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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ステーブの交換方法及びステーブ
(51)【国際特許分類】
   C21B 7/10 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
C21B7/10 301
C21B7/10 305
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020033999
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021134415
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120499
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 淳
(72)【発明者】
【氏名】志賀 敦
(72)【発明者】
【氏名】宮岡 伸治
(72)【発明者】
【氏名】飯田 洋行
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-085808(JP,A)
【文献】特開2017-066482(JP,A)
【文献】特開平07-062410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーミング構造以外のガスシール構造を有する交換前ステーブを、交換用ステーブに交換するステーブの交換方法であって、
前記交換用ステーブは、冷却水路を内部に備えるステーブ本体と、前記ステーブ本体に接合された少なくとも1つの給排水管と、前記給排水管を包囲するように前記ステーブ本体及び前記給排水管に接合された保護管とを備えており、かつ、
高炉鉄皮から前記交換前ステーブを取り外す工程、
前記給排水管及び前記保護管を、炉内側から前記交換前ステーブ用の前記高炉鉄皮の開口部に挿入する工程、並びに、
炉外側において、前記保護管を包囲するように側板の一端を前記高炉鉄皮の開口部の外周部に接合し、シールプレートを前記側板の他端及び前記保護管に接合してコーミング構造を形成する工程を含み、
前記保護管が、前記ステーブ本体と前記高炉鉄皮の炉内側面との間で、前記ステーブ本体から前記高炉鉄皮の炉内側面に向けて縮径しており、
前記給排水管が、前記ステーブ本体と前記高炉鉄皮の炉内側面との間で、前記ステーブ本体から前記高炉鉄皮の炉内側面に向けて縮径しており、
前記開口部を貫通する位置において、前記給排水管の外径が前記ステーブ本体側よりも小さくなっていることを特徴とする、ステーブの交換方法。
【請求項2】
前記シールプレートの板厚が5mm未満であることを特徴とする、請求項1に記載のステーブの交換方法。
【請求項3】
前記給排水管のうち少なくとも1つが、前記ステーブ本体の上下端部近傍に配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のステーブの交換方法。
【請求項4】
前記交換用ステーブが備える前記給排水管の外径が、前記交換前ステーブが備える給排水管の外径に比べて小さいことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のステーブの交換方法。
【請求項5】
前記ステーブ本体が銅又は銅合金製であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のステーブの交換方法。
【請求項6】
前記ステーブ本体の長さが2.5m超であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のステーブの交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステーブの交換方法及びステーブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高炉においては、高炉内の高温ガス等から高炉鉄皮を保護するために、ステーブクーラー(以下、単にステーブと称する)が多く用いられている。ステーブには内部に冷媒(例えば、水)を流すための冷却水路が形成されており、その冷媒で冷却されたステーブにより、炉内の高温ガス等から高炉鉄皮が保護される。
