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特許7401526レジオネラ(Legionella)用の木炭非含有培地
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  • 特許-レジオネラ(Legionella)用の木炭非含有培地 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】レジオネラ(Legionella)用の木炭非含有培地
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20231212BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12Q1/04
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021509971
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 GB2019052382
(87)【国際公開番号】W WO2020039213
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】1813884.2
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519258068
【氏名又は名称】セクレタリー オブ ステート フォー ヘルス アンド ソーシャル ケア
【氏名又は名称原語表記】SECRETARY OF STATE FOR HEALTH AND SOCIAL CARE
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】チョーカー,ヴィクトリア ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】スピラー,オーウェン ブラッド
(72)【発明者】
【氏名】ポータル,エドワード
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-309189(JP,A)
【文献】特開2006-280219(JP,A)
【文献】特開昭60-199398(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0023925(US,A1)
【文献】特表2012-505648(JP,A)
【文献】Robert Armon & Pierre Payment,A transparent medium for isolation of Legionella pneumophia from environmental water sources,Journal of Microbiological Methods,1990年,vol. 11,no. 1,p. 65-71
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジオネラ(Legionella)を培養するための木炭非含有固形寒天培地であって、
(a)1%~35%(v/v)の濃度で存在する血清;
(b)窒素源;及び
(c)鉄源を含む、木炭非含有固形寒天培地。
【請求項2】
前記窒素源が、酵母エキス、牛肉エキス、肝エキス、カゼイン加水分解物、植物細胞エキス、大豆エキス、又はそれらの任意の組み合わせから選択される1つ又は複数であり、好ましくは、アミノ酸源が酵母エキスである、請求項1に記載の木炭非含有固形寒天培地。
【請求項3】
前記鉄源が、鉄キレート及び/又はピロリン酸第2鉄である、請求項1または2に記載の木炭非含有固形寒天培地。
【請求項4】
(a)前記寒天が、0.2%~5%(w/v)の濃度で存在し;
(b)前記窒素源が、0.2%~10%(w/v)の濃度で存在し;及び/又は
(c)前記鉄源が、0.01%~0.1%(w/v)の濃度で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の木炭非含有固形寒天培地。
【請求項5】
前記木炭非含有固形寒天培地が:
(a)緩衝剤、好ましくはN-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)緩衝剤、水酸化カリウム、又はそれらの組み合わせ;
(b)α-ケトグルタル酸;及び/又は
(c)システイン
から選択される1つ又は複数の薬剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の木炭非含有固形寒天培地。
【請求項6】
(a)前記緩衝剤が、1mM~500mMの濃度で存在し;
(b)前記α-ケトグルタル酸が、0.001%~1%(w/v)の濃度で存在し;及び/又は
(c)前記システインが、1%~10%(w/v)の濃度で存在する、請求項5に記載の木炭非含有固形寒天培地。
【請求項7】
前記血清が、ウマ血清、ヒツジ血清、ヤギ血清、ウシ血清、ウシ胎児血清、仔ウシ血清、マウス血清、ラット血清、ブタ血清、モルモット血清、ブタ血清、及びウサギ血清から選択される1つ又は複数である、請求項1~6のいずれか一項に記載の木炭非含有固形寒天培地。
【請求項8】
前記血清がウマ血清である、請求項1~7のいずれか一項に記載の木炭非含有固形寒天培地。
【請求項9】
前記レジオネラ(Legionella)が、L.アデライデンシス(L. adelaidensis)、L.アニサ(L. anisa)、L.ベリアルデンシス(L. beliardensis)、L.ビルミンガメンシス(L. birminghamensis)、L.ボゼマナエ(L. bozemanae)、L.ブルネンシス(L. brunensis)、L.ブサネンシス(L. busanensis)、L.チェルリ(L. cherrii)、L.シンシナチエンシス(L. cincinnatiensis)、L.ドナルドンシイ(L. donaldsonii)、L.ドレスデンシス(L. dresdenensis)、L.デュモフィ(L. dumoffii)、L.エリスラ(L. erythra)、L.フェアフィールデンシス(L. fairfieldensis)、L.フェエレイ(L. feeleii)、L.ゲエスチアナ(L. geestiana)、L.ゴルマニイ(L. gormanii)、L.グラチアナ(L. gratiana)、L.グレシレンシス(L. gresilensis)、L.ハッケリアエ(L. hackeliae)sg1、L.インプレチソリ(L. impletisoli)、L.イスラエレンシス(L. israelensis)、L.ジャメストウニエンシス(L. jamestowniensis)、L.ジョルダニス(L. jordanis)、L.ランシンジェンシス(L. lansingensis)、L.ロンジニエンシス(L. londiniensis)、L.ロングビーカエ(L. longbeachae)、L.マセアチェルニイ(L. maceachernii)、L.ミクダデイ(L. micdadei)、L.ミクダデイ(L. micdadei)、L.モラビカ(L. moravica)、L.ニューモフィラ(L. pneumophila)、L.ナガサキエンシス(L. nagasakiensis)、L.タウリネンシス(L. taurinensis)、L.ワドスワルチイ(L. wadsworthii)、L.ヤブウチアエ(L. yabuuchiae)の1つ又は複数から選択され;好ましくは、前記レジオネラ(Legionella)はL.ニューモフィラ(L. pneumophila)である、請求項1~8のいずれか一項に記載の木炭非含有固形寒天培地。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の木炭非含有固形寒天培地でレジオネラ(Legionella)を培養することを含む、レジオネラ(Legionella)を培養するためのインビトロ方法。
【請求項11】
レジオネラ(Legionella)を培養するための木炭非含有固形寒天培地の使用であって、前記木炭非含有固形寒天培地が請求項1~9のいずれか一項に記載の木炭非含有固形寒天培地である、使用。
【請求項12】
レジオネラ(Legionella)の増殖を抑制するのに適した抗生物質を同定するためのスクリーニング方法であって:
(a)レジオネラ(Legionella)を、請求項1~9のいずれか一項に記載の木炭非含有固形寒天培地と接触させて試験サンプルを用意すること;
(b)候補抗生物質の存在下で前記試験サンプルをインキュベートすること;並びに
(c)インキュベーション後の前記試験サンプル中の前記レジオネラ(Legionella)の細菌負荷が対照サンプル中のレジオネラ(Legionella)の細菌負荷よりも低い場合、前記候補抗生物質をレジオネラ(Legionella)の増殖を抑制するのに適切であるとして識別すること;又は
(d)インキュベーション後の前記試験サンプル中の前記レジオネラ(Legionella)の前記細菌負荷が対照サンプル中のレジオネラ(Legionella)の細菌負荷と同じかそれよりも大きい場合、前記候補抗生物質をレジオネラ(Legionella)の増殖を抑制するのに不適切であるとして識別することを含み、
工程(c)及び工程(d)において、前記対照サンプルは、前記候補抗生物質の非存在下でインキュベートされる、方法。
【請求項13】
レジオネラ(Legionella)を培養するための木炭非含有固形寒天培地、及び/又はレジオネラ(Legionella)を培養するための木炭非含有固形寒天培地を調製するための試薬を含むキットであって:
(a)前記木炭非含有固形寒天培地が請求項1~9のいずれか一項に記載の木炭非含有固形寒天培地であり;又
(b)前記試薬が:
i.寒天;
ii.1%~35%(v/v)の濃度で存在する血清を含む木炭非含有固形寒天培地を提供するための血清;
iii.窒素源;及び
iv.鉄源を含み;且つ
前記キットが、1%~35%(v/v)の濃度で存在する血清を含む前記木炭非含有固形寒天培地でレジオネラ(Legionella)を培養するための説明書をさらに含む、キット。
【請求項14】
レジオネラ(Legionella)を培養するための、請求項13に記載のキットの使用。
【請求項15】
工程(c)及び/又は工程(d)で得られたデータを適切なデータキャリアに記録する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
レジオネラ(Legionella)を培養するための木炭非含有固形寒天培地であって:
(a)1%~35%(v/v)の濃度で存在する血清;
(b)窒素源;及び
(c)鉄源を含み;
前記木炭非含有固形寒天培地をNCTC 11233及びNCTC 11406から選択された1つ又は複数のL.ニューモフィラ(L. pneumophila)株と接触させた後、前記木炭非含有固形寒天培地が、対照固形寒天培地と比較して、より大きな細菌負荷の形成をサポートし、前記対照固形寒天培地が、木炭も血清も含まず;
前記細菌負荷の形成が:
i.NCTC 11233及びNCTC 11406から選択される1つ又は複数のL.ニューモフィラ(L. pneumophila)株を:
A.試験サンプルを用意するために前記木炭非含有固形寒天培地と接触させること;及び
B.対照サンプルを用意するために前記対照固形寒天培地と接触させること:
ii.前記試験サンプル及び前記対照サンプルを37℃で3日間インキュベートすること;
iii.インキュベーション後の前記試験サンプルの細菌負荷を、インキュベーション後の前記対照サンプルの細菌負荷と比較すること;並びに
iv.前記試験サンプルの細菌負荷が前記対照サンプルの細菌負荷よりも高い場合、前記木炭非含有固形寒天培地が、前記対照固形寒天培地と比較してより大きな細菌負荷の形成をサポートすることを確認することを含むアッセイによって測定される、木炭非含有固形寒天培地。
【請求項17】
前記対照固形寒天培地が:
(a)1~2%(w/v)の濃度の寒天;
(b)1~2%(w/v)の濃度のプロテオースペプトン;
(c)2~4%(w/v)の濃度のアルブミン;
(d)0.05~0.2%(w/v)の濃度の酵母エキス;
(e)0.5~2%(w/v)の濃度のACES緩衝剤;
(f)0.01~0.05%(w/v)の濃度のピロリン酸第2鉄;及び
(g)0.05~0.2%(w/v)の濃度のα-ケトグルタル酸を含む、請求項16に記載の木炭非含有固形寒天培地。
【請求項18】
レジオネラ(Legionella)を培養するための木炭非含有固形寒天培地を製造するための方法であって、以下の成分:
(a)寒天溶液;
(b)1%~35%(v/v)の血清濃度を提供するための血清;
(c)窒素源;及び
(d)鉄源を組み合わせて混合物を用意すること;並びに
前記混合物を固化させて木炭非含有固形寒天培地を用意することを含む、方法。
【請求項19】
(a)前記寒天が、0.5%~2%(w/v)の濃度で存在し;
(b)前記窒素源が、0.2%~10%(w/v)の濃度で存在し、及び/又は
(c)前記鉄源が0.01%~0.1%(w/v)の濃度で存在する、請求項16~18のいずれか一項に記載の木炭非含有固形寒天培地又は方法。
【請求項20】
抗生物質アジスロマイシンが、前記木炭非含有固形寒天培地で培養されたレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)菌に対して0.02~0.04μg/mlのMIC50を有し、前記MIC50が、
(a)レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)の培養物を、0.02~0.04μg/mlの濃度の抗生物質アジスロマイシンを含む、前記木炭非含有固形寒天培地の第1のサンプルと接触させること;
(b)前記レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)の培養物を、前記木炭非含有固形寒天培地の、抗生物質アジスロマイシンを含まない第2のサンプルと接触させること;
(c)前記第1のサンプル及び前記第2のサンプルを37°Cで5日間インキュベートすること;及び
(d)前記抗生物質アジスロマイシンが、前記第1のサンプルの細菌負荷が前記第2のサンプルの細菌負荷よりも少なくとも50%低い場合、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)菌に対して0.02~0.04μg/mlのMIC50を有することを確認することを含むアッセイによって測定され;好ましくは、前記第1のサンプルの細菌負荷が、前記第2のサンプルの細菌負荷よりも50%低い、請求項16又は17に記載の木炭非含有固形寒天培地。
【請求項21】
(a)前記木炭非含有固形寒天培地で培養されたレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)菌が、緩衝酵母エキス及び水に溶解したウマ血液を含む、無血清の対照固形寒天培地で同等の条件下で培養されたレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)菌と比較したときに、抗生物質アジスロマイシンに対する感受性が増加している、請求項20に記載の木炭非含有固形寒天培地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、抗生物質をスクリーニングするのに適した固形培地で細菌を培養するための方法、及び細菌を抑制するためのアルカリ土類金属及び/又はアルカリ金属の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
レジオネラ(Legionella)属は、感染すると「レジオネラ症(legionellosis)」(レジオネラ(Legionella)によって引き起こされるすべての疾患を含む総称)を引き起こす、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)種を含むグラム陰性菌の病原性群である。そのような疾患には、レジオネラ症(Legionaires’disease)と呼ばれる肺炎型の病気や、ポンティアック熱と呼ばれる軽度のインフルエンザ様の病気が含まれる。レジオネラ(Legionella)は、典型的には水生細菌であり、冷却塔、スイミングプール、家庭用給水システム、及びシャワー、製氷機、冷蔵キャビネット、ジャグジー、温泉、及び噴水などの場所で繁殖する。
【0003】
レジオネラ(Legionella)の培養(例えば、レジオネラ(Legionella)の検出、及び/又はレジオネラ(Legionella)を有する対象の診断のための)は、適切な培養方法及び手段が存在しないため不安定である。関連する問題には、新規のレジオネラ(Legionella)抗生物質及び殺生物剤のスクリーニングの困難さが含まれる。これは、レジオネラ(Legionella)における抗生物質耐性の発生のリスクが公衆衛生上の重大な懸念を表し、新規の抗生物質を同定する必要があるため特に問題である。現在、プレート上(例えば、固形培地上)でのレジオネラ(Legionella)の培養は、現在は緩衝木炭酵母エキス(BCYE:Buffered Charcoal Yeast Extract)寒天培地の使用に依存している。BCYE培地は、レジオネラ(Legionella)の単離及び培養の絶対的基準になっているが、この培地に使用される木炭(木炭が使用されない場合はレジオネラ(Legionella)の増殖を阻害する未確認の毒素を吸収するために必要であると考えられている)が、抗生物質を非特異的に吸収するという欠点がある。木炭は、培地中の抗生物質を吸収することにより、抗生物質が細菌に接触して毒性を発揮するのを防止し、従って、レジオネラ(Legionella)の増殖に対する抗生物質(例えば、スクリーニングするべき候補抗生物質)の影響の解明を妨げる。
【0004】
しかしながら、木炭の非存在下でレジオネラ(Legionella)を培養する以前の試みは、例えば、緩衝酵母エキス(Buffered Yeast Extract)ブロスでの液体培養の使用に依存していた。そのような培養は、固形培地(例えば、寒天プレート)で可能な自動化されたハイスループットスクリーニング方法論を可能にせず、ブロスとの接触後にスクリーニング装置の滅菌を必要とする。しかしながら、さらなる固形培養の方法及び手段の開発は、感受性の高いレジオネラ(Legionella)菌に毒性がないはずである培地成分(例えば、添加物及び成分)の知識不足に悩まされてきた。
【0005】
本発明は、上述の問題の1つ又は複数を解決する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、木炭を必要とせずに、寒天由来毒素の存在下、固形培地でレジオネラ(Legionella)の培養を可能にする、木炭非含有固形寒天培地を提供する。そのような毒素は、遊離脂肪酸及び/又はフリーラジカルであると考えられている。培地に使用される寒天の特別な処理は必要ない。例えば、寒天を水で洗う必要はない。これは非常に有利であり、洗浄によって生じ得る寒天(例えば、オートクレーブ処理された寒天)の無菌性の低下を防止する。
【0007】
本発明は、血清を含む寒天ベースの固形培地から木炭を省いてもよく、血清がレジオネラ(Legionella)の寒天上での増殖を可能にする(例えば、寒天由来毒素の存在下で)という驚くべき発見に基づいている。これは、以前は、固形培養では木炭が(木炭が使用されない場合はレジオネラ(Legionella)の増殖を阻害する未確認の毒素を吸収するため)寒天ベースの培地に必要な成分であると考えられていたため、非常に予想外のことであった。このため、木炭は抗生物質も吸収するという事実にもかかわらず、従来技術で日常的に使用されている(例えば、必要とされている)。本発明の木炭非含有固形寒天培地は、有利にその中の抗生物質の活性を(例えば、有意に)阻害しない。従って、木炭非含有固形寒天培地は、抗菌剤に対する細菌の感受性を決定する際(例えば、抗生物質のスクリーニング中)にレジオネラ(Legionella)を培養するのに特に適している。
【0008】
一態様では、本発明は、木炭非含有固形寒天培地でレジオネラ(Legionella)菌を培養することを含む、レジオネラ(Legionella)を培養するためのインビトロ方法を提供し、この木炭非含有固形寒天培地は:
(a)1%~35%(v/v)の濃度で存在する血清;
(b)窒素源;及び
(c)鉄源を含む。
【0009】
「インビトロ」という用語は、レジオネラ(Legionella)のエクスビボ培養を包含する。
【0010】
本発明の別の態様は、レジオネラ(Legionella)を培養するための木炭非含有固形寒天培地の使用を提供し、この木炭非含有固形寒天培地は:
(a)1%~35%(v/v)の濃度で存在する血清;
(b)窒素源;及び
(c)鉄源を含む。
【0011】
本発明のさらなる態様は、レジオネラ(Legionella)を培養するための木炭非含有固形寒天培地を提供し、この木炭非含有固形寒天培地は:
(a)1%~35%(v/v)の濃度で存在する血清;
(b)窒素源;及び
(c)鉄源を含む。
【0012】
さらに別の態様では、レジオネラ(Legionella)を培養するための木炭非含有固形寒天培地を製造するための方法が提供され、この方法は、以下の成分:
(a)寒天溶液;
(b)1%~35%(v/v)の血清濃度を提供する血清;
(c)窒素源;及び
(d)鉄源を組み合わせて混合物を用意すること;並びに
この混合物を固化させて、木炭非含有固形寒天培地の用意を可能にすることを含む。
【0013】
本発明は、前記製造方法によって得ることができるレジオネラ(Legionella)を培養するための木炭非含有固形寒天培地を包含する。
【0014】
別の態様では、レジオネラ(Legionella)の増殖を抑制するのに適した抗生物質を同定するためのスクリーニング方法が提供され、このスクリーニング方法は:
(a)レジオネラ(Legionella)菌を、以下を含む木炭非含有固形寒天培地と接触させて試験サンプルを用意すること:
i.1%~35%の濃度で存在する血清;
ii.窒素源;及び
iii.鉄源;
(b)候補抗生物質の存在下で試験サンプルをインキュベートすること;並びに
(c)インキュベーション後の試験サンプル中の前記レジオネラ(Legionella)の細菌負荷が対照サンプル中のレジオネラ(Legionella)の細菌負荷よりも低い場合、前記候補抗生物質をレジオネラ(Legionella)の増殖を抑制するのに適切であるとして識別することであって、対照サンプルが、前記候補抗生物質の非存在下でインキュベートされる、識別すること;又は
(d)インキュベーション後の試験サンプル中の前記レジオネラ(Legionella)の細菌負荷が対照サンプル中のレジオネラ(Legionella)の細菌負荷と同じかそれよりも大きい場合、前記候補抗生物質をレジオネラ(Legionella)の増殖を抑制するのに不適切であるとして識別することであって、対照サンプルが、前記候補抗生物質の非存在下でインキュベートされる、識別することを含む。
【0015】
