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特許7401852オーバーラミネート用粘着シート及びPOPラベル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】オーバーラミネート用粘着シート及びPOPラベル
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20231213BHJP
   C09J 7/25 20180101ALI20231213BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20231213BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20231213BHJP
   G09F 3/10 20060101ALI20231213BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231213BHJP
   B32B 9/02 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/25
C09J201/00
G09F3/02 B
G09F3/10 A
B32B27/00 M
B32B9/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020085462
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021178927
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】國弘 明
(72)【発明者】
【氏名】大谷 寛
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 諭
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-065249(JP,A)
【文献】特開2001-240819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷面もしくは記録面に貼付するオーバーラミネート用粘着シートであって、
前記オーバーラミネート用粘着シートは、表面シートと、前記表面シートの片面に有し、
紙基材に貼付可能とする粘着層を少なくとも有し、
前記表面シートは、アミロース、ポリビニルアルコールまたはビスコースのいずれかを主原料とし、JIS P 8140に準拠して測定される吸水度が10g/m以下である透明乃至半透明のフィルムであり、
前記粘着層が共重合樹脂を主成分として構成され、前記共重合樹脂中に親水性モノマー単位を有し、前記親水性モノマー単位を前記共重合樹脂組成中に20~30質量%含有し、
前記粘着層は、水に対する接触角が60秒後の値で45°以上、90°以下である
ことを特徴とするオーバーラミネート用粘着シート。
【請求項2】
単位面積あたりの前記粘着シートに対する前記粘着層の質量比率が0.25~0.35である請求項1に記載のオーバーラミネート用粘着シート。
【請求項3】
前記表面シートが、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.68:2000に従って測定したはっ水度がR7以下である請求項1または2に記載のオーバーラミネート用粘着シート。
【請求項4】
印刷面もしくは記録面を有する紙基材、前記紙基材の前記印刷面もしくは前記記録面にオーバーラミネート用粘着シートを有し、前記紙基材の他方の面に貼付用粘着剤を有し、前記貼付用粘着剤の紙基材を有さない面に剥離シートを有するPOPラベルであり、
前記オーバーラミネート用粘着シートは、表面シートと前記表面シートの片面に有し、紙基材に貼付可能とする粘着層からなり、
前記表面シートは、アミロース、ポリビニルアルコールまたはビスコースのいずれかを主原料とし、JIS P 8140に準拠して測定される吸水度が10g/m以下である透明乃至半透明のフィルムであり、
前記粘着層が共重合樹脂を主成分として構成され、前記共重合樹脂中に親水性モノマー単位を有し、前記親水性モノマー単位を前記共重合樹脂組成中に20~30質量%含有し、
