(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】光学シリコーンアセンブリの製造方法、及びそれによって製造された光学シリコーンアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20231212BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20231212BHJP
B29K 85/00 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C39/10
B29K85:00
(21)【出願番号】P 2021507047
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 US2019050336
(87)【国際公開番号】W WO2020055815
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-03
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ベウケマ、マルティジン
(72)【発明者】
【氏名】コアマンス、ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ドゥビュイル、フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンテゲレン、ケビン
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-522440(JP,A)
【文献】国際公開第2010/134485(WO,A1)
【文献】特表2011-516626(JP,A)
【文献】特表2014-510801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/02-39/12
B29C 45/14
C09J 183/04-183/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学シリコーンアセンブリの製造方法であって、
i)光学的に透明なシリコーン接着剤組成物で基材の表面を処理する工程と、
i-2)前記基材の表面上の前記光学的に透明なシリコーン接着剤組成物を加熱して、前記基材上にシリコーン接着層を形成する工程と、
ii)工程i)
及び工程i-2)によって得られた前記基材を成形型に入れる工程と、
iii-a)光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物を前記成形型内に注入する工程、及び/又は
iii-b)前記光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物を前記基材上にオーバーモールドする工程と、
iv)前記光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物を加熱して、前記光学シリコーンアセンブリを形成する工程と、
を含
み、
前記光学的に透明なシリコーン接着剤組成物が、
(A)1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、100質量部のオルガノポリシロキサンと、
(B)成分(A)中のアルケニル基1モル当たりケイ素原子結合水素原子が0.1~10モルとなる量の、1分子当たり少なくとも2個の前記ケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)0.1~10質量部の接着促進剤と、
(D)組成物の硬化を促進するのに十分な量で、ヒドロシリル化反応触媒と、
を含む、付加硬化性シリコーン組成物を含み、
前記付加硬化性シリコーン組成物が、希釈溶媒として揮発性シリコーンをさらに含む、方法。
【請求項2】
前記基材が、熱可塑性樹脂を含む、又は熱可塑性樹脂で作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基材が、ガラスを含む、又はガラスで作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基材が、金属を含む、又は金属で作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記シリコーン接着層の平均厚さが
、0.01
~1mmの範囲である、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
工程iii-a)が使用される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程iii-b)が使用される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物が、付加硬化性シリコーン組成物を含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程iv)における加熱温度が
、100℃
~150℃の範囲である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月10日に出願された米国仮特許出願第62/729,036号の優先権及び全ての利点を主張するものであり、その内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、光学シリコーンアセンブリの製造方法、及びそれによって製造された光学シリコーンアセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
