(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】船積み用雨除け装置
(51)【国際特許分類】
B63B 19/26 20060101AFI20231212BHJP
B63B 19/18 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B63B19/26 D
B63B19/18 101
(21)【出願番号】P 2021186343
(22)【出願日】2021-11-16
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】大竹 泰弘
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-049832(JP,A)
【文献】特開2003-314694(JP,A)
【文献】特開2021-049831(JP,A)
【文献】特開2014-141875(JP,A)
【文献】特開2013-095392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 19/26
B63B 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船倉の上部開口を開閉するスライド式ハッチカバーが開いたときに形成されるハッチ口を覆うように構成された装置本体と、
前記装置本体に設けられ前記スライド式ハッチカバー上に載置される基部と、
前記スライド式ハッチカバー上で前記ハッチ口側に向かう雨水の流れを堰き止めるために前記基部の底面部に取り付けられたシール部材と、
を備え、
前記シール部材は、上下方向に積層され弾性材料により形成されると共に硬度が異なる複数の弾性部材を備え、
前記スライド式ハッチカバーに接触する下側の前記弾性部材は上側の前記弾性部材より小さい硬度を有する
ことを特徴とする船積み用雨除け装置。
【請求項2】
下側の前記弾性部材は多孔質の弾性材料により形成され、上側の前記弾性部材は中実の弾性材料により形成される
請求項1に記載の船積み用雨除け装置。
【請求項3】
下側の前記弾性部材は上側の前記弾性部材より小さい幅を有する
請求項1または2に記載の船積み用雨除け装置。
【請求項4】
下側の前記弾性部材は上側の前記弾性部材に着脱可能に取り付けられる
請求項1~3のいずれか一項に記載の船積み用雨除け装置。
【請求項5】
前記シール部材は、前記基部の側方から着脱可能なように前記基部に取り付けられる
請求項1~4のいずれか一項に記載の船積み用雨除け装置。
【請求項6】
船倉の上部開口を開閉するスライド式ハッチカバーが開いたときに形成されるハッチ口を覆うように構成された装置本体と、
前記装置本体に設けられ前記スライド式ハッチカバー上に載置される基部と、
前記スライド式ハッチカバー上で前記ハッチ口側に向かう雨水の流れを堰き止めるために前記基部の底面部に取り付けられたシール部材と、
を備え、
前記シール部材は、水平方向に並列に配置され弾性材料により形成されると共に硬度が異なる複数の
弾性部材を備え、
水平方向における一方側の前記弾性部材と他方側の前記弾性部材とは前記スライド式ハッチカバーに接触される
ことを特徴とする船積み用雨除け装置。
【請求項7】
一方側の前記弾性部材は多孔質の弾性材料により形成され、他方側の前記弾性部材は中実の弾性材料により形成される
請求項6に記載の船積み用雨除け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、穀物等の荷をシップローダで船積みするに際し、荷が降雨で濡れたり、風で荷役中の荷が飛散するのを防ぐ船積み用雨除け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷役中の荷が降雨で濡れるのを防ぐ船積み用雨除け装置として、特許文献1に記載の装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置では、スライド式ハッチカバー上に載置される装置本体の基部の底面部にリップシールを取り付け、このリップシールにより、基部とスライド式ハッチカバーの隙間をシールしている。
【0005】
しかし、リップシールは単一の弾性部材からなるので、シール性能向上という点で改良の余地が残されている。
【0006】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、シール性能を向上することができる船積み用雨除け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一の態様によれば、
