(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ハーフプレキャスト桁及びその構築方法
(51)【国際特許分類】
E01D 1/00 20060101AFI20231213BHJP
E01D 2/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
E01D1/00 C
E01D2/00
(21)【出願番号】P 2020043011
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2023-01-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 北陸新幹線 坂井高架橋 RC桁 ハーフプレキャストの検討 令和2年1月10日開催
(73)【特許権者】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】田邉 敏
(72)【発明者】
【氏名】中谷 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】谷口 哲憲
(72)【発明者】
【氏名】小山 直人
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-077607(JP,A)
【文献】特開平11-050584(JP,A)
【文献】特開2001-146715(JP,A)
【文献】特開2001-032428(JP,A)
【文献】特開平05-187062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00
E01D 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャスト部材と現場打ちコンクリート部材とを組み合わせて構成されるハーフプレキャスト桁であって、
少なくとも、
隣接する2基の橋脚に接続され、互いに平行に所定の間隔でもって設けられる2本の主桁と、
前記
2本の主桁の長手方向端部に
挟まれて当該主桁同士を連結させるように前記橋脚上に設けられる2本の横梁と、を備え、
前記主桁は、プレキャスト部材である下部構造としての主桁下部部材と、現場打ちコンクリート部材である上部構造としての主桁上部部材とからなり
、
前記横梁は、現場打ちコンクリートにより前記主桁上部部材と一体に構築されていることを特徴とする、ハーフプレキャスト桁。
【請求項2】
前記主桁下部部材は、予め鉄筋群の下部を埋設させ、当該鉄筋群の上部を当該主桁下部部材の上面から突出させた状態で構成され、
前記主桁上部部材は、前記主桁下部部材の上面から突出された前記鉄筋群の上部を埋め込むように現場打ちコンクリートを施工することで構成されることを特徴とする、請求項1に記載のハーフプレキャスト桁。
【請求項3】
前記2本の主桁と、前記2本の横梁と、で囲まれる空間内に、プレキャスト部材である中央スラブが設けられ、
前記中央スラブの側面にはその一部を突出させた状態で鉄筋群が設けられ、
前記中央スラブは、その側面から突出させた前記鉄筋群が前記主桁上部部材及び前記横梁の内部に埋め込まれて構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のハーフプレキャスト桁。
【請求項4】
前記中央スラブの下面には、その長手方向中央において、幅方向に延伸するリブ部材が設けられていることを特徴とする、請求項3に記載のハーフプレキャスト桁。
【請求項5】
前記2本の主桁の側面であって互いに対向する側面と反対側の側面には、当該側面に沿って幅方向に張り出すプレキャスト部材である張出スラブが設けられ、
前記張出スラブの前記主桁に対向する側面にはその一部を突出させた状態で鉄筋群が設けられ、
前記張出スラブは、その側面から突出させた前記鉄筋群が前記主桁上部部材の内部に埋め込まれて構成されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のハーフプレキャスト桁。
【請求項6】
請求項1に記載のハーフプレキャスト桁の構築方法であって、
少なくとも、
プレキャスト部材であり、2本の主桁の下部構造としての主桁下部部材を、隣接する2基の橋脚
の上部に突出するアンカー部材を挟むようにその両側に所定の間隔でそれぞれ配置する工程と、
前記橋脚