【0003】
冷媒を流すための給排水管は高炉鉄皮の開口部を貫通しており、高炉鉄皮と給排水管との間には隙間が存在する。炉内ガスは非常に高温(例えば約1200℃)であるため、炉内ガスがこの隙間を通じて炉外に放出されないように、当該隙間を塞ぐ炉内ガス用シール部材が高炉鉄皮の炉外側面に設けられる。当該部材には、炉内ガスのシール機能に加え、高温ガスに曝されることで起こり得るステーブの熱変形を吸収する機能が求められる。
【0004】
炉内ガスのシール及び熱変形吸収のための部材として、図4に示されるような伸縮管12(「コンペンセーター」とも称される)を備えた、伸縮管式ステーブ11が知られている(例えば特許文献1)。伸縮管12は、高炉鉄皮5の炉外側面に接合され、その蛇腹構造によりステーブ本体2の熱変形に伴う給排水管4の変位を吸収することが可能である。また、多くの場合、ステーブ本体2の熱変形を抑制するために、図4に示されるような固定部材13(例えばボルト)を用いて高炉鉄皮5にステーブ本体2を固定する方法が採用される。
【0005】
炉内ガスのシール及び熱変形吸収のための別の部材として、図5に示されるようなコーミング構造10(「コーミングボックス」とも称される)を備えた、コーミング構造式ステーブ1が知られている(例えば特許文献2)。コーミング構造10は、側板8及びシールプレート9を備え、高炉鉄皮5の炉外側面に接合される。そして、当該コーミング構造10により、ステーブ本体2の熱変形に伴う給排水管4の変位を吸収することが可能となる。また、コーミング構造式ステーブ1では、給排水管4を包囲するように保護管7が設置され、その上にコーミング構造10が設置される。コーミング構造式ステーブ1においても、ステーブ本体2の熱変形を抑制するために、固定部材13を用いて高炉鉄皮5にステーブ本体2を固定する方法が採用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-173095号公報
【文献】特開2007-308747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば図4に示されるような伸縮管式ステーブ11は、複数の固定部材13でステーブ本体2の熱変形を拘束しきれなくなると、給排水管4に負荷がかかり、結果として伸縮管12の破損を招き、炉内ガスが漏洩するおそれや、給排水管4自体が破損し冷却機能を失うおそれがある。特に、銅又は銅合金製であってステーブ本体2の長さ寸法が大きいものは熱変形の影響が顕著であり、熱負荷がかかり易く、結果的に伸縮管12が破損する可能性が高くなる。伸縮管12の損傷が進めば給排水管4まで破損してステーブ本体2の冷却が不可能になり、ステーブ本体2の溶損、摩耗が進展して高炉鉄皮5が高温加熱されると、貫通亀裂を生じて操業そのものが継続できなくなるおそれがあり、その影響は計り知れない。
【0008】
一方、例えば図5に示すコーミング構造式ステーブ1では、給排水管4と保護管7との二重管構造を採用しているため、給排水管4のステーブ本体2との接合部の強度が高い。そのため、固定部材13でステーブ本体2の熱変形を拘束しきれなくなった場合でも、給排水管4と保護管7で支えることができるため、保護管7の破損や給排水管4の破損の可能性を下げることができる。
【0009】
そこで本発明は、伸縮管などのコーミング構造以外のガスシール構造を有するステーブをコーミング構造式ステーブに交換する際、給排水管の破損を防止しつつ、施工性を向上し得るステーブの交換方法及びステーブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の主旨は以下のとおりである。
(1)
コーミング構造以外のガスシール構造を有する交換前ステーブを、交換用ステーブに交換するステーブの交換方法であって、
前記交換用ステーブは、冷却水路を内部に備えるステーブ本体と、前記ステーブ本体に接合された少なくとも1つの給排水管と、前記給排水管を包囲するように前記ステーブ本体及び前記給排水管に接合された保護管とを備えており、かつ、
高炉鉄皮から前記交換前ステーブを取り外す工程、
前記給排水管及び前記保護管を、炉内側から前記交換前ステーブ用の前記高炉鉄皮の開口部に挿入する工程、並びに、
