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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】圧縮機、および冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/58 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
F04D29/58 Q
F04D29/58 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022057013
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023148797
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝一
(72)【発明者】
【氏名】西村 公佑
(72)【発明者】
【氏名】岩田 有弘
(72)【発明者】
【氏名】福田 大悟
(72)【発明者】
【氏名】河内谷 佑季
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0199326(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16;17/00-19/02;21/00-25/16;29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(15)と、
前記回転軸(15)を回転させるモータ(18)と、
前記回転軸(15)を支持する気体軸受と
を備え、
前記モータ(18)のコイル(17)と前記気体軸受のハウジングとの間に、前記コイル(17)と前記気体軸受を冷却するための冷媒が流れる通路(Z)を設け
前記気体軸受は、前記回転軸(15)を回転可能に支持するラジアル気体軸受(40)を含み、
前記通路(Z)は、前記モータ(18)のコイル(17)と前記ラジアル気体軸受(40)のハウジング(21)との間に設けられ、前記回転軸(15)の軸方向に延びる第1通路(Z1)を含み、
前記回転軸(15)の径方向に見て、前記第1通路(Z1)から前記ラジアル気体軸受(40)が前記回転軸(15)の軸方向にはみ出ない、圧縮機。
【請求項2】
請求項において、
前記回転軸(15)の径方向に見て、前記ラジアル気体軸受(40)が前記コイル(17)の内側に位置することで前記コイル(17)が存在する領域(F)から前記ラジアル気体軸受(40)が前記回転軸(15)の軸方向にはみ出ない、圧縮機。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記気体軸受は、前記回転軸(15)を軸方向に支持するスラスト気体軸受(60)を含み、
前記通路(Z)は、前記モータ(18)のコイル(17)と前記スラスト気体軸受(60)のハウジングとの間に設けられる第2通路(Z2)を含む、圧縮機。
【請求項4】
請求項または請求項において、
前記気体軸受は、前記回転軸(15)を軸方向に支持するスラスト気体軸受(60)を含み、
前記通路(Z)は、前記モータ(18)のコイル(17)と前記スラスト気体軸受(60)のハウジングとの間に設けられる第2通路(Z2)を含み、
前記第1通路(Z1)が前記第2通路(Z2)と通する、圧縮機。
【請求項5】
請求項において、
前記第1通路(Z1)の幅寸法(d1)と、前記第2通路(Z2)の幅寸法(d2)とが同じである、圧縮機。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項において、
前記コイル(17)の一部が液冷媒(E)に浸かる、圧縮機。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の圧縮機(10)を備える、冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機、および冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ターボ圧縮機が開示されている。特許文献1に記載のターボ圧縮機においては、噴射ノズルが、冷却剤をモータケースの内周面で跳ね返らせて霧状に拡散させてコイルに降り掛け、その気化熱でコイルを冷却するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開番号WO2013-011939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧縮機において、気体軸受が使用されることがある。油等の液体を使用したすべり軸受や、冷却用に油を使用する転がり軸受等に比べると、気体軸受はガス(作動流体)のみが供給されるので冷却用に油を使用することができず、一般に冷却性能が劣る。
