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特許7401478情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20231212BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20231212BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G06T7/00 610Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021040480
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139903
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】三ツ元 信一
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-005612(JP,A)
【文献】特開2019-020220(JP,A)
【文献】特開2006-112127(JP,A)
【文献】特開2013-250059(JP,A)
【文献】特開2019-194562(JP,A)
【文献】特開2018-185146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G06T 7/00 - G06T 7/90
G06V 10/00 - G06V 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変状を異なる時期に撮影した複数の画像からそれぞれ抽出された複数の変状データを取得する取得手段と、
前記複数の変状データに基づいて、複数の変状データの差分を検出する検出手段と、
前記複数の変状データの差分に基づいて、前記変状を確認する優先度を算出する算出手段と、
前記複数の画像の少なくとも一方において前記変状を含む領域を特定する特定手段と、
前記優先度に基づいて、前記特定手段によって特定された前記変状を含む領域を表示する表示手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
通信可能に接続された第1の装置と第2の装置を有する情報処理装置であって、
前記第1の装置は、
異なる時期に撮影した複数の画像の、それぞれの画像から抽出された変状データを取得する取得手段と、
前記異なる時期の画像間での前記変状データの差分を基に、進展している変状を検出する検出手段と、
前記変状データの差分を基に、前記変状に対する優先度を算出する算出手段と、
前記進展している変状を覆う領域を特定する特定手段と、を有し、
前記第2の装置は、
前記第1の装置によって前記特定された領域を、前記優先度に応じて表示する表示手段を有する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
前記第2の装置は、二つ以上の装置であり、
前記第1の装置は、前記特定した複数の領域を、前記二つ以上の第2の装置に対応させて分けて、前記対応した第2の装置に分配することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記特定手段は、作業者が視認可能な表示解像度に基づいて、前記領域を特定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記画像からさらに抽出された前記変状の種別によって、前記優先度の算出基準を異ならせることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記算出手段は、作業者からの指示を基に、前記優先度の算出基準を変更する変更手段をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記算出手段は、前記変状が進展している度合いに基づいて前記優先度を算出することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記表示手段は、前記特定された領域を前記優先度に応じた順に表示することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記表示手段は、前記優先度に応じた表示の順を作業者が変更するユーザーインターフェースを表示することを特徴とする請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記表示手段は、画像に対して前記変状データを重畳して表示することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記算出手段は、前記変状が生ずる構造物の属性を表す情報を基に、前記優先度を算出することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記検出手段は、前記複数の変状データの差分に基づいて、前記変状の進展を検出し、
前記算出手段は、前記変状の進展に基づいて、前記優先度を算出することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記特定手段は、前記複数の画像の少なくとも一方において前記変状を囲む領域を特定し、
前記表示手段は、前記優先度に基づいて、前記特定手段によって特定された前記変状を囲む領域を表示することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項14】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
変状を異なる時期に撮影した複数の画像からそれぞれ抽出された複数の変状データを取得する取得工程と、
前記複数の変状データに基づいて、複数の変状データの差分を検出する検出工程と、
前記複数の変状データの差分に基づいて、前記変状を確認する優先度を算出する算出工程と、
