(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】電気炊飯器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
A47J27/00 109J
A47J27/00 109K
A47J27/00 109Z
A47J27/00 109P
A47J27/00 109G
(21)【出願番号】P 2020099527
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【氏名又は名称】白川 孝治
(74)【代理人】
【識別番号】100116159
【氏名又は名称】玉城 信一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 夏来
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-083240(JP,A)
【文献】特開平10-127489(JP,A)
【文献】特開平11-099058(JP,A)
【文献】特開平09-056581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常モードよりも短かい時間でご飯を炊き上げる早炊きモードを備え、炊飯終了後に炊飯終了報知を行って保温工程に移行すると共に、
上記早炊きモードでの炊飯終了後は、上記炊飯終了報知に対応して延長蒸らし工程を経て上記保温工程における保温制御に移行する電気炊飯器であって、
上記保温工程における保温制御を停止する保温取り消しキーを設け、
該保温取り消しキーが押された場合には、
上記延長蒸らし工程における延長蒸らし制御はもちろん、
上記保温工程における保温制御を中止して保温制御を終える
、
電気炊飯器。
【請求項2】
通常モードよりも短かい時間でご飯を炊き上げる早炊きモードを備え、炊飯終了後に炊飯終了報知を行って保温工程に移行すると共に、
上記早炊きモードでの炊飯終了後は、上記炊飯終了報知に対応して延長蒸らし工程を経て上記保温工程における保温制御に移行する電気炊飯器であって、
上記延長蒸らし工程は、
上記保温工程における保温制御シーケンス中に組み込まれている
、
電気炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、早炊き炊飯機能を備えた電気炊飯器の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の電気炊飯器では、メーカーやモデルによって名称は異なるものの、殆どの電気炊飯器に通常炊飯機能(通常モード)とは別に通常炊飯時よりも相当に早く(半分程度の時間で)ご飯を炊き上げる早炊き炊飯機能(早炊きモード)が搭載されている。
【0003】
一般に炊飯工程は、吸水工程、炊き上げ工程(昇温工程+沸騰維持工程)、蒸らし工程の3つの工程に大別することができる。そして、通常モードでは、例えば吸水に25分、炊き上げ(昇温+沸騰維持)に20分、蒸らしに15分程度の時間が割り当てられており(割り当て時間は一例)、吸水工程ではとろ火で十分に吸水を行う。そして、その上で炊き上げを行う。炊き上げに入った昇温工程では強火(フルパワー)で速やかに沸騰状態まで昇温させ、その後は少し出力を落とした中火で沸騰状態に維持し、十分に糊化を進行させる。その後、炊き上げ検知を行った上で、焦げないように火力を落とし、弱火で十分に蒸らすことによって米表面の余分な水分を飛ばして、ふっくらとした美味しいご飯に炊き上げる構成となっている(例えば特許文献1の
図4(a)の白米炊飯制御シーケンスを参照)。
【0004】
他方、早炊きモードでは、例えば吸水に5分、炊き上げ(昇温+沸騰維持)に20分、蒸らしに5分程度の時間が割り当てられており(割り当て時間は一例)、とろ火での吸水を行うことなく、吸水工程の最初から強火(フルパワー)で加熱することによって短時間で所定の温度まで昇温させ、続く昇温工程では少し出力を落とした強火で沸騰するまで炊き上げる。そして、この間に可能な限り吸水させる。その後は、さらに出力を落とした中火で沸騰状態に維持し、糊化を進行させた後、炊き上げ検知、追い炊きを経て、焦げないように火力を落とした弱火で短時間の蒸らしを行うことにより、迅速にご飯を炊き上げる構成となっている(例えば
図8の炊飯保温制御シーケンスを参照)。
【0005】
さらに、早炊きモードの中には、吸水工程自体を省略すると共に、炊き上げ時(昇温~沸騰開始まで)の加熱量をより大きくすることによって吸水させ、さらに短い時間でご飯を炊き上げるようにしたものもある(例えば特許文献1の
図4(b)の白米炊飯制御シーケンス、特許文献2の
図6の白米炊飯制御シーケンスを参照)。
【0006】
上記早炊きモードと通常モードとを比べると、基本的に炊き上げ時間(昇温+沸騰維持)は略共通であるものの、吸水工程、蒸らし工程の時間が大きく短縮されており、それによって全体の炊飯時間を略半分、又はそれ以上(少量早炊の場合)に短縮している。
【0007】
一方、一般に電気炊飯器では炊飯の終了(蒸らし設定時間の経過)をユーザーにブザー等で報知するようにしており、この炊飯終了報知があると、そのまま加熱量を下げて保温工程に移行するようになっている。これは早炊きモードの場合にも全く同様である(例えば上記
図8の炊飯保温制御シーケンスを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-28154号公報
【文献】特開2020-69052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のような早炊きモードの場合、ユーザーは、上記炊飯終了報知によりご飯が炊きあがったことを知って、すぐにご飯を食べることができる。したがって、何かと忙しい朝食時や少しご飯が足りなかった夕食時などの迅速な追加炊飯に便利なものとなる。
【0010】
