(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】リン系添加剤を含む液体組成物、その使用、及び組成物の重合後に得られる材料又は組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20231212BHJP
C08F 20/18 20060101ALI20231212BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20231212BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C08F2/44 B
C08F2/44 C
C08F20/18
C08F265/06
C08J5/24 CEY
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022010613
(22)【出願日】2022-01-27
(62)【分割の表示】P 2019500596の分割
【原出願日】2017-07-11
【審査請求日】2022-02-25
(32)【優先日】2016-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】エスカーレ, ピエール
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-510086(JP,A)
【文献】特表2015-504862(JP,A)
【文献】特表2015-507658(JP,A)
【文献】特表2015-509910(JP,A)
【文献】特表2015-509078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/44;6/00-246/00;265/00-265/10
C08J 5/24
C08K 5/00-5/59
C08L 33/00-33/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも
70重量%のメチルメタクリレート(MMA)を含む、少なくとも10重量%及び40%重量以下の(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びイソボルニルメタクリレート、及びこれらの混合物から選択される、40重量%から90重量%の(メタ)アクリルモノマー(M1)、
c)ジアルキルホスフィン酸又はジホスフィン酸、或いはこれら
の混合物を含むリン系添加剤から選択される、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)との合計に対して5phrから150phrの少なくとも一つの難燃性物質(FD1)
を含み、25℃で10mPa
*sから10000mPa
*sの動的粘性率を有する液体組成物。
【請求項2】
リン系添加剤が、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)との合計に対して10phrから130phrであることを特徴とする、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
リン系添加剤が、式(1):
[式中、R
1、R
2は同じか又は異なっており、各々独立してC
1-C
18-アルキル、C
2-C
18-アルケニル、C
6-C
18-アリール、C
7-C
18-アルキルアリールである]のジアルキルホスフィン酸を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の液体組成物。
【請求項4】
リン系添加剤が、式(1)のジアルキルホスフィン酸と式(2)
[式中、R
3はC
1-C
18-アルキル、C
2-C
18-アルケニル、C
6-C
18-アリール又はC
7-C
18-アルキルアリールである]のアルキルホスホン酸との混合物を含むことを特徴とする、請求項3に記載の液体組成物。
【請求項5】
リン系添加剤が、式(1)のジアルキルホスフィン酸と式(3)
[式中、R
3、R
4は同じか又は異なっており、各々C
1-C
18-アルキル、C
2-C
18-アルケニル、C
6-C
18-アリール及び/又はC
7-C
18-アルキルアリールであり、但しR
3及びR
4基の少なくとも一つはR
1及びR
2とは異なっている]のジアルキルホスフィン酸との混合物を含むことを特徴とする、請求項3に記載の液体組成物。
【請求項6】
リン系添加剤が、式(1)のジアルキルホスフィン酸と式(4)
[式中、R
6、R
7は同じか又は異なっており、各々H、C
1-C
18-アルキル、C
2-C
18-アルケニル、C
6-C
18-アリール及び/又はC
7-C
18-アルキルアリールであり、R
5はC
1-C
18
-アルキレン、C
2-C
18-アルケニレン、C
6-C
18-アリーレン、C
7-C
18-アルキルアリーレンである]のジホスフィン酸との混合物を含むことを特徴とする、請求項3に記載の液体組成物。
【請求項7】
リン系添加剤が、式(4)
[式中、R
6、R
7は同じか又は異なっており、各々H、C
1-C
18-アルキル、C
2-C
18-アルケニル、C
6-C
18-アリール及び/又はC
7-C
18-アルキルアリールであり、R
5はC
1-C
18-アルキレン、C
2-C
18-アルケニレン、C
6-C
18-アリーレン、C
7-C
18-アルキルアリーレンである]のジホスフィン酸を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の液体組成物。
【請求項8】
リン系添加剤が、式(4)のジホスフィン酸と式(5)
[式中、R
8は各々C
1-C
18-アルキル、C
2-C
18-アルケニル、C
6-C
18-アリール及び/又はC
7-C
18-アルキルアリールである]のアルキルホスフィン酸との混合物を含むことを特徴とする、請求項7に記載の液体組成物。
【請求項9】
第2の難燃性物質(FD2)を含み、前記難燃性物質(FD2)は:
・ホスフィネート、ジホスフィネート、ホスホネート、ホスフェート、赤リン、ポリリン酸アンモニウムなどのリン系添加剤
・金属水酸化物などの水和鉱物充填剤
から選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項10】
第2の難燃性物質(FD2)を含み、前記難燃性物質(FD2)は:
・以下の式(I)又は(II):
[式中:
R
1及びR
2は、直鎖状又は分岐状のC
1-C
6アルキル及び/又はアリール基を表し;
R
3は、直鎖状又は分岐状のC
1-C
10アルキレン、C
6-C
10アリーレン、アルキルアリーレン又はアリールアルキレン基を表し;
Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na又はKを表し;
mは1から4の整数であり;
nは1から4の整数であり;
xは1から4の整数である]
を有するホスフィネート又はジホスフィネートから選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の液体組成物の(メタ)アクリルモノマー(M1)の重合により得られる熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項12】
長繊維からなる繊維質基材を含浸するための含浸方法であって、前記繊維質基材に請求項1から10のいずれか一項に記載の液体組成物を含浸させる工程を含む方法。
【請求項13】
