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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】圧延装置および圧延装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 45/08 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
B21B45/08 F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020022619
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021126675
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】高松 祥希
(72)【発明者】
【氏名】森岡 功輔
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-021544(JP,A)
【文献】特開平11-104729(JP,A)
【文献】特開2007-044717(JP,A)
【文献】特開2000-246324(JP,A)
【文献】特開昭59-183931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 45/00 - 45/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材を搬送する搬送ロールと、
前記搬送ロールの下流側に配置され、前記搬送ロールが搬送した前記鋼材を加圧する加圧ロールと、
前記搬送ロール上に配置され、前記搬送ロールが搬送する前記鋼材の位置を調節するサイドガイドと、
前記搬送ロール上の前記鋼材の有無を検出するセンサと、
前記搬送ロールおよび前記サイドガイドのう少なくとも前記搬送ロールに向けて流体を噴射する機器用噴射機と、
前記センサおよび前記機器用噴射機に接続された制御部と、を備え、
前記制御部は、前記センサの検出結果に基づいて、前記搬送ロール上に前記鋼材がない状態で、前記機器用噴射機から前記流体を噴射させる第1制御を実施する圧延装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1制御において、前記搬送ロールが第1の鋼材を搬送した後、第2の鋼材を搬送する前に、前記機器用噴射機に前記流体を噴射させる請求項1に記載の圧延装置。
【請求項3】
前記機器用噴射機は、前記搬送ロールおよび前記サイドガイドに向けて前記流体を噴射する請求項1または2に記載の圧延装置。
【請求項4】
前記サイドガイドは、前記搬送ロール上において、前記鋼材を挟む位置に配置された第1サイドガイドおよび第2サイドガイドを備え、
前記機器用噴射機は、
前記第1サイドガイドに設けられ前記第2サイドガイドに向けて前記流体を噴射する第1噴射機と、
前記第2サイドガイドに設けられ前記第1サイドガイドに向けて前記流体を噴射する第2噴射機と、を備え、
前記制御部は、前記第1制御において、前記第1噴射機から前記第2サイドガイドに向けて前記流体を噴射させ、前記第2噴射機から前記第1サイドガイドに向けて前記流体を噴射させる請求項3に記載の圧延装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1制御において、前記第1噴射機の噴射タイミングと前記第2噴射機の噴射タイミングとを異ならせる請求項4に記載の圧延装置。
【請求項6】
前記搬送ロール上の前記鋼材に向けて流体を噴射する鋼材用噴射機を更に備え、
前記制御部は、前記鋼材用噴射機に接続され、前記センサの検出結果に基づいて、前記搬送ロール上に前記鋼材がある状態で、前記鋼材用噴射機に前記流体を噴射させる第2制御を更に実施する請求項1から5のいずれか1項に記載の圧延装置。
【請求項7】
前記鋼材用噴射機は、
前記鋼材の表面に向けて前記流体を噴射させる第3噴射機と、
前記鋼材の裏面に向けて前記流体を噴射させる第4噴射機と、を備え、
前記制御部は、前記第2制御において、前記第3噴射機および前記第4噴射機から前記鋼材に前記流体を同時に噴射させる請求項6に記載の圧延装置。
【請求項8】
前記第3噴射機および前記第4噴射機は、下流側から上流側に向けて前記流体を噴射させる請求項7に記載の圧延装置。
【請求項9】
前記第3噴射機は、前記第4噴射機よりも上流側に向けて前記流体を噴射させる請求項8に記載の圧延装置。
【請求項10】
前記鋼材を捲き取る捲取機を更に備え、
前記加圧ロールは、前記搬送ロールと前記捲取機との間に配置されたピンチロールである請求項1から9のいずれか1項に記載の圧延装置。
【請求項11】
前記鋼材は鋼板である請求項1から10のいずれか1項に記載の圧延装置。
【請求項12】
鋼材を搬送する搬送ロールと、
前記搬送ロールの下流側に配置され、前記搬送ロールが搬送した前記鋼材を加圧する加圧ロールと、
前記搬送ロール上に配置され、前記搬送ロールが搬送する前記鋼材の前記搬送ロール上での位置を調節するサイドガイドと、を備える圧延装置を運転する方法であって、
前記搬送ロールが第1の鋼材を搬送した後、第2の鋼材を搬送する前に、前記搬送ロールおよび前記サイドガイドのう少なくとも前記搬送ロールに向けて流体を噴射する圧延装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延装置および圧延装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱間圧延設備として、下記特許文献1に記載の設備が知られている。熱間圧延設備は、熱薄鋼板や冷薄鋼板、めっき鋼板を製造するための一設備である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-263779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した各種鋼板の歩留まり低下の原因として、飛込み疵の発生が高い割合を占めている。飛込み疵は、熱間圧延時に鋼材に異物が混入し、鋼材を異物とともに圧入することで発生する疵である。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、鋼材の歩留まりを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る圧延装置は、鋼材を搬送する搬送ロールと、前記搬送ロールの下流側に配置され、前記搬送ロールが搬送した前記鋼材を加圧する加圧ロールと、前記搬送ロール上に配置され、前記搬送ロールが搬送する前記鋼材の位置を調節するサイドガイドと、前記搬送ロール上の前記鋼材の有無を検出するセンサと、前記搬送ロールおよび前記サイドガイドのう少なくとも前記搬送ロールに向けて流体を噴射する機器用噴射機と、前記センサおよび前記機器用噴射機に接続された制御部と、を備え、前記制御部は、前記センサの検出結果に基づいて、前記搬送ロール上に前記鋼材がない状態で、前記機器用噴射機から前記流体を噴射させる第1制御を実施する。
