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  • 特許-非水電解液二次電池および組電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池および組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20231212BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20231212BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20231212BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20231212BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20231212BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20231212BHJP
   H01M 50/491 20210101ALI20231212BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M10/0566
H01M10/0587
H01M50/262 Z
H01M50/491
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021202642
(22)【出願日】2021-12-14
(65)【公開番号】P2023088028
(43)【公開日】2023-06-26
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】泉本 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼士 祐輔
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/158724(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/036759(WO,A1)
【文献】特開2007-329077(JP,A)
【文献】特開2016-009532(JP,A)
【文献】特開2016-178083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052
H01M 10/0587
H01M 4/13
H01M 4/62
H01M 10/0566
H01M 50/491
H01M 50/262
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極がセパレータを介して捲回された捲回電極体と、
非水電解液と、
前記捲回電極体および前記非水電解液を収容する角型の電池ケースと、
を備える非水電解液二次電池であって、
前記正極は、少なくとも正極活物質と、導電材としてカーボンナノチューブと、を含む正極活物質層を備えており、
前記負極は、負極活物質を含む負極活物質層を備えており、
ここで、前記負極活物質層の単位面積当たりの空孔体積をA(cm/cm)、
前記正極活物質層の単位面積当たりの空孔体積をB(cm/cm)としたときに、
0.6≦B/A≦1.2を満たす、非水電解液二次電池。
【請求項2】
前記セパレータは、多孔性であり、前記セパレータの単位面積当たりの空孔体積をC(cm/cm)としたときに、
0.6≦B/A≦1.2を満たし、かつ、0.6≦C/A≦0.71を満たす、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】
前記負極活物質層の単位面積当たりの空孔体積Aは、0.0014cm/cm以上0.0016cm/cm以下であり、
前記正極活物質層の単位面積当たりの空孔体積Bは、0.0009cm/cm以上0.0016cm/cm以下であり、
前記セパレータの単位面積当たりの空孔体積Cは、0.0007cm/cm以上0.0011cm/cm以下である、請求項2に記載の非水電解液二次電池。
【請求項4】
前記正極活物質層の全重量を100重量%としたときに、前記カーボンナノチューブの含有量が0.5重量%以上5重量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池を複数有する組電池であって、
前記複数の非水電解液二次電池は、所定方向に配列され、
前記複数の非水電解液二次電池は、配列方向に荷重が印加されるように拘束されている、組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池および組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非水電解液二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)等の車両に搭載される駆動用電源として好適に用いられている。この種の非水電解液二次電池は、例えば、正極および負極を備える電極体と、非水電解液とが電池ケースに収容された構成を有している。このような二次電池の一例が、特許文献1および2に記載されている。
【0003】
特許文献1においては、非水電解液中のリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)と電池内のナトリウムとの比率および、負極とセパレータとの空孔体積の比率を所定の範囲内に規定することにより、二次電池の抵抗特性と過充電特性とが改善されることが開示されている。また、特許文献2では、電解液に所定の添加剤を添加し、かつ、正極と負極とセパレータとの空孔体積の比率を所定の範囲内に規定することにより、添加剤が単独に分解した成分と、添加剤が溶媒と共に分解した成分とのバランスを調整することにより、負極上に良好な被膜を形成させることが記載されている。この被膜の効果により、短絡時の発熱を抑制し、電極体の熱的安定性を向上させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-184436号公報
