(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ポリエーテル修飾ポリブタジエンおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 65/26 20060101AFI20231212BHJP
C08F 8/08 20060101ALI20231212BHJP
C08C 19/06 20060101ALI20231212BHJP
C08C 19/40 20060101ALI20231212BHJP
C08G 59/14 20060101ALI20231212BHJP
C08G 59/34 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C08G65/26
C08F8/08
C08C19/06
C08C19/40
C08G59/14
C08G59/34
(21)【出願番号】P 2022531619
(86)(22)【出願日】2020-11-23
(86)【国際出願番号】 EP2020083013
(87)【国際公開番号】W WO2021105037
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-27
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フランク シューベアト
(72)【発明者】
【氏名】フラウケ ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】ザラ オットー
(72)【発明者】
【氏名】フランク ジャルコフスキー
(72)【発明者】
【氏名】ハイケ ハーン
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-507315(JP,A)
【文献】特開昭60-055004(JP,A)
【文献】特開平03-265627(JP,A)
【文献】特開平08-059705(JP,A)
【文献】特開平04-213304(JP,A)
【文献】特開昭62-034903(JP,A)
【文献】特開昭53-057229(JP,A)
【文献】特開昭48-066111(JP,A)
【文献】GAO, Qing et al.,Facile Synthesis of Amphiphilic Heterografted Copolymers with Crystalline and Amorphous Side Chains,Macromolecular Chemistry and Physics,2013年,Vol. 214,Pages 1677-1687
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G65/00- 67/04
C08F 6/00-246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つのポリブタジエン(A)を、少なくとも1つのエポキシ化試薬(B)により、少なくとも1つのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)に変換する工程;
b)前記少なくとも1つのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)を、少なくとも1つのヒドロキシ官能性化合物(D)により、少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)に変換する工程;
c)前記少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)を、少なくとも1つのエポキシ官能性化合物(F)により、少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)に変換する工程
を含む、1つ以上のポリエーテル修飾ポリブタジエンを製造する方法。
【請求項2】
d)前記少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)を、少なくとも1つのエンドキャッピング試薬(H)により、エンドキャップされたポリエーテル残基を有する少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(K)に変換する工程
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
e)前記少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)を明色化する工程
をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
使用する全てのポリブタジエン(A)の二重結合のうち、0%~80%が1,2-ビニル二重結合、20%~100%が1,4-二重結合で
あることを特徴とする、請求項1から3までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのポリブタジエン(A)の数平均モル質量M
nが200g/mol~20000g/mo
lであることを特徴とする、請求項1から4までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのポリブタジエン(A)の二重結合の>0%~70
%がエポキシ化されることを特徴とする、請求項1から5までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのエポキシ化試薬(B)が
、過ギ酸を含有することを特徴とする、請求項1から6までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのヒドロキシ官能性化合物(D)が、1~6個の炭素原子を有する単官能性アルコールの
群から選択されることを特徴とする、請求項1から7までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項9】
工程b)において、全てのヒドロキシ官能性化合物(D)のヒドロキシ基の総数対全てのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)のエポキシ基の総数が>1:1~50:
1であることを特徴とする、請求項1から8までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項10】
工程b)において、
酸を触媒として使用することを特徴とする、請求項1から9までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項11】
工程c)において使用される前記少なくとも1つのエポキシ官能性化合物が、
a.2~18個の炭素原子を有するアルキレンオキシドの
群、ならびに/または
b.グリシジル化合物の
群
から選択されることを特徴とする、請求項1から10までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項12】
工程c)において
、アルコキシル化触媒を使用することを特徴とする、請求項1から11までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項13】
ポリエーテル修飾ポリブタジエ
ンが、2価の残基
【化1】
[式中、
Aは、それぞれ互いに独立して、1価の有機残基または水素残基であり
、
Bは、それぞれ互いに独立して、式(4a)
【化2】
の残基からなる群から選択され
、
R
1は、それぞれ互いに独立して、1~16個の炭素原子を有する1価の炭化水素残基からなる群から選択され
、
R
2は、式-CH
2-O-R
3の残基であり、
R
3は、それぞれ互いに独立して、3~18個の炭素原子を有する1価の炭化水素残基からなる群から選択され
、
R
4は、それぞれ互いに独立して、1~18個の炭素原子を有する1価の有機残基または水
素であり、
m、n、o、pおよびqは、それぞれ互いに独立して、0~30
0であるが、ただし、m、n、o、pおよびqの合計は、1より大きく
、
反復単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)、ならびに残基B中の反復単位のあらゆる並べ替えが含まれる]
からなる群から選択される反復単位を含
み、
全ての反復単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)の合計で除算した全ての反復単位(U)、(V)および(W)の合計が>0%であることを特徴とする
、ポリエーテル修飾ポリブタジエ
ン。
【請求項14】
全ての反復単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)の合計で除算した全ての反復単位(U)、(V)および(W)の合計が>0%~70
%であることを特徴とする、請求項1
3記載のポリエーテル修飾ポリブタジエン。
【請求項15】
式(5)
【化3】
のポリブタジエンであり、ここで、式(5)に示される全ての反復単位の合計に対するポリエーテル修飾された式(5)に示される反復単位の割合が>0%~70
%であり、前記割合が、[(d+e+f)/(a+b+c+d+e+f)]×100%に従って算出されることを特徴とする、請求項13
または14記載のポリエーテル修飾ポリブタジエ
ン。
【請求項16】
ポリブタジエン部分の数平均モル質量M
nが200g/mol~20000g/mo
lであることを特徴とする、請求項13から
15までの少なくとも1項記載のポリエーテル修飾ポリブタジエン。
【請求項17】
含まれる二重結合の0%~80
%が1,2-ビニル二重結合であり、含まれる二重結合の20%~100
%が1,4-二重結合であることを特徴とする、請求項13から
16までの少なくとも1項記載のポリエーテル修飾ポリブタジエン。
【請求項18】
残基Bの平均モル質量が100g/mol~20000g/mo
lであることを特徴とする、請求項13から
17までの少なくとも1項記載のポリエーテル修飾ポリブタジエン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテル修飾ポリブタジエンを製造する方法およびこの方法に従って製造可能なポリエーテル修飾ポリブタジエンに関し、この方法は、以下の工程:
a)少なくとも1つのポリブタジエン(A)を、少なくとも1つのエポキシ化試薬(B)により、少なくとも1つのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)に変換する工程;
b)少なくとも1つのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)を、少なくとも1つのヒドロキシ官能性化合物(D)により、少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)に変換する工程;
c)少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)を、少なくとも1つのエポキシ官能性化合物(F)により、少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)に変換する工程、
を含む。
【0002】
したがって、本発明によるポリエーテル修飾ポリブタジエンは、ペンダント(seitstaendig)ヒドロキシ官能性ポリブタジエンの直接アルコキシル化によって得ることができ、ペンダント(櫛位置の(kammstaendige))ポリエーテル残基を有する。
【0003】
ペンダントポリエーテル残基を有するポリブタジエンは既知であり、従来技術によると、例えばポリエーテルによる反応性の官能化ポリブタジエンの変換によって製造される。このため、Q. Gao et. Al., Macromolecular Chemistry and Physics (2013), 214(15), 1677-1687には、ポリブタジエン主鎖へのポリエチレングリコールのグラフト化(接ぎ木)によって製造される両親媒性ポリマー櫛形構造が記載されている。特開2011-038003号公報によると、無水マレイン酸単位で官能化されたポリブタジエンをアミノ末端ポリエーテルにより変換する。これにより、アミド基またはイミド基を介して結合した櫛位置のポリエーテル残基を有するマレイン化ポリブタジエンが得られる。同様の方法では、J. Wang, Journal of Applied Polymer Science (2013), 128(4), 2408-2413によると、ポリエチレングリコールを、高い割合の1,2-ブタジエンモノマー単位を有するポリブタジエンにエステル結合を形成して付加する。特開2002-105209号公報に開示されている方法に従うと、櫛形構造を有する高分子グラフトポリマーが、エポキシ化ポリブタジエンにOH官能性ポリエーテルを付加することによって得られる。H. Decher et. al., Polymer International (1995), 38(3), 219-225によると、ヒドロキシ官能性ポリブタジエンへのイソシアネート末端ポリエチレングリコールの付加を用いている。
【0004】
さらに、ヒドロキシ官能性ポリブタジエンをエポキシ化合物によって変換する、ポリエーテル修飾ポリブタジエンを製造する方法が既知である。このため、例えば、OH末端ポリブタジエンのアルコキシル化が従来技術から知られている。
【0005】
米国特許第4994621号明細書には、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウムの存在下でのエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドによるヒドロキシル末端ポリブタジエンのアルコキシル化が記載されている。欧州特許出願公開第2003156号明細書には、OH末端ポリブタジエンのアルカリ触媒によるアルコキシル化が構造的に制限され、アルカリ触媒の難溶性から殆ど不可能であり、代わりに複合金属シアン化物(DMC)触媒作用が好まれることが記載されている。アルコキシル化におけるOH末端ポリブタジエンの使用は、もっぱらポリエーテル-ポリブタジエン-ポリエーテル-トリブロック構造をもたらす。欧州特許出願公開第2003156号明細書によると、このブロック構造がポリウレタンの製造における他の反応成分との低い混和性に関与する。
【0006】
