(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】カーブコンベア用ローラ、カーブコンベア及びカーブベルト
(51)【国際特許分類】
B65G 39/071 20060101AFI20231212BHJP
B65G 15/02 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B65G39/071
B65G15/02
(21)【出願番号】P 2023561408
(86)(22)【出願日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2023034340
【審査請求日】2023-10-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井 亮人
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-180293(JP,A)
【文献】特表2005-525276(JP,A)
【文献】特開2011-37576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 39/00 - 39/20
B65G 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心が互いに交差して配されたテールローラとヘッドローラとのそれぞれに巻き掛けられたカーブベルトを円弧状に走行するカーブコンベアの前記テールローラ及び前記ヘッドローラのうち、少なくとも一方として用いられるカーブコンベア用ローラにおいて、
内周側に向かってローラ径が縮小するテーパ形状のローラ本体と、
前記ローラ本体に嵌装され前記カーブベルトの外周側の裏面と接触するスリーブと
を備え、
前記スリーブは、前記ローラ本体の周面を高さの基準として、外周側の端部の高さよりも、内周側の端部の高さが大きい、
カーブコンベア用ローラ。
【請求項2】
前記スリーブは、高さが外周側から内周側に向かって漸増する
請求項1に記載のカーブコンベア用ローラ。
【請求項3】
前記ローラ本体の周面と前記スリーブとの間には、前記スリーブの高さを調整する中間層を有する
請求項1に記載のカーブコンベア用ローラ。
【請求項4】
前記中間層は、外周側から内周側に向かって厚みが漸増し、
前記スリーブは、均一な厚みを有し、前記中間層を介して前記ローラ本体に嵌装されている
請求項3に記載のカーブコンベア用ローラ。
【請求項5】
前記スリーブは、均一な厚みを有し、前記内周側の端部が均一な厚みを有する前記中間層に重ねて設けられている
請求項3に記載のカーブコンベア用ローラ。
【請求項6】
前記スリーブは、互いに厚みの異なる複数の筒状部材で構成され、外周側から内周側に向かって厚みが大きくなる順番で前記複数の筒状部材が前記ローラ本体に嵌装されている
請求項1に記載のカーブコンベア用ローラ。
【請求項7】
円弧状の搬送路を形成するカーブコンベアにおいて、
軸心が互いに交差して配されたテールローラ及びヘッドローラと、
前記テールローラ及び前記ヘッドローラの間に巻き掛けられた、円弧状に走行する無端状のカーブベルトと
を備え、
前記テールローラ及び前記ヘッドローラのうち、少なくとも一方が請求項1ないし6のいずれか1項に記載のカーブコンベア用ローラである、カーブコンベア。
【請求項8】
前記スリーブの内周側の端縁が前記カーブベルトの外周側の端縁から前記カーブベルトの幅の1%以上50%以下の範囲内の位置に一致するように前記スリーブを配置した請求項7に記載のカーブコンベア。
【請求項9】
前記スリーブの内周側の端縁が前記カーブベルトの外周側の端縁から前記カーブベルトの幅の5%以上25%以下の範囲内の位置に一致するように前記スリーブを配置した請求項7に記載のカーブコンベア。
【請求項10】
前記カーブベルトの裏面と前記スリーブとの接触幅を前記カーブベルトの幅の1%以上50%以下の範囲内とした請求項7に記載のカーブコンベア。
【請求項11】
前記カーブベルトの裏面と前記スリーブとの接触幅を前記カーブベルトの幅の1%以上25%以下の範囲内とした請求項7に記載のカーブコンベア。
【請求項12】
前記スリーブと前記カーブベルトの裏面との動摩擦係数を0.3以上2.0以下の範囲内とした請求項7に記載のカーブコンベア。
【請求項13】
前記テールローラ及び前記ヘッドローラの外側の一対の外郭線がなす角度をθ1とし、
一対の外郭線をそれぞれ延ばした第1の仮想線同士が交わる第1の交点と第1の仮想線上の前記テールローラまたは前記ヘッドローラの内周端との間の距離をR1とし、
前記カーブコンベアに装着していないときの環状扇形の前記カーブベルトの両側の外郭線がなす角度をθ2とし、
前記両側の外郭線をそれぞれ延ばした第2の仮想線同士が交わる第2の交点と前記第2の仮想線上の前記カーブベルトの内周側の端縁との間の距離をR2として、
R1<R2及びθ1>θ2の関係を満たす請求項7に記載のカーブコンベア。
【請求項14】
前記カーブベルトが、繊維層が積層されることなく樹脂層のみで構成されている、請求項7に記載のカーブコンベア。
【請求項15】
請求項7に記載のカーブコンベアの前記テールローラ及び前記ヘッドローラに巻き掛けられる無端状のカーブベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物を円弧状に搬送するカーブコンベア用ローラ、カーブコンベア及びカーブベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送物を円弧状の軌道で搬送するベルトコンベアとしてカーブコンベアが提案され、既に実用に供されている(例えば、特許文献1参照)。カーブコンベアは、放射状に配列された回転可能な複数のローラに無端状のカーブベルトを装着し、ローラの回転によってカーブベルトを走行させ、カーブベルト上の搬送物を搬送する。
【0003】
