(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】圧延計画支援装置、圧延順序決定方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20231213BHJP
B21B 37/00 20060101ALI20231213BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20231213BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
B21B37/00 210
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2019183095
(22)【出願日】2019-10-03
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】枚田 優人
(72)【発明者】
【氏名】足立 巧
(72)【発明者】
【氏名】森田 幾太郎
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-215873(JP,A)
【文献】特開2008-168320(JP,A)
【文献】特開2012-194712(JP,A)
【文献】米国特許第06560502(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
B21B 37/00
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャージにおける2つのチャージの組み合わせごとに
各チャージの性質を示すデータと、各チャージから生成された金属素材について実施された圧延処理の順序差とを対応づけることによって生成された教師データに基づいて、前記複数のチャージから生成された2つ
の金属素材の性質
と前記2つの金属素材について実施される圧延処理の順序差との相関を機械学習の手法により学習する学習部と、
前記学習部によって学習された前記相関に基づき、将来の圧延処理の対象となる複数の金属素材について、その性質および生成元のチャージから、前
記複数の金属素材
について前記将来の圧延処理における処理順序を決定する圧延順序決定部と、
を備え
、
前記圧延順序決定部は、前記相関の学習結果に基づいて、前記複数の金属素材から選択しうる2つの金属素材の組み合わせについて圧延処理の順序差を推定し、前記順序差の総和が所定の閾値以下となるように、前記複数の金属素材について圧延処理における処理順序を決定する、
圧延計画支援装置。
【請求項2】
前記学習部は、前記
処理順序の差の最小値を認識し、前記最小値に係る2つのチャージと、前記2つのチャージから生成された2つの前記金属素材の性質との相関を学習する、
請求項
1に記載の圧延計画支援装置。
【請求項3】
前記圧延順序決定部によって推定された前記
処理順序の差を、前記圧延順序決定部によって決定された前記処理順序の順に示す順序差データを生成して出力するデータ出力部をさらに備える、
請求項1
または2に記載の圧延計画支援装置。
【請求項4】
決定された前記処理順序に基づいて行われた圧延処理の実績データを新たに入力する実績データ入力部をさらに備え、
前記学習部は新たに入力された前記実績データに基づいて前記相関を再学習する、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の圧延計画支援装置。
【請求項5】
複数のチャージにおける2つのチャージの組み合わせごとに
各チャージの性質を示すデータと、各チャージから生成された金属素材について実施された圧延処理の順序差とを対応づけることによって生成された教師データに基づいて、前記複数のチャージから生成された2つ
の金属素材の性質
と前記2つの金属素材について実施される圧延処理の順序差との相関を機械学習の手法により学習する学習ステップと、
前記学習ステップにおいて学習された前記相関に基づき、将来の圧延処理の対象となる複数の金属素材について、その性質および生成元のチャージから、前
記複数の金属素材
について前記将来の圧延処理における処理順序を決定する圧延順序決定ステップと、
を有
し、
前記圧延順序決定ステップにおいて、前記相関の学習結果に基づいて、前記複数の金属素材から選択しうる2つの金属素材の組み合わせについて圧延処理の順序差を推定し、前記順序差の総和が所定の閾値以下となるように、前記複数の金属素材について圧延処理における処理順序を決定する、
圧延順序決定方法。
【請求項6】
複数のチャージにおける2つのチャージの組み合わせごとに
各チャージの性質を示すデータと、各チャージから生成された金属素材について実施された圧延処理の順序差とを対応づけることによって生成された教師データに基づいて、前記複数のチャージから生成された2つ
の金属素材の性質
と前記2つの金属素材について実施される圧延処理の順序差との相関を機械学習の手法により学習する学習ステップと、
前記学習ステップにおいて学習された前記相関に基づき、将来の圧延処理の対象となる複数の金属素材について、その性質および生成元のチャージから、前
