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特許7401659高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20231212BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20231212BHJP
   C08J 3/205 20060101ALI20231212BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/34
C08J3/205 CER
C08J3/205 CEZ
C09K21/12
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022521057
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 KR2020013813
(87)【国際公開番号】W WO2021071322
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0125703
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515015746
【氏名又は名称】キョン ドン ウォン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】KYUNG DONG ONE CORPORATION
【住所又は居所原語表記】22,Gukhoe-daero 76-gil,Yeongdeungpo-gu,Seoul 07238,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ジョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン ユン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,テ ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン ウイ
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-160182(JP,A)
【文献】特開2001-329148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)水性または油性溶媒に金属イオン系ホスフィネート、メラミンシアヌレート、およびナノクレイを添加するステップと、
(2)前記水性または油性溶媒下で前記ナノクレイを膨潤させ、前記膨潤したナノクレイ、前記金属イオン系ホスフィネート、および前記メラミンシアヌレートを撹拌して第1混合溶液を製造するステップと、
(3)前記第1混合溶液に超音波処理工程または100MPa~300MPaの圧力の高圧処理工程を行って、前記膨潤したナノクレイの層間の間を離隔させるステップと、
(4)前記金属イオン系ホスフィネートと前記メラミンシアヌレートが、前記層間の間が離隔したナノクレイの層間の間に挿入されて、前記膨潤したナノクレイの層間の間を剥離させるステップと、
(5)前記超音波処理工程または前記高圧処理工程により前記メラミンシアヌレートおよび前記膨潤したナノクレイを化学的に結合させるステップと、
(6)前記超音波処理工程または前記高圧処理工程により前記メラミンシアヌレートおよび前記金属イオン系ホスフィネートを化学的に結合させるステップと、
(7)前記膨潤したナノクレイは前記金属イオン系ホスフィネートと前記メラミンシアヌレートと化学的に結合して取り囲まれ、前記膨潤したナノクレイの層間の間の完全剥離が維持される形態で存続する第2混合溶液を製造するステップと、
(8)前記第2混合溶液に合成樹脂溶液を添加し、撹拌して第3混合溶液を製造するステップと、
(9)前記第3混合溶液を用いて特定型物または被着表面にモールディング、コーティング、およびフィルム化のいずれか1つを行って加工物を製造するステップと、
(10)前記加工物を乾燥して有機無機複合合成樹脂を製造するステップと、
を含み、
前記第1混合溶液100重量部中には、前記金属イオン系ホスフィネートが1重量部~30重量部、前記メラミンシアヌレートが1重量部~20重量部、前記ナノクレイが1重量部~15重量部含まれることを特徴とする高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記メラミンシアヌレート内のシアヌル酸分子は、共鳴構造のケト形態とエノール形態で共存し、
前記ケト形態のカルボニルグループと前記エノール形態のヒドロキシルグループがそれぞれ前記ナノクレイ表面に存在するヒドロキシルグループと水素結合をするか、縮合結合して、前記メラミンシアヌレートおよび前記ナノクレイが化学的に結合することを特徴とする、請求項1に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記メラミンシアヌレートのメラミン分子が含む正(+)の電荷に荷電する窒素原子が、前記金属イオン系ホスフィネートの負(-)の電荷に荷電するホスフィネートグループとイオン結合して、前記メラミンシアヌレートと前記金属イオン系ホスフィネートとが化学的に結合することを特徴とする、請求項1に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記金属イオン系ホスフィネートのうち負(-)の電荷に荷電するホスフィネートグループは、ハイポホスフィネート、モノアルキルまたはモノアリルホスフィネート、ジアルキル、ジアリルまたはアルキルアリルホスフィネートの少なくともいずれか1つであり、
前記金属イオン系ホスフィネートのうち正(+)の電荷に荷電する金属イオンは、アルミニウム(Al3+)、亜鉛(Zn2+)、カルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)、銅(Cu2+)、鉄(Fe2+、Fe3+)の少なくともいずれか1つであることを特徴とする、請求項3に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記ナノクレイは、含水率が0.5%~10%、真密度が1.5g/cm~3g/cm、平均粒径が30μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記ナノクレイは、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、雲母、バーミキュライト、カネマイト、マガディアイト、ケニヤアイト、カオリナイト、スメクタイト、イライト、クロライト、ムスコバイト、パイロフィライト、アンチゴライト、セピオライト、イモゴライト、ソボカイト、ナクライト、アナウキサイト、絹雲母、レディカイト、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくともいずれか1つであることを特徴とする、請求項1に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記ナノクレイは、炭素ナノチューブと組み合わされたことを特徴とする、請求項1に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記第1混合溶液の粘度は、25℃において、3,000mPa・s以下であることを特徴とする、請求項1に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記超音波処理工程は、20kHZベースで200W~3,000Wを加えることを特徴とする、請求項1に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記超音波処理工程または前記高圧処理工程は、前記水性または油性溶媒の沸点以下で行うことを特徴とする、請求項1に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記第2混合溶液に対する前記合成樹脂溶液の混合重量比率は、1:0.5~1:3.0であることを特徴とする、請求項1に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記合成樹脂溶液中の合成樹脂は、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルクロライド、ポリシリコン、およびポリエチレンを含む熱可塑性または熱硬化性合成樹脂、前記熱可塑性または熱硬化性合成樹脂を用いたフォーム、ゴム、または発泡ゴムの中から選択された少なくともいずれか1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記合成樹脂溶液は、25℃において、20,000mPa・s~200,000mPa・sの粘度を有することを特徴とする、請求項1に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法。
