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特許7401461導電性接着シート、積層体、および発熱装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】導電性接着シート、積層体、および発熱装置
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20231212BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20231212BHJP
   H01B 1/24 20060101ALI20231212BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20231212BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231212BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20231212BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20231212BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231212BHJP
   H05B 3/14 20060101ALI20231212BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01B5/14 Z
H01B1/22 D
H01B1/24 D
H01B1/00 H
B32B27/00 M
B32B7/022
B32B27/18 J
C09J7/38
H05B3/14 F
H05B3/20 346
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020561408
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2019049157
(87)【国際公開番号】W WO2020129894
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2018235604
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】森岡 孝至
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅春
(72)【発明者】
【氏名】萩原 佳明
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-96111(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158543(WO,A1)
【文献】特開昭63-227687(JP,A)
【文献】特開平10-214676(JP,A)
【文献】特表2003-509820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/14
H01B 1/22
H01B 1/24
H01B 1/00
B32B 27/00
B32B 7/022
B32B 27/18
C09J 7/38
H05B 3/14
H05B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接着剤層と、
第2の接着剤層と、
前記第1の接着剤層及び前記第2の接着剤層の間に配置された第3の層と、を有し、
前記第1の接着剤層の25℃における貯蔵弾性率は、2.5×10Pa未満であり、
前記第3の層の25℃における貯蔵弾性率は、2.5×10Pa以上であり、
前記第1の接着剤層に複数の導電性線状体が配置されている、
導電性接着シート。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性接着シートにおいて、
前記第1の接着剤層の厚みt1と、前記導電性線状体の直径d1とが、下記数式(数1)の関係を満たす、
導電性接着シート。
0.4×d1≦t1≦1.2×d1…(数1)
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の導電性接着シートにおいて、
前記第2の接着剤層の25℃における貯蔵弾性率は、2.5×10Pa未満である、
導電性接着シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の導電性接着シートにおいて、
前記導電性線状体は、導電性ワイヤーである、
導電性接着シート。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の導電性接着シートにおいて、
前記導電性線状体は、金属ワイヤーを含む線状体、カーボンナノチューブを含む線状体、及び、糸に導電性被覆が施された線状体からなる群から選択される少なくとも1種である、
導電性接着シート。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の導電性接着シートにおいて、
前記第3の層は、熱可塑性エラストマー層である、
導電性接着シート。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の導電性接着シートにおいて、
前記第1の接着剤層の25℃における貯蔵弾性率が、2.0×10Pa未満である、
導電性接着シート。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の導電性接着シートにおいて、
前記第3の層の25℃における貯蔵弾性率が、3.5×10Pa以上である、
導電性接着シート。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の導電性接着シートと、
被着体と、を有し、
前記被着体は、算術平均粗さRaが、1μm以上150μm以下である第1の被着体表面を有し、
前記第1の被着体表面に前記第2の接着剤層が貼着されている、
積層体。
【請求項10】
請求項9に記載の積層体と、
電極と、を有する、
発熱装置。
【請求項11】
請求項10に記載の発熱装置において、
前記電極と、前記複数の導電性線状体とが、電気的に接続されている、
発熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性接着シート、積層体、および発熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の導電性線状体が間隔をもって配列された疑似シート構造体を有する導電性接着シートは、発熱装置の発熱体、発熱するテキスタイルの材料、及びディスプレイ用保護フィルム(粉砕防止フィルム)等、種々の物品の部材に利用できる可能性がある。
導電性線状体を発熱体として利用する場合、電気的接続の観点から、導電性線状体の配置方法について、様々な検討がなされている。
例えば、特許文献1には、車内を加熱する加熱素子を生成および付与する方法が開示されている。この方法は、該加熱素子が、所定のパターンの動作位置で伸びる少なくとも1つの電子加熱ループを規定する加熱ワイヤからなり、該加熱ワイヤを一時キャリアの少なくとも1つの側部上に位置付ける工程と、接着剤を、該キャリア上、少なくとも該加熱ワイヤが該キャリア上に存在する領域上および該加熱ワイヤ上に付与する工程であって、該加熱ワイヤを該キャリアの表面に接着させる工程と、該加熱ワイヤを有する該キャリアを、該加熱素子が密接に接触する最終基板に運ぶ工程と、該基板に対して該加熱ワイヤを押しつけて、該接着剤を加熱し、該基板に該ワイヤを接着させる工程と、該キャリアを取り除き、該加熱ワイヤが該キャリアから解放されて該基板に接着され、該車内を加熱するための該加熱素子を形成する工程とを包含する。
【0003】
特許文献2には、平板状のゴム状弾性体の片面に円筒状の空隙が複数列平行して内接させて設けられ、該空隙に発熱線が埋め込まれて成ることを特徴とする面状発熱体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2003-509820号公報
【文献】特開平10-214676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の加熱素子においては、硬化前の柔らかい接着剤が、加熱ワイヤー上に付与されるので、その後の工程で電極を設置した場合に、加熱ワイヤーと電極との導通が取りにくくなる。
また、特許文献2に記載の面状発熱体は、ゴム状弾性体に、発熱線を配置する空隙を別途設ける必要があるので、工程が煩雑になる。
一方、複数の導電性線状体を備える導電性接着シートは、近年、凹凸の比較的大きい被着体もしくは変形し易い被着体に貼付して用いるという用途がある。しかしながら、凹凸の比較的大きい被着体等に導電性接着シートを貼付すると、導電性線状体が接着剤層の内部に埋まり込むことがある。このような導電性線状体の埋まり込みは、例えば、導電性接着シートに電極を設置した際に、導電性線状体と電極との接触不良を生じる要因となる。
【0006】
本発明の目的は、接着剤層の内部への導電性線状体の埋まり込みを抑制できる導電性接着シート、導電性接着シートを有する積層体、及び発熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、第1の接着剤層と、第2の接着剤層と、前記第1の接着剤層及び前記第2の接着剤層の間に配置された第3の層と、を有し、前記第1の接着剤層の25℃における貯蔵弾性率は、2.5×10Pa未満であり、前記第3の層の25℃における貯蔵弾性率は、2.5×10Pa以上であり、前記第1の接着剤層に複数の導電性線状体が配置されている、導電性接着シートが提供される。
【0008】
本発明の一態様に係る導電性接着シートにおいて、前記第1の接着剤層の厚みt1と、前記導電性線状体の直径d1とが、下記数式(数1)の関係を満たすことが好ましい。
0.4×d1≦t1≦1.2×d1…(数1)
【0009】
本発明の一態様に係る導電性接着シートにおいて、前記第2の接着剤層の25℃における貯蔵弾性率は、2.5×10Pa未満であることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係る導電性接着シートにおいて、前記導電性線状体は、導電性ワイヤーであることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る導電性接着シートにおいて、前記導電性線状体は、金属ワイヤーを含む線状体、カーボンナノチューブを含む線状体、及び、糸に導電性被覆が施された線状体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る導電性接着シートにおいて、前記第3の層は、熱可塑性エラストマー層であることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係る導電性接着シートにおいて、前記第1の接着剤層の25℃における貯蔵弾性率が、2.0×10Pa未満であることが好ましい。
【0014】
本発明の一態様に係る導電性接着シートにおいて、前記第3の層の25℃における貯蔵弾性率が、3.5×10Pa以上であることが好ましい。
【0015】
本発明の一態様によれば、前述の本発明の一態様に係る導電性接着シートと、被着体と、を有し、前記被着体は、算術平均粗さRaが、1μm以上150μm以下である第1の被着体表面を有し、前記第1の被着体表面に前記第2の接着剤層が貼着されている、積層体が提供される。
【0016】
本発明の一態様によれば、前述の本発明の一態様に係る積層体と、電極と、を有する、発熱装置が提供される。
【0017】
本発明の一態様に係る発熱装置において、前記電極と、前記複数の導電性線状体とが、電気的に接続されていることが好ましい。
【0018】
本発明によれば、接着剤層の内部への導電性線状体の埋まり込みを抑制できる導電性接着シート、導電性接着シートを有する積層体、及び発熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第一実施形態に係る導電性接着シートを示す概略図である。
図2図1のII-II断面を示す断面図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る積層体の一態様を示す概略図である。
図4図3のIII-III断面を示す断面図である。
図5】本発明の第三実施形態に係る発熱装置の一態様を示す概略図である。
図6】本発明の第四実施形態に係る発熱装置の一態様を示す概略平面図である。
