(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】モデル構築装置、予測装置、モデル構築方法、予測方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
C21C 1/02 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
C21C1/02 108
(21)【出願番号】P 2020003735
(22)【出願日】2020-01-14
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】阿部 快洋
(72)【発明者】
【氏名】岩村 健
(72)【発明者】
【氏名】中江 太一
(72)【発明者】
【氏名】門脇 良
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-167481(JP,A)
【文献】特開2018-172719(JP,A)
【文献】特開2018-115357(JP,A)
【文献】特開2013-249493(JP,A)
【文献】特開2004-301362(JP,A)
【文献】特開2011-162809(JP,A)
【文献】特開2003-041311(JP,A)
【文献】特開2016-216781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 1/00-1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶銑予備処理工程
で脱硫を行う
処理であるKRプロセスの開始前に、前記KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測するための予測モデルを構築するモデル構築装置であって、
KRプロセスにおける過去の操業実績データと、過去の操業における溶銑がトーピードカーから溶銑鍋へ払い出される状況を撮像した払い出し画像又は溶銑鍋の内部を撮像した鍋内画像である撮像画像に基づく過去の混入スラグ情報と、を取得するモデル構築データ取得部と、
前
記過去の操業実績データ
と前記過去の混入スラグ情報とに基づき、前記予測モデルを構築するモデル構築部
と、
を備え
、
前記混入スラグ情報は、前記撮像画像を、オペレータが定性的に評価して得られた、溶銑鍋へのスラグ混入量を示すスラグ混入量情報、スラグの粘性度を示すスラグ性状情報、並びに、前記撮像画像から定量的に抽出された画像特徴量、のうちの少なくともいずれか一つであり、
前記予測モデルは、重回帰モデル若しくは一般線形化モデル、又は、機械学習手法を用いて構築され、前記操業実績データと前記混入スラグ情報を説明変数とし、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を推定するモデルである、モデル構築装置。
【請求項2】
前記混入スラグ情報は、トーピードカーから溶銑鍋への溶銑の払い出し時の画像を
、オペレータが混入スラグの量や性状を目視により判断することで、予め設定された分類基準に基づき分類したカテゴリ情報を含む、請求項
1に記載のモデル構築装置。
【請求項3】
溶銑予備処理工程
で脱硫を行う
処理であるKRプロセスの開始前に、前記KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測する予測装置であって、
KRプロセスにおける過去の操業実績データと、過去の操業における溶銑がトーピードカーから溶銑鍋へ払い出される状況を撮像した払い出し画像又は溶銑鍋の内部を撮像した鍋内画像である撮像画像に基づく過去の混入スラグ情報と、を取得するモデル構築データ取得部と、
前記過去の操業実績データと前記過去の混入スラグ情報とに基づき、前記KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測する予測モデルを構築するモデル構築部と、
これからKRプロセスを実施する溶銑に関する直近
の操業実績データ
と、これからKRプロセスを実施する溶銑に関する直近の混入スラグ情報
と、を取得する予測対象データ取得部と、
前記モデル構築部で構築された予測モデルを用い
、前記予測対象データ取得部で取得した前記直近の操業実績データと前記直近の混入スラグ情報に基づき
、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測するモデル予測計算部と、
を備え
、
前記混入スラグ情報は、前記撮像画像を、オペレータが定性的に評価して得られた、溶銑鍋へのスラグ混入量を示すスラグ混入量情報、スラグの粘性度を示すスラグ性状情報、並びに、前記撮像画像から定量的に抽出された画像特徴量、のうちの少なくともいずれか一つであり、
前記予測モデルは、重回帰モデル若しくは一般線形化モデル、又は、機械学習手法を用いて構築され、前記操業実績データと前記混入スラグ情報を説明変数とし、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を推定するモデルである、予測装置。
【請求項4】
溶銑予備処理工程
で脱硫を行う
処理であるKRプロセスの開始前に、前記KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測するための予測モデルを構築するモデル構築方法であって、
KRプロセスにおける過去の操業実績データと、過去の操業における溶銑がトーピードカーから溶銑鍋へ払い出される状況を撮像した払い出し画像又は溶銑鍋の内部を撮像した鍋内画像である撮像画像に基づく過去の混入スラグ情報と、を取得するモデル構築データ取得ステップと、
前
記過去の操業実績データ
と前記過去の混入スラグ情報とに基づき、前記予測モデルを構築する
モデル構築ステップと、
を含
み、
前記混入スラグ情報は、前記撮像画像を、オペレータが定性的に評価して得られた、溶銑鍋へのスラグ混入量を示すスラグ混入量情報、スラグの粘性度を示すスラグ性状情報、並びに、前記撮像画像から定量的に抽出された画像特徴量、のうちの少なくともいずれか一つであり、
前記予測モデルは、重回帰モデル若しくは一般線形化モデル、又は、機械学習手法を用いて構築され、前記操業実績データと前記混入スラグ情報を説明変数とし、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を推定するモデルである、モデル構築方法。
【請求項5】
溶銑予備処理工程
で脱硫を行う
処理であるKRプロセスの開始前に、前記KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測する予測方法であって、
KRプロセスにおける過去の操業実績データと、過去の操業における溶銑がトーピードカーから溶銑鍋へ払い出される状況を撮像した払い出し画像又は溶銑鍋の内部を撮像した鍋内画像である撮像画像に基づく過去の混入スラグ情報と、を取得するモデル構築データ取得ステップと、
前記過去の操業実績データと前記過去の混入スラグ情報とに基づき、前記KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測する予測モデルを構築するモデル構築ステップと、
これからKRプロセスを実施する溶銑に関する直近
の操業実績データ
と、これからKRプロセスを実施する溶銑に関する直近の混入スラグ情報
と、を取得する予測対象データ取得ステップと、
前記モデル構築ステップで構築された予測モデルを用い
、前記予測対象データ取得ステップで取得した前記直近の操業実績データと前記直近の混入スラグ情報に基づき
、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測するモデル予測計算ステップと、
を含
み、
前記混入スラグ情報は、前記撮像画像を、オペレータが定性的に評価して得られた、溶銑鍋へのスラグ混入量を示すスラグ混入量情報、スラグの粘性度を示すスラグ性状情報、並びに、前記撮像画像から定量的に抽出された画像特徴量、のうちの少なくともいずれか一つであり、