【0005】
また、特許文献1において、液冷媒にコイルを浸す構成が開示されている。しかし、圧縮機において、気体軸受が使用される場合、気体軸受の軸受面に液冷媒が導入されると気体軸受が破損するおそれがあるため、気体軸受の全周囲を液冷媒で満たすことはできない。
【0006】
気体軸受が使用される圧縮機において、冷却の課題となる部位は、主に、発熱源であるモータのコイルと気体軸受である。しかし、これらの部位を効率よく冷却できず、これらの部位の冷却が足りない場合、コイルにおいては被覆が許容温度を超えるおそれがあり、気体軸受においては焼き付き温度に到達するおそれがある。
【0007】
本開示の目的は、モータのコイルと、気体軸受とを効率よく冷却することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様は圧縮機を対象とする。圧縮機は、回転軸(15)と、前記回転軸(15)を回転させるモータ(18)と、前記回転軸(15)を支持する気体軸受とを備え、前記モータ(18)のコイル(17)と前記気体軸受のハウジング(20)との間に、前記コイル(17)と前記気体軸受を冷却するための冷媒が流れる通路(Z)を設ける。
【0009】
第1の態様では、モータ(18)のコイル(17)と、気体軸受とを効率よく冷却することができる。
【0010】
第2の態様は、第1の態様において、前記気体軸受は、前記回転軸(15)を回転可能に支持するラジアル気体軸受(40)を含み、前記通路(Z)は、前記モータ(18)のコイル(17)と前記ラジアル気体軸受(40)のハウジング(21)との間に設けられる第1通路(Z1)を含む。
【0011】
第2の態様では、モータ(18)のコイル(17)と、ラジアル気体軸受(40)とを効率よく冷却することができる。
【0012】
第3の態様は、第2の態様において、前記回転軸(15)の径方向に見て、前記ラジアル気体軸受(40)が前記コイル(17)の内側に位置する。
【0013】
第3の態様では、ラジアル気体軸受(40)を効果的に冷却することができる。
【0014】
第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、前記気体軸受は、前記回転軸(15)を軸方向に支持するスラスト気体軸受(60)を含み、前記通路(Z)は、前記モータ(18)のコイル(17)と前記スラスト気体軸受(60)のハウジングとの間に設けられる第2通路(Z2)を含む。
【0015】
第4の態様では、モータ(18)のコイル(17)と、スラスト気体軸受(60)とを効率よく冷却することができる。
【0016】
第5の態様は、第2の態様または第3の態様において、前記気体軸受は、前記回転軸(15)を軸方向に支持するスラスト気体軸受(60)を含み、前記通路(Z)は、前記モータ(18)のコイル(17)と前記スラスト気体軸受(60)のハウジングとの間に設けられる第2通路(Z2)を含み、前記第1通路(Z1)が前記第2通路(Z2)とが連通する。
【0017】
第5の態様では、モータ(18)のコイル(17)と、スラスト気体軸受(60)と、ラジアル気体軸受(40)とを効率よく冷却することができる。
【0018】
第6の態様は、第5の態様において、前記第1通路(Z1)の幅寸法(d1)と、前記第2通路(Z2)の幅寸法(d2)とが同じである。
【0019】
第6の態様では、第1通路(Z1)と第2通路(Z2)と通じて冷媒の流速が均一となるように冷媒を流すことができるので、モータ(18)のコイル(17)と、スラスト気体軸受(60)と、ラジアル気体軸受(40)とを冷媒によりムラなく冷却することができ、冷媒による冷却性能を向上させることができる。
【0020】
第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか1つにおいて、前記コイル(17)の一部が液冷媒(E)に浸かる。
【0021】
第7の態様では、コイル(17)の一部を液冷媒(E)により冷却できる。
【0022】
第8の態様は、冷凍装置を対象とする。冷凍装置は、上記圧縮機(10)を備える。
【0023】
第8の態様では、モータ(18)のコイル(17)と、気体軸受とを効率よく冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施形態に係る冷凍装置の概略の全体構成図である。