【請求項14】
前記第3混合溶液は、25℃において、5,000mPa・s~20,000mPa・sの粘度を有することを特徴とする、請求項1に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法。
【請求項15】
前記有機無機複合合成樹脂は、UL-94V(Vertical Burning Test)法によりV-0等級を達成することを特徴とする、請求項1に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法。
【請求項16】
高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂において、
水性または油性溶媒に膨潤したナノクレイ、金属イオン系ホスフィネート、およびメラミンシアヌレートを含む水性または油性混合溶液;
前記水性または油性混合溶液を超音波または100MPa~300MPaの圧力の高圧処理したナノクレイ-金属イオン系ホスフィネート-メラミンシアヌレート層間化合物の有機変性シリケート溶液に対して合成樹脂溶液の混合重量比率は1:0.5~1:3.0の重量比率からなる有機無機複合合成樹脂混合溶液;
前記有機無機複合合成樹脂混合溶液を一定の形態でモールディング、コーティング、またはフィルム化した、UL-94V(Vertical Burning Test)法中にてV-0等級を達成し、
前記水性または油性混合溶液100重量部中には、前記金属イオン系ホスフィネートが1重量部~30重量部、前記メラミンシアヌレートが1重量部~20重量部、前記ナノクレイが1重量部~15重量部含まれることを特徴とする高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂。
【請求項17】
前記ナノクレイ-金属イオン系ホスフィネート-メラミンシアヌレート層間化合物のうちメラミンシアヌレート内のシアヌル酸分子は、共鳴構造のケト形態とエノール形態で共存し、前記ケト形態のカルボニルグループと前記エノール形態のヒドロキシルグループがそれぞれ前記ナノクレイの表面に存在するヒドロキシルグループと水素結合をするか、縮合結合して、前記メラミンシアヌレートおよび前記ナノクレイが化学的に結合することを特徴とする、請求項16に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂。
【請求項18】
前記ナノクレイ-金属イオン系ホスフィネート-メラミンシアヌレート層間化合物のうちメラミンシアヌレートのメラミン分子が含む正(+)の電荷に荷電する窒素原子が、前記金属イオン系ホスフィネートの負(-)の電荷に荷電するホスフィネートグループとイオン結合して、前記メラミンシアヌレートと前記金属イオン系ホスフィネートとが化学的に結合することを特徴とする、請求項16に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂。
【請求項19】
前記ナノクレイは、炭素ナノチューブと組み合わされたことを特徴とする、請求項16に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂。
【請求項20】
前記金属イオン系ホスフィネート、前記メラミンシアヌレート、および前記ナノクレイの固形分は、前記水性または油性混合溶液100重量部中50重量部以下の量で含まれ、前記金属イオン系ホスフィネートは1重量部~30重量部、前記メラミンシアヌレートは1重量部~20重量部、前記ナノクレイは1重量部~15重量部含まれることを特徴とする、請求項16に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂。
【請求項21】
前記超音波処理工程は、20kHZベースで200W~3,000Wを加え、前記高圧処理工程は、100MPa~300MPaの圧力を加えることを特徴とする、請求項16に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂。
【請求項22】
前記水性または油性混合溶液の粘度は、25℃において、3,000mPa・s以下であり、
前記合成樹脂溶液の粘度は、25℃において、20,000mPa・s~200,000mPa・sであり、
前記有機無機複合合成樹脂混合溶液の粘度は、25℃において、5,000mPa・s~20,000mPa・sであることを特徴とする、請求項16に記載の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂およびその製造方法に関し、高難燃性能を有する自動車、家具、衣類、靴、電子製品のような生活消費財の合成皮革およびフォームを提供するために、金属イオン系ホスフィネートとメラミンシアヌレート、そして、ナノクレイが含まれている溶液に超音波または高圧を加えて化学的結合による高難燃性有機変性シリケート液を製造し、前記シリケート液に合成皮革およびフォームを形成する合成樹脂を添加し、加工して乾燥する高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生活消費財として多様に使用される合成皮革およびフォームを含む合成樹脂は毎年使用量が増加しているが、有機物質からなっていて、熱に弱く燃焼が発生しやすいので、火災に弱い場所や高熱が発生する分野の使用は極めて制限されている。
このような問題を解決するために、合成樹脂の難燃性改善のための研究は長い間進められてきており、特に、合成樹脂に臭素、塩素のようなハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、無機難燃剤などを混合する方法などで難燃効果を改善してきた。
なかでも、効果が最も優れるというハロゲン系難燃剤の添加は、燃焼時に発生するダイオキシン、ハロゲン化水素などの人体有毒物質の排出により次第に使用が制限される予定であり、リン系または窒素系難燃剤は、費用や使用量に比べて難燃効果が相対的に少なく、耐水性の低下により物性的な利得が得られない。
【0003】
無機難燃剤は、比重が高く有機素材との異質感が高くて、沈殿のような相分離が発生しやすい。一部比重の軽い無機難燃剤や無機膨張剤が燃焼時に火炎を遮断する効果はあるものの、持続的に火炎を加えると、溶融して合成樹脂とともに崩れてしまうので、難燃性能は再度低下する。
したがって、これらの難燃剤の添加だけでは、現在要求する合成樹脂の難燃性能を満たすには物足りない。
【0004】
最近は、従来の問題を解決するために、表面積の大きい多様なナノ粒子を合成樹脂内に均一分散させて、優れた難燃性とともに物性を向上させる方法が提示されている。
特に、ナノクレイによる難燃特性は、ナノクレイ内の合成樹脂挿入、ナノクレイの層間剥離化により大きなアスペクト比を有するナノクレイ粒子がこれらの合成樹脂との接触面積を増加させることにより、火災状況で熱を遮断し拡散を効果的に防止する作用によりその性能を発揮する。
前記ナノクレイは、シリコン、アルミニウム、マグネシウム、酸素などの成分で構成されたシリカ四面体とアルミナ八面体の基本構造からこれらの板状結合で1:1または1:2の層状構造をなしている。各層の厚さが1~10nm、長さが30~1,000nmであり、層間間隔は数Å(angstrom、1Å=10nm)の構造を有している。
【0005】
前記ナノクレイの層間に樹脂を挿入および剥離する分散方法には、溶液分散法、溶融法、超音波法がある。溶液分散法は、液状でナノクレイが膨潤しながら層間拡張される時、樹脂をもって撹拌により層間挿入を誘導する方法である。この時の問題点は、ナノクレイが層間に作用するファンデルワールス(Van der Waals)引力で凝集されているため、挿入効率は非常に少ない上に、剥離はなおさら難しい。溶融法は、加工温度200℃以内の溶融可能な熱可塑性樹脂を使用しなければならないという制限があるが、熱硬化性フォームは適用が難しい。超音波法は、一定水準以上の超音波を加えてナノクレイの層間を最大限に拡張させ、その間に樹脂を挿入および剥離する方法である。超音波の強度の度合いによってナノクレイの層間挿入や剥離効率が異なるので、制御は必ず必要である。
【0006】
ナノクレイを活用した従来技術は、ナノクレイの層間に樹脂を挿入させるために溶液分散法を使用した。前述したように、ナノクレイは層間のファンデルワールス引力で凝集されているため、樹脂の挿入効率が低く、剥離はなおさら難しいため、効果が十分でない。
