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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】車両用軽量合わせガラス板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
C03C27/12 H
C03C27/12 R
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020516154
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2019014571
(87)【国際公開番号】W WO2019208119
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2018083545
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 健介
(72)【発明者】
【氏名】森 直也
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-319046(JP,A)
【文献】特表2016-530190(JP,A)
【文献】特開2016-175835(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094658(WO,A1)
【文献】特開2017-019669(JP,A)
【文献】国際公開第2017/171018(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/051717(WO,A1)
【文献】特開平10-204189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12,
B32B 17/06-17/10,37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の曲げガラス板を、中間樹脂フィルムを介して一体化させる車両用合わせガラス板の製造方法において、
該2枚の曲げガラス板の間に該中間樹脂フィルムを積層し積層体とする工程1、
該積層体の各層間を脱気する工程2、及び
脱気後の該積層体を加熱・加圧処理し一体化させる工程3、を有し、
該曲げガラス板の曲率半径の最小値が、200~2900mmの範囲内であり、
該曲げガラス板の少なくとも1枚の板厚が、0.1~2.0mmの範囲内であり、
工程2より前に、曲げガラス板の表面形状に追従可能になるように該中間樹脂フィルムの温度を該曲げガラス板上で上昇させて、該中間樹脂フィルムを変形させる工程A、を有することを特徴とする車両用軽量合わせガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記工程Aは、前記中間樹脂フィルムを加熱して該中間樹脂フィルムの貯蔵弾性率を1×10~3.5×10Paの範囲内とする工程を含むことを特徴とする請求項1記載の車両用軽量合わせガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記工程Aは、前記工程1以後に行うものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用軽量合わせガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記工程2が、前記積層体の各層間を減圧することによって脱気を行なうものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車両用軽量ガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記中間樹脂フィルムの20℃における貯蔵弾性率が、5×10~3×10Paの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車両用軽量合わせガラス板の製造方法。
【請求項6】
工程2より前に、前記積層体の端部よりはみ出た前記中間樹脂フィルムの余剰分を除去する工程を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の車両用軽量合わせガラス板の製造方法。
【請求項7】
前記工程2以後、前記工程3より前に、前記積層体を70~100℃で加熱し、該積層体を予備接着する工程Bを有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の車両用軽量合わせガラス板の製造方法。
【請求項8】
