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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】数値制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4155 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G05B19/4155 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022521905
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2021017706
(87)【国際公開番号】W WO2021230202
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2020085902
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020151880
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】上西 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小山田 知弘
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-141762(JP,A)
【文献】国際公開第2012/105028(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/038101(WO,A1)
【文献】特開2009-193209(JP,A)
【文献】特開平08-249028(JP,A)
【文献】国際公開第2013/118241(WO,A1)
【文献】特開2018-142194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 - 19/416
G05B 19/42 - 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械における切削加工の前後に指令するための1行の加工プログラムから、前記工作機械が同時動作可能な指令を解析する加工プログラム解析部と、
前記解析された同時動作可能な指令を用いて、前記工作機械に同時動作可能な指令を組み合わせて指令された同時動作を制御する同時動作制御部と、
を備え
前記同時動作が可能な指令は、前記工作機械の切削工具の交換、前記切削工具交換前、前記切削工具交換中及び前記切削工具交換後の工具系指令、軸移動前、軸移動中及び軸移動後の軸系指令、切削液制御、付加軸制御並びに周辺機器制御を含む、
数値制御装置。
【請求項2】
前記加工プログラムは、前記切削加工前の加工前コードとして、前記切削工具の交換、前記切削工具の工具長及び工具径補正のための工具補正番号の設定、ワーク座標系の設定、前記ワーク座標系における前記切削工具及びテーブルの移動指令、主軸制御、前記付加軸制御、前記切削液制御並びに前記周辺機器制御を含む、請求項に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記加工プログラムは、前記切削加工後の加工後コードとして、原点復帰、主軸制御、前記付加軸制御及び前記切削液制御を含む、請求項2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記加工後コードは、前記原点復帰に代えて、前記切削工具の交換、ワーク座標系の設定、並びにワーク座標系における前記切削工具及びテーブルの移動指令を含む請求項に記載の数値制御装置。
【請求項5】
前記加工プログラムは、1行の加工プログラムによって指令される前記切削工具の交換、前記切削工具の工具長及び工具径補正のための工具補正番号の設定、ワーク座標系、ワーク座標系における前記切削工具及びテーブルの移動指令、原点復帰、前記主軸制御、前記付加軸制御、前記切削液制御並びに前記周辺機器制御の指令値を変数として記述され、
前記加工プログラムによって呼び出されたプログラムは、前記変数を用いて前記工作機械における同時動作を実行する、請求項からのいずれか一項に記載の数値制御装置。
【請求項6】
前記加工プログラムによって呼び出された前記プログラムは、前記切削工具の交換指令、並びにワーク座標系における前記切削工具及び前記テーブルの移動指令を同一ブロックに指令し、
