(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F28F 19/06 20060101AFI20231213BHJP
F24F 1/0067 20190101ALI20231213BHJP
F24F 1/14 20110101ALI20231213BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20231213BHJP
F28F 1/32 20060101ALI20231213BHJP
F28F 19/00 20060101ALI20231213BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
F28F19/06 B
F24F1/0067
F24F1/14
F28D1/053 A
F28F1/32 G
F28F19/00 511E
F28F19/06 A
F28F21/08 B
(21)【出願番号】P 2022060706
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】中野 寛之
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-051731(JP,A)
【文献】特開平11-211377(JP,A)
【文献】国際公開第2019/239990(WO,A1)
【文献】特開2016-205744(JP,A)
【文献】特開昭61-143592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/00- 1/44,
19/00-19/06,
21/00-21/08
F28D 1/00- 1/06
F25B 39/00-39/04
F24F 1/00- 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第1伝熱管(210)と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数の第1フィン(220)と、
を有する第1熱交換器(200)を含む室外機(2)と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第2伝熱管(310)と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数の第2フィン(320)と、
を有する第2熱交換器(300)を含む室内機(3)と、
を備え、
前記第1伝熱管の表面には、前記第1伝熱管の母材(211)よりも電位的に卑であり、かつ、前記第1フィンよりも電位的に貴である第1犠牲層(212)が設けられ、
前記第1フィンは、亜鉛を含有し、
前記第1フィンの亜鉛含有率は、前記第2フィンの亜鉛含有率よりも多い、
空気調和機(1)。
【請求項2】
前記第1フィンの亜鉛含有率は、2質量%以上である、
請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記第2フィンのフィンピッチ(P2)は、前記第1フィンのフィンピッチ(P1)よりも大きい、
請求項1または2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記第1フィンのフィンピッチと、前記第2フィンのフィンピッチとの差は、0.1mm以上0.3mm以下である、
請求項3に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記第1フィンの電位は、前記第2フィンの電位よりも低い、
請求項1~4のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記第2伝熱管の表面には、前記第2伝熱管の母材(311)よりも電位的に卑であり、かつ、前記第2フィンよりも電位的に卑である第2犠牲層(312)が設けられている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記第1伝熱管は、扁平形状を有し、
前記第2伝熱管は、円筒形状を有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項8】
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第1伝熱管(210)と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数の第1フィン(220)と、
