
(ii)X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり;
(iii)R3、R4およびR5は、独立して、HまたはC1-4アルキルであるか;またはR3はHであり、R4およびR5は一緒になってトリメチレン橋を形成し、
(iv)R6、R7およびR8は、独立して、
H、
1-4アルキル、
ヒドロキシで置換されているピリダ-2-イル、または
-S(O)2-NH2であり;
ただし、X、Yおよび/またはZがNである場合、それぞれ、R6、R7および/またはR8は存在せず;また、X、YおよびZが全てCである場合、R6、R7またはR8のうち少なくとも1つは、-S(O)2-NH2、またはヒドロキシで置換されているピリダ-2-イルである]
で示される化合物
から選択されるPDE1阻害剤の有効量を含む医薬。
【請求項2】
PDE1阻害剤が、
a) 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の(6aR,9aS)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-((4-(6-フルオロピリジン-2-イル)フェニル)メチル)-シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン;
b) 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の7,8-ジヒドロ-2-(4-アセチルベンジル)-3-(4-フルオロフェニルアミノ)-5,7,7-トリメチル-[2H]-イミダゾ-[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン;および
c) 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の3-((4-フルオロフェニル)アミノ)-5,7,7-トリメチル-2-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)-7,8-ジヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン
から選択される、請求項1記載の医薬。
【請求項3】
PDE1阻害剤が、アデノシンA2アゴニスト、βアドレナリン受容体アンタゴニスト;ACE阻害剤;ネプリライシン阻害剤;抗高リポタンパク血症薬;抗動脈硬化症薬;グアニル酸シクラーゼ活性化薬;抗血栓薬および/または線維素溶解薬;血液凝固薬;抗不整脈薬;抗高血圧薬;アリールエタノールアミン誘導体;ベンゾチアジアジン誘導体;N-カルボキシアルキル(ペプチド/ラクタム)誘導体;ジヒドロピリジン誘導体;グアニジン誘導体;ヒドラジン/フタラジン;イミダゾール誘導体;四級アンモニウム化合物;レセルピン誘導体;スルホンアミド誘導体;血管収縮剤;利尿剤;強心薬;抗狭心症薬またはそれらの組合せから選択される別の治療薬と組み合わせて投与される、請求項1または2記載の医薬。
【請求項4】
PDE1阻害剤が、0.01mg/kg~10mg/kgの濃度で投与される、請求項1~いずれか1項記載の医薬。
【請求項5】
患者がヒトであり、PDE1阻害剤が経口一日量1~10mgで投与される、請求項1~いずれか1項記載の医薬。
【請求項6】
患者がヒトであり、PDE1阻害剤が経口一日量0.5~20mgで投与され、PDE1阻害剤が、
a) 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の(6aR,9aS)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-((4-(6-フルオロピリジン-2-イル)フェニル)メチル)-シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン;
b) 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の7,8-ジヒドロ-2-(4-アセチルベンジル)-3-(4-フルオロフェニルアミノ)-5,7,7-トリメチル-[2H]-イミダゾ-[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン;および
c) 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の3-((4-フルオロフェニル)アミノ)-5,7,7-トリメチル-2-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)-7,8-ジヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン
から選択される、請求項記載の医薬。
【請求項7】
PDE1阻害剤が、アデノシンA2シグナル伝達を増強するのに有効な量で該治療または予防を必要とする患者に投与される、請求項1~いずれか1項記載の医薬。
【請求項8】
PDE1阻害剤の投与が、アデノシンA2AまたはアデノシンA2Bの発現の増加を誘発する、請求項記載の医薬。
【請求項9】
心毒性を引き起こす治療または薬が、放射線療法および/または化学療法剤である、請求項1~いずれか1項記載の医薬。
【請求項10】
心毒性を引き起こす治療が化学療法剤である、請求項記載の医薬。
【請求項11】
化学療法剤が、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、シクロホスファミド、イホスファミド、シスプラチン、カルムスチン、ブスルファン、クロルメチン、マイトマイシン、パクリタキセル、エトポシド、テニポシド、ビンカアルカロイド、フルオロウラシル、シタラビン、アムサクリン、クラドリビン、アスパラギナーゼ、トレチノインおよび/またはペントスタチンである、請求項10記載の医薬。
【請求項12】
心毒性を引き起こす治療が放射線療法である、請求項11記載の医薬。
【請求項13】
心毒性を引き起こす治療または薬の投与の結果として生じる心毒性の治療、緩和または予防のための組合せ医薬であって、該心毒性が、アデノシンA 2 シグナル伝達障害によって特徴づけられ、
A) エナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む、遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式I':
【化6】
[式中、
(i)R1は、HまたはC1-4アルキルであり;
(ii)R4は、HまたはC1-4アルキルであり、R2およびR3は、独立して、HまたはC1-4アルキル、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシ、または(場合によってはヘテロ)アリールアルキルであるか;または
2はHであり、R3およびR4は一緒になってジ-、トリ-またはテトラメチレン架橋を形成し;
(iii)R5は、置換ヘテロアリールアルキルであるか;または
5は、式Iのピラゾロ部分の窒素の1つに結合しており、式A':
【化7】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R8、R9、R11およびR12は、独立して、Hまたはハロゲンであり、R10は、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、アリールカルボニル、アルキルスルホニル、ヘテロアリールカルボニル、またはアルコキシカルボニルである;ただし、X、YまたはZが窒素である場合、それぞれ、R8、R9またはR10は存在しない)
で示される部分であり;
(iv)R6は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、N,N-ジアリールアミノ、またはN-アリール-N-(アリールアルキル)アミノであり;
(v)nは0または1であり;
(vi)nが1である場合、Aは、-C(R1314)-であり、
ここで、R13およびR14は、独立して、HまたはC1-4アルキル、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシまたは(場合によってはヘテロ)アリールアルキルである]
で示される化合物;
B) 遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式II':
【化8】
[式中、
(i)Xは、C1-6アルキレンであり;
(ii)Yは、単結合、アルキニレン、アリーレンまたはヘテロアリーレンであり;
(iii)Zは、H、アリール、ヘテロアリール、ハロ、ハロC1-6アルキル、-C(O)-R1、-N(R2)(R3)、またはNもしくはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC3-7シクロアルキルであり;
(iv)R1は、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、-OHまたは-OC1-6アルキルであり;
(v)R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキルであり;
(vi)R4およびR5は、独立して、H、C1-6アルキルまたはアリール(これは、1個以上の、ハロ、ヒドロキシまたはC1-6アルコキシで置換されていてもよい)であり;
(vii)ここで、X、YおよびZは、独立して、1個以上の、ハロ、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキルで置換されていてもよい]
で示される化合物;
C) 遊離形態または塩形態の、式III':
【化9】
[式中、
(i)R1は、HまたはC1-4アルキルであり;
(ii)R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキルであり;
(iii)R4は、HまたはC1-4アルキルであり;
(iv)R5は、独立して、-C(=O)-C1-6アルキル(例えば、-C(=O)-CH3)およびC1-6-ヒドロキシアルキルから選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリールであり;
(v)R6およびR7は、独立して、H、または独立してC1-6アルキルおよびハロゲンから選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリールであり;
(vi)nは、1、2、3または4である]
で示される化合物;または
D) 遊離形態または塩形態の、式IV':
【化10】
[式中、
(i)R1は、C1-4アルキル、または-NH(R2)であり、ここで、R2は、ハロで置換されていてもよいフェニルであり;
(ii)X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり;
(iii)R3、R4およびR5は、独立して、HまたはC1-4アルキルであるか;またはR3はHであり、R4およびR5は一緒になってトリメチレン橋を形成し、
(iv)R6、R7およびR8は、独立して、
H、
1-4アルキル、
ヒドロキシで置換されているピリダ-2-イル、または
-S(O)2-NH2であり;
ただし、X、Yおよび/またはZがNである場合、それぞれ、R6、R7および/またはR8は存在せず;また、X、YおよびZが全てCである場合、R6、R7またはR8のうち少なくとも1つは、-S(O)2-NH2、またはヒドロキシで置換されているピリダ-2-イルである]
で示される化合物
から選択されるPDE1阻害剤の有効量および1つ以上のさらなる心保護薬を含む組合せ医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アデノシンA2シグナル伝達を例えば心臓組織中にて強化または増強させるため、例えば、心機能を増強させるため、内在性アデノシンを含むアデノシンA2アゴニストの影響を増強させるため、および心不全および障害されているかまたは不十分なアデノシンA2媒介経路が関与する疾患または障害を治療するための、ホスホジエステラーゼ1(PDE1)の阻害剤の投与に関する。
【背景技術】
【0002】
治療の観点から、PDEは、それらの構造が特異的かつ強力な小分子阻害剤の影響を受けやすく、細胞特異的発現が選択的な臓器標的化を提供するので、特に治療的に興味深い。PDEは11種類のファミリーが同定されており、合計で100種類を超えるアイソフォームがある。PDE4、PDE7およびPDE8はcAMPに対して非常に選択的であり、PDE5、PDE6およびPDE9はcGMPに対して選択的である。残りのPDEは、生物学的条件および場合によってはアソフォームに依存する選択性をもって、両方を加水分解する。心臓および/または筋細胞はPDE6を除く全てのmRNAを発現し、PDE1、PDE2、PDE3、PDE4、PDE5、PDE8およびPDE9の機能的役割が同定されている。これらのPDEのうちのいくつかのPDEの阻害剤はFDA承認医薬品の形態でヒトにトランスレートされている。
【0003】
PDE1は、3種類のアイソフォーム1つとして発現し、PDE1AおよびPDE1Cは心臓で見られ、PDE1Bは主に脳で見られる。PDE1Aは、cGMPに対してより選択的(KmがcAMPに対するよりも33倍高い)であるが、PDE1Cは、両方の環状ヌクレオチドに対して類似の親和性を有する。PDE1は、心臓で恒常的に発現されており、サイクリックAMPおよび/またはcGMPの両方を加水分解する。しかしながら、心血管調節におけるその役割についてはほとんど知られていない。げっ歯類の心臓は主に心臓組織でcGMPを非常に優先するPDE1Aアイソフォームを発現するが、ヒトは主に心臓組織でcGMPおよびcAMPの両方に対して影響を与えるPDE1Cを発現する。マウスでは、非選択的PDE1阻害がcGMPの増強をもって心肥大および線維症を弱めることが示されている。しかしながら、心臓で主にPDE1Cを発現するヒトなどの哺乳動物におけるPDE1阻害の心血管への影響を試験した研究はまだなく、PDE1阻害の影響は、βアドレナリンまたはアデノシン刺激/遮断の後など、関連治療と組み合わせて研究されていない。
【0004】
アデノシンは、多くの生理的プロセスを調節する内在性プリンヌクレオシドである。アデノシンによる細胞シグナル伝達は、4種類の既知アデノシン受容体サブタイプ(A1、A2A、A2BおよびA3)を介して生じる。正常細胞からの細胞外アデノシン濃度は約300nMである;しかしながら、細胞損傷(例えば、炎症組織または虚血組織における)に応答して、これらの濃度は急速に上昇する(600~1,200nM)。アデノシンは、細胞保護活性を有しており、低酸素症、虚血、および発作活動(seizure activity)のインスタンスの間組織損傷を予防または制限するのに役立つ。該アデノシン受容体サブタイプ(A1、A2A、A2BおよびA3)はGタンパク質共役受容体である。4種類の受容体サブタイプはまた、アデニル酸シクラーゼ活性を刺激または阻害するそれらの能力に基づいて分類される。A1受容体およびA3受容体は阻害性Gタンパク質と結合し、cAMPレベルを減少させるが、A2アデノシン受容体は、Gsと結合し、アデニル酸シクラーゼ活性を刺激し、cAMPレベルを増強する。アデノシンは、例えば上室頻拍(SVT)のような不整脈を評価または治療するために、治療薬として使用される。しかしながら、アデノシンまたは非選択的もしくは部分選択的アデノシンアゴニストは、徐脈、血圧低下および心拍出量減少などの重大副作用を引き起こし得、該副作用は、主に抗アドレナリン作用をもたらすアデノシンA1受容体の刺激に関連していると思われる。虚血(血液供給の遮断に起因する酸素欠乏)による損傷の軽減ならびに心臓、肺および脳の急性損傷の治療に有用であり得る選択的アデノシンA2B受容体アゴニストは開発中であるが、まだ市販されていない。
【0005】
アデノシン関連経路の調節は幅広い治療効果を提供することができる。A2Aアデノシン受容体の活性化は心保護効果を有することが示されている。多くの一般的に処方されている抗癌剤は心毒性作用を有することが知られている。例えば、アントラサイクリンクラスの細胞増殖抑制性抗生物質(cytostatic antibiotics)は、心毒性を引き起こす化学療法剤の中で最もよく知られている。シクロホスファミド、イホスファミド、シスプラチン、カルムスチン、ブスルファン、クロルメチンおよびマイトマイシンのような他の化学療法剤もまた心毒性に関連している。この心毒性は、軽度の血圧変化、血栓症、心電図変化、不整脈、心筋炎、心膜炎、心筋梗塞、心筋症、心不全(左室不全)およびうっ血性心不全を包含する、心臓に関連する様々な状態を引き起こす。
【0006】
心不全(HF)は世界中で推定3000~5000万人の患者に影響を及ぼしている。近年の治療法の進歩にも関わらず、その有病率は増加しており、それは、一部には死亡率の低下に起因しているが、肥満、糖尿病、年齢などの主要な併存疾患のより高い発生率が原因でもある。現在、心血管疾患および障害(例えば、うっ血性心不全)、ならびに心機能不全または心筋症を引き起こし得る疾患および障害(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)の治療に有効な方法に対するほとんど満たされていないニーズがある。
【0007】
心臓の状態および機能不全の治療のための改善された治療用組成物および方法が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
HFにおける心機能不全の主要な要素は、機能的予備力を制限する環状3',5'-環状アデノシンおよびグアノシン一リン酸(cAMP、cGMP)と結びついたセカンドメッセンジャーシグナル伝達欠陥にある。サイクリックAMPはプロテインキナーゼA(PKA)、ならびに興奮収縮連関およびサルコメア機能を急激に増強するcAMPによって活性化される交換タンパク質(EPAC)を刺激する。サイクリックGMPは、プロテインキナーゼGを活性化することにより、このシグナル伝達のブレーキとして働く。どちらの環状ヌクレオチドも、関連する血管および線維芽細胞の活性を有しており、血管の緊張を低下させ、透過性および増殖を変化させ、線維症を抑制する。cAMPの合成は、アデニリルシクラーゼによって提供され、cGMPの合成はグアニリルシクラーゼによって提供される。これらの環状ヌクレオチドの分解(加水分解)は環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)によって行われる。PDE1は、アテローム性動脈硬化症、心圧負荷ストレスおよび心不全などの慢性疾患状態において、ならびに硝酸薬への長期曝露に反応して、アップレギュレートすると考えられる。したがって、例えば本明細書に記載されているような、PDE1阻害剤は、PDE1が発現する心臓組織、血管組織および肺組織におけるcAMP/PKAおよびcGMP/PKG媒介経路を調節することができる。
【0009】
本発明者らは、PDE1Cが心臓組織において優勢なPDE1アイソフォームである哺乳動物において、PDE1阻害が、A2Bアデノシンシグナル伝達に依存するがβアドレナリン受容体シグナル伝達に依存しない急性の陽性変力作用、変弛緩作用および動脈血管拡張作用を有することを見出した。これらの作用は、健康な心臓および不全心のどちらにおいても見られる。かくして、これまでの研究では、A2BRが肝細胞におけるPDE3B調節および肺気道上皮細胞におけるPDE4Dと結びつくことが確認されているだけであるため、A2BRシグナル伝達をPDE1に結び付ける本開示およびデータは新規で全く予想外である。
【0010】
PDE1阻害剤自体は刺激されていない心臓組織に対して比較的影響を及ぼさないが、該組織が内在性アデノシンおよび/またはアデノシンA2アゴニストによって刺激された場合には、PDE1阻害剤は環状ヌクレオチド(この経路においては主にcAMPであると考えられる)の分解を阻害することによりA2BRシグナル伝達を強化および増強させ得、それによりアデノシンA2B刺激による変力作用、変弛緩作用および動脈血管拡張作用を増強および延長し、結果として、不全心においてでさえ、動脈収縮期圧を変化させずに心拍出量を増加させる。したがって、アデノシンPDE1阻害剤の増強は、狭心症、脳卒中、腎不全、本態性高血圧症、肺高血圧症、二次性高血圧症、孤立性収縮期高血圧症、糖尿病関連高血圧症、アテローム性動脈硬化症関連高血圧症、腎血管性高血圧症、うっ血性心不全、炎症性疾患または障害、線維症、心肥大、血管リモデリング、結合組織疾患または障害(例えば、マルファン症候群)、慢性心不全、急性心不全、心筋虚血、心筋低酸素症、再灌流傷害、左室機能不全(例えば、心筋梗塞、心室拡張)、または血管漏出(すなわち、低酸素症の結果生じる)、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)、および筋萎縮性側索硬化症、または変力性もしくは変弛緩性機能不全によって特徴付けられるこれらの障害のいずれか(例えば、変力性機能不全によって特徴付けられる心肥大)などのさまざまな心血管疾患および障害の治療に潜在的に有用であり。
【0011】
さらにまた、PDE1阻害剤は、アデノシンA2シグナル伝達の作用を選択的に増強させることにより、アデノシン受容体アゴニストの有効投与量を減らすため、アデノシンA2選択的、例えばアデノシンA2B選択的療法を与えるため、また、望ましくない副作用、例えば、徐脈、血圧低下および心拍出量減少などのアデノシンA1受容体活性に関連する副作用を最小限にするために、アデノシンまたは他の非選択的もしくは部分選択的アデノシン受容体アゴニストと組み合わせて使用することができる。例えば、いくつかの実施態様では、本開示は、低用量のアデノシンアゴニストをPDE1阻害剤と組み合わせて投与することによりアデノシンまたは他の非選択的もしくは部分選択的アデノシン受容体アゴニストの副作用を軽減する方法であって、アデノシンアゴニストの用量が、例えばアデノシンA1受容体活性に起因する副作用を引き起こすには低すぎるが、PDE1阻害剤と組み合わせてアデノシンA2受容体刺激をもたらすのに有効である量である、方法を提供する。
【0012】
したがって、別の胃実施態様では、PDE1阻害剤(例えば、本明細書に記載されるような式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、Xおよび/またはXIで示されるPDE1阻害剤)は、アデノシンA2機能不全によって特徴付けられるかまたはアデノシンA2刺激から恩恵を受ける疾患または状態の治療または予防のために投与することができ、PDE1阻害剤の有効量をそれを必要とする患者に投与することを含む。例えば、アデノシンA2機能不全によって特徴付けられる疾患または状態は、慢性心不全;急性心不全;心筋梗塞の結果生じる心不全;炎症性障害(例えば、大腸炎、炎症性腸症候群、急性血管炎症、急性小腸炎、潰瘍性炎症);鎌状赤血球症;多発性硬化症;脳卒中;外傷性脳損傷;アルツハイマー病;線維症;低酸素症;虚血;再灌流傷害;左室機能不全(例えば、心筋梗塞、心室拡張);カフェイン離脱;急性肺損傷;低酸素症の結果生じる血管漏出;心筋虚血;睡眠障害;敗血症;過敏性腸症候群;皮膚圧迫(skin pressure);潰瘍;または創傷治癒であり得る。
