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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/427 20060101AFI20231213BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B60N2/427
B60R21/207
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021567615
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2020048461
(87)【国際公開番号】W WO2021132466
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2019233546
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田辺 仁一
(72)【発明者】
【氏名】野中 達樹
(72)【発明者】
【氏名】山部 篤史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 強
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-003578(JP,A)
【文献】特開2011-183942(JP,A)
【文献】特開平11-129856(JP,A)
【文献】特開2015-209081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/42-2/433
B60R 21/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座面を構成するシートクッション及び背凭れを構成するシートバックを備えた乗物用シートであって、
前記シートバックの構造体をなすシートバックフレームと、
前記シートバックフレームの車外側の側部に支持され、前方に展開するエアバッグを備えたエアバッグモジュールと、
前面に後方に凹む吊り溝を備え、前記エアバッグモジュールを少なくとも前方から覆うパッド部材と、
前記パッド部材の表面を覆うとともに、前記シートバックの車外側の縁部において上下に延在して前記エアバッグの展開によって開裂する脆弱部を備えた表皮材と、
前記脆弱部に結合された力布と、
前記表皮材及び前記力布を前記吊り溝に吊り込むクリップと、
前記パッド部材の裏側に設けられた裏布と、を有し
前記裏布は上下方向に延びる長方形状の帯状をなし、
前記裏布の下縁は前記エアバッグモジュールの上下方向中央に位置し、
前記裏布は前記エアバッグモジュールの上部を前側から覆っている乗物用シート。
【請求項2】
前記裏布の上縁は、前記エアバッグモジュールの上縁上下方向外側に位置する請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記裏布には開口が設けられている請求項1又は請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記エアバッグモジュールの少なくとも一部が水平方向に見て前記開口に重なる請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記裏布は、前記クリップに整合する位置又は高さにおいてくり抜かれている請求項1~請求項4のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記裏布には、正面視で前記クリップに重なり合う位置に貫通孔が設けられている請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記吊り溝は、上下方向に延びる左右一対の縦溝部と、左右の前記縦溝部の上下方向略中央部を左右に接続する横溝部とを含み、
前記クリップは前記吊り溝の適所に設けられている請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記裏布は少なくとも一部において、前記縦溝部及び前記横溝部の少なくとも一方に正面視で重なっている請求項7に記載の乗物用シート。
【請求項9】
左側の前記縦溝部に設けられる前記クリップと、右側の前記縦溝部に設けられる前記クリップの数が等しく、
左側の前記縦溝部に設けられる前記クリップと、右側の前記縦溝部に設けられる前記クリップとは左右対称をなすように配置されている請求項7に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記パッド部材の前面には上下一対の前記力布が設けられ、
上側の前記力布は前記横溝部の上方、下側の前記力布は前記横溝部の下方にそれぞれ位置し、
上側の前記力布を吊り込む前記クリップの数は、下側の前記力布を吊り込む前記クリップの数よりも少ない請求項7に記載の乗物用シート。
【請求項11】
上側の前記力布は下側の前記力布よりも面積が小さく、
上側の前記力布を吊り込む前記クリップの数は2であり、下側の前記力布を吊り込む前記クリップの数は3である請求項10に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートであって、特に、エアバッグモジュールを備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される乗物用シートであって、乗員を側部から保護する側部用のエアバッグ装置を備えたものが公知である(例えば、特許文献1)。エアバッグ装置はガス発生器であるインフレータと、インフレータのガスにより膨張するエアバッグと、これらエアバッグとインフレータを収納するエアバッグケースを備えている。エアバッグ装置は、シートの背もたれ(シートバック)のドア側に埋設されている。
【0003】
シートバックを覆うシートカバーは天板サイド部と、カマチ被覆部とを備えている。天板サイド部はシートバック前面の側部を覆っている。カマチ被覆部はシートバックの側部に位置し、エアバッグケースの開口部を被覆している。天板サイド部と、カマチ被覆部とは、エアバッグケースのシート外側、且つ斜め前方に位置する縫合部において、互いに縫合されている。インフレータからガスが供給されると、エアバッグが縫合部に向かって膨出し、天板サイド部や縫合糸などの縫合部近辺はエアバッグの展開圧力によって破断して開裂する。
【0004】
カマチ被覆部は、シートカバーの他の部分よりも伸縮性の乏しい部材をもって構成されている。これにより、膨出するエアバッグの展開圧力がカマチ被覆部の内面にかかった際に、より迅速に縫合部近辺を破断させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-202205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インフレータからのガスが供給されると、エアバッグは斜め前方のみならず、上方や下方にも膨出する。そのため、エアバッグからの荷重が縫合部(脆弱部)に集中し難いという問題がある。
【0007】
本発明は、以上の背景を鑑み、乗物用シートにおいてエアバッグからの荷重を表皮材の脆弱部に集中し易くすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、着座面(9)を構成するシートクッション(5)及び背凭れを構成するシートバック(6)を備えた乗物用シート(1、101、201、301、401、501、601、701、801)であって、前記シートバックの構造体をなすシートバックフレーム(22)と、前記シートバックフレームの車外側の側部に支持されたエアバッグモジュール(60)と、前記エアバッグモジュールを覆うパッド部材(23)と、前記パッド部材の表面を覆う表皮材(24)とを有し、前記表皮材には、前記シートバックの車外側の縁部において上下に延在する脆弱部(88)と、前記脆弱部の近傍から前記脆弱部を横切る方向に延びる第1低伸縮補強部(102)とが設けられていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、エアバッグが膨張して第1低伸縮補強部に達すると、エアバッグの膨張が第1低伸縮補強部によって抑えられる。これにより、エアバッグの展開方向が脆弱部に向かって案内されるため、エアバッグからの荷重が脆弱部に集中し易くなる。
【0010】
また、上記の態様において、前記表皮材には、前記脆弱部を横切る方向に延在し、前記脆弱部に隣接する位置に結合された端部を有する第2低伸縮補強部(104)が設けられ、前記第1低伸縮補強部が前記第2低伸縮補強部の上方又は下方に設けられているとよい。
【0011】
この構成によれば、エアバッグの膨張によって、第2低伸縮補強部に荷重が加わると、脆弱部に荷重が伝達される。よって、脆弱部に荷重が加わり易くなり、脆弱部が開裂し易くなる。また、第1低伸縮補強部が第2低伸縮補強部の上方又は下方に設けられることによって、エアバッグの第2低伸縮補強部に対して上方又は下方に離れる方向への膨張が抑えられるため、エアバッグからの荷重が脆弱部に集中し易くなる。
【0012】
また、上記の態様において、前記第1低伸縮補強部が前記第2低伸縮補強部に対して上方及び下方に設けられているとよい。
【0013】
この構成によれば、第2低伸縮補強部から上方向及び下方向に離れる方向のエアバッグの膨張が第1低伸縮補強部によって抑えられる。これにより、エアバッグがより脆弱部に向かって膨張し易くなり、エアバッグからの荷重が脆弱部に集中し易くなる。
【0014】
また、上記の態様において、前記第1低伸縮補強部は少なくとも一部において、側面視で前記エアバッグモジュールの上方及び下方のいずれか一方を通過しているとよい。
【0015】
この構成によれば、上下の第1低伸縮補強部の上下間隔を適度に設けることができる。これにより、脆弱部が開裂し易くなり、エアバッグを安定して展開させることができる。