前記粘着層は、水に対する接触角が60秒後の値で45°以上、90°以下である
ことを特徴とするPOPラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷面もしくは記録面に貼り合わせるオーバーラミネート用粘着シートに関し、特に環境負荷の少ないオーバーラミネート用粘着シートに関する。また、斯かるオーバーラミネート用粘着シートを利用したPOPラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
オーバーラミネート用粘着シートは、印刷面、記録面の保護や意匠性の観点から、商業用にも広範囲にわたって使用されている。オーバーラミネート用粘着シートの一般的な構成は、表面シートと剥離シートとの間に粘着剤を挟み込んだ状態にしたものである。
表面シートには、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンなどの透明フィルムや偏光フィルム、ホロフィルムが用いられ、意匠性の観点から光沢のあるものやマット調の物が使用される。
また、剥離シートには、一般的にシリコーン化合物やフッ素化合物の如き剥離剤が塗布される。なお、剥離シート用基材には、グラシン紙のような高密度原紙、クレーコート紙、クラフト紙、上質紙などにポリエチレン等の樹脂フィルムをラミネート加工したラミネート紙、あるいはクラフト紙や上質紙等にポリビニルアルコール、澱粉などの水溶性高分子等と顔料とを主成分とする塗被層を設けた樹脂コーティング紙等が上げられる。中でも、ポリエチレンをラミネート加工したラミネート紙やグラシン紙が一般的に広く使用されている。
また、粘着剤としては、ゴム系、アクリル系、ビニルエーテル系等のエマルジョン、溶剤又は無溶剤型の各種粘着剤が使用される(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
一方、陳列棚での他商品との差別化を図る販売促進用途のPOP(Point of purchase)ラベルは、化粧品や医薬品の商品説明、食品や飲料のキャンペーン、電化製品のアピールなどに広く使用されている。POPラベルは、装飾性に優れ、使用時に湾曲し難いプラスチックフルムや金属蒸着フィルムなどが基材として主に用いられている(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
最近、地球規模での資源・廃棄物制約の観点で、プラスチックごみの排出量の削減や再利用の促進、リサイクル率の向上が喫緊の課題となっており、特に二酸化炭素排出量による地球温暖化や海洋へ流出するプラスチックごみによる環境汚染や海洋生物への影響が世界的に懸念されている。オーバーラミネート用粘着シートやPOPラベルは、プラスチックフィルムを基材として使用されているため、紙基材への転換が叫ばれているが、十分な性能を有するものは実用化されていない。特にPOPラベルは、商品に貼付した後、商品から飛び出した部分が折れたり、出荷時の梱包や輸送時にラベルの印刷部が擦られることで、見栄えが損なわれたりするなどの問題があり実用化できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-240819公報
【文献】特開2007-293081公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、プラスチックフィルムを用いている粘着シートの基材をプラスチックフィルムから紙基材への転換を図る上での各種課題に対し、印刷面や記録面の保護および水濡れに対しても十分な耐水性を有し、紙の折れ・シワ特性をカバーし、且つ、光沢性などの意匠性も付与でき、環境負荷の極めて小さいオーバーラミ用粘着シートやPOPラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明のオーバーラミ用粘着シートは、以下の構成を有する。
(1)印刷面もしくは記録面に貼付するオーバーラミネート用粘着シートであって、
前記オーバーラミネート用粘着シートは、表面シートと、前記表面シートの片面に有し、 紙基材に貼付可能とする粘着層を少なくとも有し、
前記表面シートは、アミロース、ポリビニルアルコールまたはビスコースのいずれかを主原料とし、JIS P 8140に準拠して測定される吸水度が10g/m以下である透明乃至半透明のフィルムであり、