図7図6に示すA部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第一実施形態]
以下、本発明について実施形態を例に挙げて、図面に基づいて説明する。本発明は実施形態の内容に限定されない。なお、図面においては、説明を容易にするために拡大又は縮小をして図示した部分がある。
【0021】
<導電性接着シート>
本実施形態の導電性接着シート10は、図1及び図2に示すように、例えば、第1の接着剤層12と、第2の接着剤層14と、第1の接着剤層12及び第2の接着剤層14の間に配置された第3の層16と、を有している。
第1の接着剤層12には、複数の導電性線状体18が、互いに間隔をもって配置されている。本実施形態において、導電性線状体18は、図2に示すように、一部が第1の接着剤層12から露出している。
本明細書では、複数の導電性線状体18が互いに間隔をもって配列された構造体を「疑似シート構造体20」と称する。
疑似シート構造体20は、導電性線状体18が露出する第一面20Aと、第一面20Aとは反対側で第3の層16の側の第二面20Bと、を有する。
第1の接着剤層12は、導電性線状体18が露出する側の第一接着面12Aと、第一接着面12Aとは反対側で第3の層16の側の第二接着面12Bと、を有する。
第2の接着剤層14は、第3の層16の側の第一接着面14Aと、第一接着面14Aとは反対側の第二接着面14Bと、を有する。
第3の層16は、第1の接着剤層12の側の第一面16Aと、第一面16Aとは反対側で第2の接着剤層14の側の第二面16Bと、を有する。
つまり、本実施形態の導電性接着シート10は、第2の接着剤層14と、第3の層16と、第1の接着剤層12と、をこの順に有し、疑似シート構造体20の第二面20Bと、第3の層16の第一面16Aとが対面するように、疑似シート構造体20が第1の接着剤層12に配置されている。
【0022】
本実施形態において、第1の接着剤層12の25℃における貯蔵弾性率は、2.5×10Pa未満である。また、第3の層16の25℃における貯蔵弾性率は、2.5×10Pa以上である。
第1の接着剤層12の25℃における貯蔵弾性率(以下、「第1の接着剤層12の貯蔵弾性率」とも称する)が、2.5×10Pa未満であるとは、第1の接着剤層12が、第3の層16に対して変形し易い層であることを表している。
第3の層16の25℃における貯蔵弾性率(以下、「第3の層16の貯蔵弾性率」とも称する)が、2.5×10Pa以上であるとは、第3の層16が、第1の接着剤層12に対して変形しにくい層であることを表している。
【0023】
本実施形態の導電性接着シート10によれば、凹凸の比較的大きい被着体もしくは変形し易い被着体に貼付させたときであっても、導電性線状体18が第1の接着剤層12の内部に埋まり込むことが抑制される(以下、「本実施形態の効果」とも称する)。
なお、凹凸の比較的大きい被着体もしくは変形し易い被着体の詳細は後述する。
本実施形態の効果が得られる理由は以下のように推測される。
本実施形態の導電性接着シート10は、第1の接着剤層12および第2の接着剤層14の間に、25℃における貯蔵弾性率が2.5×10Pa以上の第3の層16、すなわち、変形しにくい層を介在させ、この第3の層16上の第1の接着剤層12に複数の導電性線状体18を配置する。
本実施形態の導電性接着シート10は、この構成により、第1の接着剤層12が被着体の表面状態(例えば、凹凸の度合い及び柔らかさの度合い等)の影響を受けにくくなると考えられる。その結果、第1の接着剤層12の表面形状が保持され易くなり、第1の接着剤層12の内部への導電性線状体18の埋まり込みが抑制されると考えられる。さらに、本実施形態の導電性接着シート10は、上記構成により、例えば、第2の接着剤層14を被着体の表面に貼着した際に、被着体の表面の凹凸が第1の接着剤層12の表面に露出することも抑制されるので、第1の接着剤層12の接着力も確保される。したがって、導電性接着シート10に電極を設置した際に、導電性線状体18と電極との電気的接続が良好になる。
一方、導電性線状体の埋まり込みを抑制するために、導電性線状体が配置される接着剤層の硬度を高めることも考えられるが、単に、接着剤層の硬度を高めた場合、導電性線状体と接着剤層との密着性が低下し易くなる。そこで、本実施形態の導電性接着シート10では、第1の接着剤層12および第2の接着剤層14の間に第3の層16を介在させ、この第3の層16の貯蔵弾性率と、導電性線状体18が配置される第1の接着剤層12の貯蔵弾性率とをそれぞれ調整することで、導電性線状体18と第1の接着剤層12との密着性を確保している。
なお、本実施形態の導電性接着シート10は、凹凸の比較的大きい被着体および変形し易い被着体以外の被着体であっても、本実施形態の効果が発現される。
【0024】
本実施形態の導電性接着シート10の好ましい態様について説明する。
【0025】
(25℃における貯蔵弾性率)
・第1の接着剤層12の貯蔵弾性率
第1の接着剤層12の貯蔵弾性率は、2.5×10Pa未満であり、2.0×10Pa未満であることが好ましく、1.5×10Pa未満であることがより好ましく、1.0×10Pa未満であることがさらに好ましい。第1の接着剤層12の貯蔵弾性率の下限値は、1.0×10Pa以上であることが好ましい。
第1の接着剤層12の貯蔵弾性率が、2.5×10Pa未満であると、導電性線状体との密着性が確保される。
【0026】
・第3の層16の貯蔵弾性率
第3の層16の貯蔵弾性率は、2.5×10Pa以上であり、2.8×10Pa以上であることが好ましく、3.0×10Pa以上であることがより好ましく、3.5×10Pa以上であることがさらに好ましく、5.0×10Pa以上であることが特に好ましい。第3の層16の貯蔵弾性率の上限値は、被着体の凹凸に対する追従性の低下を抑制するという観点から、3.0×10Pa以下であることが好ましい。
第3の層16の貯蔵弾性率が、2.5×10Pa以上であると、第1の接着剤層12の表面形状が保持され易くなり、第1の接着剤層12の内部への導電性線状体18の埋まり込みが抑制され易くなる。
【0027】
・第2の接着剤層14の貯蔵弾性率
第2の接着剤層14の貯蔵弾性率は、2.5×10Pa未満であることが好ましく、2.0×10Pa未満であることがより好ましく、1.0×10Pa未満であることがさらに好ましい。第2の接着剤層14の貯蔵弾性率の下限値は、1.0×10Pa以上であることが好ましい。
第2の接着剤層14の貯蔵弾性率が、2.5×10Pa未満であると、例えば、第2の接着剤層14に被着体を貼り付けた場合に、被着体への追従性が良好になり、被着体との密着性および接着力が向上し易くなる。
【0028】
第1の接着剤層12、第3の層16、および第2の接着剤層14の貯蔵弾性率を上記範囲に調整する方法としては、例えば、各層を構成する樹脂種を選択する方法、その樹脂の重量平均分子量を調整する方法、樹脂が共重合体である場合、モノマーの配合割合を調整する方法、および各種添加剤の添加量を調整する方法等が挙げられる。
25℃における貯蔵弾性率の測定方法の詳細は、実施例の項に記載する。
【0029】
本実施形態の導電性接着シート10において、第1の接着剤層12の厚みt1と、導電性線状体18の直径d1とは、下記数式(数1)の関係を満たすことが好ましく、下記数式(数1A)の関係を満たすことがより好ましく、下記数式(数1B)の関係を満たすことがさらに好ましい。
第1の接着剤層12の厚みt1が、導電性線状体18の「直径d1×0.4以上」であると、第1の接着剤層12と導電性線状体18との密着性が確保され易くなる。また、第1の接着剤層12の厚みt1が、導電性線状体18の「直径d1×0.4以上」であると、第1の接着剤層12の接着力が確保され易くなる。
第1の接着剤層12の厚みt1が、導電性線状体18の「直径d1×1.2以下」であると、導電性線状体18が、第1の接着剤層12から露出した状態を維持しやすくなり、導電性線状体18と電極との電気的接続が良好になる。「直径d1×1.2超」であると、導電性線状体18が第1の接着剤層12に埋まり易くなり、電極との電気的接続が不良となり易い。
0.4×d1≦t1≦1.2×d1…(数1)
0.6×d1≦t1≦1.0×d1…(数1A)
0.75×d1≦t1≦0.95×d1…(数1B)
【0030】
第1の接着剤層12の厚みt1は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、第1の接着剤層12の断面を観察し、無作為に選んだ5箇所で、第1の接着剤層12の厚みt1を測定し、その平均値とする。
第1の接着剤層12の厚みt1の好ましい範囲については後述する。
導電性線状体18の直径d1は、デジタル顕微鏡を用いて、疑似シート構造体20の導電性線状体18を観察し、無作為に選んだ5箇所で、導電性線状体18の直径d1を測定し、その平均値とする。
導電性線状体18の直径d1の好ましい範囲については後述する。
【0031】
以下、本実施形態の導電性接着シート10の構成について説明する。
【0032】
(第1の接着剤層)
第1の接着剤層12は、接着剤を含む層である。
第1の接着剤層12は、25℃における貯蔵弾性率が、2.5×10Pa未満を満たす限り、特に限定されない。
【0033】
第1の接着剤層12に含まれる接着剤としては、感圧性接着剤(粘着剤)、硬化型接着剤、及び熱により接着するいわゆるヒートシールタイプの接着剤等が挙げられる。また、第1の接着剤層12に含まれる接着剤として、変性ポリオレフィン系樹脂を用いることもできる。
【0034】
・感圧性接着剤(粘着剤)
第1の接着剤層12は、貯蔵弾性率の制御が容易である点、及び適用が簡便である点から、感圧性接着剤(粘着剤)から形成される粘着剤層であることが好ましい。
粘着剤は、特に限定されない。例えば、粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、及びポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、粘着剤は、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、及びゴム系粘着剤からなる群から選択される少なくともいずれかであることが好ましく、アクリル系粘着剤であることがより好ましい。
【0035】
アクリル系粘着剤としては、例えば、直鎖のアルキル基又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むアクリル系重合体(つまり、アルキル(メタ)アクリレートを少なくとも重合した重合体)、及び環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むアクリル系重合体(つまり、環状構造を有する(メタ)アクリレートを少なくとも重合した重合体)等が挙げられる。ここで「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
【0036】
アクリル系重合体が共重合体である場合、共重合体の形態としては、特に限定されない。アクリル系共重合体としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0037】
これらの中でも、アクリル系粘着剤としては、炭素数1~20の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1’)(以下、「単量体成分(a1’)」ともいう)に由来する構成単位(a1)、及び官能基含有モノマー(a2’)(以下、「単量体成分(a2’)」ともいう)に由来する構成単位(a2)を含むアクリル系共重合体が好ましい。
なお、当該アクリル系共重合体は、単量体成分(a1’)及び単量体成分(a2’)以外のその他の単量体成分(a3’)に由来する構成単位(a3)をさらに含んでいてもよい。
【0038】
単量体成分(a1’)が有する鎖状アルキル基の炭素数としては、粘着特性を向上させる観点から、1以上12以下であることが好ましく、4以上8以下であることがより好ましく、4以上6以下であることがさらに好ましい。単量体成分(a1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体成分(a1’)の中でも、ブチル(メタ)アクリレート及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0039】
構成単位(a1)の含有量は、上記アクリル系共重合体の全構成単位(100質量%)に対して、50質量%以上99.5質量%以下であることが好ましく、55質量%以上99質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上97質量%以下であることがさらに好ましく、65質量%以上95質量%以下であることが特に好ましい。
【0040】
