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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】継手金具
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/00 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
F16L33/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019165209
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2021042812
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】奥村 博
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-206243(JP,A)
【文献】特開2010-014221(JP,A)
【文献】特開2010-155265(JP,A)
【文献】特開平10-263851(JP,A)
【文献】特開昭64-055496(JP,A)
【文献】特開2014-228013(JP,A)
【文献】特開2008-075806(JP,A)
【文献】特開昭56-003388(JP,A)
【文献】特開2011-241910(JP,A)
【文献】実開昭51-131715(JP,U)
【文献】英国特許出願公開第02322174(GB,A)
【文献】中国実用新案第205618852(CN,U)
【文献】中国実用新案第202100863(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0101680(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0154257(US,A1)
【文献】特開2015-202509(JP,A)
【文献】特開昭55-163385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホースに接続されるニップルの一方の端部と、パイプ部の端部とが摩擦圧接されて構成され
前記ニップルは、前記摩擦圧接される環状の接合面を有する筒状の基部と、前記基部よりも大きい寸法の外径で形成されたカラー部と、ソケットの端部が結合される結合用溝と、前記結合用溝を挟んで前記カラー部と対向する鍔部と、前記鍔部から突出され前記ホースの内部に挿入されるニップル側筒状部とが、それらの順に並べられて構成され、
前記カラー部の外径が前記ニップル側筒状部の外径よりも大きい寸法で形成されることで、前記カラー部の半径方向の厚さは前記ニップル側筒状部の半径方向の厚さより大きい寸法で形成され、
前記ソケットの端部が前記結合用溝に結合され、前記ニップル側筒状部と前記ソケットとの間の環状空間に前記ホースが挿入され、前記ソケットが径方向外側から径方向内側に加締められ前記ホースが連結される継手金具であって、
前記パイプ部の内径D2を前記ニップル側筒状部の内径D1より大きい寸法で形成し、
前記基部の内径を前記パイプ部の内径D2と等しい寸法で形成し、
前記カラー部の内周面を内径D2から内径が次第に小さくなり前記ニップル側筒状部の内径D1の内周面に接続される傾斜面部で形成し、
前記ニップルの他方の端部から前記傾斜面部までの距離をLとし、前記傾斜面部で形成される円錐面の直径上に位置する一対の傾斜面がなす角度をθとした場合、
以下の式(1)を満たす、
ことを特徴とする継手金具。
tan(θ/2)<D1/L……(1)
【請求項2】
前記角度θは、0°より大きく、40°以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の継手金具。
【請求項3】
前記パイプ部の前記摩擦圧接されている端部と反対側の端部に、前記パイプ部を機器に着脱可能に結合する口金が設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の継手金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継手金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、継手金具として、機器などにホースを接続するために、ホースの端部に取り付けられるホース継手金具が提供されている(特許文献1参照)。