【0013】
いくつかの実施態様では、本開示はまた、PDE1阻害剤と、アデノシンA2アゴニスト;βアドレナリン受容体アンタゴニスト(すなわち、β遮断薬);ACE阻害剤;アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB);抗高リポタンパク血症薬;抗動脈硬化症薬;抗血栓/血栓溶解薬;血液凝固薬;抗不整脈薬;抗高血圧薬;血管収縮剤;うっ血性心不全治療薬;抗狭心症薬;抗菌薬;ネプリライシン阻害剤、またはそれらの組合せから選択されるさらなる治療薬とを含む併用療法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
開示の詳細な説明
本開示の方法で使用するための化合物
特定に実施態様では、本開示は、本明細書に記載の治療および予防の方法で使用するためのPDE1阻害剤が、下記の本出願人自身の公開公報に記載されているPDE1阻害剤から選択されることを提供する:US2008-0188492A1、US2010-0173878A1、US2010-0273754A1、US2010-0273753A1、WO2010/065153、WO2010/065151、WO2010/065151、WO2010/065149、WO2010/065147、WO2010/065152、WO2011/153129、WO2011/133224、WO2011/153135、WO2011/153136、WO2011/153138、WO2012/171016、WO2013/192556、WO2014/151409、WO2015/196186、WO2016/022825、WO2016022836、WO2016/022893、WO2016/044667、US9546175(それぞれの内容全体は出典明示によりその全体が本明細書の一部とされる)。
【0015】
一の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の治療および予防の方法で使用するためのPDE1阻害剤が、エナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む、遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式I:
【化1】
[式中、
(i)R1は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であり;
(ii)R4は、HまたはC1-4アルキルであり、R2およびR3は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、R2およびR3は共にメチルであるか、またはR2はHであり、R3はイソプロピルである)、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシ、または(場合によってはヘテロ)アリールアルキルであるか;または
2はHであり、R3およびR4は一緒になってジ-、トリ-またはテトラメチレン架橋を形成し(好ましくはR3およびR4が一緒になってシス配置を有しており、例えば、R3およびR4を担持する炭素はそれぞれR配置およびS配置を有する);
(iii)R5は、例えばハロアルキルで置換されている、置換ヘテロアリールアルキルであるか;または
5は、式Iのピラゾロ部分の窒素の1つに結合しており、式A:
【化2】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R8、R9、R11およびR12は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり、R10は、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ハロゲンで置換されていてもよい、ピリジル(例えば、ピリジン-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル))、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、ヘテロアリールカルボニル、またはアルコキシカルボニルである;ただし、X、YまたはZが窒素である場合、それぞれ、R8、R9またはR10は存在しない)
で示される部分であり;
(iv)R6は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、アリールアミノ(例えば、フェニルアミノ)、ヘテロアリールアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、N,N-ジアリールアミノ、またはN-アリール-N-(アリールアルキル)アミノ(例えば、N-フェニル-N-(1,1'-ビフェン-4-イルメチル)アミノ)であり;
(v)nは0または1であり;
(vi)nが1である場合、Aは、-C(R1314)-であり、
ここで、R13およびR14は、独立して、HまたはC1-4アルキル、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシまたは(場合によってはヘテロ)アリールアルキルである]
で示される化合物であることを提供する。
【0016】
別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の治療および予防の方法で使用するためのPDE1阻害剤が、遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式II:
【化3】
[式中、
(i)Xは、C1-6アルキレン(例えば、メチレン、エチレンまたはプロパ-2-イン-1-イレン)であり;
(ii)Yは、単結合、アルキニレン(例えば、-C≡C-)、アリーレン(例えば、フェニレン)またはヘテロアリーレン(例えば、ピリジレン)であり;
(iii)Zは、H、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジル、例えば、ピリダ-2-イル)、ハロ(例えば、F、Br、Cl)、ハロC1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、-C(O)-R1、-N(R2)(R3)、またはNもしくはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC3-7シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、またはモルホリニル)であり;
(iv)R1は、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、-OHまたは-OC1-6アルキル(例えば、-OCH3)であり;
(v)R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキルであり;
(vi)R4およびR5は、独立して、H、C1-6アルキルまたはアリール(例えば、フェニル)(これは、1個以上の、ハロで置換されていてもよい(例えば、フルオロフェニル、例えば、4-フルオロフェニル)、ヒドロキシで置換されていてもよい(例えば、ヒドロキシフェニル、例えば、4-ヒドロキシフェニルまたは2-ヒドロキシフェニル)またはC1-6アルコキシで置換されていてもよい)であり;
(vii)ここで、X、YおよびZは、独立して、1個以上の、ハロ(例えば、F、ClまたはBr)、C1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロC1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)で置換されていてもよく、例えば、Zは、1個以上の、ハロ(例えば、6-フルオロピリダ-2-イル、5-フルオロピリダ-2-イル、6-フルオロピリダ-2-イル、3-フルオロピリダ-2-イル、4-フルオロピリダ-2-イル、4,6-ジクロロピリダ-2-イル)、ハロC1-6アルキル(例えば、5-トリフルオロメチルピリダ-2-イル)またはC1-6-アルキル(例えば、5-メチルピリダ-2-イル)で置換されている、ヘテロアリール、例えばピリジルであるか、またはZは、1個以上のハロ(例えば、4-フルオロフェニル)で置換されている、アリール、例えばフェニルである]
で示される化合物であることを提供する。
【0017】
さらに別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の治療および予防の方法で使用するためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の、式III:
【化4】
[式中、
(i)R1は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(ii)R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii)R4は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iv)R5は、独立して、-C(=O)-C1-6アルキル(例えば、-C(=O)-CH3)およびC1-6-ヒドロキシアルキル(例えば、1-ヒドロキシエチル)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(v)R6およびR7は、独立して、H、または独立してC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)およびハロゲン(例えば、FまたはCl)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり、例えば、非置換フェニル、または1個以上のハロゲン(例えば、F)で置換されているフェニル、または1個以上のC1-6アルキルおよび1個以上のハロゲンで置換されているフェニル、または1個のC1-6アルキルおよび1個のハロゲンで置換されているフェニル、例えば4-フルオロフェニルまたは3,4-ジフルオロフェニルまたは4-フルオロ-3-メチルフェニルであり;
(vi)nは、1、2、3または4である]
であることを提供する。
【0018】
さらに別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の治療および予防の方法で使用するためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の、式IV:
【化5】
[式中、
(i)R1は、C1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)、または-NH(R2)であり、ここで、R2は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば4-フルオロフェニルであり;
(ii)X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり;
(iii)R3、R4およびR5は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であるか;またはR3はHであり、R4およびR5は一緒になってトリメチレン橋を形成し(好ましくはR4およびR5が一緒になってシス配置を有しており、例えば、R4およびR5を担持する炭素はそれぞれR配置およびS配置を有する)、
(iv)R6、R7およびR8は、独立して、
H、
1-4アルキル(例えば、メチル)、
ヒドロキシで置換されているピリダ-2-イル、または
-S(O)2-NH2であり;
(v)ただし、X、Yおよび/またはZがNである場合、それぞれ、R6、R7および/またはR8は存在せず;また、X、YおよびZが全てCである場合、R6、R7またはR8のうち少なくとも1つは、-S(O)2-NH2、またはヒドロキシで置換されているピリダ-2-イルである]
であることを提供する。
【0019】
一の実施態様では、本発明は、炎症または炎症関連疾患もしくは障害の治療または予防のためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記の化合物:
【化6】
である、投与を提供する。
【0020】
さらに別の実施態様では、本発明は、炎症または炎症関連疾患もしくは障害の治療または予防のためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記の化合物:
【化7】
である、投与を提供する。
【0021】
さらに別の実施態様では、本発明は、炎症または炎症関連疾患もしくは障害の治療または予防のためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記の化合物:
【化8】
である、投与を提供する。
【0022】
さらに別の実施態様では、本発明は、炎症または炎症関連疾患もしくは障害の治療または予防のためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記の化合物:
【化9】
である、投与を提供する。
【0023】
一の実施態様では、上記式(例えば、式I、II、IIIおよび/またはIV)のいずれかで示される選択的PDE1阻害剤は、cGMPのホスホジエステラーゼ媒介(例えば、PDE1媒介、特にPDE1B媒介)加水分解を阻害する化合物であり、例えば、好ましい化合物は、遊離形態または塩形態で、固定化金属親和性粒子試薬PDEアッセイにおいて、1μM未満、好ましくは500nM未満、好ましくは50nM未満、好ましくは5nM未満のIC50を有する。
【0024】
他の実施態様では、本発明は、癌または腫瘍から選択される状態の治療のため;腫瘍細胞の増殖、移動および/または浸潤の阻害のため;および/または神経膠腫の治療のための、PDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、下記の化合物:
【化10】
である、投与を提供する。
【0025】
特に明記されていない場合、または文脈から明確でない場合、本明細書において以下の用語は以下の意味を有する:
【0026】
(a)本明細書で用いられる「選択的PDE1阻害剤」は、他のPDEアイソフォームの阻害よりもPDE1阻害に対して少なくとも100倍選択性のあるPDE1阻害剤をいう。
【0027】
(b)本明細書で用いられる「アルキル」は、飽和または不飽和炭化水素部分、好ましくは飽和であり、好ましくは1~6個の炭素原子を有し、直鎖または分枝鎖状であってもよく、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシ、またはカルボキシで、モノ置換、ジ置換またはトリ置換されていてもよい。
【0028】
(c)本明細書で用いられる「シクロアルキル」は、飽和または不飽和非芳香族炭化水素部分、好ましくは飽和であり、好ましくは3~9個の炭素原子を含んでおり、そのうちの少なくともいくつかは非芳香族単環式または二環式または架橋の環状構造を形成し、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで、置換されていてもよい。シクロアルキルがNおよびOおよび/またはSから選択される1個以上の原子を含有していてもよい場合、該シクロアルキルはヘテロシクロアルキルであってもよい。
【0029】
(d)「ヘテロシクロアルキル」は、特記しない限り、特記しない限り、飽和または不飽和非芳香族炭化水素部分であり、好ましくは飽和であり、好ましくは3~9個の炭素原子を含んでおり、そのうちの少なくともいくつかは非芳香族単環式または二環式または架橋の環状構造を形成し、ここで、少なくとも1個の炭素原子がN、OまたはSに置き換えられており、該ヘテロシクロアルキルは、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで、置換されていてもよい。
【0030】
(e)本明細書で用いられる「アリール」は、単環式または二環式の芳香族炭化水素であり、好ましくはフェニルであり、好ましくは、例えばアルキル(例えば、メチル)、ハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシ、カルボキシ、またはさらなるアリールまたはヘテロアリール(例えば、ビフェニルまたはピリジルフェニル)で、置換されていてもよい。
【0031】
(f)本明細書で用いられる「ヘテロアリール」は、芳香族部分であり、ここで、該芳香環を形成する原子のうち1個以上は炭素ではなく硫黄または窒素であり、例えば、ピリジルまたはチアジアゾリルであり、例えばアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシまたはカルボキシで、置換されていてもよい。
【0032】
(g)参考を容易にするため、本開示化合物のピラゾロ-ピリミジン核上の原子は、特記しない限り、式Iに記載されているナンバリングに従ってナンバリングされている。
【0033】
(h)Eがフェニレンである場合、ナンバリングは、以下のとおりである:
【化11】
【0034】
(i)置換基が「エン」で終わる場合、例えばアルキレン、フェニレンまたはアリールアルキレンの場合、該置換基は別の2つの置換基を架橋するかまたは連結することが意図されていることが意図される。したがって、メチレンは-CH2-であることが意図されており、フェニレンは-C64-であることが意図されており、アリールアルキレンは、-C64-CH2-または-CH2-C64-であることが意図されている。
【0035】
(j)本開示化合物は、以下のとおりナンバリングされることが意図されている:
【化12】
【0036】
本開示化合物、例えば、置換されている4,5,7,8-テトラヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピロロ[3,4-e]ピリミジンまたは4,5,7,8,9-ペンタヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピロロ[3,4-e]ピリミジン、例えば、式I(式I-AおよびI-B)で示される化合物、または式II(例えば、II-AまたはII-B)で示される化合物は、遊離形態または塩形態で、例えば酸付加塩として、存在し得る。本明細書では、特記しない限り、「本開示化合物」などの用語は、化合物を任意の形態、例えば遊離形態または酸付加塩形態、または化合物が酸性置換基を含む場合は塩基付加塩形態を包含するものとして理解されるべきである。本開示化合物は、医薬品として使用を意図しており、したがって、薬学的に許容される塩が好ましい。薬学的使用に適していない塩は、例えば本開示遊離化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の単離または精製に有用であり得、したがって、それらも含まれる。
【0037】
本明細書に開示されている化合物のいずれかを包含する本開示化合物、例えば、置換されていてもよい4,5,7,8-テトラヒドロ-(所望により4-チオキソまたは4-イミノ)-(1Hまたは2H)-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジンまたは4,5,7,8,9-ペンタヒドロ-(1Hまたは2H)-ピリミド[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン化合物、例えば、(1または2および/または3および/または5)-置換4,5,7,8-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン、4,5,7,8-テトラヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン、4,5,7,8-テトラヒドロ-(1Hまたは2H)-ピリミド[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-イミン、7,8-ジヒドロ-1H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-チオンまたは7,8-ジヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-チオン化合物、例えば、本明細書に記載の式IIIの化合物または式IVの化合物は、遊離形態または塩形態で、例えば酸付加塩として、存在し得る。
【0038】
本開示化合物は、いくつかの場合には、プロドラッグ形態で存在し得る。プロドラッグ形態は、体内で本開示化合物に変換する化合物である。例えば、本開示化合物がヒドロキシまたはカルボキシ置換基を含む場合、これらの置換基は、生理学的に加水分解可能で許容されるエステルを形成し得る。本明細書で用いられる場合、「生理学的に加水分解可能で許容されるエステル」とは、生理学的条件下で加水分解して、投与される用量でそれ自体が生理学的に許容される酸(ヒドロキシ置換基を有する本開示化合物の場合)またはアルコール(カルボキシ置換基を有する本開示化合物の場合)を得ることができる本開示化合物のエステルを意味する。したがって、本開示化合物がヒドロキシ基を含む場合、例えば化合物-OHの場合、該化合物のアシルエステルプロドラッグ、すなわち、化合物-O-C(O)-C1-4アルキルは、体内で加水分解して、一方では生理学的に加水分解可能なアルコール(化合物-OH)を形成することができ、他方では酸(例えば、HOC(O)-C1-4アルキル)を形成することができる。別法として、本開示化合物がカルボン酸を含む場合、例えば化合物-C(O)OHの場合、該化合物の酸エステルプロドラッグ、化合物-C(O)O-C1-4アルキルは、加水分解して、化合物-C(O)OHおよびHO-C1-4アルキルを形成することができる。理解されるように、この用語は、このように従来の医薬品のプロドラッグの形態を包含する。
【0039】
別の実施態様では、本開示は、また、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本開示化合物を薬学的に許容される担体と混合して含む医薬組成物を提供する。
【0040】
別の実施態様では、本開示は、また、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態の本開示化合物を薬学的に許容される担体と混合して含む医薬組成物を提供する。
【0041】
いくつかの実施態様では、本開示化合物は、それらの代謝速度に影響を与えるように、例えばインビボでの半減期を増加させるように、改変され得る。いくつかの実施態様では、該化合物は、本明細書に開示されている化合物の代謝速度を低下させるために、重水素化またはフッ素化され得る。
【0042】
さらに別の実施態様では、本明細書に開示されている化合物は、例えば、経口投与のための、例えば錠剤またはカプセル剤の形態の、または非経口投与のための、医薬組成物の形態であり得る。いくつかの実施態様では、該化合物は、持続放出を提供するために注射による投与のための長時間作用型デポー組成物の形態で提供される。いくつかの実施態様では、経口投与のための、またはデポーとしての、固体薬物は、活性化合物の遅延放出を提供するために、好適なポリマーマトリックス中に存在し得る。