【0007】
本願発明者は、飛込み疵の発生位置を整理した。その結果、鋼材の裏面では、鋼材のトップ部の両エッジ(鋼材の下流側の端部における両側縁)において飛込み疵の発生率が高くなっていた。本願発明者は、異物の発生位置の詳細な分析の結果、鋼材の裏面における飛込み疵が以下の過程により発生していることを推定した。すなわち、鋼材における下流側の端部の形状は不安定であり、例えば、鋼材が加圧ロールによって加圧されるとき等に鋼材がサイドガイドに接触し、イバリや異物(以下、「異物等」という。)が発生する(なおイバリは、鋼材から発生する切削くずの一種である)。異物等が、次の鋼材に付着して加圧ロールに捲き込まれることで、鋼材の裏面における飛込み疵が発生していると考えられる。
この圧延装置では、制御部が、センサの検出結果に基づいて、搬送ロール上に鋼材がない状態で、機器用噴射機から流体を噴射させる。これにより、搬送ロール上に鋼材がない状態で、搬送ロールおよびサイドガイドのう少なくとも前記搬送ロールに向けて流体を噴射することができる。結果として、搬送ロールやサイドガイドに異物等が付着していても、異物等を流体により除去することができる。これにより、異物等が、次の鋼材に付着して加圧ロールに捲き込まれることを抑制することができる。よって、飛込み疵の発生を抑えて鋼材の歩留まりを向上させることができる。なお、熱間圧延においてこのように飛込み疵の発生を抑えることにより、熱間圧延に続く冷間圧延において、例えば穴欠陥などの発生も抑制することができる。結果として、熱薄鋼板、冷薄鋼板、めっき鋼板に一貫して歩留まりの向上を図ることが可能である。
また機器用噴射機が、搬送ロール上に鋼材がない状態で流体を噴射する。したがって、噴射される流体を起因として、例えば、鋼材の搬送に影響が生じたり、鋼材が過度に冷却されたりすること等を防止することができる。
【0008】
前記制御部は、前記第1制御において、前記搬送ロールが第1の鋼材を搬送した後、第2の鋼材を搬送する前に、前記機器用噴射機に前記流体を噴射させてもよい。
【0009】
搬送ロールが第1の鋼材を搬送した後、第2の鋼材を搬送する前に、機器用噴射機が流体を噴射する。したがって、第2の鋼材において飛込み疵が発生することを効果的に抑制することができる。
【0010】
前記機器用噴射機は、前記搬送ロールおよび前記サイドガイドに向けて前記流体を噴射してもよい。
【0011】
機器用噴射機が、サイドガイドに向けて流体を噴射する。したがって、サイドガイドに付着した異物等を効果的に除去することができる。
【0012】
前記サイドガイドは、前記搬送ロール上において、前記鋼材を挟む位置に配置された第1サイドガイドおよび第2サイドガイドを備え、前記機器用噴射機は、前記第1サイドガイドに設けられ前記第2サイドガイドに向けて前記流体を噴射する第1噴射機と、前記第2サイドガイドに設けられ前記第1サイドガイドに向けて前記流体を噴射する第2噴射機と、を備え、前記制御部は、前記第1制御において、前記第1噴射機から前記第2サイドガイドに向けて前記流体を噴射させ、前記第2噴射機から前記第1サイドガイドに向けて前記流体を噴射させてもよい。
【0013】
第1噴射機が第1サイドガイドに設けられ、第2噴射機が第2サイドガイドに設けられている。したがって、機器用噴射機の設置が他の機器の邪魔になることを抑制することができる。
第1噴射機が第2サイドガイドに向けて流体を噴射させ、第2噴射機が第1サイドガイドに向けて流体を噴射させる。すなわち、各噴射機が、その噴射機が設けられたサイドガイドとは反対側のサイドガイドに向けて流体を噴射する。これにより、液体をサイドガイドの所望の位置に精度よく噴射させることができる。よって、サイドガイドに付着した異物等を一層効果的に除去することができる。
【0014】
前記制御部は、前記第1制御において、前記第1噴射機の噴射タイミングと前記第2噴射機の噴射タイミングとを異ならせてもよい。
【0015】
第1噴射機の噴射タイミングと第2噴射機の噴射タイミングとが異なる。したがって、第1噴射機から噴射する流体と、第2噴射機から噴射する流体と、が干渉したり混合したりすることを抑制することができる。これにより、液体をサイドガイドの所望の位置に一層精度よく噴射させることができる。
【0016】
前記搬送ロール上の前記鋼材に向けて流体を噴射する鋼材用噴射機を更に備え、前記制御部は、前記鋼材用噴射機に接続され、前記センサの検出結果に基づいて、前記搬送ロール上に前記鋼材がある状態で、前記鋼材用噴射機に前記流体を噴射させる第2制御を更に実施してもよい。
【0017】
鋼材用噴射機が、搬送ロール上の鋼材に向けて流体を噴射する。したがって、仮に異物等が鋼材に付着したとしても、異物等を鋼材から除去することができる。これにより、飛込み疵の発生を一層抑えることができる。
【0018】
前記鋼材用噴射機は、前記鋼材の表面に向けて前記流体を噴射させる第3噴射機と、前記鋼材の裏面に向けて前記流体を噴射させる第4噴射機と、を備え、前記制御部は、前記第2制御において、前記第3噴射機および前記第4噴射機から前記鋼材に前記流体を同時に噴射させてもよい。
【0019】
第3噴射機が鋼材の表面に向けて流体を噴射させ、第4噴射機が鋼材の裏面に向けて流体を噴射させる。したがって、鋼材の表面および裏面のいずれの面に付着した異物等であっても、鋼材から除去することができる。
なお本願発明者は、飛込み疵の発生位置を整理した結果、鋼材の表面では、鋼材のトップ部において飛込み疵の発生率が高くなっていた。そのため、第3噴射機が、鋼材のトップ部に向けて流体を、加圧ロールの直前で噴射することが好ましい。この種の異物等は、鋼材が搬送されるときに、圧延装置を構成する各種機器から落下することにより、鋼材の表面に付着すると考えられる。