ホース継手金具は、互いに結合されたニップルとソケットとを有し、それらニップルとソケットは、同軸上で軸方向の一端が開放されたニップル側筒状部と、前記ニップル側筒状部の半径方向外側に位置するソケット側筒状部とを有している。
そして、ニップル側筒状部の外周面とソケット側筒状部の内周面との間にホースの端部が挿入される環状空間を有している。
ホース継手金具のホースの端部への取り付けは、環状空間にホースの端部を挿入したのち、加締め装置によりソケット側筒状部を加締めることにより、ソケット側筒状部とホースの端部とニップル側筒状部とを一体的に取り付けることでなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-181789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のようなホース継手金具では、ホースが取り付けられる端部と反対側のニップルの端部に、筒状のパイプ部を接続する場合、ニップルの内径と同じ内径のパイプ部を接合していたため、比較的小さい寸法の内径が連続することにより圧力損失が増加するという課題があった。
このため、ニップルの端部にニップルの内径より大きい内径のパイプ部を接合することで圧力損失を低下させることができるが、ニップルの端部の内径部に段差が形成されてしまう。
また、ニップルとパイプ部とを摩擦圧接により接合すると、接合面の外周面および内周面にカール形状のバリが環状に形成されるが、内部に形成されたバリは圧力損失を発生させるため切削除去する。
しかしながら、内部のバリを切削除去している際にバリが残ってしまうことがあり、この残ったバリがニップルの内径部に形成された段差に隠れてしまうとバリの検出性が低下するため残ったバリを見逃してしまい、バリによる圧力損失が発生してしまう。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、圧力損失の低下を図るとともに、内部に形成されたバリの検出性を確保してバリによる圧力損失の発生を抑制する継手金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するため本発明は、第1パイプ部の一方の端部と第2パイプ部の端部とが摩擦圧接されて構成された継手金具であって、前記第2パイプ部の内径D2を前記第1パイプ部の内径D1より大きい寸法で形成し、前記第1パイプ部の前記一方の端部の内径を前記第2パイプ部の内径D2と等しい大内径部で形成し、前記大内径部から前記第1パイプ部の他方の端部に向かう箇所を内径が次第に小さくなり前記第1パイプ部の内径D1の内周面に接続される傾斜面部で形成し、前記他方の端部から前記傾斜面部までの距離をLとし、前記傾斜面部で形成される円錐面の直径上に位置する一対の傾斜面がなす角度をθとした場合、tan(θ/2)<D1/Lを満たすことを特徴とする。
また、本発明は、前記角度θは、0°より大きく、40°以下であることを特徴とする。
また、本発明は、前記第1パイプ部は、前記他方の端部側がホースの端部に連結されるニップルとして形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記第2パイプ部の前記摩擦圧接されている端部と反対側の端部に、前記パイプ部本体を機器に着脱可能に結合する口金が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第2パイプ部の内径D2を第1パイプ部の内径D1より大きい寸法で形成し、第1パイプ部の一方の端部の内径を第2パイプ部の内径D2と等しい大内径部で形成し、大内径部から第1パイプ部の他方の端部に向かう箇所を内径が次第に小さくなり第1パイプ部の内径D1の内周面に接続される傾斜面部で形成し、他方の端部から傾斜面部までの距離をLとし、傾斜面部で形成される円錐面の直径上に位置する一対の傾斜面がなす角度をθとした場合、tan(θ/2)<D1/Lを満たすものであるため、第2パイプ部の内径D2を第1パイプ部の内径D1より大きくすることで圧力損失の低下を図るとともに、内部に形成されたバリの検出性を確保してバリによる圧力損失の発生を抑制する上で有利となる。
また、第1パイプ部の大内径部から傾斜面部を設けて内径D1の内周面に接続することで、バリ取り性が向上するとともに、内周面の洗浄度を向上させる上で有利となる。
また、本発明によれば、角度θを0°より大きく、40°以下で設定しているため、圧力損失の増加を抑制する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ホース継手金具の半部断面図である。
図2】ホース継手金具の半部断面図である。
図3】バリが発生しているホース継手金具の半部断面図である。
