(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】吹込ノズル
(51)【国際特許分類】
B29C 55/00 20060101AFI20231212BHJP
B05B 1/20 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B29C55/00
B05B1/20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021086738
(22)【出願日】2021-05-24
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】10 2020 114 029.0
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510331593
【氏名又は名称】ブリュックナー・マシーネンバウ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【氏名又は名称】清水 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ヘグラウアー
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク・ヴァルトライトナー
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/187861(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00
B05B 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面(11)と、側方に互いに離間して配置される一対の側壁(13)と、頂面(15)とを有し、底面(11)、側壁(13)、頂面(15)により室(17)を形成するノズル箱(5)を備え、
ノズル箱(5)は、ノズル箱(5)の全長(L)の一端領域に設けられる流入端(7)と、流入端(7)に対向する他端領域に設けられる閉鎖端(9)とを有し、
流入端(7)からノズル箱(5)内に流入する熱媒体は、ノズル箱(5)の底面(11)に設けられる排出開口群(27)を通じてノズル箱(5)から流出する延伸装置用吹込ノズルにおいて、
ノズル箱(5)の長手方向(L)領域は、流入端(7)に近い第1の長手領域(LB1)と、第1の長手領域(LB1)に続くかつ/又は後置されかつ/又は流入端(7)から離間する第2の長手領域(LB2)との少なくとも2つの長手領域に区分され、
第1の長手領域(LB1)は、先細の収束状に形成され又は少なくとも1つの収束部を備え、底面(11)と頂面(15)との間の収束部の高さ(H)は、流入端(7)からの距離が増大する程、流入端(7)の領域中の高さ(H1)よりも減少し、
第2の長手領域(LB2)は、発散状に形成され又は少なくとも1つの発散部を備え、底面(11)と頂面(15)との間の発散部の高さ(H)は、第1の長手領域(LB1)の終端での高さ(H)及び/又は第2の長手領域(LB2)の始端での高さ(H)より、流入端(7)からの距離が増加する程、増大することを特徴とする延伸装置用吹込ノズル。
【請求項2】
第1の長手領域(LB1)と、第1の長手領域(LB1)に後続の第2の長手領域(LB2)との間に、転換点、転換領域又は転換端(25)が形成される請求項1に記載の延伸装置用吹込ノズル。
【請求項3】
転換点、転換領域又は転換端(25)は、両側壁(13)間の頂面(15)の稜線状に形成され、
第1の長手領域(LB1)の頂面(15)は、転換点、転換領域又は転換端(25)まで底面(11)に向かって傾斜し、頂面(15)は、転換点、転換領域又は転換端(25)から底面(11)に対し角度をもって離間して傾斜する第2の長手領域(LB2)に移行し、
第1の長手領域(LB1)の頂面(15)の平面と、第2の長手領域(LB2)の頂面(15)の平面との間で形成される角度は、179°より小さくかつ/又は155°より大きい請求項2に記載の延伸装置用吹込ノズル。
【請求項4】
第1の長手領域(LB1)にも第2の長手領域(LB2)にも属さない移行領域(15a)は、第1の長手領域(LB1)と第2の長手領域(LB2)との間に形成され、移行領域(15a)でのノズル箱(5)の頂面(15)は、ノズル箱(5)の底面(11)に平行に配置される請求項3に記載の延伸装置用吹込ノズル。