の上部において、前記アンカー部材を内包
する横梁を
現場打ちコンクリートを施工して構築
し、前記主桁下部部材の上方に現場打ちコンクリートを施工し、主桁
上部部材を構築する工程と、を含むことを特徴とする、ハーフプレキャスト桁の構築方法。
【請求項7】
前記2本の主桁と、前記2本の横梁と、で囲まれる空間内に、プレキャスト部材である中央スラブを配置させ、前記主桁上部部材及び前記横梁と一体化させる工程を更に含むことを特徴とする、請求項6に記載のハーフプレキャスト桁の構築方法。
【請求項8】
前記2本の主桁の側面であって互いに対向する側面と反対側の側面に、当該側面に沿って幅方向に張り出すプレキャスト部材である張出スラブを配置させ、前記主桁上部部材と一体化させる工程を更に含むことを特徴とする、請求項6又は7に記載のハーフプレキャスト桁の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道や高速道路等の高架橋の主桁として用いられるハーフプレキャスト桁及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道や高速道路等の高架橋の構築技術として、強度や安全性を確保する観点から、ラーメン構造(いわゆるラーメン高架橋)を構築することが知られている。ラーメン高架橋の構築方法としては種々の方法が知られているが、近年では、施工性や工期短縮化といった観点から、工場などで予め製作された部材を現場に搬入し、既設部材に組み付けるといったいわゆるプレキャストコンクリート部材(単にプレキャスト部材とも呼称される)を用いた技術が一般的となっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、プレキャスト部材(プレキャスト桁)を用いて高架橋や橋梁の主桁を構築する技術が開示されている。特許文献1の技術によれば、プレキャスト部材の重量を低減させ、トラックレーン等の移動クレーンを用いて架設を行うことができるといったように、施工性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された技術によれば、一般的なラーメン構造を有する高架橋の施工性向上が図られる。しかしながら、例えば、鉄道用の高架橋の構築においては、ラーメン構造でもって構築される一般的な高架橋を架設した後、高架橋の下方に町道や農道等の道路を敷設させる場合や、高架橋の施工誤差の調整などのために、調整桁と呼ばれる通常の高架橋とは異なる構成の橋桁を構築することがある。
【0006】
このような調整桁の構築は現場打ちコンクリートによって施工されても良いが、施工性向上や工期短縮化を図るためプレキャスト部材と現場打ちコンクリートを組み合わせることがある。その際、複数の部材の接続部などにおいて強度や耐力を担保することが求められ、施工性の向上と、強度や耐力の向上の両立が望まれている。また、調整桁としての役割の都合上、ある程度の寸法変動が許容されるように構成されることが求められ、併せて、複数のプレキャスト部材それぞれが運搬に適した程度の大きさや重量である必要がある。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、プレキャスト部材と現場打ちコンクリートを組み合わせて、既設の高架橋に対する調整桁として構築され、施工性向上と、強度や耐力の向上を両立させることが可能なハーフプレキャスト桁とその構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明によれば、プレキャスト部材と現場打ちコンクリート部材とを組み合わせて構成されるハーフプレキャスト桁であって、少なくとも、隣接する2基の橋脚に接続され、互いに平行に所定の間隔でもって設けられる2本の主桁と、前記2本の主桁の長手方向端部に挟まれて当該主桁同士を連結させるように前記橋脚上に設けられる2本の横梁と、を備え、前記主桁は、プレキャスト部材である下部構造としての主桁下部部材と、現場打ちコンクリート部材である上部構造としての主桁上部部材とからなり、前記横梁は、現場打ちコンクリートにより前記主桁上部部材と一体に構築されていることを特徴とする、ハーフプレキャスト桁が提供される。
【0009】
前記主桁下部部材は、予め鉄筋群の下部を埋設させ、当該鉄筋群の上部を当該主桁下部部材の上面から突出させた状態で構成され、前記主桁上部部材は、前記主桁下部部材の上面から突出された前記鉄筋群の上部を埋め込むように現場打ちコンクリートを施工することで構成されても良い。
