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  • 特許-二次電池および該二次電池の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】二次電池および該二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20231212BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20231212BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20231212BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20231212BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231212BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20231212BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20231212BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20231212BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20231212BHJP
   H01M 50/198 20210101ALI20231212BHJP
   H01M 50/35 20210101ALI20231212BHJP
   H01G 11/14 20130101ALN20231212BHJP
【FI】
H01M10/058
H01G11/60
H01G11/80
H01M10/04 W
H01M10/04 Z
H01M10/052
H01M10/0569
H01M50/184 A
H01M50/188
H01M50/193
H01M50/198
H01M50/35 101
H01G11/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021149895
(22)【出願日】2021-09-15
(65)【公開番号】P2023042656
(43)【公開日】2023-03-28
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】浅倉 啓介
(72)【発明者】
【氏名】泉本 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼士 祐輔
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-220119(JP,A)
【文献】特開2009-170159(JP,A)
【文献】特開2007-149378(JP,A)
【文献】特開2021-012804(JP,A)
【文献】特開2005-140196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00 -10/0587
H01M 50/10 -50/198
H01M 50/35
H01G 11/60
H01G 11/80
H01G 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極を備える電極体と、
前記電極体を収容する電池ケースと、
前記電池ケースに取り付けられ、前記電極体の各極に接続された電極端子と、
前記電池ケースと前記電極端子との間に挟持され、該電池ケースと該電極端子との間を封止するガスケットと、
カーボネート系溶媒である非水電解液と、
を備える二次電池であって、
下記式(1):
K=Wi/(VrGH2) (1)
(ここで、Wiは該二次電池の初期容量(Ah)であり、Vrは前記電池ケース内空隙量(cm)であり、GH2は前記ガスケットの60℃におけるHガス透過係数(cm・cm)/(cm・s・cmHg)である。);
を用いて計算されるパラメータKが0.43×10以上0.59×10以下を満たすように構成されており、
前記ガスケットは、パーフルオロアルコキシアルカン、または、パーフルオロエチレンプロペンコポリマーで構成されており、
前記H ガス透過係数G H2 (cm ・cm)/(cm ・s・cmHg)は、35.5×10 ―10 以上51.8×10 ―10 以下である、二次電池。
【請求項2】
エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、およびジメチルカーボネートを含む前記非水電解液を備えている、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
正極および負極を備える電極体と、
前記電極体を収容する電池ケースと、
前記電池ケースに取り付けられた電極端子と、
前記電池ケースと前記電極端子との間に挟持され、該電池ケースと該電極端子との間を封止するガスケットと、
非水電解液と、
を備える二次電池の製造方法であって、
該二次電池を、
下記式(1):
K=Wi/(VrGH2) (1)
(ここで、Wiは該二次電池の初期容量(Ah)であり、Vrは前記電池ケース内空隙量(cm)であり、GH2は前記ガスケットの60℃におけるHガス透過係数(cm・cm)/(cm・s・cmHg)である。);
を用いて計算されるパラメータKが0.43×10以上0.59×10以下を満たすように設定して構築することを包含し、
前記ガスケットとして、パーフルオロアルコキシアルカン、または、パーフルオロエチレンプロペンコポリマーで構成されるとともに、前記H ガス透過係数G H2 (cm ・cm)/(cm ・s・cmHg)が35.5×10 ―10 以上51.8×10 ―10 以下であるガスケットを選択して前記設定を行い、
カーボネート系溶媒である前記非水電解液を注液することを包含する、製造方法。
【請求項4】
エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、およびジメチルカーボネートを含む前記非水電解液を注液することを包含する、請求項3に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池および該二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等の二次電池は、車両や携帯端末などを始めとする様々な分野において広く使用されている。この種の二次電池は、通常、正極および負極を備える電極体と、電極体を収容する電池ケースと、電池ケースに取り付けられ、電極体の各極に接続された電極端子と、を備えている。また、上記二次電池は、電池ケースと電極端子との間に挟持され、その間を封止するガスケットを備えている。