熱可塑性(メタ)アクリルマトリックスと、強化剤として使用される繊維質基材とを含むポリマー複合材料であって、繊維質基材が長繊維からなり、前記複合材料は、熱可塑性(メタ)アクリルマトリックスが、請求項1から10のいずれか一項に記載の前記液体組成物を予備含浸した前記繊維質基材の重合後に得られることを特徴とする、ポリマー複合材料。
【請求項14】
複合材料から作製される機械部品又は構成部材を製造するための方法であって、
a)繊維質基材に、請求項1から10のいずれか一項に記載の液体組成物を含浸させる工程、
b)前記繊維質基材に含浸している液体組成物を重合する工程
を含む方法。
【請求項15】
請求項13に記載の複合材料から作製されるか、又は請求項14に記載の製造方法により得られる機械部品又は構成部材。
【請求項16】
自動車の部品、船舶の部品、列車の部品、スポーツ用品、飛行機若しくはヘリコプターの部品、宇宙船若しくはロケットの部品、太陽電池モジュールの部品、風力タービンの部品、家具の部品、建設若しくは建築部品、電話若しくは携帯電話の部品、コンピューター若しくはテレビの部品、又はプリンター若しくはコピー機の部品である、請求項15に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマー、(メタ)アクリルポリマー及びリン系添加剤から選択される少なくとも一つの難燃性物質(FD1)を含む液体組成物に関する。
【0002】
特に本発明は、モノマー、(メタ)アクリルポリマー、及び、リン系添加剤から選択される少なくとも一つの難燃性物質(FD1)を含む液体組成物に関し、これは、シロップ剤として、特にシロップ剤の重合後に得られる熱可塑性ポリマー又はマトリックスの耐火性を向上させる、含浸及び調製のためのシロップ剤として使用することができる。さらには、液体組成物又はシロップ剤の重合後に得られる熱可塑性材料が考慮される。本発明は、このような液体組成物又はシロップ剤を製造するための方法にも関する。本発明は、長繊維の繊維質基材に前記液体組成物又はシロップ剤を含浸させるための方法にも関する。本発明は、複合材料部品を製造するために有用な前記液体組成物又はシロップ剤を含浸させた繊維質基材にも関する。
【0003】
さらに、本発明は、複合材料から作製される機械部品又は構成部材を製造するための方法と、このような液体組成物を用いる方法により得られる複合材料から作製される機械部品又は構成部材にも関する。
【背景技術】
【0004】
熱可塑性ポリマー及び材料は、今日、複数の分野及び用途において広く使用されている。さらに、法令により、特に建築、航空、自動車又は鉄道の分野において、材料の耐火性がますます要求されている。したがって、公共の場所、特に閉じられている場所において使用される材料は、耐火性試験に耐えるものでなければならない。さらに、環境的な制約によっても、燃焼の間にハロゲン化難燃性薬剤と酸性及び毒性ガスとが放出される危険があるため、難燃性の配合組成がハロゲンを全く含まないことが課せられる。
【0005】
使用中、高い応力に耐えなければならない機械部品は、複合材料から広く製造される。複合材料は、二つ以上の非混和性の材料の巨視的な組み合わせである。複合材料は、マトリクス、すなわち、構造体の凝集性を保証する連続相を生成する少なくとも一つの材料、及び強化用材料からなる。
【0006】
複合材料を使用する目的は、それらが別々に使用されると構成要素の各々から利用することが可能でない性能品質を得ることである。したがって、複合材料は、複数の産業分野、例えば、建築、自動車、航空宇宙、輸送、レジャー、エレクトロニクス、及びスポーツにおいて、均一な材料と比較して、機械的性能がより高く(より高い引張強度、より高い引張弾性率、より高い破壊靱性)、密度がより低いために、広く使用されている。
【0007】
熱成形及びリサイクリングを可能にするために、熱可塑性ポリマーを、複合材料にも使用することが好ましい。
【0008】
熱可塑性ポリマーは、直鎖又は分岐ポリマーからなり、それらは架橋結合されない。熱可塑性ポリマーは、複合材料を製造するために必要な構成要素を混合するために加熱され、最終形態を確定するために冷却される。これらの溶解された熱可塑性ポリマーの問題は、それらの非常に高い粘性である。熱可塑性ポリマーに基づくポリマー複合材料を調製するために、一般的に「シロップ剤」として知られる熱可塑性ポリマー樹脂を使用して、強化材料、例えば、繊維質基材を含浸させる。一旦重合されると、熱可塑性ポリマーシロップ剤は、複合材料のマトリクスを構成する。
【0009】
含浸の時点で、含浸シロップ剤の粘性は、繊維質基材の各繊維に正しく含浸させるために、流動性になり過ぎることも粘性になり過ぎることもないように、制御及適合されなければならない。湿りが部分的であると、シロップ剤が流動性になり過ぎるか又は粘性になり過ぎるかに応じて、「裸の」ゾーン、即ち非含浸ゾーンと、泡立ちが生じる原因である、ポリマー滴が繊維上に形成されるゾーンとが、それぞれ現れる。これら「裸の」ゾーン及び気泡は、最終的な複合材料に欠陥の出現を引き起こし、これは特に、最終的な複合材料の機械強度が失われる原因である。
【0010】
(メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルポリマーを含む液体組成物又はシロップ剤は、国際公開第2013/056845号及び国際公開第2014/013028号に記載されている。
【0011】
しかしながら、繊維質基材の各繊維に正しく含浸されるように、及び最終的複合材料に欠陥が出現しないように、難燃性物質(複数可)の添加によって含浸シロップ剤の粘性が壊されてはならない。また、このような難燃性薬剤(複数可)の添加は、予備含浸した繊維質基材の重合後に得られる熱可塑性材料又は複合材料の熱可塑性特性を損なってはならない。
【0012】
米国特許出願公開第2005/0143503号には、凝集粒子の形態の難燃性薬剤が記載されている。この粒子は、99.99%から80%の(ジ)ホスフィナートと、0.01%から20%のポリマー結合剤(アクリレート系とすることができる)とからなる。
【0013】
国際特許出願の国際公開第2005/061606号には、本発明に使用される式(I)のホスフィナート化合物に類似の化合物(F1)と、リン酸とメラミンとの反応の産物及び/又はリン酸とメラミン縮合誘導体との反応の産物である化合物(F2)と、メラミン縮合誘導体である化合物(F3)との混合物による熱可塑性ポリマーの難燃処理が記載されている。
【0014】
特許文献DE2447727及びDE2252258には、(ジ)ホスフィナートを援用して難燃性を付与したポリアミド又はポリエステルがそれぞれ記載されている。
【0015】
特許出願EP1013713には、ハロゲン化化合物を援用して難燃性を付与したメタクリル組成物の層と、熱可塑性ポリマー、例えばPVCの層とを含む多層構造が記載されている。
【0016】
文献国際公開第2014/140465号には、難燃剤基材を含む繊維質基材の含浸のための液体(メタ)アクリル系シロップ剤が開示されている。
【0017】
これらの文献はいずれも、本発明によるリン誘導体から選択された難燃性物質(複数可)を液体組成物又は液体含浸(メタ)アクリル系シロップ剤に組み込むことにより、繊維質基材の繊維に正しく含浸させるための最適粘性を有する液体組成物又はシロップ剤を得ることができ、またシロップ剤の重合後に、ハロゲンなしで難燃性を付与された、耐火性で且つその熱可塑性特性が保持されている熱可塑性複合材料を得られることを示唆していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の目的は、先行技術の欠点の少なくとも一つを改善することである。
