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  • 特許-止水キャップ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】止水キャップ
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/04 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
H02G15/04 030
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019063041
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020162400
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】397042355
【氏名又は名称】株式会社アルファジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】阿部 広明
(72)【発明者】
【氏名】佐野 正和
(72)【発明者】
【氏名】中田 博三
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-209556(JP,A)
【文献】特開昭58-8777(JP,A)
【文献】特開2005-150009(JP,A)
【文献】特開平8-205371(JP,A)
【文献】特開平11-250953(JP,A)
【文献】特開平7-330990(JP,A)
【文献】特開2003-174719(JP,A)
【文献】特表平5-505151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/04
H02G 1/14
H01R 4/22
H01B 9/00
H01B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブルの端部を止水する止水キャップであって、
前記電力ケーブルの端部に取り付けられるカップと、
前記カップ内に注入された粘性を有する絶縁材と、
を備え、
前記カップの開口に沿って内側に向かって突出した内フランジが形成されていることを特徴とする止水キャップ。
【請求項2】
前記絶縁材は、ブチルゴムに増粘剤およびプロセスオイルを添加して生成されることを特徴とする請求項1に記載の止水キャップ。
【請求項3】
前記カップの側面には所定間隔ごとに内側に突出するガイドが形成されていて、
前記ガイドは、前記カップの開口および底面から離間していることを特徴とする請求項1または2に記載の止水キャップ。
【請求項4】
前記絶縁材は、ブチルゴムを主材とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の止水キャップ。
【請求項5】
前記カップの開口を封止するキャップを更に備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の止水キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルの端部を止水する止水キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
既設の電力ケーブル取替や新設に対してケーブルを引き込む際には、電力ケーブル引き込み後、先端を切断し、接続部を形成する。しかし、電力ケーブルを切断する作業と接続部を形成する作業との間に、数日間の期間を要することがある。この間に電力ケーブルの端部に水が接するとそこからケーブル電線導体内に水が浸入し絶縁不良が生じる可能性があるため、露出部分を保護する必要が生じる。
【0003】
電力ケーブルの端部を保護する方法としては、例えば特許文献1のケーブル端末キャップが開示されている。特許文献1のケーブル端末キャップは、導体と遮蔽層とが共に端面に露出したケーブルの端末に装着されるものであり、ケーブルの端末近傍を包囲するカバーと、導体と遮蔽層とに電気的に接触しカバー内面とケーブルの端面との間に生じた空間を満たす導電性シール材とを備える。特許文献1によれば、ケーブルに帯電した電荷を安全確実に放電させ、かつケーブルの端末を保護することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-33178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のケーブル端末キャップであると、かかるケーブル端末キャップをケーブルの端部に嵌めたあと、ケーブル端末キャップとケーブルとの境目に防水テープを巻き付ける必要がある。このような作業は、作業者の負担を増やし、慣れた者でも時間短縮は難しい。また止水の重要性と作業の信頼性を鑑みると、熟練者に作業の依頼が集中するという問題があった。このため、特許文献1の技術には更なる改善の余地があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、作業者の熟練度によることなく、且つ作業者の負担を軽減しつつ、電力ケーブルの端部を確実に止水することが可能な止水キャップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる止水キャップの代表的な構成は、電力ケーブルの端部を止水する止水キャップであって、電力ケーブルの端部に取り付けられるカップと、カップ内に注入された粘性を有する絶縁材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、電力ケーブルの端部にカップを被せると、カップ内に注入された絶縁材によって電力ケーブルの端部が覆われる。これにより、電力ケーブルの端部が絶縁されつつ止水され、止水処理が完了する。このように、上記構成の止水キャップを用いれば、電力ケーブルの端部にカップを被せて押し込むという作業だけで止水処理が完了する。したがって、作業者の熟練度によることなく、且つ作業者の負担を軽減しつつ、電力ケーブルの端部を確実に止水することが可能である。
