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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】転写方法
(51)【国際特許分類】
   B44C 1/175 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
B44C1/175 E
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019038354
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020142371
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-01-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社インテリムジャパンが、ユーチューブの投稿サイトにて、鈴木達夫が発明した転写方法の概略について公開した。平成30年5月28日 https://www.youtube.com/watch?v=NQylt7X5xGc
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社インテリムジャパンが、ホームページにて、鈴木達夫が発明した転写方法の概略について公開した。平成30年8月1日 http://www.slicedesign.jp、http://www.slicedesign.jp/ovenink/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 第54回 JAPAN DIY HOME CENTER SHOW 2018 展示日平成30年8月23日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】398050272
【氏名又は名称】株式会社インテリムジャパン
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達男
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-282198(JP,A)
【文献】特開2000-141994(JP,A)
【文献】特開平06-312748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 1/16-1/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写紙Aの表面に任意の転写可能な模様層5を印刷形成した後、その模様層5を被転写体7の必要箇所に密着させ、それにマイクロ波照射による予備焼付処理を行った後、オーブンによる輻射加熱の本焼付処理を施すことを特徴とする転写方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個数の少ないオリジナル模様を容器や置物、建築材、文具や種々のケース等の表面に簡単かつ強固に焼き付けることができる転写方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に食器や置物、スマホのケース等の表面に、模様を直接印刷により施すことが困難な場合、平面に図柄を裏向きに印刷しておき、印刷面を被転写体の曲面に密着して焼き付ける転写が古くから予期知られている。
【0003】
その中で、一般家庭でも簡単にできるものとして、パーソナルプリンターで必要な図柄を印刷して、これを被転写体に転写するものとして特許文献1のようなものが公知である。
【0004】
特許文献1に記載のものは、転写紙が使用され、従来のようにフィルムに模様を印刷し、フィルムで模様を覆った状態で被転写体に模様を転写するものとは異なり、模様のみを被転写体に付着する特性があるが、被転写体との接合は湿気により行うので、水分が不均一に残ってピンホールが生じやすい上に、焼き付けは170℃程度のオーブン加熱やその他の加熱手段の場合でも単一加熱処理であるので、良好な焼付状態を達成するには、熱源によっては20分以上の長時間加熱を要する欠点があった。従って長時間の加熱により、模様の劣化や艶の低下を生じやすい欠点があった。
【0005】
【文献】特開平9-202037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、転写の焼き付けを従来よりも短時間で行えるようにして、作業効率の向上を図ると共に、焼付時の過熱による模様の劣化の発生を低減させようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、転写紙Aの表面に任意の転写可能な模様層5を印刷形成した後、その模様層5を被転写体7の必要箇所に密着させ、それにマイクロ波照射による予備焼付処理を行った後、熱照射加熱の本焼付処理を施すことを第1の特徴とするものである。
【0008】
また本発明は、レーザープリンターにより模様層5を印刷することを第2の特徴とするものである。
【0009】
