(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】混錬押出機、スリーブ、混錬材料の押出方法
(51)【国際特許分類】
B01F 27/72 20220101AFI20231213BHJP
B01F 35/511 20220101ALI20231213BHJP
【FI】
B01F27/72
B01F35/511
(21)【出願番号】P 2020069074
(22)【出願日】2020-04-07
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新垣 勇飛
(72)【発明者】
【氏名】石森 裕一
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-249621(JP,A)
【文献】特表2006-509669(JP,A)
【文献】特開平09-000902(JP,A)
【文献】特開2000-280324(JP,A)
【文献】特開2005-262137(JP,A)
【文献】登録実用新案第3084114(JP,U)
【文献】特開平09-103702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/00 - 27/96
B01F 35/00 - 35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の軸部の周囲にらせん状の羽部を有するスクリューを備えた
含炭塊成鉱混錬押出機であって、
スクリューには、軸部の一部または全長の周囲に配置されるようにスリーブが取り付けられ、
前記スリーブが
粉粒混練材料の流れによる変動圧力により弾性変形可能であり、
粉粒混練材料の流れによる変動圧力によりスクリューの周囲に配置されるスリーブに弾性変形とその戻りが繰り返しなされることを可能とする変形代としての隙間空間をスリーブとスクリュー軸部の間に設けることを特徴とする
含炭塊成鉱混錬押出機。
【請求項2】
スクリューに取り付けられるスリーブの表面に
粉粒混練材料の付着を抑制するコーティングが施されたことを特徴とする請求項1に記載の
含炭塊成鉱混錬押出機。
【請求項3】
スリーブが、断面半円状の覆い部と覆い部の端部から延びるフランジ部を持つ半割部品を複数組み合わせることにより構成されたことを特徴とする請求項1
又は2に記載の
含炭塊成鉱混錬押出機。
【請求項4】
スリーブの母体がステンレス製であることを特徴とする請求項1乃至
3の何れかに記載の
含炭塊成鉱混錬押出機。
【請求項5】
請求項1乃至
4の何れかに記載の
含炭塊成鉱混錬押出機とするためにスクリューに取り付けられるスリーブ。
【請求項6】
請求項1乃至
4の何れかに記載の
含炭塊成鉱混錬押出機を用いて、スクリューの周囲に配置されるスリーブを
粉粒混練材料の流れによる変動圧力により繰り返し弾性変形させることを特徴とする
粉粒混錬材料の押出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練材料に係る混錬押出機、スリーブ、混錬押出方法に関する。
また本書で示す混練材料とは、「粉体」「粉粒」など、粒子の細かな物質や粉状の物質と、水や溶剤などの液体の両者が混ざった粘土状物質を示し、実施形態としては、例えば鉄粉、炭、セメント、水などを材料として含炭塊成鉱を製造する際に混錬押出機を使用する場合があるが、上記以外の混練材料を混ぜ合わせる場合であっても良い。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、プラスチック成型において混練材料をスクリューにより押し出しながら混錬して目的物を作ることがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
ところで、練り合わされる混練材料は、付着性の高いことが多いため、スクリューなどに付着してスクリューと一体化し、搬送されない状態になることが問題となる。特にスクリューの軸部に付着しやすく、この部分への混練材料の付着対策が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような背景でなされた発明であり、本発明が解決しようとする課題は、混錬押出機のスクリューの軸部に混錬する混練材料が付着するのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、棒状の軸部の周囲にらせん状の羽部を有するスクリューを備えた混錬押出機であって、スクリューには、軸部の一部または全長の周囲に配置されるようにスリーブが取り付けられ、前記スリーブが混練材料の流れによる変動圧力により弾性変形可能であり、スリーブとスクリュー軸部の間に変形代としての隙間空間を設けることを特徴とする混錬押出機とする。
