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▶ シャンハイ、ケンパーソー、バイオテクノロジー、カンパニー、リミテッドの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】抗CLDN18.2抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20231212BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231212BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231212BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20231212BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231212BHJP
【FI】
C07K16/30
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 T
A61K47/68
A61P35/00
C07K19/00
C12N15/85 Z
C12N5/0783
A61K38/17
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/17
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2021523245
(86)(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 CN2018111201
(87)【国際公開番号】W WO2020082209
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-10-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521173535
【氏名又は名称】シャンハイ、ケンパーソー、バイオテクノロジー、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI GENBASE BIOTECHNOLOGY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】トゥー、リャン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ホンヤン
(72)【発明者】
【氏名】リン、ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ユアン、ジチュン
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-513146(JP,A)
【文献】特表2009-517354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
C07K 16/00 - 16/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、
(1)配列番号73において示される配列を有するVHおよび配列番号74において示される配列を有するVLを含んでなる、
(2)配列番号91において示される配列を有するVHおよび配列番号92において示される配列を有するVLを含んでなる、
(3)配列番号99において示される配列を有するVHおよび配列番号100において示される配列を有するVLを含んでなる、または
(4)配列番号101において示される配列を有するVHおよび配列番号102において示される配列を有するVLを含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメント
【請求項2】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、ヒト免疫グロブリン由来の、重鎖定常領域(CH)および軽鎖定常領域(CL)を含んでなる、請求項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
以下の一つ以上を特徴とする、請求項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント:
(1)前記重鎖定常領域が、IgG重鎖定常領域である;
(2)前記重鎖定常領域(CH)が、配列番号81において示される;
(3)前記軽鎖定常領域が、κ軽鎖定常領域である;
(4)前記軽鎖定常領域(CL)が配列番号82において示される。
【請求項4】
前記抗原結合フラグメントが、Fab、Fab’、(Fab’)、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、およびダイアボディからなる群から選択される;かつ/または、前記抗体が、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体もしくは多重特異性抗体である、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、検出可能な標識で標識されている、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記検出可能な標識が、酵素、放射性核種、蛍光色素、発光物質、またはビオチンで標識されている、請求項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはその重鎖可変領域および/もしくは軽鎖可変領域をコードする、単離核酸分子。
【請求項8】
請求項に記載の単離核酸分子を含んでなるベクター。
【請求項9】
請求項に記載の単離核酸分子または請求項に記載のベクターを含んでなる、宿主細胞。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを調製する方法であって、前記抗体またはその抗原結合フラグメントの発現を可能にする条件下で請求項に記載の宿主細胞を培養すること、および培養された宿主細胞の培養物から前記抗体またはその抗原結合フラグメントを回収することを含んでなる、方法。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを含んでなる二重特異性または多重特異性分子。
【請求項12】
前記二重特異性または多重特異性分子が、第2の標的に対する第2の結合特異性を有する少なくとも1つの第2の抗体をさらに含んでなる、請求項11に記載の二重特異性または多重特異性分子。
【請求項13】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、および前記抗体またはその抗原結合フラグメントに連結された治療剤を含んでなる免疫複合体。
【請求項14】
前記治療剤が細胞傷害剤であるか、または前記免疫複合体が抗体薬物複合体(ADC)である、請求項13に記載の免疫複合体。
【請求項15】
前記治療剤が、アルキル化剤、抗有糸分裂剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種、およびそれらの任意の組合せから選択される、請求項13に記載の免疫複合体。
【請求項16】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、請求項11または12に記載の二重特異性もしくは多重特異性分子、または請求項1315のいずれか一項に記載の免疫複合体、ならびに薬学上許容可能な担体および/もしくは賦形剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項17】
さらなる薬学上有効な剤をさらに含んでなり、
前記さらなる薬学上有効な剤が抗腫瘍剤である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記さらなる薬学上有効な剤が、アルキル化剤、抗有糸分裂剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種、放射線増感剤、抗血管新生剤、サイトカイン、分子標的剤、免疫チェックポイント阻害剤または腫瘍溶解性ウイルスである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを含んでなるキット。
【請求項20】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、検出可能な標識標識されている、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記キットが、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを特異的に認識する第2の抗体をさらに含んでなり、前記第2の抗体が、検出可能な標識をさらに含んでなる、請求項19に記載のキット。
【請求項22】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントの抗原結合ドメインを含んでなるキメラ抗原受容体。
【請求項23】
前記抗原結合ドメインが、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含んでなる、請求項22に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項24】
前記抗原結合ドメインがscFvである、請求項22に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項25】
請求項2224のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子。
【請求項26】
請求項25に記載の単離核酸分子を含んでなるベクター。
【請求項27】
請求項25に記載の単離核酸分子または請求項26に記載のベクターを含んでなる宿主細胞であって、
前記宿主細胞が免疫エフェクター細胞である、宿主細胞。
【請求項28】
前記宿主細胞がキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)である、請求項27に記載の宿主細胞。
【請求項29】
インビトロで、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞の成長を阻害する、および/または前記CLDN18.2を発現する腫瘍細胞を死滅させる方法であって、有効量の請求項1~のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または請求項11または12に記載の二重特異性もしくは多重特異性分子、または請求項1315のいずれか一項に記載の免疫複合体、または請求項1618のいずれか一項に記載の医薬組成物、または請求項2224のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体または請求項27または28に記載の宿主細胞と、前記腫瘍細胞を接触させることを含んでなる、方法。
【請求項30】
対象における腫瘍を予防および/または治療するための薬剤の製造における、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または請求項11または12に記載の二重特異性もしくは多重特異性分子、または請求項1315のいずれか一項に記載の免疫複合体、または請求項1618のいずれか一項に記載の医薬組成物、または請求項2224のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体、または請求項25に記載の単離核酸分子、または請求項26に記載のベクター、または請求項27または28に記載の宿主細胞の使用。
【請求項31】
前記薬剤が、抗腫瘍剤であるさらなる薬学上有効な剤をさらに含んでなる、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記さらなる薬学上有効な剤が、アルキル化剤、抗有糸分裂剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種、放射線増感剤、抗血管新生剤、サイトカイン、分子標的剤、免疫チェックポイント阻害剤または腫瘍溶解性ウイルスである、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記腫瘍がCLDN18.2を発現し、
前記腫瘍が、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞と関与する、請求項3032のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
前記腫瘍が、胃癌、食道癌、膵臓癌、気管支癌、非小細胞肺癌、乳癌、耳鼻咽喉(ENT)癌、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、頭頸部癌、胆嚢癌およびそれらの転移性癌からなる群から選択される;かつ/または、前記対象が、哺乳動物である、請求項3033のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
前記転移性癌が胃癌転移である、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記転移性癌がクルケンベルグ腫瘍、腹膜転移またはリンパ節転移である、請求項34に記載の使用。
【請求項37】
サンプル中のCLDN18.2の存在または量を検出する方法であって、以下の工程:
(1)請求項1~のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと前記サンプルを接触させること;
(2)前記抗体またはその抗原結合フラグメントとCLDN18.2との複合体の形成または量を検出すること
を含んでなる、方法。
【請求項38】
CLDN18.2を標的とする抗腫瘍療法により腫瘍が治療可能であるかどうかを決定するためのキットの製造における、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合フラグメントの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患の治療および免疫学の分野に関する。特に、本発明は、抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合フラグメント、それをコードする核酸分子、それを含有する免疫複合体、二重特異性分子、キメラ抗原受容体、および医薬組成物、ならびに腫瘍の予防および/または治療に対するそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
胃癌は、世界中で最も一般的な悪性腫瘍の1つであり、その5年生存率は低く、ほとんどの国で20%~40%のレベルであり、毎年約700,000人がこの疾患が原因で死亡する。中国における胃癌の生存率は、35.9%である。統計によれば、2015年の中国において、胃癌の新規症例数は679.1/100,000に達し、死亡数は498.0/100,000と高く、このため、胃癌は、肺癌に次いで罹病率および死亡率が高い2番目に最も一般的な腫瘍となった。胃癌は悪性度が高く、胃癌スクリーニングは広く実施されていないため、患者は通常、進行期で診断され、その結果、根治手術の機会が失われ、化学療法のみが主要な治療法として残る。
【0003】
腫瘍分子生物学の発展に伴い、標的薬物および免疫療法が、血腫、乳癌および結腸直腸癌の治療において有効性を有することが確認されているが、胃癌治療におけるそれらの適用は、比較的立ち止まっている。現在、胃癌標的療法に対して国際的に承認されている標的には、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)および血管内皮成長因子(VEGF)が含まれ、承認されている胃癌免疫療法の標的は、プログラム細胞死タンパク質1(programmed lethal protein 1)(PD-1)である。2017年9月、ATTRACTION-2の大規模第III相臨床試験に基づき、日本の厚生労働省は、化学療法抵抗性の進行胃癌を有する患者の治療のためのPD-1抗体オプジーボを承認した。プラセボと比較して、オプジーボは、死亡率を37%減少させることができ、有効率11.2%を示した。Keynote059の第II相臨床試験に基づき、米国FDAは、有効率15.5%を示す、化学療法抵抗性のPD-L1陽性の進行胃癌患者の治療におけるPD-1抗体キイトルーダの使用の承認を促進している。標的療法の点では、血管内皮成長因子(VEGF)は、腫瘍血管新生を促進するのみならず、腫瘍細胞の表面上の受容体にも結合して、下流シグナル伝達経路を活性化し、腫瘍幹細胞の形成、発生および遊走に直接的に関与する。VEGFR2阻害剤のアパチニブおよびラムシルマブの両方は、第二選択以上の進行胃癌のVEFR標的療法に安全かつ有効であることが臨床的に確認されている。毎年胃癌の新規症例の約6%~35%において、HER2遺伝子の増幅またはタンパク質の過剰発現が生じるため、HER2は、抗癌治療における重要な標的の1つである。TOGA第III相臨床試験は、HER2(+)進行胃癌の第一選択治療におけるトラスツズマブの利点を最初に実証し、化学療法と組み合わせたトラスツズマブで治療された群のOSは、化学療法単独で治療された群のOSよりも有意に長く(13.8ヵ月 対 11ヵ月)、PFS、ORR(客観的奏効率)およびTTP(無増悪期間)を含む副次的評価項目も、有意に改善された。しかしながら、中国におけるHER2陽性患者の割合は、わずか約10%であり、したがって、胃癌に対する新規の治療標的を探索することが不可避である。
【0004】
クローディンは、上皮および内皮のタイトジャンクション内の膜貫通タンパク質複合体であり、隣接細胞間のギャップの上側に位置する。その分布は組織および臓器特異的であり、その機能は主に、細胞接着、細胞極性の維持、傍細胞透過性の調節、ならびに細胞の増殖および分化の調節への関与を含む。クローディン18分子は、4つの膜貫通疎水性領域および2つの細胞外ループを有するテトラスパニンであり、2つの異なるスプライスバリアントCLDN18.1およびCLDN18.2として存在する。CLDN18.1およびCLDN18.2は、細胞内領域のN末端および第1の細胞外ループにおける配列が異なっているが、他の部分において同じタンパク質一次配列を共有する。CLDN18の組織分布は、CLDN18.1は肺細胞上にのみ選択的に発現しているが、CLDN18.2は胃細胞上にのみ発現しており、正常な胃におけるCLDN18.2の発現は、分化した短寿命の胃上皮細胞に限定されることを示している。CLDN18.2は、胃細胞の悪性形質転換中にしばしば保持され、したがって、ヒト胃癌細胞の表面上にしばしば提示され、消化管腺腫の60%~80%が、CLDN18.2陽性である(Clinical Cancer Research 2008, 14 (23): 7624-34)。さらに、CLDN18.2は、膵管癌および転移性膵臓癌において高度に発現し、陽性率は60~70%であるため、膵管癌/膵臓癌の診断マーカーおよび治療標的として使用することができる(Journal of Clinical Pathology 2012, 65: 431- 436; World Journal of Gastroenterology 2014, 20 (31): 10813-10824; International Journal of Cancer 2014, 134: 731-739)。他の腫瘍におけるCLDN18.2の異所性活性化に関する集中的な研究はなく、現在入手可能な文書では、膵臓癌における前述の異所性活性化に加えて、このタンパク質は、食道癌、気管支癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、乳癌、ENT腫瘍、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌およびそれらの転移、特に、クルケンベルグ腫瘍などの胃癌転移、腹膜転移およびリンパ節転移においても発現することが示されている(Clinical Cancer Research 2008, 14 (23): 7624-34; International Journal of Cancer 2014, 134: 731-739; Cancer Letters 2017, 403: 66-73; International Journal of Cancer 2014, 135 (9): 2206-2214)。CLDN18.2は、予防的および治療的価値を有する腫瘍標的であり、癌細胞と正常細胞との間のその差次的発現、その膜局在、ほとんどの毒性関連正常組織におけるその非存在、および胃におけるその発現が、胃の標的陰性幹細胞(または位置的に隔絶された幹細胞)により補充され得る分化胃細胞に限定されることから、CLDN18.2は、癌免疫療法に対する魅力的な標的となっている。したがって、癌患者にとってさらに薬物療法の選択肢を提供する、高い特異性、低い毒性作用または副作用、および優れた臨床的有効性を有する抗CLDN18.2抗体を開発することが緊急かつ必要である。
【発明の具体的説明】
【0005】
本発明の抗体は、ヒトCLDN18.2を特異的に認識する/に対して特異的に結合することができ、ADCCおよび/またはCDCを介してCLDN18.2を発現する細胞(例えば、腫瘍細胞)の死滅を誘導することができ、既知の抗CLDN18.2抗体と比較して優れた機能的特徴を示す。したがって、本発明の抗体は、腫瘍を予防および/または治療できる可能性を有し、大きな臨床的価値を有する。
【0006】
本発明の抗体
したがって、一つの側面において、本発明は、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
(a)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(i)以下の配列:配列番号75、もしくは配列番号75と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR1、
(ii)以下の配列:配列番号76、もしくは配列番号76と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR2、および
(iii)以下の配列:配列番号77、もしくは配列番号77と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR3
を含んでなる重鎖可変領域(VH);
ならびに/または
(b)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(iv)以下の配列:配列番号78、もしくは配列番号78と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR1、
(v)以下の配列:配列番号79、もしくは配列番号79と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR2、および
(vi)以下の配列:配列番号80、もしくは配列番号80と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR3
を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0007】
特定の複数の好ましい実施形態において、(i)~(vi)のいずれか1つに列挙される置換は、保存的置換である。
【0008】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、配列番号75において示されるVH CDR1、配列番号76において示されるVH CDR2、配列番号77において示されるVH CDR3を含んでなり;かつ前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、配列番号78または96において示されるVL CDR1、配列番号79において示されるVL CDR2、および配列番号80において示されるVL CDR3を含んでなる。
【0009】
本発明はまた、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含んでなる、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
(a)前記重鎖可変領域が、配列番号73において示される重鎖可変領域の3個のCDRを含んでなり;かつ前記軽鎖可変領域が、配列番号74において示される軽鎖可変領域の3個のCDRを含んでなり;または
(b)前記重鎖可変領域が、配列番号91において示される重鎖可変領域の3個のCDRを含んでなり;かつ前記軽鎖可変領域が、配列番号92において示される軽鎖可変領域の3個のCDRを含んでなる、
抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0010】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域の3個のCDR、および/または前記軽鎖可変領域の3個のCDRは、Kabat、ChothiaまたはIMGTナンバリングシステムを用いて決定される。
【0011】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、44F7またはその抗原結合フラグメント、そのキメラ抗体、またはそのヒト化抗体、またはそのバリアントであり、ここで、前記バリアントは、それが由来する抗体または抗原結合フラグメントの生物学的機能を実質的に保持する。
【0012】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下の生物学的機能:
(a)0.1μg/ml以下(例えば、0.05μg/ml以下)のEC50で、ヒトCLDN18.2に結合する;
(b)0.1μg/ml以下のEC50で、マウスCLDN18.2に結合する;
(c)ヒトCLDN18.1に結合しない;
(d)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(e)補体依存性細胞傷害(CDC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(f)対象における腫瘍(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍)を予防および/または治療する
のうち1つ以上を有する。
【0013】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(1)配列番号75において示されるVH CDR1、配列番号76において示されるVH CDR2、配列番号77において示されるVH CDR3;配列番号78もしくは96において示されるVL CDR1、配列番号79において示されるVL CDR2、配列番号80において示されるVL CDR3;または
(2)(a)配列番号73において示される重鎖可変領域の3個のCDR;および配列番号74において示される軽鎖可変領域の3個のCDR;もしくは(b)配列番号91において示される重鎖可変領域の3個のCDR;および配列番号92において示される軽鎖可変領域の3個のCDR
を含んでなる。
【0014】
例示的な実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(a)(i)配列番号73において示される配列;
(ii)配列番号73において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(iii)配列番号73において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域(VH);
および/または、
(b)(iv)配列番号74において示される配列;
(v)配列番号74において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(vi)配列番号74において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる。
【0015】
特定の複数の好ましい実施形態において、(ii)または(v)に列挙される置換は、保存的置換である。
【0016】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号73において示される配列を有するVHおよび配列番号74において示される配列を有するVLを含んでなる。
【0017】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化である。
【0018】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、ヒト免疫グロブリンに由来する重鎖可変領域(VH)フレームワーク領域(FR)を含んでなり、かつ/または前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、ヒト免疫グロブリンに由来する軽鎖可変領域(VL)フレームワーク領域(FR)を含んでなる。このような複数の実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域FRおよび/または軽鎖可変領域FRは、1以上の非ヒト(例えば、マウス)アミノ酸残基を含んでなってもよく、例えば、前記重鎖フレームワーク領域FRおよび/または軽鎖フレームワーク領域FRは、1以上のアミノ酸逆突然変異(back mutations)を含んでなってもよく、対応するマウスアミノ酸残基は、これらの逆突然変異に含まれる。