【0019】
本発明の目的は、また、含浸方法及び/又は重合方法に使用することのできる、モノマー、(メタ)アクリルポリマー及び十分に低い粘性を有するリン系添加剤から選択される一つの難燃性物質(FD1)を含む液体組成物を有することである。
【0020】
本発明は、特に、熱可塑性材料が、18を上回る、好ましくは20を上回る、有利には22を上回る限界酸素指数(LOI)を有するような、耐火性を有する熱可塑性材料から作製された組成物又は部品の提案を目的としている。
【0021】
本発明は、特に、複合材料が、32を上回る、好ましくは40を上回る、有利には45を上回る限界酸素指数(LOI)を有するような、耐火性を有する熱可塑性複合材料から作製された機械部品の提案を目的としている。
【0022】
本発明は、また、コーンカロリーメーター試験中に測定した場合に、複合材料が可能な限り低いpHRR(ピーク発熱速度)及びTHR(全発熱量)の値と可能な限り長いTTI(発火時間)及びTOF(消炎時間)の値とを有するような、耐火性を有する熱可塑性複合材料から作製された機械部品の提案を目的としている。煙霧発生のレベルとCO及びCO2の量も、可能な限り低くあるべきである。
【0023】
本発明は、また、含浸の間に繊維質基材を、完全に、正しく、且つ均一に湿らせることを目的とする。例えば気泡及び空隙による、繊維湿潤の何らかの欠陥は、最終的な複合材料部品の機械性能を低下させる。
【0024】
本発明の別の目的は、低コストで実施することができ、且つ熱可塑性ポリマー又は熱可塑性複合材料から作製される機械部品又は構成部材の産業規模での製造を可能にする方法を提案することである。加えて、方法は、市販の化合物を使用して、容易且つ単純に実行されるべきである。複合部品の製造は、また、再生可能且つ迅速であるべきであり、それは短いサイクル時間を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
驚くべきことに、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、
c)ジアルキルホスフィン酸又はジホスフィン酸、或いはこれらの又はこれらとの混合物を含むリン系添加剤から選択される少なくとも一つの難燃性物質(FD1)
を含む液体組成物であって、前記液体(メタ)アクリル系シロップ剤が10mPa*sから10000mPa*sの動的粘性率を有する液体組成物が、前記(メタ)アクリルモノマー(M1)の重合後に、難燃性物質(FD1)を含まない組成物として耐火性がはるかに高まった熱可塑性ポリマー組成物を産むことが発見された。
【0026】
さらには、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、
c)ジアルキルホスフィン酸又はジホスフィン酸、或いはこれらの又はこれらとの混合物を含むリン系添加剤から選択される少なくとも一つの難燃性物質(FD1)
を含む液体組成物であって、前記液体(メタ)アクリル系シロップ剤が10mPa*sから10000mPa*sの動的粘性率を有する液体組成物が、前記(メタ)アクリルモノマー(M1)の重合後に、難燃性物質(FD1)を含まない組成物として耐火性がはるかに高まった熱可塑性ポリマー組成物を生成するために使用できることが発見された。
【0027】
驚くべきことに、長繊維からなる繊維質基材に含浸させるための液体(メタ)アクリル系シロップ剤であって、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、
c)ジアルキルホスフィン酸又はジホスフィン酸、或いはこれらの又はこれらとの混合物を含むリン系添加剤から選択される少なくとも一つの難燃性物質(FD1)
を含み、10mPa*sから10000mPa*sの動的粘性率を有することを特徴とする前記液体(メタ)アクリル系シロップ剤が、繊維質基材の完全且つ正確な含浸、及び重合後の極めて良好な耐火性をもたらすことが発見された。
【0028】
本発明者らはさらに、驚くべきことに、繊維質基材を含浸するための含浸方法であって、前記繊維質基材が長繊維からなり、前記方法が、前記繊維質基材に前記液体組成物又は液体(メタ)アクリル系含浸シロップ剤を含浸させる工程を含む方法が、繊維質基材の完全で且つ正確な含浸をもたらすことを発見した。
【0029】
また、驚くべきことに、複合材料部品を製造するためのであって、
a)繊維質基材にそのような液体組成物又は(メタ)アクリル系シロップ剤を含浸させる工程、
b)前記繊維質基材に含浸させた液体(メタ)アクリル系シロップ剤を重合する工程、
を含む方法により、複合材料から作製される部品が、32を上回る、好ましくは40を上回る、有利には45を上回る限界酸素指数(LOI)と、それに加えて、できる限り低いpHRR及びTHRの値とできる限り長いTTI及びTOFの値とを有するような、有意に向上した耐火特性を有する熱可塑性複合材料部品が得られることが発見された。
【0030】
さらに、本製造方法により得られる、有意に向上した耐火性を有する複合材料部品が、繊維質基材と(メタ)アクリルポリマーの間の空隙といった欠陥をほとんど有さないことも発見された。
【発明を実施するための形態】
【0031】
第1の態様によれば、本発明は、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、
c)ジアルキルホスフィン酸又はジホスフィン酸、或いはこれらの又はこれらとの混合物を含むリン系添加剤から選択される少なくとも一つの難燃性物質(FD1)
を含み、25℃で10mPa*sから10000mPa*sの動的粘性率を有する液体組成物に関する。
【0032】
第2の態様によれば、本発明は、長繊維からなる繊維質基材に含浸させるための液体(メタ)アクリル系シロップ剤であって、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、
c)ジアルキルホスフィン酸又はジホスフィン酸、或いはこれらの又はこれらとの混合物を含むリン系添加剤から選択される少なくとも一つの難燃性物質(FD1)
を含み、10mPa*sから10000mPa*sの動的粘性率を有することを特徴とする液体(メタ)アクリル系シロップ剤に関する。
【0033】
使用される「繊維質基材」という用語は、細長片、ラップ、組紐、房、又は小片の形態であり得る、織物、フェルト、又は不織布を指す。
【0034】
使用される「(メタ)アクリル」という用語は、任意の種類のアクリル及びメタクリルモノマーを指す。
【0035】
使用される「PMMA」という用語は、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマー及びコポリマーを指し、PMMA中のMMAの重量比は、MMAコポリマーの少なくとも70wt%である。
【0036】
使用される「モノマー」という用語は、重合されうる分子を意味する。
【0037】
使用される「重合」という用語は、モノマー又はモノマーの混合物をポリマーに転換する過程を指す。
【0038】
使用される「熱可塑性ポリマー」という用語は、加熱時に、液体に変化するか、又はより高い流動性若しくはより低い粘性を有し、且つ熱と圧力の適用により新しい形状をとることができるポリマーを指す。
【0039】
使用される「熱硬化性ポリマー」という用語は、硬化により不可逆的に不融性、不溶性のポリマーネットワークに変化する、軟性、固体、又は粘性の状態にあるプレポリマーを指す。
【0040】
使用される「ポリマー複合物」という用語は、少なくとも一種類の位相領域が連続位相であり、且つ少なくとも一つの成分がポリマーである、複数の異なる位相領域を含む多成分の材料を指す。
