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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ポリアルキレングリコール潤滑剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 161/00 20060101AFI20231212BHJP
   C10M 169/04 20060101ALI20231212BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20231212BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20231212BHJP
   C10M 145/38 20060101ALN20231212BHJP
   C10M 129/10 20060101ALN20231212BHJP
   C10M 133/04 20060101ALN20231212BHJP
   C10M 101/02 20060101ALN20231212BHJP
   C10M 107/02 20060101ALN20231212BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20231212BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20231212BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
C10M161/00
C10M169/04
C08L71/02
C08K5/00
C10M145/38
C10M129/10
C10M133/04
C10M101/02
C10M107/02
C10N30:10
C10N30:00 Z
C10N40:25
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021551916
(86)(22)【出願日】2019-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 CN2019077036
(87)【国際公開番号】W WO2020177085
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ヤオクン
(72)【発明者】
【氏名】グリーブス、マーティン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ、ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ション、チェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、タオ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、チーイン
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-500679(JP,A)
【文献】特開平03-033193(JP,A)
【文献】米国特許第04968453(US,A)
【文献】特表2017-501252(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第00711484(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M,C08L,C08K,C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤組成物であって、
ヒンダードフェノール、アミン、またはそれらの組み合わせからなる酸化防止剤と、
エステル化ポリアルキレングリコール:
[O(RO)(RO)(C=O)R
(式中、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、ROおよびROは、ブロックまたはランダム分布であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数である)と、を含み、前記酸化防止剤が、前記酸化防止剤および前記エステル化ポリアルキレングリコールの重量に基づいて、少なくとも0.5重量%~20重量%の量で存在し、前記酸化防止剤が、23℃で、少なくとも0.5重量%の量で前記エステル化ポリアルキレングリコールに可溶である、潤滑剤組成物。
【請求項2】
Oが、1,2-ブチレンオキシドから誘導される、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
が、2~8個の炭素原子を有する直鎖アルキルである、請求項1または2のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
【請求項4】
が、8~14個の炭素原子を有する直鎖アルキルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項5】
前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノールからなり、前記ヒンダードフェノールが、1~3個のフェノール環を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項6】
前記酸化防止剤が、23℃で、少なくとも0.75重量%の量で前記エステル化ポリアルキレングリコールに可溶である、請求項1~5のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項7】
前記酸化防止剤の量が、最大で10重量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項8】
前記潤滑剤組成物が、任意の炭化水素基油を含まない、請求項1~7のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項9】