OH末端ポリブタジエンのアルコキシル化以外に、ペンダントヒドロキシ官能性ポリブタジエンのアルコキシル化も知られている。このため、Q. Gao et. al.は、Macromolecular Chemistry and Physics (2013), 214(15), 1677-1687に、ペンダントヒドロキシ官能性ポリブタジエンをエチレンオキシドでアルコキシル化することによるペンダントポリエーテル修飾ポリブタジエンの製造を記載している。ここで使用されるペンダントヒドロキシ官能性ポリブタジエンの製造は、初めにポリブタジエンをエポキシ化し、続いてエポキシ化ポリブタジエンをリチウム-ポリブタジエン化合物によって変換し、最後に反応生成物をHCl-酸性メタノールでプロトン化することで行われる。この方法は、ペンダントポリエーテル残基とペンダントポリブタジエン残基との両方を有するポリブタジエンをもたらす。ここで、1つのポリエーテル残基につき常に1つのポリブタジエン残基が向かい合って存在するため、この方法は、HLB値(HLB:親水性親油性バランス)が低いポリエーテル修飾ポリブタジエンをもたらす。加えて、このポリエーテル修飾ポリブタジエンは、ポリブタジエン部分が分岐している。より高いHLB値および/または非分岐のポリブタジエン部分を有するポリエーテル修飾ポリブタジエンは、この方法では製造することができない。この方法の更なる欠点は、有機金属化合物(n-BuLiおよびリチウム-ポリブタジエン)の使用により、それらの空気および水分への高い感受性からプロセス制御が特別に要求されることである。このため、この方法の工業的実現は困難である。従来技術では、ペンダントポリエーテル鎖を有する、好ましくは直鎖状のポリブタジエンを、アルキレンオキシドによるペンダントヒドロキシ官能性ポリブタジエンの単純な直接アルコキシル化反応によって製造する方法であって、リチウム-ポリブタジエン等の有機金属化合物を使用することなく、エポキシ官能性ポリブタジエンからペンダントヒドロキシ官能性ポリブタジエンを製造する方法は、これまでに知られていない。まとめると、アルキレンオキシドによる単純な直接アルコキシル化反応によって櫛位置のポリエーテル鎖を有する直鎖状ポリブタジエンを製造する方法が、従来技術からこれまでに知られていないことに留意すべきである。
【0007】
エポキシ化および二次反応によるポリブタジエンの化学修飾は、文献から知られている。エポキシ開環は、主にアミンとの反応によって行われる。特開昭53-117030号公報および西独国特許出願公開第2943879号明細書には、エタノールアミンまたはジエタノールアミンの付加が記載されており、欧州特許第351135号明細書および西独国特許出願公開第3305964号明細書には、ジメチルアミンによるエポキシ基の変換が記載されている。旧東ドイツ国経済特許第206286号明細書には、極性溶媒中で4~20個のC原子を有する第1級および第2級アミンをエポキシ化ポリブタジエンに付加することが開示されている。さらに、脂肪酸によるポリブタジエンの修飾が既知である。このため、西独国特許出願公開第3442200号明細書には、エポキシ化ポリブタジエンへのC6~C22カルボン酸の付加が記載されている。反応生成物の更なるアルコキシル化は、これらの文献には開示されていない。
【0008】
本発明に関して、アミン官能性ポリブタジエンは、望ましくないことが多い塩基性の性質を生成物に付与し、変色の原因となり、または例えば複合金属シアン化物等のアルコキシル化触媒を阻害するため、アルコキシル化の出発化合物としてあまり適切でない。
【0009】
従来技術によると、エポキシ化ポリブタジエンへのアルコールおよび水の付加は、アミンおよびカルボン酸の付加よりもはるかに困難なようである。Qing Gao et. al., J. Macromol. Sci., Part A: Pure and Applied Chemistry (2013), 50, 297-301には、THF中でのトリフルオロメタンスルホン酸触媒によるエポキシ化ポリブタジエンへの水の付加が記載されている。国際公開第2016/142249号は、ポリブタジエンのエポキシ基への水または1~4個のC原子を有するアルコールの付加によるガラス状ポリマーの製造を目的とし、300~2000g/molの低いモル質量、ならびに1,2-ビニル二重結合および1,2-シクロビニル二重結合の50%~80%の高い含有率を有するOH官能性ポリブタジエンの製造に限定されている。
【0010】
ポリブタジエンおよび修飾ポリブタジエンは、多くの場合、例えばポリマーを疎水性にするか、または可撓性にし、機械的特性を改善するために反応性成分または配合要素として使用される。しかしながら、アルコキシル化ポリエーテル修飾ポリブタジエンの用途は現在、利用可能な少数のトリブロック構造に制限されることから、限定されていることが多い。これまで、ポリエーテル修飾ポリブタジエンの化学構造を広い範囲で変化させることは可能ではなかった。加えて、かかるポリマーの単純な製造方法はない。
【0011】
本発明の課題は、従来技術の少なくとも1つの欠点を克服することであった。
【0012】
特に、櫛位置(ペンダント)がポリエーテル残基で修飾された、好ましくは直鎖状のポリブタジエンを製造する改善された方法を提供することが課題であった。この方法はさらに、ペンダントポリエーテル残基を有する、好ましくは直鎖状のポリブタジエンをプロセス技術上、非常に容易に得ることを可能にし、例えばリチウム有機化合物を用いずに実行可能であることが望ましい。この場合、ポリエーテル修飾ポリブタジエンはさらに、ペンダントヒドロキシ官能性ポリブタジエンの直接アルコキシル化によって得ることができることが望ましい。ここで、方法においてアルコキシル化の前駆体および連鎖開始剤として改善されたペンダントヒドロキシ官能性ポリブタジエンを提供することも課題であった。
【0013】
驚くべきことに、以下の工程:
a)少なくとも1つのポリブタジエン(A)を、少なくとも1つのエポキシ化試薬(B)により、少なくとも1つのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)に変換する工程;
b)少なくとも1つのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)を、少なくとも1つのヒドロキシ官能性化合物(D)により、少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)に変換する工程;
c)少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)を、少なくとも1つのエポキシ官能性化合物(F)により、少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)に変換する工程
を含む、ポリエーテル修飾ポリブタジエンを製造する方法によって、この課題が解決されることが今回見出された。
【0014】
驚いたことに、1,4-単位の高い割合およびビニル1,2-単位の低い含有率を有するポリブタジエンが、過酸化水素によるエポキシ化後に、OH官能性化合物によって酸触媒開環下でペンダントOH官能性ポリブタジエン(ポリブタジエノール)に容易に変化し、続いてアルキレンオキシドでアルコキシル化されることがさらに見出された。
【0015】
したがって、本発明の課題は、独立請求項の主題によって解決される。本発明の有利な形態は、従属請求項、実施例および明細書に提示される。
【0016】
以下に本発明による主題を例示的に記載するが、本発明は、これらの例示的な実施形態に限定されるものではない。以下で範囲、一般式または化合物のクラスが指定される場合、明示的に言及される、対応する範囲または化合物の群だけでなく、個々の値(範囲)または化合物を除外することで得ることができる全ての部分範囲および化合物の部分群も含まれるものとする。本明細書において文献を引用する場合、その内容全体が本発明の開示内容の一部であるものとする。
【0017】
以下で平均値が指定される場合、他に指定のない限り、これらは数平均である。以下で測定によって決定される測定値、パラメータまたは物質特性が指定される場合、他に指定のない限り、これらは25℃および好ましくは101325Paの圧力(常圧)で測定した測定値、パラメータまたは物質特性である。
【0018】
以下で数値範囲が「X~Y」の形で指定される場合、XおよびYは数値範囲の限界を表し、他に指定のない限り、「少なくともXからYまで(Yを含む)」という表現と同義である。したがって、範囲の指定は、他に指定のない限り、範囲の限界XおよびYを含む。
【0019】
分子または分子の断片が1つ以上の立体中心を有するか、または対称性に基づいて異性体に区別することができるか、または例えば回転の制限等の他の効果に基づいて異性体に区別することができる場合は常に、考え得る全ての異性体が本発明に含まれる。
【0020】
以下の式(1)~(5)は、反復単位、例えば反復する断片、ブロックまたはモノマー単位から構成され、モル重量分布を有し得る化合物または残基を説明するものである。反復単位の頻度は、添字によって指定される。式に使用される添字は、統計的平均値(数平均)とみなされる。使用される添字の数および指定される添字の値の範囲は、実際に存在する構造および/またはその混合物の考え得る統計的分布の平均値と理解される。以下の式(1)~(5)に記載される化合物の様々な断片または反復単位は、統計的に分布し得る。統計的分布は、任意のブロック数および任意の順序でブロック毎に構成されるか、または分布のランダム化を受け、交互に構成されていてもよく、あるいは鎖が存在する限りにおいて、鎖全体にわたって勾配を形成してもよく、特に、場合により異なる分布の群が連続し得る全ての混合形態を形成してもよい。以下の式には、反復単位のあらゆる並べ替えが含まれる。したがって、本発明において、様々な単位を複数回有し得る化合物、例えばポリブタジエン(A)、エポキシ官能性ポリブタジエン(C)、ヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)、ポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)、またはエンドキャップされたポリエーテル残基を有するポリエーテル修飾ポリブタジエン(K)が記載される場合、これらがこの化合物に不規則に、例えば統計的に分布して存在していても、または規則的に存在していてもよい。かかる化合物中の単位の数または相対頻度に関する情報は、対応する全ての化合物で平均化された平均値(数平均)として理解すべきである。特定の実施形態では、統計的分布が実施形態によって制限されることがある。制限の影響を受けない全ての範囲で、統計的分布は変化しない。
【0021】
したがって、本発明の第1の主題は、
a)少なくとも1つのポリブタジエン(A)を、少なくとも1つのエポキシ化試薬(B)により、少なくとも1つのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)に変換する工程;
b)少なくとも1つのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)を、少なくとも1つのヒドロキシ官能性化合物(D)により、少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)に変換する工程;
c)少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)を、少なくとも1つのエポキシ官能性化合物(F)により、少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)に変換する工程
を含む、1つ以上のポリエーテル修飾ポリブタジエンを製造する方法である。
【0022】
本発明による方法が、以下の任意の工程:
d)少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)を、少なくとも1つのエンドキャッピング試薬(H)により、エンドキャップされたポリエーテル残基を有する少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(K)に変換する工程;
e)少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)を明色化する工程
の少なくとも1つをさらに含むことが好ましい。
【0023】
好ましくは、本方法は、
工程a)において、in situでギ酸およびH2O2から生成する過ギ酸を用いて、少なくとも1つのポリブタジエン(A)の二重結合の>0%~70%、好ましくは1%~50%、さらに好ましくは2%~40%、さらにより好ましくは3%~30%、特に好ましくは4%~20%をエポキシ化すること;
工程b)において、好ましくは1つ以上の酸性触媒、特にトリフルオロメタンスルホン酸を使用して、少なくとも1つのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)のエポキシ基に、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の短鎖アルコール、特にイソブタノールを開環下で付加すること;
工程c)において、好ましくはZn/Co複合金属シアン化物触媒、またはアミン、グアニジン、アミジン、アルカリ水酸化物もしくはアルカリアルコレート等の塩基性触媒をさらに使用して、少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)の生じたペンダントOH基に、アルキレンオキシドおよび場合により更なるエポキシ官能性モノマーから選択される1つ以上のエポキシ官能性化合物(F)をアルコキシル化反応にて付加すること;
工程d)において、任意に、少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)をカルボン酸、カルボン酸無水物、ハロゲン化炭化水素、イソシアネートおよびカーボネートの群から選択される少なくとも1つのエンドキャッピング試薬(H)により、エンドキャップされたポリエーテル残基を有する少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(K)に変換すること;
工程e)において、任意に、少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)を活性炭および/または過酸化水素で明色化すること
をさらに特徴とする。
【0024】
本発明による方法では、櫛位置のポリエーテル残基によるペンダントOH基の単純な直接アルコキシル化によって直鎖状ポリブタジエンを修飾することが初めて可能となる。ポリエーテル残基の鎖長およびモノマー配列は、広範に変化させることができる。ポリブタジエンに結合したポリエーテル残基の平均数は、エポキシ化度およびヒドロキシ官能化によって適切に調節することができ、ヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)の大きな構造的多様性をもたらす。
