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特許7401655ろう付けを行う制御装置、ろう付けシステム、及びろう付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ろう付けを行う制御装置、ろう付けシステム、及びろう付け方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/00 20060101AFI20231212BHJP
   B23K 1/005 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B23K3/00 310B
B23K1/005 A
B23K3/00 310A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022512246
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2021013403
(87)【国際公開番号】W WO2021200872
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2020066242
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】畑田 将伸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 広光
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-239718(JP,A)
【文献】特開平6-47547(JP,A)
【文献】特開2009-190062(JP,A)
【文献】特開平8-57646(JP,A)
【文献】特開2014-14828(JP,A)
【文献】特開2011-218423(JP,A)
【文献】特開2007-268549(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0273604(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0061053(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00 - 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろう材の加熱装置、該加熱装置と母材とを相対的に移動させる移動機械、及び該ろう材の先端を前記加熱装置の加熱位置に対して進退させるろう材移動機構を制御して該母材に対してろう付けを行う制御装置であって、
前記ろう付けの実行中に、前記ろう材移動機構を制御して前記ろう材の先端を前記加熱位置から後退させて、前記ろう付けを中断するろう付け制御部と、
前記ろう付けを中断したときに、前記移動機械を制御して前記加熱装置又は前記母材を、前記ろう付けの実行時の移動方向とは反対の方向へ後退させた後、該移動方向へ向かって再度前進させる移動制御部と、を備え、
前記ろう付け制御部は、前記ろう材移動機構を制御して、前記移動制御部が前進させる前記加熱装置又は前記母材が前記ろう付けを中断したときの中断位置に到達するのと同時に、前記ろう材の先端を前記加熱位置に到達させて、前記ろう付けを再開する、制御装置。
【請求項2】
前記ろう付け制御部は、
前記加熱装置を制御して該加熱装置による加熱動作を中断させるとともに、前記ろう材の先端を前記加熱位置から後退させて、前記ろう付けを中断し、
前記移動制御部が前記加熱装置又は前記母材を再度前進させるときに、前記加熱動作を再開させる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記移動制御部が前記加熱装置又は前記母材を再度前進させているときに、該加熱装置又は該母材が前記中断位置に到達するまでの残り時間を取得する残り時間取得部をさらに備え、
前記ろう付け制御部は、前記残り時間に基づいて、前記ろう材移動機構によって前記ろう材の先端を前記加熱位置へ向かって前進させる動作を開始するタイミングを決定する、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記ろう材移動機構が、後退させた前記ろう材の先端を前記加熱位置に到達させるのに要する時間を取得する送達時間取得部をさらに備え、
前記ろう付け制御部は、前記残り時間が前記要する時間に達したときに前記前進させる動作を開始するように前記タイミングを決定する、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記送達時間取得部は、前記ろう材移動機構が前記ろう材の先端を前記加熱位置から後退させた移動量と、該ろう材移動機構が該ろう材の先端を該加熱位置へ前進させる速度と、に基づいて、前記要する時間を求める、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記ろう付けを中断した時点で該ろう付けを完了した作業完了距離を取得する完了距離取得部と、
前記作業完了距離に基づいて、前記移動制御部が前記加熱装置又は前記母材を後退させる後退距離を決定する後退距離決定部と、をさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記移動機械を制御するための制御座標系における前記中断位置の位置データを記憶する記憶部をさらに備え、
前記ろう付け制御部は、前記位置データに基づいて、前記ろう材の先端を前記加熱位置に到達させる動作を制御する、請求項1~6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
ろう材を加熱して溶融する加熱装置と、
前記加熱装置と母材とを相対的に移動させる移動機械と、
前記ろう材の先端を前記加熱装置の加熱位置に対して進退させるろう材移動機構と、
請求項1~7のいずれか1項に記載の制御装置と、を備える、ろう付けシステム。
【請求項9】
前記ろう材移動機構は、前記ろう材を送り出し及び巻き取り可能なろう材供給装置を有し、
前記ろう材供給装置は、前記ろう材を送り出すことで前記ろう材の先端を前記加熱位置へ前進させ、前記ろう材を巻き取ることで前記ろう材の先端を前記加熱位置から後退させる、請求項8項に記載のろう付けシステム。
【請求項10】
前記加熱装置は、光軸に沿ってレーザ光を出射するレーザ装置を有し、
前記レーザ装置は、出射した前記レーザ光によって前記ろう材を、前記光軸上に配置された前記加熱位置で加熱する、請求項8又は9に記載のろう付けシステム。
【請求項11】
ろう材の加熱装置、該加熱装置と母材とを相対的に移動させる移動機械、及び該ろう材の先端を前記加熱装置の加熱位置に対して進退させるろう材移動機構を制御して該母材に対してろう付けを行う方法であって、
前記ろう付けの実行中に、前記ろう材移動機構を制御して前記ろう材の先端を前記加熱位置から後退させて、前記ろう付けを中断し、
前記ろう付けを中断したときに、前記移動機械を制御して前記加熱装置又は前記母材を、前記ろう付けの実行時の移動方向とは反対の方向へ後退させた後、該移動方向へ向かって再度前進させ、