【0019】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(a)ヒト免疫グロブリンの重鎖フレームワーク領域もしくはそのバリアント、ここで、前記バリアントは、それが由来する配列と比較して最大20個のアミノ酸の保存的置換(例えば、最大15個、最大10個、もしくは最大5個のアミノ酸の保存的置換;例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の保存的置換)を有する;および/または
(b)ヒト免疫グロブリンの軽鎖フレームワーク領域もしくはそのバリアント、ここで、前記バリアントは、それが由来する配列と比較して最大20個のアミノ酸の保存的置換(例えば、最大15個、最大10個、もしくは最大5個のアミノ酸の保存的置換;例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の保存的置換)を有する;
を含んでなる。
【0020】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域、例えば、ヒト生殖系列抗体遺伝子によりコードされるアミノ酸配列に含まれるフレームワーク領域を含んでなる。特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト重鎖生殖系列遺伝子によりコードされるアミノ酸配列に含まれる重鎖フレームワーク領域、および/またはヒト軽鎖生殖系列遺伝子によりコードされるアミノ酸配列に含まれる軽鎖フレームワーク領域を含んでなる。
【0021】
このような複数の実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのフレームワーク領域(重鎖フレームワーク領域および/または軽鎖フレームワーク領域)は、1以上の非ヒト(例えば、マウス)アミノ酸残基を含んでなってもよい。特定の複数の好ましい実施形態において、前記フレームワーク領域(重鎖フレームワーク領域および/または軽鎖フレームワーク領域)は、対応するマウス残基に逆変異している1以上のアミノ酸残基または対応するマウス残基の保存的アミノ酸置換(このような変異は逆突然変異と呼ばれる)を含んでなる。
【0022】
したがって、特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(例えば、ヒト生殖系列抗体遺伝子によりコードされるアミノ酸配列に含まれるフレームワーク領域)を含んでなり、前記フレームワーク領域は、ヒト残基からマウス残基への1以上の逆突然変異を場合により含んでなる。
【0023】
例示的な実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(a)(i)配列番号91において示される配列;
(ii)配列番号91において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(iii)配列番号91において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域(VH);
および/または、
(b)(iv)配列番号92において示される配列;
(v)配列番号92において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(vi)配列番号92において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる。
【0024】
特定の複数の好ましい実施形態において、(ii)または(v)に列挙される置換は、保存的置換である。
【0025】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号91において示される配列を有するVHおよび配列番号92において示される配列を有するVLを含んでなる。
【0026】
例示的な実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(a)(i)配列番号99において示される配列;
(ii)配列番号99において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(iii)配列番号99において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域(VH);
および/または、
(b)(iv)配列番号100において示される配列;
(v)配列番号100において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(vi)配列番号100において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる。
【0027】
特定の複数の好ましい実施形態において、(ii)または(v)に列挙される置換は、保存的置換である。
【0028】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号99において示される配列を有するVHおよび配列番号100において示される配列を有するVLを含んでなる。
【0029】
例示的な実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(a)(i)配列番号101において示される配列;
(ii)配列番号101において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(iii)配列番号101において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域(VH);
および/または、
(b)(iv)配列番号102において示される配列;
(v)配列番号102において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(vi)配列番号102において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる。
【0030】
特定の複数の好ましい実施形態において、(ii)または(v)に列挙される置換は、保存的置換である。
【0031】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号101において示される配列を有するVHおよび配列番号102において示される配列を有するVLを含んでなる。
【0032】
別の側面において、本発明は、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
(a)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(i)以下の配列:配列番号3、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR1;
(ii)以下の配列:配列番号4、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR2;および
(iii)以下の配列:配列番号5、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR3
を含んでなる重鎖可変領域(VH);
ならびに/または
(b)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(iv)以下の配列:配列番号6、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR1、
(v)以下の配列:配列番号7、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR2、および
(vi)以下の配列:配列番号8、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR3
を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0033】
特定の複数の好ましい実施形態において、(i)~(vi)のいずれか1つに列挙される置換は、保存的置換である。
【0034】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、配列番号3において示されるVH CDR1、配列番号4において示されるVH CDR2、および配列番号5において示されるVH CDR3を含んでなり;かつ前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、配列番号6において示されるVL CDR1、配列番号7において示されるVL CDR2、および配列番号8において示されるVL CDR3を含んでなる。
【0035】
本発明はまた、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含んでなる、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記重鎖可変領域が、配列番号1において示される重鎖可変領域の3個のCDRを含んでなり;かつ前記軽鎖可変領域が、配列番号2において示される軽鎖可変領域の3個のCDRを含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0036】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域の3個のCDR、および/または前記軽鎖可変領域の3個のCDRは、Kabat、ChothiaまたはIMGTナンバリングシステムを用いて決定される。
【0037】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、1D10またはその抗原結合フラグメント、そのキメラ抗体、またはそのヒト化抗体、またはそのバリアントであり、ここで、前記バリアントは、それが由来する抗体または抗原結合フラグメントの生物学的機能を実質的に保持する。
【0038】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下の生物学的機能:
(a)0.1μg/ml以下(例えば、0.05μg/ml、0.02μg/ml以下)のEC50で、ヒトCLDN18.2に結合する;
(b)1μg/ml以下のEC50で、マウスCLDN18.2に結合する;
(c)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(d)補体依存性細胞傷害(CDC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(e)例えば、FACSまたはフローサイトメトリーにより測定された内部移行レベルが少なくとも10%(例えば、少なくとも15%、少なくとも20%以上)で、細胞(例えば、腫瘍細胞)へのCLDN18.2の内部移行を媒介する;細胞は、その表面上に発現したCLDN18.2を有する;
(f)対象における腫瘍(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍)を予防および/または治療する
のうち1つ以上を有する。
【0039】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(1)配列番号3において示されるVH CDR1、配列番号4において示されるVH CDR2および配列番号5において示されるVH CDR3;配列番号6において示されるVL CDR1;配列番号7において示されるVL CDR2;配列番号8において示されるVL CDR3;または
(2)配列番号1において示される重鎖可変領域の3個のCDR;および配列番号2において示される軽鎖可変領域の3個のCDR
を含んでなる。
【0040】
例示的な実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(a)(i)配列番号1において示される配列;
(ii)配列番号1において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(iii)配列番号1において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域(VH);
および/または、
(b)(iv)配列番号2において示される配列;
(v)配列番号2において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(vi)配列番号2において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる。
【0041】
特定の複数の好ましい実施形態において、(ii)または(v)に列挙される置換は、保存的置換である。
【0042】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1において示される配列を有するVHおよび配列番号2において示される配列を有するVLを含んでなる。
【0043】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化である。
【0044】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、ヒト免疫グロブリンに由来する重鎖可変領域(VH)フレームワーク領域(FR)を含んでなり、かつ/または前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、ヒト免疫グロブリンに由来する軽鎖可変領域(VL)フレームワーク領域(FR)を含んでなる。このような複数の実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域FRおよび/または軽鎖可変領域FRは、1以上の非ヒト(例えば、マウス)アミノ酸残基を含んでなってもよく、例えば、前記重鎖フレームワーク領域FRおよび/または軽鎖フレームワーク領域FRは、1以上のアミノ酸逆突然変異を含んでなってもよく、対応するマウスアミノ酸残基は、これらの逆突然変異に含まれる。
【0045】
別の側面において、本発明は、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
(a)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(i)以下の配列:配列番号11、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR1、
(ii)以下の配列:配列番号12、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR2、および
(iii)以下の配列:配列番号13、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR3
を含んでなる重鎖可変領域(VH);
ならびに/または
(b)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(iv)以下の配列:配列番号14、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR1、
(v)以下の配列:配列番号15、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR2、および
(vi)以下の配列:配列番号16、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR3
を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0046】
特定の複数の好ましい実施形態において、(i)~(vi)のいずれか1つに列挙される置換は、保存的置換である。
【0047】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、配列番号11において示されるVH CDR1、配列番号12において示されるVH CDR2、および配列番号13において示されるVH CDR3を含んでなり;かつ前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、配列番号14において示されるVL CDR1、配列番号15において示されるVL CDR2、および配列番号16において示されるVL CDR3を含んでなる。
【0048】
本発明はまた、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含んでなる、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記重鎖可変領域が、配列番号9において示される重鎖可変領域の3個のCDRを含んでなり;かつ前記軽鎖可変領域が、配列番号10において示される軽鎖可変領域の3個のCDRを含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0049】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域の3個のCDR、および/または前記軽鎖可変領域の3個のCDRは、Kabat、ChothiaまたはIMGTナンバリングシステムを用いて決定される。
【0050】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、2F12またはその抗原結合フラグメント、そのキメラ抗体、またはそのヒト化抗体、またはそのバリアントであり、ここで、前記バリアントは、それが由来する抗体または抗原結合フラグメントの生物学的機能を実質的に保持する。
【0051】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下の生物学的機能:
(a)0.1μg/ml以下(例えば、0.05μg/ml以下)のEC50で、ヒトCLDN18.2に結合する;
(b)0.1μg/ml以下のEC50で、マウスCLDN18.2に結合する;
(c)ヒトCLDN18.1に結合しない;
(d)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(e)補体依存性細胞傷害(CDC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(f)対象における腫瘍(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍)を予防および/または治療する
のうち1つ以上を有する。
【0052】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(1)配列番号11において示されるVH CDR1、配列番号12において示されるVH CDR2、配列番号13において示されるVH CDR3;配列番号14において示されるVL CDR1;配列番号15において示されるVL CDR2;配列番号16において示されるVL CDR3;または
(2)配列番号9において示される重鎖可変領域の3個のCDR;および配列番号10において示される軽鎖可変領域の3個のCDR
を含んでなる。
【0053】
例示的な実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(a)(i)配列番号9において示される配列;
(ii)配列番号9において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(iii)配列番号9において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域(VH);
および/または、
(b)(iv)配列番号10において示される配列;
(v)配列番号10において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(vi)配列番号10において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる。
【0054】
特定の複数の好ましい実施形態において、(ii)または(v)に列挙される置換は、保存的置換である。
【0055】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号9において示される配列を有するVHおよび配列番号10において示される配列を有するVLを含んでなる。
【0056】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化である。
【0057】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、ヒト免疫グロブリンに由来する重鎖可変領域(VH)フレームワーク領域(FR)を含んでなり、かつ/または前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、ヒト免疫グロブリンに由来する軽鎖可変領域(VL)フレームワーク領域(FR)を含んでなる。このような複数の実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域FRおよび/または軽鎖可変領域FRは、1以上の非ヒト(例えば、マウス)アミノ酸残基を含んでなってもよく、例えば、前記重鎖フレームワーク領域FRおよび/または軽鎖フレームワーク領域FRは、1以上のアミノ酸逆突然変異を含んでなってもよく、対応するマウスアミノ酸残基は、これらの逆突然変異に含まれる。
【0058】
別の側面において、本発明は、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
(a)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(i)以下の配列:配列番号19、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR1、
(ii)以下の配列:配列番号20、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR2、および
(iii)以下の配列:配列番号21、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR3
を含んでなる重鎖可変領域(VH);
ならびに/または
(b)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(iv)以下の配列:配列番号22、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR1、
(v)以下の配列:配列番号23、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR2、および
(vi)以下の配列:配列番号24、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR3
を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0059】
特定の複数の好ましい実施形態において、(i)~(vi)のいずれか1つに列挙される置換は、保存的置換である。
【0060】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、配列番号19において示されるVH CDR1、配列番号20において示されるVH CDR2、配列番号21において示されるVH CDR3を含んでなり;かつ前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、配列番号22において示されるVL CDR1、配列番号23において示されるVL CDR2、および配列番号24において示されるVL CDR3を含んでなる。
【0061】
本発明はまた、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含んでなる、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記重鎖可変領域が、配列番号17において示される重鎖可変領域の3個のCDRを含んでなり;かつ前記軽鎖可変領域が、配列番号18において示される軽鎖可変領域の3個のCDRを含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0062】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域の3個のCDR、および/または前記軽鎖可変領域の3個のCDRは、Kabat、ChothiaまたはIMGTナンバリングシステムを用いて決定される。
【0063】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、3F2またはその抗原結合フラグメント、そのキメラ抗体、またはそのヒト化抗体、またはそのバリアントであり、ここで、前記バリアントは、それが由来する抗体または抗原結合フラグメントの生物学的機能を実質的に保持する。
【0064】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下の生物学的機能:
(a)0.1μg/ml以下(例えば、0.05μg/ml以下)のEC50で、ヒトCLDN18.2に結合する;
(b)0.1μg/ml以下のEC50で、マウスCLDN18.2に結合する;
(c)ヒトCLDN18.1に結合しない;
(d)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(e)補体依存性細胞傷害(CDC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(f)対象における腫瘍(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍)を予防および/または治療する
のうち1つ以上を有する。
【0065】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(1)配列番号19において示されるVH CDR1、配列番号20において示されるVH CDR2、配列番号21において示されるVH CDR3;配列番号22において示されるVL CDR1、配列番号23において示されるVL CDR2、配列番号24において示されるVL CDR3;または
(2)配列番号17において示される重鎖可変領域の3個のCDR;および配列番号18において示される軽鎖可変領域の3個のCDR
を含んでなる。
【0066】
例示的な実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(a)(i)配列番号17において示される配列;
(ii)配列番号17において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(iii)配列番号17において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域(VH);
および/または、
(b)(iv)配列番号18において示される配列;
(v)配列番号18において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(vi)配列番号18において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる。
【0067】
特定の複数の好ましい実施形態において、(ii)または(v)に列挙される置換は、保存的置換である。
【0068】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号17において示される配列を有するVHおよび配列番号18において示される配列を有するVLを含んでなる。
【0069】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化である。
【0070】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、ヒト免疫グロブリンに由来する重鎖可変領域(VH)フレームワーク領域(FR)を含んでなり、かつ/または前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、ヒト免疫グロブリンに由来する軽鎖可変領域(VL)フレームワーク領域(FR)を含んでなる。このような複数の実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域FRおよび/または軽鎖可変領域FRは、1以上の非ヒト(例えば、マウス)アミノ酸残基を含んでなってもよく、例えば、前記重鎖フレームワーク領域FRおよび/または軽鎖フレームワーク領域FRは、1以上のアミノ酸逆突然変異を含んでなってもよく、対応するマウスアミノ酸残基は、これらの逆突然変異に含まれる。
【0071】
別の側面において、本発明は、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
(a)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(i)以下の配列:配列番号27、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR1;
(ii)以下の配列:配列番号28、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR2;および
(iii)以下の配列:配列番号29、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR3