【0020】
前記第3噴射機および前記第4噴射機は、下流側から上流側に向けて前記流体を噴射させてもよい。
【0021】
第3噴射機および第4噴射機が、下流側から上流側に向けて流体を噴射させる。したがて、例えば、流体が鋼材とともに加圧ロールに供給されることを抑制することができる。
【0022】
前記第3噴射機は、前記第4噴射機よりも上流側に向けて前記流体を噴射させてもよい。
【0023】
第3噴射機が、第4噴射機よりも上流側に向けて流体を噴射させる。したがって、鋼材の表面に付着する異物等を鋼材から効果的に除去することができる。
【0024】
前記鋼材を捲き取る捲取機を更に備え、前記加圧ロールは、前記搬送ロールと前記捲取機との間に配置されたピンチロールであってもよい。
【0025】
加圧ロールが、搬送ロールと捲取機との間に配置されたピンチロールである。捲取機が鋼材を捲き取るとき、鋼材がサイドガイドと接触し易いため、異物等が発生し易い。そのため、機器用噴射機による作用効果が顕著に奏功される。
【0026】
前記鋼材は鋼板であってもよい。
【0027】
鋼材が鋼板である。鋼板の両側縁(板幅方向の側面)がサイドガイドに接触すると、異物等が発生し易い。そのため、機器用噴射機による作用効果が顕著に奏功される。
【0028】
本発明に係る圧延装置の運転方法は、鋼材を搬送する搬送ロールと、前記搬送ロールの下流側に配置され、前記搬送ロールが搬送した前記鋼材を加圧する加圧ロールと、前記搬送ロール上に配置され、前記搬送ロールが搬送する前記鋼材の前記搬送ロール上での位置を調節するサイドガイドと、を備える圧延装置を運転する方法であって、前記搬送ロールが第1の鋼材を搬送した後、第2の鋼材を搬送する前に、前記搬送ロールおよび前記サイドガイドのう少なくとも前記搬送ロールに向けて流体を噴射する。
【0029】
搬送ロールが第1の鋼材を搬送した後、第2の鋼材を搬送する前に、搬送ロールおよびサイドガイドのう少なくとも前記搬送ロールに向けて流体を噴射する。結果として、搬送ロールやサイドガイドに異物等が付着していても、異物等を流体により除去することができる。これにより、異物等が、次の鋼材に付着して加圧ロールに捲き込まれることを抑制することができる。よって、飛込み疵の発生を抑えて鋼材の歩留まりを向上させることができる。

【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、鋼材の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る圧延装置の側面図である。
図2図1に示す圧延装置の上面図である。
図3図1に示す圧延装置の機能ブロック図である。
図4図2に示す圧延装置の第1噴射機による噴射を説明するための圧延装置の上面図である。
図5図2に示す圧延装置の第2噴射機による噴射を説明するための圧延装置の上面図である。
図6図1に示す圧延装置の鋼材用噴射機による噴射を説明するための圧延装置の側面図である。
図7図2に示す圧延装置の鋼材用噴射機による噴射を説明するための圧延装置の上面図である。
図8図1に示す圧延装置における各噴射機による異物等を除去可能な条件を説明するグラフである。
図9図1に示す圧延装置の運転方法を示すシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図1から図9を参照し、本発明の一実施形態に係る圧延装置10および圧延装置10の運転方法を説明する。
なお、本実施形態に係る圧延装置10は、熱間圧延に用いられる。この圧延装置10は、鋼材11としての鋼板を圧延する。
【0033】
図1から図3に示すように、圧延装置10は、搬送ロール12と、加圧ロール13と、プロテクタ14と、サイドガイド15と、センサ16と、機器用噴射機17と、鋼材用噴射機18と、制御部19と、を備えている。
【0034】
図1および図2に示すように、搬送ロール12は、鋼材11を搬送する。以下では、搬送ロール12が鋼材11を搬送する方向を第1方向Xという。搬送ロール12は、第1方向Xに間隔をあけて複数配置されている。各搬送ロール12は、軸線回りに回転する。前記軸線は、第1方向Xに直交する第2方向Yに延びている。
【0035】
搬送ロール12は、鋼材11(鋼板)を、その表裏面が鉛直方向を向く状態で搬送する。搬送ロール12が鋼材11を搬送するとき、鋼材11(鋼板)の板幅方向は第1方向Xに実質的に直交する。言い換えると、板幅方向が、第2方向Yと実質的に平行になる。
搬送ロール12は、鋼材11を加圧ロール13に搬送する。以下、第1方向Xに沿って、搬送ロール12に対して加圧ロール13が位置する方向を、第1方向Xの下流側X1という。第1方向Xに沿う下流側X1の反対側を、第1方向Xの上流側X2という。
【0036】
加圧ロール13は、搬送ロール12の下流側X1に配置されている。加圧ロール13は、搬送ロール12が搬送した鋼材11を加圧する。加圧ロール13は、上下一対設けられている。上下一対の加圧ロール13は、搬送ロール12によって搬送された鋼材11を上下方向に挟んで加圧する。
なお本実施形態では、圧延装置10は、鋼材11を捲き取る捲取機30を更に備えている。加圧ロール13は、搬送ロール12と捲取機30との間に配置されたピンチロールである。
【0037】
図1に示すように、プロテクタ14は、鋼材11が予期せぬ挙動を示したときに、その鋼材11から加圧ロール13を保護する。プロテクタ14は、上下一対の加圧ロール13のうち、上側に位置する加圧ロール13を保護する。プロテクタ14は、上側の加圧ロール13に対して上流側X2に配置されている。プロテクタ14は、一部の搬送ロール12を上側から覆っている。図示の例では、プロテクタ14は、例えば、鋼材11の端部が予期せずに上方に向けて跳ね上げられる等したときに、その鋼材11の端部が、上側の加圧ロール13と衝突することを防止する。
【0038】
サイドガイド15は、搬送ロール12上に配置される。サイドガイド15は、搬送ロール12が搬送する鋼材11の位置を調節する。サイドガイド15は、鋼材11の第2方向Y(板幅方向)の位置を調節する。図2に示すように、サイドガイド15は、第1サイドガイド15aおよび第2サイドガイド15bを備えている。第1サイドガイド15aおよび第2サイドガイド15bは、搬送ロール12上において、鋼材11を挟む位置に配置されている。第1サイドガイド15aおよび第2サイドガイド15bは、搬送ロール12上において、鋼材11を第2方向Yに挟む。
