(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】歩行動作可視化装置および歩行動作可視化方法並びに正対状態判定装置および正対状態判定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
A61B5/11 200
(21)【出願番号】P 2022001857
(22)【出願日】2022-01-07
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植田 智也
(72)【発明者】
【氏名】須藤 元喜
(72)【発明者】
【氏名】山城 由華吏
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-122376(JP,A)
【文献】特開2017-000546(JP,A)
【文献】特開2014-217696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/11-5/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の身体の左右における中心線である正中線上に配置された加速度センサから、前記被験者が静止した状態において重力方向を決定するための静止状態加速度データ、および、前記加速度センサが、正中線に対して正対状態にあるか否かを判定するために、前記被験者が歩行した際の加速度データである判定用加速度データを取得する加速度データ取得部と、
取得した前記静止状態加速度データおよび前記判定用加速度データに基づいて、前記加速度センサが、正中線に対して正対状態にあるか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定の結果、前記加速度センサが前記正中線に対して正対状態にあると判定された場合、前記加速度センサから、前記被験者が歩行中の歩行中加速度データを取得する歩行中加速度データ取得部と、
取得した前記歩行中加速度データに基づいて、前記被験者の歩行動作の解析を行う歩行動作解析部と、
前記歩行動作解析部による解析結果に基づいて、前記被験者の歩行動作モデル画像を表示させる表示制御部と、
を備えた歩行動作可視化装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記静止状態加速度データの左右軸成分、前後軸成分および鉛直軸成分と、前記判定用加速度データの左右軸成分、前後軸成分および鉛直軸成分と、のそれぞれの比較に基づいて、前記加速度センサが正対状態にあるか否かを判定する請求項1に記載の歩行動作可視化装置。
【請求項3】
前記歩行動作解析部は、
取得した前記歩行中加速度データと所定データベースとを照合して前記歩行中加速度データと近似する加速度データである近似加速度データを選択する近似加速度データ選択部と、
選択された前記近似加速度データと関連付けられた関節角度である関節角度データを前記所定データベースから抽出する抽出部と、
をさらに備え、
前記表示制御部は、抽出された前記関節角度データを用いて、前記歩行動作モデル画像を表示させる、請求項1または2に記載の歩行動作可視化装置。
【請求項4】
前記判定部による判定の結果、前記加速度センサの正中線に対する正対状態からのずれに応じてアラートを報知する報知部をさらに備えた請求項1~3のいずれか1項に記載の歩行動作可視化装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記歩行動作モデル画像とともに、前記被験者に適した歩行動作に誘導するための誘導情報を表示させる請求項1~4のいずれか1項に記載の歩行動作可視化装置。
【請求項6】
前記歩行動作モデル画像は、前記被験者の下半身の骨格モデル画像である請求項1~5のいずれか1項に記載の歩行動作可視化装置。
【請求項7】
被験者の身体の左右における中心線である正中線上に配置された加速度センサから、前記被験者が静止した状態において重力方向を決定するための静止状態加速度データ、および、前記加速度センサが、正中線に対して正対状態にあるか否かを判定するために、前記被験者が歩行した際の加速度データである判定用加速度データを取得する加速度データ取得ステップと、
取得した前記静止状態加速度データおよび前記判定用加速度データに基づいて、前記加速度センサが、正中線に対して正対状態にあるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定の結果、前記加速度センサが前記正中線に対して正対状態にあると判定された場合、前記加速度センサから、前記被験者が歩行中の歩行中加速度データを取得する歩行中加速度データ取得ステップと、
取得した前記歩行中加速度データに基づいて、前記被験者の歩行動作の解析を行う歩行動作解析ステップと、
前記歩行動作解析ステップにおける解析結果に基づいて、前記被験者の歩行動作モデル画像を表示させる表示制御ステップと、
を含む歩行動作可視化方法。
【請求項8】
被験者の身体の左右における中心線である正中線上に配置された加速度センサから、前記被験者が静止した状態において重力方向を決定するための静止状態加速度データ、および、前記加速度センサが、前記正中線に対して正対状態にあるか否かを判定するために、前記被験者が歩行した際の加速度データである判定用加速度データを取得する加速度データ取得部と、
取得した前記静止状態加速度データおよび前記判定用加速度データに基づいて、前記加速度センサが、正中線に対して正対状態にあるか否かを判定する判定部と、
を備えた正対状態判定装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記静止状態加速度データの左右軸成分、前後軸成分および鉛直軸成分と、前記判定用加速度データの左右軸成分、前後軸成分および鉛直軸成分と、のそれぞれの比較に基づいて、前記加速度センサが正対状態にあるか否かを判定する請求項8に記載の正対状態判定装置。
【請求項10】
被験者の身体の左右における中心線である正中線上に配置された加速度センサから、前記被験者が静止した状態において重力方向を決定するための静止状態加速度データ、および、前記加速度センサが、前記正中線に対して正対状態にあるか否かを判定するために、前記被験者が歩行した際の加速度データである判定用加速度データを取得する加速度データ取得ステップと、
取得した前記静止状態加速度データおよび前記判定用加速度データに基づいて、前記加速度センサが、正中線に対して正対状態にあるか否かを判定する判定ステップと、
を含む正対状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行動作可視化装置および歩行動作可視化方法並びに正対状態判定装置および正対状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、被測定者の腰の正中線上に装着された加速度センサを用いて、被測定者の歩行中の腰の位置に対応する物理量を定量的に算出する技術が開示されている(請求項1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、加速度センサを被測定者の腰の正中線上に装着させた状態で、加速度センサによる測定値から所定の物理量を算出するものであり、加速度センサが正しい測定値を出力できる状態か否かを判定していなかった。そのため、加速度センサから出力された測定値を用いて算出された物理量により行われた被測定者の歩行姿勢の評価は、信頼性が低かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る歩行動作視覚化装置は、
被験者の身体の左右における中心線である正中線上に配置された加速度センサから、前記被験者が静止した状態において重力方向を決定するための静止状態加速度データ、および、前記加速度センサが、正中線に対して正対状態にあるか否かを判定するために、前記被験者が歩行した際の加速度データである判定用加速度データを取得する加速度データ取得部と、