【0010】
前記2本の主桁と、前記2本の横梁と、で囲まれる空間内に、プレキャスト部材である中央スラブが設けられ、前記中央スラブの側面にはその一部を突出させた状態で鉄筋群が設けられ、前記中央スラブは、その側面から突出させた前記鉄筋群が前記主桁上部部材及び前記横梁の内部に埋め込まれて構成されても良い。
【0011】
前記中央スラブの下面には、その長手方向中央において、幅方向に延伸するリブ部材が設けられても良い。
【0012】
前記2本の主桁の側面であって互いに対向する側面と反対側の側面には、当該側面に沿って幅方向に張り出すプレキャスト部材である張出スラブが設けられ、前記張出スラブの前記主桁に対向する側面にはその一部を突出させた状態で鉄筋群が設けられ、前記張出スラブは、その側面から突出させた前記鉄筋群が前記主桁上部部材の内部に埋め込まれて構成されても良い。
【0013】
また、別の観点からの本発明によれば、上記記載のハーフプレキャスト桁の構築方法であって、少なくとも、プレキャスト部材であり、2本の主桁の下部構造としての主桁下部部材を、隣接する2基の橋脚の上部に突出するアンカー部材を挟むようにその両側に所定の間隔でそれぞれ配置する工程と、前記橋脚の上部において、前記アンカー部材を内包する横梁を現場打ちコンクリートを施工して構築し、前記主桁下部部材の上方に現場打ちコンクリートを施工し、主桁上部部材を構築する工程と、を含むことを特徴とする、ハーフプレキャスト桁の構築方法が提供される。
【0014】
前記2本の主桁と、前記2本の横梁と、で囲まれる空間内に、プレキャスト部材である中央スラブを配置させ、前記主桁上部部材及び前記横梁と一体化させる工程を更に含んでも良い。
【0015】
前記2本の主桁の側面であって互いに対向する側面と反対側の側面に、当該側面に沿って幅方向に張り出すプレキャスト部材である張出スラブを配置させ、前記主桁上部部材と一体化させる工程を更に含んでも良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、プレキャスト部材と現場打ちコンクリートを組み合わせて、既設の高架橋に対する調整桁として構築され、施工性向上と、強度や耐力の向上を両立させることが可能なハーフプレキャスト桁とその構築方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係るハーフプレキャスト桁の概略説明図である。
【
図2】ハーフプレキャスト桁の長手方向における概略断面図である。
【
図3】プレキャスト部材である各部材に埋設された鉄筋の様子を示した概略説明図である。
【
図4】ハーフプレキャスト桁の構築方法を示す概略説明図である。
【
図5】ハーフプレキャスト桁の構築方法を示す概略説明図である。
【
図6】ハーフプレキャスト桁の構築方法を示す概略説明図である。
【
図7】ハーフプレキャスト桁の構築方法を示す概略説明図である。
【
図8】ハーフプレキャスト桁の構築方法を示す概略説明図である。
【
図9】ハーフプレキャスト桁の構築方法を示す概略説明図である。
【
図10】ハーフプレキャスト桁の構築方法を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。なお、本明細書において、ハーフプレキャスト桁を構成する主桁の長手方向は、例えば鉄道車両の軌道が主桁上に位置する場合に、当該鉄道車両の移動方向に沿った軌道延伸方向と同じ方向として説明する。また、主桁上面において上記長手方向に直交する方向を幅方向として説明する。
【0019】
(本発明の実施の形態に係るハーフプレキャスト桁)
図1は、本発明の実施の形態に係るハーフプレキャスト桁1の概略説明図であり、(a)が上面の概略俯瞰図、(b)が裏面の概略俯瞰図である。
図1に示すように、ハーフプレキャスト桁1は、2基の既設の高架橋(図示せず)の橋脚の端部に接続され、所定の間隔でもって互いに平行に設けられる2本の主桁10、10と、主桁10、10が互いに対向する端部において、2本の主桁10、10同士を連結させるように設けられる横梁15を有している。横梁15は主桁10の長手方向両端部を連結させるように設けられ、これら横梁15、15は、図示しない2基の既設の高架橋の橋脚端部に載せられて設置される。
【0020】