【0025】
従来技術で知られているポリブタジエンへのポリエーテルのグラフト化(接ぎ木)は、実際に定量的に行われることは殆どなく、反応生成物は一般に、任意の割合のポリエーテルと、場合により非官能化ポリブタジエンとを含有する。上記のようなエポキシ化ポリブタジエンへのOH基を介したOH官能性ポリエーテルの付加は、同様に大抵は不完全に起こり、生成物は、残留した未変換のエポキシ基を含有する。ポリエーテルを過剰に使用する場合、エポキシ基の残存量を減少させることはできるが、過剰なポリエーテルが、蒸留によって分離することができないために生成物中に残留する。
【0026】
本発明に従って得ることができる、櫛位置のポリエーテル残基を有するポリブタジエンは、好ましくは残留エポキシ基を本質的に有しない。本発明による方法の生成物は、好ましくは遊離ポリエーテル部分を本質的に含まない。好ましくは、本質的に全てのポリエーテルがエーテル結合によってポリブタジエンに化学結合する。このため、本発明による方法の生成物は、純度の向上により、これまで従来技術から知られていた化合物とは明らかに異なる。
【0027】
本発明による方法の工程a)の好ましい形態について:
本発明による方法の工程a)では、少なくとも1つのポリブタジエン(A)を、少なくとも1つのエポキシ化試薬(B)により、少なくとも1つのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)に変換する。
【0028】
この変換では、ポリブタジエン(A)の二重結合がエポキシ基に変化する。例えば過カルボン酸および過酸化水素を用いてポリブタジエンをエポキシ化する様々な方法が当業者に既知であり、例えば中国特許第101538338号明細書、特開2004-346310号公報、旧東ドイツ国経済特許第253627号明細書および国際公開第2016/142249号に開示されている。過ギ酸が、1,4-単位の割合が高いエポキシ官能性ポリブタジエン(C)の製造に特に適切であり、in situで過酸化水素の存在下にてギ酸から形成することもできる。エポキシ化は、好ましくはトルエンまたはクロロホルム等の溶媒中で行われ、溶媒は、変換後に存在し得る過酸化物残渣を洗い流してから蒸留によって除去される。
【0029】
ポリブタジエン(A)は、ブタ-1,3-ジエンのポリマーである。この場合、ブタ-1,3-ジエンモノマーの重合は、本質的に1,4-結合および/または1,2-結合によって行われる。1,4-結合は、いわゆる1,4-trans-単位および/または1,4-cis-単位を生じ、これらはまとめて1,4-単位とも称される。1,2-結合は、いわゆる1,2-単位を生じる。1,2-単位はビニル基を有し、ビニル1,2-単位とも称される。本発明においては、1,2-単位は「(X)」、1,4-trans-単位は「(Y)」、1,4-cis-単位は「(Z)」とも称される:
【化1】
【0030】
これらの単位に含まれる二重結合は、同様に1,4-trans-二重結合、1,4-cis-二重結合、または1,2-二重結合もしくは1,2-ビニル二重結合と称される。1,4-trans-二重結合および1,4-cis-二重結合は、まとめて1,4-二重結合とも称される。
【0031】
したがって、ポリブタジエン(A)は非修飾ポリブタジエンである。ポリブタジエン(A)およびその製造方法は、当業者に既知である。製造は、好ましくはラジカル連鎖重合、アニオン連鎖重合または配位連鎖重合によって行われる。
【0032】
ラジカル連鎖重合は、好ましくは乳化重合として行われる。これにより、上記の3つの単位が統計上生じることになる。反応温度が低い場合(約5℃)、ビニル基の割合が減少する。ペルオキソ二硫酸カリウムおよび鉄塩、あるいは過酸化水素を用いて開始するのが好ましい。
【0033】
アニオン連鎖重合では、好ましくはブチルリチウムを用いて連鎖重合を開始する。このようにして得られるポリブタジエン(A)は、約40%の1,4-cis-単位および50%の1,4-trans-単位を含む。
【0034】
配位連鎖重合では、1,4-cis-単位の割合が高いポリブタジエン(A)を生じるチーグラー-ナッタ触媒、特に立体特異的チーグラー-ナッタ触媒を使用するのが好ましい。
【0035】
1,3-ブタジエンの重合では、副反応または二次反応、例えば得られるポリブタジエンの1,2-単位および1,4-単位の二重結合の二次反応によって分岐ポリブタジエン(A)が生じる可能性もある。しかしながら、本発明に従って使用されるポリブタジエン(A)は直鎖状、すなわち非分岐のポリブタジエンであるのが好ましい。ポリブタジエンが1,2-単位、1,4-trans-単位または1,4-cis-単位以外の単位を少ない割合で有することも可能である。しかしながら、1,2-単位、1,4-trans-単位および1,4-cis-単位の合計の質量分率が、少なくとも1つのポリブタジエン(A)の全質量に対して、すなわち、使用する全てのポリブタジエン(A)の全質量に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に少なくとも99%であることが好ましい。
【0036】
本発明による方法には、1,2-単位および1,4-単位の合計に対して0%~80%の1,2-単位および20%~100%の1,4-単位、好ましくは0%~30%の1,2-単位および70%~100%の1,4-単位、特に好ましくは0%~10%の1,2-単位および90%~100%の1,4-単位、極めて特に好ましくは0%~5%の1,2-単位および95%~100%の1,4-単位を有するポリブタジエン(A)を使用することが好ましい。
【0037】
したがって、使用する全てのポリブタジエン(A)の二重結合のうち、0%~80%が1,2-ビニル二重結合、20%~100%が1,4-二重結合であり、好ましくは0%~30%が1,2-ビニル二重結合、70%~100%が1,4-二重結合であり、特に好ましくは0%~10%が1,2-ビニル二重結合、90%~100%が1,4-二重結合であり、極めて特に好ましくは0%~5%が1,2-ビニル二重結合、95%~100%が1,4-二重結合であることが好ましい。
【0038】
したがって、本発明による生成物の製造には、0%~80%の1,2-ビニル二重結合(添字x)および20%~100%の1,4-二重結合(添字yおよびzの合計)、好ましくは0%~30%の1,2-ビニル二重結合および70%~100%の1,4-二重結合、特に好ましくは0%~10%の1,2-ビニル二重結合および90%~100%の1,4-二重結合、極めて特に好ましくは0%~5%の1,2-ビニル二重結合および95%~100%の1,4-二重結合の含有率を有する、式(1)
【化2】
のポリブタジエン(A)を使用するのが好ましい。1,4-trans-二重結合(添字y)および1,4-cis-二重結合(添字z)の比率は任意である。
【0039】
ここで、添字x、yおよびzは、ポリブタジエン(A)中のそれぞれのブタジエン単位の数を示す。これらの添字は、少なくとも1つのポリブタジエン(A)の全てのポリブタジエンポリマー全体での数的平均値(数平均)である。
【0040】
使用される式(1)によるポリブタジエン(A)の平均モル質量および多分散性は任意である。
【0041】
少なくとも1つのポリブタジエン(A)の数平均モル質量Mnが200g/mol~20000g/mol、好ましくは500g/mol~10000g/mol、特に好ましくは700g/mol~5000g/molであることが好ましい。
【0042】
代替的には、少なくとも1つのポリブタジエン(A)の数平均モル質量Mnが2100g/mol~20000g/mol、特に好ましくは2200g/mol~10000g/mol、極めて特に好ましくは2300g/mol~5000g/molであることが好ましい。
【0043】
本発明においては、数平均モル質量Mn、重量平均モル質量Mwおよび多分散性(Mw/Mn)は、実施例に記載されるように、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定されることが好ましい。
【0044】
少なくとも1つのポリブタジエン(A)が、1,2-単位、1,4-cis-単位および1,4-trans-単位からなる群から選択される単位を数平均で5~360個、特に好ましくは10~180個、極めて特に好ましくは15~90個有することがさらに好ましい。
【0045】
代替的には、少なくとも1つのポリブタジエン(A)が、1,2-単位、1,4-cis-単位および1,4-trans-単位からなる群から選択される単位を数平均で35~360個、特に好ましくは40~180個、極めて特に好ましくは45~90個有することが好ましい。
【0046】
使用されるポリブタジエン(A)の粘度が、50~50000mPas、好ましくは100~10000mPas、特に500~5000mPasであることがさらに好ましい(DIN EN ISO 3219:1994-10に準拠して決定される)。
【0047】
特に好ましく使用されるポリブタジエンは、Evonik Industries AG / Evonik Operations GmbHから市販されている製品であるPolyvest(登録商標) 110およびPolyvest(登録商標) 130であり、以下の典型的な特性:
Polyvest(登録商標) 110:約1%の1,2-ビニル二重結合、約24%の1,4-trans-二重結合、約75%の1,4-cis-二重結合、数平均モル質量Mn 約2600g/mol、粘度(20℃) 700~860mPas(DIN EN ISO 3219:1994-10に準拠)、
Polyvest(登録商標) 130:約1%の1,2-ビニル二重結合、約22%の1,4-trans-二重結合、約77%の1,4-cis-二重結合、数平均モル質量Mn 約4600g/mol、粘度(20℃) 2700~3300mPas(DIN EN ISO 3219:1994-10に準拠)
を有する。
【0048】
特に好ましく使用されるポリブタジエンは、Synthomer PLCから入手可能な製品であるLithene ultra ALおよびLithene ActiV 50でもあり、以下の典型的な特性:
Lithene ultra AL:約40%の1,2-ビニル二重結合、約60%の1,4-二重結合、
Lithene ActiV 50:約70%の1,2-ビニル二重結合、約30%の1,4-二重結合
を有する。
【0049】
エポキシ化度は、例えば13C-NMR分光法またはエポキシ価滴定(DIN EN ISO 3001:1999に準拠したエポキシ当量の決定)によって定量的に決定され、プロセス条件、特にポリブタジエン中の二重結合の導入量に対する過酸化水素の使用量によって適切かつ再現可能に調整することができる。
【0050】
本発明による方法の工程a)において、少なくとも1つのポリブタジエン(A)の全ての二重結合の>0%~70%、好ましくは1%~50%、さらに好ましくは2%~40%、さらにより好ましくは3%~30%、特に好ましくは4%~20%がエポキシ化されることが好ましい。
【0051】
エポキシ化試薬(B)としては、原則として当業者に既知の全てのエポキシ化剤を使用することができる。エポキシ化試薬(B)が、ペルオキシカルボン酸(過カルボン酸、過酸)の群、好ましくはメタクロロ過安息香酸、ペルオキシ酢酸(過酢酸)およびペルオキシギ酸(過ギ酸)からなる群、特にペルオキシギ酸(過ギ酸)から選択されることが好ましい。この場合、ペルオキシカルボン酸は、対応するカルボン酸および過酸化水素からin situで形成されるのが好ましい。
【0052】
少なくとも1つのエポキシ化試薬(B)が、好ましくはギ酸および過酸化水素からin situで形成される過ギ酸を含有することが特に好ましい。
【0053】
少なくとも1つのポリブタジエン(A)のエポキシ化は、統計上ポリブタジエン鎖全体に分布して、好ましくは1,4-二重結合で起こる。1,2-二重結合のエポキシ化も起こる可能性があり、同様に統計上ポリブタジエン鎖全体に分布して、1,2-二重結合で起こる。しかしながら、1,2-二重結合のエポキシ化は、1,4-二重結合のエポキシ化と比べて不利である。このため、反応生成物は、エポキシ化度が互いに異なるエポキシ官能性ポリブタジエンポリマーを含有する。したがって、記載のエポキシ化度は全て、平均値として理解すべきである。
【0054】
本発明による方法の間に、反応物、中間体および生成物の安定化のために、安定剤または酸化防止剤を使用して、二重結合の望ましくない重合反応を回避することがさらに好ましい。これには例えば、当業者に既知の立体障害フェノール、例えばAnox(登録商標) 20、Irganox(登録商標) 1010(BASF)、Irganox(登録商標) 1076(BASF)およびIrganox(登録商標) 1135(BASF)として市販されているものが適している。全製造プロセスを不活性雰囲気下、例えば窒素下で実行することがさらに好ましい。また、非修飾反応物、すなわち少なくとも1つのポリブタジエン(A)、さらには本発明によるポリエーテル修飾最終生成物、すなわち少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)を可能な限り排気下で保管することが好ましい。
【0055】
本発明による方法の工程b)の好ましい形態について:
本発明による方法の工程b)では、少なくとも1つのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)を、少なくとも1つのヒドロキシ官能性化合物(D)により、少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)に変換する。
【0056】
この変換では、少なくとも1つのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)への少なくとも1つのヒドロキシ官能性化合物(D)の付加(付加反応)が生じる。したがって、少なくとも1つのヒドロキシ官能性化合物(D)と少なくとも1つのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)との間に1つ以上の共有結合を形成することで変換が起こる。変換は、好ましくは(少なくとも理想的には)、少なくとも1つのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)の少なくとも1つのエポキシ基に対する少なくとも1つのヒドロキシ官能性化合物(D)の少なくとも1つのヒドロキシ基の求核攻撃がこの少なくとも1つのエポキシ基の開環下で起こる、反応段階を含む。