前記予測モデルは、重回帰モデル若しくは一般線形化モデル、又は、機械学習手法を用いて構築され、前記操業実績データと前記混入スラグ情報を説明変数とし、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を推定するモデルである、予測方法。
【請求項6】
コンピュータを、溶銑予備処理工程
で脱硫を行う
処理であるKRプロセスの開始前に、前記KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測するための予測モデルを構築するモデル構築装置として機能させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータプログラムは、
前記コンピュータを、
KRプロセスにおける過去の操業実績データと、過去の操業における溶銑がトーピードカーから溶銑鍋へ払い出される状況を撮像した払い出し画像又は溶銑鍋の内部を撮像した鍋内画像である撮像画像に基づく過去の混入スラグ情報と、を取得するモデル構築データ取得部と、
前
記過去の操業実績データ
と前記過去の混入スラグ情報とに基づき、前記予測モデルを構築するモデル構築部として機能
させ、
前記混入スラグ情報は、前記撮像画像を、オペレータが定性的に評価して得られた、溶銑鍋へのスラグ混入量を示すスラグ混入量情報、スラグの粘性度を示すスラグ性状情報、並びに、前記撮像画像から定量的に抽出された画像特徴量、のうちの少なくともいずれか一つであり、
前記予測モデルは、重回帰モデル若しくは一般線形化モデル、又は、機械学習手法を用いて構築され、前記操業実績データと前記混入スラグ情報を説明変数とし、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を推定するモデルである、コンピュータプログラム。
【請求項7】
コンピュータを、溶銑予備処理工程
で脱硫を行う
処理であるKRプロセスの開始前に、前記KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測する予測装置として機能させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータプログラムは、
前記コンピュータを、
KRプロセスにおける過去の操業実績データと、過去の操業における溶銑がトーピードカーから溶銑鍋へ払い出される状況を撮像した払い出し画像又は溶銑鍋の内部を撮像した鍋内画像である撮像画像に基づく過去の混入スラグ情報と、を取得するモデル構築データ取得部と、
前記過去の操業実績データと前記過去の混入スラグ情報とに基づき、前記KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測する予測モデルを構築するモデル構築部と、
これからKRプロセスを実施する溶銑に関する直近
の操業実績データ
と、これからKRプロセスを実施する溶銑に関する直近の混入スラグ情報
と、を取得する予測対象データ取得部と、
として機能
させ、
前記混入スラグ情報は、前記撮像画像を、オペレータが定性的に評価して得られた、溶銑鍋へのスラグ混入量を示すスラグ混入量情報、スラグの粘性度を示すスラグ性状情報、並びに、前記撮像画像から定量的に抽出された画像特徴量、のうちの少なくともいずれか一つであり、
前記予測モデルは、重回帰モデル若しくは一般線形化モデル、又は、機械学習手法を用いて構築され、前記操業実績データと前記混入スラグ情報を説明変数とし、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を推定するモデルである、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶銑予備処理工程にて脱硫を行うKRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測するための予測モデルを構築するモデル構築装置及びモデル構築方法、構築された予測モデルを用いてKRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測する予測装置及び予測方法、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
溶銑予備処理工程にて脱硫処理を行うKRプロセスでは、通常、オペレータの判断に基づきインペラーの浸漬深さとフラックス使用量(生石灰及びAl灰)とが調整され、15分程度、機械攪拌による脱硫が実施される。KRプロセスは外乱影響が大きく、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度(以下、「処理後S濃度」ともいう。)にばらつきが生じる。KRプロセスにて脱硫不足となる場合には、追加処理としてMgによる脱硫を実施し、目標のS濃度となるよう調整されるが、Mgはコストが高く、また、追加処理を実施することによって生産効率が下がってしまう。このため、処理後S濃度の予測、さらには脱硫不良の発生有無の判定を可能にすることが求められており、これらを実現するための手段として、脱硫処理を開始する前に脱硫処理後のS濃度を予測する予測モデルのニーズがある。
【0003】
KRプロセスでは、例えば
図1に示すような機械撹拌式脱硫装置(KR)50を用いて溶銑の脱硫処理が行われる。例えば、KR鍋51の溶銑5にフラックス(脱硫剤:生石灰(CaO)、Al灰)を添加し、インペラー53を浸漬させて駆動装置55により回転させることにより行われる。このような機械攪拌法による脱硫では、インペラー53によって溶銑5とフラックスとを強力に攪拌することで脱硫反応を促進させる。
【0004】
ここで、溶銑5中に存在するSは製造される鋼板の品質を低下させる要因となるため、KRプロセスによる処理後S濃度を、転炉へ引き渡す際の目標S濃度まで低減させることは重要である。一方で、KRプロセスにおいて処理後S濃度を確実に目標S濃度以下とするためにフラックスを過剰投入してしまうと、製造コストを増加させることになる。このため、KRプロセスの操業条件の設定にあたっては、処理後S濃度を精度よく予測できることが望ましい。
【0005】
例えば特許文献1には、溶銑予備処理操業における処理剤の投入条件を精度よく、かつ、実用上のばらつきを加味して、適正にガイダンスすることが可能な方法が開示されている。特許文献1では、ニューラルネットワークに処理剤投入条件を含む操業条件を変化させて繰り返し入力することにより処理剤の投入条件を決定し、実用上のばらつきを加えて評価することで、適切な処理剤投入条件を求める。これにより、処理剤投入条件と処理後の成分濃度との対応特性が線形性を示すか非線形性を示すかにかかわらず、処理後の成分濃度の予測精度を高められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】「溶銑脱硫技術の改善」、住友金属Vol.45-3.P.52-58、1993年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1の手法には、転炉において溶銑予備処理を行う場合しか想定されておらず、KRプロセスについては想定されていない。
【0009】
KRプロセスに関してはプロセス現象が複雑かつ検出端が少ないことから、これまで十分に検討が進められていない。特に、トーピードカーから溶銑鍋へ払い出される際に溶銑鍋へ流入する混入スラグについては、当該混入スラグの混入量が多くなるとKRプロセスでの脱硫率(=(処理前S濃度-処理後S濃度)/処理前S濃度×100[%])が低下する傾向にあり、KRプロセスでの脱硫率に影響すると推察されるものの詳細な検討はなされていない。
【0010】