前記ろう材移動機構を制御して、前進する前記加熱装置又は前記母材が前記ろう付けを中断したときの中断位置に到達するのと同時に前記ろう材の先端を前記加熱位置に到達させて、前記ろう付けを再開する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母材に対してろう付けを行う制御装置、ろう付けシステム、及びろう付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボット等の移動機械を用いて母材に対するろう付けを行うろう付けシステムが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-69315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ろう付けシステムにおいて、何らかの要因でろう付けが中断されることがある。このような場合において、形成されるビードにおいて凹凸等の形状的不具合が発生するのを防止する技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様において、ろう材の加熱装置、該加熱装置と母材とを相対的に移動させる移動機械、及び該ろう材の先端を加熱装置の加熱位置に対して進退させるろう材移動機構を制御して該母材に対してろう付けを行う制御装置は、ろう付けの実行中に、ろう材移動機構を制御してろう材の先端を加熱位置から後退させて、ろう付けを中断するろう付け制御部と、ろう付けを中断したときに、移動機械を制御して加熱装置又は母材を、ろう付けの実行時の移動方向とは反対の方向へ後退させた後、該移動方向へ向かって再度前進させる移動制御部とを備え、ろう付け制御部は、ろう材移動機構を制御して、移動制御部が前進させる加熱装置又は母材がろう付けを中断したときの中断位置に到達するのと同時に、ろう材の先端を加熱位置に到達させて、ろう付けを再開する。
【0006】
本開示の他の態様において、ろう材の加熱装置、該加熱装置と母材とを相対的に移動させる移動機械、及び該ろう材の先端を加熱装置の加熱位置に対して進退させるろう材移動機構を制御して該母材に対してろう付けを行う方法は、ろう付けの実行中に、ろう材移動機構を制御してろう材の先端を加熱位置から後退させて、ろう付けを中断し、ろう付けを中断したときに、移動機械を制御して加熱装置又は母材を、ろう付けの実行時の移動方向とは反対の方向へ後退させた後、該移動方向へ向かって再度前進させ、ろう材移動機構を制御して、前進する加熱装置又は母材がろう付けを中断したときの中断位置に到達するのと同時にろう材の先端を加熱位置に到達させて、ろう付けを再開する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、加熱装置の加熱位置が、ろう付けの中断によって途切れたろう材の端に到達したタイミングで、ろう材の先端を加熱位置に送給させ、ろう付けを再開できる。このように溶着されたろう材を固化することで形成されたビードにおいては、ろう付けの中断箇所で凹凸等の形状的不具合が発生するのが防止され、作業経路に沿って滑らかに延在するビードを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るろう付けシステムの図である。
図2図1に示すろう付けシステムのブロック図である。
図3図1に示すろう付けシステムの動作フローの一例を示すフローチャートである。
図4】母材に対するろう付けを説明するための図である。
図5】母材に対するろう付けを説明するための図である。
図6図3中のステップS10のフローの一例を示すフローチャートである。
図7図3中のステップS10のフローの他の例を示すフローチャートである。
図8】ろう付けシステムの他の機能を示すブロック図である。
図9】ろう付けシステムの動作フローの他の例を示すフローチャートである。
図10】他の実施形態に係るろう付けシステムの図である。
図11図10に示すろう付けシステムのブロック図である。
図12図10に示すろう付けシステムの動作フローの一例を示すフローチャートである。
図13図12中のステップS50のフローの一例を示すフローチャートである。
図14】さらに他の実施形態に係るろう付けシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する種々の実施形態において、同様の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。まず、図1及び図2を参照して、一実施形態に係るろう付けシステム10について説明する。ろう付けシステム10は、後述する母材W1、W2に対してろう付けを行う。
【0010】
ろう付けシステム10は、移動機械12、レーザ装置14、ろう材供給装置16、及び制御装置100を備える。本実施形態においては、移動機械12は、垂直多関節ロボットであって、ベース部20、旋回胴22、ロボットアーム24、及び手首部26を有する。ベース部20は、作業セルの床に固定されている。
【0011】
旋回胴22は、鉛直軸周りに旋回可能となるようにベース部20に設けられている。ロボットアーム24は、旋回胴22に水平軸周りに回動可能に設けられた下腕部28と、該下腕部28の先端部に回動可能に設けられた上腕部30とを有する。手首部26は、上腕部30の先端部に回動可能に設けられている。
【0012】
移動機械12の各構成要素(すなわち、ベース部20、旋回胴22、ロボットアーム24、及び手首部26)には、サーボモータ32(図2)がそれぞれ内蔵されている。サーボモータ32は、制御装置100からの指令に応じて移動機械12の各可動要素(すなわち、旋回胴22、ロボットアーム24、及び手首部26)を駆動する。
【0013】
レーザ装置14は、レーザ発振器34、導光路36、及びレーザ加工ヘッド38を有する。レーザ発振器34は、例えば固体レーザ発振器(YAGレーザ発振器、ファイバレーザ発振器等)であって、制御装置100からの指令に応じてレーザ光を生成し、導光路36へ出射する。導光路36は、例えば光ファイバであって、レーザ発振器34からのレーザ光をレーザ加工ヘッド38へ導光する。
【0014】
レーザ加工ヘッド38は、中空であって、内部に光学レンズ(コリメートレンズ、フォーカスレンズ等)を有し、導光路36から入射したレーザ光を集光して出射口38aから光軸Oに沿って外部へ出射する。レーザ加工ヘッド38は、手首部26に着脱可能に取り付けられ、移動機械12によって移動される。
【0015】
ろう材供給装置16は、ドラム40、及び送給ヘッド42を有する。ドラム40は、円筒状であって、中心軸44の周りに回転可能に支持されている。ドラム40の外周には、ろう材46が巻き付けられて収納されている。送給ヘッド42は、レーザ加工ヘッド38に対して所定の位置関係となるように、例えば固定具(図示せず)を介してレーザ加工ヘッド38(又は手首部26)に対して固定されている。
【0016】
具体的には、送給ヘッド42は、本体部48、送給モータ50、及び一対のローラ52を有する。本体部48は、中空であって、その先端に、送給軸Aの方向へ開口する送給口48aを有する。送給モータ50は、本体部48に固定され、制御装置100からの指令に応じて一対のローラ52を互いに逆方向へ回転させる。
【0017】
一対のローラ52は、本体部48の内部に回転可能に収容されている。ドラム40から引き出されたろう材46は、一対のローラ52の間で挟持されている。送給モータ50がローラ52を一方へ回転すると、ドラム40が一方へ回転されて、ろう材46が本体部48の送給口48aを通して送給軸Aに沿って本体部48の外部へ送り出される。
【0018】
一方、送給モータ50がローラ52を他方へ回転すると、ドラム40が他方へ回転されて、ろう材46がドラム40に巻き取られて送給口48aを通して本体部48の内部へ引き込まれる。このように、ろう材供給装置16は、ろう材46を送り出し及び巻き取りすることによって、ろう材46の先端46aを送給軸Aに沿って進退させる。
【0019】
制御装置100は、移動機械12、レーザ装置14、及びろう材供給装置16の動作を制御する。具体的には、制御装置100は、プロセッサ102、記憶部104、及びI/Oインターフェース106を有するコンピュータである。プロセッサ102は、CPU又はGPU等を有し、記憶部104及びI/Oインターフェース106とバス108を介して通信可能に接続されている。プロセッサ102は、記憶部104及びI/Oインターフェース106と通信しつつ、ろう付けシステム10の各種機能を実現するための演算処理を行う。
【0020】
記憶部104は、RAM又はROM等を有し、各種データを一時的又は恒久的に記憶する。I/Oインターフェース106は、例えば、イーサネット(登録商標)ポート、USBポート、光ファイバコネクタ、又はHDMI(登録商標)端子等を有し、プロセッサ102からの指令の下、外部機器とデータを無線又は有線で通信する。上述のサーボモータ32、レーザ発振器34、及び送給モータ50は、I/Oインターフェース106に無線又は有線で通信可能に接続されている。
