(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】オブジェクトに印刷された導電性トラックを製造する方法及び3D印刷された電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 3/10 20060101AFI20231212BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20231212BHJP
B29C 64/182 20170101ALI20231212BHJP
B29C 64/188 20170101ALI20231212BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231212BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231212BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20231212BHJP
B29C 64/336 20170101ALI20231212BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H05K3/10 E
B29C64/106
B29C64/182
B29C64/188
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y80/00
B29C64/336
H05K3/00 N
H05K3/00 W
(21)【出願番号】P 2021514020
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 NL2019050596
(87)【国際公開番号】W WO2020055253
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-17
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511095850
【氏名又は名称】ネーデルランドセ・オルガニサティ・フォール・トゥーヘパスト-ナトゥールウェテンスハッペライク・オンデルズーク・テーエヌオー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ガリ・アルティノフ
(72)【発明者】
【氏名】メレイン・ペーテル・ヒースベルス
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-232119(JP,A)
【文献】特開2002-290010(JP,A)
【文献】国際公開第2012/121141(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/10
B29C 64/106
B29C 64/182
B29C 64/188
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 80/00
B29C 64/336
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(B)を含むオブジェクト(10)の表面(10s)に第1の軌道(T1)に沿って光(L)を照射して、前記光の下で前記オブジェクトの体積を局所的に加熱して、前記オブジェクト(10)の第1の表面(10s)に第1のトレンチ(20)を刻む段階であって、前記
第1のトレンチ
(20)の境界上に第1の隆起部(21)が形成されて、材料受容トラック(40)の第1の縁部を画定する段階と、
第2の軌道(T2)に沿って、又は、前記第1の軌道(T1)の別個の部分に沿って第2のトレンチ(30)を刻む段階であって、前記第2のトレンチ(30)が、少なくとも部分的に前記第1のトレンチ(20)に隣接して形成され、前記
第2のトレンチ
(30)の境界上に第2の隆起部(31)が前記第1の隆起部(21)に面して形成され、前記材料受容トラック(40)の第2の縁部を画定する段階と、
導電性トラック(50)を形成するのに適した材料(M)を前記材料受容トラック(40)に提供する段階と、
を含む、印刷された導電性トラック(50)をオブジェクト(10)上に製造するための方法。
【請求項2】
前記オブジェクトが、付加製造によって得られるオブジェクトであり、
前記材料受容トラック(40)の第1及び第2の縁部を画定する