【0039】
各サイドガイド15の第2方向Yの位置は固定されている。ただし、各サイドガイド15の第2方向Yの位置は、例えば図示しないハンドル等により調整可能である。これにより、搬送される鋼材11のサイズに応じて、各サイドガイド15の第2方向Yに位置を調整することができる。
各サイドガイド15は、第2方向Yよりも第1方向Xに長い棒状に形成されている。各サイドガイド15は、複数の搬送ロール12を第1方向Xに横断している。言い換えると、この圧延装置10を上方から見た上面視において、各サイドガイド15は、複数の搬送ロール12と交差している。
【0040】
各サイドガイド15には、サイドガイドエプロン20(以下、単にエプロン20という)が設けられている。エプロン20は、鋼材11が搬送ロール12や加圧ロール13に突っ掛かることを防止する。エプロン20は、各サイドガイド15において、鉛直方向における中央よりも下側に配置されている。各サイドガイド15は、搬送ロール12上に配置されている。エプロン20は、各サイドガイド15において、第1方向Xにおける中央よりも下流側X1に配置されている。
【0041】
エプロン20は、そのエプロン20が設けられた一方のサイドガイド15から、他方のサイドガイド15に向けて突出している。すなわち、第1サイドガイド15aに設けられたエプロン20(以下、第1エプロン20aという)は、第2サイドガイド15bに向けて突出している。第2サイドガイド15bに設けられたエプロン20(以下、第2エプロン20bという)は、第1サイドガイド15aに向けて突出している。言い換えると、エプロン20は、各サイドガイド15から第2方向Yの内側に向けて突出している。
なおエプロン20には、イバリや異物(以下、異物等という)が堆積する可能性が高い。なおイバリは、鋼材11から発生する切削くずの一種である。
【0042】
図1および図2に示すように、センサ16は、搬送ロール12上の鋼材11の有無を検出する。センサ16は、サイドガイド15よりも上流側X2における鋼材11の有無を検出する。センサ16は、サイドガイド15よりも上流側X2に配置されている。センサ16は、搬送ロール12上の鋼材11に対して鉛直方向に対向する。センサ16としては、例えば赤外線センサや超音波センサ等を採用することができる。センサ16は、搬送ロール12上においてセンサ16に対向する位置(以下、センサ16の検出位置という)における鋼材11の有無を検出する。図示の例では、前記検出位置は、サイドガイド15よりも上流側X2に位置する。
【0043】
機器用噴射機17は、機器(圧延装置10を構成する機器)に付着する異物等を除去する清掃装置である。機器用噴射機17は、搬送ロール12が鋼材11を搬送していないときに、機器に向けて流体Fを噴射する。この噴射により、異物等が機器から除去される。
なお本明細書において、機器や鋼材11に向けて噴射機から流体Fを噴射することには、以下の場合が含まれる。すなわち、機器や鋼材11が噴射機に対して噴射機の前方に位置する場合であって、噴射機から噴射された流体Fがその機器や鋼材11に吹き付けられる場合が含まれる。
【0044】
機器用噴射機17は、搬送ロール12およびサイドガイド15のうちの少なくとも1つに向けて流体Fを噴射する。図4および図5に示すように、本実施形態では、機器用噴射機17は、少なくともサイドガイド15に向けて流体Fを噴射する。機器用噴射機17は、サイドガイド15に付着した異物等を効果的に除去することができる。
【0045】
機器用噴射機17は、第1噴射機17aと、第2噴射機17bと、を備えている。
図4に示すように、第1噴射機17aは、第1サイドガイド15aに設けられている。第1噴射機17aは、第1サイドガイド15aに固定されている。第1噴射機17aは、第1サイドガイド15aに形成された凹部に配置されている。
【0046】
第1噴射機17aは、第2サイドガイド15bに向けて流体Fを噴射する。図示の例では、第1噴射機17aは、第2サイドガイド15bのうちの下流側X1の端部に向けて流体Fを噴射する。第1噴射機17aから噴射された流体Fは、第2サイドガイド15bの下流側X1の端部および第2エプロン20bに吹き付けられる。第1噴射機17aは、下流側X1に向けて、かつ、鉛直方向の下側に向けて流体Fを噴射する。
【0047】
図5に示すように、第2噴射機17bは、第2サイドガイド15bに設けられている。第2噴射機17bは、第2サイドガイド15bに固定されている。第2噴射機17bは、第2サイドガイド15bに形成された凹部に配置されている。
【0048】
第2噴射機17bは、第1サイドガイド15aに向けて流体Fを噴射する。図示の例では、第2噴射機17bは、第1サイドガイド15aのうちの下流側X1の端部に向けて流体Fを噴射する。第2噴射機17bから噴射された流体Fは、第1サイドガイド15aの下流側X1の端部および第1エプロン20aに吹き付けられる。第2噴射機17bは、下流側X1に向けて、かつ、鉛直方向の下側に向けて流体Fを噴射する。
【0049】
図6および図7に示すように、鋼材用噴射機18は、鋼材11に付着する異物等を除去する清掃装置である。鋼材用噴射機18は、搬送ロール12が鋼材11を搬送しているときに、搬送ロール12上の鋼材11に向けて流体Fを噴射する。この噴射により、異物等が鋼材11から除去される。
【0050】
鋼材用噴射機18は、第3噴射機18aと、第4噴射機18bと、を備えている。
第3噴射機18aは、鋼材11の表面に向けて流体Fを噴射させる。鋼材11の表面とは、搬送ロール12によって搬送される鋼材11において上方を向く面である。第3噴射機18aは、搬送ロール12よりも上方に配置されている。第3噴射機18aは、鉛直方向の下側に向けて流体Fを噴射する。図示の例では、第3噴射機18aは、プロテクタ14に固定されている。
【0051】
第4噴射機18bは、鋼材11の裏面に向けて流体Fを噴射させる。鋼材11の裏面とは、搬送ロール12によって搬送される鋼材11において下方を向く面である。第4噴射機18bは、第1方向Xに隣り合う搬送ロール12の間に配置されている。第4噴射機18bは、鉛直方向の上側に向けて流体Fを噴射する。