上記のようなカーブコンベアにおいては、走行中のカーブベルトに内周側に向かう力が作用し、このカーブベルトが蛇行する可能性がある。カーブベルトの蛇行を抑制するために、カーブベルトの内周側に向かって径が漸減するテーパ形状のローラの外周側端部にスリーブ(トラッキング部材)をそれぞれ嵌装したカーブコンベアが知られている(特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-083946号公報
【文献】特表2005-525276号公報
【文献】特開2022-180293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようにテーパ形状のローラの外周側端部にスリーブを設けたカーブコンベアは、カーブベルトの蛇行が抑制されるが、スリーブまたはカーブベルトに偏摩耗が生じやすいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、スリーブまたはカーブベルトの偏摩耗を抑制することができるカーブコンベア用ローラ、カーブコンベア及びカーブベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のカーブコンベアは、軸心が互いに交差して配されたテールローラとヘッドローラとのそれぞれに巻き掛けられたカーブベルトを円弧状に走行するカーブコンベアのテールローラ及びヘッドローラのうち、少なくとも一方として用いられるカーブコンベア用ローラにおいて、内周側に向かってローラ径が縮小するテーパ形状のローラ本体と、ローラ本体に嵌装されカーブベルトの外周側の裏面と接触するスリーブとを備え、スリーブは、ローラ本体の周面を高さの基準として、外周側の端部の高さよりも、内周側の端部の高さが大きくされているものである。
【0008】
本発明のカーブコンベア用ローラは、円弧状の搬送路を形成するカーブコンベアにおいて、軸心が互いに交差して配されたテールローラ及びヘッドローラと、テールローラ及びヘッドローラの間に巻き掛けられた、円弧状に走行する無端状のカーブベルトとを備え、テールローラ及びヘッドローラの少なくとも一方が上記カーブコンベア用ローラとしたものである。
【0009】
本発明のカーブベルトは、上述のカーブコンベアのテールローラ及びヘッドローラに巻き掛けられる無端状のカーブベルトである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、テーパ形状のローラ本体に嵌装したスリーブの内周側の端部の高さを外周側の端部の高さよりも大きくし、スリーブの内周側と外周側とでスリーブとカーブベルトの裏面との接触状態を変えて、カーブベルトからスリーブにかかる力をスリーブの全体に分散させる。これにより、本発明では、スリーブまたはカーブベルトでの偏摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るカーブコンベアの破断平面図である。
【
図2】スリーブの位置でローラに巻き掛けられたカーブベルトを示す一部断面図である。
【
図3】ローラ本体に嵌装されたスリーブの高さを示す説明図である。
【
図4】カーブベルトの外周側の端縁とスリーブの内周側の端縁の位置関係を示す説明図である。
【
図5】カーブコンベアの内周の曲率半径及び製作角度と未装着時のカーブベルトの内周の曲率半径及び各製作角度とを示す模式的平面図である。
【
図6】スリーブの有無によるカーブベルトの走行の違いを示す説明図である。
【
図7】カーブベルトをローラに仮装着した状態を示す平面図である。
【
図8】スリーブの一部をカーブベルトよりも外周側に突出させた例を示す破断平面図である。
【
図9】スリーブの上側の各エッジを丸めた形状とした例を示す破断平面図である。
【
図10】ローラ本体とスリーブとの間に接着層を設けた例を示す説明図である。
【
図11】ローラ本体とスリーブの内周側の端部との間にフィルム部材を設けた例を示す説明図である。
【
図12】厚みの異なる複数の筒状部材でスリーブを構成する例を示す説明図である。
【
図13】連接した2つのカーブコンベアの間に支持板を設けた例を示す平面図である。
【
図14】隣接するローラ間に支持板を設けた例を示す平面図である。
【
図15】ローラと支持板との位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面について本発明の一実施形態を詳述する。以下の説明において、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
(カーブコンベアの全体構成)
図1において、カーブコンベア10は、不図示の搬送物を円弧状に湾曲した経路(搬送路)で搬送する。このカーブコンベア10は、平面視で放射状に配列された回転可能なローラ12a~12eと、無端状のカーブベルト13とを備えている。カーブベルト13は、搬送物の搬送方向の最も下流(
図1の左端)に位置するローラ12aと、最も上流(
図1の右端)に位置するローラ12eとに巻き掛けられている。したがって、カーブベルト13は、ローラ12aとローラ12eの間のローラ12b~12dを上下に挟むように、ローラ12aとローラ12eとの間に張設されている。これらのローラ12a,12eの回転によって、カーブベルト13は、円弧状の軌道で走行する。なお、ローラ12aは、ヘッドローラであり、ローラ12eは、テールローラである。
【0014】
なお、円弧状に走行するカーブベルト13の内周側、外周側に倣い、カーブコンベア10ではその各部について、カーブベルト13の円弧状の軌道の中心(以下、軌道中心と称する)とする径方向において、相対的に軌道中心からより遠い側(
図1において上側)を外周側と称し近い側(
図1において下側)を内周側と称する。
【0015】
カーブコンベア10は、カーブベルト13の円弧状の軌道に沿って、平面視円弧状のフレーム14,15が互いに平行に配置されており、ローラ12a~12eがそれぞれ回転可能にフレーム14,15に支持されている。カーブベルト13の円弧状の軌道の外周側にフレーム14が、内周側にフレーム15がそれぞれ配されている。ローラ12a~12eは、それらの軸心がカーブベルト13の軌道中心から放射状に延び、隣り合うローラの軸同士が所定のピッチ角度(中心角度)をなすようにして、平面視で放射状に配列されている。すなわち、ローラ12a~12eの軸心は、軌道中心で互いに交差している。これらローラ12a~12eは、その軸の外周側端部がフレーム14に、また軸の内周側端部がフレーム15にそれぞれ回転可能に取り付けられている。
