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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】銅又は銅合金製ステーブ
(51)【国際特許分類】
   C21B 7/10 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
C21B7/10 301
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020033643
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021134409
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120499
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 淳
(72)【発明者】
【氏名】志賀 敦
(72)【発明者】
【氏名】宮岡 伸治
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-085808(JP,A)
【文献】特開2017-066482(JP,A)
【文献】特開2007-308747(JP,A)
【文献】特表2013-524013(JP,A)
【文献】特開2002-030315(JP,A)
【文献】特開平10-314921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ方向に沿って延在する冷却水路を内部に備える銅又は銅合金製のステーブ本体と、
前記ステーブ本体の給排水口に接合され、高炉鉄皮の開口部を貫通して延在する給排水管と、
前記給排水管を包囲するように、一端が前記ステーブ本体に、他端が前記給排水管に接合された保護管と、
側板及びシールプレートを備えるコーミング構造であって、前記保護管を包囲するように、前記側板の一端が前記高炉鉄皮に接合され、前記シールプレートが前記側板の他端及び前記保護管に接合された、少なくとも1つのコーミング構造とを備える銅又は銅合金製ステーブにおいて、
前記給排水口が、前記ステーブ本体の上下端部近傍に、前記ステーブ本体の幅方向に沿って一列に配置され、前記給排水管の外径が60mm以下であり、前記保護管の外径が75mm以下であり、
炉内ガス温度がT high (℃)からT low (℃)まで変化する際の相当塑性歪増分を繰り返し前記シールプレート及び前記給排水管にそれぞれ与え、
前記シールプレートが破断したときの繰り返し回数:N p1 (回);
前記給排水管が破断したときの繰り返し回数:N p2 (回);並びに、
炉内ガス温度がT high (℃)からT low (℃)まで変化する熱負荷変動が炉内で生じる回数:n(回/年)とした場合に、
前記給排水管の破断寿命N p2 /n(年)が、前記シールプレートの破断寿命N p1 /n(年)に比べて長くなるように前記シールプレートの板厚を設定した、ことを特徴とする、銅又は銅合金製ステーブ。
【請求項2】
前記給排水管の外径が55mm以下であり、前記保護管の外径が65mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の銅又は銅合金製ステーブ。
【請求項3】
前記シールプレートの板厚が5mm未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の銅又は銅合金製ステーブ。
【請求項4】
前記給排水管及び前記保護管を複数備え、当該複数の保護管の全てが、前記コーミング構造により包囲されたことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の銅又は銅合金製ステーブ。
【請求項5】
前記ステーブ本体が、8個以上の固定部材により前記高炉鉄皮に固定されたことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の銅又は銅合金製ステーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅又は銅合金製のステーブに関する。より具体的には、本発明は、シンプルな配置の冷却水路を有するコーミング構造式ステーブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高炉においては、高炉内の高温ガス等から高炉鉄皮を保護するために、ステーブクーラー(以下、単にステーブと称する)が多く用いられている。ステーブには内部に冷媒(例えば、水)を流すための冷却水路が形成されており、その冷媒で冷却されたステーブにより、炉内の高温ガス等から高炉鉄皮が保護される。
【0003】
