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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】制御装置、ホイールローダ、および方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20231212BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
E02F3/43 P
E02F9/22 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021512200
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2020015146
(87)【国際公開番号】W WO2020204123
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2019072103
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大浅 貴央
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-044752(JP,A)
【文献】特開2001-164596(JP,A)
【文献】特開昭61-209504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/43
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を備えるホイールローダを制御するための作業機制御装置であって、
前記作業機のリフト力を検出するリフト力検出部と、
検出された前記リフト力の変化量に基づいて、前記作業機の制御量を決定する制御量決定部と、
前記作業機を駆動させるアクチュエータに、決定した前記制御量に係る制御指令を出力する指令出力部と
を備え、
前記制御量決定部は、前記作業機のリフト量が所定の閾値に達する時点まで、前記リフト力に対して前記制御量が単調増加するように、前記制御量を決定する
御装置。
【請求項2】
前記制御量決定部は、前記作業機のリフト量が所定の閾値に達した時点以降、前記制御量を、前記作業機のリフト量が所定の閾値に達した時点における前記制御量に決定する
請求項1に記載の御装置。
【請求項3】
前記制御量決定部は、前記リフト力に基づく制御量と、アクセル操作量に基づく制御量のうち小さいものを、前記作業機の制御量に決定する
請求項1または請求項2に記載の御装置。
【請求項4】
前記制御量は、前記作業機をリフトさせるためのリフト制御量を含む
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の御装置。
【請求項5】
前記制御量は、前記作業機をチルトさせるためのチルト制御量を含む
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の御装置。
【請求項6】
車体と、
前記車体に支持された作業機と、
前記作業機を駆動させるアクチュエータと、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の御装置と
を備えるホイールローダ
【請求項7】
作業機を備えるホイールローダを制御するための方法であって、
前記作業機のリフト力を検出するステップと、
検出された前記リフト力の変化量に基づいて、前記作業機の制御量を決定するステップと、
前記作業機を駆動させるアクチュエータに、決定した前記制御量に係る制御指令を出力するステップと
を備え
前記制御量を決定するステップでは、前記作業機のリフト量が所定の閾値に達する時点まで、前記リフト力に対して前記制御量が単調増加するように、前記制御量を決定する
法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、御装置、ホイールローダ、および方法に関する。
本願は、2019年4月4日に日本に出願された特願2019-072103号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動で掘削を行う機能を備えるホイールローダに関する技術が開示されている。
特許文献1に記載の技術によれば、ホイールローダの制御装置は、作業機が積載物に食い込んだことをブームのボトム圧より検出し、ブームのリフトを行いながら、断続的にバケットのチルトを行う。これにより、オペレータによるホイールローダの掘削作業を模擬した自動掘削を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5700613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、ホイールローダの制御装置は、一定のリフト制御量でリフト制御を行い、一定のチルト制御量でチルト制御を実行する。しかしながら、一定の制御量で作業機の制御を行う場合、掘削対象物の状態によっては適切な掘削制御ができない可能性がある。
本発明の目的は、掘削対象物の状態に応じた掘削制御を行うことができる御装置、ホイールローダ、および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、作業機制御装置は、作業機を制御する作業機制御装置であって、前記作業機のリフト力を検出するリフト力検出部と、検出された前記リフト力の変化量に基づいて、前記作業機の制御量を決定する制御量決定部と、前記作業機を駆動させるアクチュエータに、決定した前記制御量に係る制御指令を出力する指令出力部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
上記態様によれば、作業機制御装置は、掘削対象物の状態に応じた掘削制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る作業車両の側面図である。
図2】第1の実施形態に係る運転室の内部の構成を示す上面図である。
図3】第1の実施形態に係る作業車両の動力系統を示す模式図である。
図4】第1の実施形態に係る作業車両の制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図5】第1の実施形態に係る自動掘削制御の段階の遷移を示す状態遷移図である。
図6】第1の実施形態に係るリフト制御量決定関数の一例である。
図7】第1の実施形態に係るチルト制御量決定関数の一例である。
図8】第1の実施形態に係る指令出力処理を示すフローチャートである。
図9】第1の実施形態に係る特定制御量設定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〈第1の実施形態〉