を有する第1熱交換器(200)を含む室外機(2)と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第2伝熱管(310)と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数の第2フィン(320)と、
を有する第2熱交換器を含む室内機(3)と、
を備え、
前記第1伝熱管の表面には、前記第1伝熱管の母材(211)よりも電位的に卑であり、かつ、前記第1フィンよりも電位的に貴である第1犠牲層(212)が設けられ、
前記第2フィンの伸びは、前記第1フィンの伸びよりも大きい、
空気調和機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1(国際公開第2017/141943号)に開示されているように、冷媒が流れる伝熱管と、この伝熱管に固定されたフィンとを備える熱交換器が知られている。特許文献1の熱交換器は、伝熱管としてのアルミニウム管と、フィンとしてのアルミニウムフィンと、を備え、アルミニウム管の表面における自然電位は、アルミニウムフィンの表面における自然電位よりも貴であり、かつ、両者の電位差が30~200mVである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の熱交換器を室内機に用いることができない場合があるという問題を本発明者は明らかにした。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点に係る空気調和機は、室外機と、室内機と、を備える。室外機は、第1熱交換器を含む。第1熱交換器は、第1伝熱管と、複数の第1フィンと、を有する。第1伝熱管は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。複数の第1フィンは、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。室内機は、第2熱交換器を含む。第2熱交換器は、第2伝熱管と、複数の第2フィンと、を有する。第2伝熱管は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。複数の第2フィンは、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。第1伝熱管の表面には、第1犠牲層が設けられている。第1犠牲層は、第1伝熱管の母材よりも電位的に卑であり、かつ、第1フィンよりも電位的に貴である。第1フィンは、亜鉛を含有する。第1フィンの亜鉛含有率は、第2フィンの亜鉛含有率よりも多い。
【0005】
第1観点の空気調和機によれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第1伝熱管に、母材よりも電位的に卑である第1犠牲層が設けられているので、母材の腐食を抑制できる。また、第1犠牲層は、第1フィンよりも電位的に貴であるので、母材の腐食を抑制するための第1犠牲層の腐食を抑制することができる。
【0006】
しかし、フィンを電位的に卑にするために亜鉛を含有させると、フィンが硬化するため、加工性が悪くなる。そこで、第1観点の空気調和機では、室外機の第1フィンは、室内機の第2フィンよりも加工性を要求されないことに着目して、第1フィンの亜鉛含有率を、第2フィンの亜鉛含有率よりも多くしている。これにより、室内機の第2フィンの加工性を確保することができるので、第2フィンを有する第2熱交換器を室内機に用いることができる。
【0007】
第2観点に係る空気調和機は、第1観点に係る空気調和機であって、第1フィンの亜鉛含有率は、2質量%以上である。
【0008】
第2観点の空気調和機では、室外機の第1フィンの亜鉛含有率を2質量%以上とすることにより、母材の腐食が抑制できる程度の電位を有する第1犠牲層を実現することができる。
【0009】
第3観点に係る空気調和機は、第1観点または第2観点に係る空気調和機であって、第2フィンのフィンピッチは、第1フィンのフィンピッチよりも大きい。
【0010】
第2フィンは、第1フィンよりも亜鉛含有率が少ないので、腐食しやすい。このため、第3観点の空気調和機では、第2フィンのフィンピッチを第1フィンのフィンピッチよりも大きくすることによって、第2フィンにおいて、腐食を促進する第2伝熱管との接触面積を減らすことができる。したがって、第2フィンの腐食を抑制することができる。
【0011】
第4観点に係る空気調和機は、第3観点に係る空気調和機であって、第1フィンのフィンピッチと、第2フィンのフィンピッチとの差は、0.1mm以上0.3mm以下である。
【0012】
第4観点の空気調和機では、ピッチ差を0.1mm以上0.3mm以下とすることによって、第2フィンの腐食をより抑制することができる。
【0013】
第5観点に係る空気調和機は、第1観点から第4観点に係る空気調和機であって、第1フィンの電位は、第2フィンの電位よりも低い。