ステーブの内部に冷媒を流すための給排水管は高炉鉄皮の開口部を貫通しており、高炉鉄皮と給排水管との間には隙間が存在する。炉内ガスは非常に高温(例えば約1200℃)であるため、炉内ガスがこの隙間を通じて炉外に放出されないように、当該隙間を塞ぐ炉内ガス用シール部材が高炉鉄皮の炉外側面に設けられる。当該部材には、炉内ガスのシール機能に加え、高温ガスに曝されることで起こり得るステーブの熱変形を吸収する機能が求められる。
【0004】
炉内ガスのシール及びステーブの熱変形吸収のための部材として、図1に示されるような伸縮管12(「コンペンセーター」とも称される)を備えた、伸縮管式ステーブ1が知られている(例えば特許文献1及び2)。伸縮管12は、図1に示されるように、高炉鉄皮5の炉外側面に接合され、その蛇腹構造によりステーブ本体2の熱変形に伴う給排水管4の変位を吸収することが可能である。また、多くの場合、ステーブ本体2の熱変形を抑制するために、図1に示されるような固定部材14(例えばボルト)を用いて高炉鉄皮5にステーブ本体2を固定する方法が採用される。
【0005】
炉内ガスのシール及びステーブの熱変形吸収のための別の部材として、図2に示されるようなコーミング構造10(「コーミングボックス」とも称される)を備えた、コーミング構造式ステーブ11が知られている(例えば特許文献3)。コーミング構造10は、側板8及びシールプレート9を備え、高炉鉄皮5の炉外側面に接合される。そして、当該コーミング構造10により、ステーブ本体2の熱変形に伴う給排水管4の変位を吸収することが可能となる。また、コーミング構造式ステーブ11では、通常、給排水管4を包囲するように保護管7が設置され、その上にコーミング構造10が設置される。また、コーミング構造式ステーブ11においても、ステーブ本体2の熱変形を抑制するために、固定部材14を用いて高炉鉄皮5にステーブ本体2を固定する方法が採用される場合がある。
【0006】
上記に関連して、コーミング構造を採用せずにラッパ状のシール部材を用いたステーブ(特許文献4)や、保護管を二重構造にしたステーブ(特許文献5)なども開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-173095号公報
【文献】特開2016-108607号公報
【文献】特開2007-308747号公報
【文献】特開2002-60818号公報
【文献】特開2017-66482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば図1に示されるような伸縮管式ステーブ1は、複数の固定部材14でステーブ本体2の熱変形を拘束しきれなくなると、給排水管4に負荷がかかり、結果として伸縮管12の破損を招き、炉内ガスが漏洩するおそれや、給排水管4自体が破損し冷却機能を失うおそれがある。特に、銅又は銅合金製であってステーブ本体2の長さ寸法が大きいものは熱変形の影響が顕著であり、熱負荷がかかり易く、結果的に伸縮管12が破損するおそれが増す。伸縮管12の損傷が進めば給排水管4まで破損してステーブ本体2の冷却が不可能になり、ステーブ本体2の溶損、摩耗が進展して高炉鉄皮5が高温加熱されると、貫通亀裂を生じて操業そのものが継続できなくなる場合も生じ得る。
【0009】
これに対し、例えば図2に示すコーミング構造式ステーブ11では、給排水管4と保護管7との二重管構造を採用しており、保護管7の一端がステーブ本体2に接合されるため、固定部材14でステーブ本体2の熱変形を拘束しきれなくなった場合でも、給排水管4と保護管7でステーブ本体2を支えることができ、保護管7の破損や給排水管4の破損の可能性を大きく下げることができる。さらに、炉外にある補修作業が容易なコーミング構造10のシールプレート9を、炉内にある給排水管4及び保護管7に対して優先的に破損するようにすることで、給排水管4及び保護管7の破損を防止することができる。よって、コーミング構造式ステーブ11は、伸縮管式ステーブ1に比べて、給排水管4の破損防止の観点で優れる機構である。
【0010】
他方で、伸縮管式ステーブ1では、図1から理解されるように、高炉鉄皮5の開口部6は、給排水管4のみが貫通可能であればよい。よって、伸縮管式ステーブ1の場合、開口部6のサイズを比較的小さくでき、例えば特許文献1及び2に記載のステーブのように、高炉鉄皮5の強度を維持したまま、当該給排水管4と接合するステーブ本体2の給排水口13を、ステーブ本体2の上下端部近傍に、幅方向に一列に配置することが可能となる。高炉鉄皮5の強度は、高炉鉄皮5の開口部6の大きさ及び配置に大きく影響を受けるものであり、したがって、その大きさ及び配置は高炉鉄皮5の強度を考慮して決定しなければならない。
【0011】