前記複数の画像の少なくとも一方において前記変状を含む領域を特定する特定工程と、
前記優先度に基づいて、前記特定工程によって特定された前記変状を含む領域を表示する表示工程と、
を有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項15】
コンピュータを、請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の情報処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影された画像を基に構造物等の変状を検出する情報処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像を用いた橋梁やトンネル等のインフラ構造物の点検では、構造物壁面に生じるひび割れや鉄筋露出等の変状を検出するために、撮影した複数の高解像度画像を合成して、一枚の合成画像を生成する手法が採られている。また、構造物の部材の健全度を判断するために、異なる時期に構造物の壁面を撮影した画像から変状を検出し、変状がどれだけ進展(つまり経年変化)したかを把握することが求められている。この場合、例えば、検出した変状同士の差分を求めることにより、個々の変状の進展度が算出される。
また、特許文献1には、撮影時期が異なる画像を入力とし、変状同士の位置ズレを補正した後に、進展している変状の算出を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-20220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示されるような技術を用いて、進展している変状を算出することができても、上述したような複数の高解像度画像を合成した画像では、多くの進展している変状を含む領域が算出されることがある。この場合、点検を行う作業者は、それら多数の進展している領域を確認することになるため、確認するべき変状の領域を見落としてしまう虞がある。
【0005】
そこで本発明は、確認すべき変状を作業者が見落としてしまう可能性を少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の情報処理装置は、変状を異なる時期に撮影した複数の画像からそれぞれ抽出された複数の変状データを取得する取得手段と、前記複数の変状データに基づいて、複数の変状データの差分を検出する検出手段と、前記複数の変状データの差分に基づいて、前記変状を確認する優先度を算出する算出手段と、前記複数の画像の少なくとも一方において前記変状を含む領域を特定する特定手段と、前記優先度に基づいて、前記特定手段によって特定された前記変状を含む領域を表示する表示手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、確認すべき変状を作業者が見落としてしまう可能性が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2】図面と検査対象画像の関係の一例を示す図である。
図3】検出した変状のリストの一例を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る情報処理のフローチャートである。
図5】進展している変状のリストの一例を示す図である。
図6】優先度算出処理のフローチャートである。
図7】領域特定処理のフローチャートである。
図8】領域の特定の一例を示す図である。
図9】領域の特定テーブルの一例を示す図である。
図10】優先度変更に関わるUI画面の一例を示す図である。
図11】領域選択に関わるUI画面の一例を示す図である。
図12】進展度合い(進展率)による優先度算出の一例を示す図である。
図13】第2の実施形態のシステム構成例を示す図である。
図14】第2の実施形態のサーバ装置の情報処理フローチャートである。
図15】第2の実施形態のクライアント端末の情報処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置の仕様や各種条件(使用条件、使用環境等)によって適宜修正又は変更され得る。また、後述する各実施形態の一部を適宜組み合わせて構成してもよい。以下の各実施形態において、同一の構成については同じ符号を付して説明する。
【0010】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係る情報処理装置100の概略構成例を示したブロック図である。
情報処理装置100は、CPU101と、ROM102と、RAM103と、HDD104と、表示部105と、操作部106と、通信部107とを有している。
CPU101は、中央演算装置(Central Processing Unit)であり、各種処理のための演算や論理判断等を行い、システムバス110に接続された各構成要素を制御する。ROM(Read-Only Memory)102は、プログラムメモリであって、CPU101が実行する制御手順や情報処理手順を含むプログラムを格納する。ROM102に格納されているプログラムには、後述する本実施形態に係る各種情報処理手順のプログラムが含まれる。RAM(Random Access Memory)103は、CPU101の主メモリ、ワークエリア等の一時記憶領域として用いられる。なお、情報処理装置100に接続された外部記憶装置等からRAM103にプログラムをロードすることで、プログラムメモリが実現されても構わない。
【0011】
HDD104は、本実施形態に係る画像データ等の電子データやプログラムを記憶しておくためのハードディスクを備えたデバイスである。同様の役割を果たすものとして、外部記憶装置が用いられてもよい。ここで、外部記憶装置は、例えば、メディア(記録媒体)と、当該メディアへのアクセスを実現するための外部記憶ドライブとで実現することができる。このようなメディアとしては、例えば、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、DVD、USBメモリ、MO、フラッシュメモリ等が知られている。また、外部記憶装置は、ネットワークで接続されたサーバ装置等であってもよい。