【請求項5】
第1の長手領域(LB1)の長さは、ノズル箱(5)の全長(L)及び/又はノズル箱(5)の底面(11)に形成される排出開口群(27)の長さの55%より大きくかつ/又はノズル箱(5)の全長(L)及び/又はノズル箱(5)中の底面(11)に形成される排出開口群(27)の長さの95%よりも小さい請求項1~4の何れか1項に記載の延伸装置用吹込ノズル。
【請求項6】
第2の長手領域(LB2)の長さは、ノズル箱(5)の全長(L)及び/又はノズル箱(5)の底面(11)に形成される排出開口群(27)の長さの5%より大きくかつ/又はノズル箱(5)の全長(L)及び/又はノズル箱(5)の底面(11)に形成される排出開口群(27)の長さの90%よりも小さい請求項1~5の何れか1項に記載の吹込ノズル。
【請求項7】
流入端(7)領域のノズル箱(5)の高さ(H1)は、流入端(7)に対向するノズル箱(5)の閉鎖端(9)の高さ(H3)より大きく、
閉鎖端(9)領域のノズル箱(5)の高さ(H3)は、方向転換点、転換領域若しくは転換端(25)又は移行領域(15a)のノズル箱(5)の高さ(H2)より大きい請求項1~6の何れか1項に記載の延伸装置用吹込ノズル。
【請求項8】
ノズル箱(5)の閉鎖端(9)の高さ(H3)は、流入端(7)領域の高さ(H1)の90%よりも小さくかつ/又はノズル箱(5)の流入端(7)領域の高さ(H1)の20%よりも大きい請求項1~7の何れか1項に記載の延伸装置用吹込ノズル。
【請求項9】
第1の長手領域(LB1)と第2の長手領域(LB2)との間に形成される転換点(25)及び/又は移行領域(15a)のノズル箱(5)の高さ(H2)は、ノズル箱(5)の閉鎖端(9)の高さ(H3)より少なくとも5%だけ小さくかつ/又はノズル箱(5)の閉鎖端(9)の高さ(H3)より10%より大きい請求項1~8の何れか1項に記載の延伸装置用吹込ノズル。
【請求項10】
底面(11)の排出開口群(27)は、連続する長孔列(29a)、複数の長孔(29)及び/又は多数の排出孔(33)を有する単一又は複数の排出領域(35)を備える請求項1~9の何れか1項に記載の延伸装置用吹込ノズル。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載の延伸装置用吹込ノズルを備える延伸装置において、
吹込ノズルは、帯状材料(M)の引出方向(3)に対し、帯状材料(M)の上方及び/又は下方に間隔を空けて横断又は直角方向に配置され、ノズル箱(5)の長さ(L)は、少なくとも帯状材料(M)の幅に対応することを特徴とする延伸装置。
【請求項12】
ノズル箱の全長(L)に沿って形成される複数の排出開口により構成される排出開口群(27)は、排出開口群(27)毎に異なる幾何学形状、異なる大きさ又は異なる直径の複数の排出孔(33)、長孔(29)及び/又は排出領域(35)を備える請求項1~10の何れか1項に記載の延伸装置用吹込ノズル。
【請求項13】
ノズル箱の全長(L)に沿って形成される複数の排出開口により構成される排出開口群(27)は、複数の排出孔(33)、複数の長孔(29)又は他形状の複数の貫通開口を有し、ノズル箱の全長(L)に沿い排出孔(33)、長孔(29)の形状、直径及び/又は寸法が変化する請求項1~10の何れか1項に記載の延伸装置用吹込ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載する吹込ノズルに関連する。
【背景技術】
【0002】
シート状の薄膜樹脂を製造する際に、薄膜樹脂(ウェブ)の帯状材料は、例えば、噴出口(吹込ノズル)から噴射される熱媒体により加熱され又は冷却される。使用する送風ノズルは、帯状材料の引出方向又は走行方向に対し横断方向、即ち通常直角方向に帯状材料の上方及び/又は下方に配置される。
【0003】
例えば、横延伸装置(TDO)内に配置される種々のノズル箱は、複数の流出開口が形成された15m以下の長さを有し、延伸工程用のシート状樹脂薄膜は、ノズル箱から流出する熱媒体により製造に特有の温度に加熱され又は冷却される。熱媒体となる例えば通常、空気は、ポンプ又は通気装置によりノズル箱の一端に供給される。例えば、空気は、ノズル箱内で、ノズルの作業幅に沿って分布し、次にノズル箱の帯状材料側の多数の開口を通り、帯状材料方向に流出する。多数の開口から噴射される熱媒体は、帯状材料に接触して、熱エネルギの一部を帯状材料に付与し又は冷却では帯状材料から熱を吸収する。
【0004】
