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特許7401863血管攣縮抑制剤、血管攣縮予防剤、血管攣縮予防用経口組成物及び血管攣縮抑制用経口組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】血管攣縮抑制剤、血管攣縮予防剤、血管攣縮予防用経口組成物及び血管攣縮抑制用経口組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/352 20060101AFI20231213BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 36/605 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
A61K31/352
A61P9/00
A61K36/605
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020170315
(22)【出願日】2020-10-08
(65)【公開番号】P2022062358
(43)【公開日】2022-04-20
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】520391734
【氏名又は名称】宮園 謹吉
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】加治屋 勝子
(72)【発明者】
【氏名】鶴留 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】宮園 謹吉
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-504370(JP,A)
【文献】特開2016-079117(JP,A)
【文献】特表2002-524522(JP,A)
【文献】特表2003-527434(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132483(WO,A1)
【文献】特開2012-171951(JP,A)
【文献】特開2001-114686(JP,A)
【文献】Chen-hui Zhou et al.,"Fisetin alleviates early brain injury following experimental subarachnoid hemorrhage in rats possibly by suppressing TLR 4/NF-κB signaling pathway",BRAIN RESEARCH,2015年,Vol.1629,p.250-259
【文献】GUL Sanser et al.,"Neuroprotective effects of quercetin on cerebral vasospasm following experimental subarachnoid haemorrhage in rats",Turkish Journal of Medical Sciences,2020年02月23日,Vol.50,p.1106-1110
【文献】Yu-shu Dong et al.,"Protective Effect of Quercetin against Oxidative Stress and Brain Edema in an Experimental Rat Model of Subarachnoid Hemorrhage",International Journal of Medical Sciences,2014年,Vol.11,p.282-290
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
36/605
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
に示される構造を有する化合物又はその塩を有効成分として含有し、
前記式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立して水素原子又は水酸基である、
血管攣縮抑制剤。
【請求項2】
前記式(1)におけるRは、水酸基である、
請求項1に記載の血管攣縮抑制剤。
【請求項3】
前記化合物は、
フィセチンである、
請求項1又は2に記載の血管攣縮抑制剤。
【請求項4】
前記化合物をクワ科クワ属に属する植物の抽出物として含有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の血管攣縮抑制剤。
【請求項5】
式(1)
【化2】
に示される構造を有する化合物又はその塩を有効成分として含有し、