【文献】特開2016-009532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、非水電解液二次電池が、充放電(特にハイレート充放電)を繰り返した際には、電極体の膨張収縮や非水電解液の体積膨張に起因したポンプ効果が生じ、電極体の内部から非水電解液が押し出されることがある。押し出された非水電解液は電極体内部に戻り難い傾向にあるため、非水電解液が過剰に排出された場合には、電極体内部で塩濃度のムラ(不均一化)が生じ、抵抗特性やハイレート特性が低くなる虞がある。
【0006】
発明者らが鋭意検討した結果によれば、上記特許文献1および2に開示された技術では、ハイレート充放電時において電極体が膨張収縮を繰り返すことにより、電極体から非水電解液が排出されることで生じる塩濃度の不均一化は抑制し難い。このため、非水電解液二次電池の抵抗特性とハイレート特性とを両立するための技術の開発が求められている。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、良好な抵抗特性と良好なハイレート特性とが両立された非水電解液二次電池を提供することにある。また他の目的は、かかる非水電解液二次電池を用いた組電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を実現するため、ここに開示される非水電解液二次電池が提供される。ここに開示される非水電解液二次電池は、正極および負極がセパレータを介して捲回された捲回電極体と、非水電解液と、上記捲回電極体および上記非水電解液を収容する角型の電池ケースと、を備える。上記正極は、少なくとも正極活物質と、導電材としてカーボンナノチューブと、を含む正極活物質層を備えている。上記負極は、負極活物質を含む負極活物質層を備えている。ここで、上記負極活物質層の単位面積当たりの空孔体積をA(cm/cm)、上記正極活物質層の単位面積当たりの空孔体積をB(cm/cm)としたときに、0.6≦B/A≦1.2を満たすように構成されている。
【0009】
上記構成の非水電解液二次電池は、充放電(特にハイレート充放電)時に非水電解液の排出または吸入経路となり得る正極活物質層および負極活物質層の各空孔の体積の比が上記範囲に調整されている。これにより、捲回電極体から非水電解液が過剰に排出され、捲回電極体内において塩濃度の不均一が生じることを抑制することができる。したがって、非水電解液二次電池の抵抗を低減し、かつ、ハイレート充放電時の抵抗増加率を低減することができる。かかる構成によれば、良好な抵抗特性と、良好なハイレート特性とが両立された非水電解液二次電池が実現される。
【0010】
ここに開示される非水電解液二次電池の好ましい一態様では、上記セパレータは、多孔性であり、上記セパレータの単位面積当たりの空孔体積をC(cm/cm)としたときに、0.6≦B/A≦1.2を満たし、かつ、0.6≦C/A≦0.71を満たすように構成されている。
かかる構成によれば、充放電(特にハイレート充放電)時に非水電解液の排出または吸入経路となり得る正極活物質層、負極活物質層およびセパレータの各空孔の体積の比が調整され、より好適に抵抗特性と、ハイレート充放電耐性とが両立された電池を提供することができる。
【0011】
ここに開示される非水電解液二次電池の好ましい一態様では、上記負極活物質層の単位面積当たりの空孔体積Aは、0.0014cm/cm以上0.0016cm/cm以下であってもよい。上記正極活物質層の単位面積当たりの空孔体積Bは、0.0009cm/cm以上0.0016cm/cm以下であってもよい。また、上記セパレータの単位面積当たりの空孔体積Cは、0.0007cm/cm以上0.0011cm/cm以下であってもよい。
かかる構成によれば、より好適に抵抗特性と、ハイレート充放電耐性とが両立された電池を提供することができる。
【0012】
ここに開示される非水電解液二次電池の好ましい一態様では、上記正極活物質層の全重量を100重量%としたときに、上記カーボンナノチューブの含有量が0.5重量%以上5重量%以下である。
かかる構成によれば、比較的高い正極密度を維持しつつ、好適な空孔体積が維持された正極を提供することができる。これにより、正極の初期抵抗を低減させることができ、かつ、ハイレート充放電時の抵抗増加率も低減することができる。したがって、良好な抵抗特性と、良好なハイレート特性とが両立された電池を提供することができる。
【0013】
上記他の目的を実現するため、ここに開示される組電池が提供される。ここに開示される組電池は、上記に記載の非水電解液二次電池を複数有する組電池であって、上記複数の非水電解液二次電池は、所定方向に配列され、上記複数の非水電解液二次電池は、配列方向に荷重が印加されるように拘束されている。
上記のように各空孔体積の比が調整されている非水電解液二次電池を単電池として用いて組電池を構成することにより、拘束されている場合であっても、初期抵抗が低く、かつ、ハイレート充放電時の抵抗増加率が低い組電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
図2】一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の捲回電極体の構成を模式的に示す図である。
図3】一実施形態に係る組電池の斜視図である。
図4】各実施例および各比較例の結果より得られた正極活物質層および負極活物質層の単位面積当たりの空孔体積比とハイレート充放電時の抵抗増加率との関係を示すグラフである。
図5】各実施例および各比較例の結果より得られた負極活物質層およびセパレータの単位面積当たりの空孔体積比とハイレート充放電時の抵抗増加率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、ここで開示される二次電池の一実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特にここで開示される技術を限定することを意図したものではない。ここで開示される技術は、特に言及されない限りにおいて、ここで説明される実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、各図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。また、数値範囲を示す「A~B」の表記は、特に言及されない限りにおいて「A以上B以下」を意味するとともに、「Aを上回り、Bを下回る」をも意味する。