熱媒体による熱伝達に重要な課題の1つは、例えば、延伸すべき薄膜樹脂の全作業幅に渡り横断する熱媒体を極力均一に噴出し分布させることにある。製品の品質は、帯状材料の全作業幅に渡る均一な加熱状態又は冷却状態に対し直接的関連性が認められるからである。流出開口毎の熱媒体の温度と質量(嵩)流量は、作業幅に沿って同一であることが理想的である。
【0005】
複数の開口を通過する最適な均一流量分布を達成する種々の吹込ノズル及びノズル箱が提案される。
【0006】
複数の単一室ノズル箱又は二室ノズル箱を用いることもある。内部構造の内側体積を2領域に再区分する二室ノズル箱は、複数の単一室ノズル箱とは相違する。ノズル箱の正面から供給される気体熱媒体は、ノズル箱内に流入し、媒体が流入する第1室から、ノズル箱内に設けられる複数の中間又は貫通開口を介して、後続の第2室に移行することが好適である。熱媒体は、第2室から流出し、その後複数のノズル開口(種々の形態に形成でき、単一の長手方向長孔で形成してもよい)を介して、薄膜材料又は薄膜樹脂に向かって噴出する。
【0007】
単一室ノズルは、気体熱媒体が、流入開口から流入し、帯状材料に向かって単一又は複数の出口開口から流出する1個の空洞、即ち単一の流入流出室を有する。
【0008】
特許文献1又は特許文献2は、同時に供給分布室として機能する単一の室のみを有する、長手方向に移動する帯状材料用のノズル装置を示す。正面のみからノズル本体に供給される送風熱媒体の媒体流の一部は、ノズル室の対向する正面の共通の供給分布室に導入されて、方向転換し、その後正面からノズル本体に供給される気体熱媒体の残部と共に、媒体流ノズル箱に設けられる複数のノズル開口から帯状材料に向かって流出する。
【0009】
例えば、特許文献3は、改良された解決手段を示す。特許文献3の送風ノズルは、送風ノズルに処理ガスを供給する単一の供給室を備え、形成された複数のノズル開口から帯状材料方向に処理ガスを噴出する分配流出室と、供給室と分配流出室との間に設けられる少なくとも1つの別室とを備える。分配室構造により、ノズル装置を通過する媒体流の温度分布、体積流量及び流量持続性に関連して、処理すべき帯状材料の全幅に渡り流出する媒体流量をより均一化できる。この点では、例えば、横断方向に延伸して製造すべき薄膜樹脂の品質に良好な影響を与える。
【0010】
最後に、特許文献4は、樹脂薄膜の幅に沿って正面側の吹込側から対向側まで内部断面が減少して配置される逆方向2流路を提案する。互いに逆方向に減少する断面を有する両流路の底面に連絡する分布室を介して、気体熱媒体を樹脂薄膜方向に流出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】独国特許第37 04 910C1号明細書
【文献】独国特許第36 26 171C1号明細書
【文献】欧州特許第0 907 476B1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0 377 311A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、流入端に近くかつ先細の収束状に形成される第1の長手領域と、第1の長手領域に続きかつ流入端から離間して発散状に形成される第2の長手領域との少なくとも2つの長手領域を有する単一室ノズルにより、作業幅に沿って通過する出口開口当たりの気体熱媒体流量を均一化する延伸装置用吹込ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、請求項1に記載する特徴により実施される。本発明の有利な構成を従属請求項に記載する。
【0014】
本発明の解決手段は、単一室装置に基づく。二室又は三室での解決手段に対し、単一室装置は、従来では技術的な効果が極端に劣っていたが、本発明の単一室装置は、二室又は三室解決手段の高価で重量のある複数のノズル箱に少なくとも実質的に匹敵する驚愕的効果を生ずる。換言すると、本発明では、本発明による単一室での解決手段を用いて、ノズル群装置に沿って通過する熱媒体を処理すべき帯状材料の全作業幅に渡り噴出して、ノズル群装置から流出する熱媒体の流出体積分布を高度に均一化できる特徴がある。
【0015】