【0021】
移動機械12には、移動機械座標系C1が設定されている。移動機械座標系C1は、移動機械12の各可動要素の動作を自動制御するための制御座標系である。本実施形態においては、移動機械座標系C1は、その原点がベース部20の中心に配置され、そのz軸が、旋回胴22の旋回軸に一致するように、移動機械12に対して設定されている。
【0022】
一方、レーザ加工ヘッド38には、ツール座標系C2が設定されている。ツール座標系C2は、移動機械座標系C1におけるレーザ加工ヘッド38の位置及び姿勢を規定する制御座標系である。本実施形態においては、ツール座標系C2は、その原点がレーザ加工ヘッド38の出射口38aに配置され、そのz軸が光軸Oに一致するように、レーザ加工ヘッド38に対して設定されている。
【0023】
プロセッサ102は、移動機械座標系C1に設定したツール座標系C2によって表される位置及び姿勢にレーザ加工ヘッド38を配置させるように、移動機械12の各サーボモータ32へ指令を送信し、移動機械12によってレーザ加工ヘッド38を移動させる。こうして、プロセッサ102は、移動機械座標系C1においてレーザ加工ヘッド38を任意の位置及び姿勢に位置決めできる。このように、移動機械12は、レーザ装置14のレーザ加工ヘッド38を母材に対して相対的に移動させる。
【0024】
次に、図3を参照して、ろう付けシステム10の動作について説明する。図3に示すフローは、プロセッサ102がオペレータ、上位コントローラ、又は作業プログラムBPから作業開始指令を受け付けたときに、開始する。ステップS1において、プロセッサ102は、母材W1及びW2に対してろう付けを開始する。図4及び図5に、母材W1及びW2の一例について説明する。
【0025】
本実施形態においては、2つの母材W1及びW2の接合箇所に沿って作業経路WP(図5)が設定されており、ろう付けシステム10は、作業経路WPの始点SPから終点EPまで該作業経路WPに沿ってろう付けを行う。なお、本実施形態においては、作業経路WPは、移動機械座標系C1のx軸と平行に配置されている。
【0026】
ステップS1の開始後、プロセッサ102は、レーザ発振器34を起動してレーザ加工ヘッド38から光軸Oに沿ってレーザ光を出射させるとともに、ろう材供給装置16の送給モータ50を動作させてろう材46を送給口48aから送り出す。レーザ装置14は、レーザ加工ヘッド38から出射したレーザ光によって、ろう材46の先端46aを加熱位置HPで加熱して溶融する。
【0027】
本実施形態においては、加熱位置HPは、光軸Oと送給軸Aとの交点(又はその近傍の位置)として定義され得る。なお、レーザ加工ヘッド38は、内蔵するフォーカスレンズによってレーザ光を加熱位置HPでフォーカスさせてもよい。このように、本実施形態においては、レーザ装置14は、ろう材46を加熱して溶融させる加熱装置54(図2)として機能する。
【0028】
次いで、プロセッサ102は、移動機械12を動作させて、レーザ加工ヘッド38(又は、ツール座標系C2の原点)を、移動機械座標系C1のx軸プラス方向へ前進させる。こうして、加熱位置HPを作業経路WPに沿って始点SPから終点EPへ向かって前進させつつ、ろう材供給装置16の送給モータ50を動作させてろう材46を所定の速度V(つまり、送り速度)で送り出す。この速度V(例えば、単位:[mm/sec])は、ろう付け実行時に送給モータ50がろう材46の先端46aを加熱位置HPへ前進させる速度の所要値として、予め定められる。
【0029】
その結果、図4及び図5に示すように、作業経路WPに沿ってビード46’が形成される。ビード46’は、溶着されたろう材46が冷えて固化したものである。このビード46’によって、母材W1及びW2は、接合箇所で互いに接合される。このステップS1の開始後、プロセッサ102は、作業プログラムBPに従って移動機械12、レーザ装置14、及びろう材供給装置16を制御する。この作業プログラムBPには、ろう付け実行時にレーザ加工ヘッド38(ツール座標系C2の原点)を位置決めすべき複数の目的位置TP(n=1,2,3,・・・)が規定されている。
【0030】
ステップS2において、プロセッサ102は、ステップS1で開始したろう付けを中断すべき中断イベントが発生したか否かを判定する。例えば、中断イベントは、プロセッサ102が、レーザ発振器34の動作状態パラメータ(冷媒温度、冷媒流量、レーザ出力値、光軸変位量等)が異常であると判定したこと、又は、該動作状態パラメータの異常を示すアラームが発信されたことを含む。
【0031】
代替的には、中断イベントは、移動機械12の周囲に、安全柵若しくは非接触センサによって進入禁止区域が設定されている場合において、安全柵若しくは非接触センサが進入禁止区域へ物体が進入したことを検知したこと、又は、進入検知アラームが発信されたことを含む。このステップS2において、プロセッサ102は、ステップS1のろう付けを実行中に動作状態パラメータ、進入検知信号、又は各種アラームを監視し、中断イベントが発生したか否かを判定する。
【0032】
他の例として、1つの製造ラインに沿って複数の機械システムとろう付けシステム10とが整列して配置されて、互いに協働して母材に対する作業を実行する場合がある。このような機械システムは、例えば、母材をハンドリングするワークハンドリングシステム、母材に対して溶接(スポット溶接、アーク溶接等)を行う溶接システム、又は、ろう付けシステム10と同じタイプのろう付システムを含み得る。この場合において、中断イベントは、製造ラインにおけるろう付けシステム10よりも上流側の機械システムのロボットの動作が停止したことを含む。
【0033】
この場合、該上流側の機械システムの制御装置は、下流側のろう付けシステム10の制御装置100へ中断指令を送信する。ろう付けシステム10のプロセッサ102は、このステップS2において、中断指令を受け付けたか否かを監視し、中断指令を受け付けた場合にYESと判定する。プロセッサ102は、ステップS2でYESと判定した場合、移動機械12の動作を停止してレーザ加工ヘッド38を停止させ、ステップS3へ進む。一方、プロセッサ102は、NOと判定した場合、ステップS11へ進む。
【0034】
ステップS3において、プロセッサ102は、加熱装置54(レーザ装置14)による加熱動作を中断する。本実施形態においては、加熱動作とは、レーザ装置14が出射口38aからレーザ光を出射する動作である。一例として、プロセッサ102は、このステップS3において、レーザ発振器34によるレーザ光生成動作を停止させることで、加熱動作を中断する。他の例として、レーザ発振器34は、生成したレーザ光を遮蔽可能な開閉式シャッタ(図示せず)を有し、プロセッサ102は、該シャッタを動作させてレーザ光を遮蔽することで加熱動作を中断してもよい。
【0035】
ステップS4において、プロセッサ102は、ろう材46の先端46aを加熱位置HPから後退させる。具体的には、プロセッサ102は、送給モータ50を動作させてろう材46をドラム40に巻き取り、これにより、ろう材46の先端46aを加熱位置HPから送給軸Aに沿って後退させる。
【0036】
このとき、プロセッサ102は、ろう材46の先端46aを加熱位置HPから、予め定めた移動量Δだけ後退させる。ここで、先端46aを送給軸Aに沿って移動量Δだけ後退させる(すなわち、ろう材46を長さΔだけドラム40へ巻き取る)のに要する送給モータ50の回転数Rは、実験的手法又は演算等により、予め求めることができる。プロセッサ102は、予め求めた回転数Rだけ送給モータ50を回転させるように該送給モータ50を制御することにより、先端46aを加熱位置HPから移動量Δだけ後退させることができる。
【0037】
このように、本実施形態においては、ろう材供給装置16は、ろう材46を送り出し及び巻き取りすることによって該ろう材46の先端46aを加熱位置HPに対して送給軸Aに沿って進退させている。したがって、ろう材供給装置16は、ろう材46の先端46aを加熱位置HPに対して進退させるろう材移動機構56(図2)として機能する。このステップS4の結果、ろう材46の先端46aが、作業経路WPに溶着されたろう材46(又は固化し始めたビード46’)から離反する。