【0003】
ところで、上記のような構成の二次電池では、充放電によって電池ケース内でガスが発生することがある。かかるガス発生にともなってケース内圧が急激に上昇することを抑制するための技術が、例えば下記2つの特許文献に記載されている。このうちの特許文献1で開示される密閉型電池では、ガスが発生して電池内圧が上昇した時に、外装缶の封口板に設けられた薄肉部を起点として外装缶を変形させて、発生したガスを外部に排出することが提案されている。一方、特許文献2では、相互にガス透過係数が異なる2つのガスケットを組み合わせて使用して、電池ケース内で発生したガスを外部に排出することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6250567号公報
【文献】特開2018-181544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2で開示される技術は、二次電池の内圧が上昇した場合に、この上昇した内圧を電池ケース外に解放するというものである。これに対し、本発明者らは、二次電池における経時的な内圧増加の度合いをより小さくしたい、と考えている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示される技術によると、正極および負極を備える電極体と、上記電極体を収容する電池ケースと、上記電池ケースに取り付けられ、上記電極体の各極に接続された電極端子と、上記電池ケースと上記電極端子との間に挟持され、該電池ケースと該電極端子との間を封止するガスケットと、を備える二次電池が提供される。この二次電池は、下記式(1):
K=Wi/(VrGH2) (1)
(ここで、Wiは該二次電池の初期容量(Ah)であり、Vrは上記電池ケース内空隙量(cm)であり、GH2は上記ガスケットの60℃におけるHガス透過係数(cm・cm)/(cm・s・cmHg)である。);
を用いて計算されるパラメータKが0.43×10以上0.59×10以下を満たすように構成されている。
【0007】
かかる構成によると、パラメータKが上記範囲を満たすことによって、二次電池の経時的な内圧増加の度合いをより小さくすることができる。そのため、より長い期間、二次電池の電池性能を好適な状態で使用することができる。
【0008】
ここで開示される二次電池の好ましい一態様では、上記Hガス透過係数GH2(cm・cm)/(cm・s・cmHg)は、35.5×10―10以上51.8×10―10以下である。かかる構成によると、二次電池の経時的な内圧増加の度合いを低減させる効果をよりよく実現することができる。
【0009】
また、好ましい他の一態様では、二次電池は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、およびジメチルカーボネートを含む非水電解液を備えている。かかる構成の非水電解液を備えることによって、ここで開示される技術の効果をよりよく実現することができる。
【0010】
また、ここで開示される技術によると、正極および負極を備える電極体と、上記電極体を収容する電池ケースと、上記電池ケースに取り付けられ、上記電極体の各極に接続された電極端子と、上記電池ケースと上記電極端子との間に挟持され、該電池ケースと該電極端子との間を封止するガスケットと、を備える二次電池の製造方法が提供される。この製造方法は、該二次電池を、
下記式(1):
K=Wi/(VrGH2) (1)
(ここで、Wiは該二次電池の初期容量(Ah)であり、Vrは上記電池ケース内空隙量(cm)であり、GH2は上記ガスケットの60℃におけるHガス透過係数(cm・cm)/(cm・s・cmHg)である。);
を用いて計算されるパラメータKが0.43×10以上0.59×10以下を満たすように設定して構築することを包含する。
【0011】
かかる構成によると、製造対象たる二次電池を、パラメータKが上記範囲を満たすように設定して構築することによって、当該二次電池の経時的な内圧増加の度合いをより小さくすることができる。そのため、より長い期間、電池性能を好適な状態で使用できる二次電池を提供することができる。
【0012】
好ましくは、この製造方法は、上記ガスケットとして、上記Hガス透過係数GH2(cm・cm)/(cm・s・cmHg)が35.5×10―10以上51.8×10―10以下であるガスケットを選択して上記設定を行う。かかる設定を行うことによって、二次電池の経時的な内圧増加の度合いを低減させる効果をよりよく実現することができる。
【0013】
また、好ましくは、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、およびジメチルカーボネートを含む非水電解液を注液することを包含する。かかる構成の非水電解液を注液することによって、ここで開示される技術の効果がよりよく実現された二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態に係る二次電池10の斜視図である。
図2図2は、図1のII-II断面図である。
図3図3は、図2のIII-III断面図である。
図4図4は、図3のIV-IV断面図である。
図5図5は、一実施例の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、ここで開示される二次電池の一実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特にここで開示される技術を限定することを意図したものではない。ここで開示される技術は、特に言及されない限りにおいて、ここで説明される実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、各図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。また、数値範囲を示す「A~B」の表記は、特に言及されない限りにおいて「A以上B以下」を意味するとともに、「Aを上回り、Bを下回る」をも意味する。
【0016】
本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して一対の電極(正極と負極)の間で電荷担体が移動することによって充放電反応が生じる蓄電デバイス一般をいう。かかる二次電池は、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のいわゆる蓄電池の他に、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ等も包含する。以下では、上述した二次電池のうち、リチウムイオン二次電池を対象とした場合の実施形態について説明する。
【0017】
<<二次電池10>>