船倉の上部開口を開閉するスライド式ハッチカバーが開いたときに形成されるハッチ口を覆うように構成された装置本体と、
前記装置本体に設けられ前記スライド式ハッチカバー上に載置される基部と、
前記基部の底面部に取り付けられたシール部材と、
を備え、
前記シール部材は、硬度が異なる複数の弾性部材を備える
ことを特徴とする船積み用雨除け装置が提供される。
【0008】
好ましくは、前記シール部材は、上下方向に積層された複数の前記弾性部材を備える。
【0009】
好ましくは、下側の前記弾性部材は上側の前記弾性部材より小さい硬度を有する。
【0010】
好ましくは、下側の前記弾性部材は上側の前記弾性部材より小さい幅を有する。
【0011】
好ましくは、下側の前記弾性部材は上側の前記弾性部材に着脱可能に取り付けられる。
【0012】
好ましくは、前記シール部材は、前記基部の側方から着脱可能なように前記基部に取り付けられる。
【0013】
好ましくは、前記シール部材は、水平方向に並列に配置された複数の前記弾性部材を備える。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、シール性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の実施形態に係る船積み用雨除け装置の概略図である。
【
図10】第2シールとその周辺の構成を示す断面図である。
【
図13】第1変形例の第2シールの分解組立図である。
【
図15】第2変形例において、ハッチカバー上に突起がある場合の様子を示す断面図である。
【
図17】第2変形例において、ハッチカバー上に段差がある場合の様子を示す断面図である。
【
図18】他の変形例において、ハッチカバー上に段差がある場合の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。
図1は、シップローダ、船舶及び本実施の形態に係る船積み用雨除け装置の概略図である。
図2は、船舶にセットされた船積み用雨除け装置を斜め上方から視た概略斜視図である。
図3は、蓋部材の正面図である。
図4は
図3の要部拡大図である。
【0017】
本実施形態において、スライド式ハッチカバーの開閉方向は船舶の左右方向および幅方向と一致する。また船積み用雨除け装置の長さ方向は船舶の前後方向および長さ方向と一致し、船積み用雨除け装置の幅方向は船舶の左右方向および幅方向と一致する。
【0018】
まず、シップローダ及び船舶について説明する。
図1に示すように、シップローダ1は、岸壁2上に敷設されたレール3上を走行する走行部4と、走行部4に旋回自在に設けられた旋回部5と、旋回部5に俯仰自在に設けられたブーム6と、ブーム6の先端に吊下して設けられ穀物等の荷を船倉7内に供給するためのノズル部8とを備える。ブーム6には、岸壁2からの荷をノズル部8に移送するためのコンベア(図示せず)が設けられる。なお、荷は穀物に限るものではない。荷は、雨に濡れることが好ましくない他のバラ物であってもよい。
【0019】
図1に示すように、船舶9は、貨物船である。船舶9は、上部開口10を有する船倉7と、上部開口10を開閉するスライド式ハッチカバー11とを備える。スライド式ハッチカバー11は、船舶9の左右両側に対向して一対設けられると共に、それぞれ左右方向にスライド自在に設けられる。すなわち、スライド式ハッチカバー11は、左右両開き式であり、対向端12を互いに突き合わせることで上部開口10を閉じ、対向端12を互いに離間させることで上部開口10を開く。また、スライド式ハッチカバー11は、任意の間隔で上部開口10を開けるように形成される。以後、スライド式ハッチカバー11が開いて形成されるスライド式ハッチカバー11間の開口をハッチ口13という。なお、スライド式ハッチカバー11は、船舶9の前後方向に開閉可能に設けられてもよい。
【0020】
次に、本実施の形態に係る船積み用雨除け装置について説明する。
【0021】
図1~
図3に示すように、船積み用雨除け装置20は、ハッチ口13を覆うように構成された装置本体20Aを備える。装置本体20Aは、一対のスライド式ハッチカバー11が開いたときにその一対のスライド式ハッチカバー11上に跨がって配置され、ハッチ口13を覆う。
【0022】
装置本体20Aは、スライド式ハッチカバー11上に配置されるレール19と、レール19に走行自在に設けられハッチ口13の一部を覆う船上シュート22と、ハッチ口13の他の部分を覆う蓋部材23とを備える。
【0023】
