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特許7401559イムノアッセイにおけるポリハプテン試薬の不十分な送達に起因する異常な結果を検出する方法
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  • 特許-イムノアッセイにおけるポリハプテン試薬の不十分な送達に起因する異常な結果を検出する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】イムノアッセイにおけるポリハプテン試薬の不十分な送達に起因する異常な結果を検出する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/536 20060101AFI20231212BHJP
   G01N 33/72 20060101ALI20231212BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G01N33/536 F
G01N33/72 A
G01N33/53 D
G01N33/53 C
G01N33/53 B
G01N33/53 G
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021569036
(86)(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 US2020016371
(87)【国際公開番号】W WO2020236233
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】62/850,218
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】エイミー・テイラー
(72)【発明者】
【氏名】ティエ・ウェイ
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-308122(JP,A)
【文献】特表2015-515005(JP,A)
【文献】特開2003-329551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0070658(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53,33/536,33/72,
G01N 21/27,21/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イムノアッセイにおいて用いられるポリハプテン試薬の不十分な送達に起因する異常な結果を検出する方法であって、
(A)反応キュベット内で、標的分析物を含有することが疑われる生体サンプルと標的分析物特異的結合パートナーとを反応させ、それにより可溶性の分析物/特異的結合パートナー複合体を形成する工程と、
(B)ポリハプテン試薬を前記反応キュベットに添加する工程であって、前記ポリハプテン試薬が過剰な標的分析物特異的結合パートナーと反応して、不溶性のポリハプテン/標的分析物特異的結合パートナー複合体を形成する、前記工程と、
(C)前記反応キュベットを光で照射する工程と、
(D)前記ポリハプテン試薬の添加後の複数の時点で少なくとも3つの波長で吸光度値を測定する工程であって、第1の波長が前記不溶性のポリハプテン/標的分析物特異的結合パートナー複合体を比濁法で検出し、第2の波長がタンパク質を検出し、第3の波長がブランクとして機能する、前記工程と、
(E)前記ポリハプテン試薬の添加後の2つの時点で前記第2および第3の波長で測定された吸光度値の回帰を用いて、前記ポリハプテン試薬の送達時のその吸光度値を推定する工程と、
(F)前記ポリハプテン試薬の送達時のその推定吸光度値が、その予測値と確立されたフラグ定数を超えて異なる場合、イムノアッセイで得られた前記標的分析物の濃度値に、許容できないとして、フラグを立てる工程と
を含む、前記方法。
【請求項2】
標的分析物が、糖化ヘモグロビン(HbA1c)、アルブミン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、フェリチン、成長ホルモン、プロラクチン、チログロブリン(Tg)、C-反応性タンパク質(CRP)、リウマチ因子(RF)、ゲンタマイシン、トブラマイシン、CRP、ジゴキシン、アミカシン、カフェイン、カルバマゼピン、ジギトキシン、ジソピラミド、エトスクサミド、リドカイン、リチウムメトトレキサート、NAPA、フェノバルビタール、フェニトイン、プリミドン、プロカインアミド、キニジン、テオフィリン、トブラマイシン、バルプロ酸およびバンコマイシンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
標的分析物特異的結合パートナーが、標的分析物に対する抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
標的分析物が、糖化ヘモグロビン(HbA1c)であり、標的分析物特異的結合パートナーが、抗HbA1c抗体であり、ポリハプテン試薬が、複数のHbA1cエピトープを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1の波長が300nm~650nmの範囲であり、第2の波長が190nm~300nmの範囲であり、第3の波長が650nm~850nmの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1の波長が340nmであり、第2の波長が293nmであり、第3の波長が700nmである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(E)において、ポリハプテン試薬の添加後の2つの時点のうちの第1の時点が、前記ポリハプテン試薬の添加の7.2秒後であり、前記2つの時点のうちの第2の時点が、前記第1の時点の7.2秒後である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
生体サンプルが、尿、全血またはその任意の部分、全血細胞または溶解血液細胞、唾液、痰、脳脊髄液、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、涙液、粘液、膀胱洗浄液、精液およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
糖化ヘモグロビン(HbA1c)イムノアッセイにおいて用いられるポリハプテン試薬の不十分な送達に起因する異常な結果を検出する方法であって、
(A)反応キュベット内で、HbA1cを含む標的分析物を含有することが疑われる生体サンプルと抗HbA1c抗体とを反応させ、それにより可溶性のHbA1c-抗体複合体を形成する工程と、
(B)ポリハプテン試薬を前記反応キュベットに添加する工程であって、前記ポリハプテン試薬が過剰な抗HbA1c抗体と反応して、不溶性のポリハプテン/抗HbA1c抗体複合体を形成する、前記工程と、
(C)前記反応キュベットを光で照射する工程と、
(D)前記ポリハプテン試薬の添加後の複数の時点で少なくとも3つの波長で吸光度値を測定する工程であって、第1の波長が前記不溶性のポリハプテン/抗HbA1c抗体複合体を比濁法で検出し、第2の波長がタンパク質を検出し、第3の波長がブランクとして機能する、前記工程と、
(E)前記ポリハプテン試薬の添加後の2つの時点で前記第2および第3の波長で測定された吸光度値の回帰を用いて、前記ポリハプテン試薬の送達時のその吸光度値を推定する工程と、
(F)前記ポリハプテン試薬の送達時のその推定吸光度値が、その予測値と確立されたフラグ定数を超えて異なる場合、イムノアッセイで得られた前記標的分析物の濃度値に、許容できないとして、フラグを立てる工程
とを含む、前記方法。
【請求項10】
第1の波長が300nm~650nmの範囲であり、第2の波長が190nm~300nmの範囲であり、第3の波長が650nm~850nmの範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第1の波長が340nmであり、第2の波長が293nmであり、第3の波長が700nmである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(E)において、ポリハプテン試薬の添加後の2つの時点のうちの第1の時点が、前記ポリハプテン試薬の添加の7.2秒後であり、前記2つの時点のうちの第2の時点が、前記第1の時点の7.2秒後である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