を含んでなる重鎖可変領域(VH);
ならびに/または
(b)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(iv)以下の配列:配列番号30、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR1、
(v)以下の配列:配列番号31、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR2、および
(vi)以下の配列:配列番号32、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR3
を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0072】
特定の複数の好ましい実施形態において、(i)~(vi)のいずれか1つに列挙される置換は、保存的置換である。
【0073】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、配列番号27において示されるVH CDR1、配列番号28において示されるVH CDR2、配列番号29において示されるVH CDR3を含んでなり;かつ前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、配列番号30において示されるVL CDR1、配列番号31において示されるVL CDR2、および配列番号32において示されるVL CDR3を含んでなる。
【0074】
本発明はまた、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含んでなる、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記重鎖可変領域が、配列番号25において示される重鎖可変領域の3個のCDRを含んでなり;かつ前記軽鎖可変領域が、配列番号26において示される軽鎖可変領域の3個のCDRを含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0075】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域の3個のCDR、および/または前記軽鎖可変領域の3個のCDRは、Kabat、ChothiaまたはIMGTナンバリングシステムを用いて決定される。
【0076】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、5F9またはその抗原結合フラグメント、そのキメラ抗体、またはそのヒト化抗体、またはそのバリアントであり、ここで、前記バリアントは、それが由来する抗体または抗原結合フラグメントの生物学的機能を実質的に保持する。
【0077】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下の生物学的機能:
(a)0.5μg/ml以下のEC50で、ヒトCLDN18.2に結合する;
(b)0.2μg/ml以下のEC50で、マウスCLDN18.2に結合する;
(c)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(d)補体依存性細胞傷害(CDC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(e)例えば、FACSまたはフローサイトメトリーにより測定された内部移行レベルが少なくとも10%(例えば、少なくとも15%、少なくとも20%以上)で、細胞(例えば、腫瘍細胞)へのCLDN18.2の内部移行を媒介する;細胞は、その表面上に発現したCLDN18.2を有する;
(f)対象における腫瘍(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍)を予防および/または治療する
のうち1つ以上を有する。
【0078】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(1)配列番号27において示されるVH CDR1、配列番号28において示されるVH CDR2、配列番号29において示されるVH CDR3;配列番号30において示されるVL CDR1、配列番号31において示されるVL CDR2、配列番号32において示されるVL CDR3;または
(2)配列番号25において示される重鎖可変領域の3個のCDR;および配列番号26において示される軽鎖可変領域の3個のCDR
を含んでなる。
【0079】
例示的な実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(a)(i)配列番号25において示される配列;
(ii)配列番号25において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(iii)配列番号25において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域(VH);
および/または、
(b)(iv)配列番号26において示される配列;
(v)配列番号26において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(vi)配列番号26において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる。
【0080】
特定の複数の好ましい実施形態において、(ii)または(v)に列挙される置換は、保存的置換である。
【0081】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号25において示される配列を有するVHおよび配列番号26において示される配列を有するVLを含んでなる。
【0082】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化である。
【0083】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、ヒト免疫グロブリンに由来する重鎖可変領域(VH)フレームワーク領域(FR)を含んでなり、かつ/または前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、ヒト免疫グロブリンに由来する軽鎖可変領域(VL)フレームワーク領域(FR)を含んでなる。このような複数の実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域FRおよび/または軽鎖可変領域FRは、1以上の非ヒト(例えば、マウス)アミノ酸残基を含んでなってもよく、例えば、前記重鎖フレームワーク領域FRおよび/または軽鎖フレームワーク領域FRは、1以上のアミノ酸逆突然変異を含んでなってもよく、対応するマウスアミノ酸残基は、これらの逆突然変異に含まれる。
【0084】
別の側面において、本発明は、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
(a)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(i)以下の配列:配列番号35、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR1、
(ii)以下の配列:配列番号36、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR2、および
(iii)以下の配列:配列番号37、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR3
を含んでなる重鎖可変領域(VH);
ならびに/または
(b)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(iv)以下の配列:配列番号38、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR1、
(v)以下の配列:配列番号39、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR2、および
(vi)以下の配列:配列番号40、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR3
を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0085】
特定の複数の好ましい実施形態において、(i)~(vi)のいずれか1つに列挙される置換は、保存的置換である。
【0086】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、配列番号35において示されるVH CDR1、配列番号36において示されるVH CDR2、配列番号37において示されるVH CDR3を含んでなり;かつ前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、配列番号38において示されるVL CDR1、配列番号39において示されるVL CDR2、および配列番号40において示されるVL CDR3を含んでなる。
【0087】
本発明はまた、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含んでなる、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記重鎖可変領域が、配列番号33において示される重鎖可変領域の3個のCDRを含んでなり;かつ前記軽鎖可変領域が、配列番号34において示される軽鎖可変領域の3個のCDRを含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0088】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域の3個のCDR、および/または前記軽鎖可変領域の3個のCDRは、Kabat、ChothiaまたはIMGTナンバリングシステムを用いて決定される。
【0089】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、9F3またはその抗原結合フラグメント、そのキメラ抗体、またはそのヒト化抗体、またはそのバリアントであり、ここで、前記バリアントは、それが由来する抗体または抗原結合フラグメントの生物学的機能を実質的に保持する。
【0090】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下の生物学的機能:
(a)0.2μg/ml以下のEC50で、ヒトCLDN18.2に結合する;
(b)0.1μg/ml以下のEC50で、マウスCLDN18.2に結合する;
(c)ヒトCLDN18.1に結合しない;
(d)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(e)補体依存性細胞傷害(CDC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(f)対象における腫瘍(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍)を予防および/または治療する
のうち1つ以上を有する。
【0091】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(1)配列番号35において示されるVH CDR1、配列番号36において示されるVH CDR2、配列番号37において示されるVH CDR3;配列番号38において示されるVL CDR1、配列番号39において示されるVL CDR2、配列番号40において示されるVL CDR3;または
(2)配列番号33において示される重鎖可変領域の3個のCDR;および配列番号34において示される軽鎖可変領域の3個のCDR
を含んでなる。
【0092】
例示的な実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(a)(i)配列番号33において示される配列;
(ii)配列番号33において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(iii)配列番号33において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域(VH);
および/または、
(b)(iv)配列番号34において示される配列;
(v)配列番号34において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(vi)配列番号34において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる。
【0093】
特定の複数の好ましい実施形態において、(ii)または(v)に列挙される置換は、保存的置換である。
【0094】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号33において示される配列を有するVHおよび配列番号34において示される配列を有するVLを含んでなる。
【0095】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化である。
【0096】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、ヒト免疫グロブリンに由来する重鎖可変領域(VH)フレームワーク領域(FR)を含んでなり、かつ/または前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、ヒト免疫グロブリンに由来する軽鎖可変領域(VL)フレームワーク領域(FR)を含んでなる。このような複数の実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域FRおよび/または軽鎖可変領域FRは、1以上の非ヒト(例えば、マウス)アミノ酸残基を含んでなってもよく、例えば、前記重鎖フレームワーク領域FRおよび/または軽鎖フレームワーク領域FRは、1以上のアミノ酸逆突然変異を含んでなってもよく、対応するマウスアミノ酸残基は、これらの逆突然変異に含まれる。
【0097】
別の側面において、本発明は、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
(a)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(i)以下の配列:配列番号43、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR1、
(ii)以下の配列:配列番号44、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR2、および
(iii)以下の配列:配列番号45、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR3
を含んでなる重鎖可変領域(VH);
ならびに/または
(b)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(iv)以下の配列:配列番号46、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR1、
(v)以下の配列:配列番号47、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR2、および
(vi)以下の配列:配列番号48、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR3
を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0098】
特定の複数の好ましい実施形態において、(i)~(vi)のいずれか1つに列挙される置換は、保存的置換である。
【0099】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、配列番号43において示されるVH CDR1、配列番号44において示されるVH CDR2、配列番号45において示されるVH CDR3を含んでなり;かつ前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、配列番号46において示されるVL CDR1、配列番号47において示されるVL CDR2、および配列番号48において示されるVL CDR3を含んでなる。
【0100】
本発明はまた、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含んでなる、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記重鎖可変領域が、配列番号41において示される重鎖可変領域の3個のCDRを含んでなり;かつ前記軽鎖可変領域が、配列番号42において示される軽鎖可変領域の3個のCDRを含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0101】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域の3個のCDR、および/または前記軽鎖可変領域の3個のCDRは、Kabat、ChothiaまたはIMGTナンバリングシステムを用いて決定される。
【0102】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、10B11またはその抗原結合フラグメント、そのキメラ抗体、またはそのヒト化抗体、またはそのバリアントであり、ここで、前記バリアントは、それが由来する抗体または抗原結合フラグメントの生物学的機能を実質的に保持する。
【0103】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下の生物学的機能:
(a)0.1μg/ml以下(例えば、0.05μg/ml以下)のEC50で、ヒトCLDN18.2に結合する;
(b)0.1μg/ml以下のEC50で、マウスCLDN18.2に結合する;
(c)ヒトCLDN18.1に結合しない;
(d)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(e)補体依存性細胞傷害(CDC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(f)対象における腫瘍(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍)を予防および/または治療する
のうち1つ以上を有する。
【0104】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(1)配列番号43において示されるVH CDR1、配列番号44において示されるVH CDR2、配列番号45において示されるVH CDR3;配列番号46において示されるVL CDR1、配列番号47において示されるVL CDR2、配列番号48において示されるVL CDR3;または
(2)配列番号41において示される重鎖可変領域の3個のCDR;および配列番号42において示される軽鎖可変領域の3個のCDR
を含んでなる。
【0105】
例示的な実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(a)(i)配列番号41において示される配列;
(ii)配列番号41において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(iii)配列番号41において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域(VH);
および/または、
(b)(iv)配列番号42において示される配列;
(v)配列番号42において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(vi)配列番号42において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる。
【0106】
特定の複数の好ましい実施形態において、(ii)または(v)に列挙される置換は、保存的置換である。
【0107】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号41において示される配列を有するVHおよび配列番号42において示される配列を有するVLを含んでなる。
【0108】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化である。
【0109】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、ヒト免疫グロブリンに由来する重鎖可変領域(VH)フレームワーク領域(FR)を含んでなり、かつ/または前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、ヒト免疫グロブリンに由来する軽鎖可変領域(VL)フレームワーク領域(FR)を含んでなる。このような複数の実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域FRおよび/または軽鎖可変領域FRは、1以上の非ヒト(例えば、マウス)アミノ酸残基を含んでなってもよく、例えば、前記重鎖フレームワーク領域FRおよび/または軽鎖フレームワーク領域FRは、1以上のアミノ酸逆突然変異を含んでもよく、対応するマウスアミノ酸残基は、これらの逆突然変異に含まれる。
【0110】
別の側面において、本発明は、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
(a)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(i)以下の配列:配列番号51、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR1;
(ii)以下の配列:配列番号52、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR2;および
(iii)以下の配列:配列番号53、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR3
を含んでなる重鎖可変領域(VH);
ならびに/または
(b)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(iv)以下の配列:配列番号54、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR1、
(v)以下の配列:配列番号55、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR2、および
(vi)以下の配列:配列番号56、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR3
を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0111】
特定の複数の好ましい実施形態において、(i)~(vi)のいずれか1つに列挙される置換は、保存的置換である。
【0112】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、配列番号51において示されるVH CDR1、配列番号52において示されるVH CDR2、配列番号53において示されるVH CDR3を含んでなり;かつ前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、配列番号54において示されるVL CDR1、配列番号55において示されるVL CDR2、および配列番号56において示されるVL CDR3を含んでなる。
【0113】
本発明はまた、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含んでなる、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記重鎖可変領域が、配列番号49において示される重鎖可変領域の3個のCDRを含んでなり;かつ前記軽鎖可変領域が、配列番号50において示される軽鎖可変領域の3個のCDRを含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0114】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域の3個のCDR、および/または前記軽鎖可変領域の3個のCDRは、Kabat、ChothiaまたはIMGTナンバリングシステムを用いて決定される。
【0115】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、27B5またはその抗原結合フラグメント、そのキメラ抗体、またはそのヒト化抗体、またはそのバリアントであり、ここで、前記バリアントは、それが由来する抗体または抗原結合フラグメントの生物学的機能を実質的に保持する。
【0116】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下の生物学的機能:
(a)0.2μg/ml以下のEC50で、ヒトCLDN18.2に結合する;
(b)0.1μg/ml以下のEC50で、マウスCLDN18.2に結合する;
(c)ヒトCLDN18.1に結合しない;
(d)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(e)補体依存性細胞傷害(CDC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(f)対象における腫瘍(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍)を予防および/または治療する
のうち1つ以上を有する。
【0117】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(1)配列番号51において示されるVH CDR1、配列番号52において示されるVH CDR2、配列番号53において示されるVH CDR3;配列番号54において示されるVL CDR1、配列番号55において示されるVL CDR2、配列番号56において示されるVL CDR3;または
(2)配列番号49において示される重鎖可変領域の3個のCDR;および配列番号50において示される軽鎖可変領域の3個のCDR
を含んでなる。
【0118】
例示的な実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(a)(i)配列番号49において示される配列;
(ii)配列番号49において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(iii)配列番号49において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域(VH);
および/または、
(b)(iv)配列番号50において示される配列;
(v)配列番号50において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(vi)配列番号50において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる。
【0119】
特定の複数の好ましい実施形態において、(ii)または(v)に列挙される置換は、保存的置換である。
【0120】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号49において示される配列を有するVHおよび配列番号50において示される配列を有するVLを含んでなる。
【0121】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化である。
【0122】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、ヒト免疫グロブリンに由来する重鎖可変領域(VH)フレームワーク領域(FR)を含んでなり、かつ/または前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、ヒト免疫グロブリンに由来する軽鎖可変領域(VL)フレームワーク領域(FR)を含んでなる。このような複数の実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域FRおよび/または軽鎖可変領域FRは、1以上の非ヒト(例えば、マウス)アミノ酸残基を含んでなってもよく、例えば、前記重鎖フレームワーク領域FRおよび/または軽鎖フレームワーク領域FRは、1以上のアミノ酸逆突然変異を含んでなってもよく、対応するマウスアミノ酸残基は、これらの逆突然変異に含まれる。
【0123】
別の側面において、本発明は、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
(a)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(i)以下の配列:配列番号59、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR1;
(ii)以下の配列:配列番号60、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR2;および
