(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ベントバルブ
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20231212BHJP
B29C 33/10 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C33/10
(21)【出願番号】P 2021518723
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 FI2019050653
(87)【国際公開番号】W WO2020074769
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-08-25
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】519363177
【氏名又は名称】ダブリューディー レーシング オイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】ペンッキマキ, ペッカ
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-034691(JP,A)
【文献】国際公開第2009/007493(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第2011-0052897(KR,A)
【文献】特開平09-141660(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2010-0010120(KR,A)
【文献】特開2005-161717(JP,A)
【文献】特開2006-103026(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107877746(CN,A)
【文献】中国実用新案第206589220(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用タイヤの加硫モールドから空気を除去するためのベントバルブ(1)であって、
通気チャンネル(12)を有するバルブ本体(2)と、
通気チャンネル(12)内に配置された可動なバルブインサート(3)と、
バルブインサート(3)を開口位置の方向に押圧して通気チャンネル(12)を通して空気流を許容するスプリング部材(7)と、を備え、
バルブインサート(3)は、バルブステム(4)と、バルブインサート(3)の開口ストロークを制限するストロークリミッター(6)と、を有し、バルブステム(4)の一端が、通気チャンネル(12)を開閉するバルブ部材(5)を有し、
ストロークリミッター(6)は、内ネジ(9)を有する穴(8)を備え、バルブステム(4)の他端が、外ネジ部(10)を有し、外ネジ部(10)は、ストロークリミッター(6)の内ネジ(9)に固着され
、
ストロークリミッター(6)が、バルブインサート(3)が開口位置にあるとき、通気チャンネル(12)から空気を除去するスロット(11)を有し、
穴(8)が、内ネジ(9)を備えた内ネジ部(16)と、内ネジ部(16)とバルブ本体に(2)に対面するストロークリミッター端面(15)の間に位置する無ネジ部(17)を有し、スロット(11)が、無ネジ部(17)に位置することを特徴とするベントバルブ(1)。
【請求項2】
前記請求項
1において、スロット(11)が、穴(8)の表面(13)からストロークリミッター(6)の外面(14)まで延びることを特徴とするベントバルブ(1)。
【請求項3】
前記請求項
1または
2において、スロット(11)が、内ネジ(9)とバルブ本体(2)に対面するストロークリミッター端面(15)の間に位置することを特徴とするベントバルブ(1)。
【請求項4】
前記請求項
1~
3のいずれかにおいて、スロット(11)の領域における穴(8)の直径が、バルブステム(4)の直径よりも大きく、バルブステム(4)と穴(8)の表面(13)の間に通気隙間(18)が存在することを特徴とするベントバルブ(1)。
【請求項5】
前記請求項
4において、通気隙間(18)が、バルブ本体(2)に対面するストロークリミッター端面(15)まで延びていることを特徴とするベントバルブ(1)。
【請求項6】
前記請求項
1~
5のいずれかにおいて、スロット(11)が、バルブ本体(2)に対面するストロークリミッター端面(15)まで延びていることを特徴とするベントバルブ(1)。
【請求項7】
前記請求項
1~6のいずれかにおいて、バルブ本体(2)の側壁(29)が、通気チャンネル(12)から空気を除去するための少なくとも1つの通気穴(19)を有することを特徴とするベントバルブ(1)。
【請求項8】
前記請求項
7において、バルブ本体(2)が、上部(2.1)と、下部(2.2)を有し、下部(2.2)が、上部(2.1)より小さい外径を有し、かつ、通気穴(19)が、下部(2.2)に位置することを特徴とするベントバルブ(1)。
【請求項9】
前記請求項
1~8のいずれかにおいて、バルブインサート(3)のストローク長が、ストロークリミッター(6)またはバルブステム(4)をねじることによって調節可能であることを特徴とするベントバルブ(1)。
【請求項10】
前記請求項