【0016】
また、上記の態様において、前記第1低伸縮補強部は少なくとも一部において、側面視で前記エアバッグモジュールに重ね合わさっているとよい。
【0017】
この構成によれば、上下の第1低伸縮補強部を展開前のエアバッグに近づけることができるため、より効果的に第1低伸縮補強部によってエアバッグの上下方向の展開を制限することができ、エアバッグからの荷重を脆弱部に集中させることができる。
【0018】
また、上記の態様において、前記第1低伸縮補強部は、前記脆弱部を横切る方向に延在し、前記表皮材の裏面に結合された第1布部材(101A、101B)を含むとよい。
【0019】
この構成によれば、第1低伸縮補強部を容易に構成することができる。
【0020】
また、上記の態様において、前記第1布部材は、前記脆弱部に離間した位置において前記表皮材の裏面に結合されているとよい。
【0021】
この構成によれば、第1布部材と脆弱部とを結合させるための工程の一部を省くことができる。
【0022】
また、上記の態様において、前記第2低伸縮補強部は、前記第1布部材の間に位置し、前記脆弱部の近傍に結合された第2布部材(103)を含み、前記第2布部材は、前記第1布部材に比べて前記脆弱部に近い位置において、前記表皮材に結合されているとよい。
【0023】
この構成によれば、第2布部材が第1布部材に比べて、表皮材の脆弱部により近い位置に結合されるため、第2布部材からの荷重が脆弱部に伝わり易くなり、脆弱部をより迅速に開裂させ、第1布部材からの荷重が脆弱部に伝わることを防止することができる。
【0024】
また、上記の態様において、前記表皮材は剥ぎ合わせ目であるハギ部(95A)を含み、前記ハギ部の少なくとも一つには裏打ち布(303)が設けられているとよい。
【0025】
この構成によれば、ハギ部が裏打ち布によって保護されるため、エアバッグの展開時に表皮材が意図しない部分において開裂することが防止できる。
【0026】
また、上記の態様において、前記第1低伸縮補強部はそれぞれ前記シートバックの車外側の側面を前方に向かって延びて前記シートバックの前面に達し、前記第1低伸縮補強部はそれぞれ前記脆弱部に交差し、前記第1低伸縮補強部は、前記脆弱部よりも前記シートバックの前面側において、前記裏打ち布が設けられた前記ハギ部によって上下に接続されているとよい。
【0027】
この構成によれば、ハギ部を裏打ち布によって保護することができる。また、第1低伸縮補強部がシートバックの前面側において、裏打ち布が設けられた伸縮性の低い部分によって接続される。これにより、エアバッグを脆弱部の第1低伸縮補強部の間に位置する部分に向かって効果的に膨張させることができ、脆弱部をより迅速に開裂させることができる。
【0028】
また、上記の態様において、前記表皮材は2つの布部材を結合させる線ファスナを含み、前記第2布部材は、前記線ファスナを跨ぎ、且つ、前記線ファスナから離間した位置において前記線ファスナに結合されているとよい。
【0029】
この構成によれば、第2低伸縮補強部からの荷重が線ファスナに伝わり難くなるため、線ファスナが開裂することが防止できる。
【0030】
また、上記の態様において、前記第1低伸縮補強部には、前記脆弱部を横切る方向に延在する縫製ラインが設けられているとよい。
【0031】
この構成によれば、第1低伸縮補強部の構成が簡素になる。
【0032】
上記課題を解決するために、前記表皮材には前記シートバックの背面において板状をなすプレートが結合され、前記第2布部材は前記プレートの近傍において結合されているとよい。
【0033】
この構成によれば、表皮材の第2低伸縮補強部との結合部分がプレートによって補強される。これにより、エアバッグの展開時に表皮材が意図しない部分において開裂することが防止できる。
【0034】
上記課題を解決するために、前記シートバックフレームは、上下に延在する左右一組のサイドフレームを含み、前記エアバッグモジュールは前記車外側に位置する前記サイドフレームの前記車外側の側面に結合され、前記パッド部材は前記車外側に位置する前記サイドフレームの前側に位置するパッド前部を含み、前記パッド前部には後方に向かって膨出し、前記車外側に位置する前記サイドフレームの前記車外側の側面に達する膨出部が設けられているとよい。
【0035】
この構成によれば、エアバッグの展開時に、膨出部によってパッド前部とサイドフレームとの間にエアバッグが侵入することが防止できる。これにより、エアバッグのシート内方への展開が防止され、エアバッグをシートの外方に向かって効果的に膨張させることができる。
【0036】
また、上記の態様において、前記シートバックフレームは、上下に延在する左右一組のサイドフレームを含み、前記エアバッグモジュールは前記車外側に位置する前記サイドフレームの前記車外側の側面に結合され、前記サイドフレームに一端が固定され、前記脆弱部に隣接する部分において前記表皮材の裏面に結合された力布(802)を含み、前記エアバッグモジュールは、エアバッグ(71)と、前記エアバッグを膨張させるインフレータ(72)と、前記エアバッグ及び前記インフレータを収容し、前記エアバッグが膨張したときに前記車外側に開く蓋部材(73C)を備えたケース(73)とを備え、前記力布は前記蓋部材の外面に当接しているとよい。
【0037】
この構成によれば、エアバッグが膨張してケースの蓋が車外側に開かれると、力布に荷重が加わる。これにより、脆弱部により効果的に荷重が伝わり、エアバッグの展開時に脆弱部をより迅速に開裂させることができる。
【発明の効果】
【0038】
上記課題を解決するために、着座面を構成するシートクッション及び背凭れを構成するシートバックを備えた乗物用シートであって、シートバックの構造体をなすシートバックフレームと、シートバックフレームの車外側の側部に支持されたエアバッグモジュールと、エアバッグモジュールを覆うパッド部材と、パッド部材の表面を覆う表皮材とを有し、表皮材には、シートバックの車外側の縁部において上下に延在する脆弱部と、脆弱部の近傍から脆弱部を横切る方向に延びる第1低伸縮補強部とが設けられている構成によれば、エアバッグが膨張して第1低伸縮補強部に達すると、エアバッグの膨張が第1低伸縮補強部によって抑えられる。これにより、エアバッグの展開方向が脆弱部に向かって案内されるため、エアバッグからの荷重が脆弱部に集中し易くなる。
【0039】
また、上記の態様において、表皮材には、脆弱部を横切る方向に延在し、脆弱部に隣接する位置に結合された端部を有する第2低伸縮補強部が設けられ、第1低伸縮補強部が第2低伸縮補強部の上方又は下方に設けられている構成によれば、エアバッグの膨張によって、第2低伸縮補強部に荷重が加わると、脆弱部に荷重が伝達される。よって、脆弱部に荷重が加わり易くなり、脆弱部が開裂し易くなる。また、第2低伸縮補強部が第1低伸縮補強部の上方又は下方に設けられることによって、エアバッグの第2低伸縮補強部に対して上方又は下方に離れる方向への膨張が抑えられるため、エアバッグからの荷重が脆弱部に集中し易くなる。
【0040】
また、上記の態様において、第1低伸縮補強部が第2低伸縮補強部に対して上方及び下方に設けられている構成によれば、第2低伸縮補強部から上方向及び下方向に離れる方向のエアバッグの膨張が第1低伸縮補強部によって抑えられる。これにより、エアバッグがより脆弱部に向かって膨張し易くなり、エアバッグからの荷重が脆弱部に集中し易くなる。
【0041】
また、上記の態様において、第1低伸縮補強部は少なくとも一部において、側面視でエアバッグモジュールの上方及び下方のいずれか一方を通過している構成によれば、上下の第1低伸縮補強部の上下間隔を適度に設けることができる。これにより、脆弱部が開裂し易くなり、エアバッグを安定して展開させることができる。
【0042】
また、上記の態様において、第1低伸縮補強部は少なくとも一部において、側面視でエアバッグモジュールに重ね合わさっている構成によれば、上下の第1低伸縮補強部を展開前のエアバッグに近づけることができるため、より効果的に第1低伸縮補強部によってエアバッグの上下方向の展開を制限することができ、エアバッグからの荷重を脆弱部に集中させることができる。
【0043】
また、上記の態様において、第1低伸縮補強部は、脆弱部を横切る方向に延在し、表皮材の裏面に結合された第1布部材を含む構成によれば、第1低伸縮補強部を容易に構成することができる。
【0044】
また、上記の態様において、第1布部材は、脆弱部に離間した位置において表皮材の裏面に結合されている構成によれば、第1布部材と脆弱部とを結合させるための工程の一部を省くことができる。
【0045】
また、上記の態様において、第2低伸縮補強部は、第1布部材の間に位置し、脆弱部の近傍に結合された第2布部材を含み、第2布部材は、第1布部材に比べて脆弱部に近い位置において、表皮材に結合されている構成によれば、第2布部材が第1布部材に比べて、表皮材の脆弱部により近い位置に結合されるため、第2布部材からの荷重が脆弱部に伝わり易くなり、脆弱部をより迅速に開裂させ、第1布部材からの荷重が脆弱部に伝わることを防止することができる。
【0046】
また、上記の態様において、表皮材は複数の布部材の剥ぎ合わせ目であるハギ部を含み、ハギ部の少なくとも一つには裏打ち布が設けられている構成によれば、ハギ部が裏打ち布によって保護されるため、エアバッグの展開時に表皮材が意図しない部分において開裂することが防止できる。
【0047】
また、上記の態様において、第1低伸縮補強部はそれぞれシートバックの車外側の側面を前方に向かって延びてシートバックの前面に達し、第1低伸縮補強部はそれぞれ脆弱部に交差し、第1低伸縮補強部は、脆弱部よりもシートバックの前面側において、裏打ち布が設けられたハギ部によって上下に接続されている構成によれば、ハギ部を裏打ち布によって保護することができる。また、第1低伸縮補強部がシートバックの前面側において、裏打ち布が設けられた伸縮性の低い部分によって接続される。これにより、エアバッグを脆弱部の第1低伸縮補強部の間に位置する部分に向かって効果的に膨張させることができ、脆弱部をより迅速に開裂させることができる。
