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  • 特許-炉のワーク装入抽出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】炉のワーク装入抽出装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/38 20060101AFI20231212BHJP
   F27B 9/39 20060101ALI20231212BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20231212BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20231212BHJP
   B65G 31/04 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
F27B9/38
F27B9/39
F27D7/06 B
C21D1/00 117
B65G31/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022010261
(22)【出願日】2022-01-26
(65)【公開番号】P2023108936
(43)【公開日】2023-08-07
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】横井 範之
(72)【発明者】
【氏名】佐野 駿平
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-079112(JP,A)
【文献】特開平03-152389(JP,A)
【文献】国際公開第2014/198977(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00- 9/40
B65G 31/00-31/04
C21D 1/00
F27D 7/00-15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを、水平方向に延びる当該ワークの長手方向と直交する水平方向に向けて、炉内へ装入もしくは炉内から抽出する装置であって、
ワークを炉内へ装入または炉内から抽出するために、上記炉の内外を連通するように形成される炉開口部に設けられ、ワークを当該ワークの短手方向から受け入れ受け渡しする凹部を有し、当該凹部を炉外から炉内へもしくは炉内から炉外へ向けて回転移動させるように回動されるドラムと、
上記炉開口部の下部に設けられ、上記ドラムの下部が浸漬される水封部とを備えることを特徴とする炉のワーク装入抽出装置。
【請求項2】
前記炉開口部の上部に設けられ、前記ドラムの上部にエアカーテンを形成するエアカーテン装置を設けたことを特徴とする請求項1に記載の炉のワーク装入抽出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンスを要することなく、炉内外を適切に遮断して、ワークを炉内へ装入し、炉外へ抽出することが可能な炉のワーク装入抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
丸型鋼やパイプなどの長尺のワークを、当該ワークの長手方向と交差する短手方向に向けて、炉内へ装入もしくは炉内から抽出する装置を備えた炉として、例えば特許文献1~3が知られている。
【0003】
特許文献1の「ワークを熱加工する炉」は、ワークを熱加工する気流を吹き出すノズルが設けられた吹き出しフードを有するワークを熱加工する炉であって、種々の寸法のワークに、上記ノズルから吹き出す気流が所望の流速で吹き当たるように、該ノズルと当該ノズルに面するワーク部分との間の距離を調整する駆動機構を備え、ワークを搬送する搬送手段は、搬送面が上下方向への移動を伴う鉛直面内での矩形運動や円運動を行うウォーキングビーム式搬送手段であり、ワークは、上記ウォーキングビーム式搬送手段で上下動を伴って搬送され、前記駆動機構は、ワークの上下動タイミングに合わせて、ワークの動きの上下方向成分の上下速度と同じ上下速度で、ワークの上下ストローク量と同じ上下ストローク量で、前記ノズルと当該ノズルに面するワーク部分との間の距離を調整し、さらに、ワークの寸法に関する情報と上記ウォーキングビーム式搬送手段の上下動の制御値が入力される制御装置が備えられ、該制御装置は、前記駆動機構に接続されて、ワークの寸法に関する情報と制御値を出力してこれらに従って該駆動機構を駆動制御し、さらに、前記ノズルは、熱加工を行うゾーン内に、ワークが搬送される方向に複数配列され、前記駆動機構は、各ノズルと当該ノズルに面するワーク部分との間の距離を、複数のノズルそれぞれで個別に調整するように構成されている。
【0004】
特許文献2の「シール装置を備えた加熱炉の装入・抽出装置」は、材料の装入口および/又は抽出口に、周面の一部を軸線方向に凹設してポケット部を形成した回動自在な回動扉と同回動扉の外周の一部を被覆するケーシングとを配設し、同ケーシングは開口を有するとともに該開口内で進退自在なシール部材を挿設してなり、該シール部材はその周面に回動扉周面を圧接する第1圧接面と、ケーシングの開口内周を圧接する第2圧接面とを形成して構成されている。
【0005】
特許文献3の「シール装置を備えた加熱炉の装入・抽出装置」は、材料の装入口および/又は抽出口に回動自在に配置され周面の一部を軸線方向に凹設してポケット部を形成した回動扉と、炉外に揺動自在に配設され上記ポケット部が炉外側へ位置した時に同ポケット部の開口域を略閉塞可能なシール用フードとを有し、かつ加熱炉からの排ガスをシール用フード内へ噴出する噴出口を同シール用フードの近隣に設けて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5795560号公報