しかし、早炊きモードの場合、吸水工程における吸水時間が短い(又は吸水工程自体がない)ために炊きあがった米の中の水分量が少なく、また蒸らし工程における蒸らし時間が短いために炊きあがった米の表面に水分が残りやすい。そのため、通常モードで炊いたご飯に比べると、硬めで、若干の水っぽさ(べちゃつき)が残る傾向にある。したがって、早炊きモードは便利ではある反面、通常モードで炊いたご飯と同一の味や食感を実現することが難しい。この傾向は、当然ながら、少量高速炊飯など時短レベルの高い早炊きモードほど顕著となる。
【0011】
本願発明は、このような課題を解決するためになされたもので、通常モードよりも短かい時間でご飯を炊き上げる早炊きモードを備え、炊飯終了後、炊飯終了報知を行って保温工程に移行するようにしてなる電気炊飯器において、所定の延長蒸らし工程を設け、上記早炊きモードでの炊飯が終了し、炊飯終了報知がなされた段階で再び蒸らし加熱を行えるようにし、同蒸らし加熱を行った後に保温制御に移行させるようにすることによって、従来の早炊きモードの問題を改善した電気炊飯器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、以上の課題を解決するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0013】
(1)本願請求項1の発明の課題解決手段
本願請求項1の発明に係る課題解決手段は、通常モードよりも短かい時間でご飯を炊き上げる早炊きモードを備え、炊飯終了後に炊飯終了報知を行って保温工程に移行すると共に、上記早炊きモードでの炊飯終了後は、上記炊飯終了報知に対応して延長蒸らし工程を経て上記保温工程における保温制御に移行する電気炊飯器であって、
上記保温工程における保温制御を停止する保温取り消しキーを設け、該保温取り消しキーが押された場合には、上記延長蒸らし工程における延長蒸らし制御はもちろん、上記保温工程における保温制御を中止して保温制御を終えるようにしている。
【0014】
この発明の課題解決手段の構成では、当該早炊きモードでの炊飯が終了すると、まず炊飯終了報知を行って当該早炊きモードでの炊飯が完了したことをユーザーに知らせるようになっている。この点は従来の早炊きモードを備えた電気炊飯器と全く同様であり、ユーザーは、時短状態で炊飯を行い、炊飯終了報知に対応して蓋を開けて炊き立てのご飯を食べることができる。したがって、何かと忙しい朝食時における炊飯や少しご飯が足りなかった夕食時の迅速な追加炊飯に適切に対応することができる。
【0015】
しかし、早炊きモードの場合、そのままでは吸水工程における吸水時間が短いために炊きあがった米の中の水分量が少なく、また蒸らし工程における蒸らし時間が短いために炊きあがった米の表面に水分が残りやすい。そのため、通常モードで炊いたご飯に比べると、硬めで、若干の水っぽさ(べちゃつき)が残る。
【0016】
そこで、この発明の課題解決手段の構成では、上記炊飯終了報知があると、同炊飯終了報知に対応して、当該炊飯終了報知前の蒸らし工程に連続する形で延長蒸らし工程が設けられており、一旦炊飯終了報知を行った後にも所定時間の延長蒸らし加熱を行うようになっている。
【0017】
すなわち、早炊き炊飯シーケンス本来の蒸らし工程が終了し、炊飯終了報知があると、形式的には保温工程に移行するが、保温工程に移行したからと言って直ちに加熱手段の加熱量を下げて設定保温温度に制御するのではなく、一旦所定加熱量、所定加熱時間の延長蒸らし加熱を行ってから本来の保温制御(加熱量を下げて設定保温温度に移行させる)を行わせるようになっている。つまり、保温工程の最初に所定加熱量、所定加熱時間の延長蒸らし加熱工程が設けられている。
【0018】
したがって、例えば早炊きモードでの炊飯が完了したことをユーザーに報知したにもかかわらず、暫くの間ユーザーが蓋を開けてご飯を食べなかったような場合には、必ず所定加熱量、所定加熱時間の延長蒸らし加熱が実行されることになる。その結果、合計の蒸らし加熱時間が長くなり、早炊きモードで炊飯したご飯の米が十分に蒸らされ、米の中心部まで十分に熱が通って糊化が進行し、柔らかさを増すと共に、米の表面に残っていた水分が飛ばされ、水っぽさ(べちゃつき)がなくなる。そして、そのように有効に食味を改善した上で本来の保温工程に移行する。
【0019】
この結果、最適なタイミングでの保温が可能となり、同保温工程で保温されるご飯は、早炊きモードで炊き上げられたご飯であるにもかかわらず、食味や食感の良いものとなる。
【0020】
すなわち、種々の早炊きモードの利用状況を観察すると、上記早炊きモードでご飯を炊いたからと言って、常に炊きあがったご飯をすぐに食べるとは限らない。例えば食べようと思いながらついつい他の用事をしてみたり、食べようとしたら来客があったり、また食事の前にまずスープをよそうなど、実際にご飯を食べるまでに時間が空いてしまうケースは多い。
【0021】
従来の構成だと、これらの時間はただ加熱量を落とした目標保温温度への移行に使われるだけの時間であり、この間で蒸らし作用を期待することはできないので、ご飯の食味を向上させることには何の作用も果たしていない。早炊きモードとの関係でみれば、これらの時間はある意味で無駄になっている。
【0022】
ところが、以上のような構成を採用すると、保温工程における延長蒸らし工程の実行により、実質的に合計の蒸らし時間が長くなり、早炊きモードで炊飯したご飯の米が当該空き時間を利用して十分に蒸らされ、柔らかさを増すと共に表面に残っていた水分が飛ばされて水っぽさもなくなり、美味しいご飯になる。そのため、炊き上げ後、実際に食べるまでの空き時間が無駄ではなくなる。また、ユーザーに対して、炊き上げたご飯をすぐに食べる食べ方、少し時間を置いて食味を向上させたご飯を食べる食べ方の2通りの早炊きスタイルを提供することができる。
【0023】
そして、この発明の課題解決手段の構成では、その場合において、保温工程における保温制御を停止する保温取り消しキーを設けており、同保温取り消しキーが押された場合には、延長蒸らし工程における延長蒸らし制御はもちろん、保温工程における保温制御を中止して保温制御を終えるようにしている。
【0024】
このような構成の場合、早炊きモードでの炊飯が終了し、炊飯終了報知がなされて、延長蒸らし工程における延長蒸らし制御(延長蒸らし加熱)が行われている場合であっても、保温工程における保温制御を停止する保温取り消しキーが押された場合には、ユーザーが延長蒸らし工程における延長蒸らし制御はもちろん、保温工程における保温制御も必要ではないと判断した場合であると判断して、上記延長蒸らし工程における延長蒸らし制御はもちろん、保温工程における保温制御を中止して炊飯および保温制御を終了する。
