(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】積層コア、ロータ及び積層コアの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/22 20060101AFI20231213BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
H02K1/22 Z
H02K15/02 F
(21)【出願番号】P 2023536018
(86)(22)【出願日】2023-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2023008474
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2022035322
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】荒牧 高志
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-124788(JP,A)
【文献】特開2021-019374(JP,A)
【文献】特開昭54-129406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00- 1/16
H02K 1/18- 1/26
H02K 1/28- 1/34
H02K 15/00-15/02
H02K 15/04-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って一端側の最外層に配置されて第1露出面を有する第1鋼板と、前記中心軸に沿って他端側の最外層に配置されて第2露出面を有する第2鋼板と、を含む複数の鋼板を積層して一体的に形成される積層コアであって、
前記第1露出面と前記第2露出面との距離である厚さの分布の最大値と最小値との差は、0.25mm以下である
積層コア。
【請求項2】
前記鋼板は、320MPa以上の降伏点を有する無方向電磁鋼板である
請求項1に記載の積層コア。
【請求項3】
前記鋼板と接着性樹脂とを交互に積層した構造を有し、
前記鋼板は、直径80mm以上かつ板厚0.35mm以下である
請求項1又は請求項2に記載の積層コア。
【請求項4】
前記接着性樹脂は、アクリル系樹脂又はエポキシ系樹脂である
請求項3に記載の積層コア。
【請求項5】
前記積層コアは、スロットを有し、
前記厚さは、周方向において隣接する前記スロットの間である第1測定位置における測定値を含む
請求項1又は請求項2に記載の積層コア。
【請求項6】
前記積層コアは、スロットを有し、
前記厚さは、前記中心軸と前記スロットとの間である第2測定位置における測定値を含む
請求項1又は請求項2に記載の積層コア。
【請求項7】
前記積層コアは、スロットを有し、
前記厚さは、前記中心軸に垂直な半径方向において隣接する前記スロットの間である第3測定位置における測定値を含む
請求項1又は請求項2に記載の積層コア。
【請求項8】
前記積層コアは、スロットを有し、
前記厚さは、外周縁と前記スロットとの間である第4測定位置における測定値を含む
請求項1又は請求項2に記載の積層コア。
【請求項9】
隣接する前記鋼板は、それぞれに形成された加締部を介して互いに接合されており、
前記厚さは、周方向において隣接する前記加締部の間である第5測定位置における測定値を含む
請求項1又は請求項2に記載の積層コア。
【請求項10】
真直度が0.4以下である
請求項1又は請求項2に記載の前記積層コア。
【請求項11】
16000rpmで回転させたときにおける前記中心軸に垂直な半径方向の振幅量は、250μm以下である
請求項1又は請求項2に記載の前記積層コアを備えるロータ。
【請求項12】
中心軸に沿って一端側の最外層に配置されて第1露出面を有する第1鋼板と、前記中心軸に沿って他端側の最外層に配置されて第2露出面を有する第2鋼板と、を含む複数の鋼板を積層して一体的に形成される積層コアの製造方法であって、
接着性樹脂を前記鋼板に塗布する樹脂塗布工程と、前記鋼板を複数重ねて積層体を形成する積層工程と、前記積層体を加圧及び加熱する加圧加熱工程と、含み、
前記加圧加熱工程において、前記第1露出面と前記第2露出面との距離である厚さの分布の最大値と最小値との差が0.25mm以下となるように、昇温温度を制御する
積層コアの製造方法。
【請求項13】
前記積層コアの真直度が0.4以下である
請求項12に記載の前記積層コアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コア、ロータ及び積層コアの製造方法に関する。
本願は、2022年3月8日に、日本に出願された特願2022-035322号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機(電動モータ)に回転体として用いられるロータがあった。ロータは、例えば、複数の電磁鋼板を、塑性変形を利用したかしめによって一体化して積層することにより製造された積層コアを用いている。または、ロータは、複数の電磁鋼板を、接着よって一体化して積層することにより製造された積層コアを用いている。
ところで、電気自動車の高速度化という需要から、回転電機の高出力化が志向されており、出力が回転数に比例するものであることから、高回転化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2005-39963号公報
【文献】国際公開第2021/070795号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハイブリッド車、電気自動車の登場に伴い、回転電機の高速度化が進展しており、ロータの変形が顕著となっているため、それを抑制する技術が必要となる。