レール19は、左右のスライド式ハッチカバー11上に平行に、かつ、前後方向に延びて配置される。また、レール19は、ハッチ口13の前後方向の寸法より短いレール片21を、長手方向(前後方向)に複数連結して構成される。レール19の長さは、レール片21を所定数連結したときハッチ口13の前後長さと概ね同じ長さとなるように設定される。なお、レール19は連結構造でなくともよい。この場合、1本のレール片21によりレール19が構成され、レール片21の長さは、ハッチ口13の長さと概ね同じに設定されるとよい。
【0024】
図2に示すように、船上シュート22は、レール19に走行自在に設けられる走行部31と、ノズル部8が挿入される略円筒状のシュート本体部32とを備える。走行部31は、複数の固定キャスターを備える。固定キャスターは、
図4に示す蓋部材23の固定キャスター34と共通である。
【0025】
シップローダ1のノズル部8には、シュート本体部32を上方から覆って荷が濡れるのを防止するカバー部材14が設けられる。
【0026】
蓋部材23は、前後方向に伸縮自在に形成され、船上シュート22の前後に配置される。蓋部材23の前後方向における一端は、船上シュート22に固定される。蓋部材23の前後方向における他端は、ハッチ口13の端部近傍のレール19に着脱可能に固定される。蓋部材23は、船上シュート22の走行に応じて伸縮する。例えば、
図5および
図6に示すように、荷Bの供給時にノズル部8により船上シュート22が押され、船上シュート22が前方に走行したときには、船上シュート22より前方の蓋部材23が前方に収縮し、船上シュート22より後方の蓋部材23が前方に伸長する。
【0027】
蓋部材23は、前後方向に伸縮可能に形成された複数の蛇腹部69と、蛇腹部69を支持する蛇腹支持部70とを備える。
【0028】
蛇腹部69は、左右のレール片21に跨がるアーチ状に形成された複数のアーチフレーム42と、これらアーチフレーム42同士を前後方向に近接離間自在に連結する伸縮リンク43と、これらを覆う止水シート41とを備える。
【0029】
図7に示すように、伸縮リンク43は、一対の棒状フレーム50をピン51を介してX字状に結合してなる交差部材52を複数連結して構成される。交差部材52同士の連結は、棒状フレーム50の先端同士をピン51を介して結合することでなされる。また、交差部材52の端部は、アーチフレーム42に固定される固定端部52aと、アーチフレーム42にスライド可能に設けられる可動端部52bとに分類される。可動端部52bは、ピン51を介してスライダ53に回動自在に結合される。スライダ53は、筒状の部材であり、アーチフレーム42にスライド自在に嵌合される。
【0030】
止水シート41は、柔軟なシートであり、アーチフレーム42間で伸縮するように変形可能である。
【0031】
図2及び
図8に示すように、蛇腹支持部70は、蛇腹部69の端部に設けられ、一対のハッチカバー11に跨がるアーチ状に形成される。蛇腹支持部70の下端にも、前記同様の固定キャスターが設けられる。蛇腹支持部70には、雨除けシート76が設けられる。
【0032】
また、
図2および
図8に示すように、蓋部材23の他端に位置される蛇腹支持部70に、端部シート64が設けられる。これにより、スライド式ハッチカバー11の側面間に形成されるハッチ口13も塞ぐことができる。
【0033】
ところで、装置本体20Aとスライド式ハッチカバー11との間には隙間があり、この隙間からハッチ口側に雨水が浸入することが考えられる。具体的には、
図4の蛇腹部69の外皮を構成する止水シート41は、蛇腹状に変形する。このため、レール19と止水シート41との間には隙間があり、この隙間からハッチ口13側に雨水が浸入することが考えられる。また、
図4のスライド式ハッチカバー11とレール19が密接されずスライド式ハッチカバー11とレール19との間に隙間ができる場合、スライド式ハッチカバー11とレール19との間からハッチ口13側に雨水が浸入することが考えられる。
【0034】
そこで、
図4及び
図9に示すように、船積み用雨除け装置20は、スライド式ハッチカバー11と装置本体20Aとの隙間からハッチ口13側(右側)への浸水を抑制する止水部100を備える。止水部100は、レール19及びスライド式ハッチカバー11間から風水が浸入することを抑制するための第1シール80及び第2シール81と、止水シート41とレール19との間に設けられる止水部材88とを備える。
【0035】
ここで、レール19は、装置本体20Aに設けられスライド式ハッチカバー11上に載置される基部20Bをなすものである。基部20Bは、装置本体20Aの最下端に位置され、その上方の装置本体20Aの部分の重量を支持する役割を果たす。
【0036】