【0048】
また、上記の態様において、表皮材は2つの布部材を結合させる線ファスナを含み、第2布部材は、線ファスナを跨ぎ、且つ、線ファスナから離間した位置において線ファスナに結合されている構成によれば、第2低伸縮補強部からの荷重が線ファスナに伝わり難くなるため、線ファスナが開裂することが防止できる。
【0049】
また、上記の態様において、第1低伸縮補強部には、脆弱部を横切る方向に延在する縫製ラインが設けられている構成によれば、第1低伸縮補強部の構成が簡素になる。
【0050】
上記課題を解決するために、表皮材にはシートバックの背面において板状をなすプレートが結合され、第2布部材はプレートの近傍において結合されている構成によれば、表皮材の第2低伸縮補強部との結合部分がプレートによって補強される。これにより、エアバッグの展開時に表皮材が意図しない部分において開裂することが防止できる。
【0051】
上記課題を解決するために、シートバックフレームは、上下に延在する左右一組のサイドフレームを含み、エアバッグモジュールは車外側に位置するサイドフレームの車外側の側面に結合され、パッド部材は車外側に位置するサイドフレームの前側に位置するパッド前部を含み、パッド前部には後方に向かって膨出し、車外側に位置するサイドフレームの車外側の側面に達する膨出部が設けられている構成によれば、エアバッグの展開時に、膨出部によってパッド前部とサイドフレームとの間にエアバッグが侵入することが防止できる。これにより、エアバッグのシート内方への展開が防止され、エアバッグをシートの外方に向かって効果的に膨張させることができる。
【0052】
また、上記の態様において、シートバックフレームは、上下に延在する左右一組のサイドフレームを含み、エアバッグモジュールは車外側に位置するサイドフレームの車外側の側面に結合され、サイドフレームに一端が固定され、脆弱部に隣接する部分において表皮材の裏面に結合された力布を含み、エアバッグモジュールは、エアバッグと、エアバッグを膨張させるインフレータと、エアバッグ及びインフレータを収容し、エアバッグが膨張したときに車外側に開く蓋部材を備えたケースとを備え、力布は蓋部材の外面に当接している構成によれば、エアバッグが膨張してケースの蓋が車外側に開かれると、力布に荷重が加わる。これにより、脆弱部により効果的に荷重が伝わり、エアバッグの展開時に脆弱部をより迅速に開裂させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】第1実施形態に係る乗物用シートの斜視図
図2】第1実施形態に係る乗物用シートの分解斜視図
図3図1のIII-III断面図
図4図1のIV-IV断面図
図5】第1実施形態に係る乗物用シートの側面図
図6】第2実施形態に係る乗物用シートの側面図
図7】(A)第3実施形態に係る乗物用シートの斜視図、及び(B)図7(A)のVIIB-VIIB断面図
図8】第4実施形態に係る乗物用シートの斜視図
図9】第5実施形態に係る乗物用シートのシートバックの水平断面図
図10】第6実施形態に係る乗物用シートのシートバックの水平断面図
図11】第7実施形態に係る乗物用シートの斜視図
図12】第8実施形態に係る乗物用シートの斜視図
図13】第9実施形態に係る乗物用シートの斜視図
図14図13のXIV―XIV断面図であって、(A)エアバッグ展開前、及び(B)展開中を示す図
図15】第9実施形態に係る乗物用シートの正面図
図16】第10実施形態に係る乗物用シートの斜視図
図17図16のXVII-XVII断面図
図18】第1実施形態に係る乗物用シートの第1変形例
図19】第1実施形態に係る乗物用シートの第2変形例
図20】第1実施形態に係る乗物用シートの第3変形例
図21】第5実施形態に係る乗物用シートの変形例
図22】第9実施形態に係る乗物用シートの変形例
図23】第10実施形態に係る乗物用シートの変形例
図24】第10実施形態に係る乗物用シートの変形例
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、図面を参照して、本発明に係る乗物用シートを自動車に搭載される車両用シートに適用した実施形態について説明する。
【0055】
<<第1実施形態>>
図1に示すように、第1実施形態に係る乗物用シート1は車室2の底部を画定するフロア3上に、車両の前方を向くように(より詳細には着座した乗員が車両の前方に向くように)載置されている。乗物用シート1はフロア3に前後にスライド移動可能に支持されている。本実施形態では、乗物用シート1は、運転席の隣に配置された助手席を構成する。以下では、乗物用シート1に着座した乗員から見た方向を基準として、前後、左右、及び上下方向をそれぞれ定めて、説明を行う。また、以下の説明では、背凭れがフロア3に対して略垂直に起立した状態にあるときを基準として説明を行う。
【0056】
乗物用シート1は着座者の臀部を支持するシートクッション5と、シートクッション5の後部に設けられ、背凭れとして機能するシートバック6と、各シートバック6の上部に設けられたヘッドレスト7とを備えている。
【0057】
シートクッション5は略上下方向を向く面を有する略直方体状をなしている。シートクッション5の上面は乗員1人分の着座面9を構成している。着座面9は左右方向略中央において下方に凹み、後方に向かってやや下方に傾斜している。これにより、着座面9は乗員の臀部及び大腿部に対応する形状をなしている。乗員が着座するときには、着座面9には乗員の臀部及び大腿部が配置される。
【0058】
シートバック6は上下方向に延びるシートバック中央部6Aと、シートバック中央部6Aの左側及び右側にそれぞれ設けられたボルスター部6Bとを含む。シートバック中央部6Aは略前後方向を向く面を有する略直方体状をなしている。シートバック中央部6Aの前面は乗員の背中を支持する背凭れ面10を構成している。背凭れ面10は左右方向略中央において後方に凹み、上方に向かってやや後方に傾斜している。これにより、背凭れ面10は乗員の背中に対応する形状をなし、背凭れ面10に乗員の背中が支持される。ボルスター部6Bはそれぞれ下方に向かうにつれてより前方に突出し、乗員の上半身を側方から支持する。
【0059】
ヘッドレスト7は、シートバック6の上端に2つのピラー11(図2参照)を介して接続されている。ヘッドレスト7は着座した乗員の頭部の後方となる位置に配置されている。
【0060】
図2に示すように、シートクッション5は骨格を形成する金属製の枠体(シートクッションフレーム12)と、シートクッションフレーム12に支持されたパッド部材13(図1参照)と、パッド部材13覆う表皮材14(図1参照)とを含む。
【0061】
シートクッションフレーム12は、シートクッション5の形状を形作る構造体であって、前後に延びる左右一組のサイドフレーム15(クッションサイドフレーム)と、各サイドフレーム15の前部間に掛け渡された前フレーム16(クロスフレーム)と、各サイドフレーム15の後部間に掛け渡された後フレーム17(クロスフレーム)とを有し、略四角枠形をなす。本実施形態では、シートクッション5の左右のサイドフレーム15はそれぞれ、左右方向を向く面を有する板状をなしている。シートクッションフレーム12は更に、左右一組のサイドフレーム15の間に左右に延在する板状のパンフレーム(不図示)や、前フレーム16及び後フレーム17に掛け渡されたワイヤ部材(不図示)を含んでいてもよい。シートクッション5のパッド部材13はシートクッションフレーム12の上側に配置されている。図1に示すように、パッド部材13の上面は表皮材14によって覆われている。
【0062】
シートバック6はシートクッション5と同様に骨格を形成する金属製の枠体(以下、シートバックフレーム22)と、シートバックフレーム22に支持されたパッド部材23(図1参照)と、パッド部材23を覆う表皮材24(図1参照)とを含む。
【0063】
シートバックフレーム22は、シートバック6の形状を形作る構造体であって、上下に延びる左右一組のサイドフレーム(バックサイドフレーム25)と、バックサイドフレーム25の上部間に掛け渡されたアッパフレーム26と、バックサイドフレーム25の下部の間に掛け渡されたロアフレーム27とを有し、略四角枠形をなす。左右のバックサイドフレーム25にはワイヤ状の部材によって形成された受圧部材28が掛け渡されている。受圧部材28は乗員から後方に向く荷重を受けて撓み、乗員の背中を後方から支持する。パッド部材23はシートバックフレーム22の前側からシートバックフレーム22の前面、及び左右側面を覆うように配置されている。パッド部材23の前面、及び左右側面は表皮材24によって覆われている。
【0064】
シートクッション5のサイドフレーム15(クッションサイドフレーム)の後部は、2つのバックサイドフレーム25の下部を挟んで左右に対峙している。シートバック6の左右のバックサイドフレーム25の下部と、シートクッション5の左右のサイドフレーム15の後部とにはそれぞれ、左右方向(車幅方向)に延びる1つの傾倒軸29が貫通している。シートバック6の左右のバックサイドフレーム25の下部はそれぞれ、対応するシートクッション5のサイドフレーム15の後部に、傾倒軸29(図1参照)回りに回動可能に結合されている。より詳細には、傾倒軸29によってシートバックフレーム22及びシートクッションフレーム12は互いに回動可能に連結され、シートバックフレーム22は、シートクッションフレーム12に対して、傾倒軸29を中心として傾倒(回動)可能となっている。
【0065】
シートクッションフレーム12と、シートバックフレーム22との間には、リクライニング機構が設けられてもよい。これにより、乗員はリクライニング機構の操作レバーを操作することによってシートバック6のシートクッション5に対する傾倒角度を調節することができる。
【0066】
背凭れ面10が最も起立した状態、すなわち背凭れ面10が最も鉛直方向に近い状態(図1参照)にあるときには、シートクッション5のバックサイドフレーム25は概ね、上下方向に延在している。以下では、背凭れ面10が最も起立した状態にあり、シートバック6が側面視(左右方向視)で概ね上下方向に延在しているときを基準として説明を行う。
