(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】弾性波共振子、弾性波フィルタ、分波器、通信装置
(51)【国際特許分類】
H03H 9/145 20060101AFI20231212BHJP
H03H 9/25 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H03H9/145 Z
H03H9/145 C
H03H9/25 C
(21)【出願番号】P 2022505142
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2021006850
(87)【国際公開番号】W WO2021177108
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2020039361
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020110832
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】野添 惣一朗
(72)【発明者】
【氏名】岸野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】笠松 直史
【審査官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-135010(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121818(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/111664(WO,A1)
【文献】特開2018-137517(JP,A)
【文献】米国特許第08294330(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 3/08 - H03H 3/10
H03H 9/145
H03H 9/15 - H03H 9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体と、
前記圧電体上に位置し、弾性波の伝搬方向に配列された、複数の電極指とを備え、
前記複数の電極指が位置する領域は、平面視において、第1領域と第2領域とを含み、
前記複数の電極指は、前記第1領域に位置する第1電極指群と、前記第2領域に位置する第2電極指群とを含み、
前記第1電極指群のピッチは、前記第2電極指群のピッチと異なり、
前記第1領域および前記第2領域は、それぞれの電極指群のピッチの大小関係によってもたらされる共振周波数または反共振周波数の高低への作用を打ち消す方向に働く周波数作用特性を有
し、
前記第1領域における前記弾性波の主共振の共振周波数と、前記第2領域における前記弾性波の主共振の共振周波数とが、同一である弾性波共振子。
【請求項2】
圧電体と、
前記圧電体上に位置し、弾性波の伝搬方向に配列された、複数の電極指とを備え、
前記複数の電極指が位置する領域は、平面視において、第1領域と第2領域とを含み、
前記複数の電極指は、前記第1領域に位置する第1電極指群と、前記第2領域に位置する第2電極指群とを含み、
前記第1電極指群のピッチは、前記第2電極指群のピッチと異なり、
前記第1領域および前記第2領域は、それぞれの電極指群のピッチの大小関係によってもたらされる共振周波数または反共振周波数の高低への作用を打ち消す方向に働く周波数作用特性を有し、
前記周波数作用特性は、前記第1領域および前記第2領域における、前記圧電体の厚みの差を含む弾性波共振子。
【請求項3】
圧電体と、
前記圧電体上に位置し、弾性波の伝搬方向に配列された、複数の電極指とを備え、
前記複数の電極指が位置する領域は、平面視において、第1領域と第2領域とを含み、
前記複数の電極指は、前記第1領域に位置する第1電極指群と、前記第2領域に位置する第2電極指群とを含み、
前記第1電極指群のピッチは、前記第2電極指群のピッチと異なり、
前記第1領域および前記第2領域は、それぞれの電極指群のピッチの大小関係によってもたらされる共振周波数または反共振周波数の高低への作用を打ち消す方向に働く周波数作用特性を有し、
さらに、
前記圧電体よりも前記電極指と反対の側の支持基板と、
前記圧電体と前記支持基板との間の反射多層膜とを備え、
前記周波数作用特性は、前記第1領域および前記第2領域における、前記反射多層膜の厚みの差を含む弾性波共振子。
【請求項4】
前記周波数作用特性は、前記第1領域および前記第2領域における、前記電極指のデューティ比の差
を含む請求項1
から3の何れか1項に記載の弾性波共振子。
【請求項5】
前記周波数作用特性は、前記第1領域および前記第2領域における、前記電極指の厚みの差
を含む請求項1
から4の何れか1項に記載の弾性波共振子。
【請求項6】
前記複数の電極指上に位置する、絶縁性材料からなる保護膜を備え、
前記周波数作用特性は、前記第1領域および前記第2領域における、前記保護膜の厚みの差
を含む請求項1
から5の何れか1項に記載の弾性波共振子。
【請求項7】
前記第1領域における前記弾性波の主共振の共振周波数と、前記第2領域における前記弾性波の主共振の共振周波数とが、同一である請求項
2または3に記載の弾性波共振子。
【請求項8】
前記複数の電極指が位置する領域は、平面視において、前記第1領域および前記第2領域と異なる中間領域をさらに含み、
前記複数の電極指は、前記中間領域に位置する中間電極指群をさらに含み、
前記中間電極指群のピッチは、前記第1電極指群のピッチと前記第2電極指群のピッチとの間の値を有し、
前記中間領域における前記弾性波の主共振の共振周波数が、前記第1領域における前記弾性波の主共振の共振周波数と、前記第2領域における前記弾性波の主共振の共振周波数との間の値を有する請求項1から7の何れか1項に記載の弾性波共振子。
【請求項9】
平面視において、前記中間領域を、前記第1領域と前記第2領域との間に備え、
前記中間電極指群のピッチが、前記第1領域から前記第2領域にかけて次第に変化する請求項8に記載の弾性波共振子。
【請求項10】
前記中間領域は、前記中間電極指群のピッチが、第1の変化量に基づいて、前記第1領域から前記第2領域にかけて次第に変化する第1中間領域と、前記中間電極指群のピッチが、前記第1の変化量と異なる第2の変化量に基づいて、前記第1領域から前記第2領域にかけて次第に変化する第2中間領域とを備えた請求項9に記載の弾性波共振子。
【請求項11】
前記中間電極指群のピッチの変化量が、前記第1領域から前記第2領域にかけて次第に変化する請求項9に記載の弾性波共振子。
【請求項12】
前記第1領域と前記第2領域との少なくとも一方を複数備え、
前記伝搬方向において、前記第1領域と前記第2領域との一方に対し、前記第1領域と前記第2領域との他方を対称に備えた請求項1から11の何れか1項に記載の弾性波共振子。
【請求項13】
前記圧電体上に、前記複数の電極指の少なくとも一部を含むIDT電極を備えた請求項1から12の何れか1項に記載の弾性波共振子。
【請求項14】
前記圧電体上に、前記複数の電極指の一部を含むIDT電極と、前記IDT電極に対して前記伝搬方向の両端に位置し、前記複数の電極指の他の一部をそれぞれ含む一対の反射器とを備えた請求項1から12の何れか1項に記載の弾性波共振子。
【請求項15】
前記複数の電極指が位置する領域の80%以上の領域における共振周波数が、前記第1領域における前記弾性波の共振周波数と同一である請求項1から14の何れか1項に記載の弾性波共振子。
【請求項16】
前記圧電体の厚みは、前記第1電極指群または前記第2電極指群におけるピッチ以下の厚みである請求項1から15の何れか1項に記載の弾性波共振子。
【請求項17】
前記複数の電極指のうち、前記第1領域に位置する第1電極指群のピッチは、前記第2領域に位置する第2電極指群よりも小さく、前記第1電極指群のデューティ比は、前記第2電極指群のデューティ比よりも大きい
請求項1から16の何れか1項に記載の弾性波共振子。
【請求項18】
請求項1から17の何れか1項に記載の弾性波共振子を少なくとも一つ以上備えた弾性波フィルタ。
【請求項19】
アンテナ端子と、
送信信号をフィルタリングして前記アンテナ端子に出力する送信フィルタと、
前記アンテナ端子からの受信信号をフィルタリングする受信フィルタと、
を有しており、
前記送信フィルタおよび前記受信フィルタの少なくとも一方が請求項18に記載の弾性波フィルタを含む分波器。
【請求項20】
アンテナと、
前記アンテナに前記アンテナ端子が接続された請求項19に記載の分波器と、
前記送信フィルタおよび前記受信フィルタに接続されたICと、
を有した通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先行文献1には、圧電基板上に、ある特定の共振周波数を有するインターディジタルトランスデューサを複数備えた弾性波フィルタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開番号WO2005/050837公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される従来の弾性波フィルタにおいては、主共振の共振周波数とは異なる周波数において発振するスプリアスが発生する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る弾性波共振子は、圧電体と、前記圧電体上に位置し、弾性波の伝搬方向に配列された、複数の電極指とを備え、前記複数の電極指が位置する領域は、平面視において、第1領域と第2領域とを含み、前記複数の電極指は、前記第1領域に位置する第1電極指群と、前記第2領域に位置する第2電極指群とを含み、前記第1電極指群のピッチは、前記第2電極指群のピッチと異なり、前記第1領域および前記第2領域は、それぞれの電極指群のピッチの大小関係によってもたらされる共振周波数または反共振周波数の高低への作用を打ち消す方向に働く周波数作用特性を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、同一の弾性波共振子内において、共振周波数または反共振周波数の均一性を維持しつつ、スプリアスの強度を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施形態1に係る弾性波共振子の概略平面図である。
【
図2】本開示の実施形態1に係る弾性波共振子の概略断面図である。
【
図3】本開示の実施形態1に係る弾性波共振子において、共振周波数を一定とした場合における、ピッチとデューティ比との関係について示すグラフである。
【
図4】本開示の実施形態1に係る弾性波共振子の特性の、デューティ比による変化について示すグラフである。
【
図5】本開示の実施形態1に係る弾性波共振子における、ピッチおよびデューティ比と、発振する弾性波の周波数との関係を示すグラフである。
【
図6】本開示の実施形態2に係る弾性波共振子の概略平面図である。
【
図7】本開示の実施形態2に係る弾性波共振子の概略断面図である。
【
図8】本開示の実施形態2に係る弾性波共振子の特性を示すグラフである。
【
図9】本開示の実施形態2に係る弾性波共振子の特性を示す他のグラフである。
【
図10】本開示の実施形態2に係る弾性波共振子について、デューティ比の最大値および最小値を変化させた場合における、当該弾性波共振子の特性を示すグラフである。
【
図11】本開示の実施形態2に係る弾性波共振子の電極指のデューティ比の変化を示すグラフである。
【
図12】本開示の実施形態2に係る弾性波共振子の他の例を示す概略平面図である。
【
図13】本開示の実施形態2に係る弾性波共振子の電極指のデューティ比の変化の他の例を示すグラフである。
【
図14】本開示の実施形態2に係る弾性波共振子に生じる共振波の強度の例を示すバブルチャートである。
【
図15】本開示の実施形態2に係る弾性波共振子に生じる共振波の強度の例を示す他のバブルチャートである。
【
図16】本開示の実施形態2に係る弾性波共振子に生じる共振波の強度の例を示す他のバブルチャートである。