例えば、公知の複数の単一室ノズルに比較して、ノズル装置の作業幅に沿って流動する媒体流の流量分布状態を改良できることが、二室ノズルでの利点と従来考えられていた。一方、内部構造がより複雑な二室ノズルは、明らかに高価でありかつ重量が増加する難点がある。また、予備設計又は計算に時間を掛けて第1室と第2室との間での溢れ出し開口を最適に決定しなければならない。予備設計又は計算したノズル開口とノズル装置とを用いて試験運用を実現し、実際に所望の通り全ノズル開口を通過する流量分布を実測して、十分な信頼性を確保しなければならない。その後、補足的な修正、設計及び調整を行って、所望の最適化を達成することも通常必要である。
【0016】
ノズル箱の内部構造と複数の漏出開口の流れ抵抗に起因する総圧力損失が増加して、エネルギ(必要なポンプ及び/又はファンを駆動する)維持費が高騰することが、二室ノズルの別の重大な欠点である。
【0017】
また、二室ノズルは、保守と内部清掃に関する欠点も留意しなければならない。多室構造により、複数のノズルの内部構造が、部分的に閉鎖されるため、保守又は内部清掃の実施時に内部構造への接触が極めて制限され又は接触が全く不可能になることもある。
【0018】
単一室ノズルを改良する本発明の比較的単純な手段は、驚愕すべきものである。
【0019】
本発明の好適な実施の形態では、例えば、気体熱媒体が通過する複数の出口ノズルを構成する排出領域は、一定の孔径を基本とする孔を構成する。換言すれば、本発明では、ノズル箱の全長、即ち帯状材料である樹脂薄膜の幅に沿う全伸張作業幅に渡り一定の反復する複数の出口開口型又は排出孔型の排出領域を設け、例えば、種々の寸法と長さのノズル箱を延伸装置に採用することができる。異なる寸法及び/又は型の複数の開口を各用途に設計しかつノズル箱の長さに沿って異なる形状の開口を設計するとき、再度新たな予備設計及び/又は計算を行って最適な媒体流流量分布を確保する必要があるため、一定の反復する複数の出口開口型又は排出孔型の排出領域を設けことに重要な利点がある。換言すれば、本発明の単一室解決手段は、作業幅に沿って通過する媒体流を均一化する明白かつ確実な改良を行うことができる。また、最終的に例えば長方形に形成する等、ノズル箱の全長に渡り断面形状も非常に単純化できる。
【0020】
要するに、本発明の吹込ノズル、即ちノズル箱は、通過する気体媒体の入口開口付近の収束型領域と、それに続くかつ/又は後続の発散型領域とを長さ方向に設けて、本発明の解決手段を実現できる。例えば、収束型領域は、ノズル箱の頂面が、ノズル箱の底面に向かうため、ノズル箱の断面が徐々に減少し、移行点、折曲点又は屈曲箇所から逆に発散する、即ち底面から徐々に離間する形態でノズル箱が形成される。
【0021】
本発明では、ノズル箱の収束領域又は収束部でも、収束領域に続くするノズル箱発散領域又は発散部でも、実際にある部分的な長さでのみ収束し又は発散する部分を複数回連続して形成してもよい。
【0022】
約言すると、本発明の単一室ノズルの本質的利点は、次の通りである:
・ 吹込ノズルの大きい作業幅でも、作業幅に沿って通過する出口開口当たりの気体熱媒体流量の偏差値は、大幅に減少する。
・ 公知の二室ノズル又は三室ノズルと比較して、本発明の単一室ノズルを安価に製造できる。
・ 本発明の単一室ノズルは、従来の解決手段、二室又は三室ノズルに比べて、費用対効果を明らかに良好にかつ軽量に製造できる。
・ 本発明の単一室ノズルの圧力損失は、二室ノズルよりも明らかに小さい。
・ 単一室ノズルの内側空間は、公知の二室又は三室ノズルと比べて、迅速に内部に接触して、清掃、保守点検が容易である。
【0023】
下記を示す
図1~
図6について本発明の実施の形態を以下詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図3a】
図2のIIIa-IIIa線に沿う吹込ノズルの断面図
【
図4】本発明の別の実施の形態を示す吹込ノズルの略示断面図
【
図6】ノズル箱長さに沿う開口当たりの流量偏差値を示す棒グラフ
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の吹込ノズル1の斜視図を示す
図1を以下説明する。
【0026】
図1は、矢視3の引出方向に移動する薄膜樹脂の帯状材料Mの例えば上方に配置される吹込ノズル1を示す。帯状材料Mは、例えば、延伸装置内で延伸される。延伸装置は、例えば、横延伸装置、縦延伸装置、縦延伸段と横延伸段とを備える逐次式延伸装置又は同時延伸装置でもよい。
【0027】
移動する薄膜樹脂の帯状材料Mの上方のみに吹込ノズル配置する