更に本発明は、模様層5を接着剤6により被転写体7の表面に接着させることを第3の特徴とし、更に一面が剥離可能な剥離紙1で覆われた水溶性接着層2の他面側を油性フィルム層3で覆い、この油性フィルム層3の表面に油性粘着層4を設けて転写紙Aを形成することを第4の特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、多品種少量の模様付けであっても簡単に対応して、平面は勿論、湾曲した表面、多少凹凸がある食器や家具等の表面であっても、任意の模様付けを転写により施すことができるものであって、その場合、左右逆転した模様が印刷された転写紙を用い、その模様を被転写体に接着し、焼き付けるため、従来のような模様を保持し、覆うフィルムがないため、模様のみを被転写体に施して装飾が行えるものである。
【0011】
そしてその場合、模様の焼付処理が短時間でも強固に行え、更に残留水分によるピンホールの発生や、過熱による模様の劣化を低減させることができるようにしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、転写紙Aに任意の転写可能な模様層5を印刷し、その模様層5を陶器やガラス、プラスチック等の被転写体7に転写し、それを熱処理して焼き付けるものである。この場合、予め模様を印刷しておけば、転写紙の既製品として供給でき、そうしない場合は、無地の転写紙Aを用意して、必要な時に必要な模様を印刷するようにすることもできる。模様層5は絵画や写真、イラスト、アニメ、装飾模様、文字等、任意のものが対象となる。
【0013】
まず転写紙Aは、一面が剥離可能な剥離紙1で覆われた水溶性接着層2の他面側を油性フィルム層3で覆い、この油性フィルム層3の表面に油性剥離層4を積層して形成されるもので、任意の模様を施すための印刷層5は、この油性剥離層4の上に印刷される。この印刷層5は求める模様が左右反転された状態で印刷される。
【0014】
印刷層5の印刷は、焼き付けにより転写が可能なものであれば、インクジェット(染料タイプ、溶剤タイプ)でも使用は可能であるが、無溶剤インクである粉末(トナー)を帯電ドラムより転写してそれを熱圧着するレーザープリンターによるものが好ましい。
【0015】
印刷層5が施された転写紙Aは、必要に応じて水に浸され、水溶性接着層2が溶解し、剥離紙1と共に除去される(図3参照)。
【0016】
他方、模様を施したい被転写体7は、マイクロ波照射による予備焼付処理を行うため、金属面が露出していない素材であって、陶磁器、ガラス、プラスチック等の素材が対象となり、その表面に接着剤6により印刷層5を接着させる(図4参照)。
【0017】
次いで印刷層5が接着された被転写体7を先ずマイクロ波照射により図5のように予備予熱を行った後、図6のように熱源照射により本加熱を施し、焼き付けを行うものである。
【0018】
焼き付け後は、必要に応じて油性フィルム層3と油性剥離層4を除去することもできる(図7参照)。
【0019】
以下、上記で概略を示したが、更に詳細に説明する。まず、転写紙Aは、図1のように、油性フィルム層3の片面に水溶性接着層2を介して剥離紙1を配置し、油性フィルム層3の他面に油性剥離層4を積層して形成されたものである。
【0020】
水溶性接着層2は、水に溶けると、上記剥離紙1と油性フィルム層3を分離させるもので、水溶性糊、水溶性接着剤を剥離紙1にコーティングするものであり、例えば澱粉、ポリビニルアルコール、デキストリン、ゼラチン、およびソルビトールのいずれかまたは複数の物質とワックス類、タルク、酸化チタンとシリカのいずれかまたは複数の添加剤を混合した水溶液を一度又は複数回に分けて剥離紙1に例えば5-15g/mの厚さにコーティングされる。
【0021】
油性フィルム層3は、加熱時に上記油性剥離層4に圧力を加えるため、インクの転写を補助するためのもので、例えばポリレウレタン樹脂、ゴム系樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、およびポリカーボネートのうち少なくともいずれか一つまたは複数の樹脂成分をメチルエチルケトン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、アセトンやアルコールのいずれかの溶剤で希釈して、前記水溶性接着層2上に5-50μ程度の厚みでコーティングして形成される。
【0022】
油性剥離層4は、印刷性物質と剥離性物質の混合物を溶剤で希釈して、前記油性フィルム層3上にコーティングされるもので、シリコン系の物質を使用して、好ましくは0.1-0.5%未満で混合される。
【0023】
以上のように構成された転写紙Aは、油性剥離層4の表面に装飾用の図形や画像、模様等の印刷層5が印刷により施される。尚、添付各図では、転写紙Aの各層は分かりやすくするために、被転写体6に対して実際よりも厚く表現している。
【0024】
印刷層5は、理論的にはシルクスクリーン印刷、インクジェットプリンタによるものも含まれるが、本発明の場合、レーザープリンタにより施されたものが望ましい。それはインクが油性剥離層4に浸透しにくく、表面に載置状態に保持されるからである。尚、転写作業の流れの中で印刷を行う場合は不要であるが、予め印刷を施してストックしておく場合は、印刷層5の表面を保護ラッピングしておくことができる。
【0025】