図1は、一実施形態に係る二次電池10の斜視図である。図2は、図1のII-II断面図である。図2では、略直方体の電池ケース41の片側の幅広面に沿って、内部を露出させた状態が描かれている。図1、2に示される二次電池10は、いわゆる密閉型電池である。図3は、図2のIII-III断面を示す断面図である。図3では、略直方体の電池ケース41の片側の幅狭面に沿って内部を露出させた状態の部分断面図が模式的に描かれている。
【0018】
図1~3に示されるように、二次電池10は、電極体20と、電池ケース41と、正極端子42と、負極端子43と、ガスケット71と、を備えている。
そして、二次電池10は、下記式(1):
K=Wi/(VrGH2) (1)
(ここで、Wiは二次電池の初期容量(Ah)であり、Vrは電池ケース内空隙量(cm)であり、GH2はガスケットの60℃におけるHガス透過係数(cm・cm)/(cm・s・cmHg)である。);
を用いて計算されるパラメータKが0.43×10以上0.59×10以下を満たすように構成されている。パラメータKがかかる範囲を満たすことによって、二次電池の経時的な内圧増加の度合いをより小さくすることができる。また、パラメータKが上記範囲を満たす二次電池では、内圧増加の度合いが小さくなるため、内圧増加によって物理的に電池ケースを開放する必要がない。そのため、より長い期間、二次電池の電池性能を好適な状態で使用することができる。すなわち、二次電池の耐久性能を向上させることができる。
【0019】
上記式(1)における初期容量Wi(Ah)は、下記実施例に記載の方法を用いて測定される電池容量である。初期容量Wiの測定では、まず、組み立て直後(すなわち、電極体が活性化される前)の電池組立体を、下記実施例に記載の条件で活性化し、使用可能状態の二次電池とする(活性化処理)。この二次電池を25℃の温度条件下に置いて、該二次電池の端子電圧が4.1Vになるまで1/3Cの電流にて定電流で充電を行う。次いで、電流値が1/50Cになるまで定電圧で充電を行い、該二次電池を満充電状態(SOC100%)にする。次いで、該二次電池の端子電圧が3.0Vになるまで1/3Cの電流にて定電流で放電する。このときの放電容量を測定し、初期容量Wi(Ah)とする。なお、1Cは1時間で満充放電可能な電流値である。
【0020】
初期容量Wiは、パラメータKが上記範囲を満たす限り、特に限定されない。初期容量Wiは、所望する二次電池の出力に応じて設定することができるため、電池ケース内空隙量VrやHガス透過係数GH2とのバランスを考慮しつつ設定するとよい。初期容量Wiは、例えば電極体のサイズを変更することによって、適宜設定されうる。具体的には、電池ケースに収容する合計電極体数、電極の大きさ、電極活物質層の目付量、電極活物質層の厚み等の変更が挙げられる。あるいは、電極体の構成材料(例えば、正極活物質、負極活物質、導電材等)を変更してもよい。
【0021】
電池ケース内空隙量Vr(cm)は、電池ケース内の残空間をいい、電池ケースの容積から電池ケースに収容されているすべての構成要素の総体積を減ずることで求めることができる。具体的には、下記式(2):
Vr=Vt-Vs (2)
(ここで、Vtは電池ケース内の密閉空間の容積であり、Vsは該密閉空間に収容されている固体(例えば、電極体、該電極体の付属部材)の体積V1、および液体(含まれる場合。例えば、非水電解液)の体積V2の合計である。);
を用いて算出される。なお、上記固体の体積V1は、アルキメデス法によって測定される(下記実施例を参照)。また、電池ケース内空隙量Vrは、電極体における空孔容積(すなわち、電極活物質層における空孔容積、セパレータの空孔容積等)を含む。
【0022】
電池ケース内空隙量Vrは、パラメータKが上記範囲を満たす限り、特に限定されない。電池ケース内空隙量Vrは、所望する二次電池の出力に応じて適宜設定できるため、初期容量WiやHガス透過係数GH2とのバランスを考慮しつつ設定するとよい。電池ケース内空隙量Vrは、例えば電極体のサイズを変更することによって、適宜設定されうる。具体的には、電池ケースに収容する合計電極体数、電極の大きさ、電極活物質層の目付量、電極活物質層の厚み等の変更が挙げられる。あるいは、電極体の構成材料(例えば、正極活物質、負極活物質、導電材等)を変更してもよい。
【0023】
特に限定するものではないが、電池ケース内空隙量Vrと電池ケース内の密閉空間の容積Vtとの比(Vr/Vt)は、概ね0.1~0.3(例えば0.14~0.25)に設定することができる。
【0024】
ガス透過係数GH2(cm・cm)/(cm・s・cmHg)は、JIS K 7126-1(差圧法)に準拠して測定する。具体的な手順、測定条件、および測定装置に関しては、下記実施例にて詳細に説明する。
【0025】
ガス透過係数GH2は、パラメータKが上記範囲を満たす限り、特に限定されない。所望する二次電池の出力に応じて、初期容量Wiや電池ケース内空隙量Vrとのバランスを考慮しつつ設定するとよい。例えば、二次電池の出力をより高めるためには、初期容量Wiを大きくし、電池ケース内空隙量Vrを小さくしうる。このとき、Hガス透過係数GH2がより大きいガスケットを選択することによって、パラメータKを好適範囲とすることができる。二次電池の経時的な内圧増加の度合いを小さくする観点から、Hガス透過係数GH2は、概ね20.0×10―10(cm・cm)/(cm・s・cmHg)~75.0×10―10(cm・cm)/(cm・s・cmHg)の範囲に設定されうる。Hガス透過係数GH2は、35.5×10―10(cm・cm)/(cm・s・cmHg)以上51.8×10―10(cm・cm)/(cm・s・cmHg)以下に設定されることが好ましい。詳しくは後述するが、Hガス透過係数GH2は、ガスケットの構成材料等を変更することによって、適宜設定されうる。
【0026】
二次電池10のサイズ(寸法)は、特に限定されない。二次電池10の幅W(幅方向Xの長さ。図1参照)は、例えば70mm以上、100mm以上、150mm以上、または200mm以上であってもよい。あるいは、幅Wは、例えば300mm以下、250mm以下、200mm以下、または150mm以下であってもよい。二次電池10の奥行方向Yの長さD(図1参照)は、例えば5mm以上、7mm以上、10mm以上、または20mm以上であってもよい。あるいは、長さDは、例えば30mm以下、25mm以下、20mm以下、または15mm以下であってもよい。二次電池10の高さH(高さ方向Zの長さ。図1参照)は、例えば40mm以上、50mm以上、60mm以上、または70mm以上であってもよい。あるいは、高さHは、例えば80mm以下、75mm以下、70mm以下、または65mm以下であってもよい。
【0027】
〈電極体20〉
電極体20は、絶縁フィルム(図示は省略)などで覆われた状態で、電池ケース41に収容されている。二次電池10が備える電極体20の数は、特に限定されず、1つであってもよく、複数個(2個、3個、あるいは4個以上)であってもよい。本実施形態では、電極体20が1つ収容されている。電極体20は、正極(図2では正極シート21)と、負極(図2では負極シート22)と、セパレータとしてのセパレータシート31,32とを備えている。正極シート21と、セパレータシート31、32と、負極シート22とは、それぞれ長尺の帯状の部材である。