図1の構造に限定されず、本発明の実施の形態では、好適な微小距離離間して帯状材料Mの上方と下方の両側に対称に吹込ノズルを配置する送気構造が通常好適である。ノズル箱5とも呼ばれる吹込ノズルは、長さLと、幅Bと、長さL方向に少なくとも部分的に変化する高さH(詳細に後述する)とを有する。
【0028】
通常ノズル箱5の下方を通過して移動する帯状材料Mの横断方向、即ち直角に、ノズル箱5は、配置される。換言すれば、ノズル箱1の長さL方向は、移動する帯状材料M及び横延伸装置(TDO)の横断方向である。引出方向に対し直角に配置されるノズル箱の幅は、引出方向3に平行である。ノズル箱の高さは、帯状材料Mの平面Eに対し垂直である。
図1は、延伸装置の機械長手方向MDと、機械長手方向MDに対し直角な帯状材料Mの幅方向の機械横断方向TDを示す。換言すると、相応の吹込ノズル1又はノズル箱5は、帯状材料Mの長手方向(MD)に対し直角の横断方向(TD)に平行に配置され、処理すべき移動する帯状材料Mの上方及び/又は下方に配置される。
【0029】
【0030】
【0031】
図2は、
図1の本発明の吹込ノズル1の長さL方向の高さ変化を示す「短縮」断面図である。
【0032】
送気ポンプ及び/又は扇風機により吹込ノズル1又はノズル箱5の通常一端から、例えば空気等の熱媒体が供給される。ノズル箱から帯状材料M方向に流出する通常流体の熱媒体は、帯状材料Mの昇温、加熱又は冷却の使用目的に応じて、最終的に相応の温度に加熱し又は冷却する気体媒体又は流体である。
【0033】
吹込ノズル1又はノズル箱5に設けられる流入端7には、相応の入口開口又は流入開口7aが設けられる。ノズル箱5の入口開口、流入開口7a又は相応の流入端7は、流入端の正面7又は正面側の入口開口又は流入開口7aともいう。
【0034】
ノズル箱5の流入開口7aの離間側、対向側又は反対側を閉鎖端9ともいう。
【0035】
ノズル箱5は、基本的には矩形断面を有し又は有し得る。吹込ノズル1の組立状態では、移動する帯状材料Mに隣接して帯状材料M方向にかつ微小な間隔空けて、ノズル箱5の底面11を配置することが好適である。
【0036】
少なくとも流出開口又は流出開口の領域に関する限り、ノズル箱5の全長さLに沿い底面11又はノズル箱5の全幅Bは、不変又は一定(必ずしも同一でなくてもよい)が好適である。
【0037】
図3a~
図3cに示すノズル箱5は、引出方向3に離間する距離の幅Bをもって底面に対して垂直に配置される両側壁13を基本的に有する。
【0038】
頂面15は、両側壁13間で底面11に対向しかつ底面11から間隔を空けて配置される。この構造により、「単一室ノズル」ともいう単一の室17を有する最単純形状で好適な長方形断面のノズル箱5が全長Lに沿って形成される。
【0039】
図2から明らかなように、例えば、通常流体の熱媒体は、流入端7及び流入開口7aを通じて、矢視19のように流入する。ノズル箱5内部(室17内)で、複数の矢視21で示す気体熱媒体の一部は、さらに流入開口に対向する閉鎖端9に達する。矢視21は、流入開口7aと閉鎖端9との間でノズル箱5の底面11に設けられる排出開口群27の出口開口を通り、下方に流出する媒体流の一部を示す。熱媒体流は、
図2に示す矢視23に沿って、帯状材料(
図1に示すノズル箱5の底面11に平行かつ直下に配置され、図面平面に対して基本的に垂直に継続的に移動する)に向かって流動する。
【0040】
図2に示すノズル箱5の頂面15は、第1の長手領域LB1と第2の長手領域LB2とを有する少なくとも2つの長手領域を備え、ノズル箱5の頂面15の高さは、底面11に対して平行に配置されず、ノズル箱の長さLに沿うノズル箱5の断面積は、一定でなく、変化する。
【0041】
流入端7に近い第1の長手領域LB1のノズル箱5の高さHは、流入端7又は流入端付近から少なくとも部分的に減少する領域を有する。図示の実施の形態では、流入端7の第1の長手領域LB1では、先細の収束形態に形成される第1の長手領域LB1の全長に渡りノズル箱5の高さHは、漸減状態又は減少状態で形成されるため、収束型の第1の長手領域LB1ともいう。
【0042】
図2に示す第1の長手領域LB1の高さは、図示のように流入端7から転換点又は転換端25(転換領域形態でも形成できる)まで連続的に減少することが好ましい。流入端7の高さH1(ノズル箱5の最大高さ)は、第1の長手領域LB1の終端の転換点又は転換端25の高さH2よりも高い。
【0043】