次いで転写作業に移るが、印刷層5が施された転写紙Aはまず水に浸され、水溶性接着層2が湿潤状態になることにより剥離紙1の接着が緩み、これを取り除くことができる。この場合、模様を部分的に使用する場合は、必要な個所を予めカットしたものを水に浸すことになる。
【0026】
貼り付ける白磁やガラス、プラスチック等の被転写体7の表面をよく洗い油分やホコリを取り除いておき、貼付ける表面に接着剤6を塗布し、この接着剤6に上記印刷層5を重ねて接着させる。この場合、ティッシュや布等で余分な水分を拭き取り、ゴムスキージー等で表面を軽く扱いて間に良い分な水分や空気等が残らないように密着させる必要がある。接着剤6としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂系の接着剤を用いることができるが、無着色であることが望ましく、印刷層5と被転写体7との接着強度が実用強度以上であれば特に限定するものではない。
【0027】
以下、転写物の焼付処理になるが、加熱による本処理の前に、マイクロ波照射による予備焼付処理を行う。ここでマイクロ波照射による予備焼付処理と、加熱による本処理との相関は、印刷層5や被転写体7の厚み、素材等により、最適の焼付状態が得られるように適宜に設定することができる。焼付後は、必要な場合は印刷層5表面に残った油性剥離層4を剥がすことができ、更にまた必要な場合は、食品衛生上安全な透明保護層をオーバーコートし焼付等しておくと、転写後、食品を扱う容器等にも安全に使用できる。
【0028】
次に具体的な実施例、参考例を挙げる。
【実施例1】
【0029】
(原材料)
転写紙Aに模様の印刷層5が施された模様転写紙、エポキシ樹脂系の接着剤6、スキージー(ゴム製)、はさみ・ペーパーカッター、ティッシュペーパーまたはキッチンペーパー、水(適量)、バット、オーブンレンジ(レンジ:600W加熱・オーブン160℃加熱可能なもの)を用意する。印刷層5は市販のレーザープリンターで印刷した。
(手順)
(1)貼り付ける白磁やガラスの表面をよく洗い油分やホコリを取り除き拭き取ります。
(2)貼付ける表面に接着剤6を塗布します。
(3)模様転写紙の貼り付けたいパーツをカットします
(4)カットしたパーツを、水を入れたボールに浸し、剥離紙と絵柄のついたフィルムがスライドする程度まで浸けます。
(5)パーツを剥離紙ごと水から取り出しティッシュやキッチンペーパーを使って余分な水分を取り除きます。
(6)絵柄の表面が下向きになるように反転させ、接着剤6を塗った上に貼り付け剥離紙をスライドさせ取り出します。
(7)スキージーを使用してしっかりと水と空気を抜き密着させます。
(8)600Wに設定したレンジに入れ3分加熱し、続けて160℃に設定したオーブンで3分加熱し定着させます。
(9)加熱後、粗熱が取れた頃にオーブンから取り出しよく冷めてから表面のフィルムをゆっくり剥がして完成です。
以上により得られた転写模様は、細部まで鮮明に発色再現できたもので、通常の使用によっても模様は簡単には摩耗により剥がれず、水気に触れても剥離することもなく、耐久性も十分であった。
【実施例2】
【0030】
実施例1の(8)において、定着処理をレンジで1分、オーブンで5分とした他は同様にして、ほぼ同様の結果を得た。
【実施例3】
【0031】
実施例1の(8)において、定着処理をレンジで5分、オーブンで1分とした他は同様にして、ほぼ同様の結果を得た。
【参考例1】
【0032】
実施例1の(8)において、定着処理をオーブンで20分とした他は同様にしたところ、模様の発色、艶がやや劣ったものとなった。
【参考例2】
【0033】
実施例1の(8)において、定着処理をレンジで6分とした他は同様にしたところ、模様の一部に膨れが生じた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は家庭などで、セラミックやガラス、プラスチック等の素材で一品毎に異なる模様を、壺や装飾品、皿やカップ等の食器類、タイル等の建材、スマホのケースや文房具等に施したい場合に簡単に転写が行えるもので、従来のような長時間処理を要することなく、処理時間を短縮することができ、しかも模様の艶が鮮やかになり、ピンホールや剥がれ等の惧れも少なくなるものである。またその場合、ユーザーが予め模様が印刷された転写紙から好みに応じたものを選ぶようにしても良いし、無地の転写用紙にユーザーが印刷をして使用するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明で使用する転写紙の概略断面図。
図2】同上の1実施例の印刷状態を示す概略工程説明図。
図3】同上の1実施例の水溶性接着層2を水溶化する状態を示す概略工程説明図。
図4】同上の1実施例で印刷層5を被転写体7に接着する状態を示す概略工程説明図。
図5】同上の1実施例で、マイクロ波照射による予備焼付処理を示す概略工程説明図。
図6】同上の1実施例で、熱照射による加熱処理を示す概略工程説明図。
図7】同上の1実施例により得られた転写装飾品の概略断面図。
【符号の説明】
【0036】
1は剥離紙、2は水溶性接着層、3は油性フィルム層、4は油性剥離層、5は印刷層、6は接着剤、7は被転写体である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7