これに対し、コーミング構造式ステーブ11では、上述したように二重管構造を有するため、伸縮管式ステーブ1と同一の外径の給排水管4を用いようとすると、保護管7を通すために伸縮管式ステーブ1に比べて高炉鉄皮5の開口部6を大きくせざるを得ない。そのため、高炉鉄皮5の強度確保の観点から、伸縮管式ステーブ1を用いた場合のように、高炉鉄皮5の開口部6を一列に配置することが困難となり、したがって、ステーブ本体2の給排水口13も一列に配置することが困難となる。隣接する開口部6の距離を大きくとることで高炉鉄皮5の強度は確保できるが、それに応じて隣接するステーブ本体2の給排水口13の距離も大きくなり、冷却水路3が複雑な配置になったり、ステーブ本体2を均一に冷却できなくなったりするおそれがある。よって、コーミング構造式ステーブ11の場合、高炉鉄皮5の強度を確保しつつ、十分なステーブ本体2の冷却能力を有するように、給排水口13をステーブ本体2の幅方向に一列に設けることは難しく、コーミング構造式ステーブ11ではシンプルな配置の冷却水路3を構築することは困難であるという問題があった。
【0012】
本発明は、このような実情に鑑み、給排水管の保護に好適なコーミング構造を用い、十分な鉄皮強度を確保しつつ、十分なステーブの冷却能力を有するように、ステーブ本体にシンプルな配置の冷却水路を構築することが可能である銅又は銅合金製ステーブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の主旨は以下のとおりである。
(1)
高さ方向に沿って延在する冷却水路を内部に備える銅又は銅合金製のステーブ本体と、
前記ステーブ本体の給排水口に接合され、高炉鉄皮の開口部を貫通して延在する給排水管と、
前記給排水管を包囲するように、一端が前記ステーブ本体に、他端が前記給排水管に接合された保護管と、
側板及びシールプレートを備えるコーミング構造であって、前記保護管を包囲するように、前記側板の一端が前記高炉鉄皮に接合され、前記シールプレートが前記側板の他端及び前記保護管に接合された、少なくとも1つのコーミング構造とを備える銅又は銅合金製ステーブにおいて、
前記給排水口が、前記ステーブ本体の上下端部近傍に、前記ステーブ本体の幅方向に沿って一列に配置され、前記給排水管の外径が60mm以下であり、前記保護管の外径が75mm以下であり、
炉内ガス温度がT high (℃)からT low (℃)まで変化する際の相当塑性歪増分を繰り返し前記シールプレート及び前記給排水管にそれぞれ与え、
前記シールプレートが破断したときの繰り返し回数:N p1 (回);
前記給排水管が破断したときの繰り返し回数:N p2 (回);並びに、
炉内ガス温度がT high (℃)からT low (℃)まで変化する熱負荷変動が炉内で生じる回数:n(回/年)とした場合に、
前記給排水管の破断寿命N p2 /n(年)が、前記シールプレートの破断寿命N p1 /n(年)に比べて長くなるように前記シールプレートの板厚を設定した、ことを特徴とする、銅又は銅合金製ステーブ。
(2)
前記給排水管の外径が55mm以下であり、前記保護管の外径が65mm以下であることを特徴とする、(1)に記載の銅又は銅合金製ステーブ。

前記シールプレートの板厚が5mm未満であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の銅又は銅合金製ステーブ。

前記給排水管及び前記保護管を複数備え、当該複数の保護管の全てが、前記コーミング構造により包囲されたことを特徴とする、(1)~()のいずれか1つに記載の銅又は銅合金製ステーブ。

前記ステーブ本体が、8個以上の固定部材により前記高炉鉄皮に固定されたことを特徴とする、(1)~()のいずれか1つに記載の銅又は銅合金製ステーブ。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、給排水管の保護の点で有利なコーミング構造式ステーブにおいて、ステーブ本体の上下端部近傍に、幅方向に一列に給排水口を設けることができる。よって、十分に給排水管を保護することと、十分な鉄皮強度の確保しつつ、十分なステーブの冷却能力を有するようにステーブ本体内部にシンプルな配置の冷却水路を構築することとが同時に達成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来の伸縮管式ステーブの概略的な断面図を示す。
図2】本発明に係る銅又は銅合金製ステーブの概略的な断面図を示す。
図3】本発明に係る銅又は銅合金製ステーブの概略的な平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る幾つかの実施形態について図を参照しながら説明する。しかしながら、これらの説明は、本発明の好ましい実施形態の単なる例示を意図するものであって、本発明をこのような特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0017】
[銅又は銅合金製ステーブ]