単量体成分(a2’)としては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、及びアルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられる。これらの単量体成分(a2’)の中でも、ヒドロキシ基含有モノマー及びカルボキシ基含有モノマーが好ましい。
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ヒドロキシ基含有モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸等が挙げられる。カルボキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸が好ましい。
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミノ基含有モノマーとしては、例えばジアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
シアノ基含有モノマーとしては、例えばアクリロニトリル等が挙げられる。
【0041】
構成単位(a2)の含有量は、上記アクリル系共重合体の全構成単位(100質量%)に対して、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましく、1.5質量%以上20質量%以下であることが特に好ましい。
【0042】
単量体成分(a3’)としては、例えば、環状構造を有する(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、及びアクリロイルモルフォリン等)、酢酸ビニル、及びスチレン等が挙げられる。
【0043】
構成単位(a3)の含有量は、上記アクリル系共重合体の全構成単位(100質量%)に対して、0質量%以上40質量%以下であることが好ましく、0質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%以上20質量%以下であることが特に好ましい。
【0044】
なお、上述の単量体成分(a1’)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上述の単量体成分(a2’)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上述の単量体成分(a3’)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
アクリル系共重合体は架橋剤により架橋されていてもよい。架橋剤としては、例えば、公知のエポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、及び金属キレート系架橋剤等が挙げられる。アクリル系共重合体を架橋する場合には、単量体成分(a2’)に由来する官能基を、架橋剤と反応する架橋点として利用することができる。
【0046】
第1の接着剤層12は、上記粘着剤の他に、エネルギー線硬化性の成分を含有していてもよい。
エネルギー線硬化性の成分としては、例えばエネルギー線が紫外線である場合には、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメトキシジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ変性(メタ)アクリレート、及びポリエーテル(メタ)アクリレート等の化合物であって、一分子中に紫外線重合性の官能基を2つ以上有する化合物等が挙げられる。
エネルギー線硬化性の成分は、単独で用いても二種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
また、粘着剤としてアクリル系粘着剤を適用する場合、エネルギー線硬化性の成分として、アクリル系共重合体における単量体成分(a2’)に由来する官能基に反応する官能基と、エネルギー線重合性の官能基とを一分子中に有する化合物を用いてもよい。当該化合物の官能基と、アクリル系共重合体における単量体成分(a2’)に由来する官能基との反応により、アクリル系共重合体の側鎖がエネルギー線照射により重合可能となる。粘着剤がアクリル系粘着剤以外でも、粘着剤となる共重合体以外の共重合体成分として、同様に側鎖がエネルギー線重合性である成分を用いてもよい。
【0048】
・硬化型接着剤
第1の接着剤層12に含まれる接着剤が硬化型接着剤である場合、硬化型接着剤としては、エネルギー線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、及び自然硬化型接着剤が挙げられる。
【0049】
第1の接着剤層12は、短時間で硬化するため、生産性の点から、エネルギー線硬化型の接着剤層であることが好ましい。
エネルギー線硬化型の接着剤層の形成には、例えば、ラジカル硬化型接着剤が好適に用いられる。ラジカル硬化型接着剤としては、電子線硬化型及び紫外線硬化型等のエネルギー線硬化型の接着剤を例示できる。特に短時間で硬化可能な、エネルギー線硬化型の接着剤が好ましく、さらには低エネルギーで硬化可能な紫外線硬化型の接着剤が好ましい。
【0050】
紫外線硬化型接着剤としては、ラジカル重合硬化型接着剤とカチオン重合型接着剤とに区分できる。その他、ラジカル重合硬化型接着剤は、熱硬化型接着剤として用いることができる。
【0051】
ラジカル重合硬化型接着剤の硬化性成分としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、及びビニル基を有する化合物が挙げられる。これら硬化性成分は、単官能または二官能以上のいずれも用いることができる。またこれら硬化性成分は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これら硬化性成分としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好適である。
【0052】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、具体的には例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-プロピルペンチル(メタ)アクリレート、及びn-オクタデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸(炭素数1以上20以下)アルキルエステル類が挙げられる。
【0053】
また、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びシクロペンチル(メタ)アクリレートなど)、アラルキル(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレートなど)、多環式(メタ)アクリレート(例えば、2-イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5-ノルボルネン-2-イル-メチル(メタ)アクリレート、及び3-メチル-2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレートなど)、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び2,3-ジヒドロキシプロピルメチル-ブチル(メタ)メタクリレートなど)、アルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなど)、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなど)、ハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、及びヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなど)、及びアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど)等が挙げられる。
【0054】
また、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド(SP値22.9)、N-エトキシメチルアクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー等も挙げられる。また、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、アクリロイルモルホリン等の窒素含有モノマー等も挙げられる。
【0055】
また、前記ラジカル重合硬化型接着剤の硬化性成分としては、(メタ)アクリロイル基及びビニル基等の重合性二重結合を複数個有する化合物を例示することができ、当該化合物は、架橋成分として接着剤成分に混合することもできる。かかる架橋成分になる硬化性成分としては、例えば、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート、アロニックスM-220(東亞合成社製)、ライトアクリレート1,9ND-A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートDGE-4A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートDCP-A(共栄社化学社製)、SR-531(Sartomer社製)、及びCD-536(Sartomer社製)等が挙げられる。また必要に応じて、各種のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及び各種の(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。
【0056】
ラジカル重合硬化型接着剤は、前記硬化性成分を含むが、前記硬化性成分に加えて、硬化のタイプに応じて、ラジカル重合開始剤を添加することができる。ラジカル重合硬化型接着剤を電子線硬化型で用いる場合には、ラジカル重合硬化型接着剤にはラジカル重合開始剤を含有させることは特に必要ではないが、紫外線硬化型、または熱硬化型で用いる場合には、ラジカル重合開始剤が用いられる。ラジカル重合開始剤の使用量は硬化性成分100質量部あたり、通常0.1質量部以上10質量部以下、好ましくは、0.5質量部以上3質量部以下である。また、ラジカル重合硬化型接着剤には、必要に応じて、カルボニル化合物などで代表される電子線による硬化速度や感度を上げる光増感剤を添加することもできる。光増感剤の使用量は硬化性成分100質量部あたり、通常0.001質量部以上10質量部以下、好ましくは、0.01質量部以上3質量部以下である。
【0057】
カチオン重合硬化型接着剤の硬化性成分としては、エポキシ基を有する化合物、及びオキセタニル基を有する化合物が挙げられる。エポキシ基を有する化合物としては、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、一般に知られている各種の硬化性エポキシ化合物を用いることができる。好ましいエポキシ化合物として、分子内に少なくとも2個のエポキシ基と少なくとも1個の芳香環とを有する化合物、及び分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個は脂環式環を構成する隣り合う2個の炭素原子との間で形成されている化合物等が挙げられる。
【0058】
また、第1の接着剤層12の形成には、水系の硬化型接着剤として、例えば、ビニルポリマー系、ゼラチン系、ビニル系ラテックス系、ポリウレタン系、イソシアネート系、ポリエステル系、及びエポキシ系の硬化型接着剤等を用いることができる。このような水系接着剤からなる接着剤層は、水溶液の塗布乾燥層などとして形成しうるが、その水溶液の調製に際しては、必要に応じて、架橋剤、添加剤、及び酸等の触媒を配合することができる。
【0059】
第1の接着剤層12が、エネルギー線硬化型の接着剤層である場合には、第1の接着剤層12は光重合開始剤を含有することがよい。光重合開始剤により、第1の接着剤層12がエネルギー線照射により硬化する速度を高めることができる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、2-クロールアンスラキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンゾチアゾール-N,N-ジエチルジチオカルバメート、及びオリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-プロペニル)フェニル]プロパノン}等が挙げられる。