【0067】
図1に示すように、シートバック6の左側のバックサイドフレーム25(以下、左バックサイドフレーム25A)には、エアバッグモジュール60が設けられている。エアバッグモジュール60は略直方体状をなしている。エアバッグモジュール60は前後、左右、及び上下を向く面を有し、左バックサイドフレーム25Aの延在方向に沿うように配置されている。エアバッグモジュール60は左バックサイドフレーム25Aの左側面の上下方向略中央に結合され、左バックサイドフレーム25Aに支持されている。
【0068】
本実施形態では、エアバッグモジュール60の前後方向の幅と、左バックサイドフレーム25Aの前後方向の幅は概ね等しい。また、エアバッグモジュール60の前縁と、左バックサイドフレーム25Aの前縁とは概ね前後方向に揃っている。
【0069】
エアバッグモジュール60は乗物用シート1に着座する乗員の車外側にエアバッグ71(いわゆる、サイドエアバッグ)を展開させるためのモジュールである。エアバッグモジュール60は、図3及び図4に示すように、エアバッグ71と、エアバッグ71内にガスを発生させて、エアバッグ71を膨張(展開)させるインフレータ72と、エアバッグ71及びインフレータ72を収容するケース73とを含む。
【0070】
エアバッグ71は袋状の部材であり、インフレータ72から発生したガスが内部に供給されることによって、上下方向、及び、車外側(左側)斜め前方に向かって膨張し、乗物用シート1に着座する乗員の上半身の車外側に膨張展開する。図5には展開前のエアバッグ71の位置Gが破線によって示されている。図5に示すように、エアバッグ71はケース73の内部に収容されているため、展開前のエアバッグ71は側面視で、エアバッグモジュール60に重なる。すなわち、展開前のエアバッグ71は側面視で、エアバッグモジュール60の上縁と下縁との間に位置している。
【0071】
インフレータ72は円柱状をなし、その外周面から径方向外方に突出する雄ねじ72Aを備えている。
【0072】
ケース73は略直方体状の箱体である。ケース73は開口部73Aを有する有底な四角筒状のケース本体73Bと、ケース本体73Bの開口部73Aを覆う樹脂製の蓋部材73Cとを備える。ケース本体73Bの底壁にはインフレータ72の雄ねじ72Aを通過させる貫通孔73Dが形成されている。蓋部材73Cは略方形な板状部材であって、エアバッグ71の膨張によって破断する破断部73Eが形成されている。本実施形態では、破断部73Eは他に比べて肉厚の小さい部分として、蓋部材73Cの一辺の外縁に沿って形成されている。ケース本体73Bの開口縁には厚さ方向に貫通する係止孔73Fが設けられ、蓋部材73Cには係止孔73Fに掛け止めされる係止爪73Gが設けられている。エアバッグ71は折り畳まれ、インフレータ72は雄ねじ72Aが貫通孔73Dを通過してケース本体73Bから突出するように配置されて、ケース本体73Bの内部に収納されている。更に、係止爪73Gが係止孔73Fに掛け止めされて、蓋部材73Cはケース本体73Bに結合している。蓋部材73Cはケース本体73Bの開口部73Aを封じている。
【0073】
インフレータ72の雄ねじ72Aが左バックサイドフレーム25Aに締結されることによって、エアバッグモジュール60は左バックサイドフレーム25Aの左側面に結合されている。このとき、図2、及び図3に示すように、蓋部材73Cの破断部73Eはエアバッグモジュール60の左前縁に位置している。本実施形態では、蓋部材73Cには更に、左後縁に沿って上下に延在するヒンジ軸部73Hが設けられている。ヒンジ軸部73Hは破断部73Eよりも厚肉であり、且つ、その他の部分よりも薄肉となっている。破断部73Eが破断した後、蓋部材73Cはエアバッグ71の膨張によってヒンジ軸部73Hを中心として左側に回転し、ケース本体73Bが開かれる。
【0074】
図2に示すように、パッド部材23はシートバックフレーム22を前側、左右外側、及び、上側を覆っている。図3に示すように、パッド部材23はシートバックフレーム22の前側に設けられ、背凭れ面10に対応する位置に設けられた前中央部81Aと、前中央部81Aの左に位置し、前方に膨出する左側部81Bと、前中央部81Aの右に位置し、前方に膨出する右側部(不図示)と含む。前中央部81Aはシートバック中央部6Aを構成し、左側部81B及び右側部はそれぞれボルスター部6Bを構成している。
【0075】
エアバッグモジュール60は左側部81Bによって前後、上下、及び車外側(左側)から覆われている。左側部81Bにはエアバッグモジュール60の前縁左側に厚さ方向に貫通するスリット80が設けられている。但し、スリット80が設けられる位置は、エアバッグモジュール60の前縁左側に限定されず、エアバッグモジュール60の左側、又は前縁の左前方に設けられていてもよい。スリット80は左側部81Bの左側面に上下に延在するように設けられている。スリット80の上端はエアバッグモジュール60の上端よりも上方に位置し、下端はエアバッグモジュール60の下端よりも下方に位置している。
【0076】
パッド部材23の表面は袋状をなす表皮材24によって覆われている。表皮材24はパッド部材23の前面を覆う前側表皮材85と、パッド部材23の左側面を覆う左側表皮材86(車外側表皮材)と、パッド部材23の右側面を覆う右側表皮材(図示せず)と、パッド部材23の上面を覆う上側表皮材(図示せず)とを含む。本実施形態では、表皮材24は、右側表皮材と左側表皮材86とを左右に接続し、シートバックフレーム22の後側を覆う背面側表皮材87を含んでいる。左側部81Bは前側表皮材85によって前側から覆われ、左側表皮材86によって左側から覆われ、背面側表皮材87によって後側から覆われている。
【0077】
図3及び図4の拡大図に示すように、前側表皮材85と左側表皮材86とは互いに縫合されて縫合部88を形成している。縫合部88は、シートバック6の車外側の側面(左側面)、及び、前面の車外側の縁部(左縁)を含む車外側の縁部のいずれかの部分に設けられている。本実施形態では、図1に示すように、縫合部88はシートバック6の前面左縁に沿って設けられている。縫合部88は、シートバック6の外面に沿って上下に延在している。縫合部88はエアバッグ71が膨張することにより、シートバック6の内側から所定以上荷重が加わると開裂する脆弱部(又は、開裂部ともいう)として機能する。
【0078】
図1及び図5に示すように、縫合部88はシートバック6の左前縁に沿って上下に延在している。図5に示すように、縫合部88の上端は展開前のエアバッグ71の上縁よりも上方に位置し、且つ、縫合部88の下端は展開前のエアバッグ71の下縁よりも下方に位置している。本実施形態では、縫合部88の上端は、側面視で、エアバッグモジュール60の上端よりも上方に位置し、縫合部88の下端は、側面視でエアバッグモジュール60の下端よりも下方に位置している。縫合部88は、左側部81Bの車外側側面の上端から下端にまで達していてもよい。縫合部88はスリット80の前方であって、左側部81Bの前面の左端近傍に位置している。
【0079】
また、本実施形態では、前側表皮材85は、複数の布部材を剥ぎ合わせることによって構成されている。より具体的には、前側表皮材85は、図3及び図4に示すように、その左縁部分を構成し、左側のボルスター部6Bの前面に設けられた左布部材85Aと、パッド部材23の前中央部81Aの前面を覆う中布部材85Bと、右側のボルスター部6Bの前面に設けられた右布部材85C(図1参照)とを含んでいる。左布部材85Aの右縁は中布部材85Bの左縁に縫合され、右布部材85Cの左縁は中布部材85Bの左縁に縫合されている。
【0080】
図1に示すように、左布部材85Aと中布部材85Bとの縫合部分は左側のボルスター部6Bの右縁に沿って上下に延在し、右布部材85Cと中布部材85Bとの縫合部分は右側のボルスター部6Bの左縁に沿って上下に延在している。図3及び図4に示すように、前側表皮材85の裏面であって、左布部材85A及び中布部材85Bの縫合部分(以下、左吊り部85D)と、右布部材85C及び中布部材85Bの縫合部分(以下、右吊り部85E)とにはそれぞれ複数のフック85Fが上下に並ぶように設けられている。パッド部材23の前中央部81Aと左側部81Bとの間、及び、前中央部81Aと右側部との間にはそれぞれ、上下に延在するワイヤ部材90が設けられている。フック85Fはそれぞれワイヤ部材90に掛け止めされている。
【0081】
左側表皮材86の後縁と背面側表皮材87の左縁とは互いに縫合され、シートバック6の後面左縁において上下に延在する剥ぎ合わせ目となる左後ハギ部92を構成している。換言すれば、左後ハギ部92において左側表皮材86と背面側表皮材87とが剥ぎ合わされている。右側表皮材の後縁と背面側表皮材87の右縁も同様に互いに縫合され、シートバック6の後面右縁において上下に延在する剥ぎ合わせ目となる右後ハギ部(図示せず)を構成している。本実施形態では、更に、表皮材24の組付けを容易にするため、背面側表皮材87の左縁近傍、及び、右縁近傍にそれぞれ上下に延在する線ファスナ94が設けられている。
【0082】
左布部材85A及び右布部材85Cはそれぞれ、複数の布部材を剥ぎ合わせることによって構成されている。本実施形態では、図3及び図4に示すように、左布部材85Aはその左半部を構成する第1左布部材85ALと、その右半部を構成する第2左布部材85ARとが剥ぎ合わされることによって構成されている。図1に示すように、左布部材85Aには第1左布部材85ALと第2左布部材85ARとの剥ぎ合わせ目となる左前ハギ部95A(図3参照)が上下に延在するように形成されている。右布部材85Cもまた、その右半部を構成する第1右布部材と、その左半部を構成する第2右布部材とが剥ぎ合わされることによって構成されている。右布部材85Cには、第1右布部材と第2右布部材との剥ぎ合わせ目となる右前ハギ部(図示せず)が上下に延在するように設けられている。
【0083】