例えば特許文献1にロータに用いられる積層コアに積層される鋼板の強度を高めることで、ロータが高回転数域となる際において鋼板を弾性域に収めて変形を抑制する技術が開示されている。また特許文献2においては、積層コア製造にかしめではなく接着剤を使用し、かつ接着剤の強度アップによる変形抑制も提案されている。
しかしながら、積層コアは、複数の鋼板を積み重ねて形成された積層構造であるので、各鋼板の寸法ばらつきも積み重なることになり、積層コアの寸法ばらつきは、大きくなりやすいものであるため、鋼板の強度を高めることによるロータの変形の抑制には限界があった。またこれらのコアの強度をあげる技術によって回転数を上昇させることはできるものの、高回転化が進んでいる昨今の状況において十分とは言えないものであった。
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑み、高回転数の回転電機に適用できる積層コア、ロータ及び積層コアの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0006】
(1)本発明の一態様に係る積層コアは、中心軸に沿って一端側の最外層に配置されて第1露出面を有する第1鋼板と、前記中心軸に沿って他端側の最外層に配置されて第2露出面を有する第2鋼板と、を含む複数の鋼板を積層して一体的に形成される積層コアであって、前記第1露出面と前記第2露出面との距離である厚さの分布の最大値と最小値との差は、0.25mm以下である。
(2)上記(1)において、前記鋼板は、320MPa以上の降伏点を有する無方向電磁鋼板であってよい。
【0007】
(3)上記(1)又は(2)において、前記鋼板と接着性樹脂とを交互に積層した構造を有し、前記鋼板は、直径80mm以上かつ板厚0.35mm以下であってよい。
(4)上記(3)において、前記接着性樹脂は、アクリル系樹脂又はエポキシ系樹脂であってよい。
【0008】
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記積層コアは、スロットを有し、前記厚さは、周方向において隣接する前記スロットの間である第1測定位置における測定値を含んでよい。
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記積層コアは、スロットを有し、前記厚さは、前記中心軸と前記スロットとの間である第2測定位置における測定値を含んでよい。
【0009】
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記積層コアは、スロットを有し、前記厚さは、前記中心軸に垂直な半径方向において隣接する前記スロットの間である第3測定位置における測定値を含んでよい。
(8)上記(1)から(7)のいずれかにおいて、前記積層コアは、スロットを有し、前記厚さは、外周縁と前記スロットとの間である第4測定位置における測定値を含んでよい。
【0010】
(9)上記(1)から(8)のいずれかにおいて、隣接する前記鋼板は、それぞれに形成された加締部を介して互いに接合されており、前記厚さは、周方向において隣接する前記加締部の間である第5測定位置における測定値を含んでよい。
(10)上記(1)から(9)のいずれかにおいて、真直度が0.4以下であってよい。
(11)本発明の一態様に係るロータは、上記(1)から(10)のいずれかの積層コアを備えており、16000rpmで回転させたときにおける前記中心軸に垂直な半径方向の振幅量は、250μm以下であってよい。
【0011】
(12)本発明の一態様に係る積層コアの製造方法は、中心軸に沿って一端側の最外層に配置されて第1露出面を有する第1鋼板と、前記中心軸に沿って他端側の最外層に配置されて第2露出面を有する第2鋼板と、を含む複数の鋼板を積層して一体的に形成される積層コアの製造方法であって、接着性樹脂を前記鋼板に塗布する樹脂塗布工程と、前記鋼板を複数重ねて積層体を形成する積層工程と、前記積層体を加圧及び加熱する加圧加熱工程と、含み、前記加圧加熱工程において、前記第1露出面と前記第2露出面との距離である厚さの分布の最大値と最小値との差が0.25mm以下となるように、昇温温度を制御する。
(13)上記(12)において、真直度が0.4以下であってよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高回転数の回転電機に適用できる積層コア、ロータ及び積層コアの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1において中心軸Gに垂直に見たE矢視断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明者は、寸法ばらつきにより形状バランスの悪い状態(完全な回転体に比べて歪んでいる状態)の積層コアを用いたロータは、高回転数域において、特に、中心軸に垂直な半径方向のぶれにより大きく振幅し、過度の変形を生じることを見出した。
そして、発明者は、積層コアの形状バランスを良くする(均整の取れた積層コアにする)ことで、高回転数域において、ロータの中心軸に垂直な半径方向のぶれ(振幅量)を抑制し、変形を抑制できるという知見を見出した。
また、発明者は、高回転数域におけるロータのぶれに影響する積層コアの形状バランスを、コア厚偏差で表すことが適切であるという知見を見出し、さらに、そのコア厚偏差の上限を見出した。
【0015】