しかし、これらの素材内にナノクレイを効果的に分散させ、挿入、剥離化する技術を完壁にやりこなさなければ、ナノクレイは単純な無機難燃剤に過ぎなくなり、難燃性能の改善どころか、機械的、物理的性能を低下させる逆効果しか発生しない。
一部の海外企業および機関の研究関係者らの間では、合成樹脂をベースとしてナノクレイを分散させ、難燃性能を改善させようとする結果を導出しようとしたが、追加される工程費用に比べてその効果が著しく低くて量産につながらず、研究だけで終わるような状況がたびたび演じられたりもしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国登録特許公報第7,803,856号
【文献】韓国登録特許公報第0882307号
【文献】韓国登録特許公報第0847044号
【文献】韓国登録特許公報第0579842号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の技術的課題は、水性または油性溶媒が入っている容器に金属イオン系ホスフィネートとメラミンシアヌレート、そして、ナノクレイを添加して撹拌し、前記撹拌液に超音波および高圧のエネルギーを加えて化学的結合による高難燃性有機変性シリケート液を製造し、次いで、前記シリケート液に生活消費財として使用される合成皮革およびフォームを含む合成樹脂を加えて加工し、乾燥してなる高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法は、(1)水性または油性溶媒に金属イオン系ホスフィネート、メラミンシアヌレート、およびナノクレイを添加するステップと、(2)前記水性または油性溶媒下で前記ナノクレイを膨潤させ、前記膨潤したナノクレイ、前記金属イオン系ホスフィネート、および前記メラミンシアヌレートを撹拌して第1混合溶液を製造するステップと、(3)前記第1混合溶液に超音波処理工程または高圧処理工程を行って、前記膨潤したナノクレイの層間の間を離隔させるステップと、(4)前記金属イオン系ホスフィネートと前記メラミンシアヌレートが、前記層間の間が離隔したナノクレイの層間の間に挿入されて、前記ナノクレイの層間の間を剥離させるステップと、(5)前記超音波処理工程または前記高圧処理工程により前記メラミンシアヌレートおよび前記ナノクレイを化学的に結合させるステップと、(6)前記超音波処理工程または前記高圧処理工程により前記メラミンシアヌレートおよび前記金属イオン系ホスフィネートを化学的に結合させるステップと、(7)前記ナノクレイは前記金属イオン系ホスフィネートと前記メラミンシアヌレートと化学的に結合して取り囲まれ、前記ナノクレイの層間の間の完全剥離が維持される形態で存続する第2混合溶液を製造するステップと、(8)前記第2混合溶液に合成樹脂化合物を添加し、撹拌して第3混合溶液を製造するステップと、(9)前記第3混合溶液を用いて特定型物または被着表面にモールディング、コーティング、およびフィルム化のいずれか1つを行って加工物を製造するステップと、(10)前記加工物を乾燥して有機無機複合合成樹脂を製造するステップと、を含む。
【0010】
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法によれば、前記メラミンシアヌレート内のシアヌル酸分子は、共鳴構造のケト形態とエノール形態で共存し、前記ケト形態のカルボニルグループと前記エノール形態のヒドロキシルグループがそれぞれ前記ナノクレイ表面に存在するヒドロキシルグループと水素結合をするか、縮合結合して、前記メラミンシアヌレートおよび前記ナノクレイが化学的に結合することができる。
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法によれば、前記メラミンシアヌレートのメラミン分子が含む正(+)の電荷に荷電する窒素原子が、前記金属イオン系ホスフィネートの負(-)の電荷に荷電するホスフィネートグループとイオン結合して、前記メラミンシアヌレートと前記金属イオン系ホスフィネートとが化学的に結合することができる。
【0011】
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法によれば、前記金属イオン系ホスフィネートのうち負(-)の電荷に荷電するホスフィネートグループは、ハイポホスフィネート、モノアルキルまたはモノアリルホスフィネート、ジアルキル、ジアリルまたはアルキルアリルホスフィネートの少なくともいずれか1つであり、前記金属イオン系ホスフィネートのうち正(+)の電荷に荷電する金属イオンは、アルミニウム(Al3+)、亜鉛(Zn2+)、カルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)、銅(Cu2+)、鉄(Fe2+、Fe3+)の少なくともいずれか1つであってもよい。
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法によれば、前記ナノクレイは、含水率が0.5%~10%、真密度が1.5g/cm~3g/cm、平均粒径が30μm以下であってもよい。
【0012】
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法によれば、前記ナノクレイは、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、雲母、バーミキュライト、カネマイト、マガディアイト、ケニヤアイト、カオリナイト、スメクタイト、イライト、クロライト、ムスコバイト、パイロフィライト、アンチゴライト、セピオライト、イモゴライト、ソボカイト、ナクライト、アナウキサイト、絹雲母、レディカイト、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくともいずれか1つであってもよい。
【0013】
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法によれば、前記ナノクレイは、層間にナトリウムイオン(Na)、カルシウムイオン(Ca2+)、酸処理されるか、末端にヒドロキシ基を有するアルキルアンモニウムまたはアルキルホスホニウム有機化剤イオンで置換された親水性のナノクレイ、疎水のアルキルアンモニウムまたはアルキルホスホニウム有機化剤イオンで置換された疎水性のナノクレイ、および前記親水性のナノクレーと前記疎水性のナノクレイとの組み合わせからなる群より選択される少なくともいずれか1つであってもよい。
【0014】
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法によれば、前記ナノクレイは、炭素ナノチューブと組み合わされる。
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法によれば、前記金属イオン系ホスフィネート、前記メラミンシアヌレート、および前記ナノクレイの固形分は、前記第1混合溶液に50重量部含まれ、前記金属イオン系ホスフィネートは1重量部~30重量部、前記メラミンシアヌレートは1重量部~20重量部、前記ナノクレイは1重量部~15重量部含まれる。
【0015】
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法によれば、前記第1混合溶液の粘度は、3,000cps以下であってもよい。
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法によれば、前記超音波処理工程は、20kHZベースで200W~3,000Wを加えることができる。
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法によれば、前記高圧処理工程は、1,000bar~3,000barの圧力を加えることができる。
【0016】
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法によれば、前記超音波処理工程または前記高圧処理工程は、前記水性または油性溶媒の沸点以下で行うことができる。
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法によれば、前記第2混合溶液に対する前記合成樹脂化合物の混合重量比率は、1:0.5~1:3.0であってもよい。
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法によれば、前記合成樹脂化合物は、合成樹脂に水性または油性溶媒を混合した物質であり、前記合成樹脂の固形分は、前記合成樹脂化合物に25重量部~75重量部含まれる。
【0017】