図2図2は、圧縮機の断面図である。
図3図3は、圧縮機の模式図である。
図4図4は、圧縮機の模式図である。
図5図5は、図4に示す圧縮機よりも第1ラジアル気体軸受を軸方向に延ばした構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0026】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
<冷凍装置の概要>
本実施形態に係る冷凍装置(100)について、図1を参照して説明する。図1は、冷凍装置(100)の冷媒回路(150)を示す概略図である。冷凍装置(100)は、冷媒が充填される冷媒回路(150)を備える。冷媒回路(150)は、冷媒が循環することで蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。冷媒回路(150)は、圧縮機(10)と、凝縮器(7)と、第1膨張弁(71)と、蒸発器(8)と、主回路(90)と、分岐回路(供給路)(91)と、第2膨張弁(72)と、ヒータ(73)と、戻り回路(92)と、副回路(93)とを備える。圧縮機(10)は、例えば、遠心型圧縮機である。
【0028】
主回路(90)は、冷媒を循環させて蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。冷凍サイクルでは、圧縮機(10)によって圧縮されたガス冷媒が、凝縮器(7)において空気に放熱する。このとき、ガス冷媒は、液化して液冷媒に変化する。放熱した液冷媒は、第1膨張弁(71)によって減圧される。減圧された液冷媒は、蒸発器(8)において蒸発する。このとき、液冷媒は、気化してガス冷媒に変化する。蒸発したガス冷媒は、圧縮機(10)に吸入される。圧縮機(10)は、吸入したガス冷媒を圧縮する。
【0029】
図1および図2に示す圧縮機(10)は、互いに直列に接続される低圧側インペラ(11)と高圧側インペラ(12)とを備える。圧縮機(10)は、低圧側インペラ(11)と高圧側インペラ(12)とにより、冷媒を二段階で圧縮する。
【0030】
図1に示す凝縮器(7)および蒸発器(8)は、例えば、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。凝縮器(7)および蒸発器(8)の近傍にはそれぞれ、送風ファンが設けられている。第1膨張弁(71)および第2膨張弁(72)はそれぞれ、開度が調整可能な電子制御弁である。
【0031】
圧縮機(10)と、凝縮器(7)と、第1膨張弁(71)と、蒸発器(8)とが、主配管(80)によって順次接続されて、主回路(90)をなしている。主配管(80)の内部には、冷媒が流れる。主配管(80)における凝縮器(7)と第1膨張弁(71)との間の位置には、分岐配管(81)の一端が接続される。分岐配管(81)の内部には、冷媒が流れる。分岐配管(81)の中途部には、一端から近い側から順に、第2膨張弁(72)と、ヒータ(73)とが位置している。分岐配管(81)の他端は、圧縮機(10)に接続される。分岐配管(81)と、第2膨張弁(72)と、ヒータ(73)とで、分岐回路(91)をなしている。
【0032】
分岐回路(91)を流れる液冷媒は、第2膨張弁(72)によって減圧される。減圧された液冷媒は、ヒータ(73)において加熱される。このとき、液冷媒は、気化してガス冷媒に変化する。このガス冷媒は、分岐配管(81)を通じて圧縮機(10)に導入される。
【0033】
主配管(80)における蒸発器(8)と圧縮機(10)との間の位置には、戻り配管(82)の一端が接続される。戻り配管(82)の内部には、冷媒が流れる。戻り配管(82)の他端は、圧縮機(10)に接続される。戻り配管(82)が、戻り回路(92)をなしている。
【0034】
副回路(93)は、副配管(83)を有する。副配管(83)は、一端が低圧側インペラ室(11a)の外周部に接続され、他端が高圧側インペラ室(12a)の中央部に接続される。副配管(83)は、低圧側インペラ室(11a)の吐出側と高圧側インペラ室(12a)の吸入側とを接続する。低圧側インペラ室(11a)で圧縮された冷媒は、副配管(83)を通じて高圧側インペラ室(12a)に吸入される。
【0035】
冷凍装置(100)は、例えば空気調和装置である。空気調和装置は、冷房と暖房とを切り換える冷暖房兼用機であってもよい。この場合、冷媒回路(150)は、冷媒の循環方向を切り換える切替機構を有する。切換機構は、例えば四方切換弁である。空気調和装置は、冷房専用機または暖房専用機であってもよい。