前記粘着層が共重合樹脂を主成分として構成され、前記共重合樹脂中に親水性モノマー単位を有し、前記親水性モノマー単位を前記共重合樹脂組成中に20~30質量%含有し、
前記粘着層は、水に対する接触角が60秒後の値で45°以上、90°以下であることを特徴とするオーバーラミネート用粘着シート。
(2)単位面積あたりの前記粘着シートに対する前記粘着層の質量比率が0.25~0. 35である(1)に記載のオーバーラミネート用粘着シート。
(3)前記表面シートが、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.68:2000に従って測定したはっ水度がR7以下である(1)または(2)に記載のオーバーラミネート用粘着シート。
【0008】
また、上記課題を解決するため本発明のPOPラベルは、以下の構成を有する。
(4)印刷面もしくは記録面を有する紙基材、前記紙基材の前記印刷面もしくは前記記録 面にオーバーラミネート用粘着シートを有し、前記紙基材の他方の面に貼付用粘着剤を有し、前記貼付用粘着剤の紙基材を有さない面に剥離シートを有するPOPラベルであり、前記オーバーラミネート用粘着シートは、表面シートと前記表面シートの片面に有し、紙基材に貼付可能とする粘着層からなり、
前記表面シートは、アミロース、ポリビニルアルコールまたはビスコースのいずれかを主原料とし、JIS P 8140に準拠して測定される吸水度が10g/m以下である透明乃至半透明のフィルムであり、
前記粘着層が共重合樹脂を主成分として構成され、前記共重合樹脂中に親水性モノマー単位を有し、前記親水性モノマー単位を前記共重合樹脂組成中に20~30質量%含有し、
前記粘着層は、水に対する接触角が60秒後の値で45°以上、90°以下であることを特徴とするPOPラベル。
(5)単位面積あたりの前記粘着シートに対する前記粘着層の質量比率が0.25~0.35である(4)に記載のPOPラベル。
(6)前記表面シートが、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.68:2000に従って測定したはっ水度がR7以下である(4)または(5)に記載のPOPラベル。
【0009】
上記構成によって、本発明のオーバーラミ用粘着シートは、通常使用環境において、紙の印刷面や記録面を保護でき、水濡れにも十分な耐水性を有すと共に、誤って海洋に投機された場合には、海水で分解するため環境への負荷の少ない粘着シートである。更に、本発明のPOPラベルは、上記効果のほかに、紙の折れやシワを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のオーバーラミ用粘着シート及びPOPラベル(以下、まとめて粘着シートともいう)は、特定の表面シートと粘着層を採用するものである。
【0011】
本発明の粘着シートで使用する表面シートは、アミロース、ポリビニルアルコールまたはセロファンのいずれかを主成分として構成され、且つ、JIS P 8140に準拠して測定される吸水度が10g/m以下であり、透明乃至半透明のフィルムである。
ここで言う吸水度とは粘着シートの粘着層が積層されていない側を測定面として測定された値である。吸水度が10g/mを超えると、耐水性が不足してしまい、日常での水濡れ、水性ペンによる筆記、印刷加工等により、粘着シートが破損する恐れがある。
【0012】
本発明の粘着シートにおいては、表面シートとしてJIS P 8140に準拠して測定される吸水度が10g/m以下のものを選択して使用する。表面シートに用いることができる材料の例としては、フタムラ化学社製セルロースフィルム(製品名NatureFlexシリーズ)、クラレ社製アミロースフィルム(製品名Plantic)等が挙げられる。
【0013】
前記表面シートの厚みは35μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましい。厚みを薄くすることで、貼りあわされる印刷面、記録面の視認性を高めることができる。また、表面シートは、アミロース、ポリビニルアルコールまたはセロファンのいずれかを使用したものであっても、過度に耐水化処理が施されていると海洋分解性が劣る可能性がある。
【0014】
表面シートは、表面に耐水化処理が施されている場合は、前記耐水化処理層が1.0g/m以下であることが好ましい。