【0009】
上記カップの側面には所定間隔ごとに内側に突出するガイドが形成されていて、ガイドは、前記カップの開口および底面から離間しているとよい。かかる構成によれば、ガイドによってカップの側面と電力ケーブルの端部との接触を防ぐことができる。このため、カップの側面と電力ケーブルの端部との間における水道(みずみち)の形成を好適に防止することが可能となる。このとき、電力ケーブルの端部とガイドが接触しても、カップの開口および底面がガイドと離間していることにより、ガイドは周囲全体が絶縁材によって囲まれた状態となる。したがって、ガイドの周囲における水道の形成を防ぐことが可能となる。
【0010】
上記カップの開口に沿って内側に向かって突出した内フランジが形成されているとよい。これにより、絶縁材をカップの開口とガイドとの隙間に好適に充填することができる。したがって、上述した効果を確実に得ることが可能となる。
【0011】
上記絶縁材は、ブチルゴムを主材とするとよい。ブチルゴムは電力ケーブルにおける使用実績があり、電力ケーブルの材料とブチルゴムとの化学反応が発生することがない。したがって、絶縁材の主材としてブチルゴムを用いることにより、上述した絶縁効果を良好に得ることが可能となる。
【0012】
上記絶縁材は、ブチルゴムに増粘剤(タルク、炭酸カルシュウム)およびプロセスオイルを添加して生成されるとよい。ブチルゴムに増粘剤を添加することにより、絶縁材の増量を図るとともに粘度を高めることができ、それにプロセスオイルを添加することにより、絶縁材の粘度を下げることができる。したがって、増粘剤およびプロセスオイルを用いることにより、絶縁材を所望の粘度に調整することが可能となる。所望の粘度とはすなわち、自重で流下することがなく、かつ人力で電力ケーブルを押し込むことが可能な粘度である。
【0013】
上記カップの開口を封止するキャップを更に備えるとよい。これにより、カップからの絶縁材の漏れを好適に防ぐことができる。したがって、止水キャップを事前に大量に製造して保管し、需要に応じて提供することが可能となり、且つ現場に運搬する際の絶縁材の漏れを防ぐこともできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作業者の熟練度によることなく、且つ作業者の負担を軽減しつつ、電力ケーブルの端部を確実に止水することが可能な止水キャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態にかかる止水キャップを説明する図である。
図2】本実施形態にかかる止水キャップの使用態様図である。
図3】ガイドについて説明する図である。
図4】上げ底について説明する図である。
図5】止水キャップの保管時および運搬時の状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、本実施形態にかかる止水キャップ100を説明する図である。図1(a)は、止水キャップ100を斜め上方から観察した状態を示していて、図1(b)は、止水キャップ100を斜め下方から観察した状態を示している。本実施形態の止水キャップ100は、電力ケーブル10(図2参照)の端部に取り付けられ、そこを止水する。止水キャップ100は様々な径の電力ケーブル10を対象とすることができる。
【0018】
図1(a)および(b)に示すように、本実施形態の止水キャップ100は、電力ケーブル10の端部に取り付けられるカップ110、およびカップ110内に注入された粘性を有する絶縁材120(ハッチングにて図示)を含んで構成される。カップ110には、後述するガイド112および内フランジ114が形成されている。
【0019】
カップ110の材質としては、例えばPET、PVCを好適に用いることができる。またカップ110は、透明であるとよい。これにより、後述するように電力ケーブル10に対してカップ110を押し込んだ際におけるカップ110内での電力ケーブル10の挿入度合を目視で把握することが可能となる。
【0020】
絶縁材120としては、ブチルゴムを主材とすることが好ましい。ブチルゴムは電力ケーブル10における使用実績があり、電力ケーブル10の材料(被覆を含む)とブチルゴムとの間で化学反応が発生することがない。このため、絶縁材120の主材としてブチルゴムを用いることにより、上述した絶縁効果を良好に得ることが可能となる。またブチルゴムは固化しない性質とし、経時による収縮が生じない。したがって、収縮による隙間の発生を防ぐことができ、水道の形成を抑制することが可能となる。ただし、これは例示にすぎず、他の材料を主材とすることを除外するものではない。
【0021】
また上述したように主材をブチルゴムとした場合に、絶縁材120は、ブチルゴムに増粘剤およびプロセスオイルを添加して生成されるとよい。ブチルゴムに増粘剤を添加することにより、絶縁材120の粘度を高めることができ、それにプロセスオイルを添加することにより、絶縁材120の粘度を下げることができる。したがって、増粘剤およびプロセスオイルにより絶縁材120の粘度を所望の粘度(流下しづらい粘度)に調整することが可能となる。
【0022】
図2は、本実施形態にかかる止水キャップ100の使用態様図である。電力ケーブル10の端部を止水する際には、まず図2(a)に示す電力ケーブル10の端部に止水キャップ100のカップ110を嵌める。そして、図2(b)に示すように、カップ110を10に押し込むことにより、絶縁材120は、電力ケーブル10の端部の周囲に付着しながら押し出されて開口110aに向かっていく。
【0023】
図2(b)に示す状態からカップ110を更に押し込むことにより、図2(c)に示すように、絶縁材120がカップ110の開口110a近傍まで充填される。そして、カップ110を更に押し込むことにより、図2(d)に示すようにカップ110の開口110aまで十分に絶縁材120が充填され、溢れた絶縁材120がカップ110の外にオーバーフローする。これにより、電力ケーブル10の端部の止水処理が完了する。