炭化水素潤滑剤組成物であって、
(i)ヒンダードフェノール、アミン、またはそれらの組み合わせからなる酸化防止剤、
(ii)エステル化ポリアルキレングリコール:
[O(RO)(RO)(C=O)R
(式中、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、ROおよびROは、ブロックまたはランダム分布であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数である)、および
(iii)炭化水素基油であって、前記酸化防止剤が、前記潤滑剤組成物の重量に基づいて少なくとも0.1重量%~10重量%の量で存在し、前記酸化防止剤が、23℃で、少なくとも0.5重量%の量で前記エステル化ポリアルキレングリコールに可溶であり、前記炭化水素油が、前記潤滑剤組成物の総重量の少なくとも50重量%の量で組成物中に存在する、炭化水素基油からなる、炭化水素潤滑剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリアルキレングリコール、より具体的には、改善された特性を有する酸化防止剤を含有する修飾されたポリアルキレングリコール組成物、ならびに該ポリアルキレングリコール酸化防止剤組成物を含有する炭化水素油ベースの潤滑剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年装置で使用されている潤滑剤の大部分は、炭化水素基油を使用して製造されている。これは、典型的には、鉱油または合成炭化水素油(ポリアルファオレフィンなど)である。米国石油協会(API)は、炭化水素基油を、それらの粘度指数、飽和レベル、および硫黄レベルに基づいて、グループI、II、III、およびIVの基油に区分した。
【0003】
エンジン潤滑剤などの輸送用潤滑剤は、APIのグループI~IVの基油を用いて配合されることが多い。よりエネルギー効率の高い潤滑剤の開発の研究が続いている。これを達成する1つの方法は、全体的な粘度は低いが、潤滑性(低摩擦)を維持するのに十分な潤滑剤を使用することである。低粘度の潤滑剤は、低粘度のAPIのグループI~IVの炭化水素油などの低粘度の基油を使用することが多い。これらは多くの場合、揮発性が高く、典型的には、粘度指数(VI)も低い。高い粘度指数を有する潤滑剤の必要性が存在する。グループIVの基油(合成ポリアルファオレフィン、PAO)は、最も高いVI値を有するが、高価である。グループIIIの基油(典型的には半合成と呼ばれる)は依然として高価であるが、グループIおよびIIの基油よりも価値が高い。
【0004】
粘度指数は、温度範囲にわたって油の粘度がどの程度変化するかを示す尺度である。これは、ASTM D2270を使用して、40℃および100℃での動粘度に基づく計算から導き出される。より高い粘度指数値は、この温度範囲にわたって粘度の変化が少ないことに対応する。高い粘度指数を有する潤滑剤は、広い温度範囲にわたってより一貫した粘度を維持するために望ましい。油粘度が高くなりすぎた場合、例えば、自動車のエンジンでは、燃料効率が低下する。油粘度が低くなりすぎた場合、過度のエンジンの摩耗が発生し得る。この温度範囲にわたって粘度のわずかな変化のみを示す流体(すなわち、それらは高い粘度指数を有する)が望まれる。
【0005】
粘度指数向上剤は、温度範囲にわたる油粘度の変化を低減させる傾向がある添加剤である。典型的な粘度指数向上剤としては、例えば、ポリアルキルメタクリレートおよびオレフィンコポリマーが挙げられる。粘度指数向上剤は、エンジンオイルに使用される基油の粘度指数を増加させ得るが、残念ながら一方では、低温(例えば、0℃、-10℃または-20℃)でのエンジンオイルの粘度をほぼ必ず大幅に増加させる。低温粘度は、低温環境下でエンジンを始動する場合に考慮することが重要である。エンジンオイルは、エンジン部品を保護するために、摩耗を防ぐのに十分な粘性のある膜を形成することが重要であるが、一方では、エンジンオイルは、油からの過剰な粘性抵抗による大きい摩擦損失を引き起こすため、それほど粘性を有さないことも重要である。したがって、潤滑剤、または低温粘度(例えば、0℃または-20℃)も低減させる添加剤もしくは共基流体を見出すことが非常に望まれる。
【0006】
潤滑剤は、耐用年数を延ばすために、動作条件下でもこれらの特性を維持する必要がある。潤滑剤は、高温動作中に、基油内の低分子量画分の揮発により増粘する場合がある。この揮発性は、ASTM D6375に従ってNOACKの空気揮発性によって得られる。同様に、潤滑剤は、酸化により急激に重合して、バルブの固着および過度の摩耗など、機器の重大な動作上の問題につながる可能性がある、スラッジ、堆積物、ワニスを機器上に形成する可能性がある。典型的には、酸化防止剤は、そのような酸化およびラジカル重合を低減または遅延させるために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
UCON(商標)OSPの商品名で販売されている油溶性ポリアルキレングリコール(OSP)は、アルコールで終結されたポリエーテルである。エチレンオキシド(EO)およびプロピレンオキシド(PO)から誘導される従来のポリアルキレングリコール(PAG)とは異なり、OSPは炭化水素油に可溶である。近年、潤滑剤の大部分は、OSPが添加剤として使用される炭化水素油に基づいている。OSPは、摩擦を改善し、流体が古くなったときの堆積物の形成を制御するのに役立つ。残念ながら、一部の非常に低粘度のOSP(ASTM D445で測定した場合、100℃で約4mm/秒以下の動粘度)は、低い粘度指数値(例えば、粘度指数約120)および高いNOACK空気揮発性を有する。NOACK空気揮発性が改善されたOSP潤滑剤、および炭化水素ベースの潤滑剤基油(特性が改善されたOSP潤滑剤組成物)を提供することが望ましいであろう。
【0008】