本発明に係る銅又は銅合金製ステーブは、図2に示されるように、コーミング構造式ステーブ11であり、具体的には、銅又は銅合金製のステーブ本体2と、給排水管4と、保護管7と、側板8及びシールプレート9を備える少なくとも1つのコーミング構造10とを備える。コーミング構造10を備えるコーミング構造式ステーブ11は、給排水管4及び保護管7からなる二重管構造を有し、当該保護管7の一端がステーブ本体2に接合されるため、ステーブ本体2との接合部の強度が向上して、引張や曲げに対する強度が向上し、結果として給排水管4の破損を好適に防止することができる。よって、二重管構造を有する本発明に係る銅又は銅合金製ステーブは、図1に示されるような伸縮管式ステーブ1に比べて、給排水管4の破損をより高レベルで防止することが可能となる。
【0018】
また、図3に例示されるように、本発明に係るコーミング構造式ステーブ11において、ステーブ本体2の給排水口13は、ステーブ本体2の上下端部近傍に、ステーブ本体2の幅方向に沿って一列に配置される。これにより、シンプルな冷却水路3をステーブ本体2の内部に構築でき、ステーブ本体2の冷却を均一に行うことができる。従来、このような配置で給排水口13を構成することは、二重管構造を採用しない伸縮管式ステーブ1では可能であったものの、二重管構造を採用するコーミング構造式ステーブ11では困難であった。その理由は、ステーブ本体2の冷却能力を担保することと、高炉鉄皮5の強度を確保することとに関係している。
【0019】
ステーブ本体2の内部の冷却水路3は、ステーブ本体2を十分かつ均一に冷却できるように、ステーブ本体2の高さ方向に沿って、一般的に所定の間隔(例えば200mm程度)で配置される。この間隔が大きすぎると冷却ムラが発生し、ステーブ本体2の冷却性能に影響を及ぼし、鉄皮保護の観点から好ましいものではない。よって、ステーブ本体2の冷却を十分かつ均一にするためには、冷却水路3を所定の間隔で、ステーブ本体2の内部に構築することが重要である。また、ステーブ本体2の給排水口13は、ステーブ本体2の内部の冷却水路3に流れる冷媒の流入口及び排出口であり、当該給排水口13の幅方向(図3の左右方向)の位置は、図3に示されるように、シンプルな冷却水路3を構築する観点から、ステーブ本体2の高さ方向に沿って延在する冷却水路3の幅方向の位置と同一であるとよい。そうすると、冷却水路3と同様に、給排水口13を所定の間隔でステーブ本体2上に設けることが要求される。一方、図1及び図2に示されるように、冷却水路3は給排水口13で給排水管4と流体連通して接続され、当該給排水管4は、高炉鉄皮5の開口部6を貫通して外部の冷媒供給源(図示せず)に接続される。したがって、高炉鉄皮5の開口部6の配置は、ステーブ本体2の給排水口13の配置と関連しており、より具体的には、開口部6の高さ方向及び幅方向の位置は、給排水口13の高さ方向及び幅方向の位置と略同一である。
【0020】
高炉鉄皮5の開口部6のサイズ(典型的には直径)は、伸縮管式ステーブ1においては給排水管4、コーミング構造式ステーブ11においては給排水管4及び保護管7(以下、併せて「配管」ともいう)が通るように決定される。すなわち、伸縮管式ステーブ1の場合は、開口部6に給排水管4のみを通せばよく、また、伸縮管12を設置できるスペースがあればよいため、給排水口13を図3のように一列に配置することが比較的容易であった。一方で、コーミング構造式ステーブ11では、給排水管4だけでなく保護管7も高炉鉄皮5の開口部6を貫通させる必要があるため、冷却能力を担保する観点から伸縮管式ステーブ1の場合と同じ外径の給排水管4を使用した場合、伸縮管式ステーブ1に比べて高炉鉄皮5の開口部6のサイズを大きくせざるを得ない。しかし、上述のように、開口部6が一列に配置するような場合、開口部6のサイズは、高炉鉄皮5の強度を確保する観点から、容易に大きくできるものではない。よって、二重管構造を採用するコーミング構造式ステーブ11では、高炉鉄皮5の強度を確保する観点から、ステーブ本体2の冷却能力を担保しつつ、給排水口13を幅方向に一列に配置することができず、シンプルな冷却水路3を構築することができなかった。よって、例えば、隣り合う冷却水路3に対応する給排水口13をステーブ本体2の高さ方向にずらして配置したり、ステーブ本体2内部の冷却水路3を湾曲させたりするような対応が必要であった。このような配置にすると、ステーブ本体2の、特にステーブ本体2の上下端部近傍の冷却が十分に行えないおそれがあり、また、冷却水路3の配置が複雑になり好ましいものではない。以上のように、従来においては、二重管構造及びコーミング構造10を用いることと、給排水口13をステーブ本体2の幅方向に一列に配置すること(開口部6を高炉鉄皮5上に幅方向に一列に配置すること)とを両立することはできなかった。さらに、高炉鉄皮5の開口部6のサイズが大きくなると、例えば隣接する2つの保護管7の外周にコーミング構造10を形成する際に、溶接領域を確保できなかったり、コーミング構造10同士が干渉したりする場合があった。
【0021】