光学シリコーン製品は、LED照明、シリコーンライトガイドなどのためのシリコーンレンズとして使用される。光学シリコーン製品は、概して、成形型内で成形可能なシリコーン組成物を硬化させることによって製造され、次いで、光学シリコーン製品及び基材は、光学シリコーンアセンブリに組み立てられる。しかしながら、光学シリコーン製品は、概して小さな部品であるため、組み立て操作における利点のため、一体型光学シリコーンアセンブリが望ましい。
【0004】
成形可能なシリコーン組成物は、全般に既知である(特許文献1~3参照)。しかしながら、全てのこのような成形可能なシリコーン組成物に関する1つの問題は、金属成形型からのシリコーン製品の離型性に起因して、基材への接着性が不十分であることである。加えて、光学シリコーンアセンブリ中のシリコーン製品は光学的に透明である必要があるため、成形可能なシリコーン組成物中にいずれの接着促進剤も添加することは望ましくない。成形プロセスでは、金属成形型に接着することなく、基材に選択的に接着することは困難である。
【0005】
先行技術文献
特許文献
特許文献1:米国特許第8,691,910(B2)号
【0006】
特許文献2:米国特許第8,853,332(B2)号
【0007】
特許文献3:米国特許第8,859,693(B2)号
【発明の概要】
【0008】
発明が解決しようとする課題
上記を鑑みて、本発明の目的は、光学シリコーンアセンブリの離型性を低下させることなく、光学シリコーン製品が様々な種類の基材に接着する光学シリコーンアセンブリの製造方法、及びその製造方法により得られた光学シリコーンアセンブリを提供することである。
【0009】
課題の解決策
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、光学的に透明なシリコーン接着剤組成物により、光学的な成形可能なシリコーン組成物と基材との間を接着するための緩衝層を形成することができることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明の第1の実施形態は、光学シリコーンアセンブリの製造方法である。本方法は、
i)光学的に透明なシリコーン接着剤組成物で基材の表面を処理する工程と、
ii)工程i)によって得られた基材を成形型に入れる工程と、
iii-a)光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物を成形型内に注入する工程、及び/又は
iii-b)光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物を基材上にオーバーモールドする工程と、
iv)光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物を加熱して、光学シリコーンアセンブリを形成する工程と、を含む。
【0011】
様々な実施形態では、基材は、熱可塑性樹脂、ガラス、又は金属で作製される。熱可塑性基材は、ポリカーボネート(PC)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)で作製することができる。ガラス基材は、フロートガラス又は任意の他の特殊ガラスであり得る。金属基材は、銅又はアルミニウムであり得る。基材は、組み合わせ又は2つ以上の材料を含んでもよい。
【0012】
様々な実施形態では、光学的に透明なシリコーン接着剤組成物は、付加硬化性シリコーン組成物である。更なる実施形態では、付加硬化性シリコーン組成物は、
(A)1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、100質量部のオルガノポリシロキサンと、
(B)成分(A)中のアルケニル基1モル当たりケイ素原子結合水素原子が約0.1~約10モルとなる量で、1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)約0.1~約10質量部の接着促進剤と、
(D)組成物の硬化を促進するのに十分な量で、ヒドロシリル化反応触媒と、を含む。
【0013】
様々な実施形態では、付加硬化性シリコーン組成物は、揮発性シリコーンを更に含む。
【0014】
特定の実施形態では、本方法は、工程i)と工程ii)との間に、
i-2)光学的に透明なシリコーン接着剤組成物を加熱して、基材上にシリコーン接着層を形成する工程を更に含む。
【0015】
シリコーン接着層の平均厚さは、約0.01~約1mmの範囲であり得る。
【0016】
様々な実施形態では、光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物は、付加硬化性シリコーン組成物である。
【0017】
特定の実施形態では、工程iv)における加熱温度は、約100℃~約150℃の範囲である。
【0018】
本発明の別の実施形態は、上述の光学シリコーンアセンブリの製造方法によって製造された、光学シリコーンアセンブリである。
発明の効果
【0019】
本発明によれば、光学シリコーンアセンブリの離型性を低下させることなく、光学シリコーン製品が様々な種類の基材に接着する光学シリコーンアセンブリの製造方法を提供することができる。加えて、その製造方法により得られた光学シリコーンアセンブリを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の方法によって製造された光学シリコーンアセンブリの一例であるシリコーンレンズアセンブリの断面図である。
【0021】
【
