(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】エンジンの回転検出装置およびエンジン
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
G01D5/245 110W
G01D5/245 110M
(21)【出願番号】P 2020213934
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【氏名又は名称】野口 和孝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 怜央
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】沖見 昇一
(72)【発明者】
【氏名】小村 隆太郎
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-164542(JP,A)
【文献】特表2007-500335(JP,A)
【文献】特開2014-181557(JP,A)
【文献】特開2005-308559(JP,A)
【文献】特開2001-264113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01B 7/00-7/34
G01P 3/00-3/80
F02P 5/00-5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの回転軸の回転を検出することで、前記エンジンの気筒の判別を行うためのエンジンの回転検出装置であって、
複数の検出用の検出端子部
と前記回転軸に取り付けられる円盤部とを有し、前記回転軸と一体となって回転する回転検出部材と、
前記検出端子部に対向する位置に設けられ、前記回転軸の回転に伴って通過する前記検出端子部を検出することで前記エンジンの前記気筒を判別するための検出信号を発生する回転検出センサと、
前記検出端子部に設けられた樹脂製の補強部材と、
を備え
、
前記検出端子部は、前記円盤部から突出するとともに前記回転検出センサに対向するように前記円盤部から屈曲し、前記回転検出センサに対面する検出用の平坦面部を有し、
前記補強部材は、前記平坦面部とは反対側の内面に設けられていることを特徴とするエンジンの回転検出装置。
【請求項2】
前記回転検出部材は、磁性材料で作られており、
前記回転検出センサは、前記回転検出部材の回転に伴う前記検出端子部の通過により生じる磁束変化により前記検出端子部を検出し、
前記補強部材は、前記検出端子部の前記内面に対して、接着剤により貼り付けられていることを特徴とする請求項
1に記載のエンジンの回転検出装置。
【請求項3】
前記回転検出部材は、パルサホイルであり、
前記回転軸は、コモンレール式のディーゼルエンジンの吸排気シャフトであることを特徴とする請求項1
または2に記載のエンジンの回転検出装置。
【請求項4】
エンジンの回転軸の回転を検出することで、前記エンジンの気筒の判別を行うためのエンジンの回転検出装置を備えるエンジンであって、
前記エンジンの回転検出装置は、
複数の検出用の検出端子部
と前記回転軸に取り付けられる円盤部とを有し、前記回転軸と一体となって回転する回転検出部材と、
前記検出端子部に対向する位置に設けられ、前記回転軸の回転に伴って通過する前記検出端子部を検出することで前記エンジンの前記気筒を判別するための検出信号を発生する回転検出センサと、
前記検出端子部に設けられた樹脂製の補強部材と、
を有
し、
前記検出端子部は、前記円盤部から突出するとともに前記回転検出センサに対向するように前記円盤部から屈曲し、前記回転検出センサに対面する検出用の平坦面部を有し、
前記補強部材は、前記平坦面部とは反対側の内面に設けられていることを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン等のエンジンの回転検出装置およびエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン、特にコモンレール式のディーゼルエンジンでは、気筒を判別するためのパルサホイルが使用されている。パルサホイルは、カムシャフトに取り付けられており、カムシャフトと一体となって回転し、円周方向に所定の間隔で設けられた複数の突起状の検出用の検出端子部を有している。回転検出センサは、パルサホイルの検出端子部の通過を検出することで検出信号を発生して、検出信号をエンジンECU(エンジン制御ユニット)に送る。これにより、エンジンECUは各気筒の判別を行う。回転検出センサがパルサホイルの検出端子部を確実に検出できるようにするために、回転検出センサとパルサホイルの検出端子部との間の距離、パルサホイルの検出端子部の回転方向の幅、パルサホイルの検出端子部の延長部分の長さを確保する必要がある。特許文献1には、パルサホイル(パルサプレート)を備えるディーゼルエンジンが開示されている。
