(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】水性難燃接着剤組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 127/06 20060101AFI20231212BHJP
C09J 131/04 20060101ALI20231212BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20231212BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20231212BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20231212BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231212BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20231212BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20231212BHJP
【FI】
C09J127/06
C09J131/04
C09J133/00
C09J175/04
C09J183/04
C09J11/06
C09J11/08
C09J7/30
(21)【出願番号】P 2022570681
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 KR2021019972
(87)【国際公開番号】W WO2022145935
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0186088
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨンラン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ジェソン・キム
(72)【発明者】
【氏名】テヨン・ジャン
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-531717(JP,A)
【文献】特開昭59-120669(JP,A)
【文献】特開平08-218045(JP,A)
【文献】特表2020-517794(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0298477(US,A1)
【文献】国際公開第2020/130315(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00 - 201/10
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C07B 31/00 - 63/04
C07C 1/00 - 409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルアセテート-エチレン共重合体、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、およびシリコン系樹脂からなる群より選択されるベース樹脂;
水性ポリ塩化ビニルエマルジョン;
シクロヘキサン系可塑剤;および
ベンゾエート系可塑剤;を含む、
水性難燃接着剤組成物。
【請求項2】
前記ベース樹脂は、水性エマルジョンである、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項3】
前記水性ポリ塩化ビニルエマルジョンでのポリ塩化ビニルは平均粒径が100nm~1μmであり、重量平均分子量が45,000~300,000g/molである、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項4】
水性ポリ塩化ビニルエマルジョン固形分は、ベース樹脂固形分100重量部に対して10~90重量部で含まれる、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項5】
前記ベース樹脂固形分および水性ポリ塩化ビニルエマルジョン固形分を10:90~90:10の重量比で含む、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項6】
シクロヘキサン系可塑剤は、炭素数4~10のアルキル基を2つ含むシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物である、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項7】
シクロヘキサン系可塑剤は、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,3-ジカルボキシレート、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート、ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジエステル、およびジブチルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートからなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項8】