【0028】
正極シート21は、予め定められた幅および厚さの正極集電箔21a(例えば、アルミニウム箔)に、幅方向の片側の端部に一定の幅で設定された未形成部21a1を除いて、正極活物質を含む正極活物質層21bが両面に形成されている。正極活物質層21bに含まれる正極活物質としては、例えば、リチウム遷移金属酸化物(例、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiO、LiCoO、LiFeO、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等)、リチウム遷移金属リン酸化合物(例、LiFePO等)等が挙げられる。正極活物質層21bは、活物質以外の成分、例えば導電材やバインダ等を含みうる。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(例えば、グラファイト等)の炭素材料を用いることができる。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を用いることができる。
【0029】
負極シート22は、予め定められた幅および厚さの負極集電箔22a(ここでは、銅箔)に、幅方向の片側の縁に一定の幅で設定された未形成部22a1を除いて、負極活物質を含む負極活物質層22bが両面に形成されている。負極活物質層22bに含まれる負極活物質としては、例えば、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料が挙げられる。負極活物質層22bは、活物質以外の成分、例えばバインダや増粘剤等を含みうる。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)等を用いることができる。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いることができる。
【0030】
セパレータシート31,32には、例えば、所要の耐熱性を有する電解質が通過しうる多孔質の樹脂シートが用いられる。セパレータシート31,32としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂からなる多孔性シート(フィルム)が用いられる。かかる多孔性シートは、単層構造であってもよく、二層以上の積層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータシート31,32の表面には、セラミック粒子等により構成された耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。
【0031】
ここで、負極活物質層22bの幅は、例えば、正極活物質層21bよりも広く形成されている。セパレータシート31,32の幅は、負極活物質層22bよりも広い。正極集電箔21aの未形成部21a1と、負極集電箔22aの未形成部22a1とは、幅方向において互いに反対側に向けられている。また、正極シート21と、セパレータシート31と、負極シート22と、セパレータシート32とは、それぞれ長さ方向に向きを揃え、順に重ねられて捲回されている。負極活物質層22bは、セパレータシート31,32を介在させた状態で正極活物質層21bを覆っている。負極活物質層22bは、セパレータシート31,32に覆われている。正極集電箔21aの未形成部21a1は、セパレータシート31,32の幅方向の片側からはみ出ている。負極集電箔22aの未形成部22a1は、幅方向の反対側においてセパレータシート31,32からはみ出ている。
【0032】
上述した電極体20は、図2に示されるように、電池ケース41のケース本体41aに収容されうるように、捲回軸を含む一平面に沿った扁平な状態とされる。そして、電極体20の捲回軸に沿って、片側に正極集電箔21aの未形成部21a1が配置され、反対側に負極集電箔22aの未形成部22a1が配置されている。
【0033】
〈電池ケース41〉
電池ケース41は、図2に示されるように、電極体20を収容している。図1、2に示されるように、電池ケース41は、一側面が開口した略直方体の角形形状を有するケース本体41aと、開口に装着された蓋41bとを有している。この実施形態では、ケース本体41aと蓋41bは、軽量化と所要の剛性を確保するとの観点で、それぞれアルミニウムまたはアルミニウムを主とするアルミニウム合金で形成されている。
【0034】
〈ケース本体41a〉
ケース本体41aは、一側面が開口した略直方体の角形形状を有している。ケース本体41aは、略矩形の底面61と、一対の幅広面62,63(図3参照)と、一対の幅狭面64,65とを有している。一対の幅広面62,63は、それぞれ底面61のうち長辺から立ち上がっている。一対の幅狭面64,65は、それぞれ底面61のうち短辺から立ち上がっている。ケース本体41aの一側面には、一対の幅広面62,63と一対の幅狭面64,65で囲まれた開口41a1が形成されている。
【0035】
〈蓋41b〉
蓋41bは、一対の幅広面62,63(図3参照)の長辺と、一対の幅狭面64,65の短辺とで囲まれたケース本体41aの開口41a1に装着される。そして、蓋41bの周縁部が、ケース本体41aの開口41a1の縁に接合される。かかる接合は、例えば、隙間がない連続した溶接によるとよい。かかる溶接は、例えば、レーザ溶接によって実現されうる。なお、詳細な図示は省略するが、蓋41bには、注液孔とガス排出弁とが設けられうる。注液孔は、ケース本体41aに蓋41bを接合した後に非水電解液を注液するためのものである。注液孔は、封止部材により封止される。ガス排出弁は、電池ケース41の内圧が所定値以上になったときに破断して、電池ケース41内のガスを外部に排出するように構成された薄肉部である。
【0036】
正極端子42と、負極端子43とは、電池ケース41(本実施形態では、蓋41b)に取り付けられており、電極体20の各極に接続されている。正極端子42は、内部端子42aと、外部端子42bとを備えている。負極端子43は、内部端子43aと、外部端子43bとを備えている。内部端子42a,43aは、それぞれインシュレータ72を介して蓋41bの内側に取り付けられている。外部端子42b,43bは、それぞれガスケット71を介して蓋41bの外側に取り付けられている。内部端子42a,43aは、それぞれケース本体41aの内部に延びている。正極の内部端子42aは、正極集電箔21aの未形成部21a1に接続されている。負極の内部端子43aは、負極集電箔22aの未形成部22a1に接続されている。
【0037】