【0052】
第3噴射機18aおよび第4噴射機18bは、下流側X1から上流側X2に向けて流体Fを噴射させる。図示の例では、第3噴射機18aは、第4噴射機18bよりも上流側X2に向けて流体Fを噴射させる。
なお、第3噴射機18aおよび第4噴射機18bは、鋼材11の板幅方向の全幅に流体Fを噴射してもよく、鋼材11の板幅方向の端部や中央部に限定して流体Fを噴射してもよい。
【0053】
第1噴射機17a、第2噴射機17b、第3噴射機18a、および第4噴射機18bは、構成を共通させることもできるし異ならせることもできる。本実施形態では、これらの各噴射機17a、17b、18a、18bの構成は共通している。図3に示すように、各噴射機17a、17b、18a、18bは、ヘッダ21と、弁22と、コントローラ23と、を備えている。
【0054】
ヘッダ21は、流体Fを噴射するノズル(パイプ)である。ヘッダ21は、複数であっても1つであってもよい。弁22は、ヘッダ21に供給される流体Fの流量を調整する。弁22は、電磁弁である。
【0055】
コントローラ23は、弁22の開度を制御する。コントローラ23は、弁22の開度を制御する情報(信号)を弁22に送信する。コントローラ23は、弁22の開度についての実績の情報を弁22から受信する。なおコントローラ23は、例えばパーソナルコンピュータ、サーバー、又は産業用コンピュータ等の装置などによって実現されてもよい。コントローラ23は、例えば、専用の基板などによって実現されてもよい。
【0056】
各噴射機17a、17b、18a、18bの噴射条件は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。噴射条件には、例えば、噴射する流体Fの種類、噴射する流体Fの圧力や流量、各噴射機17a、17b、18a、18bのヘッダ21の角度などが含まれる。なお、流体Fとしては、例えば、水などの液体だけでなく、空気などの気体も採用することができる。流体Fが液体の場合、噴射後の流体F(液体)は、例えば、隣り合う搬送ロール12の間の空間や、搬送ロール12に対して第2方向Yの外側に位置する空間を通して、圧延装置10の外部に排出される。
【0057】
ところで、異物等を機器や鋼材11から除去するためには、各噴射機17a、17b、18a、18bから噴射対象までの距離と、流体Fの流量と、が、一定の関係を満たす必要がある。流体Fとして水を採用した場合において、これらの距離と流量との関係を、図8に示すグラフに整理した。このグラフの横軸が距離(m)であり、縦軸が流量(L/min)である。
【0058】
このグラフ(XY座標の第1象限)は、グラフ線Lによって2つの領域に仕切られている。グラフ線Lは、流量(y)を表す距離(x)の二次関数を示している。図示の例では、グラフ線Lは、y=6.8534x+3.5557x+19.539によって表される。2つの領域のうち、グラフ線Lよりも上側に位置する領域R1が、異物等を除去可能な能力を満たす領域(異物等除去可能範囲)となっている。なお、この検証試験において、流体Fの噴射する圧力は、0.9MPaとした。
【0059】
図3に示すように、制御部19は、センサ16、機器用噴射機17、および鋼材用噴射機18に接続されている。制御部19は、センサ16から受信する情報に基づいて、機器用噴射機17および鋼材用噴射機18を制御する。
制御部19は、パーソナルコンピュータ、サーバー、又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。制御部19は、通信部110と、記憶部120と、情報処理部130と、各構成要素を電気的に接続するバスライン160(アドレスバスやデータバスなど)と、を備える。
【0060】
通信部110は、通信モジュールによって実現される。通信部110はネットワークを介して、センサ16、および、各噴射機17a、17b、18a、18bのコントローラ23と通信する。通信部110は、センサ16やコントローラ23から受信した情報(信号)を情報処理部130に出力する。通信部110は、情報処理部130から出力された情報をコントローラ23に出力する。
【0061】
通信部110は、センサ16が検出した鋼材11の有無についての情報(信号)を受信する。通信部110は、センサ16から受信した情報を、情報処理部130に出力する。通信部110は、情報処理部130から入力された情報(後述する弁22の開度およびそのタイミングについての情報)を、各噴射機17a、17b、18a、18bのコントローラ23に送信する。通信部110は、各噴射機17a、17b、18a、18bのコントローラ23から、弁22の開閉の実績についての情報を受信する。
【0062】
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、又はこれらのうち複数が組み合わされたハイブリッド型記憶装置などにより実現される。記憶部120の一部又は全部は、制御部19の一部として設けられる場合に代えて、NAS(Network Attached Storage)や外部のストレージサーバなど、制御部19のプロセッサがネットワークを介してアクセス可能な外部装置により実現されてもよい。記憶部120には、情報処理部130により実行されるプログラムが記憶される。
【0063】
情報処理部130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが記憶部120に格納されたプログラムやアプリを実行することにより実現される機能部(以下「ソフトウェア機能部」という)である。なお、情報処理部130の全部又は一部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0064】
情報処理部130は、センサ16が検出した鋼材11の有無についての情報に基づいて、弁22の開度およびそのタイミングを演算する。ここで制御部19は、第1制御および第2制御を実施する。第1制御は、センサ16の検出結果に基づいて、図4および図5に示すように、搬送ロール12上に鋼材11がない状態で、制御部19が機器用噴射機17から流体Fを噴射させる制御である。第2制御は、センサ16の検出結果に基づいて、図6および図7に示すように、搬送ロール12上に鋼材11がある状態で、制御部19が鋼材用噴射機18に流体Fを噴射させる制御である。情報処理部130は、これらの第1制御および第2制御を実施するために必要な弁22の開度およびそのタイミングを演算する。