そこで、本発明者らは、コーミング構造式ステーブ11の様々な構成を検討した結果、給排水管4の外径及び保護管7の外径を、従来までに検討されてこなかったより小さい外径にすることで、コーミング構造式ステーブ11において、十分な高炉鉄皮5の強度を確保しつつ、十分なステーブ本体2の冷却能力を有するように、ステーブ本体2の給排水口13をステーブ本体2の上下端部近傍に幅方向に一列に配置することができることを見出した。より詳細には、給排水管4の外径を60mm以下(例えば呼び径40A)、保護管7の外径を75mm以下(例えば呼び径50A)にすることにより、二重管構造及びコーミング構造10を用い、給排水口13を幅方向に一列に配置することができることを見出した。このように配管の外径を制御することで、従来の伸縮管式ステーブ1の場合と同等サイズの高炉鉄皮5の開口部6のサイズのまま、コーミング構造式ステーブ11を用いることができるため、本発明に係る銅又は銅合金製ステーブは、炉内配管の保護に優れ、さらに、上下端部近傍にステーブ本体の幅方向に一列に給排水口を設けることができ、十分な鉄皮強度を確保しつつ、十分なステーブの冷却能力を有するように、ステーブ本体内部に極めてシンプルな配置の冷却水路を構築することが可能となる。
【0022】
(ステーブ本体)
ステーブ本体2は、内部に冷媒(例えば水)を流すための冷却水路3を備える。当該冷却水路3は、ステーブ本体2の高さ方向に沿って延在しており、冷却水路3の出入り口、すなわち給排水管4と接合する位置には、給排水口13が設けられる。高さ方向に沿って延在する冷却水路3の外径は、ステーブ本体2の冷却能力を担保する観点から、50mm以上であることが好ましく、55mm以上であるとより好ましく、例えば呼び径50Aであるとよい。なお、図2に上下方向に図示される冷却水路3の径は、左右方向に図示される給排水管4(及び冷却水路3)の径と異なっていてよい。
【0023】
本発明において、ステーブ本体2は、熱伝導率等の観点から銅又は銅合金製である。また、ステーブ本体2の長さ寸法は、特に限定されないが、例えば1.0m超3.0m未満である。ステーブ本体2の長さは、好ましくは2.5m超である。銅又は銅合金製のステーブ本体2の長さ寸法が大きいと、高炉操業時の熱変形がより大きくなり配管のずれが生じやすくなるため、ガスシール構造として、伸縮管12を用いる場合に比べてコーミング構造10を用いることが有利になる。ステーブ本体2の幅寸法(図3の左右方向の寸法)は、特に限定されないが、例えば、500~1000mmであってもよい。ステーブ本体2の板厚も特に限定されず、高炉のサイズや形状及び所望の冷却能力によって適宜決定すればよく、例えば、100~300mmであればよい。
【0024】
ステーブ本体2は、高炉鉄皮5の開口部6を貫通して延在する給排水管4を接合するための給排水口13を備える。すなわち、ステーブ本体2の給排水口13のそれぞれには、1つの給排水管4が接合される。給排水口13は典型的に円形状であり、その直径は、給排水管4の外径によって決まる。本発明において、給排水管4の外径は、60mm以下であるため、典型的に、ステーブ本体2の給排水口13の孔径も60mm以下である。給排水管4は先端にねじ山が切られていてもよく、ステーブ本体2に差し込まれることができる。給排水口13は、ステーブ本体2の内部の冷却水路3に流れる冷媒の流入口及び排出口であり、当該給排水口13の幅方向(図3の左右方向)の位置は、図3に示されるように、シンプルな冷却水路3を構築する観点から、ステーブ本体2の高さ方向に沿って延在する冷却水路3の幅方向の位置と典型的に同一である。よって、この場合、給排水口13の中心間距離(給排水口13間のピッチ)は、ステーブ本体2を均一に冷却する観点から、300mm以下であると好ましく、250mm以下であるとより好ましく、例えば200mm程度であるとよい。
【0025】
本発明において、給排水口13は、ステーブ本体2の上下端部近傍に、ステーブ本体2の幅方向に沿って一列に配置される。ここで、「上下端部近傍」とは、ステーブ本体2の長さ寸法に対する、ステーブ本体2上端部又は下端部と給排水口13の中心軸との間の長さの比が0.05以下であることを意味し、典型的に、ステーブ本体2の上端部又は下端部から給排水口13の中心までの距離が100mm以下であることをいう。給排水口13がステーブ本体2の上下端部近傍に幅方向に沿って一列に配置されることで、全ての冷却水路3をステーブ本体2の内部で上下端部近傍まで延在させることが可能となり、極めてシンプルな水路配置を構築でき、ステーブ本体2全体をより均一に冷却することができる。
【0026】
(給排水管)
給排水管4は、ステーブ本体2の給排水口13に接合され、高炉鉄皮5の開口部6を貫通して延在している。本発明において、典型的には、複数の給排水管4のそれぞれが、複数の給排水口13のそれぞれに1本ずつ接合され、すなわち、給排水管4の数と給排水口13の数は同一である。給排水管4は、外部の冷媒供給源(図示せず)から供給される冷媒を、給排水口13を通じてステーブ本体2の内部の冷却水路3に送る役割を有する。冷媒は典型的に水であるが、他の冷媒を用いてもよい。また、給排水管4は、図2に示されるように、後述する保護管7に包囲されている。
