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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】巻取り機
(51)【国際特許分類】
   B65H 57/16 20060101AFI20231212BHJP
   B65H 57/14 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B65H57/16
B65H57/14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022543509
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2021050571
(87)【国際公開番号】W WO2021144300
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】102020000286.2
(32)【優先日】2020-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ライナルト フォス
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン クルーゲ
(72)【発明者】
【氏名】アブデラティ ハミド
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス トース
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-078455(JP,A)
【文献】特開2008-297078(JP,A)
【文献】特表2018-514486(JP,A)
【文献】特表2020-526466(JP,A)
【文献】特開2000-327228(JP,A)
【文献】米国特許第06158689(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 57/16
B65H 57/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取り機であって、複数の糸(2)を、駆動される巻取りスピンドル(6)に互いに平行に並んで巻成されるパッケージ(8)に巻き取るための複数の巻取りユニット(1.1~1.5)と、該巻取りユニットに分配されて配置された複数の糸綾振りユニット(4)と、該糸綾振りユニット(4)の上流に配置された複数のトップ糸ガイド(3)と、を備え、該トップ糸ガイド(3)は、ガイドレール(14)に可動に保持されていて、前記巻取りユニット(1.1~1.5)の範囲内の運転位置または前記巻取りユニット(1.1~1.5)範囲外の糸掛け位置に選択的に案内可能である、巻取り機において、
前記ガイドレール(14)は、前記トップ糸ガイド(3)を案内するために、前記巻取りスピンドル(6)に沿った少なくとも1つの真っ直ぐなガイド区分(14.1)と、湾曲したガイド区分(14.2)とを有しており、前記ガイドレール(14)の前記湾曲したガイド区分(14.2)は、前記巻取りスピンドル(6)のスピンドル端部を越えて延在していることを特徴とする、巻取り機。
【請求項2】
前記ガイドレール(14)は、前記湾曲したガイド区分(14.2)の一方の端部に真っ直ぐなガイド端区分(14.3)を有しており、該真っ直ぐなガイド端区分(14.3)は、前記糸掛け位置に対する前記トップ糸ガイド(3)のうちの1つのトップ糸ガイド用のストッパ(15.1)を有していることを特徴とする、請求項1記載の巻取り機。
【請求項3】
前記トップ糸ガイド(3)のそれぞれのトップ糸ガイドに、複数のガイドキャリッジ(16)のそれぞれ別個のガイドキャリッジが割り当てられており、該ガイドキャリッジ(16)は、前記ガイドレール(14)に案内されて、互いに可撓性のベルト(18)によって連結されており、該ベルト(18)の長さは、互いに隣接する巻取りユニット(1.1~1.5)の間隔に相応して形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の巻取り機。
【請求項4】
前記ガイドレール(14)の前記真っ直ぐなガイド区分(14.1)は、自由端部に、前記運転位置に対する前記トップ糸ガイド(3)のうちの1つのトップ糸ガイド用の第2のストッパ(15.2)を有していることを特徴とする、請求項3記載の巻取り機。