シクロヘキサン系可塑剤は、ベース樹脂固形分100重量部に対して10~30重量部で含まれる、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項9】
前記ベンゾエート系可塑剤は、ソジウムベンゾエート、イソノニルベンゾエート、イソデシルベンゾエート、2-プロピルへプチルベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、1,2-ジプロピレングリコールジベンゾエート、およびジブチレングリコールジベンゾエートからなる群より選択されるいずれか一つ以上である、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項10】
前記ベンゾエート系可塑剤は、ベース樹脂固形分100重量部に対して5~30重量部で含まれる、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項11】
開始剤、低分子量体、エポキシ樹脂、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、消泡剤、可塑剤、発泡剤、有機塩、増粘剤、および難燃剤からなる群より選択された一つ以上の添加剤を追加的に含む、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項12】
前記水性難燃接着剤組成物は、UL94 Vの難燃規定による難燃性評価時、V0またはV1の難燃性を示す、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項13】
塩化ビニル単量体単独、または塩化ビニル単量体およびこれと共重合可能な共単量体との混合物を水性媒体中で乳化重合またはシード乳化重合して、ポリ塩化ビニルが水性媒体中に分散した水性ポリ塩化ビニルエマルジョンを製造する段階;および
前記水性ポリ塩化ビニルエマルジョンを、ビニルアセテート-エチレン共重合体、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、およびシリコン系樹脂からなる群より選択されるベース樹脂と混合して、シクロヘキサン系可塑剤およびベンゾエート系可塑剤を添加して混合する段階;を含む、請求項1の水性難燃接着剤組成物の製造方法。
【請求項14】
前記シクロヘキサン系可塑剤は、炭素数4~10のアルキル基を2つ含むシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物である、請求項13に記載の水性難燃接着剤組成物の製造方法。
【請求項15】
前記ベンゾエート系可塑剤は、ソジウムベンゾエート、イソノニルベンゾエート、イソデシルベンゾエート、2-プロピルへプチルベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、1,2-ジプロピレングリコールジベンゾエート、およびジブチレングリコールジベンゾエートからなる群より選択されるいずれか一つ以上である、請求項13に記載の水性難燃接着剤組成物の製造方法。
【請求項16】
請求項1~12のうちのいずれか一項による水性難燃接着剤組成物を含む物品。
【請求項17】
前記物品は、接着剤、接着フィルム、デコシート、床材、人造皮革またはおもちゃである、請求項16に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2020年12月29日付韓国特許出願第10-2020-0186088号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は水性難燃接着剤組成物およびその製造方法に関し、より詳しくは、有機難燃剤代替を通じた原価節減、および無機難燃剤添加による接着剤の層分離が改善され、優れた接着力、低温安定性、加工性および耐抽出性を示すことができる水性の難燃接着剤組成物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
現在使用される接着剤は大部分が有機溶剤を使用した接着剤である。しかし、国内外の環境規制強化および作業清浄化要求の増大と、原価節減および生産性向上側面からの有利さによって水分散型接着剤の必要性が拡大されている。
【0004】
既存の有機溶剤型接着剤を水性接着剤で代替する場合、水を連続的な媒体として使用するため、原価節減はもちろん混合および取り扱いが簡便で作業性を向上させることができて、作業環境の清浄化および後処理工程の省略が可能であるという利点がある。
【0005】
水性接着剤として、重合体エマルジョン形態のクロロプレンラテックス系接着剤、塩化ビニルエマルジョン、塩化ビニリデンエマルジョン、塩化ビニルアクリル酸エステル共重合体エマルジョン、または塩化ビニルエチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョンなどを用いることが提案されている。しかし、これら重合体エマルジョンを単独で用いた場合、難燃性が実現されない問題がある。
【0006】
よって、難燃性実現のために有機または無機難燃剤を使用する方法が提案された。有機難燃剤は大きくリン系、窒素系などの非ハロゲン系難燃剤と、臭素系、塩素系などのハロゲン系難燃剤に分類され、無機難燃剤は水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物系と、アンチモン系に分類される。
【0007】