取得した前記静止状態加速度データおよび前記判定用加速度データに基づいて、前記加速度センサが、正中線に対して正対状態にあるか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定の結果、前記加速度センサが前記正中線に対して正対状態にあると判定された場合、前記加速度センサから、前記被験者が歩行中の歩行中加速度データを取得する歩行中加速度データ取得部と、
取得した前記歩行中加速度データに基づいて、前記被験者の歩行動作の解析を行う歩行動作解析部と、
前記歩行動作解析部による解析結果に基づいて、前記被験者の歩行動作モデル画像を表示させる表示制御部と、
を備えた。
【0006】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る歩行動作視覚化方法は、
被験者の身体の左右における中心線である正中線上に配置された加速度センサから、前記被験者が静止した状態において重力方向を決定するための静止状態加速度データ、および、前記加速度センサが、前記正中線に対して正対状態にあるか否かを判定するために、前記被験者が歩行した際の加速度データである判定用加速度データを取得する加速度データ取得ステップと、
取得した前記静止状態加速度データおよび前記判定用加速度データに基づいて、前記加速度センサが、正中線に対して正対状態にあるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定の結果、前記加速度センサが前記正中線に対して正対状態にあると判定された場合、前記加速度センサから、前記被験者が歩行中の歩行中加速度データを取得する歩行中加速度データ取得ステップと、
取得した前記歩行中加速度データに基づいて、前記被験者の歩行動作の解析を行う歩行動作解析ステップと、
前記歩行動作解析ステップにおける解析結果に基づいて、前記被験者の歩行動作モデル画像を表示させる表示制御ステップと、
を含む。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る正対状態判定装置は、
被験者の身体の左右における中心線である正中線上に配置された加速度センサから、前記被験者が静止した状態において重力方向を決定するための静止状態加速度データ、および、前記加速度センサが、前記正中線に対して正対状態にあるか否かを判定するために、前記被験者が歩行した際の加速度データである判定用加速度データを取得する加速度データ取得部と、
取得した前記静止状態加速度データおよび前記判定用加速度データに基づいて、前記加速度センサが、正中線に対して正対状態にあるか否かを判定する判定部と、
を備えた。
【0008】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る正対状態判定方法は、
被験者の身体の左右における中心線である正中線上に配置された加速度センサから、前記被験者が静止した状態において重力方向を決定するための静止状態加速度データ、および、前記加速度センサが、前記正中線に対して正対状態にあるか否かを判定するために、前記被験者が歩行した際の加速度データである判定用加速度データを取得する加速度データ取得ステップと、
取得した前記静止状態加速度データおよび前記判定用加速度データに基づいて、前記加速度センサが、正中線に対して正対状態にあるか否かを判定する判定ステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加速度センサが正しい測定値を出力できる状態で被験者の歩行動作の解析を行うので、信頼性の高い歩行動作の解析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の好ましい実施形態に係る歩行動作視覚化装置による歩行動作の解析の概要を説明するための図である。
【
図1B】本発明の好ましい実施形態に係る歩行動作視覚化装置による歩行動作の解析結果の表示例(横棒グラフ)を示す図である。
【
図1C】本発明の好ましい実施形態に係る歩行動作視覚化装置による歩行動作の解析結果の表示例(円グラフ)を示す図である。
【
図1D】本発明の好ましい実施形態に係る歩行動作視覚化装置による歩行動作の解析結果の表示例(振り子グラフ)を示す図である。
【
図1E】本発明の好ましい実施形態に係る歩行動作視覚化装置による歩行動作の解析結果の表示例(天秤グラフ)を示す図である。
【
図1F】本発明の好ましい実施形態に係る歩行動作視覚化装置による歩行動作の解析結果の表示例(レーダーチャート)を示す図である。
【
図1G】本発明の好ましい実施形態に係る歩行動作視覚化装置による歩行動作の解析結果を骨格モデル画像により表示した場合の一例を示す図である。
【
図1H】本発明の好ましい実施形態に係る歩行動作視覚化装置による歩行動作の解析結果を骨格モデル画像により表示した場合の他の一例を示す図である。
【
図1I】本発明の好ましい実施形態に係る歩行動作視覚化装置による歩行動作の解析結果を骨格モデル画像により表示した場合のさらに他の一例を示す図である。
【
図2】本発明の好ましい実施形態に係る歩行動作視覚化装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】本発明の好ましい実施形態に係る歩行動作視覚化装置が有する関節角度テーブルの一例を説明するための図である。
【
図4】本発明の好ましい実施形態に係る歩行動作視覚化装置のハードウェア構成を説明するための図である。
【
図5A】本発明の好ましい実施形態に係る歩行動作視覚化装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【
図5B】本発明の好ましい実施形態に係る歩行動作視覚化装置の正対状態判定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図5C】本発明の好ましい実施形態に係る歩行動作視覚化装置の歩行動作解析処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0012】
本発明の好ましい実施形態としての歩行動作可視化装置100について、
図1A~
図5Cを用いて説明する。歩行動作可視化装置100は、携帯端末等に内蔵されている加速度センサから得られる加速度データを用いて被験者110の歩行動作や歩行速度等をアニメーション画像等により可視化するための装置である。なお、以下の説明では、歩行動作可視化装置100としてスマートフォン120などの携帯端末を例に説明をするが、歩行動作可視化装置100は、その一部又は全部の機能をサーバなどの汎用コンピュータ装置で実現してもよい。
【0013】
歩行速度などの歩行動作は、一般的な健康状態や機能的能力を反映するだけではなくフレイル、ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)低下など様々な予測因子となる。そのため、血圧や体温等と並び歩行動作(歩行速度など)は、6番目のバイタルサインとも呼ばれている。例えば、歩行速度を保ち、いつまでも自分の足で歩くためには、身体に無理なく、身体を正しく使った歩行動作で歩くことが重要となる。
【0014】
例えば、大きな歩幅で歩くためには、全身の筋肉を動かすことだけではなく、股関節、膝関節、足関節など主要な関節を正常に動かすことが重要となる。すなわち、歩き方(歩行動作)が分かると、筋肉、関節等で正しく使えていない部位が分かったり、過度に使い過ぎている部位が分かったりするので、トレーニングや運動指導だけではなく、怪我の予防にもつなげることができる。
【0015】
ここで、歩き方(歩行動作)を計測する方法としては、例えば、全身の歩行姿勢を表す動作解析システムや、深度センサ-カメラ(キネクト)、ウェアラブルスーツ、複数のセンサを身体に装着する方法(モーションキャプチャなど)などがある。これらの方法は、身体の関節角度まで計測できることを特徴としているが、特殊な計測機器を必要とするなど、計測場面が限定的されているため、非日常の場面での歩き方を計測する方法となっている。
【0016】