9において、バルブ本体(2) から離隔したストロークリミッター端面(15)および/またはバルブ部材(5)の前面(22)が、バルブインサート(3)のストローク長を調整するための工具を受け止める受止手段(23)を有していることを特徴とするベントバルブ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用タイヤの加硫モールドから空気を除去するためのベントバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用タイヤの加硫モールドにおいては、モールドの内側の寸法よりも小さいタイヤブランクがモールドの内側に配置され、その後モールドが閉じられる。閉じられた後、タイヤブランクが拡大され、このために、タイヤの大きさと形状を得るようプラスチック状態でモールドの表面に押し付けられる。加硫工程中に、タイヤブランクとモールド表面の間の空気は、タイヤブランクの表面がモールド表面に密着するよう除去される必要がある。加硫モールドは、複数の通気孔を有し、これらの通気孔を通してタイヤブランクとモールド表面の間のスペースから空気を除去することができる。特に、加硫モールドは、タイヤとモールドの間にエアポケットが残らないようモールドの各ポイントで空気を完全に除去する数百または数千の通気孔を有してもよい。通気孔は、タイヤ材料が通気孔に入るのを防ぐベントバルブを装備することができる。
【0003】
ベントバルブは、通気チャンネルを有するバルブ本体と、バルブ本体内に配置された可動なバルブインサートを有する。バルブインサートの一端は、通気チャンネルを開閉するためのバルブディスクを備えている。バルブディスクは、ベントバルブの閉口位置にあるバルブ本体のシート表面に押し付けられている。バルブインサートの周囲にはコイルスプリングが配置されている。コイルスプリングは、シート表面から離隔して加硫モールドの内部の方向にバルブディスクを押圧し、ベントバルブを開口位置に位置させるようにしている。バルブインサートの他端は、ストロークリミッターを備え、このストロークリミッターは、バルブインサートが開口位置に向って移動するとき、バルブ本体の端部に当接してその開口動作を制限するようにしている。材料が加硫される際に、膨張し、モールド表面に向かって進むとき、バルブディスクを前方に押し出し、最終的にシート表面に押し付け、通気チャンネルを閉じ、加硫される材料が通気チャンネルにアクセスできなくなる。スプリングは、タイヤブランクがモールドから取り外される間にバルブを開口する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現存のベントバルブの欠点は、バルブインサートの開口の長さを調節できず、したがって、ベントバルブを通して通気される空気の量を調節することができないということにある。タイヤメーカーは、多数の異なる開口ストローク長さを有するベントバルブを使用するので、タイヤとベントバルブのメーカーは異なるタイプのベントバルブを保存する必要があり、しばしば問題になっている。
【0005】
本発明の目的は、前記の問題を低減できるベントバルブを提供することにある。
【0006】
本発明による目的は、請求項1に係るベントバルブによって達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による空気通気インサートは、通気チャンネルを有するバルブ本体と、通気チャンネル内に配置された可動なバルブインサートと、バルブインサートを開口位置の方向に押圧して通気チャンネルを通して空気流を許容するスプリング部材と、を備え、バルブインサートは、バルブステムと、バルブインサートの開口ストロークを制限するストロークリミッターと、を有し、バルブステムの一端が、通気チャンネルを開閉するバルブ部材を有する。ストロークリミッターは、内ネジを備えた穴を有する。バルブステムの他端が、外ネジ部を備え、外ネジ部は、ストロークリミッターの内ネジに固着される。
【発明の効果】
【0008】
優れた効果は、本発明によって達成することができる。ストロークリミッターは、ネジ結合によってバルブステムの端部に取り付けられているので、バルブインサートの開口ストロークの長さは、ストロークリミッターまたはバルブインサートをねじ込むことによって調整することができる。さらに、開口ストロークの調整は、ベントバルブを分解することなく、また、加硫モールドの通気孔からベントバルブを取り除くことなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下において、実施例を用いて添付図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【
図1】閉口位置における本発明の実施形態によるベントバルブの断面図である。
【
図2】開口位置における本発明の実施形態によるベントバルブの断面図である。
【
図3】
図1、2のベントバルブのバルブ本体の断面図である。
【
図4】
図1、2のベントバルブのストロークリミッターの断面図である。
【
図5】
図4のストロークリミッターの上面図である。
【
図6】
図4のストロークリミッターの底面図である。
【
図7】
図1、2のベントバルブのスプリングメンバーを示す。
【
図8】
図1、2のベントバルブのバルブインサートの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面は、車両用タイヤの加硫モールドから空気を除去するためのベントバルブ1を示す。特に、加硫モールドは、1000-4000個のベントバルブ1を有する。このベントバルブ1は、バルブスリーブのようなバルブ本体2を有し、バルブ本体2は、加硫モールドから空気を除去する通気チャンネル12を有する。通気チャンネル12は、円筒状である。通気チャンネル12は、バルブ本体2の第1端から第2端まで延びている。ベントバルブ1は、さらに、通気チャンネル12に挿入されたバルブインサート3を有している。バルブ本体2は、例えばプレスフィットによって加硫モールドの通気孔に取り付けられている。バルブ本体2は円筒状である。バルブ本体2の外径は、特に、1.5~4mmである。バルブ本体2の第1端は、入口開口部24を有し、この入口開口部24を通して空気が通気チャンネル12に導入される。バルブ本体2の第2端は、出口開口部25を有し、この出口開口部25を通して空気が通気チャンネル12から除去される。