第1の長手領域LB1に続く第2の長手領域LB2は、転換点25から始まり第1の長手領域LB1に対し流入端7の反対側の閉鎖端9まで底面11に対し徐々に離間(発散)する末広状に形成される。即ち、ノズル箱5の高さHは、転換点25又は転換領域25と閉鎖端9との間の領域で漸増して、ノズル箱5の終端部での高さH、即ち閉鎖端9の高さH3は、転換点又は転換領域25より大きいため、発散型の第2の長手領域LB2ともいう。
【0044】
ノズル箱5の閉鎖端9での
図2に示す高さH3は、転換点又は転換領域25(発散型の第2の長手領域LB2の始端高さ)より大きいが、ノズル箱5の流入端7での高さH1よりも小さい。
【0045】
図3a、
図3b及び
図3cにノズル箱の各部の断面を示す。
図3aは、流入開口、流入端7の断面を示す。
図3bは、転換点、転換領域又は転換端25(通常移行領域15a)での断面を示す。
図3cは、閉鎖端9の領域でのノズル箱5の断面を示す。図示の実施の形態では、流入端7の高さH1は、閉鎖端9の高さH3より大きく、閉鎖端9の高さH3は、転換点、転換領域又は転換端25の高さH2より大きい。
【0046】
図2に類似する
図4は、第1の長手領域LB1でのノズル箱の頂面15の収束下降傾斜と、第2の長手領域LB2でのノズル箱5の頂面15の発散上昇傾斜とを不均衡に強調する本発明のノズル箱5の「短縮」断面を示す。例えば、ノズル箱5の全長L又は処理すべき帯状材料Mの全幅の少なくとも55%、特に少なくとも60%、65%、70%、75%又は80%に沿って、流入端7から収束する第1の長手領域LB1を設けると、本発明の良好な結果を達成できる。
【0047】
また、転換端25の流入端から発散する第2の長手領域LB2は、ノズル箱5の全長L又は処理すべき帯状材料Mの幅の少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、35%又は40%に渡り配置される。
【0048】
ノズル箱5終端の閉鎖端9は、相対的に、流入端(入口側)7の高さH1の90%より小さく、特に95%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%より小さく又は40%より小さい高さH3が好適である。ノズル箱5の流入端7の高さH1は、閉鎖端9の高さH3の20%、特に25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%よりも相対的に大きく又は70%よりも大きいことが好ましい。
【0049】
収束型の第1の長手領域LB1と発散型の第2の長手領域LB2との間の最小の高さH2は、閉鎖端9の高さH3よりも、少なくとも5%、特に10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%小さい値が好適である。
【0050】
換言すれば、最小高さH2値は、流入端7の高さH1の75%未満、特に70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%未満が好ましい。
【0051】
図示の実施の形態とは異なり、例えば、収束型の第1の長手領域LB1のノズル箱5の頂面15は、流入端7から転換点、転換領域又は転換端25まで底面11に対し連続的に傾斜しない形態でも良い点にも留意されたい。第1の長手領域LB1の特定の部分のみ長さ方向に収束する形状を有し、例えば、ノズル箱5の頂面15は、少なくとも底面に対し平行に配置され又は例えば、残りの収束部とは異なる傾斜角度で配置される頂面部を備えてもよい。換言すれば、第1の長手領域LB1のある領域でのみ、底面11に対し楔状に配置されるノズル箱5の頂面15を部分的な長さで形成できよう。
【0052】
発散型の第2の長手領域LB2にも同様の頂面15形状の変更を適用できる。転換点、転換領域又は転換端25から、閉鎖端9までノズル箱5の頂面15が一定に発散せず、例えば、底面11に対し異なる傾斜角度で頂面15を形成し又は底面11に対し頂面15を平行に形成する部分を備えてもよい。
【0053】
収束型の第1の長手領域LB1の長手領域には、
図2に示す収束する一定の形態が設けられるが、連続する複数の収束部を形成し、例えば、互いに分離する単一又は複数の収束部を形成できる(例えば、底面11に対し平行に頂面15を配置し、主に収束型の領域LB1で頂面が発散する中間部を複数の短い収束部に設ける極端な形態でもよい)。
【0054】