【0007】
また、スクリューに取り付けられるスリーブの表面に混練材料の付着を抑制するコーティングが施された構成とすることが好ましい。
【0008】
また、スリーブの表面に施されたコーティングがテフロンコーティングであることが好ましい。
【0009】
また、スリーブは、断面半円状の覆い部と覆い部の端部から延びるフランジ部を持つ半割部品を複数組み合わせることにより構成されたものとすることが好ましい。
【0010】
また、スリーブの母体がステンレス製であることが好ましい。
【0011】
また、前記混錬押出機とするためにスクリューに取り付けられるスリーブとする。
【0012】
また、前記混錬押出機を用いて、スクリューの周囲に配置されるスリーブを混練材料の流れによる変動圧力により繰り返し弾性変形させることを特徴とする混錬押出方法とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明を用いると、混錬押出機のスクリューの軸部に混錬する混練材料が付着するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】スリーブが装着される前の混錬押出機の例を示した図である。
【
図2】混錬押出機を用いて混錬する際の混練材料の移動を矢印で表した図である。但し、一点鎖線はスクリューの回転軸芯を表している。
【
図3】スクリューの周りに混練材料が固着し、混練材料が搬送できない状態を表す図である。但し、一点鎖線はスクリューの回転軸芯を表している。
【
図4】本発明の一例で、スクリューの軸部の全長にスリーブが装着された混錬押出機の例を示した図である。
【
図5】二つの半割部品を組み合わせた例を示す側面図である。但し、実線で表された半割部品と鎖線で表した半割部品が組み合わされるものであり、フランジ部同士を結合するためのボルトの位置を上下方向に延びる鎖線で表している。
【
図6】
図5のVI-VI矢視図である。但し、実線で表された半割部品と鎖線で表した半割部品が組み合わされるものであり、組み合わされた半割部品の内側に破線で示された軸部と半割部品の間に隙間空間が設けられていることが表されている。なお、フランジ部同士を結合するためのボルトの位置を上下方向に延びる鎖線で表している。
【
図7】半割部品の覆い部を断面半円形状に形作る前の部材の形状例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に混練材料の押出方法の発明を実施するための形態を示す。
図1に示されていることから理解されるように、本実施形態の混錬押出機1は、スクリュー2の棒状の軸部21の周囲にらせん状の羽部22を有するスクリュー2を備えている。混錬押出機1は、上方に開口した入口部11を備えており、この入口部11を通すように上方から混練材料が投入される。また、混錬押出機1は横方向に延びるスクリュー2を備えている。
図1及び
図2に示すことから理解されるように、スクリュー2は棒状の軸部21の周囲にらせん状の羽部22を備えている。入口部11から投入された混練材料は、このスクリュー2の回転により練られ、押し出されるように混錬押出機1の外に排出される。なお、
図2に示すように、混錬材料は、通常、スクリュー2の軸部21の軸方向において入口部11側と反対側の端部に向かって流され、出口部12から排出される。
【0016】
実施形態の出口部12は、スクリュー2の軸部21の軸方向に貫通した穴であり、ダイス13に複数設けられている。この出口部12から押し出された練り合わせ物は所望の大きさとなるように切断される。なお、スクリュー2が配置されている空間は負圧であり、混錬材料を密にすることができる。
【0017】
なお、
図2に示すように、後述の本発明の様にスクリュー2にスリーブ3が取り付けられていない場合、混錬作業の比較的早い段階で、スクリュー2の軸部21などに混錬材料が付着し、その場に留まって混錬材料が連れ回りすることになる。この付着が累積されると、スクリュー2は混錬材料と一体となり、見かけ上、混練材料で覆われた棒状となって回転し続け、
図3に示すことから理解されるように、出口部12に向けて混練材料を搬送できなくなる。また、状況が悪い場合、混錬材料の押し詰まりによりスクリュー2が破損することになる。
【0018】
このような事態が早期に生じることを回避するため、本発明の実施形態の一例として、