(iii)以下の配列:配列番号61、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR3
を含んでなる重鎖可変領域(VH);
ならびに/または
(b)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(iv)以下の配列:配列番号62、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR1、
(v)以下の配列:配列番号63、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR2、および
(vi)以下の配列:配列番号64、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR3
を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0124】
特定の複数の好ましい実施形態において、(i)~(vi)のいずれか1つに列挙される置換は、保存的置換である。
【0125】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、配列番号59において示されるVH CDR1、配列番号60において示されるVH CDR2、配列番号61において示されるVH CDR3を含んでなり;かつ前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、配列番号62において示されるVL CDR1、配列番号63において示されるVL CDR2、および配列番号64において示されるVL CDR3を含んでなる。
【0126】
本発明はまた、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含んでなる、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記重鎖可変領域が、配列番号57において示される重鎖可変領域の3個のCDRを含んでなり;かつ前記軽鎖可変領域が、配列番号58において示される軽鎖可変領域の3個のCDRを含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0127】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域の3個のCDR、および/または前記軽鎖可変領域の3個のCDRは、Kabat、ChothiaまたはIMGTナンバリングシステムを用いて決定される。
【0128】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、37B1またはその抗原結合フラグメント、そのキメラ抗体、またはそのヒト化抗体、またはそのバリアントであり、ここで、前記バリアントは、それが由来する抗体または抗原結合フラグメントの生物学的機能を実質的に保持する。
【0129】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下の生物学的機能:
(a)0.1μg/ml以下(例えば、0.05μg/ml以下)のEC50で、ヒトCLDN18.2に結合する;
(b)0.1μg/ml以下のEC50で、マウスCLDN18.2に結合する;
(c)ヒトCLDN18.1に結合しない;
(d)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(e)補体依存性細胞傷害(CDC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(f)対象における腫瘍(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍)を予防および/または治療する
のうち1つ以上を有する。
【0130】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(1)配列番号59において示されるVH CDR1、配列番号60において示されるVH CDR2、配列番号61において示されるVH CDR3;配列番号62において示されるVL CDR1、配列番号63において示されるVL CDR2、配列番号64において示されるVL CDR3;または
(2)配列番号57において示される重鎖可変領域の3個のCDR;および配列番号58において示される軽鎖可変領域の3個のCDR
を含んでなる。
【0131】
例示的な実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(a)(i)配列番号57において示される配列;
(ii)配列番号57において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(iii)配列番号57において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域(VH);
および/または、
(b)(iv)配列番号58において示される配列;
(v)配列番号58において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(vi)配列番号58において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる。
【0132】
特定の複数の好ましい実施形態において、(ii)または(v)に列挙される置換は、保存的置換である。
【0133】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号57において示される配列を有するVHおよび配列番号58において示される配列を有するVLを含んでなる。
【0134】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化である。
【0135】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、ヒト免疫グロブリンに由来する重鎖可変領域(VH)フレームワーク領域(FR)を含んでなり、かつ/または前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、ヒト免疫グロブリンに由来する軽鎖可変領域(VL)フレームワーク領域(FR)を含んでなる。このような複数の実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域FRおよび/または軽鎖可変領域FRは、1以上の非ヒト(例えば、マウス)アミノ酸残基を含んでなってもよく、例えば、前記重鎖フレームワーク領域FRおよび/または軽鎖フレームワーク領域FRは、1以上のアミノ酸逆突然変異を含んでなってもよく、対応するマウスアミノ酸残基は、これらの逆突然変異に含まれる。
【0136】
別の側面において、本発明は、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
(a)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(i)以下の配列:配列番号67、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR1;
(ii)以下の配列:配列番号68、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR2;および
(iii)以下の配列:配列番号69、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR3
を含んでなる重鎖可変領域(VH);
ならびに/または
(b)以下の3個の相補性決定領域(CDR):
(iv)以下の配列:配列番号70、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR1、
(v)以下の配列:配列番号71、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR2、および
(vi)以下の配列:配列番号72、もしくはそれと比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR3
を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0137】
特定の複数の好ましい実施形態において、(i)~(vi)のいずれか1つに列挙される置換は、保存的置換である。
【0138】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、配列番号67において示されるVH CDR1、配列番号68において示されるVH CDR2、配列番号69において示されるVH CDR3を含んでなり;かつ前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、配列番号70において示されるVL CDR1、配列番号71において示されるVL CDR2、および配列番号72において示されるVL CDR3を含んでなる。
【0139】
本発明はまた、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含んでなる、CLDN18.2に対して特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記重鎖可変領域が、配列番号65において示される重鎖可変領域の3個のCDRを含んでなり;かつ前記軽鎖可変領域が、配列番号66において示される軽鎖可変領域の3個のCDRを含んでなる、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0140】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域の3個のCDR、および/または前記軽鎖可変領域の3個のCDRは、Kabat、ChothiaまたはIMGTナンバリングシステムを用いて決定される。
【0141】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、44A8またはその抗原結合フラグメント、そのキメラ抗体、またはそのヒト化抗体、またはそのバリアントであり、ここで、前記バリアントは、それが由来する抗体または抗原結合フラグメントの生物学的機能を実質的に保持する。
【0142】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下の生物学的機能:
(a)0.1μg/ml以下のEC50で、ヒトCLDN18.2に結合する;
(b)0.1μg/ml以下のEC50で、マウスCLDN18.2に結合する;
(c)ヒトCLDN18.1に結合しない;
(d)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(e)補体依存性細胞傷害(CDC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞などの腫瘍細胞)の死滅を誘導する;
(f)例えば、FACSまたはフローサイトメトリーにより測定された内部移行レベルが少なくとも10%(例えば、少なくとも15%、少なくとも20%以上)で、細胞(例えば、腫瘍細胞)へのCLDN18.2の内部移行を媒介する;細胞は、その表面上に発現したCLDN18.2を有する;
(g)対象における腫瘍(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍)を予防および/または治療する
のうち1つ以上を有する。
【0143】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(1)配列番号67において示されるVH CDR1、配列番号68において示されるVH CDR2、配列番号69において示されるVH CDR3;配列番号70において示されるVL CDR1、配列番号71において示されるVL CDR2、配列番号72において示されるVL CDR3;または
(2)配列番号65において示される重鎖可変領域の3個のCDR;および配列番号66において示される軽鎖可変領域の3個のCDR
を含んでなる。
【0144】
例示的な実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(a)(i)配列番号65において示される配列;
(ii)配列番号65において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(iii)配列番号65において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域(VH);
および/または、
(b)(iv)配列番号66において示される配列;
(v)配列番号66において示される配列と比較して1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;もしくは
(vi)配列番号66において示される配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる。
【0145】
特定の複数の好ましい実施形態において、(ii)または(v)に列挙される置換は、保存的置換である。
【0146】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号65において示される配列を有するVHおよび配列番号66において示される配列を有するVLを含んでなる。
【0147】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化である。
【0148】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVHは、ヒト免疫グロブリンに由来する重鎖可変領域(VH)フレームワーク領域(FR)を含んでなり、かつ/または前記抗体またはその抗原結合フラグメントのVLは、ヒト免疫グロブリンに由来する軽鎖可変領域(VL)フレームワーク領域(FR)を含んでなる。このような複数の実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域FRおよび/または軽鎖可変領域FRは、1以上の非ヒト(例えば、マウス)アミノ酸残基を含んでなってもよく、例えば、前記重鎖フレームワーク領域FRおよび/または軽鎖フレームワーク領域FRは、1以上のアミノ酸逆突然変異を含んでなってもよく、対応するマウスアミノ酸残基は、これらの逆突然変異に含まれる。
【0149】
特定の複数の好ましい実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、哺乳動物(例えば、マウスまたはヒト)免疫グロブリンに由来する定常領域配列またはそのバリアントをさらに含んでなってもよく、ここで、前記バリアントは、それが由来する配列と比較して1個以上のアミノ酸の置換、欠失または付加を有する。特定の複数の好ましい実施形態において、前記バリアントは、それが由来する配列と比較して1個以上のアミノ酸の保存的置換を有する。
【0150】
特定の複数の好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメントの重鎖は、ヒト免疫グロブリンの重鎖定常領域(CH)もしくはそのバリアントを含んでなり、ここで、前記バリアントは、1個以上のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、最大20個、最大15個、最大10個、もしくは最大5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加;例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する;かつ/または、
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖は、ヒト免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)もしくはそのバリアントを含んでなり、ここで、前記バリアントは、最大20個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、最大15個、最大10個、もしくは最大5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加;例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する。
【0151】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記重鎖定常領域は、IgG重鎖定常領域、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4重鎖定常領域である。特定の複数の好ましい実施形態において、前記重鎖定常領域は、マウスIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4重鎖定常領域である。特定の複数の好ましい実施形態において、前記重鎖定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4重鎖定常領域である。特定の複数の実施形態において、前記重鎖定常領域は、好ましくは、ヒトIgG1またはIgG4重鎖定常領域である。
【0152】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記軽鎖定常領域は、κ軽鎖定常領域である。特定の複数の好ましい実施形態において、前記軽鎖定常領域は、マウスκ軽鎖定常領域である。特定の複数の好ましい実施形態において、前記軽鎖定常領域は、ヒトκ軽鎖定常領域である。
【0153】
特定の複数の例示的な実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号81において示される重鎖定常領域(CH);および/または、配列番号82において示される軽鎖定常領域(CL)を含んでなる。
【0154】
特定の複数の好ましい実施形態において、本発明の抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体または多重特異性抗体である。特定の複数の好ましい実施形態において、本発明の抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、(Fab’)、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、ダイアボディ、およびシングルドメイン抗体(sdAb)からなる群から選択される。
【0155】
本発明において、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、それが由来する抗体もしくはその抗原結合フラグメントとは、1以上のアミノ酸残基の保存的置換(例えば、最大20個、最大15個、最大10個、もしくは最大5個のアミノ酸の保存的置換)のみが異なり、またはそれが由来する抗体もしくはその抗原結合フラグメントに対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有し、かつそれが由来する抗体もしくはその抗原結合フラグメントの生物学的機能を実質的に保持するバリアントを含んでもよい。
【0156】
抗体の調製
本発明の抗体は、当技術分野で公知の種々の方法、例えば、遺伝子工学組換え技術により調製することができる。例えば、本発明の抗体の重鎖および軽鎖遺伝子をコードするDNA分子は、化学合成またはPCR増幅により得られる。得られたDNA分子を発現ベクターに挿入し、次いで、宿主細胞にトランスフェクトする。次いで、トランスフェクトされた宿主細胞を特定の条件下で培養して、本発明の抗体を発現させる。
【0157】
本発明の抗原結合フラグメントは、インタクト抗体分子を加水分解することにより得ることができる(Morimoto et al., J. Biochem. Biophys. Methods 24: 107-117 (1992); and Brennan et al., Science 229: 81 (1985)参照)。あるいは、これらの抗原結合フラグメントは、組換え宿主細胞により直接産生されることもできる(Hudson, Curr. Opin. Immunol. 11: 548-557 (1999); Little et al., Immunol. Today, 21: 364-370 (2000)においてレビュー)。例えば、Fab’フラグメントは、宿主細胞から直接得ることもでき;Fab’フラグメントは、化学的にカップリングされ、F(ab’)フラグメントを形成することができる(Carter et al., Bio/ Technology, 10: 163-167 (1992))。さらに、Fv、FabまたはF(ab’)フラグメントは、組換え宿主細胞の培養培地から直接単離することもできる。当業者は、これらの抗原結合フラグメントを調製するための他の技術を十分認識している。
【0158】
したがって、別の側面において、本発明は、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはその重鎖可変領域および/もしくは軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離核酸分子を提供する。特定の複数の好ましい実施形態において、前記単離核酸分子は、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはその重鎖可変領域および/もしくは軽鎖可変領域をコードする。
【0159】
別の側面において、本発明は、本発明の単離核酸分子を含んでなるベクター(例えば、クローニングベクターまたは発現ベクター)を提供する。特定の複数の好ましい実施形態において、本発明のベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ファージなどである。特定の複数の好ましい実施形態において、前記ベクターは、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)において本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを発現することができる。
【0160】
別の側面において、本発明は、本発明の単離核酸分子または本発明のベクターを含んでなる宿主細胞を提供する。このような宿主細胞としては、限定されるものではないが、原核細胞、例えば、大腸菌細胞、ならびに真核細胞、例えば、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、および動物細胞(例えば、哺乳動物細胞、例えば、マウス細胞、ヒト細胞など)が挙げられる。特定の複数の好ましい実施形態において、本発明の宿主細胞は、哺乳動物細胞、例えば、CHO(例えば、CHO-K1、CHO-S、CHO DG44)である。
【0161】
別の側面において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを調製する方法であって、前記抗体またはその抗原結合フラグメントの発現を可能にする条件下で本発明の宿主細胞を培養すること、および培養された宿主細胞培養物から前記抗体またはその抗原結合フラグメントを回収することを含んでなる方法が提供される。
【0162】
誘導体化抗体
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、別の分子(例えば、別のポリペプチドまたはタンパク質)に誘導体化、例えば、連結することができる。一般に、抗体またはその抗原結合フラグメントの誘導体化(例えば、標識化)は、CLDN18.2(特に、ヒトCLDN18.2)へのその結合に悪影響を及ぼさない。したがって、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、このような誘導体化型を含むことも意図する。例えば、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、1以上の他の分子群、例えば、別の抗体(例えば、二重特異性抗体を形成するための)、検出試薬、医薬試薬、および/または別の分子への抗体もしくはその抗原結合フラグメントの結合を媒介することができるタンパク質もしくはポリペプチド(例えば、アビジンもしくはポリヒスチジンタグ)に機能的に連結することができる(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合、もしくは他の手段により)。さらに、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、化学基、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、メチルもしくはエチル、またはグリコシルで誘導体化することもできる。これらの基は、血清中半減期の増大などの抗体の生物学的特性を改善するために使用することができる。
【0163】
したがって、特定の複数の好ましい実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、標識されている。特定の複数の好ましい実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、検出可能な標識、例えば、酵素、放射性核種、蛍光色素、発光物質(例えば、化学発光物質)、またはビオチンを有する。本発明に係る検出可能な標識は、蛍光的、分光学的、光化学的、生化学的、免疫学的、電気的、光学的、または化学的手段により検出することができる任意の物質であってよい。このような標識は当技術分野で周知であり、その例としては、限定されるものではないが、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼなど)、放射性核種(例えば、H、125I、35S、14C、または32P)、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセイン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、フィコエリトリン(PE)、テキサスレッド、ローダミン、量子ドット、またはシアニン色素誘導体(例えば、Cy7、Alexa 750)、発光材料(例えば、アクリジンエステルなどの化学発光材料)、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(登録商標))、熱量測定標識、例えば、コロイド金または色ガラスまたはプラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)、および上記の標識により修飾されたアビジン(例えば、ストレプトアビジン)に結合するためのビオチンが挙げられる。これらの標識の使用を教示する特許としては、限定されるものではないが、米国特許第3,817,837号;同第3,850,752号;同第3,939,350号;同第3,996,345号;同第4,277,437号;同第4,275,149号;および同第4,366,241号(総て引用することにより本明細書の一部とされる)が挙げられる。上記の検出可能な標識は、当技術分野で公知の方法により検出することができる。例えば、放射性標識は、写真フィルムまたはシンチレーションカウンターを用いて検出することができ、蛍光標識は、放射光を検出するための光検出器を用いて検出することができる。酵素標識は、基質を酵素に付し、基質に対する酵素の作用により産生される反応生成物を検出することにより、一般に検出される。また、熱量測定標識は、呈色標識を単に可視化することにより、検出される。特定の複数の実施形態において、このような標識は、免疫学的検出(例えば、酵素結合免疫測定法、放射免疫測定法、蛍光免疫測定法、化学発光免疫測定法など)に好適であり得る。特定の複数の実施形態において、上記の検出可能な標識は、潜在的な立体障害を低減するために、異なる長さのリンカーを介して、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントに連結することができる。
【0164】
二重特異性または多重特異性分子
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、二重特異性または多重特異性分子を形成するために使用することができる。本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、二重特異性または多重特異性分子の一部であってもよく、前記二重特異性または多重特異性分子は、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントのものと異なる結合特異性を有する第2の機能モジュール(例えば、第2の抗体)を含んでなり、そのため、それは、少なくとも2つの異なる結合部位および/または標的分子に結合することができる。例えば、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、併用療法の潜在的な標的として使用することができる任意のタンパク質に対して特異的に結合することができる第2の抗体またはその抗原結合フラグメントに連結することができる。前記二重特異性または多重特異性分子を作製するために、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、1以上の他の結合分子(例えば、さらなる抗体、抗体フラグメント、ペプチド、または結合模倣物)に連結することができる(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有会合または他の手段により)。