【0036】
また、冷凍装置(100)は、給湯器、チラーユニット、庫内の空気を冷却する冷却装置などであってもよい。冷却装置は、冷蔵庫、冷凍庫、コンテナなどの内部の空気を冷却する装置である。
【0037】
<圧縮機の概略構成>
以下では、本実施形態に係る圧縮機(10)について、図2を参照して説明する。図2は、圧縮機(10)の縦断面図である。なお、以下の説明においては、圧縮機(10)の回転軸(15)が延びる方向を軸方向、軸方向に対して垂直な方向を径方向とそれぞれ称する場合がある。ただし、これらの方向の規定は、圧縮機(10)の使用時や組付け時の向き等を限定するものではない。
【0038】
圧縮機(10)は、ケーシング(13)と、固定子(14)と、回転子(16)と、回転軸(15)と、コイル(17)と、低圧側インペラ(11)と、高圧側インペラ(12)と、第1ラジアル気体軸受(40)と、第2ラジアル気体軸受(50)と、スラスト気体軸受(60)とを備える。
【0039】
ケーシング(13)は、圧縮機(10)を構成するその他の部材を内部に収容する。ケーシング(13)は、胴部(130)と、第1閉塞部材(131)と、第2閉塞部材(132)とを有する。胴部(130)は、軸方向に延びる概ね筒状の部材である。胴部(130)における軸方向の一方向側(V1)は、第1閉塞部材(131)により閉塞される。第1閉塞部材(131)と、上述の高圧側インペラ(12)との間に、高圧側インペラ室(12a)が形成される。胴部(130)における軸方向の他方向側(V2)は、第2閉塞部材(132)により閉塞される。第2閉塞部材(132)と、上述の低圧側インペラ(11)との間に、低圧側インペラ室(11a)が形成される。
【0040】
固定子(14)は、概ね円筒状である。固定子(14)は、胴部(130)の軸方向中央部において、胴部(130)の内周面に固定される。回転子(16)は、概ね円筒状である。回転子(16)は、固定子(14)に対して径方向の内側(W2)に配置される。径方向の内側(W2)は、径方向のうち、回転軸(15)の軸芯(T)に近接する方向である。径方向の外側(W1)は、径方向のうち、回転軸(15)の軸芯(T)から離間する方向である。
【0041】
回転子(16)は、固定子(14)と径方向に間隔をあけて、配置される。回転子(16)には、磁石が設けられる。固定子(14)には、コイル(17)が設けられる。回転軸(15)の軸芯(T)を通りつつ径方向に対して平行な圧縮機(10)の断面において(図2参照)、コイル(17)は、固定子(14)に対して径方向の両側に配置される。固定子(14)と回転子(16)との間における、磁束と電流との相互作用によって、回転子(16)が固定子(14)に対して回転する。
【0042】
回転軸(15)は、軸方向に延びる。回転軸(15)は、回転子(16)に対して径方向の内側(W2)に位置する。固定子(14)と回転子(16)とコイル(17)とが、モータ(18)を構成している。回転軸(15)には回転子(16)が固定される。回転軸(15)は、回転子(16)と共に回転する。回転軸(15)における軸方向の一方向側(V1)には、高圧側インペラ(12)が固定される。回転軸(15)における軸方向の他方向側(V2)には、低圧側インペラ(11)が固定される。
【0043】
第1ラジアル気体軸受(40)は、回転子(16)に対して軸方向の一方向側(V1)に位置する。第1ラジアル気体軸受(40)は、回転軸(15)と胴部(130)との間に筒状の気体膜を形成することにより、回転軸(15)における軸方向の一方向側(V1)を胴部(130)に対して回転可能に支持する。第1ラジアル気体軸受(40)は、非接触型の気体軸受(例えば、フォイル軸受などの気体で浮かせる気体軸受)である。
【0044】
第2ラジアル気体軸受(50)は、回転子(16)に対して軸方向の他方向側(V2)に位置する。第2ラジアル気体軸受(50)は、回転軸(15)と胴部(130)との間に筒状の気体膜を形成することにより、回転軸(15)における軸方向の他方向側(V2)を胴部(130)に対して回転可能に支持する。第2ラジアル気体軸受(50)は、非接触型の気体軸受(例えば、フォイル軸受などの気体で浮かせる気体軸受)である。
【0045】
スラスト気体軸受(60)は、第1ラジアル気体軸受(40)に対して軸方向の一方向側(V1)に位置する。スラスト気体軸受(60)は、回転軸(15)を軸方向に支持する。スラスト気体軸受(60)は、非接触型の気体軸受(例えば、フォイル軸受などの気体で浮かせる気体軸受)である。
【0046】