記複数の金属素材
について圧延処理における処理順序を決定する圧延順序決定ステップと、
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム
であって、
前記圧延順序決定ステップにおいて、前記相関の学習結果に基づいて、前記複数の金属素材から選択しうる2つの金属素材の組み合わせについて圧延処理の順序差を推定し、前記順序差の総和が所定の閾値以下となるように、前記複数の金属素材について圧延処理における処理順序を決定する、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属素材の圧延順序を決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業をはじめとして、様々な産業で、処理順序に関し寸法及び品質の制約がある複数の製品を処理することが行われている。例えば、鉄鋼業における熱間圧延工場では、複数の加熱炉で加熱された複数のスラブをヤードに仮置きし、ヤードに仮置きされた複数のスラブを熱間圧延機で圧延してコイルを製造することが一般的に行われている。熱間圧延機で複数のスラブを圧延する際には、圧延順に関しスラブの寸法及び品質の制約が生じる。
【0003】
例えば、コフィンスケジュール(coffin Schedule;ロール組み替え後の10~20本は幅狭材から徐々に幅広材に圧延材を移行させ、その後は幅広材から徐々に幅狭材に圧延材を移行させる圧延スケジュール)でスラブを圧延することが好ましい。また、圧延順で連続する先行材と後行材とのコイル幅やコイル厚みの差が適正な範囲内であることや、加熱炉内で一定の範囲内で前後する複数のスラブに必要な在炉時間の差が適正な範囲内であることが好ましい。よって、このような好ましい圧延を行いつつ、熱間圧延工場における生産性が可及的に高まるように、複数の加熱炉全体で見た場合の当該複数の加熱炉からのスラブの抽出順(すなわち、熱間圧延機におけるスラブの圧延順)を、熱延スケジュールとしてコンピュータによって決定することが望まれる。以下の説明では、「複数の加熱炉全体で見た場合の当該複数の加熱炉からのスラブの抽出順」を必要に応じて「スラブ(鋼材ということもある)の抽出順」又は「抽出順」と略称する。
【0004】
このようなスラブの抽出順を適切に決定するため、例えば特許文献1には、スラブの絶対的な抽出順に関する制約(絶対位置制約)と、抽出順で相前後するスラブの相対的な抽出順に関する制約(相対位置制約)とを満たすように、N(Nは2以上の自然数)個のスラブの抽出順をそれぞれ決定する方法が記載されている。また、例えば特許文献2には、処理順序スケジュールを作成するに際し、制約を満たすように全ての製品の処理順を決定することができない場合には、圧延処理順序スケジュールに取り込むことが相対的に不適切となる製品を、製品を除外することによる生じる被害が可及的に小さくなるように除去して、複数の製品の処理順を決定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-284828号公報
【文献】特許第5704048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スラブの抽出順を決定する従来の方法は、制約と目的関数に基づく最適化問題を解くことによるものであり、最適解を得るためには適切な制約の設定が必要とされる。しかしながら、このような制約は、人間が必ずしも常に適切に設定することができるとは限らない。そのため、最適化問題に対して適切な制約を設定できなかった場合、最適解が得られず、圧延スケジュールを計画することができなくなる可能性があった。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、鉄鋼の圧延工程におけるスラブの抽出順を人による制約の設定を必要とせずに決定することができる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、複数の金属素材を圧延処理する際に定められた前記金属素材の処理順序と、前記処理順序に相関する前記金属素材の性質に関する情報と、の過去実績を示す実績データに基づいて、前記性質と前記処理順序との相関を機械学習の手法により学習する学習部であって、前記複数の金属素材を前記性質に関する所定の条件で分類した層別ごとに前記相関を学習する学習部と、前記相関の学習結果を示す学習データと、将来の圧延処理の対象となる金属素材の性質を示す処理対象データとに基づいて、将来の圧延処理における前記金属素材の処理順序を決定する圧延順序決定部と、を備える圧延計画支援装置である。
【0009】
本発明の一態様は、上記の圧延計画支援装置であって、前記学習部は、第1の層別に分類された金属素材の処理順序である第1の処理順序と、第2の層別に分類された金属素材の処理順序である第2の処理順序との順序差と、前記第1の層別及び前記第2の層別の組み合わせと、の相関を学習する。
【0010】