日常生活における歩行動作や歩行姿勢などを計測するためには、被験者110の腰等に装着した加速度センサで身体の左右バランスや身体の前傾などの身体の動作や姿勢などを分類する必要がある。しかしながら、加速度センサの腰等への装着が正しく行われているか否かは、被験者本人の判断に任せられている。そのため、被験者110の歩行動作などを正しく計測するためには、まず、被験者110の身体に加速度センサを歩行動作や歩行姿勢などの計測のために適した位置へ装着する必要がある。
【0017】
また、上述した計測方法による出力結果は、身体の左右の揺れ具合や前傾具合、後傾具合などを見せるものや、いくつかの歩行モデルに類似して、所定パターンを用いて歩行動作などを示すものがほとんどであった。そのため、現在の歩行動作などの原因を特定することができる計測方法とはなっていなかった。
【0018】
したがって、本実施形態の歩行動作可視化装置100においては、まず、加速度センサが被験者110の身体の左右の中心である正中線上に装着されているか否かを判定する。そして、歩行動作可視化装置100は、加速度センサが正中線上に装着されている状態で被験者110の歩行中の加速度データを計測する。次に、歩行動作可視化装置100は、計測された加速度データと近似する加速度データを所定データベースから選択して、被験者110の歩行中の関節角度を推定し、被験者110の歩行動作を画像化する。また、歩行動作可視化装置100は、加速度センサが正中線からずれている場合には、被験者に110に対して、アラートを報知して加速度センサを正中線上に配置するように促すことができる。
【0019】
なお、
図1Aに示したように、本実施形態においては、スマートフォン120やスマートウォッチ130等に内蔵されている加速度センサや、活動量計140が有する加速度センサを用いることができる。活動量計140は、例えば、ベルトなどに内蔵して使用することができる。また、加速度センサは、スマートフォン120やスマートウォッチ130に内蔵されているものではなく、独立して存在しているセンサを用いてもよい。この場合、加速度センサとスマートフォン120などとは、無線通信や有線通信により計測データのやり取りを行う。
【0020】
そして、歩行動作可視化装置100における歩行動作の計測においては、まず、被験者110がスマートフォン120等を自身の身体の正中線上に構えるように、歩行動作可視化装置100が被験者に、音声や画像などで指示する。加速度センサからのデータが一定値の時間が2秒あるいは3秒程度続いたら、歩行動作可視化装置100は、被験者110がスマートフォン120等を正中線上に構えたと判断し、その状態で、歩行動作可視化装置100は、加速度データを取得して、重力方向を決定する。なお、被験者110は、スマートフォン120を構える際には、被験者110の腹部にスマートフォン120を接触させるようにしてもよい。さらに、被験者110が、スマートウォッチ130を利用する場合は、スマートウォッチ130を付けている左右いずれかの手首を自身の腹部の位置に持ってくるようにしてもよい。また、被験者110が、活動量計140を利用する場合は、活動量計140が取り付けられたベルトを被験者110の腹部に巻くようにしてもよい。なお、被験者110が、加速度センサを正中線上で正対状態となるように構えたり、配置させたりすることができれば、ここに示した方法以外のいずれの方法を採用してもよい。
【0021】
次に、被験者110がスマートフォン120を正中線上に構えた状態で、歩行動作可視化装置100は、被験者110に数歩歩くよう指示する。このようにして被験者110を歩かせた場合の加速度データを取得して、スマートフォン120等が正中線に対して正対している状態か否かを判定する。ここで、スマートフォン120等が正対状態にない場合には、歩行動作可視化装置100は、被験者110に対して、アラートを報知して、スマートフォン120等が正対状態となるように促す。
【0022】
スマートフォン120等が正対状態となったら、歩行動作可視化装置100は、被験者110に歩行を開始するように例えば音声で指示し、被験者110が歩行中の加速度データを取得し、該歩行中の加速度データを用いて被験者110の歩行動作の解析を行う。被験者110の歩行動作の解析が終了したら、歩行動作可視化装置100は、被験者110の歩行動作を歩行動作モデル画像150として、例えば、スマートフォン120のディスプレイ等に表示させる。なお、解析に必要十分な量の加速度データが得られたことを検出したら、歩行動作可視化装置100は、被験者110に歩行を終了するよう音声で指示するよう構成してもよい。
【0023】
被験者110は、歩行動作モデル画像150を見ることにより、現状の自身の歩行動作を認識することができる。また、歩行動作可視化装置100は、被験者110に対して、被験者110の歩行動作の欠点や改善点、改善方法、アドバイス等を歩行動作モデル画像150とともに表示させることができる。
【0024】
そして、被験者110は、表示された改善方法等に従った歩行動作を実践することにより、自然と被験者110に適した歩行動作を身に付けることが可能となる。なお、歩行動作モデル画像150やこれとともに表示させる改善方法やアドバイスは、例えば、
図1B~
図1Iに示したように、様々な方法により表示させることができる。
【0025】
例えば、
図1Bに示したように、骨盤角度、股関節角度、股関節角度、足関節角度等について、どのような状態(角度)にあるかを、横棒グラフを用いて表示させることができる。さらに、横棒グラフには、これらの標準値を合わせて表示させることもできる。
【0026】
歩行動作可視化装置100は、例えば、骨盤角度については、前傾と後傾との間で、被験者110の姿勢がどの状態(角度)にあるかを表示できる。なお、歩行動作可視化装置100は、被験者110の骨盤角度とともに、被験者110の骨盤角度がどの範囲の値に収まっていればよいのかを示す最適角度の範囲を合わせて表示することもできる。
【0027】
同様に、歩行動作可視化装置100は、股関節角度について、被験者110の姿勢がどのような状態(角度)にあるのかを表示させることができる。歩行動作可視化装置100は、股関節角度については、左右の股関節角度について、どの程度、前に振り出されているか、後に振り出されているかを表示させることができる。そして、歩行動作可視化装置100は、左右股関節角度について、被験者110の股関節角度がどの範囲に収まっていればよいのかを示す、最適角度範囲を合わせて表示させることもできる。
【0028】
さらに、歩行動作可視化装置100は、膝関節角度についても、被験者110の姿勢がどのような状態(角度)にあるかを表示させることができる。歩行動作可視化装置100は、膝関節角度については、左右の膝関節角度について、どの程度、振り出し時の膝の伸び具合があるか、蹴り出し時に膝が伸びているかなどを表示させることができる。そして、歩行動作可視化装置100は、左右の膝関節角度について、被験者110の膝関節角度がどの範囲に収まっていればよいのかを示す最適角度範囲を合わせて表示させることができる。
【0029】
また、歩行動作可視化装置100は、足関節角度について、被験者110の姿勢がどのような状態(角度)にあるかを表示させることができる。歩行動作可視化装置100は、足関節角度については、左右の足関節角度について、前に伸ばしたときの足首の曲がりや、蹴り出し時に足首が伸びているかを表示させる。そして、歩行動作可視化装置100は、左右の足関節角度について、被験者110の足関節角度がどの範囲に収まっていればよいのかを示す最適角度範囲を合わせて表示させることもできる。
【0030】
次に、
図1Cに示したように、歩行動作可視化装置100は、骨盤角度、股関節角度、膝関節角度、足関節角度等について、どのような状態(角度)にあるかを、円グラフを用いて表示させることができる。さらに、円グラフには、これらの標準値を合わせて表示させることもできる。
【0031】
歩行動作可視化装置100は、例えば、骨盤角度については、1つの円グラフを用いて、どの程度、前傾または後傾しているかを表示させることができる。円グラフ表示により、被験者110は、一目で、自身の骨盤角度がどのような状態にあるかを視覚的に認識することができる。なお、以下に示すように、他の関節についても、被験者110は、視覚的に認識することができる。