【0057】
原則として、本発明による方法に関して、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する全ての化合物をポリブタジエンのエポキシ基に付加することができる。ヒドロキシ官能性化合物(D)は、例えばアルコール、カルボン酸および水からなる群から選択することができる。好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシ官能性化合物(D)は、1~6個の炭素原子を有する単官能性アルコールの群、さらに好ましくは2~4個の炭素原子を有する単官能性アルコールの群、特に好ましくはエタノール、1-プロパノール、イソプロパノール(イソ-プロパノール)、1-ブタノール、2-ブタノールおよびイソブタノール(イソ-ブタノール)からなる群から選択される。この場合、これらのアルコールの任意の混合物を使用してもよい。しかしながら、ヒドロキシ官能性化合物(D)としてメタノールを使用しないことが特に好ましい。水もヒドロキシ官能性化合物(D)として適切である。水は単独で使用しても、または1つ以上の他のヒドロキシ官能性化合物(D)と混合して使用してもよい。このため、例えばアルコールと水との混合物、またはカルボン酸と水との混合物を工程b)で使用することができる。したがって、少なくとも1つのヒドロキシ官能性化合物(D)、例えばアルコールまたはカルボン酸を乾燥させ、水を除去する必要はない。
【0058】
ヒドロキシ官能性化合物(D)のOH基とエポキシ官能性ポリブタジエン(C)のエポキシ基とのモル比は、広範に変化させることができる。しかしながら、全てのエポキシ基の定量的変換を達成するためには、エポキシ官能性ポリブタジエン(C)のエポキシ基に対するヒドロキシ基の化学量論比に対して化学量論的に過剰なヒドロキシ官能性化合物(D)を使用することが好ましい。したがって、工程b)において、全てのヒドロキシ官能性化合物(D)のヒドロキシ基の総数対全てのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)のエポキシ基の総数が>1:1~50:1、さらに好ましくは2:1~35:1、さらにより好ましくは3:1~30:1、特に好ましくは3:1~25:1であることが好ましい。過剰な化合物(D)を変換後に、例えば蒸留によって除去し、必要に応じて再使用することができる。
【0059】
好ましい実施形態では、反応は少なくとも1つの酸性触媒の存在下で行われる。触媒は任意に、反応混合物中に均一に溶解しているか、または例えばスルホン酸イオン交換体のように、固体として混合物中に不均一に分布している。本発明に関して、硫酸、スルホン酸およびトリフルオロ酢酸等の触媒が好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸が特に好ましい。したがって、工程b)において、酸、さらに好ましくは硫酸、スルホン酸および/またはトリフルオロ酢酸、特に好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸を触媒として使用することが好ましい。
【0060】
酸の種類および使用量は、少なくとも1つのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)のエポキシ基への少なくとも1つのヒドロキシ官能性化合物(D)の可能な限り迅速かつ定量的な付加が行われるように選択される。好ましくは、反応混合物に対して1wppm~1000wppm(wppm=質量ppm)の濃度、特に好ましくは50wppm~300wppmの濃度のトリフルオロメタンスルホン酸を使用する。
【0061】
酸性触媒の存在下での少なくとも1つのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)と少なくとも1つのヒドロキシ官能性化合物(D)との反応は、好ましくは20℃~120℃の温度範囲で行われ、ヒドロキシ官能性化合物(D)の沸点、または幾つかのヒドロキシ官能性化合物(D)を使用する場合には、最も揮発性のヒドロキシ官能性化合物(D)の沸点によって上限が定められる。好ましくは、50℃~90℃で変換が行われる。エポキシ基が可能な限り完全に変換されるまで成分を数時間撹拌する。エポキシ基の分析は任意に、NMR分光分析またはエポキシ価滴定の既知の方法によって行うことができる(実施例に記載される)。工程b)の反応条件は、好ましくは、工程a)で生成したエポキシ基の97%超が開環下で変換されるように選択される。工程b)の生成物、すなわち少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)において、エポキシ基がそれ以上検出可能でないことが特に好ましい。
【0062】
反応後に、酸性の反応混合物を中和する。この目的で、原則としてあらゆる塩基性の中和剤を添加することができる。好ましくは、固形のまたは水溶液としての炭酸水素ナトリウムを用いた中和を行う。任意の過剰なヒドロキシ官能性化合物(D)および任意の水を、好ましくは蒸留によって除去し、沈殿した塩を必要に応じて濾別する。この場合、炭酸水素ナトリウム水溶液の使用が、より明るい色の生成物が得られることから好ましい。
【0063】
式A-OHのヒドロキシ官能性化合物(D)による開環後に、エポキシ官能性ポリブタジエン(C)のエポキシ基のそれぞれから、式(2a)、(2b)または(2c):
【化3】
の反復単位が生じる。
【0064】
Aはこの場合、好ましくは、更なるヒドロキシル基を有していてもよい1価の有機残基、または水素ラジカルである。例えば1~6個の炭素原子を有する単官能性の脂肪族アルコールをヒドロキシ官能性化合物(D)として使用する場合、Aは1~6個の炭素原子を有するアルキル残基である。水がヒドロキシ官能性化合物(D)である場合、Aは水素ラジカルであり、すなわちA=Hである。例えばカルボン酸をヒドロキシ官能性化合物(D)として使用する場合、Aはアシル残基である。したがって、変換されたエポキシ基のそれぞれから少なくとも1つのペンダントOH基が生じる。水の場合のように、A=Hであれば、変換されたエポキシ基のそれぞれから、ちょうど2つのペンダントOH基が生じる。他の全ての場合、すなわちA≠Hであれば、変換されたエポキシ基のそれぞれから、ちょうど1つのペンダントOH基が生じる。
【0065】
1,4-単位の割合が優勢な、本発明による好ましいポリブタジエン(A)の場合、式(2a)、(2b)および(2c)の反復単位のうち式(2a)のものが優勢である。
【0066】
少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)が、式(2a)、(2b)および(2c)の反復単位の合計に対して20%~100%、好ましくは70%~100%、さらに好ましくは90%~100%、特に好ましくは95%~100%の式(2a)の反復単位を有することが好ましい。
【0067】
式(2a)、(2b)および(2c)の反復単位を総合した割合が、少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)の全ての反復単位の総数に対して>0%~70%、好ましくは1%~50%、さらに好ましくは2%~40%、さらにより好ましくは3%~30%、特に好ましくは4%~20%であることがさらに好ましい。したがって、ヒドロキシル化度が>0%~70%、好ましくは1%~50%、さらに好ましくは2%~40%、さらにより好ましくは3%~30%、特に好ましくは4%~20%であることが好ましい。工程b)における変換が完全である場合、ヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)のヒドロキシル化度は、対応するエポキシ官能性ポリブタジエン(C)のエポキシ化度に相当する。
【0068】
本発明による方法の工程c)の好ましい形態について:
本発明による方法の工程c)では、少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)を、少なくとも1つのエポキシ官能性化合物(F)により、少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)に変換する。
【0069】
工程b)からの少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)は、工程c)において、少なくとも1つのエポキシ官能性化合物(F)による変換のための出発化合物として用いられる。開環下にて、好ましくは適切な触媒の存在下で、少なくとも1つのエポキシ官能性化合物(F)(以下、単に「モノマー」または「エポキシモノマー」または「エポキシ」とも称する)を、重付加反応において少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)のOH基に付加する。これが櫛位置の(ペンダント)ポリエーテル鎖を有する本発明によるポリブタジエンの形成、すなわち少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)の形成をもたらす。好ましくは、ポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)は、櫛位置(ペンダント)がポリエーテル残基で修飾された直鎖状ポリブタジエンである。したがって、ポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)が直鎖状ポリブタジエン骨格とペンダントポリエーテル残基とを有することが好ましい。
【0070】
工程c)における変換は、好ましくはアルコキシル化反応、すなわち少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)へのアルキレンオキシドの重付加である。しかしながら、工程c)における変換は、アルキレンオキシドの代わりに、またはそれに加えてグリシジル化合物を用いて行うこともできる。
【0071】
したがって、工程c)において使用される少なくとも1つのエポキシ官能性化合物が、アルキレンオキシドの群、好ましくは2~18個の炭素原子を有するアルキレンオキシドの群、さらに好ましくは2~8個の炭素原子を有するアルキレンオキシドの群、特に好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1-ブチレンオキシド、cis-2-ブチレンオキシド、trans-2-ブチレンオキシド、イソブチレンオキシドおよびスチレンオキシドからなる群から選択されること、ならびに/または工程c)において使用される少なくとも1つのエポキシ官能性化合物が、グリシジル化合物の群、好ましくは単官能性グリシジル化合物の群、特に好ましくはフェニルグリシジルエーテル、o-クレジルグリシジルエーテル、tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、C12/C14-脂肪族アルコールグリシジルエーテルおよびC13/C15-脂肪族アルコールグリシジルエーテルからなる群から選択されることが好ましい。
【0072】
モノマーは任意に、純粋な形態で個々に、任意の注入順序で交互に続けて、さらには混合して同時に添加することができる。このため、得られるポリエーテル鎖におけるモノマー単位の順序は、最終生成物においてブロック状の分布または統計的分布または段階的分布となる。
【0073】
本発明による方法によってポリブタジエンにペンダントポリエーテル鎖が構成されるが、これは構造の構築およびモル質量に関して適切かつ再現可能に製造され得ることを特徴とする。
【0074】
モノマー単位の配列は、添加の順序によって広い範囲で可変的に設計することができる。
【0075】
ペンダントポリエーテル残基のモル質量は、本発明による方法に従って広い範囲で変化させ、工程b)からの少なくとも1つの投入されるヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)のOH基に対する、添加するモノマーのモル比によって適切かつ再現可能に制御することができる。
【0076】
本発明に従って製造されるポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)は、好ましくは、式(3a)、(3b)および(3c)
【化4】
に従い、エーテル基を介してポリブタジエン骨格に結合した残基Bを有することを特徴とする。
【0077】
工程b)について上に説明したように、式(3a)、(3b)および(3c)中の残基Aは、化合物A-OH、すなわち工程b)において使用されるヒドロキシ官能性化合物(D)に由来する。同様に上に説明したように、工程b)では2つの事象、すなわちA≠HまたはA=Hを区別する必要がある。第1の事象では、すなわちA≠Hの場合、式(3a)、(3b)および(3c)中の残基Aは、式(2a)、(2b)および(2c)中の残基Aと同一である。第2の事象では、すなわちA=Hの場合、式(3a)、(3b)および(3c)中の残基Aは、それぞれ互いに独立して、Hまたは残基Bである。例えば1~6個の炭素原子を有する単官能性の脂肪族アルコールをヒドロキシ官能性化合物(D)として使用する場合、Aは1~6個の炭素原子を有するアルキル残基である。例えばカルボン酸をヒドロキシ官能性化合物(D)として使用する場合、Aはアシル残基である。しかしながら、水をヒドロキシ官能性化合物(D)として使用する場合、式(3a)、(3b)および(3c)中のAは、1つ以上のエポキシ官能性化合物(F)により変換される場合に残基Bであり、変換されない場合にAは水素のままである。したがって、変換されたペンダントヒドロキシ基のそれぞれから、ちょうど1つのペンダント残基-O-Bが生じる。残基Bは、この場合も、使用される少なくとも1つのエポキシ官能性化合物(F)の1つ以上のモノマー、好ましくは幾つかのモノマーから構成される。
【0078】
本発明に関して、原則として当業者に既知の全てのアルコキシル化触媒、例えばアルカリ水酸化物、アルカリ金属アルコレート、アミン、グアニジン、アミジン等の塩基性触媒、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、さらにはSnCl4、SnCl2、SnF2、BF3およびBF3複合体等の酸性触媒およびルイス酸触媒、ならびに複合金属シアン化物(DMC)触媒を使用することができる。
【0079】