本発明の一態様は、上記の圧延計画支援装置であって、前記圧延順序決定部は、前記学習データと、処理順序が連続する2つの金属素材の処理対象データとに基づいて、それぞれの前記金属素材が属する層別の組み合わせに対応する順序差を推定し、将来の圧延処理の対象となる金属素材について、処理順序の先頭から最後までの前記順序差の総和が所定の閾値以下となるように前記金属素材の処理順序を決定する。
【0011】
本発明の一態様は、上記の圧延計画支援装置であって、前記第1の処理順序と前記第2の処理順序との順序差は、前記第1の層別に分類された金属素材の処理順序と前記第2の層別に分類された金属素材の処理順序との組み合わせによって得られる順序差のうちの最も小さい順序である。
【0012】
本発明の一態様は、上記の圧延計画支援装置であって、前記圧延順序決定部によって推定された前記順序差を、前記圧延順序決定部によって決定された前記処理順序の順に示す順序差データを生成して出力するデータ出力部をさらに備える。
【0013】
本発明の一態様は、上記の圧延計画支援装置であって、決定された前記処理順序に基づいて行われた圧延処理の実績データを新たに入力する実績データ入力部をさらに備え、前記学習部は新たに入力された前記実績データに基づいて前記学習データを更新する。
【0014】
本発明の一態様は、複数の金属素材を圧延処理する際に定められた前記金属素材の処理順序と、前記処理順序に相関する前記金属素材の性質に関する情報と、の過去実績を示す実績データに基づいて、前記性質と前記処理順序との相関を機械学習の手法により学習するステップであって、前記複数の金属素材を前記性質に関する所定の条件で分類した層別ごとに前記相関を学習する学習ステップと、前記相関の学習結果を示す学習データと、将来の圧延処理の対象となる金属素材の性質を示す処理対象データとに基づいて、将来の圧延処理における前記金属素材の処理順序を決定する圧延順序決定ステップと、を有する圧延順序決定方法である。
【0015】
本発明の一態様は、複数の金属素材を圧延処理する際に定められた前記金属素材の処理順序と、前記処理順序に相関する前記金属素材の性質に関する情報と、の過去実績を示す実績データに基づいて、前記性質と前記処理順序との相関を機械学習の手法により学習するステップであって、前記複数の金属素材を前記性質に関する所定の条件で分類した層別ごとに前記相関を学習する学習ステップと、前記相関の学習結果を示す学習データと、将来の圧延処理の対象となる金属素材の性質を示す処理対象データとに基づいて、将来の圧延処理における前記金属素材の処理順序を決定する圧延順序決定ステップと、をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、鉄鋼の圧延工程におけるスラブの抽出順を人による制約の設定を必要とせずに決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態の圧延計画支援装置が熱延設備におけるスラブの圧延順序を決定する方法の概略を説明する図である。
【
図2】実施形態の圧延計画支援装置の機能構成の具体例を示す図である。
【
図3】実施形態の圧延計画支援装置が提案順序を決定する処理の具体例を示すシーケンス図である。
【
図4】実施形態における実績データの具体例を示す図である。
【
図5】実施形態における教師データの生成方法を説明する第1の図である。
【
図6】実施形態における教師データの生成方法を説明する第2の図である。
【
図7】実施形態における教師データの生成方法を説明する第3の図である。
【
図8】実施形態の圧延計画支援装置によって決定された提案順序の具体例を示す図である。
【
図9】人によって決定された圧延順序について表された性質図の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、実施形態の圧延計画支援装置が熱延設備におけるスラブの圧延順序を決定する方法の概略を説明する図である。具体的には、
図1は、熱延設備1が処理対象のスラブ群に対して行う熱延処理に関し、圧延計画支援装置3が操業システム2と連携して熱延設備1におけるスラブ群の圧延処理の順序(以下「圧延順序」という。)を決定する構成を概略的に示した図である。
【0019】
熱延設備1は、処理対象のスラブ群を予め定められた圧延順序で加熱及び圧延する設備である。具体的には、熱延設備1は、処理対象のスラブを順に加熱する加熱工程と、加熱後のスラブを順に圧延ローラ11によってを薄く引き延ばし、薄く引き延ばされたスラブを巻き取り機12によってコイル状に巻き取る圧延工程と、を実現する。
【0020】
ここでの圧延順序は、例えば、熱延設備1の運転管理者によって計画され、その計画された圧延順序で行われた熱延処理の実績を示すデータ(以下「実績データ」という。)が操業システム2に蓄積される。また、操業システム2は、運転管理者によって計画された圧延順序を運転管理者の操作する管理端末4から入力する。運転管理者は、圧延計画支援装置3から提案される圧延順序(以下「提案順序」という。)を確認し、必要に応じてこれを修正することにより実際の圧延順序を確定する。以下、この確定された圧延順序を「確定順序」という。また、操業システム2は、提案順序の推定に必要なデータとして実績データを圧延計画支援装置3に供給する。