【0027】
本発明において、給排水管4の外径は60mm以下であり、好ましくは55mm以下であり、より好ましくは50mm以下である。例えば、給排水管4として呼び径40Aのものを用いることができる。給排水管4の外径は、開口部6を貫通する位置での外径とする。従来の給排水管4は、ステーブ本体2の冷却能力を担保するために外径が60mm超(例えば、呼び径50A)のものが使用されており、それに伴って保護管7の外径も大きくなり、結果的に高炉鉄皮5の開口部6のサイズも大きくなっていた。しかし、本発明によれば、給排水管4の外径を上記のようにすることで、それを包囲するように設置される保護管7の外径も小さくすることができ、それにより高炉鉄皮5の開口部6のサイズも小さくすることが可能となる。給排水管4の外径を従来のものより小さくすることで、圧損が大きくなりステーブ本体2への冷媒の供給量が低下するが、この点は、給排水管4に冷媒を供給するポンプの出力を増加させるなどして、冷媒の供給量を確保すればよい。なお、給排水口13に接続する位置での給排水管4の外径は、開口部6を貫通する位置での給排水管4の外径と異なっていてもよく、例えば、ステーブ本体2と高炉鉄皮5の炉内側面との間で、ステーブ本体2から高炉鉄皮5の炉内側面に向けて(図1及び図2においては右方向に向けて)縮径(高炉鉄皮5の炉内側面からステーブ本体2に向けて拡径)していてもよい。この場合、給排水管4の内部を流れる冷媒のステーブ本体2との接合部での圧損を低減することができる。
【0028】
1つのステーブ本体2に接合される給排水管4の数は特に限定されないが、例えば図3に示されるように4本程度が好ましい。あるいは、ステーブ本体2の幅寸法に応じて、一定間隔(例えば200mm程度)で配置するように給排水管4の数を決定することもできる。一定間隔で給排水管4を配置することで、ステーブ本体2全体を均一に冷却することが可能となる。給排水管4の材質は、特に限定されないが、腐食防止のためステンレス鋼からなることが好ましい。
【0029】
(保護管)
保護管7は、給排水管4を包囲するように設置され、その一端がステーブ本体2に接合され、他端が給排水管4に接合される。本発明において、典型的には、複数の保護管7のそれぞれが、複数の給排水管4のそれぞれを1本ずつ包囲するように設置され、すなわち、給排水管4の数と保護管7の数は同一である。保護管7は、炉内の高温ガスに給排水管4が直接曝されるのを防止するために機能することができる。したがって、保護管7は、典型的に、炉内においては給排水管4の全てを包囲するように設置されるとよい。ここで、「包囲する」とは、保護管7が、給排水管4の少なくとも一部の外周全体を一定の隙間を有した状態で囲っていることを意味する。なお、「包囲する」という用語は、他の部材間において使用される場合も同様である。また、保護管7は、図2に示されるように、後述するコーミング構造10に包囲されている。保護管7の材質は、特に限定されないが、ステンレス鋼又は高温配管用の炭素鋼からなることが好ましい。また、熱膨張差を低減するために、給排水管4と保護管7の材質が同一であるとより好ましい。
【0030】
本発明において、保護管7の外径は75mm以下であり、好ましくは70mm以下であり、より好ましくは65mm以下である。例えば、保護管7として呼び径50Aのものを用いることができる。保護管7の外径は、開口部6を貫通する位置での外径とする。従来の保護管7は、前述のように給排水管4に外径60mm超(例えば、呼び径50A)のものが使用されていたため、外径が75mm超(例えば、呼び径65A)のものが使用されていた。しかし、本発明によれば、保護管7の外径を上記のようにすることで、それにより高炉鉄皮5の開口部6のサイズも小さくすることが可能となる。なお、ステーブ本体2に接合される位置での保護管7の外径は、開口部6を貫通する位置での外径と異なっていてもよく、例えば、ステーブ本体2と高炉鉄皮5の炉内側面との間で、ステーブ本体2から高炉鉄皮5の炉内側面に向けて縮径(高炉鉄皮5の炉内側面からステーブ本体2に向けて拡径)していてもよい。保護管7がステーブ本体2との接合部で大きくなっていると、保護管7の当該接合部の外周長さが増えステーブ本体2との接合距離が延びるため、長手方向についての強度が増加する。また、当該接合部での保護管7の径が大きくなることで、より大きな断面二次モーメントを得ることができ、曲げ方向への強度が増加する。よって、保護管7を縮径することで、保護管7の強度を上げ給排水管4の破損をより効果的に防止することが可能となる。高炉鉄皮5の内部においては、配管は比較的自由に配置可能であるため、上述したように、開口部6を貫通する位置での配管の外径に関係なく、保護管7及び/又は給排水管4のステーブ本体2との接合部の外径を比較的自由に決定でき、したがって、配管の強度の確保、圧損低下の防止を達成することができる。
【0031】