エポキシ供給前、すなわち使用される少なくとも1つのエポキシ官能性化合物(F)の添加前に、スターターおよび触媒で部分的に満たされた反応器を、例えば窒素で不活性化する。これは、例えば排気および窒素の供給を交互に繰り返すことによって行われる。窒素の最後の圧入後に反応器を200mbar未満に排気することが有利である。したがって、最初の量のエポキシモノマーの添加は、好ましくは排気された反応器において行われる。モノマーの注入は、放出された反応熱を放散し、予め選択された反応温度を維持するために撹拌し、場合により冷却しながら行われる。スターターとして少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)が用いられ、または下にさらに説明するように、本発明による方法に従って既に製造されたポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)をスターターとして使用することもできる。
【0080】
DMC触媒作用
好ましくは、亜鉛/コバルト-DMC触媒、特にヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛を含有するものを使用する。好ましくは、米国特許第5158922号明細書、米国特許出願公開第20030119663号明細書、国際公開第01/80994号に記載されているDMC触媒を使用する。触媒はアモルファスであっても、または結晶性であってもよい。
【0081】
触媒濃度が、生じる生成物の全質量に対して、好ましくは>0wppm~1000wppm、好ましくは>0wppm~700wppm、特に好ましくは10wppm~500wppmであることが好ましい。
【0082】
好ましくは、触媒は反応器に一度のみ投入される。触媒は清浄であり、乾燥し、DMC触媒を阻害する恐れがある塩基性不純物を含まないことが好ましい。触媒量は、好ましくは、方法に十分な触媒活性が得られるように設定される。触媒は固体として、または触媒懸濁液の形態で投入することができる。懸濁液を使用する場合、OH官能性スターターが懸濁化剤として特に適している。
【0083】
DMC触媒による変換を開始するには、初めに、好ましくはアルキレンオキシドの群から選択される少なくとも1つのエポキシ官能性化合物(F)の一部、特にプロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドで触媒を活性化することが有利であり得る。アルコキシル化反応の開始後に、モノマーの連続添加を始めることができる。
【0084】
工程c)のDMC触媒による変換の場合の反応温度は、好ましくは60℃~200℃、さらに好ましくは90℃~160℃、特に好ましくは100℃~140℃である。
【0085】
工程c)のDMC触媒による変換の場合の反応器の内圧は、好ましくは0.02bar~100bar、さらに好ましくは0.05bar~20bar、特に好ましくは0.1bar~10bar(絶対)である。
【0086】
特に好ましくは、工程c)のDMC触媒による変換を100℃~140℃の温度および0.1bar~10barの圧力で行う。
【0087】
変換は、例えば粘度を低下させるために適切な溶媒中で行うことができる。エポキシ付加の終了後に、好ましくは変換の完了のために後続反応が続いて行われる。後続反応は例えば、反応物を添加することなく、反応条件(すなわち、例えば温度の維持)にてさらに反応させることで行うことができる。DMC触媒は、一般に反応混合物中に残留する。
【0088】
変換を行った後、未反応のエポキシド、および場合によっては更なる揮発性の構成要素を真空蒸留、水蒸気ストリッピングもしくはガスストリッピング、または他の脱臭方法によって除去することができる。存在する可能性がある濁りを除去するために、最終生成物を最後に<100℃で濾過する。
【0089】
塩基性触媒作用
本発明によると、DMC触媒に加えて塩基性触媒を工程c)で使用することもできる。特に、固体としてまたはメタノール溶液の形態で添加されるナトリウムメタノレートおよびカリウムメタノレート等のアルカリ金属アルコレートが適切である。さらに、全てのアルカリ水酸化物、特に水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムを、固体としても、例えば水溶液またはアルコール溶液としても使用することができる。さらに、本発明によると、塩基性窒素化合物、好ましくはアミン、グアニジンおよびアミジン、特に好ましくはトリメチルアミンおよびトリエチルアミン等の第三級アミンを使用することができる。
【0090】
塩基性触媒をスターターのOH基の量に対して>0モル%~100モル%、好ましくは>0モル%~50モル%、特に好ましくは3モル%~40モル%の濃度で使用することが好ましい。
【0091】
工程c)の塩基性触媒による変換の場合の反応温度は、好ましくは80℃~200℃、さらに好ましくは90℃~160℃、特に好ましくは100℃~160℃である。
【0092】
工程c)の塩基性触媒による変換の場合の反応器の内圧は、好ましくは0.2bar~100bar、さらに好ましくは0.5bar~20bar、特に好ましくは1bar~10bar(絶対)である。
【0093】
特に好ましくは、工程c)の塩基性触媒による変換を100℃~160℃の温度および1bar~10barの圧力で行う。
【0094】
変換は、任意に適切な溶媒中で行うことができる。エポキシ付加の終了後に、好ましくは変換の完了のために後続反応が続いて行われる。後続反応は例えば、反応物を添加することなく、反応条件にてさらに反応させることで行うことができる。変換を行った後、未反応のエポキシド、および場合によっては更なる揮発性の構成要素を真空蒸留、水蒸気ストリッピングもしくはガスストリッピング、または他の脱臭方法によって除去することができる。アミン等の揮発性触媒が、ここで除去される。
【0095】
塩基性粗生成物の中和のためにリン酸もしくは硫酸等の酸、または酢酸および乳酸等のカルボン酸を添加する。リン酸および乳酸の水溶液の使用が好ましい。それぞれの酸の使用量は、先に使用された塩基性触媒の量に応じる。ペンダントポリエーテル残基を有する塩基性ポリブタジエンを、酸の存在下にて、好ましくは40℃~95℃で撹拌した後、<100mbarおよび80℃~130℃での真空蒸留において乾留する。最後に、中和生成物を好ましくは<100℃で濾過し、沈殿した塩を除去する。
【0096】
本発明による最終生成物が<0.2%の含水率(最終生成物の全質量に対する質量分率として表される)および<0.5mg KOH/gの酸価を有し、実質的にホスフェートを含まないことが好ましい。
【0097】
スターターとしての生成物
1回の反応段階、特にアルコキシル化工程だけで最終生成物の所望のモル質量を達成することは常に可能とは限らない。特に、長いポリエーテル側鎖が所望され、かつ/または工程b)からのスターターが高いOH官能性を有する場合、多量のエポキシモノマーを添加する必要がある。これが反応器の形状によって許容されないこともある。本発明に従って製造された、工程c)からのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)は、ペンダントポリエーテル残基の末端にそれぞれOH基を有するため、それ自体がより高分子の下流生成物の構築のためのスターターとして適している。本発明に関して、これらは、より長いポリエーテル残基を有するポリブタジエンの合成のための前駆体および出発化合物となる。したがって、少なくとも1つのエポキシ官能性化合物(F)の変換は、工程c)において幾つかの部分工程で行うことができる。
【0098】
工程c)に従い、DMC触媒作用を用いて製造された生成物は、本発明によると、DMC触媒作用を用いるか、または上述の塩基性もしくは酸性触媒の1つを使用して、エポキシモノマーを再び添加することで任意にアルコキシル化度を高める(aufalkoxyliert)ことができる。任意に、例えば鎖延長時の反応速度を上げるために、更なるDMC触媒を添加してもよい。
【0099】
同様に、工程c)からの塩基触媒作用下で製造された生成物は、任意に塩基性触媒作用、酸性触媒作用またはDMC触媒作用を用いて、より高いモル質量までアルコキシル化することができる。工程c)では、塩基性前駆体をさらに塩基触媒作用によりモノマーで変換することが意図される場合、中和を行わないことが有利である。任意に、例えば鎖延長時の反応速度を上げるために、更なる塩基性触媒を添加してもよい。
【0100】
任意の工程d)
任意の更なる工程d)では、少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)を、少なくとも1つのエンドキャッピング試薬(H)により、エンドキャップされたポリエーテル残基を有する少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(K)に変換する。
【0101】
ここでは、末端ヒドロキシル基を有するポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)の残基Bの末端をエステル基、エーテル基、ウレタン基および/またはカーボネート基にさらに変換する。ポリエーテルのエンドキャッピング、例えばカルボン酸およびカルボン酸無水物によるエステル化、特に無水酢酸を用いたアセチル化、ハロゲン化炭化水素によるエーテル化、特にウィリアムソンエーテル合成の原理に従う塩化メチルによるメチル化、OH基とイソシアネート、特にステアリルイソシアネート等のモノイソシアネートとの反応によるウレタン化、ならびに炭酸ジメチルおよび炭酸ジエチルでの変換による炭酸化は、当業者に既知である。
【0102】
任意の工程e)
任意の工程e)では、少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)を明色化する。
【0103】
任意の工程d)に続いて任意の工程e)を行う場合、エンドキャップされたポリエーテル残基を有する少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(K)が明色化される。これに対し、任意の工程d)を行わない場合、本発明による方法の工程c)に続いて任意の工程e)を行い、少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)を明色化する。明色化は例えば、好ましくは適切な溶媒中の活性炭の添加、または過酸化水素での処理によって行うことができる。明色化は、好ましくはガードナー色数(DIN EN ISO 4630に準拠して決定される)によって確認することができる。この場合、ポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)のガードナー色数が、明色化によって少なくとも1、好ましくは少なくとも2低下することが好ましい。最大で3、特に最大で2.5のガードナー色数を有するポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)が特に好ましい。
【0104】
反応器
本発明による方法の反応器としては、原則として、反応および起こり得る発熱(Waermetoenung)を制御することが可能な全ての適切な反応器のタイプを使用することができる。反応制御は、プロセス技術上既知の方法にて連続的、半連続的、あるいはバッチ式で行うことができ、既存の生産技術設備に柔軟に適合させることができる。従来の撹拌槽反応器以外に、国際公開第01/062826号に記載されているような気相および内部熱交換チューブを備えるジェットループ反応器を使用することもできる。さらに、無気相ループ反応器を使用することができる。
【0105】
ポリエーテル修飾ポリブタジエン
さらに、本発明による方法によって製造することができるような櫛位置の(ペンダント)ポリエーテル残基で修飾されたポリブタジエンが本発明の主題である。
【0106】
したがって、本発明の更なる主題は、本発明による方法によって得ることができるポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)である。
【0107】
好ましくは、ポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)は、櫛位置の(ペンダント)ポリエーテル残基で修飾された直鎖状ポリブタジエンである。したがって、ポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)が、直鎖状ポリブタジエン骨格とペンダントポリエーテル残基とを有することが好ましい。
【0108】
同様に、本発明の更なる主題は、好ましくは本発明による方法によって得ることができるポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)であり、ポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)が、2価の残基
【化5】
からなる群から選択される反復単位を含むことを特徴とし、
ここで、
Aは、それぞれ互いに独立して、1価の有機残基または水素残基であり、好ましくは、それぞれ互いに独立して、1~6個の炭素原子を有する1価の炭化水素残基からなる群から選択され、
特に好ましくは、それぞれ互いに独立して、1~4個の炭素原子を有するアルキル残基からなる群から選択され、
Bは、それぞれ互いに独立して、式(4a)
【化6】
の残基からなる群から選択され、
好ましくは、それぞれ互いに独立して、式(4b)
【化7】
の残基からなる群から選択され、
特に好ましくは、それぞれ互いに独立して、式(4c)
【化8】
の残基からなる群から選択され、
R
1は、それぞれ互いに独立して、1~16個の炭素原子を有する1価の炭化水素残基からなる群から選択され、
好ましくは、それぞれ互いに独立して、1~16個の炭素原子を有するアルキル残基またはフェニル残基であり、
特に好ましくは、それぞれ互いに独立して、メチル残基、エチル残基またはフェニル残基であり、
R
2は、式-CH
2-O-R
3の残基であり、
R
3は、それぞれ互いに独立して、3~18個の炭素原子を有する1価の炭化水素残基からなる群から選択され、
好ましくは、それぞれ互いに独立して、アリル残基、ブチル残基、8~15個の炭素原子を有するアルキル残基、または1~4個の炭素原子を有する炭化水素残基から選択される1価の残基で置換されていてもよいフェニル残基であり、
特に好ましくは、tert-ブチルフェニル残基またはo-クレジル残基であり、
R
4は、それぞれ互いに独立して、1~18個の炭素原子を有する1価の有機残基または水素、好ましくは水素であり、
m、n、o、pおよびqは、それぞれ互いに独立して、0~300、好ましくは0~200、特に好ましくは0~100であるが、ただし、m、n、o、pおよびqの合計は、1より大きく、好ましくは5より大きく、特に好ましくは10より大きく、