【0016】
ローラ12aは、ローラ本体17aにスリーブ18を嵌装した構成である。同様に、ローラ12eは、ローラ本体17eにスリーブ18を嵌装した構成である。他のローラ12b~12dは、ローラ本体17b~17dにスリーブ18を設けていない構成である。この例では、ローラ本体17a~17eは、互いに同じ形状、サイズである。なお、以下の説明では、ローラ12a~12eの個々を特に区別する必要がない場合には、これらをローラ12と称する。また、ローラ本体17a~17eについても、個々を特に区別する必要がない場合には、これらをローラ本体17と総称する。
【0017】
ローラ本体17は、内周側に向かって直線的にローラ径が縮小する(先細となる)テーパ形状である。この例では、ローラ本体17は、ステンレス鋼(SUS)やアルミニウム合金などの金属によって構成されている。ローラ本体17は、ストレートローラにテーパ状の樹脂やゴムを取り付けてテーパ形状すなわちテーパローラとしてもよい。
【0018】
例えば、カーブコンベア10は、ローラコンベアに上述のカーブベルト13とスリーブ18と取り付けたものであって、駆動源からの駆動力によってローラ12a~12eが同時に同一速度でかつ同方向に回転する。ローラ12a~12eは、それらの軸(ローラ本体17の軸)に動力用丸ベルトが巻き掛けられて相互に連結され、不図示の電動モータなどの駆動源からいずれかのローラ12、例えばローラ12aに駆動力が与えられる。これにより、ローラ12a~12eが上記のように回転する。
【0019】
図2に示すように、ローラ12aが矢印A方向(反時計回り方向)に回転駆動されると、このローラ12aによって、カーブベルト13の上側の往路側部分(引張側部分)13aは、矢印B方向(
図2中左方向)に走行して引張力が作用し、下側の復路側部分(弛緩側部分)13bは、矢印C方向(
図2中右方向)に走行して圧縮力が作用する。
【0020】
なお、この例では、ローラ12a~12eを回転駆動しているが、ローラ12a及びローラ12eの一方または両方を回転駆動し、他のローラ12を走行するカーブベルト13に接触することで回転する従動ローラとしてもよい。また、この例のカーブコンベア10は、5本のローラ12を設けているが、ローラ12の本数は2本以上であればよい。
【0021】
カーブベルト13は、ローラ12aとローラ12eとに巻き掛けた状態で平面視環状扇形をしている。環状扇形とは、2つの同心円で囲まれる円環形状を、それらの同心円の径方向の2直線で切り取った領域の形状である。すなわち、環状扇形とは、互いに中心角度が同じであって共通な中心を有する半径の大きな扇形から半径の小さな扇形を切り取った形状である。以下の説明では、上記同心円の径方向を環状扇形の径方向と称する。このカーブベルト13は、均等な厚みの環状扇形のシートの端部(直線)同士を連結し円錐台の周面と同形状(漏斗状)となるように作製されている。したがって、カーブベルト13は、その幅方向となる環状扇形の径方向に沿って切断した展開形状も環状扇形である。
【0022】
カーブベルト13は、例えば、帆布などでなる繊維層が積層されることなく、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂でなる樹脂層のみで構成されたベルトとすることが好ましい。特に、繊維層が積層されることなく樹脂層のみで構成されるカーブベルト13としては、例えば、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂でなる樹脂層と、熱可塑性樹脂に導電剤及び架橋剤が添加された樹脂製の導電層(他の樹脂層)とが積層された多層構造の樹脂層を適用することが好ましい。ただし、カーブベルト13としては、これに限らず、例えば、熱可塑性樹脂でなる樹脂層と、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、芳香族ポリアミド繊維などからなる帆布心体とを積層させた構成のベルトなど、その他種々のカーブベルトを用いてもよい。
【0023】
(スリーブの概略)
上述のように、ローラ12a~12eのうち、カーブベルト13が巻き掛けられたヘッドローラであるローラ12aとテールローラであるローラ12eとには、カーブベルト13の蛇行を防止して安定走行させるために、それらのローラ本体17a,17eにスリーブ18が嵌装されている。各スリーブ18は、カーブベルト13の外周側の裏面に接触するようにローラ本体17a,17eに設けられている。スリーブ18を設けることにより、スリーブ18によるローラ12a,12eの局所的な大径化によるクラウン効果やカーブベルト13の裏面とスリーブ18との接触による摩擦力により、カーブベルト13の蛇行を効果的に抑制し、カーブベルト13の走行を安定させる。ローラ12aとローラ12eとのスリーブ18を含む構成は、同じであるため、以下ではローラ12aのスリーブ18について説明し、ローラ12eのスリーブ18についての説明は省略する。
【0024】
(スリーブの高さ)
図3に示すように、スリーブ18は、その内周側の端部の高さtaを外周側の端部の高さtbよりも大きくしてある。スリーブ18の高さは、ローラ本体17aの周面S17を高さの基準としたものであり、この周面S17を基準としたスリーブ18の高さは、周面S17からスリーブ18の外周面S18までのローラ本体17aの軸心に直交する方向の長さである。したがって、スリーブ18における内周側の端部の外周面S18と周面S17との間の距離が高さtaであり、外周側の端部の外周面S18と周面S17との間の距離が高さtbである。なお、高さの相対的な大小関係においては、周面S17に対する接平面の法線方向における外周面S18までの長さを高さとすることができる。
【0025】