第1ラジアル気体軸受(40)およびスラスト気体軸受(60)は、第1保持部材(20)により保持される。第1保持部材(20)は、本発明の気体軸受のハウジングの一例である。第2ラジアル気体軸受(50)は、第2保持部材(30)により保持される。軸方向の位置において、第1保持部材(20)は回転子(16)に対して軸方向の一方向側(V1)に位置し、第2保持部材(30)は回転子(16)に対して軸方向の他方向側(V2)に位置する。第1保持部材(20)および第2保持部材(30)の各々は、概ね円板状に形成される。第1保持部材(20)および第2保持部材(30)の各々の外周面は、ケーシング(13)の内壁に固定される。第1保持部材(20)および第2保持部材(30)の各々の中央部分には回転軸(15)が挿通される。
【0047】
ケーシング(13)の内部において、固定子(14)と、回転子(16)と、コイル(17)と、第1保持部材(20)と、第2保持部材(30)との間には、空間(S)が形成される。ケーシング(13)には、導入流路(13a)と排出流路(13b)とが形成される。導入流路(13a)および排出流路(13b)の各々は、ケーシング(13)の外部とケーシング(13)内の空間(S)とを連通する孔である。本実施形態では、ケーシング(13)には2つの導入流路(13a)と、2つの排出流路(13b)とが設けられる。しかし、導入流路(13a)および排出流路(13b)の各々の個数については特に限定されない。
【0048】
導入流路(13a)は、分岐配管(81)(図1参照)と連通する。導入流路(13a)は、ケーシング(13)内の空間(S)のうち、コイル(17)と第1保持部材(20)との間に位置する空間と連通する。
【0049】
排出流路(13b)は、戻り配管(82)(図1参照)と連通する。排出流路(13b)は、ケーシング(13)内の空間(S)のうち、コイル(17)と第2保持部材(30)との間に位置する空間と連通する。排出流路(13b)は、導入流路(13a)に対して径方向の他方向側(V2)に位置する。
【0050】
<通路の構成>
ケーシング(13)内の空間(S)には、冷媒が流れる通路(Z)が設けられる。流路(Z)は、導入流路(13a)から、コイル(17)と第1保持部材(20)との間の空間、固定子(14)と回転子(16)との間の空間、および、コイル(17)と第2保持部材(30)との間の空間を通過した後、排出流路(13b)に通じるように設けられる。第1保持部材(20)および第2保持部材(30)の各々は、通路(Z)に沿って冷媒を案内するガイド機能を有する。
【0051】
分岐配管(81)を流れる冷媒(ガス冷媒)は、導入流路(13a)を通じてケーシング(13)内の空間(S)に送られて、ケーシング(13)内の空間(S)において通路(Z)を流れた後、排出流路(13b)を通じて戻り配管(82)へ送られる。流路(Z)を流れる冷媒により、コイル(17)、第1ラジアル気体軸受(40)、第2ラジアル気体軸受(50)、スラスト気体軸受(60)等が冷却される。
【0052】
図2および図3に示すように、通路(Z)は、第1通路(Z1)と、第2通路(Z2)とを含む。
【0053】
第1通路(Z1)は、通路(Z)のうち、コイル(17)と、第1ラジアル気体軸受(40)のハウジング(21)との間に設けられる部分である。第1ラジアル気体軸受(40)のハウジング(21)は、第1保持部材(20)のうち第1ラジアル気体軸受(40)の周囲に位置する部分である。本実施形態では、第1通路(Z1)は、軸方向に延びる。本実施形態では、冷媒は、第1通路(Z1)を軸方向の他方向側(V2)へ流れる。
【0054】
第2通路(Z2)は、通路(Z)のうち、コイル(17)と、スラスト気体軸受(60)のハウジング(22)との間に設けられる部分である。スラスト気体軸受(60)のハウジング(22)は、第1保持部材(20)のうちスラスト気体軸受(60)の周囲に位置する部分である。本実施形態では、第2通路(Z2)は、径方向に延びる。本実施形態では、冷媒は、第1通路(Z1)を径方向の内側(W2)へ流れる。
【0055】
第1通路(Z1)の上流には、第2通路(Z2)が設けられる。第1通路(Z1)が第2通路(Z2)と連通する。
【0056】
<効果>
以上のように、モータ(18)のコイル(17)と、第1保持部材(20)(気体軸受のハウジング)との間に、モータ(18)と気体軸受を冷却するための冷媒が流れる通路(Z)が設けられる(図2参照)。これにより、通路(Z)に冷媒を流すことで、モータ(18)のコイル(17)と、気体軸受との両方を冷却できるので、一つの通路(Z)で二部品(コイル(17)と気体軸受)を冷却でき、モータ(18)のコイル(17)と、気体軸受とを効率よく冷却することができる。