炉外側において、前記保護管を包囲するように側板の一端を前記高炉鉄皮の開口部の外周部に接合し、シールプレートを前記側板の他端及び前記保護管に接合してコーミング構造を形成する工程を含み、
前記保護管が、前記ステーブ本体と前記高炉鉄皮の炉内側面との間で、前記ステーブ本体から前記高炉鉄皮の炉内側面に向けて縮径しており、
前記給排水管が、前記ステーブ本体と前記高炉鉄皮の炉内側面との間で、前記ステーブ本体から前記高炉鉄皮の炉内側面に向けて縮径しており、
前記開口部を貫通する位置において、前記給排水管の外径が前記ステーブ本体側よりも小さくなっていることを特徴とする、ステーブの交換方法。

前記シールプレートの板厚が5mm未満であることを特徴とする、(1)に記載のステーブの交換方法。

前記給排水管のうち少なくとも1つが、前記ステーブ本体の上下端部近傍に配置されていることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のステーブの交換方法。

前記交換用ステーブが備える前記給排水管の外径が、前記交換前ステーブが備える給排水管の外径に比べて小さいことを特徴とする、(1)~()のいずれかに記載のステーブの交換方法。

前記ステーブ本体が銅又は銅合金製であることを特徴とする、(1)~()のいずれかに記載のステーブの交換方法。

前記ステーブ本体の長さが2.5m超であることを特徴とする、(1)~()のいずれかに記載のステーブの交換方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るステーブの交換方法及びステーブによれば、既存のステーブに使用されていた高炉鉄皮の開口部を流用し、すなわち開口部の寸法を変えることなく、既存のステーブを新規のコーミング構造式ステーブに交換することが可能となる。そのため、開口部への現場での作業が実質的に必要なく、作業負荷の低減と現場での施工性の改善を達成することができる。現場での施工性が向上することにより、限られた高炉の停止期間(休風期間)に作業を完了することが可能となる。また、二重管構造と共にコーミング構造を使用することにより、給排水管が破損するおそれを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る交換用ステーブ及びコーミング構造が設置されたコーミング構造式ステーブの概略図を示す。
図2図1に示されるコーミング構造式ステーブの一部を示す。
図3図2と同様の図であり、本発明に係る別の例示のコーミング構造式ステーブの概略図を示す。
図4】従来の伸縮管式ステーブの概略図を示す。
図5】従来のコーミング構造式ステーブの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る幾つかの実施形態について図を参照しながら説明する。しかしながら、これらの説明は、本発明の好ましい実施形態の単なる例示を意図するものであって、本発明をこのような特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0014】
[ステーブの交換方法]
本発明に係るステーブの交換方法(以下、「本交換方法」と称する)は、コーミング構造以外のガスシール構造を有する交換前ステーブを、交換用ステーブに交換する方法である。コーミング構造以外のガスシール構造としては、特に限定されないが、例えば、図4に示されるような伸縮管12が挙げられる。以下、交換前ステーブが伸縮管式ステーブ11であり、交換用ステーブがコーミング構造式ステーブ1である場合を例として説明する。
【0015】
本交換方法において、伸縮管式ステーブ11から交換用ステーブに交換する場合では、典型的に、保護管7の外径は、伸縮管式ステーブ11が備える給排水管4の外径とほぼ等しく、例えば±10%以内の差である。そのため、交換用ステーブの保護管7の引張や曲げに対する強度は、伸縮管式ステーブ11が備える給排水管4と同等程度の強度を有し、給排水管4の破損を防止可能である。
【0016】
例えば図1に示すように、本発明に係る交換用ステーブは、冷却水路3を内部に備えるステーブ本体2と、ステーブ本体2に接合された少なくとも1つの給排水管4と、給排水管4を包囲するようにステーブ本体2及び給排水管4に接合された保護管7とを備える。一般的に、交換用ステーブは、ステーブ本体2に給排水管4及び保護管7(以下、まとめて「配管」と称する)が接合した状態でステーブの交換工事を行う現場に搬入される。