スリーブ18は、ローラ本体17aに嵌装させたときに、スリーブ18の高さが、外周側の端部から内周側の端部に向かって漸増する。この例で示すスリーブ18は、ローラ本体17aの所定位置に嵌装され固定されたときに、内周面18aの直径である内径と外周面S18の直径である外径とが内周側に向かって小さくなる筒形状である。ローラ本体17aの所定位置に嵌装されたスリーブ18は、その外径が内径よりも小さな変化率で径が小さくなる。スリーブ18の内径は、ローラ本体17aの外径と同じ変化率で小さくなり、スリーブ18が嵌装されたローラ本体17aの外径と同じになっている。これにより、スリーブ18の内周側の端部の高さtaを外周側の端部の高さtbよりも大きくしている。なお、スリーブ18は、接着剤等でローラ本体17aに固定されている。
【0026】
スリーブ18としては、例えば、ローラ本体17aへの嵌装前における厚みが外周側から内周側に向かって直線的に漸増するものを用いることができる。このようなスリーブ18をローラ本体17aに嵌装すれば、ローラ本体17aの周面S17からスリーブ18の外周面S18までの高さが、外周側から内周側に向かって漸増したスリーブ18の外郭形状が得られる。また、スリーブ18は、所定の弾性力で弾性変形する材料でローラ本体17aへの嵌装前において外周側から内周側までの厚み及び内径を均一にしたものを用いてもよい。この場合、スリーブ18の内径は、例えばローラ本体17aの嵌装位置における外径よりも小さくされている。これにより、スリーブ18をローラ本体17aに嵌装すると、スリーブ18は、ローラ本体17aがテーパ形状であるため、外周側よりも内周側のほうが伸びが小さくなって、厚みが大きくなる。このように、ローラ本体17aの外径に応じてスリーブ18の厚みが変わり、スリーブ18の外周側の端部の外周面S18の高さよりも、内周側の端部の外周面S18の高さを大きくすることができる。
【0027】
さらに、熱収縮による収縮率が大きいほど厚みが大きくなる円筒形状の熱収縮チューブを用いてスリーブ18を形成することができる。この場合には、スリーブ18に応じた長さに切断した熱収縮チューブをローラ本体17aに挿入してから、その熱収縮チューブをヒートガンやオーブン等を用いて加熱する。これにより、熱収縮チューブがローラ本体17aの周面S17に密着した状態に熱収縮しスリーブ18となる。ローラ本体17aは、内周側に向かって径が小さくなるテーパ形状であるから、熱収縮チューブは、外周側よりも内周側の収縮率が大きくなるため、スリーブ18は、内周側端部の高さtaが外周側端部の高さtbよりも大きくなる。
【0028】
なお、スリーブ18をローラ本体17aに固定する手法は、限定されない。例えば、弾性変形する材料で作製されたスリーブ18をその内径を広げるように弾性変形させてローラ本体17aに嵌め込んだ後に、その弾性力でローラ本体17aを締め付けることでスリーブ18をローラ本体17aに固定してもよい。この場合には、スリーブ18は、その内径がローラ本体17aの外径よりも小さく作製される。
【0029】
上記のように構成されるスリーブ18は、ローラ本体17aよりもテーパ角度が小さい外郭形状となっている。
図3に示されるように、ローラ本体17aに嵌装されたスリーブ18のテーパ角度をθa、ローラ本体17aのテーパ角度をθbとしたときに、ローラ12aは、テーパ角度θaがテーパ角度θbよりも小さく(θa<θb)の関係を満たす。なお、ローラ本体17aの軸線を含む断面において、ローラ本体17aの周面S17を示す2本の外郭線のなす角度がテーパ角度θaであり、スリーブ18の外周面S18を示す2本の外郭線のなす角度がテーパ角度θbである。
【0030】
ローラ本体17aに取り付けたスリーブ18には、カーブベルト13の質量や張力、あるいはクラウン効果によって発生するカーブベルト13のスラスト力など複数の力が作用する。カーブベルト13の走行開始、停止の際には、スリーブ18に作用する上記の力の大きさは、加速度の大きさに依存する。カーブコンベア10では、その構成上、内周側よりも外周側の速度が大きい。同様に、カーブベルト13を走行開始、停止の際の加速度の大きさも内周側よりも外周側が大きくなる。これまでのように、高さが均一なスリーブを用いた場合、カーブベルト13の走行開始、停止の際には、大きい力がスリーブの外周側端部に集中的に作用し、スリーブの外周側端部の摩耗や損傷が顕著になる。また、これにともない、スリーブの外周側端部に接触するカーブベルト13の部分についても摩耗や損傷が大きくなる。
【0031】
しかしながら、上記のようにスリーブ18の内周側の端部の高さtaを外周側の端部の高さtbよりも大きくすることにより、カーブベルト13の走行開始・停止の際に、スリーブ18の外周側端部に大きな力が集中的に作用することなく、スリーブ18の全体に分散して力が作用する。これによりスリーブ18の外周側の端部の摩耗(偏摩耗)や損傷が抑制され、カーブベルト13の裏面の摩耗や損傷も抑制される。また、スリーブ18及びカーブベルト13の摩耗が抑制されるため、その摩耗による摩耗粉の発生も抑えられる。この結果、スリーブ18とカーブベルト13との摩擦力の低下、ローラ12a,12e(ローラ本体17a、17e)とカーブベルト13とのスリップ、ローラ12a、12eからのカーブベルト13の脱落が防止される。
【0032】
(スリーブの位置)
カーブベルト13の走行安定性を向上させるために、スリーブ18は、その内周側の端縁がカーブベルト13の外周側の端縁からカーブベルト13の幅の1%以上50%以下の範囲内の位置となるようにローラ本体17aに配置するのがよい。カーブベルト13の走行安定性をより向上させるために、好ましくは、スリーブ18は、その内周側の端縁をカーブベルト13の外周側の端縁からカーブベルト13の幅の1%以上25%以下の範囲内、より好ましく5%以上25%以下の範囲内、さらに好ましくは10%以上20%以下の範囲内の位置となるように配置する。
【0033】
すなわち、