【0003】
通常用いられているパルサホイルは、板金で作られている。そのため、検出端子部の板厚が比較的薄く、検出端子部の剛性が比較的低いことがある。この場合において、検出端子部が変形すると、気筒判別のためのセンシング性能が低下するか、気筒判別ができなくなる可能性がある。そこで、パルサホイルの板厚を厚くすることで検出端子部の平坦面部の変形を抑制することが一策として考えられる。しかし、パルサホイルの板厚を厚くすると、検出端子部を曲げ加工で平坦面部を形成する際に、曲げ部分の半径(曲げR)が大きくなる。そうすると、検出端子部の平坦面部を確保することが難しくなる。
【0004】
また、パルサホイルの検出端子部の剛性を確保するために、変形防止用の金属製のリブを検出端子部に設けることが他の一策として考えられる。しかし、この場合には、金属製のリブを検出端子部に対して溶接する必要があるので、検出端子部の平坦面部が溶接に伴って熱的な影響を受けて変形するおそれがある。しかも、回転検出センサが、溶接により形成される金属製の溶接ビードを誤検知するおそれもある。このため、回転検出センサが検出端子部の平坦面部を正確に検出することが困難になる。このように、パルサホイルの検出端子部に対する回転検出センサのセンシング性能を向上させるという点において改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、検出端子部に対する回転検出センサのセンシング性能を向上させることができるエンジンの回転検出装置およびエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、エンジンの回転軸の回転を検出することで、前記エンジンの気筒の判別を行うためのエンジンの回転検出装置であって、複数の検出用の検出端子部を有し、前記回転軸と一体となって回転する回転検出部材と、前記検出端子部に対向する位置に設けられ、前記回転軸の回転に伴って通過する前記検出端子部を検出することで前記エンジンの前記気筒を判別するための検出信号を発生する回転検出センサと、前記検出端子部に設けられた樹脂製の補強部材と、を備えたことを特徴とする本発明に係るエンジンの回転検出装置により解決される。
【0008】
本発明に係るエンジンの回転検出装置によれば、検出用の検出端子部には、樹脂製の補強部材が設けられている。そのため、溶接により金属製の補強部材を設けるのに比べて、検出用の検出端子部に加わる熱を抑えることができる。このため、検出用の検出端子部が熱によって変形することを抑えることができる。このため、検出用の検出端子部の剛性を強化して、気筒を判別するために回転検出センサが検出用の検出端子部を確実に検出できる。そのため、検出端子部に対する回転検出センサのセンシング性能を向上させることができる。
【0009】
本発明に係るエンジンの回転検出装置において、好ましくは、前記回転検出部材は、前記回転軸に取り付けられる円盤部を有し、前記検出端子部は、前記円盤部から突出するとともに前記回転検出センサに対向するように前記円盤部から屈曲し、前記回転検出センサに対面する検出用の平坦面部を有し、前記補強部材は、前記平坦面部とは反対側の内面に設けられていることを特徴とする。
本発明に係るエンジンの回転検出装置によれば、補強部材は、検出用の検出端子部の平坦面部とは反対側の内面に設けられている。これにより、補強部材が配置されても、回転検出センサは、補強部材の配置に関係なく、検出用の検出端子部の平坦面部を確実に検出できる。そのため、検出端子部に対する回転検出センサのセンシング性能を向上させることができる。
【0010】
本発明に係るエンジンの回転検出装置において、好ましくは、前記回転検出部材は、磁性材料で作られており、前記回転検出センサは、前記回転検出部材の回転に伴う前記検出端子部の通過により生じる磁束変化により前記検出端子部を検出し、前記補強部材は、前記検出端子部の前記内面に対して、接着剤により貼り付けられていることを特徴とする。
本発明に係るエンジンの回転検出装置によれば、補強部材は、検出用の検出端子部の内面に対して、接着剤により貼り付けられている。そのため、検出用の検出端子部は、溶接による熱の影響を受けない。そのため、検出用の検出端子部が熱によって変形することをより確実に抑えることができる。このため、検出用の検出端子部の平坦面部を確保することができる。これにより、回転検出センサは、検出用の検出端子部を確実に検出できる。