【0025】
(2)本願請求項2の発明の課題解決手段
本願請求項2の発明に係る課題解決手段は、通常モードよりも短かい時間でご飯を炊き上げる早炊きモードを備え、炊飯終了後に炊飯終了報知を行って保温工程に移行すると共に、上記早炊きモードでの炊飯終了後は、上記炊飯終了報知に対応して延長蒸らし工程を経て上記保温工程における保温制御に移行する電気炊飯器であって、
上記延長蒸らし工程は、上記保温工程における保温制御シーケンス中に組み込まれている。
【0026】
この発明の課題解決手段の構成では、当該早炊きモードでの炊飯が終了すると、まず炊飯終了報知を行って当該早炊きモードでの炊飯が完了したことをユーザーに知らせるようになっている。この点は従来の早炊きモードを備えた電気炊飯器と全く同様であり、ユーザーは、時短状態で炊飯を行い、炊飯終了報知に対応して蓋を開けて炊き立てのご飯を食べることができる。したがって、何かと忙しい朝食時における炊飯や少しご飯が足りなかった夕食時の迅速な追加炊飯に適切に対応することができる。
【0027】
しかし、早炊きモードの場合、そのままでは吸水工程における吸水時間が短いために炊きあがった米の中の水分量が少なく、また蒸らし工程における蒸らし時間が短いために炊きあがった米の表面に水分が残りやすい。そのため、通常モードで炊いたご飯に比べると、硬めで、若干の水っぽさ(べちゃつき)が残る。
【0028】
そこで、この発明の課題解決手段の構成では、上記炊飯終了報知があると、同炊飯終了報知に対応して、当該炊飯終了報知前の蒸らし工程に連続する形で延長蒸らし工程が設けられており、一旦炊飯終了報知を行った後にも所定時間の延長蒸らし加熱を行うようになっている。
【0029】
すなわち、早炊き炊飯シーケンス本来の蒸らし工程が終了し、炊飯終了報知があると、形式的には保温工程に移行するが、保温工程に移行したからと言って直ちに加熱手段の加熱量を下げて設定保温温度に制御するのではなく、一旦所定加熱量、所定加熱時間の延長蒸らし加熱を行ってから本来の保温制御(加熱量を下げて設定保温温度に移行させる)を行わせるようになっている。つまり、保温工程の最初に所定加熱量、所定加熱時間の延長蒸らし加熱工程が設けられている。
【0030】
したがって、例えば早炊きモードでの炊飯が完了したことをユーザーに報知したにもかかわらず、暫くの間ユーザーが蓋を開けてご飯を食べなかったような場合には、必ず所定加熱量、所定加熱時間の延長蒸らし加熱が実行されることになる。その結果、合計の蒸らし加熱時間が長くなり、早炊きモードで炊飯したご飯の米が十分に蒸らされ、米の中心部まで十分に熱が通って糊化が進行し、柔らかさを増すと共に、米の表面に残っていた水分が飛ばされ、水っぽさ(べちゃつき)がなくなる。そして、そのように有効に食味を改善した上で本来の保温工程に移行する。
【0031】
この結果、最適なタイミングでの保温が可能となり、同保温工程で保温されるご飯は、早炊きモードで炊き上げられたご飯であるにもかかわらず、食味や食感の良いものとなる。
【0032】
すなわち、種々の早炊きモードの利用状況を観察すると、上記早炊きモードでご飯を炊いたからと言って、常に炊きあがったご飯をすぐに食べるとは限らない。例えば食べようと思いながらついつい他の用事をしてみたり、食べようとしたら来客があったり、また食事の前にまずスープをよそうなど、実際にご飯を食べるまでに時間が空いてしまうケースは多い。
【0033】
従来の構成だと、これらの時間はただ加熱量を落とした目標保温温度への移行に使われるだけの時間であり、この間で蒸らし作用を期待することはできないので、ご飯の食味を向上させることには何の作用も果たしていない。早炊きモードとの関係でみれば、これらの時間はある意味で無駄になっている。
【0034】
ところが、以上の構成を採用すると、保温工程における延長蒸らし工程の実行により、実質的に合計の蒸らし時間が長くなり、早炊きモードで炊飯したご飯の米が当該空き時間を利用して十分に蒸らされ、柔らかさを増すと共に表面に残っていた水分が飛ばされて水っぽさもなくなり、美味しいご飯になる。そのため、炊き上げ後、実際に食べるまでの空き時間が無駄ではなくなる。また、ユーザーに対して、炊き上げたご飯をすぐに食べる食べ方、少し時間を置いて食味を向上させたご飯を食べる食べ方の2通りの早炊きスタイルを提供することができる。
【0035】
そして、この発明の課題解決手段の構成では、その場合において、延長蒸らし工程は、保温工程における保温制御シーケンス中に組み込まれて構成されている。
【0036】
上記延長蒸らし工程は、炊飯工程中の本来の蒸らし工程に続く形で設けることもできる(例えば蒸らし工程1、蒸らし工程2のように)。しかし、このようにすると、炊飯工程本来の蒸らし加熱時間を長くすることになり、早炊きモード自体の炊飯時間が長くなり、早炊きモードでなくなることになる。
【0037】
また、上記延長蒸らし工程は、炊飯工程と保温工程との間に独立した加熱工程として設けることもできる。しかし、そのようにすると、制御プログラムが複雑となり、炊飯~保温制御シーケンス自体の変更が必要となる。
【0038】
これに対し、延長蒸らし工程を保温工程における保温制御シーケンス中に組み込むようにすると、延長蒸らし工程は、それ自体制御内容がシンプルであり、所定加熱量、所定加熱時間の加熱工程を設け、例えば蓋を開けられたら当該延長蒸らし工程を中止して本来の保温制御に戻り、また、保温取り消しキーが押されたら保温工程を中止して保温制御を終えれば良いだけであり、保温工程の保温制御シーケンスの一部を変更するだけで容易に実現することができる。したがって、保温取り消しキーが押された場合に、延長蒸らし工程における延長蒸らし制御はもちろん、保温工程における保温制御を中止して保温制御を終えるようにすることも容易になる。
【0039】
また、早炊きモードでの炊飯が終了し、炊飯終了報知がなされると、自動的に保温工程中の延長蒸らし工程に移行することになるから、従来、少量高速炊飯メニューなどで、ユーザーが手動で行っていた蒸らし補正なども不要となる。