【0041】
使用される「難燃性物質」という用語は、その耐火性を向上させるために、材料の発火を遅らせることのできる物質、添加剤又は充填剤を指す。
【0042】
略記「phr」は、樹脂100部当たりの重量部を意味する。例えば組成物中15phrの難燃性物質(FD1)は、100kgの組成物に15kgの難燃性物質(FD1)が添加されることを意味する。
【0043】
繊維質基材に含侵させるための本発明による液体組成物又は(メタ)アクリル系シロップ剤は、特に、(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーと、(メタ)アクリルポリマーと、シロップ剤の重合後に得られる熱可塑性ポリマーマトリックスの発火を遅らせるための少なくとも一つの難燃性物質との混合物を含む。
【0044】
液体組成物又は(メタ)アクリル系シロップ剤の動的粘性率は、10mPa*sから10000mPa*s、好ましくは20mPa*sから7000mPa*s、及び有利には20mPa*sから5000mPa*sの範囲である。シロップ剤の粘性は、レオメーター又は粘度計で容易に測定することができる。動的粘性率は25℃で測定される。液体(メタ)アクリル系シロップ剤がニュートン力学的な挙動を有する場合、つまり剪断減粘性がゼロである場合、動的粘性率はレオメーターでの剪断又は粘度計での移動体の速度とは無関係である。液体組成物が剪断減粘性を意味する非ニュートン挙動を有する場合、動的粘性率は25℃で1s-1の剪断速度で測定される。
【0045】
本発明の液体組成物に関し、この組成物は、(メタ)アクリルモノマー(M1)、(メタ)アクリルポリマー(P1)及びリン系添加剤から選択される少なくとも一つの難燃性物質(FD1)を含む。重合化されると、(メタ)アクリルモノマー(M1)は、(メタ)アクリルモノマー(M1)のモノマー単位を含む(メタ)アクリルポリマー(P2)へと形質転換する。
【0046】
組成物中の難燃性物質(FD1)の量は、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)との合計、又は(メタ)アクリルポリマー(P1)と(メタ)アクリルポリマー(P2)との合計に対して少なくとも5phrである。好ましくは、組成物中の難燃性物質(FD1)の量は、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)との合計、又は(メタ)アクリルポリマー(P1)と(メタ)アクリルポリマー(P2)との合計に対して、少なくとも10phr、さらに好ましくは少なくとも15phr、それよりもさらに好ましくは少なくとも20phr、有利には少なくとも25phrである。
【0047】
組成物中の難燃性物質(FD1)の量は、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)との合計、又は(メタ)アクリルポリマー(P1)と(メタ)アクリルポリマー(P2)との合計に対して多くとも150phrである。好ましくは、組成物中の難燃性物質(FD1)の量は、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)との合計、又は(メタ)アクリルポリマー(P1)と(メタ)アクリルポリマー(P2)との合計に対して、多くとも130phr、さらに好ましくは多くとも110phr、それよりもさらに好ましくは多くとも100phr、有利には多くとも90phrである。
【0048】
組成物中の難燃性物質(FD1)の量は、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)との合計、又は(メタ)アクリルポリマー(P1)と(メタ)アクリルポリマー(P2)との合計に対して、5phrから150phrである。好ましくは、組成物中の難燃性物質(FD1)の量は、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)との合計、又は(メタ)アクリルポリマー(P1)と(メタ)アクリルポリマー(P2)との合計に対して、10phrから130phr、さらに好ましくは15phrから110phr、それよりもさらに好ましくは20phrから100phr、有利には多くとも90phrである。
【0049】
(メタ)アクリルモノマー(M1)に関して、このモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアクリルモノマー、アルキルメタクリルモノマー、ヒドロキシアルキルアクリルモノマー及びヒドロキシアルキルメタクリルモノマーと、これらの混合物から選択される。
【0050】
好ましくは、(メタ)アクリルモノマー(M1)は、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシアルキルアクリルモノマー、ヒドロキシアルキルメタクリルモノマー、アルキルアクリルモノマー、アルキルメタクリルモノマー、及びこれらの混合物から選択され、アルキル基は、1から22個の、直鎖状、分岐状又は環状の炭素を含み、好ましくは、1から12個の直鎖状、分岐状又は環状の炭素を含む。
【0051】
有利には、該(メタ)アクリルモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレートと、これらの混合物から選択される。
【0052】
好ましい実施態様によれば、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%の(メタ)アクリルモノマーはメチルメタクリレートである。
【0053】
第1のさらに好ましい実施態様によれば、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、さらに好ましくは少なくとも70重量%、有利には少なくとも80重量%、それよりもさらに有利には90重量%のモノマーは、メチルメタクリレートと任意選択的に少なくとも一つの他のモノマーとの混合物である。
【0054】
(メタ)アクリルポリマー(P1)に関して、ポリアルキルメタクリレート又はポリアルキルアクリレートを挙げることができる。好ましい一実施態様によれば、(メタ)アクリルポリマーはポリメチルメタクリレート(PMMA)である。
【0055】
用語「PMMA]は、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマー、コポリマー、又はこれらの混合物を意味する。
【0056】
一実施態様によれば、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマー又はコポリマーは、重量で、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、有利には少なくとも90%、さらに有利には少なくとも95%のメチルメタクリレートを含む。
【0057】
別の実施態様によれば、PMMAは、MMAの少なくとも一つのホモポリマーと少なくとも一つのコポリマーの混合物、又は異なる平均分子量を有するMMAの少なくとも二つのホモポリマー若しくはコポリマーの混合物、又は異なるモノマー組成を有するMMAの少なくとも二つのコポリマーの混合物である。
【0058】
メチルメタクリレート(MMA)のコポリマーは、70%から99.7%の重量のメチルメタクリレートと、0.3%から30%の重量の、メチルメタクリレートと共重合可能な少なくとも一つのエチレン性不飽和を含む少なくとも一つのモノマーとを含む。