生体サンプルが、尿、全血またはその任意の部分、全血細胞または溶解血液細胞、唾液、痰、脳脊髄液、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、涙液、粘液、膀胱洗浄液、精液およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
糖化ヘモグロビン(HbA1c)イムノアッセイにおいて用いられるポリハプテン試薬の不十分な送達に起因する異常な結果を検出する方法であって、
(A)反応キュベット内で、HbA1cを含む標的分析物を含有することが疑われる生体サンプルと抗HbA1c抗体とを反応させ、それにより可溶性のHbA1c-抗体複合体を形成する工程と、
(B)ポリハプテン試薬を前記反応キュベットに添加する工程であって、前記ポリハプテン試薬が過剰な抗HbA1c抗体と反応して、不溶性のポリハプテン/抗HbA1c抗体複合体を形成する、前記工程と、
(C)前記反応キュベットを光で照射する工程と、
(D)前記ポリハプテン試薬の添加後の複数の時点で少なくとも3つの波長で吸光度値を測定する工程であって、
(i)第1の波長が前記不溶性のポリハプテン/抗HbA1c抗体複合体を比濁法で検出し、300nm~650nmの範囲であり、
(ii)第2の波長がタンパク質を検出し、190nm~300nmの範囲であり、
(iii)第3の波長がブランクとして機能し、650nm~850nmの範囲である、前記工程と、
(E)前記ポリハプテン試薬の添加後の2つの時点で前記第2および第3の波長で測定された吸光度値の回帰を用いて、前記ポリハプテン試薬の送達時のその吸光度値を推定する工程と、
(F)前記ポリハプテン試薬の送達時のその推定吸光度値が、その予測値と確立されたフラグ定数を超えて異なる場合、イムノアッセイで得られた前記標的分析物の濃度値に、許容できないとして、フラグを立てる工程
とを含む、前記方法。
【請求項15】
第1の波長が340nmであり、第2の波長が293nmであり、第3の波長が700nmである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(E)において、ポリハプテン試薬の添加後の2つの時点のうちの第1の時点が、前記ポリハプテン試薬の添加の7.2秒後であり、前記2つの時点のうちの第2の時点が、前記第1の時点の7.2秒後である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
生体サンプルが、尿、全血またはその任意の部分、全血細胞または溶解血液細胞、唾液、痰、脳脊髄液、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、涙液、粘液、膀胱洗浄液、精液およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照/参考による組込みの声明
該当なし
【0002】
連邦支援の研究または開発に関する声明
該当なし
【背景技術】
【0003】
血糖を正確にコントロールすることで、真性糖尿病に関連する罹患率および死亡率の多くを改善できる。そのため、ヘモグロビンの物理的および化学的性質に基づき、またはその特異的抗体認識エピトープに基づき、ヘモグロビンに対する多くの様々なアッセイが開発されてきた。臨床研究では、HbA1c結果が、意思決定、患者コンプライアンスおよび転帰を改善することが示された(非特許文献1);および非特許文献2)。
【0004】
イムノアッセイは、臨床検査設定で用いられる現在最も一般的なタイプのヘモグロビンアッセイである。これらのイムノアッセイ法は、ヘモグロビンのエピトープ、および特定の事例では糖化ヘモグロビン(HbA1c)のエピトープ、例えば(これに限定されないが)そのN末端糖化アミノ酸の少なくとも一部を認識する抗体を利用する。例えば、分析物であるHbA1cの比濁阻害イムノアッセイ(TINIA)は、R1試薬(即ち、抗HbA1c抗体)およびR2ポリハプテン試薬(即ち、遊離抗体との凝集を引き起こす複数のHbA1cエピトープを含有する合成分子)を利用する。HbA1c分析物が存在しない場合、ポリハプテンは、遊離抗HbA1c抗体と反応して、不溶性の抗体-ポリハプテン複合体を形成し、これにより、サンプルを光源で照明したとき濁りおよび光散乱が生じる。標的分析物であるHbA1cが、生体サンプル(例えばこれに限定されないが全血サンプル)中に存在する場合、HbA1c分析物が、抗HbA1c抗体と反応し、可溶性の分析物-抗体複合体を形成し、これにより、観察される光散乱量が減少する。反応速度は、比濁法で測定でき、生体サンプル中に存在するHbA1c分析物の量と反比例する。
【0005】
このイムノアッセイの主な問題は、(これに限定されないが)短期間の送達または気泡の崩壊等のR2ポリハプテン試薬の送達の問題を含み、これは報告されるべき異常な結果をもたらす。R2は、複数の臨床化学分析装置、例えば(これに限定されないが)DIMENSION VISTA(登録商標)Systems(Siemens Healthcare Diagnostics社、Tarrytown, NY)で利用可能な波長293nmに吸収を有するポリペプチド溶液であるが、これらのタイプのシステムでポリハプテン試薬の添加直後に利用可能な読取り時間が存在しない。更に、読取り時間が利用可能な場合でも、送達時に測定された吸光度を使用すると、これが、混合、および反応混合物中に既に存在するサンプルおよび抗体の存在による凝集反応による干渉信号を含有するため、R2ポリハプテン試薬の送達が正確に測定されない。
【0006】
更に、アッセイ信号の生成も開始する試薬の送達の問題を検出するのに利用できる解法は現在存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Thaler等(Diabetes Care(1999)22:1415~1421)
【文献】Miller等(Diabetes Care(2003)26:1158~1163)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、専らアッセイ試薬の添加に起因する吸光度を分離する新しい改善された方法、および特に(これに限定されないが)R2ポリハプテン試薬の送達に起因する問題を検出し、これにフラグを立てる新しい改善された方法が当技術分野で必要とされている。本開示が対象とするのは、このような新しい改善された方法、ならびに本明細書で使用する装置および組成物である。
【0009】
本特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1枚の図面を含有する。カラー図面を含む本特許または特許出願公開のコピーは、要求および必要な手数料の納付後に、当局により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】品質管理(QC)および医療判断プール(MDP)サンプルを用いたA1Cアッセイの動態データを示すグラフである。
図2】本開示に従って構築されたR2ポリハプテンの送達チェックアッセイの動態データを示すグラフである。
図3】ポリハプテン試薬の送達に関する問題をシミュレートするように設計されたアッセイパラメータからのR2ポリハプテンの送達チェックデータを示すグラフである。
図4】結果監視限界値と比較したサンプルのR2ポリハプテンの送達チェックデータを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例示的な言語および結果により本発明の概念の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明の概念が、その適用において、以下の説明に記載される構成の詳細および成分の配置に限定されないことを理解されるべきである。本発明の概念は、他の実施形態、または様々な方法での実施もしくは実行が可能である。そのため、本明細書で使用する言語は、可能な限り広い範囲および意味が与えられることが意図され、実施形態は、例示的であり排他的ではないことを意味する。また、本明細書で使用する表現および専門用語が、説明のためのみのものであり、限定としてみなされるべきではないと理解されるべきである。
【0012】