【文献】特公昭62-16249号公報
【文献】特公昭63-9565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている炉では、ワークを装入し、また抽出する開口が開きっ放しであったり、扉が設けられている場合でも、ワークの通過中は開いているので、開口から外気が炉内に流入したり、また炉内の熱が炉外へ逸散してしまう。
【0008】
特許文献2及び3のシール装置は、ワークの通過中に外気を流通させないために、周面の一部を軸線方向に凹設することにより、材料(ワーク)を収容して移すためのポケット部を形成するようにした回動扉を備え、この回動扉を往復揺動することにより、材料を加熱炉内外へ装入または抽出するようにしている。
【0009】
これらの装入・抽出装置には、炉内外を遮断する手段として、回動扉周面と、回動扉の一部を被覆するケーシングの開口内周とを圧接するシール部材が備えられている。
【0010】
当該構成では、シール部材が回動扉周面及び開口内周に圧接している状態で、回動扉が往復揺動するので、シール部材に、摺動による摩耗によって、炉内外を連通する隙間が早期に生じてしまい、この隙間から炉内の雰囲気が漏出してしまう。
【0011】
また、摩耗したシール部材を交換するなどのメンテナンス作業はきわめて煩雑であり、またメンテナンスのために、炉の操業を停止しなければならないという課題があった。
【0012】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、メンテナンスを要することなく、炉内外を適切に遮断して、ワークを炉内へ装入し、炉外へ抽出することが可能な炉のワーク装入抽出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる炉のワーク装入抽出装置は、ワークを、当該ワークの長手方向と交差する方向に向けて、炉内へ装入もしくは炉内から抽出する装置であって、ワークを炉内へ装入または炉内から抽出するために、上記炉の内外を連通するように形成される炉開口部に設けられ、ワークを当該ワークの短手方向から受け入れ受け渡しする凹部を有し、当該凹部を炉外から炉内へもしくは炉内から炉外へ向けて回転移動させるように回動されるドラムと、上記炉開口部の下部に設けられ、上記ドラムの下部が浸漬される水封部とを備えることを特徴とする。
【0014】
前記炉開口部の上部に設けられ、前記ドラムの上部にエアカーテンを形成するエアカーテン装置を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる炉のワーク装入抽出装置にあっては、メンテナンスを要することなく、炉内外を適切に遮断して、ワークを炉内へ装入し、炉外へ抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明にかかる炉のワーク装入抽出装置の好適な一実施形態を説明する説明図である。
図2図1の炉のワーク装入抽出装置に用いられるドラムを示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる炉のワークの装入抽出装置の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
本実施形態に係る炉のワーク装入抽出装置は、例えば、ワークとして、所定方向に延びる長尺の丸型鋼やパイプを搬送方向へ搬送して熱処理するウォーキングビーム式などの加熱炉の炉開口部に備えられる。
【0019】
炉開口部は、炉体におけるワークの搬送方向両端部にそれぞれ設けられ、これら炉開口部からワークが炉内へ装入され、また炉外へ抽出される。
【0020】
炉としては、加熱処理する加熱炉に限ることなく、その他の処理炉であってもよいことはもちろんである。
【0021】
本実施形態においては、図1に示すように、ワークWである丸型鋼は、長手方向が搬送方向と直交する方向に向けられ、長手方向と交差する方向(搬送方向)にほぼ水平な状態で、炉開口部2を介して、炉体1内に装入され、また炉体1内から抽出される。
【0022】
炉開口部2は、ワークWを炉体1内へ装入するために炉体1の内外を連通するように形成される。
【0023】
抽出側では、ワークWを炉体1外へ抽出するために炉体1の内外を連通するように形成される。
【0024】
以下の説明では、装入側の炉開口部2に設けられるワークの装入抽出装置3を例に挙げて説明する。抽出側であっても、その構成は同じであって、図1を左右に反転することで理解される。
【0025】
炉開口部2は、水平方向の幅が広い横長に形成される。炉開口部2の上部を区画する上方の炉壁1aは、炉開口部2の下部を区画する下方の炉壁1bよりも、炉体1外方へ迫り出して設けられる。
【0026】
本実施形態に係る炉のワーク装入抽出装置3は、炉開口部2に回動自在に支持されたドラム4と、炉開口部2上方の炉壁1aの炉外側に設けられたエアカーテン装置5と、炉開口部2下方の炉壁1bに連設して、炉体1外側に配置された水封部としての水槽6と、ドラム4を回動させる駆動機構(不図示)とを備える。
【0027】
ドラム4とそのドラム軸4aは、炉体1の炉開口部2近傍に、搬送方向と直交させて、水平方向に沿って配置される。
【0028】
ドラム4は、直径Dが炉開口部2の上下方向の高さHより大きく形成される。ドラム4は、上方部分が上方の炉壁1a下から上方へ迫り出すように位置し、下方部分が搬送方向上流側から下方の炉壁1bと対向するように位置される。