前記第1
の隆起部(21)及び
前記第2の隆起部(
31)が、前記第1の表面(10s)の粗さ(R)の少なくとも5倍を超える高さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オブジェクト(10)が、付加製造によって得られるポリマーオブジェクトである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
導電性トラックを形成するのに適した材料(M)を前記材料受容トラック(40)に提供するために堆積方法が使用される、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前
記オブジェクトを形成するための前記付加製造法及び前記トレンチ(20、
30)を刻む方法が、共通の参照フレームを共有する、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記トレンチ(20、
30)を刻む方法及び前記材料受容トラック(40)に導電性トラック(5)を形成するのに適した材料(M)を提供する段階が、共通の参照フレームを共有する、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記トレンチ
(20、30)を刻む方法及び前記材料受容トラックに材料(M)を提供する段階が、レーザーを用いて行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法がさらに、前記オブジェクト(10)の表面を加熱して、少なくとも前記材料受容トラックが画定される場所で
表面粗さを低減する段階をさらに含む、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記材料(M)を堆積して導電性トラックを形成した後、少なくとも部分的に前記導電性トラックを覆う、さらなる付加方法段階が続く、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
3D印刷された電子機器の製造における、請求項1から9の何れか一項に記載の方法の使用。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載の方法によって得られる導電性トラック(50)を含む、3D印刷された電子オブジェクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷された導電性トラックを備えた製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造法は、通常、オブジェクトを構築するために材料堆積要素とターゲット基板を接続する固定参照フレームを使用する。付加製造法を使用して、3Dオブジェクトは、一般的にレイヤーバイレイヤーの構築方法で作成される。個々の層は、ラスタースキャンのようなパターンでターゲット基板に対して堆積要素を移動させることによって、又はその逆によって形成することができる。このようにして、基板の様々な位置が順番にアドレス指定される。多くのこれらの様々な場所に一定量の構築材料を堆積させることにより、3Dオブジェクトの層を形成することができる。このような方法の例には、ドロップオンデマンド印刷方法、熱溶解積層法、及び、レーザー誘起順方向転写法などの3D印刷方法が含まれる。あるいは、層は、前駆体材料の連続層の一部が局所的に固定される、例えばレーザーである走査固定要素によって、例えば架橋される方法によって構築され得る。このような方法の例には、選択的レーザー焼結及びステレオリソグラフィ(SLA)が含まれる。選択した方法に関係なく、層構築中に使用されるラスタースキャンパターンは、通常、粗い表面仕上げの3D製品、又は、スキャンパターンの速軸と遅軸が見える表面の形成につながる。電子要素を含む3Dオブジェクトの製造には、導電性要素、例えば、導電性トラック、パッド及び/又は他の要素の形成が必要である。好ましくは、これらの導電性要素は、付加製造法によっても堆積され得る。しかしながら、表面仕上げが不十分なため、狭いトラック、または欠陥のない連続トラックが提供され、隙間のないトラック又はトラックの長さに沿った伝導性の低い領域は困難である。例えば、線を形成するための一連の場所に、例えば隣接する場所又は部分的に重なる場所によって、液体状態で堆積される導電性トラックを形成するための材料は、それが堆積する粗い表面に沿って制御不能に流れる可能性がある。