その後、前記プログラムは、前記切削工具の工具長及び工具径補正のための工具補正番号の設定及び工具軸の移動指令、前記主軸制御のための指令、前記切削液制御のための指令、並びに前記周辺機器制御のための指令を同一ブロックに指令する、請求項に記載の数値制御装置。
【請求項7】
工作機械における切削加工の前後に指令するための1行の加工プログラムから、前記工作機械が同時動作可能な指令を解析するステップと、
前記解析された同時動作可能な指令を用いて、前記工作機械に同時動作可能な指令を組み合わせて指令された同時動作を制御するステップと、
を備え
前記同時動作が可能な指令は、前記工作機械の切削工具の交換、前記切削工具交換前、前記切削工具交換中及び前記切削工具交換後の工具系指令、軸移動前、軸移動中及び軸移動後の軸系指令、切削液制御、付加軸制御並びに周辺機器制御を含む、
数値制御装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械等を制御する数値制御装置は、加工プログラムによってワークの加工等を実行する(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の加工プログラム処理装置は、加工プログラムによって指令される工具先端点の指令位置及び工具姿勢の指令角度と、工具の寸法とに基づいて、補正基準点を算出し、工具先端点の指令位置を補正基準点の位置に書き換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-70953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、数値制御装置は、ワークを切削加工する際に加工プログラムによって行っている。加工プログラムは単に切削条件だけを指令するだけでは加工はできないため、指令された切削条件で動作するプログラムの前後に工具の装着や、工具長さやワークの位置などを記憶している座標系番号などの各種補正を指令する必要がある。しかし、必要な補正を指令することで切削加工を実行することは可能となるものの、必ずしも効率のよい動作をするとは限らない。例えば、工具交換とワークの移動は1行で同時に指令可能な工作機械が多く、また、工具長の補正と主軸回転指令は1行で同時に指令することも可能な場合が多い。同時に指令が出来る工作機械であることを知らない作業者は別々の行で指令することで非効率で冗長な加工プログラムで実行することになる。そのため、工作機械の動作を簡易かつ効率的に実行することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る数値制御装置は、工作機械における切削加工の前後に指令するための1行の加工プログラムから、前記工作機械が同時動作可能な指令を解析する加工プログラム解析部と、前記解析された同時動作可能な指令を用いて、前記工作機械に同時動作可能な指令を組み合わせて指令された同時動作を制御する同時動作制御部と、を備える。
【0006】
本開示に係る数値制御装置の制御方法は、工作機械における切削加工の前後に指令するための1行の加工プログラムから、前記工作機械が同時動作可能な指令を解析するステップと、前記解析された同時動作可能な指令を用いて、前記工作機械に同時動作可能な指令を組み合わせて指令された同時動作を制御するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、工作機械の動作を簡易かつ効率的に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】加工システムの構成を示す図である。
図2】工作機械の概要を示す図である。
図3】加工プログラムの具体例を示す図である。
図4】加工前コードの処理を示すフローチャートである。
図5】工具軸に関する処理を示すフローチャートである。
図6】工具系指令に関する処理を示すフローチャートである。
図7】軸系指令に関する処理を示すフローチャートである。
図8】移動軸系に関する処理を示すフローチャートである。
図9】周辺装置に関する処理を示すフローチャートである。
図10】周辺装置に関する処理を示すフローチャートである。
図11】加工後コードP12の処理を示すフローチャートである。
図12】工具軸に関する処理を示すフローチャートである。
図13】工具系指令に関する処理を示すフローチャートである。
図14】軸系指令に関する処理を示すフローチャートである。
図15】移動軸系に関する処理を示すフローチャートである。
図16】周辺装置に関する処理を示すフローチャートである。
図17】周辺装置に関する処理を示すフローチャートである。
図18】加工前コードの指令区分表を示す図である。
図19】加工後コードの指令区分表を示す図である。