【0038】
上述のステップS3及びS4によって、ステップS1で開始したろう付けが中断される。すなわち、プロセッサ102は、ろう付けの実行中にろう材移動機構56(具体的には、ろう材供給装置16の送給モータ50)を制御してろう材46の先端46aを加熱位置から後退させるとともに、加熱装置54(具体的には、レーザ装置14のレーザ発振器34)を制御して加熱動作を中断させることで、ろう付けを中断するろう付け制御部110(図2)として機能する。
【0039】
なお、プロセッサ102は、ステップS3の後にステップS4を実行してもよいし、又は、ステップS2でYESと判定した時点でステップS3及びS4を同時に実行してもよい。代替的には、プロセッサ102は、ステップS4をステップS3よりも先に実行してもよい。
【0040】
ステップS5において、プロセッサ102は、移動機械座標系C1における中断位置Pの位置データを記憶する。本実施形態においては、中断位置Pは、プロセッサ102がステップS1で開始したろう付けを中断したときのレーザ加工ヘッド38(又は、ツール座標系C2の原点)の位置である。
【0041】
例えば、プロセッサ102は、ステップS2でYESと判定した時点、又は、ステップS3若しくはS4の開始若しくは完了時点での、移動機械座標系C1におけるレーザ加工ヘッド38(又はツール座標系C2の原点)の座標を、中断位置Pの位置データとして取得する。移動機械座標系C1におけるレーザ加工ヘッド38(ツール座標系C2の原点)の座標は、例えば、移動機械12の各サーボモータ32に設けられた回転検出器(エンコーダ、ホール素子等)からのフィードバックFBから演算により求めることができる。
【0042】
なお、プロセッサ102は、移動機械座標系C1とは別の制御座標系におけるレーザ加工ヘッド38(ツール座標系C2の原点)の座標を、中断位置Pの位置データとして取得してもよい。他の制御座標系としては、例えば、母材W1、W2に対して設定されたワーク座標系、又は作業セルの3次元空間を規定するワールド座標系等がある。プロセッサ102は、取得した中断位置Pの位置データを記憶部104に記憶する。
【0043】
ステップS6において、プロセッサ102は、ろう付けを再開するための再開指令を受け付けたか否かを判定する。この再開指令は、例えば、上述の中断イベントに対処(例えば、異常が解消)された場合等に、オペレータ又は上位コントローラ(若しくは、上述した上流側の機械システムの制御装置等)から、発信され得る。プロセッサ102は、再開指令を受け付けた場合はYESと判定し、ステップS7へ進む一方、再開指令を受け付けていない場合はNOと判定し、ステップS6をループする。
【0044】
ステップS7において、プロセッサ102は、加熱装置54を後退させる。具体的には、プロセッサ102は、移動機械12の各サーボモータ32を制御して、レーザ加工ヘッド38を、ろう付け実行時の移動方向(すなわち、移動機械座標系C1のx軸プラス方向)とは反対の方向(すなわち、移動機械座標系C1のx軸マイナス方向)へ、予め定めた後退距離dだけ後退させる。
【0045】
このように、本実施形態においては、プロセッサ102は、移動機械12を制御して加熱装置54(具体的には、レーザ加工ヘッド38)を、移動機械座標系C1のx軸マイナス方向へ後退させる移動制御部112(図2)として機能する。ステップS7を完了したとき、レーザ加工ヘッド38(ツール座標系C2の原点)は、中断位置Pから、移動機械座標系C1のx軸マイナス方向へ後退距離dだけ離隔した後退位置Pに、配置される。
【0046】
ステップS8において、プロセッサ102は、ろう付け制御部110として機能し、加熱装置54(レーザ装置14)による加熱動作を再開させる。一例として、プロセッサ102は、レーザ発振器34によるレーザ光生成動作を再開させることで加熱動作を再開する。他の例として、上述のシャッタが設けられている場合、プロセッサ102は、レーザ光を遮蔽していた該シャッタを開くことで加熱動作を再開してもよい。
【0047】
ステップS9において、プロセッサ102は、移動制御部112として機能して、加熱装置54を前進させる動作を開始する。具体的には、プロセッサ102は、移動機械12を制御して、レーザ加工ヘッド38を後退位置Pから中断位置Pへ向かって、移動機械座標系C1のx軸プラス方向へ再度前進させる。
【0048】
ここで、本実施形態においては、移動機械12は、このステップS9でプロセッサ102から指令を受けて、加速時定数τに従ってレーザ加工ヘッド38を目標速度Vまで加速し、該目標速度Vで中断位置Pへ向かって前進させる。加速時定数τは、移動機械12が、停止したレーザ加工ヘッド38を目標速度Vまで加速するのに要する時間を示す。これら加速時定数τ及び目標速度Vは、移動機械12の動作条件として予め定められる。
【0049】
なお、プロセッサ102は、ステップS8及びS9を同時に開始してもよい。この場合において、プロセッサ102は、レーザ加工ヘッド38の前進速度に応じて(具体的には、比例して)、レーザ発振器34が出射するレーザ光のレーザパワーを増大させるように、該レーザ発振器34のレーザ光生成動作(換言すれば、加熱動作)を制御してもよい。
【0050】
ステップS10において、プロセッサ102は、ろう材再送達プロセスを実行する。このステップS10について、図6を参照して説明する。ステップS21において、プロセッサ102は、加熱装置54(レーザ加工ヘッド38)が中断位置Pに到達するまでの残り時間tを取得する。一例として、プロセッサ102は、ステップS9の開始後、レーザ加工ヘッド38の前進速度が目標速度Vに達したときの該レーザ加工ヘッド38(ツール座標系C2の原点)の位置P(具体的には、移動機械座標系C1の座標)を取得する。
【0051】
そして、プロセッサ102は、上述のステップS5で取得した中断位置Pと位置Pとの間の距離δを目標速度Vで除算することで、この時点での残り時間tR1を算出する(すなわち、tR1=δ/V)。そして、プロセッサ102は、算出と同時に残り時間tR1のカウントを開始する。このように、本実施形態においては、プロセッサ102は、残り時間tを取得する残り時間取得部114(図2)として機能する。
【0052】
ステップS22において、プロセッサ102は、ろう材移動機構56(具体的には、ろう材供給装置16)が、上述のステップS4で後退させたろう材46の先端46aを加熱位置HPに到達させるのに要する時間tを取得する。例えば、プロセッサ102は、上述の移動量Δを、上述の速度Vで除算することによって、要する時間tを求めることができる(t=Δ/V)。すなわち、プロセッサ102は、このステップS22で、移動量Δ及び速度Vに基づいて、要する時間tを演算により取得する。
【0053】
代替的には、要する時間tを、移動量Δ及び速度Vから予め求めておき、記憶部104に予め記憶してもよい。そして、プロセッサ102は、このステップS22で、記憶部104から要する時間tを読み出して取得してもよい。このように、本実施形態においては、プロセッサ102は、要する時間tを取得する送達時間取得部116(図2)として機能する。
【0054】
ステップS23において、プロセッサ102は、直近のステップS21でカウントを開始した残り時間tR1が、直近のステップS22で取得した要する時間tに達した(すなわち、tR1=t)か否かを判定する。具体的には、直近のステップS21でカウントを開始した後、残り時間tR1は経時的に減っていく。
【0055】
プロセッサ102は、このステップS23で、カウントしている残り時間tR1と、ステップS22で取得した要する時間tとを照らし合わせて、tR1=tとなったか否かを判定する。プロセッサ102は、tR1=tとなった場合はYESと判定し、ステップS24へ進む一方、tR1>tである場合はNOと判定し、ステップS23をループする。なお、ステップS21で取得した、カウント開始前の残り時間tR1が、要する時間tよりも十分大きくなるように、該時間tR1及びtに関連する後退距離d、目標速度V、移動量Δ、及び速度Vといったパラメータが設定される。