本明細書で別段に定義されない限り、本開示に関連して用いられる科学および技術用語は、当業者が一般に理解する意味を有するものとする。更に、文脈により別段に要求されない限り、単数の用語は複数を含み、複数の用語は単数を含むものとする。前述の技術および手順は一般に、当技術分野で周知であり、本明細書を通じて引用および考察される様々な一般的かつより具体的な参考文献に記載されるように、従来の方法に従って行われる。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学ならびに医薬品および薬化学と関連して利用される命名法、ならびにそれらの実験手順および技術は、当技術分野で周知であり、一般に用いられるものである。標準的な技術は、化学合成および化学分析のために用いられる。
【0013】
本明細書において言及される全ての特許、公開特許出願および非特許文献は、本開示が属する当業者の水準を示す。本出願の任意の部分で参照される全ての特許、公開特許出願および非特許文献は、各個々の特許または文献が参照により組み込まれるように具体的かつ個々に示された場合と同じ程度で、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0014】
本明細書において開示される物品、組成物、キットおよび/または方法は全て、本開示の観点から過度の実験なしに製造および実行できる。物品、組成物、キットおよび/または方法が特定の実施形態に関して記載されるが、本開示の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される物品、組成物、キットおよび/または方法、ならびに方法の工程にまたは一連の工程に変更が加えられ得ることが、当業者に明らかであろう。当業者に明らかな全てのこのような同様の置換および修正は、添付の特許請求の範囲により定義された本発明の概念の精神、範囲および概念内であるとみなされる。
【0015】
本開示に従って利用する場合、以下の用語は、別段に示されない限り、以下の意味を有すると理解されるべきである。
【0016】
特許請求の範囲および/または明細書における用語「含む(comprising)」と関連して用いられる場合、用語「1つの(aおよびan)」の使用は、「1つ(one)」を意味し得るが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」および「1つまたは1超」の意味とも一致する。そのため、用語「1つの(aおよびan)」および「その(the)」は、文脈により別段に明確に示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「化合物」についての言及は、1つもしくは複数の化合物、2つ以上の化合物、3つ以上の化合物、4つ以上の化合物またはより多数の化合物を指し得る。用語「複数」は「2以上」を指す。
【0017】
用語「少なくとも1つ」の使用は、1つ、およびこれらに限定されないが2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100等を含む1つを超える任意の量を含むと理解される。用語「少なくとも1つ」は、それが付随する用語に応じて、100または1000以上にまで及ぶ場合があり、更に、より高い限界値も満足のいく結果をもたらす可能性があるため、100/1000の量は限定的とみなされるべきではない。更に、用語「X、YおよびZのうちの少なくとも1つ」の使用は、X単独、Y単独およびZ単独、ならびにX、YおよびZの任意の組合せを含むと理解される。序数の用語(即ち、「第1」、「第2」、「第3」、「第4」等)の使用は、2つ以上の項目を区別することのみを目的としており、例えばある項目の別の項目に対する任意の配列、順序もしくは重要度、または任意の追加の順序を意味するものではない。
【0018】
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、代替物のみを指すように明示的に示されない限り、または代替物が相互に排他的でない限り、包括的な「および/または」を意味するために用いられる。例えば、条件「AまたはB」は、以下のいずれかにより満たされる:Aは真であり(または存在し)、かつBは偽である(または存在しない)こと、Aは偽であり(または存在せず)、かつBは真である(または存在する)こと、ならびにAとBは共に真である(または存在する)こと。
【0019】
本明細書で使用する場合、「1つの実施形態」、「一実施形態」、「一部の実施形態」、「1つの例」、「例えば」または「一例」についての任意の言及は、実施形態に関連して記載される特定の要素、特徴、構造または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。例えば、本明細書の様々な場所における語句「一部の実施形態において」または「1つの例」の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではない。更に、1つまたは複数の実施形態または例についての言及は全て、特許請求の範囲を限定するものではないと解釈されるべきである。
【0020】
本願を通じて、用語「約」は、値が、組成/器具/装置の誤差の固有の変動、値を決定するために用いられる方法、または試験対象間に存在する変動を含むことを示すために用いられる。例えば、限定するものではないが、用語「約」が利用される場合、このような変動が、開示された方法を実施するのに適当であるように、かつ当業者により理解されるように、指定される値は、指定された値からプラスまたはマイナス20パーセント、15パーセント、12パーセント、11パーセント、10パーセント、9パーセント、8パーセント、7パーセント、6パーセント、5パーセント、4パーセント、3パーセント、2パーセントまたは1パーセント変動し得る。
【0021】
本明細書および特許請求の範囲で用いられる用語「含む(comprising)」(および「含む(compriseおよびcomprises)」等の含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(および「有する(haveおよびhas)」等の有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(および「含む(includesおよびinclude)」等の含む(including)の任意の形態)または「含有する(containing)」(および「含有する(containsおよびcontain)」等の含有する(containing)の任意の形態)は、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素または方法工程を除外しない。
【0022】
本明細書で使用する用語「またはこれらの組合せ」は、この用語に先行して列挙される項目の全ての順列および組合せを指す。例えば、「A、B、Cまたはこれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BCまたはABCのうちの少なくとも1つ、および特定の文脈において順番が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BACまたはCABも含むことが意図される。この例を続けると、1つまたは複数の項目または用語の繰り返しを含有する組合せ、例えばBB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等が明示的に含まれる。当業者は、文脈から別段に明らかでない限り、典型的には、いかなる組合せにおいても項目または用語の数に限定は存在しないことを理解するであろう。
【0023】
本明細書で用いられる用語「実質的に」は、後に記載される事象または状況が完全に起こるか、または後に記載される事象または状況がかなりの範囲または程度で起こることを意味する。例えば、特定の事象または状況と関連する場合、用語「実質的に」は、後に記載される事象または状況が少なくとも80%の確率、少なくとも85%の確率、少なくとも90%の確率または少なくとも95%の確率で起こることを意味する。用語「実質的に隣接している」は、2つの項目が互いに100%隣接しているか、2つの項目が互いに近接しているが、互いに100%隣接していないか、または2つの項目のうちの1つの一部が、他の項目に100%隣接していないが、他の項目に近接していることを意味し得る。
【0024】