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、第1の実施形態に係る作業車両の側面図である。
第1の実施形態に係る作業車両100は、ホイールローダである。作業車両100は、車体110、作業機120、前輪部130、後輪部140、運転室150を備える。
【0009】
車体110は、前車体111、後車体112、およびステアリングシリンダ113を備える。前車体111と後車体112とは車体110の上下方向に伸びるステアリング軸回りに回動可能に取り付けられている。前輪部130は、前車体111の下部に設けられ、後輪部140は、後車体112の下部に設けられる。
ステアリングシリンダ113は、油圧シリンダである。ステアリングシリンダ113の基端部は後車体112に取り付けられ、先端部は前車体111に取り付けられる。ステアリングシリンダ113は、作動油によって伸縮することで、前車体111と後車体112とのなす角度を規定する。つまり、ステアリングシリンダ113の伸縮により、前輪部130の舵角が規定される。
【0010】
作業機120は、土砂等の作業対象物の掘削および運搬に用いられる。作業機120は、車体110の前部に設けられる。作業機120は、ブーム121、バケット122、ベルクランク123、リフトシリンダ124、バケットシリンダ125を備える。
【0011】
ブーム121の基端部は、前車体111の前部にピンを介して取り付けられる。
バケット122は、作業対象物を掘削するための刃と、掘削した作業対象物を運搬するための容器とを備える。バケット122の基端部は、ブーム121の先端部にピンを介して取り付けられる。
ベルクランク123は、バケットシリンダ125の動力をバケット122に伝達する。ベルクランク123の第1端は、バケット122の底部にリンク機構を介して取り付けられる。ベルクランク123の第2端は、バケットシリンダ125の先端部にピンを介して取り付けられる。
【0012】
リフトシリンダ124は、油圧シリンダである。リフトシリンダ124の基端部は前車体111の前部に取り付けられる。リフトシリンダ124の先端部はブーム121に取り付けられる。リフトシリンダ124が作動油によって伸縮することによって、ブーム121が上げ方向または下げ方向に駆動する。リフトシリンダ124には、リフトシリンダ124のストローク量を計測するリフトストロークセンサ1241が設けられる。リフトシリンダ124のストローク量は、ブーム角θを求めるために用いられる。ブーム角θは、車体110から前方に伸びる直線と、ブーム121の基端部から先端部に伸びる直線とのなす角によって表される。ブーム角θが大きいほどブーム121の先端の位置が高くなり、ブーム角θが小さいほどブーム121の先端の位置が低くなる。なお、他の実施形態においては、ブーム121の基端部に設けられた角度センサによってブーム角θが算出されてもよい。
【0013】
バケットシリンダ125は、油圧シリンダである。バケットシリンダ125の基端部は、前車体111の前部に取り付けられる。バケットシリンダ125の先端部は、ベルクランク123を介してバケット122に取り付けられている。バケットシリンダ125が、作動油によって伸縮することによって、バケット122がチルト方向またはダンプ方向に駆動する。バケットシリンダ125には、バケットシリンダ125のストローク量を計測するバケットストロークセンサ1251が設けられる。バケットシリンダ125のストローク量は、バケット角θを求めるために用いられる。バケット角θは、車体110から前方に伸びる直線と、バケット122の底面に沿って伸びる直線とのなす角によって表される。バケット角θが正である場合、バケット122はチルト側に傾き、バケット角θが負である場合、バケット122はダンプ側に傾く。バケット角θは、バケットシリンダ125のストローク量とブーム角から求められるブーム121を基準としたバケット122の角度に、ブーム角θを加算することで求められる。なお、他の実施形態においては、ベルクランク123の中央部に設けられた角度センサによってバケット角θが算出されてもよい。
【0014】
運転室150は、オペレータが搭乗し、作業車両100の操作を行うためのスペースである。運転室150は、後車体112の上部に設けられる。
図2は、第1の実施形態に係る運転室の内部の構成を示す上面図である。運転室150の内部には、シート151、アクセルペダル152、ブレーキペダル153、ステアリングハンドル154、前後切替スイッチ155、シフトスイッチ156、ブームレバー157、バケットレバー158、自動掘削スイッチ159が設けられる。
【0015】
アクセルペダル152は、作業車両100に生じさせる走行の駆動力(牽引力)を設定するために操作される。
ブレーキペダル153は、作業車両100に生じさせる走行の制動力を設定するために操作される。ブレーキペダル153の操作量が大きいほど、強い制動力が設定される。
ステアリングハンドル154は、作業車両100の舵角を設定するために操作される。
前後切替スイッチ155は、作業車両100の進行方向を設定するために操作される。
シフトスイッチ156は、動力伝達装置の速度範囲を設定するために操作される。シフトスイッチ156の操作によって、例えば、1速、2速、3速、および4速の中から1つの速度範囲が選択される。
ブームレバー157は、ブーム121の上げ操作または下げ操作の速度を設定するために操作される。ブームレバー157は、前方へ傾けられることにより下げ操作を受け付け、後方へ傾けられることにより上げ操作を受け付ける。以下、ブーム121の上げ操作および下げ操作を、リフト操作ともいう。
バケットレバー158は、バケット122のダンプ操作またはチルト操作の速度を設定するために操作される。バケットレバー158は、前方へ傾けられることによりダンプ操作を受け付け、後方へ傾けられることによりチルト操作を受け付ける。
自動掘削スイッチ159は、自動掘削制御の有効と無効とを切り替えるために操作される。自動掘削スイッチ159は、押下されることにより自動掘削制御の有効または無効を示す信号を制御装置300に出力する。なお、他の実施形態においては、自動掘削スイッチ159の操作に代えて、所定のレバー操作によって自動掘削制御の有効または無効を設定してもよい。
【0016】
《動力系統》
図3は、第1の実施形態に係る作業車両の動力系統を示す模式図である。
作業車両100は、エンジン210、PTO220(Power Take Off)、変速機230、フロントアクスル240、リアアクスル250、可変容量ポンプ260、ブレーキポンプ270を備える。
【0017】
PTO220は、エンジン210の駆動力の一部を、可変容量ポンプ260に伝達する。つまり、PTO220は、エンジン210の駆動力を、変速機230、および可変容量ポンプ260に分配する。