【
図17】本開示の実施形態2に係る弾性波共振子に生じる共振波の強度の例を示す他のバブルチャートである。
【
図18】本開示の実施形態2および変形例に係る弾性波共振子について、電極指のデューティ比の変化量を変化させた場合における、当該弾性波共振子の特性を示すグラフである。
【
図19】本開示の実施形態3に係る弾性波共振子の概略断面図である。
【
図20】本開示の実施形態3に係る弾性波共振子の、電極指の厚みと共振周波数との関係について示すグラフである。
【
図21】本開示の実施形態4に係る弾性波共振子の概略断面図である。
【
図22】本開示の実施形態4に係る弾性波共振子の、圧電体の厚みと共振周波数との関係について示すグラフである。
【
図23】本開示の実施形態5に係る弾性波共振子の概略断面図である。
【
図24】本開示の実施形態5に係る弾性波共振子の、多層膜の厚みと共振周波数との関係について示すグラフである。
【
図25】本開示の実施形態6に係る弾性波共振子の概略断面図である。
【
図26】本開示の実施形態6に係る弾性波共振子の、保護層の厚みと共振周波数との関係について示すグラフである。
【
図27】本開示の実施形態7に係る弾性波共振子の反射器付近を拡大して示す概略平面図である。
【
図28】本開示の各実施形態に係る通信装置を説明する概略図である。
【
図29】本開示の各実施形態に係る分波器を説明する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
以下、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において用いられる図は模式図であり、図面上の各部材の寸法比率を厳密に示すものではない。
【0009】
<共振子の構成>
本実施形態に係る弾性波フィルタは、少なくとも一つの弾性波共振子を備える。例えば、弾性波フィルタは、複数の弾性波共振子がラダー型に接続されることにより、ラダー型フィルタを構成する。本実施形態に係る弾性波フィルタは、複数の弾性波共振子を、各弾性波共振子における弾性波の伝搬方向と直交する方向に、並列して備えていてもよい。
【0010】
以下、
図1および
図2を参照して、本実施形態に係る弾性波共振子4について、より詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る弾性波共振子4の概略平面図である。
図2は、本実施形態に係る弾性波共振子4の概略断面図であり、
図1のB-B線矢視断面図である。なお、本明細書において、弾性波共振子4における弾性波の伝搬方向TDを、
図1を含む弾性波共振子4の平面図においては、紙面に向かって上下方向、
図2を含む弾性波共振子4の断面図においては、紙面に向かって左右方向とする。また、本明細書において、
図2を含む弾性波共振子4の断面図においては、図示の簡単のため、断面における部材のみを示し、当該断面よりも奥側の部材の図示を省略する。
【0011】
本実施形態に係る弾性波共振子4は、
図1および
図2に示すように、少なくとも、圧電体6と、当該圧電体6上のIDT電極8とを備える。なお、本明細書の
図2を含む弾性波共振子4の断面図においては、圧電体6に対し、IDT電極8が、紙面に向かって上側に位置するように示す。
【0012】
圧電体6は、圧電性の材料をからなり、例えば、タンタル酸リチウム(以下、LTとも記載する)の単結晶、ニオブ酸リチウム等を用いてもよい。弾性波共振子4において、後述するIDT電極8を含む導電層に電圧が印加されることにより、圧電体6を伝搬方向TDに伝搬する弾性波が励振される。本実施形態において、圧電体6は、
図2に示すように、一定の厚みD6を有していてもよい。なお、本明細書において、「厚みが一定」とは、必ずしも、厚みが厳密に一定であることを指さず、圧電体6を伝搬する弾性波の特性に、著しい影響を及ぼさない範囲において、多少の変動を許容する。
【0013】
<IDT電極および反射器の詳細>
IDT電極8は、一対の櫛歯電極10を含む。なお、本明細書において、
図1を含む弾性波共振子4の平面図においては、視認性の改善のために、一方の櫛歯電極10にハッチングを施している。櫛歯電極10は、例えば、バスバー12と、該バスバー12から互いに延びる複数の電極指14と、複数の電極指14のそれぞれの間において、バスバー12から突出する、複数のダミー電極16を含む。一対の櫛歯電極10は、複数の電極指14が、互いに噛み合うように配置されている。
【0014】
バスバー12は、概ね一定の幅を有し、伝搬方向TDに概ね沿って形成されている。また、一対のバスバー12は、伝搬方向TDと概ね直交する方向において、互いに対向している。なお、圧電体6を伝搬する弾性波に著しい影響を及ぼさない程度において、バスバー12は、幅が変化してもよく、あるいは、伝搬方向TDから傾斜して形成されていてもよい。
【0015】
各電極指14は、概ねバスバー12の幅方向に沿って長尺状に形成される。各櫛歯電極10において、各電極指14は、伝搬方向TDに配列されている。また、一方のバスバー12から延びる電極指14と、他方のバスバー12から延びる電極指14は、伝搬方向TDにおいて、交互に配置されている。
【0016】
各電極指14の本数は、
図1に示す本数に限られず、弾性波共振子4に求められる特性に応じて、適切に設計されてよい。また、各電極指14の長さは、
図1に示すように、略一定であってもよく、あるいは、伝搬方向TDにおける位置によって、互いに長さがことなる、いわゆるアポタイズが施されていてもよい。なお、IDT電極8の一部において、電極指14の一部が「間引き」されていてもよい。換言すれば、IDT電極8は、IDT電極8が形成される領域において、電極指14の一部が形成されていない領域を含んでいてもよい。
【0017】
各ダミー電極16は、概ねバスバー12の幅方向に沿って突出する。また、一方のバスバー12から突出するダミー電極16は、他方のバスバー12から延びる電極指14の先端と、伝搬方向TDと直交する方向において、ギャップを介し互いに対向する。なお、本実施形態に係る弾性波共振子4は、ダミー電極16を備えていなくともよい。
【0018】
弾性波共振子4は、さらに、圧電体6上の、電極指14に対して伝搬方向TDの両端に位置する一対の反射器18を備える。反射器18は、互いに対向する一対のバスバー20から延びる複数のストリップ電極22を含む。反射器18は、電気的に浮遊状態であってもよく、あるいは、反射器18には、基準電位が与えられていてもよい。なお、IDT電極8と反射器18とは、同層であってもよく、導電層に含まれていてもよい。IDT電極8と反射器18とは、金属材料からなり、例えば、Alを主成分とする合金からなっていてもよい。また、反射器18の各ストリップ電極22の本数、形状等は、
図1に示す構成に限られず、電極指14と同じく、弾性波共振子4に求められる特性に応じて、適切に設計されてよい。
【0019】
なお、本明細書において、単に「電極指」と記載する場合には、当該「電極指」は、IDT電極8の複数の電極指14を含む。また、弾性波共振子4が反射器18を備える場合には、本明細書における「電極指」は、反射器18の複数のストリップ電極22をさらに含んでいてもよい。
【0020】
<電極指のピッチ>
本実施形態に係る弾性波共振子4において、
図1および
図2に示すように、IDT電極8の複数の電極指14は、平面視において、電極指配置領域24内に位置する。また、本実施形態において、電極指配置領域24は、第1領域24Aと、第2領域24Bとを、少なくとも一つずつ含む。また、電極指14は、第1領域24Aに位置する第1電極指群14Aと、第2領域24Bに位置する第2電極指群14Bとを含む。
【0021】
特に、本実施形態において、電極指配置領域24は、第1領域24Aと、第2領域24Bとの少なくとも一方を、複数含んでいてもよい。例えば、
図1に示すように、伝搬方向TDにおいて、電極指配置領域24は、第2領域24Bに対し、第1領域24Aを対称に備えている。換言すれば、第1領域24Aは、伝搬方向TDにおいて、第2領域24Bの両端にそれぞれ位置する。
【0022】
ここで、複数の電極指14のそれぞれは、互いにあるピッチを介して配置されている。また、圧電体6を伝搬する弾性波のうち、弾性波共振子4によって励振される弾性波が有する共振周波数は、電極指14のピッチに依存する。一般に、弾性波共振子4によって励振される弾性波が有する共振周波数は、電極指14のピッチが狭くなることにより高くなる。
【0023】
なお、本明細書において、「共振周波数」とは、弾性波共振子4によって励振される弾性波のうち、主共振のモードによって励振される弾性波が有する共振周波数を指し、副共振あるいはスプリアスのモードによって励振される弾性波の周波数を指さない。
【0024】
本実施形態において、第1電極指群14Aの第1ピッチPAは、第2電極指群14Bの第2ピッチPBと異なっている。具体的には、例えば、本実施形態において、第1ピッチPAは、第2ピッチPBよりも短い。例えば、第1ピッチPAは、0.708μmであり、第2ピッチPBは、0.745μmである。
【0025】
なお、圧電体6の厚みD6は、特に限定されないが、本実施形態においては、例えば、第1ピッチPAと第2ピッチPBとの何れかの、0.4倍から1.2倍程度である。例えば、圧電体6の厚みD6は、0.28μmから0.9μm程度である。
【0026】
ここで、圧電体6の厚みD6は、第1電極指群14Aにおける第1ピッチPA、または、第2電極指群14Bにおける第2ピッチPB以下の厚みであることが好ましい。これにより、比較的広いピッチを有する電極指14を備えた弾性波共振子4によって、共振周波数をより高くすることが可能となる。
【0027】
<電極指のデューティ比>
ここで、本実施形態に係る弾性波共振子4は、第1ピッチPAと第2ピッチPBとの大小関係によってもたらされる、共振周波数の高低への作用を打ち消す方向に働く共振周波数作用特性を有する。換言すれば、本実施形態に係る弾性波共振子4は、第1領域24Aおよび第2領域24Bにおける、共振周波数の差が、第1ピッチPAと第2ピッチPBとの差から、従来の弾性波共振子において想定される共振周波数の差よりも小さい。なお、本明細書においては、共振周波数作用特性を、単に周波数作用特性と呼称する場合がある。
【0028】
本実施形態において、共振周波数作用特性は、第1領域24Aおよび第2領域24Bにおける、電極指14のデューティ比の差である。電極指14のデューティ比は、ある電極指14の幅を、当該電極指14と隣接する電極指14との間のピッチによって割った値である。一般に、弾性波共振子4によって励振される弾性波が有する共振周波数は、電極指14のデューティ比が小さくなることにより高くなる。
【0029】
本実施形態において、第1電極指群14Aのデューティ比は、第2電極指群14Bのデューティ比と異なっている。具体的には、本実施形態において、第1電極指群14Aのデューティ比は、第2電極指群14Bのデューティ比よりも大きい。したがって、第1電極指群14Aおよび第2電極指群14Bのデューティ比の差は、第1ピッチPAが、第2ピッチPBよりも短いことにより生じる、第1領域24Aおよび第2領域24Bにおける共振周波数の差を打ち消す方向に作用する。
【0030】
第1電極指群14Aおよび第2電極指群14Bのデューティ比は、
図2に示す、第1電極指群14Aに含まれる電極指14の第1幅WAと、第2電極指群14Bに含まれる電極指14の第2幅WBとを適切に設計することにより設計できる。
【0031】
例えば、第1電極指群14Aのデューティ比は、0.6であり、第2電極指群14Bのデューティ比は、0.3である。上述したように、第1ピッチPAを0.708μm、第2ピッチPBを0.745μmとした場合、例えば、第1幅WAは0.4248μm程度であり、第2幅WBは0.2235μmである。
【0032】
なお、本実施形態において、電極指14の厚みD14は、第1領域24Aと第2領域24Bとの双方において、同一であってもよい。電極指14の厚みD14は、例えば、第1ピッチPAと第2ピッチPBとの何れかの、0.16倍程度である。また、反射器18のストリップ電極22の厚みは、電極指14の厚みと同一であってもよい。