【0043】
本開示化合物の製造方法
本開示化合物およびそれらの薬学的に許容される塩は、本明細書に記載および例示された方法およびそれに類似する方法、ならびに化学技術分野で知られている方法によって製造され得る。このような方法としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。市販されていない場合、これらのプロセスのための出発物質は、既知化合物の合成と同様または類似の技術をもしいて化学技術から選択される手順によって製造することができる。本開示化合物の製造の出発物質および方法は上記の出典明示により引用され本明細書の一部とされる特許出願に記載されている。
【0044】
本開示化合物には、それらのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体、ならびにそれらの多形体、水和物、溶媒和物および錯体が含まれる。本開示の範囲内のいくつかの個々の化合物は、二重結合を含んでいてもよい。本開示における二重結合の表現は、二重結合のE異性体およびZ異性体の両方を含むことを意図している。さらに、本開示の範囲内のいくつかの化合物は、1つ以上の不斉中心を含んでいてもよい。本開示は、光学的に純粋な立体異性体のいずれかの使用、および立体異性体の組み合わせを含む。
【0045】
また、本開示化合物は、それらの安定同位体および不安定同位体を包含することも意図されている。安定同位体とは、同じ種(すなわち元素)の豊富な核種と比較して、さらなる1個の中性子を含む非放射性同位体である。このような同位体を含む化合物の活性は維持されることが期待され、また、このような化合物は、非同位体アナログの薬物動態を測定するための有用性もあると考えられる。例えば、本開示化合物のある位置の水素原子を重水素(非放射性の安定同位体)に置き換えてもよい。公知の安定同位体の例としては、重水素、13C、15N、18Oが挙げられるが、これらに限定されない。別法として、同じ種(すなわち、元素)の豊富な核種と比較して、さらなる中性子を含む放射性同位体である不安定同位体、例えば、123I、131I、125I、11C、18Fが、I、CおよびFの対応する豊富な種に置き換えられてもよい。本開示化合物の有用な同位体の別の例としては、11C同位体が挙げられる。これらの放射性同位体は、本開示化合物の放射性画像診断および/または薬物動態学的研究に有用である。
【0046】
融点は無補正であり、(dec)は分解を示す。温度は摂氏(℃)で表記され;特記しない限り、操作は室温または周囲温度、すなわち18~25℃の範囲の温度で行われる。クロマトグラフィーはシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーを意味し、薄層クロマトグラフィー(TLC)はシリカゲルプレート上で行われる。NMRデータは、主要な診断用プロトンのデルタ値を、内部標準物質としてのテトラメチルシラン(TMS)に対する百万分の一(ppm)単位で示したものである。シグナル形状については慣用の略号を使用する。結合定数(J)はHzで表記される。マススペクトル(MS)については、同位体分裂により複数のマススペクトルピークが発生する分子については、最も質量の小さい主イオンを報告する。溶媒混合物の組成は、体積%または体積比として表記される。NMRスペクトルが複雑な場合は、診断信号のみを報告する。
【0047】
用語および略語:
BuLi = n-ブチルリチウム
ButOH = tert-ブチルアルコール、
CAN = 硝酸アンモニウムセリウム(IV)、
DIPEA = ジイソプロピルエチルアミン、
DMF = N,N-ジメチルホルムアミド、
DMSO = ジメチルスルホキシド、
Et2O = ジエチルエーテル、
EtOAc = 酢酸エチル、
equiv.= 当量、
h = 時間、
HPLC =高速液体クロマトグラフィー、
LDA = リチウムジイソプロピルアミド
MeOH = メタノール、
NBS = N-ブロモスクシンイミド
NCS = N-クロロスクシンイミド
NaHCO3 = 重炭酸ナトリウム、
NHOH = 水酸化アンモニウム、
Pd2(dba)3 = トリス[ジベンジリデンアセトン]ジパラジウム(0)
PMB = p-メトキシベンジル、
POCl3 = オキシ塩化リン、
SOCl2 = 塩化チオニル、
TFA = トリフルオロ酢酸、
TFMSA = トリフルオロメタンスルホン酸
THF = テトラヒドロフラン。
【0048】
本開示化合物の使用方法
本開示化合物は、例えばドーパミンおよび一酸化窒素(NO)のような環状ヌクレオチド合成の誘導剤の阻害またはレベル減少に起因するPDE1の発現の増加またはcGMP/PKGまたはcAMP/PKA活性の発現の低下の結果としての、cGMP/PKGおよび/またはcAMP/PKAシグナル伝達媒介経路の破壊または損傷によって特徴づけられる疾患の治療に有用である。この作用は、例えばPDE1を阻害することにより、cGMP/PKGまたはcAMP/PKAシグナル伝達の減衰を逆転または防止し得る(例えば、それぞれcGMPまたはcAMPを増強し得る)と考えられる。したがって、本明細書に記載されているような好ましいPDE1阻害剤、例えば上記されているPDE1阻害剤の投与または使用は、様々な心血管疾患および障害の治療を提供するための潜在的な手段を提供し得る。
【0049】
様々な実施態様において、本開示は、イノトロピック(inotropic)および/またはルシトロピック(lusitropic)機能不全によって特徴づけられる疾患または状態の治療、緩和または予防においてアデノシンA2受容体アゴニストの効果を増強する方法であって、これを必要とする患者にPDE1阻害剤の有効量を投与することを含む方法[方法1]を提供する。例えば、本開示は、方法1の以下の実施態様を提供する:
【0050】
1.1 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、上記式I'、II'、III'またはIV'のうちの1つである、方法1。
【0051】
1.2 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、(6aR,9aS)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-((4-(6-フルオロピリジン-2-イル)フェニル)メチル)-シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン:
【化13】
である、方法1または1.1。
【0052】
1.3 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、7,8-ジヒドロ-2-(4-アセチルベンジル)-3-(4-フルオロフェニルアミノ)-5,7,7-トリメチル-[2H]-イミダゾ-[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン:
【化14】
である、方法1または1.1。
【0053】
1.4 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、3-((4-フルオロフェニル)アミノ)-5,7,7-トリメチル-2-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)-7,8-ジヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン
【化15】
である、方法1または1.1。
【0054】
1.5 疾患または状態が、狭心症、脳卒中、腎不全、本態性高血圧症、肺高血圧症、二次性高血圧症、孤立性収縮期高血圧症、糖尿病関連高血圧症、アテローム性動脈硬化症関連高血圧症、腎血管性高血圧症、うっ血性心不全、炎症性疾患または障害、線維症、心肥大、血管リモデリング、結合組織疾患または障害(例えば、マルファン症候群)、慢性心不全、心筋虚血、心筋低酸素症、再灌流傷害、左室機能不全(例えば、心筋梗塞、心室拡張)、血管漏出(すなわち、低酸素症の結果として生じる))、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)、または筋萎縮性側索硬化症である、上記方法のいずれか。
【0055】
1.6 治療されるべき疾患または状態が、慢性心不全、心筋炎症、線維症、心筋虚血、心筋低酸素症、再灌流傷害、左室機能不全(例えば、心筋梗塞、心室拡張)、血管漏出(すなわち、低酸素症の結果として生じる)、急性血管炎症(すなわち、血管損傷の結果として生じる)、または心肥大である、上記方法のいずれか。
【0056】
1.7 治療されるべき疾患または状態が慢性心不全である、方法1.6。
【0057】
1.8 治療されるべき疾患または状態が心筋炎症である、方法1.6。
【0058】
1.9 治療されるべき疾患または状態が線維症である、方法1.6。
【0059】
1.10 治療されるべき疾患または状態が心筋虚血である、方法1.6。
【0060】
1.11 治療されるべき疾患または状態が心筋低酸素症である、方法1.6。
【0061】
1.12 治療されるべき疾患または状態が再灌流傷害である、方法1.6。
【0062】
1.13 治療されるべき疾患または状態が左室機能不全(例えば、心筋梗塞または心室拡張)である、方法1.6。
【0063】
1.14 治療されるべき疾患または状態が血管漏出(すなわち、血管損傷の結果として生じる)である、方法1.6。
【0064】
1.15 治療されるべき疾患または状態が心肥大である、方法1.6。
【0065】
1.16 PDE1阻害剤が、虚血または低酸素症に起因する心臓組織への損傷のリスクを軽減するために投与される、上記方法のいずれか。
【0066】
1.17 PDE1阻害剤が、アデノシンA1受容体刺激に起因する副作用のリスクを軽減するために投与される、上記方法のいずれか。
【0067】
1.18 PDE1阻害剤が、アデノシンA2受容体アゴニストの有効用量を減少させるために投与される、上記方法のいずれか。
【0068】
1.19 PDE1阻害剤が、アデノシンA2アゴニスト、βアドレナリン受容体アンタゴニスト(すなわち、β遮断薬);ACE阻害剤;ネプリライシン阻害剤;抗高リポタンパク血症薬(例えば、アリールオキシアルカン酸/フィブリン酸誘導体、レジン/胆汁酸捕捉剤(sequestrant)、HMG-CoA還元酵素阻害剤、ニコチン酸誘導体、甲状腺ホルモンまたは甲状腺ホルモンアナログまたはそれらの組合せ);抗動脈硬化症薬(例えば、ピリジノールカルバメート);グアニル酸シクラーゼ活性化薬;抗血栓薬および/または線維素溶解薬(例えば、抗凝固薬、抗凝固薬アンタゴニスト、血小板凝集阻害薬、血栓溶解薬、血栓溶解薬アンタゴニスト);血液凝固薬(例えば、血栓溶解薬アンタゴニストおよび抗凝固薬アンタゴニスト);抗不整脈薬(例えば、ナトリウムチャネル遮断薬、再分極延長薬、カルシウムチャネル遮断薬);抗高血圧薬(例えば、交感神経遮断薬、α/β遮断薬、α遮断薬、抗アンジオテンシンII薬、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、血管拡張薬);アリールエタノールアミン誘導体;ベンゾチアジアジン誘導体;N-カルボキシアルキル(ペプチド/ラクタム)誘導体;ジヒドロピリジン誘導体;グアニジン誘導体;ヒドラジン/フタラジン;イミダゾール誘導体;四級アンモニウム化合物;レセルピン誘導体;スルホンアミド誘導体;血管収縮剤;利尿剤;強心薬(inotropic agent);抗狭心症薬またはそれらの組合せから選択される別の治療薬と組み合わせて投与される、上記方法のいずれか。
【0069】
1.20 PDE1阻害剤が、アデノシンA2アゴニスト、βアドレナリン受容体アンタゴニスト(すなわち、β遮断薬);ACE阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬;アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB);ネプリライシン阻害剤またはそれらの組合せから選択されるさらなる治療薬と組み合わせて投与される、上記方法のいずれか。
【0070】
1.21 PDE1阻害剤が、さらなる治療薬と同時に投与される、方法1.19または1.20のいずれか。
【0071】
1.22 PDE1阻害剤が、さらなる治療薬の24時間以内;所望によりさらなる治療薬の12時間以内;所望によりさらなる治療薬の6時間以内;所望によりさらなる治療薬の3時間以内;所望によりさらなる治療薬の2時間以内;所望によりさらなる治療薬の1時間以内;所望によりさらなる治療薬の30分間以内;所望によりさらなる治療薬の15分間以内;所望によりさらなる治療薬の10分間以内;所望によりさらなる治療薬の5分間以内;または所望によりさらなる治療薬の1分間以内に投与される、方法1.19~1.21のいずれか。
【0072】
1.23 アデノシンA2受容体アゴニストが、アデノシンA2B受容体アゴニストである、上記方法のいずれか。
【0073】
1.24 アデノシンA2受容体アゴニストが、内在性アデノシンを含む、上記方法のいずれか;例えば、PDE1阻害剤によって増強される唯一のアデノシンA2受容体アゴニストが内在性アデノシンである、上記方法のいずれか。
【0074】
1.25 アデノシンA2受容体アゴニストが、選択的アデノシンA2B受容体アゴニストを含む、上記方法のいずれか。
【0075】
1.26 アデノシンA2受容体アゴニストの効果の増強が、PDE1によるcAMPの分解を阻害することによる環状ヌクレオチドのアデノシンA2媒介上昇の増強または延長に相当する、上記方法のいずれか。
【0076】
1.27 PDE1阻害剤が、0.01mg/kg~10mg/kgの濃度で投与される、上記方法のいずれか。
【0077】
1.28 患者が、心臓組織において優勢なPDE1としてPDE1Cを発現する哺乳動物、例えばイヌまたはヒトである、上記方法のいずれか。
【0078】
1.29 患者がヒトである、上記方法のいずれか。
【0079】
1.30 患者がヒトであり、PDE1阻害剤が経口一日量1~10mgで投与される、上記方法のいずれか。
【0080】
1.31 患者がヒトであり、PDE1阻害剤が経口一日量0.5~20mg、例えば1~10mgで投与され、PDE1阻害剤が、
a. 遊離形態または薬学的に許容される塩形態、例えば一リン酸塩形態の(6aR,9aS)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-((4-(6-フルオロピリジン-2-イル)フェニル)メチル)-シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン;
b. 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の7,8-ジヒドロ-2-(4-アセチルベンジル)-3-(4-フルオロフェニルアミノ)-5,7,7-トリメチル-[2H]-イミダゾ-[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン;および
c. 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の3-((4-フルオロフェニル)アミノ)-5,7,7-トリメチル-2-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)-7,8-ジヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン
から選択される、上記方法のいずれか。
【0081】
1.32 イノトロピックおよび/またはルシトロピック機能不全によって特徴づけられる疾患または状態が心不全である、方法1.30。
【0082】
本開示は、また、イノトロピックおよび/またはルシトロピック機能不全によって特徴づけられる疾患または状態の治療、緩和または予防においてアデノシンA2受容体アゴニストの効果を増強する方法において用いるための、例えば方法1以降のいずれかで用いるための、PDE1阻害剤を提供する。
【0083】
本開示は、また、イノトロピックおよび/またはルシトロピック機能不全によって特徴づけられる疾患または状態の治療、緩和または予防においてアデノシンA2受容体アゴニストの効果を増強するための医薬、例えば方法1以降のいずれかで用いるための医薬の製造におけるPDE1阻害剤の使用を提供する。
【0084】
種々の実施態様では、本開示は、アデノシンA2受容体機能障害によって特徴づけられる疾患または状態の治療、緩和または予防においてアデノシンA2受容体機能を増強する方法であって、これを必要とする患者にPDE1阻害剤の有効量を投与することを含む方法[方法2]を提供する。例えば、本開示は、以下の方法を提供する:
【0085】
2.1 アデノシンA2受容体機能障害がアデノシンA2B受容体機能障害である、方法2。
【0086】
2.2 アデノシンA2受容体機能障害が、(i)内在性アデノシンに対するアデノシンA2B受容体の反応性の低下および/または(ii)心臓損傷または心不全に応答した内在性アデノシンの放出および/または産生の低下によって特徴づけられる、上記方法のいずれか
【0087】
2.3 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、上記式I'、II'、III'またはIV'のうちの1つである、上記方法のいずれか。
【0088】
2.4 PDE1阻害剤が、
a. 遊離形態または薬学的に許容される塩形態、例えば一リン酸塩形態の(6aR,9aS)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-((4-(6-フルオロピリジン-2-イル)フェニル)メチル)-シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン;
b. 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の7,8-ジヒドロ-2-(4-アセチルベンジル)-3-(4-フルオロフェニルアミノ)-5,7,7-トリメチル-[2H]-イミダゾ-[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン;および
c. 3-((4-フルオロフェニル)アミノ)-5,7,7-トリメチル-2-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)-7,8-ジヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン
から選択される、上記方法のいずれか。
【0089】
2.5 治療されるべき疾患または状態が、慢性心不全、心筋炎症、線維症、心筋虚血、心筋低酸素症、再灌流傷害、左室機能不全(例えば、心筋梗塞、心室拡張)、血管漏出(すなわち、低酸素症の結果として生じる)、急性血管炎症(すなわち、血管損傷の結果として生じる)、または心肥大である、上記方法のいずれか。
【0090】
2.6 治療されるべき疾患または状態が慢性心不全である、方法2.2。
【0091】
2.7 治療されるべき疾患または状態が心筋炎症である、方法2.2。
【0092】
2.8 治療されるべき疾患または状態が線維症である、方法2.2。
【0093】
2.9 治療されるべき疾患または状態が心筋虚血である、方法2.2。
【0094】
2.10 治療されるべき疾患または状態が心筋低酸素症である、方法2.2。
【0095】
2.11 治療されるべき疾患または状態が再灌流傷害である、方法2.2。
【0096】
2.12 治療されるべき疾患または状態が左室機能不全(例えば、心筋梗塞または心室拡張)である、方法2.2。
【0097】
2.13 治療されるべき疾患または状態が血管漏出(すなわち、血管損傷の結果として生じる)である、方法2.2。
【0098】
2.14 治療されるべき疾患または状態が心肥大である、方法2.2。
【0099】
2.15 PDE1阻害剤が、虚血または低酸素症に対して心臓組織をプレコンディションするためまたは心臓組織に保護を提供するために投与される、上記方法のいずれか。
【0100】
2.16 PDE1阻害剤がアデノシンA2受容体アゴニストとともに投与される、上記方法のいずれか。
【0101】
2.17 PDE1阻害剤がアデノシンA2受容体アゴニストと同時に投与される、方法2.13。
【0102】
2.18 PDE1阻害剤がアデノシンA2アゴニストの後に投与される、方法2.13。
【0103】
2.19 PDE1阻害剤がアデノシンA2アゴニストの前に投与される、方法2.13。
【0104】
2.20 PDE1阻害剤が、アデノシンA2アゴニストの24時間以内;所望によりアデノシンA2アゴニストの12時間以内;所望によりアデノシンA2アゴニストの6時間以内;所望によりアデノシンA2アゴニストの3時間以内;所望によりアデノシンA2アゴニストの2時間以内;所望によりアデノシンA2アゴニストの1時間以内;所望によりアデノシンA2アゴニストの30分間以内;所望によりアデノシンA2アゴニストの15分間以内;所望によりアデノシンA2アゴニストの10分間以内;所望によりアデノシンA2アゴニストの5分間以内;または所望によりアデノシンA2アゴニストの1分間以内に投与される、方法2.13~2.16のいずれか。
【0105】
2.21 疾患または状態がアデノシンA2B受容体機能不全または機能低下によって特徴づけられる、上記方法のいずれか。
【0106】
2.22 アデノシンA2アゴニストが選択的アデノシンA2Bアゴニストである、方法2.13~2.18のいずれか。
【0107】
2.23 PDE1阻害剤が、βアドレナリン受容体アンタゴニスト(すなわち、β遮断薬);ACE阻害剤;ネプリライシン阻害剤;抗高リポタンパク血症薬(例えば、アリールオキシアルカン酸/フィブリン酸誘導体、レジン/胆汁酸捕捉剤、HMG-CoA還元酵素阻害剤、ニコチン酸誘導体、甲状腺ホルモンまたは甲状腺ホルモンアナログまたはそれらの組合せ);抗動脈硬化症薬(例えば、ピリジノールカルバメート);グアニル酸シクラーゼ活性化薬;抗血栓薬および/または線維素溶解薬(例えば、抗凝固薬、抗凝固薬アンタゴニスト、血小板凝集阻害薬、血栓溶解薬、血栓溶解薬アンタゴニスト);血液凝固薬s(例えば、血栓溶解薬アンタゴニストおよび抗凝固薬アンタゴニスト);抗不整脈薬(例えば、ナトリウムチャネル遮断薬、再分極延長薬、カルシウムチャネル遮断薬);抗高血圧薬(例えば、交感神経遮断薬、α/β遮断薬、α遮断薬、抗アンジオテンシンII薬、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、血管拡張薬);アリールエタノールアミン誘導体;ベンゾチアジアジン誘導体;N-カルボキシアルキル(ペプチド/ラクタム)誘導体;ジヒドロピリジン誘導体;グアニジン誘導体;ヒドラジン/フタラジン;イミダゾール誘導体;四級アンモニウム化合物;レセルピン誘導体;スルホンアミド誘導体;血管収縮剤;利尿剤;強心薬;抗狭心症薬またはそれらの組合せから選択される別の治療薬と組み合わせても投与される、方法2.13~2.19のいずれか。