本明細書で使用する語句「と会合する」および「に結合する」は、2つの部分が互いに直接会合/結合することと、および2つの部分が互いに間接的に会合/結合することの両方を含む。会合/結合の非限定的な例としては、例えば、直接結合によりまたはスペーサー基を介して1つの部分を別の部分に共有結合させること、直接または該部分に結合している特異的結合対メンバーにより1つの部分を別の部分に非共有結合させること、例えば1つの部分を別の部分に溶解することにより1つの部分を別の部分に組み込むこと、および1つの部分を別の部分にコーティングすることが挙げられる。
【0025】
本明細書で使用する用語「サンプル」は、本開示に従って利用できる任意のタイプの生体サンプルを含むと理解される。利用できる流体の生体サンプルの例としては、これらに限定されないが全血またはその任意の部分(これらに限定されないが血漿または血清を含む)、全血細胞または溶解血液細胞(これらに限定されないが赤血球全体または溶解赤血球を含む)、尿、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙液、粘液、膀胱洗浄液、精液、便、胸水、鼻咽頭液、これらの組合せ等が挙げられる。
【0026】
本明細書で使用する用語「標的分析物特異的結合パートナー」は、標的分析物と特異的に会合できる任意の分子を指すと理解される。例えば限定するものではないが、結合パートナーは、抗体、受容体、リガンド、アプタマー、分子インプリントポリマー(即ち、無機マトリックス)、これらの組合せまたは誘導体、および標的分析物に特異的に結合できる任意の他の分子であってよい。
【0027】
用語「抗体」は、広義に本明細書で用いられ、例えばインタクトなモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、分析物結合の所望の生体活性を示すその抗体断片およびコンジュゲート(例えばこれらに限定されないがFab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、二重特異性抗体、短鎖抗体、ならびにインタクトな抗体の可変領域の少なくとも一部を保持する他のその抗体断片およびコンジュゲート)、抗体代替タンパク質またはペプチド(即ち、改変結合タンパク質/ペプチド)、ならびにこれらの組合せまたは誘導体を指す。抗体は、任意のタイプもしくはクラス(例えばIgG、IgE、IgM、IgDおよびIgA)またはサブクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)であってよい。
【0028】
本明細書で使用する用語「ハプテン」は、標的分析物特異的結合パートナー、例えば(これに限定されないが)抗体により認識できる小さなタンパク質性または非タンパク質性抗原決定基(または「エピトープ」)を指す。本明細書で使用する用語「ポリハプテン」は、そこに結合する複数のエピトープ/抗原決定基を含有する合成分子を指すと理解される。
【0029】
「分析物」は、標的分析物特異的結合パートナー、例えば(これに限定されないが)抗体が認識できる高分子である。分析物とハプテンはいずれも、少なくとも1つの抗原決定基または「エピトープ」を含み、これは標的分析物特異的結合パートナー(即ち、抗体)に結合する抗原またはハプテンの領域である。典型的には、ハプテン上のエピトープは、分子全体である。
【0030】
本明細書で使用する用語「反応キュベット」は、本明細書に記載される少なくとも1つの診断アッセイを実施できる任意の装置を含む。反応キュベットは、手動で診断アッセイを実施し得るが、大抵の場合、反応キュベットは、診断アッセイの実施を自動化するシステムに挿入される。1つの非限定的な実施形態において、反応キュベットは、例えば限定するものではないが、Siemens Healthcare Diagnostics社(Newark, DE)から市販されているDIMENSION VISTA(登録商標) Systemsのうちの1つで行われる自動診断アッセイにおける使用のための反応キュベットを含む。しかし、反応キュベットは、本開示に従って1つまたは複数の診断アッセイを実施できる本明細書に記載されるかまたはさもなければ企図される任意の市販の製品またはキュベットであってもよいことが理解される。
【0031】
本明細書で使用する用語「比濁法」は、溶液中に懸濁した粒子の散乱効果による透過光の強度損失を測定する方法を指すと理解される。フィルターを透過した光は、公知の波長の光を発生させ、次いでこれは試験液を含有するキュベットを透過する。光度計は、キュベットを透過する光を集光し、次いで吸収された光量の測定値が得られる。したがって、比濁法は、物質が引き起こす曇りもしくは濁りの程度により、または物質が混濁液において誘発する清澄化の程度により溶液中の物質の濃度を決定する方法である。
【0032】
次に本発明の概念を参照すると、本開示のある非限定的な実施形態は、一般にイムノアッセイの性能および信頼性を向上させるキット、装置および方法に関する。特に、本開示のある実施形態は、ポリハプテン試薬の送達の問題を検出するキット、装置および方法に関する。
【0033】
本明細書で上述するように、HbA1cイムノアッセイの主な問題は、(これに限定されないが)短期間の送達または気泡の崩壊等のR2ポリハプテン試薬の送達の問題を含み、これは報告されるべき異常な結果をもたらす。R2は、複数の臨床化学分析装置、例えば(これに限定されないが)DIMENSION VISTA(登録商標) Systems(Siemens Healthcare Diagnostics社、Tarrytown, NY)で利用可能な波長293nmに吸収を有するポリペプチド溶液であるが、これらのタイプのシステムでポリハプテン試薬の添加直後に利用可能な読取り時間が存在しない。更に、読取り時間が利用可能な場合でも、送達時に測定された吸光度を使用すると、これが、混合、および反応混合物中に既に存在するサンプルおよび抗体の存在による凝集反応による干渉信号を含有するため、R2ポリハプテン試薬の送達が正確に測定されない。
【0034】
上記の理由から、本開示の手法は、時間に対する2つのその後の読取りからの回帰直線の勾配を用いて、R2送達による吸光度変化(293nm-700nm)を推定するために開発された。この手法では、凝集反応の開始直前の時点でのR2送達のmAU吸光度が予測できる。時間に対する吸光度変化が、使用した時点に対して線形であり、全HbA1c濃度に対する予測R2送達mAU信号が収束するため、該手法は機能する。
【0035】
アッセイ信号の生成もトリガする試薬の送達の問題を検出するこの手法は、任意の化学アッセイまたはイムノアッセイに適用できる。したがって、HbA1cイムノアッセイにおけるポリハプテン試薬の文脈でのこの手法の説明は、例示のためのみであり、限定として解釈されるべきではない。
【0036】
本開示の方法において、ポリハプテン試薬の送達時の機器信号を推定するためのアッセイパラメータに、演算を加えた。この手法は、時間に対する2つのその後の読取りの回帰を使用して、0時間の信号を予測し、反応混合物中のサンプルおよび抗体試薬からの信号寄与を減算して、ポリハプテン試薬を反応に添加することによる信号の正確な監視を提供する。サンプルおよび抗体試薬からの信号寄与を除去することにより、機器ソフトウェアは、各試験のポリハプテン試薬の送達からの信号を比較し、試薬の送達の問題により影響を受けた試験にフラグを立てることができる。この手法は、時間に対する信号の変化が、使用した時点に対して線形であるため有効である。
【0037】
概して、この手法の新規性は、ゼロ次読取りを使用して、専ら他の反応信号の存在下での試薬の送達により得られる吸光度を分離することである。ポリハプテン試薬の送達を監視するための演算は、この試薬の送達の結果監視の基準を提供する。この試薬の送達中に大きな誤差が発生する場合、誤差は、患者の結果に臨床的に有意な影響を与え得る。この結果監視を加えることで、機器ソフトウェアが、試薬2プローブによるポリハプテン試薬の送達の問題により影響を受け得る結果にフラグを立てることができる。アッセイパラメータに加えた演算は、ポリハプテン試薬の送達の一貫性を監視し、送達の問題を検出できる。時間に対する信号の変化が線形であるため、推定が可能である。そのため、本開示の方法では、利用者は、ポリハプテンの送達の問題により影響を受けた可能性がある結果を報告しなくてよい。
【0038】