【0033】
<固着基板>
弾性波共振子4の各構成の説明に戻ると、
図2に示すように、弾性波共振子4は、さらに、圧電体6よりも、IDT電極8と反対の側に支持基板26を備える。本実施形態において、支持基板26が、圧電体6を伝搬する弾性波の特性に与える影響は、十分に小さい。このため、支持基板26の材料および寸法は適宜設計されてもよい。例えば、支持基板26は、絶縁材料を含み、樹脂またはセラミックを含んでいてもよい。支持基板26の厚みは、例えば、圧電体6の厚みD6よりも厚い。温度変化に伴う、弾性波の特性に与える影響をより低減するために、支持基板26の材料の線膨張係数は、圧電体6の線膨張係数よりも低いことが好ましい。
【0034】
加えて、弾性波共振子4は、圧電体6と支持基板26との間に、反射多層膜30を備えている。弾性波共振子4は、反射多層膜30と支持基板26との間に、密着層28を含んでいてもよい。なお、圧電体6、支持基板26、密着層28、および反射多層膜30を含む積層体を、固着基板36と称することがある。
【0035】
密着層28は、支持基板26と反射多層膜30との密着性を向上させるために挿入される層であり、圧電体6を伝搬する弾性波の特性に与える影響は十分に小さい。
【0036】
反射多層膜30は、第1層32と第2層34とを、それぞれ交互に積層して含む。第1層32の材料は、第2層34の材料と比較して、音響インピーダンスが低い。これにより、第1層32と第2層34との界面においては、弾性波の反射率が高くなるため、圧電体6を伝搬する弾性波の、弾性波フィルタの外部への漏れだしを低減する。
【0037】
例えば、第1層32は、二酸化ケイ素(SiO2)からなる。また、例えば、第2層34は、酸化ハフニウム(HfO2)からなる。他にも、第2層34は、五酸化タンタル(Ta2O5)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、および酸化マグネシウム(MgO)の何れかからなっていてもよい。
【0038】
反射多層膜30は、第1層32と第2層34とを、それぞれ、少なくとも一層含んでいればよく、層数は特に問われない。また、第1層32と第2層34との層数の合計値は、奇数であってもよく、偶数であってもよい。ここで、反射多層膜30の層のうち、圧電体6と接する層は、第1層32であるが、密着層28と接する層は、第1層32と第2層34とのどちらであってもよい。
【0039】
例えば、反射多層膜30は、第1層32と第2層34とを、合計して、3層以上12層以下含んでいてもよい。ただし、反射多層膜30は、第1層32と第2層34とを、それぞれ一層ずつのみ含んでいてもよい。また、第1層32と第2層34とのそれぞれの間においても、反射多層膜30の各層の密着性の向上、および、反射多層膜30における弾性波の拡散防止の観点から、密着層28が形成されていてもよい。
【0040】
なお、
図2に示すように、第1層32は、それぞれ、一定の厚みD32を有していてもよく、第2層34は、それぞれ、一定の厚みD34を有していてもよい。厚みD32と厚みD34とは、例えば、第1ピッチPAと第2ピッチPBとの何れかの、0.25倍から2倍程度であってもよい。
【0041】
<共振周波数の均一化>
本実施形態において、例えば、第1領域24Aにおける圧電体6を伝搬する弾性波の主共振の共振周波数と、第2領域24Bにおける圧電体6を伝搬する弾性波の主共振の共振周波数とは、同一である。これにより、圧電体6において励振される弾性波の周波数が、第1領域24Aと第2領域24Bとにおいて均一化し、弾性波共振子4の特性が改善する。
【0042】
なお、本明細書において、「周波数が同一」とは、必ずしも、周波数が厳密に同一であることを指さない。例えば、第1領域24Aと第2領域24Bとにおける圧電体6を伝搬する弾性波の主共振の共振周波数は、弾性波共振子4の特性に著しい影響を及ぼさない範囲において、多少の差異を許容する。
【0043】
具体的には、「第1領域24Aと第2領域24Bとにおける共振周波数が同一」と判断するための数値に、第1領域24Aと第2領域24Bとにおける共振周波数の差を、所望の共振周波数で割った値に100を乗じた値(dfr)を用いてもよい。例えば、dfrが、-0.856以上0.856以下の場合に、「第1領域24Aと第2領域24Bとにおける共振周波数が同一」としてもよい。
【0044】
dfrの値が、上記範囲を満たす場合には、弾性波共振子4として周波数特性において第1領域24Aと第2領域24Bとを備えることに起因するスプリアスの発生を抑制することができる。また、本実施形態において、上記範囲を満たす場合、第1領域24Aと第2領域24Bとにおける共振周波数の差の絶対値は、50MHz以下である。
【0045】
なお、dfrが、-1.028、または、1.028である場合においては、スプリアスの発生が確認されている。この場合、本実施形態において、第1領域24Aと第2領域24Bとにおける共振周波数の差の絶対値は、60MHzに相当する。
【0046】
第1領域24Aと第2領域24Bとにおける共振周波数を均一化する手法について、
図3を参照してより詳細に説明する。
図3は、本実施形態に係る弾性波共振子4と同一の構成を備えた弾性波共振子において、励振する弾性波の共振周波数を一定とした場合に、ピッチの変化に対し、デューティ比がどの程度変化するかについて示すグラフである。
【0047】
図3のグラフにおいて、実線は、ピッチの変化に対し、デューティ比がどの程度変化するかについてのシミュレーション値を示し、点線は、当該シミュレーション値に基づいた、ピッチとデューティ比との近似式を示す。近似式は、最もシミュレーション値にフィットする式を適宜選択する。例えば、累乗近似、対数近似、あるいは、多項式近似等を適宜選択すればよい。なお、上記例においては、累乗近似による近似式が最も正確に近似することができたため、累乗近似にて近似式を求めた。
図3のグラフにおいて、縦軸をピッチ(単位:μm)、横軸をデューティ比とした。
【0048】
ピッチをy(単位:μm)、デューティ比をxとすると、励振する弾性波の共振周波数を一定とした場合における、ピッチとデューティ比との関係式は、y=0.6823x^(-0.073)に近似できる。なお、上記シミュレーション値と近似式との誤差の2乗の合計値R2は、0.9987であった。
【0049】
図3のグラフに示すように、励振する弾性波の共振周波数を一定とした場合に、ピッチの変化に対し、デューティ比がどの程度変化するかについては、関係式を算出することが可能である。このため、本実施形態においては、第1ピッチPAと第2ピッチPBとから、第1領域24Aと第2領域24Bとにおける共振周波数を同一とするための、第1電極指群14Aのデューティ比と第2電極指群14Bのデューティ比とを算出できる。
【0050】
<ピッチおよびデューティ比の差異による特性変化>
図4は、本実施形態に係る弾性波共振子4と同一の構成を備えた弾性波共振子において、励振する弾性波の特性を示すグラフであり、弾性波共振子におけるインピーダンスの位相を、周波数毎に示すグラフである。換言すれば、
図4のグラフは、弾性波共振子において発振する弾性波の強度を、周波数毎に示すグラフである。
図4のグラフにおいて、縦軸を位相(単位:deg)、横軸を周波数(単位:MHz)とした。
【0051】
図4のグラフにおいて、実線は、電極指14のデューティ比を0.6とした弾性波共振子における、シミュレーションによる計算結果を示す。また、
図4のグラフにおいて、破線は、電極指14のデューティ比を0.3とした弾性波共振子における、シミュレーションによる計算結果を示す。なお、
図4のグラフにおいてそれぞれシミュレートされた2つの弾性波共振子の電極指14のピッチは、
図3に示す関係式に基づき、共振周波数が同一となるように決定されている。
図4のグラフのうち、グラフ402は、グラフ401の位相の-90度から-80度までを拡大して示すグラフである。
【0052】
図4に示すグラフからも明らかであるように、ピッチおよびデューティ比が異なる2つの弾性波共振子の間においても、最もインピーダンスの位相が高くなる共振周波数は、ほとんど変化しない。なお、ピッチおよびデューティ比が異なる2つの弾性波共振子の間における、インピーダンスの絶対値を確認することによっても、共振周波数および反共振周波数を確認した。この場合においても、ピッチおよびデューティ比が異なる2つの弾性波共振子の間における、共振周波数および反共振周波数は、ほとんど変化していないことを確認した。
【0053】
しかしながら、
図4のグラフ402に顕著に示されるように、共振周波数を除く他の周波数において励振されるスプリアスの周波数は、上記2つの弾性波共振子の間において異なっている。これらの、共振周波数を除く他の周波数において励振される弾性波は、スプリアスのモードにおいて励振する周波数を含む。
【0054】
図5は、本実施形態に係る弾性波共振子4と同一の構成を備えた弾性波共振子において、ピッチとデューティ比とを、共振周波数が一定となるように変化させた場合における、当該弾性波共振子が励振する弾性波のそれぞれの周波数を示すグラフである。
図5のグラフにおいて、横軸はピッチ(単位:μm)およびデューティ比であり、縦軸は周波数(単位:MHz)である。ここで、
図5のグラフにおいて、電極指のピッチの値は、デューティ比の変化に伴い、
図3に示す関係式にしたがって変化する。
【0055】
図5のグラフにおいて、白抜きの丸印は、弾性波共振子が励振する主共振および反共振のモードにおいて励振する、弾性波の周波数の、シミュレーションによる計算結果を示す。
図5のグラフにおいて、黒の丸印は、弾性波共振子が励振する、主共振および反共振のモードを除くモードにおいて励振する、スプリアスの周波数の、シミュレーションによる計算結果を示す。
【0056】
図5の横軸に示すように、電極指のデューティ比およびピッチを変化させることにより、弾性波共振子が励振する主共振および反共振のモードにおいて励振する、弾性波の周波数は、略一定となる。ここで、
図5においては、5350MHz付近に主共振の共振周波数を有し、5500MHz付近に反共振の共振周波数を有する特性を有する弾性波共振子を例に挙げている。
【0057】
しかしながら、
図5に示すように、スプリアスのモードにおいて励振する弾性波の周波数は、電極指のデューティ比およびピッチの変化に伴い、変化する。これは、電極指のデューティ比およびピッチの変化に対し、スプリアスのモードにおいて励振する弾性波の周波数が、主共振および反共振のモードにおいて励振する、弾性波の周波数とは、異なる依存性を有するためである。
【0058】
<実施形態1に係る弾性波共振子の効果>
本実施形態に係る弾性波共振子4は、同一の共振子内において、互いにピッチの異なる、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとを備える。一方、弾性波共振子4は、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとのピッチの差異によって生じる共振周波数の高低への作用を打ち消す方向に作用する、共振周波数特性を有する。本実施形態においては、共振周波数特性は、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとのデューティ比の差である。換言すれば、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとのピッチの差異によって生じる共振周波数の差は、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとのデューティ比の差により低減されている。
【0059】
このため、弾性波共振子4は、互いにピッチおよびデューティ比が異なり、かつ、より共振周波数の差異が低減した第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとを備える。これにより、第1領域24Aと第2領域24Bとの間において、主共振のモードにおいて励振する弾性波の周波数の均一性をより維持しつつ、スプリアスのモードにおいて励振する弾性波の周波数をより異ならせることができる。したがって、本実施形態によれば、同一の弾性波共振子4内において、共振周波数の均一性を維持しつつ、スプリアスのモードにおいて励振する弾性波の周波数を散らすことにより、スプリアスの強度を低減することができる。