前記式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立して水素原子又は水酸基である、
血管攣縮予防剤。
【請求項6】
式(1)
【化3】
に示される構造を有する化合物又はその塩を有効成分として含有し、
前記式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立して水素原子又は水酸基である、
血管攣縮予防用経口組成物又は血管攣縮抑制用経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管攣縮抑制剤、血管攣縮予防剤、血管攣縮予防用経口組成物及び血管攣縮抑制用経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血管は血圧及び血流を一定に保つために、細胞質Ca2+濃度に依存的な収縮及び弛緩運動を繰り返している。細胞質Ca2+濃度に依存しない血管の異常収縮が、偏頭痛及び血流停滞等の他、重篤な狭心症又はくも膜下出血に伴う血管攣縮等を引き起こす。異常収縮は、最悪の場合、死に至るため突然死の主原因として恐れられているが、特効薬がないのが現状である。
【0003】
血管平滑筋の異常収縮は、Rhoキナーゼによる血管平滑筋のCa2+感作(sensitization)によって引き起こされる。Rhoキナーゼを活性化することで血管平滑筋のCa2+感作を引き起こす分子としてスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)が知られている。非特許文献1には、SPCによって引き起こされる血管攣縮をエイコサペンタエン酸(EPA)が抑制することが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Fumiaki Nakao、外8名、“Involvement of Src Family Protein Tyrosine Kinases in Ca2+ Sensitization of Coronary Artery Contraction Mediated by a Sphingosylphosphorylcholine-Rho-Kinase Pathway”、Circulation Research、2002年、91、953-960
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
EPAは多価不飽和脂肪酸であるため、酸化しやすく不安定である点が不都合である。また、EPAは化学合成の極めて困難な化合物であり、主としてイワシ魚油から抽出及び精製される。イワシの漁獲量が不安定なことに加え、イワシの乱獲による資源枯渇が危惧されている。安定な供給が確実ではないEPA以外で、血管の異常収縮を抑制することができる新規の物質が求められている。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、血管の異常収縮を抑制することができる血管攣縮抑制剤、血管攣縮予防剤、血管攣縮予防用経口組成物及び血管攣縮抑制用経口組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係る血管攣縮抑制剤は、
式(1)
【化1】
に示される構造を有する化合物又はその塩を有効成分として含有し、
前記式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立して水素原子又は水酸基である。
【0008】
この場合、前記式(1)におけるRは、水酸基である、
こととしてもよい。
【0009】
また、前記化合物は、
フィセチンである、
こととしてもよい。
【0010】
また、上記本発明の第1の観点に係る血管攣縮抑制剤は、
前記化合物をクワ科クワ属に属する植物の抽出物として含有する、
こととしてもよい。
【0011】
本発明の第2の観点に係る血管攣縮予防剤は、
式(1)
【化2】
に示される構造を有する化合物又はその塩を有効成分として含有し、
前記式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立して水素原子又は水酸基である。
【0012】
本発明の第3の観点に係る血管攣縮予防用経口組成物又は血管攣縮抑制用経口組成物は、
式(1)
【化3】
に示される構造を有する化合物又はその塩を有効成分として含有し、
前記式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立して水素原子又は水酸基である
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、血管の異常収縮を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】細胞の異常収縮予防効果を示す図である。