【発明の効果】
【0040】
以上の結果、本願発明によれば、従来の早炊きモードにおける早炊き炊飯機能の利点(迅速性)を生かしながら、食味、食感に劣るという課題をも解決することができ、同一の早炊き炊飯シーケンスでありながら、迅速な炊き立てご飯の提供、迅速でありながら食味、食感も良い炊き立てご飯の提供という2通りのご飯を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本願発明の実施の形態に係る早炊き機能(早炊きモード)を備えた電気炊飯器の炊飯器筐体部分の外部構成を示す平面図である。
【
図2】同電気炊飯器の炊飯器筐体部分の内部構成を示す断面図(
図1のA-A)である。
【
図3】同電気炊飯器の炊飯器筐体部上面の銘板部分の構成を示す拡大図(
図1の要部拡大図)である。
【
図4】同電気炊飯器の炊飯メニュー設定方法を示す説明図である。
【
図5】同電気炊飯器の炊飯及び保温制御回路図である。
【
図6】同電気炊飯器の炊飯及び保温制御シーケンスを示すフローチャートである。
【
図7】同電気炊飯器の炊飯及び保温制御シーケンスを示すタイムチャートである。
【
図8】従来の早炊き機能(早炊きモード)を備えた電気炊飯器の炊飯及び炊飯及び保温制御シーケンスを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、添付の
図1~
図7の図面を参照して、この出願の発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0043】
<電気炊飯器の炊飯器筐体部分の構成:
図1および
図2>
まず
図1および
図2には、この出願の発明の実施の形態にかかる開閉可能な蓋体を備えた電気炊飯器の炊飯器筐体部分の構成が示されている。
【0044】
この実施の形態における電気炊飯器の炊飯器筐体は、例えば
図1および
図2に示すように、その基本的な構成部分として、内鍋3を収納した筐体部本体1と、該筐体部本体1上部の開口部後端側に軸支され、該筐体部本体1の開口部を開閉可能に覆う蓋体2との2つの部分から構成されている。
【0045】
まず筐体部本体1は、米および水を収容する電磁誘導加熱可能な金属製の内鍋3と、該内鍋3を任意に収納セットし得るように形成された内部筐体である有底筒状の内ケース(保護枠)4と、該内ケース4の底部側にワークコイル(電磁誘導コイル)5,5を介して設けられたコイル台6と、該コイル台6および上記内ケース4を保持する外部筺体である有底筒状の外ケース7と、該外ケース7の上端と上記内ケース4の上端とを連結一体化している肩部材8とから構成されている。そして、この筐体部本体1上部の開口部には、上記のように同開口部を開閉可能に覆蓋する蓋体2が上記肩部材8の後端側部分で軸支部であるヒンジユニット9を介して軸着され、上下方向に開閉自在に取り付けられている。
【0046】
筐体部本体1上部の開口部は、上記肩部材8によって周囲を囲繞されており、上記内ケース4の底壁部4a上には、一定の間隔をおいて当該肩部材8により吊り持ちされた内鍋3の底壁部3aが対応するようになっている。そして、上記内ケース4の底壁部4aの中央部には、センターセンサ嵌挿穴4bが設けられており、該センターセンサ嵌挿穴4bを介して下方側からセンターセンサ(内鍋温度検出手段)10が当該内鍋3の底壁部3aに当接するように臨まされており、これにより後述する炊飯および保温制御状態における内鍋3の温度が適切に検出されるようになっている。
【0047】
内ケース4上部の側壁部外周面には、炊飯および保温時において加熱手段として機能する例えば側面ヒータ11が設けられており、炊飯時および保温時において上記内鍋3の側壁部3bの全体を有効かつ均一に加熱するようになっている。また、内ケース4の下方側、上記コイル台6部分には、その周方向4方に位置してフェライトコアが設けられている。
【0048】
<筐体部本体内の電装品収納部およびコードリール設置部の構成:
図1および
図2参照>
一方、符号12は、上記外ケース7の底部側開口部を閉じている底ケースであり、この底ケース12の後端側所定幅部分には、炊飯器本体内に冷却用の空気を取り入れるための空気吸い込みグリル12aが設けられており、その上部には所定の電装品収納空間13が形成されている。そして、この電装品収納空間部13分に、上述したワークコイル5を駆動するワークコイル駆動回路(IGBT)や側面ヒータ11を駆動する側面ヒータ駆動回路、後述する蓋ヒータ23を駆動する蓋ヒータ駆動回路、電源電圧整流用のダイオードブリッジよりなる整流回路、平滑回路、その他の電子制御部品62、ワークコイル駆動回路(IGBT)冷却用の放熱フィン63等を備えた制御基板(電源基板)60が制御基板カバー61を介して設けられている。
【0049】
制御基板60には、その上端側に位置してフレキシブルフラットケーブル(FFC)の一端が接続されるコネクタが設けられており、制御基板60は、フレキシブルフラットケーブルを介して後述する蓋体2側のマイコン基板(操作基板)50に電気的に接続されている。これらコネクタ部およびフレキシブルフラットケーブル部は
図2の切断面よりも手前側にあり、見えないので図面上には表していない。一方、符号61は制御基板60をカバーしている制御基板カバーであり、該制御基板カバー61は、その背面側に設置されるコードリール設置空間65との間を仕切る仕切り壁としての機能も果たしている。
【0050】
<蓋体部分の構成:
図1~
図3>
次に、蓋体2は、例えば
図1および
図2に示されるように、その上部側本体面を構成する合成樹脂製の上板(本体カバー)21と、該上板21の内側(下側)に設けられた同じく合成樹脂製の下板(ポリカバー)22と、該下板22の本体部の内側(下側)に重合固定される蓋ヒータ23を有する金属製の放熱板24と、該放熱板24の下方に設けられ、その外周縁にゴム製のパッキン25を有する合成樹脂製の枠部材26を介して上記下板22に着脱可能に取り付けられている金属製の内蓋27とから構成されている。
【0051】