【0014】
室外機の第1熱交換器は、室内機の第2熱交換器よりも塩害の影響を受けやすい。このため、第5観点の空気調和機では、第1フィンを第2フィンの電位よりも低くすることによって、第1フィンが第1伝熱管の犠牲となることで、第1伝熱管が腐食することをより抑制することができる。
【0015】
第6観点に係る空気調和機は、第1観点から第5観点に係る空気調和機であって、第2伝熱管の表面には、第2伝熱管の母材よりも電位的に卑であり、かつ、第2フィンよりも電位的に卑である第2犠牲層が設けられている。
【0016】
室内機の第2熱交換器は、室外機の第1熱交換器よりも塩害の影響を受けにくい。このため、第6観点の空気調和機では、室内機の第2犠牲層を第2フィンよりも電位的に卑にしても、母材の腐食を抑制することができる。また、第2フィンの加工性の低下をより抑えることができる。
【0017】
第7観点に係る空気調和機は、第1観点から第6観点に係る空気調和機であって、第1伝熱管は、扁平形状を有する。第2伝熱管は、円筒形状を有する。
【0018】
円筒形状の伝熱管に取り付けられるフィンは、扁平形状の伝熱管に取り付けられるフィンよりも加工性が要求される。このため、第7観点の空気調和機では、室内機の第2伝熱管は、室外機の第1伝熱管よりも加工性が要求される。このため、本開示の空気調和機が好適に用いられる。
【0019】
第8観点に係る空気調和機は、室外機と、室内機と、を備える。室外機は、第1熱交換器を含む。第1熱交換器は、第1伝熱管と、複数の第1フィンと、を有する。第1伝熱管は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。複数の第1フィンは、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。室内機は、第2熱交換器を含む。第2熱交換器は、第2伝熱管と、複数の第2フィンと、を有する。第2伝熱管は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。複数の第2フィンは、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。第1伝熱管の表面には、第1犠牲層が設けられている。第1犠牲層は、第1伝熱管の母材よりも電位的に卑であり、かつ、第1フィンよりも電位的に貴である。第2フィンの伸びは、第1フィンの伸びよりも大きい。
【0020】
第8観点の空気調和機によれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第1伝熱管に、母材よりも電位的に卑である第1犠牲層が設けられているので、母材の腐食を抑制できる。また、第1犠牲層は、第1フィンよりも電位的に貴であるので、母材の腐食を抑制するための第1犠牲層の腐食を抑制することができる。
【0021】
しかし、フィンを電位的に卑にすると、フィンが硬化するため、加工性が悪くなる。そこで、第8観点の空気調和機では、室外機の第1フィンは、室内機の第2フィンよりも加工性を要求されないことに着目して、第2フィンの伸びを、第1フィンの伸びよりも大きくしている。これにより、室内機の第2フィンの加工性を確保することができるので、第2フィンを有する第2熱交換器を室内機に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の一実施形態に係る空気調和機の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の一実施形態に係る空気調和機について、図面を参照しながら説明する。なお、なお、以下の説明において、「上」、「下」等の方向を示す表現を適宜用いているが、これらは、通常使用される状態での各方向を表すものであって、限定されるものではない。
【0024】
(1)全体構成
図1に示すように、本開示の一実施形態に係る空気調和機1は、室外機2と、室内機3と、連絡配管4と、を備えている。室外機2は、室外に設置されている。室内機3は、室内に設置されている。ここでの室内機3は、室内の壁面等に取り付けられている。連絡配管4は、室外機2と室内機3とを接続している。このような空気調和機1は、室内の冷房運転や暖房運転等を行うことができる。
【0025】
図2に示すように、室外機2は、第1熱交換器200、第1ファン21、第1ドレンパン22などを含む。第1ファン21は、室外機2内に室外空気を吸入して、第1熱交換器200に室外空気を供給した後に、室外機2外に排出する。第1熱交換器200は、室外空気と冷媒との熱交換を行う。第1熱交換器200は、冷房運転時には冷媒の放熱器として機能し、暖房運転時には冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。第1ドレンパン22は、水を受ける。