【請求項5】
前記トップ糸ガイド(3)は、それぞれ、開放した糸走行溝(13.1)を備えた自由回転可能な変向ローラ(13)によって形成されており、該変向ローラ(13)は、それぞれ異なる長さの保持ウェブ(17)によって前記ガイドキャリッジ(16)に片持ち式に保持されていることを特徴とする、請求項3または4記載の巻取り機。
【請求項6】
前記ガイドレール(14)の前記真っ直ぐなガイド区分(14.1)は、前記巻取りスピンドル(6)のスピンドル軸線(6.1)に対して、前記変向ローラ(13)が、それぞれ異なる保持ウェブ(17)にもかかわらず前記運転位置において前記スピンドル軸線(6.1)に対して平行な平面内に保持されているように斜めに配置されていることを特徴とする、請求項5記載の巻取り機。
【請求項7】
糸群(2)を案内するための、自由回転可能で定置のガイドローラ(19)が設けられており、該ガイドローラ(19)は、前記糸の分離および糸掛けのために、前記糸掛け位置に保持された前記変向ローラ(13)に割り当てられていることを特徴とする、請求項5または6記載の巻取り機。
【請求項8】
前記ガイドローラ(19)は、駆動されるゴデット(11)の下流に配置されており、該ゴデット(11)と前記ガイドローラ(19)とによって、前記糸群の糸走路平面が、前記変向ローラ(13)の前記運転位置と前記糸掛け位置との間の領域で展開可能であることを特徴とする、請求項7記載の巻取り機。
【請求項9】
外側の前記トップ糸ガイド(3)のうちの1つのトップ糸ガイドにアクチュエータ(20)が割り当てられており、該アクチュエータ(20)によって、前記トップ糸ガイド(3)は前記ガイドレール(14)に案内可能であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の巻取り機。
【請求項10】
前記アクチュエータ(20)は、制御機器(21)によって制御可能であり、該制御機器(21)は、制御装置(22)または操作タブレット(23)に接続されていることを特徴とする、請求項記載の巻取り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載した、複数の糸をパッケージに巻き取るための複数の巻取りユニットを備えた巻取り機に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融紡糸プロセスでは、糸群として形成された糸は、プロセスの最後に並行してパッケージに巻成される。そのために、複数の巻取りユニットを備えた巻取り機が使用され、これらの巻取りユニットは、片持ち式に保持された巻取りスピンドルに沿って機械フレームに形成されている。巻取りスピンドルは、パッケージを収容する働きをし、これによってパッケージを同時に巻成することができる。糸の巻重ねは、いわゆる綾巻きで行われるので、巻取りユニットの内部でそれぞれ糸は個々に、糸綾振りユニットを用いてパッケージ表面への乗上げ前に往復案内される。巻取りユニットへの供給および糸群の分離は、複数のいわゆるトップ糸ガイドを介して行われ、これらのトップ糸ガイドは、巻取りユニットにおいてそれぞれ糸綾振りユニットの上流に配置されている。このようにして、トップ糸ガイドと、下流に配置された糸綾振りユニットとの間には、そこで糸が案内される、いわゆる綾振り三角形が形成される。
【0003】
プロセス開始時に糸群の糸を巻取り機の巻取りユニットに分配しかつ挿通することができるようにするために、通常、糸群はまず、可動の吸込みインジェクタを介して案内され、これによって糸をトップ糸ガイド内への挿通のために準備することができる。基本的に、巻取り機の2つの変化形態が区別される。
【0004】
2つの変化形態のうちの1つの変化形態では、糸を案内しかつトップ糸ガイド内に糸を挿通するための可動の補助装置が使用される。このような巻取り機は、例えば国際公開第98/28217号または欧州特許出願公開第2497732号明細書に基づいて公知である。これらの公知の巻取り機では、補助装置は、互いに並んで配置された複数のガイド溝を備えた可動の挿通糸ガイドによって形成されている。挿通糸ガイドは、プロセス開始時に吸込みインジェクタによって案内された糸群を収容し、ガイド軌道に沿った運動によって個別化し、トップ糸ガイドに引き渡すために使用される。このような構成では、糸群の分離および挿通を達成するために、比較的複雑なガイド軌道と駆動装置とが必要である。したがって、このような補助装置は特に故障しやすい。