そして、積層コアは、中心軸に沿って一端側の最外層に配置されて第1露出面を有する第1鋼板と、前記中心軸に沿って他端側の最外層に配置されて第2露出面を有する第2鋼板と、を含む複数の鋼板を積層して一体的に形成されている。積層コアは、スロットを有している。そして、第1露出面と第2露出面との距離である厚さの分布の最大値と最小値との差で表されるコア厚偏差は、0.25mm以下であることが好ましい。
これにより、高回転数域において、ロータの中心軸に垂直な半径方向のぶれ(振幅量)を抑制し、変形を抑制できる。よって、高回転数の回転電機に適用できる積層コア、ロータ及び積層コアの製造方法を提供できる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る積層コア10を説明する。
図1は、ロータ100の斜視概略図である。
図2は、
図1において中心軸Gに垂直に見たE矢視断面概略図である。
図3は、第1実施形態に係るロータ100の平面図である。なお、
図3は、中心軸Gに沿って見た図である。
【0017】
図3に示すように、第1実施形態に係る積層コア10は、ロータ100に用いられる。ロータ100は、積層コア10と、永久磁石20と、備えている。ロータ100は、回転電機(電動モータ)に用いられる。回転電機は、ロータ100と、ロータ100の外周を囲むように配置されるステータ(不図示)を備えている。回転電機は、IPM(Interior Permanent Magnet:磁石埋込式)モータ又は誘導モータであってよい。ロータ100は、ステータの内側に配置される。
【0018】
積層コア10は、中心軸Gを含む部分に、不図示の出力軸を嵌めてその出力軸を固定するための開口部Fを有している。積層コア10は、中央に開口部Fを有する円柱状である。
【0019】
積層コア10は、ステータの極数に応じた極数を有している。積層コア10は、中心軸Gを中心として、極数に応じた均等な角度で配置された永久磁石20を有している。積層コア10は、中心軸Gを中心として、極数に応じた数で回転対称的な形状となっている。
【0020】
図1及び
図2に示すように、積層コア10は、中心軸Gに沿って一端側の最外層に配置されて第1露出面11aを有する第1鋼板11と、中心軸Gに沿って他端側(第1鋼板11の反対側)の最外層に配置されて第2露出面12aを有する第2鋼板12と、を含む複数の鋼板pを、中心軸Gに沿う方向に積層して一体的に形成されている。
【0021】
積層コア10は、
図3に示すように、スロットSを有している。なお、スロットSは、永久磁石20を嵌め込むためのスリットと、磁束分布、磁気特性等をコントロールするための空洞とを含む。そして、第1露出面11aと第2露出面12aとの距離である厚さdの分布の最大値と最小値との差で表されるコア厚偏差は、0.25mm以下である。なお、厚さdは、第1露出面11aと第2露出面12aとの間の中心軸Gに沿う方向の距離である。なお、コア厚偏差を求めるために必要な厚さdの測定値は、2箇所以上での測定値であればよく、3箇所以上が好ましく、回転電機の極数以上がより好ましい。なお、コア厚偏差の上限は、好ましくは、0.10mmである。コア厚偏差の下限は、工業的には0.02mm程度である。このように、積層コア10のコア厚偏差を、0.25mm以下にした。これにより、積層コア10の形状バランスを良くし、積層コア10が中心軸Gを中心として回転したときにできる軌跡が変わることを抑制できる。したがって、高回転数域において、ロータ100の中心軸に垂直な半径方向のぶれ(振幅量)を抑制し、変形を抑制できる。よって、積層コア10を高回転数の回転電機に適用できる。
【0022】
積層コア10は、中心軸Gに沿う方向に複数の鋼板pを積み重ねて積層した構造である。積層コア10を構成する複数の鋼板pは、同じ形状であってよい。すなわち、積層コア10を構成する複数の鋼板pは、いずれも、同じ形状及び同じ配置のスロットSを有しており、適宜、同じ形状及び同じ配置の加締部K(
図4参照)を有していてよい。
【0023】
積層コア10を構成する鋼板pは、鋼板pの板厚tが薄いほど、磁気特性を良くでき、回転電機の性能を高めることができる。これに対して、積層する鋼板pの数が増えると、鋼板単体当たりの製作誤差の積み重なりが大きくなり、積層コア10のコア厚偏差が低下する。よって、鋼板pの板厚tの上限は、0.35mm、好ましくは、0.20mmである。鋼板pの板厚tの下限は、0.15mmである。
【0024】
積層コア10は、
図2に示すように、鋼板pと接着性樹脂rとを交互に積層した構造を有してよい。そして、鋼板pは、直径80mm以上かつ板厚(板厚t)0.35mm以下であることが好ましい。これにより、できるだけコア厚偏差の小さい積層コア10を形成でき、高回転域におけるロータ100の変形を抑制できる。
【0025】
鋼板pは、320MPa以上の降伏点を有する無方向電磁鋼板であることが好ましい。これにより、高回転域におけるロータ100の変形を抑制できるとともに、鉄損を抑制でき、ロータ100の性能を高めることができる。
【0026】
接着性樹脂rは、アクリル系樹脂又はエポキシ系樹脂であってよい。これにより、隣接する鋼板p同士の接着工程を含む積層コア10の製造方法の全体にわたって、接着性樹脂rの膨張及び収縮をできるだけ抑制しつつ、積層コア10を一体化できる。
【0027】
ロータ100は、16000rpm(回転毎分)で回転させたときにおける中心軸Gに垂直な半径方向の振幅量が、250μm以下である。ここで、振幅量とは、ロータ100を回転させたときの、積層コア10の外周縁10Eにおける、中心軸Gに垂直な半径方向の最大変位を意味する。振幅量は、例えば、レーザ変位計によって測定してよい。振幅量は、
図3及び
図4において、矢印Dx及び矢印Dyで示すような位置及び方向において測定される変位であってよい。振幅量の測定位置は、2箇所以上が好ましく、互いに直交していることが好ましい。このように、積層コア10のコア厚偏差を低く抑えることで、ロータ100の振幅量を抑制できる。よって、ステータとの接触が懸念されるほどの遠心力が生じる高回転数域においても、ロータ100の振幅量を抑制できる。