前記工程2は、変形後の前記中間樹脂フィルムの温度を室温とした後に行なうものであることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の車両用軽量合わせガラス板の製造方法。
【請求項9】
前記工程1は、変形後の前記中間樹脂フィルムの温度を室温とした後に行なうものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用軽量合わせガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用合わせガラス板に関するものであり、特に板厚が薄い曲げガラス板を中間樹脂フィルムで一体化させた車両用軽量合わせガラス板に関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは2枚のガラス板を接着性フィルムを介して一体化させたガラス板であり、建築用や車両用の窓材として広く用いられている。上記の接着性のフィルムは、一般的にはポリビニルブチラール(以下「PVB」と記載することもある)樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合(以下「EVA」と記載することもある)樹脂等が知られている。上記のような合わせガラスの中でも、特に車両の窓材としては、ガラス板に曲げ加工を施した曲げガラス板を2枚用いて、上記の接着性フィルムを介して一体化させた曲面合わせガラス板(以下、「車両用合わせガラス板」と記載することもある)が広く用いられている。曲面合わせガラス板は、通常、湾曲形状に曲げ成形されたガラス板を、該ガラス板同士の間に中間膜を介在させて水平方向に積層し、積層した前記ガラス板と前記中間膜とを加熱・加圧して圧着することによって得られる。
【0003】
近年、車両を軽量化するさまざまな試みが行われており、その中で車両用の窓材についても軽量化が検討されている。窓材を軽量化する手法としては、主にガラス板の板厚を薄くすることが挙げられる。このような軽量化に伴い、板厚が薄くなったガラス板の耐久性を補うことを目的として、車外側のガラス板を車内側のガラス板よりも厚くし、車外側へ凸曲面が向くように車体に配置するという提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、複数枚のガラス板の最も薄いガラス板の板厚が1.6mm未満であって、且つ、前記複数枚のガラス板の、最も薄いガラス板の板厚と最も厚いガラス板の板厚との板厚差が0.5mm以上とした合わせガラスの製造方法が開示されている。当該文献では、水平方向に配置した金型を用いてガラス板を曲げ成形する際、板厚の薄いガラス板が熱によって下方へ垂れ易いことに起因する問題を解決することを目的として、薄いガラス板を下方に配置するように重ね合わせた状態で曲げ成形を行なうことを提案している。
【0005】
上記の他にも、ガラス板の板厚を薄くすると、窓ガラスの遮音性が低下するという問題がある。例えば特許文献2では、軽量でかつ剛性と遮音性を有する合わせガラスを得る為に、1対のアウター層と、該アウター層に挟持されたコア層とを有し、周波数1Hz、温度20℃における貯蔵弾性率G’が2.0×106Pa以上である中間膜を接着性フィルムとして用いて、厚み0.3~1.8mmのガラス板を1対一体化させた、合わせガラスが提案されている。
【0006】
また、例えば特許文献3には、ガラス板の薄板化に伴う窓ガラスの強度低下を抑制する目的で、接着性フィルムとして剛性を向上させた3元共重合体のアイオノマーを用いる手法が開示されている。
【0007】
また、例えば特許文献4には、ガラス板の薄板化に伴って使用される剛性の高い合わせガラス用中間樹脂膜は、保存や搬送の為のロール状に巻き取り難いという問題が開示されている。当該文献では、高い剛性を持ちつつロール状体に巻き取り可能な柔軟性を有する、ポリアセタール樹脂、金属原子及び可塑剤を含有し、特定の貯蔵弾性率を示す合わせガラス用中間膜を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】再公表2012-176813号公報
【文献】特開2017-65966号公報
【文献】特開2013-28486号公報
【文献】国際公開2015/152241号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように、近年、車両用合わせガラス板の厚みを薄くした車両用軽量合わせガラス板が求められている。しかし、遮音性や強度が不足してしまうという問題があり、例えば特許文献2、3に開示されたような接着性フィルムや剛性を向上させたフィルムを用いて、上記問題を解決しようとする試みがなされつつある。また、例えば特許文献4では、ロール状に巻き取り可能な柔軟性を有する高剛性の中間樹脂フィルムとするために、樹脂中に金属原子を含有させたフィルムが提案されている。