光重合開始剤は、単独で用いても二種以上を混合して用いてもよい。
【0060】
・変性ポリオレフィン系樹脂
第1の接着剤層12に含まれる接着剤は、被加熱物及びワイヤーへの密着性、並びに低透湿性の点から、変性ポリオレフィン系樹脂であることも好ましい。
変性ポリオレフィン系樹脂は、前駆体としてのポリオレフィン樹脂に、変性剤を用いて変性処理を施して得られる、官能基が導入されたポリオレフィン樹脂である。
【0061】
ポリオレフィン樹脂とは、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位を含む重合体をいう。
ポリオレフィン樹脂は、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位と、オレフィン系単量体と共重合可能な単量体由来の繰り返し単位とからなる重合体であってもよい。
【0062】
オレフィン系単量体としては、炭素数2以上8以下のα-オレフィンが好ましく、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、又は1-ヘキセンがより好ましく、エチレン又はプロピレンがさらに好ましい。
オレフィン系単量体と共重合可能な単量体としては、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、及びスチレン等が挙げられる。
【0063】
ポリオレフィン樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、オレフィン系エラストマー(TPO)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、及びエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0064】
ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)は10,000以上2,000,000以下、好ましくは、20,000以上1,500,000以下である。
重量平均分子量(Mw)は、実施例の項に記載した方法で測定することができる。
【0065】
ポリオレフィン樹脂の変性処理に用いる変性剤は、分子内に、架橋反応に寄与し得る基(以下、「官能基A」と称する)を有する化合物である。
官能基Aとしては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、エポキシ基、アミド基、アンモニウム基、ニトリル基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基、アセチル基、チオール基、エーテル基、チオエーテル基、スルホン基、ホスホン基、ニトロ基、ウレタン基、及びハロゲン原子等が挙げられる。これらの中でも、官能基Aとしては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、アンモニウム基、アミノ基、イミド基、又はイソシアネート基が好ましく、カルボン酸無水物基、又はアルコキシシリル基がより好ましく、カルボン酸無水物基が特に好ましい。
官能基Aを有する化合物は、分子内に2種以上の官能基Aを有していてもよい。
【0066】
変性ポリオレフィン系樹脂としては、酸変性ポリオレフィン系樹脂、及びシラン変性ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。変性ポリオレフィン系樹脂としては、被加熱物及びワイヤーへの密着性、並びに生産性の観点から、酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0067】
酸変性ポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィン樹脂に対して酸でグラフト変性した樹脂をいう。例えば、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸を反応させて、カルボキシル基を導入(グラフト変性)した樹脂が挙げられる。なお、本明細書において、不飽和カルボン酸とは、カルボン酸無水物の概念を含み、カルボキシル基とは、カルボン酸無水物基の概念を含む。
【0068】
ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、アコニット酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、及びテトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。
これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、無水マレイン酸が好ましい。
【0069】
ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和カルボン酸の量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以上3質量部以下、さらに好ましくは0.2質量部以上1.0質量部以下である。不飽和カルボン酸の量が上記範囲にある酸変性ポリオレフィン系樹脂(接着剤)は、接着強度により優れる。
【0070】
酸変性ポリオレフィン系樹脂は、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、アドマー(登録商標)(三井化学社製)、ユニストール(登録商標)(三井化学社製)、BondyRam(Polyram社製)、orevac(登録商標)(ARKEMA社製)、及びモディック(登録商標)(三菱化学社製)等が挙げられる。
【0071】
シラン変性ポリオレフィン系樹脂の前駆体であるポリオレフィン樹脂としては、前述の酸でグラフト変性させるポリオレフィン樹脂(酸変性ポリオレフィン系樹脂)として例示したポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0072】
シラン変性ポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィン樹脂に対して不飽和シラン化合物でグラフト変性したものをいう。シラン変性ポリオレフィン系樹脂は、主鎖であるポリオレフィン樹脂に側鎖である不飽和シラン化合物がグラフト共重合した構造を有する。シラン変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、シラン変性ポリエチレン樹脂およびシラン変性エチレン-酢酸ビニル共重合体が挙げられ、シラン変性低密度ポリエチレン、シラン変性超低密度ポリエチレン、及びシラン変性直鎖状低密度ポリエチレン等のシラン変性ポリエチレン樹脂が好ましい。
【0073】
上記ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和シラン化合物としては、ビニルシラン化合物が好ましい。上記ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、及びビニルトリカルボキシシラン等が挙げられる。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、主鎖であるポリオレフィン樹脂に不飽和シラン化合物をグラフト重合させる場合の条件は、公知のグラフト重合の常法を採用すればよい。
【0074】
ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和シラン化合物の量としては、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上7質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましい。反応させる不飽和シラン化合物の量が上記範囲にあるシラン変性ポリオレフィン系樹脂(接着剤)は、接着強度により優れる。
【0075】
シラン変性ポリオレフィン系樹脂は、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、リンクロン(登録商標)(三菱化学社製)等が挙げられる。なかでも、低密度ポリエチレン系のリンクロン、直鎖状低密度ポリエチレン系のリンクロン、超低密度ポリエチレン系のリンクロン、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体系のリンクロンを好ましく使用することができる。
【0076】
変性ポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
第1の接着剤層12が変性ポリオレフィン系樹脂を含む場合、変性ポリオレフィン系樹脂の含有量は、第1の接着剤層12全体に対して、好ましくは30質量%以上95質量%以下、より好ましくは45質量%以上90質量%以下である。変性ポリオレフィン系樹脂の含有量がこの範囲内にある第1の接着剤層12は、接着強度により優れる。
【0077】
第1の接着剤層12は、無機充填材を含有していてもよい。第1の接着剤層12が無機充填材を含有することで、硬化後の接着剤層の硬度をより向上させることができる。また、第1の接着剤層12が無機充填材を含有することで、第1の接着剤層12の熱伝導性が向上する。さらに、第1の接着剤層12が無機充填材を含有することで、被着体がガラスを主成分とする場合に、導電性接着シート10と被着体の線膨張係数を近づけることができ、これによって、導電性接着シート10を被着体に貼付及び必要に応じて硬化して得た導電性接着シート付き物品の信頼性が向上する。
【0078】
無機充填材としては、例えば、無機粉末(例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、及び窒化ホウ素等の粉末)、無機粉末を球形化したビーズ、単結晶繊維、及びガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、無機充填材としては、シリカフィラー及びアルミナフィラーが好ましい。無機充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
第1の接着剤層12には、その他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、例えば、有機溶媒、難燃剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、可塑剤、消泡剤、濡れ性調整剤、帯電防止剤、光安定剤、樹脂安定剤、顔料、増量剤、及び軟化剤等の周知の添加剤が挙げられる。
【0080】
第1の接着剤層12の厚みt1は、第1の接着剤層12の内部への導電性線状体18の埋まり込みを抑制する観点および接着力の観点から、1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上60μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることがさらに好ましい。
【0081】
第1の接着剤層12の厚みt1に対する第2の接着剤層14の厚みt2の比率(t2/t1)は、0.1以上10以下であることが好ましく、0.3以上3以下であることがより好ましく、0.5以上2以下であることがさらに好ましい。
【0082】
(第2の接着剤層)
第2の接着剤層14は、接着剤を含む層である。
第2の接着剤層14に含まれる接着剤は、第1の接着剤層12に含まれる接着剤と同義であり、好ましい態様も同様である。
第1の接着剤層12と、第2の接着剤層14とは、同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。
【0083】
第2の接着剤層14の厚みt2は、被着体への接着力の観点から、1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上60μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることがさらに好ましい。
【0084】
(第3の層)
第3の層16は、25℃における貯蔵弾性率が、2.5×10Pa以上を満たす限り、特に限定されないが、熱可塑性エラストマー層であることが好ましい。熱可塑性エラストマー層としては、変性ポリオレフィン系樹脂を含む層またはゴム系材料層であることが好ましく、低透湿性及び伸縮性の点からゴム系材料層であることがより好ましい。
また、第3の層16に用いられる変性ポリオレフィン系樹脂は、第1の接着剤層12の項で記載した変性ポリオレフィン系樹脂を用いることができる。
【0085】
・熱可塑性エラストマー層