【0060】
特に、弾性波共振子4において励振する弾性波の特性を改善する観点から、本実施形態において、第1領域24Aと第2領域24Bとの間において、主共振のモードにおいて励振する弾性波の周波数は、同一であることが好ましい。この場合、電極指14が位置する領域の80%以上の領域における共振周波数が、第1領域24Aおよび第2領域24Bにおける弾性波の共振周波数と同一であることが好ましい。これにより、弾性波共振子4において励振する弾性波の特性をより改善できる。ここで、電極指14が位置する領域とは、電極指配置領域24のうち、平面視において、電極指14が形成されている領域を指す。
【0061】
なお、本実施形態において、第1領域24Aと第2領域24Bとの間において、主共振のモードにおいて励振する弾性波の周波数が、同一である領域と、異なる領域とが混在していてもよい。例えば、第1領域24Aは、反射器18側の端部において、弾性波共振子4の特性を調節するためのイレギュラーな電極指設計がなされた電極指14を備えていてもよい。また、第1領域24Aおよび第2領域24Bにおいて、IDT電極8は、伝搬方向TDにおいて、不連続な電極指設計がなされた領域を含んでいてもよい。
【0062】
本実施形態において、伝搬方向TDにおいて、電極指配置領域24は、第2領域24Bに対し、第1領域24Aを対称に備えている。このため、弾性波共振子4の電極指14のピッチおよびデューティ比等のプロファイルを、伝搬方向TDにおいて、対称的に設計することができる。したがって、本実施形態においては、弾性波共振子4において励振する弾性波の特性をより改善することが可能である。
【0063】
なお、本実施形態に係る弾性波共振子4は、伝搬方向TDにおいて、電極指配置領域24は、第1領域24Aに対し、第2領域24Bを対称に備えていてもよい。換言すれば、本実施形態に係る弾性波共振子4は、伝搬方向TDにおいて、第1領域24Aと第2領域24Bとの一方に対し、第1領域24Aと第2領域24Bとの他方を対称に備えていてもよい。
【0064】
なお、本実施形態、および以降説明する種々の実施形態においては、各弾性波共振子における共振周波数の振る舞いを例に説明している。ここで、一般的に、弾性波共振子の共振周波数および反共振周波数は、ピッチまたはデューティ比の変化に対して、互いに類似する振る舞いを示す。したがって、種々の実施形態において、共振周波数の振る舞いを例に説明する箇所は、共振周波数を反共振周波数に置き換えてもよい。換言すれば、弾性波共振子4は、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとのピッチの差異によって生じる反共振周波数の高低への作用を打ち消す方向に作用する、周波数作用特性を有していてもよい。
【0065】
〔実施形態2〕
<中間領域>
図6は、本実施形態に係る弾性波共振子4Aの概略平面図である。
図7は、本実施形態に係る弾性波共振子4Aの概略断面図であり、
図6のB-B線矢視断面図である。なお、本明細書において、同一の機能を有する各部材には、同一の名称および参照符号を付し、構成の差異がない限り、同じ説明は繰り返さない。
【0066】
本実施形態に係る弾性波共振子4Aの電極指配置領域24は、
図6および
図7に示すように、平面視において、第1領域24Aおよび第2領域24Bと異なる、中間領域24Cをさらに備える。特に、本実施形態に係る弾性波共振子4Aの電極指配置領域24は、伝搬方向TDにおいて、電極指配置領域24は、第2領域24Bに対し、第1領域24Aを対称に備え、かつ、第1領域24Aと第2領域24Bとのそれぞれの間に、中間領域24Cを備える。
【0067】
電極指14は、第1電極指群14Aおよび第2電極指群14Bと異なり、かつ、中間領域24Cに位置する中間電極指群14Cをさらに含む。また、中間電極指群14Cの中間ピッチPCは、第1電極指群14Aの第1ピッチPAと第2電極指群14Bの第2ピッチPBとの間の値を有する。
【0068】
さらに、中間電極指群14Cの主共振の共振周波数は、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとの主共振の共振周波数の間の値を有する。本実施形態において、中間電極指群14Cのピッチから、
図3に示す関係式を用いて、中間電極指群14Cのデューティ比を適切に設計することにより、中間電極指群14Cの主共振の共振周波数を設計することが可能である。なお、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとの主共振の共振周波数が同一である場合は、中間電極指群14Cの主共振の共振周波数も、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとの主共振の共振周波数と同一となる。
【0069】
本実施形態において、例えば、各中間電極指群14Cの中間ピッチPCは、第1領域24A側から第2領域24B側にかけて、次第に変化する。具体的には、例えば、第1ピッチPAが、0.708μmであり、第2ピッチPBが、0.745μmである場合、中間ピッチPCは、第1領域24A側から第2領域24B側にかけて、0.708μmから0.745μmまで単調に増加する。
【0070】
中間電極指群14Cの中間ピッチPCが、第1領域24A側から第2領域24B側にかけて、次第に変化する場合、中間電極指群14Cのデューティ比についても、第1領域24A側から第2領域24B側にかけて、次第に変化する。具体的には、上記例の場合、中間電極指群14Cのデューティ比は、第1領域24A側から第2領域24B側にかけて、0.6から0.3まで単調に減少する。ここで、中間電極指群14Cの主共振の共振周波数が、何れの位置においても、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとの主共振の共振周波数の間となるように、中間電極指群14Cの各位置におけるデューティ比が設計される。
【0071】
<実施形態2に係る弾性波共振子の効果>
本実施形態に係る弾性波共振子4Aは、同一の共振子内において、第1電極指群14Aおよび第2電極指群14Bの双方とピッチの異なる、中間電極指群14Cをさらに備える。また、中間電極指群14Cが位置する中間領域24Cにおける弾性波の主共振の共振周波数は、第1領域24Aおよび第2領域24Bにおける弾性波の主共振の共振周波数の間の値を有する。
【0072】
これにより、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bと中間電極指群14Cとの間において、主共振のモードにおいて励振する弾性波の周波数の均一性をより維持しつつ、スプリアスのモードにおいて励振する弾性波の周波数をさらに異ならせることができる。したがって、本実施形態によれば、同一の弾性波共振子4A内において、共振周波数の均一性を維持しつつ、スプリアスの強度をより低減することができる。
【0073】
また、本実施形態において、中間領域24Cにおけるピッチおよびデューティ比は、中間領域24C内の各位置においても異なっている。このため、スプリアスのモードにおいて励振する弾性波の周波数を、中間領域24C内の各位置においても異ならせることが可能である。ゆえに、本実施形態によれば、同一の弾性波共振子4A内において、共振周波数の均一性を維持しつつ、スプリアスの強度をより低減することができる。
【0074】
さらに、本実施形態において、中間領域24Cにおけるピッチおよびデューティ比は、中間領域24C内において次第に変化している。このため、弾性波共振子4A内の各位置において、ピッチおよびデューティ比等のプロファイルが大きく変化することを予防できる。したがって、本実施形態においては、弾性波共振子4Aにおいて励振する弾性波の特性をより改善することが可能である。
【0075】
なお、第1領域24A、および第2領域24Bを構成する電極指14は、それぞれ、最低2本であればよい。この場合には、中間領域24Cを含む、全電極指配置領域24内における電極指14のピッチおよびデューティ比が、グラジュアルに変化していくものとなる。
【0076】
<実施例と比較例との特性比較>
本実施形態に係る弾性波共振子4Aと対応する構成を備えた、実施例1、実施例2および実施例3のそれぞれに係る弾性波共振子についての特性を、シミュレーションによって計算した。
【0077】
実施例1に係る弾性波共振子について、各部材の寸法等のパラメータは、実施形態1において例示した値を除き、以下のように設定した。IDT電極8および反射器18は、厚みが0.13μmのAlを使用した。電極指配置領域24は、本実施形態に係る電極指配置領域24と同じく、伝搬方向TDにおいて、第2領域24Bに対し、第1領域24Aを対称に備え、かつ、第1領域24Aと第2領域24Bとのそれぞれの間に、中間領域24Cを備える。ただし、IDT電極8の電極指14のデューティ比は、第1領域24A、中間領域24C、および第2領域24Bにかけて、0.3から0.6まで単調に増加するように設定した。また、実施例1に係る弾性波共振子の固着基板36は、Siの支持基板26上に、第1層32と第2層34とを、計8層交互に積層した反射多層膜30を設け、その上に圧電体6が形成されたものとした。第1層32は、厚み0.2μmのSiO2からなり、第2層34は、厚み0.17μmのHfO2からなる。圧電体6の厚みD6は0.415μmとした。なお、圧電体6としては114°YカットX伝搬のLT結晶とした。
【0078】
実施例2に係る弾性波共振子について、各部材の寸法等のパラメータは以下のように設定した。IDT電極8および反射器18は、厚みが0.18μmのAlを使用した。電極指配置領域24は、本実施形態に係る電極指配置領域24と同じく、伝搬方向TDにおいて、第2領域24Bに対し、第1領域24Aを対称に備え、かつ、第1領域24Aと第2領域24Bとのそれぞれの間に、中間領域24Cを備える。ただし、IDT電極8の電極指14のデューティ比は、第1領域24A、中間領域24C、および第2領域24Bにかけて、0.3から0.6まで単調に増加するように設定した。電極指14のピッチは、デューティ比が0.5となる位置において、1μmとなるように設定し、電極指配置領域24内の何れの位置においても、共振周波数が一定となるように、電極指14の各位置におけるピッチを変更した。また、実施例2に係る弾性波共振子の固着基板36は、Siの支持基板26上に直接圧電体6が形成されたものとし、圧電体6の厚みD6を24μmとした。
【0079】
実施例3に係る弾性波共振子について、各部材の寸法等のパラメータは以下のように設定した。IDT電極8および反射器18は、厚みが0.135μmのAlを使用した。電極指配置領域24は、本実施形態に係る電極指配置領域24と同じく、伝搬方向TDにおいて、第2領域24Bに対し、第1領域24Aを対称に備え、かつ、第1領域24Aと第2領域24Bとのそれぞれの間に、中間領域24Cを備える。ただし、IDT電極8の電極指14のデューティ比は、第1領域24A、中間領域24C、および第2領域24Bにかけて、0.3から0.6まで単調に増加するように設定した。電極指14のピッチは、デューティ比が0.5となる位置において、0.751μmとなるように設定し、電極指配置領域24内の何れの位置においても、共振周波数が一定となるように、電極指14の各位置におけるピッチを変更した。また、実施例3に係る弾性波共振子の固着基板36は、Siの支持基板26上に直接圧電体6が形成されたものとし、圧電体6の厚みD6を2.2μmとした。
【0080】
また、実施例1、実施例2および実施例3のそれぞれに係る弾性波共振子に対する比較対象として、比較例1、比較例2および比較例3のそれぞれに係る弾性波共振子についての特性も、シミュレーションによって計算した。
【0081】