【0108】
2.24 PDE1阻害剤が、βアドレナリン受容体アンタゴニスト(すなわち、β遮断薬);ACE阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬;アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB);ネプリライシン阻害剤またはそれらの組合せから選択されるさらなる治療薬と組み合わせて投与される、上記方法のいずれか。
【0109】
2.25 PDE1阻害剤が0.01mg/kg~10mg/kgの濃度で投与される、上記方法のいずれか。
【0110】
2.26 PDE1阻害剤が0.01mg/kg~10mg/kgの濃度で投与される、上記方法のいずれか。
【0111】
2.27 患者が、心臓組織において優勢なPDE1としてPDE1Cを発現する哺乳動物、例えばイヌまたはヒトである、上記方法のいずれか。
【0112】
2.28 患者がヒトである、上記方法のいずれか。
【0113】
2.29 患者がヒトであり、PDE1阻害剤が経口一日量1~10mgで投与される、上記方法のいずれか。
【0114】
2.30 患者がヒトであり、PDE1阻害剤が経口一日量0.5~20mg、例えば1~10mgで投与され、PDE1阻害剤が、
a. 遊離形態または薬学的に許容される塩形態、例えば一リン酸塩形態の(6aR,9aS)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-((4-(6-フルオロピリジン-2-イル)フェニル)メチル)-シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン;
b. 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の7,8-ジヒドロ-2-(4-アセチルベンジル)-3-(4-フルオロフェニルアミノ)-5,7,7-トリメチル-[2H]-イミダゾ-[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン;および
c. 3-((4-フルオロフェニル)アミノ)-5,7,7-トリメチル-2-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)-7,8-ジヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン
から選択される、上記方法のいずれか。
【0115】
2.31 アデノシンA2受容体機能障害によって特徴づけられる疾患または状態が心不全である、方法2.30。
【0116】
本開示は、また、アデノシンA2受容体機能障害によって特徴づけられる疾患または状態の治療、緩和または予防においてアデノシンA2受容体機能を増強する方法において用いるための、例えば方法2以降のいずれかで用いるための、PDE1阻害剤を提供する。
【0117】
本開示は、また、アデノシンA2受容体機能障害によって特徴づけられる疾患または状態の治療、緩和または予防においてアデノシンA2受容体機能を増強するための医薬、例えば方法2以降のいずれかで用いるための医薬の製造におけるPDE1阻害剤の使用を提供する。
【0118】
したがって、さらなる実施態様では、本開示は、化学療法剤の投与および/または放射線療法の結果として生じる心毒性を治療、緩和または予防する方法であって、これを必要とする患者にPDE1阻害剤の有効量を投与することを含む方法[方法3]を提供する。例えば、本開示は、以下の方法を提供する:
【0119】
3.1 PDE1阻害剤が、例えば心筋細胞において、アデノシンA2シグナル伝達を増強するために有効な量で投与される、方法3。
【0120】
3.2 心毒性が化学療法剤の投与の結果として生じる、方法3または3.1。
【0121】
3.3 化学療法剤が、アントラサイクリン、HER2受容体遮断薬(例えば、トラスツズマブ)、抗代謝剤、アルキル化剤、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、血管新生抑制剤およびチェックポイント阻害剤から選択される、方法3.3。
【0122】
3.4 化学療法剤がアントラサイクリンである、方法3.2または3.3。
【0123】
3.5 アントラサイクリンが、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、サバルビシン、ピクサントロンおよびバルルビシンから選択される、方法3.5。
【0124】
3.6 アントラサイクリン化合物がドキソルビシンである、方法3.4。
【0125】
3.7 化学療法剤が、シクロホスファミド、イホスファミド、シスプラチン、カルムスチン、ブスルファン、クロルメチン、マイトマイシン、パクリタキセル、エトポシド、テニポシド、ビンカアルカロイド、フルオロウラシル、シタラビン、アムサクリン、クラドリビン、アスパラギナーゼ、トレチノインおよびペントスタチンから選択される、方法3.2。
【0126】
3.8 化学療法剤が、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)/neuのアンタゴニストである、方法3.2。
【0127】
3.9 化学療法剤が、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)/neuに対して特異的なモノクローナル抗体、例えばトラスツズマブである、方法3.7。
【0128】
3.10 心毒性が、放射線療法の実施(化学療法剤の投与と組み合わせてもよい)の結果として生じる、いずれもの上記方法。
【0129】
3.11 患者が、癌または腫瘍に罹患している、いずれもの上記方法。
【0130】
3.12 患者が、聴神経腫瘍、星細胞腫、脊索腫、CNSリンパ腫、頭蓋咽頭腫、神経膠腫(例えば、脳幹神経膠腫、脳室上衣腫、混合膠腫、視神経膠腫)、上衣下膠腫、髄芽腫、髄膜腫、転移性脳腫瘍、乏突起神経膠腫、下垂体腫瘍、原始神経胚葉性腫瘍(PNET)、シュワン腫、腺腫(例えば、好塩基性腺腫、好酸性腺腫、嫌色素性腺腫、副甲状腺腺腫、膵島細胞腺腫、線維腺腫)、子宮筋腫(線維性組織球腫)、線維腫、血管腫、脂肪腫(例えば、血管脂肪腫、骨髄脂肪腫、線維脂肪腫、紡錘細胞脂肪腫、褐色脂肪腫、非定型脂肪腫)、粘液腫、骨腫、前白血病、横紋筋腫(rhadomyoma)、乳頭腫、脂漏性角化症、皮膚付属器腫瘍、肝腺腫、腎尿細管腺腫、胆管腺腫、移行細胞乳頭腫、胞状奇胎、神経節神経腫、髄膜腫、神経鞘腫、神経線維腫、C細胞過形成、褐色細胞腫、インスリノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド、ケモデクトーマ、パラガングリオーマ、母斑症、光線角化症、子宮頸部異形成、異形成(例えば、肺の異形成)、白斑症、血管腫、リンパ管腫、カルシノーマ(例えば、有棘細胞癌、類表皮癌、腺癌、ヘパトーマ、肝細胞、腎細胞癌、胆管細胞癌、移行上皮癌、胎児性癌、甲状腺癌、甲状腺髄様癌、気管支カルチノイド、燕麦細胞癌、膵島細胞癌、悪性カルチノイド)、肉腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、血管肉腫(hemangiosarcoma)、血管肉腫(angiosarcoma)、リンパ管肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、神経線維肉腫)、芽細胞腫(例えば、髄芽腫および膠芽腫、脳腫瘍の種類、網膜芽細胞腫、眼の網膜の腫瘍、骨芽細胞腫、骨腫瘍、神経芽腫)、胚細胞腫瘍、中皮腫、悪性皮膚付属器腫瘍、グラヴィッツ腫瘍、セミノーマ、神経膠腫、悪性髄膜腫、悪性シュワン腫、悪性褐色細胞腫、悪性パラガングリオーマ、メラノーマ、メルケル(mercell)細胞新生物、葉状嚢胞肉腫(cystosarcoma phylloides)、またはウィルムス腫瘍の1つ以上から選択される腫瘍に罹患している、いずれもの上記方法。
【0131】
3.13 患者が、神経膠腫、骨肉腫、メラノーマ、白血病または神経芽腫に罹患している、いずれもの上記方法。
【0132】
3.14 患者が、神経膠腫(例えば、脳室上衣腫、星細胞腫、乏突起神経膠腫、脳幹神経膠腫、視神経膠腫または混合膠腫、例えばオリゴアストロサイトーマ)に罹患している、いずれもの上記方法。
【0133】
3.15 患者が星細胞腫(例えば、多形性膠芽腫(glioblastoma multiform)に罹患している、いずれもの上記方法。
【0134】
3.16 患者が多形性膠芽腫に罹患している、いずれもの上記方法。
【0135】
3.17 患者が癌に罹患している、いずれもの上記方法。
【0136】
3.18 患者が白血病に罹患している、いずれもの上記方法。
【0137】
3.19 患者が、リンパ腫、リンパ性白血病または骨髄性白血病に罹患している、いずれもの上記方法。
【0138】
3.20 方法が、心毒性を治療および/または緩和するためである、いずれもの上記方法。
【0139】
3.21 患者が、癌治療の心毒性に続発する顕性心不全に罹患しているかまたは該顕性心不全と診断されている、いずれもの上記方法。
【0140】
3.22 患者が、心血管イメージングを用いて、例えば放射性核種イメージング、心エコー検査および/または核磁気共鳴画像法を用いて、癌治療の心毒性に続発する顕性心不全と診断されている、いずれもの上記方法。
【0141】
3.23 患者が、左心室(LV)機能不全、うっ血性心不全(CHF)、冠動脈攣縮、狭心症、心筋梗塞、不整脈、全身性高血圧(systemic hypertension)、心膜液貯留、肺線維症および肺高血圧症から選択される、化学療法および/または放射線療法の結果として生じる心臓状態に罹患している、いずれもの上記方法。
【0142】
3.24 患者が、化学療法および/または放射線療法を受ける前に、例えば左心室(LV)機能不全、うっ血性心不全(CHF)、冠動脈攣縮、狭心症、心筋梗塞、不整脈、全身性高血圧、心膜液貯留、肺線維症および肺高血圧症から選択される、既存の心血管疾患に罹患していた、いずれもの上記方法。
【0143】
3.25 患者が、例えば鉄キレート剤(例えば、デクスラゾキサン)、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)、β遮断薬(例えば、カルベジロール、メトプロロールまたはネビボロール)、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)、スタチン、抗酸化剤(すなわち、ジヒドロミリセチン、バージンオリーブオイルからの抗酸化剤、ゴマ油、セサミン、サリドロシド、メラトニン、グルタチオン、コエンザイムQ10、ビタミン、ケルセチン、イソラムネチン、カンナビジオール、レスベラトロール)、Mdivi-1、メトホルミン、N-アセチルシステイン、フェネチルアミン、アミホスチン、プロスタサイクリン(PGI2)、メロキシカム、ジアゾキシド、カルボキシマルトース鉄、レシチン化ヒト組換えスーパーオキシドジスムターゼ、グレリン、L-カルニチン、モルシドミン、ジドックス(didox)、α-リノレン酸およびニコランジルから選択される、さらなる心保護薬でも治療されていた、いずれもの上記方法。
【0144】
3.26 患者が、例えばアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)、β遮断薬(例えば、カルベジロールまたはネビボロール)、および鉄キレート剤(例えば、デクスラゾキサン)から選択される、さらなる心保護薬でも治療されていた、いずれもの上記方法。
【0145】
3.27 心毒性が、アデノシンA2シグナル伝達および/またはアデノシンA2受容体発現を阻害する化学療法剤の投与の結果として生じる、いずれもの上記方法。
【0146】
3.28 PDE1阻害剤が、経口一日量0.5~100mg、例えば1~10mgで投与される、いずれもの上記方法。
【0147】
3.29 PDE1阻害剤が、
a. 遊離形態または薬学的に許容される塩形態、例えば一リン酸塩形態の(6aR,9aS)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-((4-(6-フルオロピリジン-2-イル)フェニル)メチル)-シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン;
b. 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の7,8-ジヒドロ-2-(4-アセチルベンジル)-3-(4-フルオロフェニルアミノ)-5,7,7-トリメチル-[2H]-イミダゾ-[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン;および
c. 3-((4-フルオロフェニル)アミノ)-5,7,7-トリメチル-2-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)-7,8-ジヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン
から選択される、いずれもの上記方法。
【0148】
本開示は、また、心毒性を治療、緩和または予防する方法に用いるため、例えば方法3以降のいずれかにおいて用いるための、PDE1阻害剤を提供する。
【0149】
本開示は、また、心毒性を治療、緩和または予防するための医薬、例えば方法3以降のいずれかにおいて用いるための医薬の製造におけるPDE1阻害剤の使用を提供する。
【0150】
PDE1阻害剤との併用療法
いくつかの実施態様では、PDE1阻害剤は、他の治療様式と組み合わせて投与される。したがって、上記の治療法に加えて、より多くの薬剤による心臓治療法を患者に提供することもできる。他の治療法の例としては、降圧薬、強心薬、抗血栓薬、血管拡張薬、ホルモン拮抗薬、変力薬(inotropes)、利尿剤、エンドセリン拮抗薬、カルシウムチャネル遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体2型拮抗薬およびサイトカイン遮断薬/阻害剤、およびHDAC阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。併用療法の特定の形態には、PDE1阻害剤の使用が含まれる。
【0151】
組合せは、PDE1阻害剤および1つ以上のさらなる治療剤を含む単一の組成物または医薬製剤を投与することによって達成されてもよく、または2つの異なる組成物または製剤(ここで、一方の組成物はPDE1阻害剤を含み、他方の組成物は追加の治療剤または薬剤を含む)を別々に、同時に、または順次投与することによって達成されてもよい。PDE1阻害剤を使用する治療は、数分から数週間の範囲の間隔で他の薬剤の投与に先行してもよいし、それに続いてもよい。他の薬剤および発現構築物が細胞に別々に適用される実施形態では、一般に、薬剤および発現構築物が依然として細胞に対して有利に合わせられた効果を発揮することができるように、各送達時の間に有意な期間が満了しないことを確実にするであろう。いくつかの実施態様では、典型的には、お互いに約12~24時間以内、より好ましくはお互いに約6~12時間以内に、両方の様式を用いて細胞に接触させることが企図され、遅延時間は約12時間のみであることが最も好ましい。しかしながら、いくつかの状況では、それぞれの投与の間に数日(2、3、4、5、6または7日)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8週間)が経過するような場合には、治療のための期間を大幅に延長することが望ましい場合がある。
【0152】
PDE1阻害剤またはさらなる治療薬のいずれかを2回以上投与することが望まれることも考えられる。これに関して、様々な組み合わせを使用することができる。実例として、PDE1阻害剤が「A」であり、さらなる治療薬が「B」である場合、3回および4回の総投与に基づく以下の組み合わせが例示的である:
【表1】
【0153】
本発明で用いることができる薬理学的治療薬の非限定的な例としては、アデノシンA2アゴニスト;βアドレナリン受容体アンタゴニスト(すなわち、β遮断薬);ACE阻害剤;アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB);抗高リポタンパク血症薬;抗動脈硬化症薬;抗血栓/血栓溶解薬;血液凝固薬;抗不整脈薬;抗高血圧薬;血管収縮剤;うっ血性心不全治療薬;抗狭心症薬;抗菌薬;ネプリライシン阻害剤またはそれらの組合せが挙げられる。他の組み合わせも同様に企図される。いくつかの特定の薬剤を以下に記載する。
【0154】
アデノシンA2アゴニスト: 種々の実施態様では、本組合せおよび方法で用いられるアデノシンA2アゴニストは、アデノシンA2AアゴニストまたはアデノシンA2Bアゴニストのいずれかであり得る。A2A受容体アゴニストとしては、アデノシン、CGS21680、ATL-146e、YT-146(すなわち、2-(1-オクチニル)アデノシン)、CGS-21680、DPMA(すなわち、N-6-(2-(3,5-ジメトキシフェニル)-2-(2-メチルフェニル)エチル)アデノシン)、レガデノソン、UK-432,097、リモネン、N-エチルカルボキシアミドアデノシン、CV-3146、ビノデノソンおよびBVT.115959が挙げられるが、これらに限定されない。A2B受容体アゴニストとしては、(S)-PHPNECA、BAY60-6583、LUF-5835、LUF-5845、およびN-エチルカルボキシアミドアデノシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0155】
β遮断薬: β遮断薬とも称される種々のβアドレナリン受容体アンタゴニストは、現在、不全心によって引き起こされる有害な慢性的心筋刺激を排除するために臨床で使用されている。好ましいβアドレナリン受容体アンタゴニストとしては、メトプロロール、メトプロロールコハク酸塩、カルベジロール、アテノロール、プロプラノロール、アセブトロール、アセブトロールHCL、ベタキソロール、ベタキソロールHCL、ナドロール、タリノロール、ビソプロロール、ビソプロロールヘミフマル酸塩、カルテオロール、カルテオロールHCL、エスモロール、エスモロールHCL、ラベタロール、ラベタロールHCL、メトプロロール、メトプロロールコハク酸塩、メトプロロール酒石酸塩、ナドロール、ペンブトロール、ペンブトロール硫酸塩、ピンドロール、プロプラノロール、プロプラノロールHCL、ソタロール、ソタロールHCL、チモロールおよびチモロールマレイン酸水素塩またはそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。本発明に従って、βアドレナリン受容体アンタゴニストは、該薬剤について臨床的に許容される一日量で投与することができる。例えば、治療する状態、投与経路、患者の年齢、体重および状態に依存して、酒石酸塩またはコハク酸塩としてのメトプロロールの好適な一日量は約100~200mgであり、カルベジロールの場合は約5~50mgである。
【0156】
抗高リポタンパク血症薬: 特定の実施態様において、本明細書において「抗高リポタンパク血症薬」として知られる、1つ以上の血中脂質および/またはリポタンパク質の濃度を低下させる薬剤の投与は、特にアテローム性動脈硬化症および血管組織の肥厚または閉塞の治療において、本発明による心血管療法と組み合わせることができる。特定の態様において、抗高リポタンパク血症薬は、アリールオキシアルカン酸/フィブリン酸誘導体、レジン/胆汁酸捕捉剤、HMG-CoA還元酵素阻害剤、ニコチン酸誘導体、甲状腺ホルモンまたは甲状腺ホルモンアナログ、その他の薬剤(miscellaneous agent)またはそれらの組合せを含み得る。
【0157】
a.アリールオキシアルカン酸/フィブリン酸誘導体: アリールオキシアルカン酸/フィブリン酸誘導体の非限定的な例としては、ベクロブラート(beclobrate)、エンザフィブラート(enzafibrate)、ビニフィブラート(binifibrate)、シプロフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブラート(アトロマイド-S(atromide-S))、クロフィブリン酸、エトフィブラート、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル(ロビッド(lobid))、ニコフィブラート(nicofibrate)、ピリフィブラート(pirifibrate)、ロニフィブラート、シンフィブラート、およびテオフィブラートが挙げられる。
【0158】
b.レジン/胆汁酸捕捉剤: レジン/胆汁酸捕捉剤の非限定的な例としては、コレスチラミン(コリバル(cholybar)、クエストラン)、コレスチポール(コレスチド)およびポリデキシド(polidexide)が挙げられる。
【0159】
c.HMG-CoA還元酵素阻害剤: HMG-CoA還元酵素阻害剤の非限定的な例としては、ロバスタチン(メバコール)、プラバスタチン(プラバコール)、シンバスタチン(ゾコール)、アトロバスタチン(リピトール)またはロスバスタチン(クレストール)が挙げられる。
【0160】
d.ニコチン酸誘導体: ニコチン酸誘導体の非限定的な例としては、ニコチネート、アシピモックス(acepimox)、ニセリトロール、ニコクロナート、ニコモールおよびオキシニアク酸が挙げられる。
【0161】
e.甲状腺ホルモンおよびアナログ: 甲状腺ホルモンおよびそのアナログの非限定的な例としては、エトロキサート(etoroxate)、チロプロプ酸およびチロキシンが挙げられる。
【0162】
f.その他の抗高リポタンパク血症薬: その他の抗高リポタンパク血症薬の非限定的な例としては、アシフラン、アザコレステロール、ベンフルオレックス、β-ベンザルブチルアミド、カルニチン、コンドロイチン硫酸、クロメストロン(clomestrone)、デタクストラン(detaxtran)、デキストラン硫酸ナトリウム、5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸、エリタデニン、フラザボール、メグルトール、メリナミド、ミタトリエンジオール、オルニチン、γ-オリザノール、パンテチン、ペンタエリスリトール四酢酸エステル、α-フェニルブチルアミド、ピロザジル、プロブコール(ロレルコ)、β-シトステロール、スルトシル酸-ピペラジン塩、チアデノール、トリパラノールおよびキセンブシンが挙げられる。
【0163】
抗動脈硬化症薬: 抗動脈硬化症薬の非限定的な例としては、ピリジノールカルバメートが挙げられる。
【0164】
抗血栓薬および/または線維素溶解薬: 特定の実施態様では、血餅の除去または予防を助ける薬剤の投与は、特にアテローム性動脈硬化症および血管系(例えば、動脈)閉塞の治療において、モジュレーターの投与と組み合わせることができる。抗血栓薬および/または線維素溶解薬の非限定的な例としては、抗凝固薬、抗凝固薬アンタゴニスト、血小板凝集阻害薬、血栓溶解薬、血栓溶解薬アンタゴニストまたはそれらの組合せが挙げられる。
【0165】
