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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】作業機械の状態管理装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
E02F9/26 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022572054
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2021044356
(87)【国際公開番号】W WO2022138058
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2020212699
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】村上 海人
(72)【発明者】
【氏名】椎名 健
(72)【発明者】
【氏名】須田 峻一
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 啓太
(72)【発明者】
【氏名】井町 渉
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-222003(JP,A)
【文献】特開2005-163470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアクチュエータにより駆動される複数の被駆動部材を複数の関節で回動可能に連結して構成された作業装置と、前記作業装置の姿勢情報を検出する姿勢検出装置と、前記アクチュエータの動作情報を検出する動作検出装置と、を備える作業機械の状態を管理するために、前記姿勢検出装置及び前記動作検出装置の検出結果に基づいて演算を行う制御装置と、前記制御装置の演算結果を認識可能な態様で出力する出力装置と、を備える作業機械の状態管理装置において、
前記複数の被駆動部材を複数の小領域に分割した要素に対応する複数の位置情報が記憶された不揮発性メモリと、
前記制御装置に前記不揮発性メモリから読み出した前記位置情報を入力する入力装置と、
前記制御装置からの制御信号に基づいて前記複数の位置情報を表す画像を表示する表示装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記複数の位置情報の中から選択された位置情報が前記入力装置から入力されると、入力された前記位置情報に基づいて所定の位置を設定し、
前記作業装置の姿勢情報及び前記アクチュエータの動作情報に基づいて、前記被駆動部材の累積損傷度を演算し、
前記被駆動部材の前記所定の位置における累積損傷度の時間的変化を記憶し、
設定された前記所定の位置における前記要素の累積損傷度の時間的変化を前記出力装置に出力する
ことを特徴とする作業機械の状態管理装置。
【請求項2】
複数のアクチュエータにより駆動される複数の被駆動部材を複数の関節で回動可能に連結して構成された作業装置と、前記作業装置の姿勢情報を検出する姿勢検出装置と、前記アクチュエータの動作情報を検出する動作検出装置と、を備える作業機械の状態を管理するために、前記姿勢検出装置及び前記動作検出装置の検出結果に基づいて演算を行う制御装置と、前記制御装置の演算結果を認識可能な態様で出力する出力装置と、を備える作業機械の状態管理装置において、
前記制御装置に位置情報を入力する入力装置と、表示装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記作業装置の姿勢情報及び前記アクチュエータの動作情報に基づいて、前記被駆動部材の累積損傷度を演算し、
前記被駆動部材の累積損傷度の時間的変化を記憶し、
前記表示装置に制御信号を出力し、前記被駆動部材の累積損傷度の場所的分布を前記表示装置に表示させ、
前記累積損傷度の場所的分布を基に指定された位置情報が前記入力装置から入力されると、入力された前記位置情報に基づいて所定の位置を設定し、
設定された前記所定の位置における累積損傷度の時間的変化を前記出力装置に出力する
ことを特徴とする作業機械の状態管理装置。
【請求項3】
請求項に記載の作業機械の状態管理装置において、
前記制御装置は、
仮想空間内における仮想視点から仮想の前記被駆動部材を見た画像に前記累積損傷度の場所的分布を合成した合成画像を前記表示装置に表示させ、
前記入力装置からの入力操作に基づいて、前記仮想視点の位置を変更する
ことを特徴とする作業機械の状態管理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械の状態管理装置において、
前記制御装置は、
複数の運転状況毎の前記累積損傷度の時間的変化を対比可能な態様で前記出力装置に出力する
ことを特徴とする作業機械の状態管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の状態管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ショベルに蓄積された損傷度の分布を表示画面に表示させるショベルの状態表示装置が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のショベルの状態表示装置は、相互に異なる複数の運転状況の下においてショベルの部品に蓄積された損傷度の分布を表すデータに基づいて、ショベルの部品に蓄積された損傷度の分布を、運転状況毎に、相互に対比可能な状態で、表示画面に画像として表示させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-222003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ショベルのような作業機械は、作業の時間的効率が重視されていることから、メンテナンス時を除いて稼働させることが好ましい。長期に亘って作業機械が稼働していると、稼働中に運転状況が刻々と変化し、様々な要因で部品の累積損傷度が変化する。特許文献1に記載の状態表示装置では、メンテナンスの際、メンテナンス時点において累積した損傷度の分布を表示させることによりメンテナンス時点における累積損傷度を確認することはできる。しかしながら、特許文献1に記載の状態表示装置は、作業機械の稼働中の累積損傷度の時間的な変化を確認することができるものではない。このため、特許文献1に記載の技術では、部品の寿命予測を適切に行うことができないおそれがある。
【0005】
本発明は、作業装置の被駆動部材の寿命予測を適切に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様による作業機械の状態管理装置は、複数のアクチュエータにより駆動される複数の被駆動部材を複数の関節で回動可能に連結して構成された作業装置と、前記作業装置の姿勢情報を検出する姿勢検出装置と、前記アクチュエータの動作情報を検出する動作検出装置と、を備える作業機械の状態を管理するために、前記姿勢検出装置及び前記動作検出装置の検出結果に基づいて演算を行う制御装置と、前記制御装置の演算結果を認識可能な態様で出力する出力装置と、を備える。作業機械の状態管理装置は、前記複数の被駆動部材を複数の小領域に分割した要素に対応する複数の位置情報が記憶された不揮発性メモリと、前記制御装置に前記不揮発性メモリから読み出した前記位置情報を入力する入力装置と、前記制御装置からの制御信号に基づいて前記複数の位置情報を表す画像を表示する表示装置と、を備える。前記制御装置は、前記複数の位置情報の中から選択された位置情報が前記入力装置から入力されると、入力された前記位置情報に基づいて所定の位置を設定し、前記作業装置の姿勢情報及び前記アクチュエータの動作情報に基づいて、前記被駆動部材の累積損傷度を演算し、前記被駆動部材の前記所定の位置における累積損傷度の時間的変化を記憶し、設定された前記所定の位置における前記要素の累積損傷度の時間的変化を前記出力装置に出力する。
本発明の第二の態様による作業機械の状態管理装置は、複数のアクチュエータにより駆動される複数の被駆動部材を複数の関節で回動可能に連結して構成された作業装置と、前記作業装置の姿勢情報を検出する姿勢検出装置と、前記アクチュエータの動作情報を検出する動作検出装置と、を備える作業機械の状態を管理するために、前記姿勢検出装置及び前記動作検出装置の検出結果に基づいて演算を行う制御装置と、前記制御装置の演算結果を認識可能な態様で出力する出力装置と、を備える。作業機械の状態管理装置は、前記制御装置に位置情報を入力する入力装置と、表示装置と、を備える。前記制御装置は、前記作業装置の姿勢情報及び前記アクチュエータの動作情報に基づいて、前記被駆動部材の累積損傷度を演算し、前記被駆動部材の累積損傷度の時間的変化を記憶し、前記表示装置に制御信号を出力し、前記被駆動部材の累積損傷度の場所的分布を前記表示装置に表示させ、前記累積損傷度の場所的分布を基に指定された位置情報が前記入力装置から入力されると、入力された前記位置情報に基づいて所定の位置を設定し、設定された前記所定の位置における累積損傷度の時間的変化を前記出力装置に出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業装置の被駆動部材の寿命予測を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る状態管理装置の構成を示す図。