【0032】
同様に、歩行動作可視化装置100は、股関節角度について、被験者110の姿勢がどのような状態(角度)にあるかを、2つの円フラグを用いて表示させることができる。歩行動作可視化装置100は、股関節角度については、左右の股関節角度について、2つの円フラフを用いて、どの程度、前に振り出されているか、後に振り出されているかを表示させる。そして、歩行動作可視化装置100は、左右の股関節角度について、被験者110の股関節角度がどの範囲に収まっていればよいのかを示す、最適角度範囲を同じ円グラフの中に合わせて表示させることもできる。
【0033】
さらに、歩行動作可視化装置100は、膝関節角度について、被験者110の姿勢がどのような状態(角度)にあるかを、2つの円グラフを用いて表示させることができる。歩行動作可視化装置100は、膝関節角度については、左右の膝関節角度について、どの程度、振り出し時の膝の伸び具合があるか、蹴り出し時に膝が伸びているかなどを表示させる。そして、歩行動作可視化装置100は、左右の膝関節角度につて、被験者110の膝関節角度がどの範囲に収まっていればよいのかを示す最適角度範囲を合わせて表示させることもできる。
【0034】
また、歩行動作可視化装置100は、足関節角度について、被験者110の姿勢がどのような状態(角度)にあるかを、2つの円グラフを用いて表示させることができる。歩行動作可視化装置100は、足関節角度については、左右の足関節角度について、前に伸ばしたときの足首の曲がりや、蹴り出し時に足首が伸びるかを表示させる。そして、歩行動作可視化装置100は、左右の足関節角度について、被験者110の足関節角度がどの範囲に収まっていればよいのかを示す最適角度範囲を合わせて表示させることができる。
【0035】
次に、
図1Dに示したように、歩行動作可視化装置100は、骨盤角度、股関節角度、膝関節角度、足関節角度等について、どのような状態(角度)にあるかを、振り子フラフを用いて表示させることができ、さらに、これらの標準値や左右差などを合わせて表示させることができる。歩行動作可視化装置100は、例えば、骨盤角度については、1つの振り子グラフを用いて、どの程度、前傾または後傾しているかを表示させることができる。振り子グラフ表示により、被験者110は、一目で、自身の骨盤角度がどのような状態にあるかを視覚的に認識することができる。なお、以下に示すように、他の関節についても、被験者110は、視覚的に認識することができる。
【0036】
同様に、歩行動作可視化装置100は、股関節角度について、被験者110の姿勢がどのような状態(角度)にあるかを、2つの振り子グラフを用いて、どの程度、前に振り出されているか、後に蹴り出されているかなどを表示させる。そして、歩行動作可視化装置100は、左右の股関節角度について、被験者110の股関節角度がどの範囲に収まっていればよいのかを示す、最適角度範囲を同じ振り子グラフの中に合わせて表示させることができる。また、歩行動作可視化装置100は、左右の股関節角度に左右差があれば、これについても、表示させることができる。
【0037】
さらに、歩行動作可視化装置100は、膝関節角度について、被験者110の姿勢がどのような状態(角度)にあるかを、2つの振り子グラフを用いて表示させることができる。歩行動作可視化装置100は、膝関節角度については、左右の膝関節角度について、どの程度、振り出し時の膝の伸び具合があるか、蹴り出し時に膝が伸びているかなどを表示させる。そして、歩行動作可視化装置100は、左右の膝関節角度について、被験者110の膝関節角度どの範囲に収まっていればよいのかを示す最適角度範囲を合わせて表示させることができる。
【0038】
また、歩行動作可視化装置100は、足関節角度について、被験者110の姿勢がどのような状態(角度)にあるかを、2つの振り子グラフを用いて表示させることができる。歩行動作可視化装置100は、足関節角度については、左右の足関節角度について、前に伸ばしたときの足首の曲がりや、蹴り出し時に足首が伸びているかを表示させる。そして、歩行動作可視化装置100は、左右の足関節角度について、被験者110の足関節角度がどの範囲に収まっていればよいのかを示す最適角度範囲を合わせて表示させることができる。
【0039】
次に、
図1Eに示したように、歩行動作可視化装置100は、骨盤角度、股関節角度、膝関節角度、足関節角度等について、どのような状態(角度)にあるかを、天秤グラフを用いて表示させることができる。歩行動作可視化装置100は、天秤グラフを用いる場合、被験者110の左右差や左右バランスなどを強調させて表示させることができる。
【0040】
歩行動作可視化装置100は、例えば、骨盤角度については、1つの天秤グラフを用いて、どの程度、前傾しているのか、後傾しているのかのついての前後バランスを表示させることができる。天秤グラフ表示により、被験者110は、一目で、自身の骨盤角度がどのような状態にあるかを視覚的に認識することができる。なお、以下に示すように、他の関節についても、被験者110は、視覚的に認識することができる。
【0041】
同様に、歩行動作可視化装置100は、股関節角度について、被験者110の姿勢がどのような状態(角度)にあるかを、1つの天秤グラフを持ち手、どの程度、前に振り出されているか、後に蹴り出されているかなどを表示させる。例えば、歩行動作可視化装置100は、被験者110の膝関節角度について、歩行中に左右差がなければ、釣り合った天秤の図を表示させるとともに、「Good!」の文字を表示させるなど様々な方法により、被験者110の状態を表示させることができる。
【0042】
さらに、歩行動作可視化装置100は、膝関節角度について、被験者110の姿勢がどのような状態(角度)にあるかを、1つの天秤グラフを用いて表示させることができる。歩行動作可視化装置100は、膝関節角度については、左右の膝関節角度について、どの程度、振り出し時の膝の伸び具合があるか、蹴り出し時に膝が伸びているかなどを表示させる。そして、歩行動作可視化装置100は、膝関節角度について、例えば、振り出し時の膝の伸び具合と蹴り出し時の膝の伸び具合とを比較した結果、振り出し時の膝の伸び具合が大きい場合、天秤グラフにおいて、振り出し時の膝の伸び具合側の天秤の皿を下に下げた図を表示させる。このような表示とすることにより、被験者110は、振り出し時の膝の伸び具合に対する負担が強いことを容易かつ確実に認識することが可能となる。
【0043】
また、歩行動作可視化装置100は、足関節角度について、被験者110の姿勢がどのような状態(角度)にあるかを、1つの天秤グラフを用いて表示させることができる。歩行動作可視化装置100は、足関節角度については、左右の足関節角度について、前に伸ばしたときの足首の曲がりや、蹴り出し時に足首がのびているかを表示させる。例えば、歩行動作可視化装置100は、被験者110の足関節角度について、歩行中に前後差がなければ、釣り合った天秤の図を表示させる。さらに、歩行動作可視化装置100は、前に伸ばしたときの足首の曲がりよりも、蹴り出し時の足首の伸びが大きい場合には、蹴り出し時の足首の伸び側の天秤の皿を下に下げた図を表示させる。このようにすることにより、被験者110は、蹴り出し時の蹴り出しが強いことを容易かつ確実に認識することが可能となる。
【0044】
次に、
図1Fに示したように、歩行動作可視化装置100は、骨盤角度、股関節角度、膝関節角度、足関節角度等について、どのような状態(角度)にあるかを、レーダーチャートを用いて表示させることができる。歩行動作可視化装置100は、レーダーチャートを用いて表示させる場合、例えば、レーダーチャート右側に被験者110の身体の右側にある関節の角度等を表示させ、レーダーチャートの左側に被験者110の身体の左側にある関節の角度等を表示させる。このように表示させることにより、被験者110は、自身の左右差や左右バランスを一目で認識することが可能となる。
【0045】