図2】細胞の異常収縮抑制効果を示す図である。
図3】ゲルろ過クロマトグラフィーによる分子量ごとの分画の異常収縮予防効果を示す図である。
図4】高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分取した画分を示す図である。
図5図4に示す各画分の異常収縮予防効果を示す図である。
図6】液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)による有効成分の同定の結果を示す図である。(A)は紫外(UV)スペクトルを示す。(B)はプロダクトイオンスペクトルを示す。
図7】フィセチンの定量のためのHPLCの結果を示す図である。
図8】桑葉におけるフィセチン含量を示す図である。
図9】フィセチンによる細胞の異常収縮予防効果を示す図である。
図10】異常収縮誘発前の細胞及び誘発後の細胞の画像を示す図である。
図11】フィセチン、ルテオリン及びケルセチンの構造と活性とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は下記の実施の形態及び図面によって限定されるものではない。なお、下記の実施の形態において、“有する”、“含む”又は“含有する”といった表現は、“からなる”又は“から構成される”という意味も包含する。
【0016】
(実施の形態)
本実施の形態に係る血管攣縮抑制剤は、次の式(1)に示される構造を有する化合物又はその塩(以下、単に“化合物X”とする)を有効成分として含有する。式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立して水素原子又は水酸基である。
【0017】
【化4】
【0018】
例えば、式(1)におけるRが水素原子であって、Rが水酸基である化合物Xはルテオリン(luteolin)である。好ましくは、式(1)におけるRは水酸基である。Rが水酸基であって、Rが水素原子である化合物Xはフィセチン(fisetin)である。R及びRがいずれも水酸基である化合物Xは、ケルセチン(quercetin)である。好適には、血管攣縮抑制剤に有効成分として含有される化合物Xはフィセチンである。
【0019】
化合物Xが式(1)に示される構造を有する化合物の塩である場合、塩は、薬理学上許容され、かつ血管攣縮抑制活性を示す塩であれば特に限定されない。当該化合物の塩としては、例えば、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩等が挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩等が挙げられ、アルカリ土類金属塩としては、マグネシウム塩及びカルシウム塩等が挙げられる。
【0020】
化合物Xは公知の方法で合成できる。化合物Xとして市販のものを用いてもよい。化合物Xは、植物、例えばクワ科(Moraceae)クワ属(Morus)に属する植物に含まれる。
【0021】
クワ科クワ属に属する植物としては、ヤマグワ(Morus australis)、ログワ(ロソウ)(Morus latifolia)、ナガミグワ(Morus laevigata)、ケグワ(Morus tiliaefolia)、オガサワラグワ(Morus boninensis)、テンジクグワ(Morus serrata)、アカミグワ(Morus rubra)、カラヤマグワ(Morus alba)、クロミグワ(Morus nigra)及びブラックマルベリー(Morus mesozygia)等が挙げられる。
【0022】
好適には、化合物Xはクワ科クワ属に属する植物の葉(桑葉)から抽出される。抽出物は、例えば、桑葉をそのまま、あるいは桑葉の加工物を溶媒で抽出して得られる抽出物、その希釈液及び濃縮液、並びにそれらの乾燥物及び粉末が挙げられ、化合物Xが含有されていれば特に限定されない。
【0023】
抽出溶媒は、特に限定されないが、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、1,3-ブチレングリコール、アセトン、ブタノール及び酢酸等である。抽出溶媒は混合溶媒であってもよい。抽出溶媒は、好ましくはエタノールである。抽出時間は、抽出溶媒の種類及び桑葉と抽出溶媒との割合を考慮し適宜選択される。また、得られた抽出物はそのまま利用してもよいが、常法に従って希釈、濃縮、乾燥及び精製等の処理を施してもよい。また、必要に応じて化合物Xの割合を高めるため、減圧濃縮や凍結乾燥により溶媒を除去してもよい。例えば、桑葉を溶媒に浸漬し、一定時間経過後、溶媒を濃縮乾固した乾固物を抽出物としてもよい。
【0024】
血管攣縮抑制剤は、化合物Xをクワ科クワ属に属する植物の抽出物として含有してもよい。すなわち、血管攣縮抑制剤は、植物の抽出物から分離された化合物Xではなく、化合物Xを含む植物の抽出物を含有する。