また、表面シートの粘着層が形成されない面の、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.68:2000に従って測定したはっ水度が、R7以下であることが好ましい。はっ水度がR8以上となると、生分解性が劣りやすくなる。
【0015】
前記粘着シートの単位面積あたりの前記表面シートに対する前記粘着層の質量比率が0.25~0.35であることが好ましい。
前記表面シートに対する前記粘着層の質量比率が0.25以上であれば被着体への良好な接着力を確保し、粘着層に水が浸入して表面シート表面に皺や膨れが発生し印字物の読取適性が低下することを防ぐことができる。また、前記表面シートに対する前記粘着層の質量比率が0.35以下であれば表面シートの海洋分解性を阻害しない。
【0016】
本発明の粘着シートで使用する粘着層は、水に対する接触角が60秒後の値で45°以上、90°以下である。好ましくは80°以下であることが好ましい。前記粘着層の水に対する接触角が60秒後の値で90°以下とすることにより表面シートの海洋分解性を阻害することなく、表面シートが海洋分解することができる。また、前記粘着層の水に対する接触角が60秒後の値で90°を超えると表面シートに粘着層が強固に貼り付いてしまい、表面シートの海洋分解性を大きく阻害することになる。また、45°以上とすることによって、水との接触によって粘剤層が瞬時に膨潤することなく、耐水性を高めることができる。
【0017】
前記粘着層の水に対する接触角が60秒後の値で45°以上、90°以下に調整する方法としては、共重合可能な親水性成分を粘着剤組成中に10~30質量%含有する、より好ましくは20~30重量%含有する粘着剤組成とすることが好ましい。
因みに10質量%未満では、粘着剤の親水性が低下してしまう。一方、30質量%を超えると粘着性能を低下させてしまう。
【0018】
粘着層を構成する重合体中の親水性基の量を調整する方法としては、粘着層中に親水性の可塑化物質を添加する方法が挙げられる。
親水性の可塑化物質としては、例えば、グリセリン、ソルビット、マンニット、ズルシット、イジット、エリトリット、アラビット、アドニット等の糖アルコール類、ポリエチレンオキシドもしくはポリプロピレンオキシドとグリセリン、キシリットトリオキシイソブタン、ソルビットなどの多価アルコールとの共重合体やポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールや、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテール、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のノニオン性の界面活性剤等が挙げられる。
【0019】
これら親水性の可塑化物質の添加量は、粘着性と親水性を考慮して、共重合体100質量%に対して10質量%以下、より好ましくは0.5~10質量%の範囲で使用することが望ましい。
なお、これら親水性の可塑化物質の中でも、特に、ノニオン系の界面活性剤が、親水性、接着性や保存性の良好な粘着剤を仕上げることができるので好ましい。
【0020】
また、特に望むならば、粘着剤の性能、特にポリオレフィン系被着体に対する接着力、凝集力等の物性を向上させる目的で、エチレン-酢ビ共重合体、エチレン-酢酸ビニル-アクリル系共重合体を添加することもできる。
これらの添加物は、粘着性能並びにゲル分率を適正な範囲にするために用いることもできる。
【0021】
本発明の粘着シートで使用する該粘着剤を得るためには、粘着剤組成中に共重合可能な親水性のモノマーを配合することが不可欠であるが、それらモノマーを多量に使用すると粘着剤共重合体のガラス点移温度が高くなり、十分な粘着性を発現しない。そのため、粘着剤の粘着性と親水性のバランスを考慮した各種モノマーの配合が必要となる。
前記粘着層が共重合樹脂を主成分として構成され、前記共重合樹脂中に親水性モノマー単位を前記共重合樹脂中に有し前記親水性モノマー単位を粘着剤組成中に20~30質量%含有することが好ましい。
前記親水性モノマー単位を粘着剤組成中に20質量%以上含有することにより、軽度の水濡れに対して良好な耐水性を示す。また、前記親水性モノマー単位を粘着剤組成中に30質量%以下含有することにより、良好な接着性を得ることができる。
【0022】