図2】本発明の方法によって製造された光学シリコーンアセンブリの別の例である、複数のシリコーンレンズアセンブリの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
「含むこと(comprising)」又は「含む(comprise)」という用語は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing) essentially of)」、及び「からなる(consist(ing) of)」)という見解を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用されている「約(about)」という用語は、機器分析により測定した、又は試料を取り扱った結果としての数値のわずかな変動を、合理的に包含若しくは説明する働きをする。このようなわずかな変動は、数値の±0~25%、±0~10%、±0~5%、又は±0~2.5%程度であり得る。更に、「約」という用語は、ある範囲の値に関連する場合、数値の両方に当てはまる。更に、「約」という用語は、明確に記載されていない場合であっても、数値に当てはまることがある。
【0023】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。様々な実施形態の詳細な特徴又は態様について記載している、本明細書で依拠とされたいずれかのマーカッシュ群に関しては、異なる、特別な、及び/又は想定外の結果が、他の全マーカッシュ要素とは無関係のそれぞれのマーカッシュ群の各要素から得ることができることは理解されるべきである。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。
【0024】
本発明の様々な実施形態の記載を依拠とする任意の範囲及び部分的範囲は、独立して、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内にあることも理解されるべきであり、整数値及び/又は分数値を含む全ての範囲を、そのような値が本明細書で明確に書かれていなくても、説明し、想定することが理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、更に、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に描かれ得、これらは、個々に、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内であり、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などを本質的に含み、各部分範囲は、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けるものである。最終的に、開示した範囲内の個々の数が依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。例えば、「1~9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば3、並びに、小数点を含む個々の数(又は分数)、例えば4.1を含み、これは、依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。
【0025】
以下、本発明による光学シリコーンアセンブリの製造方法及び光学シリコーンアセンブリについて、図面を用いて説明する。
【0026】
<光学シリコーンアセンブリの製造方法>
本発明による光学シリコーンアセンブリの製造方法は、i)光学的に透明なシリコーン接着剤組成物で基材の表面を処理する工程を含む。本明細書で使用するとき、「光学的に透明」という用語は、概して、それぞれの組成物から得られたシリコーン(反応)生成物が、380nmの波長において、3.2mmで少なくとも約87%、あるいは少なくとも約89%、あるいは少なくとも約91%の透過率;450nmの波長において、3.2mmで少なくとも約89%、あるいは少なくとも約91%、あるいは少なくとも約93%の透過率;760nmの波長において、3.2mmで少なくとも約90%、あるいは少なくとも約92%、あるいは少なくとも約94%の透過率を有することを意味する。
【0027】
本発明の第1の実施形態として、
図1に示すように、基材1を光学的に透明なシリコーン接着剤組成物で処理し、光学的に透明なシリコーン接着剤組成物を硬化させて、基材1の表面上にシリコーン接着層2を形成する。基材1は限定されない。様々な実施形態では、基材1は、熱可塑性樹脂、ガラス、若しくは金属を含む、又はこれらで作製される。熱可塑性基材は、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などを含むことができ、又はこれらで作製することができる。ガラス基材は、フロートガラス又は任意の他の特殊ガラスであり得る。金属基材は、銅又はアルミニウムであり得る。熱可塑性基材は、概して、LED照明用の外側又は内側パッケージとして使用される。
【0028】
光学的に透明なシリコーン接着剤組成物は、硬化系に限定されず、系が付加硬化系、縮合硬化系、過酸化物硬化系などを含む限り、任意の系であり得る。本発明では、光学的に透明なシリコーン接着剤組成物は、当該技術分野において既知の任意の光学的に透明なシリコーン接着剤組成物から選択され得る。様々な実施形態では、光学的に透明なシリコーン接着剤組成物は、付加硬化性シリコーン組成物である。特定の実施形態では、付加硬化性シリコーン組成物は、