【0029】
ドラム4には、長手方向に沿ってドラム4の中心側、すなわちドラム軸4a側に凹ませて、ワークWを、当該ワークWの短手方向から受け入れ受け渡しするための凹部4bが設けられる。図示例では、凹部4bは、ほぼ円弧状に凹ませた溝状に形成されている。
【0030】
ドラム4のドラム軸4aには、回動力を伝達する駆動機構(不図示)が連結され、所定の角度範囲内で往復方向に反復的に回動されるように構成されている。
【0031】
より具体的には、ドラム4の凹部4bがドラム4の上部側に位置し、上方の炉壁1aに対して、当該凹部4bが、炉開口部2よりも炉体1外方に位置する状態と、炉体1内方に位置する状態との間で回転移動される。
【0032】
凹部4bのドラム長手方向の長さは、図2に示すように、ドラム4の全長よりも短く、ドラム4の長手方向における凹部4bの両端部は、ドラム4の周面4cで区画されている。凹部4bは、その長さよりも長さが短いワークWを受け取り受け渡しする。
【0033】
凹部4bの凹形状は、ワークWを円滑に受け渡しできるように、ドラム4の周面4c側でドラム周方向に沿う方向の幅が漸次広がる形状に形成されている。
【0034】
水槽6内には、水6aが張られており、下方の炉壁1bと対向するドラム4の下部が浸漬されている。
【0035】
このため、炉開口部2の下方の炉壁1bの上端とドラム4との間は、水槽6内の水6aで水封される。
【0036】
また、ドラム4は水槽6内の水6aに浸漬されているため、ドラム4の反復的な回動によっても、炉開口部2を通じて炉体1内が外部と連通され、外気が炉内に流入したり、炉内雰囲気が炉外へ流出したりすることが防止される。
【0037】
エアカーテン装置5は、炉体1の外側に配置して、上方の炉壁1aに設けられる。エアカーテン装置5は、炉開口部2の全幅にわたり、ドラム4の周面4cに向けて下方へ空気を噴出する噴出口5aを備える。
【0038】
噴出口5aから噴出される空気は、上方の炉壁1aとドラム4との間に、炉体1の内外を遮断するエアカーテンを形成する。
【0039】
次に、本実施形態に係る炉のワーク装入抽出装置の作用について説明する。ドラム4は、凹部4bがドラム4の上側の位置で、図1(a)に示すように、当該凹部4bが上方の炉壁1aより炉体1外方に位置するワークWの受け取り位置と、図1(c)に示すように、凹部4bが上方の炉壁1aより炉体1内方に位置するワークWの受け渡し位置との間で反復的に往復回動する。
【0040】
また、ドラム4の下部は、水槽6に張られた水6a中に浸漬され、かつ、エアカーテン装置5からの空気がドラム4の上部に向けて噴出されてエアカーテンが形成される。
【0041】
炉体1外方から炉体1内にワークWを装入する際には、凹部4bがワークWの受け取り位置に位置しているときに、ワークWが凹部4bへと供給される。
【0042】
凹部4bがワークWを受け入れたドラム4は、図中時計回りに回動される。このとき、図1(b)に示すように、ドラム4の上部には、周面4cに沿ってエアカーテンが形成されていると共に、ドラム4の下部は、水封状態で水槽6内で回動される。
【0043】
さらにドラム4が回転して、図1(c)に示すように、ワークWの受け渡し位置に達すると、凹部4bが傾斜状態となり、ワークWは、炉体1内に設けられている搬送部7に受け渡しされる。
【0044】
その後、ドラム4は反転して、再度、図1(a)に示すワークWの受け取り位置に復帰し、次のワークWの供給を受けるようになっている。
【0045】
本実施形態に係る炉のワーク装入抽出装置3によれば、ワークWを受け入れ受け渡しする凹部4bが上側に位置されて反復的に往復回動するドラム4の下部は、水槽6に張られた水6aに浸漬されているので、炉開口部2とドラム4の下部との間で、炉体1の内外を確実に遮断することができる。
【0046】
ドラム4の下部のシールは、水封構造であるので、回動するドラム4が損耗することはなく、炉体1内外を連通させる隙間が生じることはない。従って、メンテナンスを要することなく、炉体1内外を適切に遮断することができる。
【0047】
炉体1内では、上部に比して下部の圧力が低くなって外気を引き込みやすくなる場合があり、本実施形態では、ドラム4の下部を水封するようにしたので、このような事態に対しても効果的に炉体1内外を遮断することができる。
【0048】
炉開口部2の上部に、ドラム4の上部に向かって空気を噴出してエアカーテンを形成するエアカーテン装置5を設けたので、上方の炉壁1aとドラム4との間の隙間を、エアカーテンで遮断することができる。
【0049】
ドラム4の上部のシールも、エアカーテンであるので、回動するドラム4が損耗することはなく、炉体1内外を連通させる隙間が生じることはない。従って、メンテナンスを要することなく、炉体1内外を適切に遮断することができる。
【0050】
また、上記実施形態においては、ドラム4を反復的に往復回動させる例について説明したが、これに限らず、ドラム4を一方向に回動させて、ワークWを搬送部7に受け渡した後に、そのまま一方向への回動を継続して、ワークWの受け取り位置に戻す構成としてもよいことはもちろんである。
【0051】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0052】
1 炉体
1a 炉開口部上方の炉壁
1b 炉開口部下方の炉壁
2 炉開口部
3 装入抽出装置
4 ドラム
4a ドラム軸
4b 凹部
4c 周面
5 エアカーテン装置
5a 噴出口
6 水槽
6a 水
7 搬送部
D ドラムの直径
H 炉開口部の上下方向高さ
W ワーク
図1
図2