蓋体2の上記上板21の上部側には、所定の厚さを有する合成樹脂製の銘板20が重合一体化されている。銘板20の前半分部分には、フックボタン(蓋開閉ボタン)20a、予約、炊飯、取り消し、時分、保温、メニュー等の各種操作キー20b,20c,20d、20e,20f,20g、液晶表示窓20h、液晶ディスプレイ20i(液晶表示窓20h内側)が設けられている。フックボタン(蓋開放ボタン)20aは、上板21に設けられたフックボタン設置口にその上端側操作面部分を下方側から臨ませる形で、上下方向に昇降可能に支持されている。
【0052】
また、上記上板21には、上記予約、炊飯、取り消し、時分、保温、メニュー等の各種操作キー20b,20c,20d、20e,20f,20g、液晶表示窓20h、液晶ディスプレイ20iの下方側に位置して、それら予約、炊飯、取り消し、時分、保温、メニュー等の各種操作キー20b,20c,20d、20e,20f,20g、液晶ディスプレイ20iおよび必要なマイコン制御ユニットを実装したマイコン基板(操作基板)50を収納する所定の深さの電装品収納ボックス28が設けられており、同電装品収納ボックス28内に、それら各種操作キー20b,20c,20d、20e,20f,20g、液晶ディスプレイ20iおよび必要なマイコン制御ユニット(
図5中の符号40)を実装したマイコン基板(操作基板)50が収納されている。そして、この電装品収納ボックス28の下部側に、上述したフレキシブルフラットケーブル(FFC)の他端側が接続されるコネクタ部が設けられており、マイコン基板(操作基板)50はフレキシブルフラットケーブル(FFC)を介して上記筐体部本体1側の制御基板(電源基板)60に電気的に接続されている。これらコネクタ部およびフレキシブルフラットケーブル部も
図2の切断面よりも手前側にあり、見えないので図面上には表していない。
【0053】
また、蓋体2の後部側には、平面視略方形の比較的面積の大きなスチームキャップ収納溝30が設けられており、該スチームキャップ収納溝30部分に、お粘成分を回収しながら蒸気のみを外部に逃がすとともに炊飯工程において上記内鍋3内の圧力を調節するスチームキャップ31が設けられている。符号31aは、当該スチームキャップ31の蒸気放出口である。さらに、スチームキャップ収納溝30内の蒸気排出通路には、蒸気排出量の変化から、炊き上げ工程における沸騰の開始を検出し、また後述する早炊きモードでの炊飯終了報知後の延長蒸らし工程における蓋の開放を検出する蒸気センサ32が設けられている。
【0054】
<銘板部における炊飯メニューの設定方法:
図3および
図4>
この出願の発明の実施の形態に係る電気炊飯器は、例えば
図3および
図4に示されるように、各種の炊飯・調理メニューに加えて、白米炊飯メニューに関して、炊飯量に関係なく短時間でご飯を炊き上げる一般的な早炊きメニュー「早炊き」、および1~2合の少ない炊飯量で、一般的な早炊きメニュー(30分程度)よりも短時間(15~17分)でご飯を炊き上げる特別な早炊きメニュー「少量早炊」の2種類の早炊きメニュー(早炊き炊飯制御シーケンス)を備えて構成されている。
【0055】
炊飯及び調理の各種メニューは、上記液晶表示窓20h内の液晶ディスプレイ20iの表示面および同表示面外周の枠部に表示されている。これら各メニューは、上記銘板部20のメニューキー20gを押すことによって任意に選択設定することができる。
【0056】
すなわち、メニューキー20gを押すと、
図4のように、メニューの枠又は△が順に移動して切り替わるので、それによって一般的な早炊きメニュー「早炊き」、又は一般的な早炊きメニューよりも短時間(15~17分)でご飯を炊き上げる特別な早炊きメニュー「少量早炊」を自由に選ぶことができる。
【0057】
そして、「少量早炊」を選んだときは、さらに時分キー20eを用いて、炊飯時間(15~17分)を設定(初期設定地を調整)する。
【0058】
<炊飯および保温制御回路の構成:
図5>
次に
図5は、この実施の形態に係る電気炊飯器の炊飯および保温制御回路の構成を示している。
【0059】
図5中において符号40は、上記マイコン基板(操作基板)50部分に設けられているマイコン制御ユニットであり、この実施の形態に係る電気炊飯器の炊飯および保温制御回路は、同マイコン制御ユニット40を中心として構成されている。
【0060】
同制御回路では、被駆動部として、上述したワークコイル5、側面ヒータ11、蓋ヒータ23、液晶ディスプレイ20i、ブザー29、センサ部として、センターセンサ10、蒸気センサ32、操作部として、上述した予約、炊飯、取り消し、時分、保温、メニュー等の各種操作キー20b,20c,20d、20e,20f,20gを備えて構成されている。そして、マイコン制御ユニット40は、予約、炊飯、取り消し、時分、保温、メニュー等の各種操作キー20b,20c,20d、20e,20f,20gの操作入力に応じて必要な炊飯又は保温制御シーケンスの設定(解除)を行い、センターセンサ10および蒸気センサ32の検出データに基づいて、ワークコイル5、側面ヒータ11、蓋ヒータ23、液晶ディスプレイ20i、ブザー29を所望に駆動する。ワークコイル5はワークコイル駆動回路(IGBT回路)41を介して、側面ヒータ11は側面ヒータ駆動回路42を介して、蓋ヒータ23は蓋ヒータ駆動回路43を介して、液晶ディスプレイ20iは液晶ディスプレイ駆動回路44を介して、ブザー29はブザー駆動回路45を介して、それぞれ駆動される。
【0061】
なお、
図5の制御回路では、電源電圧整流用のダイオードブリッジよりなる整流回路や平滑回路、ファン駆動回路、その他の後述する炊飯および保温制御に関係のない部分は省略している。
【0062】
<炊飯および保温制御シーケンス:
図6および
図7>
次に
図6のフローチャート及び
図7のタイムチャートは、一旦本来の早炊きモードでの炊飯を行い、その炊飯工程が終了して、炊飯の終了を報知した後に、再び所定時間の延長蒸らし加熱を行い、その後、改めて通常の保温工程に移行させることにより、本来の早炊きモードにおける蒸らし不足を補い得るようにした、この出願の発明の実施の形態に係る早炊きモードでの炊飯および保温制御シーケンスを示している。
【0063】
以下、この出願の発明の実施の形態に係る延長蒸らし工程を備えた一般的な早炊きモード(早炊メニュー選択状態)での炊飯および保温制御の内容について詳細に説明する。
【0064】