(A)1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、100質量部のオルガノポリシロキサンと、
(B)成分(A)中のアルケニル基1モル当たりケイ素原子結合水素原子が約0.1~約10モルとなる量で、1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)約0.1~約10質量部の接着促進剤と、
(D)組成物の硬化を促進するのに十分な量の、ヒドロシリル化反応触媒と、を含む。
【0029】
成分(A)中のケイ素原子結合アルケニル基の例、ビニル基、アリール基、ブテニル基、ペンテニル基、及びヘキセニル基である。特定の実施形態では、ケイ素原子結合アルケニル基は、ビニル基である。
【0030】
成分(A)中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合した基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、又は同様の鎖アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、又は同様のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、又は同様のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基、又は同様のアラルキル基などの一価炭化水素基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、ノナフルオロブチルエチル基、又は同様のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0031】
成分(A)の分子構造の例としては、直鎖状、環状、一部分岐を有する直鎖状、分岐状が挙げられる。特定の実施形態では、成分(A)は、得られたシリコーン製品に十分な硬度及び強度を付与することができるという観点から、少なくとも1種の分岐状オルガノポリシロキサンを含む。成分(A)の粘度は、25℃において約1~約1,000,000mPa・sであり得る。なお、本明細書において、粘度は、ASTM D 1084に従ってB型粘度計を用いて23±2℃において測定した値である。
【0032】
成分(B)中の水素原子以外のケイ素に結合した基の例としては、上記と同じ一価炭化水素基が挙げられる。成分(B)の分子構造の例としては、直鎖状、環状、一部分岐を有する直鎖状、及び分岐状が挙げられる。特定の実施形態では、成分(B)は、得られたシリコーン製品の硬度及び強度を調整するという観点から、複数の異なる構造を含む。直鎖状、環状、及び一部分岐を有する直鎖状の成分(B)の粘度は、25℃において約1~約10,000mPa・sであり得る。
【0033】
組成物中の成分(B)の配合量は、組成物を硬化させるのに十分な量であり得、成分(B)中のケイ素原子結合水素原子の量は、成分(A)中のアルケニル基1モル当たり約0.1~約10モルであり得る。成分(A)中のアルケニル基1モル当たりの成分(B)中のケイ素原子結合水素原子の量がこの範囲を下回る場合、組成物が十分に硬化しない傾向があるため望ましくない場合がある。一方、量がこの範囲を超える場合、得られたシリコーン製品の機械的強度が低下する傾向があるため、望ましくない場合がある。
【0034】
成分(C)の接着促進剤は、シリコーン製品の様々な種類の基材への接着を強化する。成分(C)は限定されないが、様々な実施形態では、1分子当たり少なくとも1つのケイ素原子結合アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物である。アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、及びメトキシエトキシ基によって例示される。特定の実施形態では、アルコキシ基は、メトキシ基である。
【0035】
更に、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を除く、有機ケイ素化合物の他の基の例としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、及びハロゲン化アルキル基などのハロゲン置換若しくは非置換の一価炭化水素基;3-グリシドキシプロピル基及び4-グリシドキシブチル基などのグリシドキシアルキル基;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基及び3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基などのエポキシシクロヘキシルアルキル基;3,4-エポキシブチル基及び7,8-エポキシオクチル基などのエポキシアルキル基;3-メタクリルオキシプロピル基などのアクリル基含有一価有機基、及び水素原子が挙げられる。
【0036】
様々な実施形態では、有機ケイ素化合物は、本組成物中にアルケニル基又はケイ素原子結合水素原子と反応し得る基を有する。具体的には、有機ケイ素化合物は、ケイ素原子結合水素原子又はアルケニル基を有することができる。更に、様々な種類の基材に対して良好な接着性を付与する能力により、この有機ケイ素化合物は、分子中に少なくとも1つの、エポキシ基含有一価有機基を有することができる。この種類の有機ケイ素化合物は、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサンオリゴマー、及びアルキルシリケートによって例示される。
【0037】