【0059】
これらのモノマーはよく知られており、特に、アクリル酸、メタクリル酸、及びアルキル基が1から12個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。例として、メチルアクリレート及びエチル、ブチル又は2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートを挙げることができる。好ましくは、コモノマーは、アルキル基が1から4個の炭素原子を有するアクリル酸アルキルである。
【0060】
第1の好ましい実施態様によれば、メチルメタクリレート(MMA)のコポリマーは、80重量%から99.7重量%、有利には90重量%から99.7重量%、さらに有利には90重量%から99.5重量%のメチルメタクリレートと、0.3重量%から20重量%、有利には0.3重量%から10重量%、さらに有利には0.5重量%から10重量%の、メチルメタクリレートと共重合可能な少なくとも一つのエチレン性不飽和を有する少なくとも一つのモノマーとを含む。好ましくは、コモノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、及びこれらの混合物から選択される。
【0061】
(メタ)アクリルポリマー(P1)の重量平均分子質量は高くなければならず、つまり、50000g/molより大きい、好ましくは100000g/molより大きいことを意味する。
【0062】
重量平均分子質量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定することができる。
【0063】
(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーの混交物に完全に可溶型である。これは、(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーの混合物の粘性を上昇させることができる。得られた溶液は一般に「シロップ剤」又は「プレポリマー」と呼ばれる。液体(メタ)アクリル系シロップ剤の動的粘性率の値は、10mPa*sから10000mPa*sである。シロップ剤の粘性は、レオメーター又は粘度計で容易に測定することができる。動的粘性率は25℃で測定される。
【0064】
有利には、液体(メタ)アクリル系シロップ剤は、追加の自発的添加溶媒を含まない。
【0065】
リン系添加剤に関して、難燃性物質は、具体的にはジアルキルホスフィン酸、ジホスフィン酸、又はこれらの又はこれらとの混合物を含む添加剤である。
【0066】
好ましくは、リン系添加剤から選択される難燃性物質(FD1)は、式(1)のジアルキルホスフィン酸又は式(4)のジアルキルホスフィン酸を含む。
上式中、R
1、R
2は同じか又は異なっており、各々独立してC
1-C
18-アルキル、C
2-C
18-アルケニル、C
6-C
18-アリール、C
7-C
18-アルキルアリールであり、R
6、R
7は同じか又は異なっており、各々H、C
1-C
18-アルキル、C
2-C
18-アルケニル、C
6-C
18-アリール及び/又はC
7-C
18-アルキルアリールであり、R
5はC
1-C
1s-アルキレン、C
2-C
18-アルケニレン、C
6-C
18-アリーレン、C
7-C
18-アルキルアリーレンである。
【0067】
好ましくは、R1及びR2は同じか又は異なっており、各々メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル及び/又はフェニルであり;R3は[R1及びR2から独立して]メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル及び/又はフェニルである。
【0068】
式(1)のジアルキルホスフィン酸は、二つの異なるジアルキルホスフィン酸の混合物とすることもでき、この場合R1及びR2のうちの少なくとも一つは異なっている。
【0069】
さらに好ましくは、ジアルキルホスフィン酸は、ジエチルホスフィン酸、エチルプロピルホスフィン酸、エチルブチルホスフィン酸、エチルペンチルホスフィン酸、エチルヘキシルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、プロピルブチルホスフィン酸、プロピルペンチルホスフィン酸、プロピルヘキシルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、ブチルペンチルホスフィン酸、ブチルヘキシルホスフィン酸、ジペンチルホスフィン酸、ペンチルヘキシルホスフィン酸及び/又はジヘキシルホスフィン酸又はこれらの混合物であり、アルキルホスホン酸は、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ペンチルホスホン酸又はヘキシルホスホン酸である。
【0070】
第1の実施態様では、難燃性物質(FD1)は、式(1)のジアルキルホスフィン酸と式(2)のアルキルホスホン酸との混合物を含む。
上式中、R
3はC
1-C
18-アルキル、C
2-C
18-アルケニル、C
6-C
18-アリール又はC
7-C
18-アルキルアリールである。
【0071】
さらに好ましくは、第1の実施態様による混合物において、ジアルキルホスフィン酸は、ジエチルホスフィン酸、エチルプロピルホスフィン酸、エチルブチルホスフィン酸、エチルペンチルホスフィン酸、エチルヘキシルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、プロピルブチルホスフィン酸、プロピルペンチルホスフィン酸、プロピルヘキシルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、ブチルペンチルホスフィン酸、ブチルヘキシルホスフィン酸、ジペンチルホスフィン酸、ペンチルヘキシルホスフィン酸及び/又はジヘキシルホスフィン酸又はこれらの混合物であり、アルキルホスホン酸は、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ペンチルホスホン酸又はヘキシルホスホン酸である。
【0072】
この混合物は、0.1から99.9重量パーセントの式(1)のジアルキルホスフィン酸と、99.9から0.1重量パーセントの式(2)のアルキルホスホン酸とを含み、好ましくは45から99.9重量パーセントの式(1)のジアルキルホスフィン酸と、55から0.1重量パーセントの式(2)のアルキルホスホン酸とを含む。さらに好ましくは、混合物は、70から99.9重量パーセントの式(1)のジアルキルホスフィン酸と、30から0.1重量パーセントの式(2)のアルキルホスホン酸とを含む。それよりもさらに好ましくは、混合物は、85から99.9重量パーセントの式(1)のジアルキルホスフィン酸と、15から0.1重量パーセントの式(2)のアルキルホスホン酸とを含む。
【0073】
第2の実施態様では、難燃性物質(FD1)は、式(1)のジアルキルホスフィン酸と式(4)のジアルキルホスフィン酸との混合物を含む。
上式中、R
3、R
4は同じか又は異なっており、各々C
1-C
18-アルキル、C
2-C
18-アルケニル、C
6-C
18-アリール及び/又はC
7-C
18-アルキルアリールであり、但しR
3及びR
4基の少なくとも一つはR1及びR2とは異なっている。
【0074】
好ましくは、R3及びR4は同じか又は異なっており、各々メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル及び/又はフェニルであり、但しR3及びR4基の少なくとも一つはR1及びR2とは異なっている。