止水部材88は、ブラシで構成され、ブラシヘッド89と、ブラシヘッド89に植えられるブラシ毛90とを備える。ブラシヘッド89は、ブラケット82を介してレール19に支持される。ブラシ毛90は、樹脂、金属、動物の毛等によって形成される。ブラシ毛90の先端は、止水シート41の内面に当接される。止水部材88は、ブラシで構成されるため通気性を有する。これにより、船倉7内の圧力を逃がすことができる。なお、止水部材88は、メッシュ状に形成された軟質の樹脂シート等で構成されてもよい。レール19と止水シート41との間の隙間にブラシ等からなる止水部材88を設けることで止水シート41の伸縮によって変わる隙間に対して適切に変形したブラシ等が外部からの風水の浸入を防ぐように働くことができる。
【0037】
第1シール80は、比較的軟質なゴム等の弾性材料により一定厚さの薄いシート状に形成される。第1シール80の基端部はブラケット82を介してレール19に支持され、第1シール80の先端部はスライド式ハッチカバー11の上面に重ねて当接される。ブラケット82は、レール19の延長方向(前後方向)に連続的に延びて形成されると共に、ハッチ口13の反対側すなわち反ハッチ口側(左側)に延びる。ブラケット82の傾斜取付面82aには、第1シール80の基端部がボルト91で取り付けられる。第1シール80の中間部は、基端部及び先端部間に生じた角度差を許容するように湾曲される。これにより、中間部には第1シール80の形状を復元させる方向の力が発生し、この力は先端部をスライド式ハッチカバー11に圧接させる。ブラシヘッド89は、第1シール80の基端部と共に共通のボルト91でブラケット82にボルト締めされる。これにより、止水部材88と第1シール80は連続的に接続され、スライド式ハッチカバー11から止水シート41に亘る範囲を止水できる。
【0038】
第2シール81は、特許請求の範囲にいうシール部材を構成し、本実施形態の特徴部分をなす。
【0039】
まず本実施形態の第2シール81について説明する前に、特許文献1の装置(比較例という)の第2シールを説明する。
【0040】
図16に示すように、比較例では、第2シールとして、断面V字状のリップシール150が用いられている。このリップシール150は、ゴム等の弾性材料により形成され、レール19の底面部に着脱可能に取り付けられている。
【0041】
具体的には、レール19の底面部に金属製のシールホルダ151が設けられ、リップシール150はこのシールホルダ151により保持される。シールホルダ151は、レール19の底面部に一体的に取り付けられた取付基部152と、取付基部152の底面部にボルト153で着脱可能に取り付けられ互いに離間された一対の脚部154とを備える。一対の脚部154は、リップシール150を挟んで保持すると共に、リップシール150に係合する爪155,156を備える。一対の脚部154の底面部には第3シール157が接着等により設けられる。
【0042】
しかし、比較例のリップシール150は単一の弾性部材からなるので、シール性能向上という点で改良の余地が残されている。
【0043】
そこで本実施形態では、
図9に示すように、第2シール81を、硬度が異なる複数の弾性部材により構成した。以下、この本実施形態の構成を、要部を拡大して示す
図10および
図11を用いて説明する。
【0044】
図10(A)は、基部20Bがハッチカバー11に載置されておらず、第2シール81がハッチカバー11に接触していない自然状態であるときの状態を示す。
図10(B)は、基部20Bがハッチカバー11に載置され、第2シール81がハッチカバー11に接触しているときの状態を示す。このとき、第2シール81は自然状態から上下方向に圧縮され、その反力でハッチカバー11に押し付けられ、シールを行う。
図10(C)は、基部20Bが基本的にハッチカバー11に載置されているものの、ハッチカバー11の表面の変形等によって図示の位置で基部20Bとハッチカバー11の間に隙間ができてしまい、第2シール81のハッチカバー11への押し付けがやや弱くなっているときの状態を示す。
図11は、第2シール81の分解組立図である。
【0045】
図示するように、第2シール81は、上下方向に積層された複数の弾性部材を備える。本実施形態の第2シール81は、三つの弾性部材を備え、すなわち、上段の第1弾性部材101、中段の第2弾性部材102、および下段の第3弾性部材103を備える。各弾性部材はゴム等の弾性材料により形成されている。
【0046】