図4に示すように、カーブベルト13の外周側の端縁からスリーブ18の内周側の端縁までの距離をL、カーブベルト13の幅をWとして、距離Lが幅Wの1%以上50%以下の範囲内(0.01≦L/W≦0.5)に設定するのがよく、1%以上25%以下の範囲内(0.01≦L/W≦0.25)に設定することが好ましく、5%以上25%以下の範囲内(0.05≦L/W≦0.25)に設定することがより好ましく、10%以上20%以下の範囲内(0.10≦L/W≦0.20)に設定することが特に好ましい。このような位置にスリーブ18を配置することで、カーブベルト13の走行安定性が向上することは実験的に確認した。
【0034】
スリーブ18は、それが接触するカーブベルト13の部分がカーブベルト13の外周側の端縁に近いほどクラウン効果によってカーブベルト13の走行位置が安定する。一方、スリーブ18がカーブベルト13の外周側の端縁から離れているほうが、カーブベルト13が各スリーブ18から外れ難く、確実にクラウン効果やスリーブ18とカーブベルト13の裏面間において所要の摩擦力が得られ、ローラ12aからのカーブベルト13の外れを確実に防止できる。そこで、カーブベルト13の外周側の端縁に対するスリーブ18の内周側の端縁の位置を前述の範囲内とすることによって、カーブベルト13に高い走行安定性を確保することができる。
【0035】
後述するように、カーブベルト13は、スリーブ18によるクラウン効果によって、走行が安定する位置(所期位置)で走行する。所期位置は、スリーブ18のローラ本体17に対する嵌装位置や、スリーブ18の長さ(ローラ本体17の軸心方向についての長さ)や高さ(厚み)等により決めることができる。したがって、スリーブ18のローラ本体17に対する嵌装位置や、スリーブ18の長さや高さ(厚み)等の調整により、カーブベルト13の外周側の端縁からスリーブ18の内周側の端縁までの距離Lの位置が上記の条件を満たすようにする。
【0036】
また、スリーブ18の平均高さをカーブベルト13の厚みの20%以上300%以下の範囲内とすることが好ましい。すなわち、スリーブ18の平均高さをt、カーブベルト13の厚みをTとしたときに、0.2≦t/T≦3.0を満たすことが好ましい。t/T≦3.0とすることによって、カーブベルト13のシワの発生を確実に抑制できる。一方、t/T≧0.2とすることによって、クラウン効果やカーブベルト13のスリーブ18の部分での伸長率の増大によりカーブベルト13の走行安定性を確実に確保できる。
【0037】
(スリーブとカーブベルトとの接触幅)
また、カーブベルト13の裏面とスリーブ18との接触幅をbとしたきに、カーブベルト13の走行安定性を向上するために、接触幅bをカーブベルト13の幅Wの1%以上50%以下の範囲内(0.01≦b/W≦0.5)とすることが好ましい。また、カーブベルト13の幅Wに対する接触幅bの大きさは、カーブベルト13の走行安定性をより確実に向上するために、1%以上25%以下の範囲内(0.01≦b/W≦0.25)とすることがより好ましく、5%以上20%以下の範囲内(0.05≦b/W≦0.2)とすることが特に好ましい。このように、カーブベルト13の幅Wに対する接触幅bを設定することによってカーブベルト13の走行安定性が向上することを実験的に確認した。
【0038】
カーブベルト13の幅Wに対する接触幅bの比率を大きくすることにより、カーブベルト13の自重やカーブベルト13上に搬送物が載置した場合のスリーブ18に作用する力を小さくできる。この結果、カーブベルト13の裏面やスリーブ18の極度の摩耗の発生を抑え、またスリーブ18がローラ本体17aから外れ難くできる。一方、カーブベルト13の幅Wに対する接触幅bの比率を小さくすることにより、カーブベルト13の幅方向の中央部よりも内周側にクラウン効果が作用することを抑制でき、クラウン効果によってカーブベルト13の走行位置が内周側にずれてしまうことを抑制できる。このようにカーブベルト13の走行位置をより確実に矯正できるようになること、また走行位置が内周側にずれてしまうことを抑制できることは、検証試験で確認した。
【0039】
(スリーブとカーブベルトとの動摩擦係数)
カーブベルト13の走行安定性を高めるには、該カーブベルト13の裏面の材質とスリーブ18の材質も重要となる。スリーブ18の材質は、カーブベルト13との間の動摩擦係数が高くなるものを使用することによって、カーブベルト13の走行位置がより安定する。
【0040】
上記観点から、スリーブ18とカーブベルト13の裏面との動摩擦係数を0.3以上2.0以下の範囲内とすることが好ましい。動摩擦係数が0.3以上であれば、カーブベルト13とスリーブ18との間に十分な摩擦力が発生し、カーブベルト13がより安定して走行する。また、カーブベルト13上に搬送物が載置されるといった外部からの力が作用した場合においても、カーブベルト13の走行が不安定になり難く、カーブベルト13の偏行を抑制できる。
【0041】
一方、動摩擦係数が2.0以下であれば、カーブベルト13の裏面とスリーブ18の摺動による摩耗を好ましく抑えることができるように、カーブベルト13の裏面とスリーブ18の各硬度を高くできる。すなわち、カーブベルト13やスリーブ18の耐久性の低下を好ましく抑制できる。また、カーブベルト13やスリーブ18の摩耗を抑えることによって、摩耗粉の発生を抑制できるとともに、この摩耗粉による動摩擦係数の低下を防止できる。
【0042】
以上の観点から、カーブベルト13とスリーブ18との高い耐久性を確保しつつ、カーブベルト13の走行安定性をより高めるには、上述のようにスリーブ18とカーブベルト13の裏面との動摩擦係数を0.3以上2.0以下の範囲内に設定することが好ましい。なお、カーブベルト13とスリーブ18の何れか一方の硬度が他方の硬度に対して著しく高いと、硬度が低い方の摩耗が激しくなって耐久性が低下するおそれがある。このため、耐久性の点からはカーブベルト13の裏面とスリーブ18の硬度は、互いに近い値であることが好ましい。
【0043】
(カーブベルトの伸長率)