【0010】
本発明者らが厚みの薄いガラス板を用いて実際に合わせガラスを作製したところ、地面に対して水平となるようにガラス板を置き、その上に接着性フィルムと厚みの薄いガラス板を積層した際に、接着性フィルムの種類によっては、薄いガラス板が該接着性フィルムに弾かれて動いたり、該接着性フィルムに押し上げられて端部が浮き上がってしまい、2枚のガラス板の間に大きな隙間を生じてしまう等、積層が不良になる現象が散見された。このように積層不良が生じたサンプルに外圧をかけて押さえ込み、該積層体の各層間の脱気を試みたところ、薄いガラス板が割れたり歪んだりして破損や変形が生じるという、従来では見られなかった新たな問題が生じることがわかった。さらに、フィルムの剛性を高くする程、上記の問題が生じ易くなることがわかった。
【0011】
そこで本発明は、厚みの薄いガラス板を用いた車両用軽量合わせガラス板の製造時に積層不良を抑制し、脱気処理時に薄いガラス板を破損・変形させない手法を得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題に対して以下のような検討を行った。まず、地面に対して水平方向に置いた2枚の厚みの薄い曲げガラス板の間に中間樹脂フィルムを挟み、積層不良が生じている積層体の温度を上昇させた。すると、温度が上昇することによって該中間樹脂フィルムが軟化し、該中間樹脂フィルムの自重や該中間樹脂フィルム上の曲げガラス板の重みによって、該中間樹脂フィルムが曲げガラス板の表面形状に沿って変形した。このように中間樹脂フィルムを変形させ、積層不良を解消した後で脱気を行なったところ、上記課題を解決出来ることがわかった。また、この時、自動車のルーフガラスに使われるような、緩やかに曲がった曲げガラス板(例えば、曲率半径の最小値が約3000mm以上)の場合、前述した課題が生じ難いことがわかった。
【0013】
上記で得られた知見を基にさらなる検討を行ったところ、室温で剛性の高い中間樹脂フィルムでも上記の方法を用いることが可能であり、さらに、中間樹脂フィルムを変形させた後に中間樹脂フィルムの温度を室温へ戻しても、変形後の形状を維持することが可能であることがわかった。
【0014】
すなわち本発明は、2枚の曲げガラス板を、中間樹脂フィルムを介して一体化させる車両用合わせガラス板の製造方法において、
該2枚の曲げガラス板の間に該中間樹脂フィルムを積層し積層体とする工程1、
該積層体の各層間を脱気する工程2、及び
脱気後の該積層体を加熱・加圧処理し一体化させる工程3、を有し、
該曲げガラス板の曲率半径の最小値が、200~2900mmの範囲内であり、
該曲げガラス板の少なくとも1枚の板厚が、0.1~2.0mmの範囲内であり、
工程2より前に、前記曲げガラス板の表面形状に追従可能になるように該中間樹脂フィルムの温度を上昇させて、該中間樹脂フィルムを変形させる工程A、を有することを特徴とする車両用軽量合わせガラス板の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、厚みの薄いガラス板を用いた車両用軽量合わせガラス板の製造時に積層不良を抑制し、脱気処理時に薄いガラス板を破損・変形させない手法を得ることが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1:用語の説明
本明細書に用いる用語を以下に説明する。
【0017】
(貯蔵弾性率)
本明細書の「貯蔵弾性率」は、中間樹脂フィルムを、幅約9mm×長さ約30mmの大きさに切り出して測定用サンプルとし、動的粘弾性測定装置(Exstar DMS7100、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて測定した値を用いた。測定は、上記の測定用サンプルの測定長が10mmとなるように上記測定装置に取り付け、測定条件を引張モード、周波数10Hz、昇温速度2℃/minとして、-20℃~100℃の温度領域で貯蔵弾性率を測定した。
【0018】
(曲げ、曲面)
本明細書における「曲げ」及び「曲面」とは、ガラス板の表面形状が曲面を有することを指すものとする。また、平らなガラス板を曲げ加工して得た場合や、ガラスを板成型する際に曲面形状を有する形状に成型した場合等、曲面を形成する過程によらず、曲面を有しているものを「曲げ」及び「曲面」と記載するものとする。
【0019】
(軽量合わせガラス板)
本明細書における「軽量合わせガラス板」とは、厚みが2.0mm以下のガラス板を、少なくとも1枚用いた合わせガラス板を指すものとする。また、合わせガラス板に用いる曲げガラス板の厚みの合計が4mm以下となるものとしてもよい。
【0020】
(積層不良)