【0012】
表示部105は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ(OLED)等を備えており、画像やGUI(Graphical User Interface)を生成して、それらディスプレイの画面上に表示させる。なお、表示部105は、情報処理装置100と有線あるいは無線で接続された外部デバイスに含まれていてもよい。
操作部106は、キーボードやマウスを有し、ユーザ、例えば後述する変状調査点検を行う作業者等による各種操作を受け付ける。
通信部107は、公知の通信技術により、他の情報処理装置や通信機器、外部記憶装置等との間で、有線又は無線による双方向の通信を行う。
【0013】
本実施形態の情報処理装置100は、橋梁やトンネル等のインフラ構造物を撮影した高解像度画像から、それらインフラ構造物に生じたひび割れや鉄筋露出等の変状を検出し、その変状がどれだけ進展したかの経年変化を判定する。さらに本実施形態の情報処理装置100は、進展している変状の重要性により優先度を算出し、その優先度に応じて、進展している変状の領域に対する表示方法を変更する。すなわち、本実施形態の情報処理装置100は、異なる時期に撮影した複数の画像から抽出された変状のデータを取得し、それら異なる時期の画像から抽出した変状データの差分を算出し、その差分を基に、進展している変状を検出する。そして、本実施形態の情報処理装置100は、変状データの差分に基づいて、変状に対する優先度を算出し、さらに、進展している変状を覆う領域を特定して、その特定された領域を、優先度に応じて表示する。
【0014】
ここで、本実施形態の情報処理装置100について詳細な説明を行うにあたり、画像と変状を表す変状データとの関係、およびインフラ構造物等に関する構造情報について説明する。また、画像を用いた点検において、構造物壁面等を撮影した画像は、図面と対応付けて管理することが好ましい。
【0015】
図2(a)は、インフラ構造物の一例として、橋梁の壁面を撮影した画像211を、図面200の画像上へ張り付けた状態を示した図である。図面200の画像は、点202を原点とした図面座標201を持つ。画像の図面上の位置は、画像左上の頂点座標で定義される。例えば画像211の座標は、頂点212の位置(X212,Y212)である。図面200の画像データと画像211のデータとは、それぞれの座標情報とともに、記憶部であるRAM103やHDD104に記憶されている。
【0016】
本実施形態において、インフラ構造物の画像点検で使用する画像は、微細なひび割れなどを確認できるように、例えば1画素あたりで構造物上の1mmに対応するような、高解像度で撮影がなされたものであるため、サイズが大きい。例えば、図2(a)の画像211は、20m×10mの橋梁の床板を撮影した画像であるとする。画像解像度が1画素あたり1.0mm(1.0mm/pixel)の場合、画像211の画像サイズは、20,000pixel×10,000pixelとなる。なお、高解像度で撮影した画像211には、例えば1000箇所以上の多数のひび割れや鉄筋露出等の変状が存在した場合、それらすべての変状を紙面上で表現することは困難であるため、図2の紙面に表示している変状は一部に限定されている。以降の説明で広範囲の画像や変状データを表示している図においても、紙面上に表示している変状は一部に限定している。
【0017】
変状データは、撮影された画像から、コンクリート壁面に生じるひび割れ等の変状を画像解析処理によって検出(抽出)した変状自動検出結果の情報、または撮影された画像から、人間が変状と判断して入力した結果を記録した情報である。本実施形態の情報処理装置100は、このようにして撮影画像から抽出された変状データを取得する。本実施形態を説明するにあたり、入力画像および変状データは、図面座標に対応付けて管理されているものとする。
【0018】
図2(b)には、画像211に対応する変状データ221を、図面200の画像上で、図2(a)の画像211と同じ位置に張り付けた状態を示している。なお、変状データ221には、紙面に表示されない変状も含め多数(例えば1000以上)の変状が存在している。変状データ221中の個々の変状データの図面上の位置は、変状データを構成する画素座標で定義される。
【0019】
図3(a)は、変状データのデータ構造を表す変状データテーブル301の一例を示した図である。なお、図3(b)に示す変状データテーブル302の説明は後述する。
変状データテーブル301は、変状ID、変状種別、座標、線幅、幅最大値、線長、および面積の各項目によって構成されている。変状IDは検出された変状の識別情報(ID)を表し、変状種別はひび割れや鉄筋露出といった変状の種別を表している。座標は変状データを構成する複数の座標情報を表している。線幅は変状種別がひび割れの場合、その座標における変状の幅を表す属性値である。幅最大値は変状種別がひび割れの場合、線幅の数値の最大値を表し、線長はひび割れの長さの合計値を表している。面積は変状種別が鉄筋露出のように領域を示す変状の場合、その領域の面積を表している。例えば、変状IDCa001は、変状種別がひび割れであり、座標が(Xca001_1、Yca001_1)から(Xca001_n、Yca001_n)のn点からなる連続画素で表されていることが示されている。
【0020】
このように、本実施形態において、変状データは画素で表現されているものとする。変状データの表現は、複数点から構成されるポリラインや曲線等のベクターデータで表現するようにしてもよい。変状データをベクターデータで表現する場合、データ容量が減少し、より簡略的な表現となる。ひび割れ以外の領域形状の変状データの例として、変状IDTa001は、変状種別が鉄筋露出である。鉄筋露出のような領域形状を座標情報で表現する場合、ポリラインで囲まれた領域を持つ変状となる。なお、変状データの持つ情報は、変状データテーブル301に示す情報に限定されるものではなく、その他の属性の情報を保持していてもよい。