比較例1に係る弾性波共振子は、実施例1に係る弾性波共振子と比較して、電極指配置領域24内の何れの位置においても、電極指14のデューティ比を0.6、ピッチを0.708とした点においてのみ相違する。比較例2に係る弾性波共振子は、実施例2に係る弾性波共振子と比較して、電極指配置領域24内の何れの位置においても、電極指14のデューティ比を0.6、ピッチを0.995μmとした点においてのみ相違する。比較例3に係る弾性波共振子は、実施例3に係る弾性波共振子と比較して、電極指配置領域24内の何れの位置においても、電極指14のデューティ比を0.6、ピッチを0.748μmとした点においてのみ相違する。
【0082】
図8、
図9は、各実施例および各比較例に係る弾性波共振子において、励振する弾性波の特性を示すグラフであり、弾性波共振子におけるインピーダンスの位相を、周波数毎に示すグラフである。
図8、
図9のグラフにおいて、縦軸を位相(単位:deg)、横軸を周波数(単位:MHz)とした。
図8のグラフは、実線にて実施例1に、破線にて比較例1に、それぞれ係る弾性波共振子の特性を示す。
図9のグラフ901は、実線にて実施例2に、破線にて比較例2に、それぞれ係る弾性波共振子の特性を示す。
図9のグラフ902は、実線にて実施例3に、破線にて比較例3に、それぞれ係る弾性波共振子の特性を示す。
【0083】
図8のグラフからも明らかなように、実施例1および比較例1に係る弾性波共振子の、主共振のモードにて発振する、周波数5800MHzから5900MHz付近の弾性波について、共振周波数および強度は略同一である。しかしながら、実施例1に係る弾性波共振子の、スプリアスのモードにて発振する、周波数5900MHz以上の弾性波は、比較例1と比較して、強度が低下している。
【0084】
図9のグラフ901から明らかであるように、実施例2および比較例2に係る弾性波共振子の、主共振のモードにて発振する、周波数1900MHzから2000MHz付近の弾性波について、共振周波数および強度は略同一である。しかしながら、実施例2に係る弾性波共振子の、スプリアスのモードにて発振する、周波数2200MHz以上の弾性波は、比較例2と比較して、強度が低下している。
【0085】
図9のグラフ902から明らかであるように、実施例3および比較例3に係る弾性波共振子の、主共振のモードにて発振する、周波数2600MHzから2700MHz付近の弾性波について、共振周波数および強度は略同一である。しかしながら、実施例3に係る弾性波共振子の、スプリアスのモードにて発振する、周波数2800MHz以上の弾性波は、比較例3と比較して、強度が低下している。
【0086】
したがって、各実施例に係る弾性波共振子は、電極指14のピッチおよびデューティ比が一定の弾性波共振子と比較して、主共振のモードにて発振する弾性波の強度を維持しつつ、スプリアスのモードにて発振する弾性波の強度を低減できる。
【0087】
<デューティ比の最大値および大小値と特性との関係>
本実施形態に係る弾性波共振子4Aにおいて、電極指14のデューティ比の最大値および最小値を変更した場合における、各弾性波共振子4Aの特性を、シミュレーションによって計算し、
図10のグラフに示した。なお、
図10のグラフに特性を示す各弾性波共振子4Aは、電極指14のデューティ比の最大値および最小値を除き、実施例1に対応する構成を備えているとして、シミュレーションを行った。
【0088】
図10の各グラフは、本実施形態に係る弾性波共振子4Aにおいて、電極指14のデューティ比の最大値および最小値を変更した場合における、各弾性波共振子4Aのインピーダンスの最大位相を示すものである。
【0089】
図10のグラフ1001は、各弾性波共振子4Aの主共振のモードにて発振する弾性波の周波数について、インピーダンスの最大位相を示すものである。換言すれば、
図10のグラフ1001は、各弾性波共振子4Aの主共振のモードにて発振する弾性波の最大強度を示すグラフである。
【0090】
図10のグラフ1002は、各弾性波共振子4Aのスプリアスのモードにて発振する弾性波の周波数について、インピーダンスの最大位相を示すものである。ここで、グラフ1002においては、全てのスプリアスのモードにて発振する弾性波の周波数のうち、インピーダンスの位相が最大となる周波数について記載している。換言すれば、
図10のグラフ1002は、各弾性波共振子4Aのスプリアスのモードにて発振する弾性波の最大強度を示すグラフである。
【0091】
図10の各グラフにおいて、縦軸を位相(単位:deg)とし、横軸を、電極指14のデューティ比の最大値と最小値とのそれぞれから、0.61を引き、それぞれを掛けた値の絶対値とした。
【0092】
デューティ比の最大値を、0.6から0.35まで、デューティ比の最小値を、0.5から0.3まで、それぞれ0.05ごとに変更して、各最大位相を、シミュレーションによって計算し、当該計算の結果を
図10の各グラフにプロットした。
図10の各グラフにおける各細線は、デューティ比の最大値が等しいプロットを繋いだものである。また、
図10の各グラフにおける各太線は、デューティ比の最小値が等しいプロットを繋いだものである。
【0093】
図10のグラフ1001から明らかであるように、デューティ比の最大値と最小値との差が小さい程、主共振のモードにて発振する弾性波の最大強度は高くなる傾向にある。また、デューティ比の最大値と最小値とが大きい程、主共振のモードにて発振する弾性波の最大強度は高くなる傾向にある。
【0094】
図10のグラフ1002から明らかであるように、デューティ比の最大値と最小値との差が大きい程、スプリアスのモードにて発振する弾性波の最大強度は低くなる傾向にある。また、デューティ比の最小値が大きい程、スプリアスのモードにて発振する弾性波の最大強度は低くなる傾向にあるが、デューティ比の最大値は、0.55とした場合において、最小となる傾向にある。
【0095】
以上より、本実施形態に係る弾性波共振子4Aについて、主共振のモードにて発振する弾性波の最大強度を高く確保したい場合においては、電極指14のデューティ比の最大値と最小値との差を小さくすればよい。また、本実施形態に係る弾性波共振子4Aについて、スプリアスのモードにて発振する弾性波の最大強度を低く抑えたい場合においては、電極指14のデューティ比の最大値と最小値との差を大きくすればよい。これらの、デューティ比の最大値と最小値との設計は、弾性波共振子4Aの使用用途等を総合して、適宜決定されてもよい。なお、弾性波共振子4Aの上述した各傾向は、反射器18のストリップ電極22のデューティ比の値によらない。
【0096】
<中間領域におけるピッチの変化量>
図11は、本実施形態に係る弾性波共振子4Aの電極指14について、伝搬方向TDにおける弾性波共振子4A上の位置と、デューティ比との関係を示すグラフである。
図11のグラフにおいて、横軸は、電極指14が形成される、伝搬方向TDにおける弾性波共振子4A上の位置を示し、縦軸は、当該位置における電極指14のデューティ比を示す。横軸に示す、24A、24B、24Cとは、それぞれ、第1領域24A、第2領域24B、中間領域24Cが形成される位置に対応する。
【0097】
本実施形態において、中間領域24Cに形成される電極指14のデューティ比は、グラフ1101に示すように、第1領域24Aから第2領域24Bにかけて、線形的に変化していてもよい。あるいは、本実施形態において、中間領域24Cに形成される電極指14のデューティ比は、グラフ1102に示すように、第1領域24Aから第2領域24Bにかけて、非線形に変化していてもよい。換言すれば、中間領域24Cに形成される電極指14のデューティ比の変化量は、第1領域24Aから第2領域24Bにかけて、次第に変化していてもよい。
【0098】
なお、電極指のデューティ比は、当該電極指ごとに決定されるため、本来
図11に示すグラフは、離散的にデューティ比の値がプロットされる。しかしながら、本明細書において、電極指14のデューティ比の変化をグラフにて示す場合には、図示の簡単のために、当該電極指14のデューティ比が連続的に変化しているとみなし、図示を行っている。
【0099】
〔変形例〕
<第1中間領域および第2中間領域>
図12は、本実施形態の変形例に係る弾性波共振子4Fの概略平面図である。
図12に示すように、弾性波共振子4Fの中間領域24Cは、第1中間領域24Dと第2中間領域24Eとを備える。また、中間電極指群14Cは、第1中間領域24Dに形成された第1中間電極指群14Dと、第2中間領域24Eに形成された第2中間電極指群14Eとを含む。
【0100】
第1中間電極指群14Dの第1中間ピッチPDは、第1領域24A側から、第2領域24B側にかけて、第1の変化量に基づいて次第に変化している。一方、第2中間電極指群14Eのピッチは、第1領域24A側から、第2領域24B側にかけて、第1の変化量と異なる第2の変化量に基づいて次第に変化している。
【0101】
ここで、第1の変化量と第2の変化量とは、それぞれ、第1中間領域24Dと第2中間領域24Eとにおいて、位置によって異なっていてもよい。また、第1の変化量と第2の変化量とが異なるとは、例えば、第1の変化量の最大値が第2の変化量の最小値よりも小さい、あるいは、第1の変化量の最小値が第2の変化量の最大値よりも大きいことを指す。
【0102】
さらに、第1中間電極指群14Dおよび第2中間電極指群14Eのそれぞれの主共振の共振周波数は、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとの主共振の共振周波数の間の値を有する。また、第1中間電極指群14Dおよび第2中間電極指群14Eのデューティ比についても、第1領域24A側から第2領域24B側にかけて、次第に変化する。
【0103】
図13は、本変形例に係る弾性波共振子4Fの電極指14について、伝搬方向TDにおける弾性波共振子4F上の位置と、デューティ比との関係を示すグラフである。
図13のグラフにおいて、横軸は、電極指14が形成される、伝搬方向TDにおける弾性波共振子4F上の位置を示し、縦軸は、当該位置における電極指14のデューティ比を示す。横軸に示す、24A、24B、24D、24Eとは、それぞれ、第1領域24A、第2領域24B、第1中間領域24D、第2中間領域24Eが形成される位置に対応する。
【0104】
本変形例において、第1中間ピッチPDの変化量は、第2中間ピッチPEの変化量と異なる。このため、例えば、
図13のグラフ1301に示すように、第1中間領域24Dに形成される第1電極指群14Dのデューティ比の変化量と、第2中間領域24Eに形成される第2電極指群14Eのデューティ比の変化量とが、互いに異なっている。このため、第1領域24Aから第2領域24Bにかけて、中間領域24Cのディーティ比の変化量は変化している。
【0105】
また、本変形例に係る弾性波共振子4Fにおいて、第1中間領域24Dと第2中間領域24Eとは、中間領域24Cのそれぞれに一つずつ形成されている例を挙げたが、これに限られない。例えば、本変形例に係る弾性波共振子4Fは、中間領域24Cのそれぞれに、二つの第2中間領域24Eと、該二つの第2中間領域24Eの間の一つの第1中間領域24Dとが形成されていてもよい。この場合、
図13のグラフ1302に示すように、第1領域24Aから第2領域24Bにかけて、中間領域24Cのディーティ比の変化量は、2回以上変化してもよい。
【0106】
本変形例に係る弾性波共振子4Fは、中間領域24Cにおける電極指14のデューティ比を次第に変化させつつ、位置によってその変化量を変更することができる。このため、弾性波共振子4Fは、中間領域24Cにおける電極指14のデューティ比の分布を設計することができる。例えば、本変形例に係る弾性波共振子4Fは、スプリアスの低減に不利なデューティ比を有する電極指14が形成される領域の面積を低減することができる。例えば、弾性波共振子4Fは、中間領域24Cにおける電極指14のデューティ比の変化量を、スプリアスの強度が比較的強くなるデューティ比の周辺において高くすることにより、スプリアスの強度を低減することができる。
【0107】
<スプリアスの強度の依存性>
一般に、弾性波共振子の電極指のデューティ比、ピッチ、あるいは、圧電体の厚み等によって、当該弾性波共振子に生じるスプリアスの強度および周波数は変化する。弾性波共振子に生じるスプリアスの強度および周波数の依存性の例を、
図14から