第1の長手領域LB1に続く第2の長手領域LB2は、例えば、連続的な発散状に形成される形態を特徴とするのみならず、例えば、底面11対し平行に配置される頂面15を有する単一部を2以上の発散型長手領域間に形成してもよい。また、複数の主に発散型第2の長手領域LB2間のノズル箱5の頂面15に短い発散中間部を形成する極端な場合でもよい。換言すれば、第2の長手領域LB2の特定領域でのみ、底面11に対し楔状に離間するノズル箱の頂面15を部分的長さで形成できる。
【0055】
また、収束型の第1の長手領域LB1でも、発散型の第2の長手領域LB2でも、ノズル箱5の底面11に対する頂面15に同一の傾斜形状及び/又は傾斜角度(
図2に示す常時等角度で形成する)を採用する必要はない。底面11に対し頂面15の配置角度が変化する領域を設けてもよい。
【0056】
図示の転換点、転換領域又は転換端25を真の折曲点又は端形状で形成する必要はなく、少なくとも一定長さに沿ってノズル箱の長手方向Lに配置される長手領域として転換点、転換領域又は転換端25を形成できよう。例えば、転換端領域25の頂面15を底面11に対し平行に配置できる。底面11に対し平行に配置される移行領域15aを破線で示す。第1の長手領域LB1と第2の長手領域LB2とに移行領域15aの長さを加えてノズル箱5の全長を形成するとき、第1の長手領域LB1と第2の長手領域LB2とは少し短縮される。
【0057】
少なくとも1つ又は複数の気体熱媒体流出用ノズル装置として、吹込ノズル1又はノズル箱5の底面11に排出開口群27が設けられる。
【0058】
図5a~
図5fは、ノズル箱5の底面に形成される排出開口群27の種々の形状例を示す。
【0059】
図4のノズル箱5の左側に示す前箱16は、ノズル箱5の流入端7の前部に実際に接続され、前箱16の頂面16aは、底面11に対し平行に配置され、全長L1に沿って下降しない。前箱16の側壁は、側壁13と同一の平面上に配置されて、通常のノズル箱5の実際の側壁13の円滑な延長部となる。前箱16は、延伸装置の側方領域での補助的な固定及び/又は気体熱流体供給の改良に役立つが、実際の帯状材料に接近して設けられる長さL1の前箱の通常下面又は底面11に出口開口は形成されない。ノズル箱の対向する終端側9に続く類似の延長部をノズル箱5に設けられるが、前方箱16の設置は、任意選択的事項であり、本発明に必須ではない。
【0060】
図5a~
図5gは、長手方向に延伸される帯状材料Mの各長手方向Lの一部を略示する各ノズル箱5の吹出用排出領域35の排出開口群27の変形例を示す底面図である。
【0061】
排出開口群27は、底面11の幅より少し狭い中央領域に通常複数の開口部を形成した領域である。
【0062】
図5aの変形例に示す複数の長孔29は、例えば、比較的短い連結部31で互いに分離され、ノズル箱5の底面11に長手方向Lに連続して形成される。複数の長孔29の両側には、間隙を空けて、多数の排出孔33が、複数の列状に形成されて、排出領域35が設けられる。
【0063】
図5bの変形例は、連結部31により互いに分離されて長手方向に連続して底面11に形成される長孔29を示す。
図5bでは、
図5aに示す排出孔33は設けられず、
図5aの実施の形態よりもより大きい幅の長孔が選択される。
【0064】
図5cの変形例では、長手方向Lに互いに隣接しかつ離間して2列の長孔29が配置される。底面図では長さ方向に重複する複数の長孔29が望ましい。
【0065】
図5cとは異なり、
図5dの変形例では、底面図上ずれた2列に複数の長孔が重複を排除して配置される。即ち、ノズル箱5の底面11に形成される一方列の長孔29の側方に離間して設けられる他方列の長孔29の各端部は、閉鎖される。
【0066】
図5eの変形例では、各長孔29は、ノズル箱5の長手方向Lに対して角度をもって互いに傾斜して形成される。例えば、連続する偶数番目の全長孔を右向迎え角で配置し、中間に配置される全長孔を逆方向の迎え角で配置できる。
【0067】
図5fは、例えば、一定の長孔形状の長孔30により排出開口群27を形成する変形例を示す。この例では、例えば、
図5aに類似する複数の開口33を備える追加の排出領域35を長孔30の左右に設けることができる。
【0068】
吹出用排出領域35は、事実上何の制限もない任意の形状又は任意の組合せの形状であり、変形例の組合せを例示するに過ぎない。例えば、収束型/発散型の単一室ノズルでは、円形断面の複数の流出開口又は複数のノズル開口の傍に、別の幾何学形状の複数の開口を設けてもよい。吹出用排出領域35は、前記及び図示のように、単一又は複数の長孔、複数の丸孔、複数の長孔又は楕円孔等の成形される複数の開口(互いに平行にずれて又は並置される長孔を備える)の形態又はその変形例の複数の組合せ形態になる。