これにより、縁部の画定が不規則な線が形成されたり、不連続な線が形成されたりする場合がある。表面仕上げが、堆積された導電性トラックの精度にとって重要であり、従って部品の性能にとって重要であるため、これは、3D印刷された電子機器の用途を厳しく制限する。例えば局所的なレーザーアブレーションによってトレンチ又は溝を形成すること、及び、トレンチ内に導電線を形成することは、解決策を提供するように見えるかもしれない。トレンチ又は溝を設けることにより、液体材料が溝の外側に流れることを防ぐことができるが、トレンチ内の粗い表面仕上げは、依然として、不十分な縁部画定及び/又は不連続なトラックを有する導電性トラックの形成につながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、材料受容トラックを3Dオブジェクトの表面に配置する方法を提供することによって上記の問題の解決策を提供することを目的とし、このトラックは、連続導電性トラックの形成を可能にするように構成される。有利なことに、提示された方法は、参照フレームから3Dオブジェクトを削除することなく適用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の態様は、オブジェクト上に印刷された導電性トラックを製造するための方法に関する。この方法において、基材Bを含む物体の第1の表面sは、第1の軌道T1に沿って光Lで照射される。オブジェクトを照射することにより、光の下のオブジェクトの体積を局所的に加熱することができる。軌道に沿ってオブジェクトを加熱することにより、第1のトレンチをオブジェクトの第1の表面に刻む(スクライブ)ことができる。好ましくは境界に、例えばトレンチの縁部に第1の隆起部が形成される。この隆起部は、材料受容トラックの第1の縁部を画定し得る。第2の軌道T2に沿って第2のトレンチを刻むことにより、第2のトレンチを形成することができる。好ましくは、第2のトレンチは、少なくとも部分的に第1のトレンチに隣接して形成される。好ましくは、第2の隆起部は、第1の隆起部に面する第2のトレンチの境界上に形成され得る。2つの隣接する隆起部の間に、材料受容トラックを画定することができる。言い換えれば、材料受容トラックは、互いに離れてオブジェクトの表面に刻まれている2つの隣接するトレンチの隆起部の間に画定され得る。材料受容トラックを提供した後、前記トラックは、前記オブジェクトの表面上に導電性トラックを形成するのに適した材料Mを備えている。
【0005】
オブジェクトは、付加製造法によって得られるアイテム、例えば印刷方法によって形成される、例えばモデル化されたアイテムである可能性がある。有利には、オブジェクトを形成する方法及び線を刻む方法は、この方法が共通の参照フレームを共有するようにツール上で実行され得る。この方法が共通の参照フレームを共有するようにツール上でこの方法を実行することにより、材料受容トラックの製造は、位置合わせ段階を必要とせずに実行され得る。例えば、トレンチの付加製造及び刻み(スクライビング)は、最初の構築ツールからオブジェクトを取り外して配置し、それに応じてオブジェクトをスクライビングツールに位置合わせする必要なしに、単一のツールで実行することができる。あるいは、又はさらに、材料受容トラックを提供するためのツール及び導電性トラックを形成するのに適した材料Mをトラックに提供するためのツールは、共通の参照フレームを共有することができる。
【0006】
詳細な説明から明らかになるように、説明された方法の下の実施形態及び図は、3D印刷された電子機器の製造に使用され得る。有利なことに、3D印刷された電子機器は、50μm未満の幅を有する導電性トラックを含む表面で製造され得る。あるいは、又はさらに、そのような導電性トラックは、少なくとも部分的に、オブジェクトに埋め込まれ得る。本開示の態様はまた、そのような製品に関連している。
【0007】
本開示のプロセス、方法及び形成された製品のこれら及び他の特徴、態様及び利点は、以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲及び添付の図面から、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】トレンチの形成、並びに、隣接するトレンチの2つの隆起部の間に画定された材料受容トラックの斜視図及び側面図を概略的に示す。
【