【0024】
上記説明したように、本実施形態の止水キャップ100によれば、電力ケーブル10の端部にカップ110を嵌めて押し込むという作業だけで、電力ケーブル10の端部が絶縁されつつ止水され、止水処理が完了する。したがって、作業者の熟練度によることなく、且つ作業者の負担を軽減しつつ、電力ケーブル10の端部を短時間で確実に止水することが可能である。
【0025】
特に本実施形態の止水キャップ100では、カップ110にガイド112が形成されている。図1(a)に示すように、ガイド112は、カップ110の側面110cに所定間隔ごとに形成されていて、カップ110の内側に向かって突出する部位である。またガイド112は、カップ110の開口110aとの間に隙間112aを有し、底面110bとの間に隙間112bを有していて、これらから離間している。
【0026】
図3は、ガイド112について説明する図である。図3(a)は、カップ110の断面図であり、図3(b)は比較例としてのガイドを備えないカップ20を示す図である。図3(b)に示すように、ガイドを備えないカップ20であると、カップ20の側面20aに10が擦ってしまう。すると、電力ケーブル10と側面20aとの間に絶縁材120が存在しない領域20bが形成され、そこが水道となり、浸入した水が電力ケーブル10の先端まで回り込んでしまう可能性がある。
【0027】
これに対し、本実施形態の止水キャップ100のようにカップ110の側面110cにガイド112を形成することにより、電力ケーブル10はガイド112に接触することになるため、カップ110の側面110cと電力ケーブル10の端部との接触が防がれる。このとき、電力ケーブル10の端部とガイド112が接触しても、カップ110の開口110aおよび底面110bがガイド112と離間していることにより、ガイド112は周囲全体が絶縁材120によって囲まれた状態となる。したがって、ガイド112の周囲におけるカップ110の側面110cと電力ケーブル10の端部との間の水道(みずみち)の形成を好適に防止することが可能となる。
【0028】
なお、図3(a)に示すように、隣接するガイド112同士の間の間隔I(所定間隔)およびガイド112の高さHは、対象とする電力ケーブル10のうち、最も径が細いケーブルが隣接する2つのガイド112に接触した際に、そのケーブルの側面がカップ110の側面110cに接触しない程度とすることが好ましい。これにより、最も径が細いケーブルにおいても上述した効果を得ることが可能となる。換言すれば、止水キャップ100において対象とできる電力ケーブル10の径は、太いものはガイド112の中に挿入可能な最大径のものであり、細いものはガイド112同士の間から側面110cに接触しないものである。
【0029】
図4は、上げ底116について説明する図である。図4(a)は、図2(d)の拡大図であり、図4(b)は、比較例としてのガイドおよび上げ底を備えないカップ30を示す図である。先に説明したように、図4(b)に示すようにガイドを備えないカップ30であると、カップ30の側面30aを電力ケーブル10が擦ってしまい、絶縁材120が存在しない領域30bが水道となってしまう可能性がある。
【0030】
このとき、上げ底を備えないカップ30であると、カップ30内に挿入された電力ケーブル10はカップ30の底面30cに接触する。このため、電力ケーブル10の端部と底面30cとの間には絶縁材120が存在しない状態となる。この状態において電力ケーブル10に対してカップ30から離れる方向の力がかかると、絶縁材120が存在しない領域30bから空気が入りこみ、電力ケーブル10の端部と底面30cとの間に空隙30dが生じてしまい、この空隙30dもまた水道となってしまう可能性がある。
【0031】
これに対し、本実施形態の止水キャップ100では、図4(a)に示すように、カップ110の底面110bに、カップ内110側に向かって突出する上げ底116を形成している。これにより、図4(a)にクロスハッチングにて示すように、上げ底116の周辺には絶縁材120が存在することとなる。これにより、電力ケーブル10の外周には必ず絶縁材120が存在することとなるため、水道の形成を防ぎ、高い止水性能を確保することが可能となる。
【0032】
また本実施形態の止水キャップ100では、カップ110に内フランジ114が形成されている。図1(a)に示すように、内フランジ114は、カップ110の開口110aに沿って内側に向かって突出する部位である。これにより、図2(c)に示すようにカップ110を押し込んだ際に、内フランジ114が堰として機能するため、開口110aに向かって押し出された絶縁材120は内フランジ114によって開口110a近傍で一時的に堰き止められる。したがって、ガイド112と開口110aとの隙間112aを絶縁材120で確実に充填することが可能となる。
【0033】
図5は、止水キャップ100の保管時および運搬時の状態を説明する図である。図1(a)に示すように、本実施形態の止水キャップ100は、カップ110の開口110aを封止するキャップ130を更に含んで構成される。これにより、ほこりの混入やカップ110からの絶縁材120の漏れを好適に防ぐことができる。したがって、図5に示すように止水キャップ100を事前に大量に製造してコンテナ150に保管し、需要に応じて提供することが可能となり、且つ現場に運搬する際の絶縁材の漏れを防ぐこともできる。
【0034】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、電力ケーブルの端部を止水する止水キャップとして利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10…電力ケーブル、20…カップ、20a…側面、20b…領域、30…カップ、30a…側面、30b…領域、30c…底面、30d…空隙、100…止水キャップ、110…カップ、110a…開口、110b…底面、110c…側面、112…ガイド、112a、112b…隙間、114…内フランジ、116…上げ底、120…絶縁材、130…キャップ、150…コンテナ
図1
図2
図3
図4
図5