【0025】
化合物Xは、植物の抽出物からクロマトグラフィーで単離及び精製できる。好ましくは、クロマトグラフィーは液体クロマトグラフィー、特に好ましくはHPLCである。
【0026】
化合物Xが抽出される植物は、クワ科クワ属に属する植物に限らず、ヒノキ、ヌルデ属、イチゴ、セロリ、ブロッコリー及びピーマン等であってもよい。
【0027】
本実施の形態に係る血管攣縮抑制剤は、既知の方法で製造され、有効成分として0.000001~99.9重量%、0.00001~99.8重量%、0.0001~99.7重量%、0.001~99.6重量%、0.01~99.5重量%、0.1~99重量%、0.5~60重量%、1~50重量%又は1~20重量%の化合物Xを含む。血管攣縮抑制剤は、固形製剤であっても、液状製剤であってもよい。
【0028】
血管攣縮抑制剤は化合物Xに加え、薬理学上許容される任意の成分を含んでもよい。任意の成分は、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等である。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤及び甘味剤等の添加物が血管攣縮抑制剤に配合されてもよい。
【0029】
賦形剤としては、乳糖、白糖、D-マンニトール、D-ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストリン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、プルラン、軟質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、キシリトール、ソルビトール及びエリスリトール等が挙げられる。
【0030】
滑沢剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ及びポリエチレングリコール等である。
【0031】
結合剤としては、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、トレハロース、デキストリン、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドン等が例示される。
【0032】
崩壊剤は、例えば、乳糖、白糖、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、軟質無水ケイ酸及び炭酸カルシウム等である。
【0033】
溶剤としては、注射用水、生理食塩水、リンゲル液、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油及び綿実油等が挙げられる。溶解補助剤は、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム及び酢酸ナトリウム等である。
【0034】
懸濁化剤としては、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム及びモノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子;ポリソルベート類、並びにポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0035】
等張化剤は、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール、D-ソルビトール、ブドウ糖、キシリトール及び果糖等が挙げられる。緩衝剤は、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩及びクエン酸塩等の緩衝液等である。無痛化剤は、例えば、プロピレングリコール、塩酸リドカイン及びベンジルアルコール等である。
【0036】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸及びソルビン酸等が挙げられる。抗酸化剤としては、亜硫酸塩及びアスコルビン酸塩等が例示される。着色剤としては、水溶性着色タール色素、レーキ色素及び天然色素等が挙げられる。甘味剤は、例えば、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム及びステビア等である。
【0037】
血管攣縮抑制剤の投与量は、投与対象の性別、年齢、体重及び症状等によって適宜決定される。血管攣縮抑制剤は、化合物Xが有効量となるように投与される。有効量とは、所望の結果を得るために必要な化合物Xの量であり、治療又は処置する疾患に係る状態の進行の遅延、阻害、予防、逆転又は治癒をもたらすのに必要な量である。血管攣縮抑制剤の投与量は、特には、血管の異常収縮、血管攣縮又は血管痙攣を予防、抑制又は停止するために必要な量である。