また、2本の主桁10、10と、2本の横梁15、15と、で囲まれる空間内には、当該空間を埋めるように中央スラブ20が設けられても良い。
図1(b)に示すように、この中央スラブ20の長手方向中央部の裏面には、幅方向に延伸するリブ部材22が設けられても良い。このリブ部材22は、2本の主桁10、10での荷重バランスをとり、荷重による部材の変形などを防止するために設けられるものである。
【0021】
また、2本の主桁10、10の外側の面(互いに対向する面と反対側の面)には、当該外側の面に沿って、主桁10から幅方向に向かって張り出すように構成される張出スラブ30、30が設けられる。
【0022】
図1のように構成されるハーフプレキャスト桁1は、例えば、既設の鉄道車両用の高架橋同士をつなぐための調整桁として構築され、主桁10、10の上面に既設高架橋から連続して、鉄道用の軌道が敷設されるといった役割の構造物である。このような構造物の構築においては、強度や耐力を向上させ、且つ、施工性向上を図るため、一部をプレキャスト部材で構成し、現場打ちコンクリートと組み合わせてハーフプレキャスト桁1を構築することが好ましい。本発明者らは、本実施の形態に係るハーフプレキャスト桁1を複数の部材から構成するものとし、その一部をプレキャスト部材、一部を現場打ちコンクリートとすることを創案し、当該ハーフプレキャスト桁1を複数の部材を組み合わせて構築する方法について鋭意検討を行った。
【0023】
(ハーフプレキャスト桁を構成する部材)
図2はハーフプレキャスト桁1の長手方向における概略断面図であり、
図1(a)のA-A断面を示すものである。
図2に示すように、主桁10、10はプレキャスト部材である下部構造としての主桁下部部材40、40と、現場打ちコンクリート部材である上部構造としての主桁上部部材41、41から構成される。また、2本の主桁10、10の間に位置する中央スラブ20は、主桁上部部材41、41同士を連結するように設けられ、プレキャスト部材で構成される。また、張出スラブ30、30は、主桁上部部材41、41の外側において、当該主桁上部部材41、41に接続して設けられ、プレキャスト部材で構成される。
【0024】
ここで、
図2に示すように、中央スラブ20と張出スラブ30とは略同じ高さ位置に設けられる部材であるのに対し、主桁下部部材40はそれら中央スラブ20や張出スラブ30よりも下方の高さ位置に設けられる。換言すると、中央スラブ20や張出スラブ30の下面の高さと、主桁下部部材40の上面の高さが略同じ高さとなるような位置関係にて各部材は配置されている。
【0025】
また、プレキャスト部材である主桁下部部材40、中央スラブ20、張出スラブ30には、それぞれに複数の鉄筋(いわゆる鉄筋群)が一部を露出するような構成で埋設されている。
図3は、プレキャスト部材である各部材(主桁下部部材40、中央スラブ20、張出スラブ30)に埋設された鉄筋の様子を示した概略説明図であり、(a)は主桁下部部材40、(b)は中央スラブ20、(c)は張出スラブ30を示している。なお、本実施の形態における図面においては、簡略化のため、一部の鉄筋について一点鎖線にて図示を簡略化している場合がある。
【0026】
図3(a)に示すように、主桁下部部材40には、その上面において、予め複数の鉄筋(以下、鉄筋群45とも記載)の下部が埋設され、鉄筋群45の上部(埋設された下部を除く残部)は主桁下部部材40の上面から突出した状態で構成される。また、
図3(b)に示すように、中央スラブ20には、その四方の側面において、予め複数の鉄筋の一部(一方の端部側)が埋設されるように、鉄筋群(鉄筋群52あるいは53)が設けられる。即ち、長手方向に面する側面20aには、鉄筋群52がその一部を突出させた状態で設けられ、幅方向に面する側面20bには、鉄筋群53がその一部を突出させた状態で設けられる。また、
図3(c)に示すように、張出スラブ30には、その側面のうち1つの面において、予め複数の鉄筋(以下、鉄筋群55とも記載)の一部(一方の端部側)が埋設されるように、鉄筋群55が設けられる。張出スラブ30において、鉄筋群55が設けられる側面は、ハーフプレキャスト桁1の構築時に主桁10に対向する面である。
【0027】