【0005】
巻取り機の別の変化形態では、糸の分離および挿通のために付加的な可動の補助装置が不要になる。このような巻取り機は、例えば独国特許出願公開第102014220875号明細書に基づいて公知である。この公知の巻取り機では、トップ糸ガイドは、ガイドレールに可動に保持されていて、巻取りユニットの範囲内の運転位置から巻取りユニットの範囲外の巻取り機の端面端部に対する糸掛け位置へと案内することができる。糸掛け位置でトップ糸ガイドは、糸を挿通するために互いに短い間隔を置いて並んで位置している。
【0006】
しかしながら、合成糸の製造時には、可能な限り多数の糸を同時に1つの巻取り機で巻き取ることが望まれている。したがって、多数のトップ糸ガイドを、その運転位置から糸掛け位置に移動させることが必要である。しかしながら、このとき、糸群の糸の分離および挿通のためにトップ糸ガイドは、可能な限り巻取り機の操作端部の近傍に保持されているということを顧慮する必要がある。冒頭に記載の巻取り機では、トップ糸ガイドは、互いに密に互いに一列に配置されねばならず、これによって操作端部から大きく離れたトップ糸ガイド内への糸の分離および挿通は、補助装置によってしか可能でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、冒頭に記載した形態の巻取り機を改良して、トップ糸ガイド内への糸群の糸の分離および挿通が、可能な限り簡単に操作可能であり、手動でも自動化しても実施可能であるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明によれば、ガイドレールは、トップ糸ガイドを案内するために、巻取りスピンドルに沿った少なくとも1つの真っ直ぐなガイド区分と、湾曲したガイド区分とを有しており、ガイドレールの湾曲したガイド区分は、巻取りスピンドルのスピンドル端部を越えて延在していることによって解決される。
【0009】
本発明の有利な発展形態は、従属請求項の特徴および特徴の組合せによって定義されている。
【0010】
したがって、本発明は、トップ糸ガイドをその糸掛け位置に関して互いに高さずれを伴ってガイドレールに保持することができるという特別な利点を有している。これによってさらに、操作通路内へのガイドレールの突出を有利に回避することができる。ガイドレールの湾曲は、トップ糸ガイドを例えば水平に方向付けられた列状の運転位置から、少なくとも部分的に鉛直に方向付けられた糸掛け位置に移行させることができる。特に、ガイドレールの湾曲によって、トップ糸ガイド同士の間に、糸の分離および挿通を容易にするずれが生じる。
【0011】
多数のトップ糸ガイドをその糸掛け位置に配置するために、さらにガイドレールは、湾曲したガイド区分の一方の端部に真っ直ぐなガイド端区分を有しており、この真っ直ぐなガイド端区分は、糸掛け位置に対するトップ糸ガイドのうちの1つのトップ糸ガイド用のストッパを有していることが特定されている。このように構成されていると、糸掛け位置へのトップ糸ガイドの位置決めが可能である。
【0012】
トップ糸ガイドの移動および案内のために、本発明の特に有利な発展形態では、トップ糸ガイドのそれぞれのトップ糸ガイドに、複数のガイドキャリッジのそれぞれ別個のガイドキャリッジが割り当てられており、これらのガイドキャリッジは、ガイドレールに案内されて、互いに可撓性のベルトによって連結されており、これらのベルトの長さは、互いに隣接する巻取りユニットの間隔に相応して形成されている。このように構成されていると、最初のトップ糸ガイドまたは最後のトップ糸ガイドをガイドキャリッジによってアクティブに移動させることにより、すべてのトップ糸ガイドを一緒にガイドレールに沿って運動させることができる。このようにして、ガイドキャリッジの可撓性の連結によって、すべてのトップ糸ガイドを一緒にガイドレールに沿って運動させることができる。ベルトの弾性は、一方では、ベルトが引き出された場合における運転位置でのトップ糸ガイドの位置決めを可能にし、他方では、ベルトが波状に撓んだ場合における糸掛け位置でのトップ糸ガイドの集合を可能にする。
【0013】