【0021】
圧延計画支援装置3は、操業システム2から供給される実績データに基づいて熱延処理におけるスラブ群の圧延順序を推定し、推定した圧延順序を提案順序として運転管理者に提示する。ここで圧延計画支援装置3は、提案順序の推定に必要な各種の相関を機械学習の手法により学習する。具体的には、圧延計画支援装置3は、実績データに基づいて生成された教師データを用いて教師あり学習を行うことにより、処理対象の各スラブの性質に関する情報(以下「スラブデータ」という。)からスラブ群の適切な圧延順序を推定するための学習データを生成する。圧延計画支援装置3は、生成した学習データと、処理対象のスラブ群のそれぞれについてのスラブデータとに基づいてスラブ群の適切な圧延順序を推定する。推定された提案順序は、運転管理者によって必要に応じて修正された後、確定順序として実際の熱延処理に適用される。
【0022】
本実施形態の圧延計画支援装置3は、このような提案順序の推定と、実績データに基づく上記相関の学習とを繰り返し実行することにより、従来、熱延設備1の運転管理者等によって計画された圧延順序の計画方法を学習することができる。このような学習の結果に基づいて圧延順序を決定することにより、圧延順序の決定において最適化問題を解く必要がなくなる。そのため、運転管理者等が最適化問題に対して適切な制約の設定することなくスラブの圧延順序を適切に決定することが可能となる。以下、このような効果を奏する実施形態の圧延計画支援装置3の構成について詳細に説明する。
【0023】
図2は、実施形態の圧延計画支援装置の機能構成の具体例を示す図である。圧延計画支援装置3は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、プログラムを実行する。圧延計画支援装置3は、プログラムの実行によって教師データ記憶部311、学習データ記憶部312、スラブデータ記憶部313、順序データ記憶部314、教師データ入力部321、スラブデータ入力部322、学習データ生成部33、圧延順序推定部34及び順序データ出力部35を備える装置として機能する。なお、圧延計画支援装置3の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0024】
教師データ記憶部311、学習データ記憶部312、スラブデータ記憶部313及び順序データ記憶部314は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。教師データ記憶部311は教師データを記憶する。学習データ記憶部312は学習データを記憶する。スラブデータ記憶部313はスラブデータを記憶する。順序データ記憶部314は順序データを記憶する。順序データは、圧延順序推定部34によって推定された圧延順序を示すデータである。
【0025】
教師データ入力部321は自装置に教師データを入力する機能を有する。例えば、教師データ入力部321は、通信インタフェースを含んで構成され、他の装置から教師データを受信してもよい。また、例えば、教師データ入力部321は、記録媒体から教師データを読み出してもよい。なお、ここでは、教師データは、運転管理者による実績データの編集作業によって生成され、実績データの編集が行われる管理端末4から教師データが受信されるものとする。教師データ入力部321は、このように入力した教師データを教師データ記憶部311に記録する。
【0026】
スラブデータ入力部322は自装置にスラブデータを入力する機能を有する。例えば、スラブデータ入力部322は、教師データ入力部321と同様に、他の装置との通信や記録媒体などを介してスラブデータを自装置に入力する。なお、スラブデータは、各スラブに関してそれぞれの圧延順序に相関すると考えられる事項を示すデータであればどのようなデータであってもよい。ここでは、スラブデータは、処理対象の各スラブについて寸法、成分値及び硬さ(以下「性質値」という。)を示すものとする。この場合、各スラブの性質値はその熱延処理に先立って計測されており、操業システム2はその計測結果を示す情報をスラブデータとして予め記憶しているものとする。このような想定のもと、本実施形態ではスラブデータ入力部322が操業システム2からスラブデータを入力し、入力したスラブデータをスラブデータ記憶部313に記録する。
【0027】
学習データ生成部33は、教師データ入力部321が入力した教師データを用いて機械学習を行うことにより、各スラブの性質値と、各スラブの圧延順序との相関を学習する。例えば、学習データ生成部33は、サポートベクターマシーン(SVM:Support Vector Machine)やニューラルネットワーク、ランダムフォレスト等の回帰的手法を用いて上記相関を学習する。また、例えば、学習データ生成部33は、群平均法やK-means法等のクラスタリング手法を用いて上記相関を学習してもよい。具体的には、学習データ生成部33は、各スラブの性質値と、各スラブの圧延順序を決定するための指標値(以下「順序指標値」という。)との相関を示す学習データを生成する。学習データ生成部33は、生成した学習データを学習データ記憶部312に記録する。
【0028】