【0026】
図3に示すように、室内機3は、第2熱交換器300、第2ファン31、第2ドレンパン32などを含む。第2ファン31は、室内機3内に室内空気を吸入して、第2熱交換器300に室内空気を供給した後に、室内機3外に排出する。第2熱交換器300は、冷媒と室内空気との熱交換を行う。第2熱交換器300は、冷房運転時には冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には冷媒の放熱器として機能する熱交換器である。第2ドレンパン32は、水を受ける。
【0027】
(2)詳細構成
(2-1)第1熱交換器
図4に示すように、第1熱交換器200は、複数の第1伝熱管210と、複数の第1フィン220と、を有している。第1伝熱管210及び第1フィン220は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。本実施形態の第1熱交換器200は、マイクロチャネル式熱交換器である。
【0028】
(2-1-1)第1伝熱管
第1伝熱管210は、内部に冷媒を流す。
図4及び
図5に示すように、第1伝熱管210は、扁平形状を有している。ここでは、第1伝熱管210は、扁平多孔管である。第1伝熱管210には、第1熱交換器200で室外空気と熱交換される冷媒が通過する複数の貫通孔が所定の方向に並んで形成されている。この複数の貫通孔は、第1方向に沿って貫通する。ここでは、第1方向は、長手方向である。
【0029】
図5に示すように、第1伝熱管210は、第1母材211と、第1犠牲層212と、を有している。第1犠牲層212は、第1伝熱管210の表面に設けられている。第1犠牲層212は、第1伝熱管210の表面全体に設けられてもよく、第1伝熱管210の表面の一部に設けられてもよい(図示せず)。換言すると、第1犠牲層212は、露出する外表面の全体に形成されてもよく、露出する外表面の一部に形成されてもよい(図示せず)。第1犠牲層212は、第1伝熱管210の外表面から冷媒の流れる内表面に向かう厚さ方向の一部に形成されており、肉厚全体には形成されていない。換言すると、第1伝熱管210において、冷媒の流れる内表面の少なくとも一部には第1犠牲層212は形成されていない。本実施形態では、第1伝熱管210の内表面の全体に、第1犠牲層212は形成されていない。
【0030】
第1犠牲層212は、第1伝熱管210の第1母材211よりも電位的に卑であり、かつ、第1フィン220よりも電位的に貴である。第1犠牲層212の電位と第1母材211の電位との電位差は、例えば132mVである。第1フィン220の電位と第1犠牲層212の電位との電位差は、例えば61mVである。第1犠牲層212は、電位を下げるために、亜鉛(Zn)などの金属を含有する。本実施形態の第1犠牲層212は、亜鉛が溶射された亜鉛拡散層である。外表面側の第1犠牲層212は、第1伝熱管210において、内表面側の第1母材211の腐食の進行を防止する。
【0031】
図4に示すように、複数の第1伝熱管210は、上下方向に並ぶ。複数の第1伝熱管210の最下端は、第1ドレンパン22(
図2参照)の水位よりも上方に位置する。
【0032】
(2-1-2)第1フィン
第1フィン220は、第1伝熱管210と室外空気との伝熱面積を増大させて、冷媒と室外空気との熱交換を促進する。第1フィン220は、第1伝熱管210と接触している。
【0033】
第1フィン220は、第1伝熱管210の第1母材211よりも電位的に卑であり、かつ、第1犠牲層212よりも電位的に卑である。換言すると、電位が高い順は、第1母材211、第1犠牲層212及び第1フィン220である。第1フィン220の電位と第1母材211の電位との電位差は、例えば193mVである。
【0034】
第1フィン220は、電位を下げるために、亜鉛などの金属を含有する。金属は特に限定されないが、本実施形態の第1フィン220は、亜鉛を含有する。第1フィン220の亜鉛含有率は、好ましくは2質量%以上である。第1フィン220の亜鉛含有率の上限値は、特に限定されないが、加工性の観点から例えば6%である。
【0035】
ここで、本明細書に記載の「亜鉛含有率」は、例えば発光分光分析法などによって測定される値である。
【0036】
なお、本実施形態の第1フィン220は、マグネシウム(Mg)及び銅(Cu)をさらに含有する。
【0037】
複数の第1フィン220は、第1伝熱管210の延びる第1方向(
図4参照)に積層されている。ここでは、複数の第1フィン220は、第1伝熱管210に交差(
図4では直交)するように上下方向に延びている。本実施形態では、複数の第1フィン220は、平行、かつ、等間隔に配置されている。換言すると、複数の第1フィン220は、所定のフィンピッチP1で第1方向に並んでいる。