熱可塑性エラストマー層の熱可塑性エラストマーとしては、ウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、及びアミド系エラストマー等が挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、耐久性および導電性線状体の腐食防止という観点から、スチレン系エラストマーを使用することが好ましい。
【0086】
ウレタン系エラストマーは、一般に、長鎖ポリオール、鎖延長剤、及びジイソシアネートを反応させて得られる。ウレタン系エラストマーは、長鎖ポリオールから誘導される構成単位を有するソフトセグメントと、鎖延長剤とジイソシアネートとの反応から得られるポリウレタン構造を有するハードセグメントとからなる。
【0087】
ウレタン系エラストマーを、長鎖ポリオールの種類によって分類すると、ポリエステル系ポリウレタンエラストマー、ポリエーテル系ポリウレタンエラストマー、及びポリカーボネート系ポリウレタンエラストマー等に分けられる。本実施形態では、ウレタン系エラストマーは、大きく延伸させ易いという観点から、ポリエーテル系ポリウレタンエラストマーであることが好ましい。
【0088】
長鎖ポリオールの例としては、ラクトン系ポリエステルポリオール、及びアジペート系ポリエステルポリオール等のポリエステルポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール;ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。本実施形態では、長鎖ポリオールは、大きく延伸させ易いという観点から、アジペート系ポリエステルポリオールであることが好ましい。
【0089】
ジイソシアネートの例としては、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。本実施形態では、ジイソシアネートは、大きく延伸させ易いという観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートであることが好ましい。
【0090】
鎖延長剤としては、低分子多価アルコール(例えば、1,4-ブタンジオール、及び1,6-ヘキサンジオール等)、及び芳香族ジアミン等が挙げられる。これらのうち、大きく延伸させ易いという観点から、1,6-ヘキサンジオールを使用することが好ましい。
【0091】
オレフィン系エラストマーとしては、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、ブテン・α-オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・ブテン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・ブテン-αオレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン-α・オレフィン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、及びスチレン・エチレン・ブチレン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むものが挙げられる。
【0092】
オレフィン系エラストマーの密度は、特に限定されない。例えば、オレフィン系エラストマーの密度は、0.860g/cm以上0.905g/cm未満であることが好ましく、0.862g/cm以上0.900g/cm未満であることがより好ましく、0.864g/cm以上0.895g/cm未満であることが特に好ましい。オレフィン系エラストマーの密度が上記範囲を満たすことで、第3の層16の凹凸追従性が良好になる。これにより、導電性接着シート10に、凹凸の比較的大きい被着体22(図3図6参照)が貼付されても、第1の接着剤層12の形状が保持され易くなる。
【0093】
オレフィン系エラストマーは、このエラストマーを形成するために用いた全単量体のうち、オレフィン系化合物からなる単量体の質量比率(本明細書において「オレフィン含有率」ともいう。)が50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
オレフィン含有率が50質量%以上である場合には、オレフィンに由来する構造単位を含むエラストマーとしての性質が発現され易くなり、第3の層16は、柔軟性及びゴム弾性を示し易くなる。
柔軟性及びゴム弾性を安定的に得る観点から、オレフィン含有率は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
【0094】
スチレン系エラストマーとしては、スチレン-共役ジエン共重合体、及びスチレン-オレフィン共重合体等が挙げられる。スチレン-共役ジエン共重合体の具体例としては、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、及びスチレン-エチレン-イソプレン-スチレン共重合体等の未水添スチレン-共役ジエン共重合体;スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン共重合体(SEPS、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体の水添加物)、及びスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS、スチレン-ブタジエン共重合体の水素添加物)等の水添スチレン-共役ジエン共重合体等を挙げることができる。また、工業的には、スチレン系エラストマーとしては、SIBSTAR(カネカ社製)、タフプレン(旭化成社製)、クレイトン(クレイトンポリマージャパン社製)、住友TPE-SB(住友化学社製)、エポフレンド(ダイセル化学工業社製)、ラバロン(三菱化学社製)、セプトン(クラレ社製)、及びタフテック(旭化成社製)等の商品名が挙げられる。スチレン系エラストマーは、水素添加物でも未水添物であってもよい。
【0095】
・ゴム系材料層
ゴム系材料層のゴム系材料としては、例えば、天然ゴム、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、及び多硫化ゴム等が挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0096】
第3の層16は、上記「熱可塑性エラストマー層」及び上記「ゴム系材料層」の項で例示した材料からなるフィルムが、複数、積層された積層フィルムでもよい。また、第3の層は、上記「熱可塑性エラストマー層」及び上記「ゴム系材料層」の項で例示した材料からなるフィルムと、その他のフィルムとが積層された積層フィルムでもよい。
【0097】
第3の層16は、上記の樹脂系材料を主材料とするフィルム内に、添加剤が含まれていてもよい。
添加剤としては、例えば、顔料、染料、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、及びフィラー等が挙げられる。顔料としては、例えば、二酸化チタン、及びカーボンブラック等が挙げられる。また、フィラーとしては、メラミン樹脂等の有機系材料、ヒュームドシリカ等の無機系材料、及びニッケル粒子等の金属系材料が例示される。
添加剤の含有量は特に限定されないが、第3の層16が所望の機能を発揮し得る範囲に留めることが好ましい。
【0098】
第1の接着剤層12と、第3の層16と、第2の接着剤層14とをこの順に有する積層体(以下、「多層接着シート」とも称する)の形成方法は、第1の接着剤層12、第2の接着剤層14、及び第3の層16をそれぞれ形成したのちに積層して、形成する方法でも良いし、第1の接着剤層12、第2の接着剤層14、及び第3の層16を形成するための各組成物を逐次塗布および乾燥することで、揮発成分を除去して、形成する方法でもよい。第1の接着剤層12、第2の接着剤層14、及び第3の層16を同時に塗布して、これらの層を直接積層した後、同時に乾燥することで、揮発成分を除去して形成される多層接着シートであることがより好ましい。
「同時に」乾燥して形成された多層接着シートであると、各層の界面密着性が、予め形成された第1の接着剤層12、第2の接着剤層14、及び第3の層16をそれぞれ積層して形成された多層接着シートに比べて、高くなるため、接着力を向上させる観点から好ましい。
【0099】
第1の接着剤層12及び第2の接着剤層14がエネルギー線硬化性接着剤を含有する場合、第3の層16は、エネルギー線に対する透過性を有することが好ましい。エネルギー線硬化性接着剤が紫外線硬化性接着剤である場合には、第3の層16は、紫外線に対して透過性を有することが好ましい。エネルギー線硬化性接着剤が電子線硬化性接着剤である場合には、第3の層16は、電子線に対する透過性を有することが好ましい。
【0100】
第3の層16の厚みt3は、第1の接着剤層12の内部への導電性線状体18の埋まり込みの抑制、被着体への追従性、及び被着体への接着力を向上させる観点から、1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましく、5μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。
【0101】
第3の層16の厚みt3に対する第1の接着剤層12の厚みt1の比率(t1/t3)は、1以上5以下であることが好ましく、2以上5以下であることがより好ましく、3以上5以下であることがさらに好ましい。
【0102】
第1の接着剤層12の厚みt1、第2の接着剤層14の厚みt2、および第3の層16の厚みt3の合計の厚みtsは、第1の接着剤層12の内部への導電性線状体18の埋まり込みを抑制する観点、及び被着体への接着力を向上させる観点から、5μm以上300μm以下であることが好ましく、10μm以上200μm以下であることがより好ましく、15μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
【0103】
(疑似シート構造体)
疑似シート構造体20は、一方向に延びた複数の導電性線状体18が、互いに間隔をもって配列された構造を有する。疑似シート構造体20は、一方向に延びた複数の導電性線状体18が、互いに間隔をもって配列された構造を有する。具体的には、例えば、疑似シート構造体20は、直線状に伸びた導電性線状体18が、導電性線状体18の長さ方向と直交する方向に、等間隔で複数配列された構造を有する。つまり、疑似シート構造体20は、例えば、導電性線状体18がストライプ状に配列された構造を有する。
【0104】
導電性線状体18の体積抵抗率Rは、1.0×10-9Ω・m以上1.0×10-3Ω・m以下であることが好ましく、1.0×10-8Ω・m以上1.0×10-4Ω・m以下であることがより好ましい。導電性線状体18の体積抵抗率Rを上記範囲にすると、疑似シート構造体20の面抵抗が低下しやすくなる。
導電性線状体18の体積抵抗率Rの測定は、次の通りである。導電性線状体18の両端に銀ペーストを塗布し、端部からの長さ40mmの部分の抵抗を測定し、導電性線状体18の抵抗値を求める。そして、導電性線状体18の断面積(単位:m)を上記の抵抗値に乗じ、得られた値を上記の測定した長さ(0.04m)で除して、導電性線状体18の体積抵抗率Rを算出する。
【0105】
導電性線状体18の断面の形状は、特に限定されず、多角形、扁平形状、楕円形状、及び円形状等を取り得るが、第1の接着剤層12との馴染み等の観点から、楕円形状又は円形状であることが好ましい。
導電性線状体18の断面が円形状である場合には、導電性線状体18の直径d1は、第1の接着剤層12の内部への埋まり込みを抑制する観点から、5μm以上75μm以下であることが好ましく、8μm以上60μm以下であることがより好ましく、12μm以上40μm以下であることがさらに好ましい。
なお、導電性線状体18の直径d1を、5μm以上75μm以下にすると、導電性線状体18が波形状の線状体の場合、導電性接着シート10が三次元成形されたときの波形状の導電性線状体18の直線化が第1の接着剤層12によって妨げられ難くなる。
導電性線状体18の断面が楕円形状である場合には、長径が上記の直径d1と同様の範囲にあることが好ましい。また、導電性線状体18が、複数本の導電性線状体18を撚った線状体である場合、撚った線状体の長軸方向に直交する方向の断面の最長径(断面の輪郭線上の任意の2点間の距離の最大値)が上記の直径d1と同様の範囲にあることが好ましい。
【0106】
導電性線状体18の間隔Lは、0.3mm以上12.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上10.0mm以下であることがより好ましく、0.8mm以上7.0mm以下であることがさらに好ましい。