本明細書に記載の発明は、エステル化油溶性ポリアルキレングリコール(E-OSP)、およびOSP単独と比較してNOACK空気揮発性を驚くほど改善する酸化防止剤からなる潤滑剤組成物を実現する。同様に、炭化水素基油への添加剤として使用される場合のOSP酸化防止剤組成物は、NOACK空気揮発性も低下させる可能性がある一方で、より高い有用濃度での酸化防止剤の組み込みを可能にする。
【0009】
本発明の第1の態様は、
酸化防止剤と、
エステル化ポリアルキレングリコール:
[O(RO)(RO)(C=O)R
(式中、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、ROおよびROは、ブロックまたはランダム分布であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数である)と、を含み、酸化防止剤が、酸化防止剤およびエステル化ポリアルキレングリコールの重量に基づいて、0.5重量%~20重量%の量で存在し、酸化防止剤が、少なくとも0.5重量%の量でエステル化ポリアルキレングリコールに可溶である、潤滑剤組成物である。潤滑剤調合物は、好ましくは内燃機関で使用される。
【0010】
本開示は、ROが、1,2-ブチレンオキシドから誘導される潤滑剤調合物の実施形態をさらに含む。式IのE-OSPの他の好ましい値は、Rが、1~8個の炭素原子を有する直鎖アルキルであることを含む。好ましくは、Rは、10~14個の炭素原子を有する直鎖アルキルである。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様の潤滑剤組成物および炭化水素基油からなる潤滑剤組成物であり、酸化防止剤は、潤滑剤組成物の重量に基づいて少なくとも0.1重量%~10重量%の量で存在し、酸化防止剤は、少なくとも0.5重量%の量でエステル化ポリアルキレングリコールに可溶であり、炭化水素油は、潤滑剤組成物の総重量の少なくとも50重量%の量で組成物中に存在する。
【0012】
本発明の第3の態様は、
(i)最初に、酸化防止剤を次の構造:
[O(RO)(RO)(C=O)R
(式中、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、ROおよびROは、ブロックまたはランダム分布であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数である)で表されるエステル化ポリアルキレングリコールに溶解して、酸化防止剤およびエステル化ポリアルキレングリコールの溶液を形成することと、次いで、
(ii)基剤の炭化水素油を、酸化防止剤およびエステル化ポリアルキレングリコールの溶液と混合して、潤滑剤組成物を形成することであって、該潤滑剤組成物が、均質な溶液である、形成することと、を含む、潤滑剤を形成する方法である。
【0013】
本開示の上記概要は、開示された各実施形態または本開示のすべての実装形態を説明することを意図するものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示するものである。本出願全体にわたるいくつかの場所では、例のリストを通じて指針が提供され、これらの例は、様々な組み合わせで使用することができる。どの場合も、列挙されたリストは、代表的なグループとしてのみ機能し、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、酸化防止剤が本質的にラジカル形成を防止して高分子量スラッジをもたらす添加剤であるにもかかわらず、驚くべきことにNOACK空気揮発性を実質的に改善する、E-OSPおよび酸化防止剤からなる潤滑剤を提供する。これらの驚くべき予想外の特性は、エステル化OSPの結果であると考えられ、これは、酸化防止剤と十分に溶媒和し、何らかの方法でNOACKの揮発性を低減させるように思われる。加えて、酸化防止剤を含む溶液中のエステル化OSPは、炭化水素基油と混合した場合でも同様にNOACK揮発性の改善を示し、酸化防止剤の基油へのより多くの添加を可能にする。本開示のE-OSP酸化防止剤は潤滑剤自体として特に有用であるが、それらは、基油の添加剤(全組成物の重量に基づいて最大50重量%)として添加されて、内燃機関において有用である潤滑剤調合物を形成することもできる。
【0015】
潤滑剤組成物は、以下の式Iのエステル化油溶性ポリアルキレングリコール(E-OSP)からなる:
[O(RO)(RO)(C=O)R 式I
は、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールである。好ましくは、Rは、10~14個の炭素原子を有する直鎖アルキルである。ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、式IのROの得られる構造は、[-CHCH(CH)-O-]または[-CH(CH)CH-O-]のいずれかであり得る。ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、式IのROの得られる構造は、ROが、1,2-ブチレンオキシドから誘導される場合、[-CHCH(C)-O-]または[-CH(C)CH-O-]のいずれかであり得る。ROが、2,3ブチレンオキシドから誘導される場合、オキシブチレン部分は、[-OCH(CH)CH(CH)-]となる。様々な実施形態について、ROおよびROは、式Iにおいてブロックまたはランダム分布である。Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールである。好ましくは、Rは、1~8個の炭素原子を有する直鎖アルキルである。nおよびmの値は、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きい。pの値は、1~4の整数である。
【0016】