【0028】
(測定位置)
次に、コア厚偏差を求めるために必要な、積層コア10の厚さdを測定する位置について説明する。なお、積層コア10の厚さdは、測定位置における中心軸Gに沿う積層コア10の長さを、ノギス等の定規、レーザ変位計等によって測定した測定値であってよい。積層コア10における所定の測定位置の厚さdの測定値には、前記所定の測定位置の厚さdを3回以上測定した各測定値の算術平均を用いてもよい。厚さdの分布を求める際には、中心軸G回りの等角度毎の4箇所以上の測定位置で、厚さdを測定することが好ましい。
測定位置の数は、積層コア10が有するスロットSの数に応じて増やすことが好ましい。
【0029】
図3に示すように、積層コア10の厚さd、すなわち、第1露出面11aと第2露出面12a(第1露出面11aとは反対側の面)との距離は、周方向において隣接する二つのスロットS(以下では、スロットS1とも言う)の間である第1測定位置C1における測定値を含んでよい。各スロットS1は半径方向に延びるとともに、周方向に互いに間隔を空けて配置されている。
第1測定位置C1は、二つのスロットS1の間であれば限定されない。第1測定位置C1は、二つのスロットS1と、二つのスロットS1の半径方向外側の端同士を結ぶ線と、二つのスロットS1の半径方向内側の端同士を結ぶ線とで囲まれる領域内にあればよい。第1測定位置C1は、二つのスロットS1のうち、一方のスロットS1の半径方向内側の端と他方のスロットS1の半径方向外側の端とを結ぶ線と、前記一方のスロットS1の半径方向外側の端と前記他方のスロットS1の半径方向内側の端とを結ぶ線と、の交点であることが好ましい。この交点における積層コア10は、積層コア10に外力が作用したときに捩れやすいため、第1測定位置C1として好ましい。
【0030】
なお、第1測定位置C1は、同一円周上に等間隔で複数あってよい。このように、鋼板pに対するスロットSのプレス打抜きによるスロット形成工程、複数の鋼板pを積層する前後の加圧加熱工程等を含む積層コア10の製造過程において、比較的変形しやすい部分である第1測定位置C1での厚さdを測定する。そして、第1測定位置C1での厚さdの測定値から、コア厚偏差を求める。これにより、コア厚偏差を低く抑えた均整な積層コア10を得ることができる。したがって、高回転数域において、ロータの中心軸に垂直な半径方向のぶれ(振幅量)を抑制し、変形を抑制できる。
【0031】
また、
図3に示すように、積層コア10の厚さdは、中心軸GとスロットS(以下では、スロットS2とも言う)との間である第2測定位置C2における測定値を含んでよい。第2測定位置C2は、中心軸GとスロットS2との間であれば限定されない。第2測定位置C2は、スロットS2と、スロットS2の周方向端部のうち、ロータ100の回転方向前方側の端部と中心軸Gとを結ぶ線と、ロータ100の回転方向後方側の端部と中心軸Gとを結ぶ線とで囲まれる領域内にあればよい。第2測定位置C2は、中心軸GとスロットS2の中心とを結ぶ線上において、当該線と積層コア10の内周縁10Fとの交点と、当該線とスロットS2との径方向内側の交点とを結ぶ線の中心であることが好ましい。
なお、第2測定位置C2は、同一円周上に等間隔で複数あってよい。このように、第1測定位置C1と同様に、比較的変形しやすい部分である第2測定位置C2での厚さdを測定する。そして、第2測定位置C2での厚さdの測定値から、コア厚偏差を求める。これにより、コア厚偏差を低く抑えた均整な積層コア10を得ることができる。したがって、高回転数域において、ロータの中心軸に垂直な半径方向のぶれ(振幅量)を抑制し、変形を抑制できる。
【0032】
また、
図3に示すように、積層コア10の厚さdは、中心軸Gに垂直な半径方向において隣接する二つのスロットS(以下では、スロットS3とも言う)の間である第3測定位置C3における測定値を含んでよい。第3測定位置C3は、二つのスロットS3の間であれば限定されない。第3測定位置C3は、二つのスロットS3と、二つのスロットS3の周方向端部のうち、ロータ100の回転方向前方側の端部同士を結ぶ線と、ロータ100の回転方向後方側の端部同士を結ぶ線と、で囲まれる領域内にあればよい。
第3測定位置C3は、二つのスロットS3の周方向の中心を結ぶ線の中点であることが好ましい。
【0033】
なお、第3測定位置C3は、同一円周上に等間隔で複数あってよい。このように、第1測定位置C1及び第2測定位置C2と同様に、比較的変形しやすい部分である第3測定位置C3での厚さdを測定する。そして、第3測定位置C3での厚さdの測定値から、コア厚偏差を求める。これにより、コア厚偏差を低く抑えた均整な積層コア10を得ることができる。したがって、高回転数域において、ロータの中心軸に垂直な半径方向のぶれ(振幅量)を抑制し、変形を抑制できる。
【0034】
積層コア10の真直度(垂直度)は0.4以下であることが好ましく、さらには0.2以下がもっとも好ましい。ここで言う真直度は、日本工業規格である「JIS B 0621-1984 幾何偏差の定義及び表示」で規定され、直線形体の幾何学的に正しい直線からの狂いの大きさを意味する。
【0035】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る積層コア10を説明する。第2実施形態において、第1実施形態と共通する部分の説明は省略される場合がある。第2実施形態において、第1実施形態と共通する機能部には、第1実施形態の機能部に付された符号と同じ符号が付されている。
図4は、第2実施形態に係るロータ100の平面図である。なお、