図2に示されるように、電極体20の正極集電箔21aの未形成部21a1と、負極集電箔22aの未形成部22a1には、蓋41bの長手方向の両側部にそれぞれ取り付けられた内部端子42a,43aが取り付けられている。電極体20は、蓋41bに取り付けられた内部端子42a,43aが取り付けられた状態で、電池ケース41に収容される。
【0038】
詳細な図示は省略するが、二次電池10は、非水電解液を備えうる。すなわち、二次電池10は、非水電解液を備える非水電解液二次電池でありうる。非水電解液は、電極体20と一緒に、電池ケース41内に収容されうる。非水電解液二次電池非水電解液二次電池は、充放電、過充電、高温環境での保存等によって、電池ケース内でガス(例えば、二酸化炭素)が発生し、電池内圧が上昇することがある。すなわち、ここで開示される技術の効果は、二次電池10が非水電解液を備える態様において、特に好ましく適用されうる。なお、特に限定するものではないが、非水電解液としては、非水系溶媒に支持塩を溶解させたものを使用できる。非水系溶媒の一例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。かかる非水系溶媒は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。支持塩の一例として、LiPF等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。非水電解液は、被膜形成剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0039】
図4は、図3のIV-IV断面図である。図4では、負極端子43が蓋41bに取り付けられた部位の断面が示されている。図4に示されるように、蓋41bは、負極の外部端子43bを取り付けるための取付孔41b1を有している。取付孔41b1は、蓋41bの予め定められた位置において蓋41bを貫通している。蓋41bの取付孔41b1には、ガスケット71とインシュレータ72を介在させて、負極の内部端子43aと外部端子43bとが取り付けられる。取付孔41b1の外側には、取付孔41b1の周りにガスケット71が装着される段差41b2が設けられている。段差41b2には、ガスケット71が配置される座面41b3が設けられている。座面41b3には、ガスケット71を位置決めするための突起41b4が設けられている。
【0040】
ここで、図4に示されるように、負極の外部端子43bは、頭部43sと、軸部43tと、を備えている。図4に示される実施形態では、頭部43sと軸部43tとが相互に異なる部材から構成されている。頭部43sは、蓋41bの外側に配置される部位である。頭部43sは、取付孔41b1よりも大きな略平板状であり、凹部43s1を有している。軸部43tは、ガスケット71を介して取付孔41b1に装着される部位である。軸部43tは、頭部43sの略中央部から下方に突出している。軸部43tは、軸部本体43t1と、軸部本体43t1の一端から外径方向に延びたフランジ部43t2とを有している。フランジ部43t2は略円形状であり、頭部43sの凹部43s1に嵌合されている。軸部本体43t1には、フランジ部43t2が設けられた側とは反対側に、さらに内部端子43aにかしめられるカシメ部43t3が設けられている。カシメ部43t3は、図4に示されるように、蓋41bの内部において、負極の内部端子43aにかしめられている。カシメ部43t3は、軸部本体43t1から延びており、蓋41bに挿通された後で折曲げられて負極の内部端子43aにかしめられる。
【0041】
特に限定するものではないが、バスバーとの接続性の観点から、頭部43sと、軸部43tとは、相互に異なる金属で構成されていてもよい。一例として、バスバーがアルミニウム製である場合、頭部43sを構成する金属をアルミニウムまたはアルミニウム合金とし、軸部43tを構成する金属を銅または銅合金とすることができる。
【0042】
〈ガスケット71〉
ガスケット71は、電池ケース41と電極端子(ここでは負極端子43)との間に挟持され、該電池ケース41と該電極端子との間を封止する部材である。具体的には、図4に示されるように、蓋41bの取付孔41b1および座面41b3に取り付けられている。この実施形態では、ガスケット71は、座部71aと、ボス部71bと、側壁71cとを備えている。座部71aは、蓋41bの取付孔41b1周りの外側面に設けられた座面41b3に装着される部位である。座部71aは、座面41b3に合わせて略平坦な面を有する。座部71aは、座面41b3の突起41b4に応じた凹みを備えている。ボス部71bは、座部71aの底面から突出している。ボス部71bは、蓋41bの取付孔41b1に装着されるように取付孔41b1の内側面に沿った外形形状を有している。ボス部71bの内側面は、外部端子43bの軸部43b2が装着される装着孔となる。側壁71cは、座部71aの周縁から上方に立ち上がっている。外部端子43bの頭部43b1は、ガスケット71の側壁71cで囲まれた部位に装着される。
【0043】
ガスケット71は、蓋41bと外部端子43bとの間に配置され、蓋41bと外部端子43bとの絶縁を確保している。また、ガスケット71は、蓋41bの取付孔41b1の気密性を確保している。かかる観点で、耐薬品性や耐候性に優れた樹脂材料が用いられるとよい。上記樹脂材料としては、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)(例えば、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレン(例えば、パーフルオロアルキルビニルエーテル)との共重合体(例えば、Tetrafluoroethylene-Perfluoroalkylvinylether Copolymer))、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレンーテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等のフッ素樹脂;ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン樹脂;等が挙げられる。ガスケット71を構成する樹脂材料の種類は、例えばHガス透過係数GH2が上記範囲を満たすように選択されればよい。
【0044】
ガス透過係数GH2を所望する数値に設定する方法は、ガスケット71の構成する樹脂材料を変更するほか、比重、フィラー材等の添加材の配合比の設定を適宜変更する、というものであってもよい。
【0045】
〈インシュレータ72〉