トップ糸ガイドの運転位置は、好ましくは第2のストッパによって実現することができ、この第2のストッパは、ガイドレールの真っ直ぐなガイド区分の自由端部に形成されている。
【0014】
糸掛け位置から運転位置への移行時におけるトップ糸ガイドの運動によって、糸群の自動的な分離および挿通を可能にするために、本発明の特に有利な発展形態では、トップ糸ガイドは、それぞれ、開放した糸走行溝を備えた自由回転可能な変向ローラによって形成されており、変向ローラは、それぞれ異なる長さの保持ウェブによってガイドキャリッジに片持ち式に保持されている。このように構成されていると、異なる長さの保持ウェブによって、変向ローラの間に、1つの糸群における互いに隣接する糸の糸間隔に相当するずれを発生させることができる。このようにして、変向ローラのそれぞれの変向ローラは、1つの糸群から巻取りユニットに該当する糸を受け取ることができる。
【0015】
そのために、ガイドレールの真っ直ぐなガイド区分は、巻取りスピンドルのスピンドル軸線に対して、変向ローラが、それぞれ異なる保持ウェブにもかかわらず運転位置においてスピンドル軸線に対して平行な平面内に保持されているように斜めに配置されている。このように構成されていると、巻取りユニットのそれぞれの巻取りユニットで、パッケージへの糸の巻成時に等しい関係を保証し続けることが保証される。
【0016】
糸群において、そこに変向ローラが進入運動する規定通りの糸間隔を生じさせるために、本発明の好適に構成された発展形態では、糸群を案内するための、自由回転可能で定置のガイドローラが設けられており、このガイドローラは、糸の分離および糸掛けのために、糸掛け位置に保持された変向ローラに割り当てられている。
【0017】
この構成では、ガイドローラの上流に、駆動されるゴデットが配置されており、ゴデットとガイドローラとによって、糸群の糸走路平面が、変向ローラの運転位置と糸掛け位置との間の領域で展開されることによって、糸群を、特に有利には、互いに隣接する糸の規定通りの糸間隔を置いて張設することができる。
【0018】
挿通を自動化するために、本発明の発展形態では、外側のトップ糸ガイドのうちの1つのトップ糸ガイドにアクチュエータが割り当てられており、このアクチュエータによって、トップ糸ガイドは、ガイドレールに案内可能であることが特定されている。
【0019】
アクチュエータは、好ましくはリニア駆動装置、例えばピストンロッドのないシリンダによって形成される。
【0020】
また、アクチュエータは、制御機器によって制御可能であり、この制御機器は、制御装置または少なくとも1つの操作タブレットに接続されている。
【0021】
本発明についてさらに説明するために、次に本発明に係る巻取り機の1つの実施例を、添付の図を参照しながら詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る巻取り機の実施例を概略的に示す側面図である。
図2図1に示した実施例を概略的に示す平面図である。
図3図1に示した実施例を概略的に示す正面図である。
図4.1】1つの運転状況における、図1に示した実施例の一部を概略的に示す側面図である。
図4.2】別の運転状況における、図1に示した実施例の一部を概略的に示す側面図である。
図5.1】1つの運転状況における、図1に示した実施例の一部を概略的に示す平面図である。
図5.2】別の運転状況における、図1に示した実施例の一部を概略的に示す平面図である。
図6図1に示した実施例の第1の巻取りユニットのトップ糸ガイドを概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1図2および図3には、本発明に係る巻取り機の1つの実施例が、複数の見方で概略的に示してある。実施例は、図1では側面図で、図2では平面図で、図3では正面図で示してある。図のうちの1つの図を明確に参照しない限り、下記の説明はすべての図に対するものである。
【0024】
本発明に係る巻取り機は、本実施例では全部で5つの巻取りユニット1.1~1.5を有しており、これらの巻取りユニット1.1~1.5は、互いに並んで機械フレーム10に形成されている。巻取りユニット1.1~1.5は、片持ち式に保持された巻取りスピンドル6に沿って配置されている。巻取りユニット1.1~1.5のそれぞれの巻取りユニットで、それぞれ糸群2の1本の糸がパッケージ8に巻成され、パッケージ8は、互いに並んで巻取りスピンドル6に保持されている。巻取りユニット1.1~1.5の数および糸群2の糸の数は、ここでは一例である。基本的にこのような巻取り機は、16基までの巻取りユニットを有することができる。