保護管7及び給排水管4を縮径(拡径)する方法は、特に限定されないが、例えば、連結管接続フランジ(レジューサー)を用いることができる。連結管接続フランジは、熱負荷を均一化するために縮径する部材と同一の材質のものを用いるのが好ましい。
【0032】
(コーミング構造)
本発明において、コーミング構造10は側板8及びシールプレート9を備える。コーミング構造10は、側板8及びシールプレート9のみから構成されてもよいが、側板8とシールプレート9の間に、高炉鉄皮5の開口部6と配管との位置ずれを吸収する、例えばドーナツ状のフランジ状板を設けてもよい。本発明に係る銅又は銅合金製ステーブにおいては、少なくとも1つの保護管7が少なくとも1つのコーミング構造10により包囲されていればよいが、好ましくは、1組又は複数組の隣接する保護管7がそれぞれコーミング構造10により包囲されているとよく、より好ましくは、複数の保護管7の全てがコーミング構造10により包囲されているとよい。複数の保護管7の全てがコーミング構造10により包囲されると、各配管の保護機能を向上させることができ、高炉の安定操業につながる。本発明によれば、高炉鉄皮5の開口部6を従来のように大きくせずに一列に配置できるため、保護管7の全てがコーミング構造10により包囲されている場合であっても、隣接するコーミング構造10を干渉することなく設置することが可能となる。
【0033】
(側板)
側板8は、一般的に筒状の板であり、その一端が高炉鉄皮5に、具体的には高炉鉄皮5の外面であって開口部6の外周部に接合され、他端がシールプレート9に接合される。なお、筒状とは円筒状に限定されず、例えば角筒状であってもよい。側板8の材質は特に限定されないが、鋼であると好ましい。また、側板8の板厚は、特に限定されないが、6~10mmであると好ましく、例えば9mmである。
【0034】
(シールプレート)
シールプレート9は、内部に開口を有する板であり、例えばドーナツ状の板であることができる。シールプレート9は、シールプレート9の炉内側面の一部が側板8に接合され、開口の端面が保護管7に接合される。シールプレート9の材質は特に限定されないが、鋼であると好ましい。
【0035】
本発明において、シールプレート9の板厚は、特に限定されないが、5mm未満であると好ましく、4.5mm以下であるとより好ましく、例えば4.5mmであるとよい。シールプレート9の板厚が5mm未満であると、ステーブ本体2の大きな熱変形に伴う配管の変位、特に、配管の長手方向の変位が発生した場合に、配管のステーブ本体2との接合部で破損が生じる前に、シールプレート9をより破損しやすくしておくことができる。このようにシールプレート9が優先的に破損するようにしておくと、補修が、炉外からアクセス可能なシールプレート9の交換だけでよく、補修作業時間を大きく低減できるだけでなく、炉内の配管の損傷を抑制することが可能となる。
【0036】
これに関連して、本発明者らは、本発明に係る銅又は銅合金製ステーブにおいて、給排水管4の接合強度(破断寿命)及びシールプレート9の接合強度(破断寿命)へのシールプレート9の板厚の差異の影響について調べるために、(1)シールプレート9の板厚=6mmの場合と、(2)シールプレート9の板厚=4.5mmの場合とについて、以下の手順で数値解析シミュレーションを行った。
【0037】
まず、(1)及び(2)の場合それぞれについて、ステーブ本体2、給排水管4、高炉鉄皮5、保護管7、側板8、及びシールプレート9を本発明に従って(例えば図2のように)配置及び接合し、シールプレート9の板厚が異なる2つの解析モデルを構築した。次いで、その2つの解析モデルを用い、炉内ガス温度がThigh(℃)からTlow(℃)まで変化する際に給排水管4とステーブ本体2との固定構造aで生じる相当塑性歪増分Δεpaを算出した。同様に、2つの解析モデルを用い、炉内ガス温度がThigh(℃)からTlow(℃)まで変化する際にシールプレート9と側板8及び保護管7との固定構造bで生じる相当塑性歪増分Δεpbを算出した。「固定構造aで生じる相当塑性歪増分Δεpa」は、ステーブ本体2に対して配管(給排水管4及び保護管7)を曲げた際の、給排水管4の溶接線周りの塑性歪の変化量を意味し、「固定構造bで生じる相当塑性歪増分Δεpb」は、保護管7及び側板8(コーミング構造10)によって生じるシールプレート9の塑性歪の変化量を意味する。ここで、Thigh(℃)及びTlow(℃)は、対象とする高炉に応じて適宜決定することができ、例えば、Thigh(℃)は1000~1200℃、Tlow(℃)は500~600℃であってもよい。Thigh(℃)及びTlow(℃)については、例えば後述するようにリブ温度計の測定値から推定することができる。また、炉内ガス温度の初期温度も特に限定されないが、例えば200℃であればよい。
【0038】