図1B】トレンチの形成、並びに、隣接するトレンチの2つの隆起部の間に画定された材料受容トラックの斜視図及び側面図を概略的に示す。
【
図1C】トレンチの形成、並びに、隣接するトレンチの2つの隆起部の間に画定された材料受容トラックの斜視図及び側面図を概略的に示す。
【
図2A】スクライビング時間の増加に伴うトレンチの深さ及び隆起部の高さの変化を概略的に示している。
【
図2B】スクライビング時間の増加に伴うトレンチの深さ及び隆起部の高さの変化を概略的に示している。
【
図2C】粗い表面を有するオブジェクトに刻まれたトレンチの側面図を、付加製造法によって作られたオブジェクトの上面領域の2つの顕微鏡写真とともに概略的に示す。
【
図3A】材料受容トラックの側面顕微鏡写真とともに、材料受容トラックに形成された導電性トラックの側面図を概略的に示す。
【
図3B】材料受容トラックを使用して形成された例示的な導電性トラック(上)及び材料受容トラックを使用せずに形成された例示的な導電性トラック(下)を比較する上面顕微鏡写真を示す。
【
図4A】材料受容トラックを使用して形成された導電性トラックを示す上面顕微鏡写真を示す。
【
図4B】材料受容トラックを使用して形成された導電性トラックの密なアレイを含む3D印刷されたオブジェクトの上面の顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特定の実施形態を説明するために使用される用語は、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。「及び/又は」という用語は、関連するリストされたアイテムの1つ又は複数のありとあらゆる組み合わせを含む。「含む」及び/又は「含んでいる」という用語は、述べられた特徴の存在を指定するが、1つ又は複数の他の特徴の存在又は追加を排除するものではないことが理解されよう。方法の特定の段階が別の段階に続くと呼ばれる場合、別段の指定がない限り、特定の段階を実行する前に、他の段階に直接続くことができ、又は、1つ又は複数の中間段階を実行できることがさらに理解されよう。同様に、構造又は構成要素間の接続が説明される場合、この接続は、別段の指定がない限り、直接又は中間の構造又は構成要を介して確立され得ることが理解されよう。
【0010】
本明細書で使用されように、形成された導電性トラックの伝導性及び導電率は、印刷された電子機器の分野で一般的な導電率レベルに関係する。例えば、導電性トラックは、導電性マイクロ粒子又はナノ粒子を含む前駆体材料の堆積によって形成され得る。そのような導電性粒子を含む材料から形成されたトラックの導電率は、バルク材料の導電率の5%から25%の範囲であり得る。
【0011】
本発明は、本発明の実施形態が示されている添付の図面を参照して、以下により完全に説明される。図面では、システム、構成要素、層及び領域の絶対サイズ及び相対サイズ、特に隆起部及びトレンチのサイズは、明確にするために誇張されている場合がある。実施形態は、本発明の理想化されて可能性がある実施形態及び中間構造の概略図及び/又は断面図を参照して説明することができる。詳細な説明及び図面において、同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。相対的な用語及びその派生語は、その時点で説明されている、又は議論中の図面に示されている方向を指すと解釈されるべきである。これらの相対的な用語は、説明の便宜上のものであり、特に明記しない限り、システムを特定の方向で構築又は操作する必要はない。
【0012】
図1A及びBは、オブジェクト10上に材料受容トラック40を製造するための方法を概略的に示している。一実施形態では、例えば、
図1Aに示されるように、この方法は、基材Bを含むオブジェクト10の第1の表面10sに光Lを照射することを含み得る。オブジェクト10を局所的に照射することにより、光L下のオブジェクトの体積を加熱することができる。第1の軌道T1に沿ってオブジェクト10を照射することにより、第1のトレンチ20は、オブジェクト10の第1の表面10sに形成され、例えば、刻まれることができる。好ましい実施形態では、第1の隆起部21が境界上、例えば、トレンチの縁部に形成される。別の、又はさらに好ましい実施形態では、第1の隆起部21は、材料受容トラック40の第1の端部を画定し得る。一実施形態では、例えば、示されるように、第2のトレンチ30は、第2の軌道T2に沿って形成され得、第2のトレンチ30は、第1のトレンチ20に少なくとも部分的に隣接して形成され、材料受容トラック40の第2のエッジを画定するように、第2のトレンチの境界上に、第2の隆起部31が第1の隆起部21に面して形成される。いくつかの好ましい実施形態では、この方法は、材料受容トラック40に、導電性トラック50を形成するのに適した材料Mを提供することをさらに含み得る(例えば