前記親水性モノマー単位としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、モノアルキルマレイン酸、モノアルキルイタコン酸、モノアルキルフマル酸等のエチレン性不飽和カルボン酸含有モノマー、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、カルボン酸変性ロジンエステル、(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0023】
前記粘着層を構成する親水性モノマー単位以外のモノマーとしては、粘着剤の粘着性を付与する成分として、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられ、粘着性能を整える成分として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、エチレン等が挙げられる。
【0024】
これらの化合物は、粘着剤の粘着性能のバランスを考慮して適宣使用できるが、粘着剤の粘着性や凝集力等の点で、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、酢酸ビニルを使用することがより好ましい。
さらに、該粘着剤を得るための共重合体製造時に(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコールの少なくともいずれか1種を添加しても良い。
【0025】
(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(1)に表される化合物で、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
【化1】

〔式中、Rはメチル基または水素原子、nは1~23の整数を表す。〕
(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの存在下で共重合体を製造すると、粘着剤に親水性を付与できると共に、分子量を上げることができるので、粘着剤粒子が硬くなり、水中で粘着性を発現しないためより好ましい。
そして、これらの化合物は、粘着剤の親水性、粘着性能のバランスを考慮して適宣使用できるが、中でも特にポリエチレングリコールジメタクリレートは、親水性に優れた共重合体が得られるのでより好ましい。
【0027】
なお、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、粘着剤組成混合物100質量%に対して、0.1~5質量%の範囲で添加することが望ましい。因みに0.1質量%未満では、粘着剤の親水性が不十分となる。一方、5質量%を超えると、重合時に粘着剤が凝集しやすくなる。
【0028】
なお、上記の共重合体の製造方法については、特に限定されるものではなく、例えば、水、溶剤、連鎖移動剤、重合開始剤等の存在下で溶液重合する方法や、乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤、分散剤等の存在下の水系でエマルジョン重合する方法などの公知の方法で製造される。
【0029】
上記の方法で得られた共重合体は、その共重合体中のカルボキシル基の50~120モル%に相当するアルカノールアミンや水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物やアンモニア等で中和処理を施すことにより、機械安定性を改良でき、また粘度調整を行うことができる。粘着シートに加工された後の経時での揮散による粘着性能の劣化防止の点から、アルカリ金属の水酸化物を使用することがより好ましい。
また、粘着剤及び印刷物の光による劣化を防ぐ目的で、紫外線吸収剤を添加することもできる。
【0030】
本発明のオーバーラミネート用粘着シートは、前記粘着層上に更に剥離シートが積層されていてもよい。
剥離シートの基材に使用するものとしては、特に限定するものではないが、例えば、グラシン紙の如き高密度原紙、クレーコート紙、グラシン紙やクラフト紙または上質紙等に、例えばカゼイン、デキストリン、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリル酸エステル共重合体等の天然または合成樹脂および/または顔料とを主成分とした目止め層を設けた基材、グラシン紙やクラフト紙または上質紙等にポリエチレン等をラミネートしたラミネート紙(ポリラミ紙)、ポリプロピレン、ポリエステル等のフィルム類を挙げることができる。剥離シートは、これらの基材に、シリコーン化合物やフッ素化合物の如き剥離剤層を設けたものである。