図3に示すように、表皮材24の裏面には上下一対の補強布101(第1布部材)が結合されている。補強布101はそれぞれ帯状をなす布部材であって、表皮材24よりも伸長し難い材料によって構成されていることが好ましい。補強布101は一端が左前ハギ部95Aに縫合されている。補強布101は、左前ハギ部95Aから左方に延び、縫合部88の裏側を通過して(図4の拡大図参照)、パッド部材23の左前縁に達している。更に、補強布101は、パッド部材23の左側面に沿って後方に延び、側面視でエアバッグモジュール60の上方(又は下方)を通過して(図5参照)、パッド部材23の左後縁に達している。その後、補強布101は右側に延び、他端において左後ハギ部92に縫合されている。図5に示すように、2つの補強布101は側面視でエアバッグモジュール60(すなわち、展開前のエアバッグ71の位置G)から上下に離間し、上下に対をなすように配置されている。以下、上側に位置する補強布101を上側補強布101A、下側に位置する補強布101を下側補強布101Bとそれぞれ記載する。
【0084】
図1に示すように、補強布101は縫合部88を横切る方向に延びている。補強布101は、縫合部88の近傍を除き、その外周縁に沿って、表皮材24に縫合(裏打ち)されている。図3に示すように、補強布101は、更に、縫合部88の左右両側方向の離間した位置Pにおいて縫合されて、縫合部88の裏側を通過している。このように構成することによって、補強布101と表皮材24とを縫合する工程において、補強布101と表皮材24の縫合部88の近傍と縫合する工程や、補強布101を縫合部88に縫合する工程を省くことができるため、乗物用シート1の製造効率を向上させることができる。
【0085】
表皮材24の補強布101が設けられた部分は、布部材によって裏打ちされていない部分に比べて破断し難く、且つ、伸縮性の低い(より詳細には、伸び難く、耐伸張性を有する)第1低伸縮補強部102として機能する。図5に示すように、第1低伸縮補強部102は上下に対をなすように形成されている。第1低伸縮補強部102はそれぞれ縫合部88の近傍から縫合部88を横切る方向に延びている。上側の第1低伸縮補強部102はシートバック6の左側面において前後に延在し、側面視で展開前のエアバッグ71の位置Gの上方を通過している。下側の第1低伸縮補強部102もまたシートバック6の左側面において前後に延在し、側面視で展開前のエアバッグ71の位置Gの下方を通過している。
【0086】
表皮材24の裏面には、更に、帯状の力布103(第2布部材)が結合されている。本実施形態では、力布103は2つの布部材(以下、第1力布103A、及び第2力布103B)を含む。第1力布103A及び第2力布103Bはともに補強布101と同様の素材の布部材によって構成されている。
【0087】
第1力布103Aは、一端(以下、内端)において左側表皮材86の裏面であって縫合部88の左側に縫合されている。本実施形態では、第1力布103Aは左側表皮材86とともに、前側表皮材85に縫合されている。図4に示すように、第1力布103Aは内端から左方に延び、パッド部材23の左前縁に達している。更に、第1力布103Aはパッド部材23の左側面に沿って後方に延び、エアバッグモジュール60の上下方向略中央部に重なるように通過して(図5参照)、パッド部材23の左後縁に達している。更に、第1力布103Aは右側に延び、他端(以下、外端)において、左側表皮材86の後端裏面、より詳細には、左後ハギ部92に縫合されている。
【0088】
第2力布103Bは一端(以下、内端)において前側表皮材85の裏面であって縫合部88の右側に縫合されている。本実施形態では、第2力布103Bは前側表皮材85とともに、左側表皮材86に縫合され、縫合部88を構成している。図1に示すように、第2力布103Bの内端と第1力布103Aの内端とは縫合部88の上下方向における中央部分(以下、中間部)を介して互いに対峙している。図4に示すように、第2力布103Bは内端から右方に延びた後、左側部81Bの外面に沿って後方に延び、他端(以下、外端)において左前ハギ部95Aの近傍の部分に縫合されている。本実施形態では、第1力布103Aの内端、及び、第2力布103Bの内端は縫合部88に縫合されているため、第1力布103Aの内端と縫合部88との距離は、第2力布103Bの内端と縫合部88との距離と概ね等しい。
【0089】
第1力布103A及び第2力布103Bはそれぞれ、その外周縁に沿って、表皮材24に縫合(裏打ち)されている。これにより、表皮材24の第1力布103Aが設けられた部分、及び、表皮材24の第2力布103Bが設けられた部分は、布部材によって裏打ちされていない部分に比べて破断し難く、且つ、伸縮性の低い(より詳細には、伸び難く、耐伸張性を有する)第2低伸縮補強部104として機能する。図1に示すように、第2低伸縮補強部104は、縫合部88の中間部近傍において、左右方向(すなわち、縫合部88を横切る方向)に延在している。第2低伸縮補強部104は、縫合部88を介してパッド部材23の外面に沿って並ぶ2つの帯状をなし、縫合部88の両側方それぞれに隣接する2つの端部を有している。
【0090】
上側補強布101A及び下側補強布101Bはそれぞれ、縫合部88から離間した位置Pにおいて表皮材24に縫合されている(図3を参照)。本実施形態では、上側補強布101Aと下側補強布101Bとはそれぞれ、縫合部88からの距離が等しい位置において、表皮材24に縫合されている。上側補強布101Aと表皮材24とが縫合されている部分と縫合部88との距離は、第1力布103Aの内端(第1力布103Aが縫合されている部分)と縫合部88との距離よりも大きい。すなわち、上側補強布101A(又は、下側補強布101B)は第1力布103A(又は、第2力布103B)よりも縫合部88から離れた位置にある。よって、補強布101(上側補強布101A、下側補強布101B)に加わった荷重が、力布103(第1力布103A、第2力布103B)に加わった荷重に比べて、縫合部88に伝わり難くなっている。
【0091】
次に、このように構成した乗物用シート1の効果について説明する。インフレータ72からガスが放出されると、エアバッグ71が膨張する。これにより、エアバッグモジュール60の蓋部材73Cにはエアバッグ71から左方に向く荷重が加わり、破断部73Eが破断する。これにより、蓋部材73Cはその後端に設けられたヒンジ軸部73Hを中心として左側に回転し、ケース73が開かれる。その後、エアバッグ71はケース73の外方に膨張し、スリット80を通過して表皮材24に達する。このとき、エアバッグ71から表皮材24にはシートの内部から外部へ広げようとする荷重が加わる。
【0092】
更に、エアバッグ71は表皮材24に接しながら、側面視で展開前のエアバッグ71の位置Gから上下方向に向かってそれぞれ膨張し、上端及び下端においてそれぞれ第1低伸縮補強部102に達する。
【0093】
第1低伸縮補強部102は第2低伸縮補強部104を除く表皮材24の他の部分に比べて伸長し難いため、第1低伸縮補強部102は第2低伸縮補強部104を除く表皮材24の他の部分に比べてシート外方に広がり難い。よって、エアバッグ71の膨張が第1低伸縮補強部102において抑えられる。これにより、エアバッグ71の展開方向が縫合部88に向かって案内されるため、エアバッグ71からの荷重が縫合部88に集中し易くなる。これにより、縫合部88がより迅速に開裂し、エアバッグ71をより迅速に展開させることができる。
【0094】
エアバッグ71はスリット80を通過した後、第2低伸縮補強部104に達する。このとき、第2低伸縮補強部104にはエアバッグ71からシートの内部から外部に向かって広げようとする荷重が加わる。第2低伸縮補強部104は、第1低伸縮補強部102を除く他の部分よりも伸長し難いため、第2低伸縮補強部104よりも伸長し易い縫合部88に荷重が集中する。よって、エアバッグ71の膨張によって縫合部88が開裂し易くなり、より迅速にエアバッグ71を展開させることができる。
【0095】
また、第1低伸縮補強部102が第2低伸縮補強部104の上方及び下方に設けられることによって、エアバッグ71の第2低伸縮補強部104に対して上方又は下方に離れる方向への膨張が抑えられる。これにより、エアバッグ71からの荷重が縫合部88に集中し易くなる。
【0096】
第1低伸縮補強部102、及び第2低伸縮補強部104はそれぞれ、表皮材24に布部材を縫合することによって構成することができるため、表皮材24に伸縮性の低い箇所を容易に設けることができる。
【0097】
上側補強布101A(又は、下側補強布101B)は第1力布103A(又は、第2力布103B)よりも縫合部88から離間している。よって、エアバッグ71の膨張によって第1低伸縮補強部102に加わった荷重が第2低伸縮補強部104に加わった荷重に比べて縫合部88に伝達し難くなる。これにより、縫合部88の上端部近傍又は下端部近傍からの開裂が防止できる、よって、縫合部88を上下方向略中央部分から開裂させて、エアバッグ71をより迅速に、且つ、適切に展開させることができる。
【0098】
また、図5に示すように、上側の第1低伸縮補強部102は側面視でエアバッグモジュール60の上方に位置し、下側の第1低伸縮補強部102はエアバッグモジュール60の下方に位置している。このように、第1低伸縮補強部102をそれぞれエアバッグモジュール60の上方又は下方に配置することによって、上下の第1低伸縮補強部102の間隔を適度に設けることができる。これにより、表皮材24の上下の第1低伸縮補強部102の間の部分がエアバッグ71によってシート外側に押し出され易くなる。これにより、縫合部88が開裂し易くなり、エアバッグ71をより安定して展開させることができる。
【0099】
<<第2実施形態>>
第2実施形態に係る乗物用シート201は、補強布101の位置が第1実施形態と異なるため、第1低伸縮補強部102の位置が第1実施形態と異なる。他の構成については第1実施形態と同様である。よって、他の構成については説明を省略する。
【0100】