【0011】
本発明に係るエンジンの回転検出装置において、好ましくは、前記回転検出部材は、パルサホイルであり、前記回転軸は、コモンレール式のディーゼルエンジンの吸排気シャフトであることを特徴とする。
本発明に係るエンジンの回転検出装置によれば、回転検出部材は、コモンレール式のディーゼルエンジンの吸排気シャフトを利用することで回転する。回転検出センサは、回転検出部材の検出用の検出端子部を検出することで、気筒判別の検出信号を出力できる。
【0012】
また、前記課題は、エンジンの回転軸の回転を検出することで、前記エンジンの気筒の判別を行うためのエンジンの回転検出装置を備えるエンジンであって、前記エンジンの回転検出装置は、複数の検出用の検出端子部を有し、前記回転軸と一体となって回転する回転検出部材と、前記検出端子部に対向する位置に設けられ、前記回転軸の回転に伴って通過する前記検出端子部を検出することで前記エンジンの前記気筒を判別するための検出信号を発生する回転検出センサと、前記検出端子部に設けられた樹脂製の補強部材と、を有することを特徴とする本発明に係るエンジンにより解決される。
【0013】
本発明に係るエンジンによれば、検出用の検出端子部には、樹脂製の補強部材が設けられている。そのため、溶接により金属製の補強部材を設けるのに比べて、検出用の検出端子部に加わる熱を抑えることができる。このため、検出用の検出端子部が熱によって変形することを抑えることができる。このため、検出用の検出端子部の剛性を強化して、気筒を判別するために回転検出センサが検出用の検出端子部を確実に検出できる。そのため、検出端子部に対する回転検出センサのセンシング性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検出端子部に対する回転検出センサのセンシング性能を向上させることができるエンジンの回転検出装置およびエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るエンジンの回転検出装置を備えるエンジンを示す図である。
【
図2】
図1に示すエンジンの回転検出装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0017】
(エンジン100の概要)
図1は、本発明の実施形態に係るエンジンの回転検出装置1を備えるエンジン100を示している。
図1に示すエンジン100は、例えばコモンレール式のディーゼルエンジンであり、エンジン100は、例えば産業用ディーゼルエンジンである。エンジン100は、例えばターボチャージ付きの過給式の高出力な4気筒エンジンである。エンジン100は、例えば建設機械、農業機械、芝刈り機のような各用途の機器に搭載される。
【0018】
図1に示すエンジン100は、図面の簡単化のために、断面を示すハッチングの図示を省略している。エンジン100は、カムシャフト101を有し、カムシャフト101は回転中心軸CLを中心にして連続回転可能に保持されている。カムシャフト101は回転軸の例である。
図1の例では、カムシャフト101は、コモンレール式のディーゼルエンジンの吸排気シャフトであり、4気筒の各気筒に対応した複数の吸排気弁動作用のカムを有しており、カムシャフト101が回転することにより、各カムは各気筒の吸排気弁の操作を行う。
【0019】
カムシャフト101は、大径部103と、小径部104と、を有している。カムシャフト101の大径部103の外周面には、カムギヤ102が固定されている。小径部104は、大径部103の径よりも小さい径を有し、大径部103の先端に形成されている。段差部105は、大径部103と小径部104との境界部分に形成されている。段差部105は、回転中心軸CLに対して垂直になっている面であり、全周に渡って形成されている。カムシャフト101とカムギヤ102は、エンジン100のギヤケース106により覆われている。
【0020】
(エンジンの回転検出装置1)
図2は、
図1に示すエンジンの回転検出装置1を示す正面図である。
図1に示すエンジン100は、
図1と
図2に示すエンジンの回転検出装置(以下、回転検出装置という)1を備えている。回転検出装置1は、回転検出部材2と、回転検出センサ10と、を有している。回転検出装置1の回転検出センサ10は、カムシャフト101の回転に伴って回転する回転検出部材2の回転を検出することで、エンジン100の気筒判別を行うための検出信号列SSを発生する。