なお、上述した鉄筋群45、52、53、55を構成する鉄筋の数や配置構成は任意に設計されるが、ハーフプレキャスト桁1の構築時に施工される現場打ちコンクリート内に埋設され、その強度や耐力の維持向上を図るといった観点から、各鉄筋は等間隔に配置され、その本数は部材の寸法に応じた所定数以上の数に設計することが好ましい。例えば、鉄筋群45、52、53、55を構成する鉄筋は、主桁下部部材40、中央スラブ20、及び、張出スラブ30に埋設された各鉄筋群同士が互いに接触せずに施工可能な配置であり、各部材からおよそ等間隔に突出する鉄筋同士が互いに交差するように配置されることが好ましい。これら鉄筋群が、現場打ちコンクリート(主桁上部部材41)に埋め込まれるように施工されることで強固な構造が実現される。また、鉄筋群45、52、53、55を構成する鉄筋において、部材の運搬時や施工時の寸法制約により、鉄筋の突出長に制限がある場合には、機械式継手等を用いて当該突出長を延長しても良い。また、鉄筋の先端に関し、フック形状とする、折り曲げる、定着治具を取り付けるといった方法により、現場打ちコンクリートへの定着性を向上させても良く、それにより上記突出長を低減するといった構成も考えられる。
【0028】
図3を参照して説明したプレキャスト部材である主桁下部部材40、中央スラブ20、張出スラブ30に加え、現場打ちコンクリート部材である主桁上部部材41を施工することで本発明の実施の形態に係るハーフプレキャスト桁1は構成される。以下では、ハーフプレキャスト桁1の構築方法について説明する。
【0029】
(ハーフプレキャスト桁の構築方法)
図4~
図10は、本発明の実施の形態に係るハーフプレキャスト桁1の構築方法を示す概略説明図である。先ず、
図4に示すように、2基の既設の高架橋60(60a、60b:図中の破線にて一部図示)の橋脚の端部に設けられたアンカー部材61、61を挟むようにその両側に所定の間隔で2本の主桁下部部材40、40が配置される。この時、主桁下部部材40の上面から突出している鉄筋群45と、アンカー部材61との間にわたって、適宜、鉄筋を配筋しても良い。
【0030】
次いで、
図5に示すように、後の横梁15、15の部材強度や耐力の向上のため、アンカー部材61の周囲に複数の鉄筋が配筋される。続いて、
図6に示すように、主桁下部部材40、40と、アンカー部材61、61と、で囲まれる空間内に中央スラブ20が配置される。この時、高さ方向で中央スラブ20の下面位置と、主桁下部部材40の上面位置が略同じ高さとなるような位置関係で(即ち、主桁下部部材40よりも中央スラブ20の方が高さ方向で高い位置になるように)中央スラブ20が配置される。ここで、中央スラブ20の側面から突出する鉄筋群52はアンカー部材61やその周囲に配筋された鉄筋と干渉しないような位置関係となり、鉄筋群53は主桁下部部材40の上面から突出する鉄筋群45と干渉しないような位置関係となる。
なお、中央スラブ20の長手方向長さは、主桁下部部材40の長手方向長さよりも短く構成され、このような構成により生じる空隙部(例えばアンカー部材61が存在している部分など)には、追って現場打ちコンクリートが施工され、横梁15などを構成することになる。
【0031】
そして、
図7に示すように、主桁下部部材40、40の幅方向外側に、高さ方向で主桁下部部材40の上面位置と、張出スラブ30の下面位置が略同じ高さとなるような位置関係で2本の張出スラブ30、30が配置される。この時、張出スラブ30の側面から突出する鉄筋群55は、主桁下部部材40の上面から突出する鉄筋群45と干渉しないような位置関係となる。
【0032】
そして、
図8に示すように、現場打ちコンクリートの施工により主桁上部部材41となる部分や、アンカー部材61の周囲など、所定の位置について複数の鉄筋の配筋が実施される。例えば、図示のように、主桁上部部材41の長手方向端部において幅方向及び高さ方向に伸びる鉄筋を配筋しても良い。また、主桁上部部材41を構成する部分全体にわたって幅方向及び高さ方向に伸びる鉄筋(いわゆる上筋、補強筋)を配筋しても良い。
【0033】
そして、
図9に示すように、主桁10の長手方向両端部に位置する横梁15を構築するため、2本の主桁下部部材40、40の間であり、中央スラブ20の長手方向端部外側位置においてアンカー部材61、61を内包・埋設させるように現場打ちコンクリートが施工される。このようにして横梁15、15が長手方向両端部に現場打ちコンクリートによって構築されることで、主桁下部部材40と中央スラブ20が一体化される。なお、現場打ちコンクリートの施工は一般的な方法によって行われ、