オルガノシロキサンオリゴマー又はアルキルシリケートの分子構造の例としては、直鎖構造、一部分岐を有する直鎖構造、分岐鎖構造、環状構造、及びネット形状構造が挙げられる。特定の実施形態では、分子構造は、直鎖構造、分岐状構造、又はネット形状構造である。この種類の有機ケイ素化合物の例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及び3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物;ケイ素原子結合アルケニル基又はケイ素原子結合水素原子のうちの少なくとも1つ、及び少なくとも1つのケイ素原子結合アルコキシ基を分子中に有するシロキサン化合物;少なくとも1つのケイ素原子結合アルコキシ基を有するシラン化合物若しくはシロキサン化合物と、又は分子中に少なくとも1つのケイ素原子結合水酸基と少なくとも1つのケイ素原子結合アルケニル基とを有するシロキサン化合物と、の混合物;並びにメチルポリシリケート、エチルポリシリケート、及びエポキシ基含有エチルポリシリケートが挙げられる。様々な実施形態では、接着付与剤は低粘度の液体であり、粘度は限定されない。更なる実施形態では、25℃における粘度は、約1~約500mPa・sの範囲である。
【0038】
組成物中の成分(C)の配合量は、成分(A)100質量部当たり、約0.1~約10質量部の範囲であり得る。更なる実施形態では、成分(C)は、成分(A)100質量部当たり、約0.1~約5質量部、あるいは約0.5~約2.5質量部、あるいは約0.5~約1質量部の量で存在する。
【0039】
成分(D)のヒドロシリル化反応触媒は、組成物の架橋を促進するための触媒である。特定の実施形態では、触媒は白金系触媒である。白金系触媒の例としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金黒、及び白金担持シリカが挙げられる。その配合量は、組成物中の白金金属として、質量単位で約1~約1,000ppmであり得る。特定の実施形態では、この量は、硬化性シリコーン組成物の硬化を促進する観点から約5ppm以上であり、得られたシリコーン製品の耐熱性を高める観点から約100ppm以下である。
【0040】
組成物が含有し得る他の任意選択成分の例としては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、又は同様のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、及び3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン、又は同様のエン-イン化合物;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、及びベンゾトリアゾールなどのヒドロシリル化反応阻害剤が挙げられる。使用される場合、ヒドロシリル化反応阻害剤の含有量は、質量単位で組成物の約10~約50,000ppmであり得る。
【0041】
組成物が含有し得る他の任意選択成分の例としては、光学的に透明なシリコーン接着剤組成物を希釈するための揮発性シリコーンが挙げられる。揮発性シリコーンの例としては、ジメチルシクロシロキサンオリゴマー、メチルビニルシクロシロキサンオリゴマー、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンなどが挙げられる。
【0042】
組成物中の揮発性シリコーンの配合量は限定されないが、様々な実施形態では、組成物の約1~約85質量%の範囲である。希釈倍率は、接着剤組成物の適用モード、すなわち、例えば、ブラッシング、噴霧、又はディップコーティングに応じて調整される。
【0043】
本発明による方法では、光学的に透明なシリコーン接着剤組成物は、光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物を基材(例えば、熱可塑性基材)の周辺の周囲に接触させるような位置に配置される。
【0044】
工程i)と工程ii)との間に、本発明による方法は、i-2)光学的に透明なシリコーン接着剤組成物を加熱して、基材上にシリコーン接着層を形成する工程を含んでもよい。加熱温度は特に限定されないが、光学的に透明なシリコーン接着剤組成物の良好な硬化は、概して室温~約200℃の温度で得られる。特定の実施形態では、約60℃~約180℃の温度での硬化が使用され、更なる実施形態では、接着剤シリコーン層と基材との間の強力な接着をもたらすので、約80℃~約150℃の温度での硬化が使用される。
【0045】
更に、接着剤シリコーン層と基材との間の接着性が場合によっては更に改善されるため、室温~約100℃、あるいは約60℃~約80℃の温度で複合材料を加熱し、次いで、約80℃~約180℃、あるいは約100℃~約150℃の温度で加熱する、段階的な硬化を使用してもよい。加熱後のシリコーン接着層の状態は限定されないが、半硬化状態又は完全硬化状態であり得る。
【0046】
本発明による方法では、シリコーン接着層の平均厚さは限定されないが、様々な実施形態では、約0.01~約1mmの範囲、あるいは約0.02~約0.5mmの範囲、あるいは約0.05~約0.2mmの範囲である。
【0047】
次に、本発明による方法は、ii)工程i)によって得られた基材を成形型に入れる工程を含む。成形型は限定されないが、様々な実施形態では、ステンレス鋼成形型などの金属成形型である。
【0048】