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法によれば、前記合成樹脂は、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルクロライド、ポリシリコン、およびポリエチレンを含む熱可塑性または熱硬化性合成樹脂、前記熱可塑性または熱硬化性合成樹脂を用いたフォーム、ゴム、または発泡ゴムの中から選択された少なくともいずれか1つ以上であってもよい。
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法によれば、前記合成樹脂化合物は、20,000cps~200,000cpsの粘度を有することができる。
【0018】
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法によれば、前記第3混合溶液は、5,000cps~20,000cpsの粘度を有することができる。
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法によれば、前記有機無機複合合成樹脂は、UL-94V(Vertical Burning Test)法によりV-0等級を達成することができる。
本発明によれば、本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法により高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂を製造することを特徴とする。
【0019】
本発明の他の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂によれば、高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂において、水性または油性溶媒に膨潤したナノクレイ、金属イオン系ホスフィネート、およびメラミンシアヌレートを含む水性または油性混合溶液;前記水性または油性混合溶液を超音波または高圧処理したナノクレイ-金属イオン系ホスフィネート-メラミンシアヌレート層間化合物の有機変性シリケート溶液に対して合成樹脂化合物の混合重量比率は1:0.5~1:3.0の重量比率からなる有機無機複合合成樹脂混合溶液;前記有機無機複合合成樹脂混合溶液を一定の形態でモールディング、コーティング、およびフィルム化した、UL-94V(Vertical Burning Test)法中にてV-0等級を達成するようになることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施例によれば、本発明により製造された高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂は、UL-94V(Vertical Burning Test)法によりV-0等級を達成することにより優れた難燃効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法を示す模式図である。
図2】本発明の実施例による超音波処理工程または高圧処理工程による金属イオン系ホスフィネート、メラミンシアヌレート、およびナノクレイの化学的結合を示す模式図である。
図3】本発明の実施例によるメラミンシアヌレートの構造をなすシアヌル酸のケト形態とエノール形態の化学的構造を示す模式図である。
図4】本発明の実施例によるメラミンシアヌレートとナノクレイとの化学的結合に基づくFT-IRグラフ(1)を示す図である。
図5】本発明の実施例によるメラミンシアヌレートとナノクレイとの化学的結合に基づくFT-IRグラフ(2)を示す図である。
図6】本発明の実施例による金属イオン系ホスフィネートとメラミンシアヌレートとの化学的結合に基づくFT-IRグラフを示す図である。
図7】本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートのX線回折を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法に関してより詳細に説明する。
本発明の高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法は、(1)水性または油性溶媒に金属イオン系ホスフィネート、メラミンシアヌレート、およびナノクレイを添加するステップと、(2)前記水性または油性溶媒下で前記ナノクレイを膨潤させ、前記膨潤したナノクレイ、前記金属イオン系ホスフィネート、および前記メラミンシアヌレートを撹拌して第1混合溶液を製造するステップと、(3)前記第1混合溶液に超音波処理工程または高圧処理工程を行って、前記膨潤したナノクレイの層間の間を離隔させるステップと、(4)前記金属イオン系ホスフィネートと前記メラミンシアヌレートが、前記層間の間が離隔したナノクレイの層間の間に挿入されて、前記ナノクレイの層間の間を剥離させるステップと、(5)前記超音波処理工程または前記高圧処理工程により前記メラミンシアヌレートおよび前記ナノクレイを化学的に結合させるステップと、(6)前記超音波処理工程または前記高圧処理工程により前記メラミンシアヌレートおよび前記金属イオン系ホスフィネートを化学的に結合させるステップと、(7)前記ナノクレイは前記金属イオン系ホスフィネートと前記メラミンシアヌレートと化学的に結合して取り囲まれ、前記ナノクレイの層間の間の完全剥離が維持される形態で存続する第2混合溶液を製造するステップと、(8)前記第2混合溶液に合成樹脂化合物を添加し、撹拌して第3混合溶液を製造するステップと、(9)前記第3混合溶液を用いて特定型物または被着表面にモールディング、コーティング、およびフィルム化のいずれか1つを行って加工物を製造するステップと、(10)前記加工物を乾燥して有機無機複合合成樹脂を製造するステップと、を含む。
【0023】
図1を参照して、より具体的に本発明により前記有機無機複合合成樹脂を製造する方法または製造メカニズムを説明する。
図1は、本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法を示す模式図である。
図1を参照すれば、(1)ステップにおいて、水性または油性溶媒が入っている容器に金属イオン系ホスフィネート、メラミンシアヌレート、およびナノクレイを一定量添加して、これを混合する。(図1のa)
【0024】
前記水性または油性溶媒は、水、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、n-ヘキサノールなどのアルコール類の水性溶媒と、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド類、1,2-ジクロロベンゼン、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド、エチルアセテート、ブチルアセテートのような油性溶媒、およびこれらの混合物からなる群より選択された少なくともいずれか1つであってもよいが、前記物質に制限されるものではない。
【0025】
前記金属イオン系ホスフィネートは、負(-)の電荷を有するホスフィネートグループと、正(+)の電荷を有する金属イオンとを含む。
実施例により、前記負(-)の電荷を有するホスフィネートグループは、置換基のアルキル基の個数および構造によって、ハイポホスフィネート、モノアルキルまたはモノアリルホスフィネート、ジアルキルまたはジアリルまたはアルキルアリルホスフィネートの少なくともいずれか1つであってもよい。
【0026】
実施例により、前記正(+)の電荷を有する金属イオンは、アルミニウム(Al3+)、亜鉛(Zn2+)、カルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)、銅(Cu2+)、鉄(Fe2+、Fe3+)の少なくともいずれか1つであってもよい。
前記金属イオン系ホスフィネート、前記メラミンシアヌレート、および前記ナノクレイの固形分は、前記第1混合溶液に50重量部含まれ、50重量部を超えると、前記金属イオン系ホスフィネート、前記メラミンシアヌレート、および前記ナノクレイの固形分の分散性が低くて、相互間の化学的結合の効率性が低下する。
【0027】
また、前記第1混合溶液に前記金属イオン系ホスフィネートは1重量部~30重量部、前記メラミンシアヌレートは1重量部~20重量部、前記ナノクレイは1重量部~15重量部含まれる。
前記金属イオン系ホスフィネートの含有量が1重量部未満であるか、30重量部を超えると、難燃性が低下する。同じく、メラミンシアヌレートの含有量が1重量部未満であるか、20重量部を超えると、難燃性が低下する。
【0028】
前記金属イオン系ホスフィネートは、燃焼時にポリリン酸を発生させて脱水反応を促進してチァーを形成することにより、後述する(8)ステップの合成樹脂化合物の難燃性能を増加させることができる。