図9に図示していないが、適宜、型枠や部分型枠等を用いても良い。
【0034】
そして、
図10に示すように、主桁下部部材40、40の上方において主桁上部部材41、41が現場打ちコンクリートの施工により構築される。この時、図示のように、主桁下部部材40の上面から突出する鉄筋群45や、当該鉄筋群45と交差するような位置に配筋された各種鉄筋(例えば、補強筋等)が、主桁上部部材41、41の内部に全て埋設されるように現場打ちコンクリートの施工が行われる。このようにして主桁上部部材41、41が現場打ちコンクリートによって構築されることで、主桁上部部材41と中央スラブ20が一体化される。併せて、主桁上部部材41と張出スラブ30が一体化される。なお、現場打ちコンクリートの施工は一般的な方法によって行われ、
図10に図示していないが、適宜、型枠や部分型枠等を用いても良い。
【0035】
(作用効果)
以上、
図4~
図10を参照して説明した方法によって本発明の実施の形態に係るハーフプレキャスト桁1は構築される。この構築方法にて用いる部材のうち、主桁下部部材40、中央スラブ20、張出スラブ30はその内部に埋設された鉄筋(鉄筋群45、52、53、55)も含めて工場などで予め製作されたいわゆるプレキャスト部材である。一方で、横梁15及び主桁上部部材41は現場打ちコンクリートの施工によって構築される現場打ちコンクリート部材である。即ち、ハーフプレキャスト桁1は、複数のプレキャスト部材を好適な位置に配置し、それらを鉄筋の配筋構成ならびに現場打ちコンクリートによって接合させ一体化させて構築されるいわゆるハーフプレキャスト構造の構造物である。
【0036】
このような構造ならびに構築方法により、配筋構造が煩雑であり現場打ち工法が困難であるような部材(本実施の形態における主桁下部部材40、中央スラブ20、張出スラブ30)についてはプレキャスト部材とし、その他の部材を現場打ちコンクリート部材とすることで、材料費の低減や工期の短縮が図られ、更には、施工時の作業効率や部材の運搬性を向上させることができる。即ち、施工性の向上と、強度や耐力の向上を両立させて橋桁を構築することが可能となる。また、各プレキャスト部材(主桁下部部材40、中央スラブ20、張出スラブ30)から鉄筋を突出させておくことで、現場打ちコンクリートを打設した際に、当該鉄筋が各部材同士を接合させる効果を有するとともに、現場打ちコンクリートからなる主桁上部部材41の内部での鉄筋密度が向上し、現場での配筋作業の軽減が図られ、主桁10の強度向上に大きく貢献する効果がある。
【0037】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変形例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0038】
上記実施の形態では、ハーフプレキャスト桁1を構築する際に、プレキャスト部材である主桁下部部材40、中央スラブ20、張出スラブ30と、現場打ちコンクリート部材である横梁15及び主桁上部部材41を全て用いる構成について説明したが本発明の適用範囲はこれに限られるものではない。
【0039】
例えば、鉄道用高架橋の調整桁として用いる場合、鉄道用の軌道が敷設される主桁10と、2本の主桁10、10同士を連結させるように設けられる横梁15が備えられていれば良く、その他の部材については必要に応じて設けるようにしても良い。
【0040】
但し、中央スラブ20は、2本の主桁10、10の荷重バランスをとり、変形の防止を図るために有用である。また、張出スラブ30は、ハーフプレキャスト桁1全体の強度や耐力向上に加え、鉄道用高架橋の調整桁においては、鉄道の乗客用の待避所などとして有用であるため、これらの各部材を含めて構築することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、鉄道や高速道路等の高架橋の主桁として用いられるハーフプレキャスト桁及びその構築方法に適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1…ハーフプレキャスト桁
10…主桁
15…横梁
20…中央スラブ
22…リブ部材
30…張出スラブ
40…主桁下部部材
41…主桁上部部材
45…(主桁下部部材の)鉄筋群
52、53…(中央スラブの)鉄筋群
55…(張出スラブの)鉄筋群
60(60a、60b)…既設の高架橋
61…アンカー部材