【0016】
本明細書において「非水電解液二次電池」とは、非水系の電解液を使用した二次電池であり、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のいわゆる蓄電池の他に、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ等も包含する。以下では、上述した非水電解液二次電池のうち、リチウムイオン二次電池を対象とした場合の実施形態について説明する。
【0017】
図1は、一実施形態に係る非水電解液二次電池の内部構造を模式的に示す縦断面図であり、図2は、一実施形態に係る非水電解液二次電池の捲回電極体の構成を模式的に示す図である。図1に示すように、リチウムイオン二次電池100は、扁平な捲回電極体20と、電池ケース10と、を備えている。また、リチウムイオン二次電池100は、図示されない非水電解液を備えている。
【0018】
図1に示すリチウムイオン二次電池100は、扁平形状の捲回電極体20と、図示されない非水電解液と、が扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)10に収容されることにより構築される。電池ケース10は、外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース10の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36とが設けられている。また、電池ケース10には、非水電解液を注液するための図示されない注液口が設けられている。正極端子42は、正極集電板42aと電気的に接続されている。負極端子44は、負極集電板44aと電気的に接続されている。電池ケース10の材質は、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属である。
【0019】
捲回電極体20は、長尺シート状の正極50と、長尺シート状の負極60と、長尺シート状のセパレータ70とを有している。捲回電極体20は、正極50と負極60とが2枚のセパレータ70とを介して重ねあわされて長手方向に捲回された形態を有する。捲回電極体20の外観は、扁平形状である。
【0020】
図1および図2に示すように、正極50は、長尺状の正極集電体52と、該正極集電体52の長手方向に沿って片面または両面(ここでは両面)に形成された正極活物質層54とを備える。正極集電体52の幅方向の一方(図1図2の左側)の端部には、正極活物質層54が形成されていない正極集電体露出部52aが設けられている。正極50は、正極集電体露出部52aに付設された正極集電板42aを介して正極端子42と電気的に接続される。正極集電体52としては、例えばアルミニウム箔等が挙げられる。正極集電体52の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。正極集電体52の厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
【0021】
負極60は、長尺状の負極集電体62と、該負極集電体62の長手方向に沿って片面または両面(ここでは両面)に形成された負極活物質層64とを備える。負極集電体62の幅方向の一方(図1図2の左側)の端部には、負極活物質層64が形成されていない負極集電体露出部62aが設けられている。負極60は、負極集電体露出部62aに付設された負極集電板44aを介して負極端子44と電気的に接続される。負極集電体62としては、例えば銅箔等が挙げられる。正極集電体52の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。負極集電体62の厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
【0022】
ここに開示されるリチウムイオン二次電池100の正極活物質層54は、少なくとも正極活物質と、導電材としてカーボンナノチューブと、を含んでいる。正極活物質層54に含まれる正極活物質としては、非水電解液二次電池の正極に使用し得ることが知られている各種の材料を特に限定することなく、1種または2種以上用いることができる。一好適例としては、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物等が挙げられる。
【0023】
特に限定するものではないが、正極活物質としては、下式(I)で表される組成を有するものが好ましい。
Liα(NiCoMn)O (I)
ただし、式(I)中、α、x、y、およびzはそれぞれ、1≦α≦1.2、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1を満たし、かつ、x+y+z=1を満たす。
【0024】
正極活物質層54中の正極活物質の含有量(すなわち、正極活物質層54の全重量に対する正極活物質の含有量)は、特に限定されないが、80重量%以上が好ましく、より好ましくは90重量%以上99重量%以下であり、さらに好ましくは95重量%以上99重量%以下であり、特に好ましくは95重量%以上98.3重量%以下である。正極活物質層54中の正極活物質の含有量が上記範囲内であることにより、エネルギー密度が高い電池を提供することができる。
【0025】
正極活物質層54は、正極活物質に加えて導電材としてカーボンナノチューブをさらに含んでいる。カーボンナノチューブ(以下、CNTともいう。)は、少量の添加で好適な導電性を確保することができ、かつ、適度な空孔率を確保することができるため、ここに開示される非水電解液二次電池の導電材として好ましく用いられる。好適な一態様では、正極活物質層54中のCNTの含有量は、5重量%以下である。正極活物質層54中のCNTの含有量は、4重量%以下であってもよく、3重量%以下であってもよく、2重量%以下であってもよい。また、好適な導電性と空孔率を確保するために、正極活物質層54中のCNTの含有量は、0.5重量%以上であることが好ましく、0.6重量%以上であることがより好ましく、0.8重量%以上であることが特に好ましい。