図2】車載コントローラの機能ブロック図。
図3】S-N曲線の一例を示す図。
図4】車載コントローラにより実行される累積損傷度の時間変化グラフの出力処理の内容について示す図。
図5】表示装置に表示される位置選択画面の一例について示す図。
図6】表示装置に表示される位置指定画面の一例について示す図。
図7】表示装置に表示される位置指定画面の別の例について示す図。
図8】表示装置に表示される累積損傷度表示画面の一例について示す図。
図9】表示装置に表示される比較条件選択画面の一例について示す図。
図10】第2実施形態に係る状態管理装置の構成を示す図。
図11】車載コントローラ及び管理サーバの機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る作業機械の状態管理装置について説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る状態管理装置10の構成を示す図である。図1に示すように、第1実施形態に係る状態管理装置10は、作業機械100に搭載される。本実施形態では、作業機械100がクローラ式の油圧ショベルである例について説明する。作業機械100は、作業現場において、土木作業、建設作業、解体作業、浚渫作業等の作業を行う。
【0011】
作業機械100は、機体5と、機体5に取り付けられる作業装置4と、を備える。機体5は、クローラ式の走行体2と、走行体2上に旋回可能に設けられた旋回体3と、を有する。作業装置4は、旋回体3に取り付けられる多関節型の作業装置であって、複数のアクチュエータ、及び複数のアクチュエータにより駆動される複数の被駆動部材を有し、複数の被駆動部材を複数の関節で回動可能に連結して構成する。
【0012】
作業装置4は、3つの被駆動部材(ブーム11、アーム12及びバケット13)が直列的に連結された構成である。ブーム11は、その基端部が旋回体3の前部に、関節であるブームピン11pを介して回動可能に連結される。アーム12は、その基端部がブーム11の先端部に、関節であるアームピン12pを介して回動可能に連結される。バケット13は、アーム12の先端部に、関節であるバケットピン13pを介して回動可能に連結される。ブームピン11p、アームピン12p及びバケットピン13pは、互いに平行に配置され、各被駆動部材(ブーム11、アーム12及びバケット13)は同一面内で相対回転可能とされている。
【0013】
ブーム11は、アクチュエータ(油圧シリンダ)であるブームシリンダ11aの伸縮動作によって回転駆動される。アーム12は、アクチュエータ(油圧シリンダ)であるアームシリンダ12aの伸縮動作によって回転駆動される。バケット13は、アクチュエータ(油圧シリンダ)であるバケットシリンダ13aの伸縮動作によって回転駆動される。
【0014】
ブームシリンダ11aは、その一端側がブーム11に、他端側が旋回体3のフレームにそれぞれ回動可能に接続されている。アームシリンダ12aは、その一端側がアーム12に、他端側がブーム11にそれぞれ回動可能に接続されている。バケットシリンダ13aは、その一端側がバケットリンク(リンク部材)を介してバケット13に、他端側がアーム12にそれぞれ回動可能に接続されている。
【0015】
旋回体3は、オペレータが搭乗する運転室18と、エンジン及びエンジンにより駆動される油圧ポンプ等の油圧機器が収容されるエンジン室19と、を備える。エンジンは、作業機械100の動力源であり、例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関により構成される。
【0016】
作業機械100は、作業機械100の状態を管理する状態管理装置10と、作業機械100の姿勢情報(作業装置4の姿勢情報、及び機体5の姿勢情報)を検出する姿勢検出装置123と、アクチュエータ(ブームシリンダ11a、アームシリンダ12a、バケットシリンダ13a)の動作情報を検出する動作検出装置124とを備える。
【0017】
状態管理装置10は、表示装置122等を制御する制御装置である車載コントローラ110と、タッチパネルモニタ120と、通信ネットワークを通じて外部サーバと通信を行うための通信装置125とを備える。タッチパネルモニタ120は、状態管理装置10の利用者(本実施形態では、作業機械100のオペレータ)の操作に基づいて所定の情報を車載コントローラ110に入力する入力装置121と、車載コントローラ110からの制御信号に基づいて表示画像を表示画面に表示する表示装置122とを有する。表示装置122は、液晶ディスプレイ等の表示画面を有し、入力装置121は、液晶ディスプレイ上に形成されるタッチセンサを有する。表示装置122は、車載コントローラ110の演算結果を認識可能な態様で表示画面に出力する出力装置として機能する。
【0018】
姿勢検出装置123は、作業機械100の姿勢に関する情報(姿勢情報)を検出し、その検出結果を車載コントローラ110へ出力する複数の角度センサ(ブーム角度センサ、アーム角度センサ、バケット角度センサ、前後傾斜角度センサ、左右傾斜角度センサ及び旋回角度センサ)を備える。ブーム角度センサは、ブームピン11pに取り付けられ、旋回体3に対するブーム11の回動角度(ブーム角度)を表す姿勢情報を検出する。アーム角度センサは、アームピン12pに取り付けられ、ブーム11に対するアーム12の回動角度(アーム角度)を表す姿勢情報を検出する。バケット角度センサは、バケットピン13pに取り付けられ、バケット13の回動角度(バケット角度)を表す姿勢情報を検出する。前後傾斜角度センサは、旋回体3に取り付けられ、基準面(例えば水平面)に対する旋回体3の前後方向の傾斜角度(ピッチ角度)を表す姿勢情報を検出する。左右傾斜角度センサは、旋回体3に取り付けられ、旋回体3の左右方向の傾斜角度(ロール角度)を表す姿勢情報を検出する。旋回角度センサは、旋回中心軸に直交する平面内における走行体2に対する旋回体3の相対角度(旋回角度)を表す姿勢情報を検出する。
【0019】
姿勢検出装置123を構成する各角度センサには、例えば、部材の角度に応じた信号(電圧)を出力するポテンショメータを採用することができる。また、角度センサには、直交3軸の角速度及び加速度を取得し、取得したデータに基づき、部材の角度を演算し、演算結果を姿勢情報として車載コントローラ110に出力するIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)を採用することができる。
【0020】
動作検出装置124は、アクチュエータの動作に関する情報(動作情報)を検出し、その検出結果を車載コントローラ110へ出力する。動作検出装置124としては、例えば、シリンダ圧力計124a、作動油温度計124b、エンジン回転計124c、油圧ポンプ吐出圧力計124d、油圧モータ入口圧力計124e及び加速度計124fがある(図2参照)。
【0021】
シリンダ圧力計124aには、ブームシリンダ11aのボトム側油室内の作動油の圧力(ボトム圧)を表す動作情報を検出するブームボトム圧センサ、ブームシリンダ11aのロッド側油室内の作動油の圧力(ロッド圧)を表す動作情報を検出するブームロッド圧センサ、アームシリンダ12aのボトム側油室内の作動油の圧力(ボトム圧)を表す動作情報を検出するアームボトム圧センサ、アームシリンダ12aのロッド側油室内の作動油の圧力(ロッド圧)を表す動作情報を検出するアームロッド圧センサ、バケットシリンダ13aのボトム側油室内の作動油の圧力(ボトム圧)を表す動作情報を検出するバケットボトム圧センサ、及びバケットシリンダ13aのロッド側油室内の作動油の圧力(ロッド圧)を表す動作情報を検出するバケットロッド圧センサがある。
【0022】
作動油温度計124bは、図示しない油圧ポンプによって油圧モータや油圧シリンダ等に供給される作動油の温度を検出するセンサである。エンジン回転計124cは、図示しないエンジンの回転速度を検出する回転センサである。油圧ポンプ吐出圧力計124dは、図示しない油圧ポンプから油圧モータや油圧シリンダ等に供給される作動油の圧力を検出する圧力センサである。油圧モータ入口圧力計124eは、図示しない旋回油圧モータ、走行油圧モータ等へ供給される作動油の圧力を検出する圧力センサである。加速度計124fは、走行体2や旋回体3に生じる振動加速度を検出する加速度センサである。各センサ124a,124b,124c,124d,124e,124fは、検出結果をアクチュエータの動作情報として車載コントローラ110に出力する。
【0023】