【0017】
(交換前ステーブを取り外す工程)
本工程において、交換前ステーブを高炉鉄皮5から取り外す。交換前ステーブとは、コーミング構造以外のガスシール構造を有するものであり、例えば、図4に示されるような伸縮管式ステーブ11である。伸縮管式ステーブ11を取り外す場合は、炉外側において伸縮管12を取り外した後、炉内側において、給排水管4を高炉鉄皮5の開口部6から引き抜いて伸縮管式ステーブ11を高炉鉄皮5から取り外すことができる。
【0018】
(配管を開口部に挿入する工程)
上述したように交換前ステーブを取り外した後、交換用ステーブの配管を炉内側から高炉鉄皮5の開口部6に挿入する。この高炉鉄皮5の開口部6は、交換前ステーブ用の開口部6である。すなわち、本交換方法においては、交換前ステーブで使用されていた高炉鉄皮5の開口部6の寸法を変更することなく、交換用ステーブを取り付ける際にもその開口部6をそのまま流用することができる。換言すると、本交換方法は、高炉鉄皮5の開口部6の外径又は寸法を変更する工程を含まないことができる。
【0019】
本交換方法では、交換前ステーブ用の高炉鉄皮5の開口部6をそのまま流用可能であるため、開口部6の寸法を拡大するような高負荷な作業が生じない。したがって、現場での作業負荷が大きく低減され施工性が向上する。それにより、短時間でコーミング構造式ステーブ1を設置することが可能となり、限られた休風期間内にステーブ交換作業を容易に完了することができる。
より具体的には、例えば伸縮管式ステーブ11をコーミング構造式ステーブ1に交換する際は、ステーブ本体2に十分な流速で冷媒を流すために、伸縮管式ステーブ11が備える給排水管4の内径と同一の内径を有する給排水管4を用いるのが通常である。この場合、コーミング構造式ステーブ1は給排水管4と保護管7の二重管構造を有するため、開口部6に通す配管の外径が大きくなり、配管を挿入するために開口部6を拡大する必要が生じ得る。しかしながら、開口部6の加工には多くの時間を要するため、施工性の観点から好ましくない。これに対して、本交換方法においては、上述したように、開口部6の寸法を変更することなく伸縮管式ステーブ11で用いられていた開口部6をそのまま流用するため、開口部6の加工が特に必要なく、施工性が大きく向上する結果となる。また、保護管7は、伸縮管式ステーブ11が備える給排水管4と同等程度の外径を有するため、給排水管4の破損を防止可能である。
【0020】
さらに、コーミング構造10は開口部6の外周部に取り付けられるため、コーミング構造10を設置するために高炉鉄皮5の開口部6を拡大した場合、隣接するコーミング構造10同士が干渉するおそれがある。その上、高炉鉄皮5の開口部6が拡大されると、高炉鉄皮5自体の強度の低下を引き起こすおそれがあり、実用上好ましくない。これに対して、本交換方法においては、高炉鉄皮5の開口部6の寸法を全く変更しないため、各開口部6に干渉なくコーミング構造10を確実に取り付けることが可能となり、高炉鉄皮の強度も担保することができる。
交換前ステーブ用の高炉鉄皮5において、稼動面の冷却を広範囲に実施するため、ステーブ本体2の長さ方向に沿って冷却水路3が設けられ、ステーブ本体2の上下端近傍に複数の給排水管4が接合されている、すなわち、高炉鉄皮5の複数の開口部6がステーブ本体2の上下端近傍においてミシン目状に直線的な配置となっている場合がある。特にこのようなミシン目状に高炉鉄皮5の開口部6が配置されている場合、高炉鉄皮5の強度の観点から開口部6の外径拡大は実施しづらいという設計制約があるが、本交換方法においては、交換前ステーブが備える給排水管4の外径とほぼ等しい外径を有する保護管7を用いることにより、高炉鉄皮5の開口部6の寸法を変更することなくコーミング構造10を取り付け、高炉鉄皮5の強度を担保することが可能となる。
【0021】
(コーミング構造を形成する工程:側板を高炉鉄皮の開口部の外周部に接合する工程)