図4に示す様に、混錬押出機1は、スリーブ3がスクリュー2の軸部21の周囲に配置され、スリーブ3と軸部21の間に変形代としての隙間空間を介して配置される。このスリーブ3が粉粒混練材料の流れによる変動圧力により弾性変形可能である。このため、スリーブ3により、スクリュー2の軸部21が混練材料から隔離、保護されているとともに、スクリュー2の周囲に配置されるスリーブ3は、を粉粒混練材料の流れによる変動圧力により繰り返し弾性変形とその戻りを繰り返させられることで、スリーブ3に付着した混練材料が跳ね除けられ、スリーブ3に留まることを抑制することができる。したがって、混錬押出機1のスクリュー2の軸部21に対して混錬する材料が付着するのを抑制することが可能となる。尚、スリーブ3は、軸部21の周囲の少なく殿一部に配置されなければならないが、その位置は混練材料の付着状況により適宜決めることができるが、
図4の様に軸部21の全長の周囲に配置されることが好ましい。
【0019】
入口部11の真下の位置は、軸部21の長手方向に対して略直交する方向からスクリュー2に向けて混練材料が落とされる位置であり、スリーブ3が間欠的な力を受けやすい位置である。このため、変形の繰り返しが求められるスリーブ3の配置に適している。なお、スリーブ3は入口部11の真下に配置しなければならないわけではなく、入口部11の真下よりも出口部12側にスリーブ3を配置しても良い。
【0020】
実施形態のスリーブ3は、表面に混練材料の付着を抑制するコーティングが施されていることが好ましい。このようにすることで、スリーブ3に混練材料が付着しにくい状態にすることができる。なお、このコーティングはテフロンコーティングであることが好ましい。
【0021】
図5に示すように、スリーブ3は交換できるものであることが好ましいため、実施形態のスリーブ3は、断面半円状の覆い部31と覆い部31の端部から延びるフランジ部32を持つ半割部品30を複数組み合わせることにより構成されたものとしている。このようにすれば、対向する半割部品30のフランジ部32同士が結合された状態を解除すれば、半割部品30をスクリュー2から取り外すことができる。このため、スリーブ3の交換やメンテナンスが可能となる。
【0022】
なお、半割部品30同士は、ボルトなどの結合部品を用いて結合されている状態とすればよいが、その他の結合手段を用いて、分離可能に結合しても良い。混錬押出機1の内部でスリーブ3の取り付けや取り外しがなされる場合があるため、
図6に示すことから理解されるように、実施形態では、二つの半割部品30を組み合わせることで、軸部21の一部を周方向に覆うことができるようにしているが、3以上の部品を組み合わせて軸部21の一部を周方向に覆うことができるようにしても良い。なお、
図4に示す例では、この半割部品30が12固組み合わされてスリーブ3全体を構成している。
【0023】
なお、スリーブ3は、混練材料の押出力に対する反力、混練材料が落下することによりもたらされる力、その他もろもろの力を原因として、弾性変形を繰り返すことができるものであればよいが、スクリュー2の軸部21と垂直となる方向の力がスリーブ3にかけられると、弾性変形できるようにするのが好ましい。
【0024】
スクリュー2の軸部21と垂直となる方向の力によりスリーブ3が変形しやすいようにするには、前述の様に、
図6に示すような変形代としての隙間空間51を、スリーブ3とスクリュー2の軸部21の間に設けることが好ましい。この場合、スクリュー2の軸部21と、スリーブ3と、スクリュー2の軸方向に離間して配置した埋め合わせ部により、スリーブ3内面側に区画された隙間空間51を備えた構成とすることが好ましい。スリーブ3とスクリュー2の軸部21の間に原料が入ることを抑制できるからである。なお、ゴムパッキンを埋め合わせ部として使用するのが好ましい。
【0025】
図6に示す例では、スリーブ3は真円ではなく楕円状に構成されている。より詳しくは、スリーブ3はフランジ部32がある位置の径が最も小さくなる楕円状である。
【0026】
半割部品30はどのように制作しても良いが、例えば、
図7に示すことから理解されるように、両端にボルトを挿入するボルト挿入穴38を備えた平板状の部材を作り上げた後に、覆い部31を形成するように屈曲させて構成すればよい。
【0027】
なお、スリーブ3の母体がステンレス製であるようにすれば、スリーブ3は薄肉状でコシがあり弾性変形しやすいものとすることができる。
【0028】
以上、実施形態を中心として本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、混錬押出機は、例として記載した含炭塊成鉱の他、樹脂やパンなどの食品を製造するために使用しても良い。
【符号の説明】
【0029】
1 混錬押出機
2 スクリュー
3 スリーブ
11 入口部
12 出口部
21 軸部
22 羽部
30 半割部品
31 覆い部
32 フランジ部
51 隙間空間