図1に示すように、車載コントローラ110は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ111、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の不揮発性メモリ112、所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリ113、入力インタフェース114、出力インタフェース115及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。なお、車載コントローラ110は、1つのコンピュータで構成してもよいし、複数のコンピュータで構成してもよい。
【0024】
不揮発性メモリ112には、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、不揮発性メモリ112は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体である。プロセッサ111は、不揮発性メモリ112に記憶されたプログラムを揮発性メモリ113に展開して演算実行する処理装置であって、プログラムに従って入力インタフェース114、不揮発性メモリ112及び揮発性メモリ113から取り入れたデータに対して所定の演算処理を行う。
【0025】
入力インタフェース114は、入力された入力操作信号等をプロセッサ111で演算可能なデータに変換する。また、出力インタフェース115は、プロセッサ111での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を表示装置122及び通信装置125に出力する。
【0026】
図2は、車載コントローラ110の機能ブロック図である。車載コントローラ110は、姿勢検出装置123での検出結果(作業機械100の姿勢情報)及び動作検出装置124での検出結果(アクチュエータの動作情報)に基づいて、作業装置4を構成する被駆動部材(ブーム11、アーム12及びバケット13)の累積損傷度Dを演算し、その演算結果に基づいて生成した制御信号をタッチパネルモニタ120の表示装置122に出力する。以下、車載コントローラ110の機能について詳しく説明する。
【0027】
図2に示すように、車載コントローラ110は、情報を記憶する基本情報記憶部136及び表示情報記憶部137を有する。なお、基本情報記憶部136及び表示情報記憶部137の機能は、不揮発性メモリ112に記憶されたプログラムによって発揮される。車載コントローラ110は、姿勢情報及び動作情報を取得し、取得した情報を時刻に対応づけて基本情報記憶部136に記憶する動作状態管理部131と、入力装置121から運転状況を取得し、あるいは通信装置125を介して外部サーバから運転状況を取得し、あるいは基本情報記憶部136に記憶されている情報に基づいて運転状況を特定し、運転状況を時刻に対応付けて表示情報記憶部137に記憶する運転状況管理部132と、基本情報記憶部136に記憶されている姿勢情報及び動作情報(シリンダ圧力計124a、作動油温度計124b、エンジン回転計124c、油圧ポンプ吐出圧力計124d、油圧モータ入口圧力計124e及び加速度計124fから得られた動作情報)に基づいて被駆動部材の応力を演算する応力演算部133と、応力演算部133での演算結果に基づいて被駆動部材の累積損傷度を演算し、累積損傷度を時刻に対応付けて表示情報記憶部137に記憶する損傷度演算部134と、入力装置121からの入力信号及び表示情報記憶部137に記憶されている累積損傷度に基づいて表示画像を生成し、生成した表示画像を表示装置122に表示させるための制御信号を表示装置122に出力する出力制御部135とを備える。動作状態管理部131、応力演算部133、損傷度演算部134、運転状況管理部132、及び出力制御部135の機能は、プロセッサ111が不揮発性メモリ112に記憶されたプログラムを実行することによって発揮される。なお、応力演算部133は、演算した応力の時間的変化を記憶する応力記憶部としての機能も有し、その機能は、不揮発性メモリ112に記憶されたプログラムによって発揮される。本実施形態において時刻は、年、月、日、時、分、秒の時間情報を含み、車載コントローラ110のタイマ機能によって測定される。
【0028】
動作状態管理部131は、姿勢検出装置123で検出された作業機械100の姿勢情報、及び動作検出装置124で検出されたアクチュエータの動作情報を、所定の時間間隔で取得し、取得した時刻と対応づけて基本情報記憶部136に記憶する。基本情報記憶部136には、予め、作業装置4を構成する被駆動部材の三次元形状データ及び寸法データが記憶されている。三次元形状データには、作業装置4の複数の被駆動部材を小領域に分割したメッシュ(要素)に関する情報を含むメッシュデータが含まれる。メッシュデータには、複数の節点の座標と、メッシュ(要素)を規定する複数の節点の構造データと、が含まれる。また、基本情報記憶部136には、予め、複数の位置情報として、ブーム11における各接合部の要素の位置情報、アームに12おける各接合部の要素の位置情報、及び、バケット13における各接合部の要素の位置情報が記憶されている。また、基本情報記憶部136には、予め、作業装置4の姿勢に応じて境界条件を設定するための境界条件設定用データが記憶されている。
【0029】
応力演算部133は、周知の有限要素法に基づく応力解析により、作業装置4の被駆動部材に発生する応力を演算する。応力演算部133は、基本情報記憶部136に記憶されている境界条件設定用データを参照し、姿勢情報及び動作情報に基づいて、境界条件(荷重境界条件、変位境界条件)を設定する。
【0030】
応力演算部133は、姿勢情報及び動作情報に基づいて境界条件を設定し、有限要素法により被駆動部材を複数の小領域に分割した各要素に発生する応力を演算し、演算した各要素の応力を時刻毎に記憶する。損傷度演算部134は、応力演算部133で演算された各要素の応力の時間的変化に基づいて累積損傷度を演算する。これにより、被駆動部材における累積損傷度の場所的分布が得られる。
【0031】
累積損傷度は、応力の時間的変化から抽出される応力の極値に基づいて演算される。損傷度演算部134は、応力の時間的変化(時間波形)の極大値と極小値とを検出する。損傷度演算部134は、極大値と極小値に基づいて、応力が変動する範囲である応力範囲Δσを求めるとともに、応力範囲Δσごとの出現頻度を求める。応力範囲Δσiの出現頻度をniで表す。
【0032】
図3は、S-N曲線の一例を示す図である。図3に示すように、応力範囲Δσiの疲労寿命(破断繰返し回数)はNi回である。疲労寿命Niに対応する応力振幅をniとすると、線形累積損傷則により、累積損傷度Dは、次式(1)により表される。
【0033】
【数1】
【0034】
損傷度演算部134は、式(1)により、被駆動部材の各要素における累積損傷度Dを演算する。損傷度演算部134は、時刻毎の各要素における累積損傷度D(すなわち、累積損傷度Dの時間的変化)を表示情報記憶部137に記憶する。
【0035】
さらに、損傷度演算部134は、表示情報記憶部137に記憶されている運転状況の情報と、応力演算部133で演算された応力の時間的変化に基づいて、運転状況毎に累積損傷度Dを演算し、運転状況毎の累積損傷度Dの時間的変化を表示情報記憶部137に記憶する。
【0036】
図2に示す運転状況管理部132は、運転状況を取得し、あるいは運転状況を特定し、時刻と対応付けて運転状況を表示情報記憶部137に記憶する。運転状況とは、作業機械100の運転中に、作業機械100の部品(被駆動部材)の損傷度に影響を及ぼし得る外部的要因のことを指す。運転状況には、例えば、作業種別、作業現場、昼夜、作業現場の天気、オペレータ、オペレータの熟練度等の情報が含まれる。
【0037】
運転状況管理部132は、基本情報記憶部136に記憶されている姿勢情報及び動作情報に基づいて、作業種別を特定し、特定した作業種別を時刻と対応付けて表示情報記憶部137に記憶する。作業機械100は、例えば、作業装置4による掘削作業を開始してから掘削した土砂を持ち上げるとともに旋回体3を旋回させ、ダンプトラック等の運搬車両に土砂を積み込み、旋回体3及び作業装置4を掘削作業の開始位置まで戻す一連の作業である掘削・積込作業を行う。運転状況管理部132は、姿勢情報及び動作情報(シリンダ圧力計124a、作動油温度計124b、エンジン回転計124c、油圧ポンプ吐出圧力計124d、油圧モータ入口圧力計124e及び加速度計124fから取得した動作情報)に基づいて、掘削・積込作業が行われたか否かを判定する。運転状況管理部132は、掘削・積込作業が行われたと判定した場合、掘削・積込作業における開始時刻から終了時刻までの作業種別を「掘削・積込作業」として表示情報記憶部137に記憶する。また、作業機械100は、バケット13を前方に移動させることによりバケット13の背面で地面を締め固める締固め作業を行う。運転状況管理部132は、姿勢情報及び動作情報に基づいて、締固め作業が行われてるか否かを判定する。運転状況管理部132は、締固め作業が行われたと判定した場合、締固め作業における開始時刻から終了時刻までの作業種別を「締固め作業」として表示情報記憶部137に記憶する。なお、運転状況管理部132は、オペレータが操作する操作部材の操作量を加味して作業種別を特定してもよい。
【0038】