反復単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)、ならびに残基B中の反復単位のあらゆる並べ替えが含まれる。
【0109】
この場合、残基R1、R2、R3およびR4は、それぞれ互いに独立して、直鎖状または分岐、飽和または不飽和、脂肪族または芳香族、置換または非置換であり得る。
【0110】
式(4a)ではR=R
1もしくはR
2であり、または式(4b)および(4c)ではR=CH
3である、一般的表記
【化9】
は、この場合、式
【化10】
の単位と同様、式
【化11】
の単位も表すが、式
【化12】
の単位を表すのが好ましい。
【0111】
式(4a)中の一般的表記
【化13】
は、この場合、式
【化14】
の単位と同様、式
【化15】
の単位も表すが、式
【化16】
の単位を表すのが好ましい。
【0112】
さらに好ましくは、残基R4は、それぞれ互いに独立して、1~18個の炭素原子を有する1価の炭化水素残基、アシル残基-C(=O)R5、ウレタン残基-C(=O)NH-R6、カーボネート残基-C(=O)O-R7および水素からなる群から選択され、さらに好ましくは、R4は、それぞれ互いに独立して、1~18個の炭素原子を有するアルキル残基、1~18個の炭素原子を有するアルキレン残基、アシル残基-C(=O)R5、ウレタン残基-C(=O)NH-R6、カーボネート残基-C(=O)O-R7および水素からなる群から選択され、特に好ましくは、R4は水素である。
【0113】
R5は、それぞれ互いに独立して、1~18個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子を有するアルキル残基またはアルケニル残基、特に好ましくはメチル残基である。
【0114】
R6は、それぞれ互いに独立して、1~18個の炭素原子、好ましくは6~18個のC原子を有するアルキル残基またはアリール残基である。
【0115】
R7は、それぞれ互いに独立して、1~18個の炭素原子、好ましくは1~2個の炭素原子を有するアルキル残基である。
【0116】
この場合、少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)の全ての反復単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)の合計で除算した全ての反復単位(U)、(V)および(W)の合計が>0%~70%、好ましくは1%~50%、さらに好ましくは2%~40%、さらにより好ましくは3%~30%、特に好ましくは4%~20%であることが好ましい。
【0117】
すなわち、反復単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)の全体の>0%~70%、好ましくは1%~50%、さらに好ましくは2%~40%、さらにより好ましくは3%~30%、特に好ましくは4%~20%がポリエーテル修飾されている。
【0118】
ポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)が、ペンダントポリエーテル残基を備える式(5)
【化17】
のポリブタジエンであることが好ましく、ここで、式(5)に示される全ての反復単位の合計に対するポリエーテル修飾された式(5)に示される反復単位の割合が>0%~70%、好ましくは1%~50%、さらに好ましくは2%~40%、さらにより好ましくは3%~30%、特に好ましくは4%~20%であり、この割合は、[(d+e+f)/(a+b+c+d+e+f)]×100%に従って算出される。
【0119】
添字a、b、c、d、eおよびfを有する反復単位は任意に、統計上ポリブタジエン鎖全体に分布している。したがって、記載される全ての添字の値は、平均値として理解すべきである。
【0120】
ポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)のポリブタジエン部分の数平均モル質量Mn、重量平均モル質量Mwおよび多分散性は任意である。この場合、ポリブタジエン部分は、方法に従って使用されたポリブタジエン(A)に由来するポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)の部分と理解される。式(5)においては、ポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)のポリブタジエン部分は、残基A-OおよびB-Oを除いたポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)から生じるポリマーの部分と理解すべきである。
【0121】
ポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)のポリブタジエン部分の数平均モル質量Mnが200g/mol~20000g/mol、好ましくは500g/mol~10000g/mol、特に好ましくは700g/mol~5000g/molであることが好ましい。
【0122】
代替的には、ポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)のポリブタジエン部分の数平均モル質量Mnが2100g/mol~20000g/mol、特に好ましくは2200g/mol~10000g/mol、極めて特に好ましくは2300g/mol~5000g/molであることが好ましい。
【0123】
この場合、ポリブタジエン部分の数平均モル質量Mnは、基礎となるポリブタジエン(A)の数平均モル質量Mnとして定義される。
【0124】
ポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)が数平均で5~360個、特に好ましくは10~180個、極めて特に好ましくは15~90個の反復単位を有することがさらに好ましく、ここで、反復単位は(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)からなる群から選択される。
【0125】
代替的には、ポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)が数平均で35~360個、特に好ましくは40~180個、極めて特に好ましくは45~90個の反復単位を有することが好ましく、ここで、反復単位は(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)からなる群から選択される。
【0126】
さらに好ましくは、ポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)は、含まれる二重結合の0%~80%、好ましくは0%~30%、特に好ましくは0%~10%、極めて特に好ましくは0%~5%が1,2-ビニル二重結合であり、含まれる二重結合の20%~100%、好ましくは70%~100%、特に好ましくは90%~100%、極めて特に好ましくは95%~100%が1,4-二重結合であることを特徴とする。
【0127】
したがって、本発明に関して、二重結合を有する反復単位の総数(a+b+cの合計)に対して0%~80%の1,2-ビニル二重結合(添字a)および20%~100%の1,4-二重結合(添字bおよびcの合計)の含有率、好ましくは0%~30%の1,2-ビニル二重結合および70%~100%の1,4-二重結合、特に好ましくは0%~10%の1,2-ビニル二重結合および90%~100%の1,4-二重結合、極めて特に好ましくは0%~5%の1,2-ビニル二重結合および95%~100%の1,4-二重結合を有する式(5)の化合物が好ましい。1,4-trans-二重結合(添字b)および1,4-cis-二重結合(添字c)の比率は任意である。
【0128】
反復単位d+e+fの合計に対して添字dを有する反復単位の含有率が>95%の式(5)の化合物が特に好ましい。反復単位eおよびfの互いに対する比率は任意である。
【0129】
上記のポリブタジエンであるEvonik Industries AG / Evonik Operations GmbHのPolyvest(登録商標) 110およびPolyvest(登録商標) 130、ならびにSynthomer PLCのLithene ultra ALおよびLithene ActiV 50に由来するポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)が極めて好ましい。
【0130】
残基Bのモル質量および多分散性は任意である。しかしながら、残基Bの平均モル質量が100g/mol~20000g/mol、好ましくは200g/mol~15000g/mol、特に好ましくは400g/mol~10000g/molであることが好ましい。残基Bの平均モル質量は、使用したヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)のOH基の数に対する使用したモノマーの秤量量から算出することができる。したがって、例えば40gのエチレンオキシドを使用し、使用したヒドロキシ官能性ポリブタジエン(E)の量が0.05molのOH基を有する場合、残基Bの平均モル質量は800g/molである。
【0131】
ポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)は、組成およびモル質量に応じて、液体、ペースト状または固体である。
【0132】
ポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)の数平均モル質量Mnは、好ましくは1000g/mol~6000g/mol、さらに好ましくは1500g/mol~5000g/mol、特に好ましくは2000g/mol~4000g/molである。
【0133】
それらの多分散性は、広範に変化する。PPG標準に対するGPC法による少なくとも1つのポリエーテル修飾ポリブタジエン(G)または(K)の多分散性は、好ましくはMw/Mnが1.5~10、さらに好ましくは2~9、特に好ましくは3~8である。
【0134】
以下に記載する実施例では、本明細書全体および特許請求の範囲から適用範囲が明らかな本発明を、実施例で言及される実施形態に限定することなく、本発明を例示的に説明する。
【0135】
実施例:
一般的方法:
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC):
多分散性(Mw/Mn)、重量平均モル質量(Mw)および数平均モル質量(Mn)の決定のためのGPC測定は、以下の測定条件下で行った:カラムの組合せSDV 1000/10000Å(長さ65cm)、温度30℃、移動相としてTHF、流量1ml/分、試料濃度10g/l、RI検出器、ポリプロピレングリコール標準に対して評価。
【0136】
ポリブタジエン中の1,4-cis-単位、1,4-trans-単位および1,2-単位の含有率の決定:
1,4-cis-単位、1,4-trans-単位および1,2-単位の含有率の決定は、1H-NMR分光法によって行うことができる。この方法は、当業者にはよく知られている。
【0137】
ポリブタジエン中のエポキシ基の含有率(エポキシ含有率、エポキシ化度)の決定:
エポキシ基の含有率の決定は、13C-NMR分光法によって行った。BrukerのAvance 400型NMR分光計を使用した。このために試料を重クロロホルムに溶解した。エポキシ含有率は、試料に含まれる全ての反復単位全体に対するエポキシ化ブタジエン単位のモル%での割合として定義される。これは、エポキシ化ポリブタジエンのエポキシ基の数を、使用されるポリブタジエンの二重結合の数で除算したものに相当する。
【0138】
酸価の決定:
酸価の決定は、DIN EN ISO 2114に準拠した滴定法に従って行った。
【0139】
明色化の決定:
明色化は、ガードナー色数(DIN ISO 4630に準拠して決定される)の変化に基づいて確認した。
【0140】
合成例:
工程a)、エポキシ化ポリブタジエンの製造
実施例A1:
エポキシ化ポリブタジエンの製造には、x=1%、y=24%およびz=75%の構造を有する式(1)のポリブタジエン(Polyvest(登録商標) 110)を使用した。従来技術に従い、窒素雰囲気下の20L反応器に、4000gのクロロホルム中の1600gのPolyvest(登録商標) 110および86.4gの濃ギ酸を室温で投入した。続いて、320gの30%H2O2溶液(水溶液の全質量に対して30重量%のH2O2)をゆっくりと滴加した後、溶液を50℃に7時間加熱した。反応の終了後に、室温まで冷却し、有機相を分離し、蒸留H2Oでさらに4回洗浄した。余分なクロロホルムおよび残留水を留去した。1556gの生成物が得られ、これを1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
13C-NMRによる評価から、約8.9%の二重結合のエポキシ化度が判明した。
Mw=4669g/mol;Mn=1931g/mol;Mw/Mn=2.4
【0141】
実施例A2:
実施例A1に記載の方法に従い、2L四つ口フラスコに、200gのクロロホルム中の200gのPolyvest(登録商標) 110および6.5gの濃ギ酸を投入し、24gの30%H2O2溶液(水溶液の全質量に対して30重量%のH2O2)と混合した。50℃で7時間後に、相分離、蒸留H2Oでの洗浄およびその後の蒸留により191gのエポキシ化ポリブタジエンが得られ、13C-NMR分析によると二重結合のエポキシ化度は約6.7%であった。
Mw=4624g/mol;Mn=2022g/mol;Mw/Mn=2.3
【0142】
実施例A3:
実施例A1に記載の方法に従い、2L四つ口フラスコに、200gのクロロホルム中の200gのPolyvest(登録商標) 110および19.5gの濃ギ酸を投入し、72gの30%H2O2溶液(水溶液の全質量に対して30重量%のH2O2)と混合した。50℃で7時間後に、相分離、蒸留H2Oでの洗浄およびその後の蒸留により196gのエポキシ化ポリブタジエンが得られ、13C-NMR分析によると二重結合のエポキシ化度は約16.2%であった。
Mw=4943g/mol;Mn=2083g/mol;Mw/Mn=2.4
【0143】
実施例A4:
実施例A1に記載の方法に従い、2L四つ口フラスコに、200gのクロロホルム中の200gのPolyvest(登録商標) 110および24.2gの濃ギ酸を投入し、89.3gの30%H2O2溶液(水溶液の全質量に対して30重量%のH2O2)と混合した。50℃で7時間後に、相分離、蒸留H2Oでの洗浄およびその後の蒸留により204gのエポキシ化ポリブタジエンが得られ、13C-NMR分析によると二重結合のエポキシ化度は約21.0%であった。