次に、本発明による方法は、iii-a)光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物を成形型内に注入する工程を含む。iii-a)に代えて又はそれに加えて、本発明による方法は、iii-b)光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物を基材上にオーバーモールドする工程を含む。工程iii-a)はまた、光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物の成形型内への射出成形又は圧縮成形と呼ばれることもある。
【0049】
光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物は、硬化系に限定されず、系が付加硬化系、縮合硬化系、過酸化物硬化系などを含む限り、任意の系であり得る。様々な実施形態では、光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物は、付加硬化性シリコーン組成物である。特定の実施形態では、付加硬化性シリコーン組成物は、1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと;1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと;ヒドロシリル化反応触媒と、に任意に当該技術分野において理解される1つ以上の添加剤と、を含む。このような成分の例は、成分(A)、(B)、及び(D)について上述したとおりである。特定の実施形態では、光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物は、上記のような透過特性;約10~約50、あるいは約15~約45、あるいは約25Pa・sの粘度(混合);及び/又は約45~約90、あるいは約55~約80、あるいは約65~約75のショアA硬度;及び/又は約5~約15、あるいは約10~約15、あるいは約12~約15MPaの引張強さ;及び/又は約50~約350、あるいは約60~約200、あるいは約70~約100%の伸び;及び/又は約1.35~約1.5、あるいは約1.4~約1.45、あるいは約1.4の約633nmにおける屈折率を有する、2部のポリジメチルシロキサン系である。
【0050】
光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物は、当該技術分野において既知の任意の光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物から選択され得る。その例としては、Dow Silicones Corporation(Midland,MI)からDOWSIL(商標)MS-1001 Moldable Silicone、DOWSIL(商標)MS-1002 Moldable Silicone、及びDOWSIL(商標)MS-1003 Moldable Silicone、又はこれらの任意の組み合わせを含む、商品名/名称「DOWSIL(商標)MS」で市販されている成形可能なシリコーンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
次に、本発明による方法は、iv)光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物を加熱して、光学シリコーンアセンブリを形成する工程を含む。加熱温度は特に限定されないが、光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物の良好な硬化は、概して室温~約200℃の温度で得られる。特定の実施形態では、約60℃~約180℃の温度での硬化が使用され、更なる実施形態では、接着剤シリコーン層と光学シリコーンとの間の強力な接着をもたらすので、約80℃~約150℃の温度での硬化が使用される。
【0052】
更に、接着剤シリコーン層と光学シリコーンとの間の接着性が場合によっては更に改善されるため、室温~100℃、あるいは約60℃~約80℃の温度で複合材料を加熱し、次いで、約80℃~約180℃、あるいは約100℃~約150℃の温度で加熱する、段階的な硬化を使用してもよい。基材が熱可塑性樹脂である場合、熱可塑性基材の変形を防止するために、硬化温度は熱可塑性基材の融解温度を超えない必要がある。ガラス又は金属上へのオーバーモールドの場合、成形温度の上限は存在しない。
【0053】
<光学シリコーンアセンブリ>
ここで、本発明の光学シリコーンアセンブリについて説明する。本発明による光学シリコーンアセンブリは、上記の製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0054】
本発明のこのような光学シリコーンアセンブリの例は、LED照明用の外側パッケージである(
図1及び
図2を参照)。
図1の光学シリコーンアセンブリにおいて、それは、基材1、シリコーン接着層2、及び光学シリコーン(シリコーンレンズ)3で構成される。基材1は、光学シリコーンアセンブリのフレーム材料(パッケージング材料)として機能し、シリコーン接着層2は、光学シリコーン(シリコーンレンズ)3の接着剤緩衝層として機能する。
図2の光学シリコーンアセンブリにおいて、それは、基材1、シリコーン接着層2、及び複数の光学シリコーン(シリコーンレンズ)3で構成される。
図2の光学シリコーンアセンブリにおいて、2つの光学シリコーン3が存在するが、これに限定されず、2つ以上であり得る。
【実施例】
【0055】
ここで、本発明の光学シリコーンアセンブリの製造方法及び光学シリコーンアセンブリについて、実施例を用いて詳細に説明する。実施例では、粘度は25℃における値である。
【0056】
<実施例1>