有機難燃剤の場合、難燃化効果は優れるが、高価であり、一部有機難燃剤、特に臭素系難燃剤の場合、燃焼時ダイオキシン発生などの人体有害性問題がある。また、無機難燃剤の場合、過量で使用されなければならないため時間の経過につれて分離されるか沈殿して作業が不可能であるか追加混合工程が必要であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記のような問題点を解決するためのものであって、環境にやさしく、有機難燃剤代替を通じた原価節減、無機難燃剤添加による接着剤の層分離を改善し、優れた接着力、低温安定性、加工性および耐抽出性を示すことができる水性難燃接着剤組成物およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、ビニルアセテート-エチレン共重合体、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、およびシリコン系樹脂からなる群より選択されるベース樹脂;水性ポリ塩化ビニルエマルジョン;シクロヘキサン系可塑剤;およびベンゾエート系可塑剤;を含む、水性難燃接着剤組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、塩化ビニル単量体単独、または塩化ビニル単量体およびこれと共重合可能な共単量体との混合物を水性媒体中で乳化重合またはシード乳化重合して、ポリ塩化ビニルが水性媒体中に分散した水性ポリ塩化ビニルエマルジョンを製造する段階;および前記水性ポリ塩化ビニルエマルジョンを、ビニルアセテート-エチレン共重合体、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、およびシリコン系樹脂からなる群より選択されるベース樹脂と混合し、シクロヘキサン系可塑剤およびベンゾエート系可塑剤を添加して混合する段階;を含む、前記水性難燃接着剤組成物の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記水性難燃接着剤組成物を含む物品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による水性難燃接着剤組成物は、環境にやさしく、有機難燃剤代替を通じた原価節減、および無機難燃剤添加による接着剤の層分離が改善され、優れた接着力および低温安定性を示すことができ、加工性および耐抽出性が向上した。これにより、前記接着剤組成物は、建築用、各種産業用など多様な分野に適用することができ、具体的には、建築用/産業用接着剤、接着フィルム、デコシート、床材、人造皮革、またはおもちゃなどに有用に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用される用語はただ例示的な実施例を説明するために使用されたものに過ぎず、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。
【0014】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるところ、特定実施例を例示し下記で詳細に説明しようとする。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解されなければならない。
【0015】
以下、発明の具体的な実施形態によって水性難燃接着剤組成物およびその製造方法についてより詳しく説明する。
【0016】
本発明者らは、水性接着剤組成物の製造時、ベース樹脂に水性ポリ塩化ビニル系エマルジョンを混合する場合、難燃剤を使用しないかまたは使用量を減少しても優れた難燃性を示すことができ、さらに、加工助剤として環境にやさしいシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物の可塑剤を使用することによって接着力を強化し、低温安定性を改善させることができることを確認し、ベンゾエート系可塑剤を使用することによって加工性および耐抽出性を改善させることができることを確認して本発明を完成した。
【0017】
具体的に、発明の一実施形態による水性難燃接着剤組成物は、ビニルアセテート-エチレン共重合体、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、およびシリコン系樹脂からなる群より選択されるベース樹脂;水性ポリ塩化ビニルエマルジョン;シクロヘキサン系可塑剤;およびベンゾエート系可塑剤;を含む。
【0018】
前記水性難燃接着剤組成物において、ベース樹脂は、ビニルアセテート-エチレン(VAE)共重合体、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、またはシリコン系樹脂などであってもよい。これらベース樹脂は、接着剤組成物に使用される従来の合成ゴムラテックスと比較して臭素系難燃剤を使用しないため環境にやさしい。
【0019】
前記ベース樹脂の中でも優れた接着特性と共に水性ポリ塩化ビニルエマルジョンとの混和性に優れたビニルアセテート-エチレン(VAE)共重合体が好ましい。
【0020】
また、前記ベース樹脂は、水性媒質、具体的にはベース樹脂の粒子が水中に分散した、水性エマルジョンであってもよい。この時、前記ベース樹脂はまた、100nm~1.5μm、より具体的には500nm~1.2μmの平均粒径を有することが好ましい。前記平均粒径が100nm未満であれば、粒子安定性が悪化する恐れがあり、1.5μmを超過すれば、乾燥後粒子の凝集力が低下して、接着物性が低下する恐れがある。
【0021】