特定の態様では、経口投与することができる抗血栓薬、例えばアスピリンおよびワルファリン(wafarin)(クマジン)が好ましい。
【0166】
a.抗凝固薬: 抗凝固薬の非限定的な例としては、アセノクマロール、アンクロッド、アニシンジオン、ブロミンジオン、クロリンジオン、クメタロール、シクロクマロール、デキストラン硫酸ナトリウム、ジクマロール、ジフェナジオン、エチルビスクムアセテート、エチリデンヂクマロール、フルインジオン、ヘパリン、ヒルジン、リアポラートナトリウム(lyapolate sodium)、オキサジジオン、ポリ硫酸ペントサン、フェニンジオン、フェンプロクモン、ホスビチン、ピコタミド、チオクロマロールおよびワルファリンが挙げられる。
【0167】
b.血小板凝集阻害薬: 血小板凝集阻害薬の非限定的な例としては、アスピリン、デキストラン、ジピリダモール(ペルサンチン)、ヘパリン、スルフィンピラゾン(sulfinpyranone)(エンツレン(anturane))、チクロピジン(チクリッド)、クロピドグレル(clopidigrel)(プラビックス)およびチカグレロル(ブリリンタ)が挙げられる。
【0168】
c.血栓溶解薬: 血栓溶解薬の非限定的な例としては、組織プラスミノーゲンアクチベーター(アクチバーゼ)、プラスミン、プロウロキナーゼ、ウロキナーゼ(アボキナーゼ)、ストレプトキナーゼ(ストレプターゼ)、アニストレプラーゼ/APSAC(エミナーゼ)が挙げられる。
【0169】
血液凝固薬: 患者が出血症状または出血の可能性の増大に苦しんでいる特定の実施態様では、血液凝固を増強し得る薬剤を使用することができる。血液凝固促進剤の非限定的な例としては、血栓溶解薬アンタゴニストおよび抗凝固薬アンタゴニストが挙げられる。
【0170】
a.抗凝固薬アンタゴニスト: 抗凝固薬アンタゴニストの非限定的な例としては、プロタミンおよびビタミンKが挙げられる。
【0171】
b.血栓溶解薬アンタゴニストおよび抗血栓薬: 血栓溶解薬アンタゴニストの非限定的な例としては、アミノカプロン酸(amiocaproic acid)(アミカール)およびトラネキサム酸(アムスタット(amstat))が挙げられる。抗血栓薬の非限定的な例としては、アナグレリド、アルガトロバン、シルスタゾール(cilstazol)、ダルトロバン、デフィブロチド、エノキサパリン、フラキシパリン、インドブフェン、ラモパラン(lamoparan)、オザグレル、ピコタミド、プラフィブリド、テデルパリン(tedelparin)、チクロピジンおよびトリフルサルが挙げられる。
【0172】
抗不整脈薬: 抗不整脈薬の非限定的な例としては、I群抗不整脈薬(ナトリウムチャネル遮断薬)、II群抗不整脈薬(βアドレナリン遮断薬)、II群抗不整脈薬(再分極延長薬)、IV群抗不整脈薬(カルシウムチャネル遮断薬)およびその他の抗不整脈薬が挙げられる。
【0173】
a.ナトリウムチャネル遮断薬: ナトリウムチャネル遮断薬の非限定的な例としては、IA群、IB群およびIC群抗不整脈薬が挙げられる。IA群抗不整脈薬の非限定的な例としては、ジソピラミド(ノルペース)、プロカインアミド(プロネスチル)およびキニジン(キニデックス)が挙げられる。IB群抗不整脈薬の非限定的な例としては、リドカイン(キシロカイン)、トカイニド(トノカード(tonocard))およびメキシレチン(メキシチール)が挙げられる。IC群抗不整脈薬の非限定的な例としては、エンカイニド(エンカイド)およびフレカイニド(タンボコール)が挙げられる。
【0174】
b.再分極延長薬: III群抗不整脈薬としても知られている再分極を延長する薬剤の非限定的な例としては、アミオダロン(コルダロン)およびソタロール(ベータペース(betapace))が挙げられる。
【0175】
c.カルシウムチャネル遮断薬/アンタゴニスト: IV群抗不整脈薬としても知られているカルシウムチャネル遮断薬の非限定的な例としては、アリールアルキルアミン(例えば、ベプリジル、ジルチアゼム、フェンジリン、ガロパミル、プレニルアミン、テロジリン、ベラパミル)、ジヒドロピリジン誘導体(フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン)、ピペラジン(piperazinde)誘導体(例えば、シンナリジン、フルナリジン、リドフラジン)、またはその他のカルシウムチャネル遮断薬、例えばベンシクラン、エタフェノン、マグネシウム、ミベフラジルまたはペルヘキシリンが挙げられる。特定の実施態様では、カルシウムチャネル遮断薬は、長時間作用型ジヒドロピリジン(ニフェジピン型)カルシウムアンタゴニストを含む。
【0176】
d.その他の抗不整脈薬: その他の抗不整脈薬の非限定的な例としては、アデノシン(アデノカルド)、ジゴキシン(ラノキシン)、アセカイニド、アジマリン、アモプロキサン、アプリンジン、トシル酸ブレチリウム、ブナフチン、ブトベンジン、カポベン酸、シフェンリン、ジソピラニド(disopyranide)、ヒドロキニジン、インデカイニド、イプラトロピウム臭化物、リドカイン、ロラジミン、ロルカイニド、メオベンチン、モリシジン、ピルメノール、プラジマリン、プロパフェノン、ピリノリン、ポリガラクツロン酸キニジン、硫酸キニジンおよびビキジルが挙げられる。
【0177】
抗高血圧薬: 抗高血圧薬の非限定的な例としては、交感神経遮断薬、α/β遮断薬、α遮断薬、抗アンジオテンシンII薬、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、血管拡張薬およびその他の抗高血圧薬が挙げられる。
【0178】
a.α遮断薬: αアドレナリン遮断薬またはαアドレナリンアンタゴニストとしても知られているα遮断薬の非限定的な例としては、アモスラロール、アロチノロール、ダピプラゾール、ドキサゾシン、メシル酸エルゴロイド、フェンスピリド、インドラミン、ラベタロール、ニセルゴリン、プラゾシン、テラゾシン、トラゾリン、トリマゾシンおよびヨヒンビンが挙げられる。特定の実施態様では、α遮断薬は、キナゾリン誘導体を含み得る。キナゾリン誘導体の非限定的な例としては、アルフゾシン、ブナゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、テラゾシンおよびトリマゾシンが挙げられる。
【0179】
b.α/β遮断薬: 特定の実施態様では、抗高血圧薬は、αアドレナリンアンタゴニストおよびβアドレナリンアンタゴニストの両方である。α/β遮断薬の非限定的な例は、ラベタロール(ノルモジン、トランデート)を含む。
【0180】
c.抗アンジオテンション(Anti-Angiotension)II薬剤: 抗アンジオテンション(anti-angiotension)II薬の非限定的な例としては、アンジオテンシン変換酵素阻害剤およびアンジオテンション(angiotension)II受容体アンタゴニストが挙げられる。アンジオテンション(angiotension)変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)の非限定的な例としては、アラセプリル、エナラプリル(バソテック)、カプトプリル、シラザプリル、デラプリウ、エナラプリラット、ホシノプリル、リシノプリル、モベルトプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、ベナゼプリル、モエキシプリル、トランドラプリルおよびそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。ACE阻害剤の塩の例としては、有機酸または無機酸との酸付加塩が挙げられる。好適な有機カルボン酸としては、サリチル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、アジピン酸、ソルビン酸、マロン酸、1,4-ブタン二酸、リンゴ酸、ピバル酸、コハク酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、フラン-2-カルボン酸、酢酸、安息香酸、脂肪酸、例えばラウリン酸、ミリスチン酸またはオレイン酸が挙げられ、また、好適な無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸および/またはリン酸が挙げられる。アンジオテンション(angiotension)II受容体アンタゴニスト、ANG受容体遮断薬またはANG-IIタイプ1受容体遮断薬(ARBS)としても知られているアンジオテンシンII受容体遮断薬の非限定的な例としては、アンジオカンデサルタン(angiocandesartan)、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタンおよびバルサルタンまたはそれらの塩が挙げられる。
【0181】
d.交感神経遮断薬: 交感神経遮断薬の非限定的な例としては、中枢性交感神経遮断薬または末梢性交感神経遮断薬が挙げられる。中枢神経系(CNS)交感神経遮断薬としても知られている中枢性交感神経遮断薬の非限定的な例としては、クロニジン(カタプレス)、グアナベンズ(ワイテンシン(wytensin))、グアンファシン(テネックス)およびメチルドパ(アルドメット)が挙げられる。末梢性交感神経遮断薬の非限定的な例としては、ガングリオン遮断薬、アドレナリンニューロン遮断薬、βアドレナリン遮断薬またはα1アドレナリン遮断薬が挙げられる。ガングリオン遮断薬の非限定的な例としては、メカミラミン(インバーシン)およびトリメタファン(アルフォナード)が挙げられる。アドレナリンニューロン遮断薬の非限定的な例としては、グアネチジン(イスメリン)およびレセルピン(セルパシル)が挙げられる。βアドレナリン遮断薬の非限定的な例としては、アセニトロール(セクトラール)、アテノロール(テノルミン)、ベタキソロール(ケルロン(kerlone))、カルテオロール(カルトロール(cartrol))、ラベタロール(ノルモジン、トランダート)、メトプロロール(ロプレッサー)、ナダノール(nadanol)(コルガード(corgard))、ペンブトロール(レバトール)、ピンドロール(ビスケン)、プロプラノロール(インデラル)およびチモロール(ブロカドレン)が挙げられる。α1アドレナリン遮断薬の非限定的な例としては、プラゾシン(ミニプレス)、ドキサゾシン(カルジュラ)およびテラゾシン(ハイトリン)が挙げられる。
【0182】
e.血管拡張薬: 特定の実施態様では、心血管治療薬は、血管拡張薬(例えば、脳血管拡張薬、冠血管拡張薬または末梢血管拡張薬)を含み得る。特定の好ましい実施態様では、血管拡張薬は冠血管拡張薬を含む。冠血管拡張薬の非限定的な例としては、アモトリフェン、ベンダゾール、ヘミコハク酸ベンフロジル(benfurodil hemisuccinate)、ベンジオダロン、クロラシジン、クロモナール、クロベンフロール、クロニトラート、ジラゼプ、ジピリダモール、ドロプレニラミン、エフロキサート、四硝酸エリスリチル、エタフェノン、フェンジリン、フロレジル(floredil)、ガングレフェン、ヘレストロール(herestrol)ビス(β-ジエチルアミノエチルエーテル)、ヘキソベンジン、トシル酸イトラミン、ケリン、リドフラニン、六硝酸マンニトール、メジバジン(medibazine)、ニコルグリセリン(nicorglycerin)、四硝酸ペンタエリスリトール、ペントリニトロール、ペルヘキシリン、ピメチリン(pimethylline)、トラピジル、トリクロミル、トリメタジジン、リン酸トロールニトラートおよびビスナジンが挙げられる。特定の態様では、血管拡張薬は、慢性治療血管拡張薬(chronic therapy vasodilator)または高血圧性緊急症血管拡張薬(hypertensive emergency vasodilator)を含み得る。慢性治療血管拡張薬の非限定的な例としては、ヒドララジン(アプレゾリン)およびミノキシジル(ロニテン)が挙げられる。高血圧性緊急症血管拡張薬の非限定的な例としては、ニトロプルシド(ニプリド(nipride))、ジアゾキシド(ハイパースタットIV)、ヒドララジン(アプレゾリン)、ミノキシジル(ロニテン)およびベラパミルが挙げられる。
【0183】
f.その他の抗高血圧薬: その他の抗高血圧薬の非限定的な例としては、アジマリン、γ-アミノ酪酸、ブフェニオド、シクレタニン(cicletainine)、シクロシドミン、タンニン酸クリプテナミン、フェノルドパム、フロセキナン、ケタンセリン、メブタメート、メカミラミン、メチルドパ、メチル4-ピリジルケトンチオセミカルバゾン、ムゾリミン、パルギリン、ペンピジン、ピナシジル、ピペロキサン、プリマペロン、プロトベラトリン、ラウバシン、レシメトール、リルメニデン(rilmenidene)、サララシン、ニトロプルシド(nitrorusside)ナトリウム、チクリナフェン、カンシルさんトリメタファン、チロシナーゼおよびウラピジルが挙げられる。特定の態様では、抗高血圧薬は、アリールエタノールアミン誘導体、ベンゾチアジアジン誘導体、N-カルボキシアルキル(ペプチド/ラクタム)誘導体、ジヒドロピリジン誘導体、グアニジン誘導体、ヒドラジン/フタラジン、イミダゾール誘導体、第4級アンモニウム化合物、レセルピン誘導体またはスルホンアミド誘導体を含み得る。
【0184】
アリールエタノールアミン誘導体: アリールエタノールアミン誘導体の非限定的な例としては、アモスラロール、ブフラロール、ジレバロール、ラベタロール、プロネタロール、ソタロールおよびスルフィナロールが挙げられる。
【0185】
ベンゾチアジアジン誘導体: ベンゾチアジアジン誘導体の非限定的な例としては、アルチジド、ベンドロフルメチアジド、ベンゾチアジド、ベンジルヒドロクロロチアジド、ブチアジド、クロロチアジド、クロルタリドン、シクロペンチアジド、シクロチアジド、ジアゾキシド、エピチアジド、エチアジド、フェンキゾン、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチジド、メチクロチアジド、メチクラン、メトラゾン、パラフルチジド、ポリチジド(polythizide)、テトラクロルメチアジドおよびトリクロルメチアジドが挙げられる。
【0186】
N-カルボキシアルキル(ペプチド/ラクタム)誘導体: N-カルボキシアルキル(ペプチド/ラクタム)誘導体の非限定的な例としては、アラセプリル、カプトプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナラプリラット、ホシノプリル、リシノプリル、モベルトプリル、ペリンドプリル、キナプリルおよびラミプリルが挙げられる。
【0187】
ジヒドロピリジン誘導体: ジヒドロピリジン誘導体の非限定的な例としては、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニソルジピンおよびニトレンジピンが挙げられる。
【0188】
グアニジン誘導体: グアニジン誘導体の非限定的な例としては、ベタニジン、デブリソキン、グアナベンズ、グアナクリン、グアナドレル、グアナゾジン、グアネチジン、グアンファシン、グアノクロール、グアノキサベンズおよびグアノキサンが挙げられる。
【0189】
ヒドラジン/フタラジン: ヒドラジン/フタラジンの非限定的な例としては、ブドララジン、カドララジン、ジヒドララジン、エンドララジン、ヒドラカルバジン、ヒドララジン、フェニプラジン、ピルドララジンおよびトドララジンが挙げられる。
【0190】
イミダゾール誘導体: イミダゾール誘導体の非限定的な例としては、クロニジン、ロフェキシジン、フェントラミン、チアメニジンおよびトロニジンが挙げられる。
【0191】
四級アンモニウム化合物: 四級アンモニウム化合物の非限定的な例としては、臭化アザメトニウム、塩化クロリソンダミン、ヘキサメトニウム、ビス(メチル硫酸)ペンタシニウム(pentacynium bis(methylsulfate))、臭化ペンタメトニウム、ペントリニウム酒石酸塩、フェナクトロピニウムクロリドおよびメチル硫酸トリメチジニウムが挙げられる。
【0192】
レセルピン誘導体: レセルピン誘導体の非限定的な例としては、ビエタセルピン、デセルピジン、レシナミン、レセルピンおよびシロシンゴピンが挙げられる。
【0193】
スルホンアミド誘導体: スルホンアミド誘導体の非限定的な例としては、アンブシド、クロパミド、フロセミド、インダパミド、キネタゾン、トリパミドおよびキシパミドが挙げられる。
【0194】
血管収縮剤: 血管収縮剤は、一般的に、外科手術中に生じ得るショック時に血圧を上昇させるために使用される。抗低血圧剤としても知られている血管収縮剤の非限定的な例としては、アメジニウムメチル硫酸塩、アンジオテンシンアミド、ジメトフリン、ドーパミン、エチフェルミン、エチレフリン、ゲペフリン、メタラミノール、ミドドリン、ノルエピネフリン、フォレドリンおよびシネフリンが挙げられる。
【0195】
うっ血性心不全治療剤: うっ血性心不全の治療のための薬剤の非限定的な例としては、抗アンジオテンション(angiotension)II薬剤、後負荷-前負荷軽減治療(afterload-preload reduction treatment)、利尿剤および強心薬が挙げられる。
【0196】
a.後負荷-前負荷軽減: 特定の実施態様では、アンジオテンションアンタゴニストに耐えられない動物患者は併用療法で治療され得る。このような療法は、ヒドララジン(アプレゾリン)および二硝酸イソソルビド(イソルジル、ソルビトラート)の投与を合わせることができる。
【0197】
b.利尿剤: 利尿剤の非限定的な例としては、チアジドまたはベンゾチアジアジン誘導体(例えば、アルチアジド、ベンドロフルメタジド(bendroflumethazide)、ベンゾチアジド、ベンジルヒドロクロロチアジド、ブチアジド、クロロチアジド、クロロチアジド、クロルタリドン、シクロペンチアジド、エピチアジド、エチアジド、エチアジド、フェンキゾン、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチクロチアジド、メチクラン、メトラゾン、パラフルチジド、ポリチジド、テトラクロロメチアジド、トリクロルメチアジド)、有機水銀(例えば、クロルメロドリン、メラルリド(meralluride)、メルカンファミド(mercamphamide)、メルカプトメリンナトリウム、マーキュマリル酸(mercumallylic acid)、マーキュマチリンナトリウム(mercumatilin dodium)、塩化第一水銀、マーサリル(mersalyl))、プテリジン(例えば、フルテレン(furtherene)、トリアムテレン)、プリン(例えば、アセフィリン、7-モルホリノメチルテオフィリン、パモブロム(pamobrom)、プロテオブロミン、テオブロミン)、ステロイド(アルドステロンアンタゴニスト(例えば、カンレノン、オレアンドリン、スピロノラクトン)を含む)、スルホンアミド誘導体(例えば、アセタゾラミド、アンブシド(ambuside)、アゾセミド、ブメタニド、ブタゾールアミド、クロルアミノフェナミド(chloraminophenamide)、クロフェナミド、クロパミド、クロレキソロン、ジフェニルメタン-4,4'-ジスルホンアミド、ジスルファミド、エトキシゾラミド、フロセミド、インダパミド、メフルシド、メタゾラミド、ピレタニド、キネタゾン、トラセミド、トリパミド、キシパミド)、ウラシル(例えば、アミノメトラジン、アミソメトラジン)、カルシウム保持性アンタゴニスト(例えば、アミロライド、トリアムテレン)またはその他の利尿薬、例えばアミノジン(aminozine)、アルブチン、クロラザニル、エタクリン酸、エトゾリン、ヒドラカルバジン、イソソルビド、マンニトール、メトカルコン、ムゾリミン、ペルヘキシリン、チクリナフェン(ticrnafen)および尿素が挙げられる。
【0198】
c.強心薬: 強心剤としても知られている陽性強心薬(positive inotropic agent)の非限定的な例としては、アセフィリン、アセチルジギトキシン、2-アミノ-4-ピコリン、アムリノン、ヘミコハク酸ベンフロジル、ブクラデシン、セルベロシン(cerberosine)、カンフォタミド(camphotamide)、コンバラトキシン、シマリン、デノパミン、デスラノシド、ジギタリン、ジギタリス、ジギトキシン、ジゴキシン、ドブタミン、ドーパミン、ドペキサミン、エノキシモン、エリスロフレイン、フェナルコミン、ギタリン、ギトキシン、グリコシアミン、ヘプタミノール、ヒドラスチニン、イボパミン、ラナトシド、メタミバム(metamivam)、ミルリノン、ネリフォリン(nerifolin)、オレアンドリン、ウアバイン、オキシフェドリン、プレナルテロール、プロシラリジン、レシブホゲニン、シラレン、シラレニン、ストロファンチン、スルマゾール、テオブロミンおよびキサモテロールが挙げられる。特定の態様では、強心薬は、強心配糖体、βアドレナリンアゴニストまたはホスホジエステラーゼ阻害剤である。強心配糖体の非限定的な例としては、ジゴキシン(ラノキシン)およびジギトキシン(クリストジギン)が挙げられる。βアドレナリンアゴニストの非限定的な例としては、アルブテロール、バンブテロール、ビトルテロール、カルブテロール、クレンブテロール、クロルプレナリン、デノパミン、ジオキセテドリン、ドブタミン(ドブトレックス)、ドーパミン(イントロピン)、ドペキサミン、エフェドリン、エタフェドリン、エチルノルエピネフリン、フェノテロール、ホルモテロール、ヘキソプレナリン、イボパミン、イソエタリン、イソプロテレノール、マブテロール、メタプロテレノール、メトキシフェナミン、オキシフェドリン、ピルブテロール、プロカテロール、プロトキロール、レプロテロール、リミテロール、リトドリン、ソテレノール、テルブタリン、トレトキノール、ツロブテロールおよびキサモテロールが挙げられる。ホスホジエステラーゼ阻害剤の非限定的な例としては、アムリノン(イノコール)が挙げられる。
【0199】
d.抗狭心症薬: 抗狭心症薬は、有機硝酸塩、カルシウムチャネル遮断薬、β遮断薬およびそれらの組合せを含み得る。ニトロ血管拡張薬としても知られている有機硝酸塩の非限定的な例としては、ニトログリセリン(ニトロビッド、ニトロスタット)、二硝酸イソソルビド(イソルジル、ソルビトラート)および硝酸アミル(アスピロール、バポロール)が挙げられる。
【0200】
グアニル酸シクラーゼ刺激剤: グアニル酸シクラーゼ刺激剤の非限定的な例としては、リオシグアットが挙げられる。
【0201】
ネプリライシン(NEP)阻害剤: 一の実施態様では、本発明で使用するためのNEP阻害剤は、選択的NEP阻害剤である。さらなる実施態様では、本発明で使用するためのNEP阻害剤は、ACE阻害よりもNEP阻害に対して少なくとも300倍の選択性を有する阻害剤である。さらなる実施態様において、本発明で使用するためのNEP阻害剤は、ECE(エンドセリン変換酵素)阻害よりもNEP阻害に対して少なくとも100倍の選択性を有する阻害剤である。さらに別の実施形態では、本発明で使用するためのNEP阻害剤は、ACE阻害よりもNEP阻害に対して少なくとも300倍の選択性およびECE阻害よりもNEP阻害に対して100倍の選択性を有する阻害剤である。
【0202】