本開示の方法により複数の利点が提供される(本明細書のある箇所では「試薬の送達チェック」と称される)。患者の結果が、試薬(例えばこれに限定されないがR2ポリハプテン試薬)の送達の問題により影響を受け、次いで医師に報告される場合、医師は1)結果に疑問を抱く場合も、または2)結果に基づき患者の処置を調整する場合もある。更に、この結果監視は、ポリハプテン試薬の送達の問題により影響を受けた可能性がある結果にフラグを立てるだけでなく、潜在的な機器の問題を解決する上でのより効率的なトラブルシューティングについての助言を作業員に与える。この結果監視がトリガされる場合、作業員は、機器の全構成要素に対して作業方法を行う代わりに、機器の試薬カートリッジおよび試薬2システムの特定の試薬ウェルに重点を置くことができる。これにより、機器の問題を解決するための時間および費用を削減できる(例えば、サンプルおよび試薬サーバで他の構成要素に部品を交換するための費用)。
【0039】
本開示のある非限定的な実施形態は、生体サンプル中の標的分析物の存在および/または濃度を検出する方法を対象とする。ある(限定するものではないが)特定の実施形態において、方法は、イムノアッセイ試薬(例えばこれに限定されないがポリハプテン試薬)の不十分な送達に起因するイムノアッセイにおける異常なまたは不十分な結果を最小化する方法と更に定義できる。
【0040】
方法は、同時または全体的もしくは部分的に順次に(1)標的分析物を含有することが疑われる生体サンプル、(2)少なくとも1つの標的分析物特異的結合パートナー(例えばこれに限定されないが抗体)、および(3)標的分析物特異的結合パートナーに特異的に結合できる少なくとも1つのイムノアッセイ試薬(例えばこれに限定されないがポリハプテン試薬または他のタイプの粒子凝集アッセイ試薬)を組み合わせることを含む。次いで、少なくとも1つの標的分析物特異的結合パートナーを、標的分析物または少なくとも1つのイムノアッセイ試薬に結合させる。
【0041】
特定の非限定的な実施形態において、イムノアッセイ試薬により生成された信号は、比濁(即ち、凝集)アッセイにより検出できる。これらのタイプのアッセイは、当技術分野で周知であり、したがってその更なる説明は不要と思われる。
【0042】
イムノアッセイにより検出できる任意の標的ペプチドまたはタンパク質分析物は、本開示の方法により検出できる。標的分析物の例としては、これらに限定されないが糖化ヘモグロビン(HbA1c)、アルブミン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、フェリチン、成長ホルモン、プロラクチン、チログロブリン(Tg)、C-反応性タンパク質(CRP)、リウマチ因子(RF)等が挙げられる。
【0043】
代替的には、イムノアッセイは、薬物の血清レベルを測定して、その濃度がその治療範囲内であることを確実にする治療薬物モニタリング(TDM)イムノアッセイであってよい。TDMイムノアッセイにより検出できる標的薬物分析物の例としては、これらに限定されないがゲンタマイシン、トブラマイシン、CRP、ジゴキシン、アミカシン、カフェイン、カルバマゼピン、ジギトキシン、ジソピラミド、エトスクサミド、リドカイン、リチウムメトトレキサート、NAPA、フェノバルビタール、フェニトイン、プリミドン、プロカインアミド、キニジン、テオフィリン、トブラマイシン、バルプロ酸、バンコマイシン等が挙げられる。
【0044】
本明細書に記載されるイムノアッセイでの使用のための当技術分野で公知の任意の生体サンプルは、本開示に従って利用できる。利用できる生体サンプルの例としては、これらに限定されないが尿、全血またはその任意の部分(これらに限定されないが血漿または血清を含む)、全血(即ち、実質的に非溶解)細胞または溶解血液細胞(これらに限定されないが赤血球全体または溶解赤血球を含む)、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、涙液、粘液、膀胱洗浄液、精液、これらの組合せ等が挙げられる。
【0045】
ある非限定的な実施形態において、本開示は、イムノアッセイにおいて用いられるポリハプテン試薬の不十分な送達に起因する異常な結果を検出する方法を対象とする。方法は、以下の工程を含む:(A)反応キュベット内で、標的分析物を含有することが疑われる生体サンプルと標的分析物特異的結合パートナーとを反応させ、それにより可溶性の分析物/特異的結合パートナー複合体を形成する工程と、(B)ポリハプテン試薬を反応キュベットに添加する工程であって、ポリハプテン試薬が過剰な標的分析物特異的結合パートナーと反応して、不溶性のポリハプテン/標的分析物特異的結合パートナー複合体を形成する、前記工程と、(C)反応キュベットを光で照射する工程と、(D)ポリハプテン試薬の添加後の複数の時点で少なくとも3つの波長で吸光度値を測定する工程であって、第1の波長が不溶性のポリハプテン/標的分析物特異的結合パートナー複合体を比濁法で検出し、第2の波長がタンパク質を検出し、第3の波長がブランクとして機能する、前記工程と、(E)ポリハプテン試薬の添加後の2つの時点で第2および第3の波長で測定された吸光度値の回帰を用いて、ポリハプテン試薬の送達時のその吸光度値を推定する工程と、(F)ポリハプテン試薬の送達時のその推定吸光度値が、その予測値と確立されたフラグ定数を超えて異なる場合、許容できないとして別のアルゴリズムで得られた標的分析物の濃度値にフラグを立てる工程。
【0046】
本明細書に記載されるかまたはさもなければ企図される任意の標的分析物は、本明細書に記載される方法により検出できる。上の方法のいずれかのある(非限定的ではあるが)特定の実施形態において、分析物はHbA1cであり、抗体は抗HbA1c抗体であり、ポリハプテンは複数のHbA1cエピトープを含む。
【0047】
ある非限定的な実施形態において、本開示は、糖化ヘモグロビン(HbA1c)イムノアッセイにおいて用いられるポリハプテン試薬の不十分な送達に起因する異常な結果を検出する方法を対象とする。方法は、以下の工程を含む:(A)反応キュベット内で、HbA1cを含む標的分析物を含有することが疑われる生体サンプルと標的分析物に対する抗HbA1c抗体とを反応させ、それにより可溶性のHbA1c-抗体複合体を形成する工程と、(B)ポリハプテン試薬を反応キュベットに添加する工程であって、ポリハプテン試薬が過剰な抗HbA1c抗体と反応して、不溶性のポリハプテン/標的分析物特異的結合パートナー複合体を形成する、前記工程と、(C)反応キュベットを光で照射する工程と、(D)ポリハプテン試薬の添加後の複数の時点で少なくとも3つの波長で吸光度値を測定する工程であって、第1の波長が不溶性のポリハプテン/標的分析物特異的結合パートナー複合体を比濁法で検出し、第2の波長がタンパク質を検出し、第3の波長がブランクとして機能する、前記工程と、(E)ポリハプテン試薬の添加後の2つの時点で第2および第3の波長で測定された吸光度値の回帰を用いて、ポリハプテン試薬の送達時のその吸光度値を推定する工程と、(F)ポリハプテン試薬の送達時のその推定吸光度値が、その予測値と確立されたフラグ定数を超えて異なる場合、許容できないとして別のアルゴリズムで得られた標的分析物の濃度値にフラグを立てる工程。
【0048】
本明細書に記載されるかまたはさもなければ企図される方法のいずれかは、生体サンプルを第1の容器/キュベット内で溶解し、次いで、溶解した生体サンプルを工程(A)で利用した反応キュベットに移す工程を更に含み得る。
【0049】
本明細書に記載される値を任意の波長で決定できる限り、このような波長は、本開示の方法のいずれかに従って第1、第2および第3の波長として利用できる。例えば、任意の波長がタンパク質/ペプチドの存在を検出でき、したがって試薬の送達を検出でき、それによりポリハプテン(または任意の他のタイプのタンパク質/ポリペプチド)の凝集状態の指標を提供できる限り、このような波長は、第1の波長として利用できる。同様に、任意の波長で観察されるハプテンに起因する影響が少なくとも最小限である限り、この波長は、第2の波長として利用できる。更に、任意の波長でのタンパク質/ペプチドの検出が最小限である限り、該波長は、第3の波長として利用でき、これにより第3の波長は、第2の波長で得られた測定値が信頼でき再現可能であることを確実にする「ブランキング波長」または「対照波長」(即ち、吸光度が第1および第2の波長ほど変化しない波長)として機能し得る。
【0050】
ある非限定的な実施形態において、第1の波長は約300nm~約650nmの範囲であり、第2の波長は約190nm~約300nmの範囲であり、第3の波長は約650nm~約850nmの範囲である。(限定するものではないが)特定の実施形態において、第1の波長は約340nmであり、第2の波長は約293nmであり、第3の波長は約700nmである。
【0051】