前記ベース樹脂は、重量平均分子量が100,000g/mol以上であり、700,000g/mol以下であるものであってもよい。重量平均分子量が100,000g/mol未満であれば、凝集力低下によって耐久性が低下する恐れがあり、700,000g/molを超過すれば、接着特性が低下するか、粒子の大きさまたは粘度の上昇によって塗布性が低下する恐れがある。
【0022】
一例として、前記ベース樹脂として、ビニルアセテート-エチレン(VAE)共重合体を使用する場合、前記ビニルアセテート-エチレン共重合体は共重合体総重量を基準にしてエチレン10~20重量%およびビニルアセテート30~50重量%をポリビニルアルコール40~60重量%でエマルジョン重合させたエマルジョン共重合体であってもよい。
【0023】
また他の一例として、前記ベース樹脂としてアクリル系樹脂を使用する場合、前記アクリル系樹脂は(メタ)アクリル酸エステル系単量体および架橋性単量体を含む単量体混合物の重合体であってもよい。
【0024】
前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体の種類は特に限定されず、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを使用することができる。この場合、単量体に含まれるアルキル基が過度に長くなれば、硬化物の凝集力が低下し、ガラス転移温度や接着性の調節が難しくなる恐れがあるので、炭素数が1~14、好ましくは炭素数が1~8であるアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを使用することができる。このような単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートまたはイソノニル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、本発明では前記のうちの1種または2種以上の混合を使用することができる。
【0025】
また、前記単量体混合物に含まれる架橋性単量体は、分子構造内に共重合性官能基(例えば、炭素-炭素二重結合)および架橋性官能基を同時に含む単量体を意味し、前記単量体は重合体に多官能性架橋剤と反応可能な架橋性官能基を付与することができる。
【0026】
前記架橋性単量体の例としてはヒドロキシ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体または窒素含有単量体などが挙げられ、このうちの一種または二種以上の混合を使用することができる。本発明では、特に前記架橋性単量体として、カルボキシル基含有単量体を使用することが好ましいが、これに制限されるわけではない。
【0027】
前記でヒドロキシ基含有単量体の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレートまたは2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられ;カルボキシル基含有単量体の例としてはアクリル酸、メタクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシ酪酸、アクリル酸二重体、イタコン酸またはマレイン酸などが挙げられ;窒素含有単量体の例としては2-イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、3-イソシアネートプロピル(メタ)アクリレート、4-イソシアネートブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドンまたはN-ビニルカプロラクトンなどが挙げられるが、これに制限されるわけではない。
【0028】
前記単量体混合物は、単量体混合物総重量に対して(メタ)アクリル酸エステル系単量体80~99.9重量%および架橋性単量体0.1~20重量%、好ましくは(メタ)アクリル酸エステル系単量体90~99.9重量%および架橋性単量体0.1~10重量%を含むことができる。
【0029】
前記それぞれの成分を含むベース樹脂を製造する方法は特に限定されず、例えば、溶液重合、光重合、塊状重合、懸濁(suspension)重合または乳化(emulsion)重合のような一般的な重合法を通じて製造することができる。本発明では特に懸濁重合または乳化重合法を使用して水分散型ベース樹脂を製造することが好ましく、より好ましくは、乳化重合法を通じて製造することが好ましい。
【0030】
一方、前記水性難燃接着剤組成物において、水性ポリ塩化ビニルエマルジョンは、ポリ塩化ビニルが水に分散した水分散型エマルジョンであって、クロリン基を含んで自体で優れた難燃性を示すことができるポリ塩化ビニルの分子構造によって、接着剤組成物に含む時、他の水性ベース樹脂より優れた難燃性を示すことができる。
【0031】
本明細書全体で“ポリ塩化ビニル”とは、塩化ビニル系単量体単独、または塩化ビニル系単量体およびこれと共重合可能な共単量体が共重合された(共)重合体を指す。その他、懸濁剤、緩衝剤、および重合開始剤などを混合して懸濁重合、微細懸濁重合、乳化重合、またはミニエマルション重合などの重合方法によって製造することができる。
【0032】