【0056】
ステップS24において、プロセッサ102は、ろう付け制御部110として機能し、ろう材移動機構56(ろう材供給装置16)を制御して、ろう材46の先端46aを加熱位置HPへ前進させる動作を開始する。具体的には、プロセッサ102は、ろう材供給装置16の送給モータ50を動作させてろう材46を送り出し、これにより、後退したろう材46の先端46aを加熱位置HPへ向かって送給軸Aに沿って前進させる。
【0057】
ここで、本実施形態においては、残り時間tR1が要する時間tに一致したとき(ステップS23でYESと判定したとき)にステップS24でろう材46の先端46aを前進させる動作を開始しているので、レーザ加工ヘッド38が中断位置Pに到達するのと同時に、ろう材46の先端46aが加熱位置HPに到達することになる。
【0058】
こうして、母材W1及びW2に対するろう付けが再開され、プロセッサ102は、作業プログラムBPに従って移動機械12を制御して、レーザ加工ヘッド38を移動機械座標系C1のx軸プラス方向へ前進させつつ、ろう材供給装置16を制御してろう材46を速度Vで送り出す。
【0059】
再度、図3を参照して、ステップS11において、プロセッサ102は、作業経路WPの始点SPから終点EPまでろう付けが完了したか否かを判定する。例えば、プロセッサ102は、上述のフィードバックFBから取得した移動機械座標系C1におけるレーザ加工ヘッド38(ツール座標系C2の原点)の位置を監視することにより、ろう付けが完了したか否かを判定できる。
【0060】
プロセッサ102は、ろう付けが完了した(すなわち、YES)と判定した場合、移動機械12、レーザ装置14、及びろう材供給装置16の動作を停止して、図3に示すフローを終了する。一方、プロセッサ102は、NOと判定した場合、ステップS2へ戻る。こうして、プロセッサ102は、ステップS11でYESと判定するまで、ステップS2~S11をループする。
【0061】
以上のように、本実施形態においては、プロセッサ102は、レーザ加工ヘッド38が中断位置Pに到達するのと同時に、ろう材46の先端46aを加熱位置HPに到達させて、ろう付けを再開している。この機能の効果について、以下に説明する。ステップS3及びS4でろう付けを中断した場合、中断位置Pに対応する加熱位置HPで、作業経路WPに溶着されるろう材46(又はビード46’)が途切れることになる。
【0062】
本実施形態によれば、ステップS9で前進を開始したレーザ加工ヘッド38の加熱位置HPが、ろう付けの中断によって途切れたろう材46(ビード46’)の端EDに到達したタイミングで、ろう材46の先端46aを加熱位置HPに送給させ、レーザ加工ヘッド38を前進させたままろう付けを再開できる。このように形成されたビード46’においては、ろう付けの中断箇所で凹凸等の形状的不具合が発生するのが防止され、作業経路WPに沿って滑らかに延在するビード46’を形成できる。
【0063】
また、本実施形態においては、プロセッサ102は、ステップS3で加熱動作を中断している。この構成によれば、ろう付けを中断している間に加熱装置54(レーザ装置14)の加熱動作(レーザ光照射)によって母材W1及びW2が損傷してしまうのを防止できる。その一方で、プロセッサ102は、ステップS9を開始するときに、加熱動作を再開させている。この構成によれば、ステップS9~S10の間に、中断前にろう付けしたビード46’を加熱動作により再度溶融させて、中断によって途切れたビード46’の端EDからろう付けを再開できる。
【0064】
これにより、形成されるビード46’において、ろう付け中断箇所で凹凸等の不具合が生じるのをさらに効果的に防止できる。また、ろう付け再開時に母材W1及びW2を予熱するプロセスを省略することもできる。このため、予熱のための設備を省略できるとともに、作業のサイクルタイムを縮減できる。
【0065】
また、本実施形態においては、プロセッサ102は、ステップS21で残り時間tを取得し、該残り時間tに基づいて、ステップS24を開始するタイミングを決定している。具体的には、プロセッサ102は、残り時間tが要する時間tに達したときにステップS24を開始するように、該ステップS24を開始するタイミングを決定している。
【0066】
この構成によれば、ステップS9の開始後、レーザ加工ヘッド38が中断位置Pに到達する(換言すれば、加熱位置HPが、ろう材46の端EDに到達する)時点と、ろう材46の先端46aが加熱位置HPに到達する時点とを、より高精度に一致させることができる。
【0067】
また、本実施形態においては、プロセッサ102は、中断位置Pの位置データを記憶し(ステップS5)、該位置データに基づいて、ろう材46の先端46aを加熱位置HPに到達させる動作を制御している(ステップS21~S24)。この構成によれば、ステップS10のろう材再送達プロセスを、位置データを用いてより正確に実行できる。
【0068】
しかしながら、図3中のステップS5を省略することもできる。この場合、プロセッサ102は、ステップS4の後に、ステップS6~S11を実行する。このときに実行するステップS21に関し、例えば、ステップS9でレーザ加工ヘッド38の前進を開始した時点での残り時間tR2が予め求められ、記憶部104に予め記憶されてもよい。
【0069】
この残り時間tR2は、上述の後退距離d、加速時定数τ、及び目標速度Vが既知であれば、実験的手法、演算、又はシミュレーション等により、求めることができる。そして、プロセッサ102は、残り時間取得部114として機能し、ステップS9と同時に(又は、ステップS9よりも先に)ステップS21を実行して記憶部104から残り時間tR2を読み出して取得し、ステップS9の開始と同時に該残り時間tR2のカウントを開始してもよい。
【0070】
そして、ステップS23において、プロセッサ102は、カウントを開始した残り時間tR2が、要する時間tに達した(すなわち、tR2=t)か否かを判定してもよい。この形態によれば、ステップS5で中断位置Pの位置データを記憶せずとも、ステップS10を実行することができる。
【0071】
また、残り時間t及び要する時間tを取得することなく、ステップS10のろう材再送達プロセスを実行することもできる。以下、図7を参照して、ステップS10のフローの他の例について説明する。なお、図7に示すフローにおいて、図6のフローと同様のプロセスには同じステップ番号を付し、重複する説明を省略する。
【0072】
ステップS31において、プロセッサ102は、ステップS9の開始時点からのレーザ加工ヘッド38(ツール座標系C2の原点)の前進距離dを取得する。この前進距離dは、上述のフィードバックFBから取得される、移動機械座標系C1におけるレーザ加工ヘッド38(ツール座標系C2の原点)の座標から求めることができる。ステップS32において、プロセッサ102は、直近のステップS31で取得した前進距離dが、予め定めた閾値dA_thに達したか否かを判定する。以下、閾値dA_thの設定方法について説明する。
【0073】
レーザ加工ヘッド38の前進距離dが閾値dA_thに達したとすると、この時点でのレーザ加工ヘッド38の位置から中断位置Pまでの残り距離dは、d=d-dA_thとなる。また、この時点でレーザ加工ヘッド38を目標速度Vで前進させているとすると、この時点からレーザ加工ヘッド38が中断位置Pへ到達するまでの時間tは、t=d/Vとして求めることができる。
【0074】
一方、上述の要する時間tは、t=Δ/Vとして定められるので、t=t、すなわち、d/V=(d-dA_th)/V=Δ/Vという式により、閾値dA_thを、dA_th=d-Δ/Vとして定めることができる。つまり、後退距離d、移動量(巻き取り量)Δ、目標速度V、及び速度Vが既知であれば、閾値dA_thを一義的に定めることができる。
【0075】
プロセッサ102は、前進距離dが閾値dA_thに達した(d=dA_th)ときにYESと判定し、ステップS24へ進む一方、前進距離dが閾値dA_thに達していない(d<dA_th)場合にNOと判定し、ステップS31へ戻る。図7に示す例によれば、プロセッサ102は、残り時間t及び要する時間tを用いることなく、前進距離d(換言すれば、レーザ加工ヘッド38又はツール座標系C2の原点の位置データ)に基づいて、ステップS24を開始するタイミングを決定できる。