さらに、KRプロセスを実施する前に処理後S濃度を予測できれば、予測された処理後S濃度に基づき今回のKRプロセスでフラックスを増加させる必要性や追加処理の実施の必要性を判断することが可能となる。その結果、KRプロセスでの脱硫不足を回避したり脱硫剤の使用量を減少させたりすることができるため、生産性向上及び製造コストの削減にもつながる。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、KRプロセスでの脱硫率への影響度の高い混入スラグに関する情報に基づき、KRプロセス前に、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度(すなわち、処理後S濃度)を予測するための予測モデルを構築することの可能なモデル構築装置、及び、これを用いた処理後S濃度の予測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、溶銑予備処理工程にて脱硫を行うKRプロセスの開始前に、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測するための予測モデルを構築するモデル構築装置であって、KRプロセスにおける過去の操業実績データ、及び、過去の操業においてトーピードカーから溶銑鍋への溶銑の払い出し時に溶銑鍋へ流入する混入スラグに関する混入スラグ情報から、学習モデルを用いて予測モデルを構築するモデル構築部を備える、モデル構築装置が提供される。
【0013】
混入スラグ情報は、オペレータの評価に基づく溶銑鍋へのスラグ混入量を示すスラグ混入量情報及びオペレータの評価に基づくスラグ性状を示すスラグ性状情報のうち少なくともいずれか一方を含んでもよい。
【0014】
また、混入スラグ情報は、トーピードカーから溶銑鍋への溶銑の払い出し時の画像を予め設定された分類基準に基づき分類したカテゴリ情報を含んでもよい。
【0015】
あるいは、混入スラグ情報は、トーピードカーから溶銑鍋への溶銑の払い出し時の画像から、溶銑鍋へのスラグ混入量を示すスラグ混入量情報及びスラグ性状を示すスラグ性状情報のうち少なくともいずれか一方に基づき抽出された画像特徴量を含んでもよい。
【0016】
学習モデルは、重回帰モデルまたは一般化線形モデルであってもよい。
【0017】
また、上記のモデル構築装置により構築された予測モデルを用いて、KRプロセスの開始前に、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測する予測装置であって、直近の操業でのKRプロセスにおける操業実績データ、及び、直近の操業における混入スラグに関する混入スラグ情報に基づき、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測するモデル予測計算部を備える、予測装置が提供される。
【0018】
予測装置は、モデル予測計算部による予測結果に基づいて、今回のKRプロセスにおける脱硫を促進させるための追加処理の要否を判定する判定部を備えてもよい。
【0019】
また、課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、溶銑予備処理工程にて脱硫を行うKRプロセスの開始前に、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測する予測装置であって、直近の操業でのKRプロセスにおける操業実績データ、及び、直近の操業においてトーピードカーから溶銑鍋への溶銑の払い出し時に溶銑鍋へ流入する混入スラグに関する混入スラグ情報を取得する予測対象データ取得部と、過去の操業実績データ及び過去の操業における混入スラグ情報から学習モデルを用いて構築された予測モデルを用いて、予測対象データ取得部により取得された操業実績データ及び混入スラグ情報に基づき、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測するモデル予測計算部と、を備える、予測装置が提供される。
【0020】
さらに、課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、溶銑予備処理工程にて脱硫を行うKRプロセスの開始前に、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測するための予測モデルを構築するモデル構築方法であって、KRプロセスにおける過去の操業実績データ、及び、過去の操業においてトーピードカーから溶銑鍋への溶銑の払い出し時に溶銑鍋へ流入する混入スラグに関する混入スラグ情報から、学習モデルを用いて予測モデルを構築することを含む、モデル構築方法が提供される。
【0021】
また、課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、溶銑予備処理工程にて脱硫を行うKRプロセスの開始前に、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測する予測方法であって、直近の操業でのKRプロセスにおける操業実績データ、及び、直近の操業においてトーピードカーから溶銑鍋への溶銑の払い出し時に溶銑鍋へ流入する混入スラグに関する混入スラグ情報を取得する予測対象データ取得ステップと、過去の操業実績データ及び過去の操業における混入スラグ情報から学習モデルを用いて構築された予測モデルを用いて、予測対象データ取得ステップにて取得された操業実績データ及び混入スラグ情報に基づき、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測するモデル予測計算ステップと、を含む、予測方法が提供される。
【0022】
さらに、課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、溶銑予備処理工程にて脱硫を行うKRプロセスの開始前に、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測するための予測モデルを構築するモデル構築装置として機能させるためのコンピュータプログラムであって、コンピュータプログラムは、KRプロセスにおける過去の操業実績データ、及び、過去の操業においてトーピードカーから溶銑鍋への溶銑の払い出し時に溶銑鍋へ流入する混入スラグに関する混入スラグ情報から、学習モデルを用いて予測モデルを構築するモデル構築部として機能する、コンピュータプログラムが提供される。
【0023】
また、課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、溶銑予備処理工程にて脱硫を行うKRプロセスの開始前に、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測する予測装置として機能させるためのコンピュータプログラムであって、コンピュータプログラムは、直近の操業でのKRプロセスにおける操業実績データ、及び、直近の操業においてトーピードカーから溶銑鍋への溶銑の払い出し時に溶銑鍋へ流入する混入スラグに関する混入スラグ情報を取得する予測対象データ取得部と、過去の操業実績データ及び過去の操業における混入スラグ情報から学習モデルを用いて構築された予測モデルを用いて、予測対象データ取得部により取得された操業実績データ及び混入スラグ情報に基づき、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測するモデル予測計算部と、として機能する、コンピュータプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明によれば、KRプロセスでの脱硫率への影響度の高い混入スラグに関する情報に基づき、KRプロセス前に、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測するための予測モデルを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】機械撹拌式脱硫装置の一例を示す模式図である。
【
図2】溶銑がトーピードカーから溶銑鍋へ払い出される際の画像(払い出し画像)の一例である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るKRプロセス評価装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】払い出し画像及び鍋内画像を取得する撮像装置の配置の一例を示す模式図である。