同制御では、まず炊飯キー(炊飯スタートキー)20cのONにより制御を開始し、ステップS1の吸水工程で早炊き用の吸水制御を実行する。すなわち、同吸水制御では、通常炊飯モードのような弱火での浸し炊きを行うことなく、吸水工程に入ると直ちにフルパワーで内鍋3を加熱し、沸騰に近い温度まで速やかに昇温させ、強い火力で米を加熱することによって可及的に短い時間で米に吸水させる。
【0065】
そして、吸水時間が過ぎると、そのまま昇温工程(ステップS2)に入り、上記フルパワーに近い高火力で沸騰状態になるまで炊き上げる。その後、上記蒸気センサ32で沸騰状態になったことが検知されると(ステップS3でYESになると)、若干火力を落とした中火力(ステップS4)で沸騰状態に維持し(ステップS5)、ゆっくりと炊き上げる(糊化を促進する)。その結果、やがて内鍋3内の水がなくなってきて、内鍋3の温度が炊き上げ検知温度120℃以上(一例)に上昇する。
【0066】
そして、上記センターセンサ10により検出された内鍋3の温度が炊き上げ検知温度120℃以上であると判定されると(ステップS6でYES)、次に、さらに火力を落として(ステップS7)、所定の設定時間内追い炊き加熱を行ない(ステップS8)、同追い炊き設定時間が経過すると(ステップS9でYES)、最終的な蒸らし工程に進む。この蒸らし工程では、焦げないように上記追い炊き工程時よりも火力を落とした弱火で加熱(温調加熱)することによって(ステップS10~S11)、炊き上がった米の表面の水分を飛ばす。早炊きモードの場合、上記吸水工程における吸水時間同様、この蒸らし工程における蒸らし時間も通常の炊飯モードの蒸らし時間に比べて十分に短く設定されている。
【0067】
そして、同蒸らし工程の設定蒸らし時間が経過すると(ステップS12でYES)、次にステップS13に進み、上述したブザー駆動回路45によりブザー29を駆動して、当該早炊きモードでの炊飯が終了したことをユーザーに報知する。これにより、ユーザーは早炊きモードでのご飯が炊き上がったことを知ることになり、通常の状態であれば速やかに蓋体2を開けて、茶碗にご飯をよそうことになる。しかし、すでに述べたように、種々の事情から、自ら早炊きモードに設定して炊飯したとしても、必ずしも直ぐに食べるとは限らず、しばらく放置されるケースが生じる。そのような場合、例えば
図8のタイムチャートに示すように、従来の炊飯シーケンスでは、そのまま加熱量を下げて保温工程(目標保温温度)に移行するだけである。したがって、従来の制御シーケンスの場合、実際に蓋体2が開けられるまでに十分な時間があり、本来なら十分な蒸らし加熱時間を確保することができたにもかかわらず、早炊きモードであるという前提だけでの画一的な制御となっており、実情に応じた柔軟な制御シーケンスとはなっていなかった。
【0068】
そこで、この実施の形態では、仮に早炊きモードが選択された場合であっても、炊飯終了後すぐに食べる場合だけでなく、ケースによっては実際に蓋が開けられるまでに十分な時間がありうるということを前提として、炊飯終了報知前の本来の蒸らし工程とは別に炊飯終了報知後の早炊き用延長蒸らし工程を設けており(
図6のステップS14および
図7の延長蒸らし工程を参照)、上記ブザー29による炊飯終了報知があると必ずステップS14の早炊き用延長蒸らし工程に進んで早炊き炊飯制御シーケンスの蒸らし不足を補う延長蒸らし加熱を実行するようにしている。
【0069】
この早炊き用延長蒸らし工程における蒸らし加熱量および加熱時間は、この実施の形態の場合、例えば炊飯終了報知前の本来の蒸らし工程における加熱量および加熱時間と略同一に設定されている。
【0070】
蒸らし加熱には、およそ105℃程度の内鍋温度が必要である。しかし、焦げを避けるために、ワークコイル5,5の出力を弱火状態に落とし、追い炊き状態で加熱するようにする。また、側面ヒータ11のタクトを上げ、内鍋3の全体を温めて、蒸らし効果を高める。さらに、蓋ヒータ23のタクトを上げて、放熱板24や内蓋27の温度を高い状態に維持し、露付きを防止する。
【0071】
この結果、上記実施の形態の場合、何らかの事情で炊飯終了報知後所定時間以上ご飯を食べない場合には、蒸らし工程が2段階、蒸らし時間が最長で略2倍に延長されることになり、早炊き炊飯制御シーケンスにおける蒸らし不足が有効に補われることになり、従来の早炊き炊飯制御シーケンスにより炊き上げられたご飯に比べて、この実施の形態の早炊き炊飯制御シーケンスにより炊き上げられたご飯は十分に柔らかさが増し(糊化が促進され)、水っぽさ(べちゃつき)もない美味しいご飯になる。
【0072】
もちろん、この場合、上記ステップS14の早炊き用延長蒸らし工程が上記設定時間経過まで完全に実行されるとは限らず、同延長蒸らし工程に入った段階で、ユーザーにより保温取り消しキー20dが押されたり、蓋2が開かれてご飯が食べられたりすることが想定される。
【0073】
そこで、この実施の形態では、上記のように本来の炊飯終了報知後ステップS14の早炊き用延長蒸らし工程に進むと(この早炊き用延長蒸らし工程は、基本的に炊飯終了報知後の保温工程に設けられているものであり、制御シーケンス的には炊飯工程ではなく、あくまでも保温工程における蒸らし工程である。したがって、後述するように保温取り消しキー20dが押されると、以後の保温工程そのものも取り消される。)、まずステップS15で保温取り消しキー20dが押されたか否か、ステップS16で蓋体2が開けられたか否かを判定するようにしており、保温取り消しキー20dが押された場合には、直ちに早炊き用延長蒸らし工程(ステップS14)はもちろん、当該保温工程自体を終了する。他方、保温取り消しキー20dは押されなかったが、蓋体2が開けられた場合には、上記早炊き用延長蒸らし工程を終了して(ステップS20)、ステップS19の本来の保温工程に移行し、加熱量を下げて目標保温温度に制御する。その後は、ステップS21で保温取り消しキー20dが押されたことが判定されるまで通常の保温制御を実行する。
【0074】