【0026】
CNTは、導電性を有しており、かつタップ密度が高く凝集しても高い空孔率を維持することができる。CNTとしては、一枚の円筒形のグラフェンシートからなる単層カーボンナノチューブ(SWNT)であってもよいし、異なる二つのSWNTが入れ子状になった2層のカーボンナノチューブ(DWNT)であってもよいし、異なる三つ以上のSWNTが入れ子状になった多層カーボンナノチューブ(MWNT)であってもよい。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。CNTは、アーク放電法、レーザアブレーション法、化学気相成長法等により製造されたものであってよい。
【0027】
CNTの平均長さは特に限定されない。CNTの平均長さは、長すぎる場合にはCNTが凝集して均一に分散せず、導電性を向上させる効果が得られにくい傾向にある。このため、CNTの平均長さは、例えば100μm以下であることが好ましく、75μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。一方で、CNTの平均長さが短すぎる場合には、正極活物質間の導電性ネットワークの形成がされ難い傾向にある。このため、CNTの平均長さは、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが特に好ましい。例えば、平均長さが1μm以上50μm以下であるCNTが好適である。
また、CNTの平均直径は特に限定されない。CNT平均直径は、例えば1nm以上30nm以下であることが好ましく、5nm以上20nm以下であることがより好ましく、6nm以上12nm以下であることがさらに好ましい。
なお、CNTの平均長さおよび平均直径は、例えば電子顕微鏡観察に基づく測定で得られた値を採用することができる。
【0028】
CNTの比表面積は特に限定されない。CNTの比表面積は、導電性ネットワークをより好適に形成する観点からは、100m/g以上であることが好ましく、150m/g以上であることがより好ましく、200m/g以上であることがさらに好ましい。一方で、CNTの比表面積は、CNTの凝集を抑制し、導電材として正極活物質層中に好適に分散させる観点からは、350m/g以下であることが好ましく、300m/g以下であることがより好ましく、275m/g以下であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において「CNTの比表面積」は、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指し、JIS Z8830:2013に準拠して測定することができる。
【0029】
なお、正極活物質層54は、本発明の効果を著しく阻害しない範囲において、カーボンナノチューブ以外の導電材を含んでいてもよい。かかる導電材としては、例えば、アセチレンブラックやケッチェンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛等の炭素材料が挙げられる。カーボンナノチューブに加えてこれらの導電材を含有させる場合、正極活物質層54中の導電材全体の含有量は、0.5重量%以上10重量%以下(例えば、0.8重量%以上6重量%以下)であってよい。
【0030】
正極活物質層54は、上記した正極活物質および導電材以外の成分、例えばバインダ等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のハロゲン化ビニル樹脂や、ポリエチレンオキサイド(PEO)等のポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。正極活物質層54中のバインダの含有量は、特に限定されないが、0.5重量%以上5重量%以下であることが好ましく、0.7重量%以上3重量%以下であることがより好ましく、0.9重量%以上2.5重量%以下であることがさらに好ましい。
【0031】
正極活物質層54の平均厚みと目付量は、後述する各単位面積当たりの空孔体積の比が満たされるように調整されればよい。例えば、正極活物質層54の平均厚みは、20μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、39.7μm以上であってもよく、40μm以上であってもよく、42.7μm以上であってもよく、43.6μm以上であってもよい。また、正極活物質層54の平均厚みは、100μm以下であってもよく、75μm以下であってもよく、53μm以下であってもよく、48.5μm以下であってもよく、47μm以下であってもよい。正極活物質層54の目付量は、正極集電体52の片面当たり3mg/cm以上(例えば5mg/cm以上)であって、70mg/cm以下(例えば50mg/cm以下)とするとよい。
【0032】
負極活物質層64は、負極活物質を含んでいる。負極活物質層64に含まれる負極活物質としては、非水電解液二次電池の負極に使用し得ることが知られている各種の材料を特に限定することなく、1種または2種以上用いることができる。一好適例としては、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料が挙げられる。負極活物質は、粒状の天然黒鉛の表面に非晶質炭素(例えばカーボンブラック)がコートされた、非晶質コート黒鉛であってもよい。負極活物質層64中の負極活物質の含有量(すなわち、負極活物質層64の全重量に対する負極活物質の含有量)は、特に限定されないが、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましく、99重量%以上がさらに好ましい。
【0033】