【0038】
血管攣縮抑制剤の投与量は、例えば、0.01mg/kg~1000mg/kg、好ましくは0.1mg/kg~200mg/kg、より好ましくは0.2mg/kg~20mg/kgであり、1日に1回、又はそれ以上に分割して投与することができる。血管攣縮抑制剤を分割して投与する場合、血管攣縮抑制剤は、1日に1~4回投与される。また、血管攣縮抑制剤は、毎日、隔日、1週間に1回、隔週及び1ヶ月に1回等の様々な投与頻度で投与してもよい。なお、必要に応じて、上記の範囲外の量を用いることもできる。
【0039】
血管攣縮抑制剤の投与経路は特に限定されない。血管攣縮抑制剤は、例えば非経口又は経口で投与される。非経口投与の場合、静脈注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、経皮投与、経鼻投与、経肺投与、経腸投与、口腔内投与及び経粘膜投与等であってもよい。血管攣縮抑制剤は、点滴を介して投与されてもよい。
【0040】
血管攣縮抑制剤は、任意の形態の製剤とすることができる。血管攣縮抑制剤は、経口投与の場合、糖衣錠、バッカル錠、コーティング錠及びチュアブル錠等の錠剤、トローチ剤、丸剤、散剤及びソフトカプセル等のカプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤及びドライシロップ等のシロップ剤、並びにエリキシル剤等の液剤であってもよい。非経口投与の場合、血管攣縮抑制剤は、注射剤、経皮吸収テープ、エアゾール剤及び坐剤等であってもよい。
【0041】
血管攣縮抑制剤の投与対象は、脊椎動物が好ましく、哺乳類動物がより好ましい。哺乳類動物としては、例えば、ヒト、チンパンジー及びその他の霊長類、イヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、ラット、マウス及びモルモット等の家畜動物、愛玩動物及び実験用動物等が挙げられる。特に好ましくは、哺乳類動物はヒトである。
【0042】
本実施の形態に係る血管攣縮抑制剤は、下記実施例において、血管を形成する平滑筋細胞の異常収縮を抑制する化合物Xを有効成分として含有する。このため、血管攣縮抑制剤は、血管攣縮を抑制することができる。
【0043】
化合物Xは、下記実施例に示すように、平滑筋細胞の異常収縮を予防する。このため、上述の血管攣縮抑制剤は、血管攣縮予防剤として使用されてもよい。好ましくは、血管攣縮予防剤は、血管の異常収縮、血管攣縮又は血管痙攣が生じる前に投与される。
【0044】
別の実施の形態では、化合物Xを有効成分として含む血管攣縮予防用経口組成物又は血管攣縮抑制用経口組成物が提供される。経口組成物としては、具体的には、サプリメント、食品組成物、飲食品、機能性食品及び食品添加剤が挙げられる。
【0045】
サプリメントの形態は、特に制限されず、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、糖衣錠、フイルム剤、トローチ剤、チュアブル剤、溶液、乳濁液、懸濁液等の任意の形態でよい。サプリメントは、化合物X以外に、サプリメントとして通常使用される任意の成分を含んでもよい。当該成分としては、例えば、アミノ酸、ペプチド;ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンB及び葉酸等のビタミン類;ミネラル類;糖類;無機塩類;クエン酸又はその塩;茶エキス;油脂;プロポリス、ローヤルゼリー及びタウリン等の滋養強壮成分;ショウガエキス及び高麗人参エキス等の生薬エキス;ハーブ類;並びにコラーゲン等が挙げられる。
【0046】
化合物Xを日常的に経口摂取しやすいように各種の食品又は飲料に化合物Xを混合して機能性食品とすることで、化合物Xを長期的に摂取することができる。“機能性食品”とは、健康の維持の目的で摂取する食品又は飲料を意味し、保健機能食品である特定保健用食品、栄養機能食品、健康食品及び栄養補助食品等を含む。この中でも保健機能食品である特定保健用食品又は栄養機能食品が好ましい。なお、機能性食品として製品化する場合には、食品に用いられる様々な添加剤、具体的には、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤漂白剤、防菌防黴剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤及び香料等を添加してもよい。
【0047】
機能性食品の対象となる、食品及び飲料は特に限定されるものではない。機能性食品の形態は、例えば、栄養ドリンク、清涼飲料水、紅茶及び緑茶等の飲料;キャンデー、クッキー、錠菓、チューインガム及びゼリー等の菓子;麺、パン、米飯及びビスケット等の穀類加工品、ソーセージ、ハム及びかまぼこ等の練り製品;バター及びヨーグルト等の乳製品;ふりかけ;並びに調味料等である。なお、機能性食品には、甘味料、香料及び着色料等の添加物が含まれてもよい。