図3に、後に示されて説明されるように)。
【0013】
別の、又はさらなる実施形態において、例えば、
図1B及び
図1Cの対応する側面図に示されるように、材料受容トラック40は、オブジェクト10の表面上に提供され得る。それぞれがその縁部に沿って突出した隆起部21、22、31、32を備える2つのトレンチ20、30を提供することによって、材料受容トラック40を画定することができる。側面において、この材料受容トラック40は、隣接するトレンチ20及び30の隆起部21及び31に面することによって画定され得る。これらの隆起部の間、例えば材料受容トラック40の底面には、第1の表面10の未修正部分が存在し得る。材料受容トラック40Lの長さは、第1及び第2のトレンチが隣接する軌道を辿る長さによって定義され得る。材料受容トラックの幅は、2つの隣接するトラック間の距離によって制御され得る。例えば、材料受容トラック40の寸法は、向かい合う隆起部の間のピーク間距離によって定義され得る。事前に定義された軌道に沿ってトレンチを刻むことにより、1つ又は複数の長さと形状、例えば材料受容トラックの曲率、角及び幅を制御することができる。
【0014】
理論に拘束されることなく、光Lによってある量のエネルギーをオブジェクト10の領域に適用すると、この領域より下の体積で、基材Bの1つ又は複数の溶融、蒸発及び部分分解が生じる可能性があると考えられる。増加する量のエネルギーを投与することにより、増加する量の材料が蒸発し、ますます深い穴及び/又はトレンチが形成され得る。蒸発する基材Bと組み合わせて、蒸発した材料の一部を境界又は照射領域に沿って再堆積させることができ、それにより、線量に応じて、突出した隆起部を形成することができる。線量は、例えば、走査速度によって制御することができ、例えば、光Lの滞留時間によって制御することができる。あるいは、又はさらに、スクライビング方法は、光強度及び/又はパルス持続時間又はそれらの組み合わせによって制御され得る。エネルギー線量に加えて、トレンチ形成及び/又は隆起部形成は、基材Bの性質によって影響を受ける可能性があり、より高い溶融、蒸発及び/又は分解温度を持つ材料は、異なるエネルギー線量を必要とする場合があることが理解されよう。
【0015】
いくつかの好ましい実施形態では、光Lは、レーザー光を含み得る。好ましくは、オブジェクト10に適用されるエネルギー線量に対する追加の制御を可能にするために、調整可能な強度又はパルス持続時間を有するレーザー光を含み得る。あるいは、プラズマ光線などの他のエネルギー源を使用することができる。
【0016】
所与の基材Bについて、光Lで刻まれたトレンチの深さ及び/又は幅は、
図2Aに示されるように、線量の増加とともに増加することが実験的に見出された。言い換えれば、オブジェクトに適用されるエネルギーが多ければ多いほど、より多くの材料Bが除去され、例えば気化され得ると考えられ、トレンチは、より深く及び/又はより広くなる。対照的に、トレンチの境界の隆起部の高さは、
図2A及びBに示されるように、初期の成長段階の後に横ばいになる傾向がある。有利には、材料受容トラックは、トレンチの長さに沿って実質的に一定の高さを有し得る隆起部を有するように形成され得る。
【0017】
いくつかの好ましい実施形態では、オブジェクトは、ポリマーを含む材料から形成されたアイテムであり得る。ポリマーは、光Lによるトレンチの刻むのに特に適している可能性があるため、ポリマーが好ましい場合がある。
【0018】
別の、又はさらに好ましい実施形態では、オブジェクトは、付加製造法によって得られるアイテム、例えば3Dモデル化されたオブジェクトであり得る。現在、ステレオリソグラフィ(SLA)、溶融堆積モデリング(FDM)、選択的レーザー焼結(SLS)、選択的レーザー溶融(SLM)、3D印刷(3DP)、及び、レーザー誘起前方転送(LIFT)を含むが、それらに限定されない、付加製造の原理を採用した技術が数多くある。有利なことに、付加製造法は、オブジェクト、例えば3Dモデルを製造するためのポリマー(光及び熱可塑性プラスチック)、セラミック、金属などの広範囲の材料を使用することができる。選択した製造法に関係なく、これらの方法中に通常使用されるラスタースキャンパターンは、表面仕上げが不十分な、例えば粗い表面の3D製品の形成につながる可能性がある。一部のアイテムでは、スキャンパターンの速軸と遅軸が成形品に表示される場合がある。