歩行動作可視化装置100は、例えば、骨盤角度については、どの程度、前傾しているのか、後傾しているのかについて、レーダーチャートに表示させることができる。また、歩行動作可視化装置100は、被験者110の姿勢がどの範囲に収まっていればよいのかを示す最適角度の範囲を合わせて表示する。
【0046】
同様に、歩行動作可視化装置100は、股関節角度について、被験者110の姿勢がどのような状態(角度)にあるのかを表示させることができる。歩行動作可視化装置100は、股関節角度については、左右の股関節角度について、どの程度、前に振り出されているか、後に振り出されているかを表示させる。そして、歩行動作可視化装置100は、左右股関節角度について、被験者110の股関節角度がどの範囲に収まっていればよいのかを示す、最適角度範囲を合わせて表示させることができる。
【0047】
さらに、歩行動作可視化装置100は、膝関節角度について、被験者110の姿勢がどのような状態(角度)にあるかを表示させることができる。歩行動作可視化装置100は、膝関節角度については、左右の膝関節角度について、どの程度、振り出し時の膝の伸び具合があるか、蹴り出し時に膝が伸びているかなどを表示させることができる。歩行動作可視化装置100においては、レーダーチャートにより膝関節角度の状態を表示させるので、被験者110は、膝関節角度の左右差や左右バランスを一目で認識することができる。なお、関節角度としては、前後の屈曲伸展の他に、左右回旋、内外転もある。また、正中線における加速度データ以外の計測データ、例えば、イヤホンあるいはヘッドホンに内蔵した加速度センサからのデータや、手首に備える腕時計型生体計測装置の加速度センサからのデータなど、被験者の身体に装着した加速度センサからのデータを用いて、首の関節、肩関節、肘関節、手首関節に関してもデータを取得すれば、同様に関節の動作状態を表示することができる。
【0048】
また、歩行動作可視化装置100は、足関節角度について、被験者110の姿勢がどのような状態(角度)にあるかを表示させることができる。歩行動作可視化装置100は、足関節角度については、左右の足関節角度について、前に伸ばしたときの足首の曲がりや、蹴り出し時に足首が伸びているかを表示させる。そして、歩行動作可視化装置100は、左右の足関節角度について、被験者110の足関節角度がどの範囲に収まっていればよいのかを示す最適角度範囲を合わせて表示させることができる。このように、歩行動作可視化装置100においては、レーダーチャートを用いて、各関節の状態を表示させるので、被験者110は、自身の歩行動作の欠点や改善点を視覚的に認識することが可能となり、自身の歩行動作を改善させようとする動機付けを与えることができる。
【0049】
次に、
図1G~
図1Iを参照して、被験者110の歩行動作の解析結果の表示方法について説明する。例えば、
図1Gに示したように、歩行動作可視化装置100は、被験者110の下半身の骨格モデル画像111に、歩行動作の改善のために被験者110に意識的に動かすようにさせる関節の位置に丸印113を表示させる。歩行動作可視化装置100は、さらに、「もっと大きく動かす場所」等のアドバイスとともに表示させることもできる。また、歩行動作可視化装置100は、例えば、足首の関節について、右足の関節が左足の関節よりも使えていない場合等に、「左足よりも使えていないのでもっと蹴り出す必要あり」というアドバイスも合わせて表示できる。
【0050】
また、例えば、
図1Hに示したように、歩行動作可視化装置100は、被験者110の下半身の骨格モデル画像に矢印114や直線115を表示させる。つまり、歩行動作可視化装置100は、矢印114を用いて、関節や筋肉等の動かす方向を示したり、例えば、大腿部の横に直線115を表示したりして、負荷のかかっている筋肉(鍛えるべき部位)を表示する。このように、歩行動作可視化装置100は、歩行動作の改善に役立つアドバイスを合わせて表示させることにより、被験者110は、表示されたアドバイスに従って歩行動作を改善させることができる。
【0051】
さらに、
図1Iに示したように、歩行動作可視化装置100は、被験者110の骨格モデル画像111と被験者110が目指すべき骨格モデル画像112とを並列して表示して、さらに、被験者110が意識すべき場所を丸印116などで表示してもよい(
図1I左図)。このような並列表示とすることにより、被験者110は、自身の歩行動作と目指すべき歩行動作とを比較することができるので、より明確に改善箇所を意識しながら、歩行改善に取り組むことができる。
【0052】
また、歩行動作可視化装置100は、被験者110の骨格モデル画像111と被験者110が目指すべき骨格モデル画像112とを並列して表示して、さらに、被験者110が意識すべき場所等を矢印117などで表示してもよい(
図1I中央図)。このように、被験者110の関節等の動きとして不足している位置をより大きく動かすことができるように、矢印を表示して、動かすべき方向と大きさを表示するようにしてもよい。
【0053】
さらに、歩行動作可視化装置100は、このままの歩行動作を継続した場合に、将来的に怪我や障害等のリスクが発生する可能性のある位置を、被験者110の骨格モデル画像111に丸印116や矢印117で表示する。歩行動作可視化装置100は、被験者110の骨格モデル画像の下に、リスクの発生する確率等の表示として、例えば、レーダーチャート118を合わせて表示するようにしてもよい(
図1I右図)。レーダーチャート118においては、障害等のリスクのある関節のD位置の確率が大きく表示されている。このように、現状の歩行動作を継続した場合に起こり得る怪我等の可能性を合わせて表示することで、被験者110に対して、歩行を改善するための動機付けを与えることができる。
【0054】
なお、リスクの推定は、関節角度から、歩幅、歩行速度、左右差の少なくとも2つを推定し、これらのうち2つのパラメータ、好ましくは3つのパラメータを用いて行う。
【0055】
また、歩行動作可視化装置100は、
図1G~
図1I等に示した骨格モデル画像111,112を、アニメーション画像のように、動かして表示させることができる。このように、被験者110の骨格モデル画像111を動かして表示することで、被験者110は、自身の歩行動作(歩行姿勢)の現状を容易に認識することができる。また、歩行動作可視化装置100は、被験者110の骨格モデル画像111を動かして表示するとともに、上述したようなアドバイス等を並列して表示させることもできる。このように、被験者110に対して、歩行動作を改善させるためのヒントやアドバイスなどを表示させることにより、被験者110は、どの関節や部位に注意を払えばよいかを容易に認識することができる。歩行動作可視化装置100は、さらに、当該関節の動かし方に関するアドバイス等も合わせて表示させるようにすれば、被験者110は、より容易に自身の歩行動作を改善させることが可能となる。
【0056】
次に
図2を参照して、歩行動作可視化装置100の構成について説明する。歩行動作可視化装置100は、加速度データ取得部201、判定部202、歩行中加速度データ取得部203、歩行動作解析部204、表示制御部205および報知部206を有する。歩行動作解析部204は、さらに、近似加速度データ選択部241および抽出部242を有する。
【0057】
加速度データ取得部201は、被験者110の身体の左右における中心線である正中線上に配置された加速度センサから、被験者110が静止Dした状態において重力方向を決定するための静止状態加速度データを取得する。同様に、加速度データ取得部201は、加速度センサから、加速度センサが、正中線に対して正対状態にあるか否かを判定するために、被験者110が歩行した際の加速度データである判定用加速度データを取得する。
【0058】
被験者110は、まず、スマートフォン120の画面に表示された説明に従い、加速度センサを有するスマートフォン120を両手で保持して、自身の身体の腹部の正面に位置するようにして、スマートフォン120を動かさずに静止した状態を維持する。この状態で、加速度の変化が所定時間、例えば2秒間無いことを検知したら、加速度データ取得部201は、静止状態加速度データを取得する。
【0059】
