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  • 特許-小動物侵入抑制カバー及び室外機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】小動物侵入抑制カバー及び室外機
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/56 20110101AFI20231213BHJP
【FI】
F24F1/56
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021040251
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139738
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 俊寛
(72)【発明者】
【氏名】小野島 江利子
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴司
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203024292(CN,U)
【文献】特開2007-198705(JP,A)
【文献】特開2020-134108(JP,A)
【文献】特開2000-074422(JP,A)
【文献】特開2009-287848(JP,A)
【文献】特開2001-296041(JP,A)
【文献】特開2009-063263(JP,A)
【文献】特開2009-257694(JP,A)
【文献】特開2022-027687(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107439518(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器に搭載されたプリント基板を囲み、かつ、覆う小動物侵入抑制カバーであって、
絶縁性を有し、箱形の物体としての形態を維持する骨組みを成す枠部と、
絶縁性を有し、前記枠部に沿って前記物体の外面を成すメッシュ状の外面部と、を備え、
前記外面部の網の目は、空気の流通を許容するが、小動物の侵入を抑制する大きさであり、
前記枠部は、形態を維持するための樹脂板の両面に絶縁シートを重ねた複層構造である、小動物侵入抑制カバー。
【請求項2】
前記プリント基板を四方から囲む4側面と、当該4側面の天板面となる1面とを有する五面体である、請求項1に記載の小動物侵入抑制カバー。
【請求項3】
前記網の目の寸法は、2mm以下である請求項1又は請求項2に記載の小動物侵入抑制カバー。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の小動物侵入抑制カバーを、前記プリント基板に装着した室外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、主として屋外に設置される電気機器(例えば空調機の室外機)に用いられる小動物侵入抑制カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば空調機の室外機は、屋外に設置される。温暖で、周囲に小動物や昆虫が多く生息する地域では、室外機の内部に小動物が侵入することがある。ハエや蚊の場合は、制御用のプリント基板に入り込んで付着したとしても、特に問題になることは少ない。しかし、ヤモリやイモリの類いは、ハエや蚊と比べると、細くても体長が長いので、プリント基板の導電部上で、電気的に接続されてはいけない部位同士が、ヤモリやイモリの体を介して繋がってしまい、故障又は異常検知の状態となる場合がある。
【0003】
このような小動物侵入対策として、プリント基板を内蔵する電気部品箱に網状の袋をかぶせることも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-257694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、袋をかぶせるのでは、既設の室外機の場合、電気部品箱を一旦取り外す必要があり、作業が容易ではない。また、電気部品箱全体を袋に入れるのは、プリント基板以外の部分も覆うことになり、無駄も多い。
本開示は、新設、既設を問わず、取付が容易な小動物侵入抑制カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の小動物侵入抑制カバーは、電気機器に搭載されたプリント基板を囲み、かつ、覆う小動物侵入抑制カバーであって、絶縁性を有し、箱形の物体としての形態を維持する骨組みを成す枠部と、絶縁性を有し、前記枠部に沿って前記物体の外面を成すメッシュ状の外面部と、を備え、前記外面部の網の目は、空気の流通を許容するが、小動物の侵入を抑制する大きさである。
【0007】
このような小動物侵入抑制カバーは、小動物(例えばヤモリ、イモリ)がカバー内に侵入することを抑制する。
【0008】
(2)前記枠部は、例えば、形態を維持するための樹脂板の両面に絶縁シートを重ねた複層構造である。
この場合、枠部は、一定の剛性を持ち、箱形の形状維持に寄与する。絶縁シートは十分な絶縁性の確保に寄与する。