【0018】
変速機230は、入力軸に入力される駆動力を変速して出力軸から出力する。変速機230の入力軸はPTO220に接続され、出力軸はフロントアクスル240およびリアアクスル250に接続される。つまり、変速機230は、PTO220によって分配されたエンジン210の駆動力をフロントアクスル240およびリアアクスル250に伝達する。変速機230の出力軸には、回転数を計測する回転計231が設けられる。出力軸の回転数は、作業車両100の車速を求めるために用いられる。
【0019】
フロントアクスル240は、変速機230が出力する駆動力を前輪部130に伝達する。これにより、前輪部130が回転する。
リアアクスル250は、変速機230が出力する駆動力を後輪部140に伝達する。これにより、後輪部140が回転する。
【0020】
可変容量ポンプ260は、エンジン210からの駆動力によって駆動される。可変容量ポンプ260から吐出された作動油は、コントロールバルブ261を介してリフトシリンダ124およびバケットシリンダ125に供給され、ステアリングバルブ262を介してステアリングシリンダ113に供給される。また可変容量ポンプ260から吐出された作動油は、リリーフバルブ266を介して排出される。
コントロールバルブ261は、可変容量ポンプ260から吐出された作動油の流量を制御し、作動油をリフトシリンダ124とバケットシリンダ125とに分配する。ステアリングバルブ262は、ステアリングシリンダ113に供給する作動油の流量を制御する。リリーフバルブ266は、作動油の圧力が所定のリリーフ圧を超えたときに圧力を開放し、作動油を排出させる。
リフトシリンダ124には、シリンダ圧力計264が設けられる。シリンダ圧力計264は、リフトシリンダ124のボトム圧を計測する。
【0021】
ブレーキポンプ270は、エンジン210からの駆動力によって駆動される固定容量ポンプである。ブレーキポンプ270から吐出された作動油は、ブレーキバルブ271に供給される。ブレーキバルブ271は、各アクスルに内蔵された図示しないブレーキシリンダへ供給する作動油の圧力を制御する。ブレーキシリンダに作動油が供給されることで、前輪部130および後輪部140の回転軸と共に回転するブレーキディスクが回転しないプレートに押し付けられ、制動力が発生する。
【0022】
《制御装置》
作業車両100は、作業車両100を制御するための制御装置300を備える。
制御装置300は、自動掘削制御の段階に応じて、コントロールバルブ261に制御信号を出力する。
【0023】
図4は、第1の実施形態に係る作業車両の制御装置の構成を示す概略ブロック図である。制御装置300は、プロセッサ310、メインメモリ330、ストレージ350、インタフェース370を備えるコンピュータである。
【0024】
ストレージ350は、一時的でない有形の記憶媒体である。ストレージ350の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ350は、制御装置300のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース370または通信回線を介して制御装置300に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ350は、作業車両100を制御するためのプログラムを記憶する。
【0025】
プログラムは、制御装置300に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0026】
プログラムが通信回線によって制御装置300に配信される場合、配信を受けた制御装置300が当該プログラムをメインメモリ330に展開し、上記処理を実行してもよい。
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ350に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0027】
プロセッサ310は、プログラムを実行することで、操作量取得部311、計測値取得部312、段階特定部313、制御量決定部314、チルト時間決定部315、指令出力部316を備える。
また、プログラムの実行により、メインメモリ330には、段階記憶部331、特定制御量記憶部332、現在制御量記憶部333、チルト時間記憶部334、チルト回数記憶部335、ボトム圧記憶部336、ブーム角記憶部337の記憶領域が確保される。
【0028】
操作量取得部311は、アクセルペダル152、前後切替スイッチ155、ブームレバー157、バケットレバー158、自動掘削スイッチ159のそれぞれから操作量を取得する。
【0029】
計測値取得部312は、回転計231、リフトストロークセンサ1241、バケットストロークセンサ1251、およびシリンダ圧力計264から計測値を取得する。すなわち、計測値取得部312は、変速機230の出力軸の回転数、リフトシリンダ124のストローク量、バケットシリンダ125のストローク量、およびリフトシリンダ124のボトム圧の計測値を取得する。リフトシリンダ124のボトム圧には、リフトシリンダ124がブーム121から受ける力としてのリフト力が表れる。すなわち、計測値取得部312は、リフト力検出部の一例である。
【0030】
段階特定部313は、操作量、計測値、およびメインメモリ330が記憶する値に基づいて、制御装置300による自動掘削制御の段階を特定する。段階特定部313は、特定した段階を、段階記憶部331に記憶させる。
図5は、第1の実施形態に係る自動掘削制御の段階の遷移を示す状態遷移図である。自動掘削制御の段階は、非自動掘削段階ST0、リフト開始判定段階ST1、制御量設定段階ST2、自動リフト段階ST3、チルト待機段階ST4、チルト開始判定段階ST5、自動チルト段階ST6、自動チルト終了段階ST7の8つの段階を有する。
【0031】
制御量決定部314は、自動掘削制御が制御量設定段階ST2にあるときに、計測値取得部312が取得したリフトシリンダ124のボトム圧の計測値に基づいて、自動掘削制御における特定リフト制御量hおよび特定チルト制御量pを決定する。特定リフト制御量hおよび特定チルト制御量pは、ボトム圧に対して単調増加する。なお、本実施形態において、「単調増加」とは、一方の値が増加したときに、常に他方の値が増加し、または変化しないこと(単調非減少)をいう。制御量決定部314は、決定した特定リフト制御量hおよび特定チルト制御量pを、特定制御量記憶部332に記憶させる。
特定リフト制御量hは、自動掘削制御においてリフト動作を行う際にリフト制御量に設定される値である。特定チルト制御量pは、自動掘削制御においてチルト動作を行う際にチルト制御量に設定される値である。
【0032】