図2c(左)は、粗さR1を有するフォワードトランスファーモデリングLIFTによって作製され、粗さR2を有するステレオリソグラフィによって作製されたオブジェクトの表面仕上げを示す上面10の顕微鏡写真を示す。あるいは、オブジェクトは、他の付加製造法によって形成されてもよい。好ましくは、オブジェクトは、ポリマーを含む。ポリマーは、例えば付加製造法によって、3Dモデル化されたアイテムを形成するのに特に適している場合がある。
【0019】
いくつかの実施形態では、例えば、
図2C(右)に示されるように、トレンチ20は、粗さRを有する粗い表面10sを有するオブジェクトに刻まれ得る。前に示したトレンチと同様に、例えば
図1及び2Aでは、隆起部が形成され得る。粗い表面に隆起部を提供することにより、形成された隆起部は、少なくとも部分的に、基板の粗さに追従することができる。
図2C(右)は、刻まれたトレンチの表面、例えば、レーザースクライビングによって刻まれたトレンチの表面も表面粗さを有する場合があること概略的に示す。理論に拘束されることなく、トレンチ表面の粗さ20Rは、基材Bの蒸発と、隆起部の形成と同様の方法におけるトレンチ表面に沿った蒸発した材料の一部の再堆積との組み合わせの結果である可能性がある。好ましくは、形成された隆起部は、それらが形成された表面の粗さよりも高い。基板の粗さの高さを超える高さの隆起部を提供することにより、導電性トラックを形成する材料Mが隆起部上を流れることを防ぐことができる。好ましくは、隆起部は、その粗さの5倍よりも大きい高さを有する。より好ましくは、隆起部は、その粗さの10倍を超える高さを有する。粗さは、二乗平均平方根粗さRqとして定義することができる。粗さには、自然に発生する表面粗さが含まれる場合があるが、プロセス関連の粗さ、例えば堆積ノズルの走査運動に起因する、例えば3Dモデル化されたアイテムの製造中に形成される粗さも含まれる場合がある。粗さは、二乗平均平方根粗さなどの一般的なパラメータによって記述でき、それに応じて製品の幾何特性仕様(GPS)に関するISO 4287:1997標準などのよく知られた表面特性評価方法によって決定することができる。
【0020】
図3A(上)は、図示されていない、刻まれた第1及び第2の第1のトレンチ20、30の第1の隆起部21及び第2の隆起部31によって画定される材料受容トラック40を有するオブジェクトの断面図を示す。
図3A(下)は、材料受容トラック40に配置された導電性トラック50の断面図を概略的に示す。別の、又はさらに好ましい実施形態では、堆積方法、例えば、インクジェット堆積及び/又はレーザー誘起前方移動(LIFT)は、導電性トラックを形成するのに適した材料Mを材料受容トラック40に提供するために使用され得る。例えば、材料は、オリフィス、例えばノズルを含むツールから、その上に材料のドットを形成する受容面の最初の位置に堆積され得る。受容面及び堆積ツールの1つ又は複数を移動することによって、例えば、部分的に重なり合うドットから構築される連続的な形状、例えば線が形成され、又は、領域、例えばパッドに満たされる。あるいは、導電性トラックを形成するのに適した材料Mは、連続堆積プロセスを使用して、材料受容トラック40に堆積され得る。好ましくは、3Dモデル化されたオブジェクトを形成し、材料受容トラック40を画定し、導電性トラックを形成するのに適した材料Mを堆積する方法の1つ又は複数、好ましくは全てが、共通の参照フレームを共有する。共通の参照フレームを共有することにより、印刷された導電性トラックを備えた製品の製造を単一のツールで実行することができる。利点は、オブジェクト上の他の特徴と比較して、トラック位置の精度が高いことである。別の、又はさらに好ましい実施形態では、LIFT法に適したデバイスが、3Dオブジェクトを形成し、トレンチ20、21を刻み、導電性トラック50を形成するための材料Mを提供するための段階の1つ又は複数、好ましくは全てに使用される。あるいは、共通の参照フレームは、別個のツール、例えば材料Mを堆積するためのツール、例えば、ドロップオンデマンドインクジェットプリントヘッドを参照フレームに提供することによって提供され得る。
【0021】