インシュレータ72は、蓋41bの取付孔41b1の周りにおいて、蓋41bの内側に装着される部材である。インシュレータ72は、ベース部72aと、孔72bと、側壁72cとを備えている。ベース部72aは、蓋41bの内側面に沿って配置される部位である。この実施形態では、ベース部72aは、略平板状の部位である。ベース部72aは、蓋41bの内側面に沿って配置され、ケース本体41aに収められるように、蓋41bからはみ出ない程度の大きさを有している。孔72bは、ガスケット71のボス部71b内側面に対応して設けられた穴である。この実施形態では、孔72bは、ベース部72aの略中央部に設けられている。蓋41bの内側面に対向する側面において、孔72bの周りには凹んだ段差72b1が設けられている。段差72b1には、取付孔41b1に装着されたガスケット71のボス部71bの先端が干渉しないように収められている。側壁72cは、ベース部72aの周縁部から下方に立ち上がっている。ベース部72aには、負極の内部端子43aの一端に設けられる基部43a1が収められる。インシュレータ72には、電池ケース41の内部に配置されるため、所要の耐薬品性を備えているとよい。インシュレータ72の構成材料としては、例えばポリフェニレンサルファイド樹脂(Poly Phenylene Sulfide Resin)(PPS)が使用されうる。なお、インシュレータ72に用いられる材料は、PPSに限定されない。
【0046】
負極の内部端子43aは、基部43a1と、接続片43a2(図2,3参照)とを備えている。基部43a1は、インシュレータ72のベース部72aに装着される部位である。この実施形態では、基部43a1は、インシュレータ72のベース部72aの周りの側壁72cの内側に応じた形状を有している。接続片43a2は、基部43a1の一端から延びており、ケース本体41a内に延びて電極体20の負極の未形成部22a1に接続されている(図2,3参照)。
【0047】
この実施形態では、取付孔41b1にボス部71bを装着しつつ、蓋41bの外側にガスケット71を取付ける。外部端子43bがガスケット71に装着される。この際、外部端子43bの軸部43b2がガスケット71のボス部71bに挿通され、かつ、ガスケット71の座部71aに外部端子43bの頭部43b1が配置される。蓋41bの内側は、インシュレータ72と負極端子43が取り付けられる。そして、図4に示されるように、外部端子43bのカシメ部43t3が折曲げられて、負極端子43の基部43a1にかしめられる。外部端子43bのカシメ部43t3と負極端子43の基部43a1とは、導通性を向上させるために部分的に溶接や金属接合により接合されているとよい。
【0048】
上述のとおり、電極端子の蓋41bへの取り付けについて、負極端子43を例に説明している。正極側に関しては、外部端子42bとして、頭部および軸部がいずれもアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成された外部端子を使用しうる。それ以外の構造に関しては基本的に負極側と同様であるため、ここでの詳細な説明を省略する。
【0049】
なお、正極側と負極側とで異なる組成のガスケットを使用する場合は、正極側のガスケットの60℃におけるHガス透過係数GH2pと負極側のガスケットの60℃におけるHガス透過係数GH2nとの算術平均値を、上記式(1)におけるHガス透過係数GH2とすることができる。
すなわち、上記の場合のHガス透過係数GH2は、
下記式(3):
ガス透過係数GH2
=(Hガス透過係数GH2p+Hガス透過係数GH2n)/2 (3)
を用いて算出することができる。
【0050】
<<二次電池10の製造方法>>
以下、図1~4を適宜参照しつつ、一実施形態に係る二次電池10の製造方法を説明する。二次電池10の製造方法では、まず、上述のような電極体20と、電池ケース41と、正極端子42および負極端子43と、ガスケット71と、を用意する。そして、二次電池10を、下記式(1):
K=Wi/(VrGH2) (1)
(ここで、Wiは二次電池の初期容量(Ah)であり、Vrは電池ケース内空隙量(cm)であり、GH2はガスケットの60℃におけるHガス透過係数(cm・cm)/(cm・s・cmHg)である。);
を用いて計算されるパラメータKが0.43×10以上0.59×10以下を満たすように設定して構築する。かかる製造方法を実施することによって、経時的な内圧増加の度合いが低減され、耐久性能が向上された二次電池を提供することができる。
【0051】
上記パラメータKの設定は、例えば、二次電池の初期容量Wi、電池ケース内空隙量Vr、ガスケットの60℃におけるHガス透過係数GH2を、上記のとおり適宜設定することによって行うことができる。これによって、二次電池の経時的な内圧増加の度合いを小さくし、耐久性能を向上させることができる。また、上記各要素の設定によって、かかる効果に加えて、二次電池の出力を向上させる効果等を実現することができる。
【0052】
二次電池10の製造方法は、一例として、電極体用意工程、電極体取付工程、電極体収容工程、注液工程、および、封止工程を包含する。電極体用意工程では、電極体20を用意する。本工程では、パラメータKを好適範囲とするように設計された電極体20を用意する。具体的には、電極体のサイズや電極体の構成材料を適宜変更し、所望の出力を実現できる初期容量Wiを有するように設定された電極体を用意する。この点を除き、電極体20の作製方法そのものは、従来公知の方法を使用することができる。
【0053】
電極体取付工程では、電極体20に電極端子を取り付ける。具体的には、例えば、まず、電池ケース41の蓋41bに正極端子42および負極端子43を取り付けたものを用意する。次いで、このような蓋41bと電極端子との合体物に電極体20を取り付ける。電極体20における電極端子の取り付け部分に関しては上述のとおりであるため、ここでの説明を省略する。ここで、上記設定において選択した、特定範囲のHガス透過係数GH2を有するガスケットを使用してもよい。
【0054】
電極体収容工程では、電極端子を介して蓋41bと接続された電極体20をケース本体41aに収容し、蓋41bとケース本体41aとを接合する。次いで、蓋41bに設けられた注液孔から非水電解液を注液する(注液工程)。次いで、該注液孔を封止部材で封止し(封止工程)、所定の条件の活性化処理を行うことによって、使用可能状態の二次電池10を作製することができる。
【0055】
二次電池10は、各種用途に利用可能である。好適な用途としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。また、二次電池10は、小型電力貯蔵装置等の蓄電池として使用することができる。二次電池10は、典型的には複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態でも使用されうる。
【0056】
なお、上記実施形態では、電極体20の一例として扁平形状の捲回電極体を備える角形の二次電池10について説明した。しかしながら、二次電池は、積層型電極体(すなわち、複数の正極と、複数の負極とが交互に積層された電極体)を備える二次電池として構成することもできる。また、二次電池は、円筒形二次電池、ラミネート型二次電池等として構成することもできる。
【実施例1】