前述の塩化ビニル単量体と共重合が可能な共単量体は、例えば、エチレンビニルアセテート単量体およびプロピオン酸ビニル単量体を含むビニルエステル系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチルビニルエーテル、およびハロゲン化オレフィンを含むオレフィン系単量体;メタクリル酸アルキルエステルを含むメタクリル酸エステル系単量体;無水マレイン酸単量体;アクリロニトリル単量体;スチレン単量体;およびハロゲン化ポリビニリデンなどがあり、これらを1種以上混合して塩化ビニル単量体との共重合体を製造することができる。しかし、本発明が前述の単量体に限定されるのではなく、製造時、要求される水性難燃接着剤組成物の物性や用途などによって、本発明の属する技術分野において一般に塩化ビニル単量体と重合反応を通じて共重合体を形成するのに使用される単量体は特別な制限なく使用が可能である。
【0033】
また、前記重合反応時、重合条件の制御を通じてガラス転移温度、粒子大きさなどのポリ塩化ビニルの物性を調節することができる。
【0034】
また、接着基材によって要求されるポリ塩化ビニルのガラス転移温度(Tg)が変わることがあるが、一例として、前記ポリ塩化ビニルはガラス転移温度(Tg)が-20℃以上であり、80℃以下であるものであってもよい。
【0035】
本発明において前記ポリ塩化ビニルのガラス転移温度は、DSC(Differential Scanning Calorimeter)装置を用いて測定することができる。
【0036】
また、前記ポリ塩化ビニルは水中に分散した粒子状に存在し、100nm~1μm、より具体的には100nm~0.5μmの平均粒径を有する。前記平均粒径が100nm未満であれば、粒子安定性が低下し、ポリ塩化ビニル粒子同士の凝集によってエマルジョン内分散性が低下することがあり、1μmを超過すれば、貯蔵安定性が低下し乾燥後粒子の凝集力が低下して、接着物性が低下する恐れがある。
【0037】
一方、本発明において前記ポリ塩化ビニルおよびベース樹脂の平均粒径は光学顕微鏡観察法、光散乱測定法などの通常の粒子大きさ分布測定方法によって測定することができ、具体的には、Malvern社のZetasizerあるいはMaster Sizerを用いて測定することができる。
【0038】
また、前記ポリ塩化ビニルは、重量平均分子量(Mw)が45,000~300,000g/mol、より具体的には、50,000~130,000g/molであるものであってもよい。前記のような範囲の重量平均分子量を有する場合、エマルジョン内分散性に優れて機械的安定性を向上させることができる。本発明において、ポリ塩化ビニルの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算値である。
【0039】
具体的に、前記ポリ塩化ビニルおよびベース樹脂の重量平均分子量(Mw)は、それぞれGPC(gel permeation chromatography)によって測定したポリ塩化ビニルおよびポリスチレン換算数値を意味する。具体的には、Polymer Laboratories PLgel MIX-B 300mm長さカラムとWaters PL-GPC220機器を用いて測定することができ、評価温度は160℃であり、テトラヒドロフランまたは1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒として使用し、流速は1mL/minにする。ポリ塩化ビニルまたはベース樹脂のサンプルを10mg/10mLの濃度に調製した後、200μLの量で供給する。ポリ塩化ビニルおよびポリスチレン標準を用いて形成された検定曲線を用いてMwおよびMnの値を誘導し、この時、前記ポリ塩化ビニル標準品の分子量(g/mol)は100,000~150,000であり、ポリスチレン標準品の分子量(g/mol)は190,000である。
【0040】
水性ポリ塩化ビニルエマルジョン固形分は、ベース樹脂固形分100重量部に対して10~90重量部で含まれてもよい。ベース樹脂固形分100重量部に対する水性ポリ塩化ビニルエマルジョン固形分の含量が10重量部未満である場合、難燃性低下の恐れがあり、90重量部を超過する場合、接着性低下の問題がある。「水性ポリ塩化ビニルエマルジョン固形分」は水性ポリ塩化ビニルエマルジョン中の水性媒質を除いた全成分を意味し、「ベース樹脂固形分」はベース樹脂中の水性媒質を除いた全成分を意味する。
【0041】
前記ベース樹脂固形分は、前記水性ポリ塩化ビニルエマルジョンの固形分と90:10~10:90の重量比(ベース樹脂固形分:水性ポリ塩化ビニルエマルジョン固形分)で含まれてもよい。前記混合重量比範囲を逸脱して、ベース樹脂固形分の含量が10重量部未満であり、水性ポリ塩化ビニルエマルジョン固形分の含量が90重量部を超過すれば、接着性低下の恐れがあり、ベース樹脂固形分の含量が90重量部を超過し、水性ポリ塩化ビニルエマルジョン固形分の含量が10重量部未満であれば、難燃性低下の恐れがある。
【0042】
ベース樹脂と水性ポリ塩化ビニルエマルジョンの含量比制御による接着性および難燃性改善効果の優秀さを考慮する時、より具体的には、ベース樹脂固形分と水性ポリ塩化ビニルエマルジョン固形分は60:40~90:10、あるいは70:30~85:15の重量比で含まれてもよい。
【0043】
前記水性難燃接着剤組成物において、シクロヘキサン系可塑剤は具体的に、炭素数4~10のアルキル基を2つ含むシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物であってもよい。
【0044】
前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物において、二つのアルキル基は互いに同一であるか異なってもよい。より具体的には、二つのアルキル基は互いに同一であり、炭素数4~10のアルキル基であってもよく、より具体的には、二つのアルキル基はn-ブチルなどのような炭素数4~8の直鎖型アルキルであるか;またはエチルヘキシル、イソノニルなどのような炭素数6~10の分枝鎖型のアルキルであってもよい。