【0165】
したがって、別の側面において、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを含んでなる二重特異性または多重特異性分子を提供する。
【0166】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記二重特異性または多重特異性分子は、CLDN18.2に対して特異的に結合し、1以上の他の標的に対してさらに特異的に結合する。
【0167】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記二重特異性または多重特異性分子は、第2の標的に対する第2の結合特異性を有する少なくとも1つの分子(例えば、第2の抗体)をさらに含んでなる。
【0168】
免疫複合体
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、治療剤と連結して、免疫複合体を形成することができる。これらの免疫複合体は、1以上の治療剤を標的組織(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍などの腫瘍関連抗原)に選択的に送達する能力を有するため、前記免疫複合体は、疾患(例えば、癌)の治療における本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントの治療効果を増強することができる。
【0169】
したがって、別の側面において、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントと、抗体またはその抗原結合フラグメントに連結した治療剤とを含んでなる免疫複合体を提供する。
【0170】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記免疫複合体は抗体薬物複合体(ADC)である。
【0171】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記治療剤は細胞傷害剤である。本発明において、前記細胞傷害剤は、細胞(例えば、死滅細胞)に対して有害である任意の剤を含む。
【0172】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記治療剤は、アルキル化剤、抗有糸分裂剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種剤、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0173】
本発明の免疫複合体に使用することができるアルキル化剤の例としては、限定されるものではないが、ナイトロジェンマスタード(例えば、ジクロロエチルメチルアミン、フェニル酪酸マスタード、メルファラン、シクロホスファアミドなど)、エチレンイミン(例えば、チオテパ(thiotepae)など)、スルホン酸塩およびポリオール(例えば、ブスルファン、ジブロモマンニトール)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチンなど)、白金ベースの抗腫瘍剤(例えば、シスプラチン(rdscisplatin)、オキサリプラチン、カルボプラチンなど)が挙げられる。
【0174】
本発明の免疫複合体に使用することができる抗有糸分裂剤の例としては、限定されるものではないが、メイタンシノイド(例えば、メイタンシン、メイタンシノール、メイタンシノールのC-3エステルなど)、タキサン(例えば、ドセタキセル、パクリタキセルまたはナノ粒子パクリタキセルなど)、ニチニチソウアルカロイド(例えば、ビンブラスチン硫酸塩、ビンクリスチン、ビンブラスチン、またはビノレルビンなど)が挙げられる。
【0175】
本発明の免疫複合体に使用することができる抗腫瘍抗生物質の例としては、限定されるものではないが、アクチノマイシン、アントラサイクリン抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシンなど)、カリチアマイシン、デュオカルマイシンなどが挙げられる。
【0176】
本発明の免疫複合体に使用することができる代謝拮抗剤の例としては、限定されるものではないが、葉酸拮抗剤(例えば、メトトレキサートなど)、ピリミジン拮抗剤(例えば、5-フルオロウラシル、フルオロウリジン、シタラビン、カペシタビン、ゲムシタビンなど)、プリン拮抗剤(例えば、6-メルカプトプリン、6-チオグアニンなど)、アデノシンデアミナーゼ阻害剤(例えば、クラドリビン、フルダラビン、ネララビン、ペントスタチンなど)が挙げられる。
【0177】
本発明の免疫複合体に使用することができるトポイソメラーゼ阻害剤の例としては、限定されるものではないが、カンプトテシンおよびその誘導体(例えば、イリノテカン、トポテカンなど)、アムサクリン、ダウノマイシン、アドリアマイシン、エピポドフィロトキシン、エリプチシン、エピルビシン、エトポシド、ラゾキサン、テニポシドなどが挙げられる。
【0178】
本発明の免疫複合体に使用することができるチロシンキナーゼ阻害剤の例としては、限定されるものではないが、アキシチニブ、ボスチニブ、シルデニブ(sildenib)、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、セマキサニブ、スニチニブ、バンデタニブなどが挙げられる。
【0179】
本発明の免疫複合体に使用することができる放射性核種剤の例としては、限定されるものではないが、I131、In111、Y90、Lu177などが挙げられる。
【0180】
特定の複数の例示的な実施形態において、前記治療剤は、白金ベースの抗腫瘍剤、アントラサイクリン系抗生物質、タキサン、ヌクレオシド類似体、カンプトテシン化合物、およびそれらの類似体または同族体、ならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0181】
特定の複数の好ましい実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、リンカーを介して前記治療剤に場合により結合される。
【0182】
本発明において、前記細胞傷害剤は、当技術分野で利用可能なリンカー技術を用いて、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントにカップリングされ得る。細胞傷害剤を抗体にカップリングするために使用されているリンカーの種類の例としては、限定されるものではないが、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィド、およびペプチド含有リンカーが挙げられる。例えば、リソソーム区画内で低pHによる切断を受けやすい、またはプロテアーゼ、例えば、カテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)などの腫瘍組織において優先的に発現するプロテアーゼによる切断を受けやすいリンカーを選択することができる。
【0183】
細胞傷害剤、リンカーの種類、および治療剤を抗体にカップリングさせる方法に関するさらなる考察については、Saito, G. et al. (2003) Adv. Drug Deliv. Rev. 55: 199-215; Trail, PA et al. (2003) Cancer Immunol. Immunother. 52: 328-337; Payne, G. (2003) Cancer Cell 3: 207-212; Allen, TM (2002) Nat. Rev. Cancer 2: 750-763; Pastan, I. and Kreitman, RJ (2002) Curr. Opin. Investig. Drugs 3: 1089-1091; Senter, PD and Springer, CJ (2001) Adv. Drug Deliv. Rev. 53: 247-264も参照されたい。
【0184】
キメラ抗原受容体
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、キメラ抗原受容体(CAR)を構築するために使用することができ、前記キメラ抗原受容体は、CLDN18.2に対して特異的に結合する、膜貫通ドメインおよび1以上の細胞内T細胞シグナル伝達ドメインに連結された細胞外抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含んでなる。前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、例えば、T細胞受容体シグナル伝達ドメイン、T細胞共刺激シグナル伝達ドメイン、またはそれらの組合せを含んでなってもよい。前記T細胞受容体シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体の細胞内ドメインを含むCARの一部(例えば、CD3ζタンパク質の細胞内部分)を指す。前記共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの一部を指し、前記共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な応答に必要な抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。
【0185】
本発明のCARの特徴としては、MHC非拘束的に、CLDN18.2を発現する細胞(例えば、腫瘍細胞)に対してT細胞の特異性および反応性を向け直すその能力が挙げられる。CLDN18.2のMHC非拘束性認識は、本発明のCARを発現するT細胞に、抗原プロセシングに依存しない抗原を認識する能力を与える。
【0186】
したがって、別の側面において、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントの抗原結合ドメインを含んでなるキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0187】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗原結合ドメインは、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含んでなる。
【0188】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗原結合ドメインはscFvである。
【0189】
特定の複数の好ましい実施形態において、抗原結合受容体は、本発明の抗体の抗原結合フラグメント(例えば、scFv)を含んでなる。
【0190】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗原結合受容体は、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞)により発現される。
【0191】
特定の複数の好ましい実施形態において、CARの抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間にポリペプチド配列を含んでなるスペーサードメインが存在してもよい。前記スペーサードメインは、最大300個のアミノ酸、好ましくは、10~100個のアミノ酸、最も好ましくは、25~50個のアミノ酸を含んでなってもよい。いくつかの実施形態において、前記スペーサードメインは、免疫グロブリンドメイン、例えば、ヒト免疫グロブリン配列を含んでなってもよい。特定の複数の例示的な実施形態において、前記免疫グロブリンドメインは、免疫グロブリンCH2およびCH3ドメイン配列を含んでなる。このような複数の実施形態において、特定の理論に拘束されるものではないが、CH2およびCH3ドメインは、CARの抗原結合ドメインをCAR発現細胞の膜から離し、天然のTCRのサイズおよびドメイン構造をより正確に模倣できると考えられる。
【0192】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記膜貫通ドメインは、天然源または合成源に由来してもよい。このような複数の実施形態において、前記ドメインは、いずれの膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来してもよい。本発明のCARに使用することができる例示的な膜貫通ドメインは、T細胞受容体のα、βまたはζ鎖の少なくとも膜貫通領域を含んでなってもよく、前記T細胞受容体は、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CDS、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154からなる群から選択され得る。あるいは、前記膜貫通ドメインは合成のものであってもよく、その場合、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含むことになる。
【0193】
特定の複数の例示的な実施形態において、前記膜貫通ドメインは、T細胞受容体の膜貫通ドメイン、例えば、CD8膜貫通ドメインを含んでなる。
【0194】
特定の複数の例示的な実施形態において、前記膜貫通ドメインは、T細胞共刺激分子(例えば、CD137またはCD28)の膜貫通ドメインを含んでなる。
【0195】
特定の複数の好ましい実施形態において、CARに使用することができる細胞内T細胞ドメインの例としては、T細胞受容体(TCR)および抗原受容体会合後にシグナル伝達を開始するように協力して作用する共刺激分子の細胞質配列、ならびにこれらの配列の任意の誘導体またはバリアント、ならびに同じ機能的能力を有する任意の合成配列が挙げられる。
【0196】
特定の複数の好ましい実施形態において、CARの細胞内領域は、刺激的に作用する一次細胞質シグナル伝達配列を含んでなってもよく、前記一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシン活性化モチーフすなわちITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含んでなってもよい。CARに含まれ得る一次細胞質シグナル伝達配列を含有するITAMの例としては、CD3ζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CDS、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dタンパク質に由来するものが挙げられる。
【0197】
特定の複数の好ましい実施形態において、CARの細胞内領域は、一次細胞質シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ζ)を単独で、またはCARに使用することができる任意の他の所望の細胞質ドメインと組み合わせて含有するITAMを含んでなってもよい。例えば、CARの細胞質ドメインは、CD3ζ鎖の一部および細胞内共刺激シグナル伝達ドメインを含んでなる。前記共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの一部を指す。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な応答に必要な抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。このような分子の例としては、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2CおよびB7-H3が挙げられる。
【0198】
特定の複数の好ましい実施形態において、CARは、CD3ζシグナル伝達ドメイン、CD8シグナル伝達ドメイン、CD28シグナル伝達ドメイン、CD137シグナル伝達ドメイン、またはそれらの任意の組合せを含んでなってもよい。CAR上の1以上のT細胞シグナルドメインの順序は、必要に応じて当業者により変更することができる。
【0199】
キメラ抗原受容体、およびこのような受容体を含有するT細胞を作製する方法、ならびにそれらの使用(例えば、癌の治療のための使用)は、当技術分野で公知であり、それらの詳細な説明は、例えば、Brentjens et al., 2010, Molecular Therapy, 18: 4,666-668;Morgan et al., 2010, Molecular Therapy, 2010年2月23日オンライン公開, 1-9頁;Till et al., 2008, Blood, 112: 2261-2271;Park et al., Trends Biotechnol., 29: 550-557, 2011;Grupp et al., NEnglJMed., 368: 1509-1518, 2013;Han et al., J. Hematol Oncol., 6:47, 2013;PCT特許公報WO2012/079000、WO2013/126726;および米国特許公報2012/0213783に見出すことができ、その総ては引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる。例えば、本発明のキメラ抗原結合受容体をコードする核酸分子は、CARを作製するために、宿主細胞、例えば、T細胞における発現のための発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)に含めることができる。特定の複数の例示的な実施形態において、前記キメラ抗原受容体を使用する方法は、対象からT細胞を単離すること、前記キメラ抗原受容体をコードする発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)でT細胞を形質転換すること、および前記キメラ抗原受容体を発現する改変T細胞を前記対象に投与して、治療、例えば、前記対象における腫瘍の治療を行うことを含んでなる。
【0200】
このため、別の側面において、本発明は、本発明のキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離核酸分子を提供する。特定の複数の好ましい実施形態において、前記単離核酸分子は、本発明のキメラ抗原受容体をコードする。
【0201】
別の側面において、本発明は、上記の単離核酸分子を含んでなるベクター(例えば、クローニングベクターまたは発現ベクター)を提供する。特定の複数の好ましい実施形態において、本発明のベクターは、例えば、プラスミドである。
【0202】
別の側面において、本発明は、上記の単離核酸分子またはベクターを含んでなる宿主細胞を提供する。特定の複数の好ましい実施形態において、前記宿主細胞はT細胞である。特定の複数の好ましい実施形態において、前記宿主細胞はキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)である。
【0203】
治療方法および医薬組成物
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、CLDN18.2への結合を介してADCCおよび/またはCDCを誘導することができ、よって、腫瘍を予防および/または治療するために使用することができる。
【0204】
したがって、別の側面において、本発明は、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、または免疫複合体、ならびに薬学上許容可能な担体および/もしくは賦形剤を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0205】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記医薬組成物は、さらなる薬学上有効な剤をさらに含んでなってもよい。
【0206】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記さらなる薬学上有効な剤は、抗腫瘍剤、例えば、アルキル化剤、抗有糸分裂剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種、放射線増感剤(例えば、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、タキサン、シスプラチンなど)、抗血管新生剤、サイトカイン(例えば、GM-CSF、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21など)、分子標的剤(例えば、リツキシマブなどのCD20抗体、トラスツズマブなどのHer2抗体、ベバシズマブなどのVEGF抗体、セツキシマブなどのEGFR抗体など)、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1抗体、PD-L1抗体、CTLA-4抗体、LAG-3抗体など)、腫瘍溶解性ウイルスなどである。
【0207】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記医薬組成物において、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、または免疫複合体およびさらなる薬学上有効な剤は、別々の成分としてまたは単一組成物の成分として提供される。このため、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、または免疫複合体およびさらなる薬学上有効な剤は、同時に、別々に、または逐次的に投与することができる。
【0208】
特定の複数の例示的な実施形態において、前記医薬組成物は、無菌注射液(例えば、水性または非水性懸濁液または溶液)を含んでなる。特定の複数の例示的な実施形態において、このような無菌注射液は、注射用水(WFI)、静菌注射用水(BWFI)、塩化ナトリウム溶液(例えば、0.9%(w/v)NaCl)、グルコース溶液(例えば、5%グルコース)、界面活性剤含有溶液(例えば、0.01%ポリソルベート20)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)、リンゲル液、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0209】
別の側面において、本発明は、細胞の表面上のCLDN18.2の発現レベルを低減させる方法であって、細胞表面上のCLDN18.2の発現レベルを低減させるために、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、免疫複合体または医薬組成物と前記細胞を接触させることを含んでなり;ここで、前記細胞は、その表面上に発現したCLDN18.2を有する、方法を提供する。
【0210】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記細胞は、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞である。
【0211】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記方法は、非診断目的でin vitroにおいて細胞表面上のCLDN18.2の発現レベルを低減させるために使用される。
【0212】
別の側面において、細胞表面上のCLDN18.2の発現レベルを低減させるための薬剤の製造における、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、免疫複合体、または医薬組成物の使用が提供される。
【0213】
別の側面において、本発明の抗体もしくは抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、免疫複合体、または医薬組成物は、細胞表面上のCLDN18.2の発現レベルを低減させるために提供される。
【0214】
別の側面において、本発明は、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞の成長を阻害する、および/または前記腫瘍細胞を死滅させる方法であって、有効量の本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、免疫複合体、医薬組成物、キメラ抗原受容体、または前記キメラ抗原受容体を発現する宿主細胞(例えば、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T))と前記腫瘍細胞を接触させることを含んでなる方法を提供する。
【0215】
前記方法は、治療目的、または非治療目的で使用することができる。特定の複数の好ましい実施形態において、前記方法は、非治療目的で使用してもよく、前記方法は、in vitroにおいてCLDN18.2を発現する腫瘍細胞の成長を阻害する、および/または前記腫瘍細胞を死滅させるために使用される。
【0216】
別の側面において、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞の成長を阻害する、および/または前記腫瘍細胞を死滅させるための薬剤の製造における、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、免疫複合体、医薬組成物、キメラ抗原受容体または前記キメラ抗原受容体を発現する宿主細胞(例えば、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T))の使用が提供される。
【0217】
別の側面において、前記抗体もしくはその抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、免疫複合体、医薬組成物、キメラ抗原受容体または前記キメラ抗原受容体を発現する宿主細胞(例えば、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T))は、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞の成長を阻害する、および/または前記腫瘍細胞を死滅させるために提供される。
【0218】
別の側面において、本発明は、対象(例えば、ヒト)における腫瘍を予防および/または治療する方法であって、有効量の前記抗体もしくはその抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、免疫複合体、医薬組成物、キメラ抗原受容体、または前記キメラ抗原受容体を発現する宿主細胞(例えば、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T))を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる方法を提供する。
【0219】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記腫瘍は、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞と関与する。特定の複数の好ましい実施形態において、前記CLDN18.2は、前記腫瘍細胞の表面上に発現される。
【0220】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記腫瘍はCLDN18.2を発現する。
【0221】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記腫瘍は、胃癌、食道癌、膵臓癌、気管支癌、非小細胞肺癌、乳癌、耳鼻咽喉(ENT)癌、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、頭頸部癌、胆嚢癌およびそれらの転移性癌(例えば、クルケンベルグ腫瘍などの胃癌転移、腹膜転移またはリンパ節転移)からなる群から選択される。
【0222】
特定の複数の好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、免疫複合体、医薬組成物、キメラ抗原受容体、または前記キメラ抗原受容体を発現する宿主細胞(例えば、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T))は、さらなる抗腫瘍剤と組み合わせて使用される。このようなさらなる抗腫瘍剤は、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、免疫複合体、医薬組成物、キメラ抗原受容体または前記キメラ抗原受容体を発現する宿主細胞(例えば、CAR-T)が投与される前、それと同時またはその後に投与することができる。
【0223】
特定の複数の好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、免疫複合体、医薬組成物、キメラ抗原受容体、または前記キメラ抗原受容体を発現する宿主細胞(例えば、CAR-T)は、さらなる療法と組み合わせて投与される。このようなさらなる療法は、腫瘍に対する公知の任意の療法、例えば、手術、化学療法、放射線療法、標的療法、免疫療法、ホルモン療法、遺伝子療法、または緩和ケアであってよい。このようなさらなる療法は、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、免疫複合体、医薬組成物、キメラ抗原受容体または前記キメラ抗原受容体を発現する宿主細胞(例えば、CAR-T)が投与される前、それと同時またはその後に行うことができる。
【0224】