負極活物質層64は、負極活物質以外の成分、例えば、増粘剤、バインダ、分散剤等を含んでいてもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)やメチルセルロース(MC)等のセルロース類が挙げられる。負極活物質層64中の増粘剤の含有量は、0.3重量%以上3重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上2重量%以下であることがより好ましい。バインダとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類や、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のハロゲン化ビニル樹脂が挙げられる。負極活物質層64中のバインダの含有量は、0.1重量%以上5重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上3重量%以下であることがより好ましい。
【0034】
負極活物質層64の平均厚みおよび目付量は、後述する各単位面積当たりの空孔体積の比が満たされるように調整されればよい。例えば、負極活物質層64の平均厚みは、50μm以上であってもよく、60μm以上であってもよく、60.6μm以上であってもよく、61.6μm以上であってもよい。また、負極活物質層64の平均厚みは、100μm以下であってもよく、75μm以下であってもよく、65.6μm以下であってもよく、65.4μm以下であってもよく、65μm以下であってもよい。負極活物質層64の目付量は、負極集電体62の片面当たり5mg/cm以上(例えば7mg/cm以上)であって、20mg/cm以下(例えば15mg/cm以下)とするとよい。
【0035】
セパレータ70は、正極50の正極活物質層54と、負極60の負極活物質層64との間に配置されている。セパレータ70は、正極50の正極活物質層54と、負極60の負極活物質層64とを絶縁する。セパレータ70は、多孔性の樹脂基材で構成されている。樹脂基材としては、例えば、ポリエチレン(PE)や、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、セルロース等の樹脂からなるシート(フィルム)が例示される。セパレータ70は、単層構造であってもよく、性質や性状(厚みや空孔率等)の異なる2種以上の多孔性樹脂シートが積層された構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。また、セパレータ70は、その表面にセラミック粒子等により構成された耐熱層(Heat Resistant Layer:HRL層)を備えていてもよい。
【0036】
セパレータ70の厚みおよび空孔率は、後述する各単位面積当たりの空孔体積の比が満たされるように調整される限りにおいて、特に限定されない。例えば、負極活物質層64の厚みは、10μm以上であってもよく、15μm以上であってもよく、18μm以上であってもよい。また、セパレータ70の厚みは、30μm以下であってもよく、25μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。セパレータ70の空孔率は、45%以上であってもよく、50%以上であってもよく、53%以上であってもよく、例えば、60%以下であって、55%以下であってもよい。なお、空孔率は、例えば、水銀圧入ポロシメーターを用いた水銀圧入法により測定することができる。
【0037】
ここに開示される非水電解液二次電池は、負極活物質層64の単位面積当たりの空孔体積をA(cm/cm)、正極活物質層54の単位面積当たりの空孔体積をB(cm/cm)、としたときに、0.6≦B/A≦1.2を満たすものである。より好ましくは、0.6≦B/A≦1.14を満たすものであってもよく、さらに好ましくは、0.63≦B/A≦1.14を満たすものであってもよい。
また、好適な一態様では、セパレータ70の単位面積当たりの空孔体積をC(cm/cm)としたときに、0.6≦B/A≦1.2を満たし、かつ、0.6≦C/A≦0.71を満たすものである。より好適な一態様では、0.63≦B/A≦1.14を満たし、かつ、0.63≦C/A≦0.71を満たすものである。各単位面積当たりの空孔体積の比が上記範囲内であることにより、初期抵抗を低減させ、かつ、ハイレート充放電時の抵抗増加率を抑制することができる。すなわち、良好な抵抗特性と、良好なハイレート特性とが両立された非水電解液二次電池を提供することができる。
【0038】
ここに開示される技術を限定する意図はないが、上記した効果が得られる理由は、以下のように推測される。捲回電極体は、充放電(特にハイレート充放電)した際に膨張収縮を繰り返している。このため、非水電解液は、正極活物質層、負極活物質層およびセパレータの空孔を介して捲回電極体内から排出されたり、再び捲回電極体内に吸入されたりしている。捲回電極体に空孔を介して再び吸入される非水電解液よりも、捲回電極体から排出される非水電解液のほうが多くなる傾向にあり、排出される非水電解液が過剰に多くなった場合には、捲回電極体において塩濃度の不均一が生じ得る。そこで、ここに開示される非水電解液二次電池においては、充放電時に非水電解液の排出または吸入経路となり得る正極活物質層、負極活物質層およびセパレータの空孔の体積を上述した範囲に調整している。これにより、捲回電極体から非水電解液が過剰に排出され、捲回電極体内において塩濃度の不均一が生じることを抑制することができるため、初期抵抗およびハイレート充放電時抵抗増加率が低い電池を提供することができる。
【0039】
ここに開示される非水電解液二次電池において、負極活物質層64の単位面積当たりの空孔体積Aは、0.0014cm/cm以上0.0016cm/cm以下であることが好ましい。また、正極活物質層54の単位面積当たりの空孔体積Bは、0.0009cm/cm以上であることが好ましく、0.0010cm/cm以上であってよく、0.0011cm/cm以上であってもよい。また、正極活物質層54の単位面積当たりの空孔体積Bは、0.0016cm/cm以下であることが好ましい。さらに、セパレータ70の単位面積当たりの空孔体積Cは、0.0007cm/cm以上0.0011cm/cm以下(例えば、0.0010cm/cm)であることが好ましい。
【0040】