図17に示すバブルチャートを参照して説明する。
【0108】
図14から
図17は、本実施形態および比較例に係る弾性波共振子に生じる、共振波の強度の例を示すバブルチャートである。
図14から
図17のそれぞれのバブルチャートにおいて、横軸には圧電体の厚み(単位:μm)、縦軸には周波数(単位:MHz)を示す。
図14から
図17のそれぞれのバブルチャートのバブルの大きさは、生じる弾性波の強度を示す。
【0109】
図14から
図17のバブルチャートは、本実施形態および比較例に係る弾性波共振子の電極指のデューティ比を、それぞれ、0.6、0.5、0.4、および0.3とした場合における、当該弾性波共振子に生じる共振波の強度を示す。
【0110】
図14のバブルチャートにおいては、主共振の周波数を4250MHzとした場合における特性を示す。
図15のバブルチャートにおいては、主共振の周波数を4500MHzとした場合における特性を示す。
図16のバブルチャートにおいては、主共振の周波数を4700MHzとした場合における特性を示す。
図17のバブルチャートにおいては、主共振の周波数を4900MHzとした場合における特性を示す。したがって、
図14から
図17のバブルチャートにおいては、主共振の周波数を除く位置に示されたバブルが小さいほど、生じるスプリアスの強度が小さいことを示す。
【0111】
例えば、
図14および
図15に特性を示す弾性波共振子においては、弾性体の厚みを0.44μmとした場合、デューティ比を0.5または0.6とした場合と比較して、デューティ比を0.3または0.4とした場合の方が、スプリアスの強度を低減できる。一方、
図16および
図17に特性を示す弾性波共振子においては、弾性体の厚みを0.44μmとした場合、デューティ比を0.3または0.4とした場合と比較して、デューティ比を0.5または0.6とした場合の方が、スプリアスの強度を低減できる。
【0112】
このように、
図14から
図17に示すバブルチャートに示すように、弾性波共振子に生じるスプリアスの強度の依存性をシミュレートすることにより、スプリアスの強度を低減できる、各電極指のデューティ比を計算することができる。
【0113】
本変形例に係る弾性波共振子4Fは、例えば、
図14から
図17に示すようなバブルチャートの特性をもとに、スプリアスの強度が比較的強くなる電極指14のデューティ比を弾性波共振子4Fごとに計算することができる。
図14から
図17の各バブルチャートに示すような、弾性波共振子の特性は、従来周知の技術により、適宜算出することができる。これにより、弾性波共振子4Fにおいて、中間領域24Cにおける電極指14のデューティ比の変化量を高くする領域を算出することができる。
【0114】
<変形例に係る弾性波共振子の特性>
図18は、本実施形態に係る弾性波共振子4A、あるいは、本変形例に係る弾性波共振子4Fと同一の構成を備えた弾性波共振子において、励振する弾性波の特性を示すグラフであり、弾性波共振子におけるインピーダンスの位相を、周波数毎に示すグラフである。換言すれば、
図18のグラフは、弾性波共振子において発振する弾性波の強度を、周波数毎に示すグラフである。
図18のグラフにおいて、縦軸を位相(単位:deg)、横軸を周波数(単位:MHz)とした。
【0115】
図18のグラフ1401は、本実施形態に係る弾性波共振子4Aにおいて、中間領域24Cにおける電極指14のデューティ比の変化を、
図11のグラフ1101に示すデューティ比の変化とした場合における、弾性波共振子の特性を示す。
図18のグラフ1402は、変形例に係る弾性波共振子4Fおいて、中間領域24Cにおける電極指14のデューティ比の変化を、
図13のグラフ1301に示すデューティ比の変化とした場合における、弾性波共振子の特性を示す。
【0116】
図18のグラフ1401とグラフ1402とを比較すると、グラフ1402において、周波数6000MHz付近におけるスプリアスの強度が低減している。これは、弾性波共振子4Aと比較して、弾性波共振子4Fの方が、中間領域24Cにおける電極指14のスプリアスの強度が強くなるデューティ比を有する電極指14の形成される領域が小さくなったためである。
【0117】
図18のグラフ1403は、変形例に係る弾性波共振子4Fおいて、中間領域24Cにおける電極指14のデューティ比の変化を、
図13のグラフ1301から変更した場合における、弾性波共振子の特性を示す。
図18のグラフ1401とグラフ1403とを比較すると、周波数5250MHz付近および周波数6000MHz付近におけるスプリアスの強度のバランスが変化している。このように、本変形例に係る弾性波共振子4Fにおいては、中間領域24Cにおける電極指14のデューティ比の変化量を調節することにより、スプリアスの強度のバランスを設計することができる。
【0118】
図18のグラフ1404は、変形例に係る弾性波共振子4Fおいて、中間領域24Cにおける電極指14のデューティ比の変化を、
図13のグラフ1302とした場合における、弾性波共振子の特性を示す。
図18のグラフ1404においては、グラフ1401と比較して、周波数5250MHz付近および周波数6000MHz付近におけるスプリアスの強度が双方ともに低減している。
【0119】
本変形例に係る弾性波共振子4Fにおいては、スプリアスの強度が強くなるデューティ比を有する電極指14の形成される領域を低減することができる。このように、本変形例に係る弾性波共振子4Fは、さらに生じるスプリアスの強度を低減するための電極指14の設計を、より容易に行うことができる。
【0120】
〔実施形態3〕
<電極指の厚みの差異>
図19は、
図2に示す弾性波共振子4の断面と対応する位置における、本実施形態に係る弾性波共振子4Bの概略断面図である。本実施形態に係る弾性波共振子4Bは、実施形態1に係る弾性波共振子4と比較して、第1領域24Aと第2領域24Bとの間において、電極指14のデューティ比の代わりに、電極指14の厚みが異なる点についてのみ、構成が異なる。
【0121】
本実施形態において、
図19に示すように、第1領域24Aに位置する第1電極指群14Aは、第1厚みD14Aを有し、第2領域24Bに位置する第2電極指群14Bは、第2厚みD14Bを有する。特に、本実施形態において、第1ピッチPAが第2ピッチPBよりも小さい場合には、第1厚みD14Aは、第2厚みD14Bと比較して厚い。
【0122】
図20は、本実施形態に係る弾性波共振子4Bの、電極指14の厚みD14と共振周波数との関係について示すグラフである。ここで、ある電極指14の厚みD14を100%とし、当該電極指14の厚みD14を変更した場合における、主共振のモードにて発振する弾性波の共振周波数を、シミュレーションにより計算し、
図20のグラフにプロットした。
図20のグラフについて、縦軸は周波数(単位:MHz)、横軸は電極指14の材料のAlの厚みの割合を%にて示す。
【0123】
図20から明らかであるように、電極指14の厚みD14が薄くなるほど、主共振のモードにて発振する弾性波の共振周波数は高くなる傾向にある。
【0124】
本実施形態において、第1ピッチPAが第2ピッチPBよりも小さく、第1厚みD14Aは、第2厚みD14Bと比較して厚い。このため、第1厚みD14Aと第2厚みD14Bとの差異は、第1ピッチPAと第2ピッチPBとの差異によって生じる、共振周波数の差異の高低を打ち消す方向に作用する。換言すれば、本実施形態において、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとのピッチの大小関係によってもたらされる、共振周波数の高低への作用を打ち消す方向に働く共振周波数作用特性は、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとの厚みの差異である。
【0125】
電極指の厚みおよびピッチの変化に対し、スプリアスのモードにおいて励振する弾性波の周波数が、主共振および反共振のモードにおいて励振する、弾性波の周波数とは、異なる依存性を有する。したがって、本実施形態に係る弾性波共振子4Bにおいても、上述した各実施形態に係る弾性波共振子4、4Aと同様に、共振周波数の均一性を維持しつつ、スプリアスの強度を低減することができる。
【0126】
なお、本実施形態に係る弾性波共振子4Bは、電極指配置領域24が、第1領域24Aと第2領域24Bとを備えているが、これに限られない。例えば、前実施形態と同様に、電極指配置領域24は、さらに、平面視において、第1領域24Aと第2領域24Bとの間の中間領域24Cを備えていてもよい。この場合、中間領域24Cに位置する中間電極指群14Cの厚みは、第1領域24A側から、第2領域24B側にかけて、次第に変化していてもよい。
【0127】
〔実施形態4〕
<圧電体の厚みの差異>
図21は、
図2に示す弾性波共振子4の断面と対応する位置における、本実施形態に係る弾性波共振子4Cの概略断面図である。本実施形態に係る弾性波共振子4Cは、実施形態1に係る弾性波共振子4と比較して、第1領域24Aと第2領域24Bとの間において、電極指14のデューティ比の代わりに、圧電体6の厚みが異なる点についてのみ、構成が異なる。
【0128】
本実施形態において、
図21に示すように、圧電体6は、第1領域24Aと第2領域24Bとの間において、異なる厚みを有する。特に、本実施形態において、圧電体6は、伝搬方向TDにおいて、圧電体6の端部から中心に向かって、次第に厚みが減少している。
【0129】
圧電体6は、例えば、
図21に示すように、第1領域24Aにおいて、第1厚みD6Aを有し、第2領域24Bにおいて、第2厚みD6Bを有する。特に、本実施形態において、第1ピッチPAが第2ピッチPBよりも小さい場合には、第1厚みD6Aは、第2厚みD6Bと比較して厚い。
【0130】
ここで、第1厚みD6Aおよび第2厚みD6Bのそれぞれは、第1領域24Aおよび第2領域24Bのそれぞれにおいて、位置により厚みが異なっていてもよい。例えば、第1厚みD6Aと第2厚みD6Bとのそれぞれは、伝搬方向TDにおいて、圧電体6の端部側から中心側に向かって、次第に厚みが減少している。
【0131】
なお、圧電体6の厚みの変化に合わせて、密着層28の厚みが変化することにより、固着基板36の全体の厚みが、略一定に保たれていてもよい。本実施形態において、密着層28は、例えば、伝搬方向TDにおいて、密着層28の端部から中心に向かって、次第に厚みが増大していてもよい。
【0132】
図22は、本実施形態に係る弾性波共振子4Cの、圧電体6の厚みD6と共振周波数との関係について示すグラフである。
図22のグラフについて、縦軸は周波数(単位:MHz)、横軸は圧電体6の厚みを、単位をμmとして示す。
図22から明らかであるように、圧電体6の厚みD6が薄くなるほど、主共振のモードにて発振する弾性波の共振周波数は高くなる傾向にある。
【0133】
本実施形態において、第1ピッチPAが第2ピッチPBよりも小さく、第1厚みD6Aは、第2厚みD6Bと比較して厚い。このため、第1厚みD6Aと第2厚みD6Bとの差異は、第1ピッチPAと第2ピッチPBとの差異によって生じる、共振周波数の差異の高低を打ち消す方向に作用する。換言すれば、本実施形態において、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとのピッチの大小関係によってもたらされる、共振周波数の高低への作用を打ち消す方向に働く共振周波数作用特性は、圧電体6の厚みの差異である。
【0134】
電極指のピッチと圧電体の厚みとの変化に対し、スプリアスのモードにおいて励振する弾性波の周波数が、主共振および反共振のモードにおいて励振する、弾性波の周波数とは、異なる依存性を有する。したがって、本実施形態に係る弾性波共振子4Cにおいても、上述した各実施形態に係る弾性波共振子4、4A、4Bと同様に、共振周波数の均一性を維持しつつ、スプリアスの強度を低減することができる。
【0135】
なお、本実施形態に係る弾性波共振子4Cは、電極指配置領域24が、第1領域24Aと第2領域24Bとを備えているが、これに限られない。例えば、実施形態2と同様に、電極指配置領域24は、さらに、平面視において、第1領域24Aと第2領域24Bとの間の中間領域24Cを備えていてもよい。