前記メラミンシアヌレートは、燃焼時に発生する窒素ガスで、後述する(8)ステップの合成樹脂化合物の酸化を防止する。
したがって、難燃性能を極大化させるために前記金属イオン系ホスフィネートと前記メラミンシアヌレートのシナジー(synergy)を利用しなければならないが、前記それぞれ設定した含有量を外れると、難燃性が低下する逆効果が発生する。
【0029】
前記ナノクレイは、1重量部未満であれば、難燃性が低下し、15重量部を超えると、これらの凝集により同じく難燃性が低下する。
前記ナノクレイは、含水率0.5%~10%を維持することが好ましい。水分に対して膨潤特性を有するナノクレイは、含水率が0.5%未満であれば、粒子間凝集されて分散が難しくなる。前記含水率が10%を超えると、以後、工程で混合される合成樹脂の含水量が増加して、最終的に製造される有機無機複合合成樹脂の物性が変化する。
【0030】
前記ナノクレイは、真密度1.5g/cm~3g/cmを維持することが好ましい。前記真密度が1.5g/cm未満であれば、比表面積が高くなって吸湿が容易になり、3g/cmを超えると、荷重が増加してナノクレイの沈殿を引き起こすことがある。
前記ナノクレイの平均粒径(d50)は、30μm以下のものを使用することが好ましく、前記平均粒径が30μmを超えると、密度が高くなって、荷重によってナノクレイが沈殿する危険がある。
【0031】
前記ナノクレイは、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、雲母、バーミキュライト、カネマイト、マガディアイト、ケニヤアイト、カオリナイト、スメクタイト、イライト、クロライト、ムスコバイト、パイロフィライト、アンチゴライト、セピオライト、イモゴライト、ソボカイト、ナクライト、アナウキサイト、絹雲母、レディカイト、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくともいずれか1つであってもよい。
【0032】
また、前記ナノクレイは、層間にナトリウムイオン(Na)、カルシウムイオン(Ca2+)、酸処理されるか、末端にヒドロキシ基を有するアルキルアンモニウムまたはアルキルホスホニウム有機化剤イオンで置換された親水性のナノクレイ、疎水のアルキルアンモニウムまたはアルキルホスホニウム有機化剤イオンで置換された疎水性のナノクレイ、および前記親水性のナノクレーと前記疎水性のナノクレイとの組み合わせからなる群より選択される少なくともいずれか1つであってもよい。
【0033】
前記ナノクレイは、炭素ナノチューブと組み合わせて使用することができる。前記ナノクレイに炭素ナノチューブを組み合わせると、以後、(8)ステップで添加される合成樹脂化合物との分散性を増加させ、特定型物または被着表面にモールディングするか、コーティングするか、またはフィルム化などの加工、乾燥後に断熱性能を向上させる効果がある。ただし、前記炭素ナノチューブの種類と含有量については特に制限しない。
(2)ステップでは、前記(1)ステップにおいて、前記水性または油性溶媒下で前記ナノクレイを膨潤させ、前記膨潤したナノクレイ、前記金属イオン系ホスフィネート、および前記メラミンシアヌレートを撹拌する。
【0034】
撹拌温度、撹拌時間、および撹拌RPMについては特に制限しないが、前記金属イオン系ホスフィネート、前記メラミンシアヌレート、および前記ナノクレイが十分な分散性を有するように十分な撹拌を進行させる。
あるいは、前記ナノクレイが前記水性または油性溶媒下で十分に膨潤して、後の工程で前記金属イオン系ホスフィネートと前記メラミンシアヌレートの、前記ナノクレイの層間への挿入が容易となるように、適切な条件で撹拌を進行させる。(図1のb)
【0035】
前記(2)ステップの結果として撹拌が完了した第1混合溶液の粘度は、3,000cpsを超えないようにする。3,000cpsを超えると、以後、(3)ステップの超音波処理工程または高圧処理工程で発生するエネルギーが原料に及ばず、効率が低下する問題が発生する。
(3)~(7)ステップでは、(2)ステップの結果として撹拌が完了した第1混合溶液に超音波処理工程または高圧処理工程を行って、高難燃性有機変性シリケート液である第2混合溶液を製造する。
【0036】
前記第1混合溶液に超音波または高圧を印加すると、ファンデルワールス力によって凝集されていたナノクレイは、前記超音波または高圧のエネルギーが持続的に印加される間に層間の間が広がる。
以後、水性または油性溶媒内に分散していた前記金属イオン系ホスフィネート粒子と前記メラミンシアヌレート粒子は、前記広がったナノクレイの層間の間に挿入される。
同時に、前記超音波または高圧のエネルギーが第1混合溶液に持続的に印加される間、前記メラミンシアヌレートは、前記ナノクレーと化学的結合をする。同時に、前記メラミンシアヌレートは、前記金属イオン系ホスフィネートと化学的結合をする。
【0037】
結局は、前記超音波または高圧のエネルギーが第1混合溶液に持続的に印加される間、ナノクレイの層間の間で同時的に、前記ナノクレイは前記メラミンシアヌレートと化学的結合をし、前記金属イオン系ホスフィネートは前記メラミンシアヌレートと化学的結合をするので、結合された前記金属イオン系ホスフィネートと前記メラミンシアヌレートによって前記ナノクレイは化学的結合で取り囲まれる。
すると、前記ナノクレイは層間の間で完全剥離が行われ、結局は前記超音波または高圧の印加を除去しても凝集されずに剥離された状態に維持される。(図1のc)
【0038】
前記(3)ステップ~(7)ステップでの化学的結合メカニズムを、図2および図3とともに説明する。
図2は、本発明の実施例による超音波処理工程または高圧処理工程による金属イオン系ホスフィネート、メラミンシアヌレート、およびナノクレイの化学的結合を示す模式図であり、図3は、本発明の実施例によるメラミンシアヌレートの構造をなすシアヌル酸のケト形態とエノール形態の化学的構造を示す模式図である。
【0039】
図2および図3を参照すれば、前記メラミンシアヌレートは、メラミン分子とシアヌル酸分子とからなる。
前記シアヌル酸分子は共鳴構造であるので、図3のようにケト形態とエノール構造で共存する。
前記シアヌル酸分子がケト形態で維持される時、末端にカルボニル基を有し、前記カルボニル基は、前記超音波または高圧によって前記ナノクレイの表面に存在するヒドロキシル基と水素結合する。
【0040】
あるいは、前記シアヌル酸分子は、エノール形態で維持される時、末端にヒドロキシル基を有し、前記ヒドロキシル基は、前記超音波または高圧のエネルギーによって前記ナノクレイの表面に存在するヒドロキシル基と縮合反応する。
前記メラミンシアヌレートのメラミンは、正(+)の電荷に強く荷電する窒素原子を含む分子である。前記金属イオン系ホスフィネートのホスフィネートグループは、基本的に負(-)の電荷を有している。
【0041】
したがって、前記メラミンシアヌレート内のメラミン分子は正(+)の電荷に強く荷電する窒素原子によって、前記金属イオン系ホスフィネートは負(-)の電荷に強く荷電するホスフィネートグループとイオン結合する。
再度図1を参照すれば、前記(3)ステップの超音波処理工程において、超音波の分散強度は、20kHZベースで200W~3,000Wを加えることが好ましい。200W未満使用時、分散効率が低下し、3,000W超過時、ナノクレイの損傷により物性が低下する問題がある。
【0042】
超音波を印加できる容量は制限しないが、1分あたり100ml~20Lであってもよいし、前記超音波の分散強度によって調節可能である。
超音波を印加すると、振動と摩擦によって前記ナノクレイを含む溶液の温度が上昇できる。したがって、前記超音波処理工程は、前記水性または油性溶媒の沸点以下で進行させることが好ましい。
あるいは、前記(3)ステップの前記高圧処理工程は、1,000bar~3,000barの圧力を加えることが好ましい。高圧印加時に用いる高圧分散機は、一定の大きさのチャンバ内に流体を入れて、高圧を印加して流体の分散を誘導する装置である。前記高圧の圧力1,000bar未満では、分散効率が低下し、3,000barを超える場合には、ナノクレイの損傷により物性が低下する。
同じく、前記高圧処理工程は、前記水性または油性溶媒の沸点以下で行われることが好ましい。
【0043】
(8)ステップでは、(7)ステップの結果として製造された第2混合溶液に合成樹脂化合物を添加し、これを撹拌する。
前記合成樹脂化合物は、超音波処理工程または高圧処理工程の前に混合すれば、粘度が過度に高くなり、前記合成樹脂化合物の巨大分子鎖によって前記超音波処理工程または高圧処理工程の効率が低下する問題があるので、好ましくない。前記合成樹脂化合物を混合し撹拌する方法と条件については別に制限を設けない。