上記のように求めた各Δεpに基づいて、以下の式:Δεp=A/Np mから、それぞれの場合における破断回数(破断したときの繰り返し回数)Npを算出した。A及びmは、使用する解析モデル、すなわち各部材の種類や寸法から決まる実験係数であり、本明細書で開示の数値解析シミュレーションにおいては、A=0.14、m=0.502とした。また、炉内ガス温度がThigh(℃)からTlow(℃)まで変化する熱負荷変動が炉内で生じる回数:n(回/年)を、リブ温度計(いわゆる一般リブ温度計)により推定した。リブ温度計とはステーブクーラーのリブ部に埋め込まれた温度計であり、そのうち耐火物を保持するリブに埋め込まれた温度計を一般リブ温度計という(一般リブよりもさらに炉内側に突出するリブを突出リブということがある)。炉内ガス温度は、ステーブ本体2の一般リブ温度計と正相関しており、一般リブ温度計の測定値から1年間で上記熱負荷変動が炉内で生じる回数、すなわち炉内ガス温度がThigh(℃)からTlow(℃)まで変化する回数を推定できる。対象とする高炉により変更可能であるが、例えば、Thigh(℃)を1000~1200℃とする場合は、一般リブ温度計150~220℃(例えば200℃程度)とすればよい。
【0039】
求めたそれぞれの破断回数Np(回)を、炉内ガス温度がThigh(℃)からTlow(℃)まで変化する熱負荷変動が炉内で生じる回数n(回/年)で除することで、破断寿命Np/n(年)を算出した。ここで、本明細書で開示の数値解析シミュレーションにおいては、一般リブ温度=200℃を閾値として、実際の高炉の操業における所定の期間のデータからn=39(回/年)とした。シールプレート9の板厚が6mm及び4.5mmの場合における固定構造a及びbの破断寿命の結果を表1に示す。
【表1】
【0040】
表1を参照すると、シールプレート9の板厚が6mm及び4.5mmのいずれの場合であっても、破断寿命について固定構造a>固定構造bであり、すなわち、シールプレート9の板厚に関係なく、炉内配管に比べシールプレート9を優先的に破損するようにしておくことができることがわかる。また、シールプレート9の板厚が6mmの場合と4.5mmの場合とを比較すると、シールプレート9の板厚4.5mmの場合の方が、固定構造aの破断寿命が長く、したがって炉内配管の破損をより効果的に防止することができ、より安定した高炉操業が可能となる。一方、シールプレート9の板厚4.5mmの場合の方が、固定構造bの破断寿命が短く、したがってシールプレート9の破断寿命が短くなっているものの、上述したように、シールプレート9の補修は炉外から比較的容易に行うことができ、数年程度の寿命を有していれば特に問題とならない。むしろ、高炉の安定操業のためには、シールプレート9の破断寿命を多少犠牲にしてでも、炉内の配管の破損の可能性を低くすることが極めて重要である。
【0041】
(固定部材)
本発明に係る銅又は銅合金製ステーブでは、必要に応じて、ステーブ本体2と高炉鉄皮5をより強固に固定するための固定部材14を設けることができる。したがって、ステーブ本体2を、当該固定部材14により高炉鉄皮5に固定することができる。固定部材14は、高炉操業中のステーブ本体2の熱変形を抑制するために機能することができる。図1及び図2には、それぞれ、同様の位置に1つの固定部材14が示されているが、固定部材14の位置及び本数については、ステーブ本体2の寸法等に応じて適宜設定することができる。ステーブ本体2が長尺(例えば、長さが2.5m超)である場合、高炉操業時の熱変形が大きいため、固定部材14の本数を増加させるとよく、例えば、固定部材14の数を6本以上、好ましくは8本以上とすることができる。
【0042】
(高炉鉄皮)
高炉鉄皮5は、給排水管4及び保護管7が貫通する開口部6を有する。本発明において、ステーブ本体2の給排水口13が、ステーブ本体2の上下端部近傍に、ステーブ本体2の幅方向に沿って一列に配置されるため、その給排水口13の高さ方向及び幅方向の位置と同一の位置に配置される開口部6も、高炉鉄皮5上で幅方向に沿って一列に配置される。また、本発明によれば、給排水管4の外径が60mm以下であり、保護管7の外径が75mm以下であるため、高炉鉄皮5の開口部6を、従来の伸縮管式ステーブ1と同程度(例えば、±10%以内の差)にすることができる。そのため、高炉鉄皮5の強度を維持したまま、コーミング構造10を採用することが可能となる。
【0043】
本発明において、各部材の接合方法は特に限定されないが、例えば、溶接、ボルト接続などが挙げられ、好ましくは、溶接である。また、各部材の接合において、作業を容易にするために追加の部品を適宜使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、製鉄用高炉などの高温炉における銅又は銅合金製ステーブに利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 伸縮管式ステーブ
2 ステーブ本体
3 冷却水路
4 給排水管
5 高炉鉄皮
6 開口部
7 保護管
8 側板
9 シールプレート
10 コーミング構造
11 コーミング構造式ステーブ
12 伸縮管
13 給排水口
14 固定部材
図1
図2
図3