運転状況管理部132は、車載コントローラ110のタイマ機能により測定される時刻に基づいて昼及び夜を特定し、特定した昼夜情報を時刻と対応付けて表示情報記憶部137に記憶する。運転状況管理部132は、第1時刻から第2時刻までを昼と特定し、第2時刻から第1時刻までを夜と特定する。なお、第1時刻及び第2時刻は日によって変化するようにしてもよいし、変化しないようにしてもよい。運転状況管理部132は、通信装置125を介して外部サーバから取得した気象情報に基づいて、作業現場及び作業現場の天気を特定し、特定した作業現場及び作業現場の天気を時刻と対応付けて表示情報記憶部137に記憶する。運転状況管理部132は、入力装置121からオペレータの識別情報を取得し、取得した識別情報を表示情報記憶部137に記憶する。運転状況管理部132は、通信装置125を介して外部サーバに格納されているオペレータの熟練度テーブルを参照し、取得した識別情報に対応付けられている熟練度の情報を取得し、表示情報記憶部137に記憶する。なお、運転状況管理部132の運転状況の取得方法は、これらに限られない。例えば、作業機械100に天候センサを設け、天候センサからの気象情報に基づいて、作業現場の天気を特定してもよい。天候センサは、例えば、気温情報を測定する気温センサ、気圧情報を測定する気圧センサ、湿度情報を取得する湿度センサ等によって構成される。
【0039】
出力制御部135は、入力装置121からの入力情報に基づいて、表示情報記憶部137に記憶されている被駆動部材の所定の位置における累積損傷度の時間的変化を表す態様(表示画像)を表示装置122によって出力(表示)させる。また、出力制御部135は、入力装置121から累積損傷度の時間的変化を運転状況毎に比較するための操作信号が入力されると、複数の運転状況毎の累積損傷度の時間的変化を相互に対比可能な態様である表示画像を生成し、生成した表示画像を表示装置122によって出力(表示)させる。
【0040】
図4を参照して、車載コントローラ110により実行される累積損傷度の時間変化グラフの出力処理の内容について説明する。図4に示すフローチャートの処理は、状態管理装置10の利用者により入力装置121が操作され、入力装置121から車載コントローラ110に累積損傷度グラフを表示させるためのコマンドが入力されることにより開始される。
【0041】
ステップS100において、車載コントローラ110は、複数の被駆動部材(ブーム11、アーム12及びバケット13)の中から被駆動部材を1つだけ選択するための被駆動部材選択画面を表示装置122に表示させる。被駆動部材選択画面には、ブーム選択ボタン、アーム選択ボタン及びバケット選択ボタンが表示される。車載コントローラ110は、ステップS100の処理を完了するとステップS105へ進む。
【0042】
ステップS105において、車載コントローラ110は、被駆動部材が選択されたか否かを判定する。ブーム選択ボタン、アーム選択ボタン及びバケット選択ボタンのいずれかがタッチ操作されると、車載コントローラ110は、被駆動部材が選択されたと判定し、ステップS110へ進む。ブーム選択ボタン、アーム選択ボタン及びバケット選択ボタンのいずれもタッチ操作されていない場合、車載コントローラ110は、被駆動部材は選択されていないと判定する。被駆動部材選択判定処理(S105)は、被駆動部材が選択されたと判定されるまで、繰り返し実行される。以下では、アーム選択ボタンがタッチ操作された場合について説明する。
【0043】
ステップS110において、車載コントローラ110は、位置選択画面を表示装置122の表示画面122aに表示させる。図5は、表示装置122に表示される位置選択画面の一例について示す図である。表示装置122は、車載コントローラ110からの制御信号に基づいて不揮発性メモリ112に記憶されている複数の被駆動部材を複数の小領域に分割した要素に対応する複数の位置情報を表す画像を含む位置選択画面を読み出して表示装置122に表示する。例えば、図5に示すように、位置選択画面には、予め、不揮発性メモリ112に記憶されている(登録されている)アーム12における所定の位置を選択可能な登録位置選択領域140と、アーム12における任意の位置を指定可能な位置指定画面(図6参照)に遷移させるための任意指定領域141と、が表示される。
【0044】
登録位置選択領域140は、アーム12における複数の接合点の中から所定の接合点を選択するための領域である。登録位置選択領域140には、ブーム接合点を選択するためのブーム接合点選択ボタン140aと、バケット接合点を選択するためのバケット接合点選択ボタン140bと、アームシリンダ接合点を選択するためのアームシリンダ接合点選択ボタン140cと、バケットシリンダ接合点を選択するためのバケットシリンダ接合点選択ボタン140dと、が表示される。アーム12における接合点は、アーム12におけるその他の部位に比べて損傷の可能性が高い。このため、不揮発性メモリ112に、予め、損傷事例の多い箇所の位置として、アーム12における接合点の位置情報が記憶されている。なお、接合点とは、アーム12と他の部材(ブーム11、アームシリンダ12a、バケット13、バケットシリンダ13a)とを接合するピンと接触するアーム12の部位における代表的な位置のことを指す。
【0045】
図4に示すように、車載コントローラ110は、ステップS110の処理を完了するとステップS115へ進み、任意指定領域141が操作されたか否かを判定する。ステップS115において、任意指定領域141(図5参照)がタッチ操作されると、車載コントローラ110は、任意指定領域141が操作されたと判定し、ステップS130へ進む。ステップS115において、任意指定領域141がタッチ操作されていない場合、車載コントローラ110は、任意指定領域141は操作されていないと判定し、ステップS120へ進む。
【0046】
ステップS120において、車載コントローラ110は、所定の位置(接合点)が選択されたか否かを判定する。ステップS120において、接合点選択ボタン140a~140dのいずれかがタッチ操作されると、車載コントローラ110は、所定の位置(接合点)が選択されたと判定し、ステップS160へ進む。ステップS120において、接合点選択ボタン140a~140dのいずれもタッチ操作されていない場合、車載コントローラ110は、所定の位置(接合点)は選択されていないと判定し、ステップS115へ戻る。
【0047】
ステップS130において、車載コントローラ110は、不揮発性メモリ112に記憶されている作業機械100の姿勢情報及び動作情報(シリンダ圧力計124a、作動油温度計124b、エンジン回転計124c、油圧ポンプ吐出圧力計124d、油圧モータ入口圧力計124e及び加速度計124fなどから取得したアクチュエータの動作情報)に基づいて、有限要素法によりアーム12のメッシュデータの各要素における応力を演算する。各要素における応力は、基準時刻(例えば、作業機械100の出荷時の時刻)から現在時刻(不揮発性メモリ112に記憶されている最新の時刻)までの間において、所定時間間隔毎に演算され、不揮発性メモリ112に記憶される。なお、基準時刻から現在時刻までの間の所定時刻までの演算が既に完了している場合には、上記所定時刻から現在時刻までの応力の演算のみを行う。
【0048】
車載コントローラ110は、ステップS130の処理を完了するとステップS135へ進み、累積損傷度の演算処理を実行する。ステップS135において、車載コントローラ110は、各要素における応力の時間的変化に基づいて、各要素における累積損傷度を演算し、不揮発性メモリ112に記憶する。各要素における累積損傷度は、基準時刻から現在時刻までの間において、所定時間間隔毎に演算され、不揮発性メモリ112に記憶される。なお、基準時刻から現在時刻までの間の所定時刻までの演算が既に完了している場合には、上記所定時刻から現在時刻までの累積損傷度の演算のみを行う。
【0049】
不揮発性メモリ112には、運転状況、各要素の応力及び時刻が対応付けられて記憶されている。ステップS135において、車載コントローラ110は、不揮発性メモリ112に記憶されている情報に基づいて、運転状況毎に各要素の累積損傷度を演算し、運転状況毎の累積損傷度の時間的変化を不揮発性メモリ112に記憶する。つまり、不揮発性メモリ112には、運転状況に関わらずに演算された累積損傷度の時間的変化と、運転状況毎に演算された累積損傷度の時間的変化とが記憶される。
【0050】
車載コントローラ110は、ステップS135の処理を完了するとステップS140へ進み、不揮発性メモリ112に記憶されている現在時刻の各要素の累積損傷度(運転状況に関わらずに演算された累積損傷度)に基づいて、位置指定画面を表示装置122の表示画面122aに表示させる。図6は、表示装置122に表示される位置指定画面の一例について示す図であり、図7は、表示装置122に表示される位置指定画面の別の例について示す図である。
【0051】
図6及び図7に示すように、位置指定画面には、矩形状の分布図表示領域142と、画像移動ボタン143と、表示形式変更ボタン144と、拡大ボタン145aと、縮小ボタン145bと、決定ボタン146とが表示される。分布図表示領域142には、現在(最新)の時刻におけるアーム12の累積損傷度の場所的分布を表すアーム画像142a,142cが表示される。また、分布図表示領域142の中心には、中心マーク142bが表示される。このように、表示装置122は、車載コントローラ110からの制御信号に基づいて被駆動部材の累積損傷度の場所的分布を表示する。