【0044】
前記第2混合溶液に対する前記合成樹脂化合物の混合重量比率は、1:0.5~1:3.0であってもよい。
1:0.5の重量比率未満であるか、1:3.0の重量比率を超えると、製造される有機無機複合合成樹脂の加工性が著しく低下する。
前記合成樹脂化合物は、合成樹脂に水性または油性溶媒を混合した物質であり、前記合成樹脂の固形分は、前記合成樹脂化合物に25重量部~75重量部含まれる。
【0045】
前記合成樹脂の固形分が25重量部未満であるか、75重量部を超えると、製造される有機無機複合合成樹脂の加工性が著しく低下する。
前記合成樹脂は、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルクロライド、ポリシリコン、およびポリエチレンを含む熱可塑性または熱硬化性合成樹脂、前記熱可塑性または熱硬化性合成樹脂を用いたフォーム、ゴム、または発泡ゴムの中から選択された少なくともいずれか1つ以上であってもよい。
前記合成樹脂化合物は、20,000cps~200,000cpsの粘度を有することが好ましい。
【0046】
前記合成樹脂化合物は、粘度制御のために乾燥するか、溶媒または液状難燃剤を添加することができ、前記粘度制御のための乾燥条件や添加される溶媒または液状難燃剤の種類については制限しない。
前記(8)ステップの過程において、(7)の結果として製造された第2混合溶液と合成樹脂化合物の相溶性を高めるために、第3混合溶液は、シランカップリングエージェントまたはこれらの組み合わせからなる群より選択される1種を含むことができる。
前記シランカップリングエージェントは、前記合成樹脂の種類と特性によって選択されるので、制限はない。
【0047】
前記(8)ステップの結果として製造された前記第3混合溶液は、5,000cps~20,000cpsの粘度を有することができる。
前記第3混合溶液は、粘度制御のために乾燥するか、別の溶媒または液状難燃剤をさらに含むことができ、前記第3混合溶液の粘度制御のための乾燥条件や添加される溶媒または液状難燃剤の種類については制限しない。
前記(9)ステップは、前記第3混合溶液を特定型物または被着表面にモールディングするか、コーティングするか、またはフィルム化して加工物を製造するステップであり、詳しくは、製法について特別な制限なく、押出、射出、ホットメルト、コーター、ロール、アプリケータなどの装置を用いて、キャスティング法、含浸、塗布などの方法が使用可能であり、前記挙げられた製造装置および方法のほか、多様な装置および方法を用いて製造が行われてもよい。
【0048】
前記(10)ステップは、(9)ステップの加工物を乾燥するステップであって、特に制限を設けないが、十分な乾燥が行われなければ、製造される有機無機複合合成樹脂の物性低下を引き起こすことがある。
前記(1)~(10)ステップに至る過程で制限はないが、適用用途および要求物性によって多様な添加剤が使用可能である。
前記添加剤の種類は、湿潤剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、希釈剤、滑剤、カップリング剤、有機化剤、界面活性剤、活性触媒、不活性触媒、開始剤、抑制剤、除去剤、光沢剤、無光沢剤、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、難燃剤、ピンホール防止剤、抗菌剤、スリップ剤などがある。
【0049】
前記(1)~(10)ステップに至る過程により製造された高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂は、UL(Underwriters Laboratory)社で提供するプラスチック試験方法のうち、プラスチック製品の垂直方向難燃性試験であるUL-94V(Vertical Burning Test)法によりV-0等級を達成することができる。
詳しくは、前記方法により20mmの長さの火炎を10秒間試験片に接炎後、燃焼時間と燃焼の様相を記録する。
【0050】
1次接炎後に燃焼が終了すると、再度10秒間接炎後、試験片の燃焼時間および残炎時間、そして、燃焼の様相を記録する。
V-0等級の条件は、1次、2次個別燃焼時間が10秒以下でなければならず、2次接炎後、燃焼および残炎時間が30秒以内でなければならず、滴下による脱脂綿発火およびクランプまでの燃焼が行われてはならない。
本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法により製造された有機無機複合合成樹脂は、このようなUL-94V(Vertical Burning Test)法によりV-0等級を達成可能で、優れた難燃効果を提供することができる。
【0051】
以下、本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートを用いた有機無機複合合成樹脂の製造方法のメカニズムを、図4図6により確認することができる。
図4は、本発明の実施例によるメラミンシアヌレートとナノクレイとの化学的結合に基づくFT-IRグラフ(1)を示す図である。
図4を参照すれば、前記金属イオン系ホスフィネートおよび前記メラミンシアヌレートが混合された状態、または前記金属イオン系ホスフィネート、前記メラミンシアヌレート、および前記ナノクレイが混合された状態では、FT-IR1,740cm-1でシアヌル酸ケトのカルボニルピークが強く現れることを確認することができる。
【0052】
ピークが2つ現れるのは、前記シアヌル酸のカルボニル基がメラミンと一緒に共有していたり、別途に離れていたりするからである。
しかし、この状態で超音波または高圧によりエネルギーを印加すると、前記カルボニルピークが急激に減少するので、前記ナノクレイのヒドロキシル基と水素結合して消耗したことが分かる。
図5は、本発明の実施例によるメラミンシアヌレートとナノクレイとの化学的結合に基づくFT-IRグラフ(2)を示す図である。
【0053】
図5を参照すれば、前記金属イオン系ホスフィネートおよび前記ナノクレイが混合された状態、または前記金属イオン系ホスフィネート、前記メラミンシアヌレート、および前記ナノクレイが混合された状態では、FT-IR3,200cm-1または3,400cm-1でヒドロキシルピークが強く現れることを確認することができる。
前記金属イオン系ホスフィネートと前記メラミンシアヌレートとを混合した時より、前記2成分系原料にナノクレイを混合した時のピークがより強烈に現れる理由は、ナノクレイ自体が有するヒドロキシル基が多くて前記ヒドロキシル基の含有量が加えられるからである。
【0054】
しかし、この状態で超音波または高圧によりエネルギーを印加すると、前記ヒドロキシル基ピークが急激に減少するので、前記メラミンシアヌレートエノールのヒドロキシル基と前記ナノクレイのヒドロキシル基と縮合反応して消耗したことが分かる。
図6は、本発明の実施例による金属イオン系ホスフィネートとメラミンシアヌレートとの化学的結合に基づくFT-IRグラフを示す図である。
図6を参照すれば、前記金属イオン系ホスフィネート、および前記メラミンシアヌレートが混合された状態、または前記金属イオン系ホスフィネート、前記メラミンシアヌレート、および前記ナノクレイが混合された状態では、FT-IR1,450cm-1または1,530cm-1でアミンピークが強く現れることを確認することができる。
【0055】
前記金属イオン系ホスフィネートと前記メラミンシアヌレートとを混合した時より、前記2成分系原料にナノクレイを混合した時のピークがより強烈に現れる理由は、前記ナノクレイが窒素原子を正(+)イオンとして有する有機化剤を含んでいるからである。
市中に流通または加工されるナノクレイは、合成樹脂との混用性を高めるために有機化処理をすることが一般的である。
したがって、正(+)の窒素原子に基づくアミン基が多くて前記アミン基の含有量が加えられるため、ピークが高く現れることを確認することができる。
【0056】
しかし、この状態で超音波または高圧によりエネルギーを印加すると、前記アミンピークが急激に減少するので、前記金属イオン系ホスフィネートとメラミンシアヌレートのメラミン分子とがイオン結合してアミン基を消耗したことが分かる。
前記ナノクレイの層間に前記金属イオン系ホスフィネートと前記メラミンシアヌレートの円滑な挿入と前記ナノクレイの層間剥離は、X線回折分析機を用いて確認することができる。
【0057】
図7は、本発明の実施例による高難燃性有機変性シリケートのX線回折を示すグラフである。
図7を参照すれば、前記ナノクレイの層間距離は、Bragg’s Law算式によって求められ、前記ナノクレイを図7の1)、前記金属イオンホスフィネートと前記メラミンシアヌレート、そして、前記ナノクレイを溶媒下で混合/撹拌し、乾燥したものを2)、2)の混合溶液を撹拌し、超音波印加して乾燥したものを3)と表記した。