【0107】
導電性線状体18同士の間隔Lを0.3mm以上12.0mm以下の範囲にすると、導電性線状体18同士の間から露出する第1の接着剤層12の露出面積を確保し、疑似シート構造体20から露出する第1の接着剤層12による接着が導電性線状体18により妨げられることを防止できる。また、導電性線状体18同士の間隔Lが上記範囲であれば、導電性線状体18がある程度密集しているため、疑似シート構造体20の抵抗を低く維持することができる。これにより、導電性接着シート10を発熱体として用いる場合の温度上昇の分布を均一にする等の、導電性接着シート10の機能の向上を図ることができる。
【0108】
導電性線状体18の間隔Lは、デジタル顕微鏡を用いて、疑似シート構造体20の導電性線状体18を観察し、隣り合う2つの導電性線状体18の間隔Lを測定する。
なお、隣り合う2つの導電性線状体18の間隔Lとは、導電性線状体18を配列させていった方向に沿った長さであって、2つの導電性線状体18の対向する部分間の長さである(図2参照)。間隔Lは、導電性線状体18の配列が不等間隔である場合には、全ての隣り合う導電性線状体18同士の間隔の平均値であるが、間隔Lの値を制御しやすくする観点等から、導電性線状体18は疑似シート構造体20において、略等間隔に配列されていることが好ましく、等間隔に配列されていることがより好ましい。
導電性線状体18が波形状である場合には、導電性線状体18の間隔Lは、導電性線状体18の湾曲、屈曲により導電性線状体18同士が間隔Lよりも近接する箇所が生じるため、間隔Lがより広いことが好ましい場合がある。このような場合には、導電性線状体18の間隔Lは、1mm以上30mm以下であることが好ましく、2mm以上20mm以下であることがより好ましい。
【0109】
導電性線状体18は、特に制限はないが、導電性ワイヤーであることが好ましい。
導電性線状体18は、金属ワイヤーを含む線状体、カーボンナノチューブを含む線状体(以下「カーボンナノチューブ線状体」とも称する)、及び、糸に導電性被覆が施された線状体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0110】
・金属ワイヤーを含む線状体
導電性線状体18が金属ワイヤーを含む線状体である場合、金属ワイヤーを含む線状体は、1本の金属ワイヤーからなる線状体であってもよいし、複数本の金属ワイヤーを撚った線状体であってもよい。
金属ワイヤーとしては、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金等の金属、又は、2種以上の金属を含む合金(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、ニクロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、及びレニウムタングステン等からなる群から選択される2種以上の金属を含む合金)を含むワイヤーが挙げられる。また、金属ワイヤーは、金、白金、銅、パラジウム、錫、亜鉛、銀、ニッケル、クロム、ニッケルクロム合金、又は、はんだ等でめっきされたものであってもよく、後述する炭素材料やポリマーにより表面が被覆されたものであってもよい。特に、タングステン及びモリブデン並びにこれらを含む合金から選ばれる一種以上の金属を含むワイヤーが、低い体積抵抗率の導電性線状体18とする観点から好ましい。
金属ワイヤーとしては、炭素材料で被覆された金属ワイヤーも挙げられる。金属ワイヤーは、炭素材料で被覆されていると、金属光沢が低減し、金属ワイヤーの存在を目立たなくすることが容易となる。また、金属ワイヤーは、炭素材料で被覆されていると金属腐食も抑制される。
金属ワイヤーを被覆する炭素材料としては、非晶質炭素(例えば、カーボンブラック、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン、及びカーボンファイバー等)、グラファイト、フラーレン、及びグラフェン;カーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0111】
・カーボンナノチューブ線状体
導電性線状体18がカーボンナノチューブ線状体である場合、カーボンナノチューブ線状体は、例えば、カーボンナノチューブフォレスト(カーボンナノチューブを、基板に対して垂直方向に配向するよう、基板上に複数成長させた成長体のことであり、「アレイ」と称される場合もある)の端部から、カーボンナノチューブをシート状に引き出し、引き出したカーボンナノチューブシートを束ねた後、カーボンナノチューブの束を撚ることにより得られる。このような製造方法において、撚りの際に捻りを加えない場合には、リボン状のカーボンナノチューブ線状体が得られ、捻りを加えた場合には、糸状の線状体が得られる。リボン状のカーボンナノチューブ線状体は、カーボンナノチューブが捻られた構造を有しない線状体である。このほか、カーボンナノチューブの分散液から、紡糸をすること等によっても、カーボンナノチューブ線状体を得ることができる。紡糸によるカーボンナノチューブ線状体の製造は、例えば、米国特許出願公開第2013/0251619号明細書(日本国特開2012-126635号公報)に開示されている方法により行うことができる。カーボンナノチューブ線状体の直径の均一さが得られる観点からは、糸状のカーボンナノチューブ線状体を用いることが望ましく、純度の高いカーボンナノチューブ線状体が得られる観点からは、カーボンナノチューブシートを撚ることによって糸状のカーボンナノチューブ線状体を得ることが好ましい。カーボンナノチューブ線状体は、2本以上のカーボンナノチューブ線状体同士が編まれた線状体であってもよい。また、カーボンナノチューブ線状体は、カーボンナノチューブと他の導電性材料が複合された線状体(以下「複合線状体」とも称する)であってもよい。
【0112】
複合線状体としては、例えば、(1)カーボンナノチューブフォレストの端部から、カーボンナノチューブをシート状に引き出し、引き出したカーボンナノチューブシートを束ねた後、カーボンナノチューブの束を撚るカーボンナノチューブ線状体を得る過程において、カーボンナノチューブのフォレスト、シート若しくは束、又は撚った線状体の表面に、金属単体又は金属合金を蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、湿式めっき等により担持させた複合線状体、(2)金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体と共に、カーボンナノチューブの束を撚った複合線状体、(3)金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体と、カーボンナノチューブ線状体又は複合線状体とを編んだ複合線状体等が挙げられる。なお、(2)の複合線状体においては、カーボンナノチューブの束を撚る際に、(1)の複合線状体と同様にカーボンナノチューブに対して金属を担持させてもよい。また、(3)の複合線状体は、2本の線状体を編んだ場合の複合線状体であるが、少なくとも1本の金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体が含まれていれば、カーボンナノチューブ線状体又は金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体若しくは複合線状体の3本以上を編み合わせてあってもよい。
複合線状体の金属としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、スズ、及び亜鉛等の金属単体、並びに、合金が挙げられる。複合線状体の金属としての合金は、金、白金、パラジウム、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、スズ、及び亜鉛等の金属単体からなる群から選択される少なくとも2種の金属を含む。複合線状体の金属としての合金は、例えば、銅-ニッケル-リン合金、及び銅-鉄-リン-亜鉛合金等である。
【0113】
・糸に導電性被覆が施された線状体
導電性線状体18が糸に導電性被覆が施された線状体である場合、糸としては、ナイロン、及びポリエステル等の樹脂から紡糸した糸等が挙げられる。導電性被覆としては、金属、導電性高分子、及び炭素材料等の被膜等が挙げられる。導電性被覆は、メッキや蒸着法等により形成することができる。糸に導電性被覆が施された線状体は、糸の柔軟性を維持しつつ、線状体の導電性を向上させることができる。つまり、糸に導電性被覆が施された線状体は、疑似シート構造体20の抵抗を、低下させることが容易となる。
【0114】
(導電性接着シートの製造方法)
本実施形態に係る導電性接着シート10の製造方法は、特に限定されない。導電性接着シート10は、例えば、次の工程を経て製造される。
まず、剥離層の上に、第2の接着剤層14の形成用組成物、第3の層16の形成用組成物、第1の接着剤層12の形成用組成物を、剥離層側から積層する順序で多層ダイコーターを用いて同時塗布し、同時形成する。塗膜を同時乾燥させて、剥離層上に第2の接着剤層14、第3の層16、及び第1の接着剤層12がこの順で形成された多層接着シートを作製する。
次に、第1の接着剤層12の第一接着面12A上に、導電性線状体18を配列しながら配置して、疑似シート構造体20を形成する。例えば、ドラム部材の外周面に剥離層付きの多層接着シートを配置した状態で、具体的には、ドラム部材に対し、剥離層の側を内側に配置し、第1の接着剤層12の側を外側に配置した状態で、ドラム部材を回転させながら、第1の接着剤層12の第一接着面12A上に導電性線状体18を螺旋状に巻き付ける。その後、螺旋状に巻き付けた導電性線状体18の束をドラム部材の軸方向に沿って切断する。これにより、疑似シート構造体20を形成すると共に、第1の接着剤層12の第一接着面12Aに導電性線状体18を配置する。そして、疑似シート構造体20が形成された剥離層付きの積層体(第2の接着剤層14、第3の層16および導電性線状体18が配置された第1の接着剤層12を有する剥離層付きの積層体)をドラム部材から取り出すことにより、剥離層付きの導電性接着シート10が得られる。この方法によれば、例えば、ドラム部材を回転させながら、導電性線状体18の繰り出し部をドラム部材の軸と平行な方向に沿って移動させることで、疑似シート構造体20における隣り合う導電性線状体18の間隔Lを調整することが容易である。
【0115】
なお、導電性線状体18を配列して疑似シート構造体20を形成した後、得られた疑似シート構造体20の第二面20Bを、第1の接着剤層12の第一接着面12A上に貼り合せて、導電性接着シート10を作製してもよい。
そのほか、剥離層上に設けた第1の接着剤層12に導電性線状体18を配列しながら配置して、疑似シート構造体20を形成した後、剥離層を除去し、第1の接着剤層12の第二接着面12Bの側に第3の層16及び第2の接着剤層14を順次積層して、導電性接着シート10を形成してもよい。
【0116】
(導電性接着シートの特性)
導電性接着シート10に透明性が求められる場合、本実施形態に係る導電性接着シート10の光線透過率は、70%以上であることが好ましく、70%以上100%以下であることがより好ましく、80%以上100%以下であることがさらに好ましい。
なお、導電性接着シート10の光線透過率は、光線透過率計により、可視域(380nmから760nm)の光線透過率を測定し、その平均値とする。
【0117】
本実施形態に係る導電性接着シート10の面抵抗(Ω/□=Ω/sq.)は、800Ω/□以下であることが好ましく、0.01Ω/□以上500Ω/□以下であることがより好ましく、0.05Ω/□以上300Ω/□以下であることがさらに好ましい。導電性接着シート10を発熱体として適用した場合、印加する電圧を低減する観点から、面抵抗の低い導電性接着シート10が要求される。導電性接着シート10の面抵抗が800Ω/□以下であれば、印加する電圧の低減が容易に実現される。
なお、導電性接着シート10の面抵抗は、次の方法により測定する。銅テープを両端に貼付けたガラス基板に、導電性接着シート10と銅テープが接触するように貼付けた後、電気テスターを用いて抵抗を測定し、導電性接着シート10の面抵抗を算出する。
【0118】
(導電性接着シートの使用方法)
本実施形態に係る導電性接着シート10は、例えば、被着体に貼付けて使用される。第1の接着剤層12、第2の接着剤層14および第3の層16のいずれか1つ以上が硬化性を有する層である場合、導電性接着シート10を被着体に貼付けた後、硬化性を有する層を硬化する。
導電性接着シート10を被着体に貼り合わせる際には、導電性接着シート10の第2の接着剤層14の第二接着面14Bを被着体に貼付ける。
【0119】