本明細書における「積層不良」とは、前述したように、曲げガラス板と中間樹脂フィルムとを重ねた際に、曲げガラス板が中間樹脂フィルムによって押し出されて位置ズレを生じたり、該接着性フィルムに押し上げられて端部が浮き上がったりして、結果的に2枚のガラス板の間に部分的な隙間を生じてしまう状態を指すものとする。また、積層不良が生じている場合、積層された中間樹脂フィルムと曲げガラス板との間に隙間が生じるとしてもよい。なお、当該「隙間」は脱気不足や2枚の曲げガラス板の形状の不一致によって生じる隙間は除くものとする。また、積層時に僅かな隙間が生じたとしても、作業者が手で軽く押さえたり、脱気処理を行うための器具の装着を行う等、弱い外力を加えた程度で隙間がなくなる場合は、当該「積層不良」には含めないものとする。
【0021】
2:各構成部材
本発明に用いることが可能な各部材について以下に説明する。
【0022】
(曲げガラス板)
本発明に用いる曲げガラス板は、隙間なく重ねられる透明の2枚の曲げガラス板であればよく、特に限定されるものではない。曲げガラス板として用いるガラスの種類としては、所望の光学特性等を達成出来れば良く、例えばソーダライムガラスや、紫外線・赤外線等を吸収する着色ガラス等が挙げられる。また、異なる種類のガラスの曲げガラス板を2枚組み合わせるのでもよい。
【0023】
曲げガラス板の形状は所望の形状であればよく、例えば車両用のウィンドシールド等に用いる場合は、三次元的に予め曲げられたガラス板が広く用いられる。この時、ガラス板はガラスの中央部と端部、垂直方向と水平方向等複雑に曲がっているので、曲率半径は場所によって大きく異なる。一般的にはガラスの中央部よりも端部の方が曲がりが大きく、曲率半径は端部の方が小さくなる。例えば、車両用のウィンドシールドの中には、曲率半径の最小値が300mm、最大値が20000mmとなるような曲がりを有する複雑な曲面形状を有するものがある。本発明者らの検討によって、前述した積層不良は曲げガラス板の曲率半径の最小値が、200~2900mmの範囲内であるとき、積層不良を生じ易いことがわかった。また、好ましくは300~2800mm、より好ましくは500~2500mmとしてもよい。なお、曲率半径の最小値が2900mmを超えるような緩やかに曲がった曲げガラス板を用いる場合、前述した課題は生じ難いと考えられるが、曲率半径が2900mmを超える曲げガラス板を用いる場合でも、本発明の手法を用いて車両用軽量合わせガラスを得てもよい。
【0024】
本発明に用いる曲げガラス板のうち少なくとも1枚の板厚は、0.1mm以上、2.0mm以下の範囲内となるものである。好ましくは下限を0.3mm以上、さらに好ましくは0.4mm以上、上限を好ましくは1.8mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下としてもよい。また、もう一方のガラス板の板厚は適宜選択されればよいが、軽量化の点から、合わせガラス板に用いる曲げガラス板の厚みの合計が4mm以下となるように選択するのが好ましい。
【0025】
また、使用する曲げガラス板としては、化学強化処理、風冷強化処理、倍強化処理等、各種強化処理を施されたものを用いてもよい。特にガラス板の板厚が小さくなるにつれてガラスの強度は低下する傾向にあることから、化学強化処理された曲げガラス板を用いるのが好適である。
【0026】
(中間樹脂フィルム)
中間樹脂フィルムは、通常、2枚の曲げガラス板の間に配置され、2枚の曲げガラス板を一体化させるものだが、前述した通り、車両用軽量合わせガラス板の場合、従来通りの手法では積層不良を生じ、脱気処理を行う際に薄い方のガラス板が損傷・変形してしまう。そこで本発明では、曲げガラス板の表面形状に追従可能になるように当該中間樹脂フィルムの温度を上昇させ、軟化した該中間樹脂フィルムを変形させることによって、前述した積層不良を解消できることを見出した。
【0027】
本発明で用いる中間樹脂フィルムとしては、常温でフィルム形状をとる熱可塑性樹脂、又は熱可塑性樹脂を有するフィルムを用いるのが望ましい。上記のような熱可塑性樹脂としては、一般的に利用されているポリビニルブチラール樹脂(以下PVB樹脂と記載することもある)又はEVA樹脂を含むホットメルトタイプの接着剤が挙げられる。また、アイオノマー樹脂やウレタン樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、エラストマー樹脂、及びそれらを組み合わせて多層にしたものも使用できる。特にアイオノマー樹脂は剛性が高いため、ガラス板の薄板化に伴う強度低下を抑制することが可能であり、好適に用いることが可能である。また、一部が着色したもの、遮音機能を有する層を熱可塑性樹脂でサンドイッチしたもの、厚さに傾斜があるもの、表面にエンボス加工が処理されたもの、剛性を高めたものなども使用できる。また、樹脂中に紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、着色剤、接着調整剤を適宜添加配合したものでも良く、特に近赤外線を吸収する微粒子を分散させたものは、高性能な遮熱機能を付与することが可能なため好ましく利用できる。