【0065】
図3に示すように、制御部19には、入力部140および表示部150が接続されている。
入力部140は、ユーザの操作を受け付ける入力デバイスである。入力部は、例えば、タッチパネル等のポインティングデバイス、ボタン、ダイヤル、タッチセンサ、タッチパッド等を含む。入力部は、例えば、弁22の開閉についての指示を外部から受け付ける等してもよい。
表示部150は、例えば液晶ディスプレイ等によって構成される。表示部150は、例えば、弁22の開閉の実績についての情報などを表示する。
【0066】
次に、圧延装置10の運転方法について、図9に示すシーケンスチャートを用いて説明する。
なお圧延装置10は、複数の鋼材11を間欠的に圧延する。以下では、搬送ロール12上に鋼材11がない初期状態から、搬送ロール12が第1の鋼材11を搬送して加圧ロール13が第1の鋼材11を圧延した後、搬送ロール12が第2の鋼材11を搬送するまでの運転方法について説明する。
【0067】
(センサ16による到達検出)
搬送ロール12が搬送する第1の鋼材11のトップ部(下流側X1の端部)がセンサ16の検出位置に到達したとき、センサ16は第1の鋼材11が搬送ロール12上に存在することを検出する。センサ16は、第1の鋼材11が検出位置に到達したことを通知する信号を制御部19に送信する。
【0068】
(制御部19による第2制御の開始タイミング演算)
制御部19は、第1の鋼材11が検出位置に到達した信号をセンサ16から受信したとき、鋼材用噴射機18から流体Fを噴射し始めるタイミングを演算する。言い換えると、制御部19は、第2制御を実施し始めるタイミングを演算する。なお本実施形態では、制御部19は、第2制御において、第3噴射機18aおよび第4噴射機18bから鋼材11に流体Fを同時に噴射させる。
【0069】
前記タイミングは、例えば、センサ16の検出位置から鋼材用噴射機18の噴射位置までの距離と、第1の鋼材11の搬送速度と、に基づいて演算される。前記距離は、例えば、制御部19の記憶部120に予め記憶しておいたり、入力部から入力したりしてもよい。前記搬送速度は、例えば、制御部19が搬送ロール12の駆動装置から取得したり、図示しない速度センサを設けた上で、制御部19が速度センサから取得したりしてもよい。なお制御部19が、搬送ロール12の駆動装置を制御する場合、制御部19が駆動装置を制御するための情報を搬送速度として利用してもよい。
【0070】
制御部19は、演算結果に基づいて鋼材用噴射機18に噴射開始の信号を送信する。本実施形態では、鋼材用噴射機18の各弁22に、弁22を開く信号を送信する。なお制御部19は、タイミングの演算にあわせて弁22の開度を演算し、この開度の情報も弁22に送信してもよい。ただし、弁22の開度については演算せず、開状態と閉状態とのみに切り替える制御を実施することも可能である。
【0071】
(鋼材用噴射機18からの噴射の開始)
鋼材用噴射機18(第3噴射機18aおよび第4噴射機18b)は、制御部19からの噴射開始の信号を受信したとき、流体Fを噴射し始める。このとき鋼材用噴射機18の弁22が開くことで、図6および図7に示すように、流体Fが鋼材用噴射機18から噴射される。
なお前述したように、第3噴射機18aおよび第4噴射機18bからは流体Fが同時に噴射される。ここでの同時には、噴射開始から噴射終了までが完全に一致する場合だけでなく、噴射する時間帯の一部が重なる場合も含まれる。すなわち、噴射開始や噴射終了の時期がずれていても、一時的に並行に噴射されている場合も、同時に噴射されていることに含まれる。
【0072】
鋼材用噴射機18から噴射された流体Fは、第1の鋼材11に吹き付けられる。その結果、第1の鋼材11に付着していた異物等は鋼材11から除去される。その後、第1の鋼材11は加圧ロール13によって加圧され、前記捲取機30によって捲き取られる。
【0073】
(センサ16による通過検出)
搬送ロール12が搬送する第1の鋼材11のトップ部(下流側X1の端部)がセンサ16の検出位置に到達して以降、第1の鋼材11のボトム部(上流側X2の端部)がセンサ16の検出位置を通過するまで、センサ16は第1の鋼材11の存在を検出し続ける。第1の鋼材11のボトム部がセンサ16の検出位置を通過したとき、センサ16は第1の鋼材11が存在しないことを検出する。そこでセンサ16は、第1の鋼材11が検出位置を通過したことを通知する信号を制御部19に送信する。
【0074】
(制御部19による第2制御の終了タイミング演算)
制御部19は、第1の鋼材11を検出位置が通過した信号をセンサ16から受信したとき、鋼材用噴射機18から流体Fを噴射し終えるタイミングを演算する。言い換えると、制御部19は、第2制御を終了するタイミングを演算する。このタイミングは、噴射の開始タイミングと同様に、例えば、センサ16の検出位置から鋼材用噴射機18の噴射位置までの距離と、第1の鋼材11の搬送速度と、に基づいて演算される。
制御部19は、演算結果に基づいて鋼材用噴射機18に、噴射終了の信号を送信する。本実施形態では、鋼材用噴射機18の各弁22に、弁22を閉じる信号を送信する。
【0075】
(鋼材用噴射機18からの噴射の停止)
鋼材用噴射機18(第3噴射機18aおよび第4噴射機18b)は、制御部19からの噴射停止の信号を受信したとき、流体Fの噴射を停止する。このとき鋼材用噴射機18の弁22が閉じることで、鋼材用噴射機18からの流体Fの噴射が停止される。
【0076】
(制御部19による第1制御のタイミング演算)
ここで本実施形態では、圧延装置10では、搬送ロール12が第1の鋼材11を搬送した後、第2の鋼材11を搬送する前に、搬送ロール12およびサイドガイド15のうちの少なくとも一方に向けて流体Fを噴射する。すなわち、制御部19は、第1制御において、搬送ロール12が第1の鋼材11を搬送した後、第2の鋼材11を搬送する前に、機器用噴射機17に流体Fを噴射させる。
【0077】
図9に示す例では、制御部19は、前述した第2制御の終了タイミングの演算とあわせて、第1制御の開始タイミング、終了タイミングについての演算も実施する。ここで制御部19は、第1制御において、第1噴射機17aから第2サイドガイド15bに向けて流体Fを噴射させ(図4)、第2噴射機17bから第1サイドガイド15aに向けて流体Fを噴射させる(図5)。