カーブベルト13の走行安定性を高めるためには、カーブベルト13のスリーブ18に接触する部分(外周側の部分)は、スリーブ18によって0.2%以上伸長されていることが好ましい。カーブベルト13の伸長率が十分であれば、カーブベルト13がスリーブ18を押す力が大きく、カーブベルト13の裏面とスリーブ18との間に十分な摩擦力が得られる。これにより、カーブベルト13の自重や重量物がカーブベルト13の表面部に載った際に生じるカーブベルト13の偏行が確実に矯正される。カーブコンベア10にカーブベルト13を装着した際に、スリーブ18と接触しないカーブベルト13の内周側の部分の伸長率は、抑制的であることが好ましい。したがって、カーブベルト13は、カーブコンベア10に装着された状態で、スリーブ18が接触する外周側の伸長率が内周側の伸長率よりも大きいことが好ましい。
【0044】
図5にカーブコンベア10の内周の曲率半径R1及び製作角度θ1と、未装着時のカーブベルト13の内周の曲率半径R2及び製作角度θ2とを模式的に示す。カーブコンベア10の製作角度θ1は、平面視におけるローラ本体17a,17eの周面の外側の2本の外郭線がなす角度である。平面視におけるローラ本体17a,17eの周面の外側の2本の外郭線は、ローラ本体17a,17eの各軸線を含む平面におけるローラ本体17a,17eの周面の外側の各外郭線であり、それら外郭線がなす角度が製作角度θ1である。製作角度θ1の大きさは、ローラ本体17a,17eの軸心同士がなす角度にローラ本体17のテーパ角度θaを加算した大きさと同じである。また、製作角度θ1は、カーブコンベア10に装着しているとき(装着時)すなわちローラ12a、12eに巻き掛けた状態で環状扇形のカーブベルト13の両端すなわち両側の外郭線がなす角度を意味する。カーブコンベア10の内周の曲率半径R1は、上記2本の外郭線を延ばした第1の仮想線が交わる第1の交点をО1としたときに、第1の仮想線上のローラ12(ローラ本体17)の内周端と第1の交点О1との間の距離である。
【0045】
カーブコンベア10に装着していないとき(未装着時)のカーブベルト13とは、カーブコンベア10のローラ12に掛け渡していない状態のカーブベルト13であり、カーブベルト13を一対のローラ本体17aに巻き掛け、そのカーブベルト13を伸長することなくかつ緩むことないように当該一対のローラ本体17を放射状に配置したときのカーブベルト13の状態と同義である。カーブベルト13の製作角度θ2とは、平面視において未装着時の環状扇形のカーブベルト13の両端すなわち両側の外郭線がなす角度である。また、未装着時のカーブベルト13の内周の曲率半径R2とは、未装着時のカーブベルト13の内周側の端縁の曲率半径であって、両側の外郭線を延ばした(両端から延ばした)2本の第2の仮想線が交わる第2の交点をО2としたときに、第2の仮想線上にあるカーブベルト13の内周側の端縁と第2の交点О2との間の距離である。
【0046】
カーブベルト13のスリーブ18に接触しない部分(内周側の部分)の伸長率を抑制し、かつ、カーブベルト13のスリーブ18に接触する部分(外周側の部分)の伸長率を大きくするには、カーブベルト13の内周の曲率半径R2をカーブコンベア10の内周の曲率半径R1よりも大きく(R1<R2)設定するとともに、カーブベルト13の製作角度θ2を当該カーブコンベア10の製作角度θ1よりも小さく(θ1>θ2)すれば良い。このようにすることによって、カーブコンベア10にカーブベルト13を装着した際に、カーブベルト13の内周側の部分の伸長率を抑制しつつ、スリーブ18が設けられた外周側の部分の伸長率が大きくなるカーブベルト13を製作することができる。
【0047】
ローラ本体17a,17eに対するスリーブ18の嵌装の有無によらず、カーブベルト13とローラ本体17との間に生じる摩擦力によって、ローラ本体17a,17bの回転によってカーブベルト13が走行する。
図6に模式的に示すように、カーブベルト13の走行の際に、ローラ本体17aにおいては、それに接触しているカーブベルト13の各部は、ローラ本体17aの周面とともにローラ本体17aの軸心を中心とする回転軌道を描くように移動する。また、各ローラ本体17の軸心(回転軸)は、隣接するローラ本体17の軸心に対してピッチ角度だけ傾いている。このため、カーブベルト13には、内周側に向かって横ずれさせる力が作用し、円弧状の軌道Dから内周側に向かってずれる軌道Eで走行しようとする。このため、スリーブ18をローラ本体17a,17eに嵌装していない場合には、カーブベルト13は、その走行中に上記のような内周側へのずれが生じ、符号13Aで示すように、ローラ本体17aの内周側に寄った位置に移動してしまう。
【0048】
これに対して、この本実施形態のカーブコンベア10では、ローラ本体17a,17eのスリーブ18を嵌装したことにより、ローラ12a,12eの外周側の端部の径がスリーブ18の高さ分だけ大きくなっている。このようなスリーブ18によるローラ12a,12eの外周側端部の大径化によって、カーブベルト13は、その外周側の部分がスリーブ18と接触して周速(走行速度)及び張力が増大し、スリーブ18よりも内周側の部分に対してより大きくなる。すなわち、カーブベルト13には、スリーブ18によるクラウン効果によって、その内周側の部分をスリーブ18に向かって横ずれさせた軌道Fでカーブベルト13を走行させるような力が発生する。この結果、カーブベルト13は、それを内周側に向かって横ずれさせる力とスリーブ18によって外周側に向かって横ずれさせる力とが相殺される所期位置にて安定して走行する。また、スリーブ18を設けることによって、ローラ12a、12eとカーブベルト13の裏面との摩擦が増大し、カーブベルト13は、所期位置でより安定して走行する。
【0049】
上記のように、ローラ本体17a,17eの一部にスリーブ18をそれぞれ嵌装することにより、カーブベルト13の蛇行や内周側に寄ってしまうことが防止される。そして、スリーブ18の内周側の高さtaを外周側の高さtbよりも大きくすることにより、カーブベルト13及びスリーブ18の摩耗や損傷が抑制される。また、カーブベルト13及びスリーブ18の摩耗による摩耗粉の発生も抑えられ、ローラ12a、12eとカーブベルト13とのスリップによるローラ12a、12eからのカーブベルト13の脱落が防止される。
【0050】
(カーブベルトの取り付け方法)