次に、被験者110が、スマートフォン120を自身の腹部の正面に配置させた状態で、歩行動作可視化装置100は、被験者110に数歩歩くように促す。歩行動作可視化装置100は、例えば、スマートフォン120のスピーカから被験者110の行動を促すための音声を出力して、被験者110に数歩歩くように促す。そして、加速度データ取得部201は、被験者110が数歩歩いている間の加速度データを加速度センサが正中線に対して正対状態にあるか否かを判定する判定用加速度データとして取得する。
【0060】
判定部202は、取得した静止状態加速度データおよび判定用加速度データに基づいて、加速度センサが正中線に対して正対状態にあるか否かを判定する。具体的には、判定部202は、静止状態加速度データの左右軸成分、前後軸成分および鉛直軸成分と、判定用加速度データの左右軸成分、前後軸成分および鉛直軸成分と、のそれぞれに比較に基づいて、加速度センサが正対状態にあるか否かを判定する。
【0061】
判定部202は、まず、静止状態加速度データの左右軸成分、前後軸成分および鉛直軸成分、すなわち、各軸方向の静止状態加速度の波形データを用いて、重力方向を決定する。次に、判定部202は、判定用加速データの左右軸成分、前後軸成分および鉛直軸成分、つまり、各軸方向の判定用加速度の波形データを、決定した重力方向などと比較することにより、正対状態を判定する。
【0062】
より詳細に説明すると判定部202は、まず、静止状態加速度データの左右軸成分、前後軸成分および鉛直軸成分、すなわち、各軸方向の静止状態加速度のデータを用いて、重力方向を決定する。次に、判定用加速度データを用いて、進行方向を決定する。これらの進行方向と鉛直方向とを基に、加速度センサが持つ上下左右前後の直行する軸を予め定めた回転順により、重力ベクトルと鉛直ベクトルを合わせて3軸の回転軸角度を計算する。この回転角度の大小により、正対状態を判定する。
【0063】
加速度センサから得られた加速度の各軸成分(各軸方向の波形データ)から正対状態を判定する方法としては、例えば、HR(Harmonic Ratio)を用いることができる。HRは、左右軸成分、前後軸成分および鉛直軸成分の加速度データ(加速度信号)を分解して、離散フーリエ変換で高調波を計算したものであり、離散フーリエ変換、偶数周波数成分と奇数周波数成分の比を計算して得られる。例えば、各軸成分のうち、HRの値が0.9以下のものが存在した場合、当該軸成分について、正対状態から離れていると判定し、当該軸成分の位置を修正するように、被験者110に対して促すことができる。そして、各軸成分のHRの値が0.9以上となった場合に、判定部202は、加速度センサ(スマートフォン120)が、被験者110の身体の正中線に対して正対状態にあると判定する。
なお、被験者110に対しての位置の修正を促し、0.9を超えない場合は、修正後が大きい場合にはその位置を保持するように、修正前が大きい場合には、元の位置、すなわち修正前の位置に戻すように被験者に指示して、以後の測定を行うのが好ましい。
【0064】
また、判定部202は、HRの値を用いる代わりに、例えば、加速度センサから得られた加速度データの波形から、中央の波形をアルゴリズム等で推定するようにしてもよい。例えば、R/Lの波形を主成分分析して、中央の波形を推定するための推定式を作成してもよい。あるいは、判定部202は、加速度データをSVM(Support-vector Machine)などの機械学習を用いて、AI(Artificial Intelligence:人工知能)により正対状態にあるか否かを判定してもよい。なお、正対状態判定のための手法は、ここに示した手法には限定されず、様々な手法を用いることができる。
【0065】
なお、判定部202は、スマートフォン120のようにジャイロスコープを有している機器を利用する場合、加速度センサのデータにさらにジャイロスコープのデータを加えて正対状態を判定するようにしてもよい。
【0066】
歩行中加速度データ取得部203は、判定部202による判定の結果、加速度センサが正中線に対して正対状態にあると判定された場合、加速度センサから、被験者110が歩行中の歩行中加速度データを取得する。加速度センサが正対状態にあると判定された場合、歩行動作可視化装置100は、例えば、被験者110に対して、歩行を開始するように促す音声等を例えばスマートフォン120のスピーカから出力するようにしてもよい。なお、音声を出力する代わりに、歩行を開始するように促すメッセージをディスプレイ等に出力するようにしてもよい。被験者110は、スピーカからの出力に応じて歩行動作を開始し、歩行中加速度データ取得部203は、これ以後の加速度センサで計測された加速度データを被験者110が歩行中の歩行中加速度データとして取得する。
【0067】
歩行動作解析部204は、取得した歩行中加速度データに基づいて、被験者110の歩行動作の解析を行う。歩行動作解析部204による被験者110の歩行動作の解析は、取得された歩行中加速度データに近似する加速度データを所定データベースから選択することにより行われる。ここで、歩行動作解析部204は、さらに、近似加速度データ選択部241および抽出部242を有している。
【0068】
まず、近似加速度データ選択部241において、歩行中加速度データ取得部203で取得した加速度データの左右軸成分、前後軸成分および鉛直軸成分を所定データベースに格納されている加速度の左右軸成分、前後軸成分および鉛直軸成分と照合する。そして、近似加速度データ選択部241は、取得した歩行中加速度データと近似する加速度データを特定する。すなわち、近似加速度データ選択部241は、取得した歩行中加速度データの波形(波形特徴)と、所定データベースに格納されている加速度データの波形(波形特徴)とのマッチングにより、歩行中加速度データの波形と近似(類似)する加速度データの波形を特定し、選択する。なお、近似加速度データ選択部241は、歩行中加速度データの波形と一致する加速度データの波形を特定し、選択してもよい。
【0069】
近似加速度データ選択部241によるマッチングは、例えば、各波形データ同士のユークリッド距離やコサイン距離などを用いて行うことができる。さらに、近似加速度データ選択部241によるマッチングは、例えば、機械学習ライブラリのtslearnにおいて、距離尺度としてDTW(Dynamic Time Warping:動的時間伸縮法)を用いて計算することにより行ってもよい。つまり、マッチングは、tslearnにおいて、時系列データのパターンマッチングにより行うことができる(0に近い程近似していると判定される)。
【0070】
また、近似加速度データ選択部241によるマッチングは、加速度の波形データ同士を並べて、これらの間の相関関係を調べることにより行ってもよい(1に近い程近似していると判定される)。この他にも、例えば、近似加速度データ選択部241は、被験者110の関節角度を使用してマッチングを行っても(AIST歩行データベース2019)、SVMなどの機械学習を用いてAIでマッチングを行ってもよい。
【0071】
次に、抽出部242において、選択された近似加速度データと関連付けられた関節角度である関節角度データを所定データベースから抽出する。ここで、所定データベースには、加速度データの各成分の値と関節角度との関係が記憶されている。そして、抽出部242は、所定データベース等に格納されている各軸成分の加速度の値(波形データ等)に関連付けられている関節角度データを、被験者110の関節角度の推定値として抽出する。
なお、所定データベース等には、上半身の関節角度情報が含まれたものを用いることもできる。この場合には、前述と異なり、正中線上の加速度センサのデータのみから、上半身の関節角度を推定する。
【0072】
表示制御部205は、歩行動作解析部204による解析結果に基づいて、被験者110の歩行動作モデル画像150を表示させる。表示制御部205は、例えば、スマートフォン120などのディスプレイや歩行動作可視化装置100の外部に存在するディスプレイなどに、歩行動作モデル画像150を表示させる。表示させる歩行動作モデル画像150は、静止画であっても、アニメーションなどの動画であってもよい。
【0073】