「細菌負荷」という用語は、細菌細胞の集団を意味し、細菌コロニーの密度及び/又はサイズを決定することによって測定することができる。
【0016】
有利なことに、木炭非含有固形寒天培地を、寒天由来毒素の存在下でレジオネラ(Legionella)を培養するために使用することができる。「寒天由来毒素」という用語は、寒天、典型的にはオートクレーブ処理後の寒天中に存在する未確認の毒素を指す。前記毒素は、レジオネラ(Legionella)の増殖を阻害/抑制し、そして従来技術の培地は、寒天由来毒素を吸収するために木炭(例えば、活性炭)を使用してきた。驚くべきことに、本発明者らは、本発明の培地が、培地中の動物血清の存在により、そのような毒素の存在下、培地でのレジオネラ(Legionella)の増殖を支持できることを見出した。前記培地は、増殖を支持するために木炭(例えば、活性炭)の存在に依存しない。
【0017】
さらに、本発明の木炭非含有固形寒天培地(例えば、培地)は、そのような毒素を除去するために寒天の洗浄(例えば、オートクレーブ処理後の)を必要としない。これは、有利なことに、環境に優しくない、寒天から毒素を洗い流すために過剰な量の水を使用する必要がない。
【0018】
本発明の木炭非含有固形寒天培地は、好ましくは、木炭の非存在下でレジオネラ(Legionella)を培養するための手段を提供する。一実施形態では、本発明の木炭非含有固形寒天培地は木炭を含まない。好ましい実施形態では、本発明の木炭非含有固形寒天培地は活性炭を含まない。
【0019】
「木炭」という用語は、吸着及び/又は化学反応に利用できる、体積が小さい細孔(例えば、表面積を増加させる)を有するように処理された炭素の形態を意味する。木炭は、例えば、Pan,M.&Staden,J..Plant Growth Regulation (1998) 26:155(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、一般的に使用される培地の成分である。本明細書に記載の木炭は活性炭であり得る。
【0020】
「木炭非含有」という用語は、木炭非含有固形寒天培地が、活性炭などの木炭を実質的に含まないことを意味する。木炭非含有固形寒天培地が木炭を実質的に含まない一実施形態では、木炭非含有固形寒天培地は、(固形微生物培地の総体積の)1%未満の木炭濃度;例えば、0.8%未満、0.6%未満、0.4%未満、又は0.2%未満の濃度を含む。
【0021】
従って、一実施形態では、「木炭を実質的に含まない」という用語は、1%(w/v)未満の木炭濃度;例えば、0.8%(w/v)未満、0.6%(w/v)未満、0.4%(w/v)未満、又は0.2%(w/v)未満の濃度を意味する。
【0022】
木炭非含有固形寒天培地が木炭を実質的に含まない好ましい実施形態では、木炭非含有固形寒天培地は、0.1%(w/v)未満の木炭濃度;より好ましくは、0.08%(w/v)未満、0.06%(w/v)未満、0.04%(w/v)未満、又は0.02%(w/v)未満の濃度を含む。
【0023】
「血清」という用語は、「血液から単離された血清」という用語と同義的に使用することができる。従って、「血清」という用語は、好ましくは、固まった(例えば、凝固した)血液から得られる/収集される血液(例えば、全血)の液体画分を意味する。
【0024】
血清は、血液サンプルを凝固させ(例えば、固め)、続いて、好ましくは遠心分離によって、残りの血液成分/画分(例えば、赤血球)から血清を分離することによって、血液から得ることができる。血液は、血液を適切な温度で適切な時間インキュベートする(例えば、20~40分間、典型的には15~30℃の温度でインキュベートする)ことによって凝固させることができる。前記遠心分離は、1,000~2,000×gで5~20分間(好ましくは約10分間)遠心分離することを含み得る。
【0025】
好ましい実施形態では、「血清」という用語は、凝固した血液サンプルを遠心分離することによって得られる上清を意味する。好ましくは、血清は、単離された血清サンプル(血液から単離された)である。
【0026】
好ましい実施形態では、血清は、例えば、ThermoFisher Scientific(例えば、カタログ番号16050130、16050122、26050070、及び/又は26050088)から入手可能な市販の動物血清調製物である。
【0027】
一実施形態では、血清は、50~100g/Lのタンパク質濃度を含む。例えば、タンパク質濃度は、55~95g/L、60~90g/L、65~85g/L、又は70~80g/Lであり得る。好ましくは、血清は、60~80g/Lのタンパク質濃度を含む。
【0028】
血清は、25~75g/Lのアルブミン濃度を含み得る。例えば、血清は、30~75g/L、35~70g/L、35~50g/L、40~65g/L、又は45~60g/Lのアルブミン濃度を含み得る。
【0029】
加えて、又は別法では、血清は、15~50g/Lの濃度のグロブリン(例えば、α-1グロブリン、α-2グロブリン、及びβグロブリン)を含み得る。例えば、血清は、20~45g/L、25~40g/L、20~35g/L、又は30~35g/Lのグロブリン濃度を含み得る。
【0030】
血清は:
0.5~5g/L、例えば1~4g/L又は1~3g/Lのα-1グロブリン濃度;
2~12g/L、例えば4~10g/L、6~10g/L、又は6~8g/Lのα-2グロブリン濃度;及び/又は
5~15g/L、例えば7~11g/L又は8~10g/Lのaβグロブリン濃度を含み得る。
【0031】
前記血清タンパク質濃度は、好ましくは希釈前の濃度である。木炭非含有固形寒天培地中に存在する濃度は、前記固形寒天培地中に存在する血清の量に応じて適切な係数で希釈される。例えば、血清が50~100g/Lのタンパク質濃度を含み、血清が10%(v/v)の濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在する場合:木炭非含有固形寒天培地中の血清タンパク質濃度は5~10g/Lであり得る。木炭非含有固形寒天培地中の典型的な血清タンパク質濃度(製剤化された後)を以下に概説する。
【0032】
一実施形態では、血清は、5~10g/Lのタンパク質濃度を含む。例えば、タンパク質濃度は、5.5~9.5g/L、6~9g/L、6.5~8.5g/L、又は7~8g/Lであり得る。好ましくは、血清は、6~8g/Lのタンパク質濃度を含む。
【0033】
血清は、2.5~7.5g/Lのアルブミン濃度を含み得る。例えば、血清は、3~7.5g/L、3.5~7g/L、3.5~5g/L、4~6.5g/L、又は4.5~6g/Lのアルブミン濃度を含み得る。
【0034】
加えて、又は別法では、血清は、1.5~5g/Lのグロブリン(例えば、α-1グロブリン、α-2グロブリン、及びβグロブリン)濃度を含み得る。例えば、血清は、2~4.5g/L、2.5~4g/L、2~3.5g/L、又は3~3.5g/Lのグロブリン濃度を含み得る。
【0035】
血清は:
0.05~.5g/L、例えば、0.1~0.4g/L又は0.1~0.3g/Lのα-1グロブリン濃度;
0.2~1.2g/L、例えば、0.4~1g/L、0.6~1g/L、又は0.6~0.8g/Lのα-2グロブリン濃度;及び/又は
0.5~1.5g/L、例えば、0.7~1.1g/L又は0.8~1.0g/Lのβグロブリン濃度を含み得る。
【0036】
血清タンパク質濃度は、当技術分野で公知の任意の適切な方法、例えば、血清タンパク質電気泳動によって決定することができる。適切な血清タンパク質電気泳動プロトコルは、参照により本明細書に組み込まれる、Jenkins M.A.,1999 (Serum Protein Electrophoresis.In:Palfrey S.M.(eds)Clinical Applications of Capillary Electrophoresis.Methods in Molecular Medicine vol 27.Humana Press)に概説されている。
【0037】
好ましい実施形態では、血清は、全血清(例えば、動物全血清)である。例えば、血清は、好ましくは、血清から得ることができる画分(例えば、単離された画分)とは異なる。そのような画分の例は、ウシ血清アルブミン(BSA)としても知られる画分Vである。
【0038】
一実施形態では、木炭非含有固形寒天培地は、2%(w/v)未満;好ましくは、1.5%(w/v)未満、1%(w/v)未満、0.5%(w/v)未満、0.4%(w/v)未満、0.3%(w/v)未満、0.2%(w/v)未満、又は0.1%(w/v)未満の濃度でアルブミン(例えば、画分Vなどの単離されたアルブミン)を含む。
【0039】
一実施形態では、木炭非含有固形寒天培地は、20%(w/v)未満;好ましくは、15%(w/v)未満、10%(w/v)未満、5%(w/v)未満、4%(w/v)未満、3%(w/v)未満、2%(w/v)未満、1%(w/v)未満、0.5%(w/v)未満、又は0.2%(w/v)未満の濃度でアルブミン(例えば、画分Vなどの単離されたアルブミン)を含む。
【0040】
当業者は、「寒天培地」という用語を理解している。例えば、「寒天培地」という用語は、典型的には細菌の増殖を支持するためのさらなる薬剤を含む固化した寒天物質を意味し得る。木炭非含有固形寒天培地は、「寒天ベースの」培地と呼ばれることがある。
【0041】
寒天という用語はアガロースを含む。アガロースは、寒天の2つの主成分のうちの1つであり、寒天の他方の主成分であるアガロペクチンを除去することによって寒天から精製することができる。
【0042】
当業者は、寒天ベースを有する寒天培地が固形培地と呼ばれることを理解している。従って、本発明の木炭非含有固形寒天培地は、「固形」寒天培地と呼ばれる。「固形」という用語は、例えば、ゲル状培地を意味し得る。
【0043】
従って、「固形」という用語は、例えば、寒天ベースの培地の粘稠度を有する培地を意味する。
【0044】
好ましくは、木炭非含有固形寒天培地は、培地の残りの成分(例えば、血清)を含む寒天ベースを有する。例えば、残りの成分は、非固相で寒天溶液と混合して混合物を得ることができ、その後、前記混合物は固相(例えば、寒天ベース)に固化される。
【0045】
理論に拘束されることを望むものではないが、血清成分を使用して、寒天由来毒素などのレジオネラ(Legionella)に対して毒性がある薬剤を(例えば、選択的に)吸収し、従って前記毒素がレジオネラ(Legionella)の増殖を抑制するのを防止できると考えられる。従って、例えば、血清は、本発明の木炭非含有固形寒天培地において解毒剤として作用する。従って、血清を木炭(活性炭など)の代わりに使用でき、これは、木炭と血清の構造及び(従来の)機能が大幅に異なることを考えると、非常に驚くべきことである。しかしながら、木炭とは異なり、血清は、抗生物質を(例えば、実質的に)吸収しないため、培地中の抗生物質は、培地で増殖した細菌との接触及び相互作用に利用可能なままである。さらに、培地の色に対する血清の影響は無視できるほどであり、木炭の色よりもはるかに目立たない。木炭を含む培地は、濃い黒色であるため、その上での細菌の増殖の識別が困難である。本発明における血清の好ましい濃度では、培地の色への影響は無視できるほどであるため、培地は実質的に透明である。
【0046】
木炭非含有固形寒天培地に血清を添加することのさらなる重要な利点は、レジオネラ(Legionella)の増殖を可能にする栄養素の複雑な混合物を提供することである。これは、寒天ベース、血清、及び窒素源(例えば、酵母エキス)から本質的になる固形培地がレジオネラ(Legionella)の増殖を支持できるという観察結果によって裏付けられている(例えば、α-ケトグルタル酸などのBCYEでの増殖に必要な特定の成分が、増殖を支持するために必須ではなかった)-実施例1を参照されたい。これは、実は血清がレジオネラ(Legionella)の増殖を支持するための栄養素を提供することが予想外だったため、驚くべきことである。
【0047】
血清のさらなる重要な利点には、低コスト及び幅広い入手しやすさが含まれる。
【0048】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、固形培地に適した構成成分を同定することの困難さが、従来の培地でよく見られる、多くのアルカリ土類金属含有塩及びアルカリ金属含有塩(例えば、NaCl)の存在下でレジオネラ(Legionella)の増殖が抑制されるという観察に起因していると考えている。そのようなアルカリ土類金属含有塩及びアルカリ金属含有塩に対するレジオネラ(Legionella)のこの感受性は、これまで知られておらず、本発明者らによって最初に観察され、実証された。そのようなアルカリ土類金属含有塩及びアルカリ金属含有塩の抑制効果は、以下(例えば、実施例8)により詳細に概説される。
【0049】
従って、血清(レジオネラ(Legionella)用の固形寒天培地のこれまで知られていなかった構成成分)を利用できることは、この観察に照らしてさらに驚くべきものである。血清がレジオネラ(Legionella)培地での使用に適しているであろうとは予想されなかった別の理由は、血清が抗体を含み、当業者がレジオネラ(Legionella)を阻害する余地があったことである。
【0050】
有利なことに、本発明者らは、本発明の培地が、標準的なBCYE寒天培地のレベルと同様のレベルでレジオネラ(Legionella)の増殖を支持することを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0051】
一実施形態では、木炭非含有固形寒天培地を、NCTC 11233及びNCTC 11406から選択される1つ又は複数のL.ニューモフィラ(L. pneumophila)株と接触させると、木炭非含有固形寒天が、対照固形寒天培地と比較してより大きな細菌負荷の形成を支持し、対照固形寒天培地が、木炭も血清も含まず;
細菌負荷の形成が、以下を含むアッセイによって測定される:
i.NCTC 11233及びNCTC 11406から選択される1つ又は複数のL.ニューモフィラ(L.pneumophila)株を:
A.試験サンプルを用意するために木炭非含有固形寒天培地;及び
B.対照サンプルを用意するために対照固形寒天培地以下と接触させること;
ii.試験サンプル及び対照サンプルを37℃で3日間、4日間、又は5日間(好ましくは5日間)インキュベートすること;
iii.インキュベーション後の試験サンプルの細菌負荷を、インキュベーション後の対照サンプルの細菌負荷と比較すること;並びに
iv.木炭非含有固形寒天培地が、試験サンプルの細菌負荷が対照サンプルの細菌負荷と比較して高い場合、対照固形寒天培地と比較してより大きな細菌負荷の形成を支持することを確認すること。
【0052】
NCTC 11233(例えば、NCTCアクセッション番号:11233)及びNCTC 11406(例えば、NCTCアクセッション番号:11406)は、英国公衆衛生庁のNational Collection of Type Cultures(NCTC)から入手できるL.ニューモフィラ(L. pneumophila)株である。
【0053】
従って、本発明の別の態様は、レジオネラ(Legionella)を培養するための木炭非含有固形寒天培地を提供し、この固形寒天培地は:
(a)1%~35%(v/v)の濃度で存在する血清;
(b)窒素源;及び
(c)鉄源を含み;
木炭非含有固形寒天培地を、NCTC 11233及びNCTC 11406から選択される1つ又は複数のL.ニューモフィラ(L.pneumophila)株と接触させると、木炭非含有固形寒天が、対照固形寒天培地と比較してより大きな細菌負荷の形成を支持し、対照固形寒天培地が、木炭も血清も含まず;
細菌負荷の形成が、以下を含むアッセイによって測定される:
i.NCTC 11233及びNCTC 11406から選択される1つ又は複数のL.ニューモフィラ(L.pneumophila)株を:
A.試験サンプルを用意するために木炭非含有固形寒天培地;及び
B.対照サンプルを用意するために対照固形寒天培地と接触させること;
ii.試験サンプル及び対照サンプルを37℃で3日間、4日間、又は5日間(好ましくは5日間)インキュベートすること;
iii.インキュベーション後の試験サンプルの細菌負荷を、インキュベーション後の対照サンプルの細菌負荷と比較すること;並びに
iv.木炭非含有固形寒天培地が、試験サンプルの細菌負荷が対照サンプルの細菌負荷と比較して高い場合、対照固形寒天培地と比較してより大きな細菌負荷の形成を支持することを確認すること。
【0054】
対照固形寒天培地は:
(a)1~2%(w/v)の濃度の寒天;
(b)1~2%(w/v)の濃度のプロテオースペプトン;
(c)2~4%(w/v)又は15~25%(w/v)の濃度のアルブミン(好ましくはウシ血清アルブミン);
(d)0.05~0.2%(w/v)の濃度の酵母エキス;
(d)0.5~2%(w/v)の濃度のACES緩衝剤;
(f)0.01~0.05%(w/v)の濃度のピロリン酸第2鉄;及び
(f)0.05~0.2%(w/v)の濃度のα-ケトグルタル酸を含み得る。
【0055】
一実施形態では、対照培地は、Armon and Payment,Journal of Microbiological Methods 11(1990),pages 65-71(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、LTM培地であり得る。
【0056】
一実施形態では、抗生物質アジスロマイシンは、木炭非含有固形寒天培地で培養したレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)菌に対して0.02~0.04μg/mlのMIC50を有し、前記MIC50は、以下を含むアッセイによって測定される:
(a)レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)の培養物を、0.02~0.04μg/mlの濃度の抗生物質アジスロマイシンを含む、木炭非含有固形寒天培地の第1のサンプルと接触させること;
(b)レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)の培養物を、第2のサンプルが抗生物質アジスロマイシンを含まない、木炭非含有固形寒天培地の第2のサンプルと接触させること;
(c)第1のサンプル及び第2のサンプルを37°Cで5日間インキュベートすること;及び
(d)抗生物質アジスロマイシンが、第1のサンプルの細菌負荷が、第2のサンプルの細菌負荷よりも少なくとも50%低い場合、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)菌に対して0.02~0.04μg/mlのMIC50を有することを確認すること;好ましくは、第1のサンプルの細菌負荷は、第2のサンプルの細菌負荷よりも50%低い。
【0057】
便宜上、前記MIC50は、同一の方法で行われた一連のアッセイからの平均MIC50として表すことができる。
【0058】
一実施形態では、前記木炭非含有固形寒天培地で培養されたレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)菌は、緩衝酵母エキス及び水に溶解したウマ血液を含む、無血清である対照固形寒天培地で同等の条件下で培養されたレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)菌と比較したときに、抗生物質アジスロマイシンに対する感受性が増加していた。
【0059】
一実施形態では、木炭非含有固形寒天培地は、対照固形寒天培地と比較したときに、2つ以上のレジオネラ(Legionella)株に対して改善された培養活性を有し、対照固形寒天培地が、木炭も血清も含まず、培養活性は、以下を含むアッセイによって測定される:
(a)レジオネラ(Legionella)の培養物を:
i.試験サンプルを用意するために木炭非含有固形寒天培地;及び
ii.対照サンプルを用意するために対照固形寒天培地と接触させること;
(b)試験サンプル及び対照サンプルを37℃で3日間インキュベートすること;
(c)インキュベーション後の試験サンプルの細菌負荷とインキュベーション後の対照サンプルの細菌負荷を比較すること;並びに
(d)試験サンプルの細菌負荷が対照サンプルの細菌負荷と比較して高いときに、木炭非含有固形寒天培地を改善した培養活性を有するとして識別すること。
【0060】
一実施形態では、木炭非含有固形寒天培地は、37℃で5日間インキュベートしたときに、NCTC 11233及びNCTC 11406から選択される1つ又は複数のL.ニューモフィラ(L.pneumophila)株の増殖を支持することができる。
【0061】
一実施形態では、前記固形微生物培地で培養されたレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)菌は、緩衝酵母エキス及び水に溶解したウマ血液を含む、無血清である対照固形微生物培地で同等の条件下で培養されたレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)菌と比較したときに、抗生物質アジスロマイシンに対して感受性の増加を有する。一実施形態では、木炭非含有固形寒天培地は、少なくとも35種のレジオネラ(Legionella)を培養するのに効果的である。
【0062】
好ましくは、木炭非含有固形寒天培地は実質的に透明である(例えば、透明である)。適切には、木炭非含有固形寒天培地は、天然の寒天(即ち、他の構成成分のいずれも含まない寒天)の色を保持する。実質的に透明な培地は、光学密度変化による増殖の自動モニタリングを含む、濁度測定手段(例えば、標準的な実験室分光光度計を使用する)による増殖のモニタリングに理想的に適している。実質的に透明な培地は、レジオネラ(Legionella)菌の代謝産物を検出するための生化学的アッセイなどの色の変化を伴う検出アッセイにも適している。
【0063】
さらに、本発明の木炭非含有固形寒天培地での細菌コロニーの増殖は容易に識別可能である。
【0064】
一実施形態では、本発明の木炭非含有固形寒天培地は無色である。
【0065】
一実施形態では、木炭非含有固形寒天培地は、低いバックグラウンド自己蛍光を示す。低い蛍光を有する培地は、蛍光アッセイ、例えば、培養された細菌によって培地に分泌されたDNAなどの巨大分子の存在を検出するためのアッセイでの使用に特に適している。
【0066】
本木炭非含有固形寒天培地の透明及び/又は無色の性質は、培地が木炭(例えば、活性炭)又は血液(例えば、赤血球を含む全血)の存在に依存しないため達成可能である。活性炭を含む培地は、濃くて暗い色を有するため、細菌の増殖を識別することが困難である。血液(例えば、全血又は溶血)を含む培地は、暗赤色になる傾向があり、細菌の増殖を識別することが同様に困難になる。対照的に、血清は実質的に透明である。
【0067】
さらに、本発明者らは、驚くべきことに、本木炭非含有固形寒天培地が、レジオネラ(Legionella)抗生物質を同定するための方法での使用に適していることを見出した。木炭を含む培地は、木炭の吸収効果のために、そのような方法には適性を欠くことが知られている。