図20】ある加工前コードP11の工具軸の動作例である。
図21】ある加工後コードP12の工具軸の動作例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
図1は、加工システム1の構成を示す図である。図1に示すように、加工システム1は、数値制御装置2と、工作機械3と、を備える。
【0010】
数値制御装置2は、工作機械3を制御することにより、工作機械3に所定の機械加工等を行わせるための装置である。数値制御装置2は、制御部21を備える。制御部21は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部(図示せず)に記憶されたプログラムを実行することによって、加工プログラム解析部211及び同時動作制御部212として機能する。
【0011】
工作機械3は、数値制御装置2の制御に基づいて、切削加工等の所定の機械加工や、工具の測定等を行う装置である。図2は、工作機械3の概要を示す図である。
【0012】
工作機械3は、ワーク41を加工するために駆動するモータや、このモータに取り付けられた主軸や送り軸や、これら各軸に対応する治具や工具、ワーク41を固定するテーブル42等を備える。そして、工作機械3は、数値制御装置2から出力される動作指令に基づいてモータを駆動させることにより所定の機械加工を行う。具体的には、工作機械3は、切削工具31と、タレット32と、テーブル42と、を備える。
【0013】
切削工具31は、加工目的に合わせて複数の種類が用意されている。各切削工具31は、それぞれ専用の工具ホルダに装着された状態で交換される。切削工具31には、それぞれ固有の工具番号が割り当てられている。
【0014】
タレット32は、外周に複数のグリップが取り付けられた略円盤状の構造体である。
タレット32は、図2に示す回動位置において、回転軸C1を中心として回動する。切削工具31は、タレット32を回動させることにより、主軸34と対向する位置まで移動できる。
【0015】
ワークテーブル33は、ワーク41を左右方向(X方向)及び前後方向(Y方向)に移動自在に支持する機構である。ワークテーブル33には、X軸モータ、Y軸モータ、エンコーダ等(いずれも不図示)が設けられている。本実施形態の工作機械3は、ワーク41をX-Y方向に移動させながら、主軸34に保持された工具Tを上下方向(Z方向)に移動させることによりワーク41を加工する。
【0016】
次に、数値制御装置2の動作について説明する。
加工プログラム解析部211は、工作機械3における切削加工の前後に指令するための1行の加工プログラムから、工作機械3が同時動作可能な指令を解析する。
同時動作制御部212は、解析された同時動作可能な指令を用いて、工作機械に同時動作可能な指令を組み合わせて指令された同時動作を制御する。
【0017】
ここで、加工プログラムは、切削加工前の加工前コードとして、切削工具31の交換のための工具番号、工具長及び工具径補正のための工具補正番号、ワーク座標系と移動管理の座標系の設定、座標系における切削工具31又はワーク41、テーブル42の移動軸と移動速度、主軸回転数と主軸制御、回転軸のクランプとアンクランプ、切削液制御とテーパ洗浄とセンタースルー制御、並びに測定機制御を含む。
【0018】
また、加工プログラムは、切削加工後の加工後コードとして、原点復帰、原点復帰軸と移動速度、座標系と移動管理の座標系の設定、切削工具31の交換のための工具番号、回転軸のクランプとアンクランプ、主軸制御及び切削液制御を含む。
【0019】
図3は、加工プログラムの具体例を示す図である。
図3に示す加工プログラムの例は、加工プログラムP1と、加工プログラムの動作説明P2と、を含む。加工プログラムP1は、加工前コードP11と、加工後コードP12と、を含む。
【0020】
また、図4は、加工前コードP11の処理を示すフローチャートであり、図11は、加工後コードP12の処理を示すフローチャートである。加工プログラム解析部211は、加工前コードP11と加工後コードP12が指令されている加工プログラムP1から、後述する図18及び19の指令区分表に該当する指令を解析する。同時動作制御部212は、図4又は図11のフローチャートに従って同時動作を制御する。
【0021】
図4のステップS1において、加工プログラム解析部211は、加工プログラムの加工前コードP11を記憶部(図示せず)から読み込む。
ステップS2において、加工プログラム解析部211は、加工前コードP11の指令コードから図18に示す指令区分表に該当する指令を解析する。なお、指令区分表の詳細は後述する。
【0022】