ある(限定するものではないが)特定の実施形態において、第1の波長の吸光度は、(mAU第1の波長-mAU第3の波長)として定義される吸光度の第1の変化として演算された2波長値であり、第2の波長の吸光度は、(mAU第2の波長-mAU第3の波長)として定義される吸光度の第2の変化として演算される2波長値である。「ブランキング波長」として機能し、本明細書に記載されるかまたはさもなければ企図される2波長値の演算を可能にする任意の波長は、本開示に従って第3の波長として利用できる。第3の波長として利用できる波長の非限定的な例としては、(これらに限定されないが)約600nm、約650nm、約700nm、約750nm、約800nmおよび約850nmを含む、約650nm~約850nmの範囲の波長が挙げられる。
【0052】
任意の好適な回帰分析は、本明細書に開示されるかまたはさもなければ企図される方法の工程(E)において、確立された回帰として使用できる。利用できる回帰分析の非限定的な例としては、線形回帰および非線形回帰、例えば(これらに限定されないが)対数曲線、指数曲線、双曲線、放物曲線、S字形曲線、ミカエリスメンテン曲線、多項式曲線、ロジスティック回帰(またはロジット)曲線等が挙げられる。
【0053】
(限定するものではないが)特定の実施形態において、工程(F)で利用される確立されたフラグ定数は、以下のように決定される。移動平均値をA1C試験に対して演算する。平均は、最低(例えば限定するものではないが)50の試験、および最大(例えば限定するものではないが)500の試験による値に基づくものである。最低50の値を用いて平均を確立したら、結果監視を「オン」にし、A1C試験による新しい値を、平均を中心とする結果監視範囲と積極的に比較する。移動平均は、最低50の値および最大500の値を含む。500を超える値が、結果監視に対して収集されると、値は「先入れ先出し」に基づき置き換えられる。その結果、古い値が平均から除去され、新しい値が平均に加わることにより、合計500の値が用いられる。各ロットは、予め確立された基準に基づきそれ自体の移動平均値および範囲を有する。本明細書に後述される実施例2において、範囲に対する予め確立された基準(即ち、「確立されたフラグ定数」)は、平均を12%上回り、平均を15%下回った。
【0054】
上記のように、A1Cアッセイについては、結果監視値の許容範囲が、平均を上回るおよび下回る許容パーセント(%)に基づくものである。測定値は、平均を中心とする許容範囲と比較される。値がこの範囲内である場合、該値は移動平均演算に加えられる。値が範囲外である場合、値は移動平均演算に加えられず、A1Cアッセイの結果は、結果が無効であり、報告されるべきではないことを利用者に警告する「異常アッセイ」フラグを伴う。
【0055】
本明細書で使用する用語「確立されたフラグ定数」は、それを超えると測定値と予測値との間の有意差が認められるカットオフ値を指す。確立されたフラグ定数は、回帰分析によるサンプルの予測値と比較した場合のサンプルの測定値に基づき、サンプルについて得られた吸光度の許容変動マージン/範囲を超える値を表す。確立されたフラグ定数は、許容変動マージン/範囲の上端、例えばこれらに限定されないが5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、6、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100等、その間の任意の非整数値、その任意の負の値(即ち、-5、-65等)、または上に列挙した値のいずれかの任意のわずかな変動(即ち、「約11」、「約-15」等)を示す、いずれかの任意の数値であってよい。代替的には、確立されたフラグ定数は、許容変動マージン/範囲の上端、例えばこれらに限定されないが5000%、4000%、3000%、2000%、1000%、900%、800%、700%、600%、500%、450%、400%、350%、300%、250%、200%、150%、100%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%、50%、49%、48%、47%、46%、45%、44%、43%、42%、41%、40%、39%、38%、37%、36%、35%、34%、33%、32%、31%、30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%等、その間の任意の整数もしくは非整数のパーセント値、その任意の負の値(即ち、-15%、-12%等)、または上に列挙したパーセント値のいずれかの任意のわずかな変動(即ち、「約85%」、「約-15%」等)を示す、パーセントであってよい。
【0056】
ある非限定的な実施形態において、本明細書に記載されるかまたはさもなければ企図される異常な結果を検出する方法で得られた測定値は、生体サンプル中の標的分析物の存在および/または濃度についての実際のアッセイとは無関係に測定および演算される。代替的には、本明細書に記載されるおよび/または企図される方法で得られた測定値のうちの1つまたは複数は、生体サンプル中の標的分析物の存在および/または濃度についての実際のアッセイで利用できる。
【0057】
特定の非限定的な実施形態において、工程(F)で1つまたは複数の値にフラグを立てた場合、方法は、アッセイ工程(A)~(F)を繰り返すことを利用者に指示する工程を更に含み得る。
【0058】
方法は、ポリハプテン試薬での使用のために本明細書に上述されるが、本開示の異常な結果を検出する方法は、他のタイプの不十分に送達された粒子凝集アッセイ試薬での使用にも適用できると理解されるべきである。したがって、本開示の範囲は、本明細書に上述される方法のいずれかおよび全ての変形を更に含み、そこで用語「ポリハプテン試薬」は、「粒子凝集アッセイ試薬」に置き換えられる。
【0059】
本明細書に記載される方法工程のいずれかは、例えば限定するものではないが、利用者により実施される。しかし、本明細書で使用する用語「利用者」は、人間による使用に限定されず、用語「利用者」は、(例えば限定するものではないが)コンピュータ、サーバ、ウェブサイト、プロセッサ、ネットワークインターフェース、ヒト、利用者端末、バーチャルコンピュータ、これらの組合せ等を含み得る。
【0060】
本開示の様々な実施形態は、本明細書に記載される方法に従って機能できる(または、機能できるように修正された)任意の反射分光方式の診断機器で利用できる。ある非限定的な実施形態において、機器は、ポイントオブケア機器であってよい。反射分光方式の診断機器は、本明細書に記載される方法/プロセスのロジックを具現化および/または実行できるシステムであってよい。ソフトウェア命令および/またはファームウェアの形態で具現化されるロジックは、任意の適当なハードウェアで実行できる。例えば、ソフトウェア命令および/またはファームウェアの形態で具現化されるロジックは、専用システム上、パーソナルコンピュータシステム上、分散型処理コンピュータシステム上の1つもしくは複数のコンポーネントおよび/または同様のもので実行できる。一部の実施形態において、ロジック全体は、機器(例えばこれに限定されないがポイントオブケア機器)上で動作する独立型環境に実装されてもよい。他の実施形態において、ロジックは、例えば複数の機器が、データを分析し、分析結果を機器に供給するために中央コンピュータシステムに送信されるデータを収集する分散型システム等のネットワーク環境に実装されてもよい。機器の各要素は、部分的または完全にネットワークベースまたはクラウドベースであってよく、単一の物理的位置に配置されていてもよく、または配置されていなくてもよい。
【0061】
本明細書で使用する回路構成としては、(これらに限定されないが)アナログおよび/またはデジタルコンポーネント、または1つもしくは複数の好適なプログラム化されたプロセッサ(例えばマイクロプロセッサ)および関連のハードウェアおよびソフトウェア、またはハードワイヤードロジックが挙げられる。また、「コンポーネント」は、1つまたは複数の機能を実施できる。用語「コンポーネント」は、ハードウェア、例えばこれらに限定されないがプロセッサ(例えばマイクロプロセッサ)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ハードウェアとソフトウェアの組合せおよび/または同様のものが挙げことができる。
【0062】