【0068】
一実施形態では、本発明の木炭非含有固形寒天培地は血液を含まない。本明細書で使用される「血液」という用語は、血清(例えば、単離された血清)への言及を含まず、例えば、血清は、血液の残りの成分/画分から分離された血液の画分である。血液という用語は、脱線維素血液、及び水に溶解した血液などの溶血を含む。
【0069】
好ましくは、本発明の木炭非含有固形寒天培地に使用される血清は、白血球、赤血球、及び/又はフィブリノゲンを含まない(又は実質的に含まない)。好ましい実施形態では、血清という用語は、血液の残りの成分(例えば、血漿)から事前に分離された血液の血清成分を意味する。
【0070】
さらに、抗生物質の有効性は、異なる増殖条件下で様々であることが知られている。本発明の木炭非含有固形寒天培地は、血液(例えば、全血)などの複雑な成分の存在に依存しないため、従って、より生理学的に適切な増殖条件下でレジオネラ(Legionella)を増殖させることが可能であり、従って、臨床的に有用な抗生物質の同定を可能にする。従って、抗生物質に関する感受性試験の結果は、レジオネラ(Legionella)が本発明の木炭非含有固形寒天培地で増殖されるときにより信頼性が高い。
【0071】
抗生物質を木炭非含有固形寒天培地に含めて、レジオネラ(Legionella)種の増殖に対する抗生物質の効果を調べることができる。前記抗生物質は、最小発育阻止濃度(MIC)(例えば、MIC50及びMIC90)を決定するために、所定の濃度の範囲で、継代培養(例えば、24時間又は48時間)、抗生物質の最小殺菌濃度(MBC)を用いて本発明の培地に含めることができる。
【0072】
好ましくは、前記抗生物質は、レジオネラ(Legionella)抗生物質としてのその適合性についてスクリーニングされる候補抗生物質である。
【0073】
従って、本明細書に記載の培養手段及び方法には、レジオネラ(Legionella)を標的とする抗生物質をスクリーニングするための方法における有用性が有利に見られる。
【0074】
本明細書に記載のスクリーニング方法に関連する態様及び実施形態では、候補抗生物質は、約0.00001mg/L~10mg/L、0.0001mg/L~9mg/L、0.001mg/L~8mg/L、0.01mg/L~7mg/L、0.1mg/L~6mg/L、1mg/L~5mg/L、又は2mg/L~4mg/Lの濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在し得る。候補抗生物質は、約0.005mg/L~0.07mg/Lの濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在し得る。候補抗生物質は、約0.004mg/L~0.04mg/Lの濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在し得る。候補抗生物質は、約0.015mg/L~2mg/Lの濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在し得る。候補抗生物質は、約0.03mg/L~1mg/Lの濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在し得る。候補抗生物質は、約0.004mg/L~0.07mg/Lの濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在し得る。候補抗生物質は、約0.0001mg/L~0.001mg/Lの濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在し得る。候補抗生物質は、約0.1mg/L~2mg/Lの濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在し得る。
【0075】
細菌の増殖は、固形微生物培地における細菌のコロニー及び/又はストリークとして識別することができる。
【0076】
抗生物質をスクリーニングする際にレジオネラ(Legionella)を増殖させるための固形培地(例えば、寒天培地)の使用は、寒天培地が寒天での増殖を可能にするために伝統的に木炭(例えば、活性炭)の存在を必要とするという事実によって妨げられてきた(例えば、阻まれてきた)。木炭は、抗生物質を吸収するため、木炭を含む培地でのレジオネラ(Legionella)の増殖に対する抗生物質の影響を忠実に調べることが妨げられる。
【0077】
しかしながら、細菌を増殖させるための固形培地(例えば、寒天培地)の使用は、抗生物質のスクリーニングでは非常に有利である。例えば、固形培地では、自動マルチピン接種器を使用して、異なる抗生物質濃度での異なる培地への接種の間に接種器を滅菌する必要なしに、一定範囲の抗生物質濃度で一度に複数(例えば、80)の種/株を検査することができる。これにより、大幅なスケールアップ及び自動化の利用が可能となる。これは、本発明の木炭非含有固形寒天培地のなおさらなる利点を実証している。
【0078】
レジオネラ(Legionella)は、候補抗生物質が存在しない、木炭非含有固形寒天培地に接種することができ、結果として、前記候補抗生物質が接種材料に加えられる。
【0079】
一態様では、レジオネラ(Legionella)抗生物質を同定するためのスクリーニング方法が提供され、このスクリーニング方法は:
(a)前記レジオネラ(Legionella)を、以下を含む木炭非含有固形寒天培地と接触させること:
i.1%~35%(v/v)の濃度で存在する血清;及び
ii.窒素源;及び
iii.鉄源;
(b)木炭非含有固形寒天培地に存在するレジオネラ(Legionella)を抗生物質候補と接触させること;
(c)前記候補抗生物質の存在下でレジオネラ(Legionella)をインキュベートすること;並びに
(d)抑制された細菌増殖の存在又は非存在を識別することを含み;
抑制された細菌増殖の存在は、前記候補抗生物質がレジオネラ(Legionella)抗生物質であることを示し、抑制された細菌増殖の非存在は、前記候補抗生物質がレジオネラ(Legionella)抗生物質ではないことを示す。
【0080】
一実施形態では、前記スクリーニング方法は、前記候補抗生物質の存在下での細菌増殖を、前記候補抗生物質の非存在下でインキュベートされた対照サンプル中の細菌増殖と比較することをさらに含む。好ましくは、抑制された細菌増殖は、対照サンプルにおける細菌増殖と比較したときに、前記候補抗生物質の存在下での細菌増殖が減少することを意味する。
【0081】
前記インキュベーションは、1~7日間、2~6日間、又は3~5日間であり得る。好ましくは、前記インキュベーションは、3~5日間であり得る。適切なインキュベーション期間は5日である。前記インキュベーションは、約30℃~40℃、好ましくは約37℃の温度で適切に行われる。
【0082】
当業者は、本発明の方法が2つのサンプル間(例えば、「試験サンプル」と「対照サンプル」との間)の比較工程を含む場合、条件(例えば、方法中のアッセイ条件)は一定に保たれるべきであることを理解している。例えば、試験サンプル及び対照サンプルの両方での接触させる工程(レジオネラ(Legionella)を固形微生物培地に接触させる)で提供されるレジオネラ(Legionella)の細菌負荷(例えば、出発細菌負荷)は、インキュベーション時間及び温度などと同様に、実質的に同じでなければならない。
【0083】
対照サンプルにおけるレジオネラ(Legionella)の細菌負荷は、本発明のスクリーニング方法の範囲内(即ち、スクリーニング方法の工程を構成する)又は範囲外のいずれかで決定することができる。一実施形態では、本発明のスクリーニング方法は、抗生物質の非存在下で対照サンプルをインキュベートする工程を含む。一実施形態では、対照サンプルにおける細菌負荷は、本発明の方法の範囲外で得られ、本発明の比較工程中に利用される。
【0084】
一実施形態では、本発明のスクリーニング方法は、前記方法で得られたデータを適切なデータキャリアに記録する工程をさらに含む。
【0085】
一実施形態では、窒素源は、酵母エキス、牛肉エキス、肝エキス、カゼイン加水分解物、植物細胞エキス、大豆エキス、又はそれらの任意の組み合わせから選択される1つ又は複数である。そのような窒素源(複数可)は、本明細書に記載の木炭非含有固形寒天培地が炭素源をさらに含み得るように、炭素源をさらに提供することができる。
【0086】
「窒素源」という用語は、本明細書では「アミノ酸源」という用語と同義的に使用することができる。例えば、窒素源は、アミノ酸を合成するための窒素を含み得(任意選択によりアミノ酸が存在しない)、アミノ酸はレジオネラ(Legionella)菌によって合成される。
【0087】
窒素源は、好ましくは、有機又は無機形態の固体(例えば、固定)窒素である。窒素源は、硝酸塩又は亜硝酸塩を含み得、より好ましくは、アミノ酸、ペプチド、ペプトン、及び/又はタンパク質を含む。
【0088】
好ましい実施形態では、窒素源は酵母エキスである。
【0089】
当業者は、「酵母エキス」は、典型的には、溶解及び/又は分解された酵母細胞の培養物を遠心分離することによって得られ、得られる上清が酵母エキスを含む(又は酵母エキスからなる)ことを理解している。
【0090】
木炭非含有固形寒天培地での使用に適したいずれの血清も、本発明による培地内に含めることができる。
【0091】
一実施形態では、血清は合成血清である。合成血清は、典型的には、血清中に存在する構成成分(電解質、抗体、抗原、及びホルモン)を使用して製造された血清である。
【0092】
好ましい実施形態では、血清は動物血清である。
【0093】
一実施形態では、血清は、ウマ血清、ヒツジ血清、ヤギ血清、ウシ血清、ウシ胎児血清、仔ウシ血清、マウス血清、ラット血清、ブタ血清(pig serum)、モルモット血清、ブタ血清(porcine serum)、及びウサギ血清から選択される1つ又は複数である。一実施形態では、血清は、ウマ血清、ウシ血清、及びウシ胎児血清から選択される1つ又は複数である。
【0094】
好ましい実施形態では、血清はウマの血清である。
【0095】
一実施形態では、木炭非含有固形寒天培地は、1%~35%(v/v)の濃度の血清を含む。例えば、血清は、5%~35%(v/v)、10%~30%(v/v)、又は15%~25%(v/v)の濃度であり得る。一実施形態では、血清は、8%~12%(v/v)の濃度で存在する。好ましい実施形態では、血清は、約10%(v/v)の濃度で存在する。前記%値は、木炭非含有固形寒天培地の最終容量の%を指す。
【0096】
一実施形態では、窒素源は、0.2%~10%(w/v)の濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在する。例えば、窒素源は、0.5%~8%(w/v)、0.8%~6%(w/v)、1%~4%(w/v)、又は2%~3%(w/v)の濃度で存在し得る。一実施形態では、窒素源は、0.8%~1.2%(w/v)の濃度で存在する。好ましい実施形態では、窒素源は、約1%(w/v)の濃度で存在する。前記パーセンテージ値は、木炭非含有固形寒天培地の最終容量の%を指す。
【0097】
一実施形態では、前記木炭非含有固形寒天培地は緩衝剤をさらに含む。好ましくは、前記緩衝剤は、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)緩衝剤、水酸化カリウム、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0098】
一実施形態では、緩衝剤は、約1mM~約500mMの濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在する。例えば、緩衝剤は、10mM~350mM、20mM~200mM、30mM~100mM、又は40mM~100mMの濃度で存在し得る。一実施形態では、緩衝剤は、45mM~55mMの濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在する。一実施形態では、緩衝剤は、15mM~25mMの濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在する。好ましい実施形態では、緩衝剤は、約20mMの濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在する。
【0099】
一実施形態では、鉄源は、0.001%~1%(w/v)の濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在する。例えば、鉄源は、0.002%~0.8%(w/v)、0.003%~0.6%(w/v)、0.004%~0.4%(w/v)、又は0.005%~0.2%(w/v)の濃度で存在し得る。一実施形態では、鉄源は、0.01%~0.1%(w/v)の濃度で存在する。一実施形態では、鉄源は、0.002%~0.003%(w/v)の濃度で存在する。一実施形態では、鉄源は、0.015%~0.04%(w/v)の濃度で培地中に存在する。好ましい実施形態では、鉄源は、約0.025%(w/v)の濃度で存在する。前記パーセンテージ値は、木炭非含有固形寒天培地の最終容量の%を指す。
【0100】
一実施形態では、鉄源は、約0.05g/L~2g/L、約0.1g/L~約1.8g/L、約0.15g/L~約1.6g/L、約0.2g/L~約1.4g/L、約0.25g/L~約1.2g/L、約0.3g/L~約1g/L、約0.35g/L~約0.8g/L、又は約0.4g/L~約0.6g/Lの濃度で存在する。一実施形態では、鉄源は、約0.15g/L~約0.35g/Lの濃度で存在する。好ましい実施形態では、鉄源は、約0.25g/Lの濃度で培地中に存在する。
【0101】
一実施形態では、前記鉄源は、鉄キレート及びピロリン酸第2鉄から選択される1つ又は複数である。好ましくは、鉄源は、ピロリン酸第2鉄であり得る。
【0102】
一実施形態では、前記培地は、α-ケトグルタル酸をさらに含む。
【0103】
一実施形態では、α-ケトグルタル酸は、0.001%~1%(w/v)の濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在する。例えば、α-ケトグルタル酸は、0.002%~0.8%(w/v)、0.003%~0.6%(w/v)、0.004%~0.4%(w/v)、0.005%~0.2%(w/v)、又は0.006%~0.18%(w/v)の濃度で存在し得る。一実施形態では、α-ケトグルタル酸は、0.005%~0.02%(w/v)の濃度で存在する。好ましい実施形態では、α-ケトグルタル酸は、約0.01%(w/v)の濃度で存在する。前記パーセンテージ値は、木炭非含有固形寒天培地の最終容量の%を指す。
【0104】
一実施形態では、α-ケトグルタル酸は、約0.05g/L~約3g/L、約0.1g/L~約2.5g/L、約0.15g/L~約2g/L、約0.2g/L~約1.5g/L、約0.25g/L~約1g/L、又は約0.3g/L~約0.5g/Lの濃度で存在する。一実施形態では、α-ケトグルタル酸は、約0.5g/L~約1.5g/Lの濃度で存在する。好ましい実施形態では、α-ケトグルタル酸は、約1g/Lの濃度で存在する。
【0105】
一実施形態では、前記培地は、システインをさらに含む。好ましくは、前記システインはL-システインである。
【0106】
一実施形態では、システイン(例えば、L-システイン)は、1%~10%(w/v)の濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在する。例えば、システインは、2%~9%(w/v)、3%~8%(w/v)、又は4%~7%(w/v)の濃度で存在し得る。一実施形態では、システインは、3%~5%(w/v)の濃度で存在する。好ましい実施形態では、システインは、約4%(w/v)の濃度で存在する。前記パーセンテージ値は、木炭非含有固形寒天培地の最終容量の%を指す。
【0107】
一実施形態では、システイン(例えば、L-システイン)は、0.001%~2%(w/v)の濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在する。例えば、システインは、約0.002%~1.8%(w/v)、0.003%~1.6%(w/v)、0.004%~1.4%(w/v)、0.005%~1.2%(w/v)、0.006%~1%(w/v)、0.008%~0.8%(w/v)、0.01%~0.6%(w/v)、0.02%~0.6%(w/v)、又は0.04%~0.4%(w/v)の濃度で存在し得る。一実施形態では、システインは、0.03%~0.05%(w/v)の濃度で存在する。好ましい実施形態では、システインは、約0.04%(w/v)の濃度で存在する。前記パーセンテージ値は、木炭非含有固形寒天培地の最終容量の%を指す。
【0108】
一実施形態では、システイン(例えば、L-システイン)は、約1g/L~約100g/L、約5g/L~約90g/L、約15g/L~約80g/L、約20g/L~約70g/L、約25g/L~約60g/L、約30g/L~約50g/L、又は約35g/L~約40g/Lの濃度で培地中に存在する。一実施形態では、システインは、約30g/L~約50g/Lの濃度で培地中に存在する。好ましい実施形態では、システインは、約40g/Lの濃度で培地中に存在する。
【0109】
一実施形態では、寒天は、0.2%~10%(w/v)の濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在する。一実施形態では、寒天は、0.2%~5%(w/v)の濃度で木炭非含有固形寒天培地中に存在する。例えば、寒天は、0.5%~8%(w/v)、0.8%~6%(w/v)、1%~4%(w/v)、又は2%~3%(w/v)の濃度で存在し得る。一実施形態では、寒天は、約0.8%~1.2%(w/v)の濃度で存在する。好ましい実施形態では、寒天は、約1%(w/v)の濃度で培地中に存在する。前記パーセンテージ値は、木炭非含有固形寒天培地の最終容量の%を指す。
【0110】
前記寒天は、固形培地を提供するために適切に利用される。
【0111】
好ましくは、本培地の寒天は、例えば寒天のオートクレーブ処理後に、事前に洗浄(例えば、水で)されていない。
【0112】
一実施形態では、前記寒天は、選択寒天及び示差寒天(differential agar)から選択される1つ又は複数である。好ましい実施形態では、前記寒天は選択寒天である。
【0113】
寒天は、好ましくは、例えばオートクレーブ処理によって滅菌されている。従って、好ましい実施形態では、前記寒天はオートクレーブ処理された寒天である。
【0114】
寒天は、80℃~150℃、90℃~140℃、100℃~130℃の範囲の温度でオートクレーブ処理してもよい(例えば、オートクレーブ処理されていてもよい)。寒天は、115℃~125℃の範囲の温度、好ましくは121℃でオートクレーブ処理してもよい(例えば、オートクレーブ処理されていてもよい)。寒天は、5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、35分間、50分間、75分間、又は100分間、好ましくは15分間オートクレーブ処理してもよい(例えば、オートクレーブ処理されていてもよい)。
【0115】
培地の他のすべての成分は、好ましくは、例えばフィルターの通過によって滅菌される。例えば、血清は、好ましくは木炭非含有固形寒天培地(例えば、培地の寒天ベース)に含める前の、濾過された血清であり得る。
【0116】
適切には、前記フィルターは、ミクロン(μm)フィルターであり、約1μm、0.8μm、0.6μm、0.4μm、又は0.2μmの細孔径を有し得る。好ましい実施形態では、前記フィルター(例えば、ミクロンフィルター)は、約0.22μmの孔径を有する。
【0117】
適切なフィルター滅菌器は、0.22μMの細孔を備えたCorning(登録商標)500mL真空フィルター/ストレージボトルシステムであり得る。
【0118】
適切には、本発明の培地のすべての成分は、適切な量で水(例えば、再蒸留水)と混合される。
【0119】
本発明の好ましい培地は、以下の表に概要が示されている(表1を参照)。従って、本発明の木炭非含有固形寒天培地は、以下を含むか、又は以下からなり得る:
【0120】
【表1】
【0121】
前記成分は、蒸留水(dHO)又は再蒸留水(ddHO)で適切に混合されて、調製のために培地をその最終容量にする。例えば、1%酵母エキス含む培地は、1リットルのdHO又はddHO当たり約10gの酵母エキスを含む。
【0122】
培地のpHは、(例えば、pH調整剤を用いて)5.5~8又は6.5~7.5に調整することができる。例えば、培地のpHは、約6.0に調整することができる。pHが調整される実施形態では、表1(又は本明細書の他の部分)で参照される値(濃度及び/又はg/l)は、pH調整剤の添加(例えば、希釈)前の値である。好ましくは、pH調整剤は、水酸化カリウム(KOH)である。
【0123】
一実施形態では、木炭非含有固形寒天培地は、5.5~8のpHを有する。一実施形態では、木炭非含有固形寒天培地は、6.5~7.5のpHを有する。
【0124】
好ましい木炭非含有固形寒天培地は、調製のためにddHOで混合された、表1に示さエル成分を含んでもよいし、又はそれからなってもよい。好ましくは、培地のpHは、6.5~7.5、より好ましくは約pH6.9である。
【0125】
従って、一実施形態では、木炭非含有寒天培地(例えば、本発明の任意の方法の)は、約10%(v/v)の濃度のウマ血清、約1%(w/v)の濃度の酵母エキス、約20mMの濃度のACES緩衝剤、約0.025%(w/v)の濃度のピロリン酸第2鉄、約0.01%(w/v)の濃度のα-ケトグルタル酸、約4%(w/v)の濃度のL-システイン、及び培地の容量を100%(v/v)にする量のddHOを含む。適切には、培地のpHは6.9である。
【0126】
培地のpHへの言及は、細菌の接種前の培地のpHを意味する。
【0127】
一態様では、レジオネラ(Legionella)を培養するための木炭非含有固形寒天培地が提供され、この培地は:
(a)0.5%~2%(w/v)の濃度の寒天;
(b)5%~15%(v/v)の濃度の血清;
(c)0.5%~2%(w/v)の濃度の酵母エキス;
(d)15mM~25mMの濃度のACES緩衝剤;
(e)0.015%~0.035%(w/v)の濃度のピロリン酸第2鉄;
(f)0.005%~0.05%(w/v)の濃度のα-ケトグルタル酸;及び
(g)2%~6%(w/v)の濃度のL-システインを含む、又はそれらからなる。
【0128】