【
図5】同実施形態に係るKRプロセス評価方法を示すフローチャートである。
【
図6】溶銑の払い出し画像中の溶銑領域の面積(画素数)の変化を示した溶銑領域面積チャートであって、溶銑へのスラグの混入が少ないケースの一例を示す。
【
図7】溶銑の払い出し画像中の溶銑領域の面積(画素数)の変化を示した溶銑領域面積チャートであって、溶銑へのスラグの混入が少ないケースの他の一例を示す。
【
図8】溶銑の払い出し画像中の溶銑領域の面積(画素数)の変化を示した溶銑領域面積チャートであって、溶銑へのスラグの混入がやや多いケースの一例を示す。
【
図9】溶銑の払い出し画像中の溶銑領域の面積(画素数)の変化を示した溶銑領域面積チャートであって、溶銑へのスラグの混入がやや多いケースの他の一例を示す。
【
図10】混入スラグ情報の取得に用いる連結画像の一例を示す説明図である。
【
図12】RGB成分のヒストグラムに基づく画像特徴量を説明する説明図である。
【
図13】鍋内画像中の明るい領域に関する画像特徴量を説明する説明図である。
【
図14】同実施形態に係るKRプロセス評価装置として機能する情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0027】
<1.混入スラグの脱硫への影響>
本実施形態では、溶銑予備処理工程にて脱硫を行うKRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測するための予測モデルを、トーピードカーから溶銑鍋への溶銑の払い出し時に溶銑鍋へ流入する混入スラグに関する混入スラグ情報を考慮して構築する。そこで、まず、KRプロセスにおける混入スラグの脱硫への影響について説明する。
【0028】
KRプロセスにおける脱硫への影響因子としては、例えば、混入スラグ、機械撹拌式脱硫装置の攪拌能力、溶銑温度等が考えられる。具体的には、混入スラグについては、トーピードカーから溶銑鍋への溶銑の払い出し時における混入スラグの量及び性状(塩基度)によって脱硫効率がばらつく。攪拌能力については、インペラーの浸漬深さや、インペラー、溶銑鍋に地金が張り付くことによって攪拌能力にばらつきが生じる。溶銑温度については、高炉から製鋼工場までの溶銑の到着時間がばらつくことで溶銑温度にばらつきが生じ、脱硫反応へ影響が生じる。
【0029】
このように、KRプロセスにおいて脱硫への影響因子は様々に考えられるものの、上述したように、プロセス現象が複雑かつ検出端が少ないことから、これまで十分に検討が進められていなかった。特に、
図2に示すように、溶銑3がトーピードカーから溶銑鍋へ払い出される際に溶銑鍋へ流入する混入スラグ3aについては、当該混入スラグの混入量が多くなるとKRプロセスでの脱硫率が低下する傾向にあり、KRプロセスでの脱硫率に影響すると推察される。
【0030】
例えば、ある期間の操業実績に基づき、混入スラグのスラグ混入量とスラグ性状との関係を調べたところ、下記表1、表2に示すような結果が得られた。表1及び表2は、336データについて、
図2に示すような溶銑3がトーピードカーから溶銑鍋へ払い出される際の画像からオペレータが目視によってスラグ混入量とスラグ性状とを定性的に判断した結果を示している。例えば、スラグ混入量については、
図2の画像中、明るく表れる溶銑3に対し、暗く表れる混入スラグ3aの占める割合から、3区分(多い、中、少ない)で判断される。また、例えばスラグ性状については、
図2の画像中の溶銑3及び混入スラグ3aの流れ方等から3区分(大、中、小)で判断される。表1にはデータ数をオペレータによって判断されたスラグ混入量とスラグ性状とについて整理した結果を示しており、表2には表1で示したスラグ混入量とスラグ性状とについて整理された区分毎データの脱硫率の平均値を示している。
【0031】
【0032】
【0033】
表2より、全体の平均値を1としてこれを基準とすると、混入スラグが多い場合、及び、スラグの粘性度が大きくなる場合には、KRプロセスにおける脱硫率は低下する傾向にあることがわかる。
【0034】
このような検討から、本願発明者は、KRプロセスにおける脱硫への影響度が高いと推測される混入スラグに関する情報を説明変数として、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測するための予測モデルを構築することにより、当該予測モデルの精度を向上させることを想到した。以下、本発明の一実施形態に係る、溶銑予備処理工程にて脱硫を行うKRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測するための予測モデルを構築するモデル構築装置、及び、構築された予測モデルを用いた予測装置の概要について詳細に説明する。
【0035】
<2.KRプロセス評価装置>
まず、
図3及び
図4に基づいて、本実施形態に係るKRプロセス評価装置100の機能構成について説明する。
図3は、本実施形態に係るKRプロセス評価装置100の機能構成を示す機能ブロック図である。
図4は、払い出し画像及び鍋内画像(以下、これらをまとめて「撮像画像」ともいう。)を取得する撮像装置47の配置の一例を示す模式図である。KRプロセス評価装置100は、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度(すなわち、処理後S濃度)を予測するための予測モデルを構築するモデル構築装置110と、当該予測モデルを用いた処理後S濃度を予測する予測装置120とを有する。なお、
図3では、KRプロセス評価装置100にモデル構築装置110及び予測装置120が備えられているが、本発明はかかる例に限定されず、それぞれ独立した装置として構成してもよい。
【0036】
[2-1.モデル構築装置]
モデル構築装置110は、モデル構築データ取得部111と、モデル構築部113とを有する。
【0037】
モデル構築データ取得部111は、予測モデルを構築するにあたり用いるKRプロセスにおける過去の操業実績データ、及び、過去の操業においてトーピードカーから溶銑鍋への溶銑の払い出し時に溶銑鍋へ流入する混入スラグに関する混入スラグ情報を取得する。モデル構築データ取得部111は、データ入力部111aと、画像データ処理部111bとを有する。
【0038】
データ入力部111aは、モデル構築装置110と接続された外部の装置から、過去の操業実績データを取得したり、混入スラグ情報の入力を受け付けたりする。
【0039】
過去の操業実績データは、かかるデータが格納された操業実績データ記憶部200から取得される。操業実績データ記憶部200には、例えば、KRプロセスを実施したときの溶銑量や使用した溶銑鍋、インペラー回数、KR処理回数、湯面高さ、インペラー浸漬深さ、攪拌速度、攪拌時間、攪拌トルク、攪拌動力、CaO使用量、Alドロス使用量、KRプロセス開始時Si濃度、KRプロセス開始時Mn濃度、KRプロセス開始時P濃度、KRプロセス開始時Ti濃度、KRプロセス開始時S濃度、KRプロセス後の最終温度、KRプロセス後の最終C濃度、風袋、目標S濃度等が、実施されたKRプロセス毎に記憶されている。データ入力部111aは、操業実績データ記憶部200から、予測モデルの構築に用いる所定数の過去の操業実績データを取得する。
【0040】
また、データ入力部111aは、外部の入力装置500からの入力情報を受け付ける。入力装置500は、オペレータが情報を入力するための装置であって、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバー等である。本実施形態では、予測モデルの構築に、オペレータの評価に基づく溶銑鍋へのスラグ混入量を示すスラグ混入量情報やオペレータの評価に基づくスラグ性状を示すスラグ性状情報が、混入スラグ情報として用いられる。オペレータは、入力装置500を用いて、これらの情報をモデル構築装置110へ入力する。
【0041】