具体的には、制御量決定部314は、ボトム圧上昇量と特定リフト制御量との関係を示すリフト制御量決定関数に、ボトム圧上昇量を代入することで、特定リフト制御量hを決定する。図6は、第1の実施形態に係るリフト制御量決定関数の一例である。リフト制御量決定関数において、ボトム圧上昇量が閾値ΔPl以下である場合、特定リフト制御量hは、所定の下限値h0をとる。特定リフト制御量hの下限値h0は、0より大きい値である。リフト制御量決定関数において、ボトム圧上昇量が閾値ΔPlより大きい場合、特定リフト制御量hは、ボトム圧上昇量に対して比例して増加する。
【0033】
具体的には、制御量決定部314は、ボトム圧上昇量と特定チルト制御量pとの関係を示すチルト制御量決定関数に、ボトム圧上昇量を代入することで、特定チルト制御量pを決定する。図7は、第1の実施形態に係るチルト制御量決定関数の一例である。チルト制御量決定関数において、ボトム圧上昇量が閾値ΔPt以下である場合、特定チルト制御量pは、所定の下限値p0をとる。特定チルト制御量の下限値p0は、0より大きい値である。チルト制御量決定関数において、ボトム圧上昇量が閾値ΔPtより大きい場合、特定チルト制御量pは、ボトム圧上昇量に対して比例して増加する。
【0034】
なお、他の実施形態においては、リフト制御量決定関数またはチルト制御量決定関数は、ボトム圧の絶対値と特定リフト制御量hまたは特定チルト制御量pとの関係を示すものであってもよい。この場合、制御量決定部は、ボトム圧の絶対値に基づいて特定リフト制御量hおよび特定チルト制御量pを決定する。
【0035】
また、制御量決定部314は、自動掘削制御の段階に応じて、現在制御量記憶部333が記憶するリフト制御量およびチルト制御量を書き換える。なお、現在制御量記憶部333が記憶するリフト制御量およびチルト制御量の初期値は、いずれも0である。
【0036】
チルト時間決定部315は、チルト回数記憶部335が記憶するチルト回数に基づいて、チルトON時間Δt1と、チルトOFF時間Δt2を決定する。第1の実施形態に係る自動掘削制御において、バケット122は、断続的にチルト動作を行う。このときのチルト動作のON時間およびOFF時間が、チルト時間決定部315によって決定される。チルトON時間Δt1およびチルトOFF時間Δt2は、チルト回数に応じて予め設定される。
【0037】
指令出力部316は、操作量取得部311が取得した操作量および現在制御量記憶部333が記憶する制御量に基づいて、コントロールバルブ261に制御指令を出力する。具体的には、指令出力部316は、操作量取得部311が取得したブームレバー157の操作量および現在制御量記憶部333が記憶するリフト制御量に基づいて、コントロールバルブ261にリフトシリンダ124の制御指令を出力する。また、指令出力部316は、操作量取得部311が取得したバケットレバー158の操作量および現在制御量記憶部333が記憶するチルト制御量に基づいて、コントロールバルブ261にバケットシリンダ125の制御指令を出力する。
【0038】
《自動掘削制御》
図5に示す状態遷移図を参照しながら、第1の実施形態に係る自動掘削制御について説明する。第1の実施形態に係る自動掘削制御は、図5に示すように、自動掘削制御の段階を8つの段階で区別する。
オペレータによって自動掘削スイッチ159が押下されることで自動掘削制御が有効となると、制御装置300の段階特定部313は、自動掘削制御の段階が非自動掘削段階ST0であると特定する。段階特定部313は、段階記憶部331が記憶する状態を非自動掘削段階ST0に書き換える。
【0039】
《非自動掘削段階ST0》
自動掘削制御の段階が非自動掘削段階ST0である場合、段階特定部313は、操作量取得部311が取得した操作量および計測値取得部312が取得した計測値に基づいて、作業車両100が前進し、かつバケット122が接地しているか否かを判定する。例えば、段階特定部313は、アクセルペダル152が踏まれ、かつ前後切替スイッチ155がF(Front)に設定されている場合に、作業車両100が前進していると判定する。また例えば、段階特定部313は、リフトストロークセンサ1241およびバケットストロークセンサ1251の検出値に基づいてブーム角θおよびバケット角θを特定し、ブーム角θが所定の閾値以下であり、かつバケット角θが0度を含む所定範囲内にある場合に、バケット122が接地していると判定する。作業車両100が前進しているか否かの判定は、例えば回転計231の計測値から求められる車速に基づいてなされてもよい。
【0040】
自動掘削制御の段階が非自動掘削段階ST0である場合において、作業車両100が前進し、かつバケット122が接地している場合、段階特定部313は、自動掘削制御の段階がリフト開始判定段階ST1であると特定する。段階特定部313は、段階記憶部331が記憶する状態をリフト開始判定段階ST1に書き換える。
他方、自動掘削制御の段階が非自動掘削段階ST0である場合において、作業車両100が前進しておらず、またはバケット122が接地していない場合、段階特定部313は、自動掘削制御の段階が非自動掘削段階ST0であると特定する。非自動掘削段階ST0においては、指令出力部316は、ブームレバー157の操作量に応じたリフト制御指令、およびバケットレバー158の操作量に応じたチルト制御指令を、コントロールバルブ261に出力する。すなわち、非自動掘削段階ST0においては、マニュアル操作で作業機制御が行われる。
【0041】
《リフト開始判定段階ST1》
自動掘削制御の段階がリフト開始判定段階ST1である場合、指令出力部316は、指令出力処理を行う。図8は、第1の実施形態に係る指令出力処理を示すフローチャートである。
指令出力部316は、操作量取得部311が取得したブームレバー157の操作量に基づく制御量と、現在制御量記憶部333が記憶するリフト制御量の和に係る制御量を示すリフト制御指令を生成する(ステップS11)。また、指令出力部316は、操作量取得部311が取得したバケットレバー158の操作量に基づく制御量および現在制御量記憶部333が記憶するチルト制御量の和に係る制御量を示すチルト制御指令を生成する(ステップS12)。
指令出力部316は、生成したリフト制御指令およびチルト制御指令を、コントロールバルブ261に出力する(ステップS13)。
なお、リフト開始判定段階ST1において、現在制御量記憶部333が記憶するリフト制御量およびチルト制御量は、いずれも0である。
【0042】
また、自動掘削制御の段階がリフト開始判定段階ST1である場合、段階特定部313は、計測値取得部312が取得した計測値に基づいて、リフトシリンダ124のボトム圧が一定時間継続して閾値P1以上であり、かつブーム角が閾値θ1以下であり、かつ車速が一定時間継続して閾値V1以下であるか否かを判定する。