【0028】
中間樹脂フィルムは、貯蔵弾性率が大きいほど曲がり難く、小さいほど曲がり易い。本発明は、特に室温で曲げガラス板の曲面に形状追従し難い中間樹脂フィルムに有用である。例えば、使用する中間樹脂フィルムとしては、20℃における貯蔵弾性率が、5×108~3×109Paの範囲内であることが好ましいとしてもよい。また、より好ましくは7×108~2×109Paとしてもよい。
【0029】
中間樹脂フィルムの厚みは特に限定するものではないが、一般的に厚い程剛性が高くなると考えられることから、積層時に曲げガラス板の曲面に形状追従させることが可能な程度とすることが望ましい。また、曲面合わせガラス板の視認性の観点からも、適度な厚みであることが好ましい。例えば、500~1500μmとしてもよい。
【0030】
前述したように、本発明では曲げガラス板の表面形状に追従可能となるように、該中間樹脂フィルムの温度を上昇させ、軟化させることによって該中間樹脂フィルムを変形させるものである。変形後の当該中間樹脂フィルムは、曲げガラス板の表面形状に追従可能な曲面形状を有し、本発明の工程3や工程Bを経るまでは、曲げガラス板と接着していないものとする。また、当該中間樹脂フィルムは、変形時の温度より温度を下げて室温程度(例えば、10~28℃程度)とした場合でも、変形後の曲面形状は維持される。
【0031】
また、変形後の当該中間樹脂フィルムを軟化させる前の温度(例えば、室温程度)に戻した場合、ある特定温度において、変形前後で中間樹脂フィルムの貯蔵弾性率は大きく変わらないと考えられる。従って、変形後の中間樹脂フィルムの20℃における貯蔵弾性率が、5×108~3×109Paの範囲内であるのが好ましいとしてもよい。
【0032】
(車両用軽量合わせガラス板)
本発明によって得られる曲面合わせガラス板は、2枚の曲げガラス板が中間樹脂フィルムを介して一体化されたものである。また、曲げガラス板の曲率半径の最小値が200~2900mmの範囲内、曲げガラス板の少なくとも1枚の板厚が0.1~2.0mmの範囲内であり、従来の車両用合わせガラス板よりも軽量化されたものである。用いる曲げガラス板の板厚が異なる場合、強度の点から板厚が薄い方が車内側に配置されるようにするのが好ましい。
【0033】
また、本発明によって得られる好適な車両用軽量合わせガラス板は、2枚の曲げガラス板を、中間樹脂フィルムを介して一体化された車両用軽量合わせガラス板において、該曲げガラス板の曲率半径の最小値が、200~2900mmの範囲内であり、該曲げガラス板の少なくとも1枚の板厚が、0.1~2.0mmの範囲内であり、該中間樹脂フィルムの20℃における貯蔵弾性率が5×108~3×109Paの範囲内であることを特徴とする車両用軽量合わせガラス板である。
【0034】
また、車両用軽量合わせガラス板の光学特性は用途に応じて適宜決定されればよく、特に限定されるものではない。例えば車両用のウィンドシールド等に用いる場合は、運転者の視認性を確保するために、可視光線透過率を70%以上とするのが望ましい。
【0035】
また、該車両用軽量合わせガラス板は、機能性フィルムを有してもよい。例えば、中間樹脂フィルムを2枚用いて、該中間樹脂フィルムの間に機能性フィルムを挟持させるものでも、曲げガラス板と中間樹脂フィルムとの間に機能性フィルムを挟持させるものでもよい。当該機能性フィルムとしては、例えば遮熱フィルム、紫外線遮蔽フィルム、液晶フィルム、位相差フィルム、導光フィルム、光拡散フィルム、遮音フィルム、導電性フィルム、意匠性フィルム、調光フィルム等が挙げられる。
【0036】
3:車両用軽量合わせガラス板の製造方法
本発明は、2枚の曲げガラス板を、中間樹脂フィルムを介して一体化させる車両用合わせガラス板の製造方法において、
該2枚の曲げガラス板の間に該中間樹脂フィルムを積層し積層体とする工程1、
該積層体の各層間を脱気する工程2、及び
脱気後の該積層体を加熱・加圧処理し一体化させる工程3、を有し、
該曲げガラス板の曲率半径の最小値が、200~2900mmの範囲内であり、
該曲げガラス板の少なくとも1枚の板厚が、0.1~2.0mmの範囲内であり、
工程2より前に、前記曲げガラス板の表面形状に追従可能になるように該中間樹脂フィルムの温度を上昇させて、該中間樹脂フィルムを変形させる工程A、を有することを特徴とする車両用軽量合わせガラス板の製造方法である。
【0037】
(工程A)