【0136】
また、本実施形態において、圧電体6の厚みは、伝搬方向TDにおいて、圧電体6の端部から中心に向かって、次第に変化しているが、これに限られない。例えば、圧電体6の厚みは、第1領域24Aと第2領域24Bとの境界において、不連続に変化していてもよい。
【0137】
〔実施形態5〕
<反射多層膜の厚みの差異>
図23は、
図2に示す弾性波共振子4の断面と対応する位置における、本実施形態に係る弾性波共振子4Dの概略断面図である。本実施形態に係る弾性波共振子4Dは、実施形態1に係る弾性波共振子4と比較して、第1領域24Aと第2領域24Bとの間において、電極指14のデューティ比の代わりに、反射多層膜30の厚みが異なる点についてのみ、構成が異なる。
【0138】
本実施形態において、
図23に示すように、反射多層膜30は、第1領域24Aと第2領域24Bとの間において、異なる厚みを有する。特に、本実施形態において、反射多層膜30は、伝搬方向TDにおいて、反射多層膜30の端部から中心に向かって、次第に厚みが減少している。特に、本実施形態において、反射多層膜30の厚みの変化は、第1層32と第2層34とのそれぞれの厚みが、反射多層膜30の端部から中心に向かって、次第に減少することにより達成される。
【0139】
第1層32は、例えば、
図23に示すように、第1領域24Aにおいて、第1厚みD32Aを有し、第2領域24Bにおいて、第2厚みD32Bを有する。特に、本実施形態において、第1ピッチPAが第2ピッチPBよりも小さい場合には、第1厚みD32Aは、第2厚みD32Bと比較して厚い。同様に、第2層34は、例えば、
図23に示すように、第1領域24Aにおいて、第1厚みD34Aを有し、第2領域24Bにおいて、第2厚みD34Bを有する。特に、本実施形態において、第1ピッチPAが第2ピッチPBよりも小さい場合には、第1厚みD34Aは、第2厚みD34Bと比較して厚い。
【0140】
ここで、第1厚みD32A、第2厚みD32B、第1厚みD34A、および、第2厚みD34Bのそれぞれは、第1領域24Aおよび第2領域24Bのそれぞれにおいて、位置により厚みが異なっていてもよい。例えば、第1厚みD32A、第2厚みD32B、第1厚みD34A、および、第2厚みD34Bのそれぞれは、伝搬方向TDにおいて、反射多層膜30の端部側から中心側に向かって、次第に厚みが減少している。
【0141】
なお、反射多層膜30の厚みの変化に合わせて、密着層28の厚みが変化することにより、固着基板36の全体の厚みが、略一定に保たれていてもよい。本実施形態において、密着層28は、例えば、伝搬方向TDにおいて、密着層28の端部から中心に向かって、次第に厚みが増大していてもよい。
【0142】
図24は、本実施形態に係る弾性波共振子4Dの、反射多層膜30の厚みと共振周波数との関係について示すグラフである。
図24のグラフ2401は、ある第1層32の厚みD32を100%とし、当該第1層32の厚みD32を変更した場合における、主共振のモードにて発振する弾性波の共振周波数を、シミュレーションによって計算し、プロットしたグラフである。
図23のグラフ2402は、ある第2層34の厚みD34を100%とし、当該第2層34の厚みD34を変更した場合における、主共振のモードにて発振する弾性波の共振周波数を、シミュレーションによって計算し、プロットしたグラフである。
【0143】
図24のグラフ2401について、縦軸は周波数(単位:MHz)、横軸は第1層32の材料のSiO
2の厚みの割合を%にて示す。
図24のグラフ2402について、縦軸は周波数(単位:MHz)、横軸は第2層34の材料のHfO
2の厚みの割合を%にて示す。
【0144】
図24から明らかであるように、第1層32の厚みD32、および、第2層34の厚みD34が薄くなるほど、主共振のモードにて発振する弾性波の共振周波数は高くなる傾向にある。換言すれば、反射多層膜30の厚みが薄くなるほど、主共振のモードにて発振する弾性波の共振周波数は高くなる傾向にある。
【0145】
本実施形態において、第1ピッチPAが第2ピッチPBよりも小さく、第1厚みD32Aおよび第1厚みD34Aのそれぞれは、第2厚みD32Bおよび第2厚みD34Bのそれぞれと比較して厚い。このため、第1厚みD32Aと第2厚みD32Bとの差異、および、第1厚みD34Aと第2厚みD34Bとの差異は、第1ピッチPAと第2ピッチPBとの差異によって生じる、共振周波数の差異の高低を打ち消す方向に作用する。換言すれば、本実施形態において、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとのピッチの大小関係によってもたらされる、共振周波数の高低への作用を打ち消す方向に働く共振周波数作用特性は、反射多層膜30の厚みの差異である。
【0146】
電極指のピッチと反射多層膜の厚みとの変化に対し、スプリアスのモードにおいて励振する弾性波の周波数が、主共振および反共振のモードにおいて励振する、弾性波の周波数とは、異なる依存性を有する。したがって、本実施形態に係る弾性波共振子4Dにおいても、上述した各実施形態に係る弾性波共振子4、4A~4Cと同様に、共振周波数の均一性を維持しつつ、スプリアスの強度を低減することができる。
【0147】
なお、本実施形態に係る弾性波共振子4Dは、電極指配置領域24が、第1領域24Aと第2領域24Bとを備えているが、これに限られない。例えば、実施形態2と同様に、電極指配置領域24は、さらに、平面視において、第1領域24Aと第2領域24Bとの間の中間領域24Cを備えていてもよい。
【0148】
また、本実施形態において、反射多層膜30の厚みは、伝搬方向TDにおいて、反射多層膜30の端部から中心に向かって、次第に変化しているが、これに限られない。例えば、反射多層膜30の厚みは、第1領域24Aと第2領域24Bとの境界において、不連続に変化していてもよい。
【0149】
〔実施形態6〕
<保護膜>
図25は、
図2に示す弾性波共振子4の断面と対応する位置における、本実施形態に係る弾性波共振子4Eの概略断面図である。本実施形態に係る弾性波共振子4Eは、実施形態1に係る弾性波共振子4と比較して、
図25に示すように、弾性波共振子4Eの最上面を覆う位置に、保護膜38を備える。換言すれば、本実施形態に係る弾性波共振子4Eは、圧電体6の上面と、IDT電極8および反射器18のそれぞれの上面および側面とを覆う位置に、保護膜38を備える。
【0150】
保護膜38は、IDT電極8および反射器18の腐食を防止する等、圧電体6上の電極の保護に用いられる薄膜である。保護膜38には、例えば、SiO2またはSi3N4等が用いられていてもよい。また、保護膜38は、上述した材料からなる層を複数層積層して備えていてもよい。上述した材料は、絶縁性が高く、かつ、質量が低いために、保護膜38に好適である。しかしながら、保護膜38の材料は、これに限られない。
【0151】
本実施形態において、
図25に示すように、保護膜38は、第1領域24Aと第2領域24Bとの間において、異なる厚みを有する。代わりに、本実施形態において、IDT電極8の電極指14のデューティ比は一定である。本実施形態において、保護膜38は、伝搬方向TDにおいて、保護膜38の端部から中心に向かって、次第に厚みが減少していてもよく、第1領域24Aと第2領域24Bとの境界において、不連続に変化していてもよい。
【0152】
保護膜38は、例えば、
図26に示すように、第1領域24Aにおいて、第1厚みD38Aを有し、第2領域24Bにおいて、第2厚みD38Bを有する。特に、本実施形態において、第1ピッチPAが第2ピッチPBよりも小さい場合には、第1厚みD38Aは、第2厚みD38Bと比較して厚い。
【0153】
上記点を除いて、本実施形態に係る弾性波共振子4Eの構成は、実施形態1に係る弾性波共振子4の構成と同一であってもよい。
【0154】
図26は、本実施形態に係る弾性波共振子4Eの、保護膜38の厚みと共振周波数との関係について示すグラフである。ここで、ある保護膜38の厚みを100%とし、当該保護膜38の厚みを変更した場合における、主共振のモードにて発振する弾性波の共振周波数を、シミュレーションによって計算し、
図26のグラフにプロットした。
図26のグラフについて、縦軸は周波数(単位:MHz)、横軸は保護膜38の厚みの割合を%にて示す。
【0155】
図26から明らかであるように、保護膜38の厚みが薄くなるほど、主共振のモードにて発振する弾性波の共振周波数は高くなる傾向にある。
【0156】
本実施形態において、第1ピッチPAが第2ピッチPBよりも小さく、第1厚みD38Aは、第2厚みD38Bと比較して厚い。このため、第1厚みD38Aと第2厚みD38Bとの差異は、第1ピッチPAと第2ピッチPBとの差異によって生じる、共振周波数の差異の高低を打ち消す方向に作用する。換言すれば、本実施形態において、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとのピッチの大小関係によってもたらされる、共振周波数の高低への作用を打ち消す方向に働く共振周波数作用特性は、保護膜38の厚みの差異である。
【0157】
電極指のピッチと圧電体の厚みとの変化に対し、スプリアスのモードにおいて励振する弾性波の周波数が、主共振および反共振のモードにおいて励振する、弾性波の周波数とは、異なる依存性を有する。したがって、本実施形態に係る弾性波共振子4Eにおいても、上述した各実施形態に係る弾性波共振子4、4A~4Dと同様に、共振周波数の均一性を維持しつつ、スプリアスの強度を低減することができる。
【0158】
なお、本実施形態に係る弾性波共振子4Eは、電極指配置領域24が、第1領域24Aと第2領域24Bとを備えているが、これに限られない。例えば、実施形態2と同様に、電極指配置領域24は、さらに、平面視において、第1領域24Aと第2領域24Bとの間の中間領域24Cを備えていてもよい。この場合、保護膜38の厚みは、伝搬方向TDにおいて、保護膜38の端部から中心に向かって、次第に変化することが好ましい。
【0159】
なお、本実施形態に係る保護膜38のような、弾性波共振子4Eの最上面を覆う位置に形成された薄膜は、前述の各実施形態に係る弾性波共振子4、4A~4Dも備えていてもよい。しかしながら、前述の各実施形態に係る弾性波共振子4、4A~4Dが、当該薄膜を備える場合、薄膜は、面内における厚みに分布を有していてもよく、略均一に形成されていてもよい。
【0160】
〔実施形態7〕
<反射器のストリップ電極のピッチ>
図27は、本実施形態に係る弾性波共振子4Gの、反射器18の周辺について拡大して示す概略平面図である。本実施形態に係る弾性波共振子4Gは、例えば、反射器18の構成を除いて、上述した各実施形態に係る弾性波共振子と、同一の構成を備えていてもよい。なお、
図27に示す反射器18は、
図1等に示す反射器18と、ストリップ電極22の本数が異なる。しかしながら、上述した各実施形態に係る弾性波共振子についても、
図27に示す反射器18と同じ本数のストリップ電極22を備えた反射器18を備えていてもよい。
【0161】
本実施形態に係る弾性波共振子4Gは、
図27に示すように、反射器18のストリップ電極22を含む領域に、電極指配置領域24を含む。本実施形態において、電極指配置領域24は、第1領域24Fと、第2領域24Gとを、少なくとも一つずつ含む。また、ストリップ電極22は、第1領域24Fに位置する第1電極指群である、第1ストリップ電極群22Fと、第2領域24Bに位置する第2電極指群である、第2ストリップ電極群22Gとを含む。
【0162】
なお、本実施形態において、弾性波共振子4Gが、一対の反射器18を備えている場合、各反射器18に、電極指配置領域24が形成されていてもよい。また、電極指配置領域24は、第1領域24Fと、第2領域24Gとの少なくとも一方を、複数含んでいてもよい。例えば、
図27に示すように、伝搬方向TDにおいて、電極指配置領域24は、第2領域24Gに対し、第1領域24Fを対称に備えている。
【0163】
ここで、複数のストリップ電極22のそれぞれは、電極指14と同じく、互いにあるピッチを介して配置されている。また、第1ストリップ電極群22Fの第1ピッチPFは、第2ストリップ電極群22Gの第2ピッチPGと異なっている。