【0021】
<回転検出部材2>
図3は、
図2に示す回転検出部材2の形状例を示す斜視図である。
図2と
図3に示す回転検出部材2は、パルサホイルあるいはパルサプレートとも呼ばれている。回転検出部材2は、磁性材料、例えば鉄板等の金属製の板材を打ち抜き加工することで形成されている。
回転検出部材2は、円盤部3と、複数の歯状もしくは突起状の検出端子部4,5,6,7と、を有する。
図3に示すように、円盤部3は、中心孔8を有している。
図1に示すように、カムシャフト101の小径部104が、円盤部3の中心孔8に通っていて、小径部104の外周面と、円盤部3の中心孔8の内周面とは、オイル漏れが生じないように密着されている。
【0022】
図1に示すように、カムギヤ102は、カムシャフト101の大径部103の外周面に例えば圧入により固定されている。
図2と
図3に示すように、円盤部3は、4つの締結用の孔9を有している。
図1に示すように、4本の締結用のボルト9Bは、各締結用の孔9に通して、カムギヤ102のメネジ102Mにねじ込まれている。これにより、回転検出部材2は、4本の締結用のボルト9Bを用いて、カムギヤ102の側端部102Bとカムシャフト101の段差部105の両方に対して密着して突き当てられた状態で、カムギヤ102の側端部102Bに締結されている。従って、回転検出部材2は、カムギヤ102とカムシャフト101に対して固定されていて、回転検出部材2とカムギヤ102とカムシャフト101は、一体の組立体として回転する。
【0023】
図3に示すように、回転検出部材2の円盤部3の周縁部3Dには、例えばほぼ90度ごとに検出用の検出端子部4,5,6,7が、突出して形成されている。検出端子部4,5,6,7は、延長部分4A、5A、6A、7Aと、検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bと、をそれぞれ有している。延長部分4A、5A、6A、7Aは、円盤部3から半径方向に突出して形成されている。検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bは、延長部分4A、5A、6A、7Aから、それぞれ90度の角度で屈曲しており、検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bは、回転中心軸CLに平行になっている。回転検出部材2は、
図1に示すカムシャフト101とカムギヤ102の回転と一体となって、
図3に示す回転方向RTに連続回転する。
【0024】
図1に示すように、回転検出部材2の円盤部3の外面3Nは、カムギヤ102の側端部102Bとカムシャフト101の段差部105の両方に密着して突き当てられており、回転検出部材2はカムギヤ102に対してボルト9Bにより締結されている。従って、回転検出部材2は、カムギヤ102を介してカムシャフト101に対して固定されている。しかも、回転検出部材2の中心孔8の内周面は、カムシャフト101の小径部104の外周面104Hに密着されている。
【0025】
<補強部材31,32,33,34>
図1から
図3に示すように、検出端子部4,5,6,7の延長部分4A、5A、6A、7Aの内面4C、5C、6C、7Cと検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bの内面4D、5D、6D、7Dには、補強部材31,32,33,34がそれぞれ例えば貼り付けられている。延長部分4A、5A、6A、7Aの内面4C、5C、6C、7Cは、回転検出部材2の円盤部3の外面3Nとは反対側の面である。これらの補強部材31,32,33,34の材質としては、軽量で非磁性材料、工業用樹脂、好ましくはガラス繊維を含むナイロン樹脂等の樹脂を採用できる。補強部材31,32,33,34は、延長部分4A、5A、6A、7Aの内面4C、5C、6C、7Cと平坦面部4B、5B、6B、7Bの内面4D、5D、6D、7Dに対して、接着剤を用いて貼り付けられている。樹脂製の補強部材31,32,33,34は、軽量な非磁性体であるので、回転検出センサ10が検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bを検出する際に、補強部材31,32,33,34は検出能力に磁気的な影響を与えない。
【0026】