【0075】
好ましくは、混合物は、45から99.9重量パーセントの式(1)のジアルキルホスフィン酸と、55から0.1重量パーセントの式(3)のジアルキルホスフィン酸とを含む。さらに好ましくは、混合物は、70から99.9重量パーセントの式(1)のジアルキルホスフィン酸と、30から0.1重量パーセントの式(3)のジアルキルホスフィン酸とを含む。
【0076】
ジアルキルホスフィン酸(1)及び(3)は、好ましくは、ジエチルホスフィン酸、エチルプロピルホスフィン酸、エチルブチルホスフィン酸、エチルペンチルホスフィン酸、エチルヘキシルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、プロピルブチルホスフィン酸、プロピルペンチルホスフィン酸、プロピルヘキシルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、ブチルペンチルホスフィン酸、ブチルヘキシルホスフィン酸、ジペンチルホスフィン酸、ペンチルヘキシルホスフィン酸及び/又はジヘキシルホスフィン酸である。
【0077】
第3の実施態様では、難燃性物質(FD1)は、式(1)のジアルキルホスフィン酸と式(4)のジホスフィン酸との混合物を含む。
上式中、R
6、R
7
は同じか又は異なっており、各々H、C
1-C
18-アルキル、C
2-C
18-アルケニル、C
6-C
18-アリール及び/又はC
7-C
18-アルキルアリールであり、R
5はC
1-C
1s-アルキレン、C
2-C
18-アルケニレン、C
6-C
18-アリーレン、C
7-C
18-アルキルアリーレンである。
【0078】
好ましくはR6、R7は同じか又は異なっており、各々がH、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル及び/又はフェニルであり;R1、R2は同じか又は異なっており、R6及びR7から独立して、各々メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル及び/又はフェニルであり、R5はエチレン、ブチレン、ヘキシレン又はオクチレンである。さらに好ましくは、R1、R2、R6及びR7
は同じか又は異なっており、各々エチル及び/又はブチルであり、R5はエチレン又はブチレンである。
【0079】
混合物は、好ましくは、45から99.9重量パーセントの式(4)のジホスフィン酸と、55から0.1重量パーセントの式(1)のジアルキルホスフィン酸とを含む。さらに好ましくは、混合物は、70から99.9重量パーセントの式(1)のジホスフィン酸と30から0.1重量パーセントの式(3)のジアルキルホスフィン酸とを含む。
【0080】
第4の実施態様では、難燃性物質(FD1)は、式(4)のジホスフィン酸と式(5)のアルキルホスフィン酸との混合物を含む。
上式中、R
8は各々C
1-C
18-アルキル、C
2-C
18-アルケニル、C
6-C
18-アリール及び/又はC
7-C
18-アルキルアリールである。
【0081】
好ましくはR6、R7及びR8は同じか又は異なっており、各々H、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル及び/又はフェニルであり;R5はエチレン、ブチレン、ヘキシレン又はオクチレンである。
【0082】
第4の実施態様の混合物は、好ましくは、0.1から99.9重量パーセントの式(4)のジホスフィン酸と、99.1から0.1重量パーセントの式(5)のアルキルホスフィン酸とを含む。さらに好ましくは、混合物は、50から99.9重量パーセントの式(4)のジホスフィン酸と、50から0.1重量パーセントの式(5)のアルキルホスフィン酸とを含み、有利には、混合物は、70から99.9重量パーセントの式(4)のジホスフィン酸と、30から0.1重量パーセントの式(5)のアルキルホスフィン酸とを含み、さらに有利には、混合物は、85から99.9重量パーセントの式(4)のジホスフィン酸と、15から0.1重量パーセントの式(5)のアルキルホスフィン酸とを含み、それよりもさらに有利には、混合物は、96から99.9重量パーセントの式(4)のジホスフィン酸と、4から0.1重量パーセントの式(5)のアルキルホスフィン酸とを含む。
【0083】
好ましくは、ジアルキルホスフィン酸又はジホスフィン酸、或いはこれらのいずれか又は両方の混合物を含む難燃性物質(FD1)は、0℃から200℃の温度で液体である。さらに好ましくは、アルキルホスフィン酸又はジアルキルホスフィン酸又はジホスフィン酸、或いはこれらのいずれか若しくはすべての混合物を含む難燃性物質(FD1)は、5℃から150℃、さらに好ましくは8℃から120℃、有利には10℃から100℃の温度で液体である。
【0084】
本発明による液体組成物は、任意選択的に第2の難燃性物質(FD2)を含むことができる。
【0085】
難燃性物質(FD2)に関して、これは以下から選択される。
・少なくとも1000の単位の数nを有する、ホスフィネート、ジホスフィネート、ホスホネート、ホスフェート、赤リン、ポリリン酸アンモニウムなどのリン系添加剤
・金属水酸化物などの水和鉱物充填剤
【0086】
液体組成物又は(メタ)アクリル系シロップ剤中の、難燃性物質(複数可)(FD1)と(FD2)とを合わせた全体の重量での含有量は、先述のように同じである。
【0087】
このような含有量は、25℃で10mPa.sから10000mPa.sの液体組成物又は(メタ)アクリル系シロップ剤の最適動的粘性率を保持することを可能にする。
【0088】
第2の難燃性物質(FD2)としての追加のリン系添加剤に関し、難燃性薬剤は、具体的には、以下の式(I)又は(II)を有するホスフィネート又はジホスフィネートから選択される。
[式中:
R
1及びR
2は、直鎖状又は分岐状のC
1-C
6アルキル及び/又はアリール基を表し;
R
3は、直鎖状又は分岐状のC
1-C
10アルキレン、C
6-C
10アリーレン、アルキルアリーレン又はアリールアルキレン基を表し;
Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na又はKを表し;
mは1から4の整数であり;
nは1から4の整数であり;
xは1から4の整数である。]
【0089】
式(I)又は(II)の二つ以上の難燃性薬剤を組み合わせることもできる。有利には、MはCa、Al又はZnを表す。好ましくは、MはAlを表す。
【0090】
R1及びR2は、好ましくは、アルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル及び/又はフェニル基である。
【0091】
R3は、好ましくは、メチレン、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、tert-ブチレン、n-ペンチレン、n-オクチレン又はn-ドデシレン基である。R3は、フェニレン、メチルフェニレン、エチルフェニレン、tert-ブチルフェニレン、メチルナフチレン、フェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレン又はナフタレン基でもよい。
【0092】
好ましくは、MがAlを表し、R
1及びR
2の両方がC
1-C
6アルキル基を表す式(I)の難燃性薬剤が使用される。好ましくは、R
1とR
2の両方がエチル基であるか、又は代替的にエチル基とメチル基であり、即ち難燃性薬剤は以下の式(III)又は(IV)の生成物に相当する。
【0093】