圧延順序推定部34は、学習データ生成部33が生成する学習データと、処理対象の各スラブについて計測された性質値とに基づいて、各スラブの圧延順序を決定するための順序指標値を推定する。圧延順序推定部34は、処理対象の全スラブについて順序指標値を推定し、推定した全スラブの順序指標値に基づいて、処理対象の全スラブについて圧延順序を一意に決定する。圧延順序推定部34は、このように決定した圧延順序(提案順序)を示す順序データを順序データ記憶部314に記録する。
【0029】
順序データ出力部35は、圧延順序推定部34が生成した順序データを出力する。例えば、順序データ出力部35は、運転管理者が提案順序の確認を行う際に用いる管理端末4に順序データを出力する。管理端末4は、順序データの表示機能及び編集機能を有し、運転管理者の操作に応じて順序データの表示及び編集を実行する。運転管理者は管理端末4に表示される提案順序の妥当性が確認できた場合に提案順序を実際の圧延処理に用いる圧延順序(確定順序)として確定させる。そして、操業システム2が確定順序を示す順序データを入力し、確定順序を熱延設備1の運転に適用することにより、処理対象のスラブ群が確定順序のとおりに熱延処理される。
【0030】
図3は、実施形態の圧延計画支援装置3が提案順序を決定する処理の具体例を示すシーケンス図である。まず、管理端末4が操業システム2から実績データを入力する(ステップS101)。管理端末4は入力した実績データに基づいて教師データを生成する(ステップS102)。例えば、管理端末4は、実績データに基づいて学習データを生成する操作の入力を受け付ける。これに対し運転管理者は、実績データにより示される圧延順序の実績に基づいて順序指標値を取得し、取得した順序指標値を、実績データにより示されるスラブ群の性質と対応づける操作を入力する。
【0031】
図4は、実施形態における実績データの具体例を示す図である。例えば、実績データには計画データ、スラブデータ及び層別データが含まれる。計画データは、実際の圧延処理によって生成されたコイルの圧延順序を示す情報である。例えば、
図4に例示する計画データは、100個のコイルの圧延順序を示す。スラブデータは、上述のとおり、各スラブの性質値を示す情報である。具体的には、
図4に例示するスラブデータは、各コイルの寸法、成分値及び硬さを示す。層別データは、各コイルとコイルの層別との対応関係を示す情報である。例えば、ここでは、コイルの層別としてチャージごとの分類を想定するが、層別は所定の基準でコイル群を分類するものであればチャージ以外の分類であってもよい。
【0032】
チャージとは、鉄鋼製品の製造工程におけるロット単位の一種であり、高炉から取り出された銑鉄の各塊のことをいう。1つのチャージから複数のスラブが生成される。このチャージとコイルとの対応関係を示す層別データと計画データとを対応づけることにより、各コイルの元になっている各チャージの間での圧延順序の差(以下「層別間距離」という。)を得ることができる。運転管理者は、この層別間距離を順序指標値として、2つのチャージの組み合わせごとに各チャージの性質を示すデータと層別間距離とを対応づけることによって教師データを生成する。管理端末4は、このように生成された教師データを圧延計画支援装置3に出力する(ステップS103)。
【0033】
図5~
図7は、本実施形態における教師データの生成方法を説明する図である。まず、運転管理者は実績データに含まれる計画データに基づき、連続して圧延処理された2つのスラブの全ての組み合わせについて層別間距離を求める。また、運転管理者は実績データに含まれる層別データを用いて各スラブのそれぞれに、そのスラブを生成したチャージの識別情報(以下「層別ID」という。)を対応づける。
図5は、層別間距離と層別IDとの対応関係の具体例を示すマトリックスである。マトリックスの行は各組み合わせの2つのスラブのうちの一方のスラブを表し、列は他方のスラブを表す。スラブIDは、各スラブの識別情報を表す。
【0034】
例えば、
図5の例は、“A”のスラブIDで識別されるスラブ(以下「スラブA」と表記する。他のスラブも同様。)と、“B”のスラブIDで識別されるスラブBとは、層別ID“C#1”で識別される同じチャージ(以下「チャージC#1」と表記する。他のチャージも同様。)から生成されたものであり、スラブAとスラブBとが連続して圧延された(すなわち層別間距離が”1”)ことを表している。また、例えば、
図5の例は、チャージC#2から生成されたスラブCと、チャージC#1から生成されたスラブAとが他の1つのスラブを挟んで圧延された(すなわち層別間距離が“2”)ことを表している。
【0035】
ここで、マトリックスの対角成分は異なる2つのスラブの組み合わせを表すものでないから層別間距離を便宜上“0”としている。また、2つのスラブの間の層別間距離をマトリックスで表した場合、対角成分に関して対称な成分同士は同じ値となり煩雑となるため、
図5の例では対角成分を境とする片側の対角成分を“-”として記載を省略している。
【0036】