ここでレール19の底面部には、比較例のシールホルダ151に類似の基台104が設けられる。この基台104も装置本体20Aの基部20Bをなす。基台104は、レール19の底面部に一体的に取り付けられた取付基部105と、取付基部105の底面部の左右両端部にボルト(図示せず)で着脱可能に取り付けられ互いに離間された一対の脚部106とを備える。但し脚部106には、比較例のような爪は設けられていないので、爪の機械加工に要する費用を削減できる。一対の脚部106の底面部には、弾性部材としての第3シール107が設けられ、これも特許請求の範囲にいうシール部材を構成する。
【0047】
第2シール81の取付方法は任意であるが、本実施形態の場合、第1弾性部材101は、一対の脚部106の間に位置する取付基部105の底面部に接着材により接着され、第2弾性部材102は第1弾性部材101の底面部に接着材により接着されている。なお接着に代えて、ネジ等を用いて機械的に締結してもよい。一方、第3弾性部材103は第2弾性部材102の底面部に着脱可能に取り付けられる。すなわち、下側の第3弾性部材103は、上側の第2弾性部材102の底面部に形成された嵌合溝108に着脱可能に嵌合される。
【0048】
第2シール81において、下側の弾性部材は上側の弾性部材より小さい硬度を有する。すなわち、第2弾性部材102の硬度は第1弾性部材101の硬度より小さく、第3弾性部材103の硬度は第2弾性部材102の硬度より小さい。言い換えれば、下側の弾性部材ほど硬度が小さい。このように硬度を変えることで、最適なシール性能を得ることができる。
【0049】
本実施形態の場合、第1弾性部材101と第2弾性部材102は中実の弾性材料、例えばゴムにより形成されている。一方、第3弾性部材103は柔らかい多孔質の弾性材料、例えば発泡ゴムにより形成されてもよい。
【0050】
第2シール81において、下側の弾性部材は上側の弾性部材より小さい幅(左右方向の幅)を有する。すなわち、第2弾性部材102の幅W2は第1弾性部材101の幅W1より小さく、第3弾性部材103の幅W3は第2弾性部材102の幅W2より小さい。このように幅を変えることでも、最適なシール性能を得ることができる。
【0051】
第1弾性部材101の幅W1は、一対の脚部106の間の幅とほぼ等しくされる。第3弾性部材103の底面部は断面円弧状に湾曲されている。各弾性部材101~103は、それぞれの幅中心が同一位置に位置するよう配置されている。各弾性部材101~103は、上下方向の厚さと前後方向の長さとを有する。
【0052】
第3シール107は、中実ゴム等の弾性材料により形成された一定厚さのシートにより形成される。第3シール107の硬度は、任意に設定可能であるが、例えば第1弾性部材101の硬度と等しくされる。第3シール107の幅は脚部106の底面部の幅と等しくされる。
【0053】
第3シール107は、
図10(B)に示すように、基部20Bとハッチカバー11の隙間をシールすると共に、基部20Bがハッチカバー11に直接載置されることによるハッチカバー11の損傷(凹み、傷付き等)を防止する。
【0054】
図10(A)に示す自然状態において、第2シール81は、第3シール107よりも下方の位置まで延び、その下端は第3シール107よりも所定距離Hだけ下方に位置される。
【0055】
なお、第2シール81と第3シール107はレール19の全長に亘って設けられる。本実施形態のシール部材は、水平方向(左右方向)に並列に配置された複数の弾性部材、すなわち第2シール81(第1~第3弾性部材101~103)と第3シール107を備える。
【0056】
さて、
図9に示すように、第1シール80よりも左側(反ハッチ口側)のハッチカバー11上に雨水が存在する場合、その雨水の右側(ハッチ口側)に向かう流れは、最初に第1シール80により堰き止められる。
【0057】
もし仮に、雨水の流れが第1シール80を通過した場合でも、その雨水の流れは、第2シール81および第3シール107により堰き止められる。
【0058】
図10に示すように、第2シール81は、硬度が異なる複数の弾性部材101~103を備え、特に、下側ほど硬度が小さい三つの弾性部材101~103を備える。そのため、比較例のリップシール150に比べシール性能を格段に向上することができる。
【0059】
すなわち、硬度が最小(最も軟質)の第3弾性部材103は、ハッチカバー11の凹凸に良好に追従して変形し、ハッチカバー11との隙間を最小もしくは皆無にする。一方、それより硬度が大きい(硬質の)第1および第2弾性部材101,102は、第3弾性部材103に強い押し付け力を付加することができる。第2弾性部材102は第1弾性部材101より圧縮量が多く、ハッチカバー11の凹凸に対する追従性は良好である。逆に第1弾性部材101は第2弾性部材102より圧縮量が少なく、追従性は良くないものの、大きな押し付け力を与えることができる。