図4】本実施の形態のホース継手金具の断面図である。
図5】(A)は本実施の形態のニップルの断面図であり、(B)は比較対象のニップルの断面図である。
図6】パイプ(管)の角度θと損失係数εの関係を示すグラフである。
図7】実験例の説明である。
図8】バリの切削除去手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態の継手金具をホース継手金具に適用した例について図面を参照して説明する。
まず、図1を参照してホース継手金具について説明する。
ホース継手金具10は、ホースの端部に連結され、ホース内を流れる流体を適宜機器に供給し、あるいは、適宜機器から排出させるものである。
図1に示すように、ホース継手金具10は金属製であり、ニップル12と、ソケット14と、パイプ部16と、ナット部18と、を含んで構成されている。
【0009】
ニップル12(第1パイプ部)は、基部20とカラー部22と結合用溝24とニップル側筒状部26とが同軸上に並べられて構成されている。
基部20は、パイプ部16に接合される箇所であり筒状をなし、端部は接合面Jとして形成されている。
カラー部22は、基部16の端部近傍に設けられ、基部20よりも大きい寸法の外径で形成されている。
結合用溝24は、ソケット14の軸方向の一端14Aが結合される箇所である。
結合用溝24に隣接して鍔部28が設けられている。
鍔部28の両側の端面のうち一方の端面は結合用溝24の側面で形成され、鍔部28の他方の端面からニップル側筒状部26が突出している。
ニップル側筒状部26は、ホースの内周面に挿入される部分である。
ニップル側筒状部26の外周面には、周方向に延在する複数の係止用凹凸部2602が軸方向に間隔をおいて形成されている。
【0010】
ソケット14は、その軸方向の一端14Aが結合用溝24に加締められ、結合されて配設されている。
ソケット14は、結合用溝24に加締められた部分に連続しニップル側筒状部26の半径方向外側の箇所で筒状に延在するソケット側筒状部30を有している。
ソケット側筒状部30の内周面には、周方向に延在する複数の係止用凸部3002が軸方向に間隔をおいて形成されている。
【0011】
ホースの端部が挿入される環状空間Sは、ニップル側筒状部26の外周面とソケット側筒状部30の内周面との間に形成されている。
環状空間Sは、それらニップル側筒状部26とソケット側筒状部30の軸方向の一端が開口部とされ、長手方向の他端はソケット14の一端14Aが結合用溝24に結合されることにより閉塞されている。
なお、ホース継手金具10は多種のものが存在し、本発明は、ニップル12の外周部にソケット14の軸方向の一端14Aが結合され、ニップル12の外周部とソケット14の内周部との間にホース挿入用の環状空間Sがソケット14の軸方向の他端に開放状に設けられるホース継手金具10の全てに適用可能である。
【0012】
ホース継手金具10にホースを連結する場合は、環状空間Sにホースを挿入し、ソケット側筒状部30の半径方向外側に配置された加締め装置の複数の加締め爪を縮径させ、ソケット側筒状部30を加締めることで、ソケット側筒状部30とホースの端部とニップル側筒状部26とを結合する。
【0013】
パイプ部16(第2パイプ部)は、均一内径の筒状に形成されている。
パイプ部16の端部の接合面Jと、ニップル12(第1パイプ部)の接合面Jとは摩擦圧接で接合されている。
すなわち、パイプ部16の一方の端部16Aは、ニップル12の一方の端部12A、つまり基部20の端部20Aに摩擦圧接により接合される。
パイプ部16の他方の端部16Bには、ナット部18が回転可能にかつ抜落不能に設けられている。
ナット部18は、パイプ部本体10Aを機器や他のパイプ部などに着脱可能に結合する口金の一例であって、ナットを有していない口金が接続されてもよい。
【0014】
図4に示すように、本実施の形態のホース継手金具10では、パイプ部16の内径D2がニップル12の内径D1より大きい寸法で形成されており、ニップル12は、一方の端部12A側から大内径部1202、傾斜面部1204、本体内径部1206が同軸上に連続して形成されている。
大内径部1202は、ニップル12の一方の端部12Aに設けられており、その内径はパイプ部16の内径D2と等しい寸法で形成されている。
傾斜面部1204は、大内径部1202からニップル部12の他方の端部12Bに向かう箇所に設けられており、その内径は内径D2と等しい寸法から内径D1と等しい寸法になるよう次第に小さくりニップル12の内径D1の内周面に接続されるように形成されている。
本体内径部1206は、傾斜面部1204からニップル部12の他方の端部12Bまでに設けられており、均一内径D1で形成されている。