本発明の実施形態に対する比較例として、磁性を有する金属材料をスパッタ溶接することにより金属製の補強用のリブを形成する場合には、溶接による熱が延長部分4A、5A、6A、7Aと平坦面部4B、5B、6B、7Bに対して熱的な悪影響を与えてしまう。このため、延長部分4A、5A、6A、7Aの内面4C、5C、6C、7Cと平坦面部4B、5B、6B、7Bの形状が変形してしまうおそれがある。延長部分4A、5A、6A、7Aと平坦面部4B、5B、6B、7Bは、熱的な影響を受けて変形するおそれがあるだけでなく、回転検出センサ10が溶接により形成される磁性体の溶接ビードを誤検知するおそれがある。この比較例では、回転検出センサ10が検出用の検出端子部4,5,6,7を正確に検出することが厳しくなり、確実に気筒を判別できない。
【0027】
これに対して、本発明の実施形態では、樹脂製の補強部材31,32,33,34は、検出端子部4,5,6,7の延長部分4A、5A、6A、7Aと検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bを内面4C、4D、5C、5D、6C、6D、7C、7D側から機械的に補強するために配置されている補強リブである。樹脂製の補強部材31,32,33,34は、常温において、延長部分4A、5A、6A、7Aの内面4C、5C、6C、7Cと平坦面部4B、5B、6B、7Bの内面4D、5D、6D、7Dに接着剤を用いて貼り付けるだけで、検出端子部4,5,6,7の延長部分4A、5A、6A、7Aと平坦面部4B、5B、6B、7Bの剛性を高めることができる。また、補強部材31,32,33,34は非磁性の樹脂であるので、回転検出装置1の回転検出センサ10は、気筒を検出する際のセンシングの悪化を防ぐことができる。
【0028】
<回転検出センサ10>
次に、
図1と
図2に示す回転検出センサ10を説明する。
回転検出センサ10は、検出用の検出端子部4,5,6,7に対応するように近接して配置されている。すなわち、回転検出センサ10は、検出用の検出端子部4,5,6,7に対向する位置に設けられている。回転検出センサ10は、カムシャフト101の回転に伴って通過する検出端子部4,5,6,7の検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bを検出することで、
図3に例示するような気筒判別用の検出信号列SSを発生する。
【0029】
図1に示すエンジンECU(エンジンコントロールユニット)のような制御部200は、回転検出センサ10から、例えば
図3に例示するような検出信号列SSの検出信号(検出パルス)P1、P2、P3、P4を受けることで、検出信号P1、P2、P3、P4に基づいて各気筒を判別する。回転検出センサ10が、検出端子部4,5,6,7の検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bの通過を検出することで、回転検出センサ10は、制御部200に検出信号P1.P2.P3.P4を供給する。
【0030】
検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bは、ほぼ90度回転する毎に、回転検出センサ10の検出面11に対向した位置にきて、検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bは、検出面11に平行になるように近接される。
図1に示すように、検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bと検出面11とは、予め定めた隙間DTを有している。
【0031】
回転検出センサ10は、磁気センサであり、磁性体である検出端子部4,5,6,7の検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bが検出面11を通過することにより生じる磁束変化を検出することで、検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bの通過を検出する。回転検出センサ10は、
図1に示すように、ギヤケース106に設けられた取付部107に対して挿入して固定されている。回転検出センサ10は、回転検出センサ10の軸方向QLに沿って位置がずれないように、取付部107に対して確実に固定されている。これにより、検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bと検出面11とは、予め定めた隙間DTを維持することができる。
【0032】