【0045】
前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、接着剤組成物に含まれる場合、Tgを低下させることができ、増粘効果を付与することができる。また、耐寒性に優れた特徴によって接着剤組成物の接着性および低温安定性を改善させることができる。
【0046】
より具体的な例としては、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート(Di(2-ethylhexyl)cyclohexane-1,2-dicarboxylate)、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,3-ジカルボキシレート(Di(2-ethylhexyl)cyclohexane-1,3-dicarboxylate)、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサンジカルボキシレート(Di(2-ethylhexyl)cyclohexane dicarboxylate;DEHCH)、ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート(Diisononyl cyclohexane-1,2-dicarboxylate;DINCH)、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジエステル(Di(2-ethylhexyl)cyclohexane-1,4-diester;DOCH)またはジブチルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(Dibutyl cyclohexane-1,4-dicarboxylate;DBCH)などが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物を使用することができる。前記ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサンジカルボキシレート(Di(2-ethylhexyl)cyclohexane dicarboxylate;DEHCH)は、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,3-ジカルボキシレートおよびジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートのうちのいずれか一つ以上であってもよい。
【0047】
この中でも、前記DEHCHは下記化学式1~化学式3で表される化合物のうちのいずれか一つ以上であって、接着力および低温安定性改善効果に優れるだけでなく、常温および低温粘度が低くて優れたコーティング特性を実現することができる。また、既存のフタレート系可塑剤に比べて揮発性有機化合物の発生を最少化することができる。
【0048】
【0049】
前記シクロヘキサン系可塑剤は、ベース樹脂固形分100重量部に対して10~30重量部で含まれてもよい。シクロヘキサン系可塑剤の含量がベース樹脂固形分100重量部に対して10重量部未満であれば、可塑剤を含むことによる接着性および低温安定性改善の効果が微小であり、30重量部を超過する場合、接着剤のせん断強度が低下することがある。含量制御による改善効果の優秀さを考慮する時、前記可塑剤はベース樹脂固形分100重量部に対して20~30重量部で含まれることがより好ましい。
【0050】
前記水性難燃接着剤組成物において、ベンゾエート系可塑剤は一例として、ソジウムベンゾエート、イソノニルベンゾエート、イソデシルベンゾエート、2-プロピルへプチルベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、1,2-ジプロピレングリコールジベンゾエートおよびジブチレングリコールジベンゾエートからなる群より選択されるいずれか一つ以上であってもよい。
【0051】
前記ベンゾエート系化合物は接着剤組成物に含まれる場合、ゲル化速度が改善されることによって加工性が改善され、ベース樹脂との相溶性に優れて耐抽出性を向上させることができる。
【0052】
前記ベンゾエート系可塑剤は、ベース樹脂固形分100重量部に対して5~30重量部で含まれてもよい。ベンゾエート系可塑剤の含量がベース樹脂固形分100重量部に対して5重量部未満であれば、加工性および耐抽出性改善効果が微小であり、30重量部を超過すれば、配合物の粘度が上昇し貯蔵安定性が低下する問題が発生することがある。
【0053】
また、発明の実施形態による水性難燃接着剤組成物は、添加剤、例えば架橋剤、開始剤、低分子量体、エポキシ樹脂、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、消泡剤、可塑剤、発泡剤、有機塩、増粘剤および難燃剤からなる群より選択された一つ以上を追加的に含むことができる。前記添加剤は、塩化ビニル系樹脂組成物において向上させようとする物性によって適するように選択することができる。
【0054】