図6に示すように、上側補強布101Aは側面視でエアバッグモジュール60の上部に重ね合わさり、下側補強布101Bは側面視でエアバッグモジュール60の下部に重ね合わさっている。但し、上側補強布101Aは側面視で展開前のエアバッグ71の位置Gよりも上方に位置し、下側補強布101Bは側面視で展開前のエアバッグ71の位置Gよりも下方に位置している。
【0101】
次に、このように構成した乗物用シート201の効果について説明する。上側補強布101Aと下側補強布101Bとがエアバッグモジュール60に側面視で重なるように設けられることで、第1低伸縮補強部102がエアバッグモジュール60の上部及び下部に側面視で重なるように形成される。これにより、第1実施形態に比べて、第1低伸縮補強部102が展開前のエアバッグ71の位置Gにより近い位置に形成される。よって、エアバッグ71の展開時にエアバッグ71の上方及び下方の展開がより確実に抑えることができる位置に設けることができ、エアバッグ71に加わる荷重をより確実に縫合部88に集中させることができる。
【0102】
<<第3実施形態>>
第3実施形態に係る乗物用シート301は、第1実施形態に比べて、力布103が設けられていない点と、左前ハギ部95Aに裏打ち布が設けられている点とが異なり、他の構成については第1実施形態と同様であるため、他の構成については説明を省略する。
【0103】
図7(A)に示すように、第1低伸縮補強部102は第1実施形態と同様、上下に対をなすように設けられている。第1低伸縮補強部102はそれぞれシートバック6の左側面を前方に向かって延びてシートバック6の前面に達し、シート内側(右側)に向かって延びている。本実施形態では、上側の第1低伸縮補強部102は縫合部88の上端に、下側の第1低伸縮補強部102は縫合部88の下端にそれぞれT字状をなすように交差し、右側に延びている。第1低伸縮補強部102はそれぞれ右端部において、第1左布部材85ALと第2左布部材85ARとが剥ぎ合される剥ぎ目である左前ハギ部95A近傍に達している。換言すれば、第1低伸縮補強部102はシートバック6の前面側において左前ハギ部95Aによって上下に接続されている。
【0104】
図7(A)に示すように、左前ハギ部95Aに設けられる裏打ち布(以下、左前補強布303)は左前ハギ部95Aに沿って延在する帯状をなしている。図7(B)に示すように、左前ハギ部95Aは左前補強布303によって裏側から覆われている。左前ハギ部95Aの両側方において表皮材24に縫合されている。左前補強布303は上端において上側補強布101Aとともに表皮材24の裏面に縫合され、下端において下側補強布101Bとともに表皮材24の裏面に縫合されている。左前補強布303は上側補強布101Aと下側補強布101Bとを上下に接続している。
【0105】
次に、このように構成した乗物用シート301の効果について説明する。左前ハギ部95Aを覆うように左前補強布303が設けられる。これにより、エアバッグ71の展開時に左前ハギ部95Aを開裂させるように荷重が加わることが防止され、エアバッグ71に加わる荷重が縫合部88に集中し易くなる。
【0106】
表皮材24のうち左前補強布303が設けられた部分(以下、補助低伸縮補強部304)は第1低伸縮補強部102と同様に、表皮材24の第1低伸縮補強部102を除く他の部分に比べて伸長し難い。図7(A)に示すように、第1低伸縮補強部102のシート内端(右端)は補助低伸縮補強部304によって上下に接続されている。これにより、表皮材24には第1低伸縮補強部102と同様に伸長性の低い部分が、乗物用シート301の左斜め前から見て、エアバッグモジュール60を上下、及び前方から外囲するように設けられる。よって、エアバッグ71の展開時には、エアバッグ71の上下方向への膨張と前方への膨張とがその伸縮性の低い部分によって防止されて、エアバッグ71に加わる荷重が縫合部88に集中する。これにより、縫合部88の開裂を迅速に行うことができ、エアバッグ71をより迅速に乗員の側方に展開させることができる。
【0107】
<<第4実施形態>>
第4実施形態に係る乗物用シート401は、第1実施形態に比べて、力布103が設けられていない点と、第1低伸縮補強部102の構成とが異なり、他の構成については第1実施形態と同様であるため、他の構成については説明を省略する。
【0108】
図8に示すように、表皮材24には、パッド部材23の左側面から前面にかけて、縫合部88を横切る方向に延在する上下一対の縫製ライン402が設けられている。縫製ライン402は表皮材24に所定の番手(番数)の糸を縫い付けることによって伸長し難くした部分であって、それぞれ第1低伸縮補強部102として機能する。本実施形態では、縫製ライン402は直線状に糸が飾り縫いされた部分として構成されている。縫製ライン402を構成する糸の番手は大きいほどよく、少なくとも縫合部88を構成する糸の番手よりも大きい。
【0109】
次に、このように構成した乗物用シート401の効果について説明する。第1実施形態と同様に、表皮材24の上側の縫製ライン402が設けられた部分によって、エアバッグ71の上方向の膨張が抑えられ、表皮材24の下側の縫製ライン402が設けられた部分によって、エアバッグ71の下方向の膨張が抑えられる。これにより、エアバッグ71に加わる荷重を縫合部88に集中させることができ、エアバッグ71をより迅速に乗員の側方に展開させることができる。
【0110】
また、縫製ライン402を設けることによって、容易に表皮材24に伸長性の小さな部分を形成することができる。よって、第1低伸縮補強部102の構成が簡素である。また、縫製ライン402の形状や配置をデザインすることによって、第1低伸縮補強部102の形状を変更することができる。これにより、エアバッグ71に加わる荷重を縫合部88に集中させることができる。
【0111】
<<第5実施形態>>
第5実施形態に係る乗物用シート501は、第1実施形態に比べて、エアバッグモジュール60の大きさが第1実施形態と、パッド部材23の形状とが異なり、他の構成については、第1実施形態と同様であるため、他の構成については、説明を省略する。
【0112】
図9に示すように、乗物用シート501には、第1実施形態と同様に、エアバッグモジュール60が左バックサイドフレーム25Aの左側面に結合されている。エアバッグモジュール60は第1実施形態と同様に、前後、左右、及び上下方向を向く面を有し、左バックサイドフレーム25Aに沿って上下方向に延びる略直方体状をなしている。エアバッグモジュール60の大きさは第1実施形態のエアバッグモジュール60に比べて小さく、エアバッグモジュール60の前後幅は左バックサイドフレーム25Aの前後幅よりも小さい。エアバッグモジュール60の後縁は左バックサイドフレーム25Aの後縁に左右に揃い、エアバッグモジュール60の前縁は左バックサイドフレーム25Aの前縁よりも後方に位置している。
【0113】
パッド部材23の左側部81Bは、前中央部81Aに接続され、前中央部81Aから左方に延びるパッド左前部81BA(パッド前部)と、パッド左前部81BAの左端後面に当接し、後方に延びて、エアバッグモジュール60を左方から覆うパッド左縁部81BBと、パッド左縁部81BBの後縁に連続し、右側に延びて、エアバッグモジュール60を後方から覆うパッド左後部81BCとを備えている。パッド左前部81BAは左バックサイドフレーム25Aの前側に位置している。
【0114】
パッド左前部81BAの後面は、左バックサイドフレーム25Aの前面に当接している。パッド左前部81BAの後面には後方に向かって膨出し、左バックサイドフレーム25Aの左側面に当接する膨出部502が設けられている。本実施形態では、膨出部502は、左バックサイドフレーム25Aの左側面に当接しながら後方に膨出し、後端においてエアバッグモジュール60の前面右縁に当接している。
【0115】
次に、このように構成した乗物用シート501の効果について説明する。エアバッグモジュール60のケース73が開き、エアバッグ71がケース73の外へ膨張すると、エアバッグ71の一部はケース73の前面に沿って右側に膨張する。このとき、エアバッグ71の膨張は膨出部502によって阻害され、パッド左前部81BAと左バックサイドフレーム25Aとの間へのエアバッグ71の侵入が防止される。
【0116】
このように、エアバッグ71の右方(シート内方)への膨張が防止されることによって、エアバッグ71をより斜め左前方に効果的に膨張させることができる。これにより、エアバッグ71に加わる荷重が縫合部88に集中し易くなる。よって、エアバッグ71をより迅速に展開させることができる。
【0117】
<<第6実施形態>>
第6実施形態に係る乗物用シート601は、第1実施形態に比べて、縫合部88の配置、及び、力布602の構造が異なり、他の構造については第1実施形態と同様であるため、他の構成については、説明を省略する。
【0118】
縫合部88は図10に示すように、シートバック6の左側面に設けられている。力布602は一枚の帯状の布部材によって構成されている。力布602は一端において左バックサイドフレーム25Aに結合され、エアバッグモジュール60の後面に沿って左方に延びている。その後、力布602は蓋部材73Cの左側面(外面)に当接しつつ、蓋部材73Cの左側面に沿って前方に延び、スリット80に達している。力布602はスリット80を通過して、パッド部材23の外面に達し、その後、パッド部材23の外面に沿って延び、縫合部88に近接する位置において表皮材24の裏面に縫合されている。
【0119】
次に、このように構成した乗物用シート601の効果について説明する。第1実施形態と同様に、インフレータ72からエアバッグ71にガスが供給されると、エアバッグ71は膨張し、蓋部材73Cには開かれる方向に荷重が加わる。これにより、破断部73Eが破断し、蓋部材73Cにはヒンジ軸を中心として左方向に回転させるべく、左方に向く荷重が加わる。このとき、力布602に加わった左方に向く荷重が縫合部88に伝わり、縫合部88が力布602によって引っ張られて開裂する。
【0120】