【0021】
その他の属性の情報としては、検査対象の構造に係る構造情報が用いられてもよく、これは構造物の種別や基本構造、構造物の各種寸法、部材情報、竣工年度をはじめとする諸元を含む情報である。さらに、他の属性の情報として、補修年度や補修箇所、補修方式といった保守メンテナンスに係る補修実績の情報が含まれていてもよい。本実施形態において、部材情報や補修情報といった構造物の特定位置に関する構造情報は、図面上における位置情報とともに記憶されているものとする。すなわち、各部材の図面上の位置や補修箇所の図面上の位置が構造情報の一部として記憶される。したがって、図面を介して、構造情報と画像および変状データとの対応関係を求めることができる。構造情報は、画像や変状データとともに、記憶部であるRAM103やHDD104に格納され、取得することができる。なお、構造情報に含まれる情報は、上記の情報に限定されるものではなく、さらにその他の情報が保持されていてもよい。また、構造物の種別に応じて、種別ごとに限定された情報が保持されていてもよい。
【0022】
図4は、本実施形態における情報処理装置100に係る情報処理である経年変化優先表示処理の流れを表すメインフローチャートである。本実施形態の情報処理装置100は、異なる時期に撮影した二つの画像(第1の入力画像と第2の入力画像とする)を用いて、構造物の壁面に生じる変状の進展度を算出する。第2の入力画像を撮影した時期は、第1の入力画像を撮影した時期から、数年(例えば5年)経過した時期であるとする。以下、図4の各工程(ステップ)は、それらの符号の先頭には「S」を付与して説明することとする。
【0023】
S401において、CPU101は、記憶部に格納されている変状データの中から、第1の入力画像に対応した変状データ(第1の変状データとする)を取得する。第1の変状データは、図3(a)に示した変状データテーブル301から取得されるデータであるとする。なおここでは、変状データとしてひび割れデータを例に挙げて説明する。ひび割れデータは、例えば、画像上で人手によってひび割れをトレースして入力された情報、もしくは機械学習により予め学習させたモデルを用いて自動検出された情報であり、記憶部に格納されたデータであるとする。
【0024】
S402において、CPU101は、S401と同様にして、第2の入力画像に対応した変状データ(第2の変状データとする)を取得する。ここで、第2の入力画像に対応した変状データは、例えば図3(b)に示した変状データテーブル302に記述されているとする。図3(b)の変状データテーブル302は、前述した図3(a)の変状データテーブル301と同様のテーブルである。図3(b)の変状データテーブル302は、変状データテーブル301と同様に、第2の入力画像から人手でトレースして入力された情報、もしくは機械学習による学習モデルを用いて自動検出されて、予め記憶部に格納されたデータであるとする。すなわちCPU101は、記憶部に格納されている変状データテーブル302から、第2の入力画像に対応した第2の変状データを取得する。
【0025】
次にS403において、CPU101は、第1の変状データと第2の変状データとから差分値を算出し、変状の進展度を示す情報として、図5で示す経年変化データテーブル501を作成する。
【0026】
図5(a)は、第1の変状データと第2の変状データとから差分値を算出して得られる経年変化データテーブル501を表している。なお図5(b)に示した経年変化データテーブル501の説明は後述する。
経年変化データテーブル501は、進展ID、対応ID、線長変化量、線幅変化量、面積変化量、交点変化量、接続ID、および優先度で構成されている。進展IDは進展している変状のIDを表しており、対応IDは比較対象の変状IDを表しており、第1の変状データの変状IDと第2の変状データの変状IDとが記載される。第1の変状データと第2の変状データとの対応付けについては、既存の技術を用いて行われてもよい。例えば、第1の入力画像と第2の入力画像のそれぞれから検出した変状の輪郭から重心および特徴量を算出し、その算出した特徴量間の距離を比較することで位置合わせが行われてもよい。線長変化量、線幅変化量、面積変化量および交点変化量は、それぞれの項目ごとに第1の変状データと第2の変状データとの間の差分値として記載される。具体的には線長変化量は、第1の変状データと第2の変状データとの対応IDに記載の変状IDの線長の差分として算出されている。同様に線幅変化量は、第1の変状データと第2の変状データとの線幅最大値の差分、面積変化量は第1の変状データと第2の変状データとの面積の差分として算出されている。交点変化量は第1の変状データにおける変状の交点の数と第2の変状データにおける変状の交点の数の差分から算出されている。接続IDは、第1の変状データの変状に対し、新規に変状として検出された第2の変状データの変状IDが記載されている。
【0027】
次にS404において、CPU101は、変状の進展の重要性に基づいて、作業者が確認すべき優先度を算出する処理を行い、その優先度を経年変化データテーブルの優先度の項目に記載する。この処理の詳細については、図6のフローチャートを用いて後述する。
【0028】
次にS405において、CPU101は、変状の進展を作業者が注目すべき箇所として表示する領域(注目領域とする)を特定する。この処理の詳細については、後に図7のフローチャートを用いて後述する。
【0029】
次にS406において、CPU101は、S405で特定した注目領域を、その領域内に含まれる変状に対して、S404で算出した優先度の順番に、表示部105に表示する。表示部105に表示した領域について作業者が確認を終わった後は、作業者によって、操作部106のマウスのクリックもしくはキーボードの特定のキーの押下することなどが行われる。これにより、CPU101は、作業者が確認を終わったことを認識する。そして、CPU101は、表示部105に対し、現在表示している領域に対する次の優先度の領域を対象として、表示する。
【0030】