【0076】
このように決定したタイミングでステップS24を開始した場合でも、レーザ加工ヘッド38が中断位置Pに到達するのと同時に、ろう材46の先端46aを加熱位置HPに到達させることができる。また、この形態においては、中断位置Pの位置データを記憶する必要もないので、ステップS5を省略することもできる。
【0077】
なお、ステップS10のさらなる代替例として、図7中のステップS31において、プロセッサ102は、前進距離dの代わりに、レーザ加工ヘッド38(ツール座標系C2の原点)から中断位置Pまでの残り距離dを求めてもよい。残り距離dは、中断位置Pと、この時点でのレーザ加工ヘッド38の位置との間の距離として求めることができる。
【0078】
次いで、プロセッサ102は、ステップS32で、残り距離dが、予め定めた閾値dC_thに達したか否かを判定する。この閾値dC_thは、dC_th/V=Δ/Vという式により、dC_th=Δ/Vとして定めることができる。プロセッサ102は、残り距離dが閾値dC_thに達した(d=dC_th)ときにYESと判定し、ステップS24へ進む。こうして、プロセッサ102は、残り時間t及び要する時間tを用いることなく、残り距離d(換言すれば、レーザ加工ヘッド38又はツール座標系C2の原点の位置データ)に基づいて、ステップS24を開始するタイミングを決定できる。
【0079】
次に、図8及び図9を参照して、ろう付けシステム10の動作の他の例について説明する。本実施形態においては、プロセッサ102は、ステップS1の開始後にろう付けを中断したときに、中断した時点で該ろう付けを完了した作業完了距離dに応じて、ステップS7で加熱装置54(レーザ加工ヘッド38)を後退させる後退距離dを変更する。
【0080】
以下、図9を参照して、ろう付けシステム10の動作フローの他の例について説明する。なお、図9に示すフローにおいて、図3のフローと同様のプロセスには同じステップ番号を付し、重複する説明を省略する。図9のフローの開始後、プロセッサ102は、上述の実施形態と同様にステップS1~S5を実行する。
【0081】
ステップS41において、プロセッサ102は、作業完了距離dを取得する。具体的には、プロセッサ102は、ステップS2でYESと判定した時点(又は、ステップS3若しくはS4の開始若しくは完了時点)でろう付けを完了した作業完了距離dを取得する。
【0082】
例えば、プロセッサ102は、フィードバックFBに基づいて、ステップS1の開始時点と、ステップS2でYESと判定した時点(又は、ステップS3若しくはS4の開始若しくは完了時点)とで、レーザ加工ヘッド38(又は、ツール座標系C2の原点)の移動機械座標系C1における位置データ(座標)を取得する。プロセッサ102は、これら2つの時点で取得した位置データから作業完了距離dを取得できる。代替的には、プロセッサ102は、作業プログラムに含まれる位置指令等から作業完了距離dを取得してもよい。このように、本実施形態においては、プロセッサ102は、作業完了距離dを取得する完了距離取得部118(図8)として機能する。
【0083】
ステップS42において、プロセッサ102は、直近のステップS41で取得した作業完了距離dに基づいて、後退距離dを決定する。一例として、作業完了距離dと後退距離dとを互いに関連付けて格納したデータテーブルDTが、記憶部104に予め記憶される。
【0084】
例えば、データテーブルDTにおいて、作業完了距離dが、d≦dP_1の場合は、後退距離d=dR_1(<dP_1)であり、作業完了距離dが、dP_1<dの場合は、後退距離d=dR_2(>dR_1)となるように、互いに関連付けて格納され得る。プロセッサ102は、このステップS42において、直近のステップS41で取得した作業完了距離dを、データテーブルDTに当て嵌めて、対応する後退距離dを読み出し、後のステップS7で加熱装置54を後退させる後退距離dとして決定する。
【0085】
他の例として、プロセッサ102は、後退距離dを、直近のステップS41で取得した作業完了距離dよりも小さい値として、所定の演算により決定してもよい。例えば、プロセッサ102は、取得した作業完了距離dに係数α(<1)を乗算することによって、後退距離dを、d=αdとして求めてもよい。このように、後退距離dは、作業完了距離dよりも常に小さくなるように、設定される。
【0086】
以上のように、本実施形態においては、プロセッサ102は、作業完了距離dに基づいて後退距離dを決定する後退距離決定部120(図9)として機能する。その後、ステップS7において、プロセッサ102は、レーザ加工ヘッド38を、移動機械座標系C1のx軸マイナス方向へ、直近のステップS42で決定した後退距離dだけ、後退させる。
【0087】
この機能の効果について以下に説明する。ステップS1の開始直後に中断イベントが発生してステップS2でYESと判定され得る。この場合、レーザ加工ヘッド38及び加熱位置HPは、作業経路WPの始点SPの近傍に位置することになる。この場合において、ステップS7でプロセッサ102がレーザ加工ヘッド38を、予め定めた後退距離dだけ後退させると、加熱位置HPが始点SPを超えてしまう可能性がある。
【0088】
本実施形態においては、プロセッサ102は、後退距離dを作業完了距離dに応じて(具体的には、作業完了距離dよりも小さくするように)決定しているので、ステップS7でレーザ加工ヘッド38を後退させたときに加熱位置HPが始点SPを超えてしまうのを防止できる。
【0089】
なお、プロセッサ102は、ステップS42で後退距離dを決定したのに応じて、ステップS4で後退させたろう材46の先端46aの位置を調整してもよい。例えば、後退距離dが、通常の所要値dR_2よりも小さい場合、プロセッサ102は、ろう材46を所定の移動量βだけ送り出してもよい。この移動量βは、決定した後退距離dを加味して、ステップS10でレーザ加工ヘッド38を中断位置Pに到達させるのと同時にろう材46の先端46aを加熱位置HPに到達できる値として、予め定められてもよい。
【0090】
なお、図9のフローにおいて、プロセッサ102は、ステップS3の後にステップS41及びS42を実行し、その後に、ステップS4~S11を実行してもよい。この場合、プロセッサ102は、ステップS42の後に実行するステップS4において、ステップS42で決定した後退距離dに基づいて移動量Δを決定してもよい。
【0091】
次に、図10及び図11を参照して、他の実施形態に係るろう付けシステム60について説明する。ろう付けシステム60は、移動機械12、レーザ装置14、ろう材供給装置16、制御装置100、視覚センサ62、及び切断装置64を備える。視覚センサ62は、例えばカメラ又は3次元視覚センサであって、物体を撮像し、撮像した物体の画像を生成する。
【0092】
視覚センサ62には、センサ座標系C3が設定されている。センサ座標系C3は、視覚センサ62が撮像した画像を構成する各ピクセルのxy座標を規定する。視覚センサ62は、移動機械座標系C1における既知の位置に配置され、センサ座標系C3と移動機械座標系C1とは、キャリブレーションにより、相互に座標変換可能となっている。
【0093】
切断装置64は、一対の刃を有し、後述するようにろう材46を切断する。切断装置64は、移動機械座標系C1における既知の位置に配置され、該切断装置64の切断点CPの移動機械座標系C1における位置データ(具体的には、座標)は、記憶部104に予め記憶されている。
【0094】
次に、図12を参照して、ろう付けシステム60の動作について説明する。なお、図12に示すフローにおいて、図3のフローと同様のプロセスには同じステップ番号を付し、重複する説明を省略する。図12のフローの開始後、プロセッサ102は、上述の実施形態と同様にステップS1~S5を実行する。
【0095】