配管を炉内側から高炉鉄皮5の開口部6に挿入した後、炉外側において、保護管7を包囲するように側板8の一端を高炉鉄皮5の開口部6の外周部に接合する。配管の挿入前に本工程を行うことも可能であるが、配管を挿入後に行う方が配管の位置に応じて側板8の位置を決定できるため、配管と側板との位置関係を調整できる点で好ましい。上述したように、本交換方法では、高炉鉄皮5の開口部6を拡大しないため、隣接する開口部6に対して干渉せずに側板8を設置することができる。
【0022】
(コーミング構造を形成する工程:シールプレートを側板の他端及び保護管に接合する工程)
側板8の一端を高炉鉄皮5の開口部6の外周部に接合した後、シールプレート9を側板8の他端及び保護管7に接合して、コーミング構造10を形成する。したがって、コーミング構造10は、側板8及びシールプレート9を備える。本工程により、図1図3に示されるコーミング構造式ステーブ1が高炉鉄皮5に設置される。
【0023】
・ステーブ本体
ステーブ本体2は、内部に冷媒(例えば水)を流すための冷却水路3を備える。冷却水路の3の経路及び寸法などは、ステーブ本体2の寸法や要求される冷却能力により任意に決定することができる。ステーブ本体2は、熱伝導率等の観点から銅又は銅合金製であると好ましい。また、ステーブ本体2の長さ寸法(図1における上下方向の寸法)は、特に限定されないが、例えば1.0m超3.0m未満である。ステーブ本体2の長さは、好ましくは2.5m超である。ステーブ本体2の長さ寸法が大きい、及び/又は、ステーブ本体2が銅又は銅合金であると、高炉操業時の熱変形がより大きくなり配管のずれが生じやすくなるため、ガスシール構造として、伸縮管12を用いる場合に比べてコーミング構造10を用いることが有利になる。ステーブ本体2の幅寸法(長さ寸法に垂直な方向の寸法)及び板厚は、特に限定されない。
【0024】
・給排水管
給排水管4は、図3(b)に示されるように、ステーブ本体2と高炉鉄皮5の炉内側面との間で、ステーブ本体2から高炉鉄皮5の炉内側面に向けて縮径(高炉鉄皮5の炉内側面からステーブ本体2に向けて拡径)していることが好ましい。この場合、ステーブ本体2に接合される位置での給排水管4の外径は、開口部6を貫通する位置での給排水管4の外径の1.1~2.0倍であると好ましく、1.3~1.7倍であるとより好ましい。給排水管4の外径が、ステーブ本体2との接合部で大きくなっていると、給排水管4の内部を流れる冷媒の当該接合部での圧損を低減することができる。さらに、開口部6を貫通する位置での給排水管4を小さくすると、開口部6をそのまま流用した状態で配管を開口部6に挿入するのが容易になる。
【0025】
1つのステーブ本体2に接合される給排水管4の数は特に限定されないが、4本以上が好ましい。あるいは、ステーブの幅寸法に応じて、一定間隔(例えば200mm)で配置するように給排水管4の数を決定することもできる。一定間隔で給排水管を配置することで、ステーブ本体2全体を均一に冷却することが可能となる。給排水管4の材質は、特に限定されないが、腐食防止のためステンレス鋼からなることが好ましい。
【0026】
好ましくは、給排水管4のうちの少なくとも1つは、ステーブ本体2の上下端部近傍に配置されていてもよい。「ステーブ本体2の上下端部近傍」とは、ステーブ本体2の長さ寸法に対する、ステーブ本体2上端部又は下端部とその端部に最も近い給排水管4の中心軸との間の長さの比が0.05以下であることを意味する。給排水管4がステーブ本体2の上下端部近傍に配置していると、ステーブ本体2の内部の略全体に冷却水路3を形成することができ、ステーブの冷却能力を向上させ、かつ均一に冷却することができる。その反面、ステーブ本体2の上下端部近傍に固定部材13を設けられなくなり、ステーブ本体2の熱変形による配管位置の変位が生じ易くなる。このような場合であっても、伸縮管12を用いる場合に比べ、コーミング構造10を用いることが有利になる。
【0027】
好ましくは、交換用ステーブが備える給排水管4の外径は、交換前ステーブ(例えば伸縮管式ステーブ11)が備える給排水管4の外径に比べて小さい。交換用ステーブの給排水管4の外径が小さいと、これに応じて保護管7の外径も小さくすることが可能となるため、現場で配管を開口部6に挿入することが容易になり、施工性が向上する。なお、交換用ステーブが備える給排水管4の外径が小さくなると、圧損が大きくなりステーブ本体2への冷媒の供給量が低下するが、この点は、給排水管4に冷媒を供給するポンプの出力を増加させるなどして、冷媒の供給量を確保すればよい。
【0028】
・保護管