工程Aは、工程2より前に、前記曲げガラス板の表面形状に追従可能となるように、中間樹脂フィルムの温度を上昇させて、該中間樹脂フィルムを変形させる工程である。中間樹脂フィルムが曲げガラス板の曲面形状に追従しないと積層不良が生じてしまい、積層不良が解消されないと、工程2の脱気処理時に積層体に脱気用の装置や器具を取り付けたり、積層体の脱気を行なった際、曲げガラス板が割れたり歪んだりする場合がある。従って、工程2より前に積層不良を解消するため、該工程Aを行なう。また、工程Aは必要に応じて複数回行なってもよい。
【0038】
工程Aの際の中間樹脂フィルムの温度は、中間樹脂フィルムを変形可能な程度に軟化させるのが可能であり、かつ中間樹脂フィルムに接着性が生じない温度であればよく、用いる中間樹脂フィルムの種類によって適宜選択されればよい。例えば35℃以上、65℃未満としてもよい。より好ましくは下限を40℃以上、上限を55℃以下としてもよい。
【0039】
工程Aにおいて、中間樹脂フィルムを変形させる方法は特に限定されるものではないが、中間樹脂フィルムの自重や積層体を形成した際の曲げガラス板の重み等によって、変形させるのが簡便である。例えば、曲げガラス板や、曲げガラス板の表面形状を模した金型等を地面や作業台上に水平方向に置き、さらに該曲げガラス板や金型の上に該中間樹脂フィルムを水平方向に積層した後で、該中間樹脂フィルムの温度を上昇させ、軟化させることによって、該中間樹脂フィルムを自重によって変形させることが可能となる。この時、曲げガラス板や金型は、凸面上や凹面上に中間樹脂フィルムを積層出来るように配置するのが好適である。また、工程1の後に当該工程Aを行なう場合は、中間樹脂フィルムの上に積層した曲げガラス板の重みによって、該中間樹脂フィルムの変形が促進されるため好ましい。
【0040】
また、前記工程Aは、前記中間樹脂フィルムを加熱して該中間樹脂フィルムの貯蔵弾性率を1×107~3.5×108Paの範囲内とする工程を含むのが好ましい。貯蔵弾性率が3.5×108Paを超えると中間樹脂フィルムの軟化が足りず変形させ難い、又は室温へ戻した後に変形後の曲面形状が維持されない等の場合がある。また、下限値は特に限定するものではないが、例えば1×107Pa未満だと曲げガラス板と接着し易くなることがある。より好ましくは1.5×107Pa以上、3×108Pa以下としてもよい。
【0041】
上記の加熱方法は特に限定するものではないが、加熱し過ぎると中間樹脂フィルムが曲げガラス板表面に接着してしまい、その後の工程2で脱気不良を生じ易くなることから、接着性が生じない程度の温度で加熱可能な装置を用いるのが望ましい。例えば、温風を吹き付けたり、温度調節した環境に放置したりしてもよく、電気炉やヒーター、加熱可能なロール、恒温槽等を用いてもよい。
【0042】
工程Aは、前記工程1を開始するより前に行なうものでも、工程1で積層を行なっている最中に行なうものでも、工程1で積層不良のある状態で積層した後に工程Aを行なって当該積層不良を解消するものでもよいが、前記工程1以後に行うものであるのが好ましい。これは、軟化した状態の中間樹脂フィルムを、曲げガラス板に積層する為に持ち上げたり動かしたりすると、中間樹脂フィルムにさらなる変形が生じ工程Aで得た曲面形状が損なわれる場合がある為である。この意図しない変形を防ぐためには、中間樹脂フィルムに変形が生じない程度まで該中間樹脂フィルムの温度を下げる必要があり、作業性が低下することがある。工程1以後に工程Aを行なう場合、1枚の曲げガラス板と中間樹脂フィルムとを積層し、この状態で工程Aを行った後、もう2枚目の曲げガラス板を積層するものでもよいし、2枚の曲げガラス板の間に中間樹脂フィルムを積層した後で、工程Aを行なうものでもよい。
【0043】
また一方で、前述したように、工程Aで変形させた中間樹脂フィルムは、該フィルムの温度が室温程度まで戻っても、変形によって得た曲面形状は維持され、積層不良が再発しないことがわかった。そのため、工程Aを経て変形させた中間樹脂フィルムを予め作製した後に工程1を行うと、従来通りの車両用合わせガラス板の製造ラインを用いて製造することが可能となる。また、工程Aで中間樹脂フィルムの温度を上昇させると、温度や脱気方法によっては脱気処理を行う為の作業がし難くなる場合がある。すなわち、前記工程1又は工程2は、変形後の前記中間樹脂フィルムの温度を室温とした後に行なうものとするのが好ましい。特に工程2の前に該中間樹脂フィルムの温度を室温程度とするのが好適である。なお、上記の「室温」とは、10~28℃、より好ましくは10~25℃としてもよい。
【0044】
(工程1)
工程1は、2枚の曲げガラス板の間に中間樹脂フィルムを積層し積層体とする工程である。積層は、曲げガラス板の上に、順に中間樹脂フィルム、曲げガラス板、と各部材を積層するものでも、治具等に立てかけて順に各部材を重ね合わせるものでもよい。また、積層時は曲げガラス板が破損したり歪んだりするのを防ぐために、当該曲げガラス板に外力等が極力加わらないようにするのが好ましい。