好ましくは、(メタ)アクリル系シロップ剤にうまく分散し、含浸時に繊維質基材の線維に均一に分配されるために、難燃性薬剤は、平均径D50が0.5から10μm、有利には1から5μmである粒子の形態である。この平均粒子径D50は、Microtrac(商標登録)レンジの機器を用いて、レーザー散乱粒度分析により測定される。平均粒子径の推定のために、測定値は、試料の50%がこのサイズより小さなサイズを有し、試料の50%がこのサイズより大きなサイズを有している、即ち換言すれば、50%の累積体積において等しい体積径を有する粒子サイズに相当する、平均体積径D50又はD(v;0.5)からなっている。このサイズは体積メジアン径としても知られ、粒子の単位体積当たりの質量による質量メジアン径に関連しており、単位体積当たりの質量は粒子のサイズと無関係であるとみなす。
【0094】
第2の難燃性物質(FD2)としての水和鉱物充填剤に関して、これらは本質的に金属水酸化物であり、具体的にはアルミニウム三水和物(Al(OH)3)又は水酸化マグネシウム(Mg(OH))の形態である。これは好ましくはアルミニウム三水和物(Al(OH)3)である。
【0095】
金属水酸化物は、それが熱劣化する間に吸熱脱水される。水の放出は、複合材料を冷却し、炎の領域のガスを希釈し、それにより発火を遅らせる。さらに、その熱劣化に続いて、熱シールドとして働く金属酸化物Al2O又はMgOの層が複合材料内に形成される。
【0096】
好ましくは、(メタ)アクリル系シロップ剤にうまく分散し、含浸時に繊維質基材の線維に均一に分配されるために、難燃性金属水酸化物は、平均径D50が0.5から10μm、有利には1から5μmである粒子の形態である。この平均粒子径D50は、Microtrac(商標登録)レンジの機器を用いて、レーザー散乱粒度分析により測定される。平均粒子径の推定のために、測定値は、試料の50%がこのサイズより小さなサイズを有し、試料の50%がこのサイズより大きなサイズを有している、即ち換言すれば、50%の累積体積において等しい体積径を有する粒子サイズに相当する、平均体積径D50又はD(v;0.5)からなっている。このサイズは体積メジアン径としても知られ、粒子の単位体積当たりの質量は質量メジアン径に関連しており、単位体積当たりの質量が粒子のサイズと無関係であるとみなす。
【0097】
難燃性添加剤又は難燃性充填剤は、単独で、又は(メタ)アクリル系シロップ剤と組み合わせて、使用することができる。しかしながら、(メタ)アクリル系シロップ剤中のこのような物質の全体の含有量は、シロップ剤の粘性を保持するために、50重量%を超えてはならず、好ましくは30重量%未満である。
【0098】
難燃性物質(複数可)は、その難燃性効果を強化するための少なくとも一つの他の添加剤又は充填剤と組み合わせてもよい。したがって、(メタ)アクリル系シロップ剤は、例えば以下のリストから選択される、少なくとも一つの他の添加剤又は充填剤を任意選択的に含むことができる。
・ヒュームドシリカ又は粘土/ベントナイトなどの添加剤;
・炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ヒドロタルシト、ジヒドロタルシト、水酸化カルシウム、タルク(ジヒドロキシル化ケイ酸マグネシウム)、又は金属酸化物、例えば酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン又は三酸化アンチモン、又は酒石酸アンチモンなどの無機充填剤
【0099】
これら添加剤又は充填剤は、燃焼の間の熱分解に由来する可燃性ガスの拡散を妨げ、その結果、最終的な複合材料の耐火性を向上させ、(メタ)アクリル系シロップ剤に組み込まれた難燃性物質(複数可)の効果を強化することができる。
【0100】
本発明の文脈では、充填剤を添加剤と考慮しない。
【0101】
繊維質基材にうまく含浸されるように、及びシロップ剤を予備含浸させた繊維質基材の重合後に得られるマトリックスの熱可塑性特性が保持されるように、液体組成物又は(メタ)アクリル系シロップ剤の動的粘性率を保持するため、シロップ剤の化合物は以下のような質量百分率で組み込まれる。
【0102】
液体組成物又は(メタ)アクリル系シロップ剤中の(メタ)アクリルモノマー(複数可)(M1)は、(メタ)アクリルモノマー(複数可)(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)とを含む組成物の40%から90重量%、好ましくは45%から85重量%の割合で存在する。
【0103】
液体組成物又は(メタ)アクリル系シロップ剤中の(メタ)アクリルポリマー(複数可)(P1)は、(メタ)アクリルモノマー(複数可)(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)とを含む組成物の少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5%、有利には少なくとも10重量%の割合で存在する。
【0104】
液体(メタ)アクリル系シロップ剤中の(メタ)アクリルポリマー(複数可)(P1)は、(メタ)アクリルモノマー(複数可)(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)とを含む組成物の50重量%以下、好ましくは40%以下、有利には30重量%以下の割合で存在する。
【0105】
すべての添加剤及び充填剤は、含浸前に液体(メタ)アクリル系シロップ剤に添加される。
【0106】
液体組成物又は(メタ)アクリル系シロップ剤を製造するための方法に関して、第1の工程は、(メタ)アクリルモノマー(M1)又は(メタ)アクリルモノマーと(メタ)アクリルポリマー(P1)との混合物を含む第1のシロップ剤を調製することである。次いで難燃性物質(複数可)を、25℃で10mPa*sから10000mPa*sの動的粘性率を保持するために、上記に示した割合で第1のシロップ剤に加える。
【0107】
繊維質基材を含浸するための方法に関して、この方法は、繊維質基材に液体組成物又は(メタ)アクリル系シロップ剤を含浸させる工程を含む。
【0108】
この含浸工程は、型又は密閉型において行うことができる。
【0109】
所与の温度における液体(メタ)アクリル系シロップ剤の粘性が、含浸方法のためにやや高すぎる場合、繊維質基材を十分に湿らせ、正しく完全に含浸させるために十分な、より多くの液体シロップ剤が得られるように、シロップ剤を加熱することができる。
【0110】
繊維質基材に関して、細長片、ラップ、組紐、房(locks)、若しくは小片の形態でありうる、織物、フェルト、又は不織布が挙げられる。繊維質材料は、一次元、二次元、又は三次元の様々な形態及び寸法を有しうる。繊維質基材は、1以上の繊維の集まりを含む。繊維が連続的である場合、これらの集まりは織物を形成する。
【0111】
一次元の形態は、線形の長繊維に対応する。繊維は、不連続又は連続でありうる。線維は、連続フィラメントの形態で、ランダムに又は互いに対して平行に配置することができる。繊維は、繊維の長さと直径の比である、そのアスペクト比により定義される。本発明に用いられる繊維は、長繊維又は連続繊維である。繊維は、少なくとも1000、好ましくは少なくとも1500、さらに好ましくは少なくとも2000、有利には少なくとも3000、さらに有利には少なくとも5000、それよりもさらに有利には少なくとも6000、さらに有利には少なくとも7500、最も有利には少なくとも10000のアスペクト比を有する。
【0112】