このようにして2つの異なるスラブの全ての組み合わせについて層別間距離が取得されると、続いて運転管理者は、異なるスラブの組み合わせごとに取得された層別間距離に基づいてチャージの組み合わせごとに1つの層別間距離を決定する。この場合、1つのチャージから複数のスラブが生成される可能性があるので、チャージの組み合わせには同じチャージ同士の組み合わせも含まれる。
【0037】
具体的には、
図5のマトリックスから層別IDの組み合わせが同じであるものの層別間距離から1つの代表値を決定する。このとき、ある層別IDの組み合わせについて1つの層別間距離のみ存在する場合はその値を、その組み合わせの代表値とすればよい。例えば、
図5の例において、同じチャージC#1同士の組み合わせについてはスラブAとスラブBの組み合わせについてのみ層別間距離が取得されているため、その値“1”をその組み合わせの層別間距離とすればよい。また、層別間距離が1つも取得されない組み合わせが生じる場合もある。そのような組み合わせについては必ずしも層別間距離を設定する必要はない。但し、層別間距離に基づいて提案順序を決定する方法によっては、層別間距離が存在しない、又は非常に距離が遠いという意味で“0”や“∞”などの値を便宜上の層別間距離として対応づけてもよい。
【0038】
また、1つの組み合わせについて複数の層別間距離が存在する場合もある。例えば、
図5の例において、チャージC#1とチャージC#2との組み合わせについては“1”(スラブAとスラブCの組み合わせ)と“2”(スラブBとスラブCの組み合わせ)の2つの層別間距離が得られている。このように複数の層別間距離が得られた場合には、それらの値に基づいて決定した代表値をその組み合わせに対応づければよい。例えば、単純に短い方を代表値としてもよいし、過去の所定期間の運用実績で得られた最も短い値を代表値としてもよい。このような取捨選択の結果、2つのチャージの全ての組み合わせについて1つの最短距離が設定される(例えば
図6参照)。そして、各組み合わせについて設定された最短距離と、その最短距離を得たスラブの性質値とを対応づけることにより、
図7に示すような教師データが生成される。
【0039】
圧延計画支援装置3の教師データ入力部321は、このようにして生成された教師データを管理端末4から入力(ステップS104)して、教師データ記憶部311に記録する。学習データ生成部33は、教師データ入力部321により入力された教師データを用いて機械学習を行うことにより、2つのチャージ間の最短距離と、各チャージから生成されるスラブの性質値との相関を示す学習データを生成する(ステップS105)。
【0040】
一方、操業システム2では、予定されている次の熱延処理の実施に向けてスラブデータ及び層別データが更新される(ステップS201)。操業システム2は、更新後の新たなスラブデータを圧延計画支援装置3に出力する(ステップS202)。
【0041】
続いて、圧延計画支援装置3では、スラブデータ入力部322が更新後の新たなスラブデータを操業システム2から入力する(ステップS203)。圧延順序推定部34は、入力されたスラブデータによって示される処理対象の各スラブの性質値と、ステップS105において生成された学習データとに基づいて、処理対象のスラブ群の圧延順序を推定する(ステップS204)ことにより提案順序を決定する。
【0042】
具体的には、圧延順序推定部34は、処理対象のスラブ群から選択しうる2つのスラブの全ての組み合わせについて層別間距離を推定し、層別間距離の総和が許容範囲内となるような圧延順序を提案順序として決定する。具体的には、圧延順序推定部34は、層別間距離の総和をコストとするコスト最小化問題を解くことにより提案順序を決定することができる。例えば、圧延順序推定部34は、数理的解法によりコストを最小化する順列の厳密解を求めてもよいし、2-opt法などの発見的解法により少なくとも必要条件を満たす順列を求めてもよい。順序データ出力部35は、このようにして決定された提案順序を示す順序データを出力する(ステップS205)。
【0043】
続いて、管理端末4が圧延計画支援装置3から順序データを入力する(ステップS206)。管理端末4は、入力した順序データにより示される提案順序の編集操作を受け付ける(ステップS207)。管理端末4は、編集後の圧延順序を確定順序として決定し、決定した確定順序を示す計画データを出力する(ステップS208)。ここで、提案順序の編集は必ずしも行われなくてもよい。また、提案順序の編集が行われない場合、管理端末4は入力した順序データを計画データとしてそのまま出力してもよいし、順序データを編集しないことが予め分かっている場合には、順序データは管理端末4を介さずに、直接操業システム2に出力されてもよい。
【0044】
続いて、操業システム2が管理端末4から計画データを入力する(ステップS209)。操業システム2は、入力した計画データにより示される確定順序を熱延設備1に通知する(ステップS210)。熱延設備1は、処理対象のスラブ群に対して、通知された確定順序で圧延処理を実行する(ステップS211)。その一方で、操業システム2は、新たに取得したスラブデータ、層別データ及び計画データを新たな実績データとして管理端末4に出力する(ステップS212)。そして管理端末4は操業システム2から実績データを入力し、ステップS101以降の処理を繰り返し実行する。