【0057】
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0058】
<ガスケットの用意>
下記評価用二次電池を作製するために、ガスケットRおよびガスケットSの2種類のガスケットを用意した。
―ガスケットR-
・商品名および販売元:AP230(ダイキン工業株式会社)
・材質:PFA(テトラフルオロエチレンとテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)
・比重:2.14
―ガスケットS-
・商品名および販売元:NP-20(ダイキン工業株式会社)
・材質:FEP(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体)
・比重:2.15
【0059】
<Hガス透過係数GH2の測定>
ガス透過係数GH2の測定に際して、ガスケットRおよびガスケットSを用いて、それぞれ、厚さ0.2mm、直径70mm~150mmの円盤状の試験片(n=3)を準備した。この試験片を用いて、JIS K7126-1「プラスチック-フィルム及びシート-ガス透過度試験方法-第1部:差圧法」に準拠して、各試験片の厚さ方向のHガス透過係数GH2(cm・cm)/(cm・s・cmHg)を測定した。測定装置として、株式会社東洋精機製作所製のガス透過試験機「MT-C3」を使用した。測定条件は、測定温度60℃、測定セルの透過断面積38.46cm、差圧は1次側800mmHgG-850mmHgG、検出側0mmHgGであった。なお、測定は、25℃の室内で行った。かかる測定を3個の試験片について実施し、得られた測定値の算術平均値を、ガスケットRおよびガスケットSのそれぞれのHガス透過係数GH2とした。
ガスケットRのHガス透過係数GH2は35.5×10―10(cm・cm)/(cm・s・cmHg)であり、ガスケットSのHガス透過係数GH2は51.8×10―10(cm・cm)/(cm・s・cmHg)であった。
【0060】
-例1-
<評価用二次電池の作製>
正極活物質粉末としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3(LNCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、LNCM:AB:PVDF=90:8:2の質量比でN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、正極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、長尺状のアルミニウム箔(長手方向の長さ:360cm、短手方向の長さ:105cm)の両面に帯状に塗布(目付量:11.0mg/cm)して乾燥した後、プレスすることにより正極シートを作製した。
【0061】
負極活物質としての天然黒鉛(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、C:SBR:CMC=98:1:1の質量比でイオン交換水と混合して、負極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、長尺状の銅箔(長手方向の長さ:370cm、短手方向の長さ:107cm)の両面に帯状に塗布(目付量:7.0mg/cm)して乾燥した後、プレスすることにより負極シートを作製した。
【0062】
セパレータとして、PP/PE/PPの三層構造の多孔質ポリオレフィンシートを2枚用意した。上記で作製した正極シートと、負極シートと、2枚の上記用意したセパレータシートとを積層し、捲回した後、側面方向から押圧して拉げさせることによって扁平形状の捲回電極体を作製した。次に、この電極体に正極端子および負極端子と、さらに電池ケースの蓋とを取り付けて、ケース本体に収容した。蓋とケース本体とをレーザ溶接して封止した。ここで、蓋と電極端子との取り付けに、ガスケットRを使用した。上記電池ケースとしては、非水電解液の注液孔を有する角型の電池ケースAを使用した。電池ケースAの寸法は、幅Wが120mmであり、長さDが12.6mmであり、高さHが65mmであった(図1参照)。
【0063】
次いで、電池ケースの注液孔から体積V2(cm)の非水電解液を注液し、当該注液孔を気密に封止した。なお、非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)とをEC:EMC:DMC=3:4:3の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解したものを用意した。
【0064】
上記非水電解液注液後の二次電池組立体を25℃の環境にて安定させ、活性化処理を施した。活性化処理としては、二次電池組立体を25℃で4.1Vまで定電流充電したのち、60℃の環境で20時間保持するエージング処理を施すものとした。このようにして、例1に係る評価用二次電池を用意した。
【0065】
<初期容量Wiの測定>
上記活性化処理後、評価用二次電池の初期容量Wiを測定した。具体的には、上記活性化処理後の評価用二次電池を25℃の温度条件下に置いて、該評価用二次電池の端子電圧が4.1Vになるまで1/3Cの電流にて定電流で充電を行った。次いで、電流値が1/50Cになるまで定電圧で充電を行い、該評価用二次電池を満充電状態(SOC100%)にした。次いで、該評価用二次電池の端子電圧が3.0Vになるまで1/3Cの電流にて定電流で放電した。このときの放電容量を測定し、初期容量Wi(Ah)とした。結果を表1の該当欄に示す。
【0066】
<電池ケース内空隙量Vrの測定>
蓋とケース本体とを封止した後であって非水電解液を注液する前の二次電池組立体を用いて、電池ケース内空隙量Vrをアルキメデス法にて測定した。具体的には、該二次電池組立体に上述の非水電解液を注液して電池ケース内を満たし、注液した非水電解液の体積を記録した。電池ケースの容積Vtから、この体積を減じて得た値を、電池ケースの密閉空間に収容された固体の体積V1とした。そして、下記式(4):
Vr=Vt-(V1+V2) (4)
を用いて電池ケース内空隙量Vrを算出した。なお、V2は、上記のとおり、非水電解液の体積である。結果を表1の該当欄に示す。
【0067】
<パラメータKの算出>
上述のようにして得られた初期容量Wi、電池ケース内空隙量Vr、およびHガス透過係数GH2により、上記式(1)を用いてパラメータKを算出した。結果を表1の該当欄に示す。
【0068】
-例2、3、8~10-
電極体の構成(電極活物質層形成用スラリーの目付量、電極活物質層の厚み、アルミニウム箔や銅箔の長さ等)を適宜変更して初期容量Wiおよび電池ケース内空隙量Vrを調整し(例1と同様の方法を用いて算出。表1の各該当欄を参照)、パラメータKの値を表1の該当欄に記載の数値とした。それ以外は例1と同様にして、各例に係る試験用二次電池を準備した。
【0069】