別の、又はさらなる実施形態では、導電性トラックを形成するのに適した材料Mは、誘電体形態で提供され得、言い換えれば、材料Mは、絶縁体としてトラックに提供され得る。非導電性の形態で提供されるこの材料は、後続のプロセス段階で導電性にすることができる。例えば、堆積条件は、材料Mの形態及び/又は配合を決定し得、例えば、インクジェット堆積は、例えば、ナノ粒子を含むインクを含む低粘度の組成物を必要とし得る。そのような組成物は、例えば加熱及び/又は還元を含む、例えば後続のプロセス段階において、導電性トラックに変換され得る。
【0022】
図3Bは、3D製造されたポリマーオブジェクト10の表面上に形成された導電性トラックの上面画像を示す。例示的な導電性トラック50は、第1及び第2の刻まれたトレンチ20、30の隆起部の間に画定された材料受容トラック40を使用して、材料Mのレーザー誘起前方移動によって製造された。下部導電性トラック55は、材料受容トラックを画定することなく製造された。
図3Bで観察され得るように、材料受容トラック上に形成された例示的な導電性トラック50は、連続線、例えば材料受容トラックの長さ全体に隙間がない線を形成する。対照的に、ポリマー表面に直接堆積された材料Mは、表面粗さの影響を受ける。例えば、目に見えるのは、粗さに沿った表面上の材料Mの結果の流れであり、その結果、トラックの長さに沿った特定の点でトラック55の広がりが広がる。また、くびれの形成も見られ、欠陥、例えば隙間の形成につながる可能性がある、トラックの長さに沿った他の場所にある首部が見られる。
【0023】
別の、又はさらに好ましい実施形態では、印刷された導電性を有する製品を製造するための方法は、オブジェクト10の表面を加熱して、少なくとも材料受容トラックが画定される場所で表面粗さを低減することを含む。オブジェクト、例えばポリマーオブジェクトの表面を軟化温度、例えば、ガラス転位温度又は溶融温度以上に加熱することによって、その表面の粗さが減少する可能性がある。後続の段階で材料受容トラックが画定される場所で3Dオブジェクトの表面を加熱することによって、第1の隆起部と第2の隆起部との間の形成された材料受容トラック40の表面は、より少ない粗さで提供され得、例えば、より滑らかな仕上がりが提供される。材料受容トラック40に滑らかな仕上がりを提供することの1つの効果は、導電性トラック50の欠陥の数を減らすことができることであるかもしれず、例えば、より小さい粗さが存在し、これは、堆積プロセス中に導電性トラックを形成するための材料Mの濡れ又は流れを妨げる可能性がある。より滑らかな表面を提供することの追加の効果は、スクライビングプロセス中に形成された第1及び/又は第2の隆起部がより滑らかな表面を有し得、例えば、前記隆起部の上部に沿ったプロファイルを有し得ることである。滑らかな隆起部を提供することによって、導電性トラック50の欠陥の数を減らすことができ、例えば隙間からこぼれたり、隙間を流れたりする、例えば導電性トラック50を形成するための材料Mの堆積プロセス中に形成された欠陥を減らすことができる。いくつかの好ましい実施形態では、加熱は、事前規定された軌道に沿ってレーザー光をオブジェクト10に局所的に照射することを含み得る。好ましくは、照射は、材料受容トラック40位置に対応する位置に提供され、トレンチを刻む前に、オブジェクトの一部をレーザー光の下で軟化温度より上に局所的にもたらし、オブジェクトの表面を滑らかにする。さらに、加熱は、全体的な加熱段階を含み得、例えばオーブンでオブジェクト全体を加熱する段階を含み得る。あるいは、粗さの低減は、研磨又は他の適切な表面処理段階によって達成され得る。有利には、同じレーザー光源を、オブジェクトの形成、粗さの低減、材料受容トラック40の画定、及び導電性トラックの形成に適した材料Mの堆積の1つ又は複数、好ましくは全ての間に使用することができる。単一の参照フレームを共有することにより、同じ製造ツールで複数の段階を実行でき、追加の位置決め又は位置合わせ段階を省略できるため、オブジェクト上の他の特徴に関してより高い精度のトラック位置を得ることができる。
【0024】
いくつかの好ましい実施形態では、基材Bを堆積するための付加的なプロセス段階は、導電性トラックを形成するための材料Mを堆積する段階、例えば、3Dオブジェクトのさらなる構築の後に続くことができる。言い換えれば、材料受容トラックを充填した後に、材料、例えば基材Bの追加の層は、3Dアイテムに追加することができる。好ましくは、例えば基材Bの追加の層は、少なくとも部分的に導電性トラックを覆う。基材Bの1つ又は複数の追加の層を堆積することによって、3D製品は、例えば接触から、例えば電子機器を遮蔽するために、導電性トラックが少なくとも部分的に3D製品に埋め込まれている統合電子機器で形成され得る。