オーバーラミネート用粘着シートは、紙などに印刷された印刷物、記録された記録物の視認性を向上させるために、粘着層をより平滑にするために、剥離シートの基材としてはグラシン紙にポリエチレンをラミネートしたものやポリエステルフィルムがより好ましい。
【0031】
本発明のPOPラベルは、上記オーバーラミネート用粘着シートを用いてラベルにするとよい。例えば、印刷面もしくは記録面を有する紙基材の、前記紙基材の前記印刷面もしくは前記記録面に前記オーバーラミネート用粘着シートを貼付し、前記紙基材の他方の面に貼付用粘着剤を有する構成であり、必要に応じて前記貼付用粘着剤の紙基材を有さない面に剥離シートを有していてもよい。
剥離シートは、貼付用粘着剤を保護するためのもので、前記オーバーラミネート用粘着シートの粘着層を保護する剥離シートとして例示したものが使用できる。貼付用粘着剤は、商品等の被着体に貼付するための粘着剤であり、公知の粘着シート、粘着ラベルに使用される粘着剤が例示できる。また、上記オーバーラミネート用粘着シートの粘着層に用いる粘着剤も使用できる。紙基材としては、紙、板紙を使用する。例えば、上質紙、白板紙、顔料塗工層を設けた印刷用塗工紙、塗工白板紙、インクジェット記録、感熱記録などの記録層を設けた記録紙などが適宜使用できる。なお、本発明のPOPラベルは、紙基材の坪量が小さくても、オーバーラミネート用粘着シートが積層されているため、十分な剛度や強度を示すことができ、商品に貼付した後、商品から飛び出した部分が折れたりすることを防ぐことができる。紙基材の好ましい坪量は、70g/m~500g/mである。また、印刷面あるいは記録面を前記オーバーラミネート用粘着シートに保護しているため、出荷時の梱包や輸送時にラベルの印刷部が擦られることで、見栄えが損なわれたりすることを防ぐことができる。
【0032】
以下、実施例をあげて本発明をより具体的に説明するが、もちろん本発明はこれらに限定されるものではない。また例中の部、割合、塗被量等は特に断らない限り、全て固形分または有効成分質量で示すものである。
【0033】
[実施例1]
(粘着剤Aの製造)
まず乳化モノマー混合液として、
アクリル酸-2-エチルヘキシル:292部
アクリル酸:32部
(メタ)アクリル酸メチル:20部
アクリル酸メトキシエチル:38部
酢酸ビニル:14部
アニオン系乳化剤(商品名:エマール10G/花王社製):3部
イオン交換水:150部
を混合し、乳化剤とイオン交換水を除く全モノマー混合物に対してポリエチレングリコールジメタクリレート(商品名:NKエステル9G/新中村化学社製)を4.5質量%添加して調製した。
粘着剤Aにおいて粘着剤組成中の親水性モノマー由来成分の含有率は26質量%であった。
【0034】
次ぎに撹拌機、クーラー、滴下ロート、窒素吸入管、温度計を付帯したフラスコに、イオン交換水150部、過硫酸カリウム3部、オクチルメルカプタン3部を仕込み、窒素置換しながら80℃に昇温した後、上記乳化モノマー混合液を1/6滴下した。反応率が90%に達した時点で残りのモノマー混合液を3時間かけて滴下し重合を行った。滴下終了後、80℃で3時間熟成して反応を完結させた。次にフラスコ内容物を40℃に冷却し、トリエタノールアミンと10%KOH水溶液をそれぞれ共重合体中のカルボキシル基の50モル%添加して中和反応を行った。得られた組成物100部に対してノニオン系界面活性剤(エマルゲン707/花王社製):4部を添加し、強撹拌して粘着剤Aを製造した。
【0035】
(粘着シートの作製)
市販のポリエチレンラミネート紙にシリコーン系剥離剤が塗布された剥離紙に、粘着剤Aを乾燥質量で15g/mとなるように塗被、乾燥させた後、市販のセルロースフィルム(製品名:NatureFlex NVS23、坪量33g/m、厚み23μm、フタムラ化学社製)と貼り合わせてオーバーラミネート用粘着シートを得た。
【0036】
[実施例2]
(粘着剤Bの製造)
まず乳化モノマー混合液として、
アクリル酸-2-エチルヘキシル:280部
アクリル酸:35部
(メタ)アクリル酸メチル:20部
アクリル酸メトキシエチル:50部
酢酸ビニル:5部