本開示のE-OSPは、様々な潤滑剤の用途に望ましい1つ以上の特性を有し得る。例えば、粘度指数は、潤滑剤の粘度が温度とともにどのように変化するかを示す尺度である。潤滑剤について、比較的低い粘度指数値は、比較的高い粘度指数値を有する潤滑剤と比較して、高温での潤滑剤の粘度のより大きな低減を示し得る。したがって、多くの用途について、比較的高い粘度指数値が有益であり、その結果、潤滑剤は、低温から高温に移行する極端な温度での粘度変化があまり目立たず、一般に安定した粘度を維持する。本明細書に開示されるE-OSPは、いくつかの他の潤滑剤と比較して、より高い粘度指数値を提供し得る。
【0017】
本明細書に開示されるE-OSPはまた、40℃で25センチストークス(cSt)未満の動粘度、100℃で6cSt以下の動粘度を有するため(両動粘度は、ASTM D7042に従って測定された)、低粘度を有する。したがって、E-OSPは、低粘度潤滑剤として、および/または様々な低粘度潤滑剤用途に有益に利用され得る。E-OSPは、ASTM D7042によって決定されると、40℃で下限である8.0または9.0cSt~上限である24.5または24.0cStの動粘度を有し得る。E-OSPは、ASTM D7042によって決定されると、100℃で下限である1.0または2.5cSt~上限である6.0または5.5cStの動粘度を有し得る。上記のように、本明細書に開示されるE-OSPは、同様の非エステル化油溶性ポリアルキレングリコールなどの他のいくつかの潤滑剤と比較して、低温で比較的低い粘度を有益に提供し得る。加えて、0℃以下などの低温で比較的低い粘度、例えば、動粘度および/または動的粘度を有する低粘度潤滑剤は、自動車のエンジンの周りに潤滑剤を注入するときなど、より低いエネルギー損失の提供に有益に役立ち得る。本明細書に開示されるエステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、他のいくつかの潤滑剤と比較して、低温で比較的低い粘度、例えば、動粘度および/または動的粘度を提供し得る。
【0018】
式IのE-OSPは、油溶性ポリアルキレングリコールと酸との反応生成物である。鉱油基油とは異なり、油溶性ポリアルキレングリコールは、ポリマー主鎖中の酸素の有意な存在を有する。本開示の実施形態は、油溶性ポリアルキレングリコールが、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドのアルコール開始コポリマーであり、そこで、ブチレンオキシドから誘導される単位が、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドから誘導される単位の合計に基づいて、50重量%~95重量%であることを提供する。50重量%~95重量%のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、油溶性ポリアルキレングリコールは、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドから誘導される単位の合計に基づいて、下限である50、55、または60重量パーセント~上限である95、90、または85重量パーセントのブチレンオキシドから誘導される単位を有し得る。様々な実施形態について、プロピレンオキシドは、1,2-プロピレンオキシドおよび/または1,3-プロピレンオキシドであり得る。様々な実施形態について、ブチレンオキシドは、1,2-ブチレンオキシドまたは2,3-ブチレンオキシドから選択され得る。好ましくは、1,2-ブチレンオキシドは、油溶性ポリアルキレングリコールを形成するのに使用される。
【0019】
油溶性ポリアルキレングリコールのアルコール開始剤は、モノオール、ジオール、トリオール、テトロール、またはそれらの組み合わせであり得る。アルコール開始剤の例としては、メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、およびドデカノールなどのモノオールが挙げられるが、これらに限定されない。ジオールの例は、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、および1,4ブタンジオールである。トリオールの例は、グリセロールおよびトリメチロールプロパンである。テトロールの例は、ペンタエリスリトールである。モノオール、ジオール、トリオール、および/またはテトロールの組み合わせが使用され得る。アルコール開始剤は、1~30個の炭素原子を含み得る。1~30個の炭素原子のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、アルコール開始剤は、下限である1、3、または5個の炭素原子~上限である30、25、または20個の炭素原子を有し得る。
【0020】
油溶性ポリアルキレングリコールは、既知のプロセスおよび既知の条件によって調製され得る。油溶性ポリアルキレングリコールは、商業的に入手され得る。市販の油溶性ポリアルキレングリコールの例としては、両方ともDow Chemical Companyから入手可能である、UCON(商標)OSP-12およびUCON(商標)OSP-18などの商品名UCON(商標)下の油溶性ポリアルキレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
油溶性ポリアルキレングリコールと反応して、本明細書に開示されるエステル化油溶性ポリアルキレングリコールを形成する酸は、カルボン酸であり得る。このようなカルボン酸の例としては、酢酸、プロパン酸、ペンタン酸、例えば、n-ペンタン酸、吉草酸、例えば、イソ吉草酸、カプリル酸、ドデカン酸、それらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書に開示されるE-OSPを形成するために、油溶性ポリアルキレングリコール10モル:酸1モル~油溶性ポリアルキレングリコール1モル:酸10モルのモル比で、油溶性ポリアルキレングリコールと酸とが反応し得る。10:1の油溶性ポリアルキレングリコールのモル対酸のモル~1:10の油溶性ポリアルキレングリコールのモル対酸のモルのすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、油溶性ポリアルキレングリコール酸と酸は、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、または1:10の油溶性ポリアルキレングリコールのモル対酸のモルのモル比で反応し得る。