ステップS3において、同時動作制御部212は、工具交換動作を実行する。ステップS3における工具交換動作については後述する。
【0023】
ステップS3において工具交換領域外とは、工具交換領域として定義される領域外の工具位置を示す。例えば、穴あけ加工が完了した直後の状態において、工具先端は、R点に位置するなどであり、タレット式マシニングセンタの場合、この工具先端は、工具交換が開始される位置から離れた位置となる。
【0024】
また、工具交換領域内とは、工具交換動作が開始から完了までの工具軸が動作する領域を示す。例えば、タレット式マシニングセンタの場合、工具交換領域内は、Z0からZ+方向の工具が主軸から抜けるまでの領域を示す。また、工具交換領域内は、工具交換中において、タレット式マシニングではグリップが工具を保持してから、タレットが回転し次の工具を主軸が保持し、グリップがホルダから離れるまでの間を示す。
【0025】
ステップS4において、制御部21は、全ての動作が完了したか否かを判定する。全ての動作が完了した場合(YES)、処理は、その後終了する。全ての動作が完了していない場合(NO)、処理は、再度ステップS4へ戻る。
【0026】
図5から図10は、工具交換動作の具体的な処理を示すフローチャートである。図5は、工具軸に関する処理を示すフローチャートである。
【0027】
図4のステップS2の後、図5のステップS11において、同時動作制御部212は、工具交換動作を開始するために工具交換領域内へ工具軸の移動を開始する。
ステップS12において、同時動作制御部212は、工具交換領域へ工具軸の移動を完了する。
【0028】
ステップS13において、同時動作制御部212は、交換工具系指令の工具番号に基づいて工具交換を開始する。
ステップS14において、同時動作制御部212は、工具交換を完了する。
【0029】
ステップS15において、同時動作制御部212は、工具交換領域まで工具軸の移動を開始する。
ステップS16において、同時動作制御部212は、工具交換領域まで工具軸の移動を完了し、処理は、その後、図4のステップS4へ移る。
【0030】
図6は、工具系指令に関する処理を示すフローチャートである。
図4のステップS2の後、図6のステップS21において、同時動作制御部212は、交換前工具系指令を開始する。具体的には、交換前工具系指令は、主軸オリエンテーションや工具軸に関する各機能のキャンセルコードの指令を含む。
【0031】
ステップS22において、同時動作制御部212は、交換前工具系指令を完了する。
ステップS23において、同時動作制御部212は、工具交換が完了したか否かを判定する。工具交換が完了した場合(YES)、処理は、ステップS24へ移る。工具交換が完了していない場合(NO)、処理は、再度ステップS23へ移る。
【0032】
ステップS24において、同時動作制御部212は、交換後工具系指令を開始する。具体的には、交換後工具系指令は、主軸回転数と主軸制御又はタッチプローブ制御、工具長補正、工具長補正番号の設定、移動管理の座標系及び工具軸移動指令等の指令を含む。
ステップS25において、同時動作制御部212は、交換後工具系指令を完了し、処理は、その後、図4のステップS4へ移る。
【0033】
図7は、軸系指令に関する処理を示すフローチャートである。
図4のステップS2の後、図7のステップS31において、同時動作制御部212は、移動前軸系指令を開始する。具体的には、同時動作制御部212は、移動前軸系指令として、回転軸のアンクランプや軸移動に関する各機能のキャンセルコードを開始する。
【0034】
ステップS32において、同時動作制御部212は、移動前軸系指令を完了する。
ステップS33において、同時動作制御部212は、後述の図8に示すステップS42で開始された移動軸系指令による軸移動が完了したか否かを判定する。軸移動が完了した場合(YES)、処理は、ステップS34へ移る。軸移動が完了していない場合(NO)、処理は、再度ステップS33へ移る。
【0035】
ステップS34において、同時動作制御部212は、移動後軸系指令を開始する。具体的には、移動後軸系指令は、回転軸のクランプ等の指令を含む。
ステップS35において、同時動作制御部212は、移動後軸系指令を完了し、処理は、その後、図4のステップS4へ移る。
【0036】
図8は、移動軸系に関する処理を示すフローチャートである。
図4のステップS2の後、図8のステップS41において、同時動作制御部212は、干渉がなく、かつ移動前軸系指令が完了済みの場合(YES)、処理は、ステップS42へ移る。干渉がある、又は移動前軸系指令が完了していない場合(N0)、処理は、ステップS41へ移る。
【0037】