図6は、図4のS404における優先度算出処理の詳細な流れを表すフローチャートである。
S601において、CPU101は、経年変化データテーブル501の進展ID順に処理を行い、処理対象の進展IDの変状の種別を判定する。すなわち、優先度算出処理では、変状の種別によって優先度の算出基準が異なり、このためCPU101は、まずS601において処理対象の進展IDの変状の種別を判定する。ここで、CPU101は、処理対象の進展IDの変状の種別がひび割れかどうかを判定するものとする。そして、CPU101は、変状種別がひび割れである場合(Yes)にはS602に処理を移行し、ひび割れでない場合(No)にはS605に処理を移行する。
【0031】
S602に移行すると、CPU101は、経年変化データテーブル501の対象の進展IDの線長変化量の値に係数Aを乗算する。本実施形態では、係数Aを20とする。経年変化データテーブル501の場合、CPU101は、進展IDがC001_Dの線長変化量の0.3を乗算して、乗算値として6を算出する。
【0032】
次にS603において、CPU101は、経年変化データテーブル501の対象の進展IDの線幅変化量の値に係数Bを乗算する。本実施形態では、係数Bを10とする。テーブル501の場合、CPU101は、進展IDがC001_Dの線幅変化量の0.3を乗算して、乗算値として3を算出する。
【0033】
次にS604において、CPU101は、経年変化データテーブル501の対象の進展IDの交点変化量の値に係数Cを乗算する。本実施形態では、係数Cを1とする。テーブル501の場合、CPU101は、進展IDがC001_Dの交点変化量の0を乗算して、乗算値として0を算出する。S604の後、CPU101はS606の処理に移行する。
【0034】
一方、S605に移行した場合、CPU101は、経年変化データテーブル501の対象の進展IDの面積変化量の値に係数Dを乗算する。本実施形態では、係数Dを100とする。テーブル501の場合、CPU101は、進展IDがT001_Dの面積変化量の0.05を乗算して、乗算値として5を算出する。S605の後、CPU101はS606の処理に移行する。
【0035】
なお、係数Aから係数Dの値は、優先度が線長変化量>線幅変化量>面積変化量>交点変化量となるように重みが付くように構成されており、係数Aが20、係数Bが10、係数Cが1、係数Dが100で設定された一例である。これらは経年変化データテーブル501の値によって変更してもよく、例えばm(メートル)やmm(ミリメートル)などの単位により正規化し、係数値が設定されてもよい。
【0036】
次にS606において、CPU101は、S602からS604まで、もしくはS605で乗算した値を積算し、図5(b)で示すように、経年変化データテーブル501の優先度の項目に記載する。
【0037】
その後、S607において、CPU101は、全ての進展IDに対して処理が終了しているかどうかを判定する。そして、CPU101は、全ての進展IDに対し処理が終了している場合(Yes)には図6のフローチャートの処理を終了し、未処理の進展IDがある場合(No)には未処理の進展IDを処理対象のIDとして、S601に移行する。
【0038】
図7は、図4のS405における注目領域特定処理の詳細な流れを表すフローチャートである。
S701において、CPU101は、情報処理装置100の表示部105のディスプレイの表示解像度の情報を所得する。ここでは、液晶ディスプレイを例に挙げ、その表示解像度がフルHDであるとする。フルHDの表示解像度は1920×1080であるとする。
【0039】
S702において、CPU101は、図3(b)に示した第2の変状データテーブル302から、処理対象の変状IDにおける変状データの座標情報を取得し、中心の座標を算出する。算出方法としては、例えば、変状データテーブルの座標から水平方向のX座標の最大値と最小値、および垂直方向のY座標の最大値と最小値の平均値を、中心座標(Xm,Ym)とするような方法を用いることができる。
【0040】
S702の処理について、図8(a)~図8(i)を用いて補足説明を行う。
図8(a)は、進展変状重畳画像800とひび割れ801の一例を表した図である。
進展変状重畳画像800は、第2の入力画像に対し、変状検出したひび割れを重畳表示している画像の例である。図の例では、ひび割れ801は、実線部分と点線部分で構成されており、実線部分は第1の変状データから得られたひび割れを表しており、点線部分は第2の変状データから得られたひび割れ、つまり経年変化で進展している部分を表している。なお、説明の都合上、既存部分を実線、進展部分を点線で表現しているが、別の方法として、進展部分の色を変えたり、線を太らせたりするなど強調する表示をしてもよい。
【0041】
図8(b)は、ひび割れ801に対する中心812を表している図であり、中心812の座標は(Xm,Ym)である。なおこの例では、中心812として平均値を算出しているが、重心値を算出する方法であってもよく、他の方法でもよい。
【0042】
次にS703において、CPU101は、S702で算出した中心812の座標(中心座標)と、S701で取得した表示解像度とに基づいて、変状を覆う矩形の領域を設定し、後述する図9(a)に一例を示す領域テーブルに、その矩形領域の情報を保存する。例えばS701で取得した表示解像度が1920×1080であり、S702で取得した中心座標(Xm,Ym)であるとすると、矩形領域は、左上座標が(Xm-960,Ym-540)で右下の座標が(Xm+960,Ym+540)の領域で表される。
【0043】
図9(a)は、領域テーブル901の一例を示した図である。
領域テーブルは、領域ID、進展ID、矩形座標、および優先度で構成されている。進展IDと優先度は、図5の経年変化データテーブルの進展IDと優先度を表しており、優先度順に領域IDが付番されている。矩形座標は、前述した矩形領域の左上座標と右下座標を表している。
【0044】
図8(c)は、ひび割れ801の中心812から外枠831で表される矩形領域を算出した例を示した図である。