二次元の形態は、編まれていてもよい、不織布又は織布の繊維状マット又は強化材又は繊維の束に対相当する。二次元の形態が特定の厚さを有し、その結果原理上は三次元である場合も、本発明では二次元であると考慮する。
【0113】
三次元の形態は、例えば、不織布マット、補強材、積み重ねられるか又は折り畳まれた繊維の束、又はこれらの混合物に相当し、三次元内における二次元形態の集まりである。
【0114】
繊維質材料の起源は、天然でも合成でもよい。天然の材料として、植物繊維、木質繊維、動物繊維、又は鉱物繊維を挙げることができる。
【0115】
天然繊維は、例えば、サイザル麻、ジュート、麻、亜麻、木綿、ココナッツ繊維、及びバナナ繊維である。動物繊維は、例えば、羊毛又は毛髪である。
【0116】
合成材料として、熱硬化性ポリマーの繊維、熱可塑性ポリマーの繊維、又はこれらの混合物から選択されるポリマー繊維を挙げることができる。
【0117】
ポリマー繊維は、ポリアミド(脂肪族又は芳香族)、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、及びビニルエステルなどからなる。
【0118】
鉱物繊維は、特にタイプE、R、又はS2のガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、又はケイ素繊維から選択されてもよい。
【0119】
本発明の繊維質基材は、植物繊維、木質繊維、動物繊維、鉱物繊維、合成ポリマー繊維、ガラス繊維、炭素繊維、及びこれらの混合物から選択される。
【0120】
好ましくは、繊維質基材は鉱物繊維から選択される。
【0121】
繊維質基材の繊維は、0.005μmから100μm、好ましくは1μmから50μm、さらに好ましくは5μmから30μm、有利には10μmから25μmの直径を有する。
【0122】
好ましくは、本発明の繊維質基材の繊維は、一次元の形態については連続繊維(アスペクト比は長繊維に対して必ずしも当てはまらないことを意味する)、又は繊維質基材の二次元若しくは三次元の形態については長繊維若しくは連続繊維から選択される。
【0123】
追加の態様によれば、本発明は、液体組成物から作製された熱可塑性ポリマー組成物に関する。熱可塑性ポリマー組成物は、液体組成物中における(メタ)アクリルモノマーの混合物又は(メタ)アクリルモノマー(M1)の重合により得られる。
【0124】
一実施態様では、熱可塑性ポリマー組成物はキャストシート重合により得られる。
【0125】
別の追加の態様によれば、本発明は、熱可塑性(メタ)アクリルマトリックス及び強化材として使用される繊維質基材を含むポリマー複合材料に関し、この材料において、繊維質基材は長繊維からなり、前記複合材料は、熱可塑性(メタ)アクリルマトリックスが、前記液体組成物又は(メタ)アクリル系シロップ剤を予備含浸させた前記繊維質基材の重合後に得られることを特徴とする。
【0126】
本発明の別の態様は、機械的又は構造的な部品又は製品を製造するための方法であり、この方法は:
a)繊維質基材に本発明による液体組成物又は(メタ)アクリル系シロップ剤を含浸させる工程、
b)前記繊維質基材に含浸されている液体組成物又は(メタ)アクリル系シロップ剤を重合する工程
を含む。
【0127】
複合材料部品を製造するための方法に関して、部品を準備するために様々な方法を使用することができるであろう。注入、減圧バッグ成形、加圧バッグ成形、オートクレーブ成形、樹脂トランスファー成形(RTM)、反応射出成形(RIM)、強化反応射出成形(R-RIM)及びその変形例、プレス成形又は圧縮成形が挙げられる。
【0128】
複合材料部品を製造するための好ましい製造方法は、型内での繊維質基材の含浸により液体(メタ)アクリル系シロップ剤を繊維質基材へと移す方法である。
【0129】
この方法の一つの利点は、複合材に含まれる大量の繊維質材料である。
【0130】
このようにして製造される複合材料から作製される機械部品の使用に関して、自動車の用途、バス又はトラックといった輸送用途、船舶の用途、鉄道用途、スポーツ、飛行及び航空宇宙の用途、発電用途、コンピューター関連用途、建設及び建築の用途、電気通信用途及び風力エネルギー用途を挙げることができる。
【0131】
複合材料から作製される機械部品は、特に自動車の部品、船舶の部品、バスの部品、列車の部品、スポーツ用品、飛行機若しくはヘリコプターの部品、宇宙船若しくはロケットの部品、太陽電池モジュールの部品、建設又は建築材料、風力タービンの部品、家具用の部品、建設若しくは建築用の部品、電話若しくは携帯電話の部品、コンピューター若しくはテレビの部品、又はプリンター若しくはコピー機の部品である。
【0132】
(メタ)アクリル系シロップ剤を用いた繊維質基材の含浸及び重合の後に得られる機械部品又は構成部材は、以下の実施例に示すように、耐火性試験を経ており、良好な性質を有している。本発明の手段により得られる熱可塑性複合材料のさらなる利点は、火に曝された(メタ)アクリルマトリックスが発する毒性煙霧が、熱硬化性複合材料を作製するためにこれまでに使用されたフェノール樹脂より少量であること、及び特に一酸化炭素を発することである。さらに、(メタ)アクリル樹脂の燃焼により生じる煙霧は、ポリエステル樹脂又はエポキシドの燃焼により生じる煙霧よりずっと不透明度が低い。
【0133】
(メタ)アクリル系シロップ剤による繊維質基材の含浸及び重合の後に得られる複合材料から作製された機械部品又は構成部材は、32より大きい、好ましくは40より大きい、有利には45より大きい限界酸素指数LOIを有する。
【0134】
限界酸素指数(LOI)は、標本の燃焼持続がISO規格4589によって特定される試験条件下で観察されるような、酸素-窒素混合物(N2/O2)中の酸素の最小パーセンテージと定義される。このように、LOIは、炎との接触時にポリマーが発火できる容易さを測定する。LOIのレベルが高い程、材料が発火する傾向は低下する。
LOI<21である場合、材料は可燃性であり、これはPMMAが17.3のLOI値を有する場合に当てはまる。
LOI>21である場合、材料は自己消炎性である(空気中で燃焼しない)。
LOI=100である場合、材料は完全に不燃性である。
【実施例】
【0135】
第1の工程:液体組成物又は(メタ)アクリル系シロップ剤の調製
液体組成物は、P1としての20重量%のPMMA(BS520、コモノマーとしてエチルアクリレートを含むMMAのコポリマー)を、HQME(ヒドロキノンモノメチルエーテル)で安定化させた、M1としての80重量%のメチルメタクリレート中に溶解することにより調製される。
【0136】
この液体組成物に対し、(FD1)としての異なる難燃性物質又はそれを含む混合物が添加される。難燃剤(FD1)として、Clariant社のExolit EP150が使用される。難燃剤(FD2)として、2.5μmの径D50を有するClariant社のホスフィナートOP930が使用される。
【0137】
比較実施例1は添加された難燃性物質を有さない。
【0138】
4.5mmの厚さを有するキャストシートとしてのそれぞれの組成物の重合は、100重量部の液体組成物(M1及びP1のみに基づく)に対し、1重量部の過酸化ベンゾイル(BPO-Arkema社のLuperox A75)を添加することにより行われる。
【0139】
1cm*20cmの試料をシートから切り取る。
【0140】
それぞれの試料の限界酸素指数(LOI)を測定する。
【0141】
【0142】
LOIは、大気中の酸素量を超えて、本発明による実施例で有意に増大する。
【0143】
第2の工程:繊維質基材の含浸及び重合
液体組成物は、良好な難燃剤特性を有する熱可塑性複合材料を得るために、繊維質基材の含浸に使用することができる。