【0023】
E-OSPは、既知のプロセスおよび既知の条件によって調製され得る。例えば、本明細書に開示されるエステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、エステル化プロセス、例えば、フィッシャーエステル化(Fisher Esterification)によって形成され得る。一般に、エステル化プロセスのための反応は、大気圧(101,325Pa)、60~170℃の温度で、1~10時間行われ得る。加えて、他の既知の成分の中でも、酸触媒、中和剤、および/または塩吸収剤などの既知の成分が、エステル化反応に利用され得る。好ましい酸触媒の例は、中でも、p-トルエンスルホン酸である。中和剤の例は、中でも、炭酸ナトリウムおよび水酸化カリウムである。塩吸収剤の例は、中でも、ケイ酸マグネシウムである。
【0024】
上述のように、本開示のE-OSPは、式Iの構造を有する。
[O(RO)(RO)(C=O)R 式I
は、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールである。好ましくは、Rは、10~14個の炭素原子を有する直鎖アルキルである。Rは、本明細書で論じられる油溶性ポリアルキレングリコールの重合中に使用されるアルコール開始剤の残余に対応する。本明細書で使用される場合、「アルキル基」とは、飽和一価炭化水素基を指す。本明細書で使用される場合、「アリール基」とは、単核または多核芳香族炭化水素基を指し、アリール基は、アルキル置換基を含み得る。存在する場合には、アルキル置換基を含む、Rのアリール基は、6~30個の炭素を有し得る。
【0025】
Oは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、式IのROの得られる構造は、[-CHCH(CH)-O-]または[-CH(CH)CH-O-]のいずれかであり得る。ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、式IのROの得られる構造は、ROが、1,2-ブチレンオキシドから誘導される場合、[-CHCH(C)-O-]または[-CH(C)CH-O-]であり得る。様々な実施形態について、ROおよびROは、式Iにおいてブロックまたはランダム分布である。
【0026】
は、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールである。好ましくは、Rは、1~8個の炭素原子を有する直鎖アルキルである。本明細書で使用される場合、「アルキル基」とは、飽和一価炭化水素基を指す。本明細書で使用される場合、「アリール基」とは、単核または多核芳香族炭化水素基を指し、アリール基は、アルキル置換基を含み得る。存在する場合には、アルキル置換基を含む、Rのアリール基は、6~18個の炭素を有し得る。
【0027】
nおよびmの値は、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きい。好ましくは、nおよびmは、それぞれ独立して、5~10の範囲の整数である。別の好ましい実施形態では、nおよびmは、それぞれ独立して、3~5の範囲の整数である。pの値は、1~4の整数である。
【0028】
本明細書に開示されるE-OSPは、ASTM D2270に従って決定された130~200の粘度指数を有し得る。130~200のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、E-OSPは、下限である130または135~上限である200または195の粘度指数を有し得る。この改善された粘度指数は、類似の非エステル化油溶性ポリアルキレングリコールなどの他のいくつかの潤滑剤と比較して、粘度指数を上げるための以前のプロセス、すなわち、アルキル化キャッピングプロセスよりも有益であり、なぜなら、エステル化は、より単純なプロセスを介して、かつ/または低コストで達成され得るためである。
【0029】
潤滑剤組成物はまた、酸化防止剤からなる。酸化防止剤が室温(約23℃)で少なくとも約0.5重量%の任意の量でE-OSPに少なくとも可溶である限り、酸化防止剤は、任意かつ有用であり得る。好ましくは、酸化防止剤は、少なくとも0.75%、1%、1.5%、または2%の量で可溶であり、最大20%の量で可溶であり得るが、一般に、最大で約10%または5%の量で存在する。有用な酸化防止剤は、ヒンダードフェノール、アミン(特に芳香族アミン)、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、ホスファイト、セレニド、ジチオカルバメート、またはそれらの組み合わせから構成される化合物である。酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-第三級-ブチル-4-メチル-フェノール、4,4’メチレンビス(2,6-第三級-ブチルフェノール)、および4,4’チオビス(2-メチル-6-第三級-ブチルフェノール)などのヒンダードフェノール、ならびにN-フェニル-アルファ-ナフチルアミン、テトラメチルジアミノジフェニルメタン、アントラニル酸、フェノチアジン、およびフェノチアジンのアルキル化誘導体などのアミンが挙げられる。酸化防止剤のさらなる例は、米国特許第1,988,299号、同第2,000,045号、同第2,202,877号、同第2,265,582号、同第2,868,730号、同第3,032,502号、同第3,038,858号、同第3,038,859号、同第3,043,775号、同第3,065,178号、および同第3,132,103号、ならびに英国特許第1,030,399号、およびWO1987005320に記載されている。有用であり得る特定の酸化防止剤には、BASFのIRGANOXおよびIRGAFOS、ならびにVanderbilt ChemicalsのVANLUBEの商品名で当技術分野で知られているものが含まれる。特定の例としては、IRGANOX L101、L135、L109、L06、およびVANLUBE 961、ならびにIRGAFOS168酸化防止剤が挙げられる。