-例4、5、7、12、13-
ガスケットRに替えて、ガスケットSを使用した。また、電極体の構成(電極活物質層形成用スラリーの目付量、電極活物質層の厚み、アルミニウム箔や銅箔の長さ等)を適宜変更して初期容量Wiおよび電池ケース内空隙量Vrを調整し(例1と同様の方法を用いて算出。表1の各該当欄を参照)、パラメータKの値を表1の該当欄に記載の数値とした。それ以外は例1と同様にして、各例に係る試験用二次電池を準備した。
【0070】
-例6、11-
電池ケースAに替えて、電池ケースBを使用した。また、電極体の構成(電極活物質層形成用スラリーの目付量、電極活物質層の厚み、アルミニウム箔や銅箔の長さ等)を適宜変更して初期容量Wiおよび電池ケース内空隙量Vrを調整し(例1と同様の方法を用いて算出。表1の各該当欄を参照)、パラメータKの値を表1の該当欄に記載の数値とした。それ以外は例1と同様にして、各例に係る試験用二次電池を準備した。なお、電池ケースBの寸法は、幅Wが137mmであり、長さDが13.3mmであり、高さHが63.2mであった(図1参照)。
【0071】
<内圧増加傾きSの測定>
各例に係る試験用二次電池のSOCを91%に調整した。ここで、差圧計(PRESSURE GAUGE(メーカー:名古屋精機製作所))の突起を電池ケースに挿入し、下記保存前の内圧P1(MPa)を測定した。次いで、試験用二次電池を60℃に設定された恒温槽内に配置し、120日間保存した。120日経過後、上記差圧計を用いて保存後の内圧P1(MPa)を測定した。そして、
下記式(5):
S=(P2-P1)/√day (5)
を用いて内圧増加傾きSを算出した。結果を表1の該当欄に示す。なお、本実施例では、上記のとおり算出された内圧増加傾きSが0.25×10-2(MPa/√day)以下の場合、評価用二次電池の経時的な内圧増加の度合いが十分小さい、と評価している。
【0072】
<保存試験>
各例に係る試験用二次電池のSOCを80%に調整し、75℃の温度条件で所定期間保存する保存試験を行い、その後、各評価用二次電池の容量Wc(保存後の容量)を測定した。そして、下記式(6):
容量維持率(%)=(Wc/Wi)×100 (6)
を用いて求めた値を、各例における容量維持率(%)とした。結果を表1の該当欄に示す。なお、本実施例では、上記のとおり算出された容量維持率が98.0%以上の場合、評価用二次電池の耐久性能が高い、と評価している。
【0073】
【表1】
【0074】
図5は、一実施例の試験結果を示すグラフである。図5において、縦軸は内圧増加傾きS(×10-2)(MPa/√day)(同図中の左側)および容量維持率(%)(同図中の右側)を示しており、横軸はパラメータK(×10)を示している。図中のマーカー「■」は例1~7の内圧増加傾きSであり、マーカー「〇」は例8~13の内圧増加傾きSであり、マーカー「×」は各例の容量維持率を示している。図中の点線Aおよび点線Bに囲まれた範囲は、上記の指標に基づいて「経時的な内圧増加の度合いが十分小さい」、および、「耐久性能が高い」と評価されたときのパラメータKの範囲を示している。
【0075】
表1および図5に示される結果より、正極および負極を備える電極体と、該電極体を収容する電池ケースと、該電池ケースに取り付けられ、電極体の各極に接続された電極端子と、電池ケースと電極端子との間に挟持され、該電池ケースと該電極端子との間を封止するガスケットと、を備え、K=Wi/(VrGH2)の式(1)を用いて計算されるパラメータKが0.43×10以上0.59×10以下を満たすように構成されている、二次電池(例1~7)では、内圧増加傾きSが0.25×10-2以下であった。つまり、このような二次電池では、経時的な内圧増加度合いが十分に低減されていることがわかった。また、例1~7の評価用二次電池では、保存試験後の容量維持率が98.0%以上であった。つまり、このような二次電池では、耐久性能の向上が実現されることがわかった。なお、例8~13の評価用二次電池を用いた例に示されるように、パラメータKが上記範囲を満たさない二次電池では、経時的な内圧増加度合いの低減と耐久性能の向上とがともに実現されなかった。
【0076】
また、電池ケースAを使用した例1~5および例7と、電池ケースBを使用した例6との比較より、電池ケースのサイズに関わらず、パラメータKが特定範囲を満たす二次電池では、経時的な内圧増加度合いが低減し、耐久性能が向上することがわかった。内圧増加傾きSは、電池ケース内で発生するガスおよび電池ケース外へ排出されるガスの差分と、電池ケース内に滞留するガスの体積と、で決まる。すなわち、電池ケース内で発生するガスの量(物質量)は、二次電池の容量が大きくなるほど、大きくなる。また、電池ケース外へ排出されるガス量(物質量)は、ガスケットの透過係数が大きくなるほど、大きくなる。そして、電池ケース内に滞留するガスの体積は、電池ケースの大きさに依存して変わりうる。ただし、物質量と体積と圧力(内圧)とを用いて示される気体の状態方程式は、一定である。また、二次電池の体積エネルギー密度を損なわないためには、一般的には、電池ケース内空隙量(すなわち、デッドスペース)は減らす方向性で開発される。そのため、電池ケースの大きさが変わっても、パラメータKが特定範囲を満たすことによって、上記効果を得られると考えられる。
【0077】
さらに、例5および例6と、例8および例9とを比較すると、ケース内空隙量Vrが本実施例における他の例のものよりも小さくても、使用するガスケットのHガス透過係数GH2を変更することによって、パラメータKを好適範囲とすることができると分かった。すなわち、例えば高出力化のために電池ケース内における電極体の占有体積を大きくしたい場合(すなわち、ケース内空隙量を小さくせざるを得ない場合)であっても、効果的なパラメータKを実現できることがわかった。
【0078】
以上、ここで開示される技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0079】
10 二次電池
20 電極体
21 正極シート
21a 正極集電箔
21a1 未形成部
21b 正極活物質層
22 負極シート
22a 負極集電箔
22a1 未形成部
22b 負極活物質層
31 セパレータシート
32 セパレータシート
41 電池ケース
41a ケース本体
41a1 開口
41b 蓋
41b1 取付孔
41b2 段差
41b3 座面
41b4 突起
42 正極端子
42a 内部端子
42b 外部端子
43 負極端子
43a 内部端子
43a1 基部
43a2 接続片
43b 外部端子
43s 頭部
43s1 凹部
43t 軸部
43t1 軸部本体
43t2 フランジ部
43t3 カシメ部
61 底面
62 幅広面
63 幅広面
64 幅狭面
65 幅狭面
71 ガスケット
71a 座部
71b ボス部
71c 側壁
72 インシュレータ
72a ベース部
72b 孔
72b1 段差
72c 側壁
図1
図2
図3
図4
図5