本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、免疫複合体、医薬組成物、キメラ抗原受容体または前記キメラ抗原受容体を発現する宿主細胞(例えば、CAR-T)は、医学分野で公知の任意の投与形、例えば、錠剤、丸剤、懸濁剤、エマルション、液剤、ゲル、カプセル剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、ロゼンジ、坐剤、注射剤(注射液、注射用無菌散剤および注射用濃縮液を含む)、吸入剤、噴霧剤などに処方することができる。好ましい投与形は、意図する投与経路および治療的使用に依存する。本発明の医薬組成物は、無菌かつ製造および保存の条件下で安定であるべきである。1つの好ましい投与形は、注射剤である。このような注射剤は、無菌注射液であってもよい。例えば、無菌注射液は、以下の方法:必要量の本発明の抗体を適当な溶媒に組み込むこと、および場合により、他の所望の成分(限定されるものではないが、pH調整剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度増強剤、等張剤、保存剤、希釈剤、またはそれらの任意の組合せを含む)を同時に組み込むこと、次いで、濾過滅菌を行うことにより、調製することができる。さらに、無菌注射液は、保存および使用の利便性のために、無菌凍結乾燥粉末として調製することができる(例えば、真空乾燥または凍結乾燥により)。このような無菌凍結乾燥粉末は、好適な担体、例えば、注射用水(WFI)、静菌注射用水(BWFI)、塩化ナトリウム溶液(例えば、0.9%(w/v)NaCl)、グルコース溶液(例えば、5%グルコース)、界面活性剤含有溶液(例えば、0.01%ポリソルベート20)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)、リンゲル液、およびそれらの任意の組合せに用時分散させることができる。
【0225】
さらに、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、免疫複合体、医薬組成物、キメラ抗原受容体または前記キメラ抗原受容体を発現する宿主細胞(例えば、T細胞)は、投与の利便性のために、医薬組成物中に単位投与形で存在することができる。
【0226】
本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、免疫複合体、医薬組成物、キメラ抗原受容体または前記キメラ抗原受容体を発現する宿主細胞(例えば、T細胞)は、限定されるものではないが、経口経路、頬側経路、舌下経路、眼球経路、局所経路、非経口経路、直腸経路、くも膜下腔内経路、細胞質内経路、鼠径部経路、膀胱内経路、局部経路(例えば、散剤、軟膏剤または点滴剤)、または鼻腔経路を含む、当技術分野で公知の任意の好適な方法により投与することができる。しかしながら、多くの治療的使用では、好ましい投与経路/様式は、非経口投与(例えば、静脈内注射またはボーラス、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射)である。当業者は、投与経路および/または投与様式は、意図する目的に応じて変わることを理解するであろう。好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、免疫複合体、医薬組成物、キメラ抗原受容体または前記キメラ抗原受容体を発現する宿主細胞(例えば、T細胞)は、静脈内注射またはボーラスにより投与される。
【0227】
本発明の医薬組成物は、「治療上有効な量」または「予防上有効な量」の本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、二重特異性もしくは多重特異性分子、免疫複合体、医薬組成物、キメラ抗原受容体または前記キメラ抗原受容体を発現する宿主細胞(例えば、T細胞)を含んでなってもよい。「予防上有効な量」は、疾患の発症を予防する、停止する、または遅延させるのに十分な量を指す。「治療上有効な量」は、疾患にすでに罹患している患者において前記疾患およびその合併症を治癒するまたは少なくとも部分的に阻止するのに十分な量を指す。本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントの治療上有効な量は、治療される疾患の重症度、患者の免疫系の全体的な状態、年齢、体重および性別などの患者の一般状態、投与経路、ならびに同時に適用される他の療法などの因子に応じて変わり得る。
【0228】
本発明において、投与計画は、最適な反応(例えば、治療的反応または予防的反応)を得るために調整することができる。例えば、単一用量を投与してもよいし、または複数の用量をある期間にわたり投与してもよいし、または治療状況の緊急性に応じて用量を比例的に増加または減少させてもよい。
【0229】
本発明において、前記対象は、哺乳動物、例えば、ヒトであってもよい。
【0230】
検出方法およびキット
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、CLDN18.2に対して特異的に結合することができ、よって、サンプル中のCLDN18.2の存在またはレベルを検出するために使用することができる。
【0231】
したがって、別の側面において、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを含んでなるキットを提供する。特定の複数の好ましい実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、検出可能な標識で標識されている。好ましい実施形態において、キットは、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを特異的に認識する二次抗体をさらに含んでなる。好ましくは、第2の抗体は、検出可能な標識をさらに含んでなる。
【0232】
本発明において、検出可能な標識は、蛍光的、分光学的、光化学的、生化学的、免疫学的、電気的、光学的、または化学的手段により検出することができる任意の物質であってよい。このような標識は、免疫学的検出(例えば、酵素結合免疫測定法、放射免疫測定法、蛍光免疫測定法、化学発光免疫測定法など)に好適であり得ることが、特に好ましい。このような標識は当技術分野で周知であり、限定されるものではないが、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼなど)、放射性核種(例えば、H、125I、35S、14C、または32P)、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセイン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、フィコエリトリン(PE)、テキサスレッド、ローダミン、量子ドット、またはシアニン色素誘導体(例えば、Cy7、Alexa 750)、発光材料(例えば、アクリジンエステルなどの化学発光材料)、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(登録商標))、熱量測定標識、例えば、コロイド金または色ガラスまたはプラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)、および上記の標識により修飾されたアビジン(例えば、ストレプトアビジン)に結合するためのビオチンが挙げられる。これらの標識の使用を教示する特許としては、限定されるものではないが、米国特許第3,817,837号;同第3,850,752号;同第3,939,350号;同第3,996,345号;同第4,277,437号;同第4,275,149号;および同第4,366,241号(総て引用することにより本明細書の一部とされる)が挙げられる。上記の検出可能な標識は、当技術分野で公知の方法により検出することができる。例えば、放射性標識は、写真フィルムまたはシンチレーションカウンターを用いて検出することができ、蛍光標識は、放射光を検出するための光検出器を用いて検出することができる。酵素標識は、基質を酵素に付し、基質に対する酵素の作用により産生される反応生成物を検出することにより、一般に検出される。また、熱量測定標識は、呈色標識を単に可視化することにより、検出される。特定の複数の実施形態において、上記の検出可能な標識は、潜在的な立体障害を低減するために、異なる長さのリンカーを介して、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントに連結することができる。
【0233】
別の側面において、本発明は、サンプル中のCLDN18.2の存在または量を検出する方法であって、以下の工程:
(1)本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントと前記サンプルを接触させること;
(2)前記抗体またはその抗原結合フラグメントとCLDN18.2との複合体の形成または量を検出すること
を含んでなる方法を提供する。
【0234】
前記複合体の形成は、CLDN18.2またはCLDN18.2を発現する細胞の存在を示す。
【0235】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記サンプルは、細胞サンプル、すなわち、細胞(例えば、腫瘍細胞)を含んでなるサンプルである。このような複数の実施形態において、好ましくは、前記複合体は、前記抗体、抗原結合フラグメントまたはコンジュゲートと前記サンプル中の細胞により発現されるCLDN18.2との間で形成される。
【0236】
好ましい実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、検出可能な標識でさらに標識されている。別の好ましい実施形態において、工程(2)において、検出可能な標識を有する試薬が、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを検出するために使用される。
【0237】
前記方法は、診断目的、または非診断目的(例えば、前記サンプルが、患者由来のサンプルではなく、細胞サンプルである)で使用してもよい。特定の複数の好ましい実施形態において、前記CLDN18.2はヒトCLDN18.2である。
【0238】
別の側面において、サンプル中のCLDN18.2の存在または量を検出するためのキットの製造における、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントの使用が提供される。特定の複数の好ましい実施形態において、前記CLDN18.2はヒトCLDN18.2である。
【0239】
別の側面において、本発明は、CLDN18.2を標的とする抗腫瘍療法により腫瘍が治療可能であるかどうかを決定する方法であって、以下の工程:
(1)本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントと腫瘍細胞を含有するサンプルを接触させること;
(2)前記抗体またはその抗原結合フラグメントとCLDN18.2との複合体の形成を検出すること
を含んでなる方法を提供する。
【0240】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記複合体は、前記抗体またはその抗原結合フラグメントと前記サンプル中の前記腫瘍細胞により発現されるCLDN18.2との間で形成される。
【0241】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記サンプルは、腫瘍を有する、腫瘍を有すると疑われる、または腫瘍を有するリスクにある対象に由来するものである。特定の複数の好ましい実施形態において、前記サンプルは、組織または臓器が癌を有さない場合に細胞がCLDN18.2を実質的に発現しない組織または臓器に由来するものである。特定の複数の好ましい実施形態において、前記組織は、胃組織、肺組織、食道組織、膵臓組織、または乳房組織からなる群から選択され、前記組織は、場合により、例えば、組織または臓器細胞の目視検査または培養検査により、癌に冒されていると診断されている。特定の複数の好ましい実施形態において、前記組織は、胃組織以外の組織である。特定の複数の好ましい実施形態において、前記組織は、肺組織、食道組織、膵臓組織または乳房組織である。このような複数の実施形態において、CLDN18.2もしくはCLDN18.2を発現する細胞が存在する場合、および/またはCLDN18.2もしくはCLDN18.2を発現する細胞の量が、参照レベルと比較して(例えば、腫瘍疾患を有さない患者と比較して)増加している場合、前記対象はCLDN18.2を標的とする抗腫瘍療法に好適であることが示される。
【0242】
好ましい実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、検出可能な標識でさらに標識されている。別の好ましい実施形態において、工程(2)において、検出可能な標識を有する試薬が、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを検出するために使用される。
【0243】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記CLDN18.2はヒトCLDN18.2である。
【0244】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記腫瘍は、胃癌、食道癌、膵臓癌、気管支癌、非小細胞肺癌、乳癌、耳鼻咽喉(ENT)癌、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、頭頸部癌、胆嚢癌およびそれらの転移性癌(例えば、クルケンベルグ腫瘍などの胃癌転移、腹膜転移またはリンパ節転移)からなる群から選択される。
【0245】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記腫瘍は、食道癌、膵臓癌、気管支癌、非小細胞肺癌、乳癌、ENT癌、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、頭頸部癌、胆嚢癌およびそれらの転移性癌(例えば、クルケンベルグ腫瘍などの胃癌転移、腹膜転移またはリンパ節転移)からなる群から選択される。
【0246】
別の側面において、CLDN18.2を標的とする抗腫瘍療法により腫瘍が治療可能であるかどうかを決定するためのキットの製造における、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントの使用が提供される。
【0247】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、検出可能な標識で標識されている。
【0248】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記CLDN18.2はヒトCLDN18.2である。
【0249】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記腫瘍は、胃癌、食道癌、膵臓癌、気管支癌、非小細胞肺癌、乳癌、耳鼻咽喉(ENT)癌、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、頭頸部癌、胆嚢癌およびそれらの転移性癌(例えば、クルケンベルグ腫瘍などの胃癌転移、腹膜転移またはリンパ節転移)からなる群から選択される。
【0250】
特定の複数の好ましい実施形態において、前記腫瘍は、食道癌、膵臓癌、気管支癌、非小細胞肺癌、乳癌、ENT癌、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、頭頸部癌、胆嚢癌およびそれらの転移性癌(例えば、クルケンベルグ腫瘍などの胃癌転移、腹膜転移またはリンパ節転移)からなる群から選択される。
【0251】
用語の定義
本発明において、特に断りのない限り、本明細書で使用される科学技術用語は、当業者により一般的に理解される意味を有する。さらに、本明細書で使用される細胞培養、生化学、核酸化学、および免疫学の実験手順は、対応する分野で広く使用されている慣例的な手順である。一方、本発明をさらに理解するために、関連する用語の定義および説明を以下に示す。
【0252】
本明細書で使用する場合、用語「CLDN18(クローディン18)」は、当業者により一般的に理解される意味を有し、これは、クローディンファミリーに属し、上皮および内皮のタイトジャンクション内の膜貫通タンパク質であり、2つのスプライスバリアントCLDN18.1およびCLDN18.2の形態で存在する。CLDN18.1およびCLDN18.2の配列は、当技術分野で周知である。詳細については、NCBIデータベースアクセッション番号NP_057453.1およびNP_001002026.1を参照。
【0253】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、典型的に2対のポリペプチド鎖からなる免疫グロブリン分子を指し、各対は、軽鎖(LC)および重鎖(HC)を有する。抗体軽鎖は、κ(カッパ)およびλ(ラムダ)軽鎖に分類され得る。重鎖は、μ、δ、γ、α、またはεに分類され得、抗体のアイソタイプは、それぞれIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEと定義される。軽鎖および重鎖内では、可変領域および定常領域が、約12個以上のアミノ酸の「J」領域により連結され、重鎖は、約3個以上のアミノ酸の「D」領域をさらに含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH)から構成される。重鎖定常領域は、3個のドメイン(CH1、CH2、およびCH3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域は、ドメインCLからなる。定常ドメインは、抗原への抗体の結合に直接関与しないが、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的な補体系の第1成分(C1q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介するなど、種々のエフェクター機能を示す。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる間隔を置いた保存領域が散在している高度の変性を有する領域(相補性決定領域(CDR)という)にも細分され得る。VおよびVの各々は、アミノ末端からカルボキシ末端にかけてFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4の順序で配置された3個のCDRおよび4個のFRから構成される。各重鎖/軽鎖対の可変領域(VHおよびVL)は、それぞれ抗原結合部位を形成する。種々の領域またはドメインにおけるアミノ酸の割当ては、Kabat, Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987 and 1991))、またはChothia & Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196 : 901-917; Chothia et al. (1989) Nature 342: 878-883の定義に従ってもよい。
【0254】
本明細書で使用する場合、用語「相補性決定領域」または「CDR」は、抗原結合を担う抗体の可変領域のアミノ酸残基を指す。重鎖および軽鎖の可変領域はそれぞれ、CDR1、CDR2およびCDR3と名付けられた3個のCDRを含む。これらのCDRの正確な境界は、当技術分野で公知の種々のナンバリングシステムに従って、例えば、Kabatナンバリングシステム(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1991)、Chothiaナンバリングシステム(Chothia & Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196: 901-917; Chothia et al. (1989) Nature 342: 878-883)またはIMGTナンバリングシステム(Lefranc et al., Dev. Comparat. Immunol. 27: 55-77, 2003)に従って、定義することができる。特定の抗体に関して、当業者ならば、各ナンバリングシステムにより定義されたCDRを容易に同定するであろう。また、異なるナンバリングシステム間の対応は、当業者に周知である(例えば、Lefranc et al., Dev. Comparat. Immunol. 27: 55-77, 2003参照)。
【0255】
本発明において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントに含まれるCDRは、当技術分野で公知の種々のナンバリングシステムに従って決定することができる。特定の複数の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントに含まれるCDRは、好ましくは、Kabat、ChothiaまたはIMGTナンバリングシステムにより決定される。特定の複数の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントに含まれるCDRは、好ましくは、Kabatナンバリングシステムにより決定される。
【0256】
本明細書で使用する場合、用語「フレームワーク領域」または「FR」残基は、抗体の可変領域における上記で定義されるCDR残基以外のそれらのアミノ酸残基を指す。
【0257】
用語「抗体」は、抗体を産生する任意の特定の方法により限定されない。例えば、それには、組換え抗体、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体が含まれる。抗体は、異なるアイソタイプの抗体、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgEまたはIgM抗体であってもよい。
【0258】
本明細書で使用する場合、抗体の「抗原結合フラグメント」という用語は、全長抗体が結合する同じ抗原に対して特異的に結合する能力を有する、かつ/または抗原に対して特異的に結合するために全長抗体と競合する、全長抗体のフラグメントを含んでなるポリペプチドを指し、「抗原結合部分」ともいう。一般に、Fundamental Immunology, 第7章 (Paul, W.編, 第2版, Raven Press, NY (1989))を参照されたい(これは、総ての目的のために、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる)。抗体の抗原結合フラグメントは、組換えDNA技術により、または全抗体の酵素的もしくは化学的切断により産生され得る。抗原結合フラグメントの限定されない例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv、相補性決定領域(CDR)フラグメント、scFv、ダイアボディ、シングルドメイン抗体、キメラ抗体、直鎖状抗体、ナノボディ(Domantis社の技術)、プロボディ、およびこのようなポリペプチドが挙げられ、抗原結合フラグメントは、ポリペプチドに特異的抗原結合能力を付与するのに十分な抗体の少なくとも一部を含んでなる。改変抗体バリアントは、Holliger et al., 2005; Nat Biotechnol, 23: 1126-1136においてレビューされている。
【0259】
本明細書で使用する場合、用語「全長抗体」は、2つの「全長重鎖」および2つの「全長軽鎖」からなる抗体を指す。「全長重鎖」は、N末端からC末端の方向に重鎖可変領域(VH)、重鎖定常領域CH1ドメイン、ヒンジ領域(HR)、重鎖定常領域CH2ドメインおよび重鎖定常領域CH3ドメインからなるポリペプチド鎖を指し、全長抗体がIgEアイソタイプである場合、重鎖定常領域CH4ドメインが場合によりさらに含まれる。好ましくは、「全長重鎖」は、N末端からC末端の方向にVH、CH1、HR、CH2およびCH3からなるポリペプチド鎖である。「全長軽鎖」は、N末端からC末端の方向に軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)からなるポリペプチド鎖である。2対の全長抗体鎖は、CLとCH1との間のジスルフィド結合および2つの全長重鎖のHRの間のジスルフィド結合により、ともに連結されている。本発明の全長抗体は、単一種、例えば、ヒト由来であってもよいし、または、キメラ抗体もしくはヒト化抗体であってもよい。本発明の全長抗体は、それぞれVHおよびVLの対により形成された2つの抗原結合部位を含んでなり、これらの2つの抗原結合部位は、同じ抗原を特異的に認識する/に対して特異的に結合する。
【0260】
本明細書で使用する場合、用語「Fd」は、VHおよびCH1ドメインからなる抗体フラグメントを指し;用語「dAbフラグメント」は、VHドメインからなる抗体フラグメントを指し(Ward et al., Nature 341: 544 546 ( 1989));用語「Fabフラグメント」は、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる抗体フラグメントを指し;用語「F(ab’)フラグメント」は、ヒンジ領域上のジスルフィド架橋により接続された2つのFabフラグメントを含んでなる抗体フラグメントを指し;用語「Fab’フラグメント」は、1つの完全な軽鎖および重鎖のFdフラグメント(VHおよびCH1ドメインから構成される)からなるF(ab’)フラグメントにおける2つの重鎖フラグメントを接続するジスルフィド結合を還元することにより得られるフラグメントを指す。
【0261】
本明細書で使用する場合、用語「Fv」は、抗体の1つのアームのVLおよびVHドメインからなる抗体フラグメントを指す。Fvフラグメントは、一般に、完全な抗原結合部位を形成することができる最小の抗体フラグメントであると考えられている。一般に、6個のCDRが抗体に抗原結合特異性を付与すると考えられている。しかしながら、可変領域(例えば、3個の抗原特異的CDRのみを含むFdフラグメント)でも、抗原を認識し、それに結合することができるが、その親和性は、完全な結合部位のものより低い場合がある。
【0262】
本明細書で使用する場合、用語「Fc」は、抗体の第1の重鎖の第2および第3の定常領域を第2の重鎖の第2および第3の定常領域とジスルフィド結合を介して連結させることにより形成される抗体フラグメントを指す。抗体のFcフラグメントは、多くの異なる機能を有するが、抗原結合に関与しない。
【0263】
本明細書で使用する場合、用語「scFv」は、VLおよびVHドメインを含んでなる単一ポリペプチド鎖を指し、ここで、VLおよびVHは、リンカーを介して連結されている(例えば、Bird et al., Science 242: 423 -426 (1988); Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879-5883 (1988);およびPluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, 第113巻, Roseburg and Moore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)参照)。このようなscFv分子は、NH-VL-リンカー-VH-COOHまたはNH-VH-リンカー-VL-COOHという一般的な構造を有してもよい。従来技術の好適なリンカーは、繰り返しGGGGSアミノ酸配列またはそのバリアントからなる。例えば、アミノ酸配列(GGGGS)を有するリンカーを使用してもよいが、そのバリアントも使用してもよい(Holliger et al. (1993), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448)。本発明において有用な他のリンカーは、Alfthan et al. (1995), Protein Eng. 8: 725-731, Choi et al. (2001), Eur. J. Immunol. 31: 94-106, Hu et al. (1996), Cancer Res. 56: 3055-3061, Kipriyanov et al. (1999), J. Mol. Biol. 293: 41-56およびRoovers et al. (2001), Cancer Immunolにより記載されている。いくつかの場合において、ジスルフィド結合は、scFvのVHとVLとの間に存在してもよい。
【0264】
本明細書で使用する場合、用語「ダイアボディ」は、そのVHおよびVLドメインが単一ポリペプチド鎖上に発現しているフラグメントを指すが、使用されるリンカーは、同じ鎖の2つのドメイン間での対形成を可能にするには短すぎるため、ドメインは別の鎖の相補ドメインと対形成せざるを得ず、2つの抗原結合部位が生成している(例えば、Holliger P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)、およびPoljak RJ et al., Structure 2: 1121-1123 (1994)参照)。
【0265】
本明細書で使用する場合、用語「シングルドメイン抗体(sdAb)」は、当業者により一般的に理解される意味を有し、全長抗体が結合する同じ抗原に対して特異的に結合する能力を有する、単一モノマー可変抗体ドメイン(例えば、単一重鎖可変領域)からなる抗体フラグメントを指す。シングルドメイン抗体は、ナノボディとしても知られる。
【0266】