【0015】
ここで、本実施の形態のホース継手金具10が、ニップル12の内径は変更せずにパイプ部16の内径を大きくし、ニップル12にテーパー(傾斜面部1204)を形成した経緯を説明し、その後にテーパーの角度(傾斜面部1204の角度)について説明する。
図1に示すように、一般的には、ホース継手金具10は、パイプ部16の内径がニップル12の内径と等しい寸法で形成されている。
ホース継手金具10の内部に流体が流れる際の圧力損失は、内径を大きくするほど低下することが知られているが、ホースの内径はJIS(Japanese Industrial Standards)規格に基づいて形成されるため、ニップル部12の内外径寸法もホースの内径に合わせて制約を受けることになる。
従って、図2に示すように、ニップル12のニップル側筒状部26の内径は変更せずに、パイプ部16の内径を大きくすることで圧力損失を低下させる。
なお、図2以降に示すホース継手金具10は、ソケット14を省略した図となっている。
【0016】
図2に示すホース継手金具10は、パイプ部16の内径D2を、ニップル12の内径D1より大きい寸法で形成している(D1<D2)。
これにより、パイプ部16を接合するニップル12の一方の端部12Aの内径に段差Xが形成され、この段差Xによっても圧力損失が発生するが、パイプ部16の内径D2を大きくしたことによる圧力損失の低下により、ホース継手金具10全体としての圧力損失は低下することになる。
しかし、この段差Xにより異なる問題が生じる。
【0017】
具体的には、ニップル12とパイプ部16とを摩擦圧接により接合する際、接合面Jの外周面および内周面にカール形状のバリB(図8(B)参照)が環状に形成されてしまうが、外周面のバリBは他の部品に引っ掛かったり接触により怪我をする恐れがあり、内部のバリBは、圧力損失を発生させるため、外周面および内周面のバリBは切削除去する。
しかしながら、内部のカール形状のバリBを切削除去している際に、バリBが残ってしまうことがあり、図3に示すように、この残ったバリBがニップル12の内径に形成された段差Xの近傍まで移動して段差Xに隠れてしまうと、残ったバリBを見逃してしまい除去できないことがある。
そこで、本実施の形態では、図4に示すように、ニップル12の内径は変更せずにパイプ部16の内径を大きくし、さらにニップル12の内径の段差Xをなくすためにニップル12にテーパーを形成している。
なお、ニップル12の内部のバリは、ナット部18側より距離が近いニップル12側の開口部から検出するのが一般的である。
【0018】
次に、テーパーの角度、すなわち傾斜面部1204の角度について説明する。
大内径部1202および傾斜面部1204に残ってしまったバリを検出する場合、ニップル12側の開口部から大内径部1202および傾斜面部1204の内周面が視認できるように、傾斜面部1204の傾斜角を形成する。
すなわち、図5(A)のV1に示すように、傾斜面部1204の内周面の延長線がニップル12の他方の端部12B側の開口部に達するように角度θを設定した場合は、その開口部から傾斜面部1204および大内径部1202が視認できることになり、ニップル12の内部に形成されたバリを検出できる。
一方、図5(B)のV2に示すように、傾斜面部1204の内周面の延長線がニップル12の開口部に達することなくニップル側筒状体26の内周面にぶつかるように角度θを設定した場合は、その開口部から傾斜面部1204および大内径部1202が視認できないことになる。
【0019】
従って、ニップル12の他方の端部12Bから傾斜面部1204までの距離である本体内径部1206の軸心方向の距離をLとし、傾斜面部1204で形成される円錐面の直径上に位置する一対の傾斜面がなす角度をθとした場合、以下の式(1)を満たすように、傾斜面部1204の傾斜角を形成する。
tan(θ/2)<D1/L……(1)
【0020】
さらに、本実施の形態のホース継手金具10は、ニップル12のニップル側筒状部26の内径は変更せずに、パイプ部16の内径を大きくすることで圧力損失を低下させるため、ニップル12に傾斜部1204によるテーパーを形成した場合の圧力損失が、ニップル12の内径に段差Xが形成された場合(図2)の圧力損失より増加しないように角度θの範囲を定める必要がある。
【0021】
図6では、パイプ(管)の断面積を拡大していった場合の角度θと損失係数εの関係をグラフに示している。
内径D1のパイプを1.5倍の内径D2に拡大していった場合の角度θと損失係数εの関係をグラフG1で示し、内径D1のパイプを3倍の内径D2に拡大していった場合の角度θと損失係数εの関係をグラフG2で示している。