ここで、オペレータは、溶銑がトーピードカーから溶銑鍋へ払い出される状況を撮像した払い出し画像や溶銑鍋40の内部を撮像した鍋内画像等の撮像画像を表示装置400により確認することにより、スラグ混入量及びスラグ性状を定量的に評価する。撮像画像は、溶銑の払い出しが行われる処理場に設置された撮像装置300により取得される。撮像装置300は、例えば
図4に示す撮像装置47のように、パルピットに設置され、観察窓45を介してパルピットから処理場を撮像するように設置されてもよい。このとき、撮像装置47は、複数のカメラから構成されてもよい。例えば
図4の例では、第1のカメラ47aは、トーピードカー20Aを傾けて溶銑5が溶銑鍋40へ注ぎ込む溶銑払い出し時の溶銑の流れを撮像可能な位置に設置される。同様に、第2のカメラ47bは、トーピードカー20Bを傾けて溶銑5が溶銑鍋40へ注ぎ込む溶銑払い出し時の溶銑の流れを撮像可能な位置に設置される。第1のカメラ47a及び第2のカメラ47bは領域Qを撮像するエリアとして、例えば
図2に示したような払い出し画像を取得する。
【0042】
また、撮像装置47として、溶銑鍋40の内部の溶銑5を撮像する第3のカメラ47cを設置してもよい。第3のカメラ47cは、溶銑鍋40に払い出された溶銑5を、溶銑鍋40の上方開口部から撮像可能な位置に設置される。第3のカメラ47cは、溶銑鍋40に払い出された溶銑5を撮像し、鍋内画像を取得する。
【0043】
図3の説明に戻り、オペレータは、このようにして取得された撮像画像に基づき、溶銑鍋へのスラグ混入量を示すスラグ混入量情報やスラグ性状を示すスラグ性状情報を、入力装置500を用いてデータ入力部111aへ入力する。また、オペレータは、例えば撮像画像を予め設定された分類基準に基づき分類し、混入スラグ情報として分類カテゴリ情報を生成してもよい。分類カテゴリ情報は、例えば、混入スラグの量や性状を目視により判断した結果に基づき、撮像画像に対応する操業実績データを複数に分類したものである。具体的には、混入スラグの量を目視によって3つのカテゴリ(多量、中量、少量)に分類する処理や、混入スラグの粘性度を目視によって3つのカテゴリ(粘性度大、粘性度中、粘性度小)に分類する処理が行われる。
【0044】
データ入力部111aは、取得した過去の操業実績データ及び混入スラグ情報を、モデル構築部113へ出力する。
【0045】
画像データ処理部111bは、撮像装置300により取得された撮像画像を解析し、混入スラグ情報として画像特徴量を取得する。画像特徴量は、例えば特徴量抽出のために予め設定されたスラグ混入量情報あるいはスラグ性状情報に基づき抽出される。なお、画像データ処理部111bによる処理の詳細については後述する。画像データ処理部111bは、取得した混入スラグ情報を、モデル構築部113へ出力する。
【0046】
モデル構築部113は、モデル構築データ取得部111にて取得された過去の操業実績データ及び混入スラグ情報に基づき、学習モデルを用いてKRプロセスの処理後S濃度を予測する予測モデルを構築する。モデル構築部113は、学習モデルとして、例えば重回帰モデルあるいは一般線形化モデルを用いてもよい。また、モデル構築部113は、学習モデルとして、例えばLasso(Least Absolute Shrinkage and Selection Operator)やRandomForest、GBDT(Gradient Boosting Decision Tree)等の機械学習手法を用いて、予測モデルを構築してもよい。モデル構築部113による予測モデルの構築処理についての詳細は後述する。モデル構築部113は、構築した予測モデルを、予測装置120へ出力する。
【0047】
[2-2.予測装置]
予測装置120は、予測対象データ取得部121と、モデル予測計算部123と、判定部125とを有する。
【0048】
予測対象データ取得部121は、直近の操業でのKRプロセスにおける操業実績データ、及び、直近の操業においてトーピードカーから溶銑鍋への溶銑の払い出し時に溶銑鍋へ流入する混入スラグに関する混入スラグ情報を取得する。予測対象データ取得部121にて取得される直近の操業実績データ及び混入スラグ情報は、これからKRプロセスを実施する溶銑に関する情報である。なお、操業実績データがない場合には、操作設定値を用いればよい。予測対象データ取得部121は、データ入力部121aと、画像データ処理部121bとを有する。データ入力部121a及び画像データ処理部121bは、取り扱うデータが入力される情報が直近のデータであること以外は、モデル構築装置110のモデル構築データ取得部111のデータ入力部111a及び画像データ処理部111bと同様の処理である。このため、データ入力部121a及び画像データ処理部121bの詳細な説明は省略する。予測対象データ取得部121は、取得した直近の操業実績データ及び混入スラグ情報を、モデル予測計算部123へ出力する。
【0049】
モデル予測計算部123は、モデル構築装置110により構築された予測モデルを用いて、予測対象データ取得部121により取得された操業実績データ及び混入スラグ情報に基づき、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測する。予測対象データ取得部121により取得された操業実績データ及び混入スラグ情報を予測モデルに入力することで、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度の予測値が算出される。モデル予測計算部123は、算出したKRプロセス終了時の溶銑中S濃度の予測値を判定部125へ出力する。
【0050】
判定部125は、モデル予測計算部123による予測結果に基づいて、今回のKRプロセスにおける脱硫を促進させるための追加処理の要否を判定する。判定部125は、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度の予測値と目標S濃度とを比較し、追加処理の要否を判定する。判定部125は、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度の予測値が目標S濃度を満たさないと判定した場合、例えばKRプロセスで使用する脱硫剤を増やす、あるいは、Mgによる脱硫を実施する、といった追加処理の実施が必要であることを、出力装置(図示せず。)を介してオペレータに通知してもよい。この際、判定部125は、過去の操業実績あるいは予め設定された追加処理実施要件に基づき、脱硫剤の追加量等も通知するようにしてもよい。
【0051】
以上、本実施形態に係るKRプロセス評価装置100の構成について説明した。
【0052】
<3.KRプロセス評価方法>
次に、
図5~
図13に基づいて、本実施形態に係るKRプロセス評価装置100によるKRプロセス評価方法について説明する。
図5は、本実施形態に係るKRプロセス評価方法を示すフローチャートである。
図7~
図13は、混入スラグ情報を説明するための説明図である。KRプロセス評価装置100によるKRプロセス評価は、
図5に示すように、オフラインで行われるモデル構築装置110によるモデル構築処理と、オンラインで行われる予測装置120による予測処理とにより行われる。以下、各処理について詳細に説明する。
【0053】
[3-1.モデル構築処理]
まず、モデル構築装置110によるモデル構築処理について説明する。モデル構築処理では、過去の操業実績データ及び過去の混入スラグ情報に基づき、KRプロセスの処理後S濃度を予測するための予測モデルが構築される。モデル構築処理はオフラインで実施され、予測装置120による予測を実施前に予め行われる。
【0054】
(S100:過去の操業実績データ取得)
図5に示すように、モデル構築装置110のモデル構築データ取得部111は、まず、データ入力部111aにより、操業実績データ記憶部200から所定数の過去の操業実績データを取得する(S100)。取得する過去の操業実績データは、所定期間内に含まれるものとしてもよい。操業実績データは、上述したように、例えば、KRプロセスを実施したときの溶銑量や使用した溶銑鍋、インペラー回数、KR処理回数、湯面高さ、インペラー浸漬深さ、各板速度、各半時間、攪拌トルク、攪拌動力、CaO使用量、Alドロス使用量、KRプロセス開始時Si濃度、KRプロセス開始時Mn濃度、KRプロセス開始時P濃度、KRプロセス開始時Ti濃度、KRプロセス開始時S濃度、KRプロセス後の最終温度、KRプロセス後の最終C濃度、風袋、目標S濃度等を含む。