ボトム圧の閾値P1は、バケット122が掘削対象物に入り込んだときに検出される程度の値に設定される。つまり、リフトシリンダ124のボトム圧が一定時間継続して閾値P1以上であるということを検出することで、バケット122が掘削対象物に入り込んだ状態であることがわかる。
【0043】
自動掘削制御の段階がリフト開始判定段階ST1である場合において、リフトシリンダ124のボトム圧が一定時間継続して閾値P1以上であり、かつブーム角が閾値θ1以下であり、かつ車速が一定時間継続して閾値V1以下である場合、段階特定部313は、自動掘削制御の段階が制御量設定段階ST2であると特定する。段階特定部313は、段階記憶部331が記憶する状態を制御量設定段階ST2に書き換える。
【0044】
他方、自動掘削制御の段階がリフト開始判定段階ST1である場合において、リフトシリンダ124のボトム圧が一定時間以内に閾値P1未満となった場合、ブーム角が閾値θ1より大きい場合、または車速が一定時間以内に閾値V1より大きくなった場合、段階特定部313は、自動掘削制御の段階がリフト開始判定段階ST1であると特定する。
【0045】
《制御量設定段階ST2》
自動掘削制御の段階がリフト開始判定段階ST1から制御量設定段階ST2に遷移したとき、計測値取得部312は、シリンダ圧力計264が計測したボトム圧を、リフト前ボトム圧としてボトム圧記憶部336に記憶させる。また、計測値取得部312は、ボトム圧記憶部336に、ボトム圧上昇量の初期値として0を記憶させる。
また計測値取得部312は、リフトストロークセンサ1241の計測値から求められるブーム角θを、リフト前ブーム角としてブーム角記憶部337に記憶させる。
【0046】
自動掘削制御の段階が制御量設定段階ST2である場合、指令出力部316は、特定制御量設定処理を行う。図9は、第1の実施形態に係る特定制御量設定処理を示すフローチャートである。制御量決定部314は、計測値取得部312が取得したリフトシリンダ124のボトム圧の計測値と、ボトム圧記憶部336が記憶するリフト前ボトム圧との差を、ボトム圧上昇量として特定する(ステップS21)。制御量決定部314は、特定したボトム圧上昇量がボトム圧記憶部336が記憶するボトム圧上昇量以上であるか否かを判定する(ステップS22)。特定したボトム圧上昇量がボトム圧記憶部336が記憶するボトム圧上昇量以上である場合(ステップS22:YES)、制御量決定部314は、ボトム圧記憶部336が記憶するボトム圧上昇量を、ステップS21で特定したボトム圧上昇量に書き換える(ステップS23)。
特定したボトム圧上昇量がボトム圧記憶部336が記憶するボトム圧上昇量未満である場合(ステップS22:NO)、またはボトム圧記憶部336が記憶するボトム圧上昇量を書き換えた場合、制御量決定部314は、ボトム圧記憶部336が記憶するボトム圧上昇量を、図6に示すリフト制御量決定関数に代入することで、特定リフト制御量hを決定する(ステップS24)。また、制御量決定部314は、ボトム圧記憶部336が記憶するボトム圧上昇量を、図7に示すチルト制御量決定関数にボトム圧上昇量を代入することで、特定チルト制御量pを決定する(ステップS25)。
【0047】
制御量決定部314は、特定制御量記憶部332が記憶する特定リフト制御量hを、ステップS24で決定した特定リフト制御量hに書き換える。また制御量決定部314は、特定制御量記憶部332が記憶する特定チルト制御量pを、ステップS25で決定した特定チルト制御量pに書き換える(ステップS26)。
【0048】
次に、制御量決定部314は、ブームレバー157の操作量に基づいて、リフト制御量を決定する。具体的には、制御量決定部314は、操作量取得部311が取得したブームレバー157の操作量が所定時間継続して中立を示すか否かを判定する。ブームレバー157の操作量が所定時間継続して中立を示す場合、制御量決定部314は、現在制御量記憶部333が記憶するリフト制御量を、特定制御量記憶部332が記憶する特定リフト制御量hに書き換える。他方、ブームレバー157の操作量が所定時間以内に中立でない値を示した場合、制御量決定部314は、現在制御量記憶部333が記憶するリフト制御量を0に書き換える。つまり、オペレータによってブームレバー157が操作された場合、オペレータの操作を優先させるために、リフト制御量を0にする。
【0049】
次に、指令出力部316は、図8に示す指令出力処理を行う。なお、制御量設定段階ST2において、現在制御量記憶部333が記憶するリフト制御量は、ブームレバー157が操作されていない場合には特定制御量設定処理にて設定された特定リフト制御量hとなり、ブームレバー157が操作された場合には0となる。他方、現在制御量記憶部333が記憶するチルト制御量は0である。
【0050】
また、自動掘削制御の段階が制御量設定段階ST2である場合、段階特定部313は、特定制御量記憶部332が記憶する特定リフト制御量hが100%に達し、または現在のブーム角θとブーム角記憶部337が記憶するブーム角との差(ブーム角上昇量)が閾値θ2に達したか否かを判定する。
【0051】
自動掘削制御の段階が制御量設定段階ST2である場合において、特定リフト制御量hが100%に達し、またはブーム角上昇量が閾値θ2に達した場合、段階特定部313は、自動掘削制御の段階が自動リフト段階ST3であると特定する。段階特定部313は、段階記憶部331が記憶する状態を自動リフト段階ST3に書き換える。
なお、特定リフト制御量hおよび特定チルト制御量pは、制御量設定段階ST2より後の段階において書き換えられない。
【0052】
他方、自動掘削制御の段階が制御量設定段階ST2である場合において、特定リフト制御量hが100%未満であり、かつブーム角上昇量が閾値θ2未満である場合、段階特定部313は、自動掘削制御の段階が制御量設定段階ST2であると特定する。
【0053】
《自動リフト段階ST3》
自動掘削制御の段階が自動リフト段階ST3である場合、制御量決定部314は、制御量設定段階ST2と同様に、ブームレバー157の操作量に基づいて、リフト制御量を決定する。
次に、指令出力部316は、図8に示す指令出力処理を行う。なお、自動リフト段階ST3において、現在制御量記憶部333が記憶するリフト制御量は、ブームレバー157が操作されていない場合には特定リフト制御量hとなり、ブームレバー157が操作された場合には0となる。他方、現在制御量記憶部333が記憶するチルト制御量は0である。
【0054】
また、自動掘削制御の段階が自動リフト段階ST3である場合、段階特定部313は、ブーム角記憶部337が記憶するリフト前ブーム角に対するブーム角上昇量が閾値θ3以上であり、またはリフトシリンダ124のボトム圧が継続して閾値P2以上であるか否かを判定する。なお、閾値θ3は、閾値θ2より大きい。
【0055】