前記のような水性難燃接着剤組成物は、塩化ビニル単量体単独、または塩化ビニル単量体およびこれと共重合可能な共単量体との混合物を水性媒体中で乳化重合またはシード乳化重合して、ポリ塩化ビニルが水性媒体中に分散した水性ポリ塩化ビニルエマルジョンを製造する段階(段階1);および前記水性ポリ塩化ビニルエマルジョンをベース樹脂と混合し、シクロヘキサン系可塑剤およびベンゾエート系可塑剤を添加して混合する段階(段階2);を含む製造方法によって製造することができる。
【0055】
以下、各段階別に説明すれば、まず、前記水性難燃接着剤組成物製造のための段階1は、水性ポリ塩化ビニルエマルジョンを製造する段階である。
【0056】
具体的に、前記水性ポリ塩化ビニルエマルジョンは、塩化ビニル単量体単独、または塩化ビニル単量体およびこれと共重合可能な共単量体との混合物を水性媒体中で乳化剤、および重合開始剤を添加して乳化重合またはシード乳化重合することによって製造することができる。
【0057】
この時、塩化ビニル単量体およびこれと共重合可能な共単量体の種類は前述の通りである。
【0058】
また、前記乳化剤としては、陰イオン系乳化剤または非イオン系乳化剤などを単独または2種以上混合して使用することができる。前記陰イオン系乳化剤としては、カルボン酸、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸またはアルキルリン酸などを使用することができる。前記非イオン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、シリコン系乳化剤などを使用することができる。
【0059】
前記乳化剤は、重合反応前に水性媒体中に一括投入するか、重合反応中に水性媒体に連続投入することができる。または、重合反応が完了した後にラテックスに添加することもでき、必要によって前記方法を組み合わせて使用することができる。
【0060】
また、前記乳化重合またはシード乳化重合時、必要によって補助分散剤をさらに使用することができる。
【0061】
前記補助分散剤は乳化剤と共に重合およびラテックスの安定性を維持するために使用するものであって、具体的に、ラウリルアルコール、ミリスチックアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類またはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸などを使用することができる。
【0062】
また、前記乳化重合またはシード乳化重合に使用する重合開始剤としては過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムまたは過酸化水素などのような水溶性重合開始剤を使用することができ、必要に応じて亜硫酸ナトリウム、ナトリウム、アスコルビン酸(ascorbic acid)などの還元剤を共に使用することができる。
【0063】
また、前記水性媒体としては、蒸留水、脱イオン水などの水を使用することができる。
【0064】
前記のような成分を混合し、重合反応を行うことによって、ポリ塩化ビニルの微細粒子が水性媒体、具体的には水中に分散した水性ポリ塩化ビニルエマルジョン(または塩化ビニル樹脂ラテックス)を製造することができる。
【0065】
重合が完了した後には重合されない未反応単量体除去のための工程を選択的にさらに行うことができ、また実現しようとするポリ塩化ビニルの物性によって前記重合条件を適切に変更することができる。
【0066】
また、重合方法によって変わることがあるが、前記水性ポリ塩化ビニルエマルジョンにおいて、ポリ塩化ビニルを含む固形分の含量が約30~約60重量%であってもよい。
【0067】
その次に、段階2は、前記段階1で製造した水性ポリ塩化ビニルエマルジョンをベース樹脂と混合し、シクロヘキサン系可塑剤とベンゾエート系可塑剤を添加して混合する段階である。
【0068】
この時、前記ベース樹脂の種類および混合比は前述の通りであり、前記混合は通常の方法によって行うことができる。
【0069】
また、前記水性ポリ塩化ビニルエマルジョンとベース樹脂との混合時、シクロヘキサン系可塑剤とベンゾエート系可塑剤がさらに添加され、この時、各可塑剤の種類および含量は前述の通りである。
【0070】
前記製造方法によって製造された水性難燃接着剤組成物は、通常の難燃剤を使用しなくても優れた難燃性を示すことができる。具体的に、前記接着剤組成物は、UL94 Vの難燃規定による難燃性評価時、V0またはV1の難燃性を示す。これにより、従来の有機難燃剤の代替を通じた原価節減、無機難燃剤添加による接着剤の層分離を改善することができる。
【0071】
これにより、前記水性難燃接着剤組成物は環境にやさしく、優れた難燃性と接着力および低温安定性が要求される建築用、産業用などの多様な分野に有用である。
【0072】
よって、本発明の他の一側面によれば、前記水性難燃接着剤組成物を含む物品が提供される。前記物品は具体的には、建築用/産業用接着剤、接着フィルム、デコシート、床材、人造皮革、またはおもちゃなどであってもよい。
【0073】
以下、本発明の理解を助けるためにより詳しく説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【実施例】
【0074】
<水性PVCエマルジョンの製造>
製造例
高圧反応器に脱イオン水76kgおよび塩化ビニル単量体39.55kgおよび酢酸ビニル単量体16.95kgを混合投入した後、高圧反応器の温度65℃下で乳化重合して、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体が水に分散した、水性ポリ塩化ビニルエマルジョンを製造した。