【0038】
第1フィン220は、平板状の部材である。また第1フィン220は、第1伝熱管210を通すための切欠きを有している。この切欠きは、第1方向に並んでいる。なお、第1フィン220は、カラー部を有してもよい。
【0039】
(2-1-3)フィレット
室外機2の第1熱交換器200は、第1伝熱管210と第1フィン220とを接続するフィレットをさらに備えてもよい。フィレットの電位は特に限定されないが、本実施形態では、電位が高い順は、第1母材211、第1犠牲層212、フィレット及び第1フィン220である。
【0040】
(2-2)第2熱交換器
図6に示すように、第2熱交換器300は、複数の第2伝熱管310と、複数の第2フィン320と、を有している。第2伝熱管310及び第2フィン320は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。本実施形態の第2熱交換器300は、クロスフィンチューブ式熱交換器である。
【0041】
(2-2-1)第2伝熱管
第2伝熱管310は、内部に冷媒を流す。第2伝熱管310は、円筒形状を有している。ここでは、第2伝熱管310は、丸管である。第2伝熱管310には、第2熱交換器300で室内空気と熱交換される冷媒が通過する貫通孔が形成されている。第2伝熱管310の貫通孔は、第2方向に沿って貫通する。ここでは、第2方向は、長手方向である。
【0042】
図7に示すように、第2伝熱管310は、第2母材311と、第2犠牲層312と、を有している。第2犠牲層312は、第2伝熱管310の表面に設けられている。第2犠牲層312は、第2伝熱管310の表面全体に設けられてもよく(図示せず)、第2伝熱管310の表面の一部に設けられてもよい。換言すると、第2犠牲層312は、露出する外表面の全体に形成されてもよく(図示せず)、露出する外表面の一部に形成されてもよい。第2犠牲層312は、第2伝熱管310の外表面から冷媒の流れる内表面に向かう厚さ方向の一部に形成されており、肉厚全体には形成されていない。換言すると、第2伝熱管310において、冷媒の流れる内表面の少なくとも一部には第2犠牲層312は形成されていない。本実施形態では、第2伝熱管310の内表面の全体に、第2犠牲層312は形成されていない。
【0043】
第2犠牲層312は、第2伝熱管310の第2母材311よりも電位的に卑であり、かつ、第2フィン320よりも電位的に卑である。第2犠牲層312は、電位を下げるために、亜鉛などの金属を含有する。本実施形態の第2犠牲層312は、亜鉛が溶射された亜鉛拡散層である。外表面側の第2犠牲層312は、第2伝熱管310において、内表面側の第2母材311の腐食の進行を防止する。
【0044】
図6に示すように、複数の第2伝熱管310は、上下方向に並ぶ。複数の第2伝熱管310の最下端は、第2ドレンパン32(
図3参照)の水位よりも上方に位置する。
【0045】
(2-2-2)第2フィン
第2フィン320は、第2伝熱管310と室内空気との伝熱面積を増大させて、冷媒と室内空気との熱交換を促進する。第2フィン320は、第2伝熱管310と接触している。
【0046】
第2フィン320は、第2伝熱管310の第2母材311よりも電位的に卑であり、かつ、第2犠牲層312よりも電位的に貴である。換言すると、電位が高い順は、第2母材311、第2フィン320及び第2犠牲層312である。
【0047】
第2フィン320は、電位を下げるために、亜鉛などの金属を含有する。第2フィン320は、亜鉛を含有してもよく、亜鉛を含有しなくてもよい。具体的には、第2フィン320の亜鉛含有率は、例えば0質量%以上1質量%以下である。
【0048】
複数の第2フィン320は、第2伝熱管310の延びる第2方向(
図6参照)に積層されている。ここでは、複数の第2フィン320は、第2伝熱管310に交差(
図6では直交)するように上下方向に延びている。本実施形態では、複数の第2フィン320は、平行、かつ、等間隔に配置されている。換言すると、複数の第2フィン320は、所定のフィンピッチP2で第2方向に並んでいる。
【0049】
図8及び
図9に示すように、複数の第2フィン320は、フィン本体321と、第2カラー部322と、を含む。フィン本体321は、平板状の部材である。第2カラー部322は、第2伝熱管310を通す。詳細には、第2カラー部322は、第2伝熱管310を通すための貫通穴を有している。
【0050】
第2カラー部322は、第1立上部323と、平坦部324と、第2立上部325と、フランジ部326と、を有している。第1立上部323、平坦部324、第2立上部325、及びフランジ部326は、1つの部材で構成されている。ここでは、第1立上部323、平坦部324、第2立上部325、及びフランジ部326は、ネスティング加工されてなる。