【0078】
本実施形態では、制御部19は、第1制御において、第1噴射機17aの噴射タイミングと第2噴射機17bの噴射タイミングとを異ならせる。ここでの噴射タイミングを異ならせることには、噴射が全く別の時間帯に実施されていることを意味する。言い換えると、第1噴射機17aの噴射タイミングは、第2噴射機17bの噴射タイミングに対して一時的にも重複していない。なお図示の例では、第1噴射機17aが第2噴射機17bよりも先に噴射をしている。
【0079】
制御部19は、第1の鋼材11を検出位置が通過した信号をセンサ16から受信したとき、第1噴射機17aから流体Fを噴射し始めるタイミングおよび噴射し終えるタイミングを演算する。このとき制御部19は、第2噴射機17bから流体Fを噴射し始めるタイミングおよび噴射し終えるタイミングも演算する。
【0080】
なお制御部19(記憶部120)には、予め以下の各情報が記憶されていてもよい。
(1)鋼材用噴射機18が噴射し終えてから第1噴射機17aが噴射し始めるまでの時間
(2)第1噴射機17aが1回の噴射の際に噴射する時間
(3)第1噴射機17aが噴射し終えてから第2噴射機17bが噴射し始めるまでの時間
(4)第2噴射機17bが1回の噴射の際に噴射する時間
これらの各情報が記憶されている場合、制御部19が、第2制御を終了するタイミングを演算した後、その演算結果を用いて、第1噴射機17aおよび第2噴射機17bの噴射の開始および終了を演算することができる。なお上記各情報は、入力部140から入力されてもよい。
【0081】
(機器用噴射機17による噴射の開始、停止)
制御部19は、演算結果に基づいて機器用噴射機17(第1噴射機17aおよび第2噴射機17b)に、噴射開始、噴射終了の各信号を送信する。
機器用噴射機17は、制御部19からの噴射に関する各信号を受信したとき、流体Fの噴射を停止する。このとき機器用噴射機17の弁22を開閉することで、機器用噴射機17からの流体Fの噴射が開始したり停止したりする。
【0082】
なお、このように機器用噴射機17による噴射が実施されているときであっても、第2の鋼材11の一部が搬送ロール12によって搬送されていてもよい。すなわち、機器用噴射機17の噴射位置に第2の鋼材11が到達していなければよい。例えば、第2の鋼材11のトップ部が、噴射位置よりも上流側X2に位置する搬送ロール12によって搬送されていてもよい。
【0083】
以上により、図9のシーケンスチャートに示す圧延装置10の運転方法の説明(第1の鋼材11の搬送に伴う圧延装置10の運転方法の説明)が終了となる。
【0084】
ここで本願発明者は、飛込み疵の発生位置を整理した。その結果、鋼材11の裏面では、鋼材11のトップ部の両エッジ(鋼材11の下流側X1の端部における両側縁)において飛込み疵の発生率が高くなっていた。本願発明者は、異物の発生位置の詳細な分析の結果、鋼材11の裏面における飛込み疵が以下の過程により発生していることを推定した。すなわち、鋼材11における下流側X1の端部の形状は不安定であり、例えば、鋼材11が加圧ロール13によって加圧されるとき等に鋼材11がサイドガイド15に接触し、異物等が発生する。異物等が、次の鋼材11に付着して加圧ロール13に捲き込まれることで、鋼材11の裏面における飛込み疵が発生していると考えられる。
【0085】
そこで、本実施形態に係る圧延装置10では、制御部19が、センサ16の検出結果に基づいて、搬送ロール12上に鋼材11がない状態で、機器用噴射機17から流体Fを噴射させる。これにより、搬送ロール12上に鋼材11がない状態で、搬送ロール12およびサイドガイド15のうちの少なくとも1つに向けて流体Fを噴射することができる。結果として、搬送ロール12やサイドガイド15に異物等が付着していても、異物等を流体Fにより除去することができる。これにより、異物等が、次の鋼材11に付着して加圧ロール13に捲き込まれることを抑制することができる。よって、飛込み疵の発生を抑えて鋼材11の歩留まりを向上させることができる。なお、熱間圧延においてこのように飛込み疵の発生を抑えることにより、熱間圧延に続く冷間圧延において、例えば穴欠陥などの発生も抑制することができる。結果として、熱薄鋼板、冷薄鋼板、めっき鋼板に一貫して歩留まりの向上を図ることが可能である。
【0086】
また機器用噴射機17が、搬送ロール12上に鋼材11がない状態で流体Fを噴射する。したがって、噴射される流体Fを起因として、例えば、鋼材11の搬送に影響が生じたり、鋼材11が過度に冷却されたりすること等を防止することができる。
【0087】
搬送ロール12が第1の鋼材11を搬送した後、第2の鋼材11を搬送する前に、機器用噴射機17が流体Fを噴射する。したがって、第2の鋼材11において飛込み疵が発生することを効果的に抑制することができる。
機器用噴射機17が、サイドガイド15に向けて流体Fを噴射する。したがって、サイドガイド15に付着した異物等(エプロン20に堆積した異物等)を効果的に除去することができる。
【0088】
第1噴射機17aが第1サイドガイド15aに設けられ、第2噴射機17bが第2サイドガイド15bに設けられている。したがって、機器用噴射機17の設置が他の機器の邪魔になることを抑制することができる。
第1噴射機17aが第2サイドガイド15bに向けて流体Fを噴射させ、第2噴射機17bが第1サイドガイド15aに向けて流体Fを噴射させる。すなわち、各噴射機17a、17b、18a、18bが、その噴射機が設けられたサイドガイド15とは反対側のサイドガイド15に向けて流体Fを噴射する。これにより、液体をサイドガイド15の所望の位置に精度よく噴射させることができる。よって、サイドガイド15に付着した異物等を一層効果的に除去することができる。
【0089】
第1噴射機17aの噴射タイミングと第2噴射機17bの噴射タイミングとが異なる。したがって、第1噴射機17aから噴射する流体Fと、第2噴射機17bから噴射する流体Fと、が干渉したり混合したりすることを抑制することができる。これにより、液体をサイドガイド15の所望の位置に一層精度よく噴射させることができる。
【0090】
鋼材用噴射機18が、搬送ロール12上の鋼材11に向けて流体Fを噴射する。したがって、仮に異物等が鋼材11に付着したとしても、異物等を鋼材11から除去することができる。これにより、飛込み疵の発生を一層抑えることができる。