【0060】
こうして第2シール81を全体として、先端側(下端側)が柔らかく、基端側(上端側)が硬い腰の強い構造とすることができ、第2シール81に好ましい特性を与えることができる。
【0061】
また本実施形態では、下側の弾性部材ほど幅が小さい。そのため、第2シール81の前記特性を助長してシール性能をより向上することができる。
【0062】
第3弾性部材103は第2弾性部材102に着脱可能に取り付けられる。そのため、第3弾性部材103が劣化した場合、それを交換することができる。第3弾性部材103が交換可能なので、第3弾性部材103に耐久性は低いが安価な材料を用いることができ、製造コストを低減できる。
【0063】
本実施形態の場合、第2弾性部材102の嵌合溝108に第3弾性部材103を嵌合するだけで第3弾性部材103が取り付けられる。そのため、装置本体20Aを前後軸回りに傾けて基部20Bを若干浮かすだけで、第3弾性部材103を着脱でき、交換が容易である。
【0064】
本実施形態では、第2シール81のいずれかの弾性部材と硬度が異なる第3シール107を、第2シール81と並列に配置した。そのため、各シール81,107の異なるシール特性を利用してシール性能を高めることができる。
【0065】
なお、第2シール81における弾性部材の数、寸法および位置は変更可能である。例えば弾性部材の数を2または4とすることができる。
【0066】
次に、変形例を説明する。なお前記基本実施形態と同様の部分については説明を割愛し、以下、基本実施形態との相違点を主に説明する。
【0067】
[第1変形例]
図12および
図13に示すように、第1変形例においても第2シール81と第3シール107が設けられる。但し前記基本実施形態と異なり、第2シール81は、基部20Bの側方から着脱可能なように基部20Bに取り付けられている。
【0068】
本変形例の場合、第2シール81は、基部20Bの左側(反ハッチ口側)の側方から着脱可能なように基部20Bに取り付けられている。左側の脚部106は前記基本実施形態よりも右側の位置に配置され、この左側の脚部106より左側のスペースにおいて、第2シール81が取付基部105の底面部に着脱可能に取り付けられる。第2シール81の第1~第3弾性部材101~103は左側の脚部106の左面部に隣接されている。下側の弾性部材ほどその幅は小さくされる。
【0069】
第2弾性部材102は第1弾性部材101の底面部に接着材により接着されている。第2弾性部材102の底面部には、右側が開放された嵌合用切欠109が形成され、この嵌合用切欠109と左側の脚部106とにより嵌合溝110が形成される。この嵌合溝110に第3弾性部材103が着脱可能に嵌合される。
【0070】
図13に示すように、第1弾性部材102の左端部には、ブッシュ挿通穴111と、ボルト頭部挿通穴112とが同軸に設けられる。ボルト頭部挿通穴112は、ブッシュ挿通穴111の下側に位置され、ブッシュ挿通穴111より大径とされる。ブッシュ挿通穴111には金属製またはプラスチック製のブッシュ113が挿通される。ボルト114がボルト頭部挿通穴112およびブッシュ113に下側から順次挿通された後、取付基部105の底面部に設けられた雌ネジ付きボルト穴115に締め付けられる。これにより第1弾性部材102ひいては第2シール81が基部20Bに固定される。取付後、ボルト114の頭部114Aがボルト頭部挿通穴112に自然状態(
図12(A))で出っ張らないよう挿入されている。ボルト114の種類は任意であるが、例えば六角穴付きボルトを用いることができる。
【0071】
これらブッシュ挿通穴111、ボルト頭部挿通穴112、ブッシュ113、ボルト114およびボルト穴115はボルト取付部116を構成する。こうしたボルト取付部116は、第2シール81の長手方向(前後方向)に所定間隔で複数設けられる。
【0072】
ブッシュ113を設けたことでボルト114の締め付け量が制限され、ボルト114の締め付けによる第1弾性部材102の過度の潰れを防止できる。
【0073】
ボルト114の頭部114Aが圧縮時の第2弾性部材102に干渉しないよう、第2弾性部材102は、ボルト114の頭部114Aより右側の位置に配置されている。
【0074】
本変形例によれば、基本実施形態と同様の作用効果に加え、次の作用効果を発揮することができる。すなわち、基部20Bの左側からボルト114を着脱するだけで、第2シール81を着脱、交換することができる。よって基本実施形態のように、装置本体20Aを傾けたり、基部20Bを浮かせたりする必要がなくなり、交換作業を容易に行うことができる。