この実施の形態の場合、上記蓋体2の開閉は、例えば上記蓋体2の開放による上述した蒸気センサ32の蒸気検出量の低下(出力低下)により検出するようにしている。蒸気センサ32を利用すると、1つのセンサを沸騰検知と蓋体開閉検知の2つの用途に兼用することができ、コスト的に有利である。しかし、上記蓋体2の開閉検知手段は、このような手段に限られるものではなく、例えば傾斜センサや磁気センサなど、各種の検知手段の採用が可能である。
【0075】
他方、以上の早炊き延長蒸らし工程(ステップS14)の実行中において、保温取り消しキー20dが押されることなく(ステップS15でNO)、かつ蓋体2も開けられなかった(ステップS16でNOの)場合には、ステップS17に進み、上記早炊き用延長蒸らし工程(ステップS14)における延長蒸らし時間が経過したか否かを判定する。そして、その判定結果がNOの場合には同判定結果がYESになるまで上記早炊き用延長蒸らし工程(ステップS14)を実行し、上述した本来の蒸らし工程での蒸らし不足を補い、炊き上がったご飯の食味を向上させる。早炊き用延長蒸らし工程(ステップS14)における延長蒸らし時間が経過すると(ステップS17の判定でYESになると)、改めてブザー駆動回路45によりブザー29を駆動することにより、当該早炊き用延長蒸らし工程における延長蒸らし時間が経過し、早炊き用蒸らし延長炊飯が終了したことをユーザーに放置する。そして、その上でステップS19の本来の保温工程に移行する。
【0076】
したがって、この状態で保温されているご飯は、基本的には上述の早炊きモードで炊飯されたご飯ではあるが、十分に早炊き用延長蒸らし工程で蒸らされて柔らかく(米の中心部まで糊化が進行し)、十分に米表面の水分も飛ばされた美味しいご飯となる。また、早炊き用延長蒸らし工程により、内鍋3上方の蓋ヒータ23による実質的な加熱時間が長くなり、放熱板24の温度も高く維持されるので、内蓋27部分の露付き量が減少し、ご飯の白ボケも発生しにくくなる。
【0077】
この実施の形態の場合、上記早炊き用延長蒸らし工程における蒸らし設定時間は炊飯工程における蒸らし時間と同様、その時の炊飯量、加熱量等を考慮して決められるが、その設定時間の経過は、工程時間ごとの工程タイマーで計測しても良いし、工程時間ごとの工程タイマーとは別のタイマーを設けて、上記炊き上げ検知時点からの経過時間を計測するようにしてもよい。そのようにした場合、蒸らしすぎを回避しやすくなる。
【0078】
このような構成によると、ご飯の炊き上がりタイミングとユーザーの食事タイミングとの関係を有効に利用して、早炊きモードで炊き上げたご飯の食味を可能な限り改善、向上させることができるようになる。また、単一の早炊きモードのご飯を早炊きレベル基本でのご飯と早炊き食味改善レベルでのご飯との2種に炊き分けることができ、単一の早炊きモードにおける早炊きバリエーションを拡張することが可能となる。したがって、早炊きモードの機能向上にもつながる。
【0079】
<この出願の発明の実施の形態に係る電気炊飯器の特徴>
この出願の発明の発明の実施の形態に係る電気炊飯器の構成では、当該早炊きモードでの炊飯が終了すると、まず炊飯終了報知を行って当該早炊きモードでの炊飯が完了したことをユーザーに知らせるようになっている。この点は従来の早炊きモードを備えた電気炊飯器と全く同様であり、ユーザーは、時短状態で炊飯を行い、炊飯終了報知に対応して蓋を開けて炊き立てのご飯を食べることができる。したがって、何かと忙しい朝食時における炊飯や少しご飯が足りなかった夕食時の迅速な追加炊飯に適切に対応することができる。
【0080】
しかし、早炊きモードの場合、そのままでは吸水工程における吸水時間が短いために炊きあがった米の中の水分量が少なく、また蒸らし工程における蒸らし時間が短いために炊きあがった米の表面に水分が残りやすい。そのため、通常モードで炊いたご飯に比べると、硬めで、若干の水っぽさ(べちゃつき)が残る。
【0081】
そこで、この出願の発明の実施の形態に係る電気炊飯器の構成では、上記炊飯終了報知があると、同炊飯終了報知に対応して、当該炊飯終了報知前の蒸らし工程に連続する形で延長蒸らし工程が設けられており、一旦炊飯終了報知を行った後にも所定時間の延長蒸らし加熱を行うようになっている。
【0082】
すなわち、早炊き炊飯シーケンス本来の蒸らし工程が終了し、炊飯終了報知があると、形式的には保温工程に移行するが、保温工程に移行したからと言って直ちに加熱手段の加熱量を下げて設定保温温度に制御するのではなく、一旦所定加熱量、所定加熱時間の延長蒸らし加熱を行ってから本来の保温制御(加熱量を下げて設定保温温度に移行させる)を行わせるようになっている。つまり、保温工程の最初に所定加熱量、所定加熱時間の延長蒸らし加熱工程が設けられている。
【0083】
したがって、例えば早炊きモードでの炊飯が完了したことをユーザーに報知したにもかかわらず、暫くの間ユーザーが蓋を開けてご飯を食べなかったような場合には、必ず所定加熱量、所定加熱時間の延長蒸らし加熱が実行されることになる。その結果、合計の蒸らし加熱時間が長くなり、早炊きモードで炊飯したご飯の米が十分に蒸らされ、米の中心部まで十分に熱が通って糊化が進行し、柔らかさを増すと共に、米の表面に残っていた水分が飛ばされ、水っぽさ(べちゃつき)がなくなる。そして、そのように有効に食味を改善した上で本来の保温工程に移行する。
【0084】
この結果、最適なタイミングでの保温が可能となり、同保温工程で保温されるご飯は、早炊きモードで炊き上げられたご飯であるにもかかわらず、食味や食感の良いものとなる。
【0085】
すなわち、種々の早炊きモードの利用状況を観察すると、上記早炊きモードでご飯を炊いたからと言って、常に炊きあがったご飯をすぐに食べるとは限らない。例えば食べようと思いながらついつい他の用事をしてみたり、食べようとしたら来客があったり、また食事の前にまずスープをよそうなど、実際にご飯を食べるまでに時間が空いてしまうケースは多い。
【0086】
従来の構成だと、これらの時間はただ加熱量を落とした目標保温温度への移行に使われるだけの時間であり、この間で蒸らし作用を期待することはできないので、ご飯の食味を向上させることには何の作用も果たしていない。早炊きモードとの関係でみれば、これらの時間はある意味で無駄になっている。
【0087】