【0030】
ヒンダードフェノールを含有する酸化防止剤を使用する場合、一般に、分子内に存在するヒンダードフェノール部分の量は、4以下、好ましくは1~3であるべきである。フェノール部分が多すぎると、一般に溶解度が低下し、NOACK揮発性の低減は達成されない。望ましくは、酸化防止剤は、ヒンダードフェノール、アミン(例えば、アミン系)、またはそれらの組み合わせである。場合によっては、4つ以上のヒンダードフェノール部分を有するヒンダードフェノール酸化剤を、4つ未満のヒンダードフェノールを有するヒンダードフェノールまたはアミン系酸化防止剤と組み合わせて、改善された総溶解度を実現し、場合によっては、E-OSPにおけるより低い濃度の酸化防止剤でさえNOACK揮発性をさらに改善することができる。
【0031】
E-OSPおよび酸化防止剤の潤滑剤組成物を作製するために、酸化防止剤はE-OSPに溶解される。溶解は、周囲温度などの任意の有用な温度で実施することができるが、溶解を加速するために加熱することによって促進することができる。加熱は、一般に、約30℃、40℃、または50℃~約200℃、150℃、または100℃など、酸化防止剤またはE-OSPのいずれかの任意の顕著な揮発性または分解が発生する温度よりも低い温度までである。溶解は、2つの成分を一緒に混合する任意の既知の方法または装置を使用して達成することができる。
【0032】
E-OSPおよび酸化防止剤の潤滑剤組成物は、E-OSPが基油に油溶性(混和性)である炭化水素潤滑剤組成物を作製するための基剤の炭化水素油への添加剤として使用され得る。本開示の潤滑剤調合物は、50超~99.9重量パーセント(重量%)の基油と、0.01重量%~最大50重量%のE-OSPおよび酸化防止剤組成物とを含み得、重量%は、炭化水素潤滑剤組成物の総重量に基づく。好ましい実施形態では、炭化水素潤滑剤配合物は、80重量%~99重量%の炭化水素基油と、1重量%~20重量%のE-OSPおよび酸化防止剤とを含む。
【0033】
潤滑剤調合物の炭化水素基油は、米国石油協会(API)のグループIの炭化水素基油、APIのグループIIの炭化水素基油、APIのグループIIIの炭化水素基油、APIのグループIVの炭化水素基油、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、炭化水素潤滑剤組成物の基油は、APIのグループIIIまたはIVの炭化水素基油である。APIのグループI~IVの炭化水素油の組成は以下の通りである。グループIIおよびグループIIIの炭化水素油は、典型的には、過酷な水素化工程を使用して従来のグループIの供給原料から調製されて、芳香族化合物、硫黄、窒素の含有量を低減させ、続いて、脱ロウ、水素化仕上げ、抽出、および/または蒸留工程を行って、完成した基油を生成する。グループIIおよびIIIの基原料は、硫黄、窒素、および芳香族化合物の含有量が非常に低いという点で、従来の溶媒精製されたグループIの基原料とは異なる。結果として、これらの基油は、従来の溶媒精製された基原料とは組成的に非常に異なる。APIは、これらの異なる基原料の種類を以下のように分類した。グループI、>0.03重量%の硫黄、および/または<90体積%の飽和脂肪酸、80~120の粘度指数、グループII、≦0.03重量%の硫黄、および≧90体積%の飽和脂肪酸、80~120の粘度指数、グループIII、≦0.03重量%の硫黄、および≧90体積%の飽和脂肪酸、>120の粘度指数。グループIVは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。水素化処理された基原料および触媒的に脱ロウされた基原料は、硫黄および芳香族化合物の低い含有量のため、一般にグループIIおよびグループIIIの区分に分類される。
【0034】
炭化水素油に添加された場合のE-OSP酸化防止剤組成物は、NOACK空気揮発性を改善するのに役立つだけでなく、E-OSPを含まない炭化水素潤滑剤組成物内により高い濃度の酸化防止剤を組み込む(可溶化する)能力などの他の特性も改善する。同様に、E-OSP酸化防止剤組成物は、ASTM D7042に従って測定される場合、40℃で少なくとも8cStの動粘度を有する基油の粘度指数を改善すると同時に、E-OSP酸化防止剤組成物を炭化水素基油にブレンドすることにより、潤滑剤の低温(0℃または-20℃)粘度を低下させ得る。言い換えれば、炭化水素基油にE-OSP酸化防止剤組成物を含めることは、炭化水素基油単独と比較して、粘度指数の望ましい改善および低温粘度の好ましい低下をもたらす可能性がある。
【0035】
本開示はまた、例えば、内燃機関に使用するための炭化水素潤滑剤組成物の形成方法も提供する。この方法は、本明細書に記載されるように炭化水素基油を提供することと、炭化水素基油を、既に形成されたE-OSPおよび酸化防止剤組成物と混合すること、すなわち、酸化防止剤が最初にE-OSPに溶解され、次に炭化水素基油に混合されて、内燃機関に特に有用であり得る炭化水素潤滑剤組成物を形成することとを含む。
【0036】
E-OSPおよび酸化防止剤の潤滑剤組成物、ならびに炭化水素潤滑剤組成物はまた、鉄腐食防止剤、黄色金属不動態化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、消泡剤、解乳化剤、染料などの1つ以上の添加剤も有利に含有し得る。
【実施例
【0037】
略語
米国試験材料協会(ASTM);粘度指数(VI);グラム(g);摂氏(℃);モル(mol);比較例(Comp.Ex.);発明例(Ex);動粘度(KV)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸ナトリウム(NaCO)、およびp-トルエンスルホン酸(PTSA)。