次に、平面視で放射状に配列された複数のローラ12に対してカーブベルト13を取り付ける方法について説明する。本実施形態のカーブベルト13の取り付け方法では、ローラ12の位置を任意に変化させてローラ12の間隔を増減する機構やローラ12a、12eの間隔を広げてカーブベルト13に張力を与えるテンション機構等がなく、間隔が固定されている複数のローラ12に対して、例えば伸縮性が乏しく剛性が高い無端状のカーブベルト13を取り付けることが可能である。具体的には、例えば、芯材として帆布を使用したカーブベルト13などのように、樹脂のみで形成されるカーブベルトと比較して伸縮性が乏しく剛性が高いカーブベルト13を、間隔が固定されているローラ12に対して取り付けることができる。
【0051】
フレーム14,15間にローラ12を装着する前に、ローラ12a及びローラ12eにスリーブ18をそれぞれ嵌装する。そして、外周側のフレーム14に対して、ローラ12a~12eの軸の内周側端部をそれぞれ回転可能に取り付ける。次いで、無端状のカーブベルト13を準備し、カーブベルト13をローラ12に仮装着する。仮装着では、例えば、手作業によって、カーブベルト13の外周側の端縁を広げ、その外周側から筒状のカーブベルト13内に挿入するように、カーブベルト13をローラ12a~12eにその内周側から嵌める。その後に、内周側のフレーム15に対して、ローラ12a~12eの内周側端部をそれぞれ回転可能に取り付ける。この仮装着において、
図7に示すように、ローラ本体17a及びローラ本体17eにそれぞれ嵌装させたスリーブ18の少なくとも一部にカーブベルト13が重なるようにカーブベルト13をローラ12に嵌め込んだ状態にする。
【0052】
仮装着後、ローラ12を回転させる。カーブベルト13は、ローラ12が回転すると、その裏面とスリーブ18の表面との間に生じる摩擦力や、カーブベルト13の裏面とローラ本体17との間に生じる摩擦力によって走行する。カーブベルト13は、走行を開始すると、スリーブ18によるクラウン効果によって、ローラ12の軸方向に沿って徐々に外周側に向かって移動する。そして、カーブベルト13は、スリーブ18によって外周側に向かって横ずれさせる力が内周側に向かって横ずれさせる力と相殺される位置に達すると、外周側へ移動しなくなり、安定して走行する状態になる。このようにして、カーブベルト13は、ローラ12の安定的に走行する所期位置に自動的にセットされる。
【0053】
上記のように、カーブベルト13は、仮装着した後、ローラ12を回転するだけで、そのローラ12の回転によって、カーブベルト13が安定的に走行可能な位置まで自動的に案内され、当該位置で安定的に走行するようにできる。また、剛性が高い無端状のカーブベルト13を用いることができるため、隣接するローラ12間での搬送物の沈み込み効果的に抑制するうえでも有利である。
【0054】
本発明は、上記の実施形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲、明細書及び図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、
図8に示すように、ローラ本体17aとローラ本体17eに設けた各スリーブ18の一部をカーブベルト13の外周側の端縁から所定量だけ突出させてもよい。また、
図9に示すように、スリーブ18の外周側、内周側の端部の上側のエッジ(角)E18a,E18bを丸めた形状としてもよい。このようにエッジE18a,E18bを丸めた形状とすることで、スリーブ18の端部及びカーブベルト13の裏面の摩耗や損傷をより抑制できる。
【0055】
ローラ本体とスリーブとの間に中間層を設けてもよい。
図10に示す例では、厚みが均一なスリーブ18とローラ本体17aとの間に、中間層としての接着層31を設けている。すなわち、スリーブ18は、中間層である接着層31に嵌装されている。接着層31は、スリーブ18をローラ本体17aに固着すると同時にスリーブ18の外周面S18の高さを調整するために設けており、この接着層31の厚みを外周側から内周側に向かって(
図10において右方向に)直線的に漸増させている。これにより、スリーブ18の内周側の端部の高さtaを外周側の端部の高さtbよりも大きくしている。なお、中間層は、接着機能を有する接着層に限定されず、例えば所定の硬さを有する樹脂等で形成された層でもよい。
【0056】
また、
図11は、スリーブ18の内周側の端部とローラ本体17aとの間に中間層として薄膜状のフィルム部材32を設けている。フィルム部材32は、例えば短冊状であってローラ本体17aを一周するように巻き付けてある。スリーブ18は、均一な厚みを有しており、内周側の端部をフィルム部材32に重ねるようにしてローラ本体17aに嵌装される。これにより、スリーブ18の内周側の端部の高さtaをフィルム部材32の厚み分だけ外周側の端部の高さtbよりも大きくしている。なお、スリーブ18としては、フィルム部材32の厚みに応じて径が大きくなるように変形するものが用いられる。フィルム部材32として、筒状に加工したものを用いて、これをローラ本体17aに嵌装してもよい。また、中間層は、フィルム部材に限定されず、例えば所定の硬さを有する樹脂等でもよい。
【0057】
図12は、互いに厚みの異なる複数の筒状部材でスリーブ18を構成する例を示している。この例では、4つの筒状部材33a~33dでスリーブ18を構成しており、筒状部材33a,33b,33c,33dの順番で厚みが大きくなっている。筒状部材33a~33dは、ローラ本体17aのスリーブ18を嵌装すべき位置に外周側から内周側に向かって厚みが大きくなる順番で互いに重ならないように嵌装されている。これにより、スリーブ18の厚み(高さ)を外周側から内周側に向かって段階的に漸増させ、内周側の端部の高さを外周側の端部の高さよりも大きくしている。なお、筒状部材33a~33dの内径は、嵌装する位置のローラ本体17aの外径と同じにしてある。また、スリーブ18を構成する筒状部材の個数は、4つに限定されず、2つ、3つあるいは5つ以上であってもよい。
【0058】
(両端のローラの一方だけにスリーブを取り付ける構成)