このように、力布602を蓋部材73Cの外面(左側面)に沿って当接するように設けることで、エアバッグ71の膨張圧力を迅速に、縫合部88に伝達することができる。これにより、縫合部88をより迅速に開裂させることができ、エアバッグ71をより迅速に展開させることができる。
【0121】
<<第7実施形態>>
第7実施形態に係る乗物用シート701は、第1実施形態に比べて、力布702の配置が異なり、他の構成については、第1実施形態と同様であるため、他の構成については説明を省略する。
【0122】
図11に示すように、第7実施形態に係る乗物用シート701には、第1実施形態と同様に、第2低伸縮補強部104を構成する力布702が表皮材24に設けられている。力布702は、一端において縫合部88に縫合され、パッド部材23の左側面に沿って後方に延び、パッド部材23の左後端部に達している。力布702は更に、パッド部材23の後面に沿ってシート内方(右方)に延び、背面側表皮材87の左縁近傍に設けられた線ファスナ94の裏側を通過し、線ファスナ94の右側において背面側表皮材87の裏面に縫合されている。このとき、力布702は線ファスナ94を跨ぐように配置され、線ファスナ94の左右両側において、線ファスナ94から離間した位置Qにおいて表皮材24に結合されている。
【0123】
このように構成した乗物用シート701の効果について説明する。力布702は線ファスナ94を跨ぐように設けられ、線ファスナ94から離間した位置に縫合されている。これにより、力布702からの荷重が線ファスナ94に伝わり難くなるため、線ファスナ94の破断強度に依存しない力布702の配置が可能となる。
【0124】
<<第8実施形態>>
第8実施形態に係る乗物用シート801は、第1実施形態に比べて、力布802の配置が異なる点と、背面側表皮材87にポケット803が設けられている点とが異なる。他の構成については、第1実施形態と同様であるため、他の構成については説明を省略する。
【0125】
図12に示すように、背面側表皮材87の裏面には略中央部にプレート804が縫合され、ポケット803はその表面であってプレート804に重なり合う位置に縫合されている。力布802は第1実施形態と同様に、一端において縫合部88に縫合され、パッド部材23の左側面に沿って後方に延び、シートバック6の左後端部に達している。力布802は更に、パッド部材23の後面に沿ってシート内方(右方)に延び、背面側表皮材87に設けられたプレート804の近傍に縫合されている。
【0126】
このように構成した乗物用シート801の効果について説明する。表皮材24と力布802との結合部分がプレート804によって補強される。これにより、力布802と表皮材24との固定部分の強度が向上し、エアバッグ71の展開時に力布802と表皮材24とが分離し難くなる。よって、力布802からの荷重をより確実に縫合部88に伝えることができ、より迅速に縫合部88を開裂させることができる。
【0127】
<<第9実施形態>>
第9実施形態に係る乗物用シート901では、図13に示すように、第1実施形態に比べて、上側補強布101A、及び、下側補強布101Bが設けられておらず、更に、縫合部902の位置、力布903の構造、及び、表皮部材(前側表皮材85)及び力布903をシートバック6のパッド部材23に係止させる(吊り込む)ための構造が異なる。他の構造については概ね、第1実施形態と同様であるため、以下、他の構成については説明を省略する。
【0128】
縫合部902は、図1図13とを比較すると理解できるように、シートバック6の前面左縁よりも若干内側に位置している。
【0129】
シートバック6のパッド部材23の前面には後方に凹む吊り溝904が設けられている。吊り溝904は前面視でH字状をなしている。吊り溝904は上下方向に延びる左右一対の縦溝部905と、左右の縦溝部905の上下方向略中央部を左右に接続する横溝部906とを含む。図14(A)に示すように、吊り溝904の適所には樹脂製のクリップ908が設けられている。
【0130】
クリップ908は吊り溝904の底部に埋設されて、パッド部材23に結合されている。クリップ908は、吊り溝904の底部に係止された板状の基部908Aと、基部908Aから吊り溝904の開口部分に向かって突出する一対の突出片908Bを有している。突出片908Bにはそれぞれ互いに近接する方向に突出する係止爪908Cが設けられている。
【0131】
パッド部材23の前面には上下一対の力布903が設けられている。力布903の一端部(正面視で右端部)はそれぞれ、縫合部902において前側表皮材85及び左側表皮材86に縫合されている。力布903の他端部(正面視で左端部)はそれぞれ、前側表皮材85とともに係止具909に結合されている。本実施形態では、図14(A)の二点鎖線で囲まれた拡大図に示すように、前側表皮材85は2枚の布部材85A、85Bを縫合することによって形成され、2つの布部材85A、85Bの縫合部分と、力布903とが、一枚の布部材910に縫合され、その布部材910が係止具909に縫合されている。
【0132】
係止具909はそれぞれ断面矢じり状をなし、係止爪908Cに掛け止めされることによって、それぞれ対応するクリップ908に係止されている。これにより、力布903の他端と前側表皮材85とはともに、吊り溝904の底部に向かって吊り込まれた状態で、パッド部材23に結合されている。
【0133】
図13に示すように、力布903の一方は側面視においてエアバッグモジュール60の上縁に重なり合う位置にあり、力布903の他方は側面視においてエアバッグモジュール60の下縁に重なり合う位置にある。
【0134】
図15に示すように、上側の力布903Aは横溝部906の上方、下側の力布903Bは横溝部906の下方にそれぞれ位置している。上側の力布903Aは標準的な着座者の胸の高さに配置され、下側の力布903Bは標準的な着座者の腰の高さに配置されている。
【0135】
上側の力布903Aは2つのクリップ908を介して、吊り溝904に吊り込まれている。一方、下側の力布903Bは3つのクリップ908を介して、吊り溝904に吊り込まれている。上側の力布903Aは下側の力布903Bよりも面積が小さい
【0136】
シートバック6には、力布903が設けられていないところにも、同様の樹脂製のクリップ(以下、クリップ912)が配置されている。これらのクリップ912は前側表皮材85のみを吊り込むためのものであって、力布903及び前側表皮材85を吊り込むためのクリップ908と同様に、吊り溝904に埋め込まれている。前側表皮材85のみを吊り込むためのクリップ912は、前側表皮材85及び力布903を吊り込むためのクリップ908よりもその大きさが小さい。但し、この態様には限定されず、例えば、これらのクリップ912の突出片(不図示)は、力布903を支持するクリップ908の突出片908Bよりも厚みが小さくてもよい。
【0137】
このように構成した乗物用シート901の効果について説明する。縫合部902は、シートバック6の前面左縁よりも若干内側であって、第1実施形態(図1)に比べて、シートバック6の前面側に配置されている。これにより、縫合部902は図14(B)に示すように、展開時のエアバッグ914の前端部(頂点P)に対応し、展開時におけるエアバッグ914の頂点Pと、力布903の端部(左端部)が揃うようになっている。
【0138】
これにより、エアバッグ914の展開時に力布903を介して、表皮部材(前側表皮材85)及び力布903が吊り込まれている部分(より詳細には、クリップ908とパッド部材23の吊り溝904を画定する壁面との結合部分)に加わる荷重を低減することができる。
【0139】
下側の力布903B上側の力布903Aよりも面積が大きく、より多くのクリップ908を介して、吊り溝904に吊り込まれている。これにより、腰に対応する力布903の方が、胸に対応する力布903よりもエアバッグ914の展開時に荷重が分散され、クリップ908により確実に支持させることができる。よって、腰の位置においてより迅速にエアバッグ914を展開させることができ、腰部分をより迅速に保護することができる。
【0140】
前側表皮材85のみを吊り込むためクリップ912の大きさや突出片の厚さを、前側表皮材85及び力布903を吊り込むためのクリップ908よりも小さく(又は、突出片の厚さを小さく)することで、クリップ908、912を全て同じ大きさにした場合に比べて、それぞれのクリップ908、912をそれぞれ吊り込まれる部材を考慮した適正な大きさに設定することができる。
【0141】
<<第10実施形態>>
第10実施形態に係る乗物用シート951は、図16に示すように、エアバッグモジュール60とシートバック6のパッド部材23との間に裏布952が設けられている点が、第9実施形態と異なり、他の構成については第9実施形態と同様であるので、他の構成については説明を省略する。
【0142】
図17に示すように、第1実施形態と同様に、パッド部材23はシートバックフレーム22の前側に設けられ、背凭れ面10に対応する位置に設けられた前中央部81Aと、前中央部81Aの左に位置し、前方に膨出する左側部81Bと、前中央部81Aの右に位置し、前方に膨出する右側部(不図示)とを含む。エアバッグモジュール60は左側部81Bによって前後、上下、及び車外側(左側)から覆われている。
【0143】
裏布952は、パッド部材23の左側部81Bの裏側に設けられたシート状の布製の部材であって、上下に延在する長方形帯状をなしている。裏布952は、左前方からエアバッグモジュール60に重なり合う位置に配置されている。
【0144】
図16に示すように、裏布952には開口953が設けられている。開口953は裏布952を貫通する孔である。開口953の上縁及び下縁は、エアバッグモジュール60の上縁及び下縁よりも上下方向外側に位置し、開口953は上下方向においてエアバッグモジュール60(又は、展開前のエアバッグ914)に重なっている。本実施形態では、エアバッグモジュール60は水平方向に見て(より詳細には、左前方から見て)少なくとも一部において開口953と重なり合っている。