【0045】
図8は、実施形態の圧延計画支援装置3によって決定された提案順序の具体例を示す図である。具体的には、ここでは、各スラブの性質値と各スラブの層別間距離との相関を学習した結果に基づいて、隣接するスラブの層別間距離の総和が小さくなるような圧延順序を提案順序として決定した。
図8(A)は、各スラブの性質値を提案順序の順に表した図(以下「性質図」という。)である。
【0046】
図8(A)において、棒グラフの高さは各スラブの幅の大きさを表し、2つの折れ線グラフは各スラブの硬さと厚みを表している。
図8の例では、各スラブの幅、厚み及び硬さの値を性質値として層別間距離との相関を学習したことにより、各スラブの幅、厚み及び硬さの近いスラブが隣接するように提案順序を決定することができたことが分かる。
【0047】
また、
図8(B)は、提案順序における各スラブについて、隣接するスラブとの間での層別間距離を提案順序の順に表した図(以下「距離図」という。)である。ここで上述のとおり、提案順序は、隣接するスラブの層別間距離の総和が小さくなるように決定されたものであるが、これは処理対象のスラブ群の全体として層別間距離の総和がより小さくなるようなスラブの並びを求めるものであって、必ずしも全てのスラブについて層別間距離を均一的に小さくすることを保証するものではない。そのため、提案順序のスラブ群の中には比較的大きな層別間距離が設定されたスラブも存在しうる。
図8(B)は、提案順序の全体としての妥当性を確認しやすくするために、各スラブの層別間距離の大きさを提案順序の順に表したものである。
【0048】
例えば、
図8(B)は層別間距離の閾値を5(すなわち前後のスラブの元になっているチャージの生成タイミングが5チャージ分だけ離れている)として、提案順序における各スラブの層別間距離を閾値以上又は閾値未満のいずれかに分類して表示したものである。
図8(B)の例では、100個弱のスラブのうちの8個のスラブにおいて閾値以上の層別間距離が設定され、それ以外の大半のスラブについては閾値未満の層別間距離が設定されたことが分かる。
【0049】
これに対して
図9は、人によって決定された圧延順序について表された性質図の具体例を示す図である。一般に、複数のスラブを順次圧延処理する場合、先行するスラブの圧延時において圧延ローラのローラ面に生じる疵により、後続の圧延処理で形成されるコイルに疵がついてしまう可能性がある。そのため、熱延設備の運転管理者は、圧延後のコイルに疵がつくことの無いように、圧延により形成するコイルの幅の大きいものから順に圧延処理がなされるようにスラブの圧延順序を決定する。これは圧延ローラがスラブの幅方向の端部と接する箇所に疵ができるからであり、圧延するスラブの幅を順次狭めていけば、後続のスラブが先行するスラブによって形成された圧延ローラの疵部分に接しないようにすることができるためである。
【0050】
そのほか、圧延ローラに生じる疵の程度には、圧延により形成するコイルの厚さや、圧延されるスラブの硬さなどが影響するため、熱延設備の運転管理者は、これらの要因となりうる事象を総合的に判断した上で圧延順序を決定する。具体的には、一般に熱延設備の運転管理者は、(1)圧延順序の前後でスラブの性質値が急激に変化しないようにすること、(2)後続のスラブが先行するスラブの悪影響を受けない方向に性質値を(緩やかに)変化させること、を考慮して圧延順序を決定する。そのため、このような事項を考慮して決定された圧延順序は、これらの要因事象との相関を持つと考えられる。
【0051】
これに対して本実施形態の圧延計画支援装置3は、各スラブの性質値を各スラブを生成したチャージに分類し、各チャージと、チャージ間における圧延順序の差である層別間距離との相関を熱延処理の実績に基づいて学習する。これにより、従来、運転管理者によって培われてきた圧延順序の決定方法やノウハウを、情報処理装置が提案順序を推定するための学習データとして蓄積することが可能となり、鉄鋼の圧延工程におけるスラブの抽出順を人による制約の設定を必要とせずに決定することができる。
【0052】
また、本実施形態における圧延順序の決定方法は、圧延計画支援装置3が、提案順序を推定する推定ステップと、自身の推定した提案順序に基づいて決定された実際の圧延順序を実績データとして学習する学習ステップと、を有するため、運転管理者のノウハウをより効果的に学習することができる。また、圧延計画支援装置3は、圧延処理の実績をフィードバックして学習を繰り替えすことにより、学習データをより精度の良い学習データに更新し続けることができる。このため、本実施形態の圧延計画支援装置3は、圧延順序の決定にかかる人的負荷を徐々に小さくしていくことが可能となる。
【0053】
また、本実施形態における圧延順序の決定方法では、学習データを生成する際に、2つのチャージの同じ組み合わせについて複数の層別間距離が得られた場合には、そのうちの最も短い層別間距離を代表値として選択してもよい。すなわち、これは、過去の所定期間の運用実績で得られた最も短い層別間距離を代表値とするということである。このようにすることで、本来は、近い順序で圧延されたほうがよいスラブ同士に対して離れた圧延順序が設定されることを抑制することが可能となる。