別の実施態様では、本発明で使用するためのNEP阻害剤は、以下の特許、特許出願または非特許刊行物に開示されているNEP阻害剤である:EP-1097719B1、EP-509442A、US-4929641、EP-599444B、US-798684、J. Med. Chem. (1993) 3821、EP-136883、US-4722810、Curr. Pharm. Design (1996) 443、J. Med. Chem. (1993) 87、EP-830863、EP-733642、WO9614293、WO9415908、WO9309101、WO9109840、EP-519738、EP-690070、Bioorg. Med. Chem. Lett. (1996) 65、EP-A-0274234、Biochem. Biophys. Res. Comm. (1989) 58、Perspect. Med. Chem. (1993) 45、またはEP-358398-B。これらの特許および刊行物の内容は、それらの全体として出典明示により本明細書の一部とする。別の実施態様では、本発明で使用するためのNEP阻害剤は、NEP阻害剤ホスホラミドン、チオルファン、カンドキサトリラト、カンドキサトリル、またはChemical Abstract Service (CAS) Number 115406-23-0の化合物である。
【0203】
別の実施態様では、本発明で使用するためのNEP阻害剤は、US2006/0041014A1(その内容は全体として出典明示により本明細書の一部とする)に開示されているNEP阻害剤である。別の実施態様では、本発明で使用するためのNEP阻害剤は、US特許5,217,996(その内容は全体として出典明示により本明細書の一部とする)に開示されているNEP阻害剤である。別の実施態様では、本発明で使用するためのNEP阻害剤は、US特許8,513,244(その内容は全体として出典明示により本明細書の一部とする)に開示されているNEP阻害剤である。別の実施態様では、本発明で使用するためのNEP阻害剤は、US特許5,217,996(その内容は全体として出典明示により本明細書の一部とする)に開示されているNEP阻害剤である。別の実施態様では、本発明で使用するためのNEP阻害剤は、US特許出願公開2013/0330365(その内容は全体として出典明示により本明細書の一部とする)に開示されているNEP阻害剤である。別の実施態様では、本発明で使用するためのNEP阻害剤は、US特許出願公開2016/0038494(その内容は全体として出典明示により本明細書の一部とする)に開示されているNEP阻害剤である。
【0204】
したがって、種々の実施態様では、本開示は、また、例えば方法1以降のいずれかに従って、イノトロピックおよび/またはルシトロピック機能不全によって特徴づけられる疾患または状態の治療、緩和または予防においてアデノシンA2受容体アゴニストの効果を増強するため、または例えば方法2以降のいずれかに従って、アデノシンA2受容体機能障害によって特徴づけられる疾患または状態の治療、緩和または予防においてアデノシンA2受容体機能を増強するための医薬組合せであって、PDE1阻害剤の有効量および1つ以上のさらなる治療薬を含む医薬組合せ[組合せ1]を提供する。
【0205】
1.1 PDE1阻害剤および1つ以上のさらなる治療薬が、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは伴って、単一の投与剤形、例えば錠剤またはカプセル剤内にある、組合せ1。
【0206】
1.2 PDE1阻害剤および1つ以上のさらなる治療薬が、例えば同時にまたは連続して投与するための説明書とともに、単一のパッケージ内にある、組合せ1。
【0207】
1.3 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式I'、II'、III'、またはIV'のうちの1つである、上記の組合せのいずれか。
【0208】
1.4 PDE1阻害剤が、
a. 遊離形態または薬学的に許容される塩形態、例えば一リン酸塩形態の、(6aR,9aS)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-((4-(6-フルオロピリジン-2-イル)フェニル)メチル)-シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン;
b. 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の7,8-ジヒドロ-2-(4-アセチルベンジル)-3-(4-フルオロフェニルアミノ)-5,7,7-トリメチル-[2H]-イミダゾ-[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン;および
c. 3-((4-フルオロフェニル)アミノ)-5,7,7-トリメチル-2-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)-7,8-ジヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン
から選択される、上記の組合せのいずれか。
【0209】
1.5 1つ以上のさらなる治療薬が、アデノシンA2アゴニスト、βアドレナリン受容体アンタゴニスト(すなわち、β遮断薬);ACE阻害剤;ネプリライシン阻害剤;抗高リポタンパク血症薬(例えば、アリールオキシアルカン酸/フィブリン酸誘導体、レジン/胆汁酸捕捉剤、HMG-CoA還元酵素阻害剤、ニコチン酸誘導体、甲状腺ホルモンまたは甲状腺ホルモンアナログまたはそれらの組合せ);抗動脈硬化症薬(例えば、ピリジノールカルバメート);グアニル酸シクラーゼ活性化薬;抗血栓薬および/または線維素溶解薬(例えば、抗凝固薬、抗凝固薬アンタゴニスト、血小板凝集阻害薬、血栓溶解薬、血栓溶解薬アンタゴニスト);血液凝固薬s(例えば、血栓溶解薬アンタゴニストおよび抗凝固薬アンタゴニスト);抗不整脈薬(例えば、ナトリウムチャネル遮断薬、再分極延長薬、カルシウムチャネル遮断薬);抗高血圧薬(例えば、交感神経遮断薬、α/β遮断薬、α遮断薬、抗アンジオテンシンII薬、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、血管拡張薬);アリールエタノールアミン誘導体;ベンゾチアジアジン誘導体;N-カルボキシアルキル(ペプチド/ラクタム)誘導体;ジヒドロピリジン誘導体;グアニジン誘導体;ヒドラジン/フタラジン;イミダゾール誘導体;四級アンモニウム化合物;レセルピン誘導体;スルホンアミド誘導体;血管収縮剤;利尿剤;強心薬;抗狭心症薬またはそれらの組合せから選択される、上記の組合せのいずれか。
【0210】
1.6 さらなる治療薬が、アデノシンA2アゴニスト、βアドレナリン受容体アンタゴニスト(すなわち、β遮断薬);ACE阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬;アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB);ネプリライシン阻害剤またはそれらの組合せから選択される、上記の組合せのいずれか。
【0211】
1.7 さらなる治療薬が、アデノシンA2アゴニストから選択される、上記の組合せのいずれか。
【0212】
1.8 さらなる治療薬が、CGS21680、ATL-146e、YT-146(すなわち、2-(1-オクチニル)アデノシン)、CGS-21680、DPMA(すなわち、N-6-(2-(3,5-ジメトキシフェニル)-2-(2-メチルフェニル)エチル)アデノシン)、レガデノソン(Regadenozone)、UK-432,097、リモネン、N-エチルカルボキシアミドアデノシン、CV-3146、ビノデノソンおよびBVT.115959から選択されるアデノシンA2アゴニスト、(S)-PHPNECA、BAY60-6583、LUF-5835、またはLUF-5845である、上記の組合せのいずれか。
【0213】
1.9 さらなる治療薬が、選択的A2Bアゴニストである、上記の組合せのいずれか。
【0214】
1.10 さらなる治療薬が、(S)-PHPNECA、BAY60-6583、LUF-5835、LUF-5845、およびN-エチルカルボキシアミドアデノシンから選択される選択的A2Bアゴニストである、上記の組合せのいずれか。
【0215】
1.11 治療されるべき疾患または状態が、狭心症、脳卒中、腎不全、本態性高血圧症、肺高血圧症、二次性高血圧症、孤立性収縮期高血圧症、糖尿病関連高血圧症、アテローム性動脈硬化症関連高血圧症、腎血管性高血圧症、うっ血性心不全、炎症性疾患または障害、線維症、心肥大、血管リモデリング、結合組織疾患または障害(例えば、マルファン症候群)、慢性心不全、心筋虚血、心筋低酸素症、再灌流傷害、左室機能不全(例えば、心筋梗塞、心室拡張)、血管漏出(すなわち、低酸素症の結果として生じる))、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)、または筋萎縮性側索硬化症である、上記の組合せのいずれか。
【0216】
1.12 PDE1阻害剤が、虚血または低酸素症に対してプレコンディションするためまたは心臓組織に保護を提供するために投与される、上記の組合せのいずれか。
【0217】
1.13 さらに、βアドレナリン受容体アンタゴニスト(すなわち、β遮断薬);ACE阻害剤;ネプリライシン阻害剤;抗高リポタンパク血症薬(例えば、アリールオキシアルカン酸/フィブリン酸誘導体、レジン/胆汁酸捕捉剤、HMG-CoA還元酵素阻害剤、ニコチン酸誘導体、甲状腺ホルモンまたは甲状腺ホルモンアナログまたはそれらの組合せ);抗動脈硬化症薬(例えば、ピリジノールカルバメート);グアニル酸シクラーゼ活性化薬;抗血栓薬および/または線維素溶解薬(例えば、抗凝固薬、抗凝固薬アンタゴニスト、血小板凝集阻害薬、血栓溶解薬、血栓溶解薬アンタゴニスト);血液凝固薬s(例えば、血栓溶解薬アンタゴニストおよび抗凝固薬アンタゴニスト);抗不整脈薬(例えば、ナトリウムチャネル遮断薬、再分極延長薬、カルシウムチャネル遮断薬);抗高血圧薬(例えば、交感神経遮断薬、α/β遮断薬、α遮断薬、抗アンジオテンシンII薬、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、血管拡張薬);アリールエタノールアミン誘導体;ベンゾチアジアジン誘導体;N-カルボキシアルキル(ペプチド/ラクタム)誘導体;ジヒドロピリジン誘導体;グアニジン誘導体;ヒドラジン/フタラジン;イミダゾール誘導体;四級アンモニウム化合物;レセルピン誘導体;スルホンアミド誘導体;血管収縮剤;利尿剤;強心薬;または抗狭心症薬の1つ以上を含む、上記の組合せのいずれか。
【0218】
いくつかの実施態様では、本開示は、また、例えば方法3以降のいずれかに従って、心毒性を治療、緩和または予防するための医薬組合せであって、PDE1阻害剤の有効量および1つ以上のさらなる心保護薬を含む医薬組合せ[組合せ2]を提供する。
【0219】
2.1 PDE1阻害剤および1つ以上のさらなる治療薬が、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは伴って、単一の投与剤形、例えば錠剤またはカプセル剤内にある、組合せ2。
【0220】
2.2 PDE1阻害剤および1つ以上のさらなる治療薬が、例えば同時にまたは連続して投与するための説明書とともに、単一のパッケージ内にある、組合せ2。
【0221】
2.3 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式I'、II'、III'またはIV'のうちの1つである、上記の組合せのいずれか。
【0222】
2.4 PDE1阻害剤が、
a. 遊離形態または薬学的に許容される塩形態、例えば一リン酸塩形態の、(6aR,9aS)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-((4-(6-フルオロピリジン-2-イル)フェニル)メチル)-シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン;
b. 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の7,8-ジヒドロ-2-(4-アセチルベンジル)-3-(4-フルオロフェニルアミノ)-5,7,7-トリメチル-[2H]-イミダゾ-[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン;および
c. 3-((4-フルオロフェニル)アミノ)-5,7,7-トリメチル-2-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)-7,8-ジヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン
から選択される、上記の組合せのいずれか。
【0223】
2.5 1つ以上のさらなる心保護薬が、鉄キレート剤(例えば、デクスラゾキサン)、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)、β遮断薬(例えば、カルベジロール、メトプロロールまたはネビボロール)、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)、スタチン、抗酸化剤(すなわち、ジヒドロミリセチン、バージンオリーブオイルからの抗酸化剤、ゴマ油、セサミン、サリドロシド、メラトニン、グルタチオン、コエンザイムQ10、ビタミン、ケルセチン、イソラムネチン、カンナビジオール、レスベラトロール)、Mdivi-1、メトホルミン、N-アセチルシステイン、フェネチルアミン、アミホスチン、プロスタサイクリン(PGI2)、メロキシカム、ジアゾキシド、カルボキシマルトース鉄、レシチン化ヒト組換えスーパーオキシドジスムターゼ、グレリン、L-カルニチン、モルシドミン、ジドックス、α-リノレン酸およびニコランジルから選択される、上記の組合せのいずれか。
【0224】
2.6 1つ以上のさらなる心保護薬が、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)、β遮断薬(例えば、カルベジロールまたはネビボロール)、および鉄キレート剤(例えば、デクスラゾキサン)から選択される、上記の組合せのいずれか。
【0225】
本明細書で用いられる「PDE1阻害剤」は、例えば固定化金属親和性粒子試薬PDEアッセイにおいて1μM未満、好ましくは750nM未満、より好ましくは500nM未満、より好ましくは50nM未満のIC50を有する、cGMPのホスホジエステラーゼ媒介(例えば、PDE1媒介、特にPDE1B媒介)加水分解を選択的に阻害する化合物をいう。
【0226】
「本開示化合物」または「本開示のPDE1阻害剤」というフレーズまたは同様の用語は、本明細書に開示されている化合物の全て、例えば式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII、式VIII、式IX、式X、または式XIで示される化合物を包含する、。
【0227】
「治療」および「治療すること」という用語は、したがって、疾患の症状の予防および治療または改善、ならびに疾患の原因の治療を包含するものとして理解されるべきである。
【0228】
治療の方法について、「有効量」という用語は、特定の疾患または障害を治療するための治療上有効な量を包含することを意図している。
【0229】
本明細書で用いられる「プレコンディション」という用語は、血液供給の喪失または酸素に対する耐性を生み出すための心臓組織の治療を指すことを意図している。虚血性プレコンディショニングは、虚血の短いエピソードが繰り返されることにより、その後の虚血性発作から心筋を保護する固有のプロセスである。
【0230】
「患者」という用語は、ヒトまたは非ヒト(すなわち、動物)の患者を含む。特定の実施態様では、本開示は、ヒトおよび非ヒトの両方を包含する。別の実施形態では、本開示は非ヒトを包含する。他の実施形態では、この用語はヒトを包含する。
【0231】
本開示で使用される「含む」という用語は、制限がないこと(open-ended)を意図しており、追加の、記載されていない要素または方法のステップを除外するものではない。
【0232】
遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、本開示化合物、例えば上記のような式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、XおよびXIは、唯一の治療薬として使用することができるが、他の活性薬剤と組み合わせてまたは共投与のために使用することもできる。
【0233】
本開示を実施する際に使用される投薬量は、もちろん、例えば治療される特定の疾患または状態、使用される特定の開示化合物、投与方法、および望ましい治療法に応じて変化する。開示の化合物は、経口、非経口、経皮、または吸入を含む適切な経路で投与することができるが、好ましくは経口で投与する。一般的に、例えば上記の疾患の治療のための、満足のいく結果は、約0.01から2.0mg/kgのオーダーの用量での経口投与で得られることが示される。したがって、より大きな哺乳動物、例えばヒトでは、経口投与のための示された一日投与量は、約0.75~150mgの範囲であり、好都合には、毎日1回または2~4回の分割用量で投与されるか、または徐放形態で投与される。したがって、経口投与用の単位剤形は、例えば、薬学的に許容される希釈剤または担体と一緒に、開示化合物約0.2~75または150mg、例えば約0.2または2.0から50、75または100mgを含み得る。
【0234】
本開示化合物を含む医薬組成物は、慣用の希釈剤または賦形剤、および生薬技術(galenic art)で知られている技術を使用して調製することができる。したがって、経口剤形としては、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁液などが挙げられ得る。
【実施例
【0235】
実施例1: イヌ/ウサギ対マウス/ラットにおけるPDE1A対PDE1Cアイソフォーム発現
心筋で主にPDE1Cを発現する哺乳動物で実験モデルを確立するために、ヒト、イヌ、ウサギ、ラットおよびマウスでタンパク質および遺伝子発現を調べる。安楽死させた成体C57BL/6Jマウス、Sprague Dawleyラット、雑種犬、ニュージーランド白ウサギから心臓組織を迅速に切除し、洗浄した後、液体窒素中で凍結する。ヒト心筋組織はUniversity of Pennsylvaniaの組織バンクから、ドナー対照心臓および末期心筋症心臓(摘出)から得た。心臓は、氷冷心筋保護液を用いて管理された外科的処置の下で採取され、氷上で輸送され、その後まもなく液体窒素中でスナップ冷凍された。次に、組織を、種特異的プライマーおよび抗体を用いて、PDE1A、1Bおよび1CのmRNA発現およびタンパク質発現について分析する。
【0236】
TRIzol試薬(Thermo Fisher Scientific Inc., Waltham, MA)を用いて、酸性グアニジニウムチオシアネート-フェノール-クロロホルム法により凍結組織からRNAを抽出する。RNA 1μgを、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Thermo Fisher Scientific)およびT100サーマルサイクラー(Bio-Rad Laboratories, Inc., Hercules, California)を用いてcDNAに逆転写する。リアルタイムPCRは、CFX384 Real-Time System(Bio-Rad Laboratories)を用いて、TaqMan Gene Expression Master Mix or Power SYBR Green PCR Master Mix(Thermo Fisher Scientific)を用いて行う。ヒト、イヌ、ラットおよびマウスの組織のPCR分析のためにTaqManプライマー/プローブ(Thermo Fisher Scientific)を用いる。相対的なmRNA発現レベルは、ΔΔCt法により決定される。ウサギのプライマー配列は以下の通りである:PDE1A(F)5'-TGGTGGCCCAGTCACAAATA-3'(R)5'-AATGGTGGTTGAACTGCTTG-3';PDE1B(F)5'-CTGTCGGAGATCGAGGTCTTG-3'(R)5'-GGTGCCCGTGTGCTCATAG-3';PDE1C(F)5'-CAGATGGAATAAAGCGGCATTC-3'(R)5'-GGCAAGGTGAGACGACTTGTAGA-3';GAPDH(F)5'-TGGTGAAGGTCGGAGTGAAC-3'(R)5'-ATGTAGTGGAGGTCAATGAATGG-3'。
【0237】
凍結した組織をホモジナイズし、RIPAライシスバッファーで超音波洗浄する。遠心分離(XX、30分)後、タンパク質濃度を、上清からBCAアッセイ(Thermo Fisher Scientific)によって決定する。等量のタンパク質をトリス-グリシンゲル上にロードし、100Vで75~90分間走らせる。ゲルタンパク質を、Trans-Blot Turbo Transfer System(Bio-Rad)を用いてセミドライブロッティングによってニトロセルロース膜に転写させる。膜を、4℃で一夜、一次抗体と一緒にインキュベートする。蛍光標識二次抗体(LI-COR, Inc., Lincoln, NE)および洗液と一緒にインキュベートした後、信号を、Odyssey Imaging System(LI-COR)を使用して検出する。抗体は以下の通りである:PDE1A(sc-50480、Santa Cruz Biotechnology;ab96336、Abcam)、PDE1B(ab182565、Abcam)、PDE1C(sc-376474、Santa Cruz Biotechnology;ab14602、Abcam)、GAPDH(#2118、Cell Signaling Technology;ab9484、Abcam;IMG-3073、Imgenex)。
【0238】
このようにして、ヒト、イヌ、ウサギの心筋は主にPDE1Cを発現し、ラットやマウスの心筋の発現プロファイルとは逆にPDE1Aの発現量が少ないことが明らかになった。イヌでは心不全によって発現プロファイルは有意に変化しない。ヒト左心室(LV)は、転写産物レベルでは圧倒的にPDE1Cを発現するが、一部のPDE1Aも存在している。タンパク質レベルでは、正常ではPDE1Cが優勢であり、末期心不全になるとPDE1Aが増加する。PDE1Bは、試験したどの種の心臓でも検出されないが、脳には存在する。
【0239】
実施例2: 大型哺乳動物(すなわち、イヌ)の正常・不全心におけるPDE1阻害のin vivo解析
PDE1Cを発現する2匹の哺乳動物、イヌおよびウサギにおける強力なPDE1阻害剤(化合物1)の効果を正常心臓および不全心の両方で試験する研究が行われ、その結果をβアドレナリン調節と対比させた。これらの動物は、心筋組織のmRNAおよびタンパク質レベルでPDE1C>>PDE1Aを発現するので、選択された。
【0240】