【0025】
巻取りユニット1.1~1.5は同一に形成されていて、それぞれ1つの糸綾振りユニット4を有している。糸綾振りユニット4のそれぞれの糸綾振りユニットは、巻取りユニット1.1~1.5に割り当てられた糸を綾振り行程内で往復案内するために、ここでは詳しく示さないガイド手段を含んでいる。糸綾振りユニット4は、例えば反転案内溝付き軸式綾振り機構、ベルト式綾振り機構、またはウイング式綾振り機構によって形成されていてよい。
【0026】
糸群2の糸を並行して巻き取るために、巻取りユニット1.1~1.5のそれぞれの巻取りユニットには、駆動される巻取りスピンドル6の周囲に設けられた巻管9が割り当てられている。このために、巻管9は、巻取りスピンドル6の周囲に緊締されている。巻取りスピンドル6は、すべての巻取りユニット1.1~1.5にわたって延在しているので、糸は巻取りユニット1.1~1.5で並行してパッケージ8に巻成される。
【0027】
パッケージの表面に糸を下ろすために、押付けローラ5が設けられており、この押付けローラ5は、巻取りスピンドル6に対して平行に延在しており、これによって巻取りユニット1.1~1.5に割り当てられている。押付けローラ5は、糸綾振りユニット4と巻取りスピンドル6との間の領域に形成されている。機械フレーム10は、糸綾振りユニット4、押付けローラ5、および巻取りスピンドル6を収容しかつ固定する働きをする。巻取りスピンドル6は、巻取りタレット7に片持ち式に支持されており、巻取りタレット7自体は、機械フレーム10に回転可能に保持されている。巻取りタレット7は、第1の巻取りスピンドル6に対して180°ずらして配置された第2の巻取りスピンドル6を保持している。両巻取りスピンドル6は、巻取りタレット7の回転によって巻取り領域と交換領域とに交互に案内することができ、これによって糸を巻取りユニット1.1~1.5で連続的にパッケージ8に巻成することができる。巻取りスピンドル6および巻取りタレット7は、それぞれ駆動装置(ここでは図示せず)に連結されている。
【0028】
巻取りユニット1.1~1.5に糸群2を収容しかつ分離するために、それぞれの巻取りユニット1.1~1.5には、糸綾振りユニット4の上方にそれぞれ1つのトップ糸ガイド3が割り当てられている。これによって、巻取りユニット1.1~1.5に分配されたトップ糸ガイド3は、それぞれの巻取りユニット1.1~1.5への走入路を形成している。
【0029】
トップ糸ガイド3のそれぞれのトップ糸ガイドは、可動のガイドキャリッジ16によってガイドレール14に保持されている。ガイドレール14は、機械フレーム10の上方に配置され、真っ直ぐなガイド区分14.1が巻取りスピンドル6に沿って延在している。真っ直ぐなガイド区分14.1には、ガイドレール14の湾曲したガイド区分14.2が続いており、この湾曲したガイド区分14.2は、巻取りスピンドル6のスピンドル端部を越えて操作端部に向かって延在している。湾曲したガイド区分14.2には、真っ直ぐなガイド端区分14.3が続いており、この真っ直ぐなガイド端区分14.3は、真っ直ぐなガイド区分14.1に対して約90°ずらして方向付けられている。ガイドレール14のガイド端区分14.3には、第1のストッパ15.1が形成されている。ガイドレール14の真っ直ぐなガイド区分14.1の反対側に位置している自由端部には、第2のストッパ15.2が設けられている。これによってトップ糸ガイド3を、ガイドレール14に沿ったガイドキャリッジ16の運動によって、運転位置と糸掛け位置との間で往復案内することができる。図1図2および図3には、トップ糸ガイド3がその運転位置で示してある。
【0030】
トップ糸ガイド3は、本実施例では自由回転可能に支持されたそれぞれ1つの変向ローラ13によって形成されている。説明のためにさらに、第1の巻取りユニット1.1におけるトップ糸ガイド3の平面図を示す図6を参照する。変向ローラ13はその周囲に、開放した糸走行溝13.1を有しており、この糸走行溝13.1内で、糸群の1本の糸が部分巻掛けされて案内可能である。
【0031】