【0038】
試験方法
本明細書に提供される実施例および比較例の特性を測定するために次の方法を使用した。ASTM D7042に従ってKVを測定した(KV40は40℃での動粘度、KV100は100℃での動粘度、KV-20は-20℃での動粘度)。ASTM D97に従って流動点を測定した。ASTM D2270に従ってVIを計算する。
【0039】
材料
【表1】
【0040】
次の化合物は、Sinopharm Chemical Reagent Co.Ltdから入手した:PTSA、NaCO(中和剤)、KOH(中和剤)、ケイ酸マグネシウム(塩吸収剤)。次の化合物は、Energy Chemicalから入手した:n-ペンタン酸(酸)
【0041】
OSP-エステル(E-OSP)の合成
n-ペンタン酸によるOSP18のエステル化(OSP18-C5)
UCON(商標)OSP-18(350g、0.749mol)およびn-ペンタン酸(76.5g、0.749mol)をトルエン(500mL)中で室温(23℃)で撹拌して、第1の混合物を形成した。PTSA(1.42g、0.00749mol)を撹拌しながら第1の混合物に添加して、第2の混合物を形成した。第2の混合物を165℃で一晩中ディーン・スタークで還流させて、13.0mLの水を除去して、第3の混合物を形成した。第3の混合物を室温に冷却し、次にNaCO(50g)を添加して、第4の混合物を形成した。第4の混合物を一晩撹拌して、PTSAを中和した。ケイ酸マグネシウム(10g)を第4の混合物に添加して、第5の混合物を形成し、60℃で3時間撹拌して、生成された塩を第5の混合物中に吸収した。第5の混合物を濾紙で濾過した。濾過後、残留溶媒を真空蒸留によって除去して、濃黄色の液体(330g、収率=80%、モルキャッピング率=98%)を得た。
【0042】
n-ペンタン酸によるOSP12のエステル化(OSP12-C5)
UCON(商標)OSP-12(374g、1mol)およびn-ペンタン酸(102g、1mol)をトルエン(500mL)中で混合し、室温(23℃)で撹拌して、第1の混合物を形成した。PTSA(1.90g、0.001mol)を撹拌しながら第1の混合物に添加して、第2の混合物を形成した。第2の混合物を135℃で一晩中ディーン・スタークで還流させて、18.0mLの水を除去して、第3の混合物を形成した。第3の混合物を室温に冷却し、次にKOH(1.12g、0.002mol)を添加して、第4の混合物を形成した。第4の混合物を一晩撹拌して、PTSAを中和した。ケイ酸マグネシウム(10g)を第4の混合物に添加して、第5の混合物を形成し、60℃で3時間撹拌して、生成された塩を第5の混合物中に吸収した。第5の混合物を濾紙で濾過した。濾過後、残留溶媒を真空蒸留によって除去して、淡黄色の液体(388g、収率=84%、モルキャッピング率=94%)を得た。
【0043】
調合物の調製
表2~4に特定されるように、調合物の各成分を20mLガラスビーカーに添加して、80℃で30分間、3000rpmで攪拌して10mLの試料を形成することによって調合物を調製した。得られた各調合物は、透明で均質であった。表2の酸化防止剤をE-OSPに添加するたびに、NOACK揮発性はその溶解限度まで大幅に改善された。
【0044】
表3は、基剤の炭化水素油にE-OSPまたは酸化防止剤を添加すると、NOACK揮発性が増すことを示す。驚くべきことに、E-OSPと酸化防止剤との組み合わせは、炭化水素基油への個々の添加と比較して、より低いNOACK揮発性を実現する(試料C1、C2、C3と、比較例C、D、およびE、ならびにD1、D2、およびD3と、比較例F、G、およびHを参照されたい)。同様に、E-OSPと酸化防止剤との組み合わせにより、炭化水素基油に酸化防止剤を組み込むことができ、さもなければ、単独では炭化水素基油に不溶であろう(例えば、D6および比較例Jを参照されたい)。表4は、酸化防止剤の組み合わせが炭化水素油中のE-OSPとともに用いることができ、炭化水素油に単独で添加した場合のみよりも高いレベルで酸化防止剤を組み込むことができることを示す(試料D17および比較例Iを参照されたい)。
本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
潤滑剤組成物であって、
酸化防止剤と、
エステル化ポリアルキレングリコール:
[O(R O) (R O) (C=O)R
(式中、R は、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、R Oは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、R Oは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、R OおよびR Oは、ブロックまたはランダム分布であり、R は、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数である)と、を含み、前記酸化防止剤が、前記酸化防止剤および前記エステル化ポリアルキレングリコールの重量に基づいて、少なくとも0.5重量%~20重量%の量で存在し、前記酸化防止剤が、少なくとも0.5重量%の量で前記エステル化ポリアルキレングリコールに可溶である、潤滑剤組成物。
[2]
Oが、1,2-ブチレンオキシドから誘導される、[1]に記載の潤滑剤組成物。
[3]
が、2~8個の炭素原子を有する直鎖アルキルである、[1]または[2]のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
[4]
が、8~14個の炭素原子を有する直鎖アルキルである、[1]~[3]のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
[5]
前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール、アミン、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、ホスファイト、セレニド、ジチオカルバメート、またはそれらの組み合わせからなる、[1]~[4]のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