図9(b)は、表示部105に表示する確認画面951の一例を示した図である。確認画面951は、進展変状重畳画像800から矩形領域を切り出した画面である。
また、図8(a)のひび割れ802のように、中心座標が進展変状重畳画像800の端部(上辺や下辺、左辺、右辺)に近く、表示解像度の矩形領域が確保できない場合がある。この場合には、図8(d)のように画像外となる領域を黒色で塗りつぶした外枠832で示す矩形領域を生成してもよい。また、他の方法として、図8(e)のように端部外が選択されないように外枠833で示す矩形領域を設定し、変状の中心座標が矩形領域の中心とならなくてもよい。
【0045】
本実施形態では、表示画面に対し領域を等倍で表示する例を挙げているが、作業者が、進展している変状を確認できるのであれ等倍に限らず、作業者が倍率を設定できてもよい。例えば、図8(f)の例で示すように、進展している部分を含むひび割れ803が外枠835の矩形領域に収まらない場合は、図8(g)の例で示すように変状全体が矩形領域内に内包するように表示倍率を変更してもよい。この際、ズームボタン871で示すようなユーザーインターフェース(UI)を用いることで、作業者が変状を確認可能な表示倍率へ変更可能となされていてもよい。また、図8(h)の例で示すように、ひび割れ803を例えば90度のように任意の角度だけ回転させることにより、ひび割れ803全体を矩形領域内に等倍で表示するように変更してもよい。また、図8(i)の例のように、ひび割れ803の進展している部分を矩形領域内に等倍で表示するように、表示する位置を上下方向に変更させてもよい。
【0046】
次にS704において、CPU101は、処理対象の全IDの処理が終了しているかどうかを判定する。CPU101は、全てのIDの処理が終了している場合(Yes)には図7のフローチャートの処理を終了し、処理すべき他のIDが残っている場合(No)にはS702に処理を戻して次のIDに処理対象を変更する。
【0047】
以上説明したように、本実施形態において、情報処理装置100は、時期の異なる二つの画像から検出された変状について進展度を算出するとともに、表示解像度に基づいて変状を覆う領域を特定し、進展度に応じて変状の領域を表示する。これにより、本実施形態の情報処理装置100によれば、多数の変状の中から、進展度が高く優先的に確認すべき変状を、その進展度に応じて、作業者が確認可能な解像度で表示することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、第1の入力画像の変状データを取得するS401の処理は、過去に検出した変状のデータを用いる処理の例であるが、例えば新たに設けた現在の基準を用いて変状データを再度検出してもよい。例えば、過去の処理データである第1の変状データを生成した時より、変状を検出する処理アルゴリズムの性能が上がり、過去の第1の変状データより多くの変状を検出可能になることがある。このような場合、新たな処理アルゴリズムを用いて変状データの検出を行えば、第1の入力画像を撮影した当時は検出できなかった変状と現在の第2の変状とを比較することが可能となり、進展している変状をより正確に把握することが可能となる。また同様に、第2の入力画像の変状データを取得するS402の処理においても、予め検出済みの変状データを入力データとして使用してもよい。
【0049】
また、本実施形態では、第1の入力画像と第2の入力画像とはそれぞれ図面上で位置を合わせた画像であり、画像間の位置合わせ処理は不要であるため、単純に差分を算出することで経年変化のデータを作成することができる。一方で例えば、第1の入力画像と第2の入力画像において位置が合っていない場合には、それら画像間の位置合わせ処理を行ってから、それら画像間で差分を算出して、経年変化データを作成してもよい。この例の場合の位置合わせ処理は、既存の技術が用いられてもよい。例えば、情報処理装置がそれぞれの画像から特徴点を算出し、対応する特徴点を基に位置を合わせてもよく、例えば作業者が手動で画像間の対応点を指定して位置合わせを行ってもよい。
【0050】
また、本実施形態では、第1の変状データと第2の変状データとの間の差分を基に進展度を算出しているが、情報処理装置はさらに時期の異なる第3の変状データをも用いて差分を求めて進展度を算出してもよい。三つ以上の変状データの差分を用いることにより、加速度的な進展度を算出することが可能となる。また、加速度的な進展度の値を乗算する係数の値は変更されてもよい。例えば、進展している度合が大きい場合には、図6のフローチャートにおける、該当する係数の値を強く(大きく)して優先度を高くすることで、作業者が優先的に確認できるようになる。
【0051】
また、本実施形態では、変状の進展度を基に優先度を算出する例を挙げているが、例えば、構造物の属性を表す情報をも用いて優先度が算出されてもよい。例えば、橋梁の床板であれば、橋脚に近い部分の領域と、橋脚と橋脚の中間部分の領域とでは、同じひび割れの進展度であっても、調査点検作業者が重視する項目が異なる。このため、情報処理装置は、構造物の属性を表す情報として、例えば橋脚に近い部分の領域、橋脚と橋脚の中間部分の領域の情報を用いて、優先度を算出する際の係数の値を変更する。同様に、橋脚の上部と下部とでも重視する項目は異なるため、情報処理装置は、それらを構造物の属性情報として用いて、優先度算出の係数の値を変更してもよい。
【0052】
また、本実施形態では、時間が経過して変状が進展する例を挙げているが、第1の入力画像の撮影から第2の入力画像の撮影の間に変状が補修されている場合には、差分としてのひび割れの線が短くなる、もしくは面積が減少することがある。この場合は、差分量がマイナスとなるが、変状は進展していないため、差分量を0として表示対象から外してもよい。
【0053】
なお本実施形態の説明では、情報処理装置100のCPU101が実行する処理を、図4のフローチャートの各工程(ステップ)として表したが、それら各工程の各処理はCPU101により形成される各機能からなる機能ブロック図として表すこともできる。機能ブロックにおける各機能は図4の各工程と概ね同様になるためその図示および説明は省略する。