【0045】
前述したように、工程1の前に工程Aを行うものでも、工程1以後に工程Aを行なうものでもよいが、工程1以後に工程Aを行なうのが好ましい。なお、工程1によって得られる積層体は、各部材が積層されただけの状態であり、特に一体化はされていない。
【0046】
(工程2)
工程2は、積層体の各層間を脱気する工程である。本発明では工程2を開始するより前に工程Aを経ていることから、工程2で脱気する積層体は積層不良を生じていないものである。脱気方法は公知のもので良く、ロールを用いて各層間の空気を押し出す方法や、減圧によって各層間を減圧し脱気する方法等が挙げられる。曲げガラス板の板厚が小さいと強度も小さくなることから、曲げガラス板の板厚や形状によっては、ロールを用いて脱気を行なうと曲げガラス板に割れ等が生じてしまう場合がある。そのため、工程2は、積層体の各層間を減圧することによって脱気を行なうものであるのが好ましい。
【0047】
脱気方法として上記の減圧する方法を用いる場合は、ゴム系の樹脂でできたチューブを積層体の周縁に装着し排気ノズルから空気を排気して脱気する方法や、真空バッグの中に該積層体を入れて、排気ノズルから空気を排気することにより脱気する方法等が挙げられる。
【0048】
(工程3)
工程3は、脱気後の該積層体を加熱・加圧処理し一体化させる工程である。積層体を加圧環境下で加熱し、該積層体を一体化させる。当該工程は、汎用的なオートクレーブを用いるのが簡便であり好ましい。オートクレーブを用いる場合は、中間樹脂フィルムの種類に応じて圧力や温度を適宜選択して一体化を行う。例えば、PVB樹脂やEVA樹脂を用いた場合は、最高温度が100~150℃の範囲内となるまで温度を上昇させた後、20~40分間該温度近傍を維持することにより上記の一体化が可能となる。この時、0.9~1.5MPaの圧力範囲内となるように加圧を行う。加圧と加熱の順番はどちらが先でも、また同時に行うものでもよい。また、加熱過程の途中から加圧を行ってもよい。なお、ガラス板を損傷しないのであれば加熱可能なプレス機等を用いてもよい。
【0049】
(フィルム切除工程)
中間樹脂フィルムの面積が曲げガラス板の面積より大きい場合、該中間樹脂フィルムが積層体からはみ出してしまう。当該フィルムがはみ出した状態だと、特に各層間を減圧して脱気する際に、余剰分が脱気を妨げることがある。また、一体化させる際に、余剰分がガラス表面等に回りこんで接着し、外観不良となることがある。そのため、工程2より前に、前記積層体の端部よりはみ出た前記中間樹脂フィルムの余剰分を除去する工程を有するのが好ましい。除去方法は公知のものを用いればよく、例えばカッター等で切り取ることが挙げられる。また、該中間樹脂フィルムの温度が上昇し軟化した状態で当該工程を行うと、フィルムの切除が容易である為好ましい。
【0050】
(予備接着工程)
工程3で積層体を一体化させる際、積層体内に残留した水分や中間樹脂フィルムに含まれる成分等が加熱によって揮発し、積層体内に気泡が生じることがある。また、加熱や加圧の条件によっては、曲げガラス板と中間樹脂フィルムとの間に空気が侵入してしまうことがある。そのため、予め中間樹脂フィルムに接着性が生じる程度の、工程3よりも緩やかな条件で積層体の加熱と加圧を行ない、上記の泡を抑制又は除去するのが好ましい。これを本明細書では「予備接着工程」と記載する。
【0051】
予備接着工程時の温度は、最高温度が中間樹脂フィルムのガラス転移温度+10℃以上、工程3の最高温度-10℃以下程度となるように加熱するのが望ましく、好ましくは70~100℃としてもよい。すなわち、前記工程2以後、前記工程3より前に、上記積層体を70~100℃で加熱し、前記積層体を予備接着する工程Bを有するのが好ましい。また、より好ましくは80~100℃としてもよい。また、当該工程Bは、加熱して70~100℃まで温度を上昇させた後、10~30分程度の間、該温度を維持することが好ましい。また、当該工程Bにオートクレーブを用いる場合、0.1~0.5MPaの圧力範囲内となるように加圧し、加圧状態を30~60分程度の間維持することが好ましい。また、予備接着工程は必要に応じて複数回行なってもよく、その際、各予備接着工程の加熱や加圧条件が異なっていても同じでもよい。
【実施例
【0052】
本発明の実施例及び比較例を以下に記載する。
【0053】
1:中間樹脂フィルムの評価
中間樹脂フィルムと曲げガラス板とを用いて、積層不良が発生するか否かを調べた。また、中間樹脂フィルムについては、貯蔵弾性率の測定も行った。中間樹脂フィルムとしては、フィルムA(イーストマンケミカル社製Saflex standard clear PVB、RF41)、及びフィルムB(イーストマンケミカル社製Saflex high impact, hurricane, and storm PVB、DG41)を用いた。また、曲げガラス板はソーダライムガラス板を用い、使用したソーダライムガラス板については表1にサイズ、曲率半径の最小値、及び板厚が異なるガラスA~Dを記載した。また、板厚については、例えば0.7mmのガラス板を2枚用いた場合は「0.7/0.7」と記載した。