被着体としては、成形体、織布、編布、不織布、紙、熱可塑性樹脂フィルム、硬化性樹脂の硬化物フィルム、金属箔、フエルト、天然皮革、合成皮革、木材、スポンジ(例えば、発泡ポリエチレンおよび発泡ポリウレタン等)及びガラスフィルム等が挙げられる。成形体の材質は、表面が電気を通さない性質を有することが好ましい。成形体の材質としては、例えば、プラスチック、セラミック、及び金属などが挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリイミド系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、及びアクリル系等の樹脂フィルムが挙げられる。
被着体は、本実施形態の効果をより発現する観点から、凹凸の比較的大きい被着体もしくは変形し易い被着体であることが好ましく、具体的には、織布、編布、不織布、フエルト、天然皮革、合成皮革、木材、またはスポンジであることがより好ましい。
被着体は、伸縮性を有することも好ましい。その場合、被着体は、伸縮性を有する樹脂フィルム、不織布、編布または織布であることがより好ましい。
【0120】
例えば、導電性接着シート10を発熱体として用いる場合、発熱体の用途としては、例えば、チェアー、ソファー、電気毛布、健康機器、患部への温熱治療、足温器、及び風力発電の羽根の補修養生等が挙げられる。
【0121】
また、発熱体の用途としては、例えば、デフォッガー(defogger)、及びデアイサー(deicer)等も挙げられる。この場合、被加熱物としては、例えば、浴室等の鏡、輸送用装置(乗用車、鉄道、船舶、及び航空機等)の窓、建物の窓、アイウェア、信号機の点灯面、及び標識等が挙げられる。また、導電性接着シート10は、電気信号の配線のためのフラットケーブルとしても利用することができる。
【0122】
[第二実施形態]
<積層体>
第二実施形態について、図3、4を用いて説明する。
本実施形態に係る積層体100は、第一実施形態に係る導電性接着シート10と、被着体22と、を有する。導電性接着シート10は第一実施形態と同様であるため、説明を省略又は簡略化する。
本実施形態の積層体100は、図3、4に示すように、導電性接着シート10の第2の接着剤層14の第二接着面14B上に被着体22が貼付されている。
被着体22は、算術平均粗さRaが1μm以上150μm以下である第1の被着体表面22Aを有する。被着体22は、この第1の被着体表面22Aが、第2の接着剤層14の第二接着面14Bと対面するように貼付されている。
【0123】
第1の被着体表面22Aの算術平均粗さRaは、1μm以上150μm以下であり、5μm以上100μm以下であることが好ましく、15μm以上80μm以下であることがより好ましい。
被着体22の算術平均粗さRaは、JIS-B0601(2001)で規定されている基準長さにおける粗さ曲線の高さの絶対値の平均である。
被着体22の算術平均粗さRaは、表面試験装置(カトーテック社製。品番KES-FB4)を用いて測定することができる。
【0124】
本実施形態の積層体100は、第一実施形態の導電性接着シート10を備えるので、導電性接着シート10に、第1の被着体表面22Aの算術平均粗さRaが上記範囲の被着体(凹凸の比較的大きい被着体)を貼付しても、導電性線状体18が第1の接着剤層12の内部に埋まり込むことを抑制できる。これにより、導電性接着シート10に電極を設置した際に、導電性線状体18と電極との電気的接続が良好になる。
【0125】
[第三実施形態]
<発熱装置>
第三実施形態について、図5を用いて説明する。
本実施形態に係る発熱装置200は、第二実施形態に係る積層体100と、電極30と、を有する。積層体100は第二実施形態と同様であるため、説明を省略又は簡略化する。
本実施形態の発熱装置200は、第一実施形態の導電性接着シート10を有する積層体100を備える。導電性接着シート10は発熱体として機能する。
本実施形態の発熱装置200には、図5に示すように、導電性線状体18の端部(疑似シート構造体20の端部)に、電極30が設置されている。電極30と疑似シート構造体20との接合は、疑似シート構造体20の各導電性線状体18に給電可能に、導電性テープや半田等の周知な方法により行われる。
電極30と、複数の導電性線状体18とは、電気的に接続されていることが好ましい。
【0126】
本実施形態の発熱装置200は、第二実施形態の積層体100を備えるので、凹凸の比較的大きい被着体が貼着されていても、導電性線状体18が第1の接着剤層12の内部に埋まり込むことを抑制できる。また、導電性線状体18と電極との電気的接続が良好になる。
【0127】
[第四実施形態]
<発熱装置>
第四実施形態について、図6、7を用いて説明する。
本実施形態に係る発熱装置201は、第一実施形態に係る導電性接着シート10に代えて導電性接着シート11を用いている。その他の点においては第三実施形態と同様であるため、説明を省略又は簡略化する。
本実施形態に係る発熱装置201は、導電性接着シート11を有する積層体101と、電極30と、を備える。
導電性接着シート11においては、図6に示すように、導電性線状体18Aが、導電性接着シート11の平面視において、波形状である。
導電性接着シート11は、一方向に延びた波形状の導電性線状体18Aが、導電性線状体18Aの延びる方向と直交する方向に、等間隔で複数配列された疑似シート構造体21を有する。
なお、導電性線状体18Aは、例えば、正弦波、矩形波、三角波、のこぎり波、半円等の波形状であってもよい。一本の導電性線状体18Aは、全部が波形状とされていてもよいし、一部のみが波形状で、他の部分が直線状等であってもよい。また、一本の導電性線状体18Aにおいて、2種以上の波形状(例えば、正弦波と三角波)が組み合わせられていてもよいし、一本の導電性線状体18Aが有する波形状と、他の導電性線状体18Aが有する波形状が異なる種類のものであってもよい。
【0128】
波形状の導電性線状体18Aの波長λ(波形のピッチ)及び振幅は、本実施形態の効果が損なわれない範囲であれば特に制限されないが、波形状の導電性線状体18Aの振幅をA、波形状の導電性線状体18Aの波長をλ、波形状の導電性線状体18Aの間隔をL、及び、波形状の導電性線状体18Aの直径をdとした場合に、下記数式(数1C)及び下記数式(数1D)の少なくとも一方を満たすことが好ましい(図7参照)。
このようにすることで、隣接する導電性線状体18A同士が混線しにくくなる。
0.15≦2A/λ≦5 …(数1C)
{(2A-d-L)/(2A-d)}≦0.8 …(数1D)
なお、波形状の導電性線状体18Aの間隔Lは、2つの導電性線状体18Aの対向する部分間の長さである。
【0129】
本実施形態の発熱装置201は、第三実施形態に係る発熱装置200と同様の効果が奏される。
また、本実施形態においては、導電性線状体18Aが、導電性接着シート11の平面視において、波形状であるため、導電性接着シート11を、導電性線状体18Aの長さ方向(軸方向)に、伸張した場合にも、導電性線状体18Aの切断を抑制できる。つまり、導電性接着シート11は、導電性線状体18Aの長さ方向(軸方向)と直交する方向だけでなく、導電性線状体18Aの長さ方向(軸方向)にも伸張可能である。そのため、導電性接着シート11は、被着体22の曲面に、より確実に適応できる。
このような効果をより高めるため、波形状に含まれる直線部分が少ないことが好ましく、波形状は、正弦波であることが好ましい。
【0130】
[実施形態の変形]
本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
【0131】
<変形例1>
前述の実施形態において、導電性線状体18は、一部が第1の接着剤層12から露出しているが、導電性線状体18は第1の接着剤層12から露出していなくてもよい。
例えば、疑似シート構造体20(導電性線状体18)に電極を設置する際に、電極を導電性線状体18に押し当てることで、導電性線状体18と電極とが接触できればよい。この場合、導電性線状体18の直径d1に対する第1の接着剤層12の厚みt1の比t1/d1は、1.2以下であることが好ましい。
導電性線状体18Aについても同様である。
【0132】
<変形例2>
前述の実施形態において、導電性線状体18は、第3の層16の第一面16Aに接しているが、導電性線状体18と第1の接着剤層12との密着性が確保される限り、導電性線状体18は、第3の層16の第一面16Aに接していなくてもよい。
導電性線状体18Aについても同様である。
【0133】
<変形例3>
前述の実施形態における導電性接着シート10は、例えば、疑似シート構造体20の第1の接着剤層12の第一接着面12A、第2の接着剤層14の第二接着面14Bの少なくとも一方の面上に積層された剥離層を有してもよい。
導電性接着シート11についても同様である。
【0134】
剥離層としては、特に限定されない。例えば、取り扱い易さの観点から、剥離層は、剥離基材と、剥離基材の上に剥離剤が塗布されて形成された剥離剤層とを備えることが好ましい。また、剥離層は、剥離基材の片面のみに剥離剤層を備えていてもよいし、剥離基材の両面に剥離剤層を備えていてもよい。
剥離基材としては、例えば、紙基材、紙基材等に熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン等)をラミネートしたラミネート紙、及びプラスチックフィルム等が挙げられる。紙基材としては、グラシン紙、コート紙、及びキャストコート紙等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレート等)、及びポリオレフィンフィルム(例えば、ポリプロピレン、及びポリエチレン等)等が挙げられる。剥離剤としては、例えば、オレフィン系樹脂、ゴム系エラストマー(例えば、ブタジエン系樹脂、及びイソプレン系樹脂等)、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、及びシリコーン系樹脂等が挙げられる。
【0135】
剥離層の厚みは、特に限定されない。剥離層の厚みは、20μm以上200μm以下であることが好ましく、25μm以上150μm以下であることがより好ましい。
剥離層の剥離剤層の厚みは、特に限定されない。剥離剤を含む溶液を塗布して剥離剤層を形成する場合、剥離剤層の厚みは、0.01μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.03μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。
剥離基材としてプラスチックフィルムを用いる場合、プラスチックフィルムの厚みは、3μm以上150μm以下であることが好ましく、5μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0136】
<変形例4>
前述の実施形態では、疑似シート構造体20,21は単層であるが、これに限定されない。例えば、導電性接着シート10,11は、疑似シート構造体20,21をシート面方向(シート表面に沿った方向)に複数配列したシートであってもよい。複数の疑似シート構造体20,21は、導電性接着シート10,11の平面視において、互いの導電性線状体18,18Aを平行に配列してもよいし、交差させて配列させてもよい。
【0137】
<変形例5>
前述の実施形態では、導電性接着シート10,11の第2の接着剤層14の第二接着面14Bを被着体22に貼付けていたが、導電性接着シート10,11の第1の接着剤層12の第一接着面12Aを被着体22に貼付けてもよい。この場合、導電性接着シートは、被着体の側に電極が設けられた状態で、電極と導電性線状体とを導通させることで使用される。
【実施例
【0138】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0139】
<組成物1>
粘着性樹脂である、アクリル系共重合体(n-ブチルアクリレート(BA)/メチルメタクリレート(MMA)/酢酸ビニル(VAc)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)=80.0/10.0/9.0/1.0(質量比)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有するアクリル系共重合体、重量平均分子量(Mw):100万)100質量部に、粘着付与剤として、水素化ロジン系樹脂(荒川化学工業株式会社製、製品名「KE-359」、軟化点:94~104℃)25質量部(固形分比)、及び、架橋剤として、イソシアネート系架橋剤(三井化学株式会社製、製品名「タケネート D-110N」)1.62質量部(固形分比)を配合した粘着剤組成物。
【0140】
<組成物2>