ステップS42において、同時動作制御部212は、移動軸系指令を開始する。具体的には、移動軸系指令は、軸移動指令、ワーク座標系、移動管理の座標系、工具径補正番号等の指令を含む。
【0038】
ステップS43において、同時動作制御部212は、移動軸系指令を完了し、処理は、その後、図4のステップS4へ移る。
【0039】
図9は、周辺装置に関する処理を示すフローチャートである。
図4のステップS2の後、図9のステップS51において、同時動作制御部212は、交換前周辺装置指令を開始する。具体的には、同時動作制御部212は、周辺装置指令として切削液、エアブローOFF指令の処理を開始する。
【0040】
ステップS52において、同時動作制御部212は、交換前周辺装置指令を完了する。
ステップS53において、同時動作制御部212は、工具交換が完了したか否かを判定する。工具交換が完了した場合(YES)、処理は、ステップS54へ移る。工具交換が完了していない場合(NO)、処理は、ステップS53に移る。
【0041】
ステップS54において、同時動作制御部212は、交換後周辺装置指令を開始する。具体的には、同時動作制御部212は、交換後周辺装置指令として切削液制御の処理を開始する。具体的には切削液、エアブロー、センタースルーのON指令を開始する。
ステップS55において、同時動作制御部212は、交換後周辺装置指令を完了し、処理は、その後、図4のステップS4へ移る。
【0042】
図10は、周辺装置に関する処理を示すフローチャートである。
図4のステップS2の後、図10のステップS61において、同時動作制御部212は、工具交換中であるか否かを判定する。工具交換中である場合(YES)、処理は、ステップS62へ移る。工具交換中でない場合(NO)、処理は、ステップS61へ移る。
【0043】
ステップS62において、同時動作制御部212は、交換中周辺装置指令を開始する。具体的には、同時動作制御部212は、周辺装置指令として主軸や工具のテーパ面を洗浄するテーパ洗浄指令の処理を開始する。
ステップS63において、同時動作制御部212は、工具交換が完了したか否かを判定する。工具交換が完了した場合(YES)、処理は、ステップS64へ移る。工具交換が完了していない場合(NO)、処理は、再度ステップS63へ移る。
【0044】
ステップS64において、同時動作制御部212は、交換中周辺装置指令を完了し、処理は、その後、図4のステップS4へ移る。
【0045】
図11は、加工後コードP12の処理を示すフローチャートである。
図11のステップS101において、加工プログラム解析部211は、加工プログラムの加工後コードP12を記憶部(図示せず)から読み込む。
【0046】
ステップS102において、加工プログラム解析部211は、加工後コードP12の指令コードから図19に示す指令区分表に該当する指令を解析する。なお、指令区分表の詳細は後述する。
【0047】
ステップS103において、同時動作制御部212は、工具交換動作を実行する。ステップS103における工具交換動作については後述する。
ステップS104において、制御部21は、全ての動作が完了したか否かを判定する。全ての動作が完了した場合(YES)、処理は、その後終了する。全ての動作が完了していない場合(NO)、処理は、再度ステップS104へ戻る。
【0048】
図12から図17は、工具交換動作の具体的な処理を示すフローチャートである。
図12は、工具軸に関する処理を示すフローチャートである。
【0049】
図11のステップS102の後、図12のステップS111において、同時動作制御部212は、工具交換動作を開始するために工具交換領域内へ工具軸の移動を開始する。
ステップS112において、同時動作制御部212は、工具交換領域へ工具軸の移動を完了する。
【0050】
ステップS113において、同時動作制御部212は、交換工具系指令における工具番号が指令されているか否かを判定することによって、工具交換の有無を判定する。交換工具系指令における工具番号が指令されている場合(YES)、処理は、ステップS114へ移る。工具番号が指令されていない場合(NO)、処理は、ステップS117へ移る。
【0051】
ステップS114において、同時動作制御部212は、交換工具系指令の工具番号に基づいて工具交換を開始する。
ステップS115において、同時動作制御部212は、工具交換を完了する。
【0052】
ステップS116において、同時動作制御部212は、工具交換領域まで工具軸の移動を開始する。
ステップS117において、同時動作制御部212は、工具交換領域まで工具軸の移動を完了し、処理は、その後、図11のステップS104へ移る。
【0053】
図13は、工具系指令に関する処理を示すフローチャートである。