【0055】
(S110:オペレータ評価に基づく混入スラグ情報取得)
また、データ入力部111aは、外部の入力装置500から入力された、オペレータの評価に基づく溶銑鍋へのスラグ混入量を示すスラグ混入量情報やオペレータの評価に基づくスラグ性状を示すスラグ性状情報といった混入スラグ情報を取得する(S110)。オペレータの評価に基づく混入スラグ情報は、上述したように、オペレータの定性的な評価に基づくものである。ステップS110では、例えば、スラグ混入量については、撮像画像の各画素の輝度に基づき、明るく表れる溶銑に対して暗く表れる混入スラグの占める割合から判断される。また、例えばスラグ性状については、撮像画像中の溶銑及び混入スラグの流れ方等から経験的に判断される。
【0056】
このようにして取得された撮像画像に基づき、溶銑鍋へのスラグ混入量を示すスラグ混入量情報やスラグ性状を示すスラグ性状情報を、オペレータは入力装置500を用いてデータ入力部111aへ入力する。また、オペレータは、例えば撮像画像を予め設定された分類基準に基づき分類し、混入スラグ情報として分類カテゴリ情報を生成してもよい。分類カテゴリ情報は、例えば、混入スラグの量や性状を目視により判断した結果に基づき、撮像画像に対応する操業実績データを複数に分類したものである。具体的には、混入スラグの量を目視によって3つのカテゴリ(多量、中量、少量)に分類する処理や、混入スラグの粘性度を目視によって3つのカテゴリ(粘性度大、粘性度中、粘性度小)に分類する処理が行われる。かかるオペレータによる評価は、溶銑の払い出し全体の評価ともいえる。
【0057】
(S120:画像特徴量取得)
一方、モデル構築データ取得部111は、画像データ処理部111bにより、混入スラグ情報として、撮像画像から画像特徴量を抽出する(S120)。画像特徴量は、例えば特徴量抽出のために予め設定されたスラグ混入量情報あるいはスラグ性状情報に基づき抽出される。画像データ処理部111bにより取得される画像特徴量は、スラグ混入量等のように定量的に評価されたものであり、属人的なばらつきは生じにくい。また、撮像画像中の部分的な変化も捉えることができる。
【0058】
ステップS120では、撮像装置300により取得された溶銑の撮像画像を予測モデルのモデル変数として扱うために、画像データ処理部111bにより撮像画像を解析し、画像特徴量を取得する。モデル変数を取得するために活用できる画像としては、トーピードカーから払い出す箇所(
図4の領域Q)を撮像した払い出し画像や、溶銑鍋内の溶銑を撮像した鍋内画像等がある。以下、これらの画像から画像特徴量を取得する処理について、より具体的に説明する。また、ステップS120では、画像特徴量の取得に加えて、撮像画像から払い出し状態をパターン化した情報を生成してもよい。かかる情報も、モデル変数として利用することができる。
【0059】
(a.払い出し画像の画像処理)
払い出し画像の画像処理では、払い出し状況の評価として、各時刻で取得された払い出し画像それぞれについて、溶銑に相当する領域部分の画素数を算出することが考えられる。溶銑に相当する領域は、例えば
図2に示したように輝度が大きく、払い出し画像中に明るい部分として現れる。したがって、払い出し画像における溶銑に相当する領域の特定は、R成分、G成分、B成分について閾値判定することにより可能となる。同様に、混入スラグについても、混入スラグに相当する領域は、例えば
図2に示したように輝度が小さく、払い出し画像中に暗い部分として現れる。したがって、払い出し画像における混入スラグに相当する領域の特定も、R成分、G成分、B成分について閾値判定することにより可能である。
【0060】
このように、払い出し画像の各画素について輝度あるいはHSV色空間の値(色相(Hue)、彩度(Saturation)、明度(Value))を特定することで、以下のような払い出し時の溶銑状態の評価を可能にする情報(すなわち、操業変数とみなすことのできる情報)を取得できる。
【0061】
例えば、溶銑の払い出し開始から終了までの期間における複数の払い出し画像を用いて、払い出し全体を通しての輝度変化から、混入スラグのスラグ混入量を把握することができる。
【0062】
図6~
図9に、溶銑の払い出し画像中の溶銑領域の面積(画素数)の変化を示した溶銑領域面積チャートの例を示す。
図6及び
図7は、溶銑へのスラグの混入が少ないケースを示しており、
図8及び
図9は、溶銑へのスラグの混入がやや多いケースを示している。
図6~
図9は、いずれも横軸がフレームNo.(すなわち時間)、縦軸が溶銑領域の画素数を表している。したがって、溶銑領域の画素数が多い時間帯(フレーム)ほど、多くの溶銑が排出され、スラグの混入は少ないとみなすことができる。
【0063】
例えば、
図6及び
図7に示すように、溶銑へのスラグの混入が少ないケースでは、溶銑領域の画素数、すなわち溶銑の排出量が時間の経過とともに減少する傾向があることがわかる。また、
図6の溶銑領域面積チャートでは、500フレームを超えたあたりで溶銑領域の画素数が急激に減少している。かかる部分では、大きな塊のスラグが混入したと考えられる。
図7においても、溶銑領域の画素数が減少している部分ではスラグの排出が多く、溶銑領域の画素数が増加した部分ではスラグの排出は減少している。このように、溶銑領域の画素数の変化から、スラグ混入量の大小を把握できる。さらに、溶銑領域面積チャートの画素数の総和より、1回の払い出しにて溶銑鍋へ排出された溶銑量を把握することもできる。また、溶銑領域面積チャートの傾きからは、溶銑の排出量の変化を把握することができる。
【0064】
また、例えば
図8及び
図9に示すように、溶銑へのスラグの混入がやや多いケースでは、
図6及び
図7に示した溶銑領域面積チャートとは形状が異なる。例えば
図8に示すように、払い出し期間の前半では溶銑の排出が少なく、後半で溶銑の排出が増えている。また、例えば
図9に示すように、払い出し期間の前半では溶銑の排出量の変化はほぼないものの、後半にて急激に減少することもある。さらに、
図8及び
図9のいずれの場合にも、溶銑領域の画素数は、
図6及び
図7と比較して減少している。
【0065】
このように、溶銑領域面積チャートを用いれば、輝度が大きい部分の面積変化傾向を見ることでスラグの混入状態を評価することができる。また、当該チャートの面積から、スラグ混入量の定量化も可能となる。
【0066】
あるいは、溶銑の払い出し開始から終了までの間に、同一の撮像装置(
図4では第1のカメラ47aまたは第2のカメラ47b)によって撮像された複数の払い出し画像(フレーム)から特定の領域を切り出して、時系列順に連結させ、1つの連結画像を作成することで、溶銑の払い出しの一連の様子が把握可能となる。例えば
図10に示すように、画像データ処理部111bは、払い出し画像の領域Fの部分を切り出し、各フレームから切り出し画像f1、f2、f3、・・・を取得する。そして、切り出し画像f1、f2、f3、・・・を時系列順に連結させると、
図10下側に示すような連結画像が生成される。連結画像からは、溶銑3が流れる状況を把握することができる。また、
図10の連結画像では、払い出しの終わり付近で、混入スラグ3aの塊が排出されたことがわかる。このように、連結画像内において混入スラグ3aが現れる範囲に着目することで、スラグの混入に関連する変数を作成することも可能である。
【0067】
(b.鍋内画像の画像処理)
実操業において、オペレータは、トーピードカーから払い出された溶銑の受け側となる溶銑鍋内に排出された溶銑を目視し、混入スラグのスラグ混入量及びスラグ性状を評価している。これより、撮像装置(
図4では第3のカメラ47c)により溶銑鍋内を撮像した鍋内画像に基づき操業変数を作成し用いることも有効と考えられる。例えば、
図11上側に示す払い出いし直後の鍋内画像と、