アニオン系乳化剤(商品名:エマール10PT/花王社製):6部
イオン交換水:150部
を混合し、乳化剤とイオン交換水を除く全モノマー混合物に対してポリエチレングリコールジメタクリレート(商品名:NKエステル9G/新中村化学社製)を0.9質量%添加して調製した。
粘着剤Bにおいて粘着剤組成中の親水性モノマー由来成分の含有率は28質量%であった。
【0037】
次ぎに撹拌機、クーラー、滴下ロート、窒素吸入管、温度計を付帯したフラスコに、イオン交換水150部、過硫酸カリウム3部、オクチルメルカプタン3部を仕込み、窒素置換しながら80℃に昇温した後、上記乳化モノマー混合液を1/6滴下した。反応率が90%に達した時点で残りのモノマー混合液を3時間かけて滴下し重合を行った。滴下終了後、80℃で3時間熟成して反応を完結させた。次にフラスコ内容物を40℃に冷却し、トリエタノールアミンと10%KOH水溶液をそれぞれ共重合体中のカルボキシル基の50モル%添加して中和反応を行った。得られた組成物100部に対し、ノニオン系の界面活性剤(商品名:エマルゲン709/花王社製):4部、エチレン-酢ビ-アクリル共重合(商品名:スミカフレックスS-400HQ/住友化学工業社製):20部を添加し、強撹拌して本発明に使用する粘着剤を製造した。
【0038】
市販のポリエチレンラミネート紙にシリコーン系剥離剤が塗布された剥離紙に、粘着剤Bを乾燥質量で15g/mとなるように塗被、乾燥させた後、市販のセルロースフィルム(製品名:NatureFlex NVS23、坪量33g/m、厚み23μm、フタムラ化学社製)と貼り合わせてオーバーラミネート用粘着シートを得た。
【0039】
[実施例3]
(粘着剤Cの製造)
まず乳化モノマー混合液として、
アクリル酸-2-エチルヘキシル:280部
アクリル酸:20部
(メタ)アクリル酸メチル:10部
アクリル酸メトキシエチル:18部
酢酸ビニル:5部
アニオン系乳化剤(商品名:エマール10G/花王社製):3部
イオン交換水:150部
を混合し、乳化剤とイオン交換水を除く全モノマー混合物に対してポリエチレングリコールジメタクリレート(商品名:NKエステル9G/新中村化学社製)を4.5質量%添加して調製した。
粘着剤Cにおいて粘着剤組成中の親水性モノマー由来成分の含有率は16質量%であった。
【0040】
次ぎに撹拌機、クーラー、滴下ロート、窒素吸入管、温度計を付帯したフラスコに、イオン交換水150部、過硫酸カリウム3部、オクチルメルカプタン3部を仕込み、窒素置換しながら80℃に昇温した後、上記乳化モノマー混合液を1/6滴下した。反応率が90%に達した時点で残りのモノマー混合液を3時間かけて滴下し重合を行った。滴下終了後、80℃で3時間熟成して反応を完結させた。次にフラスコ内容物を40℃に冷却し、トリエタノールアミンと10%KOH水溶液をそれぞれ共重合体中のカルボキシル基の50モル%添加して中和反応を行った。得られた組成物100部に対してノニオン系界面活性剤(エマルゲン707/花王社製):4部を添加し、強撹拌して粘着剤Cを製造した。
【0041】
市販のポリエチレンラミネート紙にシリコーン系剥離剤が塗布された剥離紙に、粘着剤Bを乾燥質量で15g/mとなるように塗被、乾燥させた後、市販のセルロースフィルム(製品名:NatureFlex NVS23、坪量33g/m、厚み23μm、フタムラ化学社製)と貼り合わせてオーバーラミネート用粘着シートを得た。
【0042】
[実施例4]
実施例1の粘着シートの作製において粘着剤Aを乾燥質量で12g/mとなるように塗被、乾燥させた以外は、実施例1と同様にしてオーバーラミネート用粘着シートを作成した。
【0043】
[実施例5]
実施例1の粘着シートの作製において粘着剤Aを乾燥質量で17g/mとなるように塗被、乾燥させた以外は、実施例1と同様にしてオーバーラミネート用粘着シートを作成した。
【0044】
[比較例1]
実施例1の粘着シートの作製において市販のセルロースフィルム(製品名:NatureFlex NVS23、フタムラ化学社製)の代わりに市販の25μmポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてオーバーラミネート用粘着シートを作製した
【0045】
[比較例2]
実施例1において粘着剤Aの代わりに市販のアクリル系粘着剤(商品名:SVP575E/サイデン化学社製)を乾燥質量で15g/mとなるように塗被、乾燥した以外は、実施例1と同様にしてオーバーラミネート用粘着シートを作成した。