Mw=4843g/mol;Mn=2025g/mol;Mw/Mn=2.4
【0144】
実施例A5:
実施例A1に記載の方法に従い、2L四つ口フラスコに、200gのトルエン中の200gのPolyvest(登録商標) 110および10.8gの濃ギ酸を投入し、40gの30%H2O2溶液(水溶液の全質量に対して30重量%のH2O2)と混合した。50℃で10時間後に、相分離、飽和NaHCO3溶液での洗浄およびその後の蒸留により172gのエポキシ化ポリブタジエンが得られ、13C-NMR分析によると二重結合のエポキシ化度は約7.6%であった。
Mw=4634g/mol;Mn=2020g/mol;Mw/Mn=2.3
【0145】
実施例A6:
実施例A1に記載の方法に従い、20L反応器に、x=1%、y=22%およびz=77%の構造を有する式(1)のポリブタジエン(Polyvest(登録商標) 130)を2000g入れ、5000gのクロロホルム中の191gの濃ギ酸を投入し、710gの30%H2O2溶液(水溶液の全質量に対して30重量%のH2O2)と混合した。50℃で7時間後に、相分離、蒸留H2Oでの洗浄およびその後の蒸留により1980gのエポキシ化ポリブタジエンが得られ、13C-NMR分析によると二重結合のエポキシ化度は約14.6%であった。
Mw=15333g/mol;Mn=3455g/mol;Mw/Mn=4.4
【0146】
実施例A7:
実施例A1に記載の方法に従い、2L四つ口フラスコに、800gのクロロホルム中の800gのPolyvest(登録商標) 110および43.2gの濃ギ酸を投入し、160gの30%H2O2溶液(水溶液の全質量に対して30重量%のH2O2)と混合した。50℃で5時間後に、相分離、蒸留H2Oでの洗浄およびその後の蒸留により755gのエポキシ化ポリブタジエンが得られ、13C-NMR分析によると二重結合のエポキシ化度は約8.7%であった。
Mw=4593g/mol;Mn=1975g/mol;Mw/Mn=2.3
【0147】
実施例A8:
実施例A1に記載の方法に従い、2L四つ口フラスコに、x=40%、y+z=60%の構造を有する式(1)のポリブタジエン(Lithene ultra AL)を200g入れ、200gのクロロホルム中の122gの濃ギ酸を投入し、299gの30%H2O2溶液(水溶液の全質量に対して30重量%のH2O2)と混合した。50℃で7時間後に、相分離、蒸留H2Oでの洗浄およびその後の蒸留により218gのエポキシ化ポリブタジエンが得られ、13C-NMR分析によると二重結合のエポキシ化度は約60%であった。
Mw=1670g/mol;Mn=832g/mol;Mw/Mn=2.0
【0148】
実施例A9:
実施例A1に記載の方法に従い、2L四つ口フラスコに、x=70%、y+z=30%の構造を有する式(1)のポリブタジエン(Lithene ActiV 50)を200g入れ、200gのクロロホルム中の61gの濃ギ酸を投入し、151gの30%H2O2溶液(水溶液の全質量に対して30重量%のH2O2)と混合した。50℃で6時間後に、相分離、蒸留H2Oでの洗浄およびその後の蒸留により205gのエポキシ化ポリブタジエンが得られ、13C-NMR分析によると二重結合のエポキシ化度は約30%であった。
Mw=1821g/mol;Mn=1045g/mol;Mw/Mn=1.7
【0149】
工程b)、OH官能性ポリブタジエンの製造
実施例B1:
約21%のヒドロキシル化度を有するヒドロキシル化ポリブタジエンの製造には、実施例A4で製造したエポキシ化ポリブタジエンを使用した。ここで、ヒドロキシル化度は、OH官能性ポリブタジエンのOH基の数を、工程a)で使用したポリブタジエンの二重結合の数で除算したものである。製造のために、窒素雰囲気下の100mL四つ口フラスコに45gのn-プロパノール中の18gのエポキシ化ポリブタジエンを投入し、n-プロパノール(1%溶液)に溶解した、(エポキシ化ポリブタジエンの質量に対して)80wppmのトリフルオロメタンスルホン酸と撹拌しながら混合した。続いて、混合物を70℃に加熱し、この温度で8時間撹拌した。反応中に反応混合物が透明になる。反応終了後に、溶液を室温まで冷却し、0.8mgの固体NaHCO3を添加して中和した後、濾過した。過剰なアルコールを真空で留去した。蒸留によって回収されたアルコールは、その後の合成に再使用することができる。16.9gの茶色がかった生成物が得られ、これを1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
13C-NMRによる評価から、全てのエポキシ基の完全な変換が判明し、約21%のヒドロキシル化度が得られた。
Mw=14463g/mol;Mn=2789g/mol;Mw/Mn=5.2
【0150】
実施例B2:
約8.9%のヒドロキシル化度を有するヒドロキシル化ポリブタジエンの製造のために、実施例B1に記載の方法に従い、45gのn-プロパノール中の実施例A1で製造したエポキシ化ポリブタジエン20gを投入し、n-プロパノール(1%溶液)に溶解した、(エポキシ化ポリブタジエンの質量に対して)80wppmのトリフルオロメタンスルホン酸と撹拌しながら混合した。70℃で7時間撹拌した後、反応混合物を室温(RT)にて0.9mgの固体NaHCO3で中和し、濾過し、過剰なアルコールを真空で留去した。18gの茶色がかった生成物が得られ、これを1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
13C-NMRによる評価から、全てのエポキシ基の完全な変換が判明し、約8.9%のヒドロキシル化度が得られた。
Mw=28138g/mol;Mn=2534g/mol;Mw/Mn=11.1
【0151】
実施例B3:
約21%のヒドロキシル化度を有するヒドロキシル化ポリブタジエンの製造のために、実施例B1に記載の方法に従い、45gのイソ-プロパノール中の実施例A4で製造したエポキシ化ポリブタジエン18gを投入し、イソ-プロパノール(1%溶液)に溶解した、(エポキシ化ポリブタジエンの質量に対して)80wppmのトリフルオロメタンスルホン酸と撹拌しながら混合した。70℃で7時間撹拌した後、反応混合物をRTにて0.8mgの固体NaHCO3で中和し、濾過し、過剰なアルコールを真空で留去した。16.4gの茶色がかった生成物が得られ、これを1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
13C-NMRによる評価から、全てのエポキシ基の完全な変換が判明し、約21%のヒドロキシル化度が得られた。
Mw=14012g/mol;Mn=2534g/mol;Mw/Mn=5.5
【0152】
実施例B4:
約21%のヒドロキシル化度を有するヒドロキシル化ポリブタジエンの製造のために、実施例B1に記載の方法に従い、135gのイソ-ブタノール中の実施例A4で製造したエポキシ化ポリブタジエン54gを投入し、イソ-プロパノール(1%溶液)に溶解した、(エポキシ化ポリブタジエンの質量に対して)80wppmのトリフルオロメタンスルホン酸と撹拌しながら混合した。70℃で5時間撹拌した後、反応混合物をRTにて2.4mgの固体NaHCO3で中和し、濾過し、過剰なアルコールを真空で留去した。50gの茶色がかった生成物が得られ、これを1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
13C-NMRによる評価から、全てのエポキシ基の完全な変換が判明し、約21%のヒドロキシル化度が得られた。
Mw=11357g/mol;Mn=2690g/mol;Mw/Mn=4.2
【0153】
実施例B5:
約8.9%のヒドロキシル化度を有するヒドロキシル化ポリブタジエンの製造のために、実施例B1に記載の方法に従い、20L反応器に、実施例B6で蒸留によって回収された3150gのイソ-ブタノール中の実施例A1で製造したエポキシ化ポリブタジエン1500gを投入し、イソ-ブタノール(1%溶液)に溶解した、(エポキシ化ポリブタジエンの質量に対して)80wppmのトリフルオロメタンスルホン酸と撹拌しながら混合した。70℃で5時間撹拌した後、反応混合物をRTにて67.5mgの固体NaHCO3で中和し、濾過し、過剰なアルコールを真空で留去した。1380gの茶色がかった生成物が得られ、これを1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
13C-NMRによる評価から、全てのエポキシ基の完全な変換が判明し、約8.9%のヒドロキシル化度が得られた。
Mw=8597g/mol;Mn=2306g/mol;Mw/Mn=3.7
【0154】
実施例B6:
約14.6%のヒドロキシル化度を有するヒドロキシル化ポリブタジエンの製造のために、実施例B1に記載の方法に従い、20L反応器に4500gのイソ-ブタノール中の実施例A6で製造したエポキシ化ポリブタジエン1600gを投入し、イソ-ブタノール(1%溶液)に溶解した、(エポキシ化ポリブタジエンの質量に対して)80wppmのトリフルオロメタンスルホン酸と撹拌しながら混合した。70℃で10時間撹拌した後、反応混合物をRTにて72mgの固体NaHCO3で中和し、濾過し、過剰なアルコールを真空で留去した。1470gの茶色がかった生成物が得られ、これを1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
13C-NMRによる評価から、全てのエポキシ基の完全な変換が判明し、約14.6%のヒドロキシル化度が得られた。
Mw=51674g/mol;Mn=4081g/mol;Mw/Mn=12.7
【0155】
実施例B7:
約8.7%のヒドロキシル化度を有するヒドロキシル化ポリブタジエンの製造のために、実施例B1に記載の方法に従い、2L反応器に720gのイソ-ブタノール中の実施例A7で製造したエポキシ化ポリブタジエン720gを投入し、イソ-ブタノール(1%溶液)に溶解した、(エポキシ化ポリブタジエンの質量に対して)80wppmのトリフルオロメタンスルホン酸と撹拌しながら混合した。70℃で7時間撹拌した後、反応混合物を10mlの飽和NaHCO3水溶液およびクロロホルムと混合物が透明になるまで室温で混合した。1.5時間撹拌した後、濾過し、過剰なアルコール、水およびクロロホルムを真空で留去した。742gの淡黄色の生成物が得られ、これを1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
13C-NMRによる評価から、全てのエポキシ基の完全な変換が判明し、約8.7%のヒドロキシル化度が得られた。
Mw=8674g/mol;Mn=2459g/mol;Mw/Mn=3.5
【0156】
実施例B8:
約60%のヒドロキシル化度を有するヒドロキシル化ポリブタジエンの製造のために、実施例B1に記載の方法に従い、500gのイソ-ブタノール中の実施例A8で製造したエポキシ化ポリブタジエン200gを投入し、イソ-ブタノール(1%溶液)に溶解した、(エポキシ化ポリブタジエンの質量に対して)80wppmのトリフルオロメタンスルホン酸と撹拌しながら混合した。70℃で6時間撹拌した後、反応混合物をRTにて9.0mgの固体NaHCO3で中和し、濾過し、過剰なアルコールを真空で留去した。318gの茶色がかった生成物が得られ、これを1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
13C-NMRによる評価から、全てのエポキシ基の完全な変換が判明し、約60%のヒドロキシル化度が得られた。
Mw=3140g/mol;Mn=1264g/mol;Mw/Mn=2.5
【0157】
実施例B9:
約30%のヒドロキシル化度を有するヒドロキシル化ポリブタジエンの製造のために、実施例B1に記載の方法に従い、375gのイソ-ブタノール中の実施例A9で製造したエポキシ化ポリブタジエン150gを投入し、イソ-ブタノール(1%溶液)に溶解した、(エポキシ化ポリブタジエンの質量に対して)80wppmのトリフルオロメタンスルホン酸と撹拌しながら混合した。70℃で7時間撹拌した後、反応混合物をRTにて6.8mgの固体NaHCO3で中和し、濾過し、過剰なアルコールを真空で留去した。192gの茶色がかった生成物が得られ、これを1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
13C-NMRによる評価から、全てのエポキシ基の完全な変換が判明し、約30%のヒドロキシル化度が得られた。
Mw=2972g/mol;Mn=1100g/mol;Mw/Mn=2.7
【0158】
工程c)、OH官能性ポリブタジエンのアルコキシル化
DMC触媒を用いたアルコキシル化:
実施例C1:
3リットルオートクレーブに、335gの実施例B5で製造したヒドロキシル化ポリブタジエンおよび0.45gのヘキサシアノコバルト酸亜鉛-DMC触媒を窒素下で投入し、撹拌しながら130℃に加熱した。存在する可能性がある揮発性成分を蒸留によって除去するために、反応器を30mbarの内圧まで排気した。DMC触媒の活性化のために41.0g分のプロピレンオキシドを供給した。15分後の反応の開始(反応器内圧の低下)後に、さらに144.3gのプロピレンオキシドを、130℃および最大0.6barの反応器内圧(絶対)で1時間かけて冷却下で連続添加した。130℃で30分間の後続反応に続いて脱気を行った。残留プロピレンオキシド等の揮発分を真空で留去した。生成物を80℃未満に冷却し、165.5gの部分量を抜き取った。この中粘度で橙色の濁ったアルコキシル化ポリブタジエンを1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
Mw=14310g/mol;Mn=2698g/mol;Mw/Mn=5.3
【0159】
反応器に残った量を再び130℃に加熱した後、126.4gのプロピレンオキシドを連続添加した。添加の完了および30分間の後続反応の後に再び脱気し、171.3gの生成物の更なる部分試料を取り出した。この中粘度で橙色の濁ったアルコキシル化ポリブタジエンを1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
Mw=13450g/mol;Mn=3139g/mol;Mw/Mn=4.3
【0160】
反応器に残った量を再び130℃に加熱した後、81.0gのプロピレンオキシドを連続添加した。添加の完了および30分間の後続反応の後に再び脱気し、391.3gの反応器の全内容物を抜き取った。この中粘度で橙色の濁ったアルコキシル化ポリブタジエンを1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