また、上記の例では、ローラ12a及びローラ12eにそれぞれスリーブ18を設けているが、ローラ12a及びローラ12eのいずれか一方にだけスリーブ18を設けた構成としてもよい。このようにローラ12a,12eの一方にだけスリーブ18を設ける場合には、1つのスリーブ18でカーブベルト13を十分に伸長させる必要があるため、ローラ12a及びローラ12eの両方にスリーブ18を設ける場合よりも、スリーブ18の厚みを全体的に厚くすることが好ましい。ただし、スリーブ18の厚みを厚くすることによってカーブベルト13の表面に段差が生じ、カーブベルト13の走行が不安定になる可能性もある。このため、ローラ12a及びローラ12eの一方にだけスリーブ18を取り付ける場合には、カーブベルト13の走行安定性が維持できるように、スリーブ18の厚みを選定することが望ましい。
【0059】
(他の実施形態)
上記実施形態においては、1つのカーブコンベアに着目して説明しているが、例えば、
図13に示すようにカーブコンベア10Aの下流端と、隣接する他のカーブコンベア10Bの上流端とを連設した構成としてもよい。この場合、カーブコンベア10Aとカーブコンベア10Bとの間には、それらの間に形成される隙間を埋めるように支持板41を設けることが好ましい。なお、カーブコンベア10A、10Bは、上述の実施形態のカーブコンベア10とは、同じ構成であるから、同じ構成部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0060】
支持板41は、表面が平坦な板状であり、その両端の高さをカーブコンベア10A、10Bの各カーブベルト13の下流端、上流端に合せるように、例えば表面が水平にされた姿勢でフレーム45、46に固定されている。フレーム45、46は、カーブコンベア10A、10Bのフレーム14同士、フレーム15同士を連結している。この例では、支持板41は、隣接するカーブベルト13間の隙間形状に合わせて、内周側から外周側へ向かって広がるような台形状を有している。なお、支持板41を環状扇形としてもよい。
【0061】
この支持板41は、カーブコンベア10Aのカーブベルト13とカーブコンベア10Bのカーブベルト13との間の段差を解消する。すなわち、支持板41によって、カーブコンベア10Aのカーブベルト13からカーブコンベア10Bのカーブベルト13へと搬送物が乗り移る際にカーブベルト13間の段差による搬送物の跳ね上げが防止され、搬送物がスムーズに搬送される。
【0062】
また、
図13に示される例では、支持板41に、搬送物が支持板41上を通過したか否かを検知する光電センサの光を通過させる複数の貫通孔41aを設けている。支持板41の裏面側には、各貫通孔41aと対向する位置に反射板47がそれぞれ設けられている。支持板41の上方には光電センサ、すなわち各貫通孔41aに向けて投光し、反射板47からの反射光を受光する投受光器(図示せず)が設けられている。搬送物が支持板41を通過する際に、複数の貫通孔41aの少なくともいずれか1つを塞ぐことによって、その貫通孔41aを通した反射板47からの反射光の投受光器による受光されなくなることで、搬送物が支持板41を通過したことを検知する。
【0063】
この例では、3つの貫通孔41aを支持板41の外周側から内周側に向けて直線的に並べて形成している。これら3つの貫通孔41aは、投受光器から反射板47へ照射されるレーザ光の光路上の位置に、例えばプレス加工によって形成され、支持板41が適切な剛性を維持可能な程度の面積を有している。
【0064】
図14は、カーブコンベア10Cの隣接するローラ12の間の隙間にそれぞれ支持板51を設けた例を示している。なお、カーブコンベア10Cは、支持板51を設けた点が異なるのみで、その他の構成は上述の実施形態のカーブコンベア10と同じ構成であるから、同じ構成部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0065】
各支持板51は、隣接するローラ12の間に配されるようにしてフレーム14,15に固定されている。この例では、カーブベルト13の裏面が支持板51の表面に摺動することから、カーブベルト13として、例えば、帆布などのように、支持板51の表面に対して滑り易く、摩耗し難い材質により裏面が形成されているものが好ましい。
【0066】
支持板51は、内周側から外周側に向かって幅が直線的に漸増する台形状の板状である。例えば、ローラ12bとローラ12cとの隙間に配された支持板51は、ローラ12b及びローラ12cの各軸心に沿って、内周側から外周側に向かって幅が広くなっており、
図15に模式的に示すように、その表面が、ローラ12b及びローラ12cの湾曲頂上面の高さ位置Pと略一致するようにして水平に配置されている。支持板51の各位置の幅は、ローラ12b及びローラ12cに接触しない範囲で、その各位置におけるローラ12bとローラ12cとの軸間距離より大きくされている。これにより、支持板51は、その両側がローラ12b及びローラ12cに接触はしないが、ローラ12b、12cの表面に近接して配されている。なお、他のローラ12の間に配された支持板51についても同様である。このように、隣接するローラ12間に支持板51を設けることにより、支持板51によってもカーブベルト13がその裏面側から支持され、カーブベルト13の走行安定性が向上する。
【符号の説明】
【0067】
10、10A、10B、10C カーブコンベア
12 ローラ
17 ローラ本体
13 カーブベルト
18 スリーブ
【要約】
スリーブまたはカーブベルトの偏摩耗を抑制することができるカーブコンベア用ローラ、カーブコンベア及びカーブベルトを提供する。放射状に配列された回転可能な複数のローラに無端状のカーブベルトを装着し、ヘッドローラであるローラ12aとテールローラの回転によってカーブベルトを走行させる。ローラ12aとテールローラにスリーブ18をそれぞれ嵌装し、カーブベルトの外周側の裏面と接触させる。スリーブ18の内周側の端部の高さtaを外周側の端部の高さtbよりも大きくすることにより、スリーブ18の全体に分散して力を作用させる。