【0046】
[比較例3]
実施例1の粘着シートの作製において市販のセルロースフィルム(製品名:NatureFlex NVS23、フタムラ化学社製)の代わりに市販の25μmポリ乳酸系フィルム(エコロージュ/三菱ケミカル社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてオーバーラミネート用粘着シートを作成した。
[比較例4]
実施例1において粘着剤Aの代わりに市販のデンプン糊を乾燥質量で15g/mとなるように塗被、乾燥した以外は、実施例1と同様にしてオーバーラミネート用粘着シートを作成した。
【0047】
このようにして得られたオーバーラミネート用粘着シートについて、下記の評価を行い、得られた結果を表1に示した。
【0048】
(評価試験項目)
〔接着力〕
JIS-Z-0237の常態粘着力の測定方法に準拠し、下記の二つの条件で保存した後の接着力をそれぞれ測定した。(単位:N/25mm)
条件A:オーバーラミネート用粘着シートの製造後、温度23±2℃、関係湿度65±5%の雰囲気下に7日間保存した後、その接着力を測定した。
条件B:オーバーラミネート用粘着シートの製造後、温度40±2℃、関係湿度90±5%の雰囲気下に7日間保存した後、その接着力を測定した。
接着力は8N/25mm以上であれば、実用上問題がない。
【0049】
〔オーバーラミネート用粘着シートの吸水度〕
JIS-P-8140の吸水度試験方法に準拠し、オーバーラミネート用粘着シートの表面側の吸水度を測定した。
【0050】
〔接触角測定方法〕
オーバーラミネート用粘着シートから剥離紙を剥がし取り、粘着剤層表面の水に対する接触角を、共和界面科学社製のDMo―501型接触角計を用い液滴法により、滴下60秒後の水滴の角度を測定した。
【0051】
〔耐水性試験〕
オーバーラミネート用粘着シートから剥離紙を剥がし取り、市販のコート紙(OKトップコート<90>、王子製紙製)に印刷を施したものに貼り付け、温度23±2℃、関係湿度65±5%の雰囲気下に24時間放置後、5cm角に切り取り、23℃の水に20秒間浸漬し、取り出したときの状態を下記評価基準にて評価した。
○:オーバーラミネート用粘着シートが紙基材から剥がれないで、評価前の状態を維持している。
△:オーバーラミネート用粘着シートの一部に剥がれが見られる、もしくはラベル周囲が波打つ。
×:オーバーラミネート用粘着シートが全て紙基材から剥がれる。
〔POP評価〕
オーバーラミネート用粘着シートから剥離紙を剥がし取り、市販のコート紙粘着紙(Nアート73/P22/G7B、王子タック製)に印刷を施したものに貼り付け、温度23±2℃、関係湿度65±5%の雰囲気下に24時間放置後、縦7.4cm、横6.4cmに切り取り、ラベルが横目となるようにポリプレン製の板にコート紙粘着紙の粘着面を2cm貼り付け、23℃80%の高湿環境と23℃30%の低湿環境に7日間置いて、状態を下記評価基準にて評価した。
○:ラベルがカールすることなく、オーバーラミネート用粘着シートにも浮きが見られず、印刷面をはっきり視認できる。
△:ラベルが僅かにカールする、もしくはオーバーラミネート用粘着シートの一部に浮きやラベル周囲に波うちが見られるが、印刷面を視認できる。
×:ラベルが大きくカールし、オーバーラミネート用粘着シートに浮きや剥がれが見られ、印刷面を視認できない。
【0052】
〔海洋分解性試験〕
40L水槽に蒸留水35Lを入れ、人口海水の素(製品名:RED SEA SALT、Red Sea社製)を比重1.02になるよう溶解して、人口海水を調整する。
次いで、水温を26℃に調整し、水槽にライブロックを投入し、ポンプで水槽を循環させて海洋環境を作成する。
予め乾燥質量Aを測定した100mm×100mmの試験片を水槽に90日間浸漬させた後、試験片を取り出して乾燥質量Bを測定し、残存率(乾燥質量B/乾燥質量A)を測定する。残存率が20%以下のものを合格とする。
前記粘着剤層の水に対する接触角は以下の方法によって測定される。
【0053】
【表1】
【0054】
表1の如く、本発明の粘着シートは、貼り付け時には必要な接着力を示し、経時による接着力の低下も少なく、実使用時の耐水性にも優れ、且つ使用後に海洋に廃棄されたとしても海洋環境下で分解される粘着シートであった。