また、表示制御部205は、歩行動作モデル画像150として、被験者110の下半身の骨格モデル画像を表示させる。なお、表示制御部205は、被験者110の下半身の骨格モデル画像の他にも、例えば、被験者110の下半身のモデル画像(骨格のみではなく、筋肉や皮膚などが付いている画像)を表示してもよい。
なお、加速度センサからのデータ若しくは、データベースを用いて推定した、上半身の関節角度情報を使うことができれば、上半身を表示することもできるのは無論である。
【0074】
さらに、表示制御部205は、歩行動作モデル画像150(下半身の骨格モデル画像)とともに、被験者110に適した歩行動作に誘導するための誘導情報を表示させる。例えば、表示制御部205は、骨格モデル画像とともに、被験者110の前傾後傾具合や左右バランス、歩行動作を改善するためのアドバイスなどを表示することもできる。また、表示制御部205は、動かすべき関節の位置を示す丸印113,116や、関節を動かすべき方向や量などを示す矢印114,117(矢印の向きや線の太さ)を表示して、関節等の動かし方を誘導する情報を表示してもよい。この他にも、表示制御部205は、被験者110に適した歩行動作を実現できるように、関節や筋肉などを動かす順番を示す数字などを、歩行動作モデル画像150とともに表示するようにしてもよい。
【0075】
報知部206は、判定部202による判定の結果、加速度センサの正中線に対する正対状態からのずれに応じてアラートを報知する。報知部206により報知されるアラートは、例えば、振動や音、光などであるが、これらには限定されない。例えば、上述したHRの値に応じて、報知するアラートを変化させながら、被験者110に対して、加速度センサの位置を修正するように促してもよい。すなわち、報知部206は、例えば、加速度センサが正対状態に近づくにしたがって(HRが0.9に近づく)、スマートフォン120が弱く振動するようしてもよい。これとは反対に、加速度センサが正対状態から離れるにしたがって(HRが0.9から遠ざかる)、スマートフォン120が強く振動するようにしてもよい。
【0076】
また、報知部206は、スマートフォン120を振動させる他に、例えば、スマートフォン120のスピーカや、電磁波や光通信を用いたワイヤレス式のイヤホンから接近音を出力させてもよい。出力させる接近音は、正対状態からのずれに応じて(HRの値に応じて)、その高低や周期などが変化するようにしてもよい。さらに、報知部206は、接近音の他に、例えば、スマートフォン120が有するライトを点灯させたり、点滅させたりすることにより、被験者110に対して、正対状態からのずれを報知してもよい。例えば、ずれの量に応じて、ライトの点滅の間隔が変化するようにしても、また、ずれの量に応じて、点灯するライトの強弱が変化するようにしてもよい。このように、報知部206は、被験者110に対して、加速度センサの位置の修正に対するフィードバックを送るので、被験者110は、加速度センサを正対状態に合わせることができる。
【0077】
なお、歩行動作可視化装置100の構成のうち、加速度データ取得部201と判定部202とを取り出して、加速度センサが、被験者110の正中線に対して正対状態にあるか否かを判定するための正対状態判定装置とすることもできる。
【0078】
次に
図3を参照して、歩行動作可視化装置100が有する関節角度テーブル301の一例について説明する。関節角度テーブル301は、ID(Identifier)311に関連付けて、時刻312、加速度データ313および関節角度データ314を記憶する。ID311は、時刻312等の各種データを識別するための識別子である。時刻312は、加速度データ313が計測された時刻である。加速度データ313は、加速度センサにより計測されたデータである。関節角度データ314は、加速度センサにより計測された加速度データに対応する各関節の角度のデータである。これらのデータは、いわゆるビッグデータとして収集されたデータであってもよい。そして、歩行動作可視化装置100は、関節角度テーブル301を参照して、推定された被験者110の関節角度に近似する関節角度データを抽出する。
【0079】
図4を参照して、歩行動作可視化装置100のハードウェア構成について説明する。CPU(Central Processing Unit)410は、演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで
図2の歩行動作可視化装置100の各機能構成を実現する。CPU410は複数のプロセッサを有し、異なるプログラムやモジュール、タスク、スレッドなどを並行して実行してもよい。ROM(Read Only Memory)420は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインタフェース430は、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPU410は1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインタフェース430は、CPU410とは独立したCPUを有して、RAM(Random Access Memory)440の領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAM440とストレージ450との間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい(図示なし)。さらに、CPU410は、RAM440にデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPU410は、処理結果をRAM440に準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインタフェース430やDMACに任せる。
【0080】
RAM440は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM440には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。静止状態加速度データ441は、被験者110が加速度センサを、自身の身体の正面の正中線に正対する位置に構えた状態で、当該加速度センサにより計測された加速度のデータである。判定用加速度データ442は、被験者110が構えた加速度センサが、被験者110の身体の正面の正中線に正対する位置に構えた状態で、被験者110が歩行した際の加速度のデータである。歩行中加速度データ443は、加速度センサが正対状態において、被験者110が、歩行中の加速度のデータである。推定関節角度データ444は、被験者110が歩行中の下半身の関節角度の推定値である。近似関節角度データ445は、推定された被験者110の関節角度に近似する関節角度のデータであり、例えば、所定データベース等から抽出されるデータである。骨格モデル画像データ446は、被験者110の歩行動作モデル画像150として、被験者110の下半身の骨格を表したデータであり、被験者110の歩行動作を動画や静止画により再現するためのデータである。
【0081】
送受信データ447は、ネットワークインタフェース430を介して送受信されるデータである。また、RAM440は、各種アプリケーションモジュールを実行するためのアプリケーション実行領域448を有する。
【0082】
ストレージ450には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ450は、関節角度テーブル301を格納する。関節角度テーブル301は、
図3に示した、ID311と加速度データ313や関節角度データ314などとの関係を管理するテーブルである。
【0083】