図11下側に示す、払い出しが終わった後KRプロセスの処理場へ溶銑鍋が搬送される直前の鍋内画像とを比較すると、輝度が異なり、時間が経過するにつれて溶銑の温度が低下する様子がわかる。また、混入スラグのスラグ混入量によっても溶銑の冷却度合いは異なる。なお、鍋内画像においても、溶銑に相当する領域と混入スラグに相当する領域との特定は、払い出し画像と同様、輝度やHSV色空間の値によって特定可能である。
【0068】
鍋内画像の画像特徴量としては、例えば鍋内画像について、RGB成分それぞれのヒストグラムから得られる統計量を用いてもよい。具体的には、
図12に示すように、鍋内画像からR成分、G成分、B成分それぞれの輝度分布を表すヒストグラムを作成し、ヒストグラムから得られる輝度の平均値や標準偏差等を統計量として求める。かかる統計量を混入スラグ情報として用いることができる。この際、
図12に示した払い出し直後の鍋内画像と搬送直前の鍋内画像とについて、それぞれ統計量を求め、混入スラグ情報として用いることで、溶銑鍋内での混入スラグの変化も考慮することができる。例えば、各鍋内画像についてそれぞれ求められたヒストグラムの平均の差により、溶銑鍋内での混入スラグの変化を表してもよい。
【0069】
また、鍋内画像の画像特徴量として、トーピードカーからの払い出し直後の鍋内画像における明るい領域の大きさを用いてもよい。明るく表れる領域は、溶銑の温度が高い部分であり、高温部分が多いほど混入スラグが少ないものと推定することができる。鍋内画像の明るい領域は、予め設定された所定の輝度閾値により特定することができる。当該領域の大きさは、例えば、画素数、総面積、最大面積等によって表せばよい。かかる処理は、例えば
図13に示すように、解析対象である左上の鍋内画像を、右上に示すようにR成分、G成分、B成分にそれぞれ分解した後、左下に示すように二値化する。これにより、特定したい高温部分を表す明るい領域を抽出することができる。二値化処理により明るい領域が特定されると、画像データ処理部111bは、右下に示すように領域の画素数をカウントし、明るい領域の総面積を算出すればよい。
【0070】
以上のように、撮像装置により得られた撮像画像から画像特徴量を求め、混入スラグ情報として用いてもよい。
【0071】
(S130:予測モデル構築)
図5の説明に戻り、ステップS100により過去の操業実績データを取得し、ステップS110、S120により混入スラグ情報が取得されると、モデル構築部113は、過去の操業実績データ及び混入スラグ情報に基づき、学習モデルを用いてKRプロセスの処理後S濃度を予測する予測モデルを構築する(S130)。学習モデルとして、例えば重回帰モデルや一般線形化モデル、機械学習手法を用いることができる。例えば重回帰モデルを用いた場合、下記式(0)についてKRプロセス開始時のS濃度(t=0時と仮定する。)と攪拌時間T(KRプロセス処理終了時間と仮定する。)とを用いると、KRプロセス終了後の溶銑中S濃度(t=T[min])は、下記式(A)によって表現することができる。
【0072】
【0073】
一般線形化モデルについては、例えば下記式(0)で表される脱硫物理式(非特許文献1参照)においては、処理後S濃度は、総括速度係数Ksと脱硫到達S濃度Seとをパラメータとして表される。
【0074】
【0075】
すなわち、脱硫物理式は総括速度係数×時間に対するexp関数で表現されることから、リンク関数をlog関数とし、処理後S濃度の連続値推定であることから確率分布をガンマ分布とすると、下記式(1)、(2)のように表現される。
【0076】
【0077】
なお、式(A)における(-Ks・T)がlog(p)に対応しており、この部分は線形式で表現される。式中のx1、…、xnはn個の説明変数、β0、…、βnはパラメータであり、パラメータβ0、…、βnは最尤推定で求められる。
【0078】
モデル構築部113は、構築した、例えば式(A)で表される予測モデルを、予測装置120へ出力する。
【0079】
[3-2.予測処理]
次に、予測装置120による予測処理について説明する。モデル構築処理では、直近の操業実績データ及び直近の混入スラグ情報に基づき、モデル構築処理にて構築された予測モデルを用いて、KRプロセスの処理後S濃度を予測する。かかる予測処理は、KRプロセスの実施前にオンラインにて実行される。したがって、当該予測処理の予測結果を今回実施するKRプロセスに反映させることができる。
【0080】
(S200:直近の操業実績データ取得)
図5に示すように、予測装置120は、まず、予測対象データ取得部121のデータ入力部121aにより直近の操業実績データを取得する(S200)。直近の操業実績データとしては、高炉での成分データ等がある。実績データが存在しない変数については、操作設定値を用いればよい。
【0081】
(S210:画像特徴量取得)
次いで、予測対象データ取得部121は、画像データ処理部121bにより、混入スラグ情報として、直近の溶銑の払い出し時に取得された撮像画像から画像特徴量を抽出する(S210)。画像特徴量は、ステップS120と同様の処理により求めればよい。
【0082】
(S220:KRプロセス終了後の溶銑中S濃度の予測値算出)
そして、モデル予測計算部123は、ステップS130にてモデル構築装置110により構築された予測モデルを用いて、ステップS200、S210にて取得された操業実績データ及び混入スラグ情報に基づき、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度を予測する(S220)。予測対象データ取得部121により取得された操業実績データ及び混入スラグ情報を予測モデルに入力することで、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度の予測値が算出される。
【0083】
(S230:追加処理の要否判定)
その後、判定部125は、ステップS220にて算出された予測結果に基づいて、今回のKRプロセスにおける脱硫を促進させるための追加処理の要否を判定する(S230)。判定部125は、KRプロセス終了時の溶銑中S濃度の予測値と目標S濃度とを比較し、追加処理の要否を判定する。KRプロセス終了時の溶銑中S濃度の予測値が目標S濃度を満たさないと判定した場合、判定部125は、例えばKRプロセスで使用する脱硫剤を増やす、あるいは、Mgによる脱硫を実施する、といった追加処理の実施が必要であることを、出力装置(図示せず。)を介してオペレータに通知してもよい。この際、判定部125は、過去の操業実績あるいは予め設定された追加処理実施要件に基づき、脱硫剤の追加量等も通知するようにしてもよい。
【0084】
以上、本実施形態に係るKRプロセス評価装置100によるKRプロセス評価方法について説明した。
【0085】
<4.ハードウェア構成>
図14に基づいて、本実施形態に係るKRプロセス評価装置100のハードウェア構成について説明する。
図14は、本実施形態に係るKRプロセス評価装置100として機能する情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。なお、KRプロセス評価装置100は、別個の情報処理装置900でそれぞれ構築してもよく、1つの情報処理装置900によりともに機能するように構築してもよい。
【0086】
情報処理装置900は、CPU901と、ROM903と、RAM905とを含む。また、情報処理装置900は、バス907と、入力I/F909と、出力I/F911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを含む。
【0087】
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能する。CPU901は、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体925に記録された各種プログラムに従って、情報処理装置900内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムあるいは演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラム、あるいは、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