図4は、中心軸Gに沿って見た図である。
【0036】
第2実施形態に係る積層コア10は、第1実施形態と同様に、ロータ100に用いられる。第2実施形態に係る積層コア10は、主に、永久磁石20の配置の点と、隣接する鋼板p同士が加締部Kを介して接合されている点とで、第1実施形態と異なる。
【0037】
図4に示すように、積層コア10を構成する隣接する二つの鋼板pは、それぞれに形成された加締部Kを介して互いに接合されている。なお、加締部Kは、隣接する鋼板p同士の対向する箇所を塑性変形させることで互いに圧着させて接合した部分である。このように、加締部Kによって一体化された積層コア10であっても、コア厚偏差を低く抑えた均整な積層コア10を得ることができる。
【0038】
(測定位置)
次に、コア厚偏差を求めるために必要な、積層コア10の厚さdを測定する位置について説明する。
図4に示すように、積層コア10の厚さd、すなわち、第1露出面11aと第2露出面12a(第1露出面11aとは反対側の面)との距離は、積層コア10の外周縁10EとスロットS(以下では、スロットS4a,S4bとも言う)との間である第4測定位置C4における測定値を含んでよい。
スロットS4aは、半径方向外側に向かうに従い漸次、周方向の第1側(一方)に向かうように延びている。スロットS4bは、スロットS4aに対して周方向における第1側とは反対側の第2側(他方)に隣合うように配置されている。スロットS4bは、半径方向外側に向かうに従い漸次、周方向の第2側に向かうように延びている。
【0039】
第4測定位置C4は、外周縁10EとスロットS4aとの間、及び外周縁10EとスロットS4bとの間であれば限定されない。第4測定位置C4は、スロットS4aのスロットS4b側の端部とスロットS4bのスロットS4a側の端部との間の中心と、この中心から半径方向外側に位置する外周縁10Eの部分との中心であることが好ましい。
なお、第4測定位置C4は、同一円周上に等間隔で複数あってよい。このように、第1測定位置C1から第3測定位置C3と同様に、比較的変形しやすい部分である第4測定位置C4での厚さdを測定する。そして、第4測定位置C4での厚さdの測定値から、コア厚偏差を求める。これにより、コア厚偏差を低く抑えた均整な積層コア10を得ることができる。したがって、高回転数域において、ロータの中心軸に垂直な半径方向のぶれ(振幅量)を抑制し、変形を抑制できる。
【0040】
また、
図4に示すように、積層コア10の厚さdは、周方向において隣接する二つの加締部K(以下では、加締部K1とも言う)の間である第5測定位置C5における測定値を含んでよい。第5測定位置C5は、二つの加締部K1の周方向の間であれば限定されない。第5測定位置C5は、二つの加締部K1の周方向の中点であることが好ましい。
なお、第5測定位置C5は、同一円周上に等間隔で複数あってよい。このように、第1測定位置C1から第4測定位置C4と同様に、比較的変形しやすい部分である第5測定位置C5での厚さdを測定する。そして、第5測定位置C5での厚さdの測定値から、コア厚偏差を求める。これにより、コア厚偏差を低く抑えた均整な積層コア10を得ることができる。したがって、高回転数域において、ロータの中心軸に垂直な半径方向のぶれ(振幅量)を抑制し、変形を抑制できる。
【0041】
なお、積層コア10の厚さdは、上述の第1測定位置C1から第5測定位置C5を、適宜組み合わせた複数の測定位置で測定してよい。
【0042】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る積層コア10を説明する。第3実施形態において、第1実施形態又は第2実施形態と共通する部分の説明は省略される場合がある。第3実施形態において、第1実施形態又は第2実施形態と共通する機能部には、第1実施形態の機能部又は第2実施形態に付された符号と同じ符号が付されている。
図5は、第3実施形態に係るロータ100の平面図である。なお、
図5は、中心軸Gに沿って見た図である。
【0043】
第3実施形態に係る積層コア10は、誘導モータのロータ100に用いられる。
図5に示すように、ロータ100は、コイルで巻かれたステータ鉄心を含む中空円筒状のステータ200の内方に収容されている。
ロータ100は、中心軸Gに沿って延び、外周縁10Eから中心軸Gに向けて切り欠かれたスロットSを有している。スロットSは、中心軸Gに垂直な楔状の断面を有している。スロットSは、中心軸Gを中心として周方向に等間隔で複数配置されている。スロットSには、導電性を有する非磁性体であるアルミ、銅等の材質の導体が嵌め込まれている。
【0044】
(測定位置)
次に、コア厚偏差を求めるために必要な、積層コア10の厚さdを測定する位置について説明する。
図5に示すように、積層コア10の厚さd、すなわち、第1露出面11aと第2露出面12a(第1露出面11aとは反対側の面)との距離は、周方向において隣接する二つのスロットSの間である第1測定位置C1における測定値を含んでよい。なお、第1測定位置C1は、同一円周上に等間隔で複数(例えば、
図5に示す配置で4箇所)あってよい。このように、積層コア10の製造過程において、比較的変形しやすい部分である第1測定位置C1での厚さdを測定する。そして、第1測定位置C1での厚さdの測定値から、コア厚偏差を求める。これにより、コア厚偏差を低く抑えた均整な積層コア10を得ることができる。したがって、高回転数域において、ロータの中心軸に垂直な半径方向のぶれ(振幅量)を抑制し、変形を抑制できる。
【0045】
また、
図5に示すように、積層コア10の厚さdは、中心軸GとスロットSとの間である第2測定位置C2における測定値を含んでよい。なお、第2測定位置C2は、同一円周上に等間隔で複数(例えば、