【0051】
第1立上部323は、フィン本体321から第2方向に延びる。ここでは、第1立上部323は、フィン本体321と直交する。第1立上部323とフィン本体321との連結部分は、湾曲(R)形状を有している。
【0052】
平坦部324は、第1立上部323から第2伝熱管310に向けて延びる。ここでは、平坦部324は、第1立上部323と直交する。平坦部324と第1立上部323との連結部分は、湾曲形状を有している。
【0053】
第2立上部325は、平坦部324から第2伝熱管310に沿って延びる。第2立上部325は、第2伝熱管310に接する。ここでは、第2立上部325は、平坦部324と直交する。第2立上部325と平坦部324との連結部分は、湾曲形状を有している。
【0054】
フランジ部326は、第2立上部325から外方に延びる。ここでは、フランジ部326は、第2立上部325と直交する。フランジ部326と第2立上部325との連結部分は、湾曲形状を有している。
【0055】
1つの平坦部324は、隣接する別の第2フィン320のフランジ部326に接している。平坦部324とフランジ部326とは、同じ方向に延びる。
【0056】
このように、本実施形態の第2フィン320は、高い加工性が要求される。
【0057】
(2-3)第1フィンと第2フィンとの関係
続いて、第1熱交換器200の第1フィン220と、第2熱交換器300の第2フィン320との関係について、説明する。
【0058】
(2-3-1)伸び
第2フィン320の伸びは、第1フィン220の伸びよりも大きい。ここで、本開示の「伸び」は、JIS H4000に準拠する。
【0059】
(2-3-2)亜鉛含有率
第1フィン220の亜鉛含有率は、第2フィン320の亜鉛含有率よりも多い。例えば、第1フィン220の亜鉛含有率は、第2フィン320の亜鉛含有率よりも、1質量%以上多い。
【0060】
(2-3-3)電位
第1フィン220の電位は、第2フィン320の電位よりも低い。例えば、第1フィン220の電位は、第2フィン320の電位よりも10mV以上低い。電位は、例えば、電位的に卑な金属の種類、含有率、含有量等で調整される。
【0061】
(2-3-4)ピッチ
図6に示す第2フィン320のフィンピッチP2は、
図4に示す第1フィン220のフィンピッチP1よりも大きい。ここで、フィンピッチP1は、隣り合う第1フィン220の距離である。詳細には、フィンピッチP1は、隣り合う第1フィン220が対向する面同志の距離である。同様に、フィンピッチP2は、隣り合う第2フィン320の距離である。詳細には、フィンピッチP2は、隣り合う第2フィン320が対向する面同志の距離である。
【0062】
第1フィン220のフィンピッチP1と、第2フィン320のフィンピッチP2との差は、0.1mm以上0.3mm以下である。換言すると、ピッチ差(フィンピッチP2-フィンピッチP1)は、0.1mm以上0.3mm以下である。
【0063】
第1フィン220のフィンピッチP1は、例えば1.2mm以上1.4mm以下である。第2フィン320のフィンピッチP2は、例えば1.3mm以上1.5mm以下である。
【0064】
(3)特徴
(3-1)
本実施形態に係る空気調和機1は、室外機2と、室内機3と、を備える。室外機2は、第1熱交換器200を含む。第1熱交換器200は、第1伝熱管210と、複数の第1フィン220と、を有する。第1伝熱管210は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。複数の第1フィン220は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。室内機3は、第2熱交換器300を含む。第2熱交換器300は、第2伝熱管310と、複数の第2フィン320と、を有する。第2伝熱管310は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。複数の第2フィン320は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。第1伝熱管210の表面には、第1犠牲層212が設けられている。第1犠牲層212は、第1伝熱管210の第1母材211よりも電位的に卑であり、かつ、第1フィン220よりも電位的に貴である。第1フィン220は、亜鉛を含有する。第1フィン220の亜鉛含有率は、第2フィン320の亜鉛含有率よりも多い。
【0065】