【0054】
(中間樹脂フィルムの貯蔵弾性率)
上記のフィルムA、Bについて、以下の方法で貯蔵弾性率を測定した。まず、各フィルムを、幅約9mm×長さ約30mmの大きさに切り出して測定用サンプルとし、次に、動的粘弾性測定装置(Exstar DMS7100、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて測定した。測定は、上記の測定用サンプルの測定長が10mmとなるように上記測定装置に取り付け、測定条件を引張モード、周波数10Hz、昇温速度2℃/minとして、-20℃~100℃の温度領域で貯蔵弾性率を測定した。
【0055】
また、後述する積層不良の評価実験において、各フィルムの温度を20℃、40℃、70℃とした為、表1には20℃、40℃、70℃の時の貯蔵弾性率を記載した。
【0056】
(積層不良の評価)
積層不良を以下の試験によって評価した。まず、試験台上に、凸面が上になるように、曲げガラス板、中間樹脂フィルム、曲げガラス板をこの順で積層した。次に、曲げガラス板の表面形状に沿うように該中間樹脂フィルムの温度を上昇させ、該中間樹脂フィルムを変形させた。なお、この時の中間樹脂フィルムの温度は20℃、40℃、70℃であり、20℃の時は室温を20℃とし、40℃と70℃は中間樹脂フィルムを恒温槽に入れることによって所望の温度とした。
【0057】
次に、曲げガラス板間に隙間が生じるか否かを観察し、曲げガラス板間に隙間がなかったものを◎、多少の隙間はあるが軽い力で押さえると隙間がなくなるものを○、隙間が大きく強い力で押さえないと隙間がなくならないものを×、曲げガラス板と接着したものを「接着」、として、結果を表1に記載した。なお、「○」は多少の隙間を有するものではあるが、脱気処理用の装置に設置したり、各層間を軽く減圧させたりすることで隙間をなくすことが可能なものである。
【0058】
【表1】
【0059】
2:車両用合わせガラス板の作製
[実施例1]
中間樹脂フィルムとして上記のフィルムB、曲げガラス板としてガラスA、を用いて、車両用合わせガラス板を作製した。
【0060】
(工程1)
まず、曲げガラス板の凸面を上にして水平方向に置き、曲げガラス板、中間樹脂フィルム、及び曲げガラス板の順に積層し積層体を得た。
【0061】
(工程A)
次に、得られた積層体を40℃に設定した恒温槽に入れ、凸面を上にして水平方向に置き約20秒保持した。この時、温度が上昇し軟化した中間樹脂フィルムは、該中間樹脂フィルムの上に配置された曲げガラス板の重みによって変形し、曲げガラス板の曲面に追従した。
【0062】
(工程2)
次に、工程Aによって得られた積層体を真空バッグ内に入れ、排気ノズルから空気を排気することによって各層間を脱気した。
【0063】
(工程B)
次に、脱気後の積層体をオートクレーブ内に入れ、予備接着を行なった。この時、温度を90℃、圧力を0.25MPaに設定し、温度保持時間を20分とした。
【0064】
(工程3)
次に、オートクレーブの温度を135℃、圧力を1MPaに設定し、温度保持時間を30分として加圧・加熱処理を行い、上記の積層体を一体化させて車両用合わせガラスを得た。
【0065】
[比較例1]
上記の工程Aと同様に、20℃に調整した恒温槽内に積層体を入れた他は、実施例1と同様の方法で工程1を行なった。この時、中間樹脂フィルムは軟化が不十分となり、曲げガラス板の表面形状に追従するような変形を生じなかった。得られた積層体は積層不良を生じたため、両面の曲げガラス板の端部を押さえつけて隙間をなくした状態とし、耐熱テープを貼って固定した。その後、実施例1と同様に工程2~工程3を行ったところ、曲げガラス板の凸面が押し下げられて変形し、当初の曲面よりも曲率半径が大きくなった状態で一体化された合わせガラスとなった。
【0066】
以上より、本発明により厚みの薄いガラス板を用いた場合でも、積層不良を抑制可能であることがわかった。一方で、中間樹脂フィルム比較例1では積層不良が生じた。当該積層不良を、大きな外力を加えることによって解消して工程2を行うと、工程2で曲げガラス板の曲面形状がなくなるように曲げガラス板が変形してしまい、そのまま工程3を行なっても曲げガラス板の変形が継続されることがわかった。当該比較例1では幅1m未満の小サイズのガラス板を用いたが、車両用の窓材として用いる場合は幅1m以上の大サイズのガラス板を用いる場合があり、そのような場合に比較例1のような変形を生じると、工程2や工程3で破損する可能性があると推測される。