図5に示す配置で4箇所)あってよい。このように、第1測定位置C1と同様に、比較的変形しやすい部分である第2測定位置C2での厚さdを測定する。そして、第2測定位置C2での厚さdの測定値から、コア厚偏差を求める。これにより、コア厚偏差を低く抑えた均整な積層コア10を得ることができる。したがって、高回転数域において、ロータの中心軸に垂直な半径方向のぶれ(振幅量)を抑制し、変形を抑制できる。
【0046】
(製造方法)
次に、積層コア10の製造方法について説明する。
積層コア10は、中心軸Gに沿って一端側の最外層に配置されて第1露出面11aを有する第1鋼板11と、中心軸Gに沿って他端側の最外層に配置されて第2露出面12aを有する第2鋼板12と、を含む複数の鋼板を、中心軸Gに沿う方向に積層して一体的に形成される。
隣接する鋼板p同士は、接着性樹脂rを介して接合されてよく、加締部Kを介して接合されてもよく、接着性樹脂r及び加締部Kの両方を介して接合されてもよい。
【0047】
詳細には、接着性樹脂rを鋼板pに塗布する(樹脂塗布工程)。
【0048】
鋼板pにスロットSを形成する(スロット形成工程)。
【0049】
鋼板pを複数重ねて積層体を形成する(積層工程)。
【0050】
そして、積層工程で得られた積層体を加圧及び加熱する(加圧加熱工程)。これにより、隣接する鋼板p同士の接合強度が促進される。この加圧加熱工程において、第1露出面11aと第2露出面12aとの距離である厚さdの分布の最大値と最小値との差で表されるコア厚偏差が0.25mm以下となるように、昇温温度を制御する。
加圧加熱工程の後で、積層体を冷却する(冷却工程)。
冷却工程が終了すると、積層コア10の製造方法の全工程が終了し、積層コア10が製造される。
【0051】
例えば、加圧加熱工程において、接着性樹脂rの材質、スロットSの大きさ及び配置、加締部Kの有無等に応じて、コア厚偏差が0.25mm以下になるように、常温(20度)の状態から、10度/秒の速度以下で、220度まで昇温する。
【0052】
積層コア10が複数の鋼板p及び複数の接着性樹脂rを備えている場合には、複数の鋼板pの表面積の方が、複数の接着性樹脂rの表面積よりも広い。このため、コア厚偏差は、複数の接着性樹脂rの温度偏差よりも、複数の鋼板pの温度偏差に支配される。これにより、鋼板pにスロットSがあり、接着性樹脂r又は加締部Kによって隣接する鋼板p同士が互いに接合されて積層されていても、積層コア10のコア厚偏差を低く抑えることができる。
加圧加熱工程において、金型内で積層体を加圧する場合には、積層体を側方(半径方向)から加圧できるため、例えば、加圧圧力を0.5MPa(メガパスカル)程度に抑えられる。一方で、金型外で積層体を加圧する場合には、積層体を側方から加圧できないため、例えば、加圧圧力を1.0MPa程度にする必要がある。
【0053】
冷却工程において、例えば、10度/秒の速度以下で、積層体を空冷等により冷却することが好ましい。
【0054】
(試験)
次に、16000rpmの高回転数域で回転させた際の、積層コア10を有するロータ100の振幅量(ぶれ)を測定する試験を行った。
図6は試験結果を示す表である。
モータ形式と、積層コア10の接合構造(接着性樹脂rを介する接合か、加締部Kを介する接合か。)と、鋼板pの種類(引張強さ、降伏点、伸び、かたさHvの組み合わせ)と、積層コア10(ロータ100)のコア厚偏差と、接着性樹脂rの種類と、鋼板pの直径と、鋼板pの板厚tとの各条件の組み合わせを変えた、ロータ100のいくつかの試験体(実施例1-12及び比較例1-3)について、試験を行った。
【0055】
試験体に用いた積層コア10を構成する鋼板pの鋼種は、表1に示すとおりである。鋼板pとして、電磁鋼板を用いた。なお、表1において、YPは、降伏点強度をMPaで表している。W15/50は、磁束密度の振幅1.5T(テスラ)以上で、周波数50Hzにおける単位重量当たりの損失の上限をW/kgで表している。W10/400は、磁束密度の振幅10T以上で、周波数400Hzにおける単位重量当たりの損失の上限をW/kgで表している。
【0056】
【0057】
試験体となるロータの厚さdは、150mm±0.5%とした。
試験体となるロータに用いた積層コアは、接着性樹脂rを介する接合構造である場合、接着性樹脂rが塗布された鋼板pをプレスで打ち抜いて鋼板要素を複数形成し、これら複数の鋼板要素を積層した積層体を加圧及び加熱することで製造した。コア厚偏差は、昇温速度の影響(昇温速度が低すぎると接着性樹脂rが均一に降下せず、水平度が低下する。昇温速度が高すぎると、鋼板pが変形して水平度が低下する。)を受けるため、目的の水平度を得るために、昇温速度を調整することで、試験体を作成した。
また、試験体となるロータに用いた積層コアは、加締部Kを介する接合構造である場合、鋼板要素を複数形成し、これら複数の鋼板要素を積層して隣接する鋼板要素同士を互いにかしめて一体に形成することで製造した。その後にコア厚偏差を測定した。コア厚偏差には、鋼板pの極微小な変形が反映されるため、目的の水平度を得るために、プレス用金型の形状寸法、加圧量等を微調整することで、試験体を作成した。
【0058】
水平度を求めるための積層コア10の厚さdは、
図3に示す第1測定位置C1(8箇所)、第2測定位置C2(8箇所)及び第3測定位置C3(8箇所)の全ての測定位置において、ノギスで測った。そして、水平度は、それらの測定値(厚さdの分布)の最小値と最大値との差の絶対値として求めた。
図3に示すように、ロータを16000rpm以上で回転させながらレーザ変位計で矢印Dx及び矢印Dyの方向の距離変動を測定し、その最大値を振幅量とした。