自動掘削制御の段階が自動リフト段階ST3である場合において、ブーム角上昇量が閾値θ3以上であり、またはリフトシリンダ124のボトム圧が一定時間継続して閾値P2以上である場合、段階特定部313は、自動掘削制御の段階がチルト待機段階ST4であると特定する。段階特定部313は、段階記憶部331が記憶する状態をチルト待機段階ST4に書き換える。
【0056】
他方、自動掘削制御の段階が自動リフト段階ST3である場合において、ブーム角上昇量が閾値θ3未満であり、かつリフトシリンダ124のボトム圧が一定時間以内に閾値P2未満となった場合、段階特定部313は、自動掘削制御の段階が自動リフト段階ST3であると特定する。
【0057】
自動掘削制御の段階が自動リフト段階ST3からチルト待機段階ST4に遷移する場合、制御量決定部314は、アクセルペダル152の操作量とリフト制御量との関係を示すリフトアクセル関数f(a)に、アクセルペダル152の操作量aを代入することで、リフト制御量を算出する。リフトアクセル関数f(a)は、アクセルペダルの操作量aに対してリフト制御量が単調増加する関数である。リフトアクセル関数f(a)において、アクセルペダル152の踏込量aが0であっても、リフト制御量は0より大きい値をとる。制御量決定部314は、現在制御量記憶部333が記憶するリフト制御量を、リフトアクセル関数f(a)に基づいて算出したリフト制御量と、特定制御量記憶部332が記憶する特定リフト制御量hのうち小さいものに書き換える。つまり、チルト待機段階ST4以降、リフト制御量は、0より大きく特定リフト制御量h以下の値となる。なお、リフト制御量は、自動リフト段階ST3からチルト待機段階ST4に遷移する瞬間のアクセルペダル152の操作量によって固定されるものではなく、チルト待機段階ST4への遷移後もアクセルペダル152の操作量によって変動する。これにより、オペレータは、アクセルペダル152の踏み込み量に応じて自動掘削の速度を制御することができる。
【0058】
《チルト待機段階ST4》
自動掘削制御の段階が自動リフト段階ST3からチルト待機段階ST4に遷移したとき、チルト時間決定部315は、チルト回数記憶部335が記憶する自動チルト回数に基づいて、チルトON時間Δt1と、チルトOFF時間Δt2を決定する。また計測値取得部312は、リフトストロークセンサ1241の計測値から求められるブーム角θを、待機開始ブーム角としてブーム角記憶部337に記憶させる。
【0059】
自動掘削制御の段階がチルト待機段階ST4である場合、制御量決定部314は、チルト制御量を0に設定する。
次に、指令出力部316は、図8に示す指令出力処理を行う。なお、チルト待機段階ST4において、現在制御量記憶部333が記憶するリフト制御量は、アクセルペダル152の踏み込み量に応じて0より大きく、特定リフト制御量h以下の値となる。他方、現在制御量記憶部333が記憶するチルト制御量は0である。
【0060】
また、自動掘削制御の段階がチルト待機段階ST4である場合、段階特定部313は、自動掘削制御の段階が自動リフト段階ST3からチルト待機段階ST4に遷移した時刻からの経過時間が、チルトOFF時間Δt2に到達したか否かを判定する。
【0061】
自動掘削制御の段階がチルト待機段階ST4である場合において、自動掘削制御の段階が自動リフト段階ST3からチルト待機段階ST4に遷移した時刻からの経過時間が、チルトOFF時間Δt2に到達した場合、段階特定部313は、自動掘削制御の段階がチルト開始判定段階ST5であると特定する。段階特定部313は、段階記憶部331が記憶する状態をチルト開始判定段階ST5に書き換える。
【0062】
他方、自動掘削制御の段階がチルト待機段階ST4である場合において、チルト待機段階ST4に遷移した時刻からの経過時間が、チルトOFF時間Δt2未満である場合、段階特定部313は、自動掘削制御の段階がチルト待機段階ST4であると特定する。
【0063】
《チルト開始判定段階ST5》
自動掘削制御の段階がチルト開始判定段階ST5である場合、指令出力部316は、図8に示す指令出力処理を行う。なお、チルト開始判定段階ST5において、現在制御量記憶部333が記憶するリフト制御量は、アクセルペダル152の踏み込み量に応じて0より大きく、特定リフト制御量h以下の値となる。他方、現在制御量記憶部333が記憶するチルト制御量は0である。
【0064】
また、自動掘削制御の段階がチルト開始判定段階ST5である場合、段階特定部313は、リフトシリンダ124のボトム圧が一定時間継続して閾値P3以上であり、かつ車速が一定時間継続して閾値V2以下であるか否かを判定する。また、段階特定部313は、ブーム角記憶部337が記憶する待機開始ブーム角からのブーム角上昇量が閾値θ4以上であるか否かを判定する。
【0065】
自動掘削制御の段階がチルト開始判定段階ST5である場合において、リフトシリンダ124のボトム圧が一定時間継続して閾値P3以上であり、かつ車速が一定時間継続して閾値V2以下である場合、または、ブーム角上昇量が閾値θ4以上である場合、段階特定部313は、自動掘削制御の段階が自動チルト段階ST6であると特定する。段階特定部313は、段階記憶部331が記憶する状態を自動チルト段階ST6に書き換える。
【0066】
他方、自動掘削制御の段階がチルト開始判定段階ST5である場合において、ブーム角上昇量が閾値θ4未満であってリフトシリンダ124のボトム圧が一定時間以内に閾値P3未満となった場合、またはブーム角上昇量が閾値θ4未満であって車速が一定時間以内に閾値V2より大きくなった場合、段階特定部313は、自動掘削制御の段階がチルト開始判定段階ST5であると特定する。
【0067】
《自動チルト段階ST6》
自動掘削制御の段階がチルト開始判定段階ST5から自動チルト段階ST6に遷移したとき、計測値取得部312は、シリンダ圧力計264が計測したボトム圧を、チルト前ボトム圧としてボトム圧記憶部336に記憶させる。
【0068】
自動掘削制御の段階が自動チルト段階ST6である場合、制御量決定部314は、アクセルペダル152の操作量aとチルト制御量との関係を示すチルトアクセル関数g(a)に、アクセルペダル152の操作量を代入することで、チルト制御量を算出する。チルトアクセル関数g(a)は、アクセルペダルの操作量aに対してチルト制御量が単調増加する関数である。チルトアクセル関数g(a)において、アクセルペダル152の踏込量aが0であっても、チルト制御量は0より大きい値をとる。制御量決定部314は、現在制御量記憶部333が記憶するチルト制御量を、チルトアクセル関数g(a)に基づいて算出したチルト制御量と、特定制御量記憶部332が記憶する特定チルト制御量pのうち小さいものに書き換える。つまり、自動チルト段階において、チルト制御量は、0より大きく特定チルト制御量p以下の値となる。