粘着性樹脂である、アクリル系共重合体(n-ブチルアクリレート(BA)/アクリル酸(AAc)=90.0/10.0(質量比)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有するアクリル系共重合体、重量平均分子量(Mw):60万)100質量部に、架橋剤として、イソシアネート系架橋剤(東ソー株式会社製、製品名「コロネートL」)1.5質量部(固形分比)を配合した粘着剤組成物。
【0141】
<組成物3>
粘着性樹脂である、アクリル系共重合体(n-ブチルアクリレート(BA)/アクリル酸(AAc)=90.0/10.0(質量比)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有するアクリル系共重合体、重量平均分子量(Mw):41万)100質量部に、架橋剤として、アルミニウムキレート系架橋剤(綜研化学株式会社製、製品名「M-5A」、固形分濃度=4.95質量%)0.74質量部(固形分比)を配合した粘着剤組成物。
【0142】
<組成物4>
酸変性ポリオレフィン系樹脂(α-オレフィン重合体、三井化学社製、商品名「ユニストールH-200」、重量平均分子量(Mw):52,000)100質量部に、多官能エポキシ化合物(三菱化学社製、製品名「YX8000」、25℃において液体、エポキシ当量205g/eq、重量平均分子量:1,400)100質量部、粘着付与剤(スチレン系モノマー脂肪族系モノマー共重合体、軟化点95℃、三井化学社製、製品名「FTR6100」)50質量部、及び、イミダゾール系硬化触媒(四国化成社製、製品名「キュアゾール2E4MZ」、2-エチル-4-メチルイミダゾール)1質量部を配合した粘着剤組成物。
【0143】
<重量平均分子量(Mw)>
重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8320」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレンの重量平均分子量に換算した値を用いた。
(測定条件)
・測定試料:ポリマー濃度1質量%のテトラヒドロフラン溶液
・カラム:「TSK gel Super HM-H」を2本、「TSK gel Super H2000」を1本(いずれも東ソー株式会社製)、順次連結したもの。
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:0.60mL/min
【0144】
(導電性接着シートの作製)
組成物1~4を用いて、各例の導電性接着シートを作製した。
【0145】
[実施例1]
第1の接着剤層および第2の接着剤層の作製に組成物1を用い、第3の層の作製に、下記イソブチレン系熱可塑性エラストマー(A)を用いて、以下の方法で、実施例1の導電性接着シートを作製した。
第1剥離フィルム(商品名:SP-382150(リンテック社製))上に、第1剥離フィルム面から順に、第2の接着剤層としての、厚み22μmのアクリル系粘着剤層(感圧接着剤層)と、第3の層としての、厚み10μmのイソブチレン系熱可塑性エラストマー(A)(カネカ社製、SIBSTAR 103T)と、第1の接着剤層としての、厚み18μmのアクリル系粘着剤層(感圧接着剤層)と、を設けた多層接着シートを塗工法により準備した。
導電性線状体として、タングステンワイヤー(直径25μm、メーカー名:株式会社トクサイ製、製品名:TGW-CS、以下、「ワイヤー」と称する。)を準備した。
次に、外周面がゴム製のドラム部材に多層接着シートを、第1の接着剤層の表面が外側を向き、しわのないように巻きつけ、円周方向における多層接着シートの両端部を両面テープで固定した。ボビンに巻き付けたワイヤーを、ドラム部材の端部付近に位置する多層接着シートの第1の接着剤層の表面に付着させた上で、ワイヤーを繰り出しながらドラム部材で巻き取り、少しずつドラム部材をドラム軸と平行な方向に移動させていき、ワイヤーが等間隔でらせんを描きながらドラム部材に巻きつくようにした。
このようにして、多層接着シートの第1の接着剤層の表面上に、隣り合うワイヤーの距離を一定に保ちつつ、ワイヤーを複数設けて、細線配線付き多層接着シートを形成した。この際、ドラム部材は、振動しながら移動するようにして、巻き付けられたワイヤーが波形状を描くようにした。ワイヤーは等間隔に設けられ、間隔は5.0mmであった。次に、細線配線付き多層接着シートのワイヤー配置した表面に、剥離層としての第2剥離フィルム(商品名:SP-381130(リンテック社製))を貼り合わせた。その後、ドラム軸と平行に、第2剥離フィルムごと細線配線付き多層接着シートを切断した。
以上のようにして、剥離フィルム付きの導電性接着シート(以下、単に「導電性接着シート」とも称する)を得た。
【0146】
[実施例2]
第1の接着剤層の厚みを28μmとしたこと以外、実施例1と同様にして、実施例2の導電性接着シートを作製した。
【0147】
[実施例3]
第1の接着剤層および第2の接着剤層の作製に組成物2を用いたこと、及び第3の層の作製に酸変性ポリオレフィン系樹脂(A)(三井化学株式会社製、製品名「ユニストール H-200」、質量平均分子量(Mw):14.5万、ガラス転移点:-53℃)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、実施例3の導電性接着シートを作製した。
【0148】
[実施例4]
第3の層の作製に酸変性オレフィン系樹脂(A)を用いたこと、及び第3の層の厚みを5μmとしたこと以外、実施例1と同様にして、実施例4の導電性接着シートを作製した。
【0149】
[実施例5]
第1の接着剤層の作製に組成物3を用いたこと以外、実施例1と同様にして、実施例5の導電性接着シートを作製した。
【0150】
[実施例6]
第1の接着剤層の厚みを12μmとしたこと以外、実施例1と同様にして、実施例6の導電性接着シートを作製した。
【0151】
[比較例1]
第2の接着剤層および第3の層を除いた層構成とした以外、実施例1と同様にして、比較例1の導電性接着シートを作製した。
【0152】
[比較例2]
第1の接着剤層の厚みを28μmとしたこと以外、比較例1と同様にして、比較例2の導電性接着シートを作製した。
【0153】
[比較例3]
第3の層の作製に組成物1を用いたこと以外、実施例1と同様にして、比較例3の導電性接着シートを作製した。
【0154】
[比較例4]
第1の接着剤層の作製に実施例1に記載のイソブチレン系熱可塑性エラストマー(A)を用いたこと以外、比較例1と同様にして、比較例4の導電性接着シートを作製した。
【0155】
[比較例5]
第1の接着剤層の作製に組成物4を用いたこと以外、比較例3と同様にして、比較例5の導電性接着シートを作製した。
【0156】
[25℃における貯蔵弾性率]
測定対象となる層を形成する組成物と同一の組成物から形成した直径8mm×厚み1mmの試験片Aを作製した。以下に示す測定条件で、ねじりせん断法によって試験片Aのせん断貯蔵弾性率G’を測定し、得られた値を25℃における貯蔵弾性率とした。結果を表1に示す。
【0157】
-測定条件-
・測定装置 :粘弾性測定装置(Anton Paar社製、装置名「MCR300」)・試験開始温度:-20℃
・試験終了温度:150℃
・昇温速度 :3℃/分
・周波数 :1Hz・測定温度 :25℃
【0158】
【表1】
【0159】
[導電性接着シートの構成]
表2に、各例で作製した導電性接着シートの構成を示す。
【0160】
【表2】
【0161】
-表1、2の説明-
「SIBS」は、イソブチレン系熱可塑性エラストマー(A)を表す。
「H-200」は、酸変性オレフィン系樹脂(A)を表す。
【0162】
[評価]
各例で作製した導電性接着シートを用いて以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0163】
[接着力]
各例で作製した導電性接着シートの第2の接着剤層の側の第1剥離フィルムを剥離し、露出した第2の接着剤層の表面に、目付40g/m、厚み700μmのポリエステル製不織布を貼付した。その後、導電性接着シートを切断し、縦(MD)200mm×横(TD)25mmの大きさの試験片Bを作製した。当該切断は、MD方向およびMDに直交する方向(TD方向)に対し、MD方向と、試験片Bの長さ方向が一致し、TD方向と、試験片Bの幅方向が一致するように行った。なお、MD方向とは、製造時における流れ方向でワイヤーを配線する方向(ワイヤーと並行な方向)をいう。
作製した試験片Bを23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で2週間静置した。次に、第1の接着剤層の側の第2剥離フィルムを剥離し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、試験片Bのワイヤーが配置された第1の接着剤層の面を、ステンレス板(SUS304 600番研磨)に貼付し、同環境下で24時間静置した。
24時間静置後、以下の条件で、JIS Z0237:2000に基づき、第1の接着剤層の接着力を測定した。
【0164】
-測定条件-
・装置 :引張試験機(島津製作所社製、オートグラフAG-IS 500N)
・剥離角度 :180度
・引張速度(剥離速度) :300mm/分
・測定環境 :23℃及び50%RH
【0165】
判定基準は、以下の通りとした。
-判定基準-
A:5.0N/25mm以上
B:5.0N/25mm未満
【0166】
[ワイヤー密着性]
各例で作製した導電性接着シートの第2の接着剤層の側の第1剥離フィルムを剥離し、露出した第2の接着剤層の表面に、目付40g/m、厚み700μmのポリエステル製不織布を貼付した。その後、導電性接着シートを切断し、縦(MD)200mm×横(TD)100mmの大きさの試験片Cを作製した。
試験片C(導電性接着シート)から、第1の接着剤層の側の第2剥離フィルムを剥離し、ワイヤーが配置された第1の接着剤層の表面を外側にして、φ30mmの円柱に巻き付けた。
判定基準は、以下の通りとした。
-判定基準-
A:第1の接着剤層の表面からのワイヤーの浮き、剥がれ及び脱落のいずれも発生しなかった。
B:第1の接着剤層の表面からのワイヤーの浮き、剥がれ及び脱落のいずれか1つ以上が発生した。
【0167】
[抵抗値]
各例で作製した導電性接着シートの第2の接着剤層の側の第1剥離フィルムを剥離し、露出した第2の接着剤層の表面に、目付40g/m、厚み700μmのポリエステル製不織布を貼付した。その後、導電性接着シートを切断し、縦(MD)200mm×横(TD)100mmの大きさの試験片Dを作製した。
電極として、銅箔(厚み10μm、幅10mm)を準備した。
次に、第1の接着剤層の側の第2剥離フィルムを剥離してワイヤー面を露出した。
準備した電極(銅箔)を、図5に示すように、ワイヤーの延びる方向と直交する方向でワイヤーの両端部に乗せ、5kgの荷重をかけて電極を取り付けた。これを試験片D’とした。
試験片D’の電極部分にテスターを当てて、試験片D’の作製直後の抵抗値と、ワイヤー面を露出したまま24時間静置した後の抵抗値をそれぞれ測定し、以下の式に基づき、抵抗値の変化率(%)を求めた。
抵抗値の変化率(%):{(ワイヤー面を露出したまま24時間後静置した後の試験片D’の抵抗値)-(作製直後の試験片D’の抵抗値)}/(作製直後の試験片D’の抵抗値)×100
【0168】
判定基準は、以下の通りとした。
-判定基準-
A:抵抗値の変化率が20%未満
B:抵抗値の変化率が20%以上
【0169】
【表3】
【0170】
表3に示すように、第1の接着剤層及び第2の接着剤層の間に、貯蔵弾性率が2.5×10Pa以上の第3の層を有する実施例1~6は、第3の層を有さない比較例1、2及び4、並びに、第3の層に代えて、貯蔵弾性率が2.5×10Pa未満の層を配置した比較例3及び5に比べ、抵抗値の変化率が小さかった。
したがって、本実施例の導電性接着シートによれば、不織布のような凹凸の比較的大きな被着体を貼付しても、接着剤層の内部へのワイヤーの埋まり込みを抑制できる。さらに、電極を設置した際の、ワイヤーと電極との電気的接続を良好にできる。
また、本実施例の導電性接着シートによれば、接着力の評価およびワイヤー密着性の評価が良好であったので、第1の接着剤層の接着性、および、第1の接着剤層とワイヤーとの密着性も確保されている。
【符号の説明】
【0171】
10,11…導電性接着シート、12…第1の接着剤層、12A…第一接着面、12B…第二接着面、14…第2の接着剤層、14A…第一接着面、14B…第二接着面、16…第3の層、16A…第一面、16B…第二面、18,18A…導電性線状体、20,21…疑似シート構造体、20A…第一面、20B…第二面、22…被着体、22A…第1の被着体表面、30…電極、100,101…積層体、200,201…発熱装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7