本実施形態の空気調和機1によれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第1伝熱管210に、第1母材211よりも電位的に卑である第1犠牲層212が設けられているので、第1母材211の腐食を抑制できる。また、第1犠牲層212は、第1フィン220よりも電位的に貴であるので、第1母材211の腐食を抑制するための第1犠牲層212の腐食を抑制することができる。
【0066】
しかし、第1フィン220及び第2フィン320を電位的に卑にするために亜鉛を含有させると、第1フィン220及び第2フィン320が硬化するため、加工性が悪くなる。本発明者は、室内機3の第2フィン320は、コンパクト性、折り曲げ等の理由から、加工難度が高いことに着目した。換言すると、本発明者は、室外機2の第1フィン220は、室内機3の第2フィン320よりも加工性を要求されないことに着目した。そこで、本実施形態の空気調和機1では、第1フィン220の亜鉛含有率を、第2フィン320の亜鉛含有率よりも多くしている。これにより、室内機3の第2フィン320の加工性を確保することができるので、第2フィン320を有する第2熱交換器300を室内機3に用いることができる。
【0067】
(3-2)
本実施形態に係る空気調和機1では、第1フィン220の亜鉛含有率は、2質量%以上である。これにより、第1母材211の腐食が抑制できる程度の電位を有する第1犠牲層212を実現することができる。
【0068】
(3-3)
本実施形態に係る空気調和機1では、第2フィン320のフィンピッチP2は、第1フィン220のフィンピッチP1よりも大きい。
【0069】
第2フィン320は、第1フィン220よりも亜鉛含有率が少ないので、腐食しやすい。このため、ここでは、第2フィン320のフィンピッチP2を第1フィン220のフィンピッチP1よりも大きくすることによって、第2フィン320の枚数を少なくして、第2フィン320において、腐食を促進する第2伝熱管310との接触面積を減らすことができる。したがって、第2フィン320の腐食を抑制することができる。
【0070】
また、上述したように、室内機3の第2フィン320は、高い加工性が要求される。このため、第2フィン320の枚数を少なくすることによって、加工に伴う負担を減らすことができる。
【0071】
さらに、室外機2の第1熱交換器200の第1フィン220のフィンピッチP1を小さくすることで、第1フィン220の枚数を多く確保できる。このため、空気調和機1全体としての能力の低下を抑えることができる。
【0072】
また、塩害の影響の大きい室外機2で、第1伝熱管210の犠牲となる第1フィン220の面積を増やすことができる。このため、第1伝熱管210の腐食をより抑制することができる。
【0073】
(3-4)
本実施形態に係る空気調和機1では、第1フィン220のフィンピッチP1と、第2フィン320のフィンピッチP2との差(P2-P1)は、0.1mm以上0.3mm以下である。これにより、第2フィン320の腐食をより抑制することができる。
【0074】
(3-5)
本実施形態に係る空気調和機1では、第1フィン220の電位は、第2フィン320の電位よりも低い。
【0075】
室外機2の第1熱交換器200は、室内機3の第2熱交換器300よりも塩害の影響を受けやすい。このため、ここでは、第1フィン220の電位を第2フィン320の電位よりも低くすることによって、第1フィン220が第1伝熱管210の犠牲となることで、第1伝熱管210が腐食することをより抑制することができる。
【0076】
(3-6)
本実施形態に係る空気調和機1では、第2伝熱管310の表面には、第2伝熱管310の第2母材311よりも電位的に卑であり、かつ、第2フィン320よりも電位的に卑である第2犠牲層312が設けられている。
【0077】
室内機3の第2熱交換器300は、室外機2の第1熱交換器200よりも塩害の影響を受けにくい。このため、ここでは、室内機3の第2犠牲層312を第2フィン320よりも電位的に卑にしても、第2母材311の腐食を抑制することができる。また、第2フィン320の加工性の低下をより抑えることができる。
【0078】
(3-7)
本実施形態に係る空気調和機1では、第1伝熱管210は、扁平形状を有する。第2伝熱管310は、円筒形状を有する。
【0079】
円筒形状の第2伝熱管310に取り付けられる第2フィン320は、扁平形状の第1伝熱管210に取り付けられる第1フィン220よりも高い加工性が要求される。このように、室内機3の第2伝熱管310は、室外機2の第1伝熱管210よりも高い加工性が要求される。したがって、扁平形状の第1伝熱管210を有する第1熱交換器200と、円筒形状の第2伝熱管310を有する第2熱交換器300と、を含む空気調和機1に好適に用いることができる。
【0080】
(3-8)