Mw=15430g/mol;Mn=3723g/mol;Mw/Mn=4.1
【0161】
実施例C2:
3リットルオートクレーブに、211gの実施例B5で製造したヒドロキシル化ポリブタジエンおよび0.26gのヘキサシアノコバルト酸亜鉛-DMC触媒を窒素下で投入し、撹拌しながら130℃に加熱した。存在する可能性がある揮発性成分を蒸留によって除去するために、反応器を30mbarの内圧まで排気した。DMC触媒の活性化のために、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとからなる等モル混合物28.0g分を供給した。20分後の反応の開始(反応器内圧の低下)後に、さらに74.3gのEO/PO混合物を、130℃および最大0.6barの反応器内圧(絶対)で40分かけて冷却下で連続添加した。130℃で30分間の後続反応に続いて脱気を行った。残留プロピレンオキシドおよびエチレンオキシド等の揮発分を真空で留去した。生成物を80℃未満に冷却し、54gの部分量を抜き取った。この中粘度で橙色の濁ったアルコキシル化ポリブタジエンを1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
Mw=13690g/mol;Mn=2547g/mol;Mw/Mn=5.4
【0162】
反応器に残った量を再び130℃に加熱した後、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとからなる等モル混合物84.7gを連続添加した。添加の完了および30分間の後続反応の後に再び脱気し、73.1gの生成物の更なる部分試料を取り出した。この中粘度で橙色の濁ったアルコキシル化ポリブタジエンを1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
Mw=13110g/mol;Mn=2868g/mol;Mw/Mn=4.6
【0163】
反応器に残った量を再び130℃に加熱した後、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとからなる等モル混合物66.7gを連続添加した。添加の完了および30分間の後続反応の後に再び脱気し、337.6gの反応器の全内容物を抜き取った。この中粘度で橙色の濁ったアルコキシル化ポリブタジエンを1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
Mw=15190g/mol;Mn=3845g/mol;Mw/Mn=4.0
【0164】
アルカリ触媒を用いたアルコキシル化:
実施例C3:
3リットルオートクレーブに、196.1gの実施例B5で製造したヒドロキシル化ポリブタジエンおよび11.1gの30%ナトリウムメタノレート溶液(溶液の全質量に対して30重量%のメタノール中のナトリウムメタノレート)を窒素下で投入し、50℃で1時間撹拌した。続いて、撹拌しながら115℃に加熱し、過剰なメタノールおよび存在する他の揮発性成分を蒸留によって除去するために、反応器を30mbarの内圧まで排気した。324gのプロピレンオキシドを、115℃および最大3.5barの反応器内圧(絶対)で6時間かけて冷却下で連続添加した。115℃で30分間の後続反応に続いて脱気を行った。残留プロピレンオキシド等の揮発分を真空で留去した。生成物を80℃未満に冷却した。51gの部分量を抜き取り、この中粘度で橙色の透明なアルコキシル化ポリブタジエンを乳酸で0.1mg KOH/gの酸価まで中和し、1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
Mw=18690g/mol;Mn=2888g/mol;Mw/Mn=6.5
【0165】
反応器に残った量を再び115℃に加熱した後、216gのプロピレンオキシドを連続添加した。添加の完了および30分間の後続反応の後に再び脱気し、95℃まで冷却し、30%H3PO4(溶液の全質量に対して30重量%の水中のH3PO4)で中和し、1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合した。水を真空蒸留で除去し、沈殿した塩を濾別した。0.1mg KOH/gの酸価を有する透明な生成物675gを単離し、これを窒素下で保管した。
Mw=22850g/mol;Mn=3160g/mol;Mw/Mn=7.2
【0166】
実施例C4:
3リットルオートクレーブに、197.3gの実施例B5で製造したヒドロキシル化ポリブタジエンおよび11.2gの30%ナトリウムメタノレート溶液(溶液の全質量に対して30重量%のメタノール中のナトリウムメタノレート)を窒素下で投入し、50℃で1時間撹拌した。続いて、撹拌しながら115℃に加熱し、過剰なメタノールおよび存在する他の揮発性成分を蒸留によって除去するために、反応器を30mbarの内圧まで排気した。82.5gのエチレンオキシドを、115℃および最大3.5barの反応器内圧(絶対)で45分かけて冷却下で連続添加した。115℃で30分間の後続反応に続いて脱気を行った。残留エチレンオキシド等の揮発分を真空で留去した。生成物を80℃未満に冷却し、49.7gの部分量を抜き取った。この室温で固体であり、橙色の透明なアルコキシル化ポリブタジエンを乳酸で0.1mg KOH/gの酸価まで中和し、1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
Mw=16100g/mol;Mn=2945g/mol;Mw/Mn=5.5
【0167】
反応器に残った量を再び115℃に加熱した後、68gのエチレンオキシドを連続添加した。添加の完了および30分間の後続反応の後に再び脱気し、95℃まで冷却した。59gの部分量を抜き取り、この室温で固体であり、橙色の透明なアルコキシル化ポリブタジエンを乳酸で0.1mg KOH/gの酸価まで中和し、1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
Mw=17410g/mol;Mn=3413g/mol;Mw/Mn=5.1
【0168】
反応器に残った量を再び115℃に加熱した後、54.4gのエチレンオキシドを連続添加した。添加の完了および30分間の後続反応の後に再び脱気し、95℃まで冷却した。280gの残留生成物を抜き取り、この室温で固体であり、橙色の透明なアルコキシル化ポリブタジエンを乳酸で0.1mg KOH/gの酸価まで中和し、1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
Mw=19000g/mol;Mn=3874g/mol;Mw/Mn=4.9
【0169】
実施例C5:
3リットルオートクレーブに、194gの実施例B5で製造したヒドロキシル化ポリブタジエンおよび11.0gの30%ナトリウムメタノレート溶液(溶液の全質量に対して30重量%のメタノール中のナトリウムメタノレート)を窒素下で投入し、50℃で1時間撹拌した。続いて、撹拌しながら115℃に加熱し、過剰なメタノールおよび存在する他の揮発性成分を蒸留によって除去するために、反応器を30mbarの内圧まで排気した。94.5gのエチレンオキシドおよび53.4gのプロピレンオキシドを、115℃および最大3.5barの反応器内圧(絶対)で5.5時間かけて冷却下で混合物として同時に連続添加した。115℃で30分間の後続反応に続いて脱気を行った。残留アルキレンオキシド等の揮発分を真空で留去した。生成物を80℃未満に冷却し、31.3gの部分量を抜き取った。この室温で液体であり、橙色の透明なアルコキシル化ポリブタジエンを乳酸で0.1mg KOH/gの酸価まで中和し、1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
Mw=16230g/mol;Mn=2810g/mol;Mw/Mn=5.8
【0170】
反応器に残った量を再び115℃に加熱した後、85.9gのエチレンオキシドおよび48.5gのプロピレンオキシドを混合物として同時に連続添加した。添加の完了および30分間の後続反応の後に再び脱気し、95℃まで冷却した。34.3gの部分量を抜き取り、この室温で液体であり、橙色の透明なアルコキシル化ポリブタジエンを乳酸で0.1mg KOH/gの酸価まで中和し、1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合し、窒素下で保管した。
Mw=19160g/mol;Mn=3014g/mol;Mw/Mn=6.4
【0171】
反応器に残った量を再び115℃に加熱した後、79.3gのエチレンオキシドおよび44.9gのプロピレンオキシドを混合物として同時に連続添加した。添加の完了および30分間の後続反応の後に再び脱気し、95℃まで冷却し、30%H3PO4で中和し、1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合した。水を真空蒸留で除去し、沈殿した塩を濾別した。0.1mg KOH/gの酸価を有する透明な生成物522gを単離し、これを窒素下で保管した。
Mw=24030g/mol;Mn=3251g/mol;Mw/Mn=7.4
【0172】
実施例C6:
3リットルオートクレーブに、208gの実施例B5で製造したヒドロキシル化ポリブタジエンおよび4.6gの固体カリウムメタノレートを窒素下で投入し、50℃で1時間撹拌した。続いて、撹拌しながら115℃に加熱し、存在する揮発性成分を蒸留によって除去するために、反応器を30mbarの内圧まで排気した。115gのプロピレンオキシドを、115℃および3.0barの反応器内圧(絶対)で2時間かけて冷却下で連続添加した。115℃で30分間の後続反応に続いて脱気を行った。残留プロピレンオキシド等の揮発分を真空で留去した。生成物を80℃未満に冷却し、乳酸で0.1mg KOH/gの酸価まで中和し、1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合した。室温で液体であり、茶色の透明なアルコキシル化ポリブタジエンが315g得られ、窒素下で保管した。
Mw=14350g/mol;Mn=2657g/mol;Mw/Mn=5.4
【0173】
実施例C7:
3リットルオートクレーブに、400gの実施例B7で製造したヒドロキシル化ポリブタジエンおよび20.3gの30%ナトリウムメタノレート溶液(溶液の全質量に対して30重量%のメタノール中のナトリウムメタノレート)を窒素下で投入し、50℃で1時間撹拌した。続いて、撹拌しながら115℃に加熱し、過剰なメタノールおよび存在する他の揮発性成分を蒸留によって除去するために、反応器を30mbarの内圧まで排気した。続いて、488gのプロピレンオキシドを、115℃および最大3.5barの反応器内圧(絶対)で6時間かけて冷却下で連続添加した。添加の完了および30分間の後続反応の後に再び脱気し、95℃まで冷却し、30%H3PO4(溶液の全質量に対して30重量%の水中のH3PO4)で中和し、1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合した。水を真空蒸留で除去し、沈殿した塩を濾別した。0.1mg KOH/gの酸価を有する、やや赤茶色の透明な生成物826gを単離し、これを窒素下で保管した。
Mw=14672g/mol;Mn=2740g/mol;Mw/Mn=5.4
【0174】
実施例C8:
3リットルオートクレーブに、250gの実施例B8で製造したヒドロキシル化ポリブタジエンおよび49.7gの30%ナトリウムメタノレート溶液(溶液の全質量に対して30重量%のメタノール中のナトリウムメタノレート)を窒素下で投入し、50℃で1時間撹拌した。続いて、撹拌しながら115℃に加熱し、過剰なメタノールおよび存在する他の揮発性成分を蒸留によって除去するために、反応器を30mbarの内圧まで排気した。続いて、1202gのプロピレンオキシドを、115℃および最大3.5barの反応器内圧(絶対)で10時間かけて冷却下で連続添加した。添加の完了および30分間の後続反応の後に再び脱気し、95℃まで冷却し、30%H3PO4(溶液の全質量に対して30重量%の水中のH3PO4)で中和し、1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合した。水を真空蒸留で除去し、沈殿した塩を濾別した。0.1mg KOH/gの酸価を有する透明な生成物1365gを単離し、これを窒素下で保管した。
Mw=11072g/mol;Mn=2460g/mol;Mw/Mn=4.5
【0175】
実施例C9:
3リットルオートクレーブに、150gの実施例B9で製造したヒドロキシル化ポリブタジエンおよび20.0gの30%ナトリウムメタノレート溶液(溶液の全質量に対して30重量%のメタノール中のナトリウムメタノレート)を窒素下で投入し、50℃で1時間撹拌した。続いて、撹拌しながら115℃に加熱し、過剰なメタノールおよび存在する他の揮発性成分を蒸留によって除去するために、反応器を30mbarの内圧まで排気した。続いて、484gのプロピレンオキシドを、115℃および最大3.5barの反応器内圧(絶対)で6時間かけて冷却下で連続添加した。添加の完了および30分間の後続反応の後に再び脱気し、95℃まで冷却し、30%H3PO4(溶液の全質量に対して30重量%の水中のH3PO4)で中和し、1000ppmのIrganox(登録商標) 1135と混合した。水を真空蒸留で除去し、沈殿した塩を濾別した。0.1mg KOH/gの酸価を有する透明な生成物599gを単離し、これを窒素下で保管した。
Mw=8914g/mol;Mn=2073g/mol;Mw/Mn=4.3
【0176】
工程e)、明色化のための後処理
活性炭の添加による明色化:
実施例E1:
100ml一つ口フラスコにおいて、20gの実施例C7で製造したアルコキシル化ポリブタジエン(ガードナー色数:4.3)と10mlのクロロホルムおよび1gの活性炭(Activated Carbon Norit SX 1)とを混合した。室温で2時間撹拌した後、活性炭を濾別し、過剰な溶媒を真空で除去した。より明るい色のアルコキシル化ポリブタジエンを19g単離した。
【0177】
ガードナー色数:2.1
【0178】
過酸化水素の添加による明色化:
実施例E2:
還流冷却器を備える100ml一つ口フラスコにおいて、20gの実施例C7で製造したアルコキシル化ポリブタジエン(ガードナー色数:4.3)を60℃に調温し、5重量%の30%過酸化水素溶液(水溶液の全質量に対して30重量%のH2O2)と混合した。80℃で2時間撹拌した後、水および過剰な過酸化水素を完全真空下で留去した。より明るい色の生成物を20g単離した(ガードナー色数:1.8)。