振幅量が150μm以下である場合、Exellentと評価した。振幅量が150μm超250μm以下である場合、Goodと評価した。振幅量が250μm超である場合、NoGoodと評価した。そして、Exellent又はGoodと評価された試験体を合格とした。
それぞれの試験体と試験結果については、以下の通りである。
【0059】
(1)実施例1となるロータの試験体は、IPMモータ用である。実施例1となるロータの試験体は、板厚(板厚t)0.25mmで直径166mmの複数の鋼板(25HX1300)を、エポキシ系接着性樹脂を介して接合した接合構造の積層コアを用いている。実施例1となるロータの試験体は、コア厚偏差0.04mmである。
試験の結果、実施例1の試験体を16000rpmで回転させたときの振幅量は、150μm以下であった。
【0060】
(2)実施例2となるロータの試験体は、IPMモータ用である。実施例2となるロータの試験体は、板厚(板厚t)0.30mmで直径133mmの複数の鋼板(30HX1800)を、加締部Kを介して接合した接合構造の積層コアを用いている。実施例2となるロータの試験体は、コア厚偏差0.20mmである。
試験の結果、実施例2の試験体を16000rpmで回転させたときの振幅量は、150μm以下であった。
【0061】
(3)実施例3となるロータの試験体は、誘導モータ用である。実施例3となるロータの試験体は、板厚(板厚t)0.25mmで直径166mmの複数の鋼板(25HX1300)を、エポキシ系接着性樹脂を介して接合した接合構造の積層コアを用いている。実施例3となるロータの試験体は、コア厚偏差0.06mmである。
試験の結果、実施例3の試験体を16000rpmで回転させたときの振幅量は、150μm以下であった。
【0062】
(4)実施例4となるロータの試験体は、IPMモータ用である。実施例4となるロータの試験体は、板厚(板厚t)0.20mmで直径160mmの複数の鋼板(20HTH1200)を、エポキシ系接着性樹脂を介して接合した接合構造の積層コアを用いている。実施例4となるロータの試験体は、コア厚偏差0.25mmである。
試験の結果、実施例4の試験体を16000rpmで回転させたときの振幅量は、150μm超250μm以下であった。
【0063】
(5)実施例5となるロータの試験体は、IPMモータ用である。実施例5となるロータの試験体は、板厚(板厚t)0.35mmで直径133mmの複数の鋼板(35H210)を、加締部Kを介して接合した接合構造の積層コアを用いている。実施例5となるロータの試験体は、コア厚偏差0.25mmである。
試験の結果、実施例5の試験体を16000rpmで回転させたときの振幅量は、150μm超250μm以下であった。
【0064】
(6)実施例6となるロータの試験体は、誘導モータ用である。実施例6となるロータの試験体は、板厚(板厚t)0.27mmで直径163mmの複数の鋼板(27HX1500)を、エポキシ系接着性樹脂を介して接合した接合構造の積層コアを用いている。実施例6となるロータの試験体は、コア厚偏差0.25mmである。
試験の結果、実施例6の試験体を16000rpmで回転させたときの振幅量は、150μm超250μm以下であった。
【0065】
(7)実施例7となるロータの試験体は、IPMモータ用である。実施例7となるロータの試験体は、板厚(板厚t)0.25mmで直径300mmの複数の鋼板(25HX1300)を、エポキシ系接着性樹脂を介して接合した接合構造の積層コアを用いている。実施例7となるロータの試験体は、コア厚偏差0.08mmである。
試験の結果、実施例7の試験体を16000rpmで回転させたときの振幅量は、150μm以下であった。
【0066】
(8)実施例8となるロータの試験体は、IPMモータ用である。実施例8となるロータの試験体は、板厚(板厚t)0.27mmで直径330mmの複数の鋼板(27HX1500)を、エポキシ系接着性樹脂を介して接合した接合構造の積層コアを用いている。実施例8となるロータの試験体は、コア厚偏差0.14mmである。
試験の結果、実施例8の試験体を16000rpmで回転させたときの振幅量は、150μm超250μm以下であった。
【0067】
(9)実施例9となるロータの試験体は、IPMモータ用である。実施例9となるロータの試験体は、冷延して板厚(板厚t)0.15mmとした直径133mmの複数の鋼板(25HX1300)を、エポキシ系接着性樹脂を介して接合した接合構造の積層コアを用いている。実施例9となるロータの試験体は、コア厚偏差0.25mmである。
試験の結果、実施例9の試験体を16000rpmで回転させたときの振幅量は、150μm超250μm以下であった。
【0068】
(10)実施例10となるロータの試験体は、IPMモータ用である。実施例10となるロータの試験体は、冷延して板厚(板厚t)0.12mmとした直径133mmの複数の鋼板(25HX1300)を、エポキシ系接着性樹脂を介して接合した接合構造の積層コアを用いている。実施例10となるロータの試験体は、コア厚偏差0.25mmである。
試験の結果、実施例10の試験体を16000rpmで回転させたときの振幅量は、150μm超250μm以下であった。
【0069】
(11)実施例11となるロータの試験体は、IPMモータ用である。実施例11となるロータの試験体は、板厚(板厚t)0.25mmで直径133mmの複数の鋼板(25CS1250)を、エポキシ系接着性樹脂を介して接合した接合構造の積層コアを用いている。実施例11となるロータの試験体は、コア厚偏差0.09mmである。
試験の結果、実施例11の試験体を16000rpmで回転させたときの振幅量は、150μm以下であった。
【0070】
(12)実施例12となるロータの試験体は、IPMモータ用である。実施例12となるロータの試験体は、板厚(板厚t)0.25mmで直径133mmの複数の鋼板(25HX1300)を、アクリル系接着性樹脂を介して接合した接合構造の積層コアを用いている。実施例12となるロータの試験体は、コア厚偏差0.06mmである。