【0164】
さらに、第1ストリップ電極群22Fのデューティ比は、第2ストリップ電極群22Gのデューティ比と異なっている。特に、第1ストリップ電極群22Fのデューティ比と、第2ストリップ電極群22Gのデューティ比とは、第1ピッチPFと第2ピッチPGとの差異によってもたらされる共振周波数の高低への作用を打ち消すように設計されている。具体的には、第1ピッチPFが第2ピッチPGよりも小さい場合、第1ストリップ電極群22Fのデューティ比は、第2ストリップ電極群22Gのデューティ比よりも大きい。
【0165】
ここで、反射器のストリップ電極のデューティ比およびピッチの変化に対しても、スプリアスのモードにおいて励振する弾性波の周波数が、主共振および反共振のモードにおいて励振する、弾性波の周波数とは、異なる依存性を有する。したがって、弾性波共振子4Gは、互いにピッチおよびデューティ比が異なり、かつ、より共振周波数の差異が低減した第1ストリップ電極群22Fと第2ストリップ電極群22Gとを備える。
【0166】
これにより、第1領域24Fと第2領域24Gとの間において、主共振のモードにおいて励振する弾性波の周波数の均一性をより維持しつつ、スプリアスのモードにおいて励振する弾性波の周波数をより異ならせることができる。したがって、本実施形態によれば、同一の弾性波共振子4G内において、共振周波数の均一性を維持しつつ、スプリアスのモードにおいて励振する弾性波の周波数を散らすことにより、スプリアスの強度を低減することができる。
【0167】
なお、本実施形態においても、第1領域24Fと第2領域24Gとの間において、ストリップ電極22のデューティ比の代わりに、ストリップ電極22、圧電体6、反射多層膜30、あるいは、保護膜38の厚みが異なっていてもよい。この場合、これらの厚みの差異は、第1ピッチPFと第2ピッチPGとの差異によってもたらされる共振周波数の高低への作用を打ち消すように設計されている。
【0168】
<その他の変形例>
上述の各実施形態においては、何れも、電極指のピッチに対して、電極指のデューティ比、電極指の厚み,圧電体6の厚み,反射多層膜30の厚み、保護膜38の厚み等を、単独にて変化させた場合を例に説明した。しかしながら、本開示においてはこの限りではなく、弾性波共振子4、4A~4Gの構成は、それぞれ組み合わせることもできる。
【0169】
例えば、一方の領域に比べ、電極指のピッチが大きい領域については、当該領域における電極指のデューティ比を狭く、かつ、保護膜38の厚みを小さくしてもよい。これにより、1つの要素にて共振周波数の調整を行う場合と比較して、各々の要素の調整量を小さくしつつ、同様の効果を得ることができる。
【0170】
また、各実施形態においては、弾性波共振子4、4A~4Gが、IDT電極8を含む領域と反射器18を含む領域との少なくとも一方に、第1領域と第2領域とを双方備える例について説明した。しかしながら、各実施形態においては、これに限られず、第1領域がIDT電極8を含む領域のみに形成され、第2領域が反射器18を含む領域のみに形成されていてもよい。
【0171】
換言すれば、各実施形態においては、IDT電極8の電極指14の全てが第1電極指群に含まれていてもよく、反射器18のストリップ電極22の全てが第2電極指群に含まれていてもよい。この場合、電極指14とストリップ電極22との間において、それぞれのピッチが異なっており、電極指14とストリップ電極22とのピッチの差異による共振周波数の高低への差異を打ち消す設計がなされている。また、上記の場合、電極指14内、あるいは、ストリップ電極22内において、ピッチが一定であってもよい。
【0172】
さらに、各実施形態においては、弾性波共振子4、4A~4Gが、反射多層膜30を備える例について説明した。しかしながら、本開示においてはこの限りではなく、弾性波共振子4、4A~4Gの固着基板36は、Siの支持基板26上に直接圧電体6が形成されたものとしてもよく、あるいは、反射多層膜30に代えて、SiO2等からなる絶縁層を備えるものとしてもよい。
【0173】
加えて、各実施形態に係る弾性波共振子4、4A~4Gにおいては、圧電体6のうち、IDT電極8が形成された領域の裏面側と支持基板26との間に、空隙が位置するようにしてもよい。この場合、各実施形態に係る弾性波共振子4、4A~4Gは、例えば、凹部を備える支持基板26上に圧電体6を配置した、いわゆる、メンブレン形状のものとしてもよい。
【0174】
本開示の他の態様に係る弾性波共振子は、圧電体と、前記圧電体上に位置し、弾性波の伝搬方向に配列された、複数の電極指を有するIDT電極とを備え、前記複数の電極指が位置する領域は、平面視において、第1領域と第2領域とを含み、前記複数の電極指は、前記第1領域に位置する第1電極指群と、前記第2領域に位置する第2電極指群とを含み、前記第1電極指群のピッチは、前記第2電極指群のピッチと異なり、前記第1領域および前記第2領域は、それぞれの電極指群のピッチの大小関係によってもたらされる共振周波数の高低への作用を打ち消す方向に働く周波数作用特性を有する。
【0175】
本開示の他の態様に係る弾性波共振子は、上記態様において、さらに、前記圧電体よりも前記IDT電極と反対の側の支持基板と、前記圧電体と前記支持基板との間の反射多層膜とを備え、前記周波数作用特性は、前記第1領域および前記第2領域における、前記反射多層膜の厚みの差である。
【0176】
本開示の他の態様に係る弾性波共振子は、上記態様の何れかにおいて、前記圧電体上に、さらに、前記複数の電極指に対して前記伝搬方向の両端に位置する一対の反射器を備える。
【0177】
本開示の他の態様に係る弾性波共振子は、圧電体と、前記圧電体上に位置する、弾性波の伝搬方向に配列された複数の電極指を有するIDT電極と、を備え、前記複数の電極指が位置する領域は、平面視において、第1領域と第2領域とを含み、前記複数の電極指のうち、前記第1領域に位置する第1電極指群のピッチは、前記第2領域に位置する第2電極指群よりも小さく、前記第1電極指群のデューティ比は、前記第2電極指群のデューティ比よりも大きい。
【0178】
<通信装置および分波器の構成の概要>
図28は、本発明の実施形態に係る通信装置40の要部を示すブロック図である。通信装置40は、電波を利用した無線通信を行なうものである。分波器42は、通信装置40において送信周波数の信号と受信周波数の信号とを分波する機能を有している。
【0179】
通信装置40において、送信すべき情報を含む送信情報信号TISは、RF-IC44によって変調および周波数の引上げ(搬送波周波数の高周波信号への変換)がなされて送信信号TSとされる。送信信号TSは、バンドパスフィルタ46によって送信用の通過帯域以外の不要成分が除去され、増幅器48によって増幅されて分波器42に入力される。分波器42は、入力された送信信号TSから送信用の通過帯域以外の不要成分を除去してアンテナ50に出力する。アンテナ50は、入力された電気信号(送信信号TS)を無線信号に変換して送信する。
【0180】
通信装置40において、アンテナ50によって受信された無線信号は、アンテナ50によって電気信号(受信信号RS)に変換されて分波器42に入力される。分波器42は、入力された受信信号RSから受信用の通過帯域以外の不要成分を除去して増幅器52に出力する。出力された受信信号RSは、増幅器52によって増幅され、バンドパスフィルタ54によって受信用の通過帯域以外の不要成分が除去される。そして、受信信号RSは、RF-IC44によって周波数の引下げおよび復調がなされて受信情報信号RISとされる。
【0181】
なお、送信情報信号TISおよび受信情報信号RISは、適宜な情報を含む低周波信号(ベースバンド信号)でよく、例えばアナログの音声信号もしくはデジタル化された音声信号である。無線信号の通過帯域は、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)等の各種の規格に従ったものでよい。変調方式は、位相変調、振幅変調、周波数変調もしくはこれらのいずれか2つ以上の組合せのいずれであってもよい。
【0182】
図29は、本発明の一実施形態に係る分波器42の構成を示す回路図である。分波器42は、
図28において通信装置40に使用されている分波器42である。
【0183】
送信フィルタ56は、
図29に示すように、直列共振子S1~S3および並列共振子P1~P3を有する。分波器42は、アンテナ端子58と、送信端子60と、受信端子62と、アンテナ端子58と送信端子60との間に配置された送信フィルタ56と、アンテナ端子58と受信端子62との間に配置された受信フィルタ64とから主に構成されている。送信端子60には増幅器48からの送信信号TSが入力され、送信端子60に入力された送信信号TSは、送信フィルタ56において送信用の通過帯域以外の不要成分が除去されてアンテナ端子58に出力される。また、アンテナ端子58にはアンテナ50から受信信号RSが入力され、受信フィルタ64において受信用の通過帯域以外の不要成分が除去されて受信端子62に出力される。
【0184】
送信フィルタ56は、例えばラダー型弾性波フィルタによって構成されている。具体的に送信フィルタ56は、その入力側と出力側との間において直列に接続された3個の直列共振子S1、S2、S3と、直列共振子同士を接続するための配線である直列腕と基準電位部Gとの間に設けられた3個の並列共振子P1、P2、P3とを有する。すなわち、送信フィルタ56は3段構成のラダー型フィルタである。ただし、送信フィルタ56においてラダー型フィルタの段数は任意である。
【0185】
並列共振子P1~P3と基準電位部Gとの間には、インダクタLが設けられている。このインダクタLのインダクタンスを所定の大きさに設定することによって、送信信号の通過帯域外に減衰極を形成して帯域外減衰を大きくしている。複数の直列共振子S1~S3および複数の並列共振子P1~P3は、それぞれ弾性波共振子からなる。
【0186】
受信フィルタ64は、例えば、多重モード型弾性波フィルタ66と、その入力側に直列に接続された補助共振子68とを有している。なお、本実施形態において、多重モードは2重モードを含むものである。多重モード型弾性波フィルタ66は平衡-不平衡変換機能を有しており、受信フィルタ64は平衡信号が出力される2つの受信端子62に接続されている。受信フィルタ64は多重モード型弾性波フィルタ66によって構成されるものに限られず、ラダー型フィルタによって構成してもよいし、平衡-不平衡変換機能を有していないフィルタであってもよい。
【0187】
送信フィルタ56、受信フィルタ64およびアンテナ端子58の接続点とグランド電位部Gとの間には、インダクタ等からなるインピーダンスマッチング用の回路を挿入してもよい。
【0188】
上述した各実施形態に係る弾性波フィルタは、例えば
図28に示した分波器42における送信フィルタ56、あるいは、受信フィルタ64の、少なくとも一方のラダー型フィルタ回路を構成する弾性波素子である。送信フィルタ56、あるいは、受信フィルタ64の何れかが、上述した各実施形態に係る弾性波フィルタである場合、当該フィルタの備える弾性波共振子の全て、または、少なくとも一部は、上述した各実施形態に係る弾性波共振子4、4A~4Gである。
【0189】
このような送信フィルタ56、あるいは、受信フィルタ64を備える分波器42を採用することにより、通信装置40のフィルタ特性を向上させることができる。
【0190】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0191】
2…弾性波フィルタ、4・4A~4G…弾性波共振子、6…圧電体、8…IDT電極、12・20…バスバー、14…電極指、14A…第1電極指群、14B…第2電極指群、14C…中間電極指群、14D…第1中間電極指群、14E…第2中間電極指群、18…反射器、22…ストリップ電極、24…電極指配置領域、24A…第1領域、24B…第2領域、24C…中間領域、24D…第1中間領域、24D…第2中間領域、26…支持基板、30…反射多層膜、38…保護膜、40…通信装置、42…分波器、44…RF-IC、50…アンテナ、56…送信フィルタ、58…アンテナ端子、64…受信フィルタ。