第1の一連の実施例では、使用される基材は、フロート法によるガラス(floated glass)であった。シリコーン接着層を、シリコーン溶媒中95%、91%、67%、及び17%の光学的に透明なシリコーン接着剤組成物を、揮発性シリコーン溶媒としてオクタメチルトリシロキサンで希釈して適用した。
【0057】
実施例では、光学的に透明なシリコーン接着剤組成物は、以下を均一になるまで混合することによって調製した。
26質量部の樹脂性オルガノポリシロキサンであって、ViMe2SiO1/2シロキサン単位、Me3SiO1/2シロキサン単位、及びSiO4/2シロキサン単位からなり、ビニル基含有量が4.2質量%である、樹脂性オルガノポリシロキサン(式中、「Vi」はビニル基であり、「Me」はメチル基である);
40質量部の、分子両末端にてジメチルビニルシロキシ基で保護されたジメチルポリシロキサンであって、10,000mPa・sの粘度を有し、ビニル基含有量が0.13質量%である、ジメチルポリシロキサン;
29質量部の、分子両末端にてジメチルビニルシロキシ基で保護されたジメチルポリシロキサンであって、400mPa・sの粘度を有し、ビニル基含有量が0.44質量%である、ジメチルポリシロキサン;
4.2質量部の、分子両末端にてトリメチルシロキシ基で保護されたメチルハイドロジェンポリシロキサンであって、20mPa・sの粘度を有し、ケイ素原子結合水素原子含有量が1.5質量%である、メチルハイドロジェンポリシロキサン(上記3つのポリシロキサン中のビニル基の合計量1モル当たり、この成分中のケイ素原子結合水素原子が1.3モルとなる量);
0.10質量部の、白金/1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(約6,000ppmの白金金属を含有);及び
0.5質量部の、ケイ素結合ヒドロキシル基で保護されたメチルビニルシロキサン-ジメチルシロキサンオリゴマーと接着促進剤としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの反応混合物。
【0058】
次に、2つの適用方法を試験した。ガラス基材上で、溶液を含浸させたティッシュペーパーで液体をワイピング、又は低圧エアログラフ装置を使用して、ガラス基材上に空気圧で噴霧。次いで、接着層を150℃で5~20分間空気循環オーブン内に放置して乾燥させて、厚さ0.1mmのシリコーン接着層を形成した。接着層を乾燥させた後、光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物を用いたオーバーモールディングを、120~180℃の温度で15~30分間、20~100バールの圧力のプレス成形型内で実施した。光学的に透明な(例えば、380nmにおける透過率が、3.2mmで89%、450nmにおける透過率が3.2mmで91%;及び760nmにおける透過率が、3.2mmで94%)成形可能なシリコーン組成物は、中粘度(例えば、約26Pa・s混合)であり、高(例えば、約72~74)ショアA硬度であり、2部(比1:1)の迅速硬化(例えば、140℃、6×12×125mmでの硬化/離型時間が<60秒)ポリジメチルシロキサン樹脂であり、これは、Dow Silicones Corporationから市販されている。結果から、光学シリコーンを剥離した後、凝集破壊が観察されたため、光学シリコーン/ガラス基材界面にわたって接着が良好に行われたことが示された。
【0059】
<比較例>
実施例1のシリコーン接着層を、既知の市販のシリコーンプライマー溶液に置き換えた比較例では、良好な結果を示さなかった。比較例では、以下の市販材料を使用した。
・DOWSIL(商標)1200 OS Primer
・DOWSIL(商標)P5200 Primer Clear
・DOWSIL(商標)92-023 Primer
・91%、83%、及び67%が有効な揮発性シリコーン溶媒中に希釈された3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0060】
<実施例2>
第2の一連の実施例では、シリコーン接着層を、シリコーン溶媒中実施例1で調製された67%の光学的に透明なシリコーン接着剤組成物を、揮発性シリコーン溶媒としてオクタメチルトリシロキサンで希釈することにより適用し、溶液を噴霧することにより適用し、150℃で5~20分間空気循環オーブン内で乾燥させて、厚さ0.1mmのシリコーン接着層を形成し、続いて、光学的に透明な成形可能なシリコーン組成物(実施例1と同じ)を用いたオーバーモールディングを、120~180℃の温度で15~30分間、20~100バールの圧力のプレス成形型内で実施した。良好な接着評価(すなわち、基材と光学シリコーンとの間の界面における凝集破壊)を有する結果を、以下の基材で得た。
・ポリカーボネート(PC)(Bayer MaterialScience AG製のMAKROLON(登録商標)AL2447)
・ポリブチレンテレフタレート(PBT)(Ticona GmbH製のCELANEX(登録商標)3709HR Black)
・PBT(BASF Corp.製のULTRADUR(登録商標)B4300 G6Q16 Black)
・ガラス繊維強化エポキシ(FR4)
・アルマイトAlMg(参照5005 E6EV1)
・アルミニウムAlMg3(参照5753)
・銅
【0061】
産業上の利用可能性
本発明によれば、光学シリコーン製品が様々な種類の基材に接着する光学シリコーンアセンブリの製造方法を提供することができる。したがって、本方法は、LED照明用のシリコーンレンズアセンブリを製造するのに好適である。
参照番号リスト
1 基材
2 シリコーン接着層
3 光学シリコーン(シリコーンレンズ)