ところが、以上のような構成を採用すると、保温工程における延長蒸らし工程の実行により、実質的に合計の蒸らし時間が長くなり、早炊きモードで炊飯したご飯の米が当該空き時間を利用して十分に蒸らされ、柔らかさを増すと共に表面に残っていた水分が飛ばされて水っぽさもなくなり、美味しいご飯になる。そのため、炊き上げ後、実際に食べるまでの空き時間が無駄ではなくなる。
【0088】
また、ユーザーに対して、炊き上げたご飯をすぐに食べる食べ方、少し時間を置いて食味を向上させたご飯を食べる食べ方の2通りの早炊きスタイルを提供することができる。
【0089】
また、この出願の発明の発明の実施の形態に係る電気炊飯器の構成では、延長蒸らし工程が終了すると、炊飯工程における炊飯終了後の炊飯終了報知と同様に延長蒸らし炊飯終了報知を行うようになっている。
【0090】
このような構成によると、従来型の基本早炊きモードでの炊飯終了報知に加え、同基本早炊きモードで炊き上げたご飯をさらに延長蒸らし加熱して食味、食感を向上させた改良型早炊きモードでの炊飯終了報知の2通りの炊飯終了報知が行われるようになり、ユーザーはそれらに基づいて任意の食べ時のご飯を選択することができる。
【0091】
これら2種の炊飯終了報知は、単なるブザー報知、音声報知のいずれでもよいが、それぞれを区別することができる報知内容であることが望ましい。
【0092】
また、この出願の発明の発明の実施の形態に係る電気炊飯器の構成では、延長蒸らし工程は、炊飯工程における炊き上げ検知時から所定設定時間が経過した時に終了するようにしている。
【0093】
延長蒸らし工程を所定設定時間の経過(タイマー計測)で終了させる方法としては、工程時間を設定する制御タイマーを用いて個別に設定時間の経過を判定する方法もあるが、上記のように工程時間を設定する制御タイマーとは別のタイマーを用いて炊飯工程における炊き上げ検知時点からの設定時間の経過を判定して終了させるようにすることもできる。このようにすると、蒸らしすぎを回避することができる。
【0094】
また、この出願の発明の発明の実施の形態に係る電気炊飯器の構成では、炊飯器の蓋の開閉を検知する蓋開閉検知手段を設け、該蓋開閉検知手段により炊飯器の蓋が開かれたことが検知された場合には、延長蒸らし工程における延長蒸らし制御を中止して保温制御に移行するようにしている。
【0095】
このような構成の場合、早炊きモードでの炊飯が終了し、炊飯終了報知がなされて、延長蒸らし工程における延長蒸らし制御(延長蒸らし加熱)が行われている場合であっても、炊飯器の蓋が開かれた場合には、ユーザーが早炊きでのご飯を食べようとしていると判断し、それを優先して上記延長蒸らし工程における延長蒸らし制御を中止し、通常の保温制御に移行する。そして、それにより、それまでの経過時間に応じた延長蒸らし加熱により食味が向上したご飯を所定目標保温温度の保温状態に維持する。
【0096】
その結果、ユーザーは、早炊きモードで炊き上げ、かつ従来よりも食味、食感が向上した(経過時間分だけ)美味しいご飯を任意に食べることができるようになる。特に、以上の構成の場合、蓋が開けられるまで蒸らし加熱が行われていることから、従来のように、蒸らし終了後任意の時間をおいてご飯がよそわれる場合に比較して、より炊き立ちの美味しいご飯を提供することができる。
【0097】
この場合、蓋開閉検知手段には、蒸気センサ、傾斜センサ、磁気センサなどの使用が可能である。中でも、蒸気センサは、沸騰検知のために通常設けられている。したがって、蒸気センサを利用すると別途専用のセンサを設ける必要がなくなる。
【0098】
また、この出願の発明の発明の実施の形態に係る電気炊飯器の構成では、、保温工程における保温制御を停止する保温取り消しキーを備えており、該保温取り消しキーが押された場合には、延長蒸らし工程における延長蒸らし制御はもちろん、保温工程における保温制御を中止して保温制御を終えるようにしている。
【0099】
このような構成の場合、早炊きモードでの炊飯が終了し、炊飯終了報知がなされて、延長蒸らし工程における延長蒸らし制御(延長蒸らし加熱)が行われている場合であっても、保温工程における保温制御を停止する保温取り消しキーが押された場合には、ユーザーが延長蒸らし工程における延長蒸らし制御はもちろん、保温工程における保温制御も必要ではないと判断した場合であると判断して、上記延長蒸らし工程における延長蒸らし制御はもちろん、保温工程における保温制御を中止して炊飯および保温制御を終了する。
【0100】
さらに、この出願の発明の発明の実施の形態に係る電気炊飯器の構成では、延長蒸らし工程は、保温工程における保温制御シーケンス中に組み込まれている。
【0101】
上記の延長蒸らし工程は、炊飯工程中の本来の蒸らし工程に続く形で設けることもできる(例えば蒸らし工程1、蒸らし工程2のように)。しかし、このようにすると、炊飯工程本来の蒸らし加熱時間を長くすることになり、早炊きモード自体の炊飯時間が長くなり、早炊きモードでなくなることになる。
【0102】
また、上記延長蒸らし工程は、炊飯工程と保温工程との間に独立した加熱工程として設けることもできる。しかし、そのようにすると、制御プログラムが複雑となり、炊飯~保温制御シーケンス自体の変更が必要となる。
【0103】
これに対し、上記延長蒸らし工程は、それ自体制御内容がシンプルであり、所定加熱量、所定加熱時間の加熱工程を設け、例えば蓋を開けられたら当該延長蒸らし工程を中止して本来の保温制御に戻り、また、保温取り消しキーが押されたら保温工程を中止して保温制御を終えれば良いだけであり、保温工程の保温制御シーケンスの一部を変更するだけで容易に実現することができる。したがって、保温取り消しキーが押された場合に、延長蒸らし工程における延長蒸らし制御はもちろん、保温工程における保温制御を中止して保温制御を終えるようにすることも容易になる。
【0104】
また、早炊きモードでの炊飯が終了し、炊飯終了報知がなされると、自動的に保温工程中の延長蒸らし工程に移行することになるから、従来、少量高速炊飯メニューなどで、ユーザーが手動で行っていた蒸らし補正なども不要となる。
【符号の説明】
【0105】
2:蓋体
3:内鍋
5:ワークコイル
10:センターセンサ
11:側面ヒータ
20:銘板
20c:炊飯キー
20d:取り消しキー
20i:液晶ディスプレイ
23:蓋ヒータ
32:蒸気センサ
40:マイコン制御ユニット