上述したように、検出端子部4,5,6,7の延長部分4A、5A、6A、7Aの内面4C、5C、6C、7Cと検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bの内面4D、5D、6D、7Dには、樹脂製の補強部材31,32,33,34がそれぞれ例えば貼り付けられていることで、検出端子部4,5,6,7の剛性を確保している。回転検出センサ10が検出端子部4,5,6,7の検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bの通過による磁束変化により検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bをセンシングする際に、回転検出部材2の高速回転に伴う負荷の変化や環境の変化といった外乱の影響によって、回転検出部材2の検出端子部4,5,6,7の延長部分4A、5A、6A、7Aと検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bの形状が変化することを阻止できる。従って、回転検出部材2と回転検出センサ10を用いた気筒判別のセンシングのロバスト性(様々な外部の影響によってセンシング性能が影響されにくい性質)を向上できる。
【0033】
樹脂製の補強部材31,32,33,34が設けられていることで、回転検出部材2は、検出端子部4,5,6,7が変形することを抑制でき、回転検出部材2が薄い板金で作られていても、回転検出部材2の気筒判別のためのセンシング性能が低下することがない。従って、本発明の実施形態では、回転検出部材2の板厚を大きくする必要が無く、検出用の検出端子部4,5,6,7の検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bを、折り曲げ角度90度で正確に折り曲げて形成するために、曲げ部分の半径(曲げR)を小さくでき、検出用の検出端子部4,5,6,7の平坦面部4B、5B、6B、7Bの面積の確保を容易にできる。
【0034】
このため、回転検出センサ10が検出用の検出端子部4,5,6,7の検出用の平坦面部4B、5B、6B、7Bを精度よく検出することができ、
図1に示す制御部200は、回転検出センサ10から、例えば
図3に例示するような検出信号列SSの検出信号P1、P2、P3、P4を受けることで、確実に気筒の判別を行える。
図3に示す検出信号P1、P2、P3、P4は相互に異なるパルス波形として出力される。
【0035】
コモンレール式ディーゼルエンジンの燃料噴射装置では、クランク軸が燃料サプライポンプを駆動すると、燃料は、燃料サプライポンプからコモンレールに供給されて蓄圧され、蓄圧された燃料は燃料噴射管を経て燃料インジェクタから燃焼室に供給される。燃料噴射装置は、別のセンサで得られるエンジン回転数と、回転検出装置1により気筒判別をして、各気筒の燃料インジェクタから所定タイミングで所定量の燃料を噴射することができる。
【0036】
回転検出部材2の板厚を増加させるような形状の変更は不要であり、回転検出部材2そのものの形状は変更しないで良いことから、形状変更に伴うコストアップや、センシング性能の悪化を抑制できる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
例えば、図示例では、エンジン100として産業用ディーゼルエンジン等のディーゼルエンジンを例に挙げているが、これに限らず、本発明のエンジンの構造は、ガソリンエンジンや、ハイブリッド型のエンジンにも適用でき、大型から小型のエンジンに適用できる。エンジン100は、例えばターボチャージ付きの過給式の高出力な4気筒エンジンであるが1気筒、2気筒、3気筒あるいは5気筒以上の多気筒エンジンであっても良い。
【符号の説明】
【0038】
1:回転検出装置、 2:回転検出部材、 3:円盤部、 3D:周縁部、 3N:外面、 4:検出端子部、 4A:延長部分、 4B:平坦面部、 4C、4D:内面、 5:検出端子部、 5A:延長部分、 5B:平坦面部、 5C、5D:内面、 6:検出端子部、 6A:延長部分、 6B:平坦面部、 6C、6D:内面、 7:検出端子部、 7A:延長部分、 7B:平坦面部、 7C、7D:内面、 8:中心孔、 9:孔、 9B:ボルト、 10:回転検出センサ、 11:検出面、 31、32、33、34:補強部材、 100:エンジン、 101:カムシャフト、 102:カムギヤ、 102B:側端部、 102M:メネジ、 103:大径部、 104:小径部、 104H:外周面、 105:段差部、 106:ギヤケース、 107:取付部、 200:制御部、 CL:回転中心軸、 DT:隙間、 P1、P2、P3、P4:検出信号、 QL:軸方向、 R:曲げ、 RT:回転方向、 SS:検出信号列