【0052】
車載コントローラ110は、画像移動ボタン143がタッチ操作されると、アーム画像142a,142cを分布図表示領域142内で移動させる。画像移動ボタン143は、上移動ボタン、下移動ボタン、左移動ボタン及び右移動ボタンを有する。例えば、利用者によって、上移動ボタンがタッチ操作されると、タッチ操作されている間だけ、アーム画像142a,142cが分布図表示領域142内で上方向に移動する。
【0053】
車載コントローラ110は、拡大ボタン145aがタッチ操作されると、中心マーク142bを中心にアーム画像142a,142cを分布図表示領域142内で拡大させる。車載コントローラ110は、縮小ボタン145bがタッチ操作されると、中心マーク142bを中心にアーム画像142a,142cを分布図表示領域142内で縮小させる。
【0054】
車載コントローラ110は、表示形式変更ボタン144がタッチ操作される度に、分布図表示領域142に表示されるアーム画像142a,142cの表示形式を変更する。図6に示すように、二次元形式でアーム画像142aが表示されている状態において、利用者によって、表示形式変更ボタン144がタッチ操作されると、車載コントローラ110は、図7に示す位置指定画面を表示装置122に表示させる。
【0055】
図7に示す位置指定画面には、分布図表示領域142に三次元形式のアーム画像142cと、三次元形式のアーム画像142cを上下左右方向に回転させるための複数の回転ボタン147が表示される。図7に示すように、三次元形式でアーム画像142aが表示されている状態において、利用者によって、表示形式変更ボタン144がタッチ操作されると、車載コントローラ110は、図6に示す位置指定画面を表示装置122に表示させる。
【0056】
車載コントローラ110は、仮想空間内における仮想視点から仮想のアーム12を見た画像に累積損傷度の場所的分布を合成した合成画像をアーム画像142a,142cとして生成し、表示装置122に表示させる。図6に示す例では、車載コントローラ110は、アーム12の三次元形状データを左側の視点から見た画像に累積損傷度の場所的分布を合成した合成画像をアーム画像142aとして生成する。図7に示す例では、利用者によって回転ボタン147がタッチ操作されると、車載コントローラ110は、入力装置121からの入力操作に基づいて、アーム画像142cを生成するための仮想視点の位置を変更してアーム画像142cを更新する。これにより、利用者が、回転ボタン147を操作することにより、表示装置122に表示されている仮想的なアーム12が回転するように、表示画像が連続的に変化する。したがって、利用者は、図6に示す位置指定画面では指定することができなかった位置(例えば、仮想のアーム12の右側面上の位置、上面上の位置等)を指定することができる。
【0057】
図6及び図7に示す例では、アーム画像142a,142cは、アーム12の輪郭線と、累積損傷度の大きさを表す色とによって形成されるコンター図である。利用者によって、アーム画像142a,142cは、拡大されたり、縮小されたり、上下左右に移動されたりする。利用者は、アーム画像142a,142cにおいて、累積損傷度の時間的変化を確認したい位置と、中心マーク142bとを重ね、決定ボタン146をタッチ操作する。決定ボタン146がタッチ操作されると、車載コントローラ110は、アーム画像142a,142cに重なる中心マーク142bの位置に基づいて、累積損傷度の時間的変化を表示するアーム12における確認位置を設定する。
【0058】
なお、決定ボタン146がタッチ操作されたときに、中心マーク142bがアーム画像142a,142cに重なっていない場合、車載コントローラ110は、中心マーク142bがアーム画像142a,142cに重なっていないため、累積損傷度の時間変化グラフを表示することができないことを表すメッセージ等の画像を表示装置122に表示させる。
【0059】
図4に示すように、車載コントローラ110は、ステップS140において位置指定画面を表示装置122に表示させるとステップS145へ進む。ステップS145において、車載コントローラ110は、累積損傷度の時間的変化を表示させる所定の位置が指定されたか否かを判定する。ステップS145において、中心マーク142bがアーム画像142a,142cに重なっている状態で決定ボタン146がタッチ操作されると、車載コントローラ110は、所定の位置が指定されたと判定し、ステップS150へ進む。ステップS145において、中心マーク142bがアーム画像142a,142cに重なっている状態で決定ボタン146がタッチ操作されていない場合、車載コントローラ110は、所定の位置は指定されていないと判定する。位置指定判定処理(S145)は、所定の位置が指定されたと判定されるまで、繰り返し実行される。
【0060】
ステップS150において、車載コントローラ110は、不揮発性メモリ112を参照し、ステップS145で指定された位置に対応する要素における累積損傷度Dの時間変化グラフを生成する。車載コントローラ110は、生成した累積損傷度Dの時間変化グラフを表示装置122の表示画面122aに表示させる。このように、車載コントローラ110は、累積損傷度の場所的分布を基に指定された位置情報が入力装置121から入力されると(ステップS145でY)、入力された位置情報に基づいて所定の位置を設定し、設定された所定の位置における累積損傷度の時間的変化を表示装置122に出力する。
【0061】
図8は、表示装置122に表示される累積損傷度表示画面の一例について示す図である。図8に示すように、累積損傷度表示画面には、累積損傷度の時間変化グラフ151と、表示期間変更ボタン154a,154bと、時間軸切替ボタン148aと、比較表示選択ボタン148bと、終了ボタン148cとが表示される。累積損傷度の時間変化グラフ151は、横軸が時間軸であり、縦軸が累積損傷度を表している。図8に示す例では、1日(24時間)が単位時間として設定され、単位時間毎の累積損傷度が折れ線グラフ形式で表示されている。なお、累積損傷度の時間変化グラフ151の形式は、折れ線グラフ形式に限らず、棒グラフ形式であってもよい。
【0062】
表示期間変更ボタン154a,154bは、表示画面122aに表示される累積損傷度の時間変化グラフ151の表示期間を変更するための操作ボタンである。図示する例では、1月1日から1月8日までが表示期間である。車載コントローラ110は、例えば、図示する状態において、表示期間変更ボタン154aが1度タッチ操作されると、1月2日から1月9日までを表示期間として、この期間内の累積損傷度の時間変化グラフ151を表示装置122に表示させる。その後、表示期間変更ボタン154bが1度タッチ操作されると、1月1日から1月8日までを表示期間として、この期間内の累積損傷度の時間変化グラフ151を表示装置122に表示させる。
【0063】
時間軸切替ボタン148aは、時間軸の単位時間を変更するための操作ボタンである。車載コントローラ110は、時間軸切替ボタン148aがタッチ操作される度に、時間軸の単位時間を「1日」、「1週間」、「1月」、「1年」に順番に切り替える。なお、単位時間の設定は、これらに限定されず、任意の期間を単位時間として設定できるようにしてもよい。例えば、オペレータの交代が規則的であれば、1作業サイクルを単位時間として選択できるようにしてもよい。車載コントローラ110は、設定した単位時間に応じて、累積損傷度を表示する1目盛の幅を自動で調整する。
【0064】
比較表示選択ボタン148bは、運転状況の比較条件を選択するための比較条件選択画面を表示させるための操作ボタンである。図8に示すように、累積損傷度表示画面が表示されている状態において、利用者によって、比較表示選択ボタン148bがタッチ操作されると、車載コントローラ110は、比較条件選択画面を表示装置122に表示させる。
【0065】
図9は、表示装置122に表示される比較条件選択画面の一例について示す図である。図9に示すように、比較条件選択画面には、作業種別を比較条件として選択するための作業種別選択ボタン149a、作業現場を比較条件として選択するための作業現場選択ボタン149b、昼夜を比較条件として選択するための昼夜選択ボタン149c、天気を比較条件として選択するための天気選択ボタン149d、オペレータを比較条件として選択するためのオペレータ選択ボタン149eとが表示される。
【0066】
車載コントローラ110は、昼夜選択ボタン149cがタッチ操作されると、昼夜を比較条件に設定し、図8に示すように、表示装置122に累積損傷度表示画面を表示させる。累積損傷度表示画面の比較条件表示領域156には、設定された比較条件の情報が表示される。車載コントローラ110は、不揮発性メモリ112に記憶された運転状況毎の累積損傷度の時間的変化に基づいて、設定された比較条件に対応する第1運転状況(図示する例では、昼)での作業に起因する累積損傷度の時間的変化を表す第1累積損傷度線152aと、第2運転状況(図示する例では、夜)での作業に起因する累積損傷度の時間的変化を表す第2累積損傷度線152bを並べて表示する。このように、本実施形態では、運転状況毎の累積損傷度の時間的変化を対比可能な態様で表示することができる。