【0091】
第3噴射機18aが鋼材11の表面に向けて流体Fを噴射させ、第4噴射機18bが鋼材11の裏面に向けて流体Fを噴射させる。したがって、鋼材11の表面および裏面のいずれの面に付着した異物等であっても、鋼材11から除去することができる。
なお本願発明者は、飛込み疵の発生位置を整理した結果、鋼材11の表面では、鋼材11のトップ部において飛込み疵の発生率が高くなっていた。そのため、第3噴射機18aが、鋼材11のトップ部に向けて流体Fを、加圧ロール13の直前で噴射することが好ましい。この種の異物等は、鋼材11が搬送されるときに、圧延装置10を構成する各種機器から落下することにより、鋼材11の表面に付着すると考えられる。
【0092】
第3噴射機18aおよび第4噴射機18bが、下流側X1から上流側X2に向けて流体Fを噴射させる。したがて、例えば、流体Fが鋼材11とともに加圧ロール13に供給されることを抑制することができる。
第3噴射機18aが、第4噴射機18bよりも上流側X2に向けて流体Fを噴射させる。したがって、鋼材11の表面に付着する異物等を鋼材11から効果的に除去することができる。
【0093】
加圧ロール13が、搬送ロール12と捲取機30との間に配置されたピンチロールである。捲取機30が鋼材11を捲き取るとき、鋼材11がサイドガイド15と接触し易いため、異物等が発生し易い。そのため、機器用噴射機17による作用効果が顕著に奏功される。
鋼材11が鋼板である。鋼板の両側縁(板幅方向の側面)がサイドガイド15に接触すると、異物等が発生し易い。そのため、機器用噴射機17による作用効果が顕著に奏功される。
【0094】
なお前記圧延装置10において、第1噴射機17aおよび第2噴射機17bの効果の検証試験を実施した。この検証試験では、第1噴射機17aおよび第2噴射機17bから噴射する流体Fを水とした。両噴射機17a、17bから噴射される水の水圧を0.9MPaとした。両噴射機から噴射される水の噴射量を200L/minとした。ノズルの噴射角を60°とした。搬送ロール12に対する迎え角を15°とした。第1噴射機17aおよび第2噴射機17bを、鋼材11が加圧ロール13を抜けてから3秒後に、タイミングを異ならせて噴射させた。
この結果、第1噴射機17aおよび第2噴射機17bを用いない場合に比べて、飛込み疵全体の発生率を30%改善した。特に鋼材11の裏面におけるエッジ部の飛込み疵については75%改善された。
【0095】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0096】
鋼材11は鋼板でなくてもよい。
加圧ロール13がピンチロールでなくてもよく、加圧ロール13の下流側X1に捲取機30が無くてもよい。
第3噴射機18aが、第4噴射機18bよりも上流側X2に向けて流体Fを噴射させなくてもよい。第3噴射機18aおよび第4噴射機18bが、下流側X1から上流側X2に向けて流体Fを噴射させなくてもよい。第3噴射機18aおよび第4噴射機18bから鋼材11に流体Fが同時に噴射しなくてもよい。第3噴射機18aおよび第4噴射機18bの一方がなくてもよく、第3噴射機18aおよび第4噴射機18bの両方がなくてもよい。
第1噴射機17aと第2噴射機17bとが同時に噴射してもよい。第1噴射機17aおよび第2噴射機17bがサイドガイド15に設けられていなくてもよい。第1噴射機17aおよび第2噴射機17bが、搬送ロール12のみに向けて流体Fを噴射してもよい。第1噴射機17aおよび第2噴射機17bの一方がなくてもよい。
プロテクタ14や第1エプロン20a、第2エプロン20bがなくてもよい。
【0097】
上述した制御部19は、前述したようにコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、各機能ブロックの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録する。この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、CPUが実行することで実現してもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROMなどの可搬媒体のことをいう。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクなどの記憶装置を含む。
【0098】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、短時間の間、動的にプログラムを保持するものを含んでいてもよい。短時間の間、動的にプログラムを保持するものは、例えば、インターネットなどのネットワークや電話回線などの通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線である。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」には、サーバーやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。また、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、上記プログラムは、プログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。プログラマブルロジックデバイスは、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)である。
【0099】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0100】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0101】
10 圧延装置
11 鋼材
12 搬送ロール
13 加圧ロール
15 サイドガイド
15a 第1サイドガイド
15b 第2サイドガイド
16 センサ
17 機器用噴射機
17a 第1噴射機
17b 第2噴射機
18 鋼材用噴射機
18a 第3噴射機
18b 第4噴射機
19 制御部
30 捲取機
F 流体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9