負極活物質層の単位面積当たりの空孔体積Aおよび正極活物質層の単位面積当たりの空孔体積Bは、「単位面積当たりの活物質層の体積(cm/cm)」と、「単位面積当たりの活物質層の見かけの体積(cm/cm)」とから求めることができる。
「単位面積当たりの活物質層の体積(cm/cm)」は、まず、正極または負極から所定面積を打ち抜き、単位面積当たりの活物質層の重量(mg/cm)を測定する。次いで、活物質層中に含まれる各構成材料(例えば、活物質、バインダ、増粘剤等)の組成比(重量比)を各構成材料の真密度(g/cm)でそれぞれ除した値を求める。そして、上記測定した活物質層の重量に各構成材料の組成比を真密度で除した値を乗ずることにより、「活物質層の体積」を算出することができる。例えば、活物質層中に構成材料として負極活物質とバインダと増粘剤とを含む場合、以下の式:単位面積当たりの活物質層の体積(cm/cm)=単位面積当たりの活物質層の重量×{(負極活物質の組成比/負極活物質の真密度)+(バインダの組成比/バインダの真密度)+(増粘剤の組成比/増粘剤の真密度)};により求めることができる。なお、各構成材料の真密度は、一般的な定容積膨張法(気体装置型ピクノメータ法)等の密度測定装置によって測定することができる。
次いで、「単位面積当たりの活物質層の見かけの体積(cm/cm)」を求める。「単位面積当たりの活物質層の見かけの体積(cm/cm)」は、まず、活物質層の厚み(μm)を、マイクロメータ等によって測定する。そして、以下の式:単位面積当たりの活物質層の見かけの体積(cm/cm)=活物質層の厚み(μm)/10000;から求めることができる。
【0041】
上記求めた「単位面積当たりの活物質層の見かけの体積」から、「単位面積当たりの活物質層の体積」を差し引くことにより、活物質層の単位面積当たりの空孔体積を算出することができる。なお、負極活物質層の単位面積当たりの空孔体積Aおよび正極活物質層の単位面積当たりの空孔体積Bは、活物質層を構成する材料、活物質層を作製する際のプレスの条件、目付量、平均厚み等を調整することにより、適宜変更することができる。
【0042】
セパレータの単位面積当たりの空孔体積Cは、セパレータの膜厚(μm)と空孔率(%)とから求めることができる。具体的には、以下の式:単位面積当たりのセパレータの体積(cm/cm)=(セパレータの膜厚(μm)/10000)×セパレータの空孔率(%);により求めることができる。
セパレータの単位面積当たりの空孔体積Cは、セパレータを構成する材料を多孔化する際の条件(延伸条件等)や、セパレータの厚み等を調整することにより、適宜変更することができる。また、透気度が既知のセパレータは市販品等により入手可能であるため、所望する単位面積当たりの空孔体積を有するセパレータ70は、その透気度と厚みを参考にして選択して入手してもよい。
【0043】
ところで、一般的に、正極活物質層の密度が低い場合(すなわち、正極空孔体積が高い場合)には、正極活物質層内の正極活物質同士や、正極活物質と導電材との接触性が悪くなることで正極の抵抗が増加し、非水電解液二次電池の出力特性が低くなることが知られている。一方で、本発明者らが鋭意検討した結果によれば、正極活物質層の密度がある一定の値以上高い場合にも、正極の抵抗が高くなることを見出した。また、正極の抵抗が増加した場合には、充放電(特にハイレート充放電)した際に、捲回電極体の発熱量が大きくなり、非水電解液の体積膨張率や捲回電極体の膨張収縮率が大きくなる傾向にある。これにより、捲回電極体からより非水電解液が過剰に排出されやすくなる。したがって、正極の抵抗が増加した非水電解液二次電池では、ハイレート充放電時の抵抗増加率も大きくなる。
ここに開示される非水電解液二次電池においては、正極活物質層54は、カーボンナノチューブを含み、かつ、正極活物質層54の密度が所定の範囲に調整されているとよい。具体的には、正極活物質層54の密度は、1.5g/cm以上であることが好ましく、1.8g/cm以上であることがより好ましく、2.2g/cm以上であることがさらに好ましく、2.36g/cm以上であってもよく、2.4g/cm以上であることが特に好ましい。また、正極活物質層54の密度は2.75g/cm未満であることが好ましく、2.55g/cm以下であることがより好ましい。これにより、非水電解液二次電池の初期抵抗を低減し、かつ、ハイレート充放電時の抵抗増加率を抑制することができる。
【0044】
また、正極活物質層54の空孔率は、例えば、40%以上であることが好ましく、42.91%以上であってもよく、44.7%以上であってもよく、46.27%以上であってもよい。また、正極活物質層54の空孔率は、65%以下であることが好ましく、60.7%以下であってもよく、52%以下であってもよく、47.7%以下であってもよく、47.16%以下であってもよい。
【0045】
負極活物質層64の密度は、1g/cm以上であることが好ましく、1.1g/cm以上であってもよく、1.14g/cm以上であってもよく、1.17g/cm以上であってもよい。また、負極活物質層64の密度の上限は、2g/cm以下であることが好ましく、1.5g/cm以下であることがより好ましい。また、負極活物質層64の空孔率は、例えば、50%以上であることが好ましく、53%以上であることがより好ましい。エネルギー密度の観点からは、負極活物質層64の空孔率は60%以下であることが好ましい。
【0046】
ここに開示されるリチウムイオン二次電池100は、上記したように非水電解液を含んでいる。非水電解液は、非水溶媒と、支持塩とを含んでいる。非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の非水溶媒を、特に制限することなく用いることができる。具体的には、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)等の非水溶媒を好ましく用いることができる。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。支持塩としては、従来のこの種の非水電解液二次電池に用いられる支持塩を特に制限することなく用いることができる。例えば、LiPF,LiBF,LiAsF,LiCFSO,LiCSO,LiN(CFSO,LiC(CFSO等のリチウム塩を用いることができる。なかでも、LiPFを好ましく用いることができる。支持塩の濃度は、例えば0.7mol/L以上1.3mol/L以下にするとよい。