本明細書で利用されるソフトウェアは、1つまたは複数のコンポーネントにより実行された場合、コンポーネントに特定の機能を実施させる1つまたは複数のコンピュータ可読媒体(即ち、コンピュータ可読命令)を含み得る。本明細書に記載されるアルゴリズムは、1つまたは複数の非一過性メモリ上に保存できると理解されるべきである。非限定的で例示的な非一過性メモリとしては、ランダムアクセスメモリ、リードオンリメモリ、フラッシュメモリおよび/または同様のものを挙げることができる。このような非一過性メモリは、電気ベース、光学ベースおよび/または同様のものであってよい。
【0063】
本開示のある非限定的な実施形態は、本明細書に上述されるイムノアッセイ法を簡便に実施するのに有用な試薬キットを対象とする。試薬キットとしては、少なくとも1つの標的分析物特異的結合パートナー(例えばこれに限定されないが標的分析物に対する抗体)および少なくとも1つのポリハプテン試薬が挙げられ、各々本明細書で詳細に上述される。
【0064】
本開示のある他の非限定的な実施形態は、本明細書に上述される試薬キットを含有し、本明細書に上述されるイムノアッセイ法における使用のためのものであるイムノアッセイ装置(例えばこれに限定されないがイムノアッセイカートリッジ)を対象とする。例えば、イムノアッセイ装置は、標的ペプチドまたはタンパク質分析物を含有することが疑われるサンプルを収容できる少なくとも1つの区画を含んでいてもよく、少なくとも1つの区画は、本明細書で詳細に上述される少なくとも1つの標的分析物特異的結合パートナー(例えばこれに限定されないが標的分析物に対する抗体)および本明細書で詳細に上述される少なくとも1つのポリハプテン試薬を含む。
【0065】
更に、本開示の試薬キットおよび/またはイムノアッセイ装置は、本明細書に記載されるかまたはさもなければ企図される特定のイムノアッセイのいずれかを行うための他の成分および/または試薬を更に含有していてもよい。これらの追加の成分/試薬の種類は、特定のイムノアッセイ形式に依存し、その特定は十分に当業者の技術の範囲内である。本開示の試薬キットおよび/またはイムノアッセイ装置中に存在し得る追加の試薬/成分の例としては、これらに限定されないが希釈剤、(例えば赤血球を溶解するための)溶解剤、洗浄液(例えばこれに限定されないが等張液)、陽性対照、陰性対照、品質管理および/またはアクチュエータ、ならびにこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0066】
キットおよび/またはイムノアッセイ装置における様々な成分/試薬の相対量は、広範に変動し、アッセイ法の間に生じる必要がある反応を実質的に最適化し、更にアッセイの感度を実質的に最適化する成分/試薬の濃度を提供することができる。
【0067】
本開示の試薬キットは、キットの使用方法を説明する一連の書面の説明書を更に含み得る。この種のキットは、本明細書に記載されるかまたはさもなければ企図されるイムノアッセイ装置のいずれかでおよび/または方法のいずれかで使用できる。
【0068】
イムノアッセイ装置は、これに関連している1つまたは複数の手動機能を有していてもよく(即ち、1つもしくは複数の試薬の添加および/または2つの区画間の混合物の移動のためにピペット操作が必要である)、代替的には、イムノアッセイ装置は、必要な試薬/成分が、イムノアッセイ装置(様々な区画が連続流体連通している(または連続流体連通できる))の構築中に様々な区画内に配置され、したがってサンプルがイムノアッセイ装置に添加された後、サンプルおよび/または試薬の手動操作によるアッセイの実施が不要である、全自動の密閉されたシステムであってよい。
【0069】
イムノアッセイ装置は、本明細書に上述される成分/試薬を含有する1つまたは複数の区画を含み、イムノアッセイ装置が本開示に従って機能し得る限り、イムノアッセイ装置は、幾つかの区画、区画の任意の配置、およびその間の成分/試薬の任意の分布を備えることができる。複数の区画を備える場合、区画は、互いに完全に分離されていてもよく、または1つもしくは複数の区画が、互いに流体連通できてもよい。本開示に従って使用できる様々な構造のイムノアッセイ装置は、当技術分野で周知であり、したがって、その更なる説明は不要と思われる。
【0070】
ある実施形態において、イムノアッセイ装置は、少なくとも第1および第2の区画を含む。第1の区画は、生体サンプルを収容でき、(限定するものではないが)所望される場合、タンパク質/ペプチドをサンプルの大部分から分離する、赤血球を溶解する等の機構を含み得る。前記分離機構は、イムノアッセイ装置の技術分野で周知であり、したがって、その更なる説明は不要と思われる。第2の区画は、第1の区画と流体連通でき、少なくとも1つの標的分析物特異的結合パートナー(例えば、これに限定されないが標的分析物に対する抗体)および/または本明細書で詳細に上述されるイムノアッセイ法を実施するための少なくとも1つのイムノアッセイ試薬を含む。代替的には、イムノアッセイ装置は、少なくとも1つのイムノアッセイ試薬の貯蔵のための第3の区画を含んでいてもよく、少なくとも1つのイムノアッセイ試薬を、第3の区画から第2の区画に移動させてもよい。
【0071】
イムノアッセイ装置はまた、分光計により光学的に調べることができる光学読取り室も含み得る。光学読取り室は、本明細書に上述される区画のいずれかに連結していてもよく、または光学読取り室は、本明細書に上述される区画と別の区画に連結していてもよい。
【0072】
入口チャネルおよび区画、ならびに2つの区画は、互いに「流体連通できる」と記載され得、この表現は、区画が依然として封止されていてもよいが、そこにまたはその間に形成された封止が破れると、2つの区画がその間に流体を流すことができることを示す。
【0073】
本開示のキット/イムノアッセイ装置は、当技術分野で公知であるかまたはさもなければ本明細書に企図される任意の他の所望の特徴を備え得る。例えば、限定するものではないが、本開示のキット/イムノアッセイ装置は、他の溶液、例えばこれらに限定されないが(赤血球を溶解するための)溶解剤、希釈剤、洗浄液、標識剤、干渉溶液、陽性対照、陰性対照、品質管理および/またはアクチュエータ、ならびにこれらの任意の組合せを含有する1つまたは複数の追加の区画を更に含んでいてもよい。
【実施例
【0074】
実施例を以下に示す。しかし、本開示は、本明細書に開示される特定の実験、結果および実験手順へのその適用に限定されるものではないと理解されるべきである。むしろ、これらの実施例は、様々な実施形態のうちの1つとして提供されるにすぎず、例示的なものであり、排他的でないことを意味する。
【実施例1】
【0075】
R2ポリハプテンの送達チェック結果監視手順
R2ポリハプテンの送達チェック結果監視の目的は、短期間の送達または気泡の崩壊を含み得るポリハプテンの送達の問題を検出することである。凝集は、反応混合物へのポリハプテンの送達時に開始し、送達直後に得られる測光読取りが存在しないため、その送達は、mAU(293nm-700nm)を用いて直接測定できない。したがって、送達時のmAU(293nm-700nm)(即ち、送達直後で凝集反応開始直前の0時間のmAU)を推定する手法を開発した。この手法は、時間に対する2つのその後の読取りの回帰を使用して、0時間のmAUを予測する(実施例2を参照のこと)。この手法は、時間に対する信号の変化が、使用した時間に対して線形であるため機能する。
【0076】
試薬2(R2)プローブによるポリハプテン試薬の送達を監視するため、結果監視をA1Cサンプルアッセイパラメータに加えた。この結果監視の演算もA1CC較正アッセイパラメータに加えたが、結果監視コードは加えなかった。
【0077】
R2ポリハプテンの送達チェック結果監視の演算手法:
・ アッセイパラメータにおいて、R2プローブはサイクル67でポリハプテン試薬を添加する。
・ R2ポリハプテン試薬は、サイクル67と68の間の時間(「サイクル67+」と称される)まで反応中に観察できない。
・ 「サイクル67+」の時間を[サイクル69-5.7秒]と推定した。
・ 各サイクルは3.6秒である。
・ R2ポリハプテン試薬は、293nmの波長および700nmのブランキング波長で検出できる。
・ サイクル67より前の293nmおよび700nmの良好な読取りは、サイクル52、57および64である。
・ サンプルを、サイクル6でLoci容器からキュベットに移すので、サンプルは、サイクル52、57および64で反応中に存在する。
・ サイクル67より後の293nmおよび700nmの良好な読取りは、サイクル69および71である。
・ 送達後のポリハプテン吸光度(0時間のmAU)を以下のように演算した:
勾配(サイクル69-71)*(サイクル67+での時間)+(Y-0時間の切片)