【0011】
バルブインサート3は、バルブステム4を有し、バルブステム4の一端部は、通気チャンネル12と入口開口部24を開閉するバルブディスクのようなバルブ部材5を備える。バルブ本体2は、入口開口部24を閉じるためのバルブ部材5が配置されるシート面26を有している。シート面26は円錐状または平面状とすることができる。バルブステム4の他端は、外ネジ部10を有する。外ネジ部10は出口開口部25を通して装着される。
【0012】
ベントバルブ1は、バルブステム4の周囲に配置されたコイルスプリングのようなバネ部材7を有し、バルブインサート3を開口位置に向けて押圧する。開口位置では、バルブ部材5は、シート面26から離れている。開口位置では、通気チャンネル12を通る空気流が許容される。閉口位置において、バルブ部材5は、シート面26に着座している。閉口位置において、通気チャンネル12を通る空気流は防止される。バルブ本体2の内部は、バネ部材7の支持面28を有している。支持面28は、バルブステム4を囲む。バネ部材7は、バルブ部材5と支持面28との間に配置されている。バネ部材7の一方の端部は、バルブ部材5を押圧し、バネ部材7の他方の端部は、支持面28を押圧している。
【0013】
バルブインサート3は、バルブインサート3の開口ストローク長または開口動作を制限するストロークリミッター6を有している。このストロークリミッター6は、バルブインサート3の端部に設けられている。バルブインサート3の開口ストローク中に、ストロークリミッター6がバルブ本体2の第2端に当接して、バルブインサート3の開口動作を制限する。このストロークリミッター6は、内ネジ9を備えた穴8を有している。穴8はめくら穴である。バルブステム4の外ネジ部10は、ストロークリミッター6の内ネジ9に取り外し可能に固着される。ストロークリミッター6は、バルブステム4に完全に締め付けることができるし、また、その逆に完全に緩めることができる。このように、ストロークリミッター6とバルブステム4は、適当な工具、例えば、スクリュードライバーによって固定および/または固定解除することができる。バルブ本体2から離れたストロークリミッター6の端面および/またはバルブ部材5の前面22は、工具を受け止める穴、溝または突起のような受止手段23を有し、この工具によってストロークリミッター6またはバルブステム4をねじ込むことができる。バルブインサート3のストローク長は、ストロークリミッター6に対してバルブステム4をねじ込むか、または緩めることにより調整することができる。バルブインサート3のストローク長は、加硫モールドの通気孔からベントバルブ1を除去することなく調節可能である。
【0014】
ストロークリミッター6は、バルブインサート3が開口位置にあるとき、すなわち、ストロークリミッター6がバルブ本体2の第2端に着座し、バルブ部材5がシート面26からは離隔しているとき、バルブ本体2から空気を除去する少なくとも1つのスロット11を有する。スロット11は、穴の表面13からストロークリミッター6の外面14まで延びている。スロット11は、内ネジ9とバルブ本体2に対面するストロークリミッター6の端面15の間に位置する。スロット11は、バルブ本体2に対面するストロークリミッター6の端面まで延びている。
図5から理解できるように、ストロークリミッター6は、穴8の対向する両側に配置された2つのスロット11を有している。
【0015】
スロット11の領域における穴8の直径は、バルブルステム4と穴8の表面との間に通気隙間18が存在するよう、バルブステム4の直径よりも大きく構成されている。通気隙間18は円形である。通気隙間18は、バルブ本体2に対面するストロークリミッター端面15まで延びている。特に、穴8は、内ネジ9を備えた内ネジ部16と、内ネジ部16とバルブ本体2に対面するストロークリミッターの端面15との間の無ネジ部17を有する。スロット11は、無ネジ部17に位置している。
【0016】
円形の隙間27は、バルブインサート3が開口位置にあるとき、出口開口部25の端縁とバルブステム4の間に設けられている。空気は、隙間27を通り、その後、通気隙間18、ストロークリミッター6のスロット11を通って通気チャンネル12から除去される。
【0017】
バルブ本体2の側壁29は、少なくとも1つの通気穴19を有している。特に、通気穴19が複数の場合には、通気チャンネル12からの空気の除去を増加させることができる。側壁29は、バルブ本体2の第1端と第2端の間に位置する。通気穴19は、通気チャンネル12の内面20からバルブ本体2の外面21まで延びている。バルブ本体2は、上部2.1および下部2.2を有する。下部2.2の外径は、上部2.1の外径よりも小さい。一つの通気穴19または複数の通気穴19は、下部2.2に位置する。このため、空気は、通気穴19を通り、その後、下部2.2と加硫モールドの通気孔の表面との隙間を通って、通気チャンネル12から除去される。複数の通気穴19は、バルブ本体2の円周方向に並んで配置されている。
【0018】
ベントバルブ1の開口ストローク長は、バルブステム4に対してストロークリミッター6をねじ込んだり、緩めたりすることにより調整可能である。