【0048】
経口組成物は、化合物Xを植物の抽出物として含有してもよい。化合物X又は化合物Xを含む植物の抽出物を機能性食品に配合する割合は任意であるが、血管の異常収縮、血管攣縮及び血管痙攣の抑制及び予防の少なくともいずれかに寄与する範囲で割合が選択される。化合物X又は化合物Xを含む植物の抽出物は、食品添加剤として使用することも可能である。
【0049】
なお、他の実施の形態では、化合物Xを患者に投与することにより血管攣縮を治療する方法が提供される。また、別の実施の形態は、血管攣縮を治療するための化合物Xの使用である。他の実施の形態では、血管攣縮抑制剤としての使用のための化合物Xが提供される。また、別の実施の形態は、血管攣縮を抑制するための医薬の製造のための化合物Xの使用である。
【0050】
また、別の実施の形態では、桑葉からフィセチンを抽出するステップを含む、フィセチンの製造方法が提供される。
【0051】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例
【0052】
(試験例1:桑試料による異常収縮予防効果の評価)
桑葉(ヤマグワ:Morus australis)試料30mgを70%エタノールにより抽出し、濃縮乾固した乾固物をHEPES緩衝液(HK-3320、倉敷紡績社製)で溶解し4mg/mL桑試料抽出液とした。1.0×10細胞/mLの正常ヒト冠状動脈平滑筋細胞の細胞懸濁液100μLと増殖培地(正常ヒト平滑筋細胞用増殖培地KS-2170S、倉敷紡績社製)200μLとを24ウェルプレートの各ウェルに播種し、37℃、CO濃度5%に設定したCOインキュベーターで培養した。なお、以下での細胞の培養は37℃、CO濃度5%に設定したCOインキュベーターで培養した。
【0053】
細胞の培養開始から約24時間後に上清を100μL/ウェル除去し、最終濃度が2mg/mLとなるよう桑試料抽出液を200μL/ウェル添加後、80~90%コンフルエントになるまで約48時間培養した。培養後、上清を全て除去し、基礎培地(正常ヒト平滑筋細胞用基礎培地KS-2370S、倉敷紡績社製)300μL/ウェルと桑試料抽出液100μL/ウェル(最終濃度:2mg/mL)とを添加し、12時間以上培養した。
【0054】
プレートをインキュベーターから取り出し、上清を200μL/ウェルずつ除去した後、6μM Fluo3-AMを200μL/ウェル添加(最終濃度:3μM/ウェル)し、1時間培養した。さらに、上清を200μL/ウェル除去し、2mM CaClを200μL/ウェル添加後、細胞の培養と同じ条件下で30分間反応させた。培養後、上清を全て除去し、基礎培地100μL/ウェルと桑試料抽出液100μL/ウェル(SPC 200μL/ウェル添加後の最終濃度が2mg/mL)とを添加し異常収縮の形態観察を行った。
【0055】
異常収縮の形態観察では、1ウェルずつ蛍光顕微鏡(CKX53、オリンパス社製)にて定点観察し、異常収縮誘発前の画像を取得後、60μM SPCを200μL/ウェル(最終濃度:30μM/ウェル)添加し、1、3、5及び10分後の画像を取得した。細胞は異常収縮すると、縮んでウェルの底から剥がれる。異常収縮誘発前及び誘発後のウェルの底に付着している細胞の表面積を比較することで、異常収縮を評価した。詳細には、得られた画像について、ImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)あるいはBZシリーズ解析アプリケーション(キーエンス社製)にて細胞の表面積を算出し、異常収縮誘発前の細胞の表面積を100とした相対値にて異常収縮予防効果を評価した。
【0056】
(結果)
図1は、細胞表面積の相対値の経時変化を示す。桑試料抽出液に暴露しなかった細胞は、異常収縮により細胞表面積が低下したが、桑試料抽出液に暴露した場合、細胞表面積がほとんど低下しなかった。
【0057】
(試験例2:桑試料による異常収縮抑制効果の評価)
1.0×10細胞/mLの正常ヒト冠状動脈平滑筋細胞の細胞懸濁液100μLと増殖培地200μLとを24ウェルプレートの各ウェルに播種し、培養した。抑制効果の評価では、桑試料抽出液を添加せずに増殖培地での前培養を行った。培養後、上清を全て除去し、基礎培地200μL/ウェルを添加後、12時間以上培養した。プレートをインキュベーターから取り出し、6μM Fluo3-AMを200μL/ウェル添加(最終濃度:3μM/ウェル)後、1時間培養した。さらに、上清を200μL/ウェルずつ除去し、2mM CaClを200μL/ウェル添加し、細胞の培養と同じ条件下で30分間反応させた。60μM SPCを200μL/ウェル(最終濃度:30μM/ウェル)添加による異常収縮誘発直後に、4mg/mL桑試料抽出液を100μL/ウェル添加し、37℃、CO濃度5%に設定したCOインキュベーターで反応させた。反応後、プレートをインキュベーターから取り出し、異常収縮の形態観察を行った。異常収縮の形態観察では、桑試料抽出液添加後約1分に加え、添加後5分及び10分の画像を取得し、試験例1と同様に評価した。