【0009】
(3)小動物侵入抑制カバーは、例えば、前記プリント基板を四方から囲む4側面と、当該4側面の天板面となる1面とを有する五面体である。
この場合、小動物侵入抑制カバーは、プリント基板を底面として、プリント基板に被せる蓋状の五面体となる。
【0010】
(4)前記網の目の寸法は、2mm以下であることが好ましい。
2mm以下であれば、ごく小さなヤモリ、イモリでも、プリント基板上への侵入を、より確実に抑制することができる。
【0011】
(5)本開示の室外機は、(1)~(4)に記載の小動物侵入抑制カバーを、前記プリント基板に装着したものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】空調機の室外機の一例を示す斜視図である。
図2図1におけるプリント基板を、その取付基部と共に示す斜視図である。
図3】取付基部に小動物侵入抑制カバーを取り付けた状態を示す斜視図である。
図4】枠部の5面図であり、(a)は正面図、(b)は上側面図、(c)は下側面図、(d)は右側面図、(e)は左側面図である。
図5】小動物侵入抑制カバーの5面図であり、(a)は正面図、(b)は上側面図、(c)は下側面図、(d)は右側面図、(e)は左側面図である。
図6図5におけるVI-VI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一実施形態について説明する。
【0014】
《空調機の一例》
図1は、空調機の室外機の一例を示す斜視図である。この図は、筐体10の一部を省略して内部が見える状態で描いている。図の手前側を正面とすると、室外機1には、筐体10を正面から見て左側の表面にファンカバー11が設けられ、内部に、図示しない熱交換器及びファンが設けられている。筐体10の右側下部には、圧縮機12、アキュムレータ13その他の冷媒回路機器が設けられている。筐体10の右側上部には、室外機1を含む空調機全体の制御を行うプリント基板(制御基板)14が設けられている。
【0015】
《プリント基板の一例》
図2は、図1におけるプリント基板14を、その取付基部15と共に示す斜視図である。但し、図1及び図2におけるプリント基板14は、後述する小動物侵入抑制カバーを外した状態の図である。プリント基板14上には、パワーモジュール14m、CPUその他多くの電子部品と、回路パターンとが設けられている。パワーモジュール14mには冷却用に冷媒配管が通されるが、ここでは冷媒配管の図示は省略している。
【0016】
取付基部15には、小動物侵入抑制カバーをねじ止めするための、雌ネジ加工された取付孔が、プリント基板14の外側近傍に設けられている。図2では、例えば6か所の取付孔のうち、取付孔15a,15b,15c,15dが見えている状態である。
【0017】
ここで、仮に、ヤモリ16が、プリント基板14上に侵入して、電位差のある導電部間にまたがると、ヤモリ16の体を通して電流が流れ、制御の誤動作又は故障の原因となる場合がある。ヤモリ16が感電死してプリント基板14上に残っても、同様の問題がある。
【0018】
《小動物侵入抑制カバー付きプリント基板》
図3は、取付基部15に小動物侵入抑制カバー17を取り付けた状態を示す斜視図である。小動物侵入抑制カバー17は、電気に対する絶縁性を有する材料により構成された箱状の物体である。小動物侵入抑制カバー17は、箱形の形状を維持するための骨組みを成す枠部18と、枠部18に沿って当該物体の外面を成すメッシュ状の外面部19とを備えている。面で定義すれば、小動物侵入抑制カバー17は、プリント基板14(図2)を四方から囲む4側面と、当該4側面の天板面となる1面とを有する五面体である。外面部19のメッシュの網の目の大きさは、2mm以下である。
【0019】
小動物侵入抑制カバー17は、前述の6か所でネジ20a,20b等により、取付基部15にネジ止めされて固定される。この状態で、プリント基板14(図2)は小動物侵入抑制カバー17に囲まれ、かつ、基板面に対して真上から覆われている。小動物侵入抑制カバー17は、絶縁性を有する材料により構成されているので、プリント基板14(図2)上の導電部と絶縁距離をとらなくてもよい。外面部19はメッシュ構造により空気の流通を可能とするので、プリント基板14(図2)の、通風による放熱を妨げない。
【0020】
前述のように、外面部19のメッシュの網の目の大きさは、2mm以下である。また、小動物侵入抑制カバー17と、取付基部15との隙間は、1mm程度である。従って、ヤモリのような小動物が、小動物侵入抑制カバー17の網の目、及び、上記隙間からプリント基板14上に侵入することは極めて困難である。微小な生物はメッシュの網の目又は上記隙間から入る可能性はあるが、そのような微小な生物は、仮に侵入したとしても、電気的なトラブルを起こす可能性は極めて低い。
【0021】
なお、プリント基板には、基板外との電気接続のための電線(又はケーブル)が接続される。また、前述のように、冷媒配管も接続されている。これらの電線及び冷媒配管(以下、電線等と言う。)は、小動物侵入抑制カバー17の側面を通す必要がある。この場合、電線等を通すことにより、そこに隙間ができないようにする必要がある。そこで、補助的に、柔らかいカバー又はコーキング材を用いて、2mmを超える隙間ができないようにする。図3は、小動物侵入抑制カバー17の上側面にスポンジ状のカバー21が取り付けられた状態を示している。