図11のステップS102の後、図13のステップS121において、同時動作制御部212は、交換前工具系指令を開始する。具体的には、交換前工具系指令は、主軸オリエンテーションや工具軸に関する各機能のキャンセルコードの指令を含む。
【0054】
ステップS122において、同時動作制御部212は、交換前工具系指令を完了し、処理は、その後、図11のステップS104へ移る。
【0055】
図14は、軸系指令に関する処理を示すフローチャートである。
図11のステップS102の後、図14のステップS131において、同時動作制御部212は、移動前軸系指令を開始する。具体的には、同時動作制御部212は、移動前軸系指令として、回転軸のアンクランプや軸移動に関する各機能のキャンセルコードを開始する。そして、ステップS132において、同時動作制御部212は、移動前軸系指令を完了し、処理は、その後、図11のステップS104へ移る。
【0056】
図15は、移動軸系に関する処理を示すフローチャートである。
図11のステップS102の後、図15のステップS141において、同時動作制御部212は、干渉がなく、かつ移動前軸系指令が完了済みの場合(YES)、処理は、ステップS142へ移る。干渉がある、又は移動前軸系指令が完了していない場合(N0)、処理は、再度ステップS141へ移る。
【0057】
ステップS142において、同時動作制御部212は、移動軸系指令を開始する。具体的には、移動軸系指令は、原点復帰、軸移動指令、ワーク座標系、移動管理の座標系等の指令を含む。
ステップS143において、同時動作制御部212は、移動軸系指令を完了し、処理は、その後、図11のステップS104へ移る。
【0058】
図16は、周辺装置に関する処理を示すフローチャートである。
図11のステップS2の後、図16のステップS151において、同時動作制御部212は、交換前周辺装置指令を開始する。具体的には、同時動作制御部212は、周辺装置指令として切削液OFF指令の処理を開始する。
【0059】
ステップS152において、同時動作制御部212は、交換前周辺装置指令を完了し、処理は、その後、図11のステップS104へ移る。
【0060】
図17は、周辺装置に関する処理を示すフローチャートである。
ステップS161において、同時動作制御部212は、交換工具系指令における工具番号が指令されているか否かを判定することによって、工具交換の有無を判定する。交換工具系指令における工具番号が指令されている場合(YES)、処理は、ステップS162へ移る。工具番号が指令されていない場合(NO)、処理は、図11のステップS104へ移る。
【0061】
ステップ162において、同時動作制御部212は、周辺装置指令として工具交換中であるか否かを判定する。工具交換中である場合(YES)、処理は、ステップS163へ移る。工具交換中でない場合(NO)、処理は、再度ステップS162へ移る。
ステップS163において、同時動作制御部212は、交換中周辺装置指令を開始する。具体的には、同時動作制御部212は、周辺装置指令として主軸や工具のテーパ面を洗浄するテーパ洗浄指令の処理を開始する。
【0062】
ステップS164において、同時動作制御部212は、工具交換が完了したか否かを判定する。工具交換が完了した場合(YES)、処理は、ステップS165へ移る。工具交換が完了していない場合(NO)、処理は、再度ステップS164へ移る。
【0063】
ステップS165において、同時動作制御部212は、交換中周辺装置指令を完了し、処理は、その後、図11のステップS104へ移る。
【0064】
図18は、加工前コードの指令区分表を示す図である。図18に示すように、工具系指令、軸系指令及び周辺装置指令について、コードと指令内容とが対応付けられている。図19は、加工後コードの指令区分表を示す図である。図19に示すように、工具系指令、軸系指令及び周辺装置指令について、コードと指令内容とが対応付けられている。
【0065】
具体的には、図18及び19において、工具交換と同時動作が可能な指令は、工具系指令、軸系指令及び周辺機器指令の三つに分けられる。また、工具系指令、軸系指令及び周辺機器指令のそれぞれは、工具の交換、交換前後又は移動指令及び移動指令前後に分けられる。
【0066】
工具系指令は、主軸に装着されている切削工具31の回転や工具長補正など主軸制御と主軸に並行な移動軸、工具長補正に関するGコードやMコードなどを含む。軸系指令は、ワーク41を設置しているテーブル42を動作させる軸の各軸の移動指令、回転軸のクランプ・アンクランプ指令、切削工具31の工具径補正に関するGコードやMコードなどを含む。周辺機器指令は、切削液制御などを含む。これらの指令は、指令区分表として数値制御装置2の記憶部(図示せず)に記憶される。