化合物1(分子量=605、(6aR,9aS)-2-(4-(6-フルオロピリジン-2-イル)ベンジル)-5-メチル-3-(フェニル-アミノ)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロシクロペンタ-[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4-(2H)-オン・一リン酸塩)[上記の(6aR,9aS)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-((4-(6-フルオロピリジン-2-イル)フェニル)メチル)-シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン・一リン酸塩の別名]はIntra-Cellular Therapies, Inc.(New York, NY)によって合成された。完全長組換えr-hPDE1A、1Bおよび1Cに対するそのKiは、それぞれ34、380および37pMであり、次に近いPDEファミリー酵素であるPDE4D(Ki=33nM)と比較して1000倍以上のPDE1アイソフォームに対する活性を有し、他のすべてのPDE酵素ファミリーと比較して104~3×105倍の選択性を有する。以下の実施例で使用されるさらなる医薬品は、ドブタミン(Hospira Inc., Lake Forest, IL)、エスモロールHCl(Mylan, Rockford, IL)、MRS1754(Tocris Bioscience, Bristol, UK)、およびHespan(0.9%NaCl中6%Hetastarch、B. Braun Medical Inc., Bethlehem, PA)である。
【0241】
in vivoイヌ研究法
意識下圧力-容積血行動態解析のために、成犬雑種(25~30kg;n=6)に左室ソノマイクロメーター、マイクロメーター、下大静脈カフオクルダー、ならびに動脈および静脈留置カテーテルを慢性的に装着する。犬は、200bpmで2週間タキペーシング(tachypacing)によって拡張型心筋症を誘発する前と後の意識下状態で研究される。これらの犬は、経口および静脈内化合物1の効果、およびβ1アドレナリン刺激との相互作用を決定するために、別々の日に研究される。
【0242】
経口薬物投与: 化合物1(0.1~10mg/kg)をピーナッツバター中のゼラチンカプセル中で投与し、その後の1時間にわたって血行動態データを記録する。動物のサブセットにおいて、イヌに最初にドブタミンを15分間(10μg/kg/分)注入し、新たなベースラインを確立し、次いで化合物1の経口投与量を投与し、化合物1の投与の90分後にドブタミンを併用療法として追加する。
【0243】
静脈内薬物投与: 化合物1を0.05Mクエン酸リン酸緩衝液に溶解し、中心静脈カテーテルを介して1~2分かけてボーラスとして投与する。試験では、0.01mg/kgおよび0.1mg/kgの2つの用量を用い、後者は最初の用量の30分後に投与された。
【0244】
静脈内血液をK2EDTAチューブに入れ、2,000gで15分間遠心分離し、血漿をデカンテーションし、凍結保存する。化合物1のレベルは、迅速で感度の高い液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC/MS-MS)によって評価される。化合物1の分析のために、1%のギ酸を含むアセトニトリルとの単一の液-液抽出ステップを用い、その後、Waters Ostro Platesを使用して脂質を除去するために真空濾過を行う。
【0245】
HPLC分離は、50mm×3mm、2.7μmの寸法のAscentis(登録商標) Express Phenyl Hexylカラム上で、重水素化化合物1の内部標準物質を用いて行う。移動相は、0.2%NH3H2Oを含む5mM重炭酸アンモニウム中で4.5分間にわたる60~100%メタノールの勾配液で構成され、0.8mL/分の流速でポンピングする。分析時間は4.5分であり、分析物および内部標準物質ともに2.0分前後で溶出した。化合物1の検出には、Multiple reactions monitoring(MRM)モードを使用する。MSは陽イオン検出モードで操作される。定量的最適化の際に化合物1および内部標準物質に選択した前駆体から生成物へのイオン(Q1→Q3)は、それぞれ(m/z)508.1→321.1と513.1→325.1であった。検量線は、イヌ血漿サンプルマトリックス中の0.02~500ng/mLの範囲で直線的であった。血漿の定量下限(LLOQ)は0.02ng/mLであった。
【0246】
初期用量滴定試験では、正常な意識のあるイヌに0.1~10mg/kg、POの範囲で化合物1を曝露し、薬力学的アッセイを実施した。投与120分後の10mg P.O.では、血漿中化合物1濃度は、正常イヌで103.9±8.5ng/mL、HFイヌで178.4±100.5ng/mLである。正常イヌでは0.1mg/kg i.v.で、血漿中の化合物1濃度は数分以内にピークとなり、10分後に211.2±60.7ng/mLに、30分後に94.5±21.2ng/mLに低下した。不全のイヌでは、IV投与後の血漿中の化合物1濃度は、10分後に441.4±92.5ng/mL、30分後に184.9±28.9ng/mLであった。
【0247】
正常および不全のイヌ心臓における急性PDE1阻害による心血管機能の変化
急性PDE1阻害の効果を評価するために、健常または不全心の無傷のイヌにおいて、圧力-容積関係の試験を行い、化合物1(10mg/kg)の経口投与のベースラインおよびその2時間後の血行動態および心臓力学を解析した。対照イヌおよび心不全(HF)イヌの両方において、LV予圧(拡張末期容積)または収縮期血圧にはほとんど変化がなく、収縮力の増加(収縮末期エラスタンスの上昇)があった。正常イヌでは、化合物1は収縮期血圧を変化させることなく、心拍数を増加させ、全身の血管抵抗を減少させ、心拍出量を増加させた。収縮力の負荷不感応指標(dP/dtmax/IPおよびPRSW)が増加した。圧力低下ピーク率(dP/dtmin)および弛緩時定数(tau)に反映される弛緩も改善した。同様の薬効が、特に収縮力と血管拡張において、HFイヌでも観察された。心拍数の増加は、HF動物では鈍化した(2-way ANOVAによる相互作用ではp=0.07)。このように、化合物1の正味の効果は、全身の血圧を変化させることなく、対照群では心拍出量を50%(HF群では32%)増加させることであった。
【0248】
静脈内化合物1は、正常およびHFの両方の条件で同様の効果をもたらすが、反応はより迅速で、5~10分後にピークとなった。0.01mg/kg(10分後の血漿中化合物1濃度23.6±8.6ng/mL)では、心拍数以外のすべての反応は無視できる程度であった。しかしながら、0.1mg/kg(10分後の血漿中化合物1濃度211.2±60.7ng/mL)では、正のクロノトロピック、イノトロピック、ルシトロピックおよび血管拡張反応が認められ、10mg/kg経口投与時と同様の心拍出量の純増が認めらた。これらの効果は心不全で再びわずかに軽減されたが、イノトロピー、ルシトロピーおよび血管拡張性は有意に改善されたままであった。
【0249】
PDE1阻害の血行動態効果はドブタミンに相加的である
化合物1の急性心血管効果は、cGMP関連の反応ではなくcAMP関連の反応を示唆している。これは、その正味の影響がβアドレナリン経路のドブタミンとの共活性化と重複しているかまたは増幅されているかどうかの疑問を提起した。10μg/kg/分のドブタミンを、10mg/kg化合物1を用いてまたは用いずにイヌに投与した。ドブタミンは、PVループ面積を増加させ(脳卒中ワークを示している)、各ループの上隅を左にシフトさせた(収縮力の増加を示している);化合物1を追加すると、両方がさらに強化された。これらの効果は相加的であることが観察された。これは、2-way ANOVAから交互作用項を評価することによって定量化された。同様の結果が、対照および不全心で得られた。
【0250】
これらの動物から血漿を得、cAMPおよびcGMPをELISAによって測定する。ドブタミン(化合物1ではない)は正常イヌにおいて血漿中のcAMPを増強し、その上昇は化合物1の有無にかかわらず同様であった。HFイヌでは、cAMPはベースラインで上昇し、薬剤によって有意な変化はなかった(1-way RMANOVA、p=0.3)が、併用すると有意に上昇した。血漿中cGMPは、正常モデルおよびHFモデルのいずれの条件においても変化しなかった。
【0251】
PDE1阻害の心血管効果はβアドレナリンシグナル伝達とは独立しているが、アデノシンA2B受容体シグナル伝達を必要とする。
サイクリックAMPは、主に刺激性Gタンパク質(Gs)を介して活性化された膜貫通型アデニルシクラーゼによって生成され、心筋細胞ではβアドレナリン、アデノシン(主にA2B)、グルカゴン、プロスタノイド、ヒスタミン、セロトニンのすべてがGsと結合している。本研究では、βアドレナリン受容体とアデノシン受容体に焦点を当て、後者については、cAMP依存性の収縮力を直接刺激することが報告されているA2B受容体に焦点を当てた。麻酔したウサギに、選択的β1遮断薬エスモロールまたはアデノシンA2BR遮断薬MRS-1754による前治療を伴ってまたは伴わずに、ボーラス静脈内化合物1を0.1mg/kg(イヌの結果に基づく用量)で投与する。イヌの場合と同様に、急性PDE1阻害のみでは、収縮力の上昇(収縮期末期エラスターンスおよび負荷前リクルート可能な脳卒中ワークが50%上昇)に起因して心拍出量が増加し、心拍数が緩やかに上昇し、全身抵抗が低下したが、収縮期血圧には変化はなかった。リラクゼーションの変化は控えめであり、LV予圧(拡張末期および容積)に変化はなかった;しかしながら、血管拡張薬と強心薬を組み合わせた反応は、心室/動脈結合比、Ees/Eaを2倍に増加させた。
【0252】
これらの実験を、βAR受容体を遮断するためにエスモロールを投与した後に繰り返す。化合物1はもはやHRを増加させないが、その収縮作用および血管拡張作用はそのまま残っている。重要なことに、このエスモロール用量は10μg/kg/分のドブタミンに対する心臓反応を効果的にブロックした。ウサギの別のセットにおいて、化合物1を、A2BR遮断薬であるMRS-1754を用いてまたは用いずに投与する。これにより、心拍数、収縮力および血管拡張を含む化合物1に対する心血管応答のすべてが除去された。どちらの阻害剤の前処理も単独では、心血管血行動態に有意な影響を与えない。このように、βAR遮断によって阻止もされる心拍数を除いて、化合物1によるPDE1阻害の急性心血管効果には、A2BRシグナル伝達ではなくβARシグナル伝達が必要とされる。
【0253】
心拍数自体は心機能および血行動態に影響を与え、これは化合物1単独でまたはエスモロールもしくはMRS-1754と一緒に処置された動物の間で異なっていたので、追加の研究は、ウサギが心拍数を一定に固定するために洞結節速度よりも約20%速く心房ペーシングされているように行われる。化合物1は、心拍数の変更を許可されている場合として、これらの条件の下でほぼ同じ応答を誘導し、これらの効果は再びエスモロールによって変更されないが、MRS-1754によって完全にブロックされる。
【0254】
実施例2: 正常および不全の心臓における小型哺乳動物(すなわち、ウサギ)におけるPDE1阻害のin vivo解析
in vivoウサギ研究法
ニュージーランド白ウサギ(雄、2~3kg)を35mg/kgのケタミンと5mg/kgのキシラジンで鎮静化し、挿管および換気(Model 683、Harvard Apparatus, Holliston, MA)を行い、イソフルラン吸入(1~2%)で麻酔を維持する。圧力-容積カテーテル(SPR-894、Millar, Inc., Houston, TX)を総頸動脈を介して挿入し、LVの頂点まで進め、2-Frペーシングカテーテルを右頸静脈を介して右心房に配置し、心房ペーシングを提供する。4-Frバーマンバルーンカテーテル(AI-07134、Teleflex, Wayne, PA)を、静脈還流を一時的に閉塞し、プレロードの変動を防ぐために、大腿静脈を介して下大静脈(IVC)に配置する。平行コンダクタンスは、高張性生理食塩水注入法によって決定される。ウサギに、動脈圧を安定化させるために処置中に生理食塩水中6%のヘタスターチを注入する。すべての医薬品を静脈内投与する: A)化合物1(0.1mg/kg)を、β1受容体アンタゴニストエスモロール(0.5mg/kgボーラス注入後、0.05mg/kg/分の連続注入)の事前注入を伴うかまたは伴わずに、1~2分間にわたってボーラス注入として投与する。これらの用量はまた、βアドレナリン受容体遮断の有効性を実証するために、10μg/kg/分のドブタミンに対して試験される。B)アデノシンA2B受容体アンタゴニストMRS1754(1mg/kg iv)のボーラス注射を伴うかまたは伴わない、化合物1(0.1mg/kg)。
【0255】
静脈内血液をK2EDTAチューブに入れ、2,000gで15分間遠心分離し、血漿をデカンテーションし、凍結保存する。化合物1のレベルを、迅速で感度の高い液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC/MS-MS)によって評価する。化合物1の分析のために、1%のギ酸を含むアセトニトリルとの単一の液-液抽出ステップを用い、その後、Waters Ostro Platesを使用して脂質を除去するために真空濾過を行った。
【0256】
HPLC分離を、50mm×3mm、2.7μmの寸法のAscentis(登録商標) Express Phenyl Hexylカラム上で、重水素化化合物1の内部標準物質を用いて行う。移動相は、0.2%NH3H2Oを含む5mM重炭酸アンモニウム中で4.5分にわたる60~100%メタノールの勾配液で構成され、0.8mL/minの流速でポンピングする。分析時間は4.5分であり、分析物および内部標準物質ともに2.0分前後で溶出した。化合物1の検出には、Multiple reactions monitoring (MRM)モードを使用する。MSは陽イオン検出モードで操作される。定量的最適化の際に化合物1および内部標準物質に選択した前駆体から生成物へのイオン(Q1→Q3)は、それぞれ(m/z)508.1→321.1および513.1→325.1であった。検量線は、イヌ血漿サンプルマトリックス中の0.02~500ng/mLの範囲で直線的であった。血漿の定量下限(LLOQ)は0.02ng/mLであった。
【0257】
ウサギへの0.1mg/kgのi.v.投与では、15分後の血漿値は213±88ng/mLであった。マウスのi.v.投与15分後の血漿値は334±74ng/mLであった。治療レベルは100~300ng/mLであるため、P.O.については120分後、i.v.については20分後に分析を行った(ウサギおよびマウスでは、速度論が速いためやや早い)。
【0258】
化合物1は、単離されたウサギ心筋細胞のcAMPを介した収縮力を増強する。
PDE1阻害が心筋細胞の収縮およびカルシウムトランジェントに直接影響を与えるかどうかを試験するために、正常な成体ウサギ筋細胞を用いて研究を行う。対照として、イソプロテレノール(Iso、50nM)を投与し、これは、サルコメア短縮およびピークCa2+の両方を増加させ、両方の崩壊時間を加速する。対照的に、化合物1は1mMでも効果がない。広範囲のPDE阻害剤(IBMX、100μM)の添加は、短縮および収縮/カルシウム崩壊速度を増加させたが、ピークカルシウムトランジェントを変化させなかった。PDE1は、影響を与えるために十分なcAMPおよびCa2+を必要とするので、アデニル酸シクラーゼ活性化剤であるフォルスコリン(FSK)に対して用量反応を行い、控えめではあるが有意なイノトロピック効果をもたらす最低用量(1μM)を決定した。この用量を最初に適用すると、化合物1の添加は、短縮およびリラクゼーション/カルシウム崩壊速度を有意に増加させる。ピークカルシウムトランジェントは依然として変化しない。
【0259】
化合物1+FSKとFSKとの同一期間のインキュベーションを比較して、時間制御試験を行う。これにより、化合物1によるサルコメア短縮の上昇はFSK単独での上昇を上回ることが確認される。FSK単独、FSK+化合物1、およびFSK+IBMXを比較すると、選択的PDE1阻害によるサルコメア短縮率の相対的上昇はIBMXの上昇の31%である。しかしながら、カルシウムリラクゼーションについては、化合物1はIBMXで達成された最大値の67%の時定数を短縮する。
【0260】
実施例3: 正常および不全心のマウスにおけるPDE1阻害のin vivo解析
化合物1は無傷のマウスでは急性心血管系への影響はない。
イヌ、ウサギおよびマウスの間のアイソフォームの不一致により、cAMPのPDE1Aの調節がPDE1Cと比較してはるかに少ないので、マウスが急性化合物1に類似した反応をしないかもしれないことが予測された。これを試験するために、マウスにイヌおよびウサギで使用されているものと同じかそれ以上の用量(0.1、0.5mg/kg)の静脈内ボーラスを投与し、ウサギと同様の調製物を用いて試験した。その結果により、高用量でも、PDE1Aを優勢に発現するマウスの心臓が有意な血行動態や心臓の変化を示さなかったことが示された。
【0261】
実施例4: 正常および不全心におけるPDE1阻害試験の比較と結論
実施例1~3の試験は、我々の実験モデルでは、ヒトに存在する条件であるLV心筋におけるPDE1Cの顕著な発現を必要とする、高度に選択的なPDE1阻害剤(化合物1)からの強力な心血管効果を明らかにした。主にPDE1Aを発現するマウスでは無視できる反応が観察された。これは、大型哺乳動物におけるPDE1阻害による心血管効果についての初めての報告であり、この結果はトランスレーショナルな関連性があると考えられる。化合物1は、全身の血管拡張はあるが、最小限の静脈拡張を伴い、収縮力およびルシトロピー(10μg/kg/分のドブタミンと同様)を増加させることが判明した。その結果、動脈収縮期血圧を変化させることなく、心拍出量が純増する。in vivoでのβAR刺激とは異なり、PDE1阻害は血漿cAMPを上昇させず、その効果はβAR遮断によって抑制されるのではなく、A2BR阻害によって阻止される。これらの変化は心拍数の高速化と関連しているが、心不全によって心拍数の変化が鈍化し、エスモロールまたは定速ペーシングによって遮断されるため、それによって駆動されるものではないが、イノトロピック/血管拡張薬作用は持続する。ウサギの筋細胞のデータは、PDE1がAC刺激されたcAMPを制御して収縮およびカルシウムトランジェント崩壊の速度を変更することを示しているが、ピークカルシウムを変更しない;後者はまた、βAR刺激とは異なる。以上のことから、化合物1のプロファイルおよびHFモデルにおけるその有効性は、臨床的な可能性を持つ新規のメカニズムを示している。
【0262】
化合物1はin vivoでは血漿中の環状ヌクレオチドの変化を誘導しないが、AC刺激のプライミングのみでの筋細胞の短縮、リラクゼーションおよびカルシウム崩壊速度の増大は、cAMPの標的化を支持している。化合物1を用いたin vivoでのcAMPの血漿中上昇の欠如およびin vitroでのピーク筋細胞カルシウムトランジェントの両方は、異なるcAMPコンパートメントがβAR刺激とPDE1阻害との間で調節されていることをさらに支持している。このことは、ウサギモデルにおいてエスモロールが化合物1の効果を阻害しなかったことによって最も直接的に裏付けられている。ドブタミンおよびPDE3阻害剤のようなcAMPを増強するHF療法は、歴史的に急性期には有用であったが、慢性的に使用すると有害であるため、これらの結果は重要である。βAR受容体経路ではなくアデノシン受容体経路に関与する化合物1のプロファイルにより、cAMPシグナルを共有しているにもかかわらず、異なる心血管系への影響が予測される。
【0263】
心臓は、A1、2A、A2BおよびA3を含む複数のアデノシン受容体を発現する。A1RおよびA3Rの両方とも、抑制性のGタンパク質(Gi,0)およびGq/11シグナル伝達に結び付き、βAR刺激を鈍らせる。対照的に、A2AおよびA2Bは両方とも刺激性のGs-cAMPと結びついているが、前者による収縮の調節はA1R-抗アドレナリン作用を鈍らせることに関係しているかもしれないが、A2BRはより直接的な効果があると報告されている。これまでの研究では、虚血保護におけるA2BRの重要性、およびヒト心不全における利益が報告されている。これまでの研究では、A2BRが肝細胞のPDE3B調節および肺気道上皮細胞のPDE4D調節に結びついていることしか確認されておらず、今回のPDE1との関連データは新規性が高い。
【0264】
PDE1は筋細胞の可溶性画分に見られ、T管ミトコンドリア接合部を反映している可能性のある筋状の分布パターンを示す。化合物1(+FSK)からの筋細胞におけるカルシウム上昇のピークの欠如は、PDE3およびPDE4によって知られているL型カルシウムチャネルから離れたPDE1の分布を支持している。A2BRはまた、血管組織および線維芽細胞においても見出され、ここでは、増殖、血管緊張を調節し、抗線維化シグナル伝達を提供する。興味深いことに、PDE1阻害はcAMPおよびcGMPの両方が関与する経路を介して抗線維化作用も示し(本研究の注意点は、ラットおよびマウスを用いて行われたことである)、平滑筋の増殖に重要な役割を果たしている。このように、PDE1阻害とA2B経路との関連は、急性期の血行動態にとどまらない意味合いを持っていると考えられる。
【0265】
実施例5: ウサギ単離筋細胞におけるPDE3阻害と比較した化合物1の筋細胞収縮力およびカルシウムに対する効果
ウサギの筋細胞を単離して、心筋細胞の収縮および全細胞のCa2+トランジェントに対するPDE1阻害の効果を決定し、PDE3阻害剤シロスタミド(Cil、1μM)との結果を比較した。Cilで処理した細胞では、サルコメアの短縮率およびピークCa2+トランジェントが上昇し、それらの崩壊速度が加速されましたが、これは化合物1(1μM)では観察されなかった。
【0266】
βARシグナル伝達の調節におけるPDE1およびPDE3の影響を比較するために、細胞を最初に非飽和量のイソプロテレノール(Iso)に曝露し、次にIsoをCilまたは化合物1のいずれかと組み合わせて曝露した。予想されたように、Isoはサルコメア短縮およびピークCa2+を増加させ、リラクゼーション時間を早めることができた。Cilの添加は、さらにサルコメア短縮を増加させ(p=0.0002)、ピークCa2+はベースラインよりも上昇したままであった(p=0.001)。化合物1をIsoに添加しても、サルコメア短縮はそれ以上変化せず、ピーク-Ca2+はIso前のベースラインと有意差がなかった。このことは、PDE1はβARシグナル伝達とは相互作用しないが、PDE3は相互作用することを示している。
【0267】
βARとは無関係にcAMPを増強する別のアプローチは、フォルスコリン(Fsk)を用いてアデニル酸シクラーゼを直接刺激することである。依然として有意なイノトロピック作用(1μM)を生じる非飽和Fsk用量を同定するために用量応答試験を実施した。FskにCilを添加すると、サルコメア短縮、ピーク-Ca2+トランジェント、およびCa2+トランジェントのより速い崩壊の増加をもたらした。FSKに化合物1を添加した場合、Cilと同様にサルコメア短縮は増加したが、Cilと比較して有意に少ないピークCa2+トランジェントの対応する増加は見られなかった。驚くべきことに、FSKと化合物1との組み合わせは、Cilと同様にCa2+の崩壊速度を増加させた。