本実施形態に係る空気調和機1は、室外機2と、室内機3と、を備える。室外機2は、第1熱交換器200を含む。第1熱交換器200は、第1伝熱管210と、複数の第1フィン220と、を有する。第1伝熱管210は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。複数の第1フィン220は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。室内機3は、第2熱交換器300を含む。第2熱交換器300は、第2伝熱管310と、複数の第2フィン320と、を有する。第2伝熱管310は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。複数の第2フィン320は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。第1伝熱管210の表面には、第1犠牲層212が設けられている。第1犠牲層212は、第1伝熱管210の第1母材211よりも電位的に卑であり、かつ、第1フィン220よりも電位的に貴である。第2フィン320の伸びは、第1フィン220の伸びよりも大きい。
【0081】
本実施形態の空気調和機1によれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第1伝熱管210に、第1母材211よりも電位的に卑である第1犠牲層212が設けられているので、第1母材211の腐食を抑制できる。また、第1犠牲層212は、第1フィン220よりも電位的に貴であるので、第1母材211の腐食を抑制するための第1犠牲層212の腐食を抑制することができる。
【0082】
しかし、第1フィン220及び第2フィン320を電位的に卑にすると、第1フィン220及び第2フィン320が硬化するため、加工性が悪くなる。そこで、本実施形態の空気調和機1では、室外機2の第1フィン220は、室内機3の第2フィン320よりも加工性を要求されないことに着目して、第2フィン320の伸びを、第1フィン220の伸びよりも大きくしている。これにより、室内機3の第2フィン320の加工性を確保することができるので、第2フィン320を有する第2熱交換器300を室内機3に用いることができる。
【0083】
(4)変形例
(4-1)変形例1
上述した実施形態では、第1伝熱管210の第1犠牲層212及び第2伝熱管310の第2犠牲層312は、亜鉛が溶射された拡散層を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本変形例では、母材及び犠牲層として、クラッド材を用いる。
【0084】
具体的には、第1伝熱管210は、第1母材211となる金属と、第1犠牲層212となる金属とが貼り合わされたクラッド材を用いて、形成されている。第2伝熱管310は、第2母材311となる金属と、第2犠牲層312となる金属とが貼り合わされたクラッド材を用いて、形成されている。
【0085】
(4-2)変形例2
上述した実施形態では、室内機3の第2熱交換器300において、第2母材311、第2フィン320及び第2犠牲層312の順に、電位的に貴であるが、これに限定されない。本変形例では、室内機3の第2熱交換器300において電位が高い順は、第2母材311、第2犠牲層312及び第2フィン320である。
【0086】
(4-3)変形例3
上述した実施形態及び変形例1、2では、室内機3の第2伝熱管310は、第2犠牲層312を有しているが、本変形例では、第2犠牲層312は省略されている。この場合であっても、第2伝熱管310は、第2フィン320よりも電位的に貴であるので、第2伝熱管310の腐食を抑制できる。
【0087】
(4-4)変形例4
上述した実施形態では、第1熱交換器200がマイクロチャネル式熱交換器であり、第2熱交換器300がクロスフィンチューブ式熱交換器であるが、これに限定されない。第1熱交換器200は、クロスフィンチューブ式熱交換器であってもよく、第2熱交換器300は、マイクロチャネル式熱交換器であってもよい。第1熱交換器200及び第2熱交換器300の両方が、マイクロチャネル式熱交換器、または、クロスフィン式熱交換器の場合には、第1伝熱管210と第2伝熱管310とを共通化することができる。
【0088】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0089】
1 :空気調和機
2 :室外機
3 :室内機
200 :第1熱交換器
210 :第1伝熱管
211 :第1母材(母材)
212 :第1犠牲層
220 :第1フィン
300 :第2熱交換器
310 :第2伝熱管
311 :第2母材(母材)
312 :第2犠牲層
320 :第2フィン
P1,P2 :フィンピッチ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】