【0058】
(結果)
図2に示された細胞表面積の相対値の経時変化によれば、異常収縮誘発後に桑試料抽出液に暴露しても、細胞表面積の低下が抑制された。
【0059】
(ゲルろ過クロマトグラフィーによる分子量ごとの分画の異常収縮予防効果の評価)
ゲルろ過クロマトグラフィーは、Prepacked Disposable PD-10 Column(17085101、グローバルライフサイエンステクノロジーズジャパン社製)に超純水10mL以上を通液し、コンディショニング後、使用した。試料は、桑葉を70%エタノールにより抽出し濃縮乾固した乾固物を乾固物重量が20mg/mLになるように超純水で溶解し、フィルターろ過後、使用した。コンディショニング完了後、20mg/mL桑試料抽出液1mLと超純水2mLを通液し、素通り画分を画分1として回収した。その後、フィルターを枯らさないように超純水を3mL通液し、素通り画分を画分2として回収し、同様の操作を画分8まで繰り返した。得られた素通り画分は、-20℃で凍結し、凍結乾燥後、画分6~8は収量が少なかったため混合し、画分6とした。また画分1は、カラムの特性上、分子量5000以上の物質であることから、経口摂取による機能性が期待されないため除外した。得られた画分2~6の乾固物は、HEPES緩衝液(HK-3320、倉敷紡績社製)にて0.4mg/mLになるように溶解し、0.45μmフィルターろ過後、評価試料とした。評価試料の最終濃度が0.1mg/mLとなるようにHEPES緩衝液で調製し、各画分による異常収縮予防効果を試験例1と同様に確認した。
【0060】
(結果)
図3に示すように、画分6の異常収縮予防効果が最も高かった。画分6から異常収縮を予防又は抑制する物質を以下で同定した。
【0061】
(HPLCでの逆相分画(分取))
HPLCでの分取は、LC-2000(日本分光社製)を用い、320nmの吸収スペクトルを検出した。分離カラムは、TSKgel ODS-100Z 5μm(4.6mmI.D.×15.0cm、東ソー社製)を用い、カラムオーブン温度は40℃とし、流速は1mL/分でサンプルは100μL注入した。分離は、0.1vol%トリフルオロ酢酸(202-10733、富士フイルム和光純薬社製)、アセトニトリル(純度99.9%、34888-2.5L、シグマアルドリッチジャパン社製)で、アセトニトリルを(1)0-10分 10%、(2)10-20分 100%まで上昇、(3)20-30分 100%に勾配をかけ分取した。保持時間0-10分、10-20分及び20-30分の画分をそれぞれA、B及びCとした(図4参照)。得られた溶液は、エバポレーターにより減圧濃縮した後、-20℃で凍結し、凍結乾燥し得られた乾固物を評価試料とした。評価試料について、各画分による異常収縮予防効果を試験例1と同様に確認した。
【0062】
(結果)
図5に示すように画分Bの異常収縮予防効果が最も高かった。画分Bに含まれる活性成分を以下のようにLC/MSで同定した。
【0063】
(LC/MSによる活性成分の同定)
活性成分の同定は、HPLC Shimadzu system LC20(島津製作所製)を装備したQTRAP LC-MS/MS 3200システム(エービー・サイエックス社製)を用い、ポジティブモードで検出した。以下の条件でAn information dependent acquisition(IDA)によるenhanced mass scan(EMS)でサーベイスキャンを行い、次にenhanced resolution(ER)で質量誤差の補正や、同位体分布を確認した後、enhanced product ion(EPI) scanでプロダクトイオンスキャンを行ってフラグメント情報を取得した。
【0064】
イオン化方式:ESI+、スキャンタイプ:EMS,EPI、Ion Source:Turbo Spray、Curtain Gas:20.0、Collision Gas:High、Ion Spray voltage:5500.0、Temperature:500.0、Ion source gas1:40.0、Ion source gas2:50.0、Declustering Potential:30.0、Entrance Potential:10.0、Collision energy:35.0、Collision Energy Spread:15.0。
【0065】