【0268】
最後に、Iso、Cil、化合物1、およびそれらの組み合わせの筋細胞のcAMPに対する効果を試験した。サルコメア短縮およびCa2+トランジェントの増加にもかかわらず、Iso、Cilおよびそれらの組み合わせは、全細胞のcAMPを測定可能なほど増加させなかった。化合物1、またはIsoと化合物1の組み合わせはどちらも増加させなかった。これは、βARから局所的に生成されたcAMPを示す先行研究と一致しており、PDE3によるその変調は、全細胞溶解物32で容易に検出されていない局所的な細胞内ドメインで生じる。Fskは、cAMPの上昇をもたらし、Cilの添加によって変化しないが、それは化合物1を添加することによって実質的に増加した。後者は、Fskに広範なPDE阻害剤IBMXを追加することによって評価されるように最大変化の約半分に達した。まとめると、これらのデータは、βARによって調節されないがアデニル酸シクラーゼの直接の刺激で明らかにすることができるPDE1の調節の下で別のプールのcAMPを識別する。
【0269】
これらの研究では、PDE1阻害効果とPDE3阻害効果に格差があることが明らかになった。PDE3阻害は収縮およびピークCa2+トランジェントを増強し、βAR刺激を増幅させるが、PDE1阻害はそうではない。PDE1阻害はCa2+を増加させずにFsk刺激によるcAMPおよび細胞短縮を増大させるが、PDE3阻害は短縮とCa2+の両方を増大させるが、全細胞の測定可能なcAMPを増加させない。以上の結果から、βARアゴニズムおよびPDE3阻害薬とは異なる化合物1の薬理学的プロファイルが明らかになっており、新たなメカニズムに関与するHF臨床治療薬としての潜在的な有用性が示唆されている。
【0270】
本研究では、PDE1によるミクロドメイン調節の証拠は、我々が筋細胞機能の刺激およびカルシウムの処理を刺激することを示したすべての用量で(同一濃度で)、Iso、Cil、またはIso+Cil刺激にもかかわらず、ほとんど変化を示さなかった全細胞のcAMP測定によって提供された。Fskは、それが直接アデニル酸シクラーゼを標的とするので、複数のコンパートメントでのcAMP合成を刺激し、ここでは、我々は化合物1でさらに増加したcAMPの上昇を検出した;Isoと化合物1の組み合わせは、cAMPを変化させなかった。これは、PDE1阻害によるcAMPの上昇はFskによって影響を受けたがβ-AR共刺激によっては影響を受けなかった成体マウス筋細胞のFRETバイオセンサーを使用した先行研究と一致している。FskとFsk+Cilと類似していると思われるこのcAMPは、異なるコンパートメントが関与していることが示唆された。
【0271】
PDE1によって制御されるサブ細胞内のcAMPシグナル伝達コンパートメントの詳細は明らかにされていないが、本研究の結果は、βAR活性化またはPDE3阻害によるcAMP調節の違いを支持する実質的な証拠を提供するものである。PDE1はPDE3阻害により生じるものとは異なり、βAR刺激(in vivoおよびin vitro)を増強することができなかった。さらに、化合物1は全Ca2+トランジェントを増強しなかったが、これはIso刺激+/-PDE3阻害で観察される。Ca2+の増加の欠如は、化合物1がFskと組み合わせた場合のように、細胞機能を増強した場合でも見られた。対照的に、PDE3阻害は、機能およびCa2+の両方を増加させた。PDE3阻害剤に関する以前の安全性の懸念はしばしば不整脈を含む筋細胞のCa2+を増加させることへの影響を指摘していたので、これは注目に値する。機能的な改善にもかかわらず、細胞内のCa2+の増加がないことは、PDE1阻害が、おそらくサルコメアタンパク質のリン酸化を強化して筋フィラメントのカルシウム感受性を改善することを示唆している。さらにまた、ピークレベルがわずかに低下した場合でも、Ca2+の減少速度を加速する化合物1の能力、これは、内部のCa2+リサイクルを調節し、細胞内のCa2+の流入を調節しないことを示唆している。
本願は、下記の態様も包含する。
[態様1]
イノトロピックおよび/またはルシトロピック機能不全によって特徴づけられる疾患または状態の治療、緩和または予防においてアデノシンA 2 受容体アゴニストの効果を増強する方法および/またはアデノシンA 2 受容体機能障害によって特徴づけられる疾患または状態の治療、緩和または予防においてアデノシンA 2 受容体機能を増強する方法であって、これを必要とする患者にPDE1阻害剤の有効量を投与することを含む、方法。
[態様2]
PDE1阻害剤が、
A) エナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む、遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式I':
【化16】
[式中、
(i)R 1 は、HまたはC 1-4 アルキル(例えば、メチル)であり;
(ii)R 4 は、HまたはC 1-4 アルキルであり、R 2 およびR 3 は、独立して、HまたはC 1-4 アルキル(例えば、R 2 およびR 3 は共にメチルであるか、またはR 2 はHであり、R 3 はイソプロピルである)、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシ、または(場合によってはヘテロ)アリールアルキルであるか;または
2 はHであり、R 3 およびR 4 は一緒になってジ-、トリ-またはテトラメチレン架橋を形成し(好ましくはR 3 およびR 4 が一緒になってシス配置を有しており、例えば、R 3 およびR 4 を担持する炭素はそれぞれR配置およびS配置を有する);
(iii)R 5 は、例えばハロアルキルで置換されている、置換ヘテロアリールアルキルであるか;または
5 は、式Iのピラゾロ部分の窒素の1つに結合しており、式A:
【化17】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R 8 、R 9 、R 11 およびR 12 は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり、R 10 は、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ハロゲンで置換されていてもよい、ピリジル(例えば、ピリジン-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル))、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、ヘテロアリールカルボニル、またはアルコキシカルボニルである;ただし、X、YまたはZが窒素である場合、それぞれ、R 8 、R 9 またはR 10 は存在しない)
で示される部分であり;
(iv)R 6 は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、アリールアミノ(例えば、フェニルアミノ)、ヘテロアリールアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、N,N-ジアリールアミノ、またはN-アリール-N-(アリールアルキル)アミノ(例えば、N-フェニル-N-(1,1'-ビフェン-4-イルメチル)アミノ)であり;
(v)nは0または1であり;
(vi)nが1である場合、Aは、-C(R 13 14 )-であり、
ここで、R 13 およびR 14 は、独立して、HまたはC 1-4 アルキル、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシまたは(場合によってはヘテロ)アリールアルキルである]
で示される化合物;
B) 遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式II':
【化18】
[式中、
(i)Xは、C 1-6 アルキレン(例えば、メチレン、エチレンまたはプロパ-2-イン-1-イレン)であり;
(ii)Yは、単結合、アルキニレン(例えば、-C≡C-)、アリーレン(例えば、フェニレン)またはヘテロアリーレン(例えば、ピリジレン)であり;
(iii)Zは、H、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジル、例えば、ピリダ-2-イル)、ハロ(例えば、F、Br、Cl)、ハロC 1-6 アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、-C(O)-R 1 、-N(R 2 )(R 3 )、またはNもしくはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC 3-7 シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、またはモルホリニル)であり;
(iv)R 1 は、C 1-6 アルキル、ハロC 1-6 アルキル、-OHまたは-OC 1-6 アルキル(例えば、-OCH 3 )であり;
(v)R 2 およびR 3 は、独立して、HまたはC 1-6 アルキルであり;
(vi)R 4 およびR 5 は、独立して、H、C 1-6 アルキルまたはアリール(例えば、フェニル)(これは、1個以上の、ハロで置換されていてもよい(例えば、フルオロフェニル、例えば、4-フルオロフェニル)、ヒドロキシで置換されていてもよい(例えば、ヒドロキシフェニル、例えば、4-ヒドロキシフェニルまたは2-ヒドロキシフェニル)またはC 1-6 アルコキシで置換されていてもよい)であり;
(vii)ここで、X、YおよびZは、独立して、1個以上の、ハロ(例えば、F、ClまたはBr)、C 1-6 アルキル(例えば、メチル)、ハロC 1-6 アルキル(例えば、トリフルオロメチル)で置換されていてもよく、例えば、Zは、1個以上の、ハロ(例えば、6-フルオロピリダ-2-イル、5-フルオロピリダ-2-イル、6-フルオロピリダ-2-イル、3-フルオロピリダ-2-イル、4-フルオロピリダ-2-イル、4,6-ジクロロピリダ-2-イル)、ハロC 1-6 アルキル(例えば、5-トリフルオロメチルピリダ-2-イル)またはC 1-6 -アルキル(例えば、5-メチルピリダ-2-イル)で置換されている、ヘテロアリール、例えばピリジルであるか、またはZは、1個以上のハロ(例えば、4-フルオロフェニル)で置換されている、アリール、例えばフェニルである]
で示される化合物;
C) 遊離形態または塩形態の、式III':
【化19】
[式中、
(i)R 1 は、HまたはC 1-4 アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(ii)R 2 およびR 3 は、独立して、HまたはC 1-6 アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii)R 4 は、HまたはC 1-4 アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iv)R 5 は、独立して、-C(=O)-C 1-6 アルキル(例えば、-C(=O)-CH 3 )およびC 1-6 -ヒドロキシアルキル(例えば、1-ヒドロキシエチル)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(v)R 6 およびR 7 は、独立して、H、または独立してC 1-6 アルキル(例えば、メチルまたはエチル)およびハロゲン(例えば、FまたはCl)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり、例えば、非置換フェニル、または1個以上のハロゲン(例えば、F)で置換されているフェニル、または1個以上のC 1-6 アルキルおよび1個以上のハロゲンで置換されているフェニル、または1個のC 1-6 アルキルおよび1個のハロゲンで置換されているフェニル、例えば4-フルオロフェニルまたは3,4-ジフルオロフェニルまたは4-フルオロ-3-メチルフェニルであり;
(vi)nは、1、2、3または4である]
で示される化合物;または
D) 遊離形態または塩形態の、式IV':
【化20】
[式中、
(vi)R 1 は、C 1-4 アルキル(例えば、メチルまたはエチル)、または-NH(R 2 )であり、ここで、R 2 は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば4-フルオロフェニルであり;
(vii)X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり;
(viii)R 3 、R 4 およびR 5 は、独立して、HまたはC 1-4 アルキル(例えば、メチル)であるか;またはR 3 はHであり、R 4 およびR 5 は一緒になってトリメチレン橋を形成し(好ましくはR 4 およびR 5 が一緒になってシス配置を有しており、例えば、R 4 およびR 5 を担持する炭素はそれぞれR配置およびS配置を有する)、
(ix)R 6 、R 7 およびR 8 は、独立して、
H、
1-4 アルキル(例えば、メチル)、
ヒドロキシで置換されているピリダ-2-イル、または
-S(O) 2 -NH 2 であり;
ただし、X、Yおよび/またはZがNである場合、それぞれ、R 6 、R 7 および/またはR 8 は存在せず;また、X、YおよびZが全てCである場合、R 6 、R 7 またはR 8 のうち少なくとも1つは、-S(O) 2 -NH 2 、またはヒドロキシで置換されているピリダ-2-イルである]
で示される化合物
のうちの1つである、態様1記載の方法。
[態様3]
PDE1阻害剤が、
a) 遊離形態または薬学的に許容される塩形態、例えば一リン酸塩形態の(6aR,9aS)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-((4-(6-フルオロピリジン-2-イル)フェニル)メチル)-シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン;
b) 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の7,8-ジヒドロ-2-(4-アセチルベンジル)-3-(4-フルオロフェニルアミノ)-5,7,7-トリメチル-[2H]-イミダゾ-[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン;および
c) 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の3-((4-フルオロフェニル)アミノ)-5,7,7-トリメチル-2-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)-7,8-ジヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン
から選択される、態様1または2記載の方法。
[態様4]
疾患または状態が、狭心症、脳卒中、腎不全、本態性高血圧症、肺高血圧症、二次性高血圧症、孤立性収縮期高血圧症、糖尿病関連高血圧症、アテローム性動脈硬化症関連高血圧症、腎血管性高血圧症、うっ血性心不全、炎症性疾患または障害、線維症、心肥大、血管リモデリング、結合組織疾患または障害(例えば、マルファン症候群)、慢性心不全、心筋虚血、心筋低酸素症、再灌流傷害、左室機能不全(例えば、心筋梗塞、心室拡張)、血管漏出(すなわち、低酸素症の結果として生じる))、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)、または筋萎縮性側索硬化症、慢性心不全、心筋炎症、線維症、心筋虚血、心筋低酸素症、再灌流傷害、左室機能不全(例えば、心筋梗塞、心室拡張)、血管漏出(すなわち、低酸素症の結果として生じる)、急性血管炎症(すなわち、血管損傷の結果として生じる)、または心肥大である、いずれかの上記態様に記載の方法。
[態様5]
治療されるべき疾患または状態が心不全である、いずれかの上記態様に記載の方法。
[態様6]
PDE1阻害剤が、アデノシンA 2 アゴニスト、βアドレナリン受容体アンタゴニスト(すなわち、β遮断薬);ACE阻害剤;ネプリライシン阻害剤;抗高リポタンパク血症薬(例えば、アリールオキシアルカン酸/フィブリン酸誘導体、レジン/胆汁酸捕捉剤、HMG-CoA還元酵素阻害剤、ニコチン酸誘導体、甲状腺ホルモンまたは甲状腺ホルモンアナログまたはそれらの組合せ);抗動脈硬化症薬(例えば、ピリジノールカルバメート);グアニル酸シクラーゼ活性化薬;抗血栓薬および/または線維素溶解薬(例えば、抗凝固薬、抗凝固薬アンタゴニスト、血小板凝集阻害薬、血栓溶解薬、血栓溶解薬アンタゴニスト);血液凝固薬(例えば、血栓溶解薬アンタゴニストおよび抗凝固薬アンタゴニスト);抗不整脈薬(例えば、ナトリウムチャネル遮断薬、再分極延長薬、カルシウムチャネル遮断薬);抗高血圧薬(例えば、交感神経遮断薬、α/β遮断薬、α遮断薬、抗アンジオテンシンII薬、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、血管拡張薬);アリールエタノールアミン誘導体;ベンゾチアジアジン誘導体;N-カルボキシアルキル(ペプチド/ラクタム)誘導体;ジヒドロピリジン誘導体;グアニジン誘導体;ヒドラジン/フタラジン;イミダゾール誘導体;四級アンモニウム化合物;レセルピン誘導体;スルホンアミド誘導体;血管収縮剤;利尿剤;強心薬;抗狭心症薬またはそれらの組合せから選択される別の治療薬と組み合わせて投与される、上記方法のいずれか。
[態様7]
イノトロピックおよび/またはルシトロピック機能不全によって特徴づけられる疾患または状態の治療、緩和または予防においてアデノシンA 2 受容体アゴニストの効果を増強する方法を含み、アデノシンA 2 受容体アゴニストが、アデノシンA 2B 受容体アゴニストであり、該効果が、PDE1によるcAMPの分解を阻害することによって環状ヌクレオチドのアデノシンA 2 媒介上昇を増強または延長することである、上記方法のいずれか。
[態様8]
アデノシンA 2 受容体アゴニストが内在性アデノシンを含む、態様7記載の方法。
[態様9]
アデノシンA 2 受容体機能障害によって特徴づけられる疾患または状態の治療、緩和または予防においてアデノシンA 2 受容体機能を増強することを含み、該アデノシンA 2 受容体機能障害が、(i)内在性アデノシンに対するアデノシンA 2B 受容体の反応性の低下および/または(ii)心臓損傷または心不全に応答した内在性アデノシンの放出および/または産生の低下によって特徴づけられる、いずれかの上記態様に記載の方法。
[態様10]
PDE1阻害剤が、0.01mg/kg~10mg/kgの濃度で投与される、いずれかの上記態様に記載の方法。
[態様11]
患者がヒトであり、PDE1阻害剤が経口一日量1~10mgで投与される、いずれかの上記態様に記載の方法。
[態様12]
患者がヒトであり、PDE1阻害剤が経口一日量0.5~20mg、例えば1~10mgで投与され、PDE1阻害剤が、
a) 遊離形態または薬学的に許容される塩形態、例えば一リン酸塩形態の(6aR,9aS)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-((4-(6-フルオロピリジン-2-イル)フェニル)メチル)-シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン;
b) 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の7,8-ジヒドロ-2-(4-アセチルベンジル)-3-(4-フルオロフェニルアミノ)-5,7,7-トリメチル-[2H]-イミダゾ-[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン;および
c) 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の3-((4-フルオロフェニル)アミノ)-5,7,7-トリメチル-2-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)-7,8-ジヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン
から選択される、態様11記載の方法。
[態様13]
イノトロピックおよび/またはルシトロピック機能不全によって特徴づけられる疾患または状態の治療、緩和または予防におけるアデノシンA 2 受容体アゴニストの効果の増強、および/またはアデノシンA 2 受容体機能障害によって特徴づけられる疾患または状態の治療、緩和または予防におけるアデノシンA 2 受容体機能の増強において用いるための、単独の活性薬剤としての、または1つ以上のさらなる治療薬との医薬組合せにおける、PDE1阻害剤。
[態様14]
方法1以降よび方法2以降から選択される方法、ならびに組合せ1以降から選択される医薬組合せを包含する、特に実施例を参照する、本明細書の先に記載の全ての方法およびプロダクト。
[態様15]
心毒性を治療、緩和または予防する方法であって、これを必要とする患者にPDE1阻害剤の有効量を投与することを含む、方法。
[態様16]
PDE1阻害剤の投与が、アデノシンA 2 シグナル伝達を増強するのに有効な量で投与される、態様15記載の方法。
[態様17]
PDE1阻害剤の投与が、アデノシンA 2A またはアデノシンA 2B の発現の増加を誘発する、態様16記載の方法。
[態様18]
心毒性が、心毒性治療または薬の投与の結果として生じる、態様15~17のいずれかに記載の方法。
[態様19]
心毒性治療または薬が、放射線療法および/または化学療法剤である、態様18記載の方法。
[態様20]
心毒性治療が化学療法剤である、態様19記載の方法。
[態様21]
化学療法剤が、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、シクロホスファミド、イホスファミド、シスプラチン、カルムスチン、ブスルファン、クロルメチン、マイトマイシン、パクリタキセル、エトポシド、テニポシド、ビンカアルカロイド、フルオロウラシル、シタラビン、アムサクリン、クラドリビン、アスパラギナーゼ、トレチノインおよび/またはペントスタチンである、態様20記載の方法。
[態様22]
心毒性治療が放射線療法である、態様18記載の方法。
[態様23]
心毒性の治療、緩和または予防のための医薬組合せであって、PDE1阻害剤の有効量と、例えばアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)、β遮断薬(例えば、カルベジロールまたはネビボロール)、および鉄キレート剤(例えば、デクスラゾキサン)から選択される、1つ以上のさらなる心保護薬を含む医薬組合せ。