製造した水性ポリ塩化ビニルエマルジョンでのポリ塩化ビニルはTgが60℃であり、平均粒径が180nmであり、重量平均分子量が75,000g/molであり、エマルジョン中固形分含量が43重量%である。
【0075】
<水性難燃接着剤組成物の製造>
実施例1
ベース樹脂として水性VAEエマルジョン(VINNAPASTM EP706、Wacker Chemie AG社製、平均粒径1μm、Tg5℃)と前記製造例で製造した水性PVCエマルジョン固形分を70:30の重量比で混合し、シクロヘキサン系可塑剤(Bis(2-ethylhexyl)cyclohexane-1,4-dicarboxylate(ビス(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート)、Eco-DEHCH、Hanwha solution社)を前記ベース樹脂固形分100重量部基準20重量部、ベンゾエート系可塑剤(Dipropylene glycol dibenzonate(ジプロピレングリコールジベンゾエート)、BF9-88、Eastman社)を前記ベース樹脂固形分100重量部基準10重量部追加混合して、水性の難燃接着剤組成物を製造した。
【0076】
実施例2
ベンゾエート系可塑剤(Dipropylene glycol dibenzonate(ジプロピレングリコールジベンゾエート)、BF9-88、Eastman社)を前記ベース樹脂固形分100重量部基準10重量部の代わりに30重量部を使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法で水性の難燃接着剤組成物を製造した。
【0077】
実施例3
ベンゾエート系可塑剤としてDiethylene glycol dibenzoate(ジエチレングリコールジベンゾエート)(BF50、Eastman社)を使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法で水性の難燃接着剤組成物を製造した。
【0078】
実施例4
ベンゾエート系可塑剤としてDiethylene glycol dibenzoate(ジエチレングリコールジベンゾエート)(BF50、Eastman社)を前記ベース樹脂固形分100重量部基準30重量部を使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法で水性の難燃接着剤組成物を製造した。
【0079】
比較例1
ベンゾエート系可塑剤を使用しないことを除いて前記実施例1と同様な方法で水性の難燃接着剤組成物を製造した。
【0080】
比較例2
シクロヘキサン系可塑剤を使用しないことを除いて前記実施例1と同様な方法で水性の難燃接着剤組成物を製造した。
【0081】
実験例
前記実施例および比較例で製造した接着剤組成物に対して下記のような方法で難燃性、接着力、低温安定性、耐抽出性および加工性を評価した。その結果を表2に示した。
【0082】
(1)難燃性:UL94 V(Vertical Burning Test)難燃規定によって125mm*13mm*1mm Bar試片で難燃度を測定し、下記表1に記載された基準によって評価した。
【0083】
【0084】
(2)低温安定性:前記実施例および比較例で製造した接着剤組成物をそれぞれ-4℃および-15℃オーブンで1日間保管した後、配合物の状態および粘度を確認した。
<評価基準>
優秀:配合物状態および粘度全て正常
普通:配合物の粘度変化(使用可能水準)
悪い:凝集による塊り発生(使用不可水準)
【0085】
(3)貯蔵安定性:前記実施例および比較例で製造した接着剤組成物を各25℃オーブンで1時間後にBF粘度を測定した値を初期粘度に設定し、7日間保管した後、粘度を確認した。
<評価基準>
優秀:配合物の粘度変化(初期粘度/7日後粘度)5%以下水準
普通:配合物の粘度変化(初期粘度/7日後粘度)15%以下水準
悪い:配合物の粘度変化(初期粘度/7日後粘度)15%超過水準
【0086】
(4)接着力(剥離強度):180°剥離試験方法(ISO 8510-2)で測定した。
横25mm*縦150mm大きさの試験片に両側被着面に厚さ0.5mm以内で塗布し、塗布量は400~500g/m2にした。被着面に接着剤を塗布後、約10分以内でオープンタイムを維持した。約49N(5kgf)の荷重で圧着して7日間硬化後、試験に使用した。試験片の接着部分の一端を約50mm剥離させて両側を試験器のクリップに固定させた。引張速度はクリップの移動速度であって毎分200±20mmにした。
【0087】
(5)耐抽出性:ISO177:1988試験規格を参照して配合物をコーティング/乾燥後、吸油紙をコーティング面の上/下に位置させ、60℃恒温オーブンで5kg荷重を加えて7日間保管してシートの重量変化を測定した。
<評価基準>
優秀:シートの重量変化3%以下水準
普通:シートの重量変化5%以下水準
悪い:シートの重量変化5%超過水準
【0088】
(6)加工性(ゲル化速度):SVNC(Scanning vibrating needle curemeter)を使用して120℃温度でゲル化速度を測定した。SVNC装備でゲル化が進行するほど振幅(amplitude)が減少し、その減少速度を用いてゲル化速度を比較測定し、ゲル化速度を点数化した。(非常に優秀5>4>3>2>1非常に劣る)
【0089】
【0090】
上記表2に示されているものによれば、本発明の一実施例は比較例に比べて同等またはより優れた水準の低温安定性と接着力を有しながらも、耐抽出性および加工性に全て優れるように改善されたことを確認することができた。