ステップS50において、プロセッサ102は、先端処理プロセスを実行する。このステップS50について、図13を参照して説明する。ステップS51において、プロセッサ102は、ろう材46を撮像する。具体的には、プロセッサ102は、移動機械座標系C1における視覚センサ62の位置データに基づいて移動機械12を制御し、レーザ加工ヘッド38とともに送給ヘッド42を移動させる。
【0096】
そして、プロセッサ102は、レーザ加工ヘッド38及び送給ヘッド42を、送給ヘッド42の送給口48aから延出するろう材46が視覚センサ62の視野に入る撮像位置に、位置決めする。このとき、送給ヘッド42の送給軸Aが、センサ座標系C3のx-y平面と平行になるように、送給ヘッド42が位置決めされる。そして、プロセッサ102は、視覚センサ62を動作させて、送給口48aから延出するろう材46を撮像する。
【0097】
ステップS52において、プロセッサ102は、ろう材46の先端46aを切断する処理が必要であるか否かを判定する。ここで、ステップS4で先端46aを退避させた結果、該先端46aに球状部分等が形成される不具合が発生する可能性がある。このような先端46aの形状の不具合は、後にろう付けを再開したときに、形成されるビード46’に凹凸等を生じさせる原因となり得る。
【0098】
プロセッサ102は、このステップS52において、直近のステップS51で撮像した画像を解析し、先端46aの形状に不具合(球状部分)があるか否かを判定する。例えば、プロセッサ102は、画像に写る先端46aの形状を抽出し、予め記憶した基準形状と比較することで、先端46aの形状に不具合があるか否かを判定できる。
【0099】
代替的には、プロセッサ102は、機械学習によって得られた学習モデルを用いて、先端46aの形状に不具合があるか否かを判定してもよい。この学習モデルは、先端46aの画像と、該先端46aの状態を示すラベル情報(「正常」、「不具合」等)とを教師データとする教師あり学習等の学習方法を用いることにより、構築することができる。
【0100】
プロセッサ102は、先端46aの形状に不具合がある場合はYESと判定し、ステップS53へ進む。一方、プロセッサ102は、先端46aの形状に不具合がない場合はNOと判定し、レーザ加工ヘッド38を、ステップS5で記憶した中断位置Pへ再度位置決めし、図12中のステップS6へ進む。
【0101】
ステップS53において、プロセッサ102は、ろう材46の先端46aを切断する。具体的には、プロセッサ102は、移動機械座標系C1における切断点CPの位置データに基づいて移動機械12を制御し、レーザ加工ヘッド38とともに送給ヘッド42を移動させ、レーザ加工ヘッド38及び送給ヘッド42を切断位置に位置決めする。このとき、ろう材46の先端46aの近傍部分が切断点CPに位置決めされる。そして、プロセッサ102は、切断装置64を動作させて、ろう材46を、先端46aの近傍部分で切断する。その結果、ろう材46の先端46aが切り落とされて、新たな先端46a’が形成される。
【0102】
ステップS54において、プロセッサ102は、上述のステップS51と同様に、視覚センサ62によってろう材46を撮像する。ステップS55において、プロセッサ102は、移動量Δを取得する。具体的には、プロセッサ102は、レーザ加工ヘッド38を、ステップS5で記憶した中断位置Pへ再度位置決めする。このとき、ろう材46の先端46a’は、加熱位置HP(図4)から移動量Δだけ後退した位置に配置される。
【0103】
次いで、プロセッサ102は、レーザ加工ヘッド38が中断位置Pに配置されたときの、送給ヘッド42の送給口48aから加熱位置HPまでの送給軸Aの方向の距離dと、送給口48aから先端46a’までの、送給軸Aの方向におけるろう材46の延出長さLとから、移動量Δを、Δ=d-Lなる式から求める。
【0104】
ここで、上述したように、送給ヘッド42はレーザ加工ヘッド38に対して所定の位置関係に配置されているので、加熱位置HP及び送給ヘッド42の送給口48aは、ツール座標系C2の座標として表すことができる。よって、プロセッサ102は、送給口48aから加熱位置HPまでの距離dを、ツール座標系C2の座標から求めることができる。
【0105】
また、プロセッサ102は、直近のステップS54で撮像した画像を解析し、センサ座標系C3における、送給口48aから先端46a’までのろう材46の延出長さL’を取得する。そして、プロセッサ102は、センサ座標系C3の延出長さL’を移動機械座標系C1に変換し、移動機械座標系C1における延出長さLを取得する。
【0106】
このようにして、プロセッサ102は、距離d及び延出長さLを取得することができ、距離d及び延出長さLと上記の式とから、移動量Δを求めることができる。そして、プロセッサ102は、図12中のステップS6へ進む。その後、プロセッサ102は、ステップS55で取得した移動量Δを用いてステップS10(具体的には、ステップS22)を実行する。
【0107】
本実施形態によれば、仮にステップS4の結果、先端46aに不具合が発生したとしても、該先端46aの部分を切断して該不具合を除去することができる。また、切断後の先端46a’の位置に応じて移動量Δを更新していることから、先端46aの部分を切断したとしても、ステップS10によって、レーザ加工ヘッド38を中断位置Pに到達させるのと同時に、ろう材46の先端46a’を加熱位置HPに到達させることができる。
【0108】
なお、視覚センサ62及び切断装置64を、図8に示す形態に適用してもよい。この場合において、プロセッサ102は、図9に示すフローにおいて、ステップS5又はS42の後にステップS50を実行してもよい。そして、プロセッサ102は、ステップS55で取得した移動量Δを加味して、ステップS10を実行してもよい。
【0109】
また、上述のろう付けシステム10又は60において、プロセッサ102は、ステップS1のろう付け開始後及びろう付け再開後に移動機械12によってレーザ加工ヘッド38を前進させる前進速度VA1と、ステップS9でレーザ加工ヘッド38を前進させるときの前進速度VA2とを異なるように設定してもよい。例えば、プロセッサ102は、前進速度VA1が前進速度VA2よりも小さくなるように、設定してもよい。
【0110】
より具体的には、プロセッサ102は、ステップS24の後に、レーザ加工ヘッド38(又は、ツール座標系C2の原点)が中断位置Pに到達したか否かを判定する。例えば、プロセッサ102は、上述のフィードバックFBから移動機械座標系C1におけるレーザ加工ヘッド38(又はツール座標系C2の原点)の座標を繰り返し取得し、レーザ加工ヘッド38の座標が、上述のステップS5で記憶した中断位置Pの座標に一致した(又は、中断位置Pの座標を基準として定められた範囲内となった)か否かを判定する。
【0111】
プロセッサ102は、レーザ加工ヘッド38の座標が中断位置Pの座標に一致した(又は、所定の範囲内となった)場合に、レーザ加工ヘッド38が中断位置Pに到達したと判定する。レーザ加工ヘッド38が中断位置Pに到達したと判定した時点で、ろう材46の先端46aが加熱位置HPに到達することになる。
【0112】
プロセッサ50は、レーザ加工ヘッド38が中断位置Pに到達したと判定したとき、移動機械12によってレーザ加工ヘッド38を前進させる前進速度を、ステップS9の前進速度VA1から、より小さな前進速度VA2に切り換える。この場合、ステップS9でレーザ加工ヘッド38を中断位置Pまで再前進させるときは、レーザ加工ヘッド38をより高速で移動させることになる。この構成によれば、作業のサイクルタイムを縮減できる。
【0113】
また、上述のろう付けシステム10又は60において、プロセッサ102は、ステップS1のろう付け開始後及びろう付け再開後にろう材移動機構56(ろう材供給装置16)によってろう材46を送り出す速度VF1と、ステップS24の開始後にろう材46を送り出す速度VF2とを異なるように設定してもよい。例えば、プロセッサ102は、速度VF1が速度VF2よりも小さくなるように、設定してもよい。
【0114】
具体的には、プロセッサ50は、上述のように、レーザ加工ヘッド38が中断位置Pに到達したか否かを判定し、中断位置Pに到達したと判定したとき、ろう材移動機構56(ろう材供給装置16)によってろう材46を送り出す速度を、ステップS24の速度VF2から、より小さな速度VF1に切り換える。