変向ローラ13は、保持ウェブ17によってガイドキャリッジ16に結合されている。このとき、変向ローラ13の保持ウェブ17の長さは、図2における図示から明らかなように、互いに異なって形成されている。すなわち、巻取りユニット1.1における保持ウェブ17は、隣接する巻取りユニット1.2~1.5の保持ウェブ17よりも大きな長さを有している。保持ウェブ17の長さの差異は、糸群2における糸の糸間隔に相応して形成されており、これによってそれぞれ1つの糸掛け位置から運転位置への変向ローラ13の運動時に、変向ローラ13のそれぞれの変向ローラは、1本の糸を糸群2から分離させて受け取る。変向ローラ13をその運転位置で、巻取りスピンドル6のスピンドル軸線6.1に対して平行に方向付けるために、ガイドレール14の真っ直ぐなガイド区分14.1は、巻取りスピンドル6のスピンドル軸線6.1に対して角度を成して延在している。図2には、ガイドレール14とスピンドル軸線6.1との間の角度が、符号αで示してある。
【0032】
本実施例では、巻取りユニット1.1のガイドキャリッジ16はアクチュエータ20に連結されている。このアクチュエータ20は、ピストンロッドのないシリンダによって形成されており、このシリンダは、ガイドレールの真っ直ぐなガイド区分14.1に対して平行に延在している。アクチュエータ20は、操作タブレット23を介して制御可能な制御機器21に接続されている。アクチュエータ20は、例えば電気式のリニア駆動装置によって形成されていてもよく、このリニア駆動装置は、ガイドレール14に対して平行に延在していて、巻取りユニット1.1のガイドキャリッジ16を運動させる。アクチュエータ20およびガイドレール14は、ホルダ25を介して機械フレーム10に支持されている。
【0033】
図1から明らかなように、ガイドキャリッジ16は互いにそれぞれ、可撓性のベルト18によって結合されている。可撓性のベルト18の長さは、引き出された状態でそれぞれのガイドキャリッジ16が、巻取りユニット1.1~1.5における該当するトップ糸ガイド3の運転位置にあるように寸法設定されている。
【0034】
変向ローラ13の上流には、ゴデット11が糸走路に配置されている。ゴデット11は、ゴデット保持体12に保持され、駆動装置(ここでは図示せず)に連結されている。ゴデット保持体12は、巻取りユニット1.1~1.5の側方に並んで、巻取りスピンドル6の突出した端部に保持されている。ゴデット保持体12は、機械フレーム10に支持されていてよい。
【0035】
本発明に係る巻取り機の、図1図3に示した実施例では、巻取りユニット1.1~1.5においてそれぞれ糸群2の1本の糸が、パッケージ8に連続的に巻成される。しかしながら、プロセス開始時またはプロセス中断時には、糸群2を巻取りユニット1.1~1.5内で挿通することが必要である。この工程を実施できるようにするために、機械フレーム10には、トップ糸ガイド3の下方に、ガイドローラ19が自由回転可能に支持されて配置されている。ガイドローラ19は、ゴデット11とガイドローラ19との間に展開された糸走路平面が形成され、この糸道路平面がトップ糸ガイド3の運動軌道を横切りかつトップ糸ガイド3の運転位置と糸掛け位置との間に位置するように、配置されている。これによって、ガイドローラ19は、もっぱら糸の分離時およびトップ糸ガイド3内への糸の挿通時に糸群を収容するために使用される。
【0036】
さらに説明するために、さらに図4.1、図4.2、図5.1および図5.2を参照する。図4.1および図4.2には、図1に示した実施例の側面図の一部が異なる運転状態で示してあり、図5.1および図5.2には、図4.1および図4.2に示した図が平面図で示してある。
【0037】
図4.1および図5.1に示した運転状態では、分離およびトップ糸ガイド3内への挿通を可能にするために、糸群2は吸込みインジェクタ24によって案内されている。そのためにトップ糸ガイド3は、ガイドキャリッジ16によって、巻取りユニット1.1~1.5の外におけるそれぞれの糸掛け位置に案内されている。そのために、巻取りユニット1.1の、アクチュエータ20に連結されているガイドキャリッジ16は、アクチュエータ20によってガイドレール14の真っ直ぐなガイド区分14.1に沿って案内される。隣接するガイドキャリッジ16は、この際に移動され、ガイドキャリッジ16間の間隔は、ベルト18の弾性に基づいてそれぞれ最小に減じられる。このようにして、すべてのガイドキャリッジ16は、巻取りユニット1.5のガイドキャリッジ16がガイド端区分14.3でストッパ15.1に達するまで、ガイドレール14の湾曲したガイド区分14.2に移動される。