適切な選択寒天は、SigmaAldrichから入手可能な選択寒天(Cat.No.A5054)であり得る。適切な酵母エキスは、SigmaAldrichから入手可能な酵母エキス(Cat. No.A07533)であり得る。適切なL-システインは、Sigma Aldrichから入手可能なL-システイン(Cat.No.W326305)である。適切なACES緩衝剤は、SigmaAldrichから入手可能なACES緩衝剤(Cat.No.A9758)であり得る。適切なピロリン酸第2鉄は、SigmaAldrichから入手可能なピロリン酸第2鉄(Cat.No. P6526)であり得る。適切なα-ケトグルタル酸は、SigmaAldrichから入手可能なα-ケトグルタル酸(Cat.No.75890)であり得る。
【0129】
一実施形態では、木炭非含有固形寒天培地は、その中の細菌培養物を特定するのに有用な、酵素活性を実証するための指示薬、試薬、及び/又は基質を含み得る。従って、一実施形態では、本木炭非含有固形寒天培地は、細菌の生化学的同定に使用することができ、木炭非含有固形寒天培地は、前記細菌の存在を確認するための指示薬を含む。好ましくは、木炭非含有固形寒天培地は実質的に透明であり、従って、そのような試験のエンドポイントとして臨床検査室で典型的に使用される色の変化を実証するのに理想的に適している。
【0130】
適切には、前記指示薬は染料である。好ましい染料には、ブロムクレゾールパープル及びブロモチモールブルーが含まれる。
【0131】
適切には、本発明の木炭非含有固形寒天培地は、レジオネラ(Legionella)を培養するために適合されたキットの中にあってもよい。従って、本発明の一態様は、レジオネラ(Legionella)を培養するための本発明の培地を含むキットを提供し、前記培地は、寒天由来毒素の存在下でレジオネラ(Legionella)を培養するための手段を提供し;前記キットは、レジオネラ(Legionella)菌を培養するために前記培地を使用するための説明書を含む。
【0132】
例えば、本発明の一態様は、レジオネラ(Legionella)を培養するための木炭非含有固形寒天培地を含むキットを提供し、前記木炭非含有固形寒天培地は:
(a)1%~35%の濃度で存在する血清;
(b)窒素源;及び
(c)鉄源を含み;
好ましくは、前記キットは、前記木炭非含有固形寒天培地でレジオネラ(Legionella)菌を培養するための説明書をさらに含む。
【0133】
別の態様は、レジオネラ(Legionella)を培養するための木炭非含有固形寒天培地を調製するための試薬を含むキットを提供し、前記試薬は:
(a)寒天;
(b)血清;
(c)窒素源;及び
(d)鉄源を含み;且つ
好ましくは、前記キットは、前記木炭非含有固形寒天培地でレジオネラ(Legionella)菌を培養するための説明書をさらに含む。
【0134】
本明細書に記載のどの培地も、前記キットに含めることができる。
【0135】
前記キットは、培地又はその構成成分の1つ又は複数を含むためのハウジングをさらに含み得る。
【0136】
前記キットは、レジオネラ(Legionella)の培養に適切に使用することができる。従って、本発明は、レジオネラ(Legionella)を培養するための本明細書に記載のキットの使用を含む。
【0137】
本発明によって提供される培養手段及び方法は、レジオネラ(Legionella)による汚染を検出するため、又は対象におけるレジオネラ(Legionella)による感染を診断するために、レジオネラ(Legionella)をサンプルから単離するために使用することができる。
【0138】
従って、一態様では、サンプル中のレジオネラ(Legionella)の存在又は非存在を検出するための方法が提供され、この方法は:
a.前記サンプルを、以下を含む木炭非含有固形寒天培地と接触させること:
i.血清;
ii.アミノ酸源;及び
iii.寒天;
b.前記木炭非含有固形寒天培地をインキュベートすること;並びに
c.前記木炭非含有固形寒天培地での細菌増殖の存在又は非存在を識別することを含み;
細菌増殖の存在は、前記サンプル中のレジオネラ(Legionella)の存在を示し、細菌増殖の非存在は、前記サンプル中のレジオネラ(Legionella)の非存在を示す。
【0139】
細菌増殖は、培地の表面で増殖する細菌のストリーク及び/又はコロニーとして適切に識別することができる。
【0140】
一態様では、対象におけるレジオネラ(Legionella)感染を診断するための方法が提供され、この方法は;
a.前記対象から単離されたサンプルを得ること;
b.前記サンプルを、以下を含む木炭非含有固形寒天培地と接触させること;
i.1%~35%(v/v)の濃度で存在する血清;
ii.窒素源;及び
iii.鉄源;
c.木炭非含有固形寒天培地を培養すること;並びに
d.前記木炭非含有固形寒天培地での細菌増殖の存在又は非存在を識別することを含み;
細菌増殖の存在は、対象におけるレジオネラ(Legionella)感染の存在を示し、細菌増殖の非存在は、対象におけるレジオネラ(Legionella)感染の非存在を示す。
【0141】
本明細書で使用される「診断」という用語は、レジオネラ(Legionella)感染の識別、確認、及び/又は特徴付けを包含する。本発明による診断方法は、感染の存在を確認するのに有用である。診断方法はまた、臨床スクリーニング、予後、治療法の選択、治療効果の評価、即ち薬物スクリーニング及び創薬のための方法にも有用である。効率的な診断により、最も適切な処置の迅速な同定を可能にし(従って、有害な薬物の副作用への不必要な曝露を減らし)、再発率を低減する。
【0142】
「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、本明細書では哺乳動物対象を指すために互換的に使用される。一実施形態では、「対象」は、ヒト、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ、及びウサギなどのペット)、家畜(例えば、ブタ、ヒツジ、ウシ、及びヤギ)、及びウマである。好ましい実施形態では、対象はヒトである。本発明の方法では、対象は、以前にレジオネラ(Legionella)感染症であると診断されていなくてもよい。或いは、対象は、以前にレジオネラ(Legionella)感染症であると診断されていてもよい。対象はまた、疾患の危険因子を示す対象、又はレジオネラ(Legionella)感染症の無症候性の対象であってもよい。対象はまた、レジオネラ(Legionella)感染症に苦しんでいる対象、又は発症するリスクがある対象であってもよい。一実施形態では、対象は、以前にレジオネラ(Legionella)療法を受けている。
【0143】
本発明で使用するための「サンプル」は、レジオネラ(Legionella)菌又はその断片を含むか、又は含むと疑われるあらゆるサンプルであり得る。適切には、前記サンプルは、レジオネラ(Legionella)に感染している疑いのある対象から単離することができる。いくつかの実施形態では、サンプルは、レジオネラ(Legionella)感染を有すると診断された対象から単離される。適切には、サンプルは、血液、尿、眼液、リンパ液、唾液、滑液、精液、脳脊髄液、皮脂腺分泌物、及び/又は痰から選択することができる。
【0144】
一実施形態では、サンプルは、外科用器具又は他の医療機器から得られる。一実施形態では、サンプルは、環境サンプル(例えば、水、土壌、及び/又は堆積物)である。好ましい実施形態では、サンプルは水サンプルである。
【0145】
一実施形態では、レジオネラ(Legionella)菌の存在又は非存在を検出する前にサンプルを処理して、このサンプルからレジオネラ(Legionella)菌を単離することができる。
【0146】
一態様では、本木炭非含有固形寒天培地は、レジオネラ(Legionella)菌を回収するための臨床濃縮培地として使用することができる。例えば、細菌は、唾液などの体液から少量を回収することができる。例として、培地は、そのサンプル中のレジオネラ(Legionella)の存在を明らかにするために、適切な臨床サンプルのアリコートを(好ましくは痛みを伴う技術(ascetic technique)を使用して)接種することができる。
【0147】
任意選択により、木炭非含有固形寒天培地を使用して、選択培地を製造することができる。選択培地は、1つ又は複数の「選択剤」を含み、これは、特定の属/種の細菌の増殖を防止又は抑制し(例えば、阻害又は防止する)、及び/又は所望の属/種の増殖を促進し、それにより、混合接種物からの1つの属/種の細菌の増殖を可能にする成分である。
【0148】
従って、一実施形態では、本発明の木炭非含有固形寒天培地は、抗生物質、好ましくはレジオネラ(Legionella)菌の増殖を阻害しない抗生物質をさらに含む。例として、バンコマイシン、アンホテリシンB、ナイスタチン、又はトリメトプリムなどの抗生物質を、固形微生物培地に添加することができる。これに関連して、バンコマイシンなどの抗生物質はグラム陽性菌を阻害し、アンホテリシンB及びナイスタチンなどの抗生物質は真菌を阻害し、そしてトリメトプリムなどの抗生物質はプロテウス(Proteus)種のスウォーミング(swarming)を防止する。これらの抗生物質は、レジオネラ(Legionella)菌と競合して潜在的に増殖できる、正常な微生物叢が存在する場所の細菌を阻害するのに有用であり得る。
【0149】
前記抗生物質は、セファロチン、コリスチン、バンコマイシン、及びシクロヘキシミドから選択される1つ又は複数であり得る。適切には、抗生物質は、ポリミキシンB、セファマンドール、及びアニソマイシンから選択される1つ又は複数である。
【0150】
レジオネラ(Legionella)の種は、本培地で良好な増殖を示す。一実施形態では、前記木炭非含有固形寒天培地でのレジオネラ(Legionella)菌の増殖は、BCYE寒天培地でのレジオネラ(Legionella)菌の増殖と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、90%、又は95%)等しい。当業者は、「BCYE培地」が、レジオネラ(Legionella)を培養するための伝統的な固形培地であることを理解している。BCYEは、典型的には、活性炭(2g/L)、酵母エキス(1%)、ACES緩衝剤(50mM)、ピロリン酸第2鉄(0.25g/L)、α-ケトグルタル酸(1g/L)、L-システイン(40g/L)、寒天(例えば、選択寒天)(1%)、及びddHO(合計を100%にする残りの%)を含む、又はそれらからなる。BCYE寒天は、共に参照により本明細書に組み込まれる、Feeley et.al.,1979(J.Clin.Microbiol.10,437-441)及びPasculle et.al., 1980(J.Infect.Dis.141,727-732)に記載されている。
【0151】
一実施形態では、前記木炭非含有固形寒天培地は、少なくとも35(例えば、少なくとも40、50、55、60、又は65)種のレジオネラ(Legionella)を培養するのに有効である。
【0152】
本培地は、抗生物質に対するレジオネラ(Legionella)の感受性を試験するのに特に適している。一実施形態では、前記木炭非含有固形寒天培地で培養されたレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)菌は、緩衝酵母エキス及び水に溶解したウマ血液を含む、好ましくは無血清(例えば、血清を欠いた)である対照培地で同等の条件下で培養されたレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)菌と比較したときに、抗生物質アジスロマイシンに対する感受性が増加していた。前記「緩衝酵母エキス及び水に溶解したウマ血液」は、酵母エキス(1%w/v)、ACES緩衝剤(50mM)、ピロリン酸第2鉄(0.25g/L)、α-ケトグルタル酸(1g/L)、L-システイン(40g/L)、寒天(例えば、選択寒天)(1%w/v)、水で溶解したウマの血液(10%v/v)、及びddHO(合計を100%にする残りの%)を含み得る、又はそれらからなり得る。
【0153】
一実施形態では、前記木炭非含有固形寒天培地で培養されたレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)菌に対する抗生物質アジスロマイシンのMIC50は0.06mg/ml未満である。MIC50は、抗生物質(例えば、アジスロマイシン)の最低濃度であり、抗生物質の非存在下であるが、それ以外は同等の条件下で培養された対照での増殖と比較して、細菌の増殖を50%減少させる。これは、「アジスロマイシンスクリーニング」で適切に試験され、このアジスロマイシンスクリーニングは、(a)レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)を、少なくとも0.005mg/Lの濃度で抗生物質アジスロマイシンを含む、本発明の木炭非含有固形寒天培地と接触させること;(b)前記培地をインキュベートすること;及び(c)工程(a)~(b)を繰り返し繰り返すことを含み、各繰り返し工程の培地は、前記抗生物質の非存在下でインキュベートされた対照での増殖と比較して細菌の増殖を50%減少させる前記抗生物質アジスロマイシンの濃度が決定されるまで、前記抗生物質アジスロマイシンの濃度を増加させる(例えば、0.01mg/ml、0.03mg/L、0.08mg/L、0.1mg/L、又は0.25mg/L)ことを含む。前記レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)は血清型1であり得る。
【0154】
一実施形態では、本発明の木炭非含有固形寒天培地は、4.5%(v/v)未満(例えば、4%(v/v)未満、3%(v/v)未満、2%(v/v)未満、又は1%(v/v)未満)の赤血球含有量を含む。
【0155】
レジオネラ(Legionella)菌は、レジオネラ(Legionella)属の任意の種であり得る。一実施形態では、レジオネラ(Legionella)は、以下の種から選択される1つ又は複数である:レジオネラ(Legionella)は以下の種から選択される1つ又は複数である:レジオネラ・アデライデンシス(Legionella adelaidensis)、L.アニサ(L.anisa)、L.ベリアルデンシス(L.beliardensis)、L.ビルミンガメンシス(L.birminghamensis)、L.ボゼマナエ(L.bozemanae)、L.ブルネンシス(L.brunensis)、L.ブサネンシス(L.busanensis)、L.カーディアック(L. cardiac)、L.チェルリ(L.cherrii)、L.シンシナチエンシス(L. cincinnatiensis)、L.クレムソネンシス(L.clemsonensis)、L.ドナルドソニイ(L.donaldsonii)、L.ドランコーティ(L.drancourtii)、L.ドレスデンシス(L.dresdenensis)、L.ドロザンスキ(L.drozanskii)、L.デュモフィ(L. dumoffii)、L.エリスラ(L.erythra)、L.フェアフィールデンシス(L. fairfieldensis)、L.ファロニイ(L.fallonii)、L.フェエレイ(L.feeleii)、L.ゲエスチアナ(L.geestiana)、L.ゲノモスペシエス(L.genomospecies)、L.ゴルマニイ(L.gormanii)、L.グラチアナ(L.gratiana)、L.グレシレンシス(L.gresilensis)、L.ハッケリアエ(L.hackeliae)、L.インプレチソリ(L.impletisoli)、L.イスラエレンシス(L.israelensis)、L.ジャメストウニエンシス(L.jamestowniensis)、カンジタスL.ジェオニイ(Candidatus L. jeonii)、L.ジョルダニス(L.jordanis)、L.ランシンジェンシス(L. lansingensis)、L.ロンジニエンシス(L.londiniensis)、L.ロングビーカエ(L.longbeachae)、L.リチカ(L.lytica)、L.マセアチェルニイ(L. maceachernii)、L.マシリエンシス(L.massiliensis)、L.ミクダデイ(L. micdadei)、L.モンロビカ(L.monrovica)、L.モラビカ(L.moravica)、L.ナガサキエンシス(L.nagasakiensis)、L.ナウタルム(L.nautarum)、L.ノルランディカ(L.norrlandica)、L.オアクリドゲンシス(L.oakridgensis)、L.パリシエンシス(L.parisiensis)、L.ピッツブルゲンシス(L.pittsburghensis)、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)、L.クアテイレンシス(L.quateirensis)、L.キンリバニイ(L.quinlivanii)、L.ロウボサミイ(L.rowbothamii)、L.ルブリルセンス(L.rubrilucens)、L.セインセレンシ(L.sainthelensi)、L.サンチクルシス(L.santicrucis)、L.シャケスペアレイ(L.shakespearei)、L.スピリテンシス(L.spiritensis)、L.ステエレイ(L.steelei)、L.ステイゲルワルチイ(L.steigerwaltii)、L.サオウジエンシス(L.aoudiensis)、L.タウリネンシス(L.taurinensis)、L.サーマリス(L. thermalis)、L.タクソネンシス(L.tucsonensis)、L.ツニシエンシス(L.tunisiensis)、L.ワドスワルチイ(L.wadsworthii)、L.ワルテルシイ(L.waltersii)、L.ワルスレイエンシス(L.worsleiensis)、L.ヤブウチアエ(L.yabuuchiae)。
【0156】
一実施形態では、レジオネラ(Legionella)は、以下の種から選択される1つ又は複数である:L.アデライデンシス(L.adelaidensis)、L.アニサ(L.anisa)、L.ベリアルデンシス(L.beliardensis)、L.ビルミンガメンシス(L. birminghamensis)、L.ボゼマナエ(L.bozemanae)、L.ブルネンシス(L. brunensis)、L.ブサネンシス(L.busanensis)、L.チェルリ(L.cherrii)、L.シンシナチエンシス(L.cincinnatiensis)、L.ドナルドンシイ(L. donaldsonii)、L.ドレスデンシス(L.resdenensis)、デュモフィ(L.dumoffii)、L.エリスラ(L.erythra)、L.フェアフィールデンシス(L.fairfieldensis)、L.フェエレイ(L.feeleii)、L.ゲエスチアナ(L.geestiana)、L.ゴルマニイ(L.gormanii)、L.グラチアナ(L.gratiana)、L.グレシレンシス(L.gresilensis)、L.ハッケリアエ(L.hackeliae)sg1、L.インプレチソリ(L.impletisoli)、L.イスラエレンシス(L.israelensis)、L.ジャメストウニエンシス(L. jamestowniensis)、L.ジョルダニス(L.jordanis)、L.ランシンジェンシス(L. lansingensis)、L.ロンジニエンシス(L.londiniensis)、L.ロングビーカエ(L.longbeachae)、L.マセアチェルニイ(L.maceachernii)、L.ミクダデイ(L.micdadei)、L.ミクダデイ(L.micdadei)、L.モラビカ(L.moravica)、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)、L.ナガサキエンシス(L.nagasakiensis)、L.タウリネンシス(L.taurinensis)、L.ワドスワルチイ(L.wadsworthii)、L.ヤブウチアエ(L.yabuuchiae)、L.ジースチアナ(L.geestiana)、L.ワドスワルチイ(wadsworthii)、L.ゴルマニイ(L.gormanii)、L.ヤブウチアエ(L.yabuuchiae)、L.グラチアナ(L.gratiana)、L.ナウタルム(L.nautarum)、L.オアクリドゲンシス(L.akridgensis)、L.パリシエンシス(L.parisiensis)、L.クアテイレンシス(L. quateirensis)、L.キンリバニイイ(L.quinlivanii)sg1、L.キンリバニイイ(L.quinlivanii)sg2、L.ルブリルセンス(L.rubrilucens)、L.セインセレンシ(L.sainthelensi)、L.セインセレンシ(L.sainthelensi)、L.シャケスペアレイ(L.shakespearei)、L.スピリテンシス(L.spiritensis)、L.タクソネンシス(L.tucsonensis)、L.ステイゲルワルチイ(L.steigerwaltii)、L.ワルスレイエンシス(L.worsleiensis)、L.ステエレイ(L.steelei)。
【0157】
一実施形態では、レジオネラ(Legionella)は、以下の種から選択される1つ又は複数である:L.ニューモフィラ(L.pneumophila)、L.ロングビーカエ(L.longbeachae)、L.フェエレイ(L.feeleii)、L.ミクダデイ(L.micdadei)、及びL.アニサ(L.anisa)。
【0158】
前記L.ボゼマナエ(L.bozemanae)は、L.ボゼマナエ(L.bozemanae)血清型1(SG1)又はL.ボゼマナエ(L.bozemanae)血清型2(SG2)に由来し得る。前記L.ハッケリアエ(L.hackeliae)は、L.ハッケリアエ(L.hackeliae)血清型1(SG1)又はL.ハッケリアエ(L.hackeliae)血清型2(SG2)に由来し得る。前記L.ロングビーカエ(L.longbeachae)は、L.ロングビーカエ(L.longbeachae)血清型1(SG1)又はL.ロングビーカエ(L.longbeachae)血清型2(SG2)に由来し得る。前記L.ミクダデイ(L.micdadei)は、L.ミクダデイ(L. micdadei)tatlock又はL.ミクダデイ(L.micdadei)hebaであり得る。
【0159】
好ましい実施形態では、レジオネラ(Legionella)はレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)である。前記レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)は、以下の菌株のうちの1つ又は複数に由来し得る:SG1、SG6、SG7、SG8、SG9、SG10、SG11、SG12、SG13、SG14、SG15、及びSG16。
【0160】