【0069】
このように、複数の排出開口群27は、複数の排出孔33及び/又は長孔29及び/又は通常複数の排出領域35を備え、排出領域35は、ノズル箱5の長さ及び/又は少なくとも帯状材料の幅に沿って、複数のノズル出口開口の一定の又は均一に反復する幾何学形状及び/又は形態及び/又は寸法を有する。一定の幾何学形状をノズル箱5の長さに沿って設けない形態でもよい。例えば、排出開口群27が、複数の孔、複数の長孔又は他形状の複数の貫通開口を有し、ノズル箱の長さに沿い又は少なくともノズル箱の長さの一部又は複数部に渡り、前記形状、直径及び/又は寸法を変化させてもよく、排出開口群27の形態は、基本的に制限されない。
【0070】
ノズル箱5の長さ及び/又は幅に応じて、排出開口群27の形態を選択できる点にも留意すべきである。少なくとも帯状材料の幅に相当する長さ方向(帯状材料の引出方向に対し横断又は直角方向)で、ノズル箱に排出開口群27を形成して、帯状材料の全幅に渡り、媒体流を噴出することが理想的である。
【0071】
最後に、ノズル箱から流出する熱媒体又は温度搬送流体は、間隔を空けて通過する帯状材料Mに対して垂直にのみ排出開口群27又は複数の出口開口から流出する他、例えば、90°から偏倚する角度(例えば85°、80°、75°、70°、65°、60°等、複数の前記値間の任意の複数の値であって、通常例えば90°と60°との間にある任意の角度値)で、熱媒体を帯状材料Mの平面E上に流出する形態で複数の吹出開口を構成できる。
【0072】
換言すると、自由噴流を傾斜して流出する各開口を設置できる。異なる複数の出口形状又は複数の噴射傾斜角度及び衝突角を選択すると、自由噴流の噴射方向安定性を高め、複数の帯状材料への熱伝達率を変えることができる。
【0073】
流入端7に近い少なくとも1つの収束型の第1の長手領域LB1と、第1の長手領域LB1に続く流入端7から離間する少なくとも1つの発散型第2の長手領域LB2とを備える本発明では、全ノズル箱5内でほぼ均等の所望の流動速度を確立して、ノズル箱5の全長に渡り均一な静圧を、ノズル箱5内を流動する熱媒体に付与できることが本発明の解決手段の利点である。熱媒体の静圧均一化により、ノズル箱5からの方向転換と流出運動量の変化は、ノズル箱の全長Lに渡りほぼ均等になる。末端部(流入端7から最遠)の複数の吹出開口での過剰供給を伴い、転換点、転換領域又は転換端25の下流に生じる渦列(渦系)により特にノズル端部での熱媒体の滞留又は渋滞が形成されることがあるが、ノズル端部での熱媒体の滞留又は渋滞を防止できることが本発明の解決手段の別の利点である。単純な立方体型の複数の単一室ノズルと比較すると、本発明では、幾何学形状に起因する複数の作用・効果及びこれらの組合わせにより、ノズル箱長さに沿って70%までの熱媒体流流量分布の明白な向上が認められる。
【0074】
全長に渡り同一断面寸法を有する従来の標準的な単一室ノズル箱の解決手段に対する本発明の複数の利点を
図6に示す。
図6は、長方形の単一室ノズル箱の全開口から熱媒体を流出する従来例と、収束型/発散型単一室ノズル箱5の全開口から熱媒体を流出する本発明の実施例との流量偏差値St(出口開口当たり質量流量)の比較(ノズル箱長さlメートル当たりの値)を示す棒グラフである。
図6の複数の高流量偏差値Stを表す斜線断面棒グラフは、X(横)軸上に従来の異なる直角単一室ノズル箱長での割合を示し、その右側のX(横)軸上の各格子線断面棒グラフは、本発明の異なる各収束型/発散型単一室ノズル箱長での割合を示す。例えば、長さ8mの吹込ノズル1でも、単純に形成された長方形の単一室ノズルでは、気体熱媒体のほぼ±1.5%の最大必要偏差値が生じる。偏差値が1.5%を上回るより長いノズル長では、従来では、二室ノズルに変更する必要があった。
【0075】
収束型/発散型吹込ノズル1の模擬偏差値試験では、作業幅に渡る気体熱媒体流の偏差値が大幅に低下することが判明したため、偏差値基準を考慮して、従来の二室ノズルを、本発明の吹込ノズルに交換することができる。
【0076】
従来の単純形態の単一室ノズルに対し、僅かに増加するに過ぎない総圧力損失が収束型/発散型単一室ノズルの他の利点である。円形断面排出孔が異なる3試験でのノズル箱の流量と総圧力損失変化値を計算した結果を下表1に示す。
【0077】