【0145】
次に、このように構成した乗物用シート951の効果について説明する。裏布952を設けることで、パッド部材23の裏布952が設けられた部分の剛性を高めることができる。また、裏布952のエアバッグモジュール60に重なる位置に開口953を設けることで、エアバッグ914の展開時において、裏布952が設けられた部分のパッド部材23の変形を防止するとともに、エアバッグ914の展開方向を開口953に向かうように案内することができる。
【0146】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上記第1実施形態では、側面視で、上側補強布101Aはエアバッグモジュール60の上方に、下側補強布101Bはエアバッグモジュール60の下方にそれぞれ設けられていたが、この態様には限定されない。例えば、上側補強布101Aが側面視でエアバッグモジュール60の上方に位置し、下側補強布101Bが側面視でエアバッグモジュール60の下部に重ね合わさっていてもよい。また、上側補強布101Aが側面視でエアバッグモジュール60の上部に重なり、下側補強布101Bが側面視でエアバッグモジュール60の下方に位置していてもよい。
【0147】
また、表皮材24には力布103が設けられておらず、上側補強布101A及び下側補強布101Bのいずれか一方のみが設けられていてもよい。これにより、表皮材24に縫合部88の近傍から縫合部88を横切る方向に延びるように第1低伸縮補強部102が形成される。第1低伸縮補強部102が形成されることで、エアバッグ71の展開方向が縫合部88に向かって案内されるため、エアバッグ71からの荷重が縫合部88に集中し易くなる。
【0148】
上記実施形態において、左前ハギ部95A、右前ハギ部、左後ハギ部92、及び、右後ハギ部はそれぞれ上下に延在するように設けられていたが、この態様には限定されない。図18(第1実施形態の第1変形例)に示すように、シートバック6を所定の形状とするためにハギ部956が左側表皮材86に前後に延在するように設けられた場合には、補強布101によってハギ部956が裏側から覆われているとよい。これにより、エアバッグ71の展開時にハギ部956が開裂することが防止でき、エアバッグ71に加わる荷重を縫合部88に集中させることができる。
【0149】
図19(第1実施形態の第2変形例)に示すように縫合部88と力布957とを可能な限り直交するように配置するとよい。これにより、力布957と縫合部88とが略平行に近い場合に比べて(図14の二点鎖線参照)、力布957から縫合部88に荷重が伝達し易くなる。
【0150】
図20(第1実施形態の第3変形例)に示すように力布958の一端をヘッドレスト7のピラー11に掛け止めするように構成してもよい。本実施形態では、力布958の一端に円形の貫通孔959を設け、貫通孔959にピラー11を通すことによって、力布958の一端は掛け止めされている。このように構成することで、力布958の一端をシートバックフレーム22に容易に固定することができる。
【0151】
上記第3実施形態において、左前補強布303によって補助低伸縮補強部304が形成されていたがこの態様には限定されない。第1低伸縮補強部102がそれぞれシートバック6の左側面(車外側側面)を前方に向かって延びてシートバック6の前面に達し、また、第1低伸縮補強部102がそれぞれ縫合部88に交差し、第1低伸縮補強部102を除く他の部分よりも伸長性の小さい補助低伸縮補強部304が、第1低伸縮補強部102の縫合部88よりも延出端側の部分を互いに接続している態様であればよい。補助低伸縮補強部304は第4実施形態の縫製ライン402と同様に、表皮材24に糸を縫い付けることによって構成されていてもよい。
【0152】
上記実施形態において、乗物用シート1は左側が車外側となるようにフロア3に載置されていたが、この態様には限定されない。例えば、乗物用シート1は右側が車外側となるようにフロア3に載置されてもよい。このとき、エアバッグモジュール60、第1低伸縮補強部102、及び、第2低伸縮補強部104はそれぞれ乗物用シート1の車外側である右側に設けられるとよい。
【0153】
上記第5実施形態において、図21に示すように、膨出部502が設けられる代わりに、左バックサイドフレーム25Aとエアバッグモジュール60との間に支持され、前方に延出し前端においてパッド左前部81BAの後面に当接する板部材503が設けられていてもよい。板部材503の前端はパッド左前部81BAの側(前方)に押し込まれているとよい。これにより、第5実施形態と同様に、エアバッグ71が膨張展開したときに、板部材503によってエアバッグ71のシート内側(右側)への侵入が防止できる。パッド左前部81BAには板部材503の前端を受容するための凹部504が設けられているとよい。
【0154】
上記第9実施形態において、力布903は横溝部906に対して上下にそれぞれ設けられていたが、この態様には限定されない。図22(A)~(C)に示すように、力布903は横溝部906の下側に2つ設けられていてもよい。
【0155】
また、力布903は右縁において前側表皮材85に縫合され、左縁において縫合部902に縫合されていてもよい。このとき、図22(A)に示すように、前側表皮材85を吊り溝904に吊り込むクリップ960は正面視で力布903の少なくとも一部に重なり合う位置に配置されているとよい。これにより、エアバッグ914の展開時に力布903からのクリップ960への荷重伝達がスムーズに行われるため、力布903をより確実に保持することができる。
【0156】
図22(B)に示すように、前側表皮材85を吊り溝904に吊り込むクリップ960は、力布903から離れた位置に設けられていてもよい。これにより、クリップ960同士を離して配置することになり、クリップ962の使用個数を少なくすることが出来る。
【0157】
図22(C)に示すように、正面視で、前側表皮材85を吊り溝904に吊り込むクリップ960が力布903と少なくとも一部において重なるように配置され、力布903と少なくとも一部において重なるクリップ960の間に更に、力布903と重なり合わない補助クリップ964が配置されていてもよい。補助クリップ964がエアバッグ914の展開時に力布903に加わる荷重に対抗し、力布903と少なくとも一部において重なり、力布903からの荷重が加わり易いクリップ960の吊り溝904からの離脱をより確実に防止することができる。
【0158】
上記第10実施形態において、裏布952の上縁及び下縁はエアバッグモジュール60の上縁及び下縁の上下方向外側に位置していたが、この態様には限定されない。エアバッグモジュール60(又は、展開前のエアバッグ914)の少なくとも一部が上下方向において裏布952に重ならない態様であってもよく、例えば、図23に示すように、裏布982は上下方向に延びる略長方形状の帯状をなし、その下縁は、エアバッグモジュール60の上下方向略中央に位置し、エアバッグモジュール60(又は、展開前のエアバッグ914)の上部を左前側から覆う態様であってもよい。これにより、エアバッグ914は着座者の腰近傍により迅速に展開するため、着座者の腰部分をより迅速かつ確実に保護することができる。
【0159】
上記第1実施形態~第9実施形態にはそれぞれ裏布952が設けられていなかったが、この態様には限定されない。第1~第9実施形態にもそれぞれ、パッド部材23の裏側に第10実施形態と同様の裏布952が設けられていてもよい。
【0160】
また、上記第10実施形態において、図24に示すように、クリップ960に整合する位置、又は、高さにおいて、裏布952が一部くり抜かれているとよい。例えば、裏布952の正面視でクリップ960に重なり合う位置に貫通孔999がそれぞれ設けられているとよい。これにより、パッド部材23の剛性がクリップ960と整合する位置において低下し、裏布952が設けられた部分に比べて柔らかくなる。
【0161】
クリップ960は樹脂製であるため、一般に使用される金属製インサートワイヤによる吊り込みに比べて保持力を確保するための工夫が必要となる。図24に示すように、正面視で裏布952のクリップ960に重なり合う位置に貫通孔999を設けることで、エアバッグ914の展開時にパッド部材23が突っ張り難くなる。これにより、クリップ960への荷重伝達力を弱めることができるため、保持力を高めることを目的としたクリップ960の板厚の増加や、クリップ960のサイズの大型化の必要性を抑えることができる。
【0162】
また、貫通孔999が設けられている部分においてパッド部材23が柔らかくなるため、貫通孔999が全く設けられていない場合に比べて、車両後突時における着座者のシートバック6への沈み込み性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0163】
1 :第1実施形態に係る乗物用シート
5 :シートクッション
6 :シートバック
9 :着座面
13 :パッド部材
14 :表皮材
15 :サイドフレーム
22 :シートバックフレーム
23 :パッド部材
24 :表皮材
60 :エアバッグモジュール
71 :エアバッグ
72 :インフレータ
73 :ケース
73C :蓋部材
94 :線ファスナ
95A :左前ハギ部(ハギ部)
101 :補強布(第1布部材)
102 :第1低伸縮補強部
103 :力布(第2布部材)
104 :第2低伸縮補強部
201 :第2実施形態に係る乗物用シート
301 :第3実施形態に係る乗物用シート
303 :左前補強布(裏打ち布)
401 :第4実施形態に係る乗物用シート
402 :縫製ライン
501 :第5実施形態に係る乗物用シート
502 :膨出部
601 :第6実施形態に係る乗物用シート
701 :第7実施形態に係る乗物用シート
801 :第8実施形態に係る乗物用シート
802 :力布
901 :第9実施形態に係る乗物用シート
903 :力布
951 :第10実施形態に係る乗物用シート
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