データ収集には、Analyst(登録商標) software(version1.5.1)を使用した。データ解析には、Mass Bank及びMETLINを用いた。分離カラムは、TSKgel ODS-100Z 5μm(4.6mmI.D.×15.0cm、東ソー社製)を用い、カラムオーブン温度は室温とし、流速は0.4mL/分でサンプルは10μL注入した。分離は、蒸留水(11307-79、関東化学社製)、アセトニトリル(純度99.9%、01033-79、関東化学社製)で、1:1のイソクラティックで行った。
【0066】
(結果)
図6(A)に示されたUVスペクトルにおける保持時間10.12分のピークを質量分析法(MS)で測定することで得られた分子量関連イオンのピークから分子量286.9を確認した。化合物を検索し、分子式を推定し、さらにMS/MS測定によって検出された図6(B)に示すプロダクトイオンスペクトルから画分Bに含まれる活性成分としてフィセチンを同定した。
【0067】
(フィセチンの定量)
フィセチンのHPLCによる定量では、LC-2000(ポンプ:PU-2080、検出器:UV-2070、オートサンプラー:AS-4050、カラムオーブン:CO-4060、日本分光社製)を用い、320nmの吸収スペクトルを検出した。分離カラムは、TSKgel ODS-100Z 5μm(4.6mmI.D.×15.0cm、東ソー社製)を用いた。カラムオーブン温度は40℃とし、流速は1mL/分で、サンプルは10μL注入した。分離は、0.1vol%トリフルオロ酢酸(202-10733、富士フイルム和光純薬社製)、メタノール(純度99.8%、21929-23、ナカライテスク社製)で、1:1のイソクラティックで行った。
【0068】
検量線はフィセチン(東京化成工業社製)をメタノール:0.1vol%TFA混合溶液に溶解し、100、50、25、12.5、6.25μMとなるように希釈し測定した。測定試料は、桑葉試料を70%エタノールにより抽出し濃縮乾固した乾固物をメタノール:0.1vol%TFA混合溶液に溶解し、乾固物重量が10mg/mLになるように調製し、0.45μmフィルターでろ過した。また、桑果実を、重量測定後に凍結乾燥機(FDU-1200、東京理科器械社製)で乾燥させ、ミル(OML-1、アズワン社製)で粉砕して得られた乾燥粉末についても測定した。乾燥粉末をメタノール:0.1vol%TFA混合溶液に溶解し、10mg/mLになるように調製して測定試料とした。定量は絶対検量線法にて行った。
【0069】
(結果)
図7にHPLCの結果を示す。保持時間5分のピークがフィセチンに対応する。なお、本実施例で使用した桑葉(ヤマグワ)では、ルテオリンは検出されなかった。図8に示すように、定量の結果、桑葉中のフィセチンの含有量は0.6mg/g乾燥粉末であった。一方、果実にはフィセチンが含まれていなかった。
【0070】
(フィセチンによる異常収縮予防効果の評価)
試験例1における桑試料抽出液を市販のフィセチン(東京化成工業社製)に代えて、フィセチンの異常収縮予防効果をさらに評価した。1、10又は100μMの濃度のフィセチンに細胞を暴露し、10分後の細胞の表面積を算出した。
【0071】
(結果)
図9に示すように、フィセチンによって細胞表面積はほとんど低下しなかった。図10は、異常収縮誘発前の細胞の画像及び誘発後10分の細胞の画像を示す。細胞の所定の部分の長さを測定し、細胞の異常収縮の程度として長さの変化率を評価したところ、対照は変化率が29.6%であったのに対し、フィセチンに暴露した細胞では、変化率が2.3%でほとんど変化していなかった。
【0072】
(桑葉含有成分の構造活性相関の検討)
桑葉に含まれるフィセチン(東京化成工業社製)、ルテオリン(Cayman Chemical社製)及びケルセチン(Cayman Chemical社製)について試験例1と同様に異常収縮予防効果を評価した。5μMの濃度のフィセチン、ルテオリン及びケルセチンに細胞を暴露し、5分後の細胞表面積を算出した。
【0073】
(結果)
図11は、フィセチン、ルテオリン及びケルセチンの各構造と、フィセチンの異常収縮予防効果を100とした場合のルテオリン及びケルセチンの相対的な異常収縮予防効果を示す。フィセチン、ルテオリン及びケルセチンのいずれにも異常収縮予防効果を確認した。フィセチンとの違いがA環5位に水酸基がある点のみであるケルセチンの異常収縮予防効果が、C環3位に水酸基がなくA環5位に水酸基があるルテオリンよりも高かった。ケルセチン及びルテオリンは桑(Morus alba)に含まれることが知られている。
【0074】
本実施例により、フィセチンが桑葉に含まれていること、SPCによる動脈平滑筋細胞の異常収縮をフィセチン、ルテオリン及びケルセチンが予防及び抑制することが示された。
【0075】
上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、血管疾患、特には血管痙攣、血管攣縮及び血管異常収縮を予防又は抑制する医薬及び食品に有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11