一実施形態では、レジオネラ(Legionella)は、以下から選択される1つ又は複数のレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)株(例えば、単離株)である:L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg1 Pontiac-1、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg1 Benidorm 030E、L.ニューモフィラ(L. pneumophila)sg1 OLDA、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg1 Allentown-1、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg1 Bellingham-1、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg1 Knoxville-1、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)s、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg1 Oxford 4032E、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg1 Heysham-1、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg6 Chicago-2、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg7 Chicago 8、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)s、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg9 IN-23-GI-C2、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg10 Leiden-1、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg11 797-PA-H、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg12 570-CO-H、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg13、L.ニューモフィラ(L. pneumophila)sg14 1169-MN-H、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg15 Lansing-3、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg16 Jena-1、L.ニューモフィラ(L. pneumophila)sg1 Camperdown-1、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg5 Cambridge-2、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg2 Togus-1、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg5 Dallas、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg3 Bloomington-2、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg6 Oxford-1、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)亜種fraseri sg4 Los Angeles-1、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)亜種pascullei MICU-B、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)亜種pascullei U7W、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg1 Cambridge-1 (NCTC 11231)、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)亜種pascullei U8W、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg1 Washington、L.ニューモフィラ(L. pneumophila)sg1 Philadelphia-2(NCTC 11193)、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg1 Kingston-1、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)sg1 W872。
【0161】
一実施形態では、レジオネラ(Legionella)は、NCTC 11233、NCTC 11406、NCTC 11985、NCTC 12179、NCTC 12180、NCTC 12181、及びNCTC 12174から選択される1つ又は複数のレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)株(例えば、分離株)である。例えば、レジオネラ(Legionella)は、NCTC 11233及びNCTC 11406から選択される1つ又は複数のレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)株であり得る。
【0162】
本発明の最適な成分を解明している間、本発明者は、驚くべきことに、いくつかのアルカリ金属及びアルカリ土類金属(特に塩として)がレジオネラ(Legionella)の抑制及び/又は処理に有用であることを見出した。
【0163】
従って、本発明の態様及び実施形態は、ナトリウム、リチウム、ルビジウム、及びセシウムなどのアルカリ土類金属カチオン、並びにマグネシウム、カルシウム、ベリリウム、ストロンチウム、及びバリウムなどのアルカリ金属カチオンがレジオネラ(Legionella)の増殖に対して抑制的(例えば、毒性)であるという驚くべき発見に基づいている。マグネシウムカチオン、ベリリウムカチオン、及びカルシウムカチオンは、特にレジオネラ(Legionella)に対して抑制的(例えば、毒性)であることが分かっている。
【0164】
この技術的効果は、前記カチオンを含む塩が、例えば緩衝剤として他の細菌培地への添加剤として従来使用されてきたため非常に予想外である。さらに、カリウムカチオン(アルカリ金属)は、増殖を抑制しない(例えば、pH調整のための)従来のBCYE培地に日常的に見られ、さらに予想外に関連金属の抑制効果を果たす。
【0165】
一実施形態では、本発明の木炭非含有固形寒天培地は、アルカリ土類金属含有塩、アルカリ金属含有塩、又はそれらの任意の組み合わせの阻害濃度を含まない。一実施形態では、本発明の木炭非含有固形寒天培地は、アルカリ土類金属含有塩、アルカリ金属含有塩、又はそれらの組み合わせを阻害濃度未満の濃度で含む。
【0166】
「阻害濃度」は、レジオネラ(Legionella)菌の増殖を阻害する(例えば、抑制する)アルカリ土類金属含有塩、アルカリ金属含有塩、又はそれらの組み合わせの濃度を意味する。
【0167】
一実施形態では、アルカリ土類金属含有塩、アルカリ金属含有塩、又はそれらの組み合わせの「阻害濃度」は、約200ミリモル(mM)以上である。従って、本発明の木炭非含有固形寒天培地は、200mM未満の濃度のアルカリ土類金属含有塩、アルカリ金属含有塩、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0168】
一実施形態では、アルカリ金属含有塩は、ナトリウム含有塩、リチウム含有塩、及びルビジウム含有塩から選択される1つ又は複数である。
【0169】
一実施形態では、アルカリ金属含有塩は、リチウム含有塩及びルビジウム含有塩から選択される1つ又は複数である。
【0170】
一実施形態では、アルカリ土類金属含有塩は、マグネシウム含有塩、カルシウム含有塩、ベリリウム含有塩、ストロンチウム含有塩、及びバリウム含有塩から選択される1つ又は複数である。
【0171】
一実施形態では、アルカリ土類金属含有塩は、マグネシウム含有塩、カルシウム含有塩、ベリリウム含有塩、及びストロンチウム含有塩から選択される1つ又は複数である。
【0172】
一実施形態では、本発明の木炭非含有固形寒天培地は、阻害濃度未満のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む。一実施形態では、本発明の木炭非含有固形寒天培地は、阻害濃度未満のアルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含む。
【0173】
一実施形態では、アルカリ土類金属含有塩の阻害濃度は、約175mM以上、約150mM以上、約125mM以上、約100mM以上、約75mM以上、約50mM以上、約25mM以上、約10mM以上、又は約3mM以上である。一実施形態では、アルカリ金属含有塩の阻害濃度は、約175mM、約150mM、約125mM、約100mM、約75mM、約50mM、約25mM、約10mM、又は約3mMである。
【0174】
一実施形態では、本発明の木炭非含有固形寒天培地は、約175mM以下、約150mM以下、約125mM以下、約100mM以下、75mM以下、約50mM以下、約25mM以下、約10mM以下、又は約3mM以下の濃度のアルカリ土類金属含有塩及び/又はアルカリ金属含有塩を含む。
【0175】
一実施形態では、本発明の木炭非含有固形寒天培地は、約175mM以下、約150mM以下、約125mM以下、約100mM以下、約75mM以下、約50mM以下、約25mM以下、約10mM以下、又は約3mM以下の濃度のアルカリ土類金属イオン及び/又はアルカリ金属イオンを含む。
【0176】
好ましい実施形態では、前記アルカリ金属含有塩は、ナトリウム含有塩、リチウム含有塩、ルビジウム含有塩、及びセシウム含有塩から選択される1つ又は複数である。
【0177】
好ましい実施形態では、前記アルカリ土類金属含有塩は、マグネシウム含有塩、カルシウム含有塩、ベリリウム含有塩、及びストロンチウム含有塩から選択される1つ又は複数である。
【0178】
一実施形態では、ナトリウム含有塩の阻害濃度は、約200mM以上、約175mM、150mM以上、約125mM以上、約100mM以上、約75mM以上、約50mM以上、又は約25mM以上である。好ましくは、ナトリウム含有塩の阻害濃度は約150mMである。
【0179】
一実施形態では、リチウム含有塩の阻害濃度は、約200mM以上、約175mM以上、約150mM以上、約125mM以上、約100mM以上、約75mM以上、約50mM以上、約25mM以上、約10mM以上、又は約3mM以上である。好ましくは、リチウム含有塩の阻害濃度は約75mMである。
【0180】
一実施形態では、ルビジウム含有塩の阻害濃度は、約200mM以上、約175mM以上、約150mM以上、約125mM以上、約100mM以上、約75mM以上、約50mM以上、約25mM以上、約10mM以上、又は約3mM以上である。好ましくは、ルビジウム含有塩の阻害濃度は約150mMである。
【0181】
一実施形態では、セシウム含有塩の阻害濃度は、約200mM以上、約175mM以上、約150mM以上、約125mM以上、約100mM以上、約75mM以上、約50mM以上、約25mM以上、約10mM以上、又は約3mM以上である。好ましくは、セシウム含有塩の阻害濃度は約18mMである。
【0182】
一実施形態では、マグネシウム含有塩の阻害濃度は、約175mM以上、約150mM以上、約125mM以上、約100mM以上、約75mM以上、約50mM以上、又は約25mM以上である。好ましくは、マグネシウム含有塩の阻害濃度は約32mM以上である。
【0183】
一実施形態では、カルシウム含有塩の阻害濃度は、約175mM以上、約150mM以上、約125mM以上、約100mM以上、約75mM以上、約50mM以上、約25mM以上、約10mM以上、又は約3mM以上である。好ましくは、カルシウム含有塩の阻害濃度は約9mM以上である。
【0184】
一実施形態では、ベリリウム含有塩の阻害濃度は、約175mM以上、約150mM以上、約125mM以上、約100mM以上、約75mM以上、約50mM以上、約25mM以上、約10mM以上、又は約3mM以上である。好ましくは、ベリリウム含有塩の阻害濃度は約4mM以上である。
【0185】
一実施形態では、ストロンチウム含有塩の阻害濃度は、約175mM以上、約150mM以上、約125mM以上、約100mM以上、約75mM以上、約50mM以上、約25mM以上、約10mM以上、又は約3mM以上である。好ましくは、ストロンチウム含有塩の阻害濃度は約18mM以上である。
【0186】
一実施形態では、バリウム含有塩の阻害濃度は、約175mM以上、約150mM以上、約125mM以上、約100mM以上、約75mM以上、約50mM以上、約25mM以上、約10mM以上、又は約3mM以上である。好ましくは、バリウム含有塩の阻害濃度は約4mM以上である。
【0187】
好ましい実施形態では、本発明の木炭非含有固形寒天培地は:約150mM未満の濃度のナトリウム含有塩、約75mM未満の濃度のリチウム含有塩、約150mM未満の濃度のルビジウム含有塩、約18mM未満の濃度のセシウム含有塩、約32mM未満の濃度のマグネシウム含有塩;約9mM未満の濃度のカルシウム含有塩、約4mM未満の濃度のベリリウム含有塩、約18mM未満の濃度のストロンチウム含有塩、及び/又は約4mM未満の濃度のバリウム含有塩を含む。
【0188】
一実施形態では、本発明の木炭非含有固形寒天培地は、アルカリ土類金属カチオン及び/又はアルカリ金属カチオンを含まない。適切には、本発明の木炭非含有固形寒天培地は、アルカリ土類金属含有塩もアルカリ金属含有塩も含まない。
【0189】
一実施形態では、本発明の木炭非含有固形寒天培地は、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、ルビジウムカチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、ベリリウムカチオン、及び/又はストロンチウムカチオンを含まない。適切には、本発明の木炭非含有固形寒天培地は、ナトリウム含有塩、リチウム含有塩、ルビジウム含有塩、マグネシウム含有塩、カルシウム含有塩、ベリリウム含有塩、ストロンチウム含有塩、及びそれらの組み合わせのいずれも含まない。
【0190】
一実施形態では、本発明の木炭非含有固形寒天培地は、ナトリウムカチオン、マグネシウムカチオン、及び/又はカルシウムカチオンを含まない。適切には、本発明の培地は、ナトリウム含有塩、マグネシウム含有塩、及び/又はカルシウム含有塩を含まない。
【0191】
レジオネラ(Legionella)を耐えられない濃度のこれらのカチオン及び/又は塩に曝露することにより、本発明者らは、レジオネラ(Legionella)の増殖を抑制するための方法、並びに、例えば消毒剤及び治療法としてのこれらのカチオン及び/又は塩の対応する使用を開発した。
【0192】
本発明の別の態様は、レジオネラ(Legionella)菌の増殖を抑制するための方法を提供し、前記方法は、レジオネラ(Legionella)菌を含む場所、レジオネラ(Legionella)菌を含むと疑われる場所、又はレジオネラ(Legionella)菌を含むリスクのある場所にアルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩を添加することを含み:
(a)前記アルカリ金属含有塩は、ナトリウム含有塩、リチウム含有塩、ルビジウム含有塩、及びセシウム含有塩から選択される1つ又は複数であり;且つ
(b)前記アルカリ土類金属含有塩は、マグネシウム含有塩、カルシウム含有塩、ベリリウム含有塩、ストロンチウム含有塩、及びバリウム含有塩から選択される1つ又は複数であり;
前記添加は、約1mM~約200mMの局所濃度の前記アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属塩を前記場所に提供する。
【0193】
さらなる態様は、レジオネラ(Legionella)菌を含む場所、レジオネラ(Legionella)菌を含むと疑われる場所、又はレジオネラ(Legionella)菌を含むリスクのある場所でレジオネラ(Legionella)菌の増殖を抑制するためのアルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩の使用を提供し、
(a)前記アルカリ金属含有塩は、ナトリウム含有塩、リチウム含有塩、ルビジウム含有塩、及びセシウム含有塩から選択される1つ又は複数であり;且つ
(b)前記アルカリ土類金属含有塩は、マグネシウム含有塩、カルシウム含有塩、ベリリウム含有塩、ストロンチウム含有塩、及びバリウム含有塩から選択される1つ又は複数であり;
前記使用は、約1mM~約200mMの局所濃度の前記アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属塩を前記場所に提供することを含む。
【0194】
一実施形態では、前記アルカリ金属含有塩は、リチウム含有塩、ルビジウム含有塩、及びセシウム含有塩から選択される1つ又は複数である。一実施形態では、前記アルカリ金属含有塩は、ナトリウム含有塩、リチウム含有塩、及びルビジウム含有塩から選択される1つ又は複数である。一実施形態では、前記アルカリ金属含有塩は、リチウム含有塩及びルビジウム含有塩から選択される1つ又は複数である。
【0195】
一実施形態では、前記アルカリ土類金属含有塩は、マグネシウム含有塩、カルシウム含有塩、ベリリウム含有塩、及びストロンチウム含有塩から選択される1つ又は複数である。一実施形態では、前記アルカリ土類金属含有塩は、マグネシウム含有塩及びカルシウム含有塩から選択される1つ又は複数である。
【0196】
「抑制」という用語は、「~の増殖を阻害すること」又は「殺すこと」を意味し得る。「阻害する」又は「阻害」という用語は、レジオネラ(Legionella)菌「の増殖を遅らせる」という用語と同義である。一実施形態では、本発明のアルカリ土類金属含有塩及び/又はアルカリ金属含有塩は、レジオネラ(Legionella)菌を「殺す」ことができる、又はレジオネラ(Legionella)菌を「殺すために使用」することができる。「抑制」という用語はまた、レジオネラ(Legionella)菌の増殖を防止することを包含する(例えば、レジオネラによる汚染を防止するための前処理として添加される場合)。
【0197】
ナトリウム含有塩、リチウム含有塩、ルビジウム含有塩、カルシウム含有塩、ベリリウム含有塩、及び/又はストロンチウム含有塩のこの添加は、レジオネラ(Legionella)の増殖を抑制するための非毒性の方法を意味する。従って、前記塩は、腐食性、有毒性、及び/又は毒性であり、典型的には、使用後に完全に洗い流す必要がある典型的な消毒剤(例えば、漂白剤、塩素)に対する改善を示す。さらに、レジオネラ(Legionella)は一般に水系で繁殖する水生細菌であるため、そのような可溶性塩を使用すると、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、ルビジウムカチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、ベリリウムカチオン、及び/又はストロンチウムカチオンが水中に放出され、水生レジオネラ(Legionella)を標的にすることが可能となる。マグネシウム含有塩(例えば、硫酸マグネシウム)は現在、喘息発作の処置に使用されており(ネブライザー又は静脈内注射のいずれかによって)、医薬品としての安全な使用を示している。カルシウムサプリメントは、定期的に摂取され、そして、もちろんナトリウム含有塩には食卓塩が含まれる。さらに、本発明者らは、本発明の塩が高いLD50を有することを実証し、対象への投与に対するそれらの適合性をさらに例証する(実施例5を参照)。
【0198】
一実施形態では、前記「添加する」工程は、本発明のアルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩を水系に添加することを含む。従って、一実施形態では、前記場所は水である。一実施形態では、本発明のアルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩が添加される場所は、冷却塔、スイミングプール、家庭用給水システム、シャワー製氷機、冷蔵キャビネット、ジャグジー、温泉、又は噴水から選択される1つ又は複数の場所である。場所は、飲料水、スイミングプールの水、噴水の水、温泉の水、ジャグジーの水、下水の水、パイプ内の水、及び/又はロボットシステム内の水から選択される水を含み得る。
【0199】
好ましい実施形態では、前記場所は給湯器である。前記給湯器は、業務用給湯器又は家庭用給湯器であり得る。
【0200】
一実施形態では、本発明のアルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩が添加される場所は、医療機器、寝具、家具、壁、又は病院の床などの床を含む、又はそれらからなる。
【0201】
好ましい実施形態では、本発明のアルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩が水に添加される。
【0202】
アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、レジオネラ(Legionella)菌の増殖を抑制するために、本発明の方法及び使用において様々な濃度で使用することができる。
【0203】
好ましくは、それらが添加される場所内で一般に許容できる(例えば、ヒト及び/又は機器に対して)濃度が使用され、従って、その後に希釈/洗い流しの必要がない。これは、本発明のカチオン/塩が水を処理するために使用される場合に特に有利である。なぜなら、結果として生じる塩/カチオンの濃度は、水の使用可能性(例えば、スイミングプール内で)又は飲用性(例えば、新鮮な飲料水として)に悪影響を及ぼさないからである。例えば、使用される塩の濃度は、典型的には、天然源に見られる濃度と同様の飲料水中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属カチオンの濃度になる。
【0204】
これは、レジオネラ(Legionella)のワクチンが現段階では入手できないため非常に有利であり、従って、レジオネラ(Legionella)を抑制するための水系の維持は、公共の安全にとって非常に重要である。
【0205】
一実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所(例えば、水)における前記アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属塩の局所濃度を約1mM~約500mM、約1mM~約400mM、約1mM~約300mM、約1mM~約200mM、約1mM~約100mM、約1mM~約50mM、又は約1mM~約10mMにすることを含む。