【0047】
ここに開示されるリチウムイオン二次電池100の非水電解液は、過充電防止剤、凍結抑制剤等を含んでいてもよいが、添加剤としてLiPFおよびLiPF(Cは、含まない。ここに開示される技術によれば、上記した添加剤を含まなくても、正極活物質層54、負極活物質層64、およびセパレータ70の各空孔体積の比を上述した範囲とすることにより、良好な抵抗特性と良好なハイレート特性とを両立する電池を提供することができる。
【0048】
以上のようにして構成されるリチウムイオン二次電池100は、各種用途に利用可能である。好適な用途としては、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。また、リチウムイオン二次電池100は、複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態でも使用され得る。その具体例としては、複数の非水電解液二次電池は、所定方向に配列され、配列方向から荷重が印加されるように拘束されている組電池が挙げられる。
【0049】
以下、組電池の構成例について説明する。図3は、ここに開示される非水電解液二次電池を用いて構成される組電池の構成を示す斜視図である。
【0050】
図3に示すように、組電池200において、複数個のリチウムイオン二次電池(単電池)100が、所定方向に配列されている。単電池100を一つずつ反転させつつ配列することにより、正極端子42および負極端子44が交互に配置されている。より詳しくは、単電池100の電池ケース10の幅広な面(幅広面)が順に対抗し、幅狭の面(幅狭面)が揃うように並べられた状態で配置されている。単電池100の間には、スペーサー110が挟み込まれている。スペーサー110は、熱を効率よく放散させるための放熱手段や、長さの調整手段として機能し得る。組電池200における単電池100の個数は特に制限はないが、例えば10個以上、好ましくは10個以上30個以下である。
【0051】
配列した単電池100の両端には、一対のエンドプレート(拘束板)120が配置されている。両方のエンドプレート120の間を架橋するように、締め付け用の拘束バンド130が取り付けられている。これにより、単電池100の配列方向に所定の拘束荷重が印加されるように複数の単電池100が拘束されている。詳しくは、拘束バンド130の端部をビス155によりエンドプレート120に締付することによって、単電池100の配列方向に所定の拘束荷重が印加されるように複数の単電池100が拘束されている。各単電池100を拘束する拘束圧は、特に限定されない。例えば、単電池100の配列方向において、0.2MPa以上(好ましくは0.5MPa以上)10MPa以下(好ましくは5MPa以下)の圧力で押圧されるように、拘束圧が設定される。
ここに開示される非水電解液二次電池においては、正極活物質層54、負極活物質層64、およびセパレータ70の各空孔体積の比を上述した範囲内に調整されることにより、所定の拘束圧で拘束された状態でハイレート充放電を繰り返した場合であっても、初期抵抗が抑制され、かつ、ハイレート充放電時の抵抗増加率が抑制される。これにより、より安全性の高い組電池200を提供することができる。
【0052】
隣接する単電池100間において、一方の正極端子42と他方の負極端子44とが、バスバー140によって電気的に接続されている。以上のようにして、各単電池100を直列に接続することにより、所望する電圧の組電池200が構築されている。
【0053】
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0054】
<評価用リチウムイオン二次電池の作成>
正極活物質粉末としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3と、導電材としてのカーボンナノチューブ(CNT)またはアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、を用意した。なお、カーボンナノチューブは、平均長さ1μm、平均直径10nmの多層カーボンナノチューブを使用した。上記した材料を、表1に示す重量比(wt%)で溶媒としてのN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、正極活物質層形成用スラリーを調整した。このスラリーを長尺状のアルミニウム箔の両面に帯状に塗布して、乾燥した後プレスすることにより、正極シートを作製した。このとき、正極活物質層の目付量とプレス条件を変更することにより、正極活物質層の単位面積当たりの空隙体積B(cm/cm)を表1に示す値となるように、それぞれ調整した。
負極活物質としての非晶質コートされた天然黒鉛(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)と、を用意した。上記した材料を、表1に示す重量比(wt%)で溶媒としてのイオン交換水と混合し、負極活物質層形成用スラリーを調整した。このスラリーを長尺状の銅箔の両面に帯状に塗布して、乾燥した後プレスすることにより、負極シートを作製した。このとき、負極活物質層の目付量とプレス条件を変更することにより、負極活物質層の単位面積当たりの空隙体積A(cm/cm)を表1に示す値となるように、それぞれ調整した。
また、セパレータとしては、PP/PE/PPの三層構造の多孔質ポリオレフィンシートを使用した。このとき、延伸の条件とプレス条件を変更することにより、セパレータの単位面積当たりの空隙体積C(cm/cm)を表1に示す値となるように、それぞれ調整した。
【0055】
上記作製した正極シートおよび負極シートと、2枚の上記用意したセパレータとを積層し、捲回した後に側面方向から押圧して拉げさせることにより、扁平形状の捲回電極体を作製した。そして、捲回電極体に正極端子および負極端子を接続し、電解液注液口を有する角型の電池ケースに収容した。続いて、電池ケースの電解液注液口から非水電解液を注液し、当該注液口を気密に封止した。なお、非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とをEC:EMC:DMC=3:4:3の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを、1.1mol/Lの濃度で溶解したものを用意した。その後、活性化処理を行って、各実施例および各比較例の評価用リチウムイオン二次電池を得た。