次に、指令出力部316は、図8に示す指令出力処理を行う。なお、自動チルト段階ST6において、現在制御量記憶部333が記憶するリフト制御量は、アクセルペダル152の踏み込み量に応じて0より大きく、特定リフト制御量h以下の値となる。また、現在制御量記憶部333が記憶するチルト制御量はアクセルペダル152の踏み込み量に応じて0より大きく、特定チルト制御量p以下の値となる。
【0069】
また、自動掘削制御の段階が自動チルト段階ST6である場合、段階特定部313は、自動掘削制御の段階がチルト開始判定段階ST5から自動チルト段階ST6に遷移した時刻からの経過時間が、チルトON時間Δt1に到達したか否かを判定する。
【0070】
自動掘削制御の段階が自動チルト段階ST6である場合において、自動掘削制御の段階がチルト開始判定段階ST5から自動チルト段階ST6に遷移した時刻からの経過時間が、チルトON時間Δt1に到達した場合、段階特定部313は、自動掘削制御の段階が自動チルト終了段階ST7であると特定する。段階特定部313は、段階記憶部331が記憶する状態を自動チルト終了段階ST7に書き換える。
【0071】
他方、自動掘削制御の段階が自動チルト段階ST6である場合において、自動掘削制御の段階がチルト開始判定段階ST5から自動チルト段階ST6に遷移した時刻からの経過時間が、チルトON時間Δt1未満である場合、段階特定部313は、自動掘削制御の段階が自動チルト段階ST6であると特定する。
【0072】
《自動チルト終了段階ST7》
自動掘削制御の段階が自動チルト終了段階ST7である場合、段階特定部313は、ボトム圧記憶部336が記憶するチルト前ボトム圧からのボトム圧上昇量が閾値ΔP1以上になったか否かを判定する。また段階特定部313は、車速が一定時間継続して閾値V3以上であるか否かを判定する。
【0073】
自動掘削制御の段階が自動チルト終了段階ST7である場合において、車速が一定時間継続して閾値V3以上である場合、段階特定部313は、自動掘削制御の段階がチルト待機段階ST4であると特定する。
段階特定部313は、段階記憶部331が記憶する状態をチルト待機段階ST4に書き換える。
【0074】
他方、自動掘削制御の段階が自動チルト終了段階ST7である場合において、車速が一定時間以内に閾値V3未満になった場合、自動掘削制御の段階が自動チルト終了段階ST7であると特定する。
【0075】
自動掘削制御の段階が自動チルト終了段階ST7からチルト待機段階ST4に遷移しない場合、指令出力部316は、図8に示す指令出力処理を行う。なお、自動チルト終了段階ST7において、現在制御量記憶部333が記憶するリフト制御量は、アクセルペダル152の踏み込み量に応じて0より大きく、特定リフト制御量h以下の値となる。他方、現在制御量記憶部333が記憶するチルト制御量はアクセルペダル152の踏み込み量に応じて0より大きく、特定チルト制御量p以下の値となる。
【0076】
自動掘削制御の段階が自動チルト終了段階ST7からチルト待機段階ST4に遷移する場合、段階特定部313は、チルト回数記憶部335が記憶する自動チルト回数をインクリメントする。
【0077】
《自動掘削制御の終了条件》
第1の実施形態に係る自動掘削制御は、次に示す(1)から(8)の何れか1つの終了条件が成立した場合に終了する。
(1)自動掘削スイッチ159の操作により自動掘削が無効になる。
(2)走行方向が前進方向でなくなる。
(3)バケット122がチルトエンドに達してから所定時間が経過する。
(4)ブーム角が所定角度以上である。
(5)作業機120がロックされている。
(6)センサまたは作業機120の操作装置に不具合が発生した。
(7)ブームレバー157によるブーム121の下げ操作が発生し、操作量が所定量より大きい。
(8)バケットレバー158によるバケット122のダンプ操作が発生し、操作量が所定量より大きい。
【0078】
制御装置300は、自動掘削制御の段階がいずれの段階にある場合にも、上記のいずれかの終了条件が成立する場合、自動掘削制御を終了する。
【0079】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態によれば、制御装置300は、作業機120のリフト力の変化量に基づいて、作業機120のリフト制御量を決定する。
作業機120による掘削制御では、作業機120が掘削対象物に入り込んだ後に、作業機120をリフトさせることで、前輪部130に荷重をかける。これにより、タイヤスリップを防ぎながら掘り進むことができる。ここで、掘削対象物が固いために作業機120が掘削対象物に十分に入り込めない場合、または掘削対象物が軽い場合に、リフト制御量が過大であると、バケット122の空振りが生じ、掘削対象物の十分な積込を実現できない可能性がある。一方で、リフト制御量が過少であると、タイヤスリップの発生、または牽引力の不足により、掘削対象物に作業機120を十分に押し込むことができない可能性がある。これに対し、第1の実施形態に係る制御装置300は、作業機120のリフト力の変化量に基づいて作業機120のリフト制御量を決定することで、掘削対象物の状態に応じて、バケット122の空振りおよびタイヤスリップの発生を防ぎながら掘削制御を行うことができる。
【0080】
また、第1の実施形態によれば、制御装置300は、作業機120のリフト力の変化量に基づいて、作業機120のチルト制御量を決定する。
作業機120による掘削制御では、作業機120による掘削中に、バケット122をチルトさせることで、掘削対象物を抱え込む。ここで、掘削対象物の安息角が緩やかである場合に、チルト制御量が過大であると、バケット122の空振りが生じ、掘削対象物の十分な積込を実現できない可能性がある。一方で、チルト制御量が過少であると、掘削対象物を十分に抱え込むことができない可能性がある。
なお、掘削対象物の安息角が緩やかであるほど、バケット122に入る掘削対象物の量が少なくなることが想定される。そのため、安息角が緩やかであるほどリフト力が小さくなることが想定される。
そこで、第1の実施形態に係る制御装置300は、作業機120のリフト力の変化量に基づいて作業機120のチルト制御量を決定することで、掘削対象物の状態に応じて、バケット122の空振りおよびタイヤスリップの発生を防ぎながら掘削制御を行うことができる。
【0081】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、第1の実施形態に係る制御装置300は、作業機120のリフト力の変化量に基づいてリフト制御量およびチルト制御量を決定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置300は、リフト制御量またはチルト制御量の一方をリフト力に基づいて決定してもよい。
【0082】