【0067】
図20は、ある加工前コードP11の工具軸の動作例である。図20に示す例では、工具軸をZ軸とし、工具交換領域内をZ100.からZ0とし、Z軸の動作範囲をZ-400.とする。この場合、工具交換領域外で加工前コードP11を指令した位置が、開始位置であり、工具軸は、工具交換のために工具交換領域内となるZ0へ移動する。その後、工具軸は、工具交換領域内Z0から工具交換を実行するZ100.に移動し、工具交換を実行する。そして、工具軸は、工具交換後、工具交換領域内Z0へ移動し、その後、終了位置へ位置決めする。
【0068】
図21は、ある加工後コードP12の工具軸の動作例である。図21に示す例では、工具軸をZ軸として、工具交換領域内をZ100.からZ0とし、Z軸の動作範囲をZ-400.とする。この場合、工具交換領域外で加工前コードP11を指令した位置が、開始位置であり、工具軸は、工具交換のため工具交換領域内となるZ0へ移動する。そして、工具軸は、工具交換領域内Z0から工具交換を実行するZ100.に移動し、工具交換を実行する。そして、工具軸は、工具交換後、工具交換領域内Z0へ移動し、その後、終了位置へ位置決めする。なお、図20及び21におけるZ-400.は、工具軸のストロークの限界を示す。
【0069】
加工前コードP11において、Gコードは、G920であり、切削加工の加工前コードを示す。Tは、切削工具31の交換を示し、Hは、工具補正番号を示す。また、G54は、ワーク座標系設定を示し、Xは、X軸方向の移動指令であり、Yは、Y軸方向の移動指令であり、Aは、A軸方向の移動指令であり、Cは、C軸方向の移動指令である。また、Zは、工具長補正時のアプローチ位置を示し、Sは、主軸制御のための主軸回転数を示し、M03は、主軸を正回転することを示し、M08は、切削液をONにすることを示し、M100は、AC軸の移動前アンクランプと移動後クランプを示す。
【0070】
加工後コードP12において、Gコードは、G930であり、切削加工の加工後コードを示す。G930は、固定サイクルキャンセル、工具長及び工具径補正キャンセル、並びにX軸、Y軸、A軸、C軸及びZ軸の原点復帰の動作を示す。X、Y、A、C及びZは、それぞれ各座標軸の原点を示す。また、M05は、主軸制御のための主軸停止を示し、M09は、切削液をOFFにすることを示し、M101はAC軸の移動前アンクランプを示す。また、Tは、切削工具31の交換を示し、指令がないときはZ軸の原点復帰動作のみを行う。
【0071】
図2に示す工作機械3は、例えば、以下の(1)~(3)の動作を行う。
(1)工具交換する際に、工作機械3の主軸34は、Z軸方向に上昇し、タレット32は、回動する。Z軸方向に上昇する際、つまり交換前における指令として、数値制御装置2は、交換前指令工具系指令と交換前周辺装置指令を実行する。例えば、数値制御装置2は、Z軸方向の上昇と同時に工具長補正や固定サイクルなどをキャンセルする。また、工作機械3は、主軸が回転していれば主軸を停止し、主軸の位相を工具交換位置へオリエンテーションすることにより位置決めを行う。また、主軸にタッチプローブなどの測定機が装着され、タッチプローブがONになっている場合はOFFにする。また、切削液やエアブローなどの周辺装置は、ON/OFFされる。また、数値制御装置2は、移動前軸系指令として、工具径補正や座標回転をキャンセルする。また、数値制御装置2は、回転軸がクランプされていれば、回転軸をアンクランプする。
(2)タレット32が回転している間に、ワークテーブル33は、X軸方向及びY軸方向に移動する。また、数値制御装置2は、タレット32が回転している間は交換中と判断し、交換中周辺機器指令であるM26は、テーパ洗浄を実行する。また、数値制御装置2は、タレット32が回転している間の条件だけでなく、干渉が無いことをチェックしてもよい。
(3)工具交換後に、工作機械3は、主軸34のZ軸方向の移動、主軸制御、切削液制御、回転軸クランプ等を実行する。
【0072】
本実施形態に係る数値制御装置2は、上述した加工プログラムを用いることによって、(1)~(3)のような同時動作が可能な工程を同時に実行することができる。そのため、例えば、数値制御装置2は、上述したG920及びG930のようなコードを用いることによって、簡単にサイクルタイムを短縮することができ、切削加工を簡易に行うことができる。
【0073】