本明細書で使用する場合、用語「プロボディ」は、当業者により一般的に理解される意味を有し、健常組織において不活性なままであるが、疾患環境において特異的に活性化(例えば、疾患環境において豊富であるまたは特異的に存在するプロテアーゼによるタンパク質分解切断)され得るマスク化抗体を指す。詳細な教示については、例えば、Desnoyers et al., Sci. Transl. Med., 5: 207ra144, 2013参照。類似のマスキング技術を、本明細書に記載の抗体または抗原結合部分のいずれかに対して使用することができる。
【0267】
上記抗体フラグメントの各々は、全長抗体が結合する同じ抗原に対して特異的に結合する能力を有する、かつ/または抗原に対して特異的に結合するために全長抗体と競合する。
【0268】
抗体の抗原結合フラグメント(例えば、上記の抗体フラグメント)は、当業者に公知の従来の技術(例えば、組換えDNA技術または酵素的もしくは化学的断片化法)を用いて、特定の抗体(例えば、本発明により提供される抗体)から得ることができ、インタクト抗体をスクリーニングするのと同じ様式で、特異性に関してスクリーニングすることができる。
【0269】
文脈において、明確に明示されない限り、用語「抗体」に言及する場合、インタクト抗体だけでなく、抗体の抗原結合フラグメントも含む。
【0270】
本明細書で使用する場合、用語「モノクローナル抗体」、「mAb」は、同じ意味を有し、互換的に使用され、高度に相同な抗体分子の集団、すなわち、自然に生じ得る自然変異を除き、同一の抗体分子の集団に由来する抗体または抗体のフラグメントを指す。モノクローナル抗体は、抗原上の単一エピトープに対して高度に特異的である。モノクローナル抗体と比較して、ポリクローナル抗体は、一般に、抗原上の異なるエピトープを通常認識する少なくとも2つ以上の異なる抗体を含む。さらに、修飾語「モノクローナル」は単に、抗体の高度に均一な集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとは解釈されない。
【0271】
本発明のモノクローナル抗体は、種々の技術、例えば、ハイブリドーマ技術(例えば、Kohler et al. Nature, 256: 495, 1975参照)、組換えDNA技術(例えば、米国特許出願第4,816,567号参照)、またはファージ抗体ライブラリー技術(例えば、Clackson et al. Nature352: 624-628, 1991、またはMarks et al. J. Mol. Biol. 222: 581-597, 1991参照)により、調製することができる。
【0272】
抗体は、周知の技術、例えば、プロテインAまたはプロテインGを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより、精製することができる。引き続いてまたはその代わりに、特異抗原(抗体により認識される標的分子)またはそのエピトープをカラム上に固定化することができ、免疫特異抗体を免疫アフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。免疫グロブリンの精製については、例えば、D. Wilkinson (The Scientist, The Scientist, Inc., Philadelphia Pa.により出版, 第14巻, 第8号 (2000年4月17日), pp. 25-28)を参照してもよい。
【0273】
本明細書で使用する場合、用語「キメラ抗体」は、その軽鎖または/および重鎖の一部が、1つの抗体(特定の種に由来するものであってもよいし、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属するものでもよい)に由来し、その軽鎖または/および重鎖の別の部分が、別の抗体(同じもしくは異なる種に由来するものであってもよいし、または同じもしくは異なる抗体クラスもしくはサブクラスに属するものでもよい)に由来するが、いずれにせよ、標的抗原に対する結合の活性を依然として保持している抗体を指す(Cabillyらに対する米国特許第4,816,567号;Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6851 6855 (1984))。例えば、用語「キメラ抗体」は、抗体の重鎖および軽鎖可変領域が、第1の抗体(例えば、マウス抗体)に由来し、一方、抗体の重鎖および軽鎖定常領域が、第2の抗体(例えば、ヒト抗体)に由来する、そのような抗体(例えば、ヒト-マウスキメラ抗体)を含んでなってもよい。
【0274】
本明細書で使用する場合、用語「ヒト化抗体」は、そのアミノ酸配列がヒト抗体の配列に対する相同性を増大させるように改変されている遺伝子改変非ヒト抗体を指す。一般に、ヒト化抗体のCDR領域の総てまたは一部は、非ヒト抗体(ドナー抗体)に由来し、非CDR領域(例えば、可変領域FRおよび/または定常領域)の総てまたは一部は、ヒト免疫グロブリン(レセプター抗体)に由来する。ヒト化抗体は、一般に、限定されるものではないが、抗原特異性、親和性、反応性などを含むドナー抗体の予想される特性を有する。ドナー抗体は、予想される特性(例えば、抗原特異性、親和性、反応性など)を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)の抗体であり得る。
【0275】
本出願において、本発明の抗体の予想される特性は、(1)CLDN18.2(特にヒトCLDN18.2)を特異的に認識する/に対して特異的に結合する;(2)CLDN18.2の内部移行を媒介する;(3)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞の死滅を誘導する;(4)補体依存性細胞傷害(CDC)を介してヒトCLDN18.2を発現する細胞の死滅を誘導する;(5)腫瘍を予防および/または治療するという能力を含む。本発明の抗体は、前述の予想される特性のうち1つ以上を有する。
【0276】
本発明のキメラ抗体またはヒト化抗体は、上記のように調製されたマウスモノクローナル抗体の配列に基づき、調製することができる。重鎖および軽鎖をコードするDNAは、標的マウスハイブリドーマから得ることができ、標準的な分子生物学技術を用いて、非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含むように改変することができる。
【0277】
キメラ抗体を調製するために、当技術分野で公知の方法(例えば、Cabillyらに対する米国特許第4,816,567号参照)を用いて、マウス免疫グロブリンの可変領域をヒト免疫グロブリンの定常領域に連結することができる。例えば、VHをコードするDNAは、全長重鎖遺伝子を得るために、重鎖定常領域をコードする別のDNA分子に動作可能に連結される。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当技術分野で公知であり(例えば、Kabat, EA et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242参照)、これらの領域を含有するDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅により得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であってもよいが、一般に好ましくは、IgG1またはIgG4定常領域である。例えば、VLをコードするDNAは、全長軽鎖遺伝子(およびFab軽鎖遺伝子)を得るために、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に動作可能に連結される。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当技術分野で公知であり(例えば、Kabat, EA et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, US Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242参照)、これらの領域を含有するDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅により得ることができる。軽鎖定常領域は、κまたはλ定常領域であってもよいが、一般に好ましくは、κ定常領域である。
【0278】
ヒト化抗体を調製するために、当技術分野で公知の任意の方法を用いることにより、マウスCDR領域をヒトフレームワーク配列上に移植することができる(Winterに対する米国特許第5,225,539号;Queenらに対する米国特許第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,693,762号、および同第6,180,370号;ならびにLo, Benny, KC編, Antibody Engineering: Methods and Protocols, 第248巻, Humana Press, New Jersey, 2004参照)。あるいは、トランスジェニック動物を使用することもでき、これは、免疫化後に内因性免疫グロブリンを産生することなく、完全ヒト抗体ライブラリーを作製することができる。例えば、キメラおよび生殖系列変異体マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失は、内因性抗体産生の完全な阻害をもたらし、このような生殖系列変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの導入は、抗原チャレンジ時にヒト抗体の産生をもたらすことが報告されている(例えば、Jakobovits et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 2551; Jakobovits et al., 1993, Nature 362 : 255-258; Bruggermann et al., 1993, Year in Immunology 7: 33; and Duchosal et al., 1992, Nature 355: 258参照)。上記のトランスジェニック動物の限定されない例としては、整列されていないヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ座位と、内因性μおよびκ鎖座位を不活性化する標的変異とを含んでなるHuMAbマウス(Medarex,Inc.)(例えば、Lonberg et al. (1994) Nature 368 (6474): 856-859参照);またはヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖トランス染色体を有する「KMマウス(商標)」(特許出願WO02/43478参照)が挙げられる。抗体をヒト化する他の方法としては、ファージディスプレイ技術が挙げられる
(Hoogenboom et al., 1991, J. Mol. Biol. 227: 381; Marks et al., J. Mol. Biol. 1991, 222: 581-597; Vaughan et al., 1996, Nature Biotech 14: 309)。
【0279】
本明細書で使用する場合、用語「生殖系列抗体遺伝子」または「生殖系列抗体遺伝子セグメント」は、特定の免疫グロブリンの発現のための遺伝子再構成および変異に至り得る成熟プロセスを受けていない、免疫グロブリンをコードする生物体のゲノムに存在する配列を指す。本発明において、用語「重鎖生殖系列遺伝子」は、V遺伝子(可変)、D遺伝子(多様性)、J遺伝子(連結)およびC遺伝子(定常)を含んでなる、免疫グロブリン重鎖をコードする生殖系列抗体遺伝子または遺伝子フラグメントを指し;同様に、用語「軽鎖生殖系列遺伝子」は、V遺伝子(可変)、J遺伝子(連結)およびC遺伝子(定常)を含んでなる、免疫グロブリン軽鎖をコードする生殖系列抗体遺伝子または遺伝子フラグメントを指す。本発明において、生殖系列抗体遺伝子または生殖系列抗体遺伝子フラグメントによりコードされるアミノ酸配列は、「生殖系列配列」ともいう。生殖系列抗体遺伝子または生殖系列抗体遺伝子フラグメントおよびその対応する生殖系列配列は、当業者に周知であり、専門データベース(例えば、IMGT、UNSWIg、NCBI、またはVBASE2)から得るまたは検索することができる。
【0280】
本明細書で使用する場合、用語「特異的に結合する」または「特異的結合」は、2分子間の非ランダム結合反応、例えば、抗体とそれが向かう抗原との間の反応を指す。特異的結合相互作用の強度または親和性は、相互作用の平衡解離定数(K)によって表すことができる。本発明において、用語「K」は、抗体と抗原との間の結合親和性を説明するために使用される、特異的な抗体抗原相互作用の解離平衡定数を指す。平衡解離定数が低い程、抗体抗原結合が密着し、抗体と抗原との間の親和性が高くなる。いくつかの実施形態において、抗原に対して特異的に結合する抗体(または抗原に対して特異的である抗体)は、約10-9M未満、例えば、約10-9M未満、10-10M、10-11Mまたは10-12M以下の親和性(K)で抗体が抗原に結合することを意味する。2分子間の特異的結合特性は、当技術分野で公知の方法を用いて決定することができ、例えば、BIACORE機器における表面プラズモン共鳴(SPR)により決定することができる。
【0281】
本明細書で使用する場合、用語「細胞傷害剤」は、細胞に対して有害である(例えば、細胞を死滅させる)任意の剤、例えば、化学療法薬、細菌毒素、植物毒素または放射性同位体などを含んでなる。
【0282】
本明細書で使用する場合、用語「ベクター」は、ポリヌクレオチドを挿入することができる核酸ビヒクルを指す。ベクターが、挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の発現を可能にする場合、そのベクターは、発現ベクターという。ベクターは、形質転換、形質導入またはトランスフェクションにより宿主細胞に導入することができ、その結果、ベクターにより運ばれる遺伝物質エレメントが、宿主細胞において発現され得る。ベクターは当業者にとって周知であり、限定されるものではないが、プラスミド;ファージミド;コスミド;人工染色体、例えば、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)またはP1由来人工染色体(PAC);ファージ、例えば、λファージまたはM13ファージおよび動物ウイルスが挙げられる。ベクターとして使用することができる動物ウイルスとしては、限定されるものではないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポーバウイルス(例えば、SV40)が挙げられる。ベクターは、限定されるものではないが、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメント、およびレポーター遺伝子を含む、発現を制御する種々のエレメントを含んでなってもよい。さらに、ベクターは、複製開始部位を含んでなってもよい。
【0283】
本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」は、ベクターを導入することができる細胞を指し、限定されるものではないが、原核細胞、例えば、大腸菌もしくは枯草菌、真菌細胞、例えば、酵母細胞もしくはアスペルギルス、昆虫細胞、例えば、S2ショウジョウバエ細胞もしくはSf9、または動物細胞、例えば、線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞、もしくはヒト細胞が挙げられる。
【0284】
本明細書で使用する場合、用語「同一性」は、2つのポリペプチド間または2つの核酸間の一致度を指す。比較のための2つの配列が、特定の部位で塩基またはアミノ酸の同じモノマーサブユニットを有する(例えば、2つのDNA分子の各々が、特定の部位でアデニンを有する、または2つのポリペプチドの各々が、特定の部位でリシンを有する)場合、2つの分子は、その部位において同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、比較のための部位の総数に対する2つの配列により共有される同一の部位の数×100の関数である。例えば、2つの配列の10個の部位のうち6個が一致する場合、これらの2つの配列は、60%の同一性を有する。例えば、DNA配列:CTGACTおよびCAGGTTは、50%の同一性を共有する(6個の部位のうち3個が一致する)。一般に、2つの配列の比較は、最大の同一性をもたらすように行われる。このようなアラインメントは、Needlemanら(J. Mol. Biol. 48:443-453, 1970)の方法に基づいたAlignプログラム(DNAstar,Inc.)などのコンピュータープログラムを用いて行うことができる。2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、PAM120重み付け残基表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.MeyersおよびW.Miller(Comput. Appl. Biosci., 4:11-17 (1988))のアルゴリズムを用いて、決定することもできる。さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性のパーセンテージは、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ならびにギャップの重み16、14、12、10、8、6、または4および長さの重み1、2、3、4、5、または6を用いて、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comにて入手可能)におけるギャッププログラムに組み込まれているNeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol. 48:444-453 (1970))のアルゴリズムにより、決定することができる。
【0285】
本明細書で使用する場合、用語「保存的置換」および「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸配列を含んでなるタンパク質/ポリペプチドの予想される特性に対して不利に影響を及ぼさないまたはそれを変化させないアミノ酸置換を指す。例えば、保存的置換は、当技術分野で公知の標準的な技術、例えば、部位特異的変異誘発およびPCR媒介性変異誘発により導入してもよい。保存的アミノ酸置換としては、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基、例えば、対応するアミノ酸残基と物理的または機能的に類似した(例えば、類似のサイズ、形状、電荷、共有結合または水素結合を形成する能力を含む化学的特性を有する)残基に置換される置換が挙げられる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニンおよびヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。したがって、対応するアミノ酸残基は、好ましくは、同じ側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基に置換される。アミノ酸保存的置換を同定する方法は、当技術分野で周知である(例えば、Brummell et al., Biochem. 32: 1180-1187 (1993); Kobayashi et al., Protein Eng. 12(10): 879-884 (1999);およびBurks et al., Proc. Natl Acad. Set USA 94: 412-417 (1997)参照。これらは、引用することにより本明細書の一部とされる)。
【0286】
本明細書に関与する20個の従来のアミノ酸は、常法に従って表される。例えば、Immunology-A Synthesis (第2版, E. S. Golub and D. R. Gren編, Sinauer Associates, Sunderland, Mass. (1991))参照(これは、引用することにより本明細書の一部とされる)。本発明において、用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、同じ意味を有し、互換的に使用され得る。さらに、本発明において、アミノ酸は一般に、1文字コードおよび3文字コードとして表される。例えば、アラニンは、AまたはAlaとして表してもよい。
【0287】
本明細書で使用する場合、用語「キメラ抗原受容体(CAR)」は、T細胞受容体の1以上の細胞内シグナル伝達ドメインと結合している抗体(例えば、scFv)に由来する細胞外標的ドメインを有する改変T細胞受容体を指す。本発明において、用語「キメラ抗原受容体T細胞」は、CARを発現し、かつCARの標的ドメインにより決定される抗原特異性を有するT細胞を指す。CARを調製する方法(例えば、癌治療における使用のための)は、当技術分野で公知であり、例えば、Park et al., Trends Biotechnol., 29: 550-557, 2011; Grupp et al., NEnglJMed., 368: 1509-1518, 2013; Han et al., J. Hematol Oncol., 6:47, 2013;PCT特許公報WO2012/079000、WO2013/059593;および米国特許公報2012/0213783参照(これらの総ては、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる)。
【0288】
本明細書で使用する場合、用語「薬学上許容可能な担体および/または賦形剤」は、当技術分野で周知である、対象および有効成分と薬理学的および/または生理学的に適合する担体および/または賦形剤を指し(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences. Gennaro AR編, 第19版. Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1995参照)、限定されるものではないが、pH調整剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度増強剤、希釈剤、浸透圧維持剤、吸収遅延剤、保存剤が挙げられる。例えば、pH調整剤としては、限定されるものではないが、リン酸緩衝生理食塩水が挙げられる。界面活性剤としては、限定されるものではないが、陽イオン、陰イオンまたは非イオン性界面活性剤、例えば、ツイーン80が挙げられる。イオン強度増強剤としては、限定されるものではないが、塩化ナトリウムが挙げられる。保存剤としては、限定されるものではないが、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、トリクロロ-t-ブタノール、フェノール、ソルビン酸などが挙げられる。浸透圧維持剤としては、限定されるものではないが、糖、NaClなどが挙げられる。吸収遅延剤としては、限定されるものではないが、モノステアリン酸塩およびゼラチンが挙げられる。希釈剤としては、限定されるものではないが、水、水性緩衝液(例えば、緩衝生理食塩水)、アルコールおよびポリオール(例えば、グリセロール)などが挙げられる。保存剤としては、限定されるものではないが、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、チメロサール、2-フェノキシエタノール、パラベン、トリクロロ-t-ブタノール、フェノール、ソルビン酸などが挙げられる。安定剤は、当業者により一般に理解される意味を有し、薬剤中の有効成分の所望の活性を安定化することができ、限定されるものではないが、グルタミン酸ナトリウム、ゼラチン、SPGA、糖類(例えば、ソルビトール、マンニトール、デンプン、スクロース、ラクトース、デキストラン、またはグルコース)、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、グリシン)、タンパク質(例えば、乾燥乳清、アルブミン、またはカゼイン)またはそれらの分解産物(例えば、ラクトアルブミン加水分解産物)などが挙げられる。特定の複数の例示的な実施形態において、薬学上許容可能な担体または賦形剤は、無菌注射液(例えば、水性または非水性懸濁液または溶液)を含む。特定の複数の例示的な実施形態において、このような無菌注射液は、注射用水(WFI)、静菌注射用水(BWFI)、塩化ナトリウム溶液(例えば、0.9%(w/v)NaCl)、グルコース溶液(例えば、5%グルコース)、界面活性剤含有溶液(例えば、0.01%ポリソルベート20)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)、リンゲル液、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0289】
本明細書で使用する場合、用語「予防/予防すること」は、対象における疾患または障害または症状(例えば、腫瘍)の発生を予防するまたは遅延させるために行われる方法を指す。本明細書で使用する場合、用語「治療/治療すること」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るために行われる方法を指す。本発明の目的では、有益なまたは所望の臨床結果としては、限定されるものではないが、症状を緩和すること、疾患の範囲を低減させること、疾患の状態を安定化させること(すなわち、それ以上悪化させないこと)、疾患の発症を遅延または緩徐化させること、疾患の状態を改善または軽減すること、および検出可能または検出不能のいずれかの症状を軽減すること(部分的または全体的のいずれか)が挙げられる。さらに、用語「治療/治療すること」は、予想される生存期間(治療を受けない場合)と比較して生存期間を延長させることも指し得る。
【0290】
本明細書で使用する場合、用語「対象」は、哺乳動物、例えば、霊長類哺乳動物、例えば、ヒトを指す。特定の複数の実施形態において、対象(例えば、ヒト)は、腫瘍(例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍)を有する、または上記の疾患を有するリスクにある。
【0291】
本明細書で使用する場合、用語「有効量」は、所望の効果を得るまたは少なくとも部分的に得るのに十分な量を指す。例えば、疾患(例えば、腫瘍)を予防するための有効量は、疾患(例えば、腫瘍)の発症を予防する、停止する、または遅延させるのに十分な量であり;疾患を治療するための有効量は、疾患を有する患者において疾患およびその合併症を治癒するまたは少なくとも部分的に阻止するのに十分な量である。このような有効量の決定は、当業者の能力の範囲内に十分ある。例えば、治療的使用のための有効量は、治療される疾患の重症度、患者の免疫系の全体的な状態、年齢、体重および性別などの患者の一般状態、薬剤の投与経路、ならびに同時に使用されるさらなる療法などに依存する。
【0292】
本明細書で使用する場合、用語「免疫エフェクター細胞」は、造血起源であり、免疫応答において役割を果たす細胞、例えば、B細胞およびT細胞などのリンパ球;ナチュラルキラー細胞;単球細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球および顆粒球などの骨髄系細胞を含む。特定の複数の好ましい実施形態において、免疫エフェクター細胞はT細胞である。
【0293】
本明細書で使用する場合、用語「転移」は、癌細胞の原発部位から身体の他の部位への伝播を指す。転移の形成は、非常に複雑なプロセスであり、原発腫瘍からの悪性細胞の分離、細胞外マトリックスへの浸潤、体腔および血管に侵入するための内皮基底膜への侵入、ならびに血液輸送による標的臓器へのその後の浸潤に依存する。最終的に、標的部位における新たな腫瘍(すなわち、二次腫瘍または転移性腫瘍)の成長は、血管新生に依存する。腫瘍細胞または腫瘍成分は残存し、転移能を生じ得ることから、原発腫瘍の除去後ですら、腫瘍転移が生じることが多い。一つの実施形態において、本発明に係る「転移」という用語は、原発腫瘍および所属リンパ節系から離れた転移に関する「遠隔転移」に関する。二次腫瘍または転移性腫瘍の細胞は、原発腫瘍における細胞と類似している。このことは、例えば、卵巣癌が肝臓に転移した場合、二次腫瘍は、(異常な肝細胞ではなく)異常な卵巣細胞から構成されることを意味する。よって、肝臓における腫瘍は、転移性卵巣癌(肝臓癌ではない)と呼ばれる。
【0294】
[発明の効果]
従来技術と比較して、本発明の技術的解決法は、以下の有益な効果を有する。
【0295】
本発明の抗体は、CLDN18.2を特異的に認識する/に対して特異的に結合することができ、ADCCおよび/またはCDCを介してCLDN18.2を発現する細胞(例えば、腫瘍細胞)の死滅を誘導することができる。したがって、本発明の抗体は、腫瘍、特にCLDN18.2を発現する腫瘍の予防および/または治療に使用される可能性を有する。本発明のヒト化抗体は、親抗体の機能および特性を保持するだけでなく、高度のヒト化も有するため、免疫原性応答を惹起することなく、ヒト対象に安全に投与することができる。本発明の抗体が、公知の抗CLDN18.2抗体と比較して、親和性および腫瘍死滅活性を有意に改善していることは、特に意外である。したがって、本発明の抗体(特に、ヒト化抗体)は、大きな臨床的価値を有する。
【0296】