【0075】
本変形例では、第3弾性部材103のみならず、その上側の第1および第2弾性部材101,102も交換することができる。よって第1および第2弾性部材101,102についても低廉な材料を用いることができ、製造コストを一層低減できる。
【0076】
本変形例では、第1~第3弾性部材101~103を左側の脚部106の左面部(左側の側面部)に隣接させたので、それら弾性部材の伸縮時にその伸縮を左側脚部106の左面部で案内できる。よって所望の伸縮を確実に行わせることができる。
【0077】
[第2変形例]
図14に示すように、第2変形例においても第2シール81と第3シール107が設けられる。但し第2シール81の構成は前記基本実施形態と異なる。本変形例の第2シール81は、単一の弾性部材により形成され、特に、前記第3弾性部材103と同様の多孔質の弾性材料(例えば発泡ゴム)からなる弾性部材により形成されている。第2シール81の硬度は第3シール107の硬度より小さい。
【0078】
本変形例の場合、取付基部105の底面部の左半部に一つの脚部106が偏って取り付けられている。この脚部106より右側(ハッチ口側)のスペースにおいて、第2シール81が取付基部105の底面部に接着等により取り付けられている。第2シール81の幅は取付基部105の幅の約半分である。
図14(A)に示す自然状態において、第2シール81の下端は第3シール107よりも所定距離H1だけ下方に位置される。
【0079】
なお、ハッチ口13を挟んで向こう側(右側)にある図外のハッチカバー11上の脚部106と、図示の脚部106とで装置本体20Aが支持されるので、一つの脚部106が図示のように偏って取付基部105に取り付けられていても問題はない。
【0080】
第3シール107は、基本実施形態と同様、シート状かつ単一の弾性部材により形成される。第3シール107の硬度は第2シール81の硬度より大きい。従って本変形例においても、シール部材は、水平方向に並列に配置され硬度が異なる複数(二つ)の弾性部材(第2シール81および第3シール107)を備える。
【0081】
本変形例によれば、反ハッチ口側(左側)からハッチ口側(右側)に向かう方向の弾性部材の硬度を変化させることができる。具体的には、反ハッチ口側では第3シール107により硬度を大きくし、ハッチ口側では第2シール81により硬度を小さくすることができる。これにより、比較例の単一のリップシール150では得られないシール特性を提供し、シール性能を向上することができる。
【0082】
特に、
図14(C)に示すように、ハッチカバー11上の凹凸に起因して第3シール107がハッチカバー11から浮いてしまった場合でも、第2シール81をハッチカバー11に接触させて第3シール107とハッチカバー11の隙間をシールすることができる。
【0083】
図15には、ハッチカバー11の上面に溶接ビードによる段差状の突起117がある場合を示す。一般にハッチカバー11は鋼板を溶接して製造されるため、こうした突起117が存在することが多い。図示例の場合、突起117は左右方向、すなわち反ハッチ口側からハッチ口側に向かう方向に延びている。そしてこの突起117に上方から第2シール81と第3シール107が押し付けられる。これらシールの長手方向は突起117の長手方向と交差、特に直交している。
【0084】
この場合、
図15(B)に示すように、硬度が大きい第3シール107は、突起117の外形状に完全に追従できず、突起117の両側で、第3シール107とハッチカバー11の間に隙間118ができてしまう。
【0085】
しかし、
図15(C)に示すように、第2シール81の場合だと、第2シール81が突起117の外形状に完全に追従できる。このため、突起117の両側で隙間ができるのを回避でき、シール性能を高めることができる。
【0086】
特に、第2シール81は、硬度が小さい多孔質の弾性材料、例えば発泡ゴムにより形成され、内部の気泡が潰れて圧縮変形できるため、相手方の外形状に対する追従性が極めて良好である。そのため、突起117の両側で、突起117の表面からハッチカバー11の上面に移行する角張った形状に追従して変形することができ、隙間ができるのを回避することができる。
【0087】
よって、第3シール107とハッチカバー11の隙間118を通過した雨水を第2シール81で確実に遮断することができる。
【0088】
図17には、ハッチカバー11の上面に段差117Aがある場合を示す。一般にハッチカバー11は鋼板を溶接で繋ぎ合わせて製造されるため、継ぎ目にこうした段差117Aが存在することがある。図示例の場合、段差117Aは左右方向、すなわち反ハッチ口側からハッチ口側に向かう方向に延びている。第2シール81と第3シール107の長手方向は段差117Aの長手方向と交差、特に直交している。