【0054】
<第1の実施形態の変形例1>
第1の実施形態の優先度算出処理は、予め定められた係数を乗算することで優先度を算出している。第1の実施形態の変形例1では、点検調査作業者が優先度の算出基準(算出ルール)をUIで変更可能にすることにより、優先度を作業者に提示する順序を変更可能にする例を説明する。
【0055】
図10(a)は、ユーザである調査点検作業者に提示されるUI画面1000の一例を表した図である。UI画面1000は、優先度を算出する際に重視する項目を作業者が選択可能にするものであり、ラジオボタン1010と、重視項目1021~重視項目1024とで構成されている。ラジオボタン1010は、重視項目1021~重視項目1024のいずれかを作業者が選択する際に指示されるボタンである。ラジオボタン1010で選択可能な重視項目1021~重視項目1024は、図6のフローチャートで説明した係数A~係数Dに対応している。第1の実施形態の変形例1では、ラジオボタン1010で選択された重視項目の係数の値を相対的に高くし、選択されていない項目の係数を相対的に低くする。
【0056】
以上が、第1の実施形態の変形例1における優先度算出基準(優先度算出ルール)を変更可能なUI画面である。これにより、作業者は優先度算出ルールを変更することができ、作業者は重視したい項目を変更することができる。
【0057】
<第1の実施形態の変形例2>
第1の実施形態の変形例1では、ラジオボタンを用いたUI画面1000の例を挙げたが、第1の実施形態の変形例2では、重視する項目の優先度順位を変更するUIの例を説明する。
【0058】
図10(b)は、第1の実施形態の変形例2におけるUI画面1050の一例を表した図である。UI画面1050は、優先順位1061~優先順位1064と、重視項目1071~重視項目1074とを有して構成されている。UI画面1050では、優先順位1061から優先順位1064に記載されている順位へ、重視項目1071から重視項目1074の各項目が選択され、項目の移動もしくは変更が可能となされている。変更された優先順位に基づき、重視項目の係数の値の強度、もしくは値の大小が変更される。図10(b)の例では、優先順位の1位に線幅である係数Bが、2位に面積である係数Dが、3位に交点である係数Cが、4位に線長である係数Aが設定されている。この場合、情報処理装置は、各係数に設定する値の大きさを、係数B>係数D>係数C>係数Aとなるように設定する。
これにより、作業者の意図に応じて優先度を変更することができる。
【0059】
<第1の実施形態の変形例3>
第1の実施形態の変形例1および変形例2では、作業者が、進展している変状の画面を領域毎に確認(視認)することを行っていた。第1の実施形態の変形例3では、作業者が視認可能(確認可能)な表示解像度で、進展している変状を表示するとともに、全体画像を表示する例を説明する。
【0060】
図11(a)は、確認画面1101の一例である。確認画面1101は、図9(b)の確認画面951と同じ領域を表示しているが、図11(a)では縮小画像1111が表示されている。縮小画像1111には、確認画面1101で表示されている矩形領域1121と、後述する図11(b)の確認画面1151で表示されている矩形領域1131とが表示されている。なお、矩形領域1121は第1の実施形態の図8(a)の外枠831の領域、矩形領域1131は第1の実施形態の図8(a)の外枠833の領域に対応している。図11(a)では、矩形領域1121がハイライト表示されている。また同様に、図11(b)の確認画面1151では、矩形領域1131を表示部105に表示している場合には矩形領域1131がハイライト表示される。
【0061】
図11(a)および図11(b)の説明では、縮小画像1111に二つの矩形領域を表示した例になっているが、進展している変状を含む三つ以上の複数の矩形領域が表示されてもよい。また、縮小画像1111において、調査点検作業者が、次に確認する領域をクリックするなどの選択行為を行った場合、その選択された領域が指定されてもよい。また、情報処理装置は、優先度順に矩形領域の外枠の色や色の濃度や色の彩度を変更することにより、作業者が確認すべき領域を提示する方法を変更してもよい。
【0062】
以上のように、第1の実施形態の変形例3によれば、作業者の意図によって、確認する領域を任意に選択することができ、例えば作業者は、優先度の高い領域を確認中に、優先度は低いが、その周辺の変状の領域を続けて確認するようなことが可能となる。
また、縮小画像を表示するのではなく、図11(c)のように、リスト1175で示すような優先度順に項目が並べられたリスト形式での表示を行い、その項目を選択可能にする方法であってもよい。
【0063】
<第1の実施形態の変形例4>
第1の実施形態の変形例1、変形例2、および変形例3では、図6のフローチャートに示したように、ひび割れの線長の増量や幅の増量、鉄筋露出の面積増量などの、変状における進展量で係数を変更して、優先度を算出していた。第1の実施形態の変形例4では、変状が進展している率(進展度合い、進展率)を基に優先度を算出する例について説明する。
【0064】
図12(a)と図12(b)は、同一の検査対象画像に存在するひび割れの例を示した図である。図12(a)のひび割れ1200と図12(b)のひび割れ1250は、同一の検査対象画像に存在するひび割れの例であり、第2の変状データを表している。図12(a)のひび割れ1200は、例えば、4mmの新規ひび割れ部分1211(点線)と10mmの既存ひび割れ部分1212(実線)とで構成されている。図12(b)のひび割れ1250は、例えば、4mmの新規ひび割れ部分1261(点線)と5mmの既存ひび割れ部分(実線)とで構成されている。ひび割れ1200とひび割れ1250とで新規ひび割れ部分の線長は同じ長さであるが、ひび割れ1200に対する新規ひび割れ部分の割合は約29%(=4/14)であり、ひび割れ1250に対する新規ひび割れ部分の割合は約44%(=4/9)である。この場合、ひび割れが進展している割合が高い図12(b)のひび割れ1250の進展度合い(進展率)が高いため、情報処理装置は、当該進展度合い(進展率)が高い方の係数を変更して、優先度が高くなるようにする。