【0056】
<単位面積当たりの空孔体積の算出>
まず、単位面積当たりの負極活物質層の片面空孔体積Aは、以下の数式(1)~(3)から算出した。
単位面積当たりの負極活物質層の体積(cm/cm)=単位面積当たりの負極活物質層の目付量(mg/cm)×{(負極活物質の組成比/負極活物質の真密度)+(バインダの組成比/バインダの真密度)+(増粘剤の組成比/増粘剤の真密度)}・・・(1)
単位面積当たりの負極活物質層の見かけの体積(cm/cm)=負極活物質層の厚み(μm)/10000・・・(2)
単位面積当たりの負極活物質層の空孔体積A=(単位面積当たりの負極活物質層の体積)-(単位面積当たりの負極活物質層の見かけの体積)・・・(3)
また、単位面積当たりの正極活物質層の片面空孔体積Bは、以下の数式(4)~(6)から算出した。
単位面積当たりの正極活物質層の体積(cm/cm)=単位面積当たりの正極活物質層の目付量(mg/cm)×{(正極活物質の組成比/正極活物質の真密度)+(導電材の組成比/導電材の真密度)+(バインダの組成比/バインダの真密度)+(増粘剤の組成比/増粘剤の真密度)}・・・(4)
単位面積当たりの正極活物質層の見かけの体積(cm/cm)=正極活物質層の厚み(μm)/10000・・・(5)
単位面積当たりの正極活物質層の空孔体積B=(単位面積当たりの正極活物質層の体積)-(単位面積当たりの正極活物質層の見かけの体積)・・・(6)
さらに、単位面積当たりのセパレータの片面空孔体積Cは、以下の式(7)から算出した。
単位面積当たりのセパレータの体積(cm/cm)=(セパレータの膜厚(μm)/10000)×セパレータの空孔率(%)・・・(7)
上記算出した正極活物質層、負極活物質層、およびセパレータの単位面積当たりの各片面空孔体積(cm/cm)を表1および表2に示す。また、負極活物質層の単位面積当たりの空隙体積Aに対する正極活物質層の単位面積当たりの空隙体積Bの比(B/A)と、負極活物質層の単位面積当たりの空隙体積Aに対するセパレータの単位面積当たりの空隙体積Cの比(C/A)を算出した。結果を表2に示す。
【0057】

【表1】
【0058】
<初期抵抗比>
活性化処理をした各評価用リチウムイオン二次電池をSOC60%に調整し、25℃の環境下に置いた。子の各評価用リチウムイオン二次電池に対し、30Cの電流値で10秒間の放電を行った。このときの電圧下降量ΔVを取得し、電流値IとΔVとを用いて各電池の抵抗を算出した。比較例1の評価用リチウムイオン二次電池の抵抗を1.00とした場合の、他の実施例および比較例の評価用リチウムイオン二次電池の抵抗比を求めた。結果を表2に示す。
【0059】
<ハイレート抵抗増加率>
活性化処理をした各評価用リチウムイオン二次電池をSOC60%に調整し、25℃の環境下に置いた。30Cの電流値で10秒間充電、10秒間休止、10Cの電流値で300秒間放電、10秒間休止を1サイクルとする充放電を2000サイクル繰り返した。そして、初期抵抗比と同様の方法で各電池の抵抗を算出した。初期抵抗値に対する2000サイクル後の抵抗値の比から、ハイレート抵抗増加率を算出した。結果を表2に示す。
【0060】
また、負極活物質層の単位面積当たりの空隙体積Aに対する正極活物質層の単位面積当たりの空隙体積Bの比(B/A)とハイレート抵抗増加率との関係を示すグラフを図4に示す。また、負極活物質層の単位面積当たりの空隙体積Aに対するセパレータの単位面積当たりの空隙体積Cの比(C/A)とハイレート抵抗増加率との関係を示すグラフを図5に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
初期抵抗比は「1.05未満」を合格とし、ハイレート抵抗増加率は「1.15未満」を合格とした。表2および図4に示すように、導電材としてカーボンナノチューブを含み、負極活物質層の単位面積当たりの空隙体積Aに対する正極活物質層の単位面積当たりの空隙体積Bの比(B/A)が、0.6≦B/A≦1.2を満たす実施例1~11は、初期抵抗比が1.05未満、かつハイレート抵抗増加率1.15未満であることがわかる。このことから、少なくとも正極活物質と、導電材としてカーボンナノチューブと、を含む正極活物質層を備えており、正極活物質層、負極活物質層の各空孔体積の比が、0.6≦B/A≦1.2を満たす電池は、初期抵抗比が小さく、かつ、ハイレート充放電を実施した後の抵抗増加率が低いことがわかる。すなわち、ここに開示される非水電解液二次電池によれば、良好な抵抗特性と、良好なハイレート特性とを両立できることがわかる。
【0063】
また、表2および図5に示すように、実施例1~11は、負極活物質層の単位面積当たりの空隙体積Aに対するセパレータの単位面積当たりの空隙体積Cの比(C/A)が、0.6≦C/A≦0.71を満たしていることがわかる。したがって、正極活物質層、負極活物質層、セパレータの各空孔体積の比が、0.6≦B/A≦1.2を満たし、かつ、0.6≦C/A≦0.71を満たす非水電解液二次電池は、初期抵抗比が小さく、かつ、ハイレート充放電を実施した後の抵抗増加率が低いことがわかる。
【0064】
以上、ここで開示される技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0065】
10 電池ケース
20 捲回電極体
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極
52 正極集電体
52a 正極集電体露出部
54 正極活物質層
60 負極
62 負極集電体
62a 負極集電体露出部
64 負極活物質層
70 セパレータ
100 リチウムイオン二次電池(単電池)
110 スペーサー
120 エンドプレート(拘束板)
130 拘束バンド
140 バスバー
155 ビス
200 組電池
図1
図2
図3
図4
図5