【0206】
一実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属塩の局所濃度を約1mM~約300mM、約50mM~約250mM、約100mM~約200mMにすることを含む。好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩の局所濃度を約125mM~約175mMにすることを含む。
【0207】
一実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記ナトリウム含有塩の局所濃度を約1mM~約300mM、約50mM~約250mM、又は約100mM~約200mMにすることを含む。好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記ナトリウム含有塩の局所濃度を約125mM~約175mMにすることを含む。より好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記ナトリウム含有塩の局所濃度を約150mMにすることを含む。
【0208】
一実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記リチウム含有塩の局所濃度を約1mM~約300mM、約50mM~約250mM、又は約100mM~約200mMにすることを含む。好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記リチウム含有塩の局所濃度を約50mM~約100mMにすることを含む。より好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記リチウム含有塩の局所濃度を約75mMにすることを含む。
【0209】
一実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記ルビジウム含有塩の局所濃度を約1mM~約300mM、約50mM~約250mM、又は約100mM~約200mMにすることを含む。好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記ルビジウム含有塩の局所濃度を約125mM~約175mMにすることを含む。より好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記ルビジウム含有塩の局所濃度を約150mMにすることを含む。
【0210】
一実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記セシウム含有塩の局所濃度を約1mM~約100mM、約2mM~約50mM、約3mM~約10mM、又は4mM~約10mMにすることを含む。好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記セシウム含有塩の局所濃度を約5mM~約40mMにすることを含む。より好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記セシウム含有塩の局所濃度を約18mMにすることを含む。
【0211】
一実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記マグネシウム含有塩の局所濃度を約1mM~約200mM、約10mM~約150mM、約20mM~約100mM、又は約30mM~約50mMにすることを含む。好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記マグネシウム含有塩の局所濃度を約25mM~約100mMにすることを含む。より好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記マグネシウム含有塩の局所濃度を約40mM(例えば、37mM)にすることを含む。
【0212】
一実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記カルシウム含有塩の局所濃度を約1mM~約100mM、約2mM~約50mM、約3mM~約10mM、又は約4mM~約10mMにすることを含む。好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記カルシウム含有塩の局所濃度を約3mM~約20mMにすることを含む。より好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記カルシウム含有塩の局所濃度を約9mMにすることを含む。
【0213】
一実施形態では、前記添加する工程は、前記場所における前記ベリリウム含有塩の濃度を約1mM~約100mM、約2mM~約50mM、約3mM~約10mM、又は4mM~約10mMにすることを含む。好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記ベリリウム含有塩の局所濃度を約1mM~約7mMにすることを含む。より好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記ベリリウム含有塩の局所濃度を約4mMにすることを含む。
【0214】
一実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記ストロンチウム含有塩の局所濃度を約1mM~約100mM、約2mM~約50mM、約3mM~約10mM、又は4mM~約10mMにすることを含む。好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記ストロンチウム含有塩の局所濃度を約3mM~約20mMにすることを含む。より好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記ストロンチウム含有塩の局所濃度を約18mMにすることを含む。
【0215】
一実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記バリウム含有塩の局所濃度を約1mM~約100mM、約2mM~約50mM、約3mM~約10mM、又は4mM~約10mMにすることを含む。好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記バリウム含有塩の局所濃度を約1mM~約20mMにすることを含む。より好ましい実施形態では、前記添加する工程又は使用は、前記場所における前記バリウム含有塩の局所濃度を約4mMにすることを含む。
【0216】
アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、レジオネラ(Legionella)制御に適した1つ又は複数のさらなる化学物質、例えば、塩素、臭素、二酸化塩素、次亜塩素酸ナトリウム、塩化臭素などのハロゲンを含む酸化性殺生物剤、並びにBNPD(2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール)、グルタルアルデヒド、ジチオカルバメート、イソチアゾリン、DBNPA(ジ-ブロモ-ニトリロ-プロピオンアミド)、及び第4級アンモニウム化合物などの有機化合物を含む非酸化型殺生物剤と一緒に添加することができる。
【0217】
さらに、本発明のアルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、レジオネラ(Legionella)による感染症を処置するための治療法に利用することができる。従って、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、レジオネラ症の処置及び/又は予防として使用することができる。
【0218】
従って、本発明の別の態様は、レジオネラ(Legionella)による感染症を処置する方法で使用するためのアルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩を提供し、
(a)前記アルカリ金属含有塩は、ナトリウム含有塩、リチウム含有塩、ルビジウム含有塩、及びセシウム含有塩から選択される1つ又は複数であり;且つ
(b)前記アルカリ土類金属含有塩は、マグネシウム含有塩、カルシウム含有塩、ベリリウム含有塩、ストロンチウム含有塩、及びバリウム含有塩から選択される1つ又は複数であり;
前記方法は、噴霧、定量吸入器、静脈内、又はそれらの任意の組み合わせから選択される1つ又は複数によって、前記アルカリ金属含有塩及び/又は前記アルカリ土類金属含有塩を対象に投与することを含む。
【0219】
一実施形態では、前記アルカリ金属含有塩は、ナトリウム含有塩、リチウム含有塩、及びルビジウム含有塩から選択される1つ又は複数である。一実施形態では、前記アルカリ金属含有塩は、リチウム含有塩、ルビジウム含有塩、及びセシウム含有塩から選択される1つ又は複数である。適切には、前記アルカリ金属含有塩は、リチウム含有塩及びルビジウム含有塩から選択される1つ又は複数である。
【0220】
一実施形態では、前記アルカリ土類金属含有塩は、マグネシウム含有塩、カルシウム含有塩、ベリリウム含有塩、及びストロンチウム含有塩から選択される1つ又は複数である。一実施形態では、前記アルカリ土類金属含有塩は、マグネシウム含有塩、カルシウム含有塩、及びストロンチウム含有塩から選択される1つ又は複数である。適切には、前記アルカリ土類金属含有塩は、マグネシウム含有塩及びカルシウム含有塩から選択される1つ又は複数である。
【0221】
好ましい実施形態では、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は噴霧によって投与される。
【0222】
「噴霧」は、物質、例えば治療薬を投与する方法である。噴霧には、物質(例えば、治療薬)又は溶液を、肺に直接吸入されるエアロゾルに変換することが含まれる。有利なことに、噴霧は、呼吸可能な粒子の形態の物質の投与を可能にして、肺及び気道の他の器官/組織(例えば、鼻、口、咽頭、喉頭、気管、気管支、及び細気管支)への迅速で効率的な投与を可能にする。
【0223】
従って、一実施形態では、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、典型的には、噴霧装置(例えば、ネブライザー)によって投与される。適切な噴霧装置には、呼吸活性化ネブライザー(例えば、Trudell Medical Internationalから入手可能なAeroEclipse)、呼吸促進ネブライザー(例えば、Philips Respironicsから入手可能な適応エアロゾル送達(iNeb);又はVectura Group plcから入手可能なAKITA Jet)、振動メッシュネブライザー(Aerogenから入手可能なAeroneb Go,Pro;Omronから入手可能なMicroAir;Pariから入手可能なeFIow;ODEMから入手可能なTouchSpray)、又はBaby’sBreathから入手可能なThe Aerosol Hood(「Child Hood」)が含まれ得る。
【0224】
一実施形態では、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩を1~10%、2~8%、又は4~6%で含む組成物を含む噴霧によって投与される。一実施形態では、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、約1~20L/分、2~18L/分、4~16L/分、6~14L/分、又は8~12L/分のガス(酸素)流量で、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩を含む組成物を含む噴霧によって投与される。
【0225】
一実施形態では、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、約1~20L/分のガス(酸素)流量で、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩を1~10%、2~8%、又は4~6%で含む組成物を含む噴霧によって投与される。一実施形態では、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、約2~18L/分のガス(酸素)流量で、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩を1~10%、2~8%、又は4~6%で含む組成物を含む噴霧によって投与される。
【0226】
一実施形態では、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、約4~16L/分のガス(酸素)流量で、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩を1~10%、2~8%、又は4~6%で含む組成物を含む噴霧によって投与される。一実施形態では、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、約6~14L/分のガス(酸素)流量で、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩を1~10%、2~8%、又は4~6%で含む組成物を含む噴霧によって投与される。一実施形態では、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、約8~12L/分のガス(酸素)流量で、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩を1~10%、2~8%、又は4~6%で含む組成物を含む噴霧によって投与される。
【0227】
一実施形態では、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、定量吸入器によって投与される。定量吸入器には、喘息患者が物質(気管支拡張薬など)を吸入するために典型的に使用する種類の吸入(エアロゾルなど)装置が含まれ得る。適切な定量吸入器のそのような例の1つは、Boehringer IngelheimのRespimat Soft Mist吸入器である。
【0228】
一実施形態では、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、高流量鼻カニューレ送達によって投与される。
【0229】
一実施形態では、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、例えば静脈内注射によって静脈内投与される。適切な用量は、投与を受ける対象の体重1キログラム(kg)当たりのアルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩のグラム(g)又はミリグラム(mg)として表すことができる。一実施形態では、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、約5mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、35mg/kg、50mg/kg、65mg/kg、80mg/kg、又は95mg/kgの用量で静脈内投与することができる。適切には、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、約40mg/kgの用量で投与することができる。前記用量は、特に子供に適している。
【0230】
一実施形態では、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、約0.1g/kg、0.2g/kg、0.4g/kg、0.6g/kg、0.8g/kg、1g/kg、1.2g/kg、1.4g/kg、1.6g/kg、1.8g/kg、2g/kg、2.2g/kg、2.4g/kg、2.6g/kg、2.8g/kg、又は3g/kgの用量で静脈内投与することができる。一実施形態では、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、約2g/kgの用量で静脈内投与することができる。前記用量は、特に成人に適している。
【0231】
一実施形態では、前記アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、組成物(例えば、投与用)内に含まれる。前記組成物は、固体、液体、又は気化した組成物であり得る。適切には、前記組成物は、吸入及び/又は噴霧によって本発明の組成物を投与するための手段を提供する気化した組成物である。
【0232】
一実施形態では、組成物は、少なくとも約50mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、又は400mMの濃度のナトリウム含有塩を含む。好ましい実施形態では、組成物は、少なくとも約150mMの濃度のナトリウム含有塩を含む。
【0233】
一実施形態では、組成物は、少なくとも約20mM、50mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、又は400mMの濃度のリチウム含有塩を含む。好ましい実施形態では、組成物は、少なくとも約75mMの濃度のリチウム含有塩を含む。
【0234】
一実施形態では、組成物は、少なくとも約50mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、又は400mMの濃度のルビジウム含有塩を含む。好ましい実施形態では、組成物は、少なくとも約150mMの濃度のルビジウム含有塩を含む。
【0235】
一実施形態では、組成物は、少なくとも約5mM、10mM、25mM、50mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、又は400mMの濃度のセシウム含有塩を含む。好ましい実施形態では、組成物は、少なくとも約15mMの濃度のセシウム含有塩を含む。
【0236】
一実施形態では、組成物は、少なくとも約5mM、10mM、50mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、又は400mMの濃度のマグネシウム含有塩を含む。好ましい実施形態では、組成物は、少なくとも約30mM(例えば、少なくとも約32mM)の濃度のマグネシウム含有塩を含む。
【0237】
一実施形態では、組成物は、少なくとも約1mM、2mM、4mM、5mM、10mM、50mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、又は400mMの濃度のベリリウム含有塩を含む。好ましい実施形態では、組成物は、少なくとも約4mMの濃度のベリリウム含有塩を含む。
【0238】
一実施形態では、組成物は、少なくとも約1mM、2mM、4mM、5mM、10mM、50mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、又は400mMの濃度のカルシウム含有塩を含む。好ましい実施形態では、組成物は、少なくとも約9mMの濃度のカルシウム含有塩を含む。
【0239】
一実施形態では、組成物は、少なくとも約1mM、2mM、4mM、5mM、10mM、50mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、又は400mMの濃度のストロンチウム含有塩を含む。好ましい実施形態では、組成物は、少なくとも約18mMの濃度のストロンチウム含有塩を含む。
【0240】
一実施形態では、組成物は、少なくとも約1mM、2mM、4mM、5mM、10mM、50mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、又は400mMの濃度のバリウム含有塩を含む。好ましい実施形態では、組成物は、少なくとも約2mMの濃度のバリウム含有塩を含む。
【0241】
これは、レジオネラ(Legionella)だけでなく他の細菌でも抗生物質耐性が生じるリスクを軽減する、既存の抗生物質を使用する代わりの有利な代替手段を提供する。従って、本発明は、投与が容易であり、且つ既存の治療法に容易に組み込むことができるレジオネラ(Legionella)を処置するための治療法を提供する。
【0242】
一実施形態では、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、薬学的に許容される担体と一緒に投与される。
【0243】
一実施形態では、アルカリ土類金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、例えば食品と一緒に経口投与される。
【0244】
有利なことに、本発明のアルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩は、別の抗生物質を投与するのと同時に(例えば、同時に又は別個の投与工程で)投与することができる。前記抗生物質は、フルオロキノロン、アジスロマイシン、又はドキシサイクリンから選択される1つ又は複数であり得る。他の抗生物質も使用することができる。
【0245】
一実施形態では、ナトリウム含有塩は、塩化ナトリウム、HEPESナトリウム塩、無水酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物、アジドナトリウム、β-グリセロリン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム十水和物、水素化ホウ素ナトリウム、臭化ナトリウム、無水炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム十水和物(sodium carbonate decahydrous)、炭酸ナトリウム一水和物(sodium carbonate monohydrous)、亜塩素酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、クロロ酢酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0246】
一実施形態では、ナトリウム含有塩は硫酸ナトリウムである。好ましい実施形態では、ナトリウム含有塩は塩化ナトリウムである。
【0247】