【0022】
《小動物侵入抑制カバーの構造》
図4は、枠部18の5面図である。(a)は正面図、(b)は上側面図、(c)は下側面図、(d)は右側面図、(e)は左側面図である。(a)において、枠部18には、最も大きい開口18a1が形成されている。(b)において、枠部18には、開口18a2が形成されている。また、電線等を通すための孔H1,H2,H3と、スリットS1,S2,S3が形成されている。(c)において、枠部18には、開口18a3が形成されている。また、電線等を通すための孔H4,H5,H6,H7と、スリットS4,S5,S6が形成されている。
【0023】
(d)において、枠部18には、開口18a4が形成されている。
(e)において、枠部18には、プリント基板側にある部品と隣接しない位置、言い換えれば、開口を設けることによる通気効果が確実に得られる位置に、2つの開口18a5,18a6が形成されている。また、電線等を通すための孔H8,H9と、スリットS8,S9が形成されている。
【0024】
図5は、小動物侵入抑制カバー17の5面図である。(a)は正面図、(b)は上側面図、(c)は下側面図、(d)は右側面図、(e)は左側面図である。外面部19は、枠部18に沿って設けられ、外面を成している。小動物侵入抑制カバー17の外側の6か所には、固定具22が取り付けられている。この固定具22にネジを通して取付基部15(図2)の取付孔15a,15b,15c,15d(図2)その他2か所に締め込むことにより、小動物侵入抑制カバー17を、取付基部15(図2)に固定することができる。
【0025】
図6は、図5におけるVI-VI線断面図である。枠部18は、比較的硬質で難燃性の樹脂板181と、その両面の、透明な絶縁シート182の複層構造となっている。外面部19の端部は樹脂板181と絶縁シート182との間に挟み込まれている。絶縁シート182の材質は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)である。外面部19は、例えばガラス繊維のメッシュシートである。外面部19は不燃性、枠部18も難燃性である。
【0026】
なお、上記開示は、空調機の室外機を対象として説明したが、空調機の室外機に限らず、屋外に設けられる場合がある換気装置その他の電気機器にも同様に、小動物侵入抑制カバーを適用することができる。
また、上記開示では、小動物侵入抑制カバー17をネジで取付基部15に固定したが、小動物侵入抑制カバー17は軽量であるため、引っ掛け式で取付基部15に固定する構造としてもよい。
【0027】
《開示のまとめ》
以上の開示は、以下のように一般化して表現することができる。
小動物侵入抑制カバー17は、空調機の室外機のように屋外に設置される電気機器に搭載されたプリント基板を囲み、かつ、覆う部材である。小動物侵入抑制カバー17は、絶縁性を有し、箱形の物体としての形態を維持する骨組みを成す枠部18と、絶縁性を有し、枠部18に沿って物体の外面を成すメッシュ状の外面部19と、を備えている。そして、外面部19の網の目は、空気の流通を許容するが、小動物の侵入を抑制する大きさである。
【0028】
このような小動物侵入抑制カバー17は、プリント基板14の放熱を妨げることなく、小動物(例えばヤモリ、イモリ)がカバー内に侵入することを抑制する。小動物侵入抑制カバー17は、絶縁性を有するので、プリント基板14上の導電部との絶縁も確保される。
【0029】
枠部18は、形態を維持するための樹脂板181の両面に絶縁シート182を重ねた複層構造である。このような構造により、枠部18は、一定の剛性を持ち、箱形の形状維持に寄与する。絶縁シート182は十分な絶縁性の確保に寄与する。
【0030】
小動物侵入抑制カバー17を面で定義すれば、プリント基板14を四方から囲む4側面と、当該4側面の天板面となる1面とを有する五面体である。
このような小動物侵入抑制カバー17は、プリント基板14を底面側にして、プリント基板14に被せる蓋状の五面体となるので、新設の電気機器か既設の電気機器かを問わず、容易に取り付けることができる。
【0031】
外面部19の網の目の寸法は、2mm以下であることが好ましい。
2mm以下であれば、ごく小さなヤモリ、イモリでも、プリント基板上への侵入を、より確実に抑制することができる。
【0032】
《補記》
以上、実施形態について説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0033】
1:室外機(空調機)、10:筐体、11:ファンカバー、12:圧縮機、13:アキュムレータ、14:プリント基板、14m:パワーモジュール、15:取付基部、15a,15b,15c,15d:取付孔、16:ヤモリ、17:小動物侵入抑制カバー、18:枠部、18a1,18a2,18a3,18a4,18a5,18a6:開口、19:外面部、20a,20b:ネジ、21:カバー、22:固定具、181:樹脂板、182:絶縁シート、H1,H2,H3,H4,H5,H6,H7,H8:孔、S1,S2,S3,S4,S5,S6,S8,S9:スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6