【0088】
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
【0089】
入力I/F909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバー等の、ユーザが操作する操作手段である入力装置921からの入力を受け付けるインタフェースである。入力I/F909は、例えば、ユーザが入力装置921を用いて入力した情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路等として構成されている。入力装置921は、例えば、赤外線あるいはその他の電波を利用したリモートコントロール装置、あるいは、情報処理装置900の操作に対応したPDA等の外部機器927であってもよい。情報処理装置900のユーザは、入力装置921を操作し、情報処理装置900に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0090】
出力I/F911は、入力された情報を、ユーザに対して視覚的または聴覚的に通知可能な出力装置923へ出力するインタフェースである。出力装置923は、例えば、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプ等の表示装置であってもよい。あるいは、出力装置923は、スピーカ及びヘッドホン等の音声出力装置や、プリンター、移動通信端末、ファクシミリ等であってもよい。出力I/F911は、出力装置923に対して、例えば、情報処理装置900により実行された各種処理にて得られた処理結果を出力するよう指示する。具体的には、出力I/F911は、表示装置に対して情報処理装置900による処理結果を、テキストまたはイメージで表示するよう指示する。また、出力I/F911は、音声出力装置に対し、再生指示を受けた音声データ等のオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力するよう指示する。
【0091】
ストレージ装置913は、情報処理装置900の記憶部の1つであり、データ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイスまたは光磁気記憶デバイス等により構成される。ストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラム、プログラムの実行により生成された各種データ、及び、外部から取得した各種データ等を格納する。
【0092】
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、情報処理装置900に内蔵あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されているリムーバブル記録媒体925に記録されている情報を読み出し、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されているリムーバブル記録媒体925に情報を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体925は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクまたは半導体メモリ等である。具体的には、リムーバブル記録媒体925は、CDメディア、DVDメディア、Blu-ray(登録商標)メディア、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体925は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
【0093】
接続ポート917は、機器を情報処理装置900に直接接続するためのポートである。接続ポート917は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS-232Cポート等である。情報処理装置900は、接続ポート917に接続された外部機器927から、直接各種データを取得したり外部機器927に各種データを提供したりすることができる。
【0094】
通信装置919は、例えば、通信網929に接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。通信装置919は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網929は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成されている。例えば、通信網929は、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等である。
【0095】
以上、情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示した。上述の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されてもよく、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されてもよい。情報処理装置900のハードウェア構成は、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて適宜変更可能である。
【実施例】
【0096】
本発明の効果を検証すべく、下記表3に示す操業変数及び混入スラグ情報(オペレータ評価値、画像特徴量)を用いて、重回帰分析(ステップワイズ法(AIC))で、予測モデルの性能を検討した。検討では、予測モデルの構築に際して使用可能な説明変数として下記表3に示す説明変数を設定した。本検討では、操業変数として、KRプロセス実施に際して取得される操業実績データを用いた。ここでは、例えば溶銑量やインペラー回数、KRプロセスの前後における溶銑の成分濃度等を含む、20個の操業実績データを用いた。そして、下記表4に示すケースA~Fのように予測モデルの構築に際して使用する説明変数を変化させ、各ケースA~Fについて、予測モデルにより推定されたKRプロセス実施後の処理後S濃度と実際の処理後S濃度とを調べた。結果を
図15に示す。
【0097】
【0098】
【0099】
図15を参照すると、比較例であるケースAに比べ、実施例であるケースB~Fについては精度の良い予測モデルが構築されていることがわかる。なお、本検討における評価結果は、表3に示した操業変数及び混入スラグ情報(オペレータ評価、画像特徴量)を用いた場合にのみ言えることではない。操業変数及び混入スラグ情報(オペレータ評価、画像特徴量のデータ数を表3と異なるものとしても、操業変数に加え、オペレータ評価または画像特徴量のうち少なくともいずれか一方を説明変数に加えることで、予測モデルの精度を高めることができる。
【0100】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0101】
3、5 溶銑
3a 混入スラグ
5 溶銑
10 高炉
20、20A、20B トーピードカー(TPC)
30 TPC処理場
40 溶銑鍋
45 観察窓
47 撮像装置
47a 第1のカメラ
47b 第2のカメラ
47c 第3のカメラ
50 機械撹拌式脱硫装置(KR)
51 KR鍋
53 インペラー
55 駆動装置
100 KRプロセス評価装置
110 モデル構築装置
111 モデル構築データ取得部
111a データ入力部
111b 画像データ処理部
113 モデル構築部
120 予測装置
121 予測対象データ取得部
121a データ入力部
121b 画像データ処理部
123 モデル予測計算部
125 判定部
200 操業実績データ記憶部
200 操業実績データ記憶
300 撮像装置
400 表示装置
500 入力装置