2dsinθ=nλ
【0058】
ここで、dは結晶面(ナノクレイ)間の距離、θは入射したX線と結晶面との間の角度、λはX線の波長を意味する。
一般的に、X線回折ピークの2θ値がナノクレイの層間距離を示すが、2θ値が増加するほど層間距離は増加し、完全剥離が起こるとピークが消えるようになる。
したがって、前記(3)ステップの超音波または高圧の印加過程により前記金属イオン系ホスフィネートと前記メラミンシアヌレートが挿入され、ナノクレイの層間の間が剥離されることを、図7により確認することができる。(図1のd<d’)
以下、具体的な実施例および比較例を通じて本発明を詳細に説明し、これらの実施例は単に本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲を制限すると解釈されてはならない。
【実施例
【0059】
[実施例1]
有機変性シリケート液を製造するために、溶媒として使用されるMEK(methyl ethyl ketone)45重量部とDMF(N,N-dimethylformamide)15重量部を容器に入れて、前記溶媒にアルミニウムハイポホスフィネート15重量部、メラミンシアヌレート10重量部、ナノクレイ10重量部、CDP(cresyl diphenyl phosphate)5重量部を添加して、25℃、250RPMの条件下で15分間撹拌した。
【0060】
そして、前記撹拌が完了すると、前記溶液を連続式超音波工程で1分あたり6Lの流量で20kHZベースで1,500Wを印加し、ラインを通して排出した。
そして、前記超音波工程を経たシリケート液にエステル系ポリウレタン樹脂100重量部、顔料10重量部を混合した後、2,000RPMで15分間撹拌した。
撹拌が完了すると、離型フィルム上に0.5mmの厚さにコーティングした後、1mmの厚さの不織布に合布して、110℃で24時間乾燥して合成皮革を製造した。
【0061】
[実施例2]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、前記混合液を超音波ではない高圧工程1,500barの条件で高圧を印加した。
[実施例3]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、溶媒DMF25重量部、アルミニウムハイポホスフィネート10重量部、メラミンシアヌレートの量を5重量部を適用した。
[実施例4]
前記実施例3の方法で合成皮革を製造するが、前記混合液を超音波ではない高圧工程1,500barの条件で高圧を印加した。
【0062】
[実施例5]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、溶媒DMF20重量部、アルミニウムハイポホスフィネート13重量部、メラミンシアヌレートの量を7重量部を適用した。
[実施例6]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、溶媒DMF19重量部、ナノクレイの量を6重量部適用した。
[実施例7]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、溶媒DMF12重量部、ナノクレイの量を13重量部適用した。
【0063】
[実施例8]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、溶媒MEK35重量部、アルミニウムハイポホスフィネート20重量部、メラミンシアヌレートの量を15重量部適用した。
[実施例9]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、溶媒MEK35重量部、アルミニウムハイポホスフィネートの量を25重量部適用した。
[実施例10]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、溶媒MEK35重量部、DMF11重量部、アルミニウムハイポホスフィネート25重量部、メラミンシアヌレート17重量部、ナノクレイの量を7重量部適用した。
【0064】
[比較例1]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、前記混合液を超音波ではない溶液分散500rpmの条件で分散した。
[比較例2]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、前記混合液を超音波ではない溶液分散1,000rpmの条件で分散した。
[比較例3]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、前記混合液を超音波ではない溶液分散2,000rpmの条件で分散した。
【0065】
[比較例4]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、前記混合液を超音波ではない溶液分散5,000rpmの条件で分散した。
[比較例5]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、前記混合液を超音波ではない溶液分散10,000rpmの条件で分散した。
【0066】
[比較例6]
有機変性シリケート液を製造するために、溶媒として使用されるMEK(methyl ethyl ketone)45重量部とDMF(N,N-dimethylformamide)15重量部を容器に入れて、前記溶媒にエステル系ポリウレタン樹脂100重量部と顔料10重量部を添加して、25℃、2,000RPMの条件下で15分間撹拌した。
そして、前記撹拌が完了すると、前記溶液を連続式超音波工程で1分あたり6Lの流量で20kHZベースで1,500Wを印加し、ラインを通して排出した。
そして、前記超音波工程が完了した混合溶液を、離型フィルム上に0.5mmの厚さにコーティングした後、1mmの厚さの不織布に合布して、110℃で24時間乾燥して合成皮革を製造した。
【0067】
[比較例7]
有機変性シリケート液を製造するために、溶媒として使用されるMEK(methyl ethyl ketone)60重量部とDMF(N,N-dimethylformamide)25重量部を容器に入れて、前記溶媒にナノクレイ10重量部、CDP(cresyl diphenyl phosphate)5重量部を添加して、25℃、250RPMの条件下で15分間撹拌した。
そして、前記撹拌が完了すると、前記溶液を連続式超音波工程で1分あたり6Lの流量で20kHZベースで1,500Wを印加し、ラインを通して排出した。
そして、前記超音波工程を経たシリケート液にエステル系ポリウレタン樹脂100重量部、顔料10重量部を混合した後、2,000RPMで15分間撹拌した。
撹拌が完了すると、離型フィルム上に0.5mmの厚さにコーティングした後、1mmの厚さの不織布に合布して、110℃で24時間乾燥して合成皮革を製造した。
【0068】
[比較例8]
前記比較例7の方法で合成皮革を製造するが、溶媒MEK45重量部、DMF30重量部、ナノクレイの代わりにアルミニウムハイポホスフィネートの量を20重量部適用した。
[比較例9]
前記比較例7の方法で合成皮革を製造するが、溶媒MEK45重量部、DMF40重量部、ナノクレイの代わりにメラミンシアヌレートの量を10重量部適用した。
[比較例10]
前記比較例7の方法で合成皮革を製造するが、溶媒MEK45重量部、DMF20重量部、アルミニウムハイポホスフィネートの量を20重量部適用した。
【0069】
[比較例11]
前記比較例7の方法で合成皮革を製造するが、溶媒MEK50重量部、メラミンシアヌレートの量を10重量部適用した。
[比較例12]
前記比較例7の方法で合成皮革を製造するが、溶媒MEK45重量部、DMF20重量部、ナノクレイ0重量部(添加X)、アルミニウムハイポホスフィネート20重量部、メラミンシアヌレートの量を10重量部適用した。
[比較例13]
前記比較例11の方法で合成皮革を製造するが、溶媒MEK45重量部、DMF29.5重量部、アルミニウムハイポホスフィネートの量を0.5重量部適用した。
【0070】
[比較例14]
前記比較例10の方法で合成皮革を製造するが、溶媒DMF19.5重量部、メラミンシアヌレートの量を0.5重量部適用した。
[比較例15]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、溶媒MEK35重量部、DMF12重量部、ナノクレイの量を18重量部適用した。
[比較例16]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、溶媒MEK30重量部、DMF10重量部、アルミニウムハイポホスフィネートの量を35重量部適用した。