保護管7は、給排水管4を包囲するように設置され、その一端がステーブ本体2に接合され、他端が給排水管4に接合される。保護管7は、炉内の高温ガスに給排水管4が直接曝されるのを防止するために機能することができる。したがって、保護管7は、典型的に、炉内においては給排水管4の全てを包囲するように設置されるとよい。ここで、「包囲する」とは、保護管7が、少なくとも炉内側において、給排水管4の外周全体を一定の隙間を有した状態で囲っていることを意味する。なお、「包囲する」という用語は、他の部材間において使用される場合も同様である。保護管7の材質は、特に限定されないが、ステンレス鋼又は高温配管用の炭素鋼からなることが好ましい。また、熱膨張差を低減するために、給排水管4と保護管7の材質が同一であるとより好ましい。
【0029】
保護管7は、図3(a)及び(b)に示されるように、ステーブ本体2と高炉鉄皮5の炉内側面との間で、ステーブ本体2から高炉鉄皮5の炉内側面に向けて縮径(高炉鉄皮5の炉内側面からステーブ本体2に向けて拡径)していることが好ましい。ステーブ本体2に接合される位置での保護管7の外径は、開口部6を貫通する位置での保護管7の外径の1.1~2.0倍であると好ましく、1.3~1.7倍であるとより好ましい。保護管7がステーブ本体2との接合部で大きくなっていると、保護管7の当該接合部の外周長さが増えステーブ本体2との接合距離が延びるため、長手方向についての強度が増加する。また、当該接合部での保護管7の径が大きくなることで、より大きな断面二次モーメントを得ることができ、曲げ方向への強度が増加する。さらに、ステーブ本体2から高炉鉄皮5の炉内側面に向けて保護管7が縮径していることで、開口部6をそのまま流用した状態で配管を開口部6に挿入するのが容易になる。よって、保護管7を縮径することで、保護管7の強度を上げ給排水管4の破損をより効果的に防止し、さらに施工性を改善することが可能となる。
【0030】
一般的に、給排水管4のための開口部6は高炉鉄皮5上で密集していることが多いため、本交換方法において開口部6をそのまま流用することで、各開口部6にコーミング構造10を確実に設置することが可能となる。一方、高炉鉄皮5の内部においては、配管は比較的自由に配置可能であるため、上述したように、開口部6を貫通する位置での配管の外径に関係なく、保護管7及び/又は給排水管4のステーブ本体2との接合部の外径を比較的自由に決定でき、したがって、配管の強度の確保、圧損低下の防止を達成することができる。
【0031】
保護管7及び給排水管4を縮径する方法は、特に限定されないが、例えば、連結管接続フランジ(レジューサー)であることができる。連結管接続フランジは、熱負荷を均一化するために縮径する部材と同一の材質のものを用いるのが好ましい。
【0032】
・コーミング構造
本発明において、コーミング構造10は側板8及びシールプレート9を備える。コーミング構造10は、側板8及びシールプレート9のみから構成されてもよい。また、側板8とシールプレート9の間に、高炉鉄皮5の開口部6と配管との位置ずれを吸収する、例えばドーナツ状のフランジ状板を設けてもよい。
【0033】
・側板
側板8は、一般的に筒状の板であり、配管を開口部6に挿入した後に、その一端が高炉鉄皮5の外面であって開口部6の外周部に接合され、他端がシールプレート9に接合される。なお、筒状とは円筒状に限定されず、例えば角筒状であってもよい。2本の配管に対して1つのコーミング構造10を形成する場合、側板8は楕円筒状であることができ、3本の配管に対して1つのコーミング構造10を形成する場合、側板8は三角筒状であることができる。側板8の材質は特に限定されないが、鋼であると好ましい。また、側板8の板厚は、特に限定されないが、6~10mmであると好ましく、例えば9mmである。
【0034】
・シールプレート
シールプレート9は、内部に開口を有する板であり、例えばドーナツ状の板であることができる。シールプレート9は、交換用ステーブの配管を開口部6に挿入して、側板8の一端を高炉鉄皮5の開口部6の外周部に設置した後、シールプレート9の炉内側面の一部が側板8に接合され、開口の端面が保護管7に接合される。シールプレート9の材質は特に限定されないが、鋼であると好ましい。シールプレート9の板厚は、特に限定されないが、5mm未満であると好ましく、例えば4.5mmである。5mm未満であると、ステーブ本体2の大きな熱変形に伴う配管の変位、特に、配管の長手方向の変位が発生した場合に、配管のステーブ本体2との接合部で破損が生じる前にシールプレート9が破損するようにすることができる。このようにシールプレート9が優先的に破損するようにしておくと、補修が、炉外からアクセス可能なシールプレート9の交換だけでよく、補修作業時間を大きく低減でき施工性が改善される。