【0054】
<変形例>
上記の実施形態では、実績データとして得られた各スラブの性質値と、各スラブ間の圧延順序の差(距離)とを、各スラブを生成したチャージの単位に集約して対応づけたものを教師データとしたが、このような対応づけは必ずしもチャージの単位で行われる必要はない。例えば、スラブの幅、厚さ及び硬さのうちのいずれかの値、又はこれらの値の組み合わせに基づいて各スラブの性質の近さを判定し、この性質の近さで分類した層別を単位として、層別を代表する性質値と距離とを対応づけてもよい。このように、各スラブのスラブデータを性質の近さで分類した上で学習データを生成することにより、学習データの生成にかかる情報処理量及び処理時間を削減することができる。
【0055】
図8(B)は、提案順序の全体としての妥当性を確認しやすくするために、各スラブの層別間距離の大きさを提案順序の順に表したものであるが、このような表示によれば、運転管理者は提案順序の妥当性の確認においてどの部分に着目すればよいかを視覚的に容易に判断することができる。具体的には、運転管理者は、層別間距離が閾値以上の値となっているスラブについて、圧延順序の組み換えが必要か否かを判断すればよい。そこで、このような妥当性の判断を支援するために、実施形態の圧延計画支援装置3は、提案順序の決定の過程で取得した各スラブの層別間距離を示す情報を、その提案順序を示す順序データとともに出力するように構成されてもよい。また、実施形態の圧延計画支援装置3は、各スラブの層別間距離の大きさを提案順序の順に表示する表示データを生成し、生成した表示データを、その提案順序を示す順序データとともに出力するように構成されてもよい。
【0056】
また、熱延処理において、各スラブを加熱炉に装入する温度にばらつきが生じると、すべてのスラブを圧延可能な温度(例えば1200℃)まで加熱するのに必要以上の熱量が必要になり、燃料コストが高くなる。そのため、燃料コストの上昇を抑制するために、加熱炉に順次装入されるスラブの前後で装入温度のばらつきが小さくなるような圧延順序が決定されることが望ましい。そこで、実施形態の圧延計画支援装置3は、各コイルについて推定した層別間距離から提案順序を決定する際に、最小化すべき評価量に前後のコイル間での装入温度差を含めた最小化問題を解くように構成されてもよい。この場合、例えば最小化すべき評価量は『(層別間距離×α)+(装入温度差×β)』と定義することができる。ここでαは層別間距離の重みを表し、βは装入温度差の重みを表す。このように構成された圧延計画支援装置3によれば、例えば圧延により形成されるコイルの幅を徐々に小さくしていき、かつ加熱炉に対するスラブの装入温度のばらつきを小さくするような圧延順序を決定することができる。
【0057】
上記の実施形態では、熱延処理の対象となるスラブ群について圧延順序を決定する方法について説明したが、本実施形態における圧延順序の決定方法は、適用先の圧延工程を熱延処理に含まれる圧延工程に限定するものではないし、圧延工程によって形成される鋼板の厚さや形状、用途等を特定のものに限定するものではない。本実施形態における圧延順序の決定方法は、圧延の対象となる素材が、その性質値に応じた順序で圧延される任意の工程に適用可能である。例えば、本実施形態における圧延順序の決定方法は、冷延工程における圧延順序の決定に適用されてもよいし、鉄鋼以外の金属の圧延順序の決定に適用されてもよい。また、本実施形態における圧延順序の決定方法は、薄板を形成する圧延工程に適用されてもよいし、厚板を形成する圧延工程に適用されてもよい。
【0058】
また、上記の実施形態における圧延順序の決定方法は、所定の順序で処理される複数の処理対象の間の処理順序の差と各処理対象の性質との相関を、性質の近さで処理対象を分類した層別間の相関として学習し、同様の処理の対象となる任意の複数の処理対象について、その処理順序を、各処理対象の性質と上記学習の結果とに基づいて推定するものであるということができる。この意味では、本実施形態における圧延順序の決定方法は、処理対象の性質に応じた順序で処理される処理対象の処理順序の決定に適用することが可能である。
【0059】
なお、本実施形態におけるスラブは金属素材の一例である。また、本実施形態におけるスラブデータは処理対象データの一例である。また、本実施形態における層別間距離は順序差の一例である。また、本実施形態における圧延順序推定部は圧延順序決定部の一例である。また、本実施形態における表示データ及び順序データは順序差データの一例である。
【0060】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、金属素材の圧延順序を決定する装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…熱延設備、 2…操業システム、 3…圧延計画支援装置、 311…教師データ記憶部、 312…学習データ記憶部、 313…スラブデータ記憶部、 314…順序データ記憶部、 321…教師データ入力部、 322…スラブデータ入力部、 33…学習データ生成部、 34…圧延順序推定部、 35…順序データ出力部、 4…管理端末