【0115】
この場合、ステップS24の開始後にろう材46の先端46aを加熱位置HPまで到達させる時間を縮減できるので、例えば上述の後退距離dを短く設定することが可能となる。一例として、プロセッサ102は、上述のステップS42で、後退距離dを、より小さな後退距離dR_1に決定した場合に、後退距離dR_1に応じて、速度Vを、より高速な速度VF2に設定してもよい。
【0116】
また、上述のろう付けシステム10又は60において、プロセッサ102は、ステップS5の後にステップS7を実行し、その後にステップS6を実行してもよい。この場合、プロセッサ102は、ステップS6でYESと判定するまで、レーザ加工ヘッド38を後退位置Pに待機させる。
【0117】
また、上述の実施形態においては、レーザ発振器34が、固体レーザ発振器である場合について述べた。しかしながら、これに限らず、レーザ発振器34は、例えばガスレーザ発振器(COレーザ発振器等)であってもよいし、他の如何なるタイプのレーザ発振器であってもよい。
【0118】
また、上述の実施形態においては、プロセッサ102は、ステップS3でレーザ装置14の加熱動作を中断する場合について述べた。しかしながら、これに限らず、例えば母材W1及びW2がレーザ装置14の加熱動作に対して十分な耐熱性能を有する場合、プロセッサ102は、ステップS3及びS8を省略し、レーザ加工ヘッド38を後退させる間、加熱動作を継続してもよい。
【0119】
一例として、レーザ発振器34がガスレーザ発振器である場合において、プロセッサ102は、ステップS3で加熱動作としてのレーザ光出射動作を停止させるのではなく、レーザ発振器34の運転モードを、主放電モードからベース放電モードへ移行させてもよい。ここで、主放電モードは、レーザ発振器34の主電極(図示せず)に電圧を印加して主放電を発生させ、ろう付け実行時の所要値として定められる定格レーザパワーのレーザ光を出射する運転モードである。
【0120】
一方、ベース放電モードは、レーザ発振器34の補助電極(図示せず)に電圧を印加してベース放電を発生させ、定格レーザパワーよりも小さなレーザパワーのレーザ光を出射する運転モードである。レーザ発振器34は、ベース放電モードで運転している場合、主放電モードへ迅速に移行できる。
【0121】
代替的には、レーザ発振器34が固体レーザ発振器である場合、プロセッサ102は、ステップS3でレーザ光出射動作を停止させずに、レーザ発振器34のレーザパワーを、母材W1及びW2を損傷させない程度の値まで低減させてもよい。これらの場合、レーザ発振器34は、ステップS2でYESと判定しても、加熱動作としてのレーザ光出射動作を停止させない。この場合、ステップS1で開始したろう付けは、ステップS4によって中断されることになる。
【0122】
また、プロセッサ102は、ステップS4でレーザ加工ヘッド38を後退させた後、所定時間経過後にステップS3を実行してもよい。また、上述のろう付けシステム10又は60は、複数の制御装置100A及び100Bを備えてもよい。この場合において、例えば、制御装置100Aが、移動制御部112として機能して移動機械12を制御し、制御装置100Bが、ろう付け制御部110として機能して加熱装置54及びろう材移動機構56を制御してもよい。
【0123】
なお、上述の実施形態においては、ろう材移動機構56が、ろう材46を送り出し及び巻き取り可能なろう材供給装置16によって構成される場合について述べた。しかしながら、これに限らず、ろう材移動機構56は、ろう材供給装置16とは別の装置を有してもよい。このような形態を図14に示す。
【0124】
図14に示すろう付けシステム70においては、ろう材移動機構56は、ろう材供給装置16を移動させる移動装置72から構成されている。具体的には、ろう材供給装置16は、ドラム40及び送給ヘッド42を収容する筐体74をさらに有し、移動装置72は、例えば、筐体74に機械的に連結された垂直多関節型のロボット又はボールねじ機構等を有し、該筐体74を移動させるによって、ろう材供給装置16全体を移動させる。なお、移動装置72は、送給ヘッド42だけを移動するように構成されてもよい。
【0125】
移動装置72は、ろう材供給装置16(送給ヘッド42)を、送給軸Aに沿って進退させてもよい。プロセッサ102は、上述のステップS4及びS24において、移動装置72を動作させて、ろう材供給装置16(送給ヘッド42)とともにろう材46の先端46aを移動量Δ(又はΔ)だけ移動させる。
【0126】
なお、移動装置72がろう材供給装置16(送給ヘッド42)を移動させる方向は、送給軸Aの方向に限らず、例えば、移動機械座標系C1のz軸プラス方向、x軸プラス方向、又はy軸の方向であってもよいし、先端46aを加熱位置HPから離反可能であれば、如何なる方向であってもよい。また、ろう材移動機構56は、ろう材供給装置16及び移動装置72を有し、ろう材供給装置16及び移動装置72の協働によって、先端46aを移動量Δ(又はΔ)だけ移動させてもよい。
【0127】
また、上述の実施形態においては、加熱装置54が、レーザ装置14によって構成される場合について述べた。しかしながら、これに限らず、加熱装置54は、バーナー、半田ごて等、如何なるタイプの加熱装置であってもよい。また、加熱装置54は、複数のレーザ装置14を有してもよいし、又は、異なるタイプの加熱装置の組み合わせであってもよい。また、上述の実施形態においては、移動機械12が、垂直多関節型ロボットである場合について述べたが、これに限らず、水平多関節型ロボット、パラレルリンク型ロボット等、如何なるタイプのロボットであってもよい。
【0128】
また、上述の実施形態においては、移動機械12が、加熱装置54(レーザ加工ヘッド38)を母材W1及びW2に対して移動させる場合について述べた。しかしながら、これに限らず、移動機械は、母材W1及びW2を加熱装置54(レーザ加工ヘッド38)に対して移動させるように構成されてもよい。
【0129】
この場合において、例えば、移動機械は、移動機械座標系C1のx-y平面に沿って移動可能に設けられ、母材W1及びW2がセットされるワークテーブルと、制御装置100からの指令に応じて該ワークテーブルを移動機械座標系C1のx軸及びy軸の方向へ移動させる移動機構(例えば、サーボモータ及びボールねじ機構)とを有してもよい。
【0130】
この場合、プロセッサ102は、移動制御部112として機能し、移動機構を動作させてワークテーブルを移動させ、これにより母材W1及びW2をレーザ加工ヘッド38に対して移動させつつ、ろう付けを実行する。そして、プロセッサ102は、ろう付けを中断したときに、上述のステップS7でワークテーブル及び母材W1及びW2を、ろう付けの実行時の移動方向とは反対の方向へ後退させた後、ステップS9で該移動方向へ向かって再度前進させる。
【0131】
そして、プロセッサ102は、ワークテーブル(つまり、母材W1及びW2)が中断位置Pに到達するのと同時に、ろう材46の先端46aを加熱位置HPに到達させてろう付けを再開する。この形態において、プロセッサ102は、上述の中断位置P及び位置Pとして、ワークテーブル又は母材W1、W2の位置データを取得してもよい。
【0132】
なお、プロセッサ102は、ワークテーブル又は母材W1、W2の位置データとして、ワークテーブル又は母材W1、W2に対して設定された制御座標系(ワークテーブル座標系又はワーク座標系)の原点の位置データを取得してもよい。以上、実施形態を通じて本開示を説明したが、上述の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0133】
10,60,70 ろう付けシステム
12 移動機械
14 レーザ装置
16 ろう材供給装置
54 加熱装置
56 ろう材移動機構
100 制御装置
102 プロセッサ
110 ろう付け制御部
112 移動制御部
114 残り時間取得部
116 送達時間取得部
118 完了距離取得部
120 後退距離決定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14