本発明の実施形態を、図面および実施例を参照して以下に詳細に説明するが、当業者は、以下の図面および実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明を説明するために使用されるだけであることを理解するであろう。図面および好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明から、本発明の種々の目的および有利な側面が、当業者に実施可能となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0297】
図1図1A~1Dは、それぞれ異なる細胞表面上のCLDN18.2またはCLDN18.1に対する抗CLDN18.2マウス抗体の結合活性の測定の結果を示す。図1A:HEK293T-hCLDN18.2;図1B:HEK293T-mCLDN18.2;図1C:HEK293T-hCLDN18.1;図1D:HEK293T。
図2図2は、細胞表面CLDN18.2に対する抗CLDN18.2キメラ抗体の結合活性の測定の結果を示す。
図3図3A~3Cは、それぞれHEK293T-hCLDN18.2、KATO-III、およびNUGC4に対する抗CLDN18.2キメラ抗体のADCC活性の測定の結果を示す。図3A:HEK293T-hCLDN18.2;図3B:KATO-III;図3C:NUGC4。
図4図4A~4Bは、それぞれHEK293T-hCLDN18.2およびKATO-IIIに対する抗CLDN18.2キメラ抗体のCDC活性の測定の結果を示す。図4A:HEK293T-hCLDN18.2;図4B:KATO-III。
図5図5は、細胞表面CLDN18.2に対する抗CLDN18.2ヒト化抗体の結合活性の測定の結果を示す。
図6図6は、KATO-IIIに対する抗CLDN18.2ヒト化抗体のADCC活性の測定の結果を示す。
図7図7は、KATO-IIIに対する抗CLDN18.2ヒト化抗体のCDC活性の測定の結果を示す。
図8図8A~8Bは、それぞれマウス腫瘍モデルにおける腫瘍容積(A)および生存期間(B)に対する抗CLDN18.2抗体の効果を示す。
【0298】
配列情報
本発明に関与するいくつかの配列の情報を、以下の表1に示す。
【0299】
【表1】
【0300】
本発明を実施するための具体的なモデル
以下の実施例を参照して本発明を説明するが、これらの実施例は、本発明を限定することなく、本発明を説明することを意図するものである。
【0301】
特に断りのない限り、本発明において使用される分子生物学実験法および免疫測定法は、J. Sambrook et al., Molecular Cloning: Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989,およびF.M. Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology, 第3版, John Wiley & Sons, Inc., 1995から基本的に参照することができ、制限酵素の使用は、製品の製造業者により推奨される条件に従った。当業者ならば、実施形態は、実施例により本発明を説明するものであり、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが分かるであろう。
【実施例
【0302】
実施例1:抗CLDN18.2マウス抗体の作製
抗ヒトCLDN18.2抗体を得るために、マウス(Beijing Weitong Lihua Experimental Animal Technology Co.,Ltd.,216系統)を、異なる免疫化戦略(表2)によりワクチン接種し、マウスモノクローナル抗体の産生を誘発した。抗原としては、ヒトCLDN18.2細胞外ドメイン1をコードする核酸配列を発現する発現プラスミド(CLDN18.2-ECL1 DNA;配列番号83、ベクターはpcDNA3.1)、ヒトCLDN18.2細胞外ドメイン1-補体C3をコードする核酸配列を発現する発現プラスミド(CLDN18.2-ECL1-C3d DNA;配列番号84、ベクターはpcDNA3.1)、全長ヒトCLDN18.2をコードする核酸配列を発現する発現プラスミド(hCLDN18.2 DNA;配列番号85、ベクターはpcDNA3.1)、ヒトCLDN18.2を発現するトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO-hCLDN18.2)、ヒトCLDN18.2を高度に発現するトランスフェクトされた腎胚細胞(HEK293-hCLDN18.2)が含まれた。アジュバントとしては、in vivo-jetPEI(Polyplus Transfection社、カタログ番号201-50G)、ODN 1826 VacciGrade(InvivoGen社、カタログ番号vac-1826-1)、完全フロイントアジュバントCFA(InvivoGen社、カタログ番号vac-cfa-60)が含まれた。また、投与経路としては、筋肉内(im)、腹腔内(ip)、および皮下(sc)注射が含まれた。追加免疫の3日後に、ポリエチレングリコール法を用いて、免疫化マウスの脾臓細胞をマウス骨髄腫細胞SP2/0と融合し、それにより、抗体を発現し、in vitroで無期限に増殖することができる融合細胞を得、この融合細胞をHAT選択培地にて培養した。融合ハイブリドーマ細胞を96ウェル細胞培養プレートに蒔き、陽性クローンを、一次スクリーニングを介して選択し、2~3ラウンドのサブクローニングに供した。
【0303】
【表2】
【0304】
一次スクリーニング:一次スクリーニングにおいて、ヒトCLDN18.2を発現する細胞を用いることにより、成長中のクローンの上清を、細胞の表面上のCLDN18.2に結合するその能力に関して試験した。上清中の反応性抗体の存在を、二次抗体DyLight488ヤギ抗マウスIgG(Abcam社、カタログ番号ab97015)を用いることにより検出し、結合能を全視野走査サイトメーターで評価した(実施例3参照)。
【0305】
二次スクリーニング:ヒトCLDN18を発現する細胞を用いることにより、ヒトCLDN18.2に結合した融合クローンの上清を、細胞の表面上のCLDN18.1に結合するその能力に関して試験した。上清中の反応性抗体の存在を、二次抗体DyLight488ヤギ抗マウスIgG(Abcam社、カタログ番号ab97015)を用いることにより検出し、結合能を全視野走査サイトメーターで評価した(詳細な実験工程については、実施例3参照)。最終的に、10個の陽性モノクローナルハイブリドーマ細胞株を得、以下の抗体を培養上清から単離および精製した:1D10、2F12、3F2、5F9、9F3、10B11、27B5、37B1、44A8、44F7。
【0306】
実施例2:抗CLDN18.2マウス抗体の抗原結合活性の評価
2.1 CLDN18.2を発現する細胞株の構築
レンチウイルス感染および抗生物質抵抗性スクリーニングの方法(MOI=3~10、5μg/mlポリブレン)を用いることにより、ヒトCLDN18.2(配列番号86)もしくはCLDN18.1(配列番号88)、またはマウスCLDN18.2(配列番号87)を、HEK293T細胞(ATCC)、CHOS細胞(Invitrogen社)、OCUM-1胃癌腫瘍細胞(Nanjing Kebai Biotechnology Co.,Ltd.)において過剰発現させた。レンチウイルスは、Shanghai Genechem Co.,Ltd.により提供された。細胞感染の72時間後、対応する抗生物質を適用し、培養を2~4週間継続し、次いで、増殖させ、その後の実験のために凍結保存した。
【0307】
2.2 細胞走査サイトメーターによる細胞表面上のCLDN18.2およびCLDN18.1に対するマウス抗体の結合の検出
ヒトCLDN18.2(hCLDN18.2)を発現するHEK293T-hCLDN18.2およびOCUM-1-hCLDN18.2、もしくはマウスCLDN18.2(mCLDN18.2)を発現するHEK293T-mCLDN18.2ならびに対応する陰性対照細胞株HEK293Tを使用した;または、ヒトCLDN18.1(hCLDN18.1)を発現するHEK293T-hCLDN18.1およびCHOS-hCLDN18.1を使用した。DyLight488ヤギ抗マウスIgG(Abcam社、カタログ番号ab97015)またはDyLight488ヤギ抗ヒトIgG(Abcam社、カタログ番号ab97003)を、二次抗体として使用した。結合曲線は、以下の方法を用いることにより作成した。
【0308】
平底96ウェルプレート中のウェルあたり10%FBSを含有する100μLのDMEMに、10,000個の細胞を蒔いた。細胞がウェルの底部に一晩接着または定着した後、翌日に上清を除去した。200μLのDMEMで全容量(すなわち、100μL)の1/3に希釈することにより、抗体の3倍勾配希釈を行った。100μLの希釈抗体(融合クローンまたはサブクローンの上清は、スクリーニングに使用した)を、細胞プレートの各ウェルに加え、100μLのDMEMを対応する陰性対照ウェルに加え、インキュベーションを室温で1時間行った。上清を除去した後、100μLの二次抗体(5μg/mL、DMEMで希釈)を各ウェルに加え、室温で0.5時間インキュベートした。染色後に上清を除去し、次いで、PBSで1回洗浄した。100μLのPBSを各ウェルに加え、次いで、サイトメーターで読み取りを行った。
【0309】
全視野走査サイトメーター(Nexcelom社、Celigo(登録商標)Image Cytometer)を使用して、実験プレートの読み取り値を測定した。測定中、ウェル中の細胞の高速走査イメージングを、二次抗体に対応する緑色蛍光チャネルおよび明視野チャネルにおいて同時に行った。蛍光標識した細胞の形態および蛍光強度に従って設定したパラメーターの下で、緑色蛍光チャネルから得た画像において、抗体に結合した細胞を数え、細胞の形態に従って設定したパラメーターの下で、明視野チャネルから得た画像において、接着細胞を数えた。また、接着細胞の総数における緑色蛍光を有する抗体結合細胞のパーセンテージ(蛍光細胞の%)は、緑色蛍光チャネルから得られた計数結果を、明視野チャネルから得られた計数結果で割ることにより得た。CLDN18.2発現細胞に対する抗CLDN18.2抗体の結合活性は、このパーセンテージに従って決定した。すなわち、パーセンテージが低い程、細胞表面上のCLDN18.2に結合する抗CLDN18.2抗体の能力が乏しく、逆に、パーセンテージが高い程、細胞表面上のCLDN18.2に結合する抗CLDN18.2抗体の能力が優れている。データ解析は、GraphPadを用いて行った。
【0310】
ヒトCLDN18.2を発現するHEK293T、マウスCLDN18.2を発現するHEK293T、ヒトCLDN18.1を発現するHEK293T、および対照HEK293Tに対する抗CLDN18.2抗体の結合活性の測定の結果を図1A~1Dに示し、図中、横座標は、抗体濃度の対数を示し、縦座標は、接着細胞の総数における緑色蛍光を有するCLDN18.2抗体結合細胞のパーセンテージを示した。抗CLDN18.2抗体の抗原結合活性のEC50を近似曲線からさらに得、その結果を表3に示し、表中、参照抗体は175D10(Ganymed Pharmaceuticals AG)であり、これは、例えば、CN101312989BおよびCN103509114Bに開示されていたものである。
【0311】
【表3】
【0312】
上記の結果は、1D10、2F12、3F2、5F9、9F3、10B11、27B5、37B1、44A8および44F7の総てが、ヒトCLDN18.2を発現する細胞に結合することができ、参照抗体175D10よりも有意に優れており、これらの抗体は、CLDN18.2を発現しなかった陰性対照細胞(HEK293T)に結合しなかったことを示した。
【0313】
CLDN18.1に対する抗CLDN18.2抗体の結合活性のEC50値を、表4に示した。その結果は、2F12、3F2、9F3、10B11、27B5、37B1、44A8および44F7のいずれもCLDN18.1に結合せず、CLDN18.2に対する良好な結合特異性を示すことを示した。
【0314】
【表4】
【0315】
実施例3:抗CLDN18.2マウス抗体の配列決定およびキメラ抗体の調製
3.1 抗ヒトCLDN18.2マウス抗体の可変領域配列の決定
ハイブリドーマ細胞を遠心分離により回収し、5~10×10個の細胞に1mlのトリゾールおよび0.2mlのクロロホルムを加え、15秒間激しく振り混ぜ、次いで、室温で3分間インキュベートした。遠心分離後、水相を回収し、0.5mlのイソプロパノールを加え、次いで、室温で10分間インキュベートした。沈殿物を回収し、エタノールで洗浄し、乾燥させて、RNAを得た。鋳型RNAおよびプライマーを氷浴遠心管に加え、プライマーおよび鋳型が正しく対になった場合、逆転写を行い、次いで、PCR増幅を行った。増幅が完了した後、4本の微量遠心管にそれぞれ2.5μlのdNTP/ddNTP混合物を加え、その後の使用のために37℃で5分間インキュベートした。空の微量遠心管に、1pmolのPCR増幅産物、10pmolのシークエンシングプライマー、2μlの5倍シークエンシングバッファーを加え、再蒸留水を加えて全容量10μlとし、次いで、96℃で8分間の加熱、1分間の氷浴、ならびに4℃および10000gで10秒間の遠心分離に供した。2μlの予冷標識混合物(dCTP、dGTPおよびdTTPそれぞれ0.75μmol/L)、α-32P-dATP 5μCi、1μlの0.1mol/L DDT、2Uのシークエンシング酵素を加え、次いで、水を加えて15μlとし、よく混合し、氷上に2分間置いた。3.5μlの標識化反応混合物を、4本の準備した微量遠心管に加え、37℃で5分間インキュベートした。4μlの停止液を各管に加えた。サンプルを80℃の水浴中で5分間熱変性させ、2μlの量でシークエンシングゲルの各レーンにロードし、これらのフラグメントを電気泳動により分離して、配列情報を回収した。
【0316】
10個のマウス抗体のVHおよびVL配列を、以下の表5に示した。また、10個のマウスモノクローナル抗体のCDR配列(表6)を、Kabatらにより記載の方法により、さらに決定した(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Maryland (1991), pp. 647-669)。
【0317】
【表5】
【0318】
【表6】
【0319】
3.2 ヒト-マウスキメラ抗体の調製および抗原結合活性の評価
上記のマウス抗体の重鎖および軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列(配列番号103~122参照)を、それぞれヒト抗体の重鎖定常領域(配列番号81)および軽鎖定常領域(配列番号82)をコードする配列にライゲートし、HEK293細胞(ATCC)において組換え発現させ、それにより、対応するキメラ抗体1D10-chIgG1、2F12-chIgG1、3F2-chIgG1、5F9-chIgG1、9F3-chIgG1、10B11-chIgG1、27B5-chIgG1、37B1-chIgG1、44A8-chIgG1、44F7-chIgG1を得た。ヒトCLDN18.2を発現するHEK293T細胞(HEK293T-hCLDN18.2)に対する異なる濃度のキメラ抗体の結合活性を、実施例2に記載の方法により検出した。結果を図2に示し、図中、横座標は、抗体濃度の対数を示し、縦座標は、接着細胞の総数における緑色蛍光を有するCLDN18.2抗体結合細胞のパーセンテージ(蛍光細胞の%)を示した。抗原に対するキメラ抗体の結合活性のEC50値を、近似曲線からさらに得、表7に示した。結果は、キメラ抗体3F2-chIgG1、5F9-chIgG1、9F3-chIgG1、10B11-chIgG1、27B5-chIgG1、37B1-chIgG1、44A8-chIgG1および44F7-chIgG1は総て、ヒトCLDN18.2を認識する/に結合することができたことを示した。
【0320】
【表7】
【0321】
実施例4:ADCCを誘導する抗CLDN18.2キメラ抗体の活性の評価
HEK293T-hCLDN18.2、またはhCLDN18.2を天然に発現するヒト胃癌腫瘍細胞株KATO-IIIおよびNUGC4を標的細胞として使用し、フィコールにより単離されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)をエフェクター細胞として使用した。標的細胞を回収し、PBSで2回洗浄した。生細胞色素カルセインAM(50μgのカルセインAM乾燥粉末(Life Technologies、カタログ番号C3100MP)を50μlのDMSOに溶解した)を3μMに希釈し、標的細胞を、5%CO下で37℃にて30分間染色した。染色後、細胞をPBSで2回洗浄し、5000個の標的細胞を、平底96ウェルプレート中のウェルあたり100μLのDMEMに蒔いた。200μLのDMEMで全容量(すなわち、100μL)の1/3に希釈することにより、試験した抗体の3倍勾配希釈を行った。50μLの希釈抗体を、細胞プレートの対応するウェルに加え(50μLのDMEM培地を、非特異的死滅のために対照ウェルに加えた)、5%CO下で37℃にて30分間、標的細胞とともにインキュベートした。次に、50μL中の50000個の単離PBMCを、エフェクター細胞として各ウェルに加え、次いで、1000rpmで3分間遠心分離して、細胞をプレートの底部に定着させた。複数の時点(0時間、2時間、3時間、4時間、および6時間)で、全視野走査サイトメーター(Nexcelom社、Celigo(登録商標)Image Cytometer)における読み取りのために、実験プレートを測定した。測定中、ウェル中の細胞の高速走査イメージングを、カルセインAMに対応する緑色蛍光チャネルおよび明視野チャネルにおいて同時に行った。蛍光標識した細胞の形態および蛍光強度に従って設定したパラメーターの下で、緑色蛍光チャネルから得た画像において、各ウェル中の生細胞を数え、細胞の形態に従って設定したパラメーターの下で、明視野チャネルから得た画像において、各ウェル中の総細胞を数えた。また、細胞の総数における緑色蛍光を有する生細胞のパーセンテージは、緑色蛍光チャネルから得られた計数結果を、明視野チャネルから得られた計数結果で割ることにより得た。細胞の総数における抗体の存在下で特異的細胞溶解を受けていた細胞のパーセンテージは、非特異的対照ウェルのパーセンテージから抗体の存在下で得られた対応するパーセンテージを引くことにより得た。ADCCを誘導する抗CLDN18.2抗体の活性は、このパーセンテージ値に基づいて決定した。すなわち、パーセンテージが低い程、ADCCを誘導する抗CLDN18.2抗体の能力が低く、逆に、パーセンテージが高い程、ADCCを誘導する抗CLDN18.2抗体の能力が優れている。データ解析は、GraphPadを用いて行った。
【0322】
ADCCを誘導する抗CLDN18.2抗体の活性の測定結果を図3A~3Cに示し、図中、横座標は、抗体濃度の対数を示し、縦座標は、特異的溶解の補正後のパーセンテージを示した。ADCCを誘導する抗CLDN18.2キメラ抗体の活性のEC50を近似曲線からさらに得、その結果を表8に示した。結果は、試験した抗体は、ヒトCLDN18.2を発現する細胞に対するPBMCの死滅効果を誘導することができ、参照抗体175D10より有意に優れていたことを示した。
【0323】
【表8】
【0324】
実施例5:CDCを誘導する抗CLDN18.2キメラ抗体の活性の評価
HEK293T-hCLDN18.2、またはhCLDN18.2を天然に発現したヒト胃癌腫瘍細胞株KATO-IIIを標的細胞として使用し、新鮮ヒト血清をエフェクター細胞として使用した。標的細胞を回収し、PBSで2回洗浄した。生細胞色素カルセインAM(50μgのカルセインAM乾燥粉末(Life Technologies、カタログ番号C3100MP)を50μlのDMSOに溶解した)を3μMに希釈し、標的細胞を、5%CO下で37℃にて30分間染色した。染色後、細胞をPBSで2回洗浄し、8,000個の標的細胞を、平底96ウェルプレート中のウェルあたり25μLのDMEMに蒔いた。200μLのDMEMで全容量(すなわち、100μL)の1/3に希釈することにより、試験した抗体の3倍勾配希釈を行った。25μLの希釈抗体を、細胞プレートの各ウェルに加え(25μLのDMEM培地を、非特異的死滅のために対照ウェルに加えた)、5%CO下で37℃にて30分間、標的細胞とともにインキュベートした。次に、50μLの新鮮単離20%ヒト血清(DMEMで希釈)を、エフェクター細胞として各ウェルに加え、次いで、1000rpmで3分間遠心分離して、細胞をプレートの底部に定着させた。複数の時点(0、1、2、3、および4時間)で、全視野走査サイトメーター(Nexcelom社、Celigo(登録商標)Image Cytometer)における読み取りのために、実験プレートを測定した。測定中、ウェル中の細胞の高速走査イメージングを、カルセインAMに対応する緑色蛍光チャネルおよび明視野チャネルにおいて同時に行った。蛍光標識した細胞の形態および蛍光強度に従って設定したパラメーターの下で、緑色蛍光チャネルから得た画像において、各ウェル中の生細胞を数え、細胞の形態に従って設定したパラメーターの下で、明視野チャネルから得た画像において、各ウェル中の総細胞を数えた。また、細胞の総数における緑色蛍光を有する生細胞のパーセンテージは、緑色蛍光チャネルから得られた計数結果を、明視野チャネルから得られた計数結果で割ることにより得た。細胞の総数における抗体の存在下で特異的細胞死滅を受けていた細胞のパーセンテージは、非特異的対照ウェルのパーセンテージから抗体の存在下で得られた対応するパーセンテージを引くことにより得た。CDCを誘導する抗CLDN18.2抗体の活性は、このパーセンテージ値に基づいて決定した。すなわち、パーセンテージが低い程、CDCを誘導する抗CLDN18.2抗体の能力が低く、逆に、パーセンテージが高い程、CDCを誘導する抗CLDN18.2抗体の能力が優れている。データ解析は、GraphPadを用いて行った。
【0325】
CDCを誘導する抗CLDN18.2抗体の活性の測定結果を図4A~4Bに示し、図中、横座標は、抗体濃度の対数を示し、縦座標は、特異的細胞死滅の補正後のパーセンテージを示した。CDCを誘導する抗CLDN18.2抗体のEC50を近似曲線からさらに得、その結果を表9に示した。結果は、試験した抗体は、ヒトCLDN18.2を発現する細胞に対するヒト血清中の補体の死滅効果を誘導することができ、参照抗体175D10より有意に優れていたことを示した。
【0326】
【表9】
【0327】
実施例6:CLDN18.2内部移行を誘導する抗CLDN18.2抗体の活性の評価
本実施例において、抗CLDN18.2抗体により媒介される細胞(HEK293T-hCLDN18.2)の表面上のCLDN18.2の内部移行レベルを、フローサイトメトリーにより検出した。細胞の2つのサンプルを、それぞれ37℃で1時間および4時間、10μg/mLキメラ抗体とともにインキュベートした。2%FBSを含有するPBSで数回洗浄した後、10μg/mL二次抗体を加え、4℃で30分間染色した。次に、細胞表面上のCLDN18.2の発現レベルを、フローサイトメトリーにより分析した。
【0328】
MFI4Hは、インキュベーションの4時間後のサンプルのMFIであり、MFI1Hは、インキュベーションの1時間後のサンプルのMFIであり、ここで、抗体の結合は完了しており、エンドサイトーシスはまだ生じていなかったと仮定した。MFIバックグラウンドは、二次抗体のみのMFIであった。細胞表面CLDN18.2の抗体媒介性内部移行のパーセンテージは、以下の式により計算した:
内部移行したCLDN18.2のパーセンテージ(%)=100-100×(MFI4H-MFI1H)/(MFI1H-MFIバックグラウンド
【0329】
結果を表10に示した。これらの抗体は、HEK293T-hCLDN18.2細胞の表面上のCLDN18.2の内部移行を、様々な程度で媒介した。
【0330】
【表10】
【0331】
実施例7:抗CLDN18.2抗体のヒト化およびその活性の評価
候補抗体およびヒト抗体の配列相同性を改善するため、かつヒトに対する抗体の免疫原性を低減するために、上記の実施例において提供されたマウス抗体を、マウスCDR領域がヒトフレームワーク配列上に移植された、ヒト化のための設計および調製に供することができた(Winterに対する米国特許第5,225,539号;Queenらに対する米国特許第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,693,762号および同第6,180,370号;ならびにLo, Benny, KC編, Antibody Engineering: Methods and Protocols, 第248巻, Humana Press, New Jersey, 2004参照)。一般に、ヒト化抗体のCDR領域の総てまたは一部は、非ヒト抗体(ドナー抗体)に由来し、非CDR領域(例えば、可変領域FRおよび/または定常領域)の総てまたは一部は、ヒト免疫グロブリン(レセプター抗体)に由来した。
【0332】
これに基づき、本発明者らは、それぞれ7004-09hu09、7004-09hu10、および7004-09hu15と名付けたマウス抗体44F7の3つのヒト化抗体を調製および取得した。それらのアミノ酸配列を以下の表に示した。
【0333】
【表11】
【0334】
上記のヒト化抗体の重鎖および軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列(配列番号123~128参照)を、ヒト抗体の重鎖定常領域(配列番号81)および軽鎖定常領域(配列番号82)をコードする配列にライゲートし、次いで、組換え発現を行った。HEK293T-hCLDN18.2の表面上に発現したCLDN18.2に対するヒト化抗体の結合能力を、細胞走査サイトメーターにより、および実施例2.2に記載の方法を用いることにより決定した。結果を図5に示し、図中、横座標は、抗体濃度の対数を示し、縦座標は、接着細胞の総数における緑色蛍光を有するCLDN18.2抗体結合細胞のパーセンテージ(蛍光細胞の%)を示した。抗CLDN18.2ヒト化抗体の抗原結合活性のEC50を近似曲線からさらに得、その結果を表12に示した。結果は、試験したヒト化抗体は総て、hCLDN18.2発現細胞に結合することができ、その親和性は、親キメラ抗体のものと同じ桁であったことを示した。
【0335】
【表12】
【0336】
さらに、本発明者らは、ADCCを誘導するヒト化抗体の能力を検討し、評価方法は、実施例4に記載の方法を参照した。ヒト胃癌腫瘍細胞KATO-IIIを標的細胞として使用し、フィコールにより単離されたヒト末梢血単核細胞をエフェクター細胞として使用した。測定結果を図6に示し、図中、横座標は、抗体濃度の対数を示し、縦座標は、特異的細胞溶解の補正後のパーセンテージを示した。ADCCを誘導する抗CLDN18.2キメラ抗体の活性のEC50を近似曲線からさらに得、その結果を表13に示した。結果は、試験した抗体は総て、ヒトCLDN18.2を発現する細胞に対するPBMCの死滅効果を誘導することができ、ADCCを誘導するそれらの能力は、親キメラ抗体のものと同じ桁であり、参照抗体175D10のものより有意に優れていたことを示した。
【0337】
【表13】
【0338】
本発明者らはまた、CDCを誘導するヒト化抗体の能力を検討し、評価方法は、実施例5の方法を参照した。ヒト胃癌腫瘍細胞KATO-IIIを標的細胞として使用し、新鮮ヒト血清をエフェクター細胞として使用した。測定結果を図7に示し、図中、横座標は、抗体濃度の対数を示し、縦座標は、特異的細胞死滅の補正後のパーセンテージを示した。CDCを誘導する抗CLDN18.2キメラ抗体の活性のEC50を近似曲線からさらに得、その結果を表14に示した。結果は、試験した抗体は総て、ヒトCLDN18.2を発現する細胞に対するヒト血清中の補体の死滅効果を誘導することができ、CDCを誘導するその能力は、親キメラ抗体のものと同じ桁であり、参照抗体175D10のものより有意に優れていたことを示した。
【0339】
【表14】
【0340】
上記の結果は、本発明のヒト化抗体は、高度のヒト化を示し、そのため免疫拒絶の可能性を低減するだけでなく、それらの親キメラ抗体のものに匹敵し、かつ公知の抗体のものより優れた抗腫瘍活性も示したことを示した。
【0341】
実施例8:抗CLDN18.2キメラ抗体のin vivo抗腫瘍活性の評価
動物における抗CLDN18.2抗体の抗腫瘍効果を検討するために、ヌードマウス(SCID、Beijing Weitonglihua Experimental Animal Technology Co.,Ltd.)に対し、1×10個のHEK293T-hCLDN18.2細胞を皮下接種した。接種日から静脈内投与および腹腔内投与を交互に、週2回を4週間、1回10mg/kgで行った。投与の終了後、マウスにおける腫瘍サイズの検出を継続した。図8Aは、処置後のマウスにおける腫瘍容積の変化を示したものである。結果は、44F7-chIgG1抗体処置は、投与群のマウスにおいて、腫瘍成長を有意に阻害しただけでなく、腫瘍を完全に排除し、その抗腫瘍効果は、参照抗体175D10のものよりも有意に優れていたことを示した。さらに、図8Bは、44F7-chIgG1は、担癌マウスの全生存期間を有意に延長し、優れた抗腫瘍活性を示したことを示したものである。参照抗体175D10と比較して、44F7-chIgG1は、生存期間の延長において有意な利点も示したことが分かる。このような技術的効果は、有意かつ予想外のものであった。
【0342】
本発明の特定の複数の実施形態を詳細に説明してきたが、当業者ならば、公表されている総ての教示に従って、種々の改変および変更を詳細に対して行うことができ、これらの変更は総て本発明の保護範囲にあることを理解するであろう。本発明の全体は、添付の特許請求の範囲およびその任意の等価物によって与えられる。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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