【0057】
図2よび図3に示すように、気体軸受は、回転軸(15)を回転可能に支持する第1ラジアル気体軸受(40)を含む。通路(Z)は、モータ(18)のコイル(17)と、第1ラジアル気体軸受(40)のハウジング(21)との間に設けられる第1通路(Z1)を含む。これにより、第1通路(Z1)に冷媒を流すことで、冷媒によりコイル(17)と第1ラジアル気体軸受(40)との両方を冷却でき、コイル(17)と第1ラジアル気体軸受(40)とを効率よく冷却することができる。
【0058】
図2よび図3に示すように、気体軸受は、回転軸(15)を軸方向に支持するスラスト気体軸受(60)を含む。通路(Z)は、モータ(18)のコイル(17)と、スラスト気体軸受(60)のハウジング(22)との間に設けられる第2通路(Z2)を含む。これにより、第2通路(Z2)に冷媒を流すことで、冷媒によりコイル(17)とスラスト気体軸受(60)との両方を冷却できるので、コイル(17)とスラスト気体軸受(60)とを効率よく冷却することができる。
【0059】
<変形例>
図4に示すように、径方向に見て、第1ラジアル気体軸受(40)がコイル(17)の内側に位置に位置していてもよい。この場合、図4に示すように、径方向に見て、コイル(17)が存在する領域(F)から第1ラジアル気体軸受(40)が軸方向にはみ出ないように、第1ラジアル気体軸受(40)が設けられる。例えば、図5に示すように径方向に見て、コイル(17)が存在する領域(F)から第1ラジアル気体軸受(40)が軸方向にはみ出るように第1ラジアル気体軸受(40)が設けられた場合、第1ラジアル気体軸受(40)のはみ出た部分(41)が通路(Z)から離間してしまうため、通路(Z)を流れる冷媒による第1ラジアル気体軸受(40)のはみ出た部分(41)の冷却性能が低下する。しかし、図4に示すように、径方向に見て、コイル(17)が存在する領域(F)から第1ラジアル気体軸受(40)が軸方向にはみ出ないようにすることで、第1ラジアル気体軸受(40)のうち通路(Z)から離間する部分が生じることを抑制でき、第1ラジアル気体軸受(40)全体を通路(Z)に近接させて配置できる。その結果、通路(Z)を流れる冷媒により第1ラジアル気体軸受(40)を効果的に冷却することができる。
【0060】
図4に示すように、第1通路(Z1)の幅寸法(d1)と、第2通路(Z2)の幅寸法(d2)とが同じ(同じには、略同じも含まれる)でもよい。これにより、冷媒の流速が均一となるように第1通路(Z1)と第2通路(Z2)と通じて冷媒を流すことができる。その結果、モータ(18)のコイル(17)と、第1ラジアル気体軸受(40)と、スラスト気体軸受(60)とを冷媒によりムラなく冷却することができ、冷媒によるコイル(17)と第1ラジアル気体軸受(40)とスラスト気体軸受(60)との冷却性能を向上させることができる。第1通路(Z1)の幅寸法(d1)は、第1通路(Z1)において、冷媒の流れる方向に対して垂直な方向の寸法である。第2通路(Z2)の幅寸法(d2)は、第2通路(Z2)において、冷媒の流れる方向に対して垂直な方向の寸法である。
【0061】
図4に示すように、コイル(17)の一部が液冷媒(E)に浸かっていてもよい。これにより、コイル(17)の一部が液冷媒(E)により冷却することができる。
【0062】
図2に示すように、第1保持部材(20)において、通路(Z)の曲がり角(図3に示す第1通路(Z1)と第2通路(Z2)との連結部分)を形成する箇所(23)が、R形状を形成するように湾曲していてもよい。これにより、第2通路(Z2)から第1通路(Z1)へ冷媒が流れる際、通路(Z)のR形状に沿って円滑に流すことができる。
【0063】
図3に示すように、コイル(17)における軸方向の一方向側(V1)の端部(17a)が径方向に沿ったフラットな形状を有していてもよい。これにより、第2通路(Z2)において冷媒を円滑に送ることができる。
【0064】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上に説明したように、本開示は、圧縮機、および冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0066】
10 圧縮機
15 回転軸
17 コイル
18 モータ
20 第1保持部材(ハウジング)
21 第1ラジアル気体軸受のハウジング(ラジアル気体軸受のハウジング)
22 スラスト気体軸受のハウジング
40 第1ラジアル気体軸受
60 スラスト気体軸受
100 冷凍装置
Z 通路
Z1 第1通路
Z2 第2通路
図1
図2
図3
図4
図5