ストレージ450は、さらに、加速度データ取得モジュール451、判定モジュール452、歩行中加速度データ取得モジュール453、歩行動作解析モジュール454、表示制御モジュール457および報知モジュール458を格納する。歩行動作解析モジュール454は、さらに、近似加速度データ選択モジュール455および抽出モジュール456を有する。加速度データ取得モジュール451は、静止状態加速度データおよび判定用加速度データを取得するモジュールである。判定モジュール452は、加速度センサが正中線に対して正対状態にあるか否かを判定するモジュールである。歩行中加速度データ取得モジュール453は、加速度センサが正対状態にある場合、被験者110が歩行中の歩行中加速度データを取得するモジュールである。歩行動作解析モジュール454は、歩行中加速度データに基づいて、被験者110の歩行動作の解析を行うモジュールである。近似加速度データ選択モジュール455は、取得した歩行中加速度データと所定データベース(例えば、関節角度テーブル301等)とを照合して歩行中加速度データと近似する近似加速度エータを所定データベースから選択するモジュールである。抽出モジュール456は、選択された近似加速度データと関連付けられた関節角度である関節角度データを所定データベースから抽出するモジュールである。表示制御モジュール457は、被験者110の歩行動作の解析結果に基づいて、被験者110の歩行動作モデル画像150を表示させるモジュールである。報知モジュール458は、加速度センサの正中線に対する正対状態からのずれに応じてアラートを報知するモジュールである。これらのモジュール451~458は、CPU410によりRAM440のアプリケーション実行領域448に読み出され、実行される。制御プログラム459は、歩行動作可視化装置100の全体を制御するためのプログラムである。
【0084】
入出力インタフェース460は、入出力機器との入出力データをインタフェースする。入出力インタフェース460には、表示部461、操作部462、が接続される。また、入出力インタフェース460には、さらに、記憶媒体464が接続されてもよい。さらに、音声出力部であるスピーカ463や、音声入力部であるマイク(図示せず)、あるいは、GPS位置判定部が接続されてもよい。なお、
図4に示したRAM440やストレージ450には、歩行動作可視化装置100が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータは図示されていない。
【0085】
次に
図5A~
図5Cに示したフローチャートを参照して、歩行動作可視化装置100の処理手順について説明する。これらのフローチャートは、
図4のCPU410がRAM440を使用して実行し、
図2の歩行動作可視化装置100の各機能構成を実現する。
【0086】
まず、
図5Aを参照して、歩行動作可視化装置100の全体の処理の流れを説明する。ステップS501において、歩行動作可視化装置100は、被験者110が自身の身体の正中線の前に構えた加速度センサが、正中線に対して正対した状態にあるかを判定する。ステップS503において、歩行動作可視化装置100は、被験者110の歩行動作を解析する。ステップS505において、歩行動作可視化装置100は、歩行動作の解析結果に基づいて、歩行動作モデル画像150をディスプレイ等に表示させる。
【0087】
次に、
図5Bを参照して、ステップS501の正対状態判定処理の詳細について説明する。ステップS531において、歩行動作可視化装置100は、被験者110に対して、加速度センサが自身の身体の正中線に正対する位置に構えるように指示を出す。ステップS533において、歩行動作可視化装置100は、加速度センサが静止しているか否かを判定する。加速度センサが静止していないと判定された場合(ステップS533のNO)、歩行動作可視化装置100は、加速度センサが静止するまで待機する。加速度センサが静止していると判定された場合(ステップS533のYES)、歩行動作可視化装置100は、次のステップへ進む。
【0088】
ステップS535において、加速度データ取得部201は、加速度センサが静止している状態における計測値である静止状態加速度データを取得する。ステップS537において、歩行動作可視化装置100は、取得した静止状態加速度データから重力方向を決定する。ステップS539において、歩行動作可視化装置100は、被験者110に対して、歩行を開始するように指示する。歩行動作可視化装置100は、被験者110に対して、例えば、数歩歩くように指示する。ステップS541において、加速度データ取得部201は、加速度センサが正対状態にあるか否かを判定するための加速度データである判定用加速度データを取得する。判定用加速度データは、被験者110が、数歩歩いている間に取得された加速度データである。
【0089】
ステップS543において、判定部202は、加速度センサが被験者110の正中線に対して正対状態にあるか否かを判定する。加速度センサが正対状態にあるか否かの判定は、例えば、上述したHR(Harmonic Ratio)の値を用いて行う。そして、加速度センサが正対状態にないと判定された場合(ステップS543のNO)、歩行動作可視化装置100は、ステップS545へ進む。ステップS545において、報知部206は、加速度センサの正対状態からのずれに応じてアラートを報知する。報知は、例えば、振動や音、光などを用いて行われる。
【0090】
加速度センサが正対状態にあると判定された場合(ステップS543のYES)、歩行動作可視化装置100は、ステップS547へ進む。ステップS547において、歩行中加速度データ取得部203は、被験者110が歩行中の歩行中加速度データを取得する。
【0091】
次に、
図5Cを参照して、ステップS503の歩行動作解析処理の詳細について説明する。ステップS561において、近似加速度データ選択部241は、取得した歩行中加速度データと所定データベースとを照合する。照合は、例えば、取得した歩行中加速度データの左右軸成分、前後軸成分および鉛直軸成分のそれぞれについて行う。
【0092】
ステップS563において、近似加速度データ選択部241は、歩行中加速度データの各軸成分の照合の結果、歩行中加速度データに近似する近似加速度データを選択する。近似加速度データの選択は、例えば、取得した歩行中加速度データと、所定データベースに格納されている加速度データとをマッチングさせる方法により行われるが、近似する加速度データを選択できる方法であれば、この方法には限定されない。なお、近似加速度データ選択部241は、歩行中加速度データと一致する加速度データが存在すれば、当該加速度データを近似加速度データとして選択してもよい。
【0093】
ステップS565において、抽出部242は、選択された近似加速度データと関連付けられた関節角度である関節角度データを所定データベースから抽出する。ステップS567において、歩行動作可視化装置100は、抽出した関節角度データを用いて、被験者110の歩行動作モデル画像150を生成する。生成される歩行動作モデル画像150は、例えば、被験者110の下半身の骨格モデル画像である。また、歩行動作可視化装置100は、生成した骨格モデル画像として、被験者110の歩行動作を再現したアニメーション画像(動画)や、スライド画像(複数枚の静止画の組み合わせ画像)などを生成する。そして、ステップS505において、表示制御部205は、生成された骨格モデル画像をディスプレイなどに表示させる。
【0094】
本実施形態によれば、加速度センサが正しい測定値を出力できる状態で被験者の歩行動作の解析を行うので、信頼性が高く、計算工程が少なく、計算時間が少ない被験者の歩行動作の解析を行うことができる。また、被験者に対して、被験者の歩行動作を骨格モデル画像により表示するので、被験者が改善すべき点や身体の動かし方を容易に認識することができる。さらに、加速度センサが被験者の身体の正中線に対して正対状態にある場合に、被験者が歩行中に測定された加速度を用いて歩行動作を解析するので、歩行動作の解析処理における計算量や計算工程、計算時間を大幅に減らすことができる。また、このように、計算量などを大幅に減らすことができるので、被験者に対して歩行動作の解析結果を迅速に提供することができる。
【0095】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0096】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。