一実施形態では、マグネシウム含有塩は、塩化マグネシウム、HEPESマグネシウム塩、無水酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム三水和物、アジドマグネシウム、β-グリセロリン酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、重亜硫酸マグネシウム、ホウ酸マグネシウム十水和物、水素化ホウ素マグネシウム、臭化マグネシウム、無水炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム十水和物(magnesium carbonate decahydrous)、炭酸マグネシウム一水和物(magnesium carbonate monohydrous)、亜塩素酸マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硝酸マグネシウム、亜硝酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、トリポリリン酸マグネシウム、クロロ酢酸マグネシウム、塩素酸マグネシウム、メタ重亜硫酸マグネシウム、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0248】
一実施形態では、マグネシウム含有塩は硫酸マグネシウムである。好ましい実施形態では、マグネシウム含有塩は塩化マグネシウムから選択される。
【0249】
一実施形態では、カルシウム含有塩は、塩化カルシウム、HEPESカルシウム塩、無水酢酸カルシウム、酢酸カルシウム三水和物、アジドカルシウム、β-グリセロリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、重炭酸カルシウム、重亜硫酸カルシウム、ホウ酸カルシウム十水和物、水素化ホウ素カルシウム、臭化カルシウム、無水炭酸カルシウム、炭酸カルシウム十水和物(calcium carbonate decahydrous)、炭酸カルシウム一水和物(calcium carbonate monohydrous)、亜塩素酸カルシウム、ヨウ化カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、トリポリリン酸カルシウム、クロロ酢酸カルシウム、塩素酸カルシウム、メタ重亜硫酸カルシウム、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0250】
一実施形態では、カルシウム含有塩は硫酸カルシウムである。好ましい実施形態では、カルシウム含有塩は塩化カルシウムである。
【0251】
一実施形態では、リチウム含有塩は、塩化リチウム、硫酸リチウム、水酸化リチウム、HEPESリチウム塩、無水酢酸リチウム、酢酸リチウム三水和物、アジドリチウム、β-グリセロリン酸リチウム、安息香酸リチウム、重炭酸リチウム、重亜硫酸リチウム、ホウ酸リチウム十水和物、水素化ホウ素リチウム、臭化リチウム、炭酸リチウム、無水炭酸リチウム、炭酸リチウム十水和物(lithium carbonate decahydrous)、炭酸リチウム一水和物(lithium carbonate monohydrous)、亜塩素酸リチウム、ヨウ化リチウム、硝酸リチウム、亜硝酸リチウム、ケイ酸リチウム、亜硫酸リチウム、トリポリリン酸リチウム、クロロ酢酸リチウム、塩素酸リチウム、メタ重亜硫酸リチウム、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0252】
一実施形態では、リチウム含有塩は硫酸リチウムである。好ましい実施形態では、リチウム含有塩は塩化リチウムである。
【0253】
一実施形態では、ルビジウム含有塩は、塩化ルビジウム、硫酸ルビジウム、水酸化ルビジウム、HEPESルビジウム塩、無水酢酸ルビジウム、酢酸ルビジウム三水和物、アジドルビジウム、β-グリセロリン酸ルビジウム、安息香酸ルビジウム、炭酸ルビジウム、重炭酸ルビジウム、重亜硫酸ルビジウム、ホウ酸ルビジウム十水和物、水素化ホウ素ルビジウム、臭化ルビジウム、無水炭酸ルビジウム、炭酸ルビジウム十水和物(rubidium carbonate decahydrous)、炭酸ルビジウム一水和物(rubidium carbonate monohydrous)、亜塩素酸ルビジウム、ヨウ化ルビジウム、硝酸ルビジウム、亜硝酸ルビジウム、ケイ酸ルビジウム、亜硫酸ルビジウム、トリポリリン酸ルビジウム、クロロ酢酸ルビジウム、塩素酸ルビジウム、メタ重亜硫酸ルビジウム、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0254】
一実施形態では、ルビジウム含有塩は硫酸ルビジウムである。好ましい実施形態では、ルビジウム含有塩は塩化ルビジウムである。
【0255】
一実施形態では、セシウム含有塩は、塩化セシウム、硫酸セシウム、水酸化セシウム、HEPESセシウム塩、無水酢酸セシウム、酢酸セシウム三水和物、アジドセシウム、β-グリセロリン酸セシウム、安息香酸セシウム、炭酸セシウム、重炭酸セシウム、重亜硫酸セシウム、ホウ酸セシウム十水和物、水素化ホウ素セシウム、臭化セシウム、無水炭酸セシウム、炭酸セシウム十水和物(caesium carbonate decahydrous)、炭酸セシウム一水和物(caesium carbonate monohydrous)、亜塩素酸セシウム、ヨウ化セシウム、硝酸セシウム、亜硝酸セシウム、ケイ酸セシウム、亜硫酸セシウム、トリポリリン酸セシウム、クロロ酢酸セシウム、塩素酸セシウム、メタ重亜硫酸セシウム、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0256】
一実施形態では、セシウム含有塩は硫酸セシウムである。好ましい実施形態では、セシウム含有塩は塩化セシウムである。
【0257】
一実施形態では、ベリリウム含有塩は、塩化ベリリウム、硫酸ベリリウム、水酸化ベリリウム、HEPESベリリウム塩、無水酢酸ベリリウム、酢酸ベリリウム三水和物、アジドベリリウム、β-グリセロリン酸ベリリウム、安息香酸ベリリウム、重炭酸ベリリウム、重亜硫酸ベリリウム、ホウ酸ベリリウム十水和物、水素化ホウ素ベリリウム、臭化ベリリウム、炭酸ベリリウム、無水炭酸ベリリウム、炭酸ベリリウム十水和物(beryllium carbonate decahydrous)、炭酸ベリリウム一水和物(beryllium carbonate monohydrous)、亜塩素酸ベリリウム、ヨウ化ベリリウム、硝酸ベリリウム、亜硝酸ベリリウム、ケイ酸ベリリウム、亜硫酸ベリリウム、トリポリリン酸ベリリウム、クロロ酢酸ベリリウム、塩素酸ベリリウム、メタ重亜硫酸ベリリウム、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0258】
一実施形態では、ベリリウム含有塩は硫酸ベリリウムである。好ましい実施形態では、ベリリウム含有塩は塩化ベリリウムである。
【0259】
一実施形態では、ストロンチウム含有塩は、塩化ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、HEPESストロンチウム塩、無水酢酸ストロンチウム、酢酸ストロンチウム三水和物、アジドストロンチウム、β-グリセロリン酸ストロンチウム、安息香酸ストロンチウム、重炭酸ストロンチウム、重亜硫酸ストロンチウム、ホウ酸ストロンチウム十水和物、水素化ホウ素ストロンチウム、臭化ストロンチウム、無水炭酸ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、炭酸ストロンチウム十水和物(strontium carbonate decahydrous)、炭酸ストロンチウム一水和物(strontium carbonate monohydrous)、亜塩素酸ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、亜硝酸ストロンチウム、ケイ酸ストロンチウム、亜硫酸ストロンチウム、トリポリリン酸ストロンチウム、クロロ酢酸ストロンチウム、塩素酸ストロンチウム、メタ重亜硫酸ストロンチウム、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0260】
一実施形態では、ストロンチウム含有塩は硫酸ストロンチウムである。好ましい実施形態では、ストロンチウム含有塩は塩化ストロンチウムである。
【0261】
一実施形態では、バリウム含有塩は、塩化バリウム、硫酸バリウム、水酸化バリウム、HEPESバリウム塩、無水酢酸バリウム、酢酸バリウム三水和物、アジドバリウム、β-グリセロリン酸バリウム、安息香酸バリウム、重炭酸バリウム、重亜硫酸バリウム、ホウ酸バリウム十水和物、水素化ホウ素バリウム、臭化バリウム、無水炭酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸バリウム十水和物(barium carbonate decahydrous)、炭酸バリウム一水和物(barium carbonate monohydrous)、亜塩素酸バリウム、ヨウ化バリウム、硝酸バリウム、亜硝酸バリウム、ケイ酸バリウム、亜硫酸バリウム、トリポリリン酸バリウム、クロロ酢酸バリウム、塩素酸バリウム、メタ重亜硫酸バリウム、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0262】
一実施形態では、バリウム含有塩は硫酸バリウムである。好ましい実施形態では、バリウム含有塩は塩化バリウムである。
【0263】
本発明の様々な方法に関連する実施形態は、固形微生物培地、その使用/その使用を含む方法に等しく適用され、逆も同様であることが意図されている。
【0264】
配列同一性
限定されるものではないが、グローバルな方法、ローカルな方法、及び、例えばセグメントアプローチ方法などのハイブリッド方法を含む、様々な配列アラインメント方法のいずれかを使用して、パーセント同一性を決定することができる。パーセント同一性を決定するためのプロトコルは、当業者の範囲内の日常的な手順である。グローバルな方法は、分子の最初から最後まで配列を整列させ、個々の残基対のスコアを合計し、ギャップペナルティを課すことによって最適なアラインメントを決定する。非限定的な方法には、例えば、CLUSTAL W(例えば、Julie D.Thompson et al.,CLUSTAL W:Improving the Sensitivity of Progressive Multiple Sequence Alignment Through Sequence Weighting,Position-Specific Gap Penalties and Weight Matrix Choice,22(22)Nucleic Acids Research 4673-4680(1994)を参照);及び反復改良(例えば、Osamu Gotoh,Significant Improvement in Accuracy of Multiple Protein.Sequence Alignments by Iterative Refinement as Assessed by Reference to Structural Alignments, 264(4) J.Mol.Biol.823-838 (1996)を参照)が含まれる。ローカルな方法は、すべての入力配列によって共有される1つ又は複数の保存されたモチーフを識別することによって配列を整列させる。非限定的な方法には、例えば、Match-box(例えば、Eric Depiereux and Ernest Feytmans,Match-Box:A Fundamentally New Algorithm for the Simultaneous Alignment of Several Protein Sequences, 8(5)CABIOS 501 -509 (1992)を参照);Gibbs sampling(例えば、C.E.Lawrence et al.,Detecting Subtle Sequence Signals:A Gibbs Sampling Strategy for Multiple Alignment,262(5131)Science 208-214(1993)を参照);Align-M(例えば、Ivo Van Walle et al.,Align-M-A New Algorithm for Multiple Alignment of Highly Divergent Sequences,20(9) Bioinformatics:1428-1435(2004)を参照)が含まれる。
【0265】
従って、パーセント配列同一性は、従来の方法によって決定される。例えば、Altschul et al.,Bull.Math.Bio.48:603-16,1986及びHenikoff and Henikoff, Proc.Natl.cad. Sci.USA 89:10915-19,1992を参照されたい。簡単に述べると、ギャップオープニングペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ1、及び以下に示されるHenikoff and Henikoff(前記)の「blosum 62」スコアリングマトリックス(アミノ酸は標準の1文字コードで示される)を用いてアラインメントスコアを最適化するように2つのアミノ酸配列を整列させる。
【0266】
2つ以上の核酸配列間又はアミノ酸配列間の「パーセント配列同一性」は、配列によって共有される同一の位置の数の関数である。従って、%同一性は、同一のヌクレオチド/アミノ酸の数をヌクレオチド/アミノ酸の総数で除して100を乗じたものとして計算することができる。%配列同一性の計算では、ギャップの数と、2つ以上の配列のアラインメントを最適化するために導入する必要がある各ギャップの長さとを考慮に入れることもできる。配列の比較、及び2つ以上の配列間のパーセント同一性の決定は、当業者によく知られているBLASTなどの特定の数学的アルゴリズムを使用して行うことができる。
【0267】
配列同一性を決定するためのアラインメントスコア
【0268】
【表2】
【0269】
次に、同一性パーセントは次のように計算される:
【数1】
【0270】
実質的に相同なポリペプチドは、1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加を有することを特徴とする。これらの変化は、好ましくは小さなものである、即ち、ポリペプチドの折り畳み又は活性に有意に影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換(以下を参照)及び他の置換;典型的には1~約30のアミノ酸の小さな欠失;並びにアミノ末端のメチオニン残基、最大約20~25残基の小さなリンカーペプチド、又はアフィニティータグなどの小さなアミノ末端又はカルボキシル末端の伸長である。
【0271】
保存的アミノ酸置換
塩基性: アルギニン
リジン
ヒスチジン
酸性: グルタミン酸
アスパラギン酸
極性: グルタミン
アスパラギン
疎水性: ロイシン
イソロイシン
バリン
芳香族: フェニルアラニン
トリプトファン
チロシン
小さい: グリシン
アラニン
セリン
スレオニン
メチオニン
【0272】
20の標準アミノ酸に加えて、非標準アミノ酸(4-ヒドロキシプロリン、6-N-メチルリジン、2-アミノイソ酪酸、イソバリン、及びα-メチルセリンなど)を、本発明のポリペプチドのアミノ酸残基の代わりに使用することができる。限られた数の非保存的アミノ酸、遺伝子コードによってコードされていないアミノ酸、及び非天然アミノ酸を、ポリペプチドアミノ酸残基の代わりに使用することができる。本発明のポリペプチドはまた、天然に存在しないアミノ酸残基を含み得る。
【0273】
天然に存在しないアミノ酸には、限定されるものではないが、トランス-3-メチルプロリン、2,4-メタノ-プロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシ-プロリン、N-メチルグリシン、アロ-スレオニン、メチル-スレオニン、ヒドロキシ-エチルシステイン、ヒドロキシエチルホモ-システイン、ニトログルタミン、ホモグルタミン、ピペコール酸、tert-ロイシン、ノルバリン、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニル-アラニン、4-アザフェニル-アラニン、及び4-フルオロフェニルアラニンが含まれる。天然に存在しないアミノ酸残基をタンパク質に組み込むためのいくつかの方法が当技術分野で公知である。例えば、化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAを使用してナンセンス変異が抑制されるインビトロ系を使用することができる。アミノ酸を合成する方法及びtRNAをアミノアシル化する方法は当技術分野で公知である。ナンセンス変異を含むプラスミドの転写及び翻訳は、大腸菌(E.coli)S30エキス並びに市販の酵素及びその他の試薬を含む無細胞系で行われる。タンパク質は、クロマトグラフィーによって精製される。例えば、Robertson et al.,J.Am.Chem.Soc.113:2722,1991;Ellman et al.,Methods Enzymol.202:301,1991;Chung et al.,Science 259:806-9,1993;及びChung et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:10145-9,1993)を参照されたい。第2の方法では、変異したmRNA及び化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAのマイクロインジェクションによってアフリカツメガエル(Xenopus)卵母細胞で翻訳が行われる(Turcatti et al.,J.Biol. Chem.271:19991-8,1996)。第3の方法では、大腸菌(E.coli)細胞は、置換される天然のアミノ酸(例えば、フェニルアラニン)の非存在下、及び所望の非天然のアミノ酸(複数可)(例えば、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン、又は4-フルオロフェニルアラニン)の存在下で培養される。天然に存在しないアミノ酸は、その天然の対応物の代わりにポリペプチドに組み込まれる。Koide et al.,Biochem.33:7470-6,1994を参照されたい。天然に存在するアミノ酸残基は、インビトロ化学修飾によって天然に存在しない種に変換することができる。化学修飾を場所特異的突然変異誘発と組み合わせて、置換の範囲をさらに拡大することができる(Wynn and Richards,ProteinSci.2:395-403,1993)。
【0274】
限られた数の非保存的アミノ酸、遺伝子コードによってコードされていないアミノ酸、非天然アミノ酸、及び天然に存在しないアミノ酸を本発明のポリペプチドのアミノ酸残基の代わりに使用することができる。
【0275】
本発明のポリペプチド中の必須アミノ酸は、部位特異的突然変異誘発又はアラニンスキャニング突然変異誘発などの当技術分野で公知の手順に従って同定することができる(Cunningham and Wells,Science 244:1081-5,1989)。生物学的相互作用の部位は、推定接触部位のアミノ酸の突然変異と組み合わせて、核磁気共鳴、結晶学、電子回折、又は光親和性標識などの技術によって決定されるように、構造の物理的分析によって決定することもできる。例えば、de Vos et al.,Science 255:306-12,1992;Smith et al.,J.Mol.Biol.224:899-904,1992;Wlodaver et al., FEBS Lett.309:59-64,1992を参照されたい。必須アミノ酸の同一性は、本発明のポリペプチドの関連する成分(例えば、転位成分又はプロテアーゼ成分)との相同性の分析から推測することもできる。
【0276】
Reidhaar-Olson and Sauer (Science 241:53-7,1988)又はBowie and Sauer (Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2152-6,1989)によって開示されている方法などの突然変異誘発及びスクリーニングの既知の方法を使用して複数のアミノ酸置換を行って試験することができる。簡単に述べると、これらの著者は、ポリペプチド内の2つ以上の位置を同時にランダム化し、機能的ポリペプチドを選択し、次いで突然変異ポリペプチドを配列決定して、各位置で許容される置換のスペクトルを決定する方法を開示している。使用できる他の方法には、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al.,Biochem. 30:10832-7,1991;Ladner et al.による米国特許第5,223,409号;Huseによる国際公開第92/06204号)及び領域特異的突然変異誘発(Derbyshire et al.,Gene 46:145,1986;Ner et al.,DNA 7:127,1988)が含まれる。
【0277】
Reidhaar-Olson and Sauer(Science 241:53-7,1988)又はBowie and Sauer (Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2152-6,1989)によって開示されている方法などの突然変異誘発及びスクリーニングの既知の方法を使用して複数のアミノ酸置換を行って試験することができる。簡単に述べると、これらの著者は、ポリペプチド内の2つ以上の位置を同時にランダム化し、機能的ポリペプチドを選択し、次いで突然変異ポリペプチドを配列決定して、各位置で許容される置換のスペクトルを決定する方法を開示している。使用できる他の方法には、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al.,Biochem.30:10832-7,1991;Ladner et al.による米国特許第5,223,409号;Huseによる国際公開第92/06204号)及び領域特異的突然変異誘発(Derbyshire et al.,Gene 46:145,1986;Ner et al.,DNA 7:127,1988)が含まれる。
【0278】
特段の規定がない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、本開示が属する分野の技術者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。Singleton,et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY,20 ED., John Wiley and Sons,New York (1994)、及びHale&Marham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY,Harper Perennial,NY(1991)は、本開示で使用される多数の用語の一般的な辞書を当業者に提供する。
【0279】