【0067】
なお、図8に示す例では、第1累積損傷度線152aと第2累積損傷度線152bが同じグラフ領域内に表示される例について示しているが、それぞれを別のグラフ領域に表示させてもよい。換言すれば、図8に示す例では、第1累積損傷度線152aと第2累積損傷度線152bの横軸(時間軸)と縦軸は共通であるが、第1累積損傷度線152aの横軸(時間軸)及び縦軸と、第2累積損傷度線152bの横軸(時間軸)及び縦軸とは、個別に設定してもよい。
【0068】
車載コントローラ110は、第1累積損傷度線152aの近傍の第1運転状況名表示領域157aに、第1運転状況を表す単語(図示する例では、昼)の画像を表示させる。また、車載コントローラ110は、第2累積損傷度線152bの近傍の第2運転状況名表示領域157bに、第2運転状況を表す単語(図示する例では、夜)の画像を表示させる。
【0069】
図示しないが、車載コントローラ110は、作業現場選択ボタン149b(図9参照)がタッチ操作されると、作業現場を比較条件に設定し、表示装置122に累積損傷度表示画面を表示させる。この場合、車載コントローラ110は、作業現場A(第1運転状況)での作業に起因する累積損傷度の時間的変化を表す第1累積損傷度線152aと、作業現場B(第2運転状況)での作業に起因する累積損傷度の時間的変化を表す第2累積損傷度線152bと、を表示装置122に表示させる。また、車載コントローラ110は、第1運転状況名表示領域157aに「作業現場A」の文字画像を表示させ、第2運転状況名表示領域157bに「作業現場B」の文字画像を表示させる。なお、車載コントローラ110は、作業現場が3つ以上ある場合には、3本以上の累積損傷度線を表示装置122に表示させる。
【0070】
図示しないが、車載コントローラ110は、作業種別選択ボタン149a(図9参照)がタッチ操作されると、作業種別を比較条件に設定し、表示装置122に累積損傷度表示画面を表示させる。この場合、車載コントローラ110は、掘削・積込作業(第1運転状況)での作業に起因する累積損傷度の時間的変化を表す第1累積損傷度線152aと、締固め作業(第2運転状況)での作業に起因する累積損傷度の時間的変化を表す第2累積損傷度線152bと、を表示装置122に表示させる。また、車載コントローラ110は、第1運転状況名表示領域157aに「掘削・積込作業」の文字画像を表示させ、第2運転状況名表示領域157bに「締固め作業」の文字画像を表示させる。なお、車載コントローラ110は、作業種別が3つ以上ある場合には、3本以上の累積損傷度線を表示装置122に表示させる。
【0071】
図示しないが、車載コントローラ110は、天気選択ボタン149d(図9参照)がタッチ操作されると、天気を比較条件に設定し、表示装置122に累積損傷度表示画面を表示させる。この場合、車載コントローラ110は、晴天(第1運転状況)での作業に起因する累積損傷度の時間的変化を表す第1累積損傷度線152aと、雨天(第2運転状況)での作業に起因する累積損傷度の時間的変化を表す第2累積損傷度線152bと、を表示装置122に表示させる。また、車載コントローラ110は、第1運転状況名表示領域157aに「晴天」の文字画像を表示させ、第2運転状況名表示領域157bに「雨天」の文字画像を表示させる。
【0072】
図示しないが、車載コントローラ110は、オペレータ選択ボタン149e(図9参照)がタッチ操作されると、オペレータを比較条件に設定し、表示装置122に累積損傷度表示画面を表示させる。この場合、車載コントローラ110は、オペレータAにより操作されている状況(第1運転状況)での作業に起因する累積損傷度の時間的変化を表す第1累積損傷度線152aと、オペレータBにより操作されている状況(第2運転状況)での作業に起因する累積損傷度の時間的変化を表す第2累積損傷度線152bと、を表示装置122に表示させる。また、車載コントローラ110は、第1運転状況名表示領域157aに「オペレータA」の文字画像を表示させ、第2運転状況名表示領域157bに「オペレータB」の文字画像を表示させる。なお、車載コントローラ110は、第1運転状況名表示領域157aにオペレータAの熟練度を表示させ、第2運転状況名表示領域157bにオペレータBの熟練度を表示させてもよい。
【0073】
なお、図8には、昼夜が比較条件に設定されているときの画面の一例について示しているが、ステップS145(図4参照)において、所定の位置が指定されたと判定された場合に、最初に表示装置122に表示させる画面には、運転状況に関わらずに演算された累積損傷度の時間的変化のグラフを表示させてもよい。また、比較条件が設定された後に表示される画面に、運転状況に関わらずに演算された累積損傷度の時間的変化のグラフを表示させるためのボタンを表示させてもよい。この場合、このボタンがタッチ操作された場合に、車載コントローラ110は、運転状況に関わらずに演算された累積損傷度の時間的変化のグラフを表示装置122の表示画面122aに表示させる。
【0074】
図4に示すように、車載コントローラ110は、ステップS150の処理を完了するとステップS190へ進み、終了操作がなされたか否かを判定する。ステップS190において、終了ボタン148c(図8参照)がタッチ操作されると、車載コントローラ110は、終了操作がなされたと判定し、累積損傷度表示画面を非表示にして図4のフローチャートに示す処理を終了する。ステップS190において、終了ボタン148cがタッチ操作されていない場合、車載コントローラ110は、終了操作はなされていないと判定する。終了操作判定処理(S190)は、終了操作がなされたと判定されるまで、繰り返し実行される。なお、終了操作判定処理(S190)において終了操作がなされたと判定された場合、車載コントローラ110は、再びステップS100に戻って、ブーム11、アーム12及びバケット13の中から被駆動部材を1つ選択するための被駆動部材選択画面を表示装置122に表示させてもよい。
【0075】
ステップS160において、車載コントローラ110は、ステップS130の処理と同様の応力演算処理を実行し、ステップS165へ進む。ステップS165において、車載コントローラ110は、ステップS135と同様の累積損傷度演算処理を実行し、ステップS180へ進む。
【0076】
ステップS180において、車載コントローラ110は、ステップS150と同様、累積損傷度の時間変化グラフ151の表示処理を実行し、ステップS190へ進む。なお、ステップS150の処理は、ステップS145において指定された位置の累積損傷度の時間変化グラフ151を表示する処理であった。これに対し、ステップS180の処理はステップS120で選択された位置の累積損傷度の時間変化グラフ151を表示する処理であり、この点がステップS150の処理とは異なる。つまり、車載コントローラ110は、複数の位置情報の中から選択された位置情報が入力装置121から入力されると(ステップS120でY)、入力された位置情報に基づいて所定の位置を設定し、設定された所定の位置における要素の累積損傷度の時間的変化を表示装置122に出力する(ステップS180)。
【0077】
以上のとおり、本実施形態に係る状態管理装置10は、長期間に亘って稼働し続ける作業機械100のメンテナンス作業の際、その時点での累積損傷度だけでなく、前回のメンテナンスから今回のメンテナンスまでの累積損傷度の時間的変化の出力が可能である。このため、利用者は、前回のメンテナンスから今回のメンテナンスまでに運転状況が変化した場合に、運転状況の変化に起因する累積損傷度の時間的変化(上昇率)を確認することができる。これにより、利用者は、被駆動部材の寿命予測を適切に行うことができる。
【0078】
なお、上記累積損傷度の時間的変化とは別に、作業機械100による採掘量、維持管理コストなどの時間的変化を取得し、これらと累積損傷度の時間的変化と対比することで、次回のメンテナンスの時期の選定、経済的管理などといった長期的な作業計画を適切に立てることができる。
【0079】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
【0080】
(1)状態管理装置10は、作業機械100の状態を管理する装置である。本実施形態では、状態管理装置10は、作業機械100に搭載される。作業機械100は、複数のアクチュエータ(ブームシリンダ11a、アームシリンダ12a及びバケットシリンダ13a)により駆動される複数の被駆動部材(ブーム11、アーム12及びバケット13)を複数の関節で回動可能に連結して構成された作業装置4と、作業装置4の姿勢情報(ブーム角度、アーム角度及びバケット角度)を検出する姿勢検出装置123と、アクチュエータの動作情報(ブームシリンダ11a、アームシリンダ12a及びバケットシリンダ13aの圧力等)を検出する動作検出装置124とを備える。
【0081】