【0065】
このように変形例4では、変状が進展している量(上述の例では新規ひび割れの線長)が同じであっても、その変状における進展度合いが異なる場合には、当該進展度合いに基づいて優先度算出の指標を変えるようにする。
なお、上述の例では線分長を例に挙げたが、情報処理装置は、既存の幅と進展した幅や、既存の面積と進展した面積、その他の差分値を用いて、変状の進展度合い(進展率)を算出してもよい。また、単独の変状における進展の度合い(割合、率)を用いるだけでなく、複数の進展度合いが用いられてもよい。また、変状が進展している量と、変状の進展度合いとが組み合わされて用いられてもよい。
【0066】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、進展している変状を表す画面を表示して、領域毎に一人の調査点検作業者が確認(視認)する構成を挙げた。第2の実施形態では、進展している変状の情報をサーバ装置で保管し、複数のクライアント端末である情報処理装置に分配することで、複数の作業者によって確認処理を行える構成を例に挙げる。
【0067】
図13は、第2の実施形態におけるシステム構成の一例を表した図である。図13に示したシステム構成は、サーバ装置1301と複数の情報処理装置1311~情報処理装置1313とで構成されており、それらがネットワーク1305等によって通信可能に接続されているとする。なお、図13では情報処理装置が3台である場合を例に挙げているが3台に限定されるものではない。サーバ装置1301と情報処理装置1311~情報処理装置1313のハードウェア構成は、それぞれ図1で説明したハードウェア構成と同様であるとする。
【0068】
図14は、サーバ装置1301における情報処理の流れを示したフローチャートである。第1の実施形態の情報処理装置100と同一の処理については、同一付番とし、説明を省略する。
S1401において、サーバ装置1301のCPU101は、S405で特定して生成した図9(a)のような領域テーブル901を情報処理装置の台数分に応じて分割して、通信部107を介して各情報処理装置へ分配する。領域テーブル901の分割では、領域テーブル901の領域IDを情報処理装置の台数分に応じて分けるものとする。例えば、図13に示すようにクライアント端末側の情報処理装置が3台であり、領域テーブル901の領域ID数が90個である場合、サーバ装置1301のCPU101は、領域テーブル901を領域IDで30個ずつに3分割する。そしてサーバ装置1301は、30個の領域IDからなる領域テーブルを情報処理装置1311に、次の30個の領域IDからなる領域テーブルを情報処理装置1312に、残りの30個の領域IDからなる領域テーブルを情報処理装置1313に送付する。
【0069】
図15は、情報処理装置1311における情報処理の流れを示すフローチャートである。他の情報処理装置1312,1313においても同様の情報処理が行われる。
S1501において、情報処理装置1311のCPU101は、サーバ装置1301から送付されてきた領域テーブルの情報を、通信部107を介して取得する。
次にS1502において、情報処理装置1311のCPU101は、S1501で取得した領域テーブルを基に、図4のS406と同様に、確認対象の領域を表示する。これにより、情報処理装置1311の作業者は確認を行うことができる。
【0070】
第2の実施形態においては、第1の実施形態では情報処理装置内で行われていた処理を、サーバ装置とクライアント端末とに分けて処理が行われている。これにより、第2の実施形態によれば、多数の進展している変状の領域の確認を、複数人の調査点検作業者で手分けして行うことができ、確認作業の時間短縮が可能となる。
【0071】
なお、第1の変状データおよび第2の変状データをサーバ装置へ登録する方法に関しては、サーバ装置上で行われてもよいし、任意のクライアント端末からサーバ装置への登録が行われてもよい。
また、S1401において、領域テーブルの分割では、所定数ごとに単純に等分する例を挙げたが、変状の進展の優先度に応じて、分割時の配分が変更されてもよい。例えば、調査点検作業者間で熟練度に差がある場合、熟練度が高い作業者には優先度の高い変状を含む領域IDを割り当て、熟練度の低い作業者には優先度の低い領域IDを割り当ててもよい。これにより、優先度に応じて熟練度の異なる調査点検作業者を割り当てることが可能となり、進展している変状の確認が効率的に行うことが可能となる。
【0072】
以上説明したように第1~第2の実施形態の情報処理装置は、進展している変状の重要度に応じて優先度を算出し、進展している変状の領域の表示方法を変更可能である。すなわち第1~第2の実施形態の情報処理装置によれば、進展している変状を含む領域の優先度を算出し、その算出した優先度に基づき表示する変状を含む領域を変更する。これにより、調査点検作業者は、優先して確認すべき変状を効率的に点検(確認)することができるようになる。
【0073】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける一つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えばASIC)によっても実現可能である。
上述の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明は、その技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0074】
100:情報処理装置、101:CPU、102:ROM、103:RAM、105:表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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