【0025】
図4Aは、トレンチ20及び30の隆起部21及び31の間に閉じ込められた角のある導電性トラック50を含む、SLA法によって作製された例示的なポリマーオブジェクト10の上面画像を示す。一実施形態では、例えば、
図4A及びBに示されるように、導電性トラック50を形成するための材料Mは、LIFTによって提供されている。
図4Bは、隣接するトレンチ(マークされていない)の隆起部の間にそれぞれ閉じ込められた材料受容トラックの対応するアレイ上に提供される導電性トラック50のアレイを含む、SLA法によって作製された例示的なポリマーオブジェクト10の上面画像を示す。例えば、第1の材料受容トラックの縁部は、隣接する第1及び第2のトレンチ(マークされていない)の隆起部によって画定され得る。第2のトレンチの距離に追加のトレンチ、例えば第3のトレンチを提供することによって、第2の材料受容トラックを画定することができる。好ましくは、第2の材料受容トラックは、第2のトレンチの第2の隆起部と第3のトレンチの第1の隆起部との間に画定され得る。第1の材料受容トラックを画定するためにすでに使用されているトレンチの隆起部と新しいトレンチ、例えば第3のトレンチの隆起部との間に第2の材料受容トラックを画定することによって、隣接する材料受容トラック間の距離を短くすることができる。例えば、隣接する導電性トラックが200μm未満、好ましくは100μm未満、より好ましくは75μm未満、最も好ましくは50μm未満の距離で離間している3D印刷された電子機器が得られ得る。あるいは、第2の材料受容トラックは、例えば、トレンチの新しい対、例えば、互いに距離を置いた第3及び第4のトレンチを提供することによって画定され得る。アレイを形成するために、追加の材料受容トラックを画定することができる。
【0026】
明確化及び簡潔な説明の目的で、特徴は、同じ又は別個の実施形態の一部として本明細書に記載されるが、本発明の範囲が、記載される特徴の全て又はいくつかの組み合わせを有する実施形態を含み得ることが理解される。例えば、線を刻むことによる隆起部の形成について実施形態が示されたが、同様の機能及び結果を達成するための本開示の利点を有する代替の方法も当業者によって想定され得る。段階、例えば堆積及び加熱は、組み合わせたり、1つ又は複数の代替的な段階に分割したりすることができる。検討され、示される実施形態の様々な要素は、連続線の形成を可能にし、形成された導電性トラックを3Dオブジェクトに埋め込むことを可能にするなど、特定の利点を提供する。勿論、上記の実施形態又はプロセスのいずれか1つを1つ又は複数の他の実施形態又はプロセスと組み合わせて、設計及び利点を見つけて一致させることにおいてさらに改善を提供することができることを理解されたい。本開示が、表面に導電性トラックが印刷された3Dポリマー製品の製造に特定の利点を提供し、一般に、導電性トラックが3D製品に組み込まれる任意の用途に適用できることが理解される。
【0027】
添付の特許請求の範囲を解釈する際に、「含んでいる」という単語は、所与の請求項に記載されているもの以外の要素又は行為の存在を排除するものではないことを理解されたい。要素の前にある「a」又は「an」という単語は、そのような複数の要素の存在を排除するものではない。特許請求の範囲内の参照記号は、その範囲を制限するものではない。いくつかの「手段」は、同じ又は異なるアイテム又は実装された構造又は機能によって表される場合がある。開示されたデバイス又はその一部のいずれかは、特に明記しない限り、一緒に組み合わせるか、又はさらなる部分に分離することができる。ある請求項が別の請求項を参照している場合、これは、それぞれの特徴の組み合わせによって達成される相乗効果を示している可能性がある。しかし、特定の手段が相互に異なる請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせも有利に使用できないことを示すものではない。従って、本実施形態は、文脈によって明確に除外されない限り、各請求項が原則として任意の先行する請求項を参照することができる、請求項の全ての有効な組み合わせを含み得る。
【符号の説明】
【0028】
10 オブジェクト
10s 表面
20 トレンチ
21 隆起部
22 隆起部
30 トレンチ
31 隆起部
32 隆起部
40 材料受容トラック
50 導電性トラック
55 下部導電性トラック