本開示は、本明細書に開示される例示的な方法及び材料に限定されず、本明細書に記載の方法及び材料と類似又は同等の任意の方法及び材料を、本開示の実施形態の実施又は試験に使用することができる。数値範囲には、範囲を定義する数値が含まれる。特段の記載がない限り、すべての核酸配列は、左から右に5’から3’の方向に書かれ;アミノ酸配列は、左から右にアミノからカルボキシの方向に書かれている。
【0280】
本明細書に示される見出しは、本開示の様々な態様又は実施形態を限定するものではない。
【0281】
アミノ酸は、本明細書では、アミノ酸の名称、3文字の略語、又は1文字の略語を使用して参照される。本明細書で使用される「タンパク質」という用語は、タンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを含む。本明細書で使用される場合、「アミノ酸配列」という用語は、「ポリペプチド」という用語及び/又は「タンパク質」という用語と同義である。場合によっては、「アミノ酸配列」という用語は、「ペプチド」という用語と同義である。場合によっては、「アミノ酸配列」という用語と「酵素」という用語は同義である。「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、本明細書では互換的に使用される。本開示及び特許請求の範囲では、アミノ酸残基についての従来の1文字及び3文字のコードを使用することができる。アミノ酸の3文字のコードは、IUPACIUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature(JCBN)に従って定義されている。また、ポリペプチドは、遺伝子コードの縮重により2つ以上のヌクレオチド配列によってコードされ得ることを理解されたい。
【0282】
用語の他の定義は、本明細書の至る所に現れ得る。例示的な実施形態をより詳細に説明する前に、本開示は、説明された特定の実施形態に限定されず、従って様々であり得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ規定されるため、限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0283】
値の範囲が示される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までの各介在値もまた具体的に開示されていると理解される。記載された範囲内のあらゆる記載された値又は介在値と、その記載された範囲内のあらゆる他の記載された値又は介在値との間のより小さい各範囲は本開示に包含される。これらのより小さな範囲の上限及び下限は独立に、範囲に含まれるか又は除外され得、より小さな範囲にいずれかの限度が含まれる、いずれの限度も含まれない、又は両方の限度が含まれる各範囲もまた、すべての具体的に除外される限度が記載された範囲であることを条件として、本開示に包含される。記載された範囲が限度の一方又は両方を含む場合、含まれる限度の一方又は両方を含まない範囲も本開示に包含される。
【0284】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。従って、例えば、「培地」への言及は、複数のそのような培地を含み、「細菌」への言及は、当業者に公知の1つ又は複数の細菌及びその同等物への言及を含むなどである。
【0285】
本明細書で論じられる刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示のためだけに提供される。そのような刊行物が本明細書に添付された特許請求の範囲の先行技術を構成することを認めるものと解釈するべきものは本明細書に存在しはない。
【0286】
図面の簡単な説明
ここで、本発明の実施形態を、以下の図及び実施例を参照して、単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0287】
図1A図1(A)は、本発明の寒天培地を含むペトリ皿の画像を示す。様々な種のレジオネラ(Legionella)の増殖の成功を、寒天の様々な部分で増殖する細菌のストリークとして見ることができる(3つに分かれている)。細菌培養物で細菌をストリークしてから、プレートを37℃で48時間インキュベートした。
図1B図1(B)は、本発明の寒天培地を含むペトリ皿の画像を示す。様々な種のレジオネラ(Legionella)の増殖の成功を、寒天の様々な部分で増殖する細菌のストリークとして見ることができる(3つに分かれている)。細菌培養物で細菌をストリークしてから、プレートを37℃で48時間インキュベートした。
図2図2は、本発明の寒天培地(Lasarus)及び対照培地(材料及び方法で記載)を含むペトリ皿の画像を示す。試験した各レジオネラ(Legionella)株の増殖の成功は、Lasarus培地での細菌負荷(細菌コロニーなど)として見ることができる。Lasarus培地での改善された(対照培地と比較して)増殖効率が示されている。
【実施例
【0288】
実施例
材料及び方法
培地
本発明の木炭非含有固形寒天培地を調製するための出発材料を以下のように調製した。
【0289】
最初に5gの選択寒天(SigmaAldrich-Cat.No.A5054)を200mLの脱イオン水に溶解することによって寒天を調製した。次いで、これを約121℃で15分間オートクレーブ処理し、次いで、オートクレーブ処理した寒天の温度が50℃に達するまで50℃の水浴に入れた。次いで、窒素源として使用する5gの酵母エキス(SigmaAldrich-Cat.No.07533)を脱イオン水に溶解し、200mLにした。培地は、典型的には、追加の成分を含み:L-システイン(Sigma Aldrich-Cat. No.W326305)の溶液も、0.4gの結晶L-システインを脱イオン水に溶解して10mLにすることで作製した。酵母エキス溶液、20mM N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(pH6.9、水酸化カリウムで調整)、0.25g/Lピロリン酸第2鉄、及び1.0g/Lのα-ケトグルタル酸の50mL溶液、並びに5mLのL-システイン溶液を、0.22μMの細孔を備えたCorning(登録商標)500mL真空フィルター/ストレージボトルシステムを使用してフィルター滅菌し、50°Cの水浴に入れた。使用したウマ血清は、ThermoFisher Scientificのカタログ番号26050088のGibcoウマ血清(熱不活化、New Zealand産)であった。
【0290】
選択寒天(溶融形態、典型的にはddHO中、1%寒天)を他の成分と混合し、寒天プレートに注いだ(固化させた)。
【0291】
最初の固形培地は、上述の出発材料で調製し、以下の成分を含んでいた:10%(v/v)ウマ血清、1%(w/v)酵母エキス、及び1%(w/v)選択寒天(十分な量のKOHで約6.9にpH調整-前記パーセンテージ値は、KOH希釈によるすべての希釈前の%値である)。
【0292】
第2の固形培地は、上述の出発材料で調製し、表1に概要が示されている成分を有していた(十分な量のKOHで約6.9にpH調整し-前記パーセンテージ値は、KOH希釈による希釈前の%値である)。本発明者らは、この培地(表1に概要が示されている)を「Lasarus培地」と名付けることを提案する。「Lasarus培地」は、レジオネラ(Legionella)抗生物質感受性及び耐性ユニバーサルスクリーニング培地(Legionella antibiotic susceptibility and resistance universal screening medium)の略称である。この名称は、執筆時点では仮称である。従って、本明細書で使用される「Lasarus」又は「Lasarus培地」という用語への言及は、表1に従った木炭非含有固形寒天培地を意味する。
【0293】
対照培地は、Armon and Payment, Journal of Microbiological Methods 11 (1990),pages 65-71(参照により本明細書に組み込まれる)に概説されているプロトコルに従って調製した。
【0294】
細菌株
レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)の12の血清型を含む、35を超えるレジオネラ(Legionella)種の増殖を本発明の固形培地で実証した。前記菌のそれぞれを、National Collection of Type Cultures(NCTC)の識別番号と共に、以下の表2及び表3に概要を示す。
【0295】
レジオネラ(Legionella)の増殖のモニタリング
ペトリ皿を本発明の寒天培地(即ち、寒天を含む培地)で満たして、この皿に固形培地を用意した。典型的には、滅菌ループを使用して、このループを液体細菌培養物に浸し、続いて寒天培地の表面を横切ってループをストリークすることによって、レジオネラ(Legionella)の液体培養物から前記寒天培地に細菌を移した。
【0296】
次いで、皿を37℃で48時間インキュベートした。寒天培地での様々な種のレジオネラ(Legionella)の増殖の成功が、細菌のストリークとして観察された。
【0297】
実施例1-培地で増殖したレジオネラ(Legionella)種
本発明者らは、レジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophilia)分離株が、次の成分:10%(v/v)ウマ血清(Gibco)、1%(w/v)酵母エキス、及び1%(w/v)選択寒天を含む寒天ベースを有する木炭非含有固形寒天培地で培養できることを実証した。
【0298】
表2は、本発明のLasarus(例えば、表1)培地(例えば、本発明の培地を含む寒天プレート上)で本発明者らが培養に成功したレジオネラ(Legionella)種のリストの概要を示す。これらの種のそれぞれは、BCYE寒天培地で達成された増殖と実質的に同等のレベルで増殖することが見出された。
【0299】
【表3】
【0300】
図1は、ペトリ皿(10)における本発明の寒天培地でのL.ナガサキエンシス(L.nagasakiensis)新種(11)、L.ミクダデイ(L.micdadei)heba(12)、L.モラビカ(L.moravica)(13)、L.ロンジニエンシス(L.londiniensis)(21)、L.ロングビーカエ(L.longbeachae)sg1(22)、及びL.ランシンジェンシス(L.lansingensis)(23)の増殖の成功を実証するために示されている。前記細菌は、寒天培地(例えば、Lasarus培地)を横切ってストリークされた後、密なストリークで容易に増殖した。
【0301】
実施例2-培地で増殖したレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)株
本発明者らは、本発明の培地で特徴付けられ、配列決定された80のレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)株の増殖を、古典的に調製されたBCYE寒天培地での増殖に相当する増殖を用いて検証した。
【0302】
表3は、本発明のLasarus培地で(例えば、本発明の培地を含む寒天プレートで)本発明者らが培養に成功した例示的なレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)株のリストの概要を示す。
【0303】
【表4】
【0304】
実施例3-培地で増殖したレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)血清型
以下のリストは、本発明者らが本発明のLasarus培地で(例えば、本発明の培地を含む寒天プレートで)培養に成功したいくつかのレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)株の概要を示す:SG1、SG6、SG7、SG8、SG9、SG10、SG11、SG12、SG13、SG14、SG15、及びSG16。
【0305】
実施例4-BCYE寒天培地及びBCYブロスとの比較
既に説明したように、本発明者らは、本発明のLasarus培地で特徴付けられ、配列決定された80のレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)株の増殖を、古典的に調製されたBCYE寒天培地での増殖に相当する増殖を用いて検証した。
【0306】
しかしながら、BCYE培地とは対照的に、本発明者らは、本発明の培地に対して、一連の抗生物質を用いて抗菌薬感受性試験を行うことが可能であることを示した。本培地を使用した感受性試験の結果は、以前はマイクロブロス(液体)培養でのみ行うことができたものと同等であった(Vandewalle-Capo et.al. 2017, International Journal of Antimicrobial Agents,50 (2017)684-689)。しかしながら、本培地は、自動マルチピン接種器と共に使用して、例えば各抗生物質の検査間に接種物を滅菌する必要なしに、一定範囲の抗生物質濃度で一度に複数(例えば、少なくとも最大80株)のレジオネラ(Legionella)を検査することができる固形培地を提供する。これにより、大幅なスケールアップ及び自動化を実現することができる。これはまた、アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩のMIC50及びMIC90を決定するための好ましい方法であった。この方法は、除染剤及び殺生物剤(重金属及び酸化剤を含む)を試験するための有効範囲の決定(及び耐性分離株のスクリーニング)のために容易に適応可能である。
【0307】
実施例5-対照培地との比較
Lasarus培地及び対照培地(上記)の両方での次のL.ニューモフィラ(L. pneumophila)株(すべてNational Collection of Type Culturesから入手)の増殖を直接比較した:
NCTC 11985、NCTC11406、NCTC11233、NCTC12180、NCTC12179、NCTC12181、NCTC12174。
【0308】
菌株のコロニー(標準的なBCYE寒天プレートで増殖させた)を滅菌水に懸濁し(懸濁液を提供するため)、一連の2倍希釈液を調製した。この懸濁液及び各希釈液を、Armon&Paymentに記載されているように、Lasarus培地を含むプレート、及び対照培地、即ちLTMを含むプレートの規定された領域で接触させた(懸濁液は左端)。
【0309】
両方の培地を同じ出発培養物で接種し、同一条件下、例えば同じ温度及びインキュベーション時間などでインキュベートした。
【0310】
結果は、各希釈での増殖効率(各菌株)が増殖培地と比較してLasarus培地で有意に高かったことを示している-図2を参照。さらに、Lasarus培地は、各試験菌株の増殖を支持した。比較すると、対照培地は、試験したいくつかの菌株(例えば、NCTC 11233及びNCTC 11406)の増殖を支持することができなかった。
【0311】
実施例6-抗生物質感受性試験
合計92のレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)分離株(参照により本明細書に組み込まれる、Wilson et.al.,J Antimicrob Chemother.2018 Jul 24.doi:10.1093/jac/dky253に記載されている)を固形培地(Lasarus)で抗生物質感受性について試験した。試験した分離株全体の平均MIC50を含むMICデータ(当技術分野で認められている段階希釈実験によって計算)を以下の表4に示す。
【0312】
これは、レジオネラ(Legionella)がLasarusでこれらの抗生物質(レジオネラ(Legionella)を抑制することが知られている)に対して高い感受性を保持していることを実証している。レジオネラ(Legionella)が従来技術の固形培地(例えば、BCYEなどの木炭を含む固形培地)上で培養される場合、そのような感受性は達成できない。
【0313】
【表5】
【0314】
特に注目すべきは、アジスロマイシンに対する感受性である。アジスロマイシン(抗生物質の中でも特に)は、レジオネラ(Legionella)の増殖を支持できる従来技術の固形培地では確実には機能しないことが以前に報告されている。信頼できる比較のために、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)株(ATCC株29213-API、BBL、bioMerieux Vitek、Micro-Media、MicroScan(登録商標)、及びSensititre製品で国際品質管理株として使用されている)を、本発明のLasarus培地、及びそのような抗生物質(表5)を吸収/阻害する木炭に類似した成分を有していない標準的なMueller-Hinton寒天(M-Hinton)で試験した。アジスロマイシン(抗生物質の中でも特に)のための標準的なMueller-Hinton寒天でのMICは、本発明の培地と同一であることが見出された。これは、本培地で得られた感受性の結果が、常用の抗生物質感受性培地で得られた結果とよく一致していることを実証している。
【0315】
【表6】
【0316】
実施例7-抗生物質感受性の比較
抗生物質リファンピシン、レボフロキサシン、及びアジスロマイシンに対するL.ニューモフィラ(L.pneumophila)の様々な菌株の感受性(Lasarus又はBCYE寒天で増殖させた場合)を試験した。実験は4連で行った。
【0317】
リファンピシン:試験した菌株の約35(平均で)が、リファンピシン濃度が0.004μg/mlのLasarus培地で増殖できることが分かった。この数は、リファンピシン濃度が0.004μg/mlの培地では15株未満(平均で)に減少した。試験した菌株はいずれも、リファンピシン濃度が0.016μg/ml以上のLasarus培地では増殖できなかった。比較すると、リファンピシン濃度が0.06μg/mlのBCYEでは31株(平均)以上が増殖することができ、リファンピシン濃度が0.125μg/mlのBCYEでは16株(平均で)以上が増殖することができた。
【0318】
レボフロキサシン:試験した菌株の約30(平均で)が、レボフロキサシン濃度が0/03μg/mlのLasarus培地で増殖できることが分かった。レボフロキサシン濃度が0.125μg/ml以上のLasarus培地では、試験した菌株はいずれも増殖できなかった。比較すると、レボフロキサシン濃度が1μg/mlのBCYEでは26株(平均で)以上が増殖することができ、レボフロキサシン濃度が2μg/mlのBCYEでは16株(平均で)以上が増殖することができた。
【0319】
アジスロマイシン:試験した菌株の約20(平均で)が、アジスロマイシン濃度が0.03μg/mlのLasarus培地で増殖できることが分かった。この数は、アジスロマイシン濃度が0.06μg/mlの培地では15株未満(平均で)に減少した。アジスロマイシン濃度が0.125μg/ml以上のLasarus培地では、試験した菌株はいずれも増殖できなかった。比較すると、アジスロマイシン濃度が0.25μg/mlのBCYEでは21株(平均で)以上が増殖することができ、アジスロマイシン濃度が0.5μg/mlのBCYEでは約6株(平均で)以上が増殖することができた。データは、BCYE(木炭による)に対する抗生物質の活性が低いことを示し、これは、Lasarus培地(抗生物質が活性を保持する)では生じない。データは、抗生物質スクリーニングのためのLasarus培地の使用を支持している。
【0320】
実施例8-アルカリ金属含有塩及びアルカリ土類金属含有塩を用いたレジオネラ(Legionella)の増殖の抑制
本発明の培地(例えば、上記の表1による)を含む一連のプレートを用意し、前記プレートの培地は、様々な濃度(例えば、典型的には、約1mM~約250mMの範囲)のアルカリ金属含有塩又はアルカリ土類金属含有塩をさらに含んでいた。
【0321】
典型的には、ハイスループットで接種できるようにマルチピン接種器を使用して、プレートにレジオネラ(Legionella)を接種した。プレートは、典型的には、37℃で約24時間インキュベートした。
【0322】
次いで、様々な濃度のアルカリ金属含有塩又はアルカリ土類金属含有塩を有する各プレートで細菌の増殖を観察した。これにより、前記塩の最小発育阻止濃度50%(MIC50)及び最小発育阻止濃度90%(MIC50)の決定が可能になった。この実験は、74の異なるレジオネラ(Legionella)の分離株を用いて行い、例示された塩の平均MIC50及びMIC90を以下の表5に概要を示す。
【0323】
さらに、本発明者らは、経口投与後のラットにおけるこれらの塩の致死量50%(LD50)を調べた。LD50データは、以下の表にmg/kg(ラット体重1kg当たりの塩のmg)でも示されている。
【0324】
KCIは、高い(150mMを超える、実際の値は試験された範囲よりも高い)MIC90値を有する、レジオネラ(Legionella)の非常に弱いサプレッサーであった(例えば、サプレッサーではなかった)。
【0325】
【表7】
【0326】
実施例9-アルカリ金属含有塩及びアルカリ土類金属含有塩を用いた対象におけるレジオネラ(Legionella)の増殖の抑制
肺にレジオネラ(Legionella)感染症を有する患者がクリニックにいる。
【0327】
本発明のアルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩を、適切な投与量で(例えば、1~10%、2~8%、又は4~6%のアルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩を含む組成物と共に、約1~20L/分、2~18L/分、4~16L/分、6~14L/分、又は8~12L/分のガス(酸素)流量で)噴霧によって対象に投与する。
【0328】
試験サンプル(例えば、痰)は、前記処置後の対象の肺から得られ、前記サンプル中のレジオネラ(Legionella)の細菌負荷(例えば、コロニー形成単位として定量される)を、処置前の対象から採取された対照サンプル中のレジオネラ(Legionella)の細菌負荷と比較する。
【0329】
試験サンプル中の細菌負荷は、対照サンプル中の細菌負荷よりも低いことが見出され、前記アルカリ金属含有塩及び/又はアルカリ土類金属含有塩の投与がレジオネラ(Legionella)感染症の処置に適していることを実証している。
【0330】
上記の明細書で言及したすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記載された方法及びシステムの様々な修正及び変形は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して説明してきたが、請求される本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、生化学及びバイオテクノロジー又は関連分野の当業者には明らかである、本発明を行うための記載された様式の様々な修正は、以下の特許請求の範囲内であることが意図されている。
図1A
図1B
図2