[6]
前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール、アミン、スルフィド、ホスファイト、またはそれらの組み合わせからなる、[1]~[5]のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
[7]
前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール、アミン、またはそれらの組み合わせからなる、[1]~[6]のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
[8]
前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノールからなり、前記ヒンダードフェノールが、1~3個のフェノール環を有する、[1]~[7]のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
[9]
前記酸化防止剤が、少なくとも0.75重量%の量で前記エステル化ポリアルキレングリコールに可溶である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
[10]
前記酸化防止剤の量が、最大で10重量%である、[1]~[9]のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
[11]
前記潤滑剤組成物が、任意の炭化水素基油を含まない、[1]~[10]のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
[12]
炭化水素潤滑剤組成物であって、
(i)酸化防止剤、
(ii)エステル化ポリアルキレングリコール:
[O(R O) (R O) (C=O)R
(式中、R は、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、R Oは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、R Oは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、R OおよびR Oは、ブロックまたはランダム分布であり、R は、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数である)、および
(iii)炭化水素基油であって、前記酸化防止剤が、前記潤滑剤組成物の重量に基づいて少なくとも0.1重量%~10重量%の量で存在し、前記酸化防止剤が、少なくとも0.5重量%の量で前記エステル化ポリアルキレングリコールに可溶であり、前記炭化水素油が、前記潤滑剤組成物の総重量の少なくとも50重量%の量で組成物中に存在する、炭化水素基油からなる、炭化水素潤滑剤組成物。
[13]
前記酸化防止剤の溶解度が、前記エステル化ポリアルキレングリコールを含まない炭化水素基油の前記酸化防止剤の溶解度と比較して、前記潤滑剤組成物において重量でより大きい、[12]に記載の炭化水素潤滑剤組成物。
[14]
前記炭化水素基油が、米国石油協会(API)のグループIの炭化水素基油、APIのグループIIの炭化水素基油、APIのグループIIIの炭化水素基油、APIのグループIVの炭化水素基油、またはそれらの組み合わせから選択される、[12]または[13]に記載の炭化水素潤滑剤組成物。
[15]
前記基油が、APIのグループIIIまたはAPIのグループIVの炭化水素基油である、[12]~[14]のいずれか一項に記載の炭化水素潤滑剤組成物。
[16]
前記エステル化されたポリアルキレングリコールが、前記潤滑剤組成物の1重量%~30重量%の量で存在する、[12]~[15]のいずれか一項に記載の炭化水素潤滑剤組成物。
[17]
前記酸化防止剤が、前記潤滑剤組成物の少なくとも0.25重量%の量で存在する、[12]~[15]のいずれか一項に記載の炭化水素潤滑剤組成物。
[18]
炭化水素潤滑剤組成物を形成する方法であって、
(i)最初に、酸化防止剤を次の構造:
[O(R O) (R O) (C=O)R
(式中、R は、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、R Oは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、R Oは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、R OおよびR Oは、ブロックまたはランダム分布であり、R は、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数である)で表されるエステル化ポリアルキレングリコールに溶解して、前記酸化防止剤およびエステル化ポリアルキレングリコールの溶液を形成することと、次いで、
(ii)基剤の炭化水素油を、前記酸化防止剤およびエステル化ポリアルキレングリコールの溶液と混合して、潤滑剤組成物を形成することであって、前記炭化水素潤滑剤組成物が、均質な溶液である、形成することと、を含む、方法。
[19]
前記炭化水素潤滑剤組成物中に存在する前記酸化防止剤の量が、前記エステル化ポリアルキレングリコールを含まない前記基剤の炭化水素油に可溶である量よりも多い、[18]に記載の方法。
[20]
nおよびmが、それぞれ独立して、2~6の範囲の整数である、[18]または[19]のいずれかに記載の方法。
【0045】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0046】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0047】
【表10】
【表11】