状態管理装置10は、作業機械100の状態を管理するために、姿勢検出装置123及び動作検出装置124の検出結果に基づいて演算を行う制御装置である車載コントローラ110と、車載コントローラ110の演算結果を認識可能な態様で出力する出力装置である表示装置122と、を備える。車載コントローラ110は、作業装置4の姿勢情報及びアクチュエータの動作情報に基づいて、被駆動部材の累積損傷度を演算し、作業機械100の被駆動部材の所定の位置における累積損傷度の時間的変化を記憶し、所定の位置における累積損傷度の時間的変化を表示装置122に出力する。表示装置122は、所定の位置における累積損傷度の時間的変化を表示画面122aに表示する。
【0082】
これにより、状態管理装置10の利用者は、被駆動部材の所定の位置の累積損傷度の時間的変化を確認することができる。このため、利用者は、累積損傷度の長期的な予測、すなわち作業装置4の被駆動部材の寿命予測を適切に行うことができる。さらに、利用者は、累積損傷度の時間的変化に基づいて、作業機械100による作業内容、単位時間当たりの作業量、作業期間、作業機械100の維持管理コストなどを含む、長期的な作業計画を適切に立てることができる。
【0083】
(2)状態管理装置10は、複数の被駆動部材を複数の小領域に分割した要素に対応する複数の位置情報が記憶された不揮発性メモリ112と、車載コントローラ110に入力操作信号を入力する入力装置121と、車載コントローラ110からの制御信号に基づいて複数の位置情報を表す画像を表示する表示装置122と、を備える。入力装置121は、不揮発性メモリ112から読み出した位置情報を車載コントローラ110に入力する。車載コントローラ110は、複数の位置情報の中から選択された位置情報が入力装置121から入力されると、入力された位置情報に基づいて所定の位置を設定し、設定された所定の位置における要素の累積損傷度の時間的変化を表示装置122に出力する。表示装置122は、所定の位置における累積損傷度の時間的変化を表示画面122aに表示する。
【0084】
この構成によれば、作業機械100の損傷事例の多い箇所の位置(すなわち、累積損傷度が比較的高くなりやすい位置)の情報を、予め不揮発性メモリ112に記憶しておくことができる。本実施形態では、予め、複数の位置情報として、被駆動部材同士の接合部の位置情報、被駆動部材とアクチュエータ(油圧シリンダ)との接合部の位置情報が不揮発性メモリ112に記憶されている。これにより、損傷事例の多い箇所の累積損傷度の時間的変化のグラフを簡易な操作で表示装置122に表示させることができる。つまり、本実施形態によれば、利用者の操作時間を短縮することができる。
【0085】
(3)状態管理装置10は、車載コントローラ110に位置情報を入力する入力装置121と、車載コントローラ110からの制御信号に基づいて被駆動部材の累積損傷度の場所的分布を表示する表示装置122と、を備える。車載コントローラ110は、累積損傷度の場所的分布を基に指定された位置情報が入力装置121から入力されると、入力された位置情報に基づいて所定の位置を設定し、設定された所定の位置における累積損傷度の時間的変化を表示装置122に出力する。表示装置122は、所定の位置における累積損傷度の時間的変化を表示画面122aに表示する。これにより、利用者は、累積損傷度の場所的分布を確認しながら、累積損傷度の時間的変化を確認したい位置を自由に指定することができる。
【0086】
(4)車載コントローラ110は、仮想空間内における仮想視点から仮想の被駆動部材を見た画像に累積損傷度の場所的分布を合成した合成画像を表示装置122に表示させる。車載コントローラ110は、入力装置121からの入力操作に基づいて、仮想視点の位置を変更する。この構成によれば、利用者は、被駆動部材を任意の角度から見た画像を確認しながら、累積損傷度の時間的変化を確認したい位置を自由に指定することができる。
【0087】
(5)車載コントローラ110は、複数の運転状況毎の累積損傷度の時間的変化を対比可能な態様で表示装置122に出力する。表示装置122は、複数の運転状況毎の累積損傷度の時間的変化を対比可能な態様の表示画像を表示画面122aに表示する。これにより、累積損傷度の時間的変化への影響が大きい運転状況を容易に特定することができる。その結果、利用者は、長期的な作業計画をより適切に立てることができる。
【0088】
<第2実施形態>
図10及び図11を参照して、第2実施形態に係る状態管理装置10Bについて説明する。なお、図中、第1実施形態と同一または相当部分には、同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。第1実施形態では、状態管理装置10が管理対象である作業機械100に搭載されている例(図1参照)について説明した。
【0089】
これに対して、本第2実施形態に係る状態管理装置10Bは、管理対象である作業機械100の外部に設けられる外部設備に設置されている。図10は、第2実施形態に係る状態管理装置10Bの構成を示す図である。図10に示すように、状態管理装置10Bは、作業機械100の状態を遠隔で管理(把握、監視)する外部装置である。状態管理装置10Bは、例えば、作業機械100の製造業者(メーカー)の本社、支社、工場等の施設、作業機械100のレンタル会社、サーバの運営を専門的に行うデータセンタ、作業機械100を所有するオーナーの施設等内に設けられる外部設備に設置される。
【0090】
本第2実施形態では、作業機械100に搭載される情報管理装置10Aと、外部設備に設置される状態管理装置10Bと、携帯端末10Cと、によって状態管理システム10Dが構成される。携帯端末10Cは、スマートフォン、タブレットPC、ノートPC等である。
【0091】
状態管理システム10Dは、作業現場で作業を行う作業機械100に搭載される情報管理装置10Aと、作業現場から離れた場所に設置される状態管理装置10Bと、作業現場で作業機械100のメンテナンスを行うメンテナンス作業員が所持する携帯端末10Cとの間で広域ネットワークである通信ネットワーク190を介して双方向通信を行う。
【0092】
通信ネットワーク190は、携帯電話事業者等が展開する携帯電話通信網(移動通信網)、インターネット等である。例えば、情報管理装置10Aと無線基地局191とが携帯電話通信網(移動通信網)で接続されている場合、無線基地局191は、情報管理装置10Aから車体データを受信すると、受信した車体データをインターネットを介して状態管理装置10Bに送信する。状態管理装置10Bは、情報管理装置10Aから取得した車体データを表示装置182の表示画面に表示させる。
【0093】
状態管理装置10Bは、表示装置182、印刷装置183及び通信装置185を制御する制御装置である管理サーバ170と、通信ネットワーク190を通じて情報管理装置10A及び携帯端末10Cと通信を行うための通信装置185と、状態管理装置10Bの利用者の操作に基づいて所定の情報を管理サーバ170に入力する入力装置181と、管理サーバ170からの制御信号に基づいて表示画像を表示画面に表示する表示装置182と、管理サーバ170からの制御信号に基づいて印刷画像を紙に印刷する印刷装置183とを備える。
【0094】
管理サーバ(制御装置)170は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ171、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の不揮発性メモリ172、所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリ173、入力インタフェース174、出力インタフェース175及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。なお、管理サーバ170は、1つのコンピュータで構成してもよいし、複数のコンピュータで構成してもよい。
【0095】
不揮発性メモリ172には、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、不揮発性メモリ172は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体である。プロセッサ171は、不揮発性メモリ172に記憶されたプログラムを揮発性メモリ173に展開して演算実行する処理装置であって、プログラムに従って入力インタフェース174、不揮発性メモリ172及び揮発性メモリ173から取り入れたデータに対して所定の演算処理を行う。
【0096】
入力インタフェース174は、入力された信号をプロセッサ171で演算可能なデータに変換する。また、出力インタフェース175は、プロセッサ171での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を表示装置182、印刷装置183及び通信装置185に出力する。
【0097】
図11は、車載コントローラ110A及び管理サーバ170の機能ブロック図である。車載コントローラ110Aは、第1実施形態で説明した動作状態管理部131と、基本情報記憶部136と、運転状況管理部132とを有する。また、車載コントローラ110Aは、第1実施形態で説明した表示情報記憶部137に代えて運転状況情報記憶部237を有し、第1実施形態で説明した出力制御部135に代えて出力制御部235を有している。