試験の結果、実施例12の試験体を16000rpmで回転させたときの振幅量は、150μm以下であった。
【0071】
(A)比較例Aとなるロータの試験体は、IPMモータ用である。比較例Aとなるロータの試験体は、板厚(板厚t)0.25mmで直径163mmの複数の鋼板(25HX1300)を、エポキシ系接着性樹脂を介して接合した接合構造の積層コアを用いている。比較例Aとなるロータの試験体は、コア厚偏差0.28mmである。
試験の結果、比較例Aの試験体を16000rpmで回転させたときの振幅量は、250μm超であった。
【0072】
(B)比較例Bとなるロータの試験体は、IPMモータ用である。比較例Bとなるロータの試験体は、板厚(板厚t)0.30mmで直径163mmの複数の鋼板(30HX1800)を、加締部Kを介して接合した接合構造の積層コアを用いている。比較例Bとなるロータの試験体は、コア厚偏差0.28mmである。
試験の結果、比較例Bの試験体を16000rpmで回転させたときの振幅量は、250μm超であった。
【0073】
(C)比較例Cとなるロータの試験体は、誘導モータ用である。比較例Cとなるロータの試験体は、板厚(板厚t)0.25mmで直径163mmの複数の鋼板(25HX1300)を、エポキシ系接着性樹脂を介して接合した接合構造の積層コアを用いている。比較例Cとなるロータの試験体は、コア厚偏差0.28mmである。
試験の結果、比較例Cの試験体を16000rpmで回転させたときの振幅量は、250μm超であった。
【0074】
試験の結果、
図6に示すように、コア厚偏差が0.25mm以下となるケースである、実施例1から実施例12のケースにおいて、16000rpm時の振幅量が250μm以下に収まっており、良好(Good)な結果となった。また、特に、実施例1-3,7,11,12のケースで16000rpm時の振幅量が150μm以下に収まっており、より良好(Excellent)な結果となった。これらの結果に対して、コア厚偏差が0.25mmを超えるケースである、比較例A、比較例B及び比較例Cのケースにおいて、16000rpm時の振幅量が250μm超であり、比較的振幅量が大きい結果(No Good)となった。
【0075】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
【0076】
本実施形態に係る積層コア10は、中心軸Gに沿って一端側の最外層に配置されて第1露出面11aを有する第1鋼板11と、中心軸Gに沿って他端側の最外層に配置されて第2露出面12aを有する第2鋼板12と、を含む複数の鋼板pを積層して一体的に形成される。第1露出面11aと第2露出面12aとの距離である厚さdの分布の最大値と最小値との差で表されるコア厚偏差は、0.25mm以下である。このように、均整のとれた積層コア10とすることで、高回転数域においても、ロータの振幅量(ぶれ)を小さく抑制できる。よって、積層コア10に用いる積層される鋼板を高強度にすることに頼らなくても、高回転数域において変形し難い積層コア10にできる。したがって、高回転数の回転電機に適用できる積層コア10、ロータ100及び積層コア10の製造方法を提供できる。
【0077】
本実施形態に係るロータ100は、16000rpmで回転させたときにおける中心軸Gに垂直な半径方向の振幅量は、250μm以下である。よって、ステータとの接触が懸念されるほどの遠心力が生じる高回転数域においても、ロータ100の振幅量を抑制できる。
【0078】
積層コア10は、スロットSを有さなくてもよい。この場合、積層コア10の製造方法は、スロット形成工程を含まなくてもよい。
【0079】
本実施形態に係る積層コア10の製造方法は、中心軸Gに沿って一端側の最外層に配置されて第1露出面11aを有する第1鋼板11と、中心軸Gに沿って他端側の最外層に配置されて第2露出面12aを有する第2鋼板12と、を含む複数の鋼板pを積層して一体的に形成されるものである。そして、接着性樹脂rを鋼板pに塗布する樹脂塗布工程と、鋼板pを複数重ねて積層体を形成する積層工程と、積層体を加圧及び加熱する加圧加熱工程と、含んでいる。そして、加圧加熱工程において、第1露出面11aと第2露出面12aとの距離である厚さdの分布の最大値と最小値との差が0.25mm以下となるように、昇温温度を制御する。これにより、接着性樹脂r又は加締部Kによって隣接する鋼板p同士が互いに接合されて積層されていても、積層コア10のコア厚偏差を低く抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
積層コア、ロータ及び積層コアの製造方法は、高回転数の回転電機に適用できる。よって、産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0081】
10 積層コア
10E 外周縁
11 第1鋼板
11a 第1露出面
12 第2鋼板
12a 第2露出面
20 永久磁石
100 ロータ
200 ステータ
C1 第1測定位置
C2 第2測定位置
C3 第3測定位置
C4 第4測定位置
C5 第5測定位置
Dx 矢印
Dy 矢印
F 開口部
G 中心軸
K 加締部
S スロット
p 鋼板
r 接着性樹脂
d 積層コアの厚さ
t 鋼板の板厚
【要約】
この積層コアでは、中心軸に沿って一端側の最外層に配置されて第1露出面を有する第1鋼板と、中心軸に沿って他端側の最外層に配置されて第2露出面を有する第2鋼板と、を含む複数の鋼板を積層して一体的に形成される積層コアであって、第1露出面と第2露出面との距離である厚さの分布の最大値と最小値との差は、0.25mm以下である。