加工前コードP11と加工後コードP12おいて、XYZ以外にもABCなどの回転軸移動指令が加えられてもよい。例えば、移動軸系指令としてXYZ軸と同一ブロックにAC軸を指令すると、XY軸と同時にAC軸が移動する。また、同一ブロックにおいてM100又はM101を指令すると、Z軸方向に上昇する際、回転軸であるAC軸がクランプされていれば、移動前軸系指令としてM11、M69、M72のアンクランプを同時に実行する。M100は、移動軸系指令が完了したのち、M10、M68、M71のクランプを同時に実行する。
【0074】
このとき、全ての移動前軸系指令及び移動軸系指令の完了を待機する必要はなく、移動前軸系指令では、アンクランプ状態とは関係ない軸、例えばXY軸は、回転軸のアンクランプを待機せず動作を開始してもよい。移動後軸系指令では、例えば、高速な動作が可能なダイレクトドライブモータを採用した回転軸がXY軸よりも先に指令位置に到達する場合、回転軸は、XY軸の指令位置到達を待機せず実行してもよい。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、数値制御装置2は、工作機械3における切削加工の前後に指令するための1行の加工プログラムから、工作機械3が同時動作可能な指令を解析する加工プログラム解析部211と、解析された同時動作可能な指令を用いて、工作機械3に同時動作可能な指令を組み合わせて指令された同時動作を制御する同時動作制御部212と、を備える。これにより、数値制御装置2は、同時動作が可能な工程を同時に指令することができる。そのため、数値制御装置2は、サイクルタイムを短縮することができ、工作機械3の動作を簡易かつ効率的に実行することができる。
【0076】
また、同時動作が可能な工程は、切削工具31の交換、切削工具31の工具長及び工具径補正、ワーク座標系の設定、移動管理の座標系の設定、ワーク座標系における切削工具31又はワーク41、テーブル42の移動、主軸回転の制御、切削液とエア制御並びに回転軸クランプ・アンクランプ制御を含む。これにより、数値制御装置2は、工作機械3においてこれらの工程を同時に動作させることができる。
【0077】
加工プログラムは、切削加工前の加工前コードとして、切削工具31の交換、切削工具31の工具長及び工具径補正のための工具補正番号、ワーク座標系の設定、移動管理の座標系の設定、座標系における切削工具31の移動、主軸回転の制御、並びに切削液制御を含む。これにより、数値制御装置2は、加工前コードを適切に演算及び実行することができる。
【0078】
加工プログラムは、切削加工後の加工後コードとして、切削工具31の交換、原点復帰、原点復帰軸、ワーク座標系の設定、移動管理の座標系の設定、ワーク座標系における切削工具31又はワーク41、テーブル42の移動、主軸制御、切削液及びエア制御を含む。これにより、数値制御装置2は、加工後コードを適切に演算及び実行することができる。
【0079】
また、加工後コードは、原点復帰及び原点復帰軸に代えて、切削工具31の交換、ワーク座標系の設定、並びにワーク座標系における切削工具31及びテーブル42の移動指令を含んでもよい。これにより、数値制御装置2は、加工後コードを適切に演算及び実行することができる。
【0080】
また、加工プログラムは、1行の加工プログラムによって指令される切削工具31の交換、切削工具31の工具長及び工具径補正のための工具補正番号、ワーク座標系、ワーク座標系における切削工具31及びテーブル42の移動指令、原点復帰、原点復帰軸、主軸制御、付加軸制御、切削液制御並びに周辺機器制御の指令値を変数として記述される。
加工プログラムによって呼び出されたプログラムは、前記変数を用いて工作機械3における同時動作を実行する。これにより、数値制御装置2は、同時動作を適切に実行することができる。
【0081】
また、加工プログラムによって呼び出されたプログラムは、切削工具31の交換指令、並びにワーク座標系における切削工具31及びテーブル42の移動指令を同一ブロックに指令する。
【0082】
その後、呼び出されたプログラムは、切削工具31の工具長及び工具径補正のための工具補正番号及び工具軸の移動指令、主軸制御のための指令、切削液制御のための指令、並びに周辺機器制御のための指令を同一ブロックに指令する。これにより、数値制御装置2は、各指令を適切に実行することができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0084】
1 加工システム
2 数値制御装置
3 工作機械
31 切削工具
32 タレット
33 ワークテーブル
41 ワーク
42 テーブル
21 制御部
211 プログラム作成部
212 切削制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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