また、第1の実施形態に係る制御装置300は、制御量設定段階ST2において、作業機のリフト量が所定の閾値に達するまで、すなわちブーム角上昇量が閾値θ2に達するまで、リフト制御量決定関数に係る一定のモジュレーションにてリフト制御量を変更させることで、特定リフト制御量hおよび特定チルト制御量pを決定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、制御装置300は、制御量設定段階ST2において、一定のリフト制御量でリフト制御を行い、一定時間経過時のブーム角に対して単調増加するように、特定リフト制御量hおよび特定チルト制御量pを決定してもよい。
【0083】
また、第1の実施形態に係る制御装置300は、作業機120のチルト制御量として、コントロールバルブ261に出力するチルト制御指令における制御量の大きさを決定するが、他の実施形態においては、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置300は、自動チルト段階ST6から自動チルト終了段階ST7への遷移条件としてのバケット角上昇量閾値を決定してもよい。具体的には、他の実施形態に係る制御装置300は、以下の手順で自動掘削制御を行ってもよい。
【0084】
制御量設定段階ST2において、制御量決定部314は、リフト力に対して単調増加するように、バケット角上昇量閾値を決定する。自動チルト段階ST6において、指令出力部316は、一定のチルト制御量でチルト制御指令を出力する。自動チルト段階ST6において、段階特定部313は、チルト開始判定段階ST5から自動チルト段階ST6に遷移した時点のバケット角からのバケット角上昇量が、制御量設定段階ST2において決定したバケット角上昇量閾値に達した場合に、自動掘削制御の段階が自動チルト終了段階ST7であると特定する。
【0085】
なお、上述した実施形態に係る作業車両100は、バケット角θに基づいて、バケット122のチルト操作およびダンプ操作の自動駆動制御を行うが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業車両100は、バケットシリンダ125のストローク量を求め、バケットシリンダ125のストローク量に基づいてチルト操作およびダンプ操作の自動駆動制御を行ってもよい。バケットシリンダ125のストローク量は、バケットストロークセンサ1251によって求めてもよいし、ベルクランク123に設けられた角度センサの計測値とブーム角θとに基づいて算出してもよい。また、作業機120の機構上、ブーム121が上昇すると、バケットシリンダ125を駆動させていなくても、ベルクランク角が変化する。そのため、作業車両100の制御装置300は、バケット122が接地した状態におけるバケットシリンダ125のストローク量(基準ストローク量)を予め計測しておき、基準ストローク量とバケットシリンダ125のストローク量との差に基づいて、自動掘削制御を行う。これにより、ブーム121を地表付近まで下げたときにバケット122の底面を地表に対して略平行にすることができる。この場合、バケット角上昇量閾値は、基準ストローク量に対するストローク量の値に換算して比較される。
【0086】
また、上述の実施形態に係る制御装置300は、リフトシリンダ124のボトム圧に基づいて作業機120のリフト力を特定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置300は、可変容量ポンプ260の圧力やトルクセンサによって検出されるトルクなどの他の量を用いてリフト力を特定してもよい。
【0087】
また、上述の実施形態に係る制御装置300は、ブーム角に基づいて作業機120のリフト量を特定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置300は、リフトシリンダ124のストローク量や、バケット122の高さなどの他の量を用いて作業機120のリフト量を特定してもよい。
【0088】
また、上述の実施形態に係る制御装置300は、自動チルト段階ST6が終了した後、自動チルト終了段階ST7を経てチルト待機段階ST4に遷移するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置300は、自動チルト段階ST6が終了した後、自動チルト終了段階ST7を経ずにチルト待機段階ST4に遷移してもよい。この場合、制御装置300は、自動チルト段階ST6からチルト待機段階ST4に遷移する際に、チルト回数記憶部335が記憶する自動チルト回数をインクリメントする。
また、上述の実施形態に係る制御装置300は、自動リフト段階ST3が終了した後、チルト待機段階ST4に遷移するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置300は、自動リフト段階ST3が終了した後、自動チルト段階ST6に遷移してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の上記開示によれば、作業機制御装置は、掘削対象物の状態に応じた掘削制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0090】
100…作業車両 110…車体 120…作業機 130…前輪部 140…後輪部 150…運転室 111…前車体 112…後車体 113…ステアリングシリンダ 121…ブーム 122…バケット 123…ベルクランク 124…リフトシリンダ 1241…リフトストロークセンサ 125…バケットシリンダ 1251…バケットストロークセンサ 151…シート 152…アクセルペダル 153…ブレーキペダル 154…ステアリングハンドル 155…前後切替スイッチ 156…シフトスイッチ 157…ブームレバー 158…バケットレバー 159…自動掘削スイッチ 210…エンジン 220…PTO 230…変速機 231…回転計 240…フロントアクスル 250…リアアクスル 260…可変容量ポンプ 261…コントロールバルブ 262…ステアリングバルブ 264…シリンダ圧力計 266…リリーフバルブ 270…ブレーキポンプ 271…ブレーキバルブ 300…制御装置 310…プロセッサ 330…メインメモリ 350…ストレージ 370…インタフェース 311…操作量取得部 312…計測値取得部 313…段階特定部 314…制御量決定部 315…チルト時間決定部 316…指令出力部 331…段階記憶部 332…特定制御量記憶部 334…チルト時間記憶部 333…現在制御量記憶部 335…チルト回数記憶部 336…ボトム圧記憶部 337…ブーム角記憶部 ST0…非自動掘削段階 ST1…リフト開始判定段階 ST2…制御量設定段階 ST3…自動リフト段階 ST4…チルト待機段階 ST5…チルト開始判定段階 ST6…自動チルト段階 ST7…自動チルト終了段階
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9