【0098】
運転状況管理部132は、運転状況を時刻と対応付けて運転状況情報記憶部237に記憶する。出力制御部235は、通信装置125によって、基本情報記憶部136に記憶されている作業機械100の姿勢情報及びアクチュエータの動作情報、並びに運転状況情報記憶部237に記憶されている運転状況を、作業機械100の識別情報とともに通信ネットワーク190を介して管理サーバ170に送信する。
【0099】
管理サーバ170は、入力制御部331と、機械情報記憶部332と、応力演算部333と、損傷度演算部334と、出力情報記憶部335と、出力制御部336とを有する。入力制御部331、応力演算部333、損傷度演算部334及び出力制御部336の機能は、プロセッサ171が不揮発性メモリ172に記憶されたプログラムを実行することによって発揮される。機械情報記憶部332及び出力情報記憶部335の機能は、不揮発性メモリ172に記憶されたプログラムによって発揮される。なお、応力演算部333は、演算した応力の時間的変化を記憶する応力記憶部としての機能も有し、その機能は、不揮発性メモリ172に記憶されたプログラムによって発揮される。
【0100】
入力制御部331は、通信装置185によって、車載コントローラ110Aから送信された姿勢情報、動作情報、運転状況及び作業機械100の識別情報を取得し、機械情報記憶部332に記憶する。また、入力制御部331は、通信装置185によって、携帯端末10Cからの情報も取得する。携帯端末10Cには、管理サーバ170からの情報に基づいて、図5図9に示すような画面を表示可能なアプリケーションソフトウェアがインストールされている。
【0101】
機械情報記憶部332には、作業装置4を構成する被駆動部材の三次元形状データ及び寸法データが記憶されている。三次元形状データ及び寸法データは、作業機械100の識別情報に関連付けられている。なお、三次元形状データには、作業装置4の被駆動部材のメッシュデータが含まれる。また、機械情報記憶部332には、予め、複数の位置情報として、ブーム11における各接合部の要素の位置情報、アームに12おける各接合部の要素の位置情報、及び、バケット13における各接合部の要素の位置情報が記憶されている。また、機械情報記憶部332には、予め、作業装置4の姿勢に応じて境界条件を設定するための境界条件設定用データが記憶されている。
【0102】
応力演算部333は、第1実施形態で説明した応力演算部133と同様の機能を有し、機械情報記憶部332に記憶されている情報に基づいて、周知の有限要素法に基づく応力解析により、作業装置4の被駆動部材に発生する応力を演算し、記憶する。損傷度演算部334は、第1実施形態で説明した損傷度演算部134と同様の機能を有し、応力演算部333で演算された応力の時間的変化に基づいて、被駆動部材の累積損傷度を演算し、その演算結果を出力情報記憶部335に記憶する。
【0103】
出力制御部336は、第1実施形態で説明した出力制御部135と同様、入力装置181からの入力情報に基づいて、出力情報記憶部335に記憶されている被駆動部材の所定の位置における累積損傷度の時間的変化(表示画像)を表示装置182によって出力(表示)させる。
【0104】
なお、第2実施形態では、出力制御部336は、入力装置181からの入力情報に基づいて、出力情報記憶部335に記憶されている被駆動部材の所定の位置における累積損傷度の時間的変化(印刷画像)を印刷装置183によって出力(印刷)させる。また、出力制御部336は、携帯端末10Cからの入力情報に基づいて、出力情報記憶部335に記憶されている被駆動部材の所定の位置における累積損傷度の時間的変化を通信装置185によって携帯端末10Cに出力(送信)させる。携帯端末10Cは、管理サーバ170から入力された情報に基づいて、累積損傷度の時間的変化(表示画像)を表示画面に表示させる。
【0105】
このような第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
【0106】
(6)状態管理装置10Bは、作業機械100から遠く離れた外部設備に設置されている。したがって、利用者は、遠隔から作業機械100の被駆動部材の寿命予測を含む作業機械100の状態管理を実施することができる。
【0107】
(7)状態管理装置10Bは、累積損傷度の時間的変化を携帯端末(外部の機器)10Cに送信(出力)する通信装置(出力装置)185を備える。したがって、メンテナンス作業員は、作業機械100に搭乗することなく、作業機械100の被駆動部材の寿命予測を含む作業機械100の状態管理を実施することができる。
【0108】
(8)状態管理装置10Bは、累積損傷度の時間的変化を印刷(出力)する印刷装置(出力装置)183を備える。したがって、累積損傷度の時間的変化をメンテナンスレポートのような書類として出力することができる。
【0109】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0110】
<変形例1>
運転状況の種類は、上記実施形態で説明したものに限定されない。例えば、作業現場の地質を運転状況として不揮発性メモリ112に記憶してもよい。この構成では、地質毎に累積損傷度の時間的変化が出力される。この構成によれば、地質が損傷度の上昇率に与える影響を考慮した適切な被駆動部材の寿命予測が可能になる。
【0111】
<変形例2>
制御装置(110,170)は、所定期間内の累積損傷度の時間的変化とともに、所定期間内の別のデータの時間的変化を出力装置に出力するようにしてもよい。例えば、制御装置(110,170)は、所定期間内の累積損傷度の時間的変化のグラフとともに採掘量の時間的変化のグラフを表示装置122,182に表示させてもよい。これにより、利用者は、累積損傷度の時間的変化と採掘量の時間的変化とを比較することで、採掘量が累積損傷度の時間的変化(上昇率)に与える影響を考慮した適切な被駆動部材の寿命予測が可能になる。
【0112】
<変形例3>
第1実施形態では、累積損傷度の時間的変化を出力する出力装置が表示装置122である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。第1実施形態において、出力装置は、第2実施形態で説明した印刷装置、通信装置とすることもできる。
【0113】
<変形例4>
上記実施形態では、作業機械として油圧ショベルを例に説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ホイールローダ、フォークリフト、ダンプトラック、クレーン等の作業機械に本発明を適用することもできる。
【0114】
<変形例5>
第1実施形態では、有限要素法による応力解析で累積損傷度を算出する例について説明したが、作業機械100の有する演算処理能力に応じて、他の数値解析手法や、回帰分析等の統計学的手法を利用しても良い。
【0115】
<変形例6>
第1実施形態では、累積損傷度Dを不揮発性メモリ112に記憶する例について説明したが、損傷状況の把握しやすさを向上するため、累積損傷度Dの代わりとなる情報を不揮発性メモリ112に記憶しても良い。例えば、累積損傷度Dに対して、作業機械100の使用環境や、各部品の材料特性に応じた重みづけを行った値を算出したり、累積損傷度を表す数値が0から100までの範囲に収まるように補正を行ったりしてから不揮発性メモリ112に記憶してもよい。
【0116】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0117】
2…走行体、3…旋回体、4…作業装置、5…機体、10,10B…状態管理装置、10C…携帯端末(入力装置及び出力装置)、10D…状態管理システム、11…ブーム(被駆動部材)、11a…ブームシリンダ(アクチュエータ)、12…アーム(被駆動部材)、12a…アームシリンダ(アクチュエータ)、13…バケット(被駆動部材)、13a…バケットシリンダ(アクチュエータ)、100…作業機械、110…車載コントローラ(制御装置)、112…不揮発性メモリ、121…入力装置、122…表示装置(出力装置)、123…姿勢検出装置、124…動作検出装置、124a…シリンダ圧力計、124b…作動油温度計、124c…エンジン回転計、124d…油圧ポンプ吐出圧力計、124e…油圧モータ入口圧力計、124f…加速度計、125…通信装置(出力装置)、131…動作状態管理部、132…運転状況管理部、133…応力演算部、134…損傷度演算部、135…出力制御部、136…基本情報記憶部、137…表示情報記憶部、170…管理サーバ(制御装置)、172…不揮発性メモリ、181…入力装置、182…表示装置(出力装置)、183…印刷装置(出力装置)、185…通信装置(出力装置)、222…機械情報記憶部、235…出力制御部、237…運転状況情報記憶部、331…入力制御部、333…応力演算部、334…損傷度演算部、335…出力情報記憶部、336…出力制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11