この状況が、図4.1および図5.1に示してある。トップ糸ガイド3が糸掛け位置に保持されるや否や、糸群2は、吸込みインジェクタ24によってゴデット11に、かつガイドローラ19の周囲に糸掛けされる。ガイドローラ19は、ゴデット11と共に糸走路平面を展開しており、この糸走路平面は、トップ糸ガイド3の糸掛け位置から運転位置へのトップ糸ガイド3の運動時に通過される。そのために、ガイドローラ19は、実質的に変向ローラ13に対して軸平行に機械フレーム10に保持されている。ガイドローラ19はその周囲に、糸収束点を形成するガイド溝を有している。このようにして、糸は、ゴデット11の周囲から放射線状にガイドローラ19に向かって延びる。ガイドローラ19は、設定された間隔を置いて変向ローラ13の下方に配置されている。これによって糸群では、変向ローラ13の領域で、規定通りの糸相互間隔が調整される。
【0038】
特に図5.1および図5.2における図示から明らかなように、変向ローラ13は、異なる長さに形成された保持ウェブ17によってガイドキャリッジ16に結合されている。さらに、ガイドレール14の真っ直ぐなガイド区分14.1は、スピンドル軸線6.1に対して角度を成して配置されている。これによって、変向ローラ13は、ゴデット11とガイドローラ19との間で案内される糸群2にずれをもって衝突する。このずれの大きさは、糸群2における糸の糸間隔に等しいので、ガイドキャリッジ16の運動によって変向ローラ13のそれぞれの変向ローラは、糸群2の糸のうちの1本の糸を受け取り、巻取りユニット1.1~1.5に案内する。そのために、巻取りユニット1.1のガイドキャリッジ16は、アクチュエータ20によって巻取りユニット1.1~1.5の方向に戻し案内される。
【0039】
ガイドキャリッジ16は、ガイドレール14の自由端部におけるストッパ15.2に至るまで運動する。ベルト18との連結によって、後続のガイドキャリッジおよびそれに固定された変向ローラ13は、一緒に案内され、それぞれ相前後して糸群2から1本の糸を受け取る。この状況は、図4.2および図5.2に示してある。
【0040】
糸群2の糸の分離およびトップ糸ガイド3内への挿通中に、糸群2は吸込みインジェクタ24によって案内される。このとき、吸込みインジェクタ24は、自動操作装置によって案内することができる。この場合、アクチュエータ20の制御機器21は、制御装置に接続されている。そのために図3には、制御装置22が例として破線で示してある。
【0041】
しかしながら、また基本的に、吸込みインジェクタ24を操作員によって案内することも可能である。本実施例では、図3に示すように、アクチュエータ20の制御機器21は、巻取り機の操作端部における操作タブレット23に連結されている。このようにして、アクチュエータ20は、ガイドキャリッジ16を走行させるために、操作タブレット23におけるキータッチによって作動させることができる。したがって、本発明に係る巻取り機は、自動操縦のためにも手動操作のためにも適している。
【0042】
本発明に係る巻取り機の図示の実施例では、ガイドレールは、湾曲したガイド区分を備えたトップ糸ガイドを案内するために、トップ糸ガイドが鉛直に下方に向かって巻取り機の端面に沿って案内されているように、成形されている。もちろん本発明は、ガイドレールのこのように成形された湾曲区分であって、逆向きに上方に向かったまたは角度をずらして横方向に巻取り機の端面に沿った、トップ糸ガイドの案内を可能にする、湾曲区分をも含んでいる。したがって、例えばトップ糸ガイドの運転位置の上方位置におけるトップ糸ガイドの案内によって、ゴデットから供給された糸群の挿通を容易にすることができる。
【0043】
本実施例では、トップ糸ガイド3は、変向ローラ13として形成されている。しかしながら、また基本的には、トップ糸ガイド3をセラミック糸穴またはセラミックガイド溝によって形成することも可能である。したがって、図1図3に示した変向ローラは、トップ糸ガイドのこのような構成と難なく交換することができる。
【0044】
さらに、ガイドレールは、湾曲したガイド区分と真っ直ぐなガイド区分とが1つの水平平面で延在するように構成されていてもよい。このように構成されていると、トップ糸ガイドを、高低差なしに糸掛け位置で保持することができる。
図1
図2
図3
図4.1】
図4.2】
図5.1】
図5.2】
図6