【0089】
この場合にも、
図17(B)に示すように、第3シール107が段差117Aの外形状に完全に追従できず、段差117Aの下段の上側に隙間118ができてしまう。
【0090】
しかし、
図17(C)に示すように、第2シール81の場合だと、第2シール81が段差117Aの外形状に完全に追従できる。このため、段差117Aの下段の上側に隙間ができるのを回避でき、シール性能を高めることができる。
【0091】
なお、こうした作用効果は基本実施形態および第1変形例でも得ることができる。本変形例においても、基部20Bの右側の側方から着脱可能なように第2シール81を基部20Bに取り付けてもよい。
【0092】
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示の実施形態および変形例は他にも様々考えられる。
【0093】
例えば、装置本体について、前記実施形態では蛇腹構造で伸縮可能なものを採用したが、これに限らず、装置本体の形態は任意である。例えば、装置本体は、伸縮しない固定式のものであってもよい。この場合、装置本体を比較的軽量な材料、例えば樹脂(FRPを含む)、アルミ等で作製してもよい。
【0094】
第2シール81および第3シール107は、レール19の長手方向に分割してもよい。こうすると、基部20Bとハッチカバー11の隙間の大きさがレール19の長手方向の位置に応じて変化する場合に、各位置の隙間の大きさに合わせた最適な長さ(基端から先端までの長さ)の第2シール81および第3シール107を各位置毎に採用でき、シール性能を高められる。この場合、第2シール81および第3シール107はレール片21単位で分割することができる。
【0095】
第1および第2変形例では、第2シール81と第3シール107の相対的な配置を逆にしてもよい。すなわち第1変形例(
図12)では、第2シール81を右側(ハッチ口側)に配置し、第3シール107を左側(反ハッチ口側)に配置してもよい。第2変形例(
図14)では、第2シール81を左側(反ハッチ口側)に配置し、第3シール107を右側(ハッチ口側)に配置してもよい。
【0096】
図18には、他の変形例を示す。この変形例においては、第2変形例(
図14)の第2シール81が、ブラシ119からなる第2シール81に置き換えられている。ブラシ119は、取付基部105の底面部にボルト122で着脱自在に取り付けられたブラシヘッド121と、ブラシヘッド121に下向きに植えられたブラシ毛120とを備える。ブラシ毛120は、樹脂、金属、動物の毛等によって形成され、弾性変形可能であり、第3シール107より硬度が小さい弾性部材をなす。ブラシ毛120の中間部は右側(ハッチ口側)に向かって湾曲され、ブラシ毛120の先端部はハッチカバー11の上面に押し付けられる。ブラシ119は、それより右側(ハッチ口側)の側方からボルト122を着脱することにより、容易に着脱交換可能である。
【0097】
図18は、ハッチカバー11の上面に
図17と同様の段差117Aがある場合を示す。この場合、
図18(B)に示すように、第3シール107が段差117Aの外形状に完全に追従できず、段差117Aの下段の上側に隙間118ができてしまう。
【0098】
しかし、
図18(C)に示すように、ブラシ119からなる第2シール81の場合だと、ブラシ毛120が段差117Aの外形状に完全に追従できる。このため、段差117Aの下段の上側に隙間ができるのを回避でき、シール性能を高めることができる。
【0099】
なお、図示しないが、ハッチカバー11の上面に
図15と同様の突起117がある場合も同様である。
【0100】
前述の各実施形態および各変形例の構成は、特に矛盾が無い限り、部分的にまたは全体的に組み合わせることが可能である。本開示の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本開示の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本開示に含まれる。従って本開示は、限定的に解釈されるべきではなく、本開示の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0101】
7 船倉
10 上部開口
11 スライド式ハッチカバー
13 ハッチ口
19 レール
20 船積み用雨除け装置
20A 装置本体
20B 基部
81 第2シール
107 第3シール
101 第1弾性部材
102 第2弾性部材
103 第3弾性部材