損失ヘッド(h)は、以下の式(2)で表すことができる。
h=ε(q1-q2)/2g……(2)
ε:損失係数
q1:管径内径D1の平均流速
q2:管径内径D2の平均流速
g:重力加速度
【0022】
図6において、角度θ=0°は、パイプを拡大しない場合であり、図1に示すように均一内径の場合である。
また、角度θ=180°は、パイプを半径方向外側に拡大した場合であり、図2に示すようにニップル12の内径に段差Xが形成されている場合であって、グラフG1、G2において損失係数ε≒1となっていることがわかる。
従って、本発明者は、損失係数ε<1となるような角度θを設定するための実験を行い、実験例を図7に示している。
【0023】
図7の実験例では、ニップル12の軸心方向の長さを71.0mm、ニップル12の本体内径部1206の軸心方向の長さ(距離L)を52.0mm、ニップル12の本体内径部1206の内径D1をφ15.0mm、ニップル12の大内径部1202およびパイプ部16の内径D2をφ19.4mmとした。
角度θを40°、35°、30°、25°、20°、15°、10°とした場合のそれぞれ実験例1~7では損失係数εが1未満となり、圧力損失がニップル12の内径に段差Xが形成された場合(図2)の圧力損失より低下する。
一方、角度θを45°、50°とした場合の比較例1、2、すなわち角度θを40°より大きくした場合では、損失係数εが1以上となり、圧力損失がニップル12の内径に段差Xが形成された場合(図2)の圧力損失より増加してしまう。
以上より、角度θは、0°より大きく、40°以下であればよい。
なお、角度θは30°以上40°以下であることが好ましいが、ニップル12の軸方向の長さにより適宜調整する。
【0024】
次に、図8を参照して、ニップル12とパイプ部16を摩擦圧接により接合したのちバリBを切削除去するまでの手順について説明する。
まず、ニップル12の一方の端部12Aと、パイプ部16の一方の端部16Aとを摩擦圧接により接合すると(図8(A))、接合面Jの外周面および内周面にカール形状のバリBが環状に形成される(図8(B))。
外周面に形成されたバリBをバリ取り工具40により除去し、ドリル42によるドリル加工により内周面に形成されたバリBを除去し、摩擦を抑えたりホース継手金具10を冷却するためにパイプ部16からニップル12に向けて内部に切削油を流す(図8(C))。
内周面に形成されたバリBはドリル加工だけでは除去できないため、内径バリ取り工具44を挿入してバリBを除去し、内径の仕上げ処理を行う(図8(D))。
ドリル加工に加え、仕上げ処理を行っても内周面に形成されたバリは除去できない場合があり、小さくなった環状のバリが切削油によって傾斜面部1204に押し付けられてしまう(図8(E))。
本実施の形態のホース継手金具30のニップルは、上述した式(1)を満たし、かつ0°より大きく40°以下の角度θにより傾斜面部1204が形成されており、ニップル12側の開口部から内周面を視認できるため、バリ取り用パイプ46を挿入してパイプの内径に残ったバリを除去する(図8(F))。
【0025】
このように、本実施の形態のホース継手金具10は、パイプ部16の内径D2をニップル12の内径D1より大きい寸法で形成し、ニップル12の一方の端部12Aの内径をパイプ部16の内径D2と等しい大内径部1202で形成し、大内径部1202からニップル12の他方の端部12Bに向かう箇所を内径が次第に小さくなりニップル12の内径D1の本体内径部1206の内周面に接続される傾斜面部1204で形成し、他方の端部112Bから傾斜面部1204までの距離をLとし、傾斜面部1204で形成される円錐面の直径上に位置する一対の傾斜面がなす角度をθとした場合、tan(θ/2)<D1/Lを満たすものであるため、圧力損失の低下を図るとともに、内部に形成されたバリBの検出性を確保してバリBによる圧力損失の発生を抑制する上で有利となる。
また、ニップル12の大内径部1202から傾斜面部1204を設けて内径D1の本体内径部1206の内周面に接続することで、バリ取り性が向上するとともに、内周面の洗浄度を向上させる上で有利となる。
また、角度θを0°より大きく、40°以下で設定しているため、ホース継手金具10の圧力損失をニップル12に段差Xが形成された場合の圧力損失より低下させることができ、圧力損失の増加を抑制する上で有利となる。
【符号の説明】
【0026】
10 ホース継手金具
12 ニップル
14 ソケット
16 パイプ部
18 ナット部
20 基部
22 カラー部
24 結合用溝
26 ニップル側筒状部
28 鍔部
30 ソケット側筒状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8