・ R2ポリハプテンの送達チェックを以下のように演算した:
(サイクル67+でのポリハプテン吸光度)-(サイクル52、57、64での平均吸光度)。
【実施例2】
【0078】
A1Cアッセイの検証試験中に回収された測光データを用いて、これらの演算をオフラインで行った。検証試験中に回収されたデータからは、ポリハプテン試薬のR2送達に関する問題の証拠は何ら示されなかった。その結果、アッセイパラメータを変更して、送達工程中に発生し得る様々な機器の問題をシミュレートした。
【0079】
様々なタイプの送達の問題をシミュレートするために、以下(および表1)に示す方式でA1Cアッセイパラメータを変更した。
・ Rg21:ポリハプテン試薬の短期間の送達と反応量を一定に保つための追加の追跡量;
・ Rg22:ポリハプテン試薬の短期間の送達と追加の追跡量(反応量を一定に保つため)、および気泡の除去;
・ Rg23:ポリハプテン試薬の短期間の送達-追加の追跡なし(真の短期間の送達);
・ Rg24:A1Cパラメータ(28μL)による標準的な送達および気泡の除去;
・ Rg25:A1Cパラメータ(28μL)による標準的な送達、気泡の除去および水15μlから25μlへの追跡の増加;ならびに
・ Rg26:A1Cパラメータ(28μL)による標準的な送達、気泡の除去および水15μlから20μlへの追跡の増加。
【0080】
このようにして、Rg21~Rg26は各々、R2試薬の1つまたは複数の送達の問題を模倣する。
【0081】
【表1】
【0082】
各一連のアッセイパラメータに対して、以下のサンプルを試験した:LYPHOCHEK(登録商標)Diabetes Control(Bio-Rad Laboratories社、Hercules, CA)からの糖尿病管理レベル1および2、ならびに医療判断プール(MDP)1~4。MDPは全て、n=5で試験し、品質管理(QC)サンプルは、試験に応じてn=2またはn=5で試験した。各アッセイパラメータ試験については、HbA1c%結果への影響およびR2ポリハプテンの送達チェック値の変化を演算した。
【0083】
図1は、QCおよびMDPサンプルのDV A1Cの動態データを例示している。図示されるように、わずかな吸光度が、アッセイ開始時に観察され、この吸光度は、抗体試薬の添加に対応する。サイクル6でサンプルを添加すると、吸光度の増加が観察される。サイクル67でのポリハプテン試薬の添加後、遊離抗体とポリハプテンとの間の凝集反応に応じて、吸光度は直ぐに増加し始める。
【0084】
反応中のHbA1cの測定値は、遊離抗体とポリハプテンとの凝集に基づくものである:
・ より多くのHbA1cが反応中に存在する場合、より多くの抗体がHbA1cに結合し、したがって、より少ない抗体がポリハプテンとの凝集に利用可能である。抗体とポリハプテンとの間のより少ない凝集は、低いHbA1c信号をもたらし、高いHbA1c分析物結果をもたらす。
・ より少ないHbA1cが反応中に存在する場合、より少ない抗体がHbA1cに結合し、したがって、より多くの抗体がポリハプテンとの凝集に利用可能である。抗体とポリハプテンとの間のより多くの凝集は、高いHbA1c信号をもたらし、低いHbA1c分析物結果をもたらす。
【0085】
図2は、ポリハプテンの送達チェック監視がどのように実施されるかを示している。サイクル67でポリハプテン試薬を添加すると、読取りがその直後にサイクル69および71で得られ、次いでこれらの2つの読取りを利用して、ポリハプテン試薬の0時間のmAU値を線形的に推定する(丸印の線形推定を参照のこと)。
【0086】
第1の試験は、対照パラメータ(A1C1はA1Cパラメータのクローンであった)と、ポリハプテン試薬の送達量を減少させ、追跡量を増加させたRg21およびRg22パラメータとを比較した。この試験によるデータを表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
ポリハプテン試薬の送達を減少させ、追跡水と置き換えると、HbA1c信号が減少し、高いHbA1c分析物結果をもたらした。ポリハプテンの添加はヘモグロビンを測定した後に行われるため、ヘモグロビン濃度は影響を受けず、HbA1c結果の増加により、HbA1c%結果が上昇した。これらのパラメータにおけるポリハプテンの送達チェックの値は、対照パラメータのものよりも低かった。
【0089】
第2の試験では対照パラメータをRg23、Rg24、Rg25およびRg26と比較した。これらのパラメータを表1に記載し、データを表3に示す。
【0090】
Rg25およびRg26パラメータについては、送達されるポリハプテンの量を変更しなかったが、気泡を除去し、異なる量の追跡水と置き換えた。これらのパラメータを作成し、ポリハプテン試薬の送達をシミュレートした。そこでは、気泡は崩壊し、追跡水と部分的または完全に置き換える。反応混合物の希釈によりHbA1c信号が低くなることが予想される。この低い信号は、高いHbA1c分析物結果をもたらす。反応量を演算で補正しなかったため、HbA1c信号は、予想ほど減少しなかった。その結果、信号は、対照パラメータと比較して減少したが、予想ほどではなかった。これらのパラメータのHbA1c結果は、対照パラメータと比較して上昇した。このデータを表3に示す。これらのパラメータにおけるポリハプテンの送達チェックの値は、対照パラメータの値より低かった。
【0091】
ポリハプテン量を半分に減少させたRg23パラメータについては、より少ないポリハプテンの存在は、より少ない凝集をもたらすことが予想され、これは低いHbA1c信号をもたらす。低いHbA1c信号は、高いHbA1c分析物結果をもたらすことが予想される。同時に、反応の総量を14μlに減少させた。この低い量は、高い凝集および高いHbA1c信号をもたらし、低いHbA1c分析物結果をもたらす。この状況において、2つの因子(より少ないポリハプテンおよび低い反応量)が競合する。
【0092】
競合因子の考察
Rg21パラメータについては、HbA1c%結果は、HbA1c約0.8%増加した。Rg25およびRg26パラメータについては、Rg26のHbA1c%結果は、追加5μLの追跡水(HbA1c%レベルに応じて)を含有していたRg25よりもHbA1c約0.5%低かった。Rg23と対照パラメータとの間のポリハプテン量の差は14μLである。これにより、HbA1c約1.4%のHbA1c%の減少が予想される。両方の影響がRg23パラメータに存在するため、結果は、HbA1c%の減少を示した。結果におけるこの減少は、分析物レベルに応じて異なった。
【0093】
【表3】
【表4】
【0094】
図3は、ポリハプテン試薬の送達に関する問題をシミュレートするように設計されたアッセイパラメータによるR2ポリハプテンの送達チェックデータを示すグラフである。各データ点は、2~5の試験/複製から演算した平均値を表す。サンプルは様々なHbA1c分析物レベル(QCL1、QCL2、MDP1~4)を含有していた。
【0095】
図4は、結果監視限界値と比較したサンプルのR2ポリハプテンの送達チェックデータを示すグラフである。各データ点は、個々の試験に対して演算した値を表す。サンプルは、MDP1~4であり、これは様々なHbA1c分析物レベルを含有していた。
【0096】
これらの2つの試験によるデータに基づき、R2ポリハプテンの送達チェックの限界値を、この送達チェックの平均値と比較して-15%および+12%に設定した。
【0097】
結論:これらの試験によるデータに基づき、R2ポリハプテンの送達チェックの平均-15%および平均+12%の限界値(即ち「確立されたフラグ定数」)を、ポリハプテン試薬の送達の問題により臨床的に有意な影響が認められ得る結果にフラグを立てるために設定した。
【0098】
しかし、これらのフラグ定数は、例示の目的のみに確立され、したがって本開示を限定するものではなく、本明細書に記載されるかまたはさもなければ企図される方法に従って演算される任意の他のフラグ定数値も、本開示に従って利用でき、したがってその範囲内に含まれ得る。
【0099】
したがって、本開示に従って、本明細書で上述された目的および利点を十分満たす方法、ならびに本明細書における使用のための組成物、キットおよび装置が提供されてきた。本開示は、本明細書で上述された特定の図面、実験、結果および言語と組み合わせて記載されてきたが、多くの代替物、修正および変形が当業者に明らかとなることは明白である。したがって、現在開示された発明概念の精神および広い範囲内に含まれる全てのこのような代替物、修正および変形を包含することが意図される。
図1
図2
図3
図4