【0035】
・固定部材
ステーブ本体2と高炉鉄皮5をより強固に固定するための固定部材13を設けることができる。固定部材13は、高炉操業中のステーブ本体2の熱変形を抑制するために機能することができる。図1図5には、それぞれ、同様の位置に1つの固定部材13が示されているが、固定部材13の位置及び本数については、ステーブ本体2の寸法等に応じて適宜設定することができる。ステーブ本体2が長尺(2.5m超)である場合、高炉操業時の熱変形が大きいため、固定部材13の本数を増加させるとよく、例えば、ボルトの数を8本とすることができる。
【0036】
・高炉鉄皮
本交換方法において、高炉鉄皮5は、交換前ステーブ(例えば伸縮管式ステーブ11)に使用されていた開口部6を有する。また、本交換方法の全工程を通じて、開口部6の寸法は変更されない。
【0037】
本発明において、各部材の接合方法は特に限定されないが、例えば、溶接、ボルト接続などが挙げられ、好ましくは、溶接である。また、各部材の接合において、作業を容易にするために追加の部品を適宜使用してもよい。
【0038】
[ステーブ]
本発明に係るステーブ(以下、「本ステーブ」と称する)は、冷却水路3を内部に備えるステーブ本体2と、ステーブ本体2に接合された少なくとも1つの給排水管4と、給排水管4を包囲するように、一端がステーブ本体2に、他端が給排水管4に接合された保護管7と、側板8及びシールプレート9を備えたコーミング構造10とを備える。また、本ステーブにおいて、保護管7が、ステーブ本体2から保護管7の延在方向に向けて縮径している。ここで、保護管7の「延在方向」とは、ステーブ本体2から高炉鉄皮5の方向に向かう方向であって、図3上で左側から右側に向かう方向である。
【0039】
本ステーブにおいて、二重管構造の外側の保護管7が、ステーブ本体2から保護管7の延在方向に向けて縮径していることにより、保護管7のステーブ本体2との接合部の外周長さが増えステーブ本体2との接合距離が延びるため、長手方向についての強度が増加する。また、当該接合部での保護管7の外径が大きくなることで、より大きな断面二次モーメントを得ることができ、曲げ方向への強度が増加する。また、高炉鉄皮5の開口部6を貫通する位置での保護管7の外径は、当該接合部の外径より小さいため、配管を開口部6に挿入するような場合、開口部6を拡大等することなくそのまま流用可能であり、施工性が向上する。よって、本ステーブを用いることで、保護管7の強度が向上し給排水管4の破損を防止することが可能となり、さらに、高炉鉄皮5の既存の開口部6に配管を容易に挿入することができ、施工性を向上させることが可能となる。
【0040】
好ましくは、給排水管4が、ステーブ本体2から給排水管4の延在方向に向けて縮径している。すなわち、給排水管4の外径が、ステーブ本体2との接合部で大きくなっている。そうすると、給排水管4の内部を流れる冷媒の当該接合部での圧損を低減することができる。さらに、開口部6を貫通する位置での給排水管4を小さくすると、開口部6をそのまま流用した状態で配管を開口部6に挿入するのが容易になる。
【0041】
本ステーブにおけるステーブ本体2、給排水管4、保護管7、及びコーミング構造10(側板8及びシールプレート9)は、それぞれ独立して、上述の本交換方法で説明した態様の一部又は全てを包含することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、製鉄用高炉などの高温炉におけるステーブの交換に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 コーミング構造式ステーブ
2 ステーブ本体
3 冷却水路
4 給排水管
5 高炉鉄皮
6 開口部
7 保護管
8 側板
9 シールプレート
10 コーミング構造
11 伸縮管式ステーブ
12 伸縮管
13 固定部材
図1
図2
図3
図4
図5