[比較例17]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、溶媒MEK30重量部、DMF10重量部、メラミンシアヌレートの量を25重量部適用した。
【0071】
[比較例18]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、溶媒MEK45重量部、DMF24.5重量部、ナノクレイの量を0.5重量部適用した。
[比較例19]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、溶媒MEK49重量部、DMF35重量部、アルミニウムハイポホスフィネート0.5重量部、メラミンシアヌレートの量を0.5重量部適用した。
[比較例20]
前記実施例1の方法で合成皮革を製造するが、溶媒DMF31重量部、アルミニウムハイポホスフィネート0.5重量部、メラミンシアヌレート0.5重量部、ナノクレイの量を18重量部適用した。
【0072】
[比較例21]
有機変性シリケート液を製造するために、溶媒として使用されるMEK(methyl ethyl ketone)45重量部とDMF(N,N-dimethylformamide)10重量部を容器に入れて、前記溶媒にアルミニウムハイポホスフィネート20重量部、メラミンシアヌレート10重量部、ナノクレイ10重量部、CDP(cresyl diphenyl phosphate)5重量部、顔料10重量部、エステル系ポリウレタン樹脂100重量部を添加して、25℃、250RPMの条件下で15分間撹拌した。
そして、前記撹拌が完了すると、前記溶液を連続式超音波工程で1分あたり6Lの流量で20kHZベースで1,500Wを印加し、ラインを通して排出した。
そして、前記超音波工程が完了した混合溶液を、離型フィルム上に0.5mmの厚さにコーティングした後、1mmの厚さの不織布に合布して、110℃で24時間乾燥して合成皮革を製造した。
【0073】
[比較例22]
有機変性シリケート液を製造するために、溶媒として使用されるMEK(methyl ethyl ketone )45重量部とDMF(N,N-dimethylformamide)35重量部を容器に入れて、前記溶媒にTCPP(Tris(1-chloro-2propyl)phosphate)10重量部、ナノクレイ10重量部を添加して、25℃、250RPMの条件下で15分間撹拌した。
そして、前記撹拌が完了すると、前記溶液を連続式超音波工程で1分あたり6Lの流量で20kHZベースで1,500Wを印加し、ラインを通して排出した。
そして、前記超音波工程を経たシリケート液にエステル系ポリウレタン樹脂100重量部、顔料10重量部を混合した後、2,000RPMで15分間撹拌した。
撹拌が完了すると、離型フィルム上に0.5mmの厚さにコーティングした後、1mmの厚さの不織布に合布して、110℃で24時間乾燥して合成皮革を製造した。
【0074】
[比較例23]
前記比較例22の方法で合成皮革を製造するが、前記比較例22の配合においてTCPPの代わりにAPP(Ammonium polyphosphate)を10重量部適用した。
[比較例24]
前記比較例22の方法で合成皮革を製造するが、前記比較例22の配合においてTCPPの代わりにMPP(Melamine polyphosphate)を10重量部適用した。
[比較例25]
前記比較例22の方法で合成皮革を製造するが、前記比較例22の配合においてTCPPの代わりにメラミンを10重量部適用した。
【0075】
[比較例26]
前記比較例23の方法で合成皮革を製造するが、溶媒DMF25重量部、MPPの量を10重量部適用した。
[比較例27]
前記比較例23の方法で合成皮革を製造するが、溶媒DMF25重量部、メラミンの量を10重量部適用した。
[比較例28]
前記比較例26の方法で合成皮革を製造するが、溶媒DMF15重量部、TCPP10重量部、メラミンの量を10重量部適用した。
【0076】
[比較例29]
有機変性シリケート液を製造するために、溶媒として使用されるMEK(methyl ethyl ketone )55重量部とDMF(N,N-dimethylformamide)35重量部を容器に入れて、前記溶媒に水酸化アルミニウム10重量部を添加して、25℃、250RPMの条件下で15分間撹拌した。
そして、前記撹拌が完了すると、前記溶液を連続式超音波工程で1分あたり6Lの流量で20kHZベースで1,500Wを印加し、ラインを通して排出した。
そして、前記超音波工程を経たシリケート液にエステル系ポリウレタン樹脂100重量部、顔料10重量部を混合した後、2,000RPMで15分間撹拌した。
撹拌が完了すると、離型フィルム上に0.5mmの厚さにコーティングした後、1mmの厚さの不織布に合布して、110℃で24時間乾燥して合成皮革を製造した。
【0077】
[比較例30]
前記比較例29の方法で合成皮革を製造するが、前記比較例29の配合において水酸化アルミニウムの代わりに水酸化マグネシウムの量を10重量部適用した。
[比較例31]
前記比較例29の方法で合成皮革を製造するが、溶媒MEK45重量部、ナノクレイの量を10重量部適用した。
[比較例32]
前記比較例30の方法で合成皮革を製造するが、溶媒MEK45重量部、ナノクレイの量を10重量部適用した。
[比較例33]
前記比較例31の方法で合成皮革を製造するが、溶媒DMF25重量部、水酸化マグネシウムの量を10重量部適用した。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】
【表8】
【0086】
試験1.
本発明により製造された実施例と対照される比較例の合成皮革の燃焼試験時、燃焼持続時間(s)は、UL-94V垂直テストによって火炎を試験片に10秒間加えた後、除去した時に燃える時間で測定した。
試験2.
本発明により製造された実施例と対照される比較例の合成皮革の燃焼試験時、燃焼された長さ(mm)は下記のように測定した。また、その結果は表18~表19から確認することができる。
【0087】
燃焼試験時に燃焼された長さ(mm)=燃焼前の試験片の長さ(mm)-燃焼後の試験片の長さ(mm)
下記表9~表10は、前記実施例1~実施例10の合成皮革のUL-94Vテストによる燃焼試験時の燃焼の様相に対する写真であり、下記表11~表17は、比較例1~比較例33の合成皮革のUL-94Vテストによる燃焼試験時の燃焼の様相に対する写真である。
【0088】
【表9】
【0089】
【表10】
【0090】
【表11】
【0091】
【表12】
【0092】
【表13】
【0093】
【表14】
【0094】
【表15】
【0095】
【表16】
【0096】
【表17】
【0097】
【表18】
【0098】
【表19】
【0099】
本発明の実施例の場合、ナノクレイ、アルミニウムハイポホスフィネート、メラミンシアヌレートがMEKおよびDMFの混合溶媒上で撹拌され、超音波または高圧工程を経て超音波または高圧エネルギーを受けて、ナノクレイ-メラミンシアヌレート間の水素結合および縮合反応、アルミニウムハイポホスフィネート-メラミンシアヌレート間のイオン結合のような化学的結合が行われて、ナノクレイの表面が取り囲まれる。それと同時に、超音波の振動と摩擦によってポリウレタン樹脂の内部にナノクレイの挿入、剥離、分散が効果的に起こるようになり、難燃性能に著しい改善を示した。
【0100】
これは、ナノクレイによる化学的結合および完全な分散を代弁する。また、その証拠として、比較例との1次、2次燃焼持続時間、最終燃焼長さを比較した時、非常に優れていることが分かる。互いに結合されているナノクレイ、メラミンシアヌレート、アルミニウムハイポホスフィネート分子が燃焼が行われる時、可燃性気体の遮断、チァー形成、チァー形成促進、気体状難燃効果のようなシナジー効果が発生して、最終的に高難燃性を導き出す。これに対し、それぞれの構成要素がすべて入らなかったり、または1つ以上抜けている場合、そして、構成要素が過剰および未達の際、先に説明した化学的結合およびシナジー効果を奏し得ないため、燃焼試験を進行させた時、燃焼持続時間および燃焼長さの増加、溶融滴下による脱脂綿発火、クランプまでの発火により難燃性能が結果的に低下する問題が発生することが分かる。
【0101】
以上、本発明はたとえ限定された